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特許7394967インクジェット記録用インク及び画像記録方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】インクジェット記録用インク及び画像記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/326 20140101AFI20231201BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20231201BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20231201BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
C09D11/326
C09D11/38
B41M5/00 120
B41J2/01 501
B41J2/01 129
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022511747
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2021009635
(87)【国際公開番号】W WO2021199997
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2020061102
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 博道
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】坂井 優介
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/155770(WO,A1)
【文献】特開2011-213925(JP,A)
【文献】特開2010-180308(JP,A)
【文献】特開2017-198816(JP,A)
【文献】特開2003-262716(JP,A)
【文献】特開2003-185831(JP,A)
【文献】特開2003-261827(JP,A)
【文献】特開2012-126830(JP,A)
【文献】特開2006-169325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/326
C09D 11/38
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式2で表されるスクアリリウム色素と、
重合性化合物と、
分散剤と、
カルボキシ基及びスルホ基からなる群より選択される少なくとも1種の基、並びに、芳香環及び複素芳香環からなる群より選択される少なくとも1種の環を有するシナジストと、を含むインクジェット記録用インク。
【化1】

式2中、R 及びR は、それぞれ独立に、アリール基を表す。
及びR は、水素原子を表す。
及びX は、それぞれ独立に、酸素原子、又は、-N(R )-を表す。
は、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
及びX は、ホウ素原子を表す。
t及びuは、1を表す。
、Y 、Y 及びY は、それぞれ独立に、1価の置換基を表す。Y とY 、及び、Y とY は、互いに結合して環を形成していてもよい。
、Y 、Y 及びY は、それぞれ複数存在する場合には、互いに結合して環を形成していてもよい。
p及びsは、それぞれ独立に0~3の整数を表し、q及びrは、それぞれ独立に0~2の整数を表す。
【請求項2】
前記分散剤は、塩基価が15mgKOH/g以上である、請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項3】
前記スクアリリウム色素の含有量に対する前記分散剤の含有量の比率は、質量基準で、0.5~5である、請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項4】
前記重合性化合物のうち少なくとも1種は、溶解度パラメータが18MPa1/2以上の重合性化合物であり、
前記溶解度パラメータが18MPa1/2以上の重合性化合物の含有量は、インクジェット記録用インクの全質量に対して10質量%~40質量%である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項5】
重合禁止剤をさらに含み、
前記重合禁止剤の含有量は、インクジェット記録用インクの全質量に対して1質量%以上である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項6】
前記重合禁止剤は、ニトロソアミン化合物、ヒンダードアミン化合物、ヒドロキノン化合物及びニトロキシルラジカルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項7】
重合開始剤をさらに含み、
前記重合開始剤の含有量は、インクジェット記録用インクの全質量に対して10質量%以上である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項8】
前記重合開始剤は、アシルホスフィンオキシド化合物及びチオキサントン化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項7に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項9】
前記シナジストの含有量は、インクジェット記録用インクの全質量に対して0.005質量%~0.1質量%である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項10】
前記シナジストの含有量は、前記スクアリリウム色素の全質量に対して0.12質量%~15質量%である、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクを、インクジェット記録方式で基材上に付与してインク画像を記録する工程と、
前記インク画像に活性エネルギー線を照射する工程と、を含む画像記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクジェット記録用インク及び画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光を実質的に吸収せず赤外線を吸収する近赤外線吸収色素は、不可視性を有することから、インク分野での適用が期待されている。
【0003】
例えば、特開2019-001983号公報には、スクアリリウム色素、分散剤、有機溶剤及び水を含有するインクジェットインキが記載されている。
【0004】
また、重合性化合物をインクに含有させることにより、活性エネルギー線によって硬化させて画像を記録する方法が知られている。
【0005】
