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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】測定器及びシースの厚さを求める方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/00 20060101AFI20231201BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
H05H1/00 A
H05H1/46 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020107803
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022003623
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】久保田 紳治
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-188236(JP,A)
【文献】特開2012-043572(JP,A)
【文献】特開平10-154600(JP,A)
【文献】特開平11-317299(JP,A)
【文献】米国特許第06181069(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00-1/54
H01J 37/32
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置の基板支持器上に載置可能な基板と、
前記基板内又は該基板上に設けられており、マイクロ波を生成するように構成された送信回路と、
前記基板内又は該基板上に設けられており、前記送信回路によって生成されるマイクロ波を送信波として送信するように構成された送信アンテナと、
前記基板内又は該基板上に設けられており、前記基板支持器の上方のプラズマによる前記送信波の反射波を少なくとも一つの受信波として受信するように構成された少なくとも一つの受信アンテナと、
前記基板内又は該基板上に設けられており、前記少なくとも一つの受信波から前記基板と前記プラズマとの間におけるシースの厚さを反映する少なくとも一つの信号を生成するように構成された受信復調回路と、
前記基板内又は該基板上に設けられており、前記少なくとも一つの信号から前記厚さを求めるように構成された演算器と、
を備える測定器。
【請求項2】
前記少なくとも一つの受信アンテナとして、複数の受信アンテナを備え、
前記複数の受信アンテナは、前記送信波の送信方向の前記基板に平行な方向成分に沿って配列されており、
前記受信復調回路は、前記複数の受信アンテナによってそれぞれ受信される複数の受信波の強度を表す複数の信号を生成するように構成されており、
前記演算器は、前記複数の信号から前記厚さを求めるように構成されている、
請求項1に記載の測定器。
【請求項3】
前記送信アンテナは、前記送信回路から出力される前記マイクロ波のパルスを前記送信波として送信し、
前記受信復調回路は、前記少なくとも一つの受信波の強度を表す前記少なくとも一つの信号を生成するように構成されており、
前記演算器は、前記送信波に対する前記少なくとも一つの受信波の遅延時間を前記少なくとも一つの信号から求め、該遅延時間から前記厚さを求めるように構成されている、
請求項1に記載の測定器。
【請求項4】
前記少なくとも一つの受信アンテナとして、複数の受信アンテナを備え、
前記複数の受信アンテナは、前記送信波の送信方向の前記基板に平行な方向成分に沿って配列されており、
前記受信復調回路は、前記複数の受信アンテナによってそれぞれ受信される複数の受信波の強度を表す複数の信号を生成するように構成されており、
前記演算器は、前記送信波に対する前記複数の受信波それぞれの複数の遅延時間を前記複数の信号から求め、該複数の遅延時間から前記厚さを求めるように構成されている、
請求項3に記載の測定器。
【請求項5】
前記受信復調回路は、前記送信波と前記少なくとも一つの受信波との間の位相差を表す前記少なくとも一つの信号を生成するように構成されている、請求項1に記載の測定器。
【請求項6】
前記送信回路は、前記送信波の周波数を交互に単調増加及び単調減少させるように構成されており、
前記受信復調回路は、前記送信波と前記少なくとも一つの受信波とのミキシングにより、前記シースの厚さを反映するビート周波数を有する中間周波数信号を前記少なくとも一つの信号として生成するように構成されている、
請求項1に記載の測定器。
【請求項7】
前記送信回路は、前記送信波の周波数よりも低い所定の周波数を有する基準信号に同期して前記送信波の送信方向が前記基板に対してなす角度を増減させるように前記送信波の送信方向を走査するように構成されており、
前記受信復調回路は、前記少なくとも一つの受信波に含まれる前記所定の周波数の成分の信号を前記少なくとも一つの信号として生成するように構成されており、
前記演算器は、前記基準信号と前記少なくとも一つの信号との間の位相差から前記厚さを求めるように構成されている、
請求項1に記載の測定器。
【請求項8】
前記送信波は、ミリ波である、請求項1~7の何れか一項に記載の測定器。
【請求項9】
a)プラズマ処理装置のチャンバ内で基板支持器上に測定器を載置する工程であり、該測定器は、
前記プラズマ処理装置の前記基板支持器上に載置可能な基板と、
前記基板内又は該基板上に設けられており、マイクロ波を生成するように構成された送信回路と、
前記基板内又は該基板上に設けられており、前記送信回路によって生成されるマイクロ波を送信波として送信するように構成された送信アンテナと、
前記基板内又は該基板上に設けられており、前記基板支持器の上方のプラズマによる前記送信波の反射波を少なくとも一つの受信波として受信するように構成された少なくとも一つの受信アンテナと、
前記基板内又は該基板上に設けられており、前記少なくとも一つの受信波から前記基板と前記プラズマとの間におけるシースの厚さを反映する少なくとも一つの信号を生成するように構成された受信復調回路と、
前記基板内又は該基板上に設けられており、前記少なくとも一つの信号から前記厚さを求めるように構成された演算器と、
を備える、該工程と、
b)前記プラズマ処理装置のチャンバ内でプラズマを生成する工程と、
