(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】架橋ポリオレフィン分離膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/417 20210101AFI20231201BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20231201BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20231201BHJP
H01M 50/406 20210101ALI20231201BHJP
C08J 9/26 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
H01M50/417
H01M50/489
H01M50/403 B
H01M50/403 A
H01M50/406
H01M50/403 Z
C08J9/26 102
C08J9/26 CES
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022069417
(22)【出願日】2022-04-20
(62)【分割の表示】P 2020539760の分割
【原出願日】2019-09-11
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0108562
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0133814
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0059518
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウォン-シク・ペ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ-ソン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ビ-オ・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ア-ヨン・イ
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-144700(JP,A)
【文献】特開平11-172036(JP,A)
【文献】特開2004-79515(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-129583(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-111329(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/91620(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/126518(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/40-50/487
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S1)ポリオレフィン、希釈剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、開始剤及び架橋触媒を押出機に投入及び混合して反応押出する段階と、
(S2)前記反応押出されたシラングラフトされたポリオレフィン組成物をシート状に成形及び延伸する段階と、
(S3)前記延伸されたシートから前記希釈剤を抽出して多孔性膜を製造する段階と、
(S4)前記多孔性膜を熱固定する段階と、
(S5)前記熱固定された多孔性膜を水分存在下で架橋させる段階とを含み、
前記(S1)段階は
、前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラ
ンが時間差を置いて含量を分割して投入及び混合されるものであって、
前記(S1)段階が、
(S11)ポリオレフィン、第1希釈剤を押出機に投入及び混合する段階と、
(S12)前記押出機に第2希釈剤、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、開始剤及び架橋触媒を投入及び混合する段階と、
(S13)前記押出機に第3希釈剤及び第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを投入及び混合してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を反応押出する段階とを含み、
このとき、前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの沸点が前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの沸点よりも高く、
前記ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間に対する前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間の比率が、0.6~0.9であり、
前記ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間に対する前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間の比率が、0.2~0.5であり、
前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの含量が、前記ポリオレフィン、第1希釈剤、第2希釈剤及び第3希釈剤の総量100重量部を基準にして0.1~3.0重量部であり、
前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの含量が、前記ポリオレフィン、第1希釈剤、第2希釈剤及び第3希釈剤の総量100重量部を基準にして0.1~3.0重量部である、
架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項2】
前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは、沸点が150℃~200℃であり、
前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは、沸点が70℃~140℃である、請求項
1に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項3】
前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランと前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランとの重量比が、8:2~2:8である、請求項
1に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項4】
前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランが、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシランのうちいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物を含む、請求項
1に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項5】
前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランが、ビニルトリメトキシシラン、ビニルクロロ(ジメチル)シランのうちいずれか一つまたはこれらの混合物を含む、請求項
1に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項6】
前記第1希釈剤、第2希釈剤及び第3希釈剤が、それぞれ独立して、液体パラフィンオイル、固体パラフィンオイル、鉱油、ワックス、大豆油、フタル酸エステル類、芳香族エーテル類、炭素数10~20の脂肪酸類、炭素数10~20の脂肪酸アルコール類、脂肪酸エステル類またはこれらのうち2以上の混合物を含む、請求項
1に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項7】
前記第1希釈剤と第2希釈剤との重量比が、4:3~7:1.5である、請求項
1に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項8】
前記第1希釈剤と第3希釈剤との重量比が、4:3~7:1.5である、請求項
1に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項9】
前記(S5)段階が、60~90℃、50~85%の相対湿度下で6~18時間行われる、請求項
1に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項10】
(S1)ポリオレフィン、希釈剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、開始剤及び架橋触媒を押出機に投入及び混合して反応押出する段階と、
(S2)前記反応押出されたシラングラフトされたポリオレフィン組成物をシート状に成形及び延伸する段階と、
(S3)前記延伸されたシートから前記希釈剤を抽出して多孔性膜を製造する段階と、
(S4)前記多孔性膜を熱固定する段階と、
(S5)前記熱固定された多孔性膜を水分存在下で架橋させる段階とを含み、
前記(S1)段階は、前記開始剤が時間差を置いて含量を分割して投入及び混合されるものであって、
前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの総量(A)の前記開始剤の総量(B)に対する重量比(A/B)が80~600であり、
前記(S1)段階が、前記押出機に前記ポリオレフィンを投入する段階と、
前記押出機に前記希釈剤、開始剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン及び架橋触媒の一部を含む先投入組成物を先に投入及び混合する段階と、
時間差を置いて前記押出機に前記希釈剤、開始剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン及び架橋触媒の残部を含む後投入組成物を投入及び混合してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を反応押出する段階とを含み、
前記先投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)の前記開始剤(b)に対する重量比(a/b)が、100~700であり、
前記後投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)の前記開始剤(d)に対する重量比(c/d)が、前記先投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)の前記開始剤(b)に対する重量比(a/b)よりも小さい
、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項11】
前記後投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)の前記開始剤(d)に対する重量比(c/d)が20~400である、請求項
10に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項12】
前記先投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)の前記開始剤(b)に対する重量比(a/b)が、前記後投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)の前記開始剤(d)に対する重量比(c/d)の3~15倍である、請求項
10に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項13】
前記先投入組成物の投入後押出までの経過時間(t1)に対する前記後投入組成物の投入後押出までの経過時間(t2)の比率(t2/t1)が、0.3~0.8である、請求項
10に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項14】
前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランが、下記化学式1で表される化合物を含む、請求項
10に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【化1】
化学式1において、前記R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルコキシ基または炭素数1~10のアルキル基であり、このとき、前記R
1、R
2及びR
3のうち少なくとも一つはアルコキシ基であり、
前記Rは、ビニル基、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基または炭素数1~20のアルキル基であり、このとき、前記アルキル基の少なくとも一つの水素がビニル基、アクリル基またはメタクリル基で置換される。
【請求項15】
前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランが、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、(3-メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-メタクリルオキシプロピル)トリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジエトキシシラン、またはこれらのうち少なくとも2以上の混合物を含む、請求項
14に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項16】
前記開始剤が、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)、ベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、クミルペルオキシド、過酸化水素、過硫酸カリウム、またはこれらのうち少なくとも2以上の混合物を含む、請求項1
または10に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項17】
