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特許7394950酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト及びそれを用いた芳香族化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト及びそれを用いた芳香族化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/40 20060101AFI20231201BHJP
   C01B 39/36 20060101ALI20231201BHJP
   C07C 15/02 20060101ALN20231201BHJP
   C07C 2/84 20060101ALN20231201BHJP
【FI】
B01J29/40 Z
C01B39/36
C07C15/02
C07C2/84
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022183046
(22)【出願日】2022-11-16
(62)【分割の表示】P 2018238109の分割
【原出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2023014129
(43)【公開日】2023-01-26
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】田中 陵二
(72)【発明者】
【氏名】渡部 善全
(72)【発明者】
【氏名】花谷 誠
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104217(JP,A)
【文献】特開2006-347862(JP,A)
【文献】特開2006-305408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J
C01B
C07
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折測定にて観測した際の回折パターンにおける(1 0 1)面反射に該当するピークの高さa、(0 5 1)面反射に該当するピークの高さb及び(0 3 3)面反射に該当するピークの高さcが、2×c/b≧[5×a/b]-3の関係式を満足し、亜鉛含有量が0.5から4wt%である酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト。
【請求項2】
SiO/Al=20~60のMFI型ゼオライトであることを特徴とする請求項1に記載の酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト。
【請求項3】
SiO/Al=30~50のMFI型ゼオライトであることを特徴とする請求項1に記載の酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト。
【請求項4】
SiO/Al=40のMFI型ゼオライトであることを特徴とする請求項1に記載の酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末X線回折測定で観測した際に特定の回折ピークパターンを有する新規な酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト及びそれを用いた芳香族化合物の製造方法に関するものであり、更に修飾方法上の特徴を有するその製造方法、及びそれを低級炭化水素と接触する、優れた転化率と芳香族化合物選択率を示す芳香族化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MFI型ゼオライトは、ゼオライト構造由来の均一な細孔を利用した触媒として広く用いられており、このような用途としては、例えばトルエンの不均化反応(例えば特許文献1参照。)や、キシレンの異性化反応(例えば特許文献2参照。)等が挙げられる。
【0003】
これらの反応は主に、MFI型ゼオライトのミクロ細孔の特徴を利用したものである。MFI型ゼオライトのミクロ細孔は、入口径がおよそ0.5nmであり、この細孔径に近接した分子径を持つ炭化水素分子の有効な反応場として振る舞っているものと考えられる。
【0004】
ベンゼンやトルエン、キシレン等の芳香族化合物は、多くの場合、石油精製により得られた原料油(例えばナフサなど)を、熱分解反応装置にて分解し、得られた熱分解生成物から蒸留又は抽出によって分離精製することで得られる。これらの芳香族化合物の製造方法では、芳香族化合物以外の熱分解生成物として、脂肪族炭化水素(パラフィン系、オレフィン系、アセチレン系、脂環系の炭化水素)が副生する。そのため、芳香族化合物の製造に伴って、脂肪族炭化水素が同時に製造されるため、芳香族化合物の生産量は脂肪族炭化水素の生産量に見合って調整がなされ、おのずと生産量に限度があるものであった。一方、脂肪族炭化水素は、細孔径約5~6オングストロームの細孔を有する中細孔径ゼオライトを主に含んだ触媒と400℃~約800℃程度の温度で接触させることにより、芳香族化合物に転化製造することができることが報告されている(例えば非特許文献1~4参照。)。該製造方法は、原料油の熱分解による芳香族化合物の製造方法と比較して、脂肪族炭化水素からより有用な芳香族化合物が製造できる利点がある。そのため、このような、脂肪族炭化水素からの芳香族化合物を製造可能な触媒の開発が行われている。例えば、パラフィン、オレフィン及びナフテンを含有する脂肪族炭化水素を原料とした芳香族化合物製造用触媒として、亜鉛含有量を抑制した亜鉛担持中細孔径ゼオライト系触媒が提供されている(例えば特許文献3参照。)。また、パラフィン、オレフィン、アセチレン系炭化水素、環状パラフィン及び環状オレフィンを原料とした芳香族化合物製造に用いられる触媒として、L型ゼオライトに白金及びハロゲン成分を同時に担持させてなる触媒が開示されている(例えば特許文献4参照。)。さらには、構造体の大きさが0.1~100mmであって、構造体表層部に結晶性多孔質アルミノシリケートが存在し、構造体表層部を除く内部の層に無機支持体が存在する構造体に、亜鉛及び/又はガリウムを担持することを特徴とする芳香族化合物製造用触媒が開示されている(例えば特許文献5参照)。その他、炭化水素を原料とした芳香族化合物製造用触媒が開示されている(例えば特許文献6、7参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4014279号公報
【文献】特許第2598127号公報
