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▶ ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェンの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】シアノアクリレート組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/04 20060101AFI20231201BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231201BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20231201BHJP
   C08F 255/02 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
C09J4/04
C09J11/06
C09J11/08
C08F255/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020523363
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2018079498
(87)【国際公開番号】W WO2019081762
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】1717708.0
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ、 ロリー ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ハーシー、 レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ、 バリー エヌ.
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-150422(JP,A)
【文献】国際公開第2010/029134(WO,A1)
【文献】特表2004-522827(JP,A)
【文献】特開平10-176142(JP,A)
【文献】特表2006-527782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-5/10,
9/00-201/10
C08F 251/00-283/00,
283/02-289/00,
291/00-297/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分、
(b)ブチルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるシアノアクリレート成分、
(c)(i)エチレン、メチルアクリレートおよびカルボン酸硬化部位を有するモノマーの組み合わせの反応生成物、(ii)エチレンおよびメチルアクリレートのジポリマー、(iii)塩化ビニリデン-アクリロニトリルコポリマー、(iv)塩化ビニル/ビニルアセテートコポリマー、(v)ポリエチレンとポリビニルアセテートのコポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるゴム強化成分、
(d)表面修飾成分および
(e)接着促進剤を含み、
β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分(a)が、組成物の総重量に基づいて55重量%~85重量%の量で存在し、シアノアクリレート成分(b)が5~30重量%の量で存在するシアノアクリレート組成物。
【請求項2】
β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分(a)およびシアノアクリレート成分(b)が70:30の重量比で存在し、表面修飾成分(d)が、最表面の酸化により表面が修飾された、平均粒子径が500μm以下の粒子状のポリオレフィンであり、接着促進剤(e)は、リン酸または無水イタコン酸の少なくとも一方である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分が、β-メトキシエチルシアノアクリレート、β-エトキシエチルシアノアクリレート、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ゴム強化成分が、エチレン、メチルアクリレートおよびカルボン酸硬化部位を有するモノマーの組み合わせの反応生成物であり、反応生成物が離型剤、酸化防止剤、ステアリン酸、ポリエチレングリコールエーテルワックスを含まない、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
チキソトロープ剤、ゲル化剤、増粘剤、促進剤および耐衝撃性付与剤のうちの1以上をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
促進剤が、カリックスアレーン、オキサカリックスアレーン、シラクラウン、シクロデキストリン、クラウンエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化水酸基化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