前記希釈剤が、液体パラフィンオイル、固体パラフィンオイル、鉱油、ワックス、大豆油、フタル酸エステル類、芳香族エーテル類、炭素数10~20の脂肪酸類、炭素数10~20の脂肪酸アルコール類、脂肪酸エステル類、またはこれらのうち少なくとも2以上の混合物を含む、請求項1
または10に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項18】
前記先投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)の前記開始剤(b)に対する重量比(a/b)が、300~600である、請求項
10に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項19】
前記後投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)の前記開始剤(d)に対する重量比(c/d)が、57.1~66.7である、請求項
10に記載の架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ポリオレフィン分離膜及びその製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2018年9月11日出願の韓国特許出願第10-2018-0108562号、2018年11月2日出願の韓国特許出願第10-2018-0133814号及び2019年5月21日出願の韓国特許出願第10-2019-0059518号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が益々高まっている。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡がるとともに、電気化学素子の研究と開発に対する努力が益々具体化されている。電気化学素子はこのような面から最も注目されている分野であり、なかでも充放電可能な二次電池の開発には関心が集まっている。近年はこのような電池の開発において、容量密度及び比エネルギーを向上させるために新たな電極と電池の設計に関連する研究開発が行われている。
【0004】
現在適用されている二次電池のうち1990年代初に開発されたリチウム二次電池は、水溶液電解液を使用するNi-MH、Ni-Cd、硫酸-鉛電池などの従来の電池に比べて、作動電圧が高くてエネルギー密度が格段に高いという長所から脚光を浴びている。
【0005】
このようなリチウム二次電池は、正極、負極、電解液、分離膜から構成され、なかでも分離膜には、正極と負極とを分離して電気的に絶縁させるための絶縁性、及び高い気孔度に基づいてリチウムイオンの透過性を高めるために高いイオン伝導度が求められる。
【0006】
このような分離膜では、シャットダウン(shut down)温度とメルトダウン(melt down)温度との差が大きいと、分離膜を含むリチウム二次電池の安全性が確保される。両者の間隔を広げるためには、シャットダウン温度は減少する方向に、メルトダウン温度は増加する方向に調節しなければならない。メルトダウン温度が高いほど、分離膜が溶融する温度が高くて安定性が増大でき、シャットダウン温度が低いほど、気孔閉塞がより低い温度で起き得る。シャットダウン温度は、分離膜の光透過度によって判断できるが、従来の架橋ポリオレフィン多孔性膜の製造方法では光透過度を高める効果が僅かであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、メルトダウン温度が高いだけでなく、ダイドルール(die drool)の発生が防止されて工程性が改善された架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法及びそれによって製造された分離膜を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、分離膜の光透過度が高くて安全性が確保された架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法及びそれによって製造された分離膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、下記具現例による架橋ポリオレフィン分離膜を提供する。
【0010】
第1具現例は、
架橋ポリオレフィン分離膜であって、
前記分離膜の四辺を固定し、130℃で30分間放置した後、380nm以上700nm以下領域の光透過度の平均値が30%以上である、架橋ポリオレフィン分離膜に関する。
【0011】
第2具現例は、第1具現例において、
前記分離膜の四辺を固定し、130℃で30分間放置した後、380nm以上700nm以下領域の光透過度の平均値が58%以上である、架橋ポリオレフィン分離膜に関する。
【0012】
本発明の他の一態様は、下記具現例による架橋ポリオレフィン分離膜を提供する。
【0013】
第3具現例は、
架橋ポリオレフィン分離膜であって、
前記架橋ポリオレフィン分離膜を構成するポリオレフィン主鎖内の炭素数1000を基準にして0.5~10個のグラフトされたユニットを有する、架橋ポリオレフィン分離膜に関する。
【0014】
第4具現例は、第3具現例において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜を構成するポリオレフィン主鎖内の炭素数1000を基準にして1.0~8.0個のグラフトされたユニットを有する、架橋ポリオレフィン分離膜に関する。
【0015】
第5具現例は、第3または第4具現例において、
前記グラフトされたユニットがシラングラフトされたユニットである、架橋ポリオレフィン分離膜に関する。
【0016】
第6具現例は、上述した具現例のいずれか一具現例において、
前記架橋ポリオレフィン分離膜の厚さが4.0μm~12.0μmである、架橋ポリオレフィン分離膜に関する。
【0017】
本発明のさらに他の一態様は、下記具現例による架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法を提供する。
【0018】
第7具現例は、
(S1)ポリオレフィン、希釈剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、開始剤及び架橋触媒を押出機に投入及び混合して反応押出する段階と、
(S2)前記反応押出されたシラングラフトされたポリオレフィン組成物をシート状に成形及び延伸する段階と、
(S3)前記延伸されたシートから前記希釈剤を抽出して多孔性膜を製造する段階と、
(S4)前記多孔性膜を熱固定する段階と、
(S5)前記熱固定された多孔性膜を水分存在下で架橋させる段階とを含み、
前記(S1)段階は、前記開始剤及び前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランのうち1種以上が時間差を置いて含量を分割して投入及び混合されるものであって、
前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの総量(A)の前記開始剤の総量(B)に対する重量比(A/B)が80~600であるか、または、
前記押出機に先投入される炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの沸点が、後投入される炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの沸点よりも高い、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0019】
第8具現例は、第7具現例において、
前記(S1)段階が、(S11)ポリオレフィン、第1希釈剤を押出機に投入及び混合する段階と、
(S12)前記押出機に第2希釈剤、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、開始剤及び架橋触媒を投入及び混合する段階と、
(S13)前記押出機に第3希釈剤及び第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを投入及び混合してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を反応押出する段階とを含み、
このとき、前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの沸点が前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの沸点よりも高い、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0020】
第9具現例は、第8具現例において、
前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは、沸点が150℃~200℃であり、
前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは、沸点が70℃~140℃である、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0021】
第10具現例は、上述した具現例のいずれか一具現例において、
前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランと前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランとの重量比が8:2~2:8である、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0022】
第11具現例は、上述した具現例のいずれか一具現例において、
前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランが、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシランのうちいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物を含む、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0023】
第12具現例は、上述した具現例のいずれか一具現例において、
前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランが、ビニルトリメトキシシラン、ビニルクロロ(ジメチル)シランのうちいずれか一つまたはこれらの混合物を含む、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0024】
第13具現例は、上述した具現例のいずれか一具現例において、
前記第1希釈剤、第2希釈剤及び第3希釈剤が、それぞれ独立して、液体パラフィンオイル、固体パラフィンオイル、鉱油、ワックス、大豆油、フタル酸エステル類、芳香族エーテル類、炭素数10~20の脂肪酸類、炭素数10~20の脂肪酸アルコール類、脂肪酸エステル類またはこれらのうち2以上の混合物を含む、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0025】
第14具現例は、上述した具現例のいずれか一具現例において、
前記第1希釈剤と第2希釈剤との重量比が、4:3~7:1.5である、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0026】
第15具現例は、上述した具現例のいずれか一具現例において、
前記第1希釈剤と第3希釈剤との重量比が、4:3~7:1.5である、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0027】
第16具現例は、上述した具現例のいずれか一具現例において、
前記ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間に対する前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間の比率が、0.6~0.9である、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0028】
第17具現例は、上述した具現例のいずれか一具現例において、
前記ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間に対する前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間の比率が、0.2~0.5である、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0029】
第18具現例は、上述した具現例のいずれか一具現例において、
前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの含量が、前記ポリオレフィン、第1希釈剤、第2希釈剤及び第3希釈剤の総量100重量部を基準にして0.1~3.0重量部である、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0030】
第19具現例は、上述した具現例のいずれか一具現例において、
前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの含量が、前記ポリオレフィン、第1希釈剤、第2希釈剤及び第3希釈剤の総量100重量部を基準にして0.1~3.0重量部である、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0031】
第20具現例は、上述した具現例のいずれか一具現例において、
前記(S5)段階が、60~90℃、50~85%の相対湿度下で6~18時間行われる、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0032】
第21具現例は、第7具現例において、
前記(S1)段階が、前記押出機に前記開始剤を時間差を置いて含量を分割して投入及び混合し、
前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの総量(A)の前記開始剤の総量(B)に対する重量比(A/B)が80~600である、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0033】
第22具現例は、第21具現例において、
前記(S1)段階で、前記押出機に前記開始剤を前記希釈剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン及び架橋触媒のうち1種以上と一緒に投入するが、時間差を置いて含量を分割して投入及び混合する、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0034】
