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特許7394956金属充填微細構造体、及び金属充填微細構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】金属充填微細構造体、及び金属充填微細構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/00 20060101AFI20231201BHJP
   C25D 5/02 20060101ALI20231201BHJP
   C25D 5/10 20060101ALI20231201BHJP
   C25D 5/12 20060101ALI20231201BHJP
   C25D 5/44 20060101ALI20231201BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20231201BHJP
   C25D 11/20 20060101ALI20231201BHJP
   C25D 11/24 20060101ALI20231201BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20231201BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
C25D1/00 381
C25D5/02 B
C25D5/10
C25D5/12
C25D5/44
C25D7/00 G
C25D11/20 302
C25D11/24 302
H01B5/16
H01R11/01 501H
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022503136
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2021000775
(87)【国際公開番号】W WO2021171808
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2020030735
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 雄一
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057150(WO,A1)
【文献】特開2012-224944(JP,A)
【文献】特開2019-149448(JP,A)
【文献】特開平06-334087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00
C25D 5/02
C25D 5/10
C25D 5/12
C25D 5/44
C25D 7/00
C25D 11/20
C25D 11/24
H01B 5/16
H01R 11/01
H05K 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜と、
前記絶縁膜の厚み方向に貫通して設けられた、複数の針状の導通体とを有し、
前記複数の前記導通体は、それぞれ本体部と、前記導通体の少なくとも一方の先端に設けられた第1領域部と、前記本体部と前記第1領域部との間に設けられた第2領域部とを有し、
前記第1領域部は第1金属を含み、前記第2領域部は第2金属を含み、前記本体部は第3金属を含んでおり、
前記第1領域部は、前記第1金属を前記第2領域部及び前記本体部よりも多く含み、前記第1領域部の前記第1金属の含有量が80質量%以上であり、
前記第2領域部は、前記第2金属を前記第1領域部及び前記本体部よりも多く含み、前記第2領域部の前記第2金属の含有量が80質量%以上であり、
前記本体部は、前記第3金属を前記第1領域部及び前記第2領域部よりも多く含み、前記本体部の前記第3金属の含有量が80質量%以上であり、
前記第1金属のイオン化傾向をQ1とし、前記第2金属のイオン化傾向をQ2とし、前記第3金属のイオン化傾向をQ3とするとき、Q3<Q2<Q1である、金属充填微細構造体。
【請求項2】
前記第1金属は、Zn、Cr、Fe、Cd、又はCoである、請求項1に記載の金属充填微細構造体。
【請求項3】
前記第2金属は、Ni又はSnである、請求項1又は2に記載の金属充填微細構造体。
【請求項4】
前記第3金属は、Cu、又はAuである、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属充填微細構造体。
【請求項5】
前記絶縁膜は、アルミニウムの陽極酸化膜である、請求項1~4のいずれか1項に記載の金属充填微細構造体。
【請求項6】
複数の細孔を有する絶縁膜に対して、前記複数の前記細孔に、それぞれ第1充填物と、第2充填物と、第3充填物とを、この順で充填する工程を有し、
前記第1充填物は、第1金属を前記第2充填物及び前記第3充填物よりも多く含み、前記第1充填物の前記第1金属の含有量が80質量%以上であり、
前記第2充填物は、第2金属を前記第1充填物及び前記第3充填物よりも多く含み、前記第2充填物の前記第2金属の含有量が80質量%以上であり、
前記第3充填物は、第3金属を前記第1充填物及び前記第2充填物よりも多く含み、前記第3充填物の前記第3金属の含有量が80質量%以上であり、
前記第1金属のイオン化傾向をQ1とし、前記第2金属のイオン化傾向をQ2とし、前記第3金属のイオン化傾向をQ3とするとき、Q3<Q2<Q1である、金属充填微細構造体の製造方法。
【請求項7】
前記第1充填物と、前記第2充填物と、前記第3充填物とを充填する工程は、金属めっき工程である、請求項6に記載の金属充填微細構造体の製造方法。
【請求項8】
前記第1金属は、Zn、Cr、Fe、Cd、又はCoである、請求項6又は7に記載の金属充填微細構造体の製造方法。
【請求項9】
前記第2金属は、Ni又はSnである、請求項6~8のいずれか1項に記載の金属充填微細構造体の製造方法。
【請求項10】
前記第3金属は、Cu、又はAuである、請求項6~9のいずれか1項に記載の金属充填微細構造体の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁膜は、アルミニウムの陽極酸化膜である、請求項6~10のいずれか1項に記載の金属充填微細構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁体の厚み方向に貫通して設けられた、複数の導通体を有する金属充填微細構造体、金属充填微細構造体の製造方法及び構造体に関し、特に、導通体の欠陥を抑制した金属充填微細構造体、金属充填微細構造体の製造方法及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化膜等の絶縁性基材の厚み方向に貫通した複数の貫通孔に金属が充填された金属充填微細構造体は、近年ナノテクノロジーでも注目されている分野のひとつである。金属充填微細構造体は、例えば、電池用電極、ガス透過膜、センサ、及び異方導電性部材等の用途が期待されている。
異方導電性部材は、半導体素子等の電子部品と回路基板との間に挿入し、加圧するだけで電子部品と回路基板間の電気的接続が得られるため、半導体素子等の電子部品等の電気的接続部材、及び機能検査を行う際の検査用コネクタ等として広く使用されている。
特に、半導体素子等の電子部品は、ダウンサイジング化が顕著である。従来のワイヤーボンディングのような配線基板を直接接続する方式、フリップチップボンディング、及びサーモコンプレッションボンディング等では、電子部品の電気的な接続の安定性を十分に保証することができないため、電子接続部材として異方導電性部材が注目されている。
【0003】
上述の金属充填微細構造体の製造方法において、複数の貫通孔への金属充填には、めっき法が用いられる。めっき法としては、電解めっき、又は無電解めっきが用いられる。他にも、例えば、特許文献1に、1つ以上の凹部特徴を含むウエハ基板上に銅を電気めっき法が記載されている。
特許文献1は、ウエハ基板の表面の少なくとも一部分の上にニッケル含有シード層及び/又はコバルト含有シード層が露出されたウエハ基板を用意することと、ウエハ基板上のシード層をプリウェットするために、少なくとも約10g/Lの濃度の第二銅(Cu2+)イオンと、電気めっき抑制剤とを含むプリウェット液にウエハ基板を接触させることと、シード層の上に銅を電着させることであって、電着された銅は、1つ以上の凹部特徴を少なくとも部分的に充填する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-186127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の金属充填微細構造体において、全ての細孔に対して、金属が十分に充填されないこと等の充填欠陥が生じる可能性を考慮する必要がある。上述の特許文献1に記載の銅の電気めっき方法では、高い濃度の第二銅イオンと電気めっき抑制剤とを含むプリウェット液にウエハ基板を接触させてシード層を形成して、このシード層の上に銅を電着させている。
しかしながら、特許文献1はシード層が1層の構成であり、必ずしも細孔に金属を十分に充填できない可能性があり、充填された金属で構成される導電体に空隙等の構造欠陥が生じることがある。
【0006】
本発明の目的は、複数の細孔への金属充填に際し、複数の細孔への金属の充填欠陥を抑制し、充填された金属で構成される導電体の構造欠陥を抑制した金属充填微細構造体、金属充填微細構造体の製造方法及び構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の第1の態様は、絶縁膜と、絶縁膜の厚み方向に貫通して設けられた、複数の針状の導通体とを有し、複数の導通体は、それぞれ本体部と、導通体の少なくとも一方の先端に設けられた第1領域部と、本体部と第1領域部との間に設けられた第2領域部とを有し、第1領域部は第1金属を含み、第2領域部は第2金属を含み、本体部は第3金属を含んでおり、第1領域部は、第1金属を第2領域部よりも多く含み、第1金属は、第2金属よりもイオン化傾向が大きい、金属充填微細構造体を提供するものである。
【0008】
第1領域部は、第1金属を第2領域部及び本体部よりも多く含み、第2領域部は、第2金属を第1領域部及び本体部よりも多く含み、本体部は、第3金属を第1領域部及び第2領域部よりも多く含んでおり、第1金属のイオン化傾向をQ1とし、第2金属のイオン化傾向をQ2とし、第3金属のイオン化傾向をQ3とするとき、Q3<Q2<Q1であることが好ましい。
第1金属は、Zn、Cr、Fe、Cd、又はCoであることが好ましい。
第2金属は、Ni又はSnであることが好ましい。
第3金属は、Cu、又はAuであることが好ましい。
絶縁膜は、アルミニウムの陽極酸化膜であることが好ましい。
【0009】
本発明の第2の態様は、複数の細孔を有する絶縁膜に対して、複数の細孔に、それぞれ第1充填物と、第2充填物と、第3充填物とを、この順で充填する工程を有し、第1充填物は、第1金属を第2充填物及び第3充填物よりも多く含み、第2充填物は、第2金属を第1充填物及び第3充填物よりも多く含み、第3充填物は、第3金属を第1充填物及び第2充填物よりも多く含んでおり、第1金属のイオン化傾向をQ1とし、第2金属のイオン化傾向をQ2とし、第3金属のイオン化傾向をQ3とするとき、Q3<Q2<Q1である、金属充填微細構造体の製造方法を提供するものである。
第1充填物と、第2充填物と、第3充填物とを充填する工程は、金属めっき工程である
ことが好ましい。
第1金属は、Zn、Cr、Fe、Cd、又はCoであることが好ましい。
第2金属は、Ni又はSnであることが好ましい。
第3金属は、Cu、又はAuであることが好ましい。
絶縁膜は、アルミニウムの陽極酸化膜であることが好ましい。
【0010】
本発明の第3の態様は、絶縁膜に設けられた、複数の細孔と、細孔の底部に設けられた、導体部とを有し、導体部は、細孔の底部側に配置された第1領域部と、第1領域部に積層された第2領域部とを有し、第1領域部は第1金属を含み、第2領域部は第2金属を含んでおり、第1領域部は、第1金属を第2領域部よりも多く含み、第1金属は、第2金属よりもイオン化傾向が大きい、構造体を提供するものである。
絶縁膜は、細孔の底部側に基板が積層されていることが好ましい。
第1金属は、Zn、Cr、Fe、Cd、又はCoであることが好ましい。
絶縁膜は、アルミニウムの陽極酸化膜であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の細孔への金属充填に際し、複数の細孔への金属の充填欠陥を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第1態様の一工程を示す模式的断面図である。
図2】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第1態様の一工程を示す模式的断面図である。
図3】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第1態様の一工程を示す模式的断面図である。
図4】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第1態様の一工程を示す模式的断面図である。
図5】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第1態様の一工程を示す模式的断面図である。
図6】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第1態様の一工程を示す模式的断面図である。
図7】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第1態様の一工程を拡大して示す模式的断面図である。
図8】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第1態様の一工程を拡大して示す模式的断面図である。
図9】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第1態様の一工程を拡大して示す模式的断面図である。
図10】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第2態様の一工程を示す模式的断面図である。
図11】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第2態様の一工程を示す模式的断面図である。
図12】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第2態様の一工程を拡大して示す模式的断面図である。