例えば、特開2011-84727号公報には、イソインドリン系顔料、顔料分散剤、ラジカル重合性化合物、及び、重合開始剤を含有するインク組成物が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2019-001983号公報のように、スクアリリウム色素を分散剤で分散させた場合、分散性が不十分であった。また、特開2011-84727号公報では、有色色素が用いられており、近赤外線吸収色素を用いた場合における分散性については検討されていない。
【0007】
本開示はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の実施形態が解決しようとする課題は、分散性及び経時安定性に優れるインクジェット記録用インク及び画像記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の態様を含む。
<1>下記式1で表されるスクアリリウム色素と、重合性化合物と、分散剤と、カルボキシ基及びスルホ基からなる群より選択される少なくとも1種の基、並びに、芳香環及び複素芳香環からなる群より選択される少なくとも1種の環を有するシナジストと、を含むインクジェット記録用インク。
【化1】

式1中、環A及び環Bは、それぞれ独立に芳香環又は複素芳香環を表し、X及びXは、それぞれ独立に1価の置換基を表し、G及びGは、それぞれ独立に1価の置換基を表し、kAは0~nAの整数を表し、kBは0~nBの整数を表す。nAは、環Aに結合可能なGの数の最大値を表し、nBは、環Bに結合可能なGの数の最大値を表す。XとG、又はXとGは、それぞれ互いに結合して環を形成してもよく、G及びGがそれぞれ複数存在する場合は、環Aに結合する複数のG、及び環Bに結合する複数のGは、それぞれ互いに結合して環構造を形成していてもよい。
<2>分散剤は、塩基価が15mgKOH/g以上である、<1>に記載のインクジェット記録用インク。
<3>スクアリリウム色素の含有量に対する分散剤の含有量の比率は、質量基準で、0.5~5である、<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用インク。
<4>重合性化合物のうち少なくとも1種は、溶解度パラメータが18MPa1/2以上の重合性化合物であり、溶解度パラメータが18MPa1/2以上の重合性化合物の含有量は、インクジェット記録用インクの全質量に対して10質量%~40質量%である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク。
<5>重合禁止剤をさらに含み、重合禁止剤の含有量は、インクジェット記録用インクの全質量に対して1質量%以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク。
<6>重合禁止剤は、ニトロソアミン化合物、ヒンダードアミン化合物、ヒドロキノン化合物及びニトロキシルラジカルからなる群より選択される少なくとも1種である、<5>に記載のインクジェット記録用インク。
<7>重合開始剤をさらに含み、重合開始剤の含有量は、インクジェット記録用インクの全質量に対して10質量%以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク。
<8>重合開始剤は、アシルホスフィン化合物及びチオキサントン化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、<7>に記載のインクジェット記録用インク。
<9>シナジストの含有量は、インクジェット記録用インクの全質量に対して0.005質量%~0.1質量%である、<1>~<8>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク。
<10>シナジストの含有量は、スクアリリウム色素の全質量に対して0.12質量%~15質量%である、<1>~<9>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク。
<11><1>~<10>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクを、インクジェット記録方式で基材上に付与してインク画像を記録する工程と、インク画像に活性エネルギー線を照射する工程と、を含む画像記録方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、分散性及び経時安定性に優れるインクジェット記録用インク及び画像記録方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示のインクジェット記録用インク及び画像記録方法について詳細に説明する。
【0011】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、「工程」という語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念である。また、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念である。
【0014】
[インクジェット記録用インク]
本開示のインクジェット記録用インク(以下、単に「インク」という。)は、下記式1で表されるスクアリリウム色素と、重合性化合物と、分散剤と、カルボキシ基及びスルホ基からなる群より選択される少なくとも1種の基、並びに、芳香環及び複素芳香環からなる群より選択される少なくとも1種の環を有するシナジストと、を含む。
【化2】

式1中、環A及び環Bは、それぞれ独立に芳香環又は複素芳香環を表し、X及びXは、それぞれ独立に1価の置換基を表し、G及びGは、それぞれ独立に1価の置換基を表し、kAは0~nAの整数を表し、kBは0~nBの整数を表す。nAは、環Aに結合可能なGの数の最大値を表し、nBは、環Bに結合可能なGの数の最大値を表す。XとG、又はXとGは、それぞれ互いに結合して環を形成してもよく、G及びGがそれぞれ複数存在する場合は、環Aに結合する複数のG、及び環Bに結合する複数のGは、それぞれ互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0015】
従来、可視領域に吸収がない又は可視領域に吸収が少ない近赤外線吸収色素を含むインクを用いて、不可視性を有する画像を記録する記録方法が検討されている。近赤外線吸収色素としては、シアニン色素、フタロシアニン色素、アントラキノン色素、ジインモニウム色素、及びスクアリリウム色素が知られている。中でも、スクアリリウム色素は、不可視性が高く、耐光性も有するとして注目されている。
【0016】
スクアリリウム色素を含むインクとして、例えば、特開2019-001983号公報には、スクアリリウム色素、分散剤、有機溶剤及び水を含有するインクジェットインキが記載されている。
【0017】
一方、重合性化合物をインクに含有させることにより、活性エネルギー線によって硬化させて画像を記録する方法が知られている。
