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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】バルーン取付治具
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20231201BHJP
   A61B 1/01 20060101ALI20231201BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
A61B1/00 650
A61B1/01 513
G02B23/24 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022503613
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2021006661
(87)【国際公開番号】W WO2021172285
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2020033961
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 伸治
(72)【発明者】
【氏名】川島 歩
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-28350(JP,A)
【文献】特開2006-230777(JP,A)
【文献】特開平8-173424(JP,A)
【文献】特開2011-245012(JP,A)
【文献】特開2010-17485(JP,A)
【文献】特開2020-163114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00- 1/32
G02B 23/24-23/26
A61M 25/10-25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーン本体と、前記バルーン本体の一端に設けられる第1筒部と、前記第1筒部の前記バルーン本体を挟んで反対側の他端に設けられる第2筒部と、を有するバルーンを、内視鏡の挿入部又は前記内視鏡の挿入部の体腔内への挿入を補助する挿入補助具に取り付けるためのバルーン取付治具であって、
中空筒状で平坦状に折りたたみ可能に形成され、一端に第1開口部を有し他端に第2開口部を有する本体部と、
前記第2開口部から前記第1開口部が設けられる側とは反対側に向かって延在して設けられ、互いに対向する一対のガイド片と、を有し、
前記本体部及び前記一対のガイド片の内表面に、前記挿入部又は前記挿入補助具の外周面が摺動可能な滑り面を有し、
前記一対のガイド片は、前記ガイド片の第2開口部側の外表面に設けられた高摩擦部と、前記ガイド片の先端側の外表面に設けられ、前記高摩擦部より摩擦係数が小さい低摩擦部と、を有し、
前記高摩擦部は、前記バルーンの前記第2筒部が保持される部分であり、前記低摩擦部は、前記バルーンの前記第1筒部が保持される部分である、
バルーン取付治具。
【請求項2】
前記滑り面は、少なくとも前記挿入部又は前記挿入補助具が前記本体部及び前記一対のガイド片と接触する領域である、
請求項1に記載のバルーン取付治具。
【請求項3】
前記滑り面は、前記本体部及び前記一対のガイド片の内表面の全域である、
請求項2に記載のバルーン取付治具。
【請求項4】
前記滑り面は、前記本体部及び前記一対のガイド片の外表面より、摩擦係数が小さい、
請求項1から3のいずれか1項に記載のバルーン取付治具。
【請求項5】
前記滑り面は、シボ状凹凸面である、
請求項1から4のいずれか1項に記載のバルーン取付治具。
【請求項6】
前記滑り面は、プラスチック素材からなるコーティング層を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のバルーン取付治具。
【請求項7】
前記高摩擦部は、表面の滑らかなシート、又は、粘着性を有するコーティング層を有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のバルーン取付治具。
【請求項8】
前記一対のガイド片は、前記ガイド片の先端側に設けられた幅狭部と、前記ガイド片の第2開口部側に設けられ前記幅狭部より幅の広い幅広部と、を有し、
前記一対のガイド片のそれぞれの幅広部の幅を合計した長さが、前記挿入部又は前記挿入補助具の外周の長さ以下である、
請求項1から7のいずれか1項に記載のバルーン取付治具。
【請求項9】
バルーン本体と、前記バルーン本体の一端に設けられる第1筒部と、前記第1筒部の前記バルーン本体を挟んで反対側の他端に設けられる第2筒部と、を有するバルーンを、内視鏡の挿入部又は前記内視鏡の挿入部の体腔内への挿入を補助する挿入補助具に取り付けるためのバルーン取付治具であって、
中空筒状で平坦状に折りたたみ可能に形成され、一端に第1開口部を有し他端に第2開口部を有する本体部と、
前記第2開口部から前記第1開口部が設けられる側とは反対側に向かって延在して設けられ、互いに対向する一対のガイド片と、
前記一対のガイド片に設けられ、前記ガイド片の先端側の幅狭部と、前記第2開口部側で前記幅狭部より幅の広い幅広部と、を有し、
前記一対のガイド片のそれぞれの幅広部の幅を合計した長さが、前記挿入部又は前記挿入補助具の外周の長さ以下であり、
前記幅広部は外表面に設けられた高摩擦部を有し、前記幅狭部は外表面に設けられ、前記高摩擦部より摩擦係数が小さい低摩擦部と、を有し、
前記高摩擦部は、前記バルーンの前記第2筒部が保持される部分であり、前記低摩擦部は、前記バルーンの前記第1筒部が保持される部分である、
バルーン取付治具。
【請求項10】
前記本体部及び前記一対のガイド片の材料が、樹脂又は紙である、
請求項1から9のいずれか1項に記載のバルーン取付治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーン取付治具に係り、特に、内視鏡の挿入部、又は、挿入部を体腔内に挿入する際のガイドとなる挿入補助具にバルーンを取り付けるためのバルーン取付治具に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置では、膨張及び収縮するバルーンが様々な用途で用いられている。例えば、小腸又は大腸等の深部消化管を観察する内視鏡装置では、内視鏡の挿入部に膨縮自在なバルーンが装着され、このバルーンを膨張させることによって、内視鏡の挿入部を体内に固定できるようになっている。
【0003】