図13】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第3態様の一工程を示す模式的断面図である。
図14】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第3態様の一工程を示す模式的断面図である。
図15】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第3態様の一工程を示す模式的断面図である。
図16】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第3態様の一工程を示す模式的断面図である。
図17】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第3態様の一工程を示す模式的断面図である。
図18】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第3態様の一工程を示す模式的断面図である。
図19】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第3態様の一工程を拡大して示す模式的断面図である。
図20】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の一例を示す平面図である。
図21】本発明の実施形態の金属充填微細構造体の一例を示す模式的断面図である。
図22】本発明の実施形態の金属充填微細構造体を用いた異方導電材の構成の一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の金属充填微細構造体、金属充填微細構造体の製造方法及び構造体を詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
なお、以下において数値範囲を示す「~」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値α~数値βとは、εの範囲は数値αと数値βを含む範囲であり、数学記号で示せばα≦ε≦βである。
「直交」等の角度、温度、及び圧力について、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
また、「同一」とは、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。また、「全面」等は、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
【0014】
非常に微細な貫通孔を有するアルミニウムの陽極酸化膜等の絶縁性基材の貫通孔内に金属を充填めっきする要望が多い。しかし、部分的な充填欠陥が発生する。充填欠陥は実験用途であれば問題にならないが、電池用電極、ガス透過膜、及びセンサ等に用いるために、金属充填微細構造体の面積を大きくすると、上述の充填欠陥により、接合不良等の影響が生じる。
以下、金属充填微細構造体の製造方法について、具体的に説明する。製造される金属充填微細構造体は、酸化膜で構成される絶縁膜(絶縁性基材)と、絶縁膜の厚み方向に貫通して設けられた、複数の針状の導通体とを有する。絶縁膜により、複数の針状の導通体は、それぞれ物理的に隔てられ、かつ導通体が互いに電気的に絶縁された状態に保たれる。絶縁膜は、例えば、酸化膜で構成される。酸化膜は、特に限定されるものではないが、アルミニウムの陽極酸化膜で構成されることを例にして説明する。この場合、金属充填微細構造体の製造には、金属部材として、アルミニウム部材を用いる。
【0015】
<第1態様>
図1図6は本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第1態様を工程順に示す模式的断面図である。図7図9は本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第1態様の一工程を拡大して示す模式的断面図である。
まず、金属部材として、例えば、図1に示すアルミニウム部材10を用意する。
アルミニウム部材10は、最終的に得られる金属充填微細構造体20(図6参照)のアルミニウムの陽極酸化膜14の厚み、すなわち、絶縁性基材の厚み、加工する装置等に応じて大きさ及び厚みが適宜決定されるものである。アルミニウム部材10は、例えば、矩形状の板材である。
【0016】
次に、アルミニウム部材10の片側の表面10a(図1参照)を陽極酸化処理する。これにより、アルミニウム部材10の片側の表面10a(図1参照)が陽極酸化されて、図2に示すように、アルミニウム部材10の厚み方向Dtに延在する複数の貫通孔12の底部に存在するバリア層13を有する陽極酸化膜14が形成される。上述の陽極酸化する工程を陽極酸化処理工程という。例えば、陽極酸化処理により、金属部材の表面に複数の細孔を有する絶縁膜が形成される。
【0017】
複数の貫通孔12を有する陽極酸化膜14には、上述のように貫通孔12の底部にバリア層13が存在するが、図3に示すようにバリア層13を除去する。このバリア層13を除去する工程をバリア層除去工程という。
バリア層除去工程において、アルミニウムよりも水素過電圧の高い金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いることにより、陽極酸化膜14のバリア層13を除去すると同時に、図3及び図7に示すように、陽極酸化膜14の貫通孔12の底部12cの面12d上、すなわち、アルミニウム部材10の表面10a上に、金属M1からなる第1領域部16aが形成される。第1領域部16aの形態としては、貫通孔12の底部12cのアルミニウム部材10の表面10aに部分的に分散した形態でもよく、アルミニウム部材10の表面10a全面を覆う形態でもよい。第1領域部16aを構成する金属M1が第1充填物15aに相当する。また、金属M1は、例えば、Zn単体であるが、Znを含む金属でもよい。なお、第1領域部16aは貫通孔12の底部12cに存在している。第1領域部16aの厚みは、好ましくは20nm以下であり、更に好ましくは10nm以下である。
上述のバリア層除去工程は、第1充填物15aを、陽極酸化膜14の貫通孔12の内部に充填する工程を兼ねる。バリア層除去工程により、第1領域部16aが形成される。また、金属M1は、第1金属に相当する。
【0018】
次に、図4及び図8に示すように、陽極酸化膜14の貫通孔12の内部に、第2充填物15bとして、例えば、第1金属よりもイオン化傾向が小さい第2金属を充填して、第1領域部16a上、かつ貫通孔12の内部の一部の範囲に第2領域部16bを形成する。これにより、貫通孔12の底部12cの面12dに、底部12c側に配置された第1領域部16aと、第1領域部16a上に積層された第2領域部16bとを有する、導体部17が構成される。
陽極酸化膜14の貫通孔12の底部12cに、導体部17が形成された状態のものを構造体19という。図8に示す構造体19は、導通体16を構成する本体部16cの形成前の状態である。
【0019】
なお、導体部17において、第1領域部16aは第1金属を含み、第2領域部16bは第2金属を含んでおり、第1領域部16aは、第1金属を第2領域部16bよりも多く含んでいる。かつ第1金属は、第2金属よりもイオン化傾向が大きい。すなわち、第1金属のイオン化傾向をQ1とし、第2金属のイオン化傾向をQ2とするとき、イオン化傾向の関係は、Q2<Q1である。
なお、多く含むとは、各領域部において、金属を絶対量として80質量%以上含むことである。このため、例えば、上述の第1領域部16aが第1金属を第2領域部16bよりも多く含んでいるとは、第1領域部16aの第1金属の含有量が80質量%以上であり、第2領域部16bの第1金属の含有量が80質量%未満であることをいう。
各領域部における金属の含有量は、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いて求めることができる。
【0020】
また、第1領域部16aを構成する第1充填物15aと、第2領域部16bを構成する第2充填物15bについても、第1領域部16aと第2領域部16bと同様に、第1充填物15aは、第1金属を第2充填物15bよりも多く含んでいる。第2充填物15bは、第2金属を第1充填物15aよりも多く含んでいる。第1金属と第2金属のイオン化傾向の関係は、Q2<Q1である。このため、第1充填物15aは、第2充填物15bよりもイオン化傾向が大きい。第1金属と第2金属のイオン化傾向の関係を、Q2<Q1とすることにより、貫通孔12(細孔)に欠陥を少なく金属を充填することができる。
例えば、第1金属がZr,第2金属がNiの場合、第1領域部16aのZnを触媒にして、Niが析出し、シード層を形成する。この場合、導体部17がシード層に相当する。シード層により、第2領域部16b上に、後述の本体部16cを形成しやすくなる。
【0021】
なお、第2領域部16bは、陽極酸化膜14の貫通孔12の内部の全てを充填するものではない。第1領域部16aと第1領域部16aの合計の厚みで50nm以下であることが好ましい。上述の合計の厚みの下限としては10nm以上であることが好ましい。上述の合計の厚みが50nm以下であれば、次工程の第3充填物15cを容易に充填することができる。
【0022】
次に、図5及び図9に示すように、陽極酸化膜14の貫通孔12の内部に、第3充填物15cとして、例えば、第3金属を、陽極酸化膜14の表面14aまで充填して、図5及び図9に示すように、第2領域部16b上に本体部16cを形成する。これにより、針状の導通体16が形成される。針状の導通体16は、貫通孔12の底部12c側から、第1領域部16aと、第2領域部16bと、本体部16cとを有する。
【0023】
導通体16において、本体部16cは第3金属を含む。第1領域部16aは、第1金属を第2領域部16b及び本体部16cよりも多く含んでいる。第2領域部16bは、第2金属を第1領域部16a及び本体部16cよりも多く含んでいる。本体部16cは、第3金属を第1領域部16a及び第2領域部16bよりも多く含んでいる。ここで、第1金属のイオン化傾向をQ1とし、第2金属のイオン化傾向をQ2とし、第3金属のイオン化傾向をQ3とするとき、イオン化傾向の関係は、Q3<Q2<Q1である。このように、導通体16を構成する第1領域部16aと、第2領域部16bと、本体部16cとのイオン化傾向を調整することにより、構造欠陥の少ない導通体16を得ることができる。上述のように第1領域部16aと第2領域部16bとでシード層が形成され、第3充填物15cが第2領域部16bに密着しやすくなり、本体部16cの形成が容易になる。こため、貫通孔12が細長く、(貫通孔12の長さ)/(貫通孔12の直径)で表されるアスペクト比が大きい場合でも、充填欠陥が少ない導通体16が得られる。
【0024】
また、第1領域部16aを構成する第1充填物15aと、第2領域部16bを構成する第2充填物15bと、本体部16cを構成する第3充填物15cについても、第1領域部16aと第2領域部16bと本体部16cと同様に、第1充填物15aは、第1金属を第2充填物15b及び第3充填物15cよりも多く含み、第2充填物15bは、第2金属を第1充填物15a及び第3充填物15cよりも多く含み、第3充填物15cは、第3金属を第1充填物15a及び第2充填物15bよりも多く含んでいる。
第1金属と第2金属と第3金属のイオン化傾向の関係は、Q3<Q2<Q1である。このため、第1充填物15aは、第2充填物15bよりもイオン化傾向が大きい。第1金属と第2金属と第3金属のイオン化傾向の関係を、Q3<Q2<Q1とすることにより、貫通孔12(細孔)に欠陥を少なく金属を充填することができる。
なお、第1充填物及び第1領域部は、第1金属を多く含むが、第2金属及び第3金属、ならびにその他の金属を含んでいてもよい。第2充填物及び第2領域部は、第2金属を多く含むが、第1金属及び第3金属、ならびにその他の金属を含んでいてもよい。第3充填物及び本体部は、第3金属を多く含むが、第1金属及び第2金属、ならびにその他の金属を含んでいてもよい。
【0025】
第2充填物15bの貫通孔12の内部への充填、及び第3充填物15cの貫通孔12の内部への充填は、例えば、金属めっき工程により実施される。この場合、第1金属を含む第1領域部16aを、金属めっきの際に電極として用いることができる。
貫通孔12の内部に、第2充填物15b、第3充填物15cを充填する充填工程については後に詳細に説明する。また、バリア層除去工程において、第1領域部16aを形成したが、これに限定されるものではなく、後述のように充填工程において、第1充填物15aを貫通孔12の内部に充填して、第1領域部16aを形成することもできる。
充填工程の後に、図6に示すようにアルミニウム部材10を除去する。これにより、金属充填微細構造体20が得られる。アルミニウム部材10を除去する工程を基板除去工程という。
【0026】
図6に示す金属充填微細構造体20では、導通体16は、陽極酸化膜14の裏面14b側の先端に第1領域部16aと第2領域部16bとが設けられた構成であるが、これに限定されるものではない。第1領域部16aと第2領域部16bとは、導通体16の少なくとも一方の先端に設けられていればよく、導通体16の両方の先端に設けてもよい。
【0027】
めっき工程の前のバリア層除去工程において、金属部材、例えば、アルミニウムよりも水素過電圧の高い金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いてバリア層を除去することにより、バリア層13を除去するだけでなく、貫通孔12の底部12cに露出したアルミニウム部材10にアルミニウムよりも水素ガスが発生しにくい金属M1の第1領域部16aが形成される。その結果、金属充填の面内均一性が良好となる。これは、めっき液による水素ガスの発生が抑制され、電解めっきによる金属充填が進行しやすくなったと考えられる。
詳しいメカニズムは不明だが、バリア層除去工程において、金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いることでバリア層下部に金属M1の層が形成され、これによりアルミニウム部材と陽極酸化膜との界面がダメージを受けることを抑制することができ、バリア層の溶解の均一性が向上したためと考えられる。
【0028】
なお、バリア層除去工程において、貫通孔12の底部12cに第1金属(金属M1)からなる第1領域部16aを形成したが、これに限定されるものではない。例えば、バリア層13だけを除去し、貫通孔12の底にアルミニウム部材10を露出させる。充填工程において、貫通孔12の底の露出させたアルミニウム部材10の表面10aに、例えば、蒸着法、めっき法を用いて、第1充填物15aとして第1金属を充填して、第1領域部16aを形成することもできる。