第23具現例は、第21または第22具現例において、
前記(S1)段階が、前記押出機に前記ポリオレフィンを投入する段階と、
前記押出機に前記希釈剤、開始剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン及び架橋触媒の一部を含む先投入組成物を先に投入及び混合する段階と、
時間差を置いて前記押出機に前記希釈剤、開始剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン及び架橋触媒の残部を含む後投入組成物を投入及び混合してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を反応押出する段階とを含み、
前記先投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)の前記開始剤(b)に対する重量比(a/b)が100~700であり、
前記後投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)の前記開始剤(d)に対する重量比(c/d)が、前記先投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)の前記開始剤(b)に対する重量比(a/b)よりも小さい、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0035】
第24具現例は、第23具現例において、
前記後投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)の前記開始剤(d)に対する重量比(c/d)が20~400である、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0036】
第25具現例は、第23または第24具現例において、
前記先投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)の前記開始剤(b)に対する重量比(a/b)が、前記後投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)の前記開始剤(d)に対する重量比(c/d)の3~15倍である、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0037】
第26具現例は、第23~第25具現例のいずれか一具現例において、
前記先投入組成物の投入後押出までの経過時間(t1)に対する前記後投入組成物の投入後押出までの経過時間(t2)の比率(t2/t1)が、0.3~0.8である、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0038】
第27具現例は、第21~第26具現例のいずれか一具現例において、
前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランが、下記化学式1で表される化合物を含む、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0039】
【0040】
化学式1において、前記R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルコキシ基または炭素数1~10のアルキル基であり、このとき、前記R1、R2及びR3のうち少なくとも一つはアルコキシ基であり、
前記Rはビニル基、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基または炭素数1~20のアルキル基であり、このとき、前記アルキル基の少なくとも一つの水素がビニル基、アクリル基またはメタクリル基で置換される。
【0041】
第28具現例は、第27具現例において、
前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランが、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、(3-メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-メタクリルオキシプロピル)トリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジエトキシシラン、またはこれらのうち少なくとも2以上の混合物を含む、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0042】
第29具現例は、第7~第28具現例のいずれか一具現例において、
前記開始剤が、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)、ベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、クミルペルオキシド、過酸化水素、過硫酸カリウム、またはこれらのうち少なくとも2以上の混合物を含む、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0043】
第30具現例は、第7~第29具現例のいずれか一具現例において、
前記希釈剤が、液体パラフィンオイル、固体パラフィンオイル、鉱油、ワックス、大豆油、フタル酸エステル類、芳香族エーテル類、炭素数10~20の脂肪酸類、炭素数10~20の脂肪酸アルコール類、脂肪酸エステル類、またはこれらのうち少なくとも2以上の混合物を含む、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0044】
第31具現例は、第23具現例において、
前記先投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)の前記開始剤(b)に対する重量比(a/b)が300~600である、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0045】
第32具現例は、第23具現例において、
前記後投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)の前記開始剤(d)に対する重量比(c/d)が57.1~66.7である、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0046】
本発明の一態様による架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法は、シラン水架橋反応工程を経ることで、メルトダウン温度が高い架橋ポリオレフィン分離膜を提供することができる。
【0047】
本発明の一態様による架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法は、沸点の高い第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを先投入し、その後沸点の低い第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを後投入することで、耐熱特性及び加工性が改善され、ダイドルールの発生が防止された架橋ポリオレフィン分離膜を提供することができる。
【0048】
本発明の一態様による架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法は、開始剤の総含量に対する炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの総含量を制御して適切なSiグラフト率でシラングラフティングが形成されるようにすることで、分離膜の光透過度の増加によって確認されるように、分離膜の安全性が向上して工程性の面でも有利であることが証明された。これによって、安全性が改善された分離膜を提供することができる。また、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの過剰使用によるダイドルール現象を抑制することができる。
【0049】
本発明の一態様による架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法は、開始剤に対する炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの重量比及び押出機への投入時点を制御して適切なSiグラフト率でシラングラフティングが形成されるようにすることで、分離膜の光透過度の増加によって確認されたように、安全性が確保された架橋ポリオレフィン分離膜を提供することができ、工程性の面でも有利であることが証明された。また、開始剤によるポリオレフィン直接架橋反応による副反応を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明を詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0051】
本明細書の全体において、ある部分が他の部分と「連結」されるとするとき、これは「直接的な連結」だけではなく、他の素子を介在した「間接的な連結」も含む。また、「連結」とは、物理的連結だけでなく、電気化学的連結も含む。
【0052】
本明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0053】
また、本明細書で使用される「含む」とは、言及した形状、数値、段階、動作、部材、要素及び/またはこれらのグループの存在を特定するものであって、一つ以上の他の形状、数字、動作、部材、要素及び/またはグループの存在または付加を排除するものではない。
【0054】
本明細書の全体で使われる用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値でまたはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために正確又は絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使われる。
【0055】
本明細書の全体において、マーカッシュ形式の表面に含まれた「これらの組合せ」との用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群より選択される一つ以上の混合または組合せを意味するものであって、記載された構成要素からなる群より選択される一つ以上を含むことを意味する。
【0056】
本明細書の全体において、「A及び/またはB」との記載は「A、Bまたはこれら全て」を意味する。
【0057】
本発明は、架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法及び架橋ポリオレフィン分離膜に関する。
【0058】
リチウム二次電池に使用される分離膜は、シャットダウン温度とメルトダウン温度との差が大きいと優れた安全性を有する。このとき、両者の間隔を広げるためには、シャットダウン温度は減少する方向に、メルトダウン温度は増加する方向に調節しなければならない。
【0059】
メルトダウン温度を高める方法としては、ポリオレフィン、希釈剤に炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを添加してシラングラフトされたポリオレフィン組成物から分離膜を製造する方法がある。
【0060】
しかし、このように上記の物質を押出機に一度に投入及び混合すると、製造過程でダイドルール現象が発生するなど工程の制御が困難であり、これによって外観が不均一な分離膜が得られる問題がある。
【0061】
このような点に着目して本発明の一実施形態では、高いメルトダウン温度を有しながらもダイドルール現象を減少させて、工程性及び加工性を確保した架橋ポリオレフィン分離膜を提供しようとする。
【0062】
一方、シャットダウン温度が低いほど、気孔閉塞がより低い温度で生じ得る。このように気孔閉塞が低い温度で生じると、電気化学素子の安全性を向上できる。このような背景から、低いシャットダウン温度を有する分離膜が求められている。シャットダウン温度は光透過度によって判断可能である。しかし、従来のように、ポリオレフィン、希釈剤、開始剤、架橋剤及び架橋触媒を一度に投入すると、相変らず分離膜の光透過度が低くて改善が必要である。
【0063】
このような点に着目して本発明の一態様では、高い光透過度を有して安全性が向上した架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法及びそれによって製造された架橋ポリオレフィン分離膜を提供しようとする。
【0064】
本発明の一態様による架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法は、
(S1)ポリオレフィン、希釈剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、開始剤及び架橋触媒を押出機に投入及び混合して反応押出する段階と、
(S2)前記反応押出されたシラングラフトされたポリオレフィン組成物をシート状に成形及び延伸する段階と、
(S3)前記延伸されたシートから前記希釈剤を抽出して多孔性膜を製造する段階と、
(S4)前記多孔性膜を熱固定する段階と、
(S5)前記熱固定された多孔性膜を水分存在下で架橋させる段階とを含み、
前記(S1)段階は、前記開始剤及び前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランのうち1種以上が時間差を置いて含量を分割して投入及び混合されるものであって、
前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの総量(A)の前記開始剤の総量(B)に対する重量比(A/B)が80~600であるか、または、
前記押出機に先投入される炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの沸点が、後投入される炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの沸点よりも高いことを特徴とする。
【0065】
以下、本発明による架橋ポリオレフィン分離膜の製造方法について段階毎に説明する。
【0066】
本発明の一態様は、前記(S1)段階で投入される開始剤及び炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランのうち少なくとも1種を分割して投入及び混合する。このとき、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを分割投入する場合、押出機に先投入される炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの沸点が、後投入される炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの沸点よりも高い。一方、開始剤を分割投入する場合は、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの総含量に対する開始剤の総含量の重量比が所定数値範囲に制御される。