このようなバルーンは、ゴム等の弾性体によって構成されており、その端部は、自然状態で取付対象物(内視鏡の挿入部)の外径よりも小径の筒状に形成されている。そして、バルーンを装着する際は、バルーンの端部を拡径しながら取付対象物に被せた後、バルーンの端部の上から糸を巻回したりゴムバンドを外嵌させたりすることによって、バルーンの端部を取付対象物に固定している。
【0004】
ところで、バルーンの端部を拡径しながら取付対象物に被せる作業は非常に煩わしく、取付作業に手間がかかるという問題があった。例えば、下記の特許文献1には、バルーン本体の両端に設けられた筒部に挿入される第1及び第2ガイド片を備えたバルーン取付治具が記載されている。このバルーン取付治具は、第1ガイド片と第2ガイド片との間に内視鏡の挿入部を挿入することで、バルーンの筒部に内視鏡を挿入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-11656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の取付治具は、第1ガイド片上及び第2ガイド片上にバルーンの筒部を被せた状態で第1ガイド片及び第2ガイド片を把持して、挿入部上でバルーンを移動させており、挿入部とバルーンの摩擦力により、バルーンが引き摺られ、バルーンに皺が生じやすいという課題があった。また、バルーンの張力により、第1ガイド片及び第2ガイド片を移動させにくいという課題があった。また、バルーンを挿入部の所定の位置に移動させた後、バルーンから第1ガイド片及び第2ガイド片を引き抜く際に、バルーンの位置がずれやすいという課題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、バルーンを内視鏡の挿入部に取り付ける作業負担を軽減できるバルーン取付治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を達成するために、本発明に係るバルーン取付治具は、バルーン本体と、バルーン本体の一端に設けられる第1筒部と、第1筒部のバルーン本体を挟んで反対側の他端に設けられる第2筒部と、を有するバルーンを、内視鏡の挿入部又は内視鏡の挿入部の体腔内への挿入を補助する挿入補助具に取り付けるためのバルーン取付治具であって、中空筒状で平坦状に折りたたみ可能に形成され、一端に第1開口部を有し他端に第2開口部を有する本体部と、第2開口部から第1開口部が設けられる側とは反対側に向かって延在して設けられ、互いに対向する一対のガイド片と、を有し、本体部及び一対のガイド片の内表面に、挿入部又は挿入補助具の外周面が摺動可能な滑り面を有する。
【0009】
本発明の一形態は、滑り面は、少なくとも挿入部又は挿入補助具が本体部及び一対のガイド片と接触する領域であることが好ましい。
【0010】
本発明の一形態は、滑り面は、本体部及び一対のガイド片の内表面の全域であることが好ましい。
【0011】
本発明の一形態は、滑り面は、本体部及び一対のガイド片の外表面より、摩擦係数が小さいことが好ましい。
【0012】
本発明の一形態は、滑り面は、シボ状凹凸面であることが好ましい。
【0013】
本発明の一形態は、滑り面は、プラスチック素材からなるコーティング層を有することが好ましい。
【0014】
本発明の一形態は、一対のガイド片は、ガイド片の第2開口部側の外表面に設けられた高摩擦部と、ガイド片の先端側の外表面に設けられ、高摩擦部より摩擦係数が小さい低摩擦部と、を有することが好ましい。
【0015】
本発明の一形態は、高摩擦部は、表面の滑らかなシート、又は、粘着性を有するコーティング層を有することが好ましい。
【0016】
本発明の一形態は、一対のガイド片は、ガイド片の先端側に設けられた幅狭部と、ガイド片の第2開口部側に設けられ幅狭部より幅の広い幅広部と、を有し、一対のガイド片のそれぞれの幅広部の幅を合計した長さが、挿入部又は挿入補助具の外周の長さ以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の目的を達成するために、本発明に係るバルーン取付治具は、バルーン本体と、バルーン本体の一端に設けられる第1筒部と、第1筒部のバルーン本体を挟んで反対側の他端に設けられる第2筒部と、を有するバルーンを、内視鏡の挿入部又は内視鏡の挿入部の体腔内への挿入を補助する挿入補助具に取り付けるためのバルーン取付治具であって、中空筒状で平坦状に折りたたみ可能に形成され、一端に第1開口部を有し他端に第2開口部を有する本体部と、第2開口部から第1開口部が設けられる側とは反対側に向かって延在して設けられ、互いに対向する一対のガイド片と、一対のガイド片に設けられ、ガイド片の先端側の幅狭部と、第2開口部側で幅狭部より幅の広い幅広部と、を有し、一対のガイド片のそれぞれの幅広部の幅を合計した長さが、挿入部又は挿入補助具の外周の長さ以下である。
【0018】
本発明の一形態は、本体部及び一対のガイド片の材料が、樹脂又は紙であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のバルーン取付治具によれば、挿入部に対してバルーン取付治具を移動させやすくなり、バルーンを装着させた内視鏡からバルーン取付治具を抜き易くすることができ、また、バルーンと一体でバルーン取付治具を移動させ易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】バルーンを使用する内視鏡装置のシステム構成図である。
図2】内視鏡の挿入部の先端部を示す斜視図である。
図3】バルーン取付治具の平面図である。
図4】本体部の第1開口部及び第2開口部が開いた状態の斜視図である。
図5】本体部が折りたたまれた状態の斜視図である。
図6】バルーン取付治具を構成するためのシートの平面図である。
図7】バルーン取付治具にバルーンを取り付けた形態を説明する図である。
図8】収納容器の斜視図である。
図9】蓋部を外した平面図である。
図10】取付治具付きバルーンを収納した断面図である。
図11】挿入部にバルーンを取り付ける方法を説明する図である。
図12】挿入部にバルーンを取り付ける方法を説明する図である。
図13】挿入部にバルーンを取り付ける方法を説明する図である。
図14】挿入部にバルーンを取り付ける方法を説明する図である。
図15】挿入部にバルーンを取り付ける方法を説明する図である。
図16】挿入部にバルーンを取り付ける方法を説明する図である。
図17】挿入部にバルーンを取り付ける方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に従って、本発明に係るバルーン取付治具について説明する。
【0022】