c)前記チャンバ内で前記プラズマが生成されているときに、前記基板支持器上に載置されている前記測定器の前記演算器において前記少なくとも一つの信号から前記厚さを求める工程と、
を含む、シースの厚さを求める方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、測定器及びシースの厚さを求めるに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置が電子デバイスの製造において用いられている。プラズマ処理装置は、チャンバ及び基板支持器を備える。基板支持器は、チャンバ内で基板を支持する。プラズマがチャンバ内で生成されると、シース(プラズマシース)が、基板支持器上の基板とプラズマとの間に形成される。シースの厚さは、基板に対するプラズマ処理に影響する。
【0003】
下記の特許文献1には、シースの厚さを求めることが可能なプラズマ処理装置が記載されている。このプラズマ処理装置には、シースの厚さを測定するためのレーザ測長ユニットが備え付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-353199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、プラズマ処理装置に専用の測定装置を備え付けることなく、シースの厚さを求める技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの例示的実施形態において、測定器が提供される。測定器は、基板、送信回路、送信アンテナ、少なくとも一つの受信アンテナ、受信復調回路、及び演算器を備える。基板は、プラズマ処理装置の基板支持器上に載置可能である。送信回路、送信アンテナ、少なくとも一つの受信アンテナ、受信復調回路、及び演算器は、基板内又は基板上に設けられている。送信回路は、マイクロ波を生成するように構成されている。送信アンテナは、送信回路によって生成されるマイクロ波を送信波として送信するように構成されている。少なくとも一つの受信アンテナは、基板支持器の上方のプラズマによる送信波の反射波を少なくとも一つの受信波として受信するように構成されている。受信復調回路は、少なくとも一つの受信波から基板とプラズマとの間におけるシースの厚さを反映する少なくとも一つの信号を生成するように構成されている。演算器は、少なくとも一つの信号からシースの厚さを求めるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
一つの例示的実施形態によれば、プラズマ処理装置に専用の測定装置を備え付けることなく、シースの厚さを求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一つの例示的実施形態に係る測定器の平面図である。
図2】一例のプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図3】一つの例示的実施形態に係る測定器の一つの測定部を示す平面図である。
図4】一つの例示的実施形態に係る測定器の一つの測定部の構成を示す図である。
図5】一つの例示的実施形態に係る測定器の送信アンテナと受信アンテナとの間のマイクロ波の伝達を示す図である。
図6図6の(a)及び図6の(b)は、一つの例示的実施形態に係る測定器における送信波の送信方向を示す図である。
図7】一つの例示的実施形態に係る測定器において採用可能な一例の送信アンテナを示す平面図である。
図8】一つの例示的実施形態に係る測定器において採用可能な別の例の送信アンテナを示す平面図である。
図9】一つの例示的実施形態に係る測定部を示す図である。
図10】別の例示的実施形態に係る測定部を示す図である。
図11】更に別の例示的実施形態に係る測定部を示す図である。
図12】更に別の例示的実施形態に係る測定部を示す図である。
図13】更に別の例示的実施形態に係る測定部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0010】
一つの例示的実施形態において、測定器が提供される。測定器は、基板、送信回路、送信アンテナ、少なくとも一つの受信アンテナ、受信復調回路、及び演算器を備える。基板は、プラズマ処理装置の基板支持器上に載置可能である。送信回路、送信アンテナ、少なくとも一つの受信アンテナ、受信復調回路、及び演算器は、基板内又は基板上に設けられている。送信回路は、マイクロ波を生成するように構成されている。送信アンテナは、送信回路によって生成されるマイクロ波を送信波として送信するように構成されている。少なくとも一つの受信アンテナは、基板支持器の上方のプラズマによる送信波の反射波を少なくとも一つの受信波として受信するように構成されている。受信復調回路は、少なくとも一つの受信波から基板とプラズマとの間におけるシースの厚さを反映する少なくとも一つの信号を生成するように構成されている。演算器は、少なくとも一つの信号からシースの厚さを求めるように構成されている。
【0011】
上記実施形態の測定器では、シースの厚さを求めるために用いられる要素、即ち送信回路、送信アンテナ、少なくとも一つの受信アンテナ、受信復調回路、及び演算器が、プラズマ処理装置の基板支持器上に載置可能な基板内又は基板上に設けられている。したがって、測定器を基板支持器上に載置した状態でプラズマを生成することにより、プラズマ処理装置に専用の測定装置を備え付けることなく、シースの厚さを求めることが可能となる。
【0012】
一つの例示的実施形態において、基板支持器上での送信アンテナからの送信波の送信方向は、斜め上方向であってもよい。測定器は、少なくとも一つの受信アンテナとして、複数の受信アンテナを備えていてもよい。複数の受信アンテナは、送信波の送信方向の基板に平行な方向成分に沿って配列されていてもよい。受信復調回路は、複数の受信アンテナによってそれぞれ受信される複数の受信波の強度を表す複数の信号を生成するように構成されていてもよい。演算器は、複数の信号からシースの厚さを求めるように構成されていてもよい。
【0013】
一つの例示的実施形態において、送信アンテナは、送信回路から出力されるマイクロ波のパルスを送信波として送信してもよい。受信復調回路は、少なくとも一つの受信波の強度を表す少なくとも一つの信号を生成するように構成されていてもよい。演算器は、送信波に対する少なくとも一つの受信波の遅延時間を少なくとも一つの信号から求め、遅延時間からシースの厚さを求めるように構成されていてもよい。