カリックスアレーンが、テトラブチルテトラ[2-エトキシ-2-オキソエトキシ]カリックス-4-アレーンである、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
クラウンエーテルが、15-クラウン-5、18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6、ベンゾ-15-クラウン-5-ジベンゾ-24-クラウン-8、ジベンゾ-30-クラウン-10、トリベンゾ-18-クラウン-6、asym-ジベンゾ-22-クラウン-6、ジベンゾ-14-クラウン-4、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-24-クラウン-8、シクロヘキシル-12-クラウン-4、1,2-デカリル-15-クラウン-5、1,2-ナフト-15-クラウン-5、3,4,5-ナフチル-16-クラウン-5、1,2-メチル-ベンゾ-18-クラウン-6、1,2-メチルベンゾ-5,6-メチルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-18-クラウン-6、1,2-ビニルベンゾ-15-クラウン-5、1,2-ビニルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-シクロヘキシル-18-クラウン-6、asym-ジベンゾ-22-クラウン-6、および1,2-ベンゾ-1,4-ベンゾ-5-オキシジェン-20-クラウン-7およびそれらの組み合わせからなる群内のメンバーから選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートが以下の構造内
【化1】

(式中、nは、3より大きい)にある、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
耐衝撃性付与剤が、クエン酸である、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分(a)およびシアノアクリレート成分(b)が、組成物中に55~75:20~30の範囲の重量比で存在する、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分(a)が、組成物の総重量に基づいて55重量%~80重量%の量で存在し、シアノアクリレート成分が7重量%~27重量%の量で存在する、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分(a)およびシアノアクリレート成分(b)が、組成物中に70:30の範囲の重量比で存在する、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
安定化量の酸性安定剤およびフリーラジカル阻害剤をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物の反応生成物。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載のシアノアクリレート組成物を少なくとも1つの基材に塗布し、組成物を固定するのに十分な時間、基材を互いに合わせる工程を含む、2つの基材を結合する方法。
【請求項17】
ブチルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるシアノアクリレート成分に溶解したゴム強化成分を提供する工程と、β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分、表面修飾成分および接着促進剤を混合し、それらと混ぜ合わせる工程を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のシアノアクリレート組成物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分、(b)ブチルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレートおよびそれらの組み合わせから選択されるシアノアクリレート成分、(c)ゴム強化成分、(d)表面修飾成分および(e)接着促進剤を含むシアノアクリレート含有組成物に関する。本発明のシアノアクリレート組成物の硬化生成物は、シアノアクリレート含有組成物で典型的に見られる臭いを伴わずに、改善された靭性を示す。
【背景技術】
【0002】
<関連技術の簡単な説明>
シアノアクリレート接着剤組成物は周知であり、多種多様な用途をもつ、短時間で硬化する瞬間接着剤として広範に使用される。H.V.Coover、D.W.Dreifus及びJ.T.O’Connor、「Cyanoacrylate Adhesives」Handbook of Adhesives中、27、463~77、I.Skeist編、Van Nostrand Reinhold、New York、第3版(1990)を参照のこと。G.H.Millet、「Cyanoacrylate Adhesives」Structural Adhesives:Chemistry and Technology中、S.R.Hartshorn編、Plenun Press、New York、249~307ページ(1986)も参照のこと。