図1は、本発明に係るバルーン取付治具を用いて取り付けられるバルーンを使用する内視鏡の一例を示すシステム構成図である。図1に示すように内視鏡装置は主として、内視鏡10、バルーン60及びバルーン制御装置70で構成される。
【0023】
内視鏡10は、操作部14と、この操作部14に連設され、体内に挿入される挿入部12とを備える。操作部14には、ユニバーサルコード16が接続され、このユニバーサルコード16の先端にLGコネクタ18が設けられる。LGコネクタ18は光源装置20に着脱自在に連結され、これによって挿入部12の先端に設けた照明窓(不図示)に照明光が送られる。また、LGコネクタ18には、ケーブル22を介して電気コネクタ24が接続され、この電気コネクタ24がプロセッサ26に着脱自在に連結される。
【0024】
操作部14には、送気送水ボタン28、吸引ボタン30、シャッターボタン32、及び機能切替ボタン34が並設されるとともに、一対のアングルノブ36、36が設けられる。
【0025】
挿入部12は、操作部14側から順に軟性部40、湾曲部42、及び先端部44で構成される。軟性部40は、螺旋状に巻回された金属板の外周にネットを被せ、その外周を被覆することにより構成されており、十分な可撓性を有している。
【0026】
湾曲部42は、操作部14のアングルノブ36、36を回動することによって遠隔的に湾曲するように構成される。たとえば、湾曲部42は、円筒状の複数の節輪をピンによって回動自在に連結するとともに、その節輪の内部に複数本の操作ワイヤを挿通させてピンにガイドさせている。そして、操作ワイヤを押し引き操作することによって、節輪同士が回動して湾曲部42が湾曲操作されるようになっている。この湾曲部42を湾曲操作することによって、先端部44を所望の方向に向けることができる。
【0027】
図2に示すように、先端部44の先端面には、観察窓52、照明窓54、54、送気送水ノズル56、及び、鉗子口58が設けられる。観察窓52の後方には観察光学系及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子が配設され、この撮像素子を支持する基板に信号ケーブルが接続される。信号ケーブルは挿入部12、操作部14、及び、ユニバーサルコード16等に挿通されて電気コネクタ24まで延設され、プロセッサ26に接続される。よって、観察窓52で取り込まれた観察像が撮像素子の受光面に結像されて電気信号に変換され、この電気信号が信号ケーブルを介してプロセッサ26に出力され、映像信号に変換される。これにより、プロセッサ26に接続されたモニタ50に観察画像が表示される。
【0028】
照明窓54は、その後方に照明光学系及びライトガイド(不図示)の出射端が配設される。ライトガイドは挿入部12、操作部14及びユニバーサルコード16に挿通されてLGコネクタ18内にその入射端が配設される。したがって、LGコネクタ18を光源装置20に連結することによって、光源装置20から照射された照明光がライトガイドを介して照明光学系に伝送され、照明窓54から前方に照射される。
【0029】
先端部44に設けた送気送水ノズル56は、送気送水ボタン28によって操作されるバルブ(不図示)に連通される。このバルブがLGコネクタ18に設けた送気送水コネクタ48に連通される。送気送水コネクタ48には不図示の送気送水手段が接続され、エア及び水が供給される。したがって、送気送水ボタン28を操作することによって、送気送水ノズル56からエア又は水が観察窓52に向けて噴射される。
【0030】
先端部44に設けた鉗子口58は、鉗子挿入部46に連通される。よって、鉗子挿入部46から鉗子等の処置具を挿入することによって、処置具を鉗子口58から導出することができる。また、鉗子口58は、吸引ボタン30によって操作されるバルブ(不図示)に連通され、このバルブがLGコネクタ18の吸引コネクタ49に接続される。したがって、吸引コネクタ49に不図示の吸引手段を接続し、吸引ボタン30で操作することによって、鉗子口58から病変部等を吸引することができる。
【0031】
内視鏡10の挿入部12の外周には、バルーン60が着脱自在に装着される。バルーン60は、シリコンゴム等の弾性材料から構成される。バルーン60は、一端に設けられた第1筒部60Aと、他端に設けられた第2筒部60Bと、第1筒部60Aと第2筒部60Bとの間に設けられるバルーン本体60Cと、を有し、第1筒部60A及び第2筒部60Bは、バルーン本体60Cに対して絞られた略筒状に形成されている。
【0032】
このバルーン60は、挿入部12を挿通させることによって、所定の装着位置(たとえば先端部44から湾曲部42にかけて)に配置される。第1筒部60A及び第2筒部60Bは、自然状態では、内視鏡10の挿入部12の外径より小さな内径で構成される。バルーン60が挿入部12に装着されると、第1筒部60Aの弾性力、及び、第2筒部60Bの弾性力は、挿入部12の径方向内側に向けて作用する。弾性力により、バルーン60は挿入部12の所定の位置に保持される。
【0033】
第1筒部60Aの外周上に、筒形状の第1バルーン固定部材61であるゴムバンドが嵌め込まれ、第2筒部60Bの外周上に、筒形状の第2バルーン固定部材62であるゴムバンドが嵌め込まれる。第1バルーン固定部材61及び第2バルーン固定部材62により、バルーン60が挿入部12に固定される。バルーン60は、本発明のバルーン取付治具を用いて装着される。バルーン取付治具の説明は後述する。
【0034】
挿入部12のバルーン装着位置には、通気孔64が形成されており、この通気孔64が図1に示す操作部14のバルーン送気口38に連通される。バルーン送気口38には、図1のチューブ80が接続され、このチューブ80を介してバルーン制御装置70が接続される。バルーン制御装置70は、バルーン60にエア等の流体を供給及び吸引する装置であり、このバルーン制御装置70から、流体(たとえばエア)を供給及び吸引することによって、バルーン60にエアを供給及び吸引することができる。バルーン60はエアを供給することによって略球状に膨張し、エアを吸引することによって挿入部12の外表面に貼り付くようになっている。
【0035】
図1に示すように、バルーン制御装置70は主として、装置本体72と、リモートコントロール用のハンドスイッチ74で構成される。装置本体72の前面には、電源スイッチSW1、停止スイッチSW2、圧力表示部76が設けられる。圧力表示部76はバルーン60の圧力値を表示するパネルであり、バルーン破れ等の異常発生時にはこの圧力表示部76にエラーコードが表示される。
【0036】