【文献】特開平10-33987公報
【文献】特許第3264447号公報
【文献】特許第5447468号公報
【文献】特許第3966429号公報
【文献】特許第5564769号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Industrial & Engineering Chemistry Research 第31巻、995頁(1992年)
【文献】Industrial & Engineering Chemistry Research 第26巻、647頁(1987年)
【文献】Applied Catalysis 第78巻、15頁(1991年)
【文献】Microporous and Mesoporous Materials 第47巻、253頁(2001年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3~7で示された触媒を用いた芳香族化合物の製造法においては、生成物中にメタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン等の非芳香族化合物が含まれ、芳香族化合物の選択率が必ずしも高くないことから芳香族化合物の製造方法としては課題を有するものであった。
【0008】
そこで、本発明は、比較的低分子量(特に炭素数が10以下、好ましくは2~6)の脂肪族炭化水素を原料として、芳香族化合物を選択的に製造することが可能となる新規な芳香族化合物製造用触媒、それに適した新規な酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト及びそれを用いた芳香族化合物の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、新規な特定の酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト、それを含む芳香族化合物製造用触媒を用いることにより、脂肪族炭化水素から芳香族化合物を選択的に製造することが可能となると共に、その芳香族化合物の選択率にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、粉末X線回折測定にて観測した際の回折パターンにおける(1 0 1)面反射に該当するピークの高さa、(0 5 1)面反射に該当するピークの高さb及び(0 3 3)面反射に該当するピークの高さcが、2×c/b≧[5×a/b]-3の関係を満足し、亜鉛含有量が0.5から4wt%である酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト、該酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトを用い低級炭化水素を接触する芳香族化合物の製造方法、
さらには、少なくとも下記(A)工程及び(B)工程を含む酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトの製造方法に関するものでもある。
(A)工程;MFIゼオライトと、一般式(1)で示される単位組成の配位高分子とを含む亜鉛複合MFI型ゼオライトを製造する工程。
【0011】
【化1】
【0012】
(Rは、炭素数1から8のアルキル基、又は炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を表す。)
(B)工程;(A)工程により得られた亜鉛複合MFI型ゼオライトを焼成し、酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトを製造する工程。
【0013】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明におけるMFI型ゼオライトとは、国際ゼオライト学会で定義される構造骨格コードMFIに属するアルミノシリケート化合物を示すものである。これは、直方晶系、空間群Pnmaの単位格子を有し、軸長はa=20.1オングストローム、b=19.7オングストローム、c=13.1オングストロームをとる。以下、国際ゼオライト学会で定義される単位格子の軸関係に合わせ、面指数を表記する。
【0015】
本発明における配位高分子とは、上記一般式(1)で示される単位組成を有するものであり、二座以上の有機配位子と金属イオンからなる連続構造を持つ錯体のことである。ここで、Rは、炭素数1から8のアルキル基、又は炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を表し、例えば炭素数1から8のアルキル基としては、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基又は環状アルキル基のいずれであってもよい。具体的なアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルへキシル基等を例示することができ、炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基としては、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、sec-ブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基等を例示することができる。
【0016】
本発明における芳香族化合物とは、ベンゼン、アルキルベンゼン類、ナフタレン、アルキルナフタレン類等であり、具体的な芳香族化合物としてはベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ナフタレン、メチルナフタレン等を例示することができる。
【0017】
そして、ゼオライトのカウンターカチオンとして含まれる金属の種類や量によって、粉末X線回折測定でのピーク高さ比が変化することはよく観察される現象であり、本発明では金属修飾ゼオライトを特定化する際に粉末X線回折測定の回折パターンを用いたものである。そして、粉末X線回折測定でMFI型ゼオライトを詳細に観測するなかで、代表的な回折ピークの中、特に(1 0 1)面、(0 5 1)面及び(0 3 3)面からの反射に対応するピークを選択し、各ピークの高さを詳細に比較することで、3次元での対比が容易となり、特徴のある新規な酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトを規定することが可能となるものである。
【0018】