【0029】
<第2態様>
図10及び図11は本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第2態様を工程順に示す模式的断面図である。図12は本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第1態様の一工程を拡大して示す模式的断面図である。なお、図10図12において、図1図9に示す構成と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
第2態様は、上述の第1態様に比して、第1領域部16a及び第2領域部16bを形成した図4に示す構造体19に対してアルミニウム部材10を除去し、図10に示す構造体19を得る点が異なる。アルミニウム部材10の除去は、基板除去工程を利用することができるため、詳細な説明は省略する。
【0030】
構造体19は、図10に示すようにアルミニウム部材10(図4参照)がなく、陽極酸化膜14単体の構成でもよい。この場合、図12に示すように、アルミニウム部材10がない状態で、貫通孔12の内部に第1領域部16aと第2領域部16bとが積層されて導体部17が構成される。
図10に示す陽極酸化膜14に対して、複数の貫通孔12の内部に、第3充填物15cとして、例えば、第3金属を、めっき法により充填して、第2領域部16b上に本体部16cを形成する。これにより、図11に示すように、複数の貫通孔12の内部に導通体16を形成し、金属充填微細構造体20を得ることができる。上述のようにアルミニウム部材10がない場合、導体部17(図12参照)を金属めっきの際に電極として用いることができる。
【0031】
<第3態様>
図13図18は、本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第3態様を工程順に示す模式的断面図である。図19は本発明の実施形態の金属充填微細構造体の製造方法の第3態様の一工程を拡大して示す模式的断面図である。なお、図13図19において、図1図9に示す構成と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0032】
第3態様は、上述の第1態様に比して、金属部材にアルミニウム部材10を用いることなく、金属部材24(図15図19参照)を用いる点が異なる。
また、第3態様は、上述の第1態様に比して、以下に示す工程が異なる。第1態様において、図2に示す陽極酸化膜14が形成されたアルミニウム部材10に対して、第3態様ではアルミニウム部材10を除去し、図13に示す陽極酸化膜14を得る。アルミニウム部材10の除去は、基板除去工程を利用することができるため、詳細な説明は省略する。
【0033】
次に、図13に示す陽極酸化膜14の貫通孔12を拡径し、かつバリア層13を除去して、図14に示すように、陽極酸化膜14に厚み方向Dtに貫通する貫通孔12を複数形成する。
貫通孔12(細孔)の拡径には、例えば、ポアワイド処理が用いられる。ポアワイド処理は、陽極酸化膜を、酸水溶液又はアルカリ水溶液に浸漬させることにより、陽極酸化膜を溶解させ、貫通孔12(細孔)の孔径を拡大する処理である、ポアワイド処理には、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸又はこれらの混合物の水溶液、又は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等の水溶液を用いることができる。
【0034】
次に、図14に示す陽極酸化膜14の裏面14bの全面に、例えば、図15に示すように、金属部材24を形成する。金属部材24を形成する工程を、金属部材形成工程という。
金属部材形成工程では、金属部材24の形成に、例えば、蒸着法、スパッタ法、又は無電解めっき法等が用いられる。金属部材24は、バルブ金属でないものであることが好ましく、例えば、Au(金)等の貴金属で構成される。金属部材24は、上述の第1領域部16aと同じものでもよい。
ここで、図19に示すように、陽極酸化膜14の裏面14b側に金属部材24が設けられている。金属部材24は、貫通孔12の陽極酸化膜14の裏面14b側の開口を全て覆っている。金属部材24は、例えば、Auで構成されている。陽極酸化膜14の裏面14bに金属部材24を設けることにより、貫通孔12へめっき法を用いた第1金属、第2金属及び第3金属の充填の際に、めっきが進行しやすくなり、金属が十分に充填されないことが抑制され、貫通孔12への金属の未充填等が抑制される。
【0035】
次に、図16に示すように、陽極酸化膜14に金属部材24が形成された状態で、陽極酸化膜14の貫通孔12の内部に、例えば、めっき法を用いて、第1充填物15aとして第1金属を充填し、第1領域部16aを形成する。
次に、図17に示すように、陽極酸化膜14の貫通孔12の内部に、第1態様と同じく、例えば、めっき法を用いて、第2充填物15bとして第2金属を充填し、第2領域部16bを第1領域部16a上に形成する。これにより、貫通孔12の底部に導体部17が形成され、構造体19が得られる。
次に、図18に示すように、第1態様と同じく、例えば、めっき法を用いて、第3充填物15cとして第金属を充填し、本体部16cを第2領域部16b上に形成する。これにより、導通体16を形成する。
次に、金属部材24を除去して、図6に示す金属充填微細構造体20を得る。金属部材24を除去する方法は、金属部材24を除去することができれば、特に限定されるものではなく、エッチング、又は研磨が挙げられる。
【0036】
<他の態様>
上述の第1態様~第3態様において、金属突出工程、又は樹脂層形成工程を含んでもよい。金属突出工程、及び樹脂層形成工程については、後に説明する。
製造方法としては、例えば、上述の陽極酸化処理工程、保持工程、バリア層除去工程、めっき工程、表面金属突出工程、樹脂層形成工程、基板除去工程及び裏面金属突出工程を組み合わせて実施してもよい。
また、所望の形状のマスク層を用いてアルミニウム部材の表面の一部に陽極酸化処理を施してもよい。
以上の金属充填微細構造体の製造方法では、第1充填物15a、第2充填物15b及び第3充填物15cについて、第1金属のイオン化傾向Q1、第2金属のイオン化傾向Q2、第3金属のイオン化傾向Q3を、Q3<Q2<Q1とすることにより、複数の貫通孔12(細孔)への部分的な充填欠陥の発生を抑制することができ、貫通孔12に対する充填欠陥が少ない金属充填微細構造体を得ることがきる。このため、金属充填微細構造体を用いて異方導電性部材を製造した場合、導通体の設置密度を飛躍的に向上させ、高集積化が一層進んだ現在においても半導体素子等の電子部品の電気的接続部材、又は検査用コネクタ等として使用することができる。
【0037】
〔金属部材〕
金属部材は、金属充填微細構造体の製造に用いられるものであり、上述のように、陽極酸化膜が形成できるものであることが好ましく、上述のバルブ金属で構成されることが好ましい。上述のように金属部材としてアルミニウム部材が用いられる。
また、金属部材としては、第3態様のように、陽極酸化膜に金属部材を設ける場合、バルブ金属以外に、例えば、貴金属を用いることもできる。貴金属は、例えば、Au(金)、Ag(銀)及び白金族(Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt)等である。
【0038】
<アルミニウム部材>
アルミニウム部材は、特に限定されず、その具体例としては、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハ、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板;等が挙げられる。
【0039】
アルミニウム部材のうち、陽極酸化処理工程により陽極酸化膜を設ける表面は、アルミニウム純度が、99.5質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上であることがより好ましく、99.99質量%以上であることが更に好ましい。アルミニウム純度が上述の範囲であると、貫通孔配列の規則性が十分となる。
【0040】
また、アルミニウム部材のうち陽極酸化処理工程を施す片側の表面は、予め熱処理、脱脂処理及び鏡面仕上げ処理が施されることが好ましい。
ここで、熱処理、脱脂処理及び鏡面仕上げ処理については、特開2008-270158号公報の[0044]~[0054]段落に記載された各処理と同様の処理を施すことができる。
【0041】
〔陽極酸化処理工程〕
陽極酸化工程は、上述のアルミニウム部材の片面に陽極酸化処理を施すことにより、上述のアルミニウム部材の片面に、厚み方向に貫通する貫通孔と貫通孔の底部に存在するバリア層とを有する陽極酸化膜を形成する工程である。
陽極酸化処理は、従来公知の方法を用いることができるが、貫通孔配列の規則性を高くし、金属充填微細構造体の異方導電性を担保する観点から、自己規則化法又は定電圧処理を用いることが好ましい。
ここで、陽極酸化処理の自己規則化法及び定電圧処理については、特開2008-270158号公報の[0056]~[0108]段落及び[図3]に記載された各処理と同様の処理を施すことができる。
【0042】
<陽極酸化処理>
陽極酸化処理における電解液の平均流速は、0.5~20.0m/minであることが好ましく、1.0~15.0m/minであることがより好ましく、2.0~10.0m/minであることが更に好ましい。
また、電解液を上述の条件で流動させる方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般的なかくはん装置を使用する方法が用いられる。特に、かくはん速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速が制御できるため好ましい。このようなかくはん装置としては、例えば、「マグネティックスターラーHS-50D(AS ONE製)」等が挙げられる。
【0043】
陽極酸化処理は、例えば、酸濃度1~10質量%の溶液中で、アルミニウム部材を陽極として通電する方法を用いることができる。
陽極酸化処理に用いられる溶液としては、酸溶液であることが好ましく、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、グリコール酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸等がより好ましく、中でも硫酸、リン酸、シュウ酸が特に好ましい。これらの酸は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には、電解液濃度0.1~20質量%、液温-10~30℃、電流密度0.01~20A/dm2、電圧3~300V、電解時間0.5~30時間であることが好ましく、電解液濃度0.5~15質量%、液温-5~25℃、電流密度0.05~15A/dm2、電圧5~250V、電解時間1~25時間であることがより好ましく、電解液濃度1~10質量%、液温0~20℃、電流密度0.1~10A/dm2、電圧10~200V、電解時間2~20時間であることが更に好ましい。
【0045】
上述の陽極酸化処理工程は、金属充填微細構造体20を、巻き芯に巻き取られた形状で供給する観点から、陽極酸化処理により形成される陽極酸化膜の平均厚みが40μm以下であることが好ましく、5~20μmであることがより好ましい。なお、平均厚みは、陽極酸化膜を厚さ方向に対して集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)で切削加工し、その断面を電界放射型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope:FE-SEM)により表面写真(倍率5万倍)を撮影し、10点測定した平均値として算出した。
【0046】
〔保持工程〕
金属充填微細構造体の製造方法は保持工程を有してもよい。保持工程は、上述の陽極酸化処理工程の後に、1V以上かつ上述の陽極酸化処理工程における電圧の30%未満の範囲から選択される保持電圧の95%以上105%以下の電圧に通算5分以上保持する工程である。言い換えると、保持工程は、上述の陽極酸化処理工程の後に、1V以上かつ上述の陽極酸化処理工程における電圧の30%未満の範囲から選択される保持電圧の95%以上105%以下の電圧で通算5分以上電解処理を施す工程である。保持工程により、めっき処理時の金属充填の均一性が大きく良化する。
ここで、「陽極酸化処理における電圧」とは、アルミニウムと対極間に印加する電圧であり、例えば、陽極酸化処理による電解時間が30分であれば、30分の間に保たれている電圧の平均値をいう。
【0047】
陽極酸化膜の側壁厚み、すなわち、貫通孔の深さに対してバリア層の厚みを適切な厚みに制御する観点から、保持工程における電圧が、陽極酸化処理における電圧の5%以上25%以下であることが好ましく、5%以上20%以下であることがより好ましい。
【0048】
また、面内均一性がより向上する理由から、保持工程における保持時間の合計が、5分以上20分以下であることが好ましく、5分以上15分以下であることがより好ましく、5分以上10分以下であることが更に好ましい。
また、保持工程における保持時間は、通算5分以上であればよいが、連続5分以上であることが好ましい。
【0049】
更に、保持工程における電圧は、陽極酸化処理工程における電圧から保持工程における電圧まで連続的又は段階的(ステップ状)に降下させて設定してもよいが、面内均一性が更に向上する理由から、陽極酸化処理工程の終了後、1秒以内に、上述の保持電圧の95%以上105%以下の電圧に設定することが好ましい。
【0050】
上述の保持工程は、例えば、上述の陽極酸化処理工程の終了時に電解電位を降下させることにより、上述の陽極酸化処理工程と連続して行うこともできる。
上述の保持工程は、電解電位以外の条件については、上述の従来公知の陽極酸化処理と同様の電解液及び処理条件を採用することができる。
特に、保持工程と陽極酸化処理工程とを連続して施す場合は、同様の電解液を用いて処理することが好ましい。
【0051】
〔バリア層除去工程〕
バリア層除去工程は、例えば、アルミニウムよりも水素過電圧の高い金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いて、陽極酸化膜のバリア層を除去する工程である。
上述のバリア層除去工程により、バリア層が除去され、かつ、貫通孔12の底部に、第1金属からなる第1領域部が形成されることになる。