装置本体72の前面には、バルーン60へのエア供給及び吸引を行うチューブ80が接続される。チューブ80と装置本体72との接続部分にはバルーン60が破れた時の体液の逆流を防止するための逆流防止ユニット82が設けられる。逆流防止ユニット82は、装置本体72に着脱自在に装着された中空円盤状のケース(不図示)の内部に気液分離用のフィルタを組み込むことによって構成されており、装置本体72内に液体が流入することをフィルタによって防止する。
【0037】
一方、ハンドスイッチ74には、各種のスイッチが設けられる。たとえば、装置本体72側の停止スイッチSW2と同様の停止スイッチや、バルーン60の加圧及び減圧を指示するON/OFFスイッチ、バルーン60の圧力を保持するためのポーズスイッチなどが設けられる。このハンドスイッチ74はコード84を介して装置本体72に電気的に接続されている。なお、図1には示してないが、ハンドスイッチ74には、バルーン60の送気状態、或いは排気状態を示す表示部が設けられている。
【0038】
バルーン制御装置70は、バルーン60にエアを供給して膨張させるとともに、そのエア圧を一定値に制御してバルーン60を膨張した状態に保持する。また、バルーン60からエアを吸引して収縮させるとともに、そのエア圧を一定値に制御してバルーン60を収縮した状態に保持する。
【0039】
バルーン制御装置70は、バルーン専用モニタ86に接続されており、バルーン60を膨張及び収縮させる際に、バルーン60の圧力値や膨張及び収縮状態をバルーン専用モニタ86に表示する。なお、バルーン60の圧力値や膨張及び収縮状態は、内視鏡10の観察画像にスーパーインポーズしてモニタ50に表示するようにしてもよい。
【0040】
内視鏡装置の操作方法の一例としては、挿入部12をプッシュ式で挿入していき、必要に応じてバルーン60を膨張させて挿入部12を体内(たとえば大腸)に固定する。そして、挿入部12を引いて体内(たとえば大腸)の管形状を単純化した後、バルーン60を収縮させて挿入部12をさらに腸管の深部に挿入する。たとえば、挿入部12を被検者の肛門から挿入し、挿入部12の先端がS状結腸を過ぎた際にバルーン60を膨張させて挿入部12を腸管に固定し、挿入部12を引いてS状結腸を略直線状にする。そして、バルーン60を収縮させて、挿入部12の先端を腸管の深部に挿入していく。これにより、挿入部12を腸管の深部に挿入することができる。なお、上述した内視鏡10を、バルーン付きの挿入補助具(不図示)とともに、ダブルバルーン式内視鏡装置として使用してもよい。
【0041】
[バルーン取付治具]
次に、本実施形態に係るバルーン取付治具について説明する。図3は、バルーン取付治具の平面図である。図4は、本体部の第1開口部及び第2開口部が開いた状態の斜視図である。図5は、本体部が折りたたまれた状態の斜視図である。図6は、バルーン取付治具を構成するためのシートの平面図である。図6に示す平面図VIAは、バルーン取付治具を組み立てた際に内表面となる側から見た図であり、平面図VIBは、外表面側から見た図である。バルーン取付治具は、バルーン60を内視鏡10の挿入部12への装着を容易にするために用いられる。なお、以下では、バルーン60を挿入部12に取り付ける態様で説明するが、バルーン60を取り付ける対象は、挿入部12に限定されず、挿入部12を体腔内へ挿入する際の補助に用いられる挿入補助具(図示せず)に取り付けることも可能である。
【0042】
バルーン取付治具100は、一端に第1開口部104を有し、他端に第2開口部106を有する中空筒状に形成された本体部102を有する。本体部102の第2開口部106には、第2開口部106を挟んで、互いに対向する一対のガイド片108a、108bを有する。また、本体部102には、一端から他端に向かって設けられ、本体部102を両方向から内側に折り曲げ可能とする2組の折り曲げ部110a、110b、110cが形成されている。折り曲げ部110a、110cを山折り、折り曲げ部110bを谷折りとすることで、本体部102を内側に折り曲げることができる。また、折り曲げ部110a、110b、110cで折り曲げることで、本体部102は、平坦状に折りたたみ可能であり、図5に示すように、一対のガイド片108a、108bを重ね合わせることができる。
【0043】
一対のガイド片108a、108bは、第2開口部106から第1開口部104とは反対側の先端側に向かって延在して設けられている。一対のガイド片108a、108bの幅は、平坦状に折りたたまれた本体部102より狭い幅で形成されている。これにより、バルーン取付治具100をバルーン60に取り付けた際に、一対のガイド片108a、108bをバルーン60の第1筒部60A及び第2筒部60Bの内側に配置することができる。内視鏡10の挿入部12をバルーン60に取り付ける際に、挿入部12を一対のガイド片108a、108bに沿って挿入することで、挿入部12を第1筒部60A及び第2筒部60Bに挿入しやすくすることができる。
【0044】
本体部102の第1開口部104側は、本体部102から幅方向に延在して設けられ、且つ、平坦状に折りたたまれた本体部102より幅の広い翼部112を有する。翼部112は、後述する収納容器300(図8参照)に収納した際に、凹部310(図8参照)に当接される部分であり、翼部112が凹部に当接されることで、本体部102の移動及び回転が防止される。
【0045】
このようなバルーン取付治具100は、例えば、図6に示すシートSを用いて形成することができる。シートSの本体部102に形成された折り曲げ部110a、110cを山折り、折り曲げ部110bを谷折りし、且つ、翼部112に設けられた折り曲げ部110dを二つ折りに山折りし、本体部102に設けられた挿入片116を、本体部102の反対側の端部に設けられた穴部118に挿入することで、本体部102が中空筒状に形成されたバルーン取付治具100を形成することができる。
【0046】
本体部102及び一対のガイド片108a、108bの材質は、バルーンの材料である、シリコンゴム、及び、ラテックス等のゴム製品が密着しにくい材質とすることが好ましく、具体的には、画用紙及びケント紙等の紙、又は、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリカーボネート樹脂等の樹脂を用いることができる。また、紙で形成する場合、本体部102を拡げたり、折りたたんだりしやすく、また、破れにくいユポ紙(登録商標)を用いることが好ましい。
【0047】
(バルーン取付治具の表面特性)
本実施形態のバルーン取付治具100は、図6の平面図VIAで示すように、本体部102及び一対のガイド片108a、108bの内表面に、内視鏡10の挿入部12の外周面が摺動可能な滑り面120を有する。すなわち、滑り面120は、内視鏡10の挿入部12に対して、滑り性を有する。
【0048】