【0014】
一つの例示的実施形態において、測定器は、少なくとも一つの受信アンテナとして、複数の受信アンテナを備えていてもよい。複数の受信アンテナは、送信波の送信方向の基板に平行な方向成分に沿って配列されていてもよい。受信復調回路は、複数の受信アンテナによってそれぞれ受信される複数の受信波の強度を表す複数の信号を生成するように構成されていてもよい。演算器は、送信波に対する複数の受信波それぞれの複数の遅延時間を複数の信号から求め、複数の遅延時間からシースの厚さを求めるように構成されていてもよい。
【0015】
一つの例示的実施形態において、受信復調回路は、送信波と少なくとも一つの受信波との間の位相差を表す少なくとも一つの信号を生成するように構成されていてもよい。
【0016】
一つの例示的実施形態において、送信回路は、送信波の周波数を交互に単調増加及び単調減少させるように構成されていてもよい。受信復調回路は、送信波と少なくとも一つの受信波とのミキシングにより、シースの厚さを反映するビート周波数を有する中間周波数信号を少なくとも一つの信号として生成するように構成されていてもよい。
【0017】
一つの例示的実施形態において、送信回路は、送信波の周波数よりも低い所定の周波数を有する基準信号に同期して送信波の送信方向が基板に対してなす角度を増減させるように送信波の送信方向を走査するように構成されていてもよい。受信復調回路は、少なくとも一つの受信波に含まれる所定の周波数の成分の信号を少なくとも一つの信号として生成するように構成されていてもよい。演算器は、基準信号と少なくとも一つの信号との間の位相差からシースの厚さを求めるように構成されていてもよい。
【0018】
一つの例示的実施形態において、送信波は、ミリ波であってもよい。
【0019】
別の例示的実施形態において、シースの厚さを求める方法が提供される。方法は、a)プラズマ処理装置のチャンバ内で基板支持器上に測定器を載置する工程を含む。測定器は、基板、送信回路、送信アンテナ、少なくとも一つの受信アンテナ、受信復調回路、及び演算器を備える。基板は、プラズマ処理装置の基板支持器上に載置可能である。送信回路、送信アンテナ、少なくとも一つの受信アンテナ、受信復調回路、及び演算器は、基板内又は基板上に設けられている。送信回路は、マイクロ波を生成するように構成されている。送信アンテナは、送信回路によって生成されるマイクロ波を送信波として送信するように構成されている。少なくとも一つの受信アンテナは、基板支持器の上方のプラズマによる送信波の反射波を少なくとも一つの受信波として受信するように構成されている。受信復調回路は、少なくとも一つの受信波から基板とプラズマとの間におけるシースの厚さを反映する少なくとも一つの信号を生成するように構成されている。演算器は、少なくとも一つの信号からシースの厚さを求めるように構成されている。方法は、b)プラズマ処理装置のチャンバ内でプラズマを生成する工程を更に含む。方法は、c)チャンバ内でプラズマが生成されているときに、基板支持器上に載置されている測定器の演算器において少なくとも一つの信号からシースの厚さを求める工程を更に含む。
【0020】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0021】
図1は、一つの例示的実施形態に係る測定器の平面図である。図1に示す測定器1は、プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられた基板支持器上で、プラズマと測定器1との間のシースの厚さを測定するように構成されている。測定器1は、基板2を備える。基板2は、プラズマ処理装置の基板支持器上に載置可能である。基板2は、ウエハのように円盤形状を有し得る。基板2は、例えばシリコンから形成されている。
【0022】
図2は、一例のプラズマ処理装置を概略的に示す図である。測定器1は、図2に示すプラズマ処理装置100の基板支持器104上でシースの厚さを測定することが可能である。なお、測定器1は、他のプラズマ処理装置においてシースの厚さを測定するために用いられてもよい。
【0023】
図2に示すように、プラズマ処理装置100は、チャンバ102を備える。チャンバ102は、その側壁において通路102pを提供している。プラズマ処理装置100において処理される基板W及び測定器1は、チャンバ102の内側と外側との間で搬送されるときに、通路102pを通過する。通路102pは、ゲートバルブ102vにより開閉可能である。
【0024】
プラズマ処理装置100は、基板支持器104を更に備える。基板支持器104は、チャンバ102の中に設けられている。基板支持器104は、その上に載置される基板Wを支持するように構成されている。基板支持器104は、その上に載置される測定器1を支持することも可能である。
【0025】
基板支持器104は、下部電極106及び静電チャック108を含んでいてもよい。下部電極106は、アルミニウムのような導体から形成されており、略円盤形状を有する。静電チャック108は、下部電極106上に設けられている。静電チャック108は、その上に載置される基板W又は測定器1を、静電引力により保持するように構成されている。
【0026】
基板支持器104は、その上に搭載されるエッジリングERを支持していてもよい。エッジリングERは、環形状を有する。エッジリングERは、例えばシリコン含有材料から形成される。基板W又は測定器1は、エッジリングERによって囲まれた領域内且つ静電チャック108上に載置される。
【0027】
プラズマ処理装置は、上部電極109を更に備えていてもよい。上部電極109は、チャンバ102の天井部102cによって支持されている。上部電極109は、接地されていてもよい。
【0028】
プラズマ処理装置100は、ガス供給部110及び排気装置112を更に備え得る。ガス供給部110は、チャンバ102内にガスを供給するように構成されている。図2においては、ガス供給部110は、チャンバ102の天井部102cを介して上部電極109からチャンバ102内にガスを供給しているが、他の場所からチャンバ102内にガスを供給してもよい。排気装置112は、自動圧力制御弁のような圧力制御器及びターボ分子ポンプ、ドライポンプのような減圧ポンプを含んでいる。排気装置112は、チャンバ102内のガスの圧力を指定された圧力に調整するように構成されている。