ここで、水素過電圧(hydrogen overvoltage)とは、水素が発生するのに必要な電圧をいい、例えば、アルミニウム(Al)の水素過電圧は-1.66Vである(日本化学会誌,1982、(8),p1305-1313)。なお、アルミニウムの水素過電圧よりも高い金属M1の例及びその水素過電圧の値を以下に示す。
<金属M1及び水素(1N H2SO4)過電圧>
・白金(Pt):0.00V
・金(Au):0.02V
・銀(Ag):0.08V
・ニッケル(Ni):0.21V
・銅(Cu):0.23V
・錫(Sn):0.53V
・亜鉛(Zn):0.70V
【0052】
後述する陽極酸化処理工程において充填する第2金属と置換反応を起こし、貫通孔の内部に充填される金属の電気的な特性に与える影響が少なくなる理由から、上述のバリア層除去工程で用いる第1金属(金属M1)は、第2金属よりもイオン化傾向が大きい金属を用いる。第1金属は、例えば、Zn、Cr、Fe、Cd、又はCoである。中でも、第1金属としては、Zn、Fe、Coを用いることが好ましく、Znを用いるのがより好ましい。
なお、上述の第1金属(金属M1)のイオンを含むアルカリ水溶液を用いてバリア層を除去する方法は特に限定されず、例えば、従来公知の化学エッチング処理と同様の方法が挙げられる。
【0053】
また、金属充填微細構造体20では、第1領域部16aは、第1金属を第2領域部16b及び本体部16cよりも多く含み、第2領域部16bは、第2金属を第1領域部16a及び本体部16cよりも多く含み、本体部26cは、第3金属を第1領域部16a及び第2領域部16bよりも多く含んでいる。
第1金属のイオン化傾向をQ1とし、第2金属のイオン化傾向をQ2とし、第3金属のイオン化傾向をQ3とするとき、Q3<Q2<Q1である。この構成により、めっきが進行しやすくなり、金属が十分に充填されないことが抑制され、貫通孔12への金属の未充填等が抑制される。
例えば、第1金属は、Zn、Cr、Fe、Cd、又はCoである場合、第2金属は、Ni又はSnである。更に、第3金属は、Cu、又はAuである。
具体的には、めっき工程の第3金属として銅(Cu)を用いる場合には、第2金属にNi、第1金属にZnを用いることが好ましい。
【0054】
<化学エッチング処理>
化学エッチング処理によるバリア層の除去は、例えば、陽極酸化処理工程後の構造物をアルカリ水溶液に浸漬させ、貫通孔の内部にアルカリ水溶液を充填させた後に、陽極酸化膜の貫通孔の開口部側の表面をpH(水素イオン指数)緩衝液に接触させる方法等により、バリア層のみを選択的に溶解させることができる。
【0055】
ここで、上述の金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。また、アルカリ水溶液の濃度は0.1~5質量%であることが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、10~60℃が好ましく、更に15~45℃が好ましく、更に20~35℃であることが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液等が好適に用いられる。
なお、pH緩衝液としては、上述のアルカリ水溶液に対応した緩衝液を適宜使用することができる。
【0056】
また、アルカリ水溶液への浸漬時間は、5~120分であることが好ましく、8~120分であることがより好ましく、8~90分であることが更に好ましく、10~90分であることが特に好ましい。なかでも、10~60分であることが好ましく、15~60分であることがより好ましい。
【0057】
〔バリア層除去工程の他の例〕
バリア層除去工程は、上述以外に、陽極酸化膜のバリア層を除去し、貫通孔の底にアルミニウム部材の一部が露出する工程でもよい。
この場合、バリア層を除去する方法は特に限定されず、例えば、陽極酸化処理工程の陽極酸化処理における電位よりも低い電位でバリア層を電気化学的に溶解する方法(以下、「電解除去処理」ともいう。);エッチングによりバリア層を除去する方法(以下、「エッチング除去処理」ともいう。);これらを組み合わせた方法(特に、電解除去処理を施した後に、残存するバリア層をエッチング除去処理で除去する方法);等が挙げられる。
【0058】
〈電解除去処理〉
電解除去処理は、陽極酸化処理工程の陽極酸化処理における電位(電解電位)よりも低い電位で施す電解処理であれば特に限定されない。
電解溶解処理は、例えば、陽極酸化処理工程の終了時に電解電位を降下させることにより、陽極酸化処理と連続して施すことができる。
【0059】
電解除去処理は、電解電位以外の条件については、上述した従来公知の陽極酸化処理と同様の電解液及び処理条件を採用することができる。
特に、上述したように電解除去処理と陽極酸化処理とを連続して施す場合は、同様の電解液を用いて処理するのが好ましい。
【0060】
(電解電位)
電解除去処理における電解電位は、陽極酸化処理における電解電位よりも低い電位に、連続的又は段階的(ステップ状)に降下させるのが好ましい。
ここで、電解電位を段階的に降下させる際の下げ幅(ステップ幅)は、バリア層の耐電圧の観点から、10V以下であることが好ましく、5V以下であることがより好ましく、2V以下であることが更に好ましい。
また、電解電位を連続的又は段階的に降下させる際の電圧降下速度は、生産性等の観点から、いずれも1V/秒以下が好ましく、0.5V/秒以下がより好ましく、0.2V/秒以下が更に好ましい。
【0061】
〈エッチング除去処理〉
エッチング除去処理は特に限定されないが、酸水溶液又はアルカリ水溶液を用いて溶解する化学エッチング処理であってもよく、ドライエッチング処理であってもよい。
【0062】
(化学エッチング処理)
化学エッチング処理によるバリア層の除去は、例えば、陽極酸化処理工程後の構造物を酸水溶液又はアルカリ水溶液に浸漬させ、細孔の内部に酸水溶液又はアルカリ水溶液を充填させた後に、陽極酸化膜の細孔の開口部側の表面にpH(水素イオン指数)緩衝液に接触させる方法等であり、バリア層のみを選択的に溶解させることができる。
【0063】
ここで、酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸又はこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。また、酸水溶液の濃度は1質量%~10質量%であることが好ましい。酸水溶液の温度は、15℃~80℃が好ましく、更に20℃~60℃が好ましく、更に30℃~50℃が好ましい。
一方、アルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。また、アルカリ水溶液の濃度は0.1質量%~5質量%であることが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、10℃~60℃が好ましく、更に15℃~45℃が好ましく、更に20℃~35℃であることが好ましい。なお、アルカリ水溶液には、亜鉛及び他の金属を含有していてもよい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液等が好適に用いられる。
なお、pH緩衝液としては、上述した酸水溶液又はアルカリ水溶液に対応した緩衝液を適宜使用することができる。
【0064】
また、酸水溶液又はアルカリ水溶液への浸せき時間は、8分~120分であることが好ましく、10分~90分であることがより好ましく、15分~60分であることが更に好ましい。
【0065】
(ドライエッチング処理)
ドライエッチング処理は、例えば、Cl2/Ar混合ガス等のガス種を用いることが好ましい。
【0066】
〔充填工程〕
充填工程は、上述のバリア層除去工程の後に、例えば、金属めっきを行い、陽極酸化膜の複数の貫通孔(細孔)の内部に、第2金属を多く含む第2充填物、第3金属を多く含む第3充填物を充填する工程である。充填工程では、第2充填物及び第3充填物の順で充填する。
充填工程において、金属めっきは電解めっき、及び無電解めっきのうち、いずれでもよいが、電解めっきの方が短時間で処理できるため望ましい。また、例えば、Niは無電解めっきを用いられる。なお、充填工程においては、上述の金属めっき以外に、蒸着を用いることもできる。
また、第1金属はバリア層除去工程で充填されて、第1領域部16aを形成するが、これに限定されるものではなく、第2金属、及び第3金属と同じく金属めっき、及び蒸着を用いることができる。この場合、充填工程では、第1充填物、第2充填物及び第3充填物の順で充填する。
【0067】
充填工程において、第1金属は第1充填物として、第2金属は第2充填物として、第3金属は第3充填物として、充填されるが各充填物では、1つの金属を含むものに限定されるものではなく、複数の金属を含んでもいてもよい。また、第1充填物、第2充填物及び第3充填物は、形態としては、例えば、めっき液である。
以下、第1金属、第2金属及び第3金属について説明する。
【0068】
<第1金属>
第1金属は、主に導通体の第1領域部を構成する金属であり、第1充填物、第2充填物及び第3充填物のうち、第1充填物に多く含まれる。また、第1領域部、第2領域部及び本体部のうち、第1領域部に多く含まれる。第1金属は、Zn、Cr、Fe、Cd、又はCoが好ましい。
【0069】
<第2金属>
第2金属は、主に導通体の第2領域部を構成する金属であり、第1充填物、第2充填物及び第3充填物のうち、第2充填物に多く含まれる。また、第1領域部、第2領域部及び本体部のうち、第2領域部に多く含まれる。第2金属は、Niが好ましい。
【0070】
<第3金属>
第3金属は、主に導通体の本体部を構成する金属であり、第1充填物、第2充填物及び第3充填物のうち、第3充填物に多く含まれる。また、第1領域部、第2領域部及び本体部のうち、本体部に多く含まれる。
第3金属は、Cu、又はAuが好ましく、電気伝導性の観点から、Cuがより好ましい。
なお、第1金属、第2金属、及び第3金属は、イオン化傾向の関係が、上述のようにQ3<Q2<Q1である。
【0071】
<充填方法>
上述の金属M2を貫通孔の内部に充填するめっき処理の方法としては、電解めっき法を用いる。なお、無電解めっき法では、アスペクトの高い貫通孔からなる孔中に金属を完全に充填には長時間を要する。
ここで、着色等に用いられる従来公知の電解めっき法では、選択的に孔中に金属を高アスペクトで析出(成長)させることは困難である。これは、析出金属が孔内で消費され一定時間以上電解を行なってもめっきが成長しないためと考えられる。
【0072】
そのため、電解めっき法により金属を充填する場合は、パルス電解又は定電位電解の際に休止時間をもうける必要がある。休止時間は、10秒以上必要で、30~60秒であることが好ましい。
また、電解液のかくはんを促進するため、超音波を加えることも望ましい。
更に、電解電圧は、通常20V以下であって望ましくは10V以下であるが、使用する電解液における目的金属の析出電位を予め測定し、その電位+1V以内で定電位電解を行なうことが好ましい。なお、定電位電解を行なう際には、サイクリックボルタンメトリを併用できるものが望ましく、Solartron社、BAS社、北斗電工社、IVIUM社等のポテンショスタット装置を用いることができる。
【0073】
(めっき液)
めっき液は、金属イオンを含むものであり、充填する金属に応じた、従来公知のめっき液が用いられる。めっき液としては、固形分の主成分が硫酸銅であることが好ましく、例えば、硫酸銅と硫酸と塩酸との混合水溶液が用いられる。具体的には、銅を析出させる場合には硫酸銅水溶液が一般的に用いられるが、硫酸銅の濃度は、1~300g/Lであることが好ましく、100~200g/Lであることがより好ましい。また、めっき液中に塩酸を添加すると析出を促進することができる。この場合、塩酸濃度は10~20g/Lであることが好ましい。
なお、固形分の主成分とは、電解液の固形分中での割合が20質量%以上であることであり、例えば、硫酸銅が電解液の固形分中に20質量%以上含まれていることである。
また、金を析出させる場合、テトラクロロ金の硫酸溶液を用い、交流電解でめっきを行なうのが望ましい。
【0074】
めっき液は、界面活性剤を含むことが好ましい。
界面活性剤としては公知のものを使用することができる。従来メッキ液に添加する界面活性剤として知られているラウリル硫酸ナトリウムをそのまま使用することもできる。親水性部分がイオン性(カチオン性・アニオン性・双性)のもの、非イオン性(ノニオン性)のものいずれも利用可能であるが、メッキ対象物表面への気泡の発生等を回避する点でカチオン線活性剤が望ましい。めっき液組成における界面活性剤の濃度は1質量%以下であることが望ましい。
【0075】
<ポアワイド処理>
ポアワイド処理は、アルミニウム部材を酸水溶液又はアルカリ水溶液に浸漬させることにより、陽極酸化膜を溶解させ、貫通孔12の径を拡大する処理である。
これにより、貫通孔12の配列の規則性及び径のばらつきを制御することが容易となる。また、陽極酸化膜の複数の貫通孔12の底部分のバリア皮膜を溶解させることにより、貫通孔12内部に選択的に電着させること及び径を大きくし、電極としての表面積を飛躍的に大きくすることが可能となる。
【0076】
ポアワイド処理に酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸又はこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は1~10質量%であるのが好ましい。酸水溶液の温度は、25~40℃であるのが好ましい。
ポアワイド処理にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1~5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20~35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液又は0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液又はアルカリ水溶液への浸漬時間は、8~60分であるのが好ましく、10~50分であるのがより好ましく、15~30分であるのが更に好ましい。
【0077】
〔基板除去工程〕
基板除去工程は、めっき工程の後に、上述のアルミニウム部材を除去する工程である。アルミニウム部材を除去する方法は特に限定されず、例えば、溶解により除去する方法等が好適に挙げられる。
【0078】
<アルミニウム部材の溶解>
上述のアルミニウム部材の溶解は、陽極酸化膜を溶解しにくく、アルミニウムを溶解しやすい処理液を用いることが好ましい。