滑り面120は、バルーン取付治具100の本体部102及び一対のガイド片108a、108bの内表面のうち、挿入部12を挿入した際に、少なくとも挿入部12と本体部102及び一対のガイド片108a、108bとが接触する領域に設けられていることが好ましい。より好ましくは、バルーン取付治具を組み立てた際に、ガイド片108aと同一面である第1面102a、ガイド片108bと同一面である第2面102b、及び、一対のガイド片108a、108bの全域に設けられていることである。さらに好ましくは、第1面102a、第2面102b、及び、第1面102aと第2面102bの間に設けられた側面102c、102dを含む本体部102の内表面及び一対のガイド片108a、108bの内表面の全域に設けられていることである。なお、図6に示す平面図VIAにおいては、滑り面120は、ガイド片108aと同一面である第1面102a、ガイド片108bと同一面である第2面102b、及び、一対のガイド片108a、108bの全域に設けられている。
【0049】
本体部102及び一対のガイド片108a、108bの内表面に滑り面120を設ける方法としては、表面をシボ状凹凸面とする、又は、プラスチック素材からなるコーティング層を設ける、ことにより行うことができる。
【0050】
表面をシボ状凹凸面とするためには、例えば、(1)ヤスリがけによる内表面の粗面化、(2)樹脂等で形成された球状又は鋭角を有する粒状物を噴射するブラスト処理、(3)凹凸を有する表面が粗い型への熱転写、(4)微細加工により複数の筋形状の形成、により行うことができる。プラスチック素材からなるコーティング層の形成は、フッ素、又は、シリコン系の塗料を塗布することで行うことができる。微細加工により筋形状の形成、及び、コーティング層の粗さに方向性を有する場合は、挿入部12の挿入方向と同一の方向性を有することで、挿入部12を挿入方向に摺動可能とすることができる。
【0051】
なお、滑り面120は、バルーン取付治具100の材質が紙で構成されている場合は、挿入部12は、バルーン取付治具100に対して十分に摺動可能であるため、本体部102の内表面に処理を行わなくとも滑り面120とすることができる。
【0052】
本体部102及び一対のガイド片108a、108bの内表面を滑り面120とすることで、一対のガイド片108a、108bの周囲からバルーン60の張力がかかる状態においても、バルーン取付治具100への挿入部12の挿入又は取出し等の挿入部12の移動(摺動)をスムーズに行うことができる。
【0053】
一対のガイド片108a、108bの外表面は、図6の平面図VIBで示すように、第2開口部106側に設けられた高摩擦部122と、高摩擦部122より先端側に設けられ、高摩擦部122より摩擦係数が小さい低摩擦部124と、を有する。
【0054】
高摩擦部122は、薄いポリプロピレンシートを貼り付ける、低硬度シリコン等の粘着性(タック性)のあるコーティングを行う、又は、ラミネート紙又はユポ紙等の平滑な紙を貼り付けることにより形成することができる。また、低摩擦部124は、上述したバルーン取付治具100の内表面に形成された滑り面120と同様の方法により形成することができる。
【0055】
一対のガイド片108a、108bの外表面を高摩擦部122及び低摩擦部124の異なる摩擦係数を有する領域とすることで、低摩擦部124では、バルーン60に対して滑り易くすることができるので、バルーン60の第1筒部60Aへのバルーン取付治具100の挿入又は取出しを行うことができる。また、高摩擦部122では、バルーン60に対して滑りにくくすることができるので、バルーン60の第2筒部60Bと一体となって、バルーン取付治具100を移動させることができる。
【0056】
高摩擦部122及び低摩擦部124は、上記の効果を有することができれば、高摩擦部122及び低摩擦部124のいずれか一方のみを形成することで、相対的に摩擦係数の異なる2つの領域を形成することができる。例えば、バルーン取付治具100が樹脂で形成されている場合、樹脂表面は摩擦抵抗が大きいため、高摩擦部122を形成する処理は行わず、上記の低摩擦部124を形成する処理(滑り面120を形成する処理)を行うことで、一対のガイド片108a、108bの外表面に高摩擦部122及び低摩擦部124を形成することができる。また、バルーン取付治具100の材料を紙とした場合、紙で形成されたバルーン取付治具100は摩擦抵抗が小さいため、低摩擦部124を形成する処理は行わず、上記の高摩擦部122を形成する処理を行うことで、一対のガイド片108a、108bの外表面に高摩擦部122及び低摩擦部124を形成することができる。
【0057】
このように、バルーン取付治具100を構成する材料自体の摩擦係数により、高摩擦部122又は低摩擦部124のいずれかを形成することで、一対のガイド片108a、108bの外表面に、摩擦係数の異なる高摩擦部122及び低摩擦部124を形成することもできる。
【0058】
(一対のガイド片の形状)
次に、一対のガイド片108a、108bの形状について説明する。図3から図6に示すように、一対のガイド片108a、108bは、先端側に設けられた幅狭部126と、第2開口部106側に設けられた幅広部128と、を有する。幅広部128は、幅狭部126より幅が広く形成されている。
【0059】
幅広部128は、一対のガイド片108a、108bの幅の合計長さが、挿入される内視鏡10の挿入部12の外周の長さ以下であることが好ましい。一対のガイド片108a、108bの幅の合計長さを挿入部12の外周以下とすることで、挿入部12を、第1開口部104から一対のガイド片108a、108bに沿って挿入した際に、挿入部12の周囲に配置された幅広部128が重なり合い、肉厚になることを防止することができる。
【0060】
また、挿入部12の外周に対して、幅広部128の幅の合計の長さが等しくなる程、挿入部12は、バルーン60と直接接触する領域が少なくなる。したがって、バルーン60にバルーン取付治具100に挿入した状態で、バルーン取付治具100に対して挿入部12の移動を容易に行うことができる。
【0061】
一対のガイド片108a、108bの先端に設けられた幅狭部126は、幅広部128より幅が狭く形成されている。幅狭部126は、バルーン取付治具100に挿入部12が挿入された状態において、挿入部12の一部はバルーン60と直接接触し、他の部分は幅狭部126を介して接触する。これにより、挿入部12の先端に配置されるバルーン60と挿入部12とが直接接触している部分を持ってバルーン取付治具100を引き抜くことで、バルーン60を移動させることなく、バルーン取付治具100を抜くことができる。
【0062】