【0029】
プラズマ処理装置100は、高周波電源114を更に備え得る。高周波電源114は、整合器116を介して下部電極106に接続されている。高周波電源114は、チャンバ102内でガスからプラズマを生成するために下部電極106に高周波電力を供給する。整合器116は、高周波電源114の負荷のインピーダンスを高周波電源114の出力インピーダンスに整合させるための整合回路を含んでいる。
【0030】
プラズマ処理装置100におけるプラズマの生成時には、ガスがガス供給部110からチャンバ102内に供給される。また、チャンバ102内のガスの圧力が、排気装置112によって調整される。また、高周波電力が、高周波電源114から下部電極106に供給される。その結果、プラズマPLがチャンバ102内で生成される。プラズマPLと基板支持器104上の基板W又は測定器1との間には、シースSが形成される。
【0031】
測定器1は、基板支持器104上でシースSの厚さを測定するために、一つ以上の測定部3を更に備える。図1においては、測定器1は、五つの測定部3を備えているが、測定器1における測定部3の数は、一つであってもよく、複数であってもよい。また、図1においては、複数の測定部3のうち一つの測定部が、基板2の中心に設けられており、複数の測定部3のうち他の測定部が、基板2の中心周りの円上で等間隔に配列されている。しかしながら、一つ以上の測定部3は、基板2上で如何なる位置に配置されていてもよい。また、一つ以上の測定部3の各々は、チップとして形成され、基板2上に搭載されていてもよい。或いは、一つ以上の測定部3の各々は、基板2内又は基板2上に形成されていてもよい。
【0032】
以下、図1と共に図3及び図4を参照する。図3は、一つの例示的実施形態に係る測定器の一つの測定部を示す平面図である。図4は、一つの例示的実施形態に係る測定器の一つの測定部の構成を示す図である。以下、一つの測定部3について説明する。なお、測定器1が複数の測定部3を有する場合には、複数の測定部3は同じ構成を有し得る。
【0033】
測定部3は、送信回路4、送信アンテナ5、少なくとも一つの受信アンテナ6、受信復調回路7、及び演算器8を備える。測定部3における受信アンテナ6の個数は、一つであってもよく、複数であってもよい。測定部3は、バッテリー9及びメモリ10を更に備えていてもよい。バッテリー9は、例えば全固体電池である。バッテリー9は、測定部3の各部(例えば演算器8)の動作電源である。メモリ10は、プログラム及びデータの格納部であり、演算器8に接続されている。測定部3の要素、即ち送信回路4、送信アンテナ5、少なくとも一つの受信アンテナ6、受信復調回路7、演算器8は、バッテリー9、及びメモリ10は、基板2内又は基板2上に設けられている。
【0034】
送信回路4は、マイクロ波を生成するように構成されている。送信回路4において生成されるマイクロ波の周波数は、マイクロ波帯内の如何なる周波数であってもよい。送信回路4において生成されるマイクロ波の周波数は、ミリ波帯内の周波数であってもよい。ミリ波帯は、30GHz以上、300GHz以下の周波数帯である。或いは、送信回路4において生成されるマイクロ波の周波数は、サブミリ波帯内の周波数であってもよい。サブミリ波帯は、300GHz以上の周波数帯である。
【0035】
送信アンテナ5は、送信回路4に接続されている。送信アンテナ5は、送信回路4によって生成されるマイクロ波を送信波として送信するように構成されている。図5は、一つの例示的実施形態に係る測定器の送信アンテナと受信アンテナとの間のマイクロ波の伝達を示す図である。図5に示すように、送信アンテナ5から送信される送信波は、プラズマPLとシースSとの界面でプラズマPLによって反射されて少なくとも一つの受信アンテナ6によって受信波として受信されるよう、指向性を有する。送信アンテナ5から送信される送信波の送信方向は、送信波の主軸方向である。
【0036】
図6の(a)及び図6の(b)は、一つの例示的実施形態に係る測定器における送信波の送信方向を示す図である。図6の(a)及び図6の(b)においては、送信波のメインローブとサイドローブが示されている。図6の(a)及び図6の(b)において、X方向は、基板2に平行な方向である。送信アンテナ5と受信アンテナ6は、X方向に沿って配列されている。Y方向は、基板2に平行な方向であり、X方向に直交する方向である。Z方向は、基板2、X方向、及びY方向に直交する方向であり、基板支持器104上に測定器1が載置されている状態では、鉛直方向である。図6の(a)及び図6の(b)に示すように、送信波の送信方向は、基板支持器104上では斜め上方向である。送信波の送信方向の基板2に平行な方向成分は、X方向である。
【0037】
送信アンテナ5は、一つ以上のアンテナ素子を含み得る。一つ以上のアンテナ素子は、放射導体を含む。図7は、一つの例示的実施形態に係る測定器において採用可能な一例の送信アンテナを示す平面図である。図7に示す送信アンテナ5は、複数のアンテナ素子、即ちアンテナ素子5a~5eを含む。アンテナ素子5a~5eの各々は、放射導体を含む。アンテナ素子5a~5eの各々の放射導体は、矩形の平面形状を有していてもよい。アンテナ素子5a~5eは、Y方向に沿って配列されている。アンテナ素子5a~5eは、送信回路4に接続されている。図7に示す例において、送信回路4は、マイクロ波の発振器4g及び増幅器4aを含んでいる。発振器4gは、増幅器4aを介してアンテナ素子5a~5eに接続されている。図7に示す送信アンテナ5によれば、その送信方向の基板2に平行な方向成分がX方向である送信波が送信される。なお、送信アンテナ5においてY方向に沿って配列される複数のアンテナ素子の個数は、任意の個数であり得る。
【0038】
図8は、一つの例示的実施形態に係る測定器において採用可能な別の例の送信アンテナを示す平面図である。図8に示す送信アンテナ5は、複数のアンテナ素子群51~53を含む。送信アンテナ5におけるアンテナ素子群の数は、二つの以上の任意の個数であってもよい。複数のアンテナ素子群51~53は、X方向に沿って配列されている。
【0039】