このような処理液は、アルミニウムに対する溶解速度が、1μm/分以上であることが好ましく、3μm/分以上であることがより好ましく、5μm/分以上であることが更に好ましい。同様に、陽極酸化膜に対する溶解速度が、0.1nm/分以下となることが好ましく、0.05nm/分以下となるのがより好ましく、0.01nm/分以下となるのが更に好ましい。
具体的には、アルミよりもイオン化傾向の低い金属化合物を少なくとも1種含み、かつ、pHが4以下又は8以上となる処理液であることが好ましく、そのpHが3以下又は9以上であることがより好ましく、2以下又は10以上であることが更に好ましい。
【0079】
アルミニウムを溶解する処理液としては、酸又はアルカリ水溶液をベースとし、例えば、マンガン、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、銅、水銀、銀、パラジウム、白金、金の化合物(例えば、塩化白金酸)、これらのフッ化物、これらの塩化物等を配合したものであることが好ましい。
中でも、酸水溶液ベースが好ましく、塩化物をブレンドすることが好ましい。
特に、塩酸水溶液に塩化水銀をブレンドした処理液(塩酸/塩化水銀)、塩酸水溶液に塩化銅をブレンドした処理液(塩酸/塩化銅)が、処理ラチチュードの観点から好ましい。
なお、アルミニウムを溶解する処理液の組成は、特に限定されるものではく、例えば、臭素/メタノール混合物、臭素/エタノール混合物、及び王水等を用いることができる。
【0080】
また、アルミニウムを溶解する処理液の酸又はアルカリ濃度は、0.01~10mol/Lが好ましく、0.05~5mol/Lがより好ましい。
更に、アルミニウムを溶解する処理液を用いた処理温度は、-10℃~80℃が好ましく、0℃~60℃がより好ましい。
【0081】
また、上述のアルミニウム部材の溶解は、上述のめっき工程後のアルミニウム部材を上述の処理液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸漬法が好ましい。このときの接触時間としては、10秒~5時間が好ましく、1分~3時間がより好ましい。
【0082】
〔金属突出工程〕
作製される金属充填微細構造体の金属接合性が向上する理由から、表面金属突出工程及び裏面金属突出工程のうち、少なくとも1つの工程を有してもよい。
ここで、表面金属突出工程とは、上述のめっき工程の後であって上述の基板除去工程の前に、上述の陽極酸化膜の上述のアルミニウム部材が設けられていない側の表面を厚み方向に一部除去し、上述のめっき工程で充填した上述の金属M2を上述の陽極酸化膜の表面よりも突出させる工程である。
また、裏面金属突出工程とは、上述の基板除去工程の後に、上述の陽極酸化膜の上述のアルミニウム部材が設けられていた側の表面を厚み方向に一部除去し、上述のめっき工程で充填した上述の金属M2を上述の陽極酸化膜の表面よりも突出させる工程である。
【0083】
金属突出工程における陽極酸化膜の一部除去は、例えば、上述の金属M1及び金属M2(特に金属M2)を溶解せず、陽極酸化膜、すなわち、酸化アルミニウムを溶解する酸水溶液又はアルカリ水溶液に対して、金属が充填された貫通孔を有する陽極酸化膜を接触させることにより行うことができる。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸漬法が好ましい。
【0084】
酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸又はこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。中でも、クロム酸を含有しない水溶液が安全性に優れる点で好ましい。酸水溶液の濃度は1~10質量%であることが好ましい。酸水溶液の温度は、25~60℃であることが好ましい。
また、アルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1~5質量%であることが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20~35℃であることが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液又は0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液又はアルカリ水溶液への浸漬時間は、8~120分であることが好ましく、10~90分であることがより好ましく、15~60分であることが更に好ましい。ここで、浸漬時間は、短時間の浸漬処理を繰り返した場合には、各浸漬時間の合計をいう。なお、各浸漬処理の間には、洗浄処理を施してもよい。
【0085】
また、作製される金属充填微細構造体を異方導電性部材として用いた際に、配線基板等の被接着物との圧着性が良好となる理由から、上述の表面金属突出工程及び裏面金属突出工程のうち、少なくとも1つの工程が、上述の金属M2を上述の陽極酸化膜の表面よりも10~1000nm突出させる工程であることが好ましく、50~500nm突出させる工程であることがより好ましい。
【0086】
更に、作製される金属充填微細構造体と電極とを圧着等の手法により接続(接合)する際に、突出部分が潰れた場合の面方向の絶縁性を十分に確保できる理由から、上述の表面金属突出工程及び裏面金属突出工程のうち、少なくとも1つの工程により形成される突出部分のアスペクト比(突出部分の高さ/突出部分の直径)が0.01以上20未満であることが好ましく、6~20であることが好ましい。
【0087】
上述のめっき工程及び基板除去工程ならびに任意の金属突出工程により形成される金属からなる導通体は、柱状であることが好ましい。導通体の直径は、金属が充填される貫通孔の直径と略同じである。導通体の平均直径は、貫通孔の平均径であり、1μm以下であることが好ましく、5~500nmであることがより好ましく、20~400nmであることが更に好ましく、40~200nmであることが更に一層好ましく、50~100nmであることが最も好ましい。
【0088】
また、上述の導通体は、アルミニウム部材の陽極酸化膜によって互いに絶縁された状態で存在するものであるが、その密度は、2万個/mm2以上であることが好ましく、200万個/mm2以上であることがより好ましく、1000万個/mm2以上であることが更に好ましく、5000万個/mm2以上であることが特に好ましく、1億個/mm2以上であることが最も好ましい。
【0089】
更に、隣接する各導通体の中心間距離は、20nm~500nmであることが好ましく、40nm~200nmであることがより好ましく、50nm~140nmであることが更に好ましい。
【0090】
〔樹脂層形成工程〕
作製される金属充填微細構造体の搬送性が向上する理由から、樹脂層形成工程を有してもよい。
ここで、樹脂層形成工程とは、上述のめっき工程の後(上述の表面金属突出工程を有している場合は表面金属突出工程の後)であって上述の基板除去工程の前に、上述の陽極酸化膜の上述のアルミニウム部材が設けられていない側の表面に、樹脂層を設ける工程である。
【0091】
上述の樹脂層を構成する樹脂材料としては、具体的には、例えば、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びセルロース系樹脂等を挙げることができるが、搬送性の観点と、異方導電性部材として使用しやすくする観点から、上述の樹脂層は、剥離可能な粘着層付きフィルムであることが好ましく、加熱処理又は紫外線露光処理により粘着性が弱くなり、剥離可能となる粘着層付きフィルムであることがより好ましい。
【0092】
上述の粘着層付きフィルムは特に限定されず、熱剥離型の樹脂層、及び紫外線(ultraviolet:UV)剥離型の樹脂層等が挙げられる。
ここで、熱剥離型の樹脂層は、常温では粘着力があり、加熱するだけで容易に剥離可能なもので、主に発泡性のマイクロカプセル等を用いたものが多い。
また、粘着層を構成する粘着剤としては、具体的には、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤等が挙げられる。
【0093】
また、UV剥離型の樹脂層は、UV硬化型の接着層を有するもので硬化により粘着力が失われて剥離可能になるというものである。
UV硬化型の接着層としては、ベースポリマーに、炭素-炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に導入したポリマー等が挙げられる。炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とすることが好ましい。
更に、アクリル系ポリマーは、架橋させるため、多官能性モノマー等も、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。
炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーは単独で使用することができるが、UV硬化性のモノマー又はオリゴマーを配合することもできる。
UV硬化型の接着層は、UV照射により硬化させるために光重合開始剤を併用することが好ましい。光重合開始剤としては、ベンゾインエーテル系化合物;ケタール系化合物;芳香族スルホニルクロリド系化合物;光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。
【0094】
熱剥離型の樹脂層の市販品としては、例えば、WS5130C02、WS5130C10等のインテリマー〔登録商標〕テープ(ニッタ株式会社製);ソマタック〔登録商標〕TEシリーズ(ソマール株式会製);No.3198、No.3198LS、No.3198M、No.3198MS、No.3198H、No.3195、No.3196、No.3195M、No.3195MS、No.3195H、No.3195HS、No.3195V、No.3195VS、No.319Y-4L、No.319Y-4LS、No.319Y-4M、No.319Y-4MS、No.319Y-4H、No.319Y-4HS、No.319Y-4LSC、No.31935MS、No.31935HS、No.3193M、No.3193MS等のリバアルファ〔登録商標〕シリーズ(日東電工株式会社製);等が挙げられる。
【0095】
UV剥離型の樹脂層の市販品としては、例えば、ELP DU-300、ELP DU-2385KS、ELP DU-2187G、ELP NBD-3190K、ELP UE-2091J等のエレップホルダー〔登録商標〕(日東電工株式会社製);Adwill D-210、Adwill D-203、Adwill D-202、Adwill D-175、Adwill D-675(いずれもリンテック株式会社製);スミライト〔登録商標〕FLSのN8000シリーズ(住友ベークライト株式会社製);UC353EP-110(古河電気工業株式会社製);等のダイシングテープ、ELP RF-7232DB、ELP UB-5133D(いずれも日東電工株式会社製);SP-575B-150、SP-541B-205、SP-537T-160、SP-537T-230(いずれも古河電気工業株式会社製);等のバックグラインドテープを利用することができる。
【0096】
また、上述の粘着層付きフィルムを貼り付ける方法は特に限定されず、従来公知の表面保護テープ貼付装置及びラミネーターを用いて貼り付けることができる。
【0097】
〔巻取工程〕
作製される金属充填微細構造体の搬送性が更に向上する理由から、上述の任意の樹脂層形成工程の後に上述の樹脂層を有する状態で金属充填微細構造体をロール状に巻き取る巻取工程を有していることが好ましい。
ここで、上述の巻取工程における巻き取り方法は特に限定されず、例えば、所定径及び所定幅の巻き芯に巻き取る方法が挙げられる。
【0098】
また、上述の巻取工程における巻き取りやすさの観点から、樹脂層を除く金属充填微細構造体の平均厚みが40μm以下であることが好ましく、5~20μmであることがより好ましい。なお、平均厚みは、樹脂層を除く金属充填微細構造体を厚さ方向に対してFIBで切削加工し、その断面をFE-SEMにより表面写真(倍率50000倍)を撮影し、10点測定した平均値とする等の方法で算出できる。
【0099】
〔その他の処理工程〕
本発明の製造方法は、上述の各工程以外に、国際公開第2015/029881号の[0049]~[0057]段落に記載された研磨工程、表面平滑化工程、保護膜形成処理、水洗処理を有していてもよい。
また、製造上のハンドリング性、及び金属充填微細構造体を異方導電性部材として用いる観点から、以下に示すような、種々のプロセス及び形式を適用することができる。
【0100】
<仮接着剤を使用したプロセス例>
上述の基板除去工程によって金属充填微細構造体を得た後に、金属充填微細構造体を仮接着剤(Temporary Bonding Materials)を用いてシリコンウエハ上に固定し、研磨により薄層化する工程を有していてもよい。
次いで、薄層化の工程の後、表面を十分に洗浄した後に、上述の表面金属突出工程を行うことができる。
次いで、金属を突出させた表面に、先の仮接着剤よりも接着力の強い仮接着剤を塗布してシリコンウエハ上に固定した後、先の仮接着剤で接着していたシリコンウエハを剥離し、剥離した金属充填微細構造体側の表面に対して、上述の裏面金属突出工程を行うことができる。
【0101】
<ワックスを使用したプロセス例>
上述の基板除去工程によって金属充填微細構造体を得た後に、金属充填微細構造体をワックスを用いてシリコンウエハ上に固定し、研磨により薄層化する工程を有していてもよい。
次いで、薄層化の工程の後、表面を十分に洗浄した後に、上述の表面金属突出工程を行うことができる。
次いで、金属を突出させた表面に、仮接着剤を塗布してシリコンウエハ上に固定した後、加熱により先のワックスを溶解させてシリコンウエハを剥離し、剥離した金属充填微細構造体側の表面に対して、上述の裏面金属突出工程を行うことができる。
なお、固形ワックスを使っても構わないが、スカイコート(日化精工社製)等の液体ワックスを使うと塗布厚均一性の向上を図ることができる。
【0102】
<基板除去処理を後から行うプロセス例>
上述のめっき工程の後であって上述の基板除去工程の前に、アルミニウム部材を仮接着剤、ワックス又は機能性吸着フィルムを用いて剛性基板(例えば、シリコンウエハ、ガラス基板等)に固定した後に、上述の陽極酸化膜の上述のアルミニウム部材が設けられていない側の表面を研磨により薄層化する工程を有していてもよい。
次いで、薄層化の工程の後、表面を十分に洗浄した後に、上述の表面金属突出工程を行うことができる。
次いで、金属を突出させた表面に、絶縁性材料である樹脂材料(例えば.エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等)を塗布したのち、その表面に上述と同様の手法で剛性基板を貼り付けることができる。樹脂材料による貼り付けは、接着力が仮接着剤等による接着力よりも大きくなるようなものを選択し、樹脂材料による貼り付けの後に、最初に貼り付けた剛性基板を剥離し、上述の基板除去工程、研磨工程及び裏面金属突出処理工程を順に行うことにより行なうことができる。