一対のガイド片108a、108bの先端側は、側部が挿入部12の挿入方向と平行であり、テーパの無い先端形状とすることが好ましい。一対のガイド片108a、108bの先端側の形状をこのような構成とすることで、一対のガイド片108a、108bの先端をバルーン60の第1筒部60Aの先端まで挿入することができる。したがって、内視鏡10の挿入部12を第1筒部60Aの先端まで挿入することができる。
【0063】
(取付治具付きバルーン)
次に、バルーン取付治具100をバルーン60を取り付けた形態について説明する。本発明のバルーン取付治具100は、バルーン60が取り付けられた形態で、後述する収納容器に収納されて使用することもできる。以下では、バルーン取付治具100にバルーン60を取り付けた構成を「取付治具付きバルーン200」という。
【0064】
図7は、バルーン取付治具100にバルーン60を取り付けた形態を説明する図である。バルーン60にバルーン取付治具100を取り付ける際は、まず、第2筒部60Bに、一対のガイド片108a、108bを挿入し、一対のガイド片108a、108bの先端側の部分を第2筒部60Bから突出させる。さらに、一対のガイド片108a、108bをバルーン本体60Cの内側に挿入していくことで、第2筒部60Bが、第1筒部60A側に移動するとともに、バルーン本体60Cが内側に折り返され、折り返し開口部66が形成される。そして、折り返し開口部66から、さらに、ガイド片108a、108b及び本体部102を挿入することで、第2筒部60Bから突出したガイド片108a、108bの先端側の部分(幅狭部126)を、第1筒部60Aに挿入し、第2筒部60Bを幅広部128に配置させる。これにより、バルーン取付治具100をバルーン60に取り付けることができる。
【0065】
図7に示すように、バルーン60をバルーン取付治具100に取り付けた状態において、第2筒部60Bは、折り返し開口部66の内側に配置される。一対のガイド片108a、108bは、第1筒部60Aの内側にガイド片108a、108bの幅狭部126が配置される。また、第2筒部60Bの内側にガイド片108a、108bの幅広部128が配置される。第1筒部60A内の一対のガイド片108a、108bは、F-F断面202に示すように、一対のガイド片108a、108bの長手方向A(図3参照)に沿って、外側に向かって折れ曲がって配置されている。これにより、バルーン取付治具100をバルーン60に取り付けた状態において、第1開口部104を、完全に折りたたんだ状態から少し開くことができる。したがって、内視鏡10の挿入部12を第1開口部104に入れやすくすることができる。
【0066】
取付治具付きバルーン200は、第1筒部60Aが一対のガイド片108a、108bの先端側に設けられた幅狭部126に配置される。したがって、低摩擦部124は、一対のガイド片108a、108bの幅狭部126の外表面に設けられていることが好ましい。取付治具付きバルーン200に内視鏡10の挿入部12を挿入すると、挿入部12が一対のガイド片108a、108bの先端まで挿入され、挿入部12の先端にバルーン60の第1筒部60Aが配置される。挿入部12に対して第1筒部60Aの位置を移動させず、バルーン取付治具100を引き抜くことで、第1筒部60Aを挿入部12の先端に取り付けることができる。この時、第1筒部60Aが配置された幅狭部126の外表面を低摩擦部124とすることで、第1筒部60Aから一対のガイド片108a、108bを抜き易くすることができる。
【0067】
また、取付治具付きバルーン200は、第2筒部60Bが一対のガイド片108a、108bの基端側に設けられた幅広部128に配置される。したがって、高摩擦部122は、一対のガイド片108a、108bの幅広部128の外表面に設けられていることが好ましい。第2筒部60Bは、挿入部12が挿入された後、挿入部12の基端側に移動させるため、第2筒部60Bが配置された幅広部128を高摩擦部122とすることで、第2筒部60Bが一対のガイド片108a、108b上を滑ることなく、第2筒部60Bとバルーン取付治具100とが一体となって移動させることができる。一対のガイド片108a、108b及び本体部102の内表面は、挿入部12の外周面が摺動可能な滑り面を有するため、バルーン取付治具100は挿入部12上を移動させ易い構成となっている。また、幅広部128は、幅狭部126のより広い幅を有するため、挿入部12と第2筒部60Bとが接触する面積を小さくすることができ、第2筒部60Bの張力の影響を受けにくく、バルーン取付治具100は挿入部12上を移動させ易い構成となっている。
【0068】
取付治具付きバルーン200は、この状態で、挿入部12を挿入し、バルーン60を取り付けても良く、図8に示す収納容器300に収納し、収納容器300に収納された状態で、挿入部12を挿入し、挿入部12にバルーン60を装着させてもよい。以下、収納容器300について説明する。
【0069】
(収納容器)
図8は、収納容器の斜視図である。図9は、蓋部を外した状態における平面図である。図10は、収納容器内にバルーンを装着したバルーン取付治具を収納した状態の断面図である。
【0070】
収納容器300は、筒状の胴部本体318と胴部本体318より幅の狭い中溝部320とからなる胴部302と、胴部302の中溝部320側に設けられた小溝部306と、小溝部306の反対側に設けられた容器開口部308と、を有する。胴部本体318と中溝部320との間には、バルーン取付治具100の挿入方向Bに対して、垂直方向の面を有して設けられた段差部322とを有する。胴部302の容器開口部308側には、バルーン取付治具100の挿入方向Bに垂直な方向で凹形状に形成された凹部310を有する。また、容器開口部308は、容器開口部308からバルーン取付治具100の挿入方向Bに垂直な方向に、広がって設けられた鍔部312を有し、鍔部312には蓋部314が貼付される。
【0071】
取付治具付きバルーン200の収納時において、バルーン60のバルーン本体60C及び第2筒部60Bが、胴部302に収納され、第1筒部60Aが、小溝部306に収納される。また、胴部302内において、バルーン本体60Cの一部及び第2筒部60Bが中溝部320に収納され、バルーン本体60Cの他の部分が胴部本体318に収納される。バルーン本体60Cを胴部302に収納することで、バルーン取付治具100の周囲に配置されたバルーン本体60C同士の貼りつきを防止し、バルーン本体60Cの形態を保持することができる。
【0072】