【0067】
本発明の具体的な一実施形態において、前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを時間差を置いて分割投入することができる。以下、より具体的に説明する。
【0068】
炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを分割投入する場合、まず、押出機にポリオレフィン、希釈剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、開始剤及び架橋触媒を投入及び混合することができる。または、押出機にポリオレフィン、希釈剤を先に投入し(S11)、その後、前記押出機に第2希釈剤、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、開始剤及び架橋触媒を投入及び混合してもよい(S12)。本発明の一態様において、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを押出機内の溶融物と効果的に混練させるため、先にポリオレフィンと第1希釈剤を押出機に投入した後、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを投入するか、または、ポリオレフィンと希釈剤を先に投入した後、希釈剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、開始剤及び架橋触媒を投入及び混合し得る。
【0069】
従来は、ポリオレフィン、希釈剤、開始剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(架橋剤)及び架橋触媒などを押出機に一度に投入及び混合した後、反応押出してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を製造した。
【0070】
しかし、このような方法では、分離膜の製造過程でダイドルールによる長期工程性に問題が生じた。
【0071】
そこで、本発明者らは、架橋ポリオレフィン分離膜の工程性を改善するために研究した結果、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの沸点を考慮して、前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランが押出機内に滞留する時間を制御することで、高いメルトダウン温度を有しながらもダイドルール現象による外観の問題を改善した分離膜を完成した。
【0072】
本発明の具体的な一実施形態において、前記(S1)段階は、(S11)ポリオレフィン、第1希釈剤を押出機に投入及び混合する段階と、
(S12)前記押出機に第2希釈剤、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、開始剤及び架橋触媒を投入及び混合する段階と、
(S13)前記押出機に第3希釈剤及び第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを投入及び混合してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を反応押出する段階とを含み、
このとき、前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの沸点が前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの沸点よりも高いものであり得る。
【0073】
このとき、前記ポリオレフィンは後述の通りである。
【0074】
また、本発明において、希釈剤は後述の通りである。
【0075】
一方、本発明の一態様において、前記第1希釈剤、第2希釈剤、第3希釈剤は、後述する希釈剤の説明で代替され得る。このとき、第1希釈剤、第2希釈剤、第3希釈剤のそれぞれは相互同一であるか、または、相異なり得る。
【0076】
本発明の具体的な一実施形態において、前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは、シラン架橋反応を起こす架橋剤であって、ビニル基によってポリオレフィンにグラフト化し、アルコキシ基によって水架橋反応が行われてポリオレフィンを架橋させる役割をする。
【0077】
本発明において、前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは、後述する第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランに比べて沸点が高いものである。本発明において、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランとは、押出機に先投入される炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを意味する。また、第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランとは、後投入される炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを意味する。
【0078】
第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランのように沸点の高いビニルシランを使用する場合、押出機内の高温の条件下で揮発する炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの量を減少させることができる。これによって、シートを押出するとき、フューム(fume)の発生によるダイドルールが減少して工程性を向上できる。しかし、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは分子量が大きいため、ポリオレフィンとの反応性が落ちる問題がある。
【0079】
一方、後述するように、第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを使用する場合は、ポリオレフィンとシランとのグラフト率が高い。これは第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの低い分子量による分子の高いモビリティーに起因すると考えられる。しかし、第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの場合、押出機内の滞留時間が長いと、ダイドルールのような外観問題を引き起こす。
【0080】
そこで、本発明者は、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの沸点と炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランが押出機内に滞留する時間を同時に制御することで、高いメルトダウン温度を有しながらもダイドルール現象が減少して、工程性及び加工性が改善された架橋ポリオレフィン分離膜を提供しようとする。
【0081】
本発明の具体的な一実施形態において、前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは、沸点が150℃~200℃、155℃~190℃または160℃~180℃であり得る。
【0082】
本発明の具体的な一実施形態において、前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは、ビニルトリエトキシシラン(沸点:160℃)、ビニルトリイソプロポキシシラン(沸点:180℃)、ビニルトリアセトキシシラン(沸点:175℃)、またはこれらのうち2種以上の混合物を含むことができる。
【0083】
本発明の具体的な一実施形態において、前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの含量は、前記ポリオレフィン、第1希釈剤、第2希釈剤及び第3希釈剤の総量100重量部を基準にして0.1~3.0重量部、0.2~2.0重量部または0.3~1.5重量部であり得る。前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの含量が上記の数値範囲を満足する場合、アルコキシ基含有シランの含量が少なくてグラフト率が低下し架橋が低下するか、または、アルコキシ基含有シラン含量が多くて未反応シランが残存し押出シートの外観が不良になる問題などを防止することができる。
【0084】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間に対する前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間の比率は、0.6~0.9、0.65~0.85または0.7~0.8であり得る。第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの押出機内の滞留時間が上記の範囲を満足する場合、押出時間が短過ぎて第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランがポリオレフィンに十分グラフトできない問題を減らし、ポリオレフィンと第1希釈剤とをまず混練することで、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランをポリオレフィンとより効果的に混練させることができる。
【0085】
その後、前記押出機に第3希釈剤及び第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを投入及び混合してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を反応押出することができる(S13)。
【0086】
本発明の具体的な一実施形態において、前記第3希釈剤は上述した第1希釈剤の説明で代替され得る。
【0087】
本発明の具体的な一実施形態において、前記第3希釈剤は上述した第1希釈剤及び第2希釈剤とそれぞれ同一であるかまたは相異なり得る。
【0088】
本発明の具体的な一実施形態において、前記第1希釈剤、第2希釈剤、及び第3希釈剤の総含量は、前記ポリオレフィン100重量部を基準にして100~350重量部、125~300重量部または150~250重量部であり得る。第1希釈剤、第2希釈剤及び第3希釈剤の総含量が上記の数値範囲を満足する場合、ポリオレフィンの含量が多いことによる、気孔度が減少し気孔のサイズが小さくなって気孔同士で相互連結されず透過度が大幅に低下し、ポリオレフィン組成物の粘度が上がって押出負荷が上昇し加工が困難であるという問題を防止することができ、また、ポリオレフィンの含量が少ないことによる、ポリオレフィンと第1希釈剤、第2希釈剤及び第3希釈剤との混練性が低下してポリオレフィンが第1希釈剤、第2希釈剤及び第3希釈剤に熱力学的に混練されず、ゲル形態で押出されることで生じる延伸時の破断及び厚さのバラツキなどの問題を減少させることができる。
【0089】
本発明の具体的な一実施形態において、前記第1希釈剤と第2希釈剤との重量比は4:3~7:1.5であり得る。前記第1希釈剤と第3希釈剤との重量比は4:3~7:1.5であり得る。第1希釈剤と第2希釈剤と第3希釈剤との重量比が上記の数値範囲を満足する場合、粘度の高いポリオレフィンと第1希釈剤との事前混練が可能であり、架橋添加剤を第2希釈剤、第3希釈剤と一緒に押出機の内部に円滑に投入することができる。
【0090】
本発明では、ポリオレフィンの混練性を高めるため、まず第1希釈剤をポリオレフィンと同時に投入することができる。その後、押出機に第2希釈剤及び第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを投入し、後述する時間差を置いて第3希釈剤及び第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを押出機に追加的に投入することができる。
【0091】
本発明において、前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは、シラン架橋反応を起こす架橋剤であって、ビニル基によってポリオレフィンにグラフト化し、アルコキシ基によって水架橋反応が行われてポリオレフィンを架橋させる役割をする。ただし、本発明の一態様において、前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは、上述した第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランに比べて沸点が低いものである。
【0092】
本発明の具体的な一実施形態において、前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは、沸点が70℃~140℃、90℃~135℃または100℃~130℃であり得る。
【0093】
本発明の具体的な一実施形態において、前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは、具体的には、ビニルトリメトキシシラン(沸点:123℃)、ビニル(クロロ(ジメチル)シラン(沸点:83℃)またはこれらの混合物を含むことができる。
【0094】
本発明の具体的な一実施形態において、前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの含量は、前記ポリオレフィン、第1希釈剤、第2希釈剤及び第3希釈剤の総量100重量部を基準にして0.1~3.0重量部、0.2~2.0重量部または0.3~1.5重量部であり得る。前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの含量が上記の数値範囲を満足する場合、アルコキシ基含有シランの含量が少なくてグラフト率が低下し架橋が低下するか、または、アルコキシ基含有シラン含量が多くて未反応シランが残存し押出シートの外観が不良になる問題などを防止することができる。
【0095】