なお、機能性吸着フィルムとしては、Q-chuck(登録商標)(丸石産業株式会社製)等を使用することができる。
【0103】
金属充填微細構造体が剥離可能な層によって剛体基板(例えば、シリコンウエハ、ガラス基板等)に貼り付けられた状態で製品として供されることが好ましい。
このような供給形態においては、金属充填微細構造体を接合部材として利用する場合には、金属充填微細構造体の表面をデバイス表面に仮接着し、剛体基板を剥離した後に接続対象となるデバイスを適切な場所に設置し、加熱圧着することで上下のデバイスを金属充填微細構造体によって接合することができる。
また、剥離可能な層には、熱剥離層を用いても構わないし、ガラス基板との組合せで光剥離層を用いても構わない。
【0104】
また、上述の各工程は、各工程を枚葉で行うことも可能であるし、アルミニウムのコイルを原反としてウェブで連続処理することもできる。
また、連続処理する場合には各工程間に適切な洗浄工程、乾燥工程を設置することが好ましい。
【0105】
上述の各処理工程を有する製造方法により、アルミニウム部材の陽極酸化膜からなる絶縁性基材に設けられた貫通孔由来の貫通孔の内部に金属が充填されてなる金属充填微細構造体が得られる。
具体的には、上述の製造方法により、例えば、特開2008-270158号公報に記載された異方導電性部材、すなわち、絶縁性基材(貫通孔を有するアルミニウム部材の陽極酸化膜)中に、導電性部材(金属)からなる複数の導通体が、互いに絶縁された状態で上述の絶縁性基材を厚み方向に貫通し、かつ、上述の各導通体の一端が上述の絶縁性基材の一方の面において露出し、上述の各導通体の他端が上述の絶縁性基材の他方の面において露出した状態で設けられる異方導電性部材を得ることができる。
【0106】
以下、上述の製造方法で製造された金属充填微細構造体20の一例について説明する。図20は本発明の実施形態の金属充填微細構造体の一例を示す平面図であり、図21は本発明の実施形態の金属充填微細構造体の一例を示す模式的断面図である。図21図20の切断面線IB-IB断面図である。また、図22は本発明の実施形態の金属充填微細構造体を用いた異方導電材の構成の一例を示す模式的断面図である。
【0107】
上述のようにして製造された金属充填微細構造体20は、図20及び図21に示すように,例えば、アルミニウムの陽極酸化膜14(図5参照)からなる絶縁性基材40と、絶縁性基材40の厚み方向Dt(図21参照)に貫通し、互いに電気的に絶縁された状態で設けられた、複数の導通体16とを備える部材である。金属充填微細構造体20は、更に、絶縁性基材40の表面40a及び裏面40bに設けられた樹脂層44を具備する。
ここで、「互いに電気的に絶縁された状態」とは、絶縁性基材の内部に存在している各導通体が絶縁性基材の内部において互いに各導通体間の導通性が十分に低い状態であることを意味する。
金属充填微細構造体20は、導通体16が互いに電気的に絶縁されており、絶縁性基材40の厚み方向Dt(図21参照)と直交する方向xには導電性が十分に低く、厚み方向Dt(図21参照)に導電性を有する。このように金属充填微細構造体20は異方導電性を示す部材である。例えば、金属充填微細構造体20を半導体素子と半導体素子との接合に用いる場合、金属充填微細構造体20は厚み方向Dt(図21参照)を、半導体素子の積層方向に一致させる。
【0108】
導通体16は、図20及び図21に示すように、互いに電気的に絶縁された状態で絶縁性基材40を厚み方向Dtに貫通して設けられている。
導通体16は、絶縁性基材40の裏面40b側の先端に第1領域部16aと、第2領域部16bと本体部16cとの順で設けられた構成であるが、これに限定されるものではなく、第1領域部16a及び第2領域部16bは導通体16の両方の先端に設けてもよい。
更に、導通体16は、図21に示すように、絶縁性基材40の表面40a及び裏面40bから突出した突出部分16e及び突出部分16fを有してもよい。金属充填微細構造体20は、更に、絶縁性基材40の表面40a及び裏面40bに設けられた樹脂層44を具備してもよい。樹脂層44は、粘着性を備え、接合性を付与するものでもある。突出部分16e及び突出部分16fの長さは、6nm以上であることが好ましく、より好ましくは30nm~500nmである。絶縁性基材40は、上述の陽極酸化膜で構成される。
【0109】
また、図21及び図22においては、絶縁性基材40の表面40a及び裏面40bに樹脂層44を有するものを示しているが、これに限定されるものではなく、絶縁性基材40の少なくとも一方の表面に、樹脂層44を有する構成でもよい。
同様に、図21及び図22の導通体16は両端に突出部分16e及び突出部分16fがあるが、これに限定されるものではなく、絶縁性基材40の少なくとも樹脂層44を有する側の表面に突出部分を有する構成でもよい。
【0110】
図21に示す金属充填微細構造体20の厚みhは、例えば、40μm以下である。また、金属充填微細構造体20は、TTV(Total Thickness Variation)が10μm以下であることが好ましい。
ここで、金属充填微細構造体20の厚みhは、金属充填微細構造体20を、電解放出形走査型電子顕微鏡により20万倍の倍率で観察し、金属充填微細構造体20の輪郭形状を取得し、厚みhに相当する領域について10点測定した平均値のことである。
また、金属充填微細構造体20のTTV(Total Thickness Variation)は、金属充填微細構造体20をダイシングで支持体46ごと切断し、金属充填微細構造体20の断面形状を観察して求めた値である。
【0111】
金属充填微細構造体20は、移送、搬送及び運搬ならびに保管等のために図22に示すように支持体46の上に設けられる。支持体46と金属充填微細構造体20の間に剥離層47が設けられている。支持体46と金属充填微細構造体20は剥離層47により、分離可能に接着されている。上述のように金属充填微細構造体20が支持体46の上に剥離層47を介して設けられたものを異方導電材50という。
支持体46は、金属充填微細構造体20を支持するものであり、例えば、シリコン基板で構成されている。支持体46としては、シリコン基板以外に、例えば、SiC、SiN、GaN及びアルミナ(Al)等のセラミックス基板、ガラス基板、繊維強化プラスチック基板、ならびに金属基板を用いることができる。繊維強化プラスチック基板には、プリント配線基板であるFR-4(Flame Retardant Type 4)基板等も含まれる。
【0112】
また、支持体46としては、可撓性を有し、かつ透明であるものを用いることができる。可撓性を有し、かつ透明な支持体46としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリシクロオレフィン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン及びTAC(トリアセチルセルロース)等のプラスチックフィルムが挙げられる。
ここで、透明とは、位置合せに使用する波長の光で透過率が80%以上であることをいう。このため、波長400~800nmの可視光全域で透過率が低くてもよいが、波長400~800nmの可視光全域で透過率が80%以上であることが好ましい。透過率は、分光光度計により測定される。
【0113】
剥離層47は、支持層48と剥離剤49が積層されたものであることが好ましい。剥離剤49が金属充填微細構造体20に接しており、剥離層47を起点にして、支持体46と金属充填微細構造体20が分離する。異方導電材50では、例えば、予め定められた温度に加熱することで、剥離剤49の接着力が弱まり、金属充填微細構造体20から支持体46が取り除かれる。
剥離剤49には、例えば、日東電工社製リバアルファ(登録商標)、及びソマール株式会社製ソマタック(登録商標)等を用いることができる。
【0114】
また、樹脂層44に保護層(図示せず)を設けてもよい。保護層は、構造体表面を傷等から保護するために用いるものであるため、易剥離テープが好ましい。保護層として、例えば、粘着層付きフィルムを用いてもよい。
粘着層付きフィルムとして、例えば、ポリエチレン樹脂フィルム表面に粘着剤層が形成されているサニテクト(SUNYTECT)〔登録商標〕(株式会社サンエー化研製)、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム表面に粘着剤層が形成されているE-MASK〔登録商標〕(日東電工株式会社製)、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム表面に粘着剤層が形成されているマスタック〔登録商標〕(藤森工業株式会社製)等のシリーズ名で販売されている市販品を用いることができる。
また、粘着層付きフィルムを貼り付ける方法は特に限定されず、従来公知の表面保護テープ貼付装置及びラミネーターを用いて貼り付けることができる。
【0115】
以下、金属充填微細構造体20の構成を、より具体的に説明する。
〔絶縁性基材〕
(絶縁性基材の物性、及び組成)
絶縁性基材は、無機材料からなり、従来公知の異方導電性フィルム等を構成する絶縁性基材と同程度の電気抵抗率(1014Ω・cm程度)を有するものであれば特に限定されない。
なお、「無機材料からなり」とは、後述する樹脂層を構成する高分子材料と区別するための規定であり、無機材料のみから構成された絶縁性基材に限定する規定ではなく、無機材料を主成分(50質量%以上)とする規定である。
【0116】
絶縁性基材は、上述のように酸化膜で構成される。酸化膜としては、所望の平均径を有する貫通孔が貫通孔として形成され、後述する導通体を形成しやすいという理由から、バルブ金属の陽極酸化膜であることがより好ましい。例えば、酸化膜は、上述のように、アルミニウムの陽極酸化膜である。このため、金属部材は、バルブ金属であることが好ましい。
ここで、バルブ金属としては、具体的には、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン等が挙げられる。これらのうち、寸法安定性がよく、比較的安価であることからアルミニウムの陽極酸化膜であることが好ましい。このため、アルミニウム部材を用いて、金属充填微細構造体を製造することが好ましい。
【0117】
(絶縁性基材のサイズ)
絶縁性基材40の厚みhtは、1~1000μmの範囲内であるのが好ましく、5~500μmの範囲内であるのがより好ましく、10~300μmの範囲内であるのが更に好ましい。絶縁性基材の厚みがこの範囲であると、絶縁性基材の取り扱い性が良好となる。
絶縁性基材40の厚みhtは、絶縁性基材40を、厚み方向Dtに対して集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)で切削加工し、その断面を電解放出形走査型電子顕微鏡により20万倍の倍率で観察し、絶縁性基材40の輪郭形状を取得し、厚みhtに相当する領域について10点測定した平均値のことである。
【0118】
絶縁性基材における各貫通孔の間隔は、5nm~800nmであることが好ましく、10nm~200nmであることがより好ましく、50nm~140nmであることが更に好ましい。絶縁性基材における各貫通孔の間隔がこの範囲であると、絶縁性基材が絶縁性の隔壁として十分に機能する。貫通孔の間隔は、導通体の間隔と同じである。
ここで、貫通孔の間隔、すなわち、導通体の間隔とは、隣接する導通体間の幅w(図21参照)をいい、異方導電性部材の断面を電界放出形走査型電子顕微鏡により20万倍の倍率で観察し、隣接する導通体間の幅を10点で測定した平均値をいう。
【0119】
<細孔の平均径>
細孔の平均径、すなわち、貫通孔12の平均径d(図21参照)は、1μm以下であることが好ましく、5~500nmであることがより好ましく、20~400nmであることが更に好ましく、40~200nmであることが更に一層好ましく、50~100nmであることが最も好ましい。貫通孔12の平均径dが、1μm以下であり、上述の範囲であると、得られる導通体16に電気信号を流した際に十分な応答が得ることができるため、電子部品の検査用コネクタとして、より好適に用いることができる。
貫通孔12の平均径dは、走査型電子顕微鏡を用いて陽極酸化膜14の表面を真上から倍率100~10000倍で撮影し撮影画像を得る。撮影画像において、周囲が環状に連なっている貫通孔を少なくとも20個抽出し、その直径を測定し開口径とし、これら開口径の平均値を貫通孔の平均径として算出する。
なお、倍率は、貫通孔を20個以上抽出できる撮影画像が得られるように上述した範囲の倍率を適宜選択することができる。また、開口径は、貫通孔部分の端部間の距離の最大値を測定した。すなわち、貫通孔の開口部の形状は略円形状に限定はされないので、開口部の形状が非円形状の場合には、貫通孔部分の端部間の距離の最大値を開口径とする。従って、例えば、2以上の貫通孔が一体化したような形状の貫通孔の場合にも、これを1つの貫通孔とみなし、貫通孔部分の端部間の距離の最大値を開口径とする。
【0120】
〔導通体〕
導通体は、針状の導電体である。導通体は、上述のように、本体部と、導通体の少なくとも一方の先端に設けられた第1領域部と、本体部と第1領域部との間に設けられた第2領域部とを有する積層構造体である。
上述のように、第1領域部は、第1金属を第2領域部及び本体部よりも多く含み、第2領域部は、第2金属を第1領域部及び本体部よりも多く含み、本体部は、第3金属を第1領域部及び第2領域部よりも多く含んでいる。
第1金属、第2金属、及び第3金属は、イオン化傾向の関係が、上述のようにQ3<Q2<Q1である。この場合、第1金属はZn、Cr、Fe、Cd、又はCoであることが好ましく、第2金属は、Ni又はSnであることが好ましく、第3金属はCu、又はAuであることが好ましい。
第1領域部と、第2領域部と、本体部とを上述の構成、金属種。及びイオン化傾向の関係を満たすものとすることにより、構造欠陥を抑制した導通体16が得られる。
【0121】
<突出部分>
異方導電性部材と電極とを圧着等の手法により電気的接続、又は物理的に接合する際に、突出部分が潰れた場合の面方向の絶縁性を十分に確保できる理由から、導通体の突出部分のアスペクト比(突出部分の高さ/突出部分の直径)が0.5以上50未満であることが好ましく、0.8~20であることがより好ましく、1~10であることが更に好ましい。
【0122】
また、接続対象の半導体部材の表面形状に追従する観点から、導通体の突出部分の高さは、上述のように20nm以上であることが好ましく、より好ましくは100nm~500nmである。