本発明の酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトは、粉末X線回折測定にて観測した際の回折パターンにおける(1 0 1)面反射に該当するピークの高さa、(0 5 1)面反射に該当するピークの高さb及び(0 3 3)面反射に該当するピークの高さcが、2×c/b≧[5×a/b]-3の関係を満足する、新規な酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトであり、この関係を満足することにより、従来の酸化亜鉛修飾ゼオライトとは異なるものであると共に、脂肪族炭化水素から芳香族化合物を選択的かつ効率よく製造することが可能となる。
【0019】
本発明の酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトは、芳香族化合物の製造に用いた際の製造効率に優れることから、亜鉛の含有量が0.5から4重量%である。ここで、亜鉛の含有量が0.5重量%未満である場合、芳香族化合物製造用触媒とした際に、その効率に劣るものとなる。一方、亜鉛の含有量が4重量%を越えるものである場合、芳香族化合物の選択率が劣るものとなり、好ましくない。
【0020】
本発明の酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトの製造方法としては、粉末X線回折測定にて観測した際の回折パターンにおける(1 0 1)面反射に該当するピークの高さa、(0 5 1)面反射に該当するピークの高さb及び(0 3 3)面反射に該当するピークの高さcが、2×c/b≧[5×a/b]-3の関係を満足し、亜鉛含有量が0.5から4wt%である酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトの製造が可能であれば如何なる方法であってもよく、例えば製造工程に下記(A)工程及び(B)工程を含む方法により製造することが可能である。
(A)工程;MFIゼオライトと、上記一般式(1)の単位組成で示される配位高分子とを含む、亜鉛複合MFI型ゼオライトを製造する工程。
(B)工程;(A)工程により得られた亜鉛複合MFI型ゼオライトを焼成し、酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトを製造する工程。
【0021】
ここで、(A)工程は、亜鉛複合MFI型ゼオライトを製造する工程であり、該亜鉛複合MFI型ゼオライトとは、亜鉛を含む該配位高分子とMFI型ゼオライトとの混合物はもとより、亜鉛を含む該配位高分子で修飾した亜鉛修飾MFI型ゼオライトをも含むものである。そして、該亜鉛複合MFI型ゼオライトの具体的製造方法としては、例えばMFI型ゼオライト共存下、亜鉛化合物と下記一般式(2)で表されるイミダゾール化合物とを反応し、一般式(1)の単位組成で示される配位高分子を生成し、該配位高分子との亜鉛複合MFI型ゼオライトとする工程を挙げることができる。
【0022】
【化2】
【0023】
(Rは、前記と同じ意味を表す。)
そして、その際の亜鉛化合物としては、亜鉛を含み水溶性のものであれば制限はなく、例えば塩化亜鉛(II)、フッ化亜鉛(II)、臭化亜鉛(II)、ヨウ化亜鉛(II)等のハロゲン化亜鉛(II)、酢酸亜鉛(II)、硝酸亜鉛(II)、硫酸亜鉛(II)、炭酸亜鉛(II)、リン酸亜鉛(II)、過塩素酸亜鉛(II)、ステアリン酸亜鉛(II)、テトラフルオロホウ酸亜鉛(II)、ホウ酸亜鉛(II)、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(II)等の無機/有機オキソ酸亜鉛(II)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(II)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(II)等のチオカルバミン酸亜鉛(II)塩、塩化(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の亜鉛(II)キレート錯体、亜鉛(II)メトキシド等の亜鉛(II)アルコキシド化合物、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミド]亜鉛などの亜鉛(II)アミド等を挙げることができ、特に亜鉛複合MFI型ゼオライトの収率に優れることから、硝酸亜鉛(II)、硫酸亜鉛(II)等の無機/有機オキソ酸亜鉛(II)であることが好ましく、硝酸亜鉛(II)がより好ましい。
【0024】
また、上記一般式(2)で示されるイミダゾール化合物としては、上記一般式(2)におけるRが、炭素数1から8のアルキル基又は炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり、炭素数1から8のアルキル基としては、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基又は環状アルキル基のいずれであってもよい。具体的なアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルへキシル基等を例示することができ、炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基としては、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、sec-ブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基等を例示することができ、特に一般式(1)の単位組成で示される配位高分子、その複合物である亜鉛複合MFI型ゼオライトを収率よく得られることから、Rは炭素数1から6のアルキル基、又は炭素数1のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基が好ましく、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基が殊更好ましい。該イミダゾール化合物の具体的例示としては、2-メチルイミダゾール、2-ブチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等を挙げることができる。
【0025】
そして、その際の亜鉛化合物とイミダゾール化合物の割合は特に制限されず、中でも、亜鉛複合MFI型ゼオライトを効率よく得ることが可能となることから、亜鉛化合物:イミダゾール化合物(モル比)=1:20~2:1の範囲であることが好ましく、1:15~1:2の範囲であることが好ましい。
【0026】