複数のアンテナ素子群51~53の各々は、複数のアンテナ素子を有する。アンテナ素子群51は、アンテナ素子511~514を有している。アンテナ素子群52は、アンテナ素子521~524を有している。アンテナ素子群53は、アンテナ素子531~534を有している。なお、複数のアンテナ素子群51~53の各々が有するアンテナ素子の個数は、二つ以上の任意の個数であり得る。これらのアンテナ素子の各々は、放射導体を含む。放射導体は、矩形の平面形状を有していてもよい。複数のアンテナ素子群51~53の各々において、複数のアンテナ素子は、Y方向に沿って配列されている。
【0040】
図8に示す送信アンテナ5の複数のアンテナ素子は、送信回路4に接続されている。送信回路4は、マイクロ波の発振器4g、増幅器4a、及び移相器群4pを含んでいる。発振器4gは、増幅器4a及び移相器群4pを介して送信アンテナ5に接続されている。移相器群4pは、移相器41p、移相器42p、及び移相器43pを含んでいる。移相器41pは、増幅器4aとアンテナ素子群51との間で接続されている。移相器42pは、増幅器4aとアンテナ素子群52との間で接続されている。移相器43pは、増幅器4aとアンテナ素子群53との間で接続されている。増幅器4aから出力されるマイクロ波は、複数のマイクロ波として移相器41p、移相器42p、及び移相器43pに分配される。複数のマイクロ波は、移相器41p、移相器42p、及び移相器43pのそれぞれで個別の位相を与えられた後に、複数のアンテナ素子群51~53にそれぞれ与えられる。送信アンテナ5からの送信波は、複数のアンテナ素子群51~53から放出されるマイクロ波の合成波である。送信アンテナ5からの送信波の送信方向が基板2に対してなす角度θは、移相器41p、移相器42p、及び移相器43pにおいて複数のマイクロ波にそれぞれ設定される位相により調整される。
【0041】
再び図1図3、及び図4を参照する。少なくとも一つの受信アンテナ6は、プラズマPLによる送信波の反射波を受信波として受信するように構成されている。図3に示すように、測定部3は、少なくとも一つの受信アンテナ6として、複数の受信アンテナ61~66を含んでいる。複数の受信アンテナ61~66は、X方向に沿って配列されている。測定部3における受信アンテナの個数は、一つ以上であれば、任意の個数であってもよい。少なくとも一つの受信アンテナ6は、受信復調回路7に接続されている。
【0042】
受信復調回路7は、少なくとも一つの受信アンテナ6によって受信された少なくも一つの受信波を受ける。受信復調回路7は、少なくとも一つの受信波から少なくとも一つの信号を生成するように構成されている。受信復調回路7によって生成される少なくとも一つの信号は、基板2とプラズマPLとの間におけるシースSの厚さを反映する。受信復調回路7は、演算器8に接続されている。
【0043】
演算器8は、受信復調回路7からの少なくとも一つの信号を受ける。演算器8は、受信復調回路7から受けた少なくとも一つの信号から、シースSの厚さを求めるように構成されている。演算器8は、メモリ10に格納されているプログラムを実行して、シースSの厚さを求める演算を実行してもよい。演算器8は、メモリ10に格納されているプログラムを実行して、測定部3の送信回路4を制御してもよい。演算器8は、CPUのようなプロセッサから構成され得る。
【0044】
測定器1では、シースSの厚さを求めるために用いられる要素、即ち送信回路4、送信アンテナ5、少なくとも一つの受信アンテナ6、受信復調回路7、及び演算器8が、プラズマ処理装置の基板支持器上に載置可能な基板2内又は基板2上に設けられている。したがって、測定器1を基板支持器104上に載置した状態でプラズマPLを生成することにより、プラズマ処理装置に専用の測定装置を備え付けることなく、シースSの厚さを求めることが可能となる。また、測定器1によれば、プラズマ処理装置において基板Wが処理される状態と略同じ状態で、シースSの厚さを求めることが可能となる。また、測定器1は、基板2をその上に載置可能な基板支持器を備えた任意のプラズマ処理装置において、シースの厚さを測定するために用いられ得る。また、測定器1は、その故障が発生しても、容易に交換され得る。
【0045】
以下、一つの例示的実施形態に係るシースの厚さを求める方法について説明する。この方法では、測定器1が用いられる。以下の説明は、それがプラズマ処理装置100に適用される場合を例にとって、シースの厚さを求める方法について説明する。
【0046】
この方法では、まず、測定器1が、プラズマ処理装置100のチャンバ102内で基板支持器104上に載置される。測定器1は、プラズマ処理装置100を含む基板処理システムのロードポート内から、搬送系を介してチャンバ102内に搬送されて、基板支持器104上に載置される。しかる後に、静電チャック108によって測定器1が保持される。そして、測定器1の回路動作が開始される。
【0047】
次いで、プラズマ処理装置100のチャンバ内でプラズマPLが生成される。プラズマPLを生成するために、ガスが、ガス供給部110からチャンバ102内に供給される。また、チャンバ102内のガスの圧力が、排気装置112によって調整される。そして、高周波電源114からの高周波電力が、下部電極106に供給される。その結果、プラズマPLがチャンバ102内且つ測定器1の上方で生成される。
【0048】
この方法では、プラズマPLが生成されているときに、シースSの厚さが、受信復調回路7からの上述の少なくとも一つの信号を用いて、測定器1の演算器8において求められる。しかる後に、ガス供給部110によるガスの供給が停止され、測定器1の回路動作が停止され、静電チャック108による測定器1の保持が停止される。そして、測定器1は、搬送系によってチャンバ102からロードポートに搬送される。
【0049】
以下、測定器1の一つ以上の測定部3の各々として採用可能な測定部の幾つかの例示的実施形態について説明する。
【0050】
図9は、一つの例示的実施形態に係る測定部を示す図である。図9に示す測定部3Aは、測定器1の一つ以上の測定部3の各々として採用され得る。測定部3Aにおいて、送信回路4は、マイクロ波の発振器4g及び増幅器4aを含む。測定部3Aにおいて、送信回路4は、連続波であるマイクロ波を送信アンテナ5に出力する。
【0051】
測定部3Aは、少なくとも一つの受信アンテナ6として、受信アンテナ61~66を含む。送信アンテナ5及び受信アンテナ61~66は、X方向に沿って配列されている。なお、測定部3Aにおける受信アンテナの個数は、二つ以上であれば、如何なる個数であってもよい。
【0052】