導通体の突出部分の高さは、金属充填微細構造体の断面を電解放出形走査型電子顕微鏡(FE-SEM)により2万倍の倍率で観察し、導通体の突出部分の高さを10点で測定した平均値をいう。
導通体の突出部分の直径は、金属充填微細構造体の断面を電解放出形走査型電子顕微鏡により観察し、導通体の突出部分の直径を10点で測定した平均値をいう。
【0123】
上述のように導通体16は絶縁性基材40によって互いに電気的に絶縁された状態で存在するものであるが、その密度は、2万個/mm2以上であることが好ましく、200万個/mm2以上であることがより好ましく、1000万個/mm2以上であることが更に好ましく、5000万個/mm2以上であることが特に好ましく、1億個/mm2以上であることが最も好ましい。
更に、隣接する各導通体16の中心間距離p(図20参照)は、20nm~500nmであることが好ましく、40nm~200nmであることがより好ましく、50nm~140nmであることが更に好ましい。
【0124】
〔樹脂層〕
上述のように、樹脂層は、絶縁性基材の表面と裏面に設けられ、上述のように導通体の突出部を埋設するものである。すなわち、樹脂層は絶縁性基材から突出した導通体の端部を被覆し、突出部を保護する。
樹脂層は、上述の樹脂層形成工程により形成されるものである。樹脂層は、例えば、50℃~200℃の温度範囲で流動性を示し、200℃以上で硬化するものであることが好ましい。
樹脂層は、上述の樹脂層形成工程により形成されるものであるが、以下に示す、樹脂剤の組成を用いることもできる。以下、樹脂層の組成について説明する。樹脂層は、高分子材料を含有するものである。樹脂層は酸化防止材料を含有してもよい。
【0125】
<高分子材料>
樹脂層に含まれる高分子材料としては特に限定されないが、半導体チップ又は半導体ウエハと異方導電性部材との隙間を効率よく埋めることができ、半導体チップ又は半導体ウエハとの密着性がより高くなる理由から、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、具体的には、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート系樹脂等が挙げられる。
なかでも、絶縁信頼性がより向上し、耐薬品性に優れる理由から、ポリイミド樹脂及び/又はエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
【0126】
<酸化防止材料>
樹脂層に含まれる酸化防止材料としては、具体的には、例えば、1,2,3,4-テトラゾール、5-アミノ-1,2,3,4-テトラゾール、5-メチル-1,2,3,4-テトラゾール、1H-テトラゾール-5-酢酸、1H-テトラゾール-5-コハク酸、1,2,3-トリアゾール、4-アミノ-1,2,3-トリアゾール、4,5-ジアミノ-1,2,3-トリアゾール、4-カルボキシ-1H-1,2,3-トリアゾール、4,5-ジカルボキシ-1H-1,2,3-トリアゾール、1H-1,2,3-トリアゾール-4-酢酸、4-カルボキシ-5-カルボキシメチル-1H-1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、3-カルボキシ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジカルボキシ-1,2,4-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール-3-酢酸、1H-ベンゾトリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール-5-カルボン酸、ベンゾフロキサン、2,1,3-ベンゾチアゾール、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、カテコール、o-アミノフェノール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、メラミン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
これらのうち、ベンゾトリアゾール及びその誘導体が好ましい。
ベンゾトリアゾール誘導体としては、ベンゾトリアゾールのベンゼン環に、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、アミノ基、ニトロ基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)等を有する置換ベンゾトリアゾールが挙げられる。また、ナフタレントリアゾール、ナフタレンビストリアゾール、と同様に置換された置換ナフタレントリアゾール、置換ナフタレンビストリアゾール等も挙げることができる。
【0127】
また、樹脂層に含まれる酸化防止材料の他の例としては、一般的な酸化防止剤である、高級脂肪酸、高級脂肪酸銅、フェノール化合物、アルカノールアミン、ハイドロキノン類、銅キレート剤、有機アミン、有機アンモニウム塩等が挙げられる。
【0128】
樹脂層に含まれる酸化防止材料の含有量は特に限定されないが、防食効果の観点から、樹脂層の全質量に対して0.0001質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましい。また、本接合プロセスにおいて適切な電気抵抗を得る理由から、5.0質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましい。
【0129】
<マイグレーション防止材料>
樹脂層は、樹脂層に含有し得る金属イオン、ハロゲンイオン、ならびに半導体チップ及び半導体ウエハに由来する金属イオンをトラップすることによって絶縁信頼性がより向上する理由から、マイグレーション防止材料を含有しているのが好ましい。
【0130】
マイグレーション防止材料としては、例えば、イオン交換体、具体的には、陽イオン交換体と陰イオン交換体との混合物、又は、陽イオン交換体のみを使用することができる。
ここで、陽イオン交換体及び陰イオン交換体は、それぞれ、例えば、後述する無機イオン交換体及び有機イオン交換体の中から適宜選択することができる。
【0131】
(無機イオン交換体)
無機イオン交換体としては、例えば、含水酸化ジルコニウムに代表される金属の含水酸化物が挙げられる。
金属の種類としては、例えば、ジルコニウムのほか、鉄、アルミニウム、錫、チタン、アンチモン、マグネシウム、ベリリウム、インジウム、クロム、ビスマス等が知られている。
これらの中でジルコニウム系のものは、陽イオンのCu2+、Al3+について交換能を有している。また、鉄系のものについても、Ag+、Cu2+について交換能を有している。同様に、錫系、チタン系、アンチモン系のものは、陽イオン交換体である。
一方、ビスマス系のものは、陰イオンのCl-について交換能を有している。
また、ジルコニウム系のものは条件によっては陰イオンの交換能を示す。アルミニウム系、錫系のものも同様である。
これら以外の無機イオン交換体としては、リン酸ジルコニウムに代表される多価金属の酸性塩、モリブドリン酸アンモニウムに代表されるヘテロポリ酸塩、不溶性フェロシアン化物等の合成物が知られている。
これらの無機イオン交換体の一部は既に市販されており、例えば、東亞合成株式会社の商品名イグゼ「IXE」における各種のグレードが知られている。
なお、合成品のほか、天然物のゼオライト、又はモンモリロン石のような無機イオン交換体の粉末も使用可能である。
【0132】
(有機イオン交換体)
有機イオン交換体には、陽イオン交換体としてスルホン酸基を有する架橋ポリスチレンが挙げられ、そのほかカルボン酸基、ホスホン酸基又はホスフィン酸基を有するものも挙げられる。
また、陰イオン交換体として四級アンモニウム基、四級ホスホニウム基又は三級スルホニウム基を有する架橋ポリスチレンが挙げられる。
【0133】
これらの無機イオン交換体及び有機イオン交換体は、捕捉したい陽イオン、陰イオンの種類、そのイオンについての交換容量を考慮して適宜選択すればよい。勿論、無機イオン交換体と有機イオン交換体とを混合して使用してもよいことはいうまでもない。
電子素子の製造工程では加熱するプロセスを含むため、無機イオン交換体が好ましい。
【0134】
また、マイグレーション防止材料と上述の高分子材料との混合比は、例えば、機械的強度の観点から、マイグレーション防止材料を10質量%以下とすることが好ましく、マイグレーション防止材料を5質量%以下とすることがより好ましく、更にマイグレーション防止材料を2.5質量%以下とすることが更に好ましい。また、半導体チップ又は半導体ウエハと異方導電性部材とを接合した際のマイグレーションを抑制する観点から、マイグレーション防止材料を0.01質量%以上とすることが好ましい。
【0135】
<無機充填剤>
樹脂層は、無機充填剤を含有しているのが好ましい。
無機充填剤としては特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、カオリン、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、気相法シリカ、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、マイカ、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。
【0136】
導通体間に無機充填剤が入ることを防ぎ、導通信頼性がより向上する理由から、無機充填剤の平均粒子径が、各導通体の間隔よりも大きいことが好ましい。
無機充填剤の平均粒子径は、30nm~10μmであることが好ましく、80nm~1μmであることがより好ましい。
ここで、平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒子径測定装置(日機装株式会社製マイクロトラックMT3300)で測定される、一次粒子径を平均粒子径とする。
【0137】
<硬化剤>
樹脂層は、硬化剤を含有していてもよい。
硬化剤を含有する場合、接続対象の半導体チップ又は半導体ウエハの表面形状との接合不良を抑制する観点から、常温で固体の硬化剤を用いず、常温で液体の硬化剤を含有しているのがより好ましい。
ここで、「常温で固体」とは、25℃で固体であることをいい、例えば、融点が25℃より高い温度である物質をいう。
【0138】
硬化剤としては、具体的には、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンのような芳香族アミン、脂肪族アミン、4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物等のカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリフェノール化合物、ノボラック樹脂、ポリメルカプタン等が挙げられ、これらの硬化剤から、25℃で液体のものを適宜選択して用いることができる。なお、硬化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0139】
樹脂層には、その特性を損なわない範囲内で、広く一般に半導体パッケージの樹脂絶縁膜に添加されている分散剤、緩衝剤、粘度調整剤等の種々の添加剤を含有させてもよい。
【0140】
<形状>
導通体を保護する理由から、樹脂層の厚みは、導通体の突出部の高さより大きく、1μm~5μmであることが好ましい。
【0141】
<金属充填微細構造体の適用例>
【0142】
金属充填微細構造体20は、例えば、異方導電性を示す異方導電性部材として利用することができる。この場合、半導体素子と半導体素子とを、金属充填微細構造体20を介して接合して、半導体素子と半導体素子とを電気的に接続した電子素子を得ることができる。電子素子において、金属充填微細構造体20はTSV(Through Silicon Via)の機能を果たす。
これ以外に、金属充填微細構造体20を用いて3つ以上の半導体素子を電気的に接続した電子素子とすることもできる。金属充填微細構造体20を用いることで3次元実装ができる。なお、半導体素子を接合する数は、特に限定されるものではなく、電子素子の機能、及び電子素子に要求される性能に応じて適宜決定されるものである。
【0143】
金属充填微細構造体20を用いることにより、電子素子の大きさを小さくでき実装面積を小さくできる。また、金属充填微細構造体20の厚さを短くすることにより、半導体素子間の配線長を短くでき、信号の遅延を抑制し、電子素子の処理速度を向上させることができる。半導体素子間の配線長を短くすることで消費電力も抑制することができる。
金属充填微細構造体20は、上述のように陽極酸化膜14と導通体16とが、陽極酸化膜14の表面14aで同一面の状態になるように研磨しているため、形状精度が高く、また、上述のように導通体16の突出部分16e、16fの高さを厳密に制御することができるため、半導体素子と半導体素子との電気的な接続の信頼性が優れる。
【0144】
半導体素子としては、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASSP(Application Specific Standard Product)等のロジック集積回路が挙げられる。また、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のマイクロプロセッサが挙げられる。また、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、HMC(Hybrid Memory Cube)、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、PCM(Phase-Change Memory)、ReRAM(Resistance Random Access Memory)、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)、フラッシュメモリ等のメモリが挙げられる。また、例えば、LED(Light Emitting Diode)、パワーデバイス、DC(Direct Current)-DC(Direct Current)コンバータ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)等のアナログ集積回路が挙げられる。また、例えば、加速度センサ、圧力センサ、振動子、ジャイロセンサ等のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)が挙げられる。また、例えば、GPS(Global Positioning System)、FM(Frequency Modulation)、NFC(Nearfieldcommunication)、RFEM(RF Expansion Module)、MMIC(MonolithicMicrowaveIntegratedCircuit)、WLAN(WirelessLocalAreaNetwork)等のワイヤレス素子、ディスクリート素子、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CMOSイメージセンサ、カメラモジュール、Passiveデバイス、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ、RF(Radio Frequency)フィルタ、IPD(Integrated Passive Devices)等が挙げられる。