また、亜鉛複合MFI型ゼオライトの製造は、溶媒中で実施しても良く、溶媒としては、例えば水、スルホキシド化合物、スルホン化合物、アミド化合物、ニトリル化合物、アルコール化合物等を挙げることができる。該スルホキシド化合物としては、例えばジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略す。)、ジブチルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシドを挙げることができ、該スルホン化合物としては、例えばスルホラン、ジプロピルスルホン、ジブチルスルホン等を挙げることができ、該アミド化合物としては、例えばN,N-ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略す。)、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す。)、N,N-ジエチルホルムアミド(以下、DEFと略す。)、N-メチルピロリドン(以下、NMPと略す。)等を挙げることができ、該ニトリル化合物としては、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等を挙げることができ、該アルコール化合物としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等を挙げることができる。
【0027】
該亜鉛複合MFI型ゼオライトを製造する際の反応温度としては、反応可能であれば如何なる温度でも良く、例えば20℃以上200℃以下、好ましくは50℃以上150℃以下の温度を挙げることができる。また、反応時間としては、該配位高分子の生成が可能であれば如何なる時間であってもよく、例えば3時間以上80時間以下、好ましくは10時間以上80時間以下、特に好ましく20時間以上80時間以下を挙げることができる。
【0028】
更に、亜鉛複合MFI型ゼオライトを製造する際には、その初期、中間、後期に付随する付加工程を追加してもよく、例えば反応工程の後、分離工程、洗浄工程、乾燥工程などの後処理工程を含んでいてもよい。例えば分離工程としては、亜鉛複合MFI型ゼオライトと溶液とを分離、回収する工程である。亜鉛複合MFI型ゼオライトが分離できれば分離方法は任意であり、ろ過、更には吸引ろ過を例示することができる。また、洗浄工程では分離工程で回収した亜鉛複合MFI型ゼオライトを洗浄し可溶性不純物を除く工程である。洗浄方法は任意であるが、例えば熱アルコール等で洗浄すればよい。乾燥工程は亜鉛複合MFI型ゼオライトを乾燥することが出来れば、その方法は任意である。室温、真空下で配位高分子を乾燥することが挙げられるが、真空下、120℃で5時間以上36時間以下の加熱乾燥を行うことが好ましい。る。
【0029】
また、該亜鉛複合MFI型ゼオライトとする際には、上記一般式(1)で示される単位組成を有する配位高分子とMFI型ゼオライトとを混合してもよく、その際の方法には特に制限は無く、粉状で乾式混合を行っても、スラリー状で湿式混合で行っても良い。スラリー状で行う湿式混合を行う場合には、分散媒としては、例えば水、スルホキシド化合物、スルホン化合物、アミド化合物、ニトリル化合物、アルコール化合物等を挙げることができる。該スルホキシド化合物としては、例えばDMSO、ジブチルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシドを挙げることができ、該スルホン化合物としては、例えばスルホラン、ジプロピルスルホン、ジブチルスルホン等を挙げることができ、該アミド化合物としては、例えばDMAc、DMF、DEF、NMP等を挙げることができ、該ニトリル化合物としては、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等を挙げることができ、該アルコール化合物としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等を挙げることができる。また、湿式で混合を行った後、分散媒を除去する分離工程においては、固体と液体を分離できれば分離方法は任意であり、ろ過、更には吸引ろ過を例示することができる。乾燥工程は回収固体混合物を乾燥することが出来れば、その方法は任意である。室温、真空下で回収固体を乾燥することが挙げられるが、真空下、120℃で5時間以上36時間以下の加熱乾燥を行うことが好ましい。
【0030】
そして、該(B)工程は、(A)工程により得られた亜鉛複合MFI型ゼオライトの焼成により、酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトとする工程である。その際の焼成条件は酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトにすることが可能であれば如何なる条件であってもよく、中でも効率的な焼成が可能となることから、大気雰囲気下、400℃以上550℃以下での焼成温度条件であることが好ましい。
【0031】
本発明の酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトに、低級炭化水素を接触させることにより効率よく、芳香族化合物を製造することができ、優れた芳香族化合物の製造方法を提供することができる。また、該酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトを含むことで芳香族化合物製造用触媒とすることができ、該芳香族化合物製造用触媒とする際に、その形状は、特に制限はなく、例えば本発明の酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトの製造方法で得られた該酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトの粉末状の形状物、この粉末を圧縮成型することで得られる特定の形状物、この粉末をアルミナやシリカ等のバインダー混合後に成形することで得られる特定の形状物、等のいずれの形状物としても用いることが可能である。
【0032】
本発明の酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト、それを含む芳香族化合物製造用触媒は、低級炭化水素と接触することにより、効率的に芳香族化合物を製造することが可能となり、その反応選択性も優れる触媒、製造方法となるものである。その際の低級脂肪族炭化水素、例えば炭素数10以下の脂肪族炭化水素、さらには炭素数2から6の脂肪族炭化水素と接触することにより、効率よく芳香族化合物を製造することを可能とするものである。低級炭化水素とは、例えばパラフィン系、オレフィン系、アセチレン系、脂環系の炭化水素を包含するものを挙げることができ、具体的にはエタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン等のパラフィン系;エチレン、プロピレン、ブテン、2-メチルプロペン、ペンテン、ヘキセン等のオレフィン系;アセチレン等のアセチレン系;シクロプロパン、シクロブタン、シクロヘキサン等の脂環系及びそれらの混合物等を挙げることができる。