本発明の具体的な一実施形態において、前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランと前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランとの重量比は、8:2~2:8、3:7~7:3または4:6~6:4であり得る。炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの重量比が上記の範囲を満足する場合、沸点が相対的に高い第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランと沸点が相対的に低い第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランとがすべてポリオレフィンの架橋に寄与し、メルトダウン温度をさらに向上させることができる。
【0096】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリオレフィン及び第1希釈剤の投入後押出までの経過時間に対する前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間の比率は、0.2~0.5、0.25~0.45または0.3~0.4であり得る。第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの滞留時間が上記の範囲を満足する場合、押出機内の第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの滞留時間が長過ぎて外観不良を引き起こす問題を防止でき、逆に押出機内の第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの滞留時間が短過ぎてポリオレフィンとグラフトされない問題を低減させることができる。
【0097】
本発明では、上述したように、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランが押出機に先に投入されるため、押出機に滞留する時間が第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランが押出機に滞留する時間に比べて長く制御される。
【0098】
すなわち、本発明では、ポリオレフィンとの反応性の低い第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは、ポリオレフィンと十分反応するように滞留時間を長く制御する。一方、沸点の低い第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは、押出機内の滞留時間が長いとフュームが多く発生してT-ダイでダイドルールによる外観問題を引き起こすため、押出機内の滞留時間を短く制御する。
【0099】
本発明の具体的な一実施形態において、前記開始剤は、ラジカルの生成が可能な開始剤であれば制限なく使用可能である。前記開始剤の非制限的な例としては、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)、ベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、クミルペルオキシド、過酸化水素、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0100】
本発明の具体的な一実施形態において、前記開始剤の含量は、前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン及び後述する第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの総量100重量部を基準にして、0.1~20重量部、0.5~10重量部または1~5重量部であり得る。前記開始剤の含量が上記の数値範囲を満足する場合、開始剤の含量が低くてシラングラフト率が低下するか、または、開始剤の含量が多くて押出機内でポリオレフィン同士が架橋する問題を防止することができる。
【0101】
本発明の他の一態様では、前記(S1)段階が、前記開始剤を時間差を置いて含量を分割して投入及び混合するものであり、前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの総量(A)の前記開始剤の総量(B)に対する重量比(A/B)が80~600である。
【0102】
従来のように、押出機にポリオレフィン、開始剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン及び架橋触媒を一度に投入する場合、開始剤は炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン及びポリオレフィンの両方に作用し得る。具体的には、開始剤によって生成された炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン内のラジカルはポリオレフィンと反応してシラングラフト反応を起こし得る。また、開始剤によって生成されたポリオレフィン内のラジカルは、他のポリオレフィンと反応してポリオレフィン同士の直接架橋を起こし得る。押出機内で前記シラングラフト反応とポリオレフィン直接架橋反応とが競争的に起きるようになる。
【0103】
前記シラングラフト反応は、シラングラフトされたポリオレフィン組成物の溶融点を低めてシャットダウン温度を下げ、光透過度を高めるため、促進しなければならない。一方、直接架橋反応は光透過度を高める効果は期待し難いため、最小化しなければならない。
【0104】
本発明者らはこのような点に着目し、押出機に投入される開始剤を時間差を置いて含量を分割して投入及び混合し、このとき、前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(A)の前記開始剤(B)に対する重量比(A/B)を80~600に制御した。
【0105】
特に、シラングラフト反応は促進し、ポリオレフィン同士の直接架橋は最小化できるという点から、希釈剤及び炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの含量を分割して投入及び混合することが望ましい。
【0106】
本発明の具体的な一実施形態において、前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(A)の前記開始剤(B)に対する重量比(A/B)は、80~600、100~500、100~400または125~350であり得る。
【0107】
前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(A)の前記開始剤(B)に対する重量比(A/B)が80未満であると、光透過度を高める効果が僅かであり得る。前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(A)の前記開始剤(B)に対する重量比(A/B)が600を超過すると、押出機内に存在するビニル基含有ビニルシランが増加するかまたはダイリップ(die lip)からドルールが発生するなどの問題が生じ得る。
【0108】
本発明の具体的な一実施形態において、前記(S1)段階で、前記開始剤を前記押出機に前記希釈剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン及び架橋触媒のうち1種以上と一緒に投入するが、時間差を置いて含量を分割して投入及び混合し得る。
【0109】
本発明の具体的な一実施形態において、
前記(S1)段階は、前記押出機に前記ポリオレフィンを投入する段階と、
前記押出機に前記希釈剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、開始剤及び架橋触媒の一部を含む先投入組成物を先に投入及び混合する段階と、
時間差を置いて前記押出機に前記希釈剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、開始剤及び架橋触媒の残部を含む後投入組成物を投入及び混合してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を反応押出する段階とを含むことができる。
【0110】
このとき、前記先投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)の前記開始剤(b)に対する重量比(a/b)は、100~700であり、前記後投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)の前記開始剤(d)に対する重量比(c/d)は、前記先投入組成物内における前記ビニル基含有ビニルシランの前記開始剤に対する重量比よりも小さいものであり得る。
【0111】
本発明では、上記のように、押出機内の投入口を最小2個以上使用して、開始剤に対する炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの比率を調節することができる。このとき、第1ホッパーに先投入される組成物内における開始剤(b)に対する炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)の重量比(a/b)を、第2ホッパーに後投入される組成物内における開始剤(d)に対する炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)の重量比(c/d)よりも大きく制御することで、シラングラフト反応を極大化してポリオレフィン間の直接架橋反応を最小化することができる。
【0112】
本発明の具体的な一実施形態において、前記先投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)の前記開始剤(b)に対する重量比(a/b)は、前記後投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)の前記開始剤(d)に対する重量比(c/d)の3~15倍、3.5~13倍または4.49~10.5倍であり得る。
【0113】
上記の数値範囲内であると、押出加工時の圧力変化を制御し、混練溶融物の移送能力を最適化することができる。
【0114】
本発明の具体的な一実施形態において、前記先投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)の前記開始剤(b)に対する重量比(a/b)は、100~700、200~650または300~600であり得る。上記の数値範囲内で、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランのグラフト率を極大化することができる。
【0115】
本発明の具体的な一実施形態において、前記後投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)の前記開始剤(d)に対する重量比(c/d)は、20~400、30~300、40~250または57.1~66.7であり得る。上記の数値範囲内で、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランのグラフト率を極大化することができる。
【0116】
本発明の具体的な一実施形態において、前記先投入組成物の投入後押出までの経過時間(t1)に対する前記後投入組成物の投入後押出までの経過時間(t2)の比率(t2/t1)は、0.3~0.8、0.4~0.75または0.5~0.7であり得る。上記の経過時間内で、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランのグラフト速度を制御して副反応を抑制することができる。
【0117】
上記のような工程条件(例えば、a/b、c/d、t2/t1)を満たす場合、押出機を通過して製造された押出シートは、ポリオレフィン主鎖内の炭素数1000を基準にして0.5~10.0個、1.0~8.0個または1.4~8.0個の炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランがグラフトされたユニットを含むことができる。炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランのグラフトされたユニットの個数が上記の数値範囲であると、分離膜の光透過度を増大させることができる
【0118】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリオレフィンは、ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリブチレン;ポリペンテン;ポリヘキセン;ポリオクテン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、4-メチルペンテン、ヘキセン及びオクテンのうち2種以上の共重合体;またはこれらの混合物であり得る。
【0119】
特に、前記ポリエチレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などがあり、なかでも結晶度が高くて樹脂の溶融点が高い高密度ポリエチレンが最も望ましい。
【0120】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリオレフィンの重量平均分子量は、200,000~1,000,000、220,000~700,000または250,000~500,000であり得る。本発明では200,000~1,000,000の重量平均分子量を有する高分子量のポリオレフィンを分離膜製造の出発物質として使用することで、分離膜の均一性及び製膜工程性を確保しながら、最終的に強度及び耐熱性に優れた分離膜を得ることができる。
【0121】
本発明の具体的な一実施形態において、前記希釈剤としては、湿式分離膜の製造に一般に使用される液体パラフィンオイル、固体パラフィンオイル、ワックス、大豆油などを使用することができる。
【0122】
本発明の具体的な一実施形態において、前記希釈剤としては、ポリオレフィンと液-液相分離可能な希釈剤も使用可能であり、例えば、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレートなどのフタル酸エステル類;ジフェニルエーテル、ベンジルエーテルなどの芳香族エーテル類;パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの炭素数10~20の脂肪酸類;パルミチン酸アルコール、ステアリン酸アルコール、オレイン酸アルコールなどの炭素数10~20の脂肪酸アルコール類;パルミチン酸モノ-、ジ-またはトリエステル、ステアリン酸モノ-、ジ-またはトリエステル、オレイン酸モノ-、ジ-またはトリエステル、リノール酸モノ-、ジ-またはトリエステルなどの、脂肪酸基の炭素数が4~26である飽和及び不飽和脂肪酸、若しくは、不飽和脂肪酸の二重結合がエポキシで置換された1個または2個以上の脂肪酸が、ヒドロキシ基が1~8個であって炭素数が1~10であるアルコールとエステル結合された脂肪酸エステル類;であり得る。
【0123】