【0003】
米国特許第4,440,910号(O’Connor)は、ある種の有機ポリマーをエラストマー、すなわち実際にはゴム状の性質を有する強化添加剤として使用することにより、ゴム強化シアノアクリレート組成物を開発した。したがって、’910特許は、(a)シアノアクリレートエステルと、(b)約0.5重量%~約20重量%のエラストマーポリマーとの実質的に無溶媒の混合物を含む硬化性接着剤を対象とし、特許請求されている。エラストマーポリマーは、低級アルケンモノマーおよび(i)アクリル酸エステル、(ii)メタクリル酸エステルまたは(iii)酢酸ビニルとのエラストマーコポリマーから選択される。より具体的には、’910特許には、シアノアクリレートのための強化添加剤として、アクリルゴム、ポリエステルウレタン、エチレン-酢酸ビニル;フッ素ゴム、イソプレン-アクリロニトリルポリマー、クロロスルフィン化ポリエチレン、ポリ酢酸ビニルのホモポリマーが特に有用であることが判明したと記載される。
【0004】
エラストマーポリマーは、’910特許に、アクリル酸のアルキルエステルのホモポリマー、低級アルケンなどの他の重合性モノマーとアクリル酸のアルキルまたはアルコキシエステルとのコポリマー、およびアクリル酸のアルキルまたはアルコキシエステルのコポリマーのいずれかである、と記載されている。アクリルのアルキルおよびアルコキシエステルと共重合され得る他の不飽和モノマーとしては、ジエン、反応性ハロゲン含有不飽和化合物、およびアクリルアミドなどの他のアクリルモノマーが挙げられる。
【0005】
従来の市販のエチルシアノアクリレート組成物には悪臭があり、一部のエンドユーザーは不快に感じる。β-メトキシエチルシアノアクリレートは、同じ臭いがないことが知られている。エチルシアノアクリレート組成物は、硬化するとブルーミングを示すことも知られている。β-メトキシエチルシアノアクリレートではそうではない。
【0006】
今日、市場で市販されている強化された低臭/低ブルームシアノアクリレート製品はない。市販の強化シアノアクリレート製品は、主にエチルシアノアクリレートモノマーに基づいており、(1)一部のエンドユーザーが不快に感じる臭い、および/または(2)硬化したときにブルーミングすることがある。
【0007】
市販のシアノアクリレート製品は、多くの場合、エチレンメチルメタクリレートターポリマーで強化されている。このポリマーは、β-メトキシエチルシアノアクリレートを含むシアノアクリレート組成物にほとんど靭性を与えない。その一つの理由は、β-メトキシエチルシアノアクリレートの不足した溶解度かもしれない。
【0008】
β-アルコキシアルキルシアノアクリレート組成物の靭性を改善するための最新技術およびこれまでの努力にもかかわらず、そのようなシアノアクリレート組成物の硬化反応生成物に靭性を提供し、なおかつシアノアクリレート組成物に関連することが多い臭いおよびブルーミングを最小限に抑える、長年の切実で、まだ満たしていない要求がこれまでにある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(a)β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分、(b)ブチルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレートおよびそれらの組み合わせから選択されるシアノアクリレート成分、(c)ゴム強化成分、(d)表面修飾成分および(e)接着促進剤を含むシアノアクリレート組成物が提供される。
【0010】
β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分を含めると、シアノアクリレート組成物に一般的に見られる臭いを発しない組成物のためのシアノアクリレートベースが提供される。上記のシアノアクリレート成分は、ゴム強化成分をβ-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分に導入するための媒体を提供する。ゴム強化成分は、実施例に示されるように、改善された靭性を提供する。ゴム強化成分は、シアノアクリレート組成物、特にβ-アルコキシアルキルシアノアクリレートを含有するシアノアクリレート組成物において、溶解性が低いことが時々知られている。その結果、これまでの試みで観察された靭性はせいぜい制限されていた。上記のシアノアクリレート成分はその点で役立つ。
【0011】
本発明はまた、2つの基材を一緒に結合する方法であって、少なくとも1つの基材に上記の組成物を塗布し、その後に基材を互いに合わせる工程を含む方法に関する。
【0012】
さらに、本発明は、本発明の組成物の反応生成物に関する。
【0013】
また、本発明は、本発明の組成物を調製する方法、および硬化した反応生成物に改善された靭性を与える方法に関する。シアノアクリレート組成物に関連することが多い臭い、ならびにその硬化生成物で時々観察されるブルームを最小限に抑える。
【0014】
本発明は、以下の「詳細な説明」と題されたセクションを読むことにより、より完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<詳細な説明>