また、バルーン取付治具100は、胴部302の胴部本体318に本体部102が収納され、小溝部306及び中溝部320に、一対のガイド片108a、108bが収納される。収納容器300内でバルーン取付治具100をこのように収納することで、胴部本体318と中溝部320の境界に、バルーン取付治具100の本体部102の一対のガイド片108a、108b側の端部を配置させることができる。すなわち、収納容器300の段差部322と、バルーン取付治具100の本体部102の一対のガイド片108a、108b側の端部と、を内視鏡10の挿入部12の挿入方向(バルーン取付治具100の挿入方向B)と垂直方向において、同一面とすることができる。この構成により、段差部322が、バルーン取付治具100の本体部102の挿入方向の位置を規制する第2規制面324となり、第2規制面324と、被規制部130であるバルーン取付治具100の本体部102の一対のガイド片108a、108b側の端部とが接触することで、バルーン取付治具100の挿入方向の位置を規制することができる。
【0073】
胴部本体318は、中溝部320から容器開口部308に向かって、内径が広がるテーパ形状で形成されていることが好ましい。容器開口部308側に向かって広がるテーパ形状とすることで、取付治具付きバルーン200を取り出し易くすることができる。また、収納容器300の製造においても、容器開口部308側を広くすることで、型から抜きやすくすることができる。
【0074】
小溝部306は、第1筒部60A及び一対のガイド片108a、108bの幅狭部126を収納する。小溝部306は、胴部302の軸方向(バルーン取付治具100の挿入方向Bと同方向)に垂直な方向Cに切断した断面形状が楕円形である(図9)。収納容器300に取付治具付きバルーン200を収納した状態において、一対のガイド片108a、108bの先端は、小溝部306の楕円形状の短軸方向Dに沿って、配置されることが好ましい。なお、「ガイド片を短軸方向に沿って配置する」とは、一対のガイド片のそれぞれが小溝部306の短軸を挟んで両側に配置されていることを意味する。
【0075】
凹部310には、バルーン取付治具100の翼部112が収納される。凹部310は、バルーン取付治具100の挿入方向Bに垂直な方向に形成された位置決め面310aと、胴部の円周方向に形成された第1規制面310bと、を有する。位置決め面310aと、バルーン取付治具100の翼部112が接触することで、バルーン取付治具100の挿入方向Bに垂直な方向の位置を決定し、胴部302の側面にバルーン本体60Cが接触することを防止することができ、バルーンの形態を安定させることができる。
【0076】
また、第1規制面310bも同様に、翼部112と接触することで、バルーン取付治具100の挿入方向Bの中心軸に対する回転方向を規制することができる。これにより、輸送にともなう取付治具付きバルーン200の回転を防止することができ、バルーン取付治具100の周囲に配置されたバルーン本体60C同士の貼りつきを防止し、バルーン本体60Cの形態を保持することができる。
【0077】
鍔部312は、容器開口部308から、バルーン取付治具100の挿入方向Bに垂直な方向に、広がって形成されている。鍔部312は、外周部312aと内周部312bとにより構成されており、容器開口部308側から内周部312b、外周部312aの順で設けられている。内周部312bは、バルーン取付治具100の挿入方向Bにおいて、外周部312aより中溝部320側に形成されている。すなわち、外周部312aと内周部312bは段差状に形成されており、外周部312aが、中溝部320側と反対方向に突出して形成されている。
【0078】
蓋部314は、鍔部312に貼付され、収納容器300内を密閉し、滅菌性を確保する。蓋部314は鍔部312の外周部312aの基端側に設けられた被貼付面に貼付される。外周部312aに蓋部314を貼付することで、蓋部314を貼付する面積を小さくすることができる。
【0079】
[バルーン取付方法]
次に、図11から図17を用いて、バルーン60が装着されたバルーン取付治具が収納容器に収納された包装体(以下、「取付治具付きバルーンの包装体」ともいう)を使用したバルーン取付方法について説明する。
【0080】
取付治具付きバルーンの包装体を準備し、蓋部314を外す。図11は、蓋部を外した取付治具付きバルーンの包装体に内視鏡の挿入部を挿入する図である。図12に示すように、蓋部314を外した取付治具付きバルーンの包装体は、バルーン取付治具100の第1開口部104側が、収納容器300の容器開口部308側に配置される。この状態で、内視鏡10の挿入部12を、第1開口部104から挿入する。挿入部12は、収納容器300の小溝部306に突き当たるまで差し込む。
【0081】
バルーン取付治具100の本体部102及び一対のガイド片108a、108bの内表面には、挿入部12の外周面が摺動可能な滑り面120を有する。したがって、挿入部12をバルーン取付治具100内への挿入を容易に行うことができる。
【0082】
図12は、挿入部の先端を小溝部の先端に突き当たるまで挿入した状態を説明する図である。第1開口部104から挿入された挿入部12は、本体部102内を通過し、第2開口部106から一対のガイド片108a、108bの間に挿入される。取付治具付きバルーン200は、図6に示すように、一対のガイド片108a、108bの外側に、第1筒部60A及び第2筒部60Bが配置されている。したがって、一対のガイド片108a、108bの間に挿入部12を挿入することで、一対のガイド片108a、108bを介して、挿入部12を第1筒部60A及び第2筒部60Bの内部に挿入することができる。
【0083】
取付治具付きバルーン200は、バルーン装着時に挿入部12の先端がバルーンを引き摺り、先端からはみ出てしまう寸法を考慮し、一対のガイド片108a、108bの先端が第1筒部60Aの先端から0.5~3mm度突出した状態で収納容器300内に収納されていることが好ましい。一対のガイド片108a、108bを小溝部306の先端に接触した状態で、挿入部12の先端を小溝部306の先端に突き当たるまで挿入することで、第1筒部60Aの端部と挿入部12の先端を一致させることができる。
【0084】
内視鏡10の挿入部12をバルーン取付治具100の第1開口部104から一対のガイド片108a、108bに沿って挿入すると、バルーン60の第1筒部60A及び第2筒部60Bの張力の影響で挿入抵抗がかかり、バルーン取付治具100は、挿入部12の挿入方向に力が加わる。収納容器300に設けられた段差部322と、バルーン取付治具100の被規制部130が接することで、バルーン取付治具100が挿入部12の挿入方向に移動することを防止することができる。したがって、一対のガイド片108a、108bに、挿入部12の挿入方向に力が加わることを防止でき、一対のガイド片108a、108bが折れ曲がることを防止できる。これにより、挿入部12をバルーン60の第1筒部60Aの先端まで容易に挿入することができる。