前記希釈剤は、上述した成分を単独でまたは2種以上含む混合物で使用することができる。
【0124】
本発明の具体的な一実施形態において、前記希釈剤の総含量は、前記ポリオレフィン100重量部を基準にして100~350重量部、125~300重量部または150~250重量部であり得る。希釈剤の総含量が上記の数値範囲を満足すると、ポリオレフィンの含量が多いことによる、気孔度が減少し気孔のサイズが小さくなって気孔同士で相互連結されず透過度が大幅に低下し、ポリオレフィン組成物の粘度が上がって押出負荷が上昇し加工が困難であるという問題を防止することができる。また、ポリオレフィンの含量が少ないことによる、ポリオレフィンと希釈剤との混練性が低下してポリオレフィンが希釈剤に熱力学的に混練されず、ゲル形態で押出されることで生じる延伸時の破断及び厚さのバラツキなどの問題を減少させることができる。
【0125】
本発明の具体的な一実施形態において、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは、シラン架橋反応を起こす架橋剤であって、ビニル基によってポリオレフィンにグラフト化し、アルコキシ基によって水架橋反応が行われてポリオレフィンを架橋させる役割をする。
【0126】
本発明の具体的な一実施形態において、下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0127】
【0128】
化学式1において、前記R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルコキシ基または炭素数1~10のアルキル基であり、このとき、前記R1、R2及びR3のうち少なくとも一つはアルコキシ基であり、
【0129】
前記Rはビニル基、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基または炭素数1~20のアルキル基であり、このとき、前記アルキル基の少なくとも一つの水素がビニル基、アクリル基またはメタクリル基で置換される。
【0130】
一方、前記Rは、追加的に、アミノ基、エポキシ基またはイソシアネート基をさらに含むことができる。
【0131】
本発明の具体的な一実施形態において、前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、(3-メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-メタクリルオキシプロピル)トリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジエトキシシラン、またはこれらのうち少なくとも2以上の混合物を含むことができる。
【0132】
本発明の具体的な一実施形態において、前記開始剤は、ラジカル生成が可能な開始剤であれば制限なく使用可能である。前記開始剤の非制限的な例としては、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)、ベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、クミルペルオキシド、過酸化水素、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0133】
本発明の具体的な一実施形態において、前記架橋触媒は、シラン架橋反応を促進させるために添加されるものである。
【0134】
本発明の具体的な一実施形態において、前記架橋触媒としては、錫、亜鉛、鉄、鉛、コバルトなどの金属のカルボン酸塩、有機塩基、無機酸または有機酸を使用することができる。前記架橋触媒の非制限的な例として、前記金属のカルボン酸塩としてはジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、酢酸第一錫、カプリル酸第一錫、ナフテン酸亜鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルトなどがあり、前記有機塩基としてはエチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジンなどがあり、前記無機酸としては硫酸、塩酸などがあり、前記有機酸としてはトルエンスルホン酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸などがあり得る。また、前記架橋触媒は、これらを単独でまたは2以上を混合して使用することができる。
【0135】
本発明の具体的な一実施形態において、前記架橋触媒の含量は、前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの総量100重量部を基準にして、0.1~20重量部、0.5~10重量部、1~5重量部であり得る。前記架橋触媒の含量が上記の数値範囲を満足する場合、所望の水準のシラン架橋反応が起き、リチウム二次電池内での望まない副反応が起きない。また、架橋触媒が無駄使いになるなどの費用的な問題がない。
【0136】
本発明の具体的な一実施形態において、前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの含量は、ポリオレフィンと希釈剤との総量100重量部を基準にして、0.01~1重量部または0.05~0.7重量部であり得る。前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの含量が上記の数値範囲を満足する場合、シランの含量が少なくてグラフト率が低下し架橋が低下するか、または、シラン含量が多くて未反応シランが残存し押出シートの外観が不良になる問題などを防止することができる。
【0137】
本発明の具体的な一実施形態において、前記シラングラフトされたポリオレフィン組成物は、必要に応じて、酸化安定剤、UV安定剤、帯電防止剤、核形成剤(nucleating agent)などの特定機能を向上させるための一般的な添加剤をさらに含むことができる。
【0138】
本発明の具体的な一実施形態において、前記反応押出する段階では一軸押出機または二軸押出機を使用することができる。
【0139】
次に、前記反応押出されたシラングラフトされたポリオレフィン組成物をシート状に成形及び延伸する(S2)。
【0140】
例えば、反応押出されたシラングラフトされたポリオレフィン組成物をT-ダイなどが取り付けられた押出機などを用いて押出した後、水冷、空冷式を用いた一般的なキャスティングあるいはカレンダリング方法を使用して冷却押出物を形成することができる。
【0141】
本発明の具体的な一実施形態において、上記のように延伸する段階を経ることで改善された機械的強度及び突刺し強度を有する分離膜を提供することができる。
【0142】
本発明の具体的な一実施形態において、前記延伸は、ロール方式またはテンター方式の逐次または同時延伸で行うことができる。前記延伸比は、縦方向及び横方向でそれぞれ3倍以上、または4倍~10倍であり、総延伸比は14倍~100倍であり得る。延伸比が上記の数値範囲を満足する場合、一方向の配向が十分ではなく、同時に、縦方向と横方向との間の物性バランスが崩れて引張強度及び突刺し強度が低下するという問題を防止することができる。また、総延伸比が上記の数値範囲を満足すると、未延伸または気孔が形成されない問題を防止することができる。
【0143】
本発明の具体的な一実施形態において、延伸温度は使用されたポリオレフィンの融点、希釈剤の濃度及び種類によって変わり得る。
【0144】
本発明の具体的な一実施形態において、例えば、使用されたポリオレフィンがポリエチレンであって希釈剤が液体パラフィンである場合、前記延伸温度は縦延伸(MD)の場合70~160℃、90~140℃または100~130℃であり得、横延伸(TD)の場合90~180℃、110~160℃または120~150℃であり得、両方向延伸を同時に行う場合は90~180℃、110~160℃または110~150℃であり得る。
【0145】
前記延伸温度が上記の数値範囲を満足する場合、前記延伸温度が低いことによる、軟質性がなくて破断が起きるかまたは未延伸が起きる問題を防止でき、延伸温度が高いために発生する部分的な過延伸または物性差を防止することができる。
【0146】
その後、前記延伸されたシートから前記希釈剤をすべて抽出して多孔性膜を製造する(S3)。
【0147】
本発明の具体的な一実施形態において、前記多孔性膜から有機溶媒を使用して希釈剤を抽出し、前記多孔性膜を乾燥することができる。
【0148】
本発明の具体的な一実施形態において、前記有機溶媒は、前記希釈剤を抽出できるものであれば特に制限されないが、抽出効率が高くて乾燥が速いメチルエチルケトン、メチレンクロライド、ヘキサンなどが適切である。
【0149】
本発明の具体的な一実施形態において、前記抽出方法は、浸漬(immersion)方法、溶剤スプレー(solvent spray)方法、超音波(ultrasonic)法などの一般的なすべての溶媒抽出方法を単独でまたは複合的に使用することができる。抽出処理後の残留希釈剤の含量は、1重量%以下であることが望ましい。残留希釈剤の含量が1重量%を超過すれば、物性が低下して多孔性膜の透過度が減少する。残留希釈剤の含量は抽出温度と抽出時間の影響を受けるが、希釈剤と有機溶媒との溶解度を増加させるため、抽出温度は高いことが望ましいが、有機溶媒の沸騰による安全性の問題を考慮すると40℃以下であることが望ましい。前記抽出温度が希釈剤の凝固点以下であれば、抽出効率が大幅に低下するため、希釈剤の凝固点よりは高くなければならない。
【0150】
また、抽出時間は、製造される多孔性膜の厚さによって異なるが、厚さが5~15μmである多孔性膜の場合は1~4分間が適切である。
【0151】
その後、前記多孔性膜を熱固定する(S4)。
【0152】
前記熱固定は、多孔性膜を固定して熱を加え、収縮しようとする多孔性膜を強制的に固定して残留応力を除去する段階である。
【0153】
本発明の具体的な一実施形態において、前記熱固定の温度は100~140℃、105~135℃または110~130℃であり得る。
【0154】
ポリオレフィンがポリエチレンである場合、前記熱固定の温度が上記の数値範囲を満足すると、ポリオレフィン分子の再配列が起きて多孔性膜の残留応力を除去でき、部分的溶融によって多孔性膜の気孔が詰まる問題を低減させることができる。
【0155】
本発明の具体的な一実施形態において、前記熱固定の時間は、10~120秒間、20~90秒間または30~60秒間であり得る。上記のような時間で熱固定する場合、ポリオレフィン分子の再配列が起きて多孔性膜の残留応力を除去でき、部分的溶融によって多孔性膜の気孔が詰まる問題を低減させることができる。
【0156】
次に、熱固定された多孔性膜を水分存在下で架橋させる(S5)。
【0157】
本発明の具体的な一実施形態において、前記架橋は60~100℃、65~95℃または70~90℃で行うことができる。
【0158】
本発明の具体的な一実施形態において、前記架橋は、湿度60~95%で6~50時間行うことができる。
【0159】
一方、本発明の具体的な一実施形態において、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを分割投入する場合は、前記(S5)段階を60~90℃の温度、50~85%の相対湿度下で6~18時間行うことができる。
【0160】
具体的には、前記架橋は、60~90℃、60~80℃または60~70℃で行われ得る。このとき、前記架橋は、湿度50~85%で、6~18時間、10~16時間または12~16時間行われ得る。このようにシラングラフト反応を行った後、架橋段階で温度、湿度、時間を制御することで、シャットダウン温度を低めることができる。これによって、光透過度の高い架橋ポリオレフィン分離膜を提供することができる。このとき、上述した温度、湿度、時間を全て満たすことで、上述した光透過度の高い架橋ポリオレフィン分離膜を提供することができる。
【0161】
本発明の他の一態様によれば、前記製造方法によって製造された架橋ポリオレフィン分離膜を提供することができる。
【0162】
本発明の他の一態様によれば、前記架橋ポリオレフィン分離膜の四辺を固定し、130℃で30分間放置した後、380nm以上700nm以下領域の光透過度の平均値が30%以上、40%以上、58%以上または63%以上である、架橋ポリオレフィン分離膜を提供する。
【0163】
本発明において、「光透過度」は、分離膜の厚さ方向に平行する光を透過させる場合、{(分離膜通過前の光の量-分離膜通過後の光の量)/分離膜通過前の光の量}×100から算定することができる。
【0164】
本発明の具体的な一実施形態において、前記光透過度の平均値は、380nm以上700nm以下領域の光が前記分離膜を通過したとき、30%以上、58%以上、60%~80%、62%~75%または63%~67%であり得る。前記光透過度が上記の数値範囲を有する場合、シャットダウンによる気孔閉塞によってリチウム二次電池の安全性が改善される効果がある。具体的には、分離膜内に気孔が存在すると、ポリオレフィンと空気との屈折率の差によって分離膜自体が不透明に見える。しかし、シャットダウン温度以上に温度が上昇すれば、気孔閉塞によって空気が分離膜内を通過できなくて空気が遮断される。これによって、空気が遮断されたポリオレフィンのみから構成された分離膜を製造でき、光透過度の高い分離膜を提供することができる。
【0165】
本発明の具体的な一実施形態において、前記光透過度は、ヘーズメーター(BYKガードナー製)を使用してASTM-D1003に準拠して測定することができる。具体的には、光透過度は、可視光線領域である380nm以上700nm以下の範囲で波長毎の光透過度を測定した後、それを平均して算定することができる。
【0166】
本発明の具体的な一実施形態において、前記分離膜の厚さは4μm~12μmまたは6μm~12μmであり得る。
【0167】
本発明の具体的な一実施形態において、前記分離膜は、リチウム二次電池用であり得る。
【0168】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0169】
実施例1(炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの分割投入)
まず、押出機に、ポリオレフィンとして重量平均分子量が350,000である高密度ポリエチレン(大韓油化製、VH035)7.0kg、及び第1希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)6.5kgを投入及び混合した。
【0170】
その後、前記押出機に、第2希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)3.9kg、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランとしてビニルトリエトキシシラン(沸点:160℃)100g、架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート4g、開始剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)4gを投入及び混合した。