測定部3Aにおいて、受信復調回路7は、第1の増幅器711~716、バンドパスフィルタ721~726、検波用ダイオード731~736、第2の増幅器741~746、及びA/D変換器751~756を含んでいる。測定部3Aの受信復調回路7において、第1の増幅器、バンドパスフィルタ、検波用ダイオード、第2の増幅器、A/D変換器の各々の個数は、測定部3Aの受信アンテナの個数と同数である。
【0053】
第1の増幅器711~716の入力は、受信アンテナ61~66にそれぞれ接続されている。第1の増幅器711~716はそれぞれ、受信アンテナ61~66で受信された複数の受信波を増幅することにより複数の増幅信号を生成する。第1の増幅器711~716はそれぞれ、生成した複数の増幅信号をそれらの出力から出力する。
【0054】
バンドパスフィルタ721~726の入力は、第1の増幅器711~716の出力にそれぞれ接続されている。バンドパスフィルタ721~726の各々の通過帯域は、送信波の周波数と同じ周波数を有する信号を選択的に通過させる帯域である。バンドパスフィルタ721~726はそれぞれ、第1の増幅器711~716からの複数の増幅信号に対するフィルタリングにより、複数の濾過信号を生成する。バンドパスフィルタ721~726は、生成した複数の濾過信号をそれらの出力から出力する。
【0055】
検波用ダイオード731~736の入力は、バンドパスフィルタ721~726の出力にそれぞれ接続されている。検波用ダイオード731~736はそれぞれ、バンドパスフィルタ721~726からの複数の濾過信号に対する検波により、複数の検波信号を生成する。検波用ダイオード731~736はそれぞれ、生成した複数の検波信号をそれらの出力から出力する。
【0056】
第2の増幅器741~746の入力は、検波用ダイオード731~736の出力にそれぞれ接続されている。第2の増幅器741~746はそれぞれ、検波用ダイオード731~736からの複数の検波信号を増幅することにより、複数の増幅信号を生成する。第2の増幅器741~746はそれぞれ、生成した複数の増幅信号をそれらの出力から出力する。
【0057】
A/D変換器751~756の入力は、第2の増幅器741~746の出力にそれぞれ接続されている。A/D変換器751~756はそれぞれ、第2の増幅器741~746からの複数の増幅信号に対するA/D変換処理により、複数のデジタル信号を生成する。A/D変換器751~756はそれぞれ、生成した複数のデジタル信号をそれらの出力から出力する。A/D変換器751~756によって生成される複数のデジタル信号は、受信アンテナ61~66それぞれでの受信波の強度を表す。A/D変換器751~756によって生成される複数のデジタル信号は、シースSの厚さを反映する信号として、演算器8に入力される。
【0058】
演算器8は、A/D変換器751~756からの複数のデジタル信号を受ける。演算器8は、これらのデジタル信号から特定される受信アンテナ61~66それぞれでの受信波の強度の組み合わせに対応するシースSの厚さを特定する。演算器8は、受信アンテナ61~66それぞれでの受信波の強度の組み合わせとシースSの厚さとの関係を、テーブル又は関数として予め保持していてもよい。演算器8は、そのようなテーブル又は関数を用いて、シースSの厚さを求めてもよい。
【0059】
受信アンテナ61~66それぞれでの受信波の強度は、シースSの厚さに依存する。したがって、測定部3Aによれば、受信アンテナ61~66それぞれでの受信波の強度の組み合わせから、シースSの厚さを求めることが可能となる。
【0060】
以下、図10を参照する。図10は、別の例示的実施形態に係る測定部を示す図である。図10に示す測定部3Bは、測定器1の一つ以上の測定部3の各々として採用され得る。測定部3Bにおいて、送信回路4は、マイクロ波の発振器4g、パルス発振器4pg、パルス変調器4pm、及び増幅器4aを含む。測定部3Bにおいて、送信回路4は、マイクロ波のパルスを出力する。パルス発振器4pgは、パルス信号を発生する。パルス変調器4pmは、パルス信号を用いて発振器4gからのマイクロ波の振幅を変調することにより、マイクロ波のパルスを生成する。増幅器4aは、パルス変調器4pmによって生成されたマイクロ波のパルスを増幅して、送信アンテナ5に出力する。送信アンテナ5は、増幅されたマイクロ波のパルスを送信波として放出する。
【0061】
測定部3Bは、少なくとも一つの受信アンテナ6として、受信アンテナ61~66を含む。送信アンテナ5及び受信アンテナ61~66は、X方向に沿って配列されている。なお、測定部3Bにおける受信アンテナの個数は、一つ以上であれば、如何なる個数であってもよい。
【0062】
測定部3Bの受信復調回路7は、測定部3Aの受信復調回路7と同一の構成を有する。即ち、測定部3Bにおいて、受信復調回路7は、第1の増幅器711~716、バンドパスフィルタ721~726、検波用ダイオード731~736、第2の増幅器741~746、及びA/D変換器751~756を含んでいる。測定部3Bの受信復調回路7において、第1の増幅器、バンドパスフィルタ、検波用ダイオード、第2の増幅器、A/D変換器の各々の個数は、測定部3Bの受信アンテナの個数と同数である。
【0063】
測定部3Bでは、送信波はマイクロ波のパルスである。したがって。受信アンテナ61~66のそれぞれでの受信波も、マイクロ波のパルスである。故に、A/D変換器751~756によって生成されるデジタル信号のそれぞれも、パルスを含む。A/D変換器751~756によって生成される複数のデジタル信号の各々におけるパルスは、送信波(マイクロ波のパルス)の送信時点に対して遅延時間を有する。遅延時間は、シースSの厚さに依存する。
【0064】
測定部3Bにおいて、演算器8は、A/D変換器751~756からの複数のデジタル信号を受ける。演算器8は、これらのデジタル信号から、送信波(マイクロ波のパルス)の送信時点に対する受信アンテナ61~66それぞれでの複数の受信波(即ち、マイクロ波のパルス)の受信時点の遅延時間を特定する。演算器8は、それら遅延時間からシースSの厚さを求める。演算器8は、それら遅延時間に対応する複数の厚さを求めて、複数の厚さの平均値をシースSの厚さとして求めてもよい。なお、各デジタル信号から特定されるシースSの厚さSthは、下記の式(1)から求められる。式(1)において、cは光速であり、tは遅延時間であり、Lはその遅延時間を有する受信波を受信した受信アンテナと送信アンテナとの間のX方向における距離である。
【数1】