上述のように、本発明は、(a)β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分、(b)ブチルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレートおよびそれらの組み合わせから選択されるシアノアクリレート成分、(c)ゴム強化成分、(d)表面修飾成分および(e)接着促進剤を含むシアノアクリレート組成物に関する。
【0016】
β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分(a)は、β-メトキシメチルシアノアクリレート、β-メトキシエチルシアノアクリレート、β-エトキシメチルシアノアクリレート、β-エトキシエチルシアノアクリレートおよびそれらの組み合わせから選択することができる。それらのβ-アルコキシアルキルシアノアクリレートの中で特に望ましいのは、β-メトキシエチルシアノアクリレートである。
【0017】
β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分(a)は、全組成物の約55重量%~約85重量%などの約40重量%~約90重量%の範囲内の量で組成物に含まれるべきであり、たとえば、約55重量%~約80重量%が好ましく、約55重量%~約75重量%の範囲が特に好ましく、約60重量%が特に適している。
【0018】
シアノアクリレート成分(b)は、ブチルシアノアクリレート(n-ブチルシアノアクリレートなど)、オクチルシアノアクリレート(n-オクチルシアノアクリレートなど)、およびそれらの組み合わせから選択することができる。
【0019】
シアノアクリレート成分(b)は、約5重量%~約50重量%、例えば約5重量%~約30重量%、適切には約7重量%~約27重量%の範囲内の量で組成物中に含まれるべきである。全組成物の約10重量%~約30重量%を使用することができ、約20重量%~約35重量%の範囲が望ましく、約30重量%が特に望ましい。
【0020】
適切には、β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分(a)およびシアノアクリレート成分(b)は、組成物中に約55~約85:約5~約30の重量比で存在する。
【0021】
ゴム強化成分(c)は、(i)エチレン、メチルアクリレートおよびカルボン酸硬化部位を有するモノマーの組み合わせの反応生成物、(ii)エチレンおよびメチルアクリレートのジポリマー、(iii)塩化ビニリデン-アクリロニトリルコポリマー、(iv)塩化ビニル/ビニルアセテートコポリマー、(v)ポリエチレンとポリビニルアセテートのコポリマーおよびそれらの組み合わせから選択することができる。
【0022】
望ましくは、(i)エチレン、メチルアクリレートおよびカルボン酸硬化部位を有するモノマーの組み合わせの反応生成物(c)であり、反応生成物は、離型剤、酸化防止剤、ステアリン酸、ポリエチレングリコールエーテルワックスを実質的に含まず、β-アルコキシアルキルシアノアクリレートが使用のために選択される。DuPontは、VAMAC VCS 5500の商品名でそのような反応生成物を供給している。
【0023】
ゴム強化成分(c)は、全組成物の約3重量%~約20重量%の範囲内の量で組成物に含まれるべきであり、約5重量%~約15重量%の範囲が望ましく、約8重量%が特に望ましい。
【0024】
特に興味深い添加剤は、表面修飾成分であり、多くの形態をとることができる。たとえば、米国特許第8,609,780号(Misiak)参照のこと。たとえば、Inhance/Fluoro Seal、Ltd.の表面修飾技術は、反応性ガス雰囲気が粒子/繊維/プラスチック/フィルムまたはファブリックの最外分子層を修飾する制御された酸化である。この処理により、分子骨格および/または側鎖が反応し、表面にヒドロキシルおよびカルボキシレートなどの極性官能基が形成される。
【0025】
Inhanceのウェブサイトによると、これらの酸素含有化学官能基は、処理された粒子を高い表面エネルギーを有するものにする。これは、処理された粒子が、ポリオールなどの極性ポリマーに容易に濡れて分散することを意味する。表面修飾はまた、粒子(または繊維)とマトリックス樹脂との間のより強い結合をもたらす。強化された接着力は、表面官能基と水素との化学結合の結果である。www.inhanceproducts.com/technology.html、2006年8月16日を参照のこと。
【0026】
Inhanceから市販されている表面修飾ポリオレフィンには、INHANCE(登録商標)UH-1000およびHD-1000シリーズ粒子として記載されるファミリーのものが含まれる。そのファミリーの具体的な代表には、UH-1045(300μmの平均サイズを持つ)、UH-1080(125μmの平均サイズを持つ)、UH-1200(63μmの平均サイズを持つ)、UH- 1250(53μmの平均サイズを持つ)、UH-1500(45μmの平均サイズを持つ)、UH-1700(38μmの平均サイズを持つ)、HD-1800(18μmの平均サイズを持つ)として指定されたものが含まれる。
【0027】
INHANCE(登録商標)UH-1000シリーズ粒子は、最初のUHMWPE樹脂に由来する自由流動性の白色粒子または粉末であり、以下の一般的特性を有する:
表面エネルギー:55+ dynes/cm(水濡れ性)
比重:0.93~0.94
かさ密度:20~31lb./ft(0.32~0.50g/cc)
分子量:3,000,000~5,000,000
【0028】
INHANCE(登録商標)UH-1000シリーズ粒子は、優れた耐摩耗性、低減された摩擦係数、強化された破壊作用および改善された防湿層を複合材に提供すると報告されている。
【0029】
別の特に興味深い添加剤は、リン酸および無水イタコン酸のような無水物などの接着促進剤である。
【0030】
適切には、β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分(a)は、組成物の総重量に基づき、約55重量%~約80重量%の量で存在し、シアノアクリレート成分は、約7重量%~約27重量%の量で存在する。
【0031】
シアノアクリレート成分(b)は、β-アルコキシアルキルシアノアクリレート(a)と約30:70の重量比で存在し得る。
【0032】
本発明のシアノアクリレート組成物には、カリックスアレーンおよびオキサカリックスアレーン、シラクラウン、クラウンエーテル、シクロデキストリン、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化水酸基(ethoxylated hydric)化合物およびそれらの組み合わせから選択されるいずれか1つ以上などの促進剤もまた含まれてもよい。
【0033】
カリックスアレーンおよびオキサカリックスアレーンのうち、多くは公知であり、特許文献に報告されている。例えば、米国特許第4,556,700号、第4,622,414号、第4,636,539号、第4,695,615号、第4,718,966号、および第4,855,461号に記載されており、これらの各々の開示は参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0034】
例えば、カリックスアレーンに関しては、以下の構造内のものが有用である。
【0035】
【化1】

式中、
は、アルキル、アルコキシ、置換アルキルまたは置換アルコキシであり;RはHまたはアルキルであり;nは4,6または8である。
【0036】
1つの特に望ましいカリックスアレーンはテトラブチルテトラ[2-エトキシ-2-オキソエトキシ]カリックス-4-アレーンである。
【0037】
多くのクラウンエーテルが知られている。
たとえば、15-クラウン-5、18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6、ベンゾ-15-クラウン-5-ジベンゾ-24-クラウン-8、ジベンゾ-30-クラウン-10、トリベンゾ-18-クラウン-6、asym-ジベンゾ22-クラウン-6、ジベンゾ-14-クラウン-4、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-24-クラウン-8、シクロヘキシル-12-クラウン-4、1,2-デカリル-15-クラウン-5、1,2-ナフト-15-クラウン-5、3,4,5-ナフチル-16-クラウン-5、1,2-メチル-ベンゾ-18-クラウン-6、1,2-メチルベンゾ-5、6-メチレンベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-18-クラウン-6、1,2-ビニルベンゾ-15-クラウン-5、1,2-ビニルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチルシクロヘキシル-18-クラウン-6、asym-ジベンゾ-22-クラウン-6および1,2-ベンゾ-1,4-ベンゾ-5-オキシジェン-20-クラウン-7のいずれかを用いることができる。米国特許第4,837,260号(Sato)を参照し、これにより、その開示が参照によって本明細書に明確に組み込まれる。
【0038】
シラクラウンのうち、この場合も先と同様に多くは知られており、文献に報告されている。
【0039】
本発明の組成物に有用なシラクラウン化合物の具体的な例には、
【0040】
【化2】

ジメチルシラ-11-クラウン-4、
【0041】
【化3】


ジメチルシラ-14-クラウン-5、
【0042】
【化4】


およびジメチルシラ-17-クラウン-6が挙げられる。
【0043】
例えば、米国特許第4,906,317号(Liu)などを参照し、これにより、その開示が参照によって本明細書に明確に組み込まれる。
【0044】
本発明に関して多くのシクロデキストリンを使用できる。例えば、その開示がこれにより参照によって本明細書に明確に組み込まれる米国特許第5,312,864号(Wenz)に、少なくとも部分的にシアノアクリレートと溶解可能である、α、β又はγ-シクロデキストリンの水酸基誘導体として記載され、その権利が主張されるシクロデキストリンは、第1の促進剤成分として適切な選択である。
【0045】
例えば、本明細書での使用に適したポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートには、以下の構造内のものが含まれる。
【0046】
【化5】

式中、