【0085】
次に、図13に示すように、収納容器300から、挿入部12が挿入された取付治具付きバルーン200を引き抜く。なお、引き抜いた取付治具付きバルーン200及び内視鏡10において、挿入部12の先端とバルーン60の第1筒部60Aの端部との位置が一致していない場合、バルーン取付治具100を挿入部12の長手軸方向に移動させ、挿入部12の先端とバルーン60の第1筒部60Aの端部との位置を一致させる。取付治具付きバルーン200及び内視鏡10を引き抜いた際に、挿入部12の先端とバルーン60の第1筒部60Aの端部との位置が一致している場合は、この工程は行わなくともよい。
【0086】
次に、挿入部12と第1筒部60Aが接している部分を押さえる。具体的には、挿入部12の一対のガイド片108a、108bの部分を避けて、第1筒部60Aを挿入部12に押さえつける。そして、第1筒部60Aを押さえた状態で、図14に示すように、バルーン取付治具100を、挿入部12の基端側に移動させる。第1筒部60Aを押さえた状態で、バルーン取付治具100を移動させることで、第1筒部60Aの位置を固定して、第2筒部60Bの位置を、バルーン取付治具100と一緒に移動させることができる。これにより、図15に示すように、第2筒部60Bを折り返し開口部66の外側に出す。
【0087】
この時、一対のガイド片108a、108bの先端側(幅狭部126)の外表面は、摩擦係数が小さい低摩擦部124であるため、一対のガイド片108a、108bのみを抜き易くすることができる。また、一対のガイド片108a、108bの第2開口部106側(幅広部128)の外表面は高摩擦部122であるため、第2筒部60Bは一対のガイド片108a、108b上を滑りにくくすることができる。したがって、第2筒部60B上から一対のガイド片を押さえた状態で、挿入部12上を、バルーン60とバルーン取付治具100と、を一体として、挿入部12の基端側に移動させることができる。また、第2筒部60Bは、幅広部128に配置されており、幅広部128は、一対のガイド片108a、108bと挿入部12との接触面積を大きくすることができる。一対のガイド片108a、108bの内表面は上述したように滑り面120となっているため、第2筒部60Bの張力を受けた状態でも、バルーン取付治具100の挿入部12上の移動を容易に行うことができる。
【0088】
次に、図16に示すように、バルーン60の位置が動かないように注意して、一対のガイド片108a、108bが外れるまで、第2筒部60Bを、第1筒部60A側に向かって、巻き込む。第2筒部60Bを、一対のガイド片108a、108bが外れるまで、巻き回したら、バルーン取付治具100を取り外す。バルーン取付治具100を挿入部12に基端方向に移動させることで、バルーン取付治具100を抜き取る。バルーン取付治具100が紙で形成されている場合は、バルーン取付治具100を破って取り除いてもよい。
【0089】
バルーン取付治具100を外したら、バルーン60の位置が動かないように固定し、第2筒部60Bを巻き戻す(図17)。最後に、バルーン60の第1筒部60A及び第2筒部60Bに第1バルーン固定部材61及び第2バルーン固定部材62が嵌め込まれることで、バルーン60を挿入部12に固定する(図2参照)。第1バルーン固定部材61及び第2バルーン固定部材62としては、ゴムバンドを用いることができる。ゴムバンドの装着は、例えば特開2013-126526号公報に記載の装置を用いて行うことができる。また、第1バルーン固定部材61及び第2バルーン固定部材62としては、糸を用いることができ、第1筒部60A及び第2筒部60Bを糸で巻くことで、バルーン60を挿入部12に固定することができる。
【0090】
上記実施形態においては、収納容器300に、バルーンが取り付けられた本発明のバルーン取付治具100が収納された態様について説明したが、本発明はこれに限定されない。収納容器に収納されず、バルーン60が取り付けられたバルーン取付治具に、挿入部12を挿入する方法で、バルーン60を挿入部12に取り付けてもよい。
【0091】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、バルーン60を装着したバルーン取付治具100に内視鏡10の挿入部12を挿入した際に、挿入部12を移動させ易くすることができる。また、バルーン60の張力の影響を軽減し、バルーン取付治具100の移動を容易に行うことができ、挿入部12及び挿入補助具へのバルーン60の取付を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0092】
10 内視鏡
12 挿入部
14 操作部
16 ユニバーサルコード
18 LGコネクタ
20 光源装置
22 ケーブル
24 電気コネクタ
26 プロセッサ
28 送気送水ボタン
30 吸引ボタン
32 シャッターボタン
34 機能切替ボタン
36 アングルノブ
38 バルーン送気口
40 軟性部
42 湾曲部
44 先端部
46 鉗子挿入部
48 送気送水コネクタ
49 吸引コネクタ
50 モニタ
52 観察窓
54 照明窓
56 送気送水ノズル
58 鉗子口
60 バルーン
60A 第1筒部
60B 第2筒部
60C バルーン本体
61 第1バルーン固定部材
62 第2バルーン固定部材
64 通気孔
66 折り返し開口部
70 バルーン制御装置
72 装置本体
74 ハンドスイッチ
76 圧力表示部
80 チューブ
82 逆流防止ユニット
84 コード
86 バルーン専用モニタ
100 バルーン取付治具
102 本体部
102a 第1面
102b 第2面
102c、102d 側面
104 第1開口部
106 第2開口部
108a、108b ガイド片
110a、110b、110c、110d 折り曲げ部
112 翼部
116 挿入片
118 穴部
120 滑り面
122 高摩擦部
124 低摩擦部
126 幅狭部
128 幅広部
130 被規制部
200 取付治具付きバルーン
202 断面
300 収納容器
302 胴部
306 小溝部
308 容器開口部
310 凹部
310a 位置決め面
310b 第1規制面
312 鍔部
312a 外周部
312b 内周部
314 蓋部
318 胴部本体
320 中溝部
322 段差部
324 第2規制面
S シート
SW1 電源スイッチ
SW2 停止スイッチ
VIA、VIB 平面図
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
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図16
図17