【0065】
測定部3Bによれば、送信波としてマイクロ波のパルスを用いることにより、受信波の遅延時間からシースSの厚さを求めることが可能となる。なお、送信波は、パルス発振器4pgからのパルス信号を用いた変調ではなく、TDMA方式により変調されていてもよい。
【0066】
以下、図11を参照する。図11は、更に別の例示的実施形態に係る測定部を示す図である。図11に示す測定部3Cは、測定器1の一つ以上の測定部3の各々として採用され得る。測定部3Cにおいて、送信回路4は、マイクロ波の発振器4g及び増幅器4aを含む。測定部3Cにおいて、送信回路4は、連続波であるマイクロ波を送信アンテナ5に出力する。
【0067】
測定部3Cは、一つの受信アンテナ6を含む。送信アンテナ5と受信アンテナ6は、X方向に沿って配列されている。なお、測定部3Cにおける受信アンテナの個数は、二つ以上であってもよい。
【0068】
測定部3Cにおいて、受信復調回路7は、増幅器C1、ミキサC2及びC3、局部発振器C4、増幅器C5及びC6、位相検出器C7、並びにA/D変換器C8を有する。測定部3Cでは、発振器4gからのマイクロ波は、増幅器4aに加えて、ミキサC2にも出力される。ミキサC2には、局部発振器C4が接続されている。ミキサC2は、発振器4gからのマイクロ波と局部発振器C4からの信号とをミキシングすることにより、第1の中間周波数信号を生成する。ミキサC2の出力は、増幅器C5の入力に接続されている。増幅器C5は、第1の中間周波数信号を増幅することにより、第1の増幅信号を生成する。増幅器C5は、第1の増幅信号をその出力から出力する。増幅器C5の出力は、位相検出器C7の第1の入力に接続されている。
【0069】
増幅器C1の入力は、受信アンテナ6に接続されている。増幅器C1は、受信アンテナ6からの受信波を増幅して、増幅信号を生成する。増幅器C1は、生成した増幅信号をその出力から出力する。増幅器C1の出力は、ミキサC3に接続されている。ミキサC3には、局部発振器C4が接続されている。ミキサC3は、増幅器C1からの増幅信号と局部発振器C4からの信号とをミキシングすることにより、第2の中間周波数信号を生成する。ミキサC3の出力は、増幅器C6の入力に接続されている。増幅器C6は、第2の中間周波数信号を増幅することにより、第2の増幅信号を生成する。増幅器C6は、第2の増幅信号をその出力から出力する。増幅器C6の出力は、位相検出器C7の第2の入力に接続されている。
【0070】
位相検出器C7は、第1の増幅信号と第2の増幅信号との間の位相差、即ち、送信波と受信波との間の位相差に応じたレベルを有する電圧をその出力から出力する。位相検出器C7の出力は、A/D変換器C8の入力に接続されている。A/D変換器C8は、その入力に受けた信号に対するA/D変換処理により、デジタル信号を生成する。A/D変換器C8は、生成したデジタル信号をその出力から出力する。A/D変換器C8によって生成されるデジタル信号は、シースSの厚さを反映する信号として、演算器8に入力される。
【0071】
演算器8は、A/D変換器C8からのデジタル信号を受ける。演算器8は、デジタル信号から送信波と受信波との間の位相差φを特定する。位相差φは、φ=K・Vにより求められる。Vは、デジタル信号から特定される位相検出器C7の出力電圧のレベルである。Kは、位相感度定数であり、予め定められている。演算器8は、シースSの厚さSthを、Sth=φ・c/(4πf)の演算により求める。ここで、cは光速であり、fは送信波の周波数である。
【0072】
なお、測定部3Cが複数の受信アンテナを有する場合に、受信復調回路7は、増幅器C1、ミキサC2及びC3、局部発振器C4、増幅器C5及びC6、位相検出器C7、並びにA/D変換器C8の複数のセットを有する。この場合に、演算器8は、複数のセットのそれぞれのA/D変換器C8によって生成されるデジタル信号から求められる複数の厚さの平均値を、シースSの厚さとして求めてもよい。
【0073】
以下、図12を参照する。図12は、更に別の例示的実施形態に係る測定部を示す図である。図12に示す測定部3Dは、測定器1の一つ以上の測定部3の各々として採用され得る。測定部3Dにおいて、送信回路4は、マイクロ波の発振器4g、信号発生器4fg、変調器4fm、及び増幅器4aを含む。測定部3Dにおいて、送信回路4は、その周波数が交互に単調増加及び単調減少するマイクロ波を出力する。変調器4fmは、信号発生器4fgからの信号を用いて、発振器4gからのマイクロ波の周波数を変調することにより、変調マイクロ波を生成する。増幅器4aは、変調器4fmによって生成された変調マイクロ波を増幅して、送信アンテナ5に出力する。送信アンテナ5は、増幅された変調マイクロ波を送信波として放出する。
【0074】
測定部3Dは、一つの受信アンテナ6を含む。送信アンテナ5と受信アンテナ6は、X方向に沿って配列されている。なお、測定部3Dにおける受信アンテナの個数は、二つ以上であってもよい。
【0075】
測定部3Dにおいて、受信復調回路7は、増幅器D1、ミキサD2、検波用ダイオードD3、バンドパスフィルタD4、増幅器D5、及びA/D変換器D6を有する。増幅器D1の入力は、受信アンテナ6に接続されている。増幅器D1は、受信アンテナ6からの受信波を増幅して、増幅信号を生成する。増幅器D1は、生成した増幅信号をその出力から出力する。増幅器D1の出力は、ミキサD2に接続されている。ミキサD2には、発振器4gが接続されている。ミキサD2は、増幅器D1からの増幅信号と発振器4gからのマイクロ波をミキシングすることにより、ビート周波数を有する信号を生成する。
【0076】
送信波が送信された時点とその送信波のプラズマPLによる反射波である受信波が受信アンテナ6によって受信されるまでの時点との間には、時間差がある。即ち、受信波は、遅延時間を有する。遅延時間は、シースSの厚さに依存する。同一の時点での送信波と受信波とをミキシングすることにより得られる信号は、受信波の遅延時間に応じたビート周波数を有する信号となる。したがって、ミキサD2によって生成される信号は、シースSの厚さを反映するビート周波数を有する。
【0077】
検波用ダイオードD3は、ミキサD2によって生成された信号から検波信号を生成する。検波用ダイオードD3は、検波信号をその出力から出力する。検波用ダイオードD3の出力は、バンドパスフィルタD4の入力に接続されている。バンドパスフィルタD4の通過帯域は、ビート周波数を有する信号を選択的に通過させる帯域である。バンドパスフィルタD4は、検波用ダイオードD3からの検波信号に対するフィルタリングにより、濾過信号を生成する。バンドパスフィルタD4は、生成した濾過信号をその出力から出力する。