【0033】
その際の反応温度に特に限定はなく、芳香族化合物の製造が可能であればよく、中でも、副生するパラフィン、オレフィン又はアルカンの生成を抑制し、必要以上の耐熱反応装置を要しない芳香族化合物の効率的な反応となることから400~800℃の範囲が望ましい。また、反応圧力にも制限はなく、例えば0.05MPa~5MPa程度の圧力範囲で運転が可能である。そして、その際の該酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト、該芳香族化合物製造用触媒に対する反応原料である低級炭化水素の供給は、それら体積に対し原料ガスの体積の比として特に制限されるものではなく、例えば1h-1~50000h-1程度の空間速度を挙げることができる。低級炭化水素を原料ガスとして供給する際には、単一ガス、混合ガス、およびこれらを窒素等の不活性ガス、水素、一酸化炭素、二酸化炭素から選ばれる単一または混合ガスにより希釈したものとして用いることもできる。
【0034】
また、反応形式に制限はなく、例えば固定床、輸送床、流動床、移動床、多管式反応器のみならず連続流式および間欠流式並びにスイング式反応器、等を用いることができる。
【0035】
そして、得られる芳香族化合物としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ナフタレン、メチルナフタレン等を挙げることができ、特に、ベンゼンやトルエン、キシレン等の芳香族化合物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、新規な酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトを提供するものであり、該酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト、それを含む芳香族化合物製造用触媒、それを用いた芳香族化合物の製造方法に関するものであり、特に低級炭化水素から芳香族化合物を製造する際に、その選択率に優れ、工業的にも非常に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】;実施例及び比較例で作製した酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトのX線回折パターンの解析結果。
図2】;実施例及び比較例で作製した酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトによる芳香族化合物製造の評価結果。
【実施例
【0038】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
なお、実施例により得られた酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトの芳香族化合物製造用触媒としての性能評価は、以下の方法により測定・定義した。
【0040】
~芳香族化合物製造装置及び芳香族化合物製造方法~
実施例により得られた酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト、それを含む芳香族化合物製造用触媒は、以下の方法により調製し、芳香族化合物の製造評価を行った。
【0041】
ステンレス製反応管(内径16mm、長さ300mm)を用いた固定床気相流通式反応装置を用いた。ステンレス製反応管のそれぞれの中段に、芳香族化合物製造用触媒を充填し、乾燥空気流通下での加熱前処理を行ったのち、流通ガスをフィードした。なお、反応器の装置条件および運転条件は、本実施例記載の条件に限定されるものではなく、適宜選択可能である。そして、加熱はセラミック製管状炉を用い、触媒層の温度を制御した。反応出口ガスおよび反応液を採取し、ガスクロマトグラフを用い、ガス成分および液成分を個別に分析した。ガス成分は、TCD検出器を備えたガスクロマトグラフ(島津製作所製、(商品名)GC-14B)を用いて分析した。ガスクロマトグラフカラム充填剤は、Waters社製PorapakQ(商品名)またはGLサイエンス社製MS-5A(商品名)を用いた。液成分は、FID検出器を備えたガスクロマトグラフ(島津製作所製、(商品名)GC-2015)を用いて分析した。分離カラムは、キャピラリーカラム(GLサイエンス社製、(商品名)TC-1)を用いた。転化率は[(供給原料-残存原料)/供給原料]×100で、芳香族化合物選択率は、[(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンに含まれる炭素の数の和)/生成物全体に含まれる炭素の数の和]×100により求めた。
【0042】
芳香族化合物製造条件は下記のように設定した。
【0043】
(芳香族化合物製造条件)
触媒温度:520℃。
流通ガス:原料炭化水素50mol%+窒素50mol%の混合ガス、60mL/分。
触媒体積に対する原料炭化水素の体積の比:1000/時間。
触媒重量:0.9g。
触媒形状:酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト粉末を油圧プレスで400kgf/cmで1分間圧縮成型した後に粉砕し、約1mmのペレット形状とした。
製造圧力:0.1MPa。
【0044】
MFI型ゼオライトの製造は、特開2013-227203公報を参考に行った。
【0045】
(粉末X線回折測定)
粉末X線回折パターンの測定は、リガク社製Smart Lab装置(X線管球:CuKα、管電流:30mA、管電圧:40kV、単色化法:Kβフィルター法)を用いて、入射平衡スリットの開口角:5°、入射長手制限スリットの長さ:10mm、受光平衡スリットの開口角:5°、入射スリット:1/2°、受光スリット1:20mm、受光スリット2:20mmとして、回折角(2θ)=5~50°の範囲を走査速度2°/分で走査し、対称反射法で測定した。ピーク高さは、統合粉末X線解析ソフトウェアPDXLを用いて、バックグラウンド除去及びKα2除去した回折パターンより求めた。
【0046】
参考例1