【0145】
また、半導体素子は素子領域を有するものでもよく。素子領域は電子素子として機能するための各種の素子構成回路等が形成された領域である。素子領域には、例えば、フラッシュメモリ等のようなメモリ回路、マイクロプロセッサ及びFPGA(field-programmable gate array)等のような論理回路が形成された領域、無線タグ等の通信モジュールならびに配線が形成された領域がある。素子領域には、これ以外にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)が形成されてもよい。MEMSとは、例えば、センサ、アクチュエーター及びアンテナ等である。センサには、例えば、加速度、音、光等の各種のセンサが含まれる。光センサは、光を検出することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられる。
【0146】
電子素子において達成する機能に応じて半導体素子が適宜選択される。例えば、電子素子では、論理回路を有する半導体素子と、メモリ回路を有する半導体素子の組合せとすることができる。また、電子素子における半導体素子の組合せとしては、センサ、アクチュエーター及びアンテナ等と、メモリ回路と論理回路との組み合わせでもよい。
半導体素子は、例えば、シリコンで構成されるが、これに限定されるものではなく、炭化ケイ素、ゲルマニウム、ガリウムヒ素又は窒化ガリウム等であってもよい。
また、半導体素子以外に、金属充填微細構造体20を用いて、2つの配線層を電気的に接続してもよい。
【0147】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の金属充填微細構造体の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例
【0148】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、及び、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、実施例1~実施例3の金属充填微細構造体及び比較例1~比較例3の金属充填微細構造体を作製した。実施例1~実施例3の金属充填微細構造体及び比較例1~比較例3の金属充填微細構造体について、マイクロ欠陥数を評価した。マイクロ欠陥数の評価結果を下記表2に示す。以下、マイクロ欠陥数について説明する。
【0149】
マイクロ欠陥数の評価について説明する。
<マイクロ欠陥数の評価>
製造した金属充填微細構造体の片面を研磨した後、研磨面を光学顕微鏡にて観察して、欠陥を見つけることを試みた。そして、欠陥数を数え、単位面積当りの欠陥数を求め、下記表1に示す評価基準にて、欠陥数を評価した。評価では、直径20~50μmの評価基準と、直径50μm超の評価基準との両方を満たす必要がある。例えば、評価AAは、直径20~50μmが0.001~0.1を満たし、かつ直径50μm超のものが未検出であるものとした。
なお、上述の片面研磨は以下のように実施した。まず、4インチウエハに製造した金属充填微細構造体をQ-chuck(登録商標)(丸石産業株式会社製)にて貼付け、MAT社製研磨装置を用いて金属充填微細構造体を算術平均粗さ(JIS(日本工業規格) B0601:2001)が0.02μmになるまで研磨した。研磨には、アルミナを含む砥粒を用いた。
【0150】
【表1】
【0151】
以下、実施例1~実施例3及び比較例1~比較例3について説明する。
(実施例1)
実施例1の金属充填微細構造体について説明する。
[金属充填微細構造体]
<アルミニウム部材の作製>
Si:0.06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0.005質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理及びろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC(Direct Chill)鋳造法で作製した。
次いで、表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。
更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ1.0mmに仕上げ、JIS 1050材のアルミニウム部材を得た。
このアルミニウム部材を幅1030mmにした後、以下に示す各処理を施した。
【0152】
<電解研磨処理>
上記アルミニウム部材に対して、以下組成の電解研磨液を用いて、電圧25V、液温度65℃、液流速3.0m/minの条件で電解研磨処理を施した。
陰極はカーボン電極とし、電源は、GP0110-30R(株式会社高砂製作所社製)を用いた。また、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22-10PCW(アズワン株式会社製)を用いて計測した。
(電解研磨液組成)
・85質量%リン酸(和光純薬社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
【0153】
<陽極酸化処理工程>
次いで、電解研磨処理後のアルミニウム部材に、特開2007-204802号公報に記載の手順にしたがって自己規則化法による陽極酸化処理を施した。
電解研磨処理後のアルミニウム部材に、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧40V、液温度16℃、液流速3.0m/minの条件で、5時間のプレ陽極酸化処理を施した。
その後、プレ陽極酸化処理後のアルミニウム部材を、0.2mol/L無水クロム酸、0.6mol/Lリン酸の混合水溶液(液温:50℃)に12時間浸漬させる脱膜処理を施した。
その後、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧40V、液温度16℃、液流速3.0m/minの条件で、3時間45分の再陽極酸化処理を施し、膜厚40μmの陽極酸化膜を得た。
なお、プレ陽極酸化処理及び再陽極酸化処理は、いずれも陰極はステンレス電極とし、電源はGP0110-30R(株式会社高砂製作所製)を用いた。また、冷却装置にはNeoCool BD36(ヤマト科学株式会社製)、かくはん加温装置にはペアスターラーPS-100(EYELA東京理化器械株式会社製)を用いた。更に、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22-10PCW(アズワン株式会社製)を用いて計測した。
【0154】
<バリア層除去工程>
次いで、上述の陽極酸化処理と同様の処理液及び処理条件で、電圧を40Vから0Vまで連続的に電圧降下速度0.2V/secで降下させながら電解処理(電解除去処理)を施した。その後、Znのイオンを含むアルカリ水溶液を用いることにより、バリア層を除去すると同時に、マイクロポア(細孔)の底部にZnからなる第1領域部を形成した。
また、バリア層除去工程後の陽極酸化膜の平均厚みは40μmであった。
【0155】
<充填工程>
無電解めっきを用いて第2領域部を形成した。
無電解めっきは、無電解めっき液に、奥野製薬工業株式会社 トップケミアロイ(製品名)を用いて、温度55℃で30分間、実施して、マイクロポアの内部に、ZrとNiを含む第2領域部を形成した。第2領域部はZrよりもNiを多く含む。
第1領域部と第2領域部との合計の厚みは1~50nmであった。第1領域部と第2領域部との合計の厚みを、表1では「先端部の厚み」とする。なお、上述の第1領域部と第2領域部との合計の厚みが1~50nmであったとは、均一な膜が形成できなかったことを意味する。すなわち、上述の第1領域部と第2領域部とは、マイクロポア(細孔)の底部から1~50nmの範囲に存在した。
上述の第1領域部と第2領域部との合計の厚みは、FE-SEMを用いて断面観察し、上述の第1領域部と第2領域部とが存在する範囲を特定し、その範囲の距離を求めた。
【0156】
次いで、アルミニウム部材を陰極にし、白金を正極にして電解めっき処理を施して、Cuを用いて本体部を形成して導通体を得て、金属充填微細構造体を得た。
以下に示す組成の銅めっき液を使用し、定電流電解を施すことにより、マイクロポアの内部に導通体が形成された金属充填微細構造体を作製した。
ここで、定電流電解は、株式会社山本鍍金試験器社製のめっき装置を用い、北斗電工株式会社製の電源(HZ-3000)を用い、めっき液中でサイクリックボルタンメトリを行って析出電位を確認した後に、以下に示す条件で処理を施した。
(銅めっき液組成及び条件)
・硫酸銅 100g/L
・硫酸 50g/L
・塩酸 15g/L
・温度 25℃
・電流密度 10A/dm2
【0157】
マイクロポアに、上述の各種の金属を充填した後の陽極酸化膜の表面をFE-SEMで観察し、1000個のマイクロポアにおける金属による封孔の有無を観察して封孔率(封孔マイクロポアの個数/1000個)を算出したところ、98%であった。
また、マイクロポアに金属を充填した後の陽極酸化膜を厚さ方向に対してFIBで切削加工し、その断面をFE-SEMにより表面写真(倍率50000倍)を撮影し、マイクロポアの内部を確認したところ、封孔されたマイクロポアにおいては、その内部が金属で完全に充填されていることが分かった。
【0158】
(実施例2)
実施例2は、実施例1に比して、第1金属にFeを用いた点以外は、実施例1と同じとした。
実施例2は、バリア層除去工程において、Feのイオンを含むアルカリ水溶液を用いることにより、バリア層を除去すると同時に、細孔の底部にFeからなる第1領域部を形成した。
また、無電解めっき液に、奥野製薬工業株式会社 トップケミアロイ(製品名)を用いて、温度55℃で30分間、実施して、マイクロポアの内部に、第2領域部として、Ni層を形成した。第2領域部はFeよりもNiを多く含む。第1領域部と第2領域部との合計の厚みは1~50nmであった。なお、上述の第1領域部と第2領域部との合計の厚みが1~50nmであったとは、均一な膜が形成できなかったことを意味する。すなわち、上述の第1領域部と第2領域部とは、マイクロポア(細孔)の底部から1~50nmの範囲に存在した。
実施例2は、実施例1と同じく導通体の直径は60nmであり、かつ細孔の封孔率は98%であった。
【0159】
(実施例3)
実施例3は、実施例1に比して、第1金属にCoを用いた点以外は、実施例1と同じとした。
実施例3は、バリア層除去工程において、Coのイオンを含むアルカリ水溶液を用いることにより、バリア層を除去すると同時に、細孔の底部にCoからなる第1領域部を形成した。
また、無電解めっき液に、奥野製薬工業株式会社 トップケミアロイ(製品名)を用いて、温度55℃で30分間、実施して、マイクロポアの内部に、第2領域部として、Ni層を形成した。第2領域部はCoよりもNiを多く含む。第1領域部と第2領域部との合計の厚みは1~50nmであった。なお、上述の第1領域部と第2領域部との合計の厚みが1~50nmであったとは、均一な膜が形成できなかったことを意味する。すなわち、上述の第1領域部と第2領域部とは、マイクロポア(細孔)の底部から1~50nmの範囲に存在した。
実施例3は、実施例1と同じく導通体の直径は60nmであり、かつ細孔の封孔率は98%であった。
【0160】
(比較例1)
比較例1は、実施例1に比して、充填工程において、無電解めっき時間を、温度55℃で15分間、実施した点が異なる以外は、実施例1と同じとした。比較例1は、第1領域部と第2領域部とを、FE-SEMを用いた断面観察で確認することができなかった。このため、比較例1は、実質的に第1領域部と第2領域部が形成されておらず、先端部の厚みを1nm以下とした。
(比較例2)
比較例2は、実施例1に比して、無電解めっきを実施しなかった点以外は、実施例1と同じとした。
比較例2は、第1領域部と第2領域部とを、FE-SEMを用いた断面観察で確認することができなかった。このため、比較例2は、実質的に第1領域部と第2領域部が形成されておらず、1nm以下とした。
(比較例3)
比較例3は、実施例1に比して、第1領域部を形成しない点以外は、実施例1と同じとした。比較例3は、バリア層除去工程において、5質量%リン酸水溶液に30℃、30分間浸漬させるエッチング処理(エッチング除去処理)を施し、陽極酸化膜の細孔の底部にあるバリア層を除去し、細孔を介してアルミニウム部材を露出させた。
比較例3は、第1領域部と第2領域部とを、FE-SEMを用いた断面観察で確認したが、均一に析出していなかった。このため、比較例3は、表2の「先端部の厚み」の欄に「均一析出できず」と記した。
【0161】
【表2】
【0162】
表2に示すように、実施例1~実施例3は、比較例1~比較例3に比して、マイクロ欠陥数が少なく良好であった。
比較例1は、第1領域部と第2領域部とが実質的に形成されておらず、マイクロ欠陥数が多くなった。
比較例2は、第2領域部がなく先端部を厚膜化できず、マイクロ欠陥数が多くなった。
比較例3は、第1領域部がなく先端部が均一析出せず、マイクロ欠陥数が多くなった。
【符号の説明】
【0163】
10 アルミニウム部材
10a 表面
12 貫通孔
12c 底部
12d 面
13 バリア層
14 陽極酸化膜
15a 第1充填物
15b 第2充填物
15c 第3充填物
16 導通体
16a 第1領域部
16b 第2領域部
16c 本体部
16e、16f 突出部分
17 導体部
19 構造体
20 金属充填微細構造体
40 絶縁性基材
40a 表面
40b 裏面
44 樹脂層
46 支持体
47 剥離層
48 支持層
49 剥離剤
50 異方導電材
d 平均径
Dt 厚み方向
h、ht 厚み
p 中心間距離
x 方向
図1
図2
図3
図4
図5
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