【0078】
増幅器D5の入力は、バンドパスフィルタD4の出力に接続されている。増幅器D5は、濾過信号を増幅することにより、増幅信号を生成する。増幅器D5は、生成した増幅信号をその出力から出力する。A/D変換器D6の入力は、増幅器D5の出力に接続されている。A/D変換器D6は、増幅器D5からの増幅信号に対するA/D変換処理により、デジタル信号を生成する。生成されたデジタル信号は、シースSの厚さを反映するビート周波数を有する。
【0079】
演算器8は、A/D変換器D6からのデジタル信号を受ける。演算器8は、デジタル信号に対して、例えば高速フーリエ変換(FFT)を適用することにより得られるスペクトルからビート周波数を特定する。演算器8は、特定したビート周波数に対応するシースSの厚さを求める。演算器8は、ビート周波数とシースSの厚さとの関係を、テーブル又は関数として予め保持していてもよい。演算器8は、そのようなテーブル又は関数を用いて、シースSの厚さを求めてもよい。
【0080】
なお、測定部3Dが複数の受信アンテナを有する場合に、受信復調回路7は、増幅器D1、ミキサD2、検波用ダイオードD3、バンドパスフィルタD4、増幅器D5、及びA/D変換器D6の複数のセットを有する。この場合に、演算器8は、複数のセットのそれぞれのA/D変換器D6によって生成されるデジタル信号から求められる複数の厚さの平均値を、シースSの厚さとして求めてもよい。
【0081】
以下、図13を参照する。図13は、更に別の例示的実施形態に係る測定部を示す図である。図13に示す測定部3Eは、測定器1の一つ以上の測定部3の各々として採用され得る。測定部3Eは、送信アンテナ5から送信される送信波の送信方向が基板2に対してなす角度θを増減させるように送信波の送信方向を走査するように構成されている。測定部3Eにおいて、送信アンテナ5は、図8に示した構成を有していてもよい。
【0082】
測定部3Eにおいて、送信回路4は、マイクロ波の発振器4g、増幅器4a、移相器群4p、信号発生器4d、増幅器4b、及びA/D変換器4cを有する。送信回路4において、発振器4gは、連続波であるマイクロ波を発生する。増幅器4aは、発振器4gからのマイクロ波を増幅して、移相器群4pに出力する。
【0083】
移相器群4pは、図8を参照して説明したように、複数の移相器を含む。複数の位相器には、増幅器4aから複数のマイクロ波がそれぞれ与えられる。複数のマイクロ波は、移相器群4pの複数の位相器のそれぞれで個別の位相を与えられた後に、送信アンテナ5の複数のアンテナ素子群にそれぞれ与えられる。移相器群4pの複数の位相器は、信号発生器4dからの基準信号に同期して送信アンテナ5の複数の送信アンテナ群それぞれに与えるマイクロ波の位相を変化させる。その結果、送信アンテナ5の複数の送信アンテナ群から送信される送信波の送信方向が、送信波の角度θが基準信号の周波数(所定の周波数)で特定される周期で増減するように、走査される。基準信号は、マイクロ波の周波数よりも低い周波数を有する。基準信号の周波数は、例えば、1Hz以上、1kHz以下である。
【0084】
信号発生器4dの出力は、増幅器4bを介してA/D変換器4cの入力に接続されている。基準信号は、増幅器4bで増幅されて、A/D変換器4cに入力される。A/D変換器4cは、増幅された基準信号に対するA/D変換処理によりデジタル信号(以下、「基準デジタル信号」という)を生成する。A/D変換器4cによって生成された基準デジタル信号は、演算器8に与えられる。
【0085】
測定部3Eは、少なくとも一つの受信アンテナ6として、受信アンテナ61~66を含む。送信アンテナ5及び受信アンテナ61~66は、X方向に沿って配列されている。なお、測定部3Eにおける受信アンテナの個数は、一つ以上であれば、如何なる個数であってもよい。
【0086】
測定部3Eの受信復調回路7は、測定部3Aの受信復調回路7と同一の構成を有する。即ち、測定部3Eにおいて、受信復調回路7は、第1の増幅器711~716、バンドパスフィルタ721~726、検波用ダイオード731~736、第2の増幅器741~746、及びA/D変換器751~756を含んでいる。但し、測定部3Eにおいて、バンドパスフィルタ721~726の各々は、基準信号の周波数と同じ周波数を有する成分を選択的に通過させる通過帯域を有する。測定部3Eの受信復調回路7において、第1の増幅器、バンドパスフィルタ、検波用ダイオード、第2の増幅器、A/D変換器の各々の個数は、測定部3Eの受信アンテナの個数と同数である。
【0087】
測定部3Eでは、A/D変換器751~756の各々から出力されるデジタル信号は、基準デジタル信号に対して位相差を有する。位相差は、シースSの厚さに依存する。
【0088】
測定部3Eにおいて、演算器8は、A/D変換器751~756からの複数のデジタル信号を受ける。演算器8は、A/D変換器751~756からの複数のデジタル信号それぞれの基準デジタル信号に対する位相差を特定する。演算器8は、それらの位相差からシースSの厚さを求める。演算器8は、それらの位相差に対応する複数の厚さを求めて、複数の厚さの平均値をシースSの厚さとして求めてもよい。なお、A/D変換器751~756の各々からのデジタル信号から特定されるシースSの厚さSthは、上記の式(1)から求められる。測定部3Eの演算器8が用いる式(1)において、cは光速であり、tは位相差(遅延時間)であり、Lはその位相差を有するデジタル信号に対応する受信波を受信した受信アンテナと送信アンテナとの間の距離である。
【0089】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0090】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的により本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0091】
1…測定器、2…基板、3…測定部、4…送信回路、5…送信アンテナ、6…受信アンテナ、7…受信復調回路、8…演算器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13