nは3より大きく、例えば3~12の範囲内であり、nは9であることが特に望ましい。 より具体的な例として、PEG 200 DMA(nは約4)、PEG 400 DMA(nは約9)、PEG 600 DMA(nは約14)、PEG 800 DMA(nは約19)が挙げられ、ここで、数値(例えば400)は、二つのメタクリレート基を除外した当該分子のグリコール部分の平均分子量を、グラム/モル(すなわち、400g/mol)で表記したものである。特に望ましいPEG DMAはPEG 400 DMAである。
【0047】
そしてエトキシル化水酸基化合物(または使用され得るエトキシル化脂肪アルコール)のうち、適切なものは、以下の構造内のものから選択され得る。
【0048】
【化6】


式中、Cは、直鎖または分枝アルキルまたはアルケニル鎖であることができ、mは1~30の整数であり、例えば5~20であり、nは2~30の整数であり、例えば5~15であり、RはHまたはアルキル、例えばC1-6アルキルであってもよい。
【0049】
使用する場合、促進剤は、全組成物の約0.01重量%~約10重量%の範囲内の量で組成物中に含まれるべきであり、約0.1重量%~約0.5重量%の範囲が望ましく、約0.4重量%が特に望ましい。
【0050】
通常、安定剤パッケージもシアノアクリレート組成物中に含まれる。前記安定剤パッケージは、1種以上のフリーラジカル安定剤及びアニオン安定剤を含んでもよく、それぞれの内容及び量は、当業者に周知である。米国特許第5,530,037号及び第6,607,632号を参照すること。これにより、その各開示が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0051】
特定の酸性物質(クエン酸など)、チキソトロピー剤またはゲル化剤、増粘剤、染料、およびそれらの組み合わせなどの他の添加剤を本発明のシアノアクリレート組成物に含めることができる。
【0052】
促進剤およびこれらの添加剤のうち、以下の表に列挙されているものが、特に記載された量で、望ましい例である。
【表1】
【0053】
さらに、シアノアクリレート成分は、HC=C(CN)-COORによって表されるものなどの多くの置換基で選択され得るシアノアクリレートモノマーをさらに含むことができ、式中、Rは、C1~15アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール、アリルおよびハロアルキル基から選択される。望ましくは、シアノアクリレートモノマーは、メチルシアノアクリレート、エチル-2-シアノアクリレート、プロピルシアノアクリレート、アリルシアノアクリレート、およびこれらの組み合わせから選択できる。
【0054】
本発明の別の態様では、2つの基材を互いに結合する方法が提供され、この方法は、少なくとも1つの基材に上記組成物を塗布し、その後、接着剤が固定するのを可能にするのに十分な時間、基材を互いに合わせる工程を含む。
【0055】
本発明のさらに別の態様では、上記組成物の反応生成物が提供される。
【0056】
本発明のさらに別の態様では、そのように記載された組成物を調製する方法が提供される。この方法は、(a)β-アルコキシアルキルシアノアクリレート成分を提供し、(b)ブチルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレート、およびそれらの組み合わせから選択されるシアノアクリレート成分、(c)ゴム強化成分、(d)表面修飾成分および(e)接着促進剤を混合し、それらと混合することを含み、ここで望ましくは、ゴム強化成分は、約20重量%までの量でシアノアクリレート成分に溶解される。
【0057】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明される。
【実施例
【0058】
サンプルAは、以下の表Aに示されるような重量パーセントで成分から調製した。サンプルAは、n-ブチルシアノアクリレートを含んでいた。
【0059】
【表2】
【0060】
サンプルB~Dは、同様の方法で調製され、以下の表Bに示される。サンプルB~Dは、オクチルシアノアクリレートを含んでいた。
【0061】
【表3】
【0062】
サンプルA~Dのそれぞれに、MMBPをフリーラジカル安定剤として0.05重量パーセントの量で加えた。MMBPは、2,2-メチレンビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)である。
【0063】
次に、サンプルを、T剥離強度性能(N/mmで測定)のために室温および/または80℃の温度で、示される日数での期間にわたって、軟鋼基材およびアルミニウム基材で評価した。結果を以下の表CおよびDに示す。
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
これらの結果は、軟鋼基材の室温エージングのデータがほとんどまたは実質的に変化を示さないことを示しているようである。すなわち、軟鋼基材ではサンプルは、軟鋼基材のT剥離性能の維持を示している。しかし、アルミニウム基材の室温エージングのデータでは、性能の低下が示された。ブチルシアノアクリレートを有するサンプルとオクチルシアノアクリレートを有するサンプルとの間で性能に実質的な違いは見られない。
【0067】
時間の経過に伴う高温条件で、サンプルAは、軟鋼基材での経時的な性能の向上と、アルミニウム基材での経時的な性能の維持を示している。