テトラプロピルアンモニウム(以降、TPAと略記する。)水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に不定形アルミノシリケートゲルを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。その際の種晶の添加量は、原料組成物中のAlとSiOの重量の和に対して、0.7重量%とした。また、副生したエタノールは濃縮して除いた。
【0047】
該原料組成物の組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=44、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.16、OH/Siモル比=0.21、HO/Siモル比=10
得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、115℃で撹拌しながら4日間結晶化させ、スラリー状混合液を得た。結晶化後のスラリー状混合液を遠心沈降機で固液分離した後、十分量の純水で固体粒子を洗浄し、110℃で乾燥して乾燥粉末を得た。得られた粉末を、粉末X線回折を測定したところ、典型的なMFI型ゼオライトの粉末X線回折パターンを示した。
【0048】
得られた乾燥粉末10gを550℃で1時間焼成後、60℃において、濃度20重量%の塩化アンモニウム水溶液100mL中で20時間イオン交換し、その後ろ過、洗浄してアンモニウム型のMFI型ゼオライトとした。その後、アンモニウム型のMFI型ゼオライトを550℃で1時間焼成して、MFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトをフッ酸と硝酸の混合水溶液で溶解し、これを一般的なICP装置((商品名)OPTIMA3300DV,PerkinElmer社製)による誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定しSiO/Alモル比を求めたところ、40であった。
【0049】
比較例1
参考例1で得られたMFI型ゼオライト2.65gに、硝酸亜鉛六水和物0.30gと水0.81gからなる水溶液を加えて混練し、110℃で12時間乾燥した後、540℃で2時間焼成することで酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト(C-1)を調製した。
【0050】
得られた酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト(C-1)は2.4wt%の亜鉛を含有しており、粉末X線回折測定で観察される回折パターンにおいて、(1 0 1)面反射に該当するピークの高さaと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比a/bは1.05、(0 3 3)面反射に該当するピークの高さcと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比c/bは0.99で、2×c/b≧[5×a/b]-3を満足しなかった。結果を図1に示す。
【0051】
酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト(C-1)を芳香族化合物製造用触媒とし、プロパンを原料とし、上記の条件にて芳香族化合物の製造を行った。ガス流通開始75分後のプロパン転化率は66.5%、芳香族化合物選択率は40.5%であった。プロパン転化率-芳香族化合物選択率の関係を図2に示す。
【0052】
比較例2
参考例1で得られたMFI型ゼオライト2.51gに、硝酸亜鉛六水和物0.21gと水0.79gからなる水溶液を加えて混練し、110℃で12時間乾燥した後、540℃で2時間焼成することで酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト(C-2)を調製した。
【0053】
得られた酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト(C-2)は1.8wt%の亜鉛を含有していた。粉末X線回折測定で観察される回折パターンにおいて、(1 0 1)面反射に該当するピークの高さaと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比a/bは1.06、(0 3 3)面反射に該当するピークの高さcと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比c/bは0.50で、2×c/b≧[5×a/b]-3を満足しなかった。結果を図1に示す。
【0054】
酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト(C-2)を芳香族化合物製造用触媒とし、プロパンを原料とし、上記の条件にて芳香族化合物の製造を行った。ガス流通開始75分後のプロパン転化率は63.8%、芳香族化合物選択率は41.8%であった。プロパン転化率-芳香族化合物選択率の関係を図2に示す。
【0055】
比較例3
参考例1で得られたMFI型ゼオライト2.90gに、硝酸亜鉛六水和物0.16gと水0.97gからなる水溶液を加えて混練し、110℃で12時間乾燥した後、540℃で2時間焼成することで酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト(C-3)を調製した。
【0056】
得られた酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト(C-3)は1.1wt%の亜鉛を含有していた。粉末X線回折測定で観測される回折パターンにおいて、(1 0 1)面反射に該当するピークの高さaと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比a/bは0.76、(0 3 3)面反射に該当するピークの高さcと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比c/bは0.26で、2×c/b≧[5×a/b]-3を満足しなかった。結果を図1に示す。
【0057】
酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト(C-3)を芳香族化合物製造用触媒とし、プロパンを原料とし、上記した条件にて芳香族化合物の製造を行った。ガス流通開始75分後のプロパン転化率は46.2%、芳香族化合物選択率は48.5%であった。プロパン転化率-芳香族化合物選択率の関係を図2に示す。
【0058】
実施例1