【0171】
次いで、前記押出機に、第3希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)2.6kg、第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランとしてビニルトリメトキシシラン(沸点:123℃)100gを投入及び混合し、シラングラフトされたポリオレフィン組成物を反応押出した。
【0172】
したがって、実施例1において、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランと前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランとの重量比は50:50であった。
【0173】
また、実施例1において、前記第1希釈剤と第2希釈剤との重量比は5:3であり、第1希釈剤と第3希釈剤との重量比は5:2であった。
【0174】
一方、前記ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間に対する前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間の比率は、80%であった。すなわち、前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間は、前記ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間の約0.8倍に該当した。具体的には、ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間は210秒であり、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間は169秒であった。
【0175】
また、前記ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間に対する前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間の比率は、40%であった。すなわち、前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間は、前記ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間の約0.4倍に該当した。具体的には、ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間は210秒であり、第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間は85秒であった。
【0176】
その後、200℃の温度条件で反応押出してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を製造した。
【0177】
製造されたシラングラフトされたポリオレフィン組成物をT-ダイと冷却キャスティングロールを用いてシート状に成形した後、MD延伸後TD延伸のテンター式逐次延伸機で逐次延伸した。MD延伸比及びTD延伸比はいずれも7.0倍にした。延伸温度はMDで110℃、TDで125℃であった。
【0178】
前記延伸されたシートはメチレンクロライドで第1希釈剤~第3希釈剤を抽出し、126℃で熱固定して多孔性膜を製造した。前記多孔性膜を65℃、65%の相対湿度条件で18時間架橋させ、架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。得られた架橋ポリオレフィン分離膜の厚さは8.9μmであった。
【0179】
実施例2
架橋時間を9時間に制御したことを除き、実施例1と同様に架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。得られた架橋ポリオレフィン分離膜の厚さは8.9μmであった。
【0180】
比較例1(架橋添加剤を投入しない)
押出機に投入する物質を以下のように制御したことを除き、実施例1と同じ方法で分離膜を製造した。得られたポリエチレン分離膜の厚さは9.1μmであった。
【0181】
具体的には、押出機に、ポリオレフィンとして重量平均分子量が350,000である高密度ポリエチレン(大韓油化製、VH035)7.0kg、希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)13.0kgを投入及び混合した。
【0182】
比較例2(炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを分割投入せず、沸点の高い第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランのみを一度に投入する)
実施例1と異なり、比較例2では、第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランと第3希釈剤を投入していない。
【0183】
具体的な製造方法は、以下のようである。
【0184】
まず、押出機に、ポリオレフィンとして重量平均分子量が350,000である高密度ポリエチレン(大韓油化製、VH035)7.0kg、第1希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)9.1kgを投入及び混合した。
【0185】
その後、前記押出機に、第2希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)3.9kg、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランとしてビニルトリエトキシシラン(沸点:160℃)200g、架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート4g、開始剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)4gを投入及び混合した。
【0186】
比較例2において、前記第1希釈剤と第2希釈剤との重量比は7:3であった。
【0187】
一方、前記ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間に対する前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間の比率は、80%であった。すなわち、前記第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間は、前記ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間の約0.8倍に該当した。具体的には、ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間は210秒であり、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間は169秒であった。
【0188】
その後、200℃の温度条件で反応押出してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を製造した。
【0189】
製造されたシラングラフトされたポリオレフィン組成物をT-ダイと冷却キャスティングロールを用いてシート状に成形した後、MD延伸後TD延伸のテンター式逐次延伸機で逐次延伸した。MD延伸比及びTD延伸比はいずれも7.0倍にした。延伸温度はMDで110℃、TDで125℃であった。
【0190】
前記延伸されたシートはメチレンクロライドで第1希釈剤、第2希釈剤を抽出し、126℃で熱固定して多孔性膜を製造した。前記多孔性膜を85℃、85%の相対湿度条件で24時間架橋させ、架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。得られた架橋ポリオレフィン分離膜の厚さは8.9μmであった。
【0191】
比較例3(炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを分割投入せず、沸点の低い第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランのみを一度に投入する)
実施例1と異なり、比較例3では、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランと第2希釈剤を投入していない。
【0192】
具体的な製造方法は、以下のようである。
【0193】
まず、押出機に、ポリオレフィンとして重量平均分子量が350,000である高密度ポリエチレン(大韓油化製、VH035)7.0kg、第1希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)10.4kgを投入及び混合した。
【0194】
次いで、前記押出機に、第3希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)2.6kg、第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランとしてビニルトリメトキシシラン(沸点:123℃)200g、架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート4g、開始剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)4gを投入及び混合してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を反応押出した。このとき、前記第1希釈剤と第3希釈剤との重量比は8:2であった。
【0195】
前記ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間に対する前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間の比率は、40%であった。すなわち、前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間は、前記ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間の約0.4倍に該当した。具体的には、ポリオレフィンの投入後押出までの経過時間は210秒であり、第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの投入後押出までの経過時間は85秒であった。
【0196】
その後、200℃の温度条件で反応押出してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を製造した。
【0197】
製造されたシラングラフトされたポリオレフィン組成物をT-ダイと冷却キャスティングロールを用いてシート状に成形した後、MD延伸後TD延伸のテンター式逐次延伸機で逐次延伸した。MD延伸比及びTD延伸比はいずれも7.0倍にした。延伸温度はMDで110℃、TDで125℃であった。
【0198】
前記延伸されたシートはメチレンクロライドで第1希釈剤、第3希釈剤を抽出し、126℃で熱固定して多孔性膜を製造した。前記多孔性膜を85℃、85%の相対湿度条件で24時間架橋させ、架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。得られた架橋ポリオレフィン分離膜の厚さは8.9μmであった。
【0199】
比較例4(押出機にポリオレフィン、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを同時に投入する)
押出機に、ポリオレフィン、第1希釈剤、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、開始剤及び架橋触媒を一度に投入したことを除き、実施例1と同じ方法で分離膜を製造した。
【0200】
具体的には、押出機に以下のような方法で投入した。
【0201】
押出機に、ポリオレフィンとして重量平均分子量が350,000である高密度ポリエチレン(大韓油化製、VH035)7.0kg、第1希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)13.0kg、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランとしてビニルトリエトキシシラン(沸点:160℃)100g、第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランとしてビニルトリメトキシシラン(沸点:123℃)100g、架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート4g、開始剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)4gを投入及び混合してシラングラフトされたポリオレフィン組成物を反応押出した。このとき、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランと前記第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランとの重量比は50:50であった。
【0202】
得られた架橋ポリオレフィン分離膜の厚さは9.1μmであった。
【0203】
【0204】
表1において、各評価の具体的な測定方法は下記のようである。
1)分離膜の厚さ測定
【0205】
分離膜の厚さは、厚み測定器(ミツトヨ社製、VL-50S-B)を用いて測定した。
【0206】
2)通気度測定
JIS P-8117に準拠して、ガーレー式空気透過度計を用いて測定した。このとき、直径28.6mm、面積645mm2を空気100mlが通過する時間を測定した。
【0207】
3)メルトダウン温度測定
架橋ポリエチレン分離膜のメルトダウン温度をTMA(熱機械分析機、ThermoMechanical Analyzer)を使用して測定した。具体的には、分離膜に0.01Nの荷重を加え、5℃/分の速度で昇温させながら変形する程度を観察し、温度の上昇とともに分離膜が収縮してから再び延びながら破断される時点の温度を「分離膜のメルトダウン温度」として測定した。このようなメルトダウン温度が高いほど、高温における溶融寸法安定性(melt integrity)が維持されて寸法安定性を有すると言える。
【0208】
4)分離膜の外観評価