参考例1で得られたMFI型ゼオライト2.51gに、硝酸亜鉛六水和物230mg(0.773mmol)、2-メチルイミダゾール630mg(7.67mmol)、DMF(28.5mL)を加え、超音波を10分間照射した後、140℃にて24時間加熱した。反応混合物を室温に放冷後、固体を遠心分離にて集め、DMF(30mLx3)、メタノール(30mLx3)で洗浄し、真空乾燥することで、薄黄色粉末の亜鉛複合MFI型ゼオライト1(3.29g)を得た。その際の配位高分子は、Rがメチル基のものであった。
【0059】
亜鉛複合MFI型ゼオライト1を540℃で2時間焼成して酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト1を調製した。
【0060】
得られた酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト1に含まれる亜鉛量は1.5重量%であった。また、粉末X線回折測定で観測される回折パターンにおいて、(1 0 1)面反射に該当するピークの高さaと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比a/bは0.68、(0 3 3)面反射に該当するピークの高さcと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比c/bは0.56で、2×c/b≧[5×a/b]-3を満足するものであった。結果を図1に示す。
【0061】
酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト1を芳香族化合物製造用触媒とし、プロパンを原料とし、上記の条件にて芳香族化合物の製造を行った。ガス流通開始75分後のプロパン転化率は60.9%、芳香族化合物選択率は44.2%であった。プロパン転化率-芳香族化合物選択率の関係を図2に示す。比較例で示した酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト(C-1)~(C-3)を用いた場合よりも高い芳香族化合物選択率を示すものであった。
【0062】
実施例2
参考例1で得られたMFI型ゼオライト2.51gに、硝酸亜鉛六水和物230mg(0.773mmol)、2-メチルイミダゾール630mg(7.67mmol)、DMF28.5mLを加え、超音波を10分間照射した後、140℃にて24時間加熱撹拌した。反応混合物を室温に放冷後、固体を遠心分離にて集め、DMF(30mLx3)、メタノール(30mLx3)で洗浄し、真空乾燥することで、薄黄色粉末の亜鉛複合MFI型ゼオライト2(3.44g)を得た。その際の配位高分子は、Rがメチル基のものであった。
【0063】
亜鉛複合MFI型ゼオライト2を540℃で2時間焼成して酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト2を調製した。
【0064】
得られた酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト2に含まれる亜鉛量は1.7重量%であった。また、粉末X線回折測定で観測される回折パターンにおいて、(1 0 1)面反射に該当するピークの高さaと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比a/bは0.57、(0 3 3)面反射に該当するピークの高さcと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比c/bは0.52で、2×c/b≧[5×a/b]-3を満足するものであった。結果を図1に示す。
【0065】
酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト2を芳香族化合物製造用触媒とし、プロパンを原料とし、上記の条件にて芳香族化合物の製造を行った。ガス流通開始75分後のプロパン転化率は53.6%、芳香族化合物選択率は48.3%であった。プロパン転化率と芳香族化合物選択率の関係を図2に示す。比較例で示した酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト(C-1)~(C-3)を用いた場合よりも高い芳香族化合物選択率を示すものであった。
【0066】
実施例3
参考例1で得られたMFI型ゼオライト1.26gに、硝酸亜鉛六水和物229mg(0.770mmol)、2-メチルイミダゾール628mg(7.65mmol)、DMF28.5mLを加え、超音波を10分間照射した後、140℃にて24時間加熱撹拌した。反応混合物を室温に放冷後、固体を遠心分離にて集め、DMF(30mLx3)、メタノール(30mLx3)で洗浄し、真空乾燥した。同じ操作を2回繰り返すことで、薄黄色粉末の亜鉛複合MFI型ゼオライト3(3.20g)を得た。その際の配位高分子は、Rがメチル基のものであった。
【0067】
亜鉛複合MFI型ゼオライト3を540℃で2時間焼成して酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト3を調製した。
【0068】
得られた酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト3に含まれる亜鉛量は3.0重量%であった。また、粉末X線回折測定で観測される回折パターンにおいて、(1 0 1)面反射に該当するピークの高さaと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比a/bは0.39、(0 3 3)面反射に該当するピークの高さcと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比c/bは0.52で、2×c/b≧[5×a/b]-3を満足するものであった。結果を図1に示す。
【0069】
酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト3’を芳香族化合物製造用触媒とし、プロパンを原料とし、上記の条件にて芳香族化合物の製造を行った。ガス流通開始75分後のプロパン転化率は64.4%、芳香族化合物選択率は43.2%であった。プロパン転化率と芳香族化合物選択率の関係を図2に示す。比較例で示した酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト(C-1)~(C-3)を用いた場合よりも高い芳香族化合物選択率を示すものであった。
【0070】
実施例4
参考例1で得られたMFI型ゼオライト2.50gに、硝酸亜鉛六水和物228mg(0.766mmol)、2-ブチルイミダゾール951mg(7.66mmol)、DMF28.5mLを加え、超音波を10分間照射した後、140℃にて24時間加熱撹拌した。反応混合物を室温に放冷後、固体を遠心分離にて集め、DMF(30mLx3)、メタノール(30mLx3)で洗浄し、真空乾燥することで、白色粉末の亜鉛複合MFI型ゼオライト4(3.15g)を得た。その際の配位高分子は、Rがブチル基のものであった。
【0071】
亜鉛複合MFI型ゼオライト4を540℃で2時間焼成して酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト4を調製した。
【0072】
得られた酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト4に含まれる亜鉛量は1.2重量%であった。また、粉末X線回折測定で観測される回折パターンにおいて、(1 0 1)面反射に該当するピークの高さaと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比a/bは0.52、(0 3 3)面反射に該当するピークの高さcと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比c/bは0.54で、2×c/b≧[5×a/b]-3を満足するものであった。結果を図1に示す。
【0073】
酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト4を芳香族化合物製造用触媒とし、プロパンを原料とし、上記の条件にて芳香族化合物の製造を行った。ガス流通開始75分後のプロパン転化率は50.9%、芳香族化合物選択率は48.6%でであった。プロパン転化率と芳香族化合物選択率の関係を図2に示す。比較例で示した酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト(C-1)~(C-3)を用いた場合よりも高い芳香族化合物選択率を示すものであった。
【0074】
実施例5
参考例1で得られたMFI型ゼオライト2.50gに、硝酸亜鉛六水和物228mg(0.766mmol)、2-フェニルイミダゾール1.11g(7.69mmol)、DMF28.5mLを加え、超音波を10分間照射した後、140℃にて24時間加熱撹拌した。反応混合物を室温に放冷後、固体を遠心分離にて集め、DMF(30mLx3)、メタノール(30mLx3)で洗浄し、真空乾燥することで、黄白色粉末の亜鉛複合MFI型ゼオライト5(3.16g)を得た。その際の配位高分子は、Rがフェニル基のものであった。
【0075】
亜鉛複合MFI型ゼオライト5を540℃で2時間焼成して酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト5を調製した。
【0076】
得られた酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト5に含まれる亜鉛量は1.9重量%であった。また、粉末X線回折測定で観測される回折パターンにおいて、(1 0 1)面反射に該当するピークの高さaと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比a/bは0.54、(0 3 3)面反射に該当するピークの高さcと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比c/bは0.46で、2×c/b≧[5×a/b]-3を満足するものであった。結果を図1に示す。
【0077】
酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト5を芳香族化合物製造用触媒とし、プロパンを原料とし、上記の条件にて芳香族化合物の製造を行った。ガス流通開始75分後のプロパン転化率は70.9%、芳香族化合物選択率は39.7%であった。プロパン転化率-芳香族化合物選択率の関係を図2に示す。比較例で示した酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト(C-1)~(C-3)を用いた場合よりも高い芳香族化合物選択率を示すものであった。
【0078】
実施例6
硝酸亜鉛六水和物228mg(0.766mmol)、2-フェニルイミダゾール1.11g(7.67mmol)、DMF28.5mLを加え、超音波を10分間照射した後、140℃にて24時間加熱撹拌した。反応混合物を室温に放冷後、固体を遠心分離にて集め、DMF(30mLx3)、メタノール(30mLx3)で洗浄し、真空乾燥することで、配位高分子190mgを得た。その際の配位高分子は、Rがフェニル基のものであった。
【0079】
得られた配位高分子0.0792gと参考例1で得られたMFI型ゼオライト1.55gを混合し、亜鉛複合MFI型ゼオライト6とした。さらに540℃で2時間焼成して酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト6を調製した。
【0080】
得られた酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト6に含まれる亜鉛量は1.4重量%であった。また、粉末X線回折測定で観測される回折パターンにおいて、(1 0 1)面反射に該当するピークの高さaと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比a/bは0.78、(0 3 3)面反射に該当するピークの高さcと(0 5 1)面反射に該当するピークの高さbの比c/bは0.49で、2×c/b≧[5×a/b]-3を満足するものであった。結果を図1に示す。
【0081】
酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト6を芳香族化合物製造用触媒とし、プロパンを原料とし、上記の条件にて芳香族化合物の製造を行った。ガス流通開始75分後のプロパン転化率は59.1%、芳香族化合物選択率は45.2%であった。プロパン転化率-芳香族化合物選択率の関係を図2に示す。比較例で示した酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライト(C-1)~(C-3)を用いた場合よりも高い芳香族化合物選択率を示すものであった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
低級脂肪族炭化水素から芳香族化合物を製造する際に、本発明の酸化亜鉛修飾MFI型ゼオライトを用いれば、生産性に優れ、工業的に非常に有用なものとなる。
図1
図2