架橋ポリエチレン分離膜の製造過程中に8時間以上押出した後、T-ダイでダイドルール現象のような外観不良の有無を目視で確認した。その結果を表1に示した。
<評価基準>
〇:シート上に外観不良が現れない場合
△:シート上に外観不良が一部現れた場合
×:外観不良が深刻で作業進行が困難であった場合
【0209】
5)シラン(Si)グラフト率の測定
Siグラフト率とは、ポリオレフィン主鎖内の炭素数1000を基準にしてシラングラフトされたユニットの個数を定量化した数値を意味する。前記Siグラフト率は、分離膜をICP分析してSi含量を測定し、これをSiグラフト率に換算して定量化した。
【0210】
6)光透過度の測定
光透過度は、ヘーズメーター(BYKガードナー製)を使用してASTM-D1003に準拠して測定した。
【0211】
具体的には、実施例1~6、比較例1~7によって製造された分離膜それぞれの四辺を固定し、130℃で30分間放置した後、380nm以上700nm以下領域の光が前記分離膜を通過したときの光透過度を3回測定し、その平均値で算定した。
【0212】
このとき、光透過度は{(分離膜通過前の光の量-分離膜通過後の光の量)/分離膜通過前の光の量}×100から算定することができる。
【0213】
表1によれば、第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン及び第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの沸点と投入時点を全て制御した実施例1及び実施例2の場合、ダイドルール現象が発生せず、高いメルトダウン温度を示した。また、架橋時間、温度及び架橋時の相対湿度を制御した実施例1及び実施例2の場合、光透過度が比較例に比べて高くてシラングラフト率が高く示された。
【0214】
一方、沸点の高い第1炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランのみを投入した比較例2の場合、外観は良好であったが、本発明で所望とするメルトダウン温度より低い温度である148℃を示した。
【0215】
沸点の低い第2炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランのみを投入した比較例3の場合、押出機内の滞留時間を短くしたためダイドルール現象は発生しなかったが、押出機内の滞留時間が短くて本発明で所望とするメルトダウン温度より低い温度である173℃を示した。
【0216】
一方、比較例1は、架橋添加剤(炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、開始剤、架橋触媒など)を投入していない場合であって、最も高い通気度と最も低いメルトダウン温度を示し、本発明で達成しようとする方向とは反対の物性を有する分離膜が製造された。
【0217】
比較例4は、従来のように押出機にポリオレフィン、希釈剤及び炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランを一度に投入した場合であって、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの沸点及び押出機内の滞留時間を全く考慮しない場合である。この場合、ダイドルール現象が発生して分離膜の外観評価が不良であって、電気化学素子用分離膜として使用するには適さない分離膜が製造された。
【0218】
実験例2
実施例3(開始剤を分割投入、A/B=125)
まず、押出機ホッパーに、ポリオレフィンとして重量平均分子量が350,000である高密度ポリエチレン(大韓油化製、VH035)10.5kgを投入した。
【0219】
その後、前記押出機の第1ポートに先投入組成物として、希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)13.65kg/hr、開始剤(b)として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)1g/hr、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)としてビニルトリメトキシシラン300g/hr、架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート6g/hrを同時に投入及び混合した。このとき、前記先投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)の前記開始剤(b)に対する重量比(a/b)は300であった。
【0220】
次いで、前記押出機の第2ポートに後投入組成物として、希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)5.85kg/hr、開始剤(d)として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)3g/hr、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)としてトリメトキシビニルシラン200g/hrを同時に投入及び混合した。このとき、後投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)の前記開始剤(d)に対する重量比(c/d)は67であった。
【0221】
このとき、前記先投入組成物の投入後押出までの経過時間(t1)に対する前記後投入組成物の投入後押出までの経過時間(t2)の比率(t2/t1)は、0.66であった。具体的には、先投入組成物の投入後押出までの経過時間(t1)は383秒であり、後投入組成物の投入後押出までの経過時間(t2)は252秒であった。また、前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの総重量は、前記開始剤の総重量対比125倍であった。
【0222】
その後、200℃の温度条件で反応押出してシラングラフトされたポリエチレン組成物を製造した。
【0223】
製造されたシラングラフトされたポリエチレン組成物をT-ダイと冷却キャスティングロールを用いてシート状に成形した後、MD延伸後TD延伸のテンター式逐次延伸機で逐次延伸した。MD延伸比及びTD延伸比はいずれも7.0倍にした。延伸温度はMDで110℃、TDで125℃であった。
【0224】
前記延伸されたシートはメチレンクロライドで希釈剤を抽出し、126℃で熱固定して多孔性膜を製造した。前記多孔性膜を85℃、85%の相対湿度条件で24時間架橋させ、架橋ポリエチレン分離膜を製造した。得られた架橋ポリエチレン分離膜の厚さは9.0μmであった。
【0225】
実施例4(開始剤を分割投入、A/B=125)
押出機に投入される組成物の含量及び時間を下記表1のように制御したことを除き、実施例1と同じ方法で架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。
【0226】
実施例5(開始剤を分割投入、A/B=600)
押出機の第1ポート及び第2ポートに投入される炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの総量(A)の開始剤の総量(B)に対する重量比(A/B)が600になるように制御したことを除き、実施例1と同じ方法で架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。
【0227】
具体的には、押出機の第1ポートに先投入組成物として、希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)13.65kg/hr、開始剤(b)として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)0.5g/hr、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)としてビニルトリメトキシシラン400g/hr、架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート6g/hrを投入及び混合した。このとき、前記先投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)の前記開始剤(b)に対する重量比(a/b)は800であった。
【0228】
次いで、前記押出機の第2ポートに後投入組成物として、希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)5.85kg/hr、開始剤(d)として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)1g/hr、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)としてビニルトリメトキシシラン500g/hrを投入及び混合した。このとき、前記後投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)の前記開始剤(d)に対する重量比(c/d)は500であった。
【0229】
実施例6(開始剤を分割投入、A/B=125)
開始剤が押出機の第1ポートのみに投入されるように制御したことを除き、実施例1と同じ方法で架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。
【0230】
具体的には、押出機の第1ポートに先投入組成物として、希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)13.65kg/hr、開始剤(b)として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)4g/hr、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)としてビニルトリメトキシシラン300g/hr、架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート6g/hrを投入及び混合した。このとき、前記先投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)の前記開始剤(b)に対する重量比(a/b)は75であった。
【0231】
次いで、前記押出機の第2ポートに後投入組成物として、希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)5.85kg/hr、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)としてビニルトリメトキシシラン200g/hrを投入及び混合した。このとき、前記後投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)の開始剤(d)に対する重量比(c/d)はΔであった。
【0232】
比較例5(架橋添加剤を投入しない)
押出機にポリオレフィン、希釈剤のみを投入したことを除き、実施例1と同じ方法で架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。このとき、ポリオレフィンは押出機ホッパーから投入し、希釈剤は第1ポートから投入した。
【0233】
具体的には、下記表2のように押出機に投入される組成物の含量及び時間を制御した。
【0234】
比較例6(開始剤を一度に投入)
押出機ホッパーにポリオレフィンを投入し、第1ポートから希釈剤の一部、開始剤、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン、架橋触媒を一度に投入した。ただし、希釈剤の残部は時間差を置いて分割して第2ポートから投入した。
【0235】
具体的には、下記表2のように押出機に投入される組成物の含量及び時間を制御したことを除き、実施例1と同じ方法で架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。
【0236】
比較例7
押出機の第1ポート及び第2ポートに投入される炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランの総量(A)の開始剤の総量(B)に対する重量比(A/B)が62.5になるように制御したことを除き、実施例1と同じ方法で架橋ポリオレフィン分離膜を製造した。
【0237】
具体的には、押出機の第1ポートに先投入組成物として、希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)13.65kg/hr、開始剤(b)として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)1g/hr、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)としてトリメトキシビニルシラン100g/hr、架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート6g/hrを投入及び混合した。このとき、前記先投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(a)の前記開始剤(b)に対する重量比(a/b)は100であった。
【0238】
次いで、前記押出機の第2ポートに後投入組成物として、希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)5.85kg/hr、開始剤(d)として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)3g/hr、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)としてビニルトリメトキシシラン150g/hrを投入及び混合した。このとき、前記後投入組成物内における前記炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシラン(c)の前記開始剤(d)に対する重量比(c/d)は50であった。
【0239】
【0240】
表2に示されたように、実施例3及び実施例4の分離膜は、それぞれ適切なSiグラフト率でシラングラフティングが形成されて光透過度及び工程性の面全てで優れると評価された。
【0241】
一方、比較例5~比較例7の分離膜は、それぞれSiグラフト率が0であるかまたは低く、光透過度が非常に低いと評価された。
【0242】
また、実施例5及び実施例6の分離膜は、それぞれ適切なSiグラフト率でシラングラフティングが形成されて光透過度の面では比較例5~比較例7に比べて分離膜の物性が良好であることが確認されたが、ダイドルール現象が発生するかまたは押出機内圧上昇及びフィルターの詰まりが発生する工程性問題を有すると評価され、工程性の面で望ましくないことが証明された。