【0018】
例えば、特開2011-84727号公報には、イソインドリン系顔料、顔料分散剤、ラジカル重合性化合物、及び、重合開始剤を含有するインク組成物が記載されている。
【0019】
スクアリリウム色素と重合性化合物とを単に組み合わせてインクとした場合に、分散性及び経時安定性が不十分であった。本発明者は、鋭意検討した結果、式1で表されるスクアリリウム色素と、重合性化合物と共に、カルボキシ基及びスルホ基からなる群より選択される少なくとも1種の基、並びに、芳香環及び複素芳香環からなる群より選択される少なくとも1種の環を有するシナジストを含有させることにより、分散性及び経時安定性に優れるインクが得られることを見出した。本開示に係るインクが分散性及び経時安定性に優れる理由は、以下のように推定される。
【0020】
式1で表されるスクアリリウム色素は、芳香環又は複素芳香環を有している。また、シナジストは、芳香環及び複素芳香環からなる群より選択される少なくとも1種の環を有する。シナジストのπ共役骨格と、スクアリリウム色素のπ共役骨格とのπ-π相互作用によって、スクアリリウム色素の表面に、シナジストが吸着する。シナジストは、カルボキシ基及びスルホ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有するため、スクアリリウム色素は、シナジストが表面に吸着した状態で、カルボキシ基又はスルホ基同士の静電反発力によってインク中で安定に分散すると考えられる。
【0021】
次に、本開示に係るインクに含まれる各成分について説明する。
【0022】
(スクアリリウム色素)
本開示に係るインクは、式1で表されるスクアリリウム色素を少なくとも1種含む。
【0023】
【化3】

式1中、環A及び環Bは、それぞれ独立に芳香環又は複素芳香環を表し、X及びXは、それぞれ独立に1価の置換基を表し、G及びGは、それぞれ独立に1価の置換基を表し、kAは0~nAの整数を表し、kBは0~nBの整数を表す。nAは、環Aに結合可能なGの数の最大値を表し、nBは、環Bに結合可能なGの数の最大値を表す。XとG、又はXとGは、それぞれ互いに結合して環を形成してもよく、G及びGがそれぞれ複数存在する場合は、環Aに結合する複数のG、及び環Bに結合する複数のGは、それぞれ互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0024】
〔G及びG
及びGは、それぞれ独立に1価の置換基を表す。
【0025】
1価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR10、-COR11、-COOR12、-OCOR13、-NR1415、-NHCOR16、-CONR1718、-NHCONR1920、-NHCOOR21、-SR22、-SO23、-SOOR24、-NHSO25及びSONR2627が挙げられる。
【0026】
10~R27は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又はヘテロ環基を表す。
【0027】
なお、-COOR12のR12が水素原子の場合(すなわち、カルボキシ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、-SOOR24のR24が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。
【0028】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0029】
アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8がさらに好ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。
【0030】
アルケニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がより好ましく、2~8が特に好ましい。アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。
【0031】
アルキニル基の炭素数は、2~40が好ましく、2~30がより好ましく、2~25が特に好ましい。アルキニル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。
【0032】
アリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12がさらに好ましい。
【0033】
アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。アラルキル基の炭素数は、7~40が好ましく、7~30がより好ましく、7~25がさらに好ましい。
【0034】
ヘテロアリール基は、単環又は縮合環が好ましく、単環又は縮合数が2~8の縮合環が好ましく、単環又は縮合数が2~4の縮合環がより好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基は、5員環又は6員環が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がさらに好ましい。ヘテロアリール基としては、ピリジン環、ピペリジン環、フラン環基、フルフラン環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、モルホリン環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、チアゾール環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環及びチアジアゾール環が挙げられる。
【0035】
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。
【0036】
置換基としては、特開2018-154672号公報の段落番号0030に記載の置換基が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、芳香族ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、及びカルボキシ基が挙げられる。中でも、置換基は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、芳香族ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、又はカルボキシ基が好ましい。
【0037】
なお、置換基における「炭素数」とは、置換基の「総炭素数」を意味する。また、各置換基の詳細は、特開2018-154672号公報の段落番号0031~0035に記載の置換基を参照することができる。
【0038】
〔X及びX
及びXは、それぞれ独立に1価の置換基を表す。
【0039】
及びXにおける置換基は、活性水素を有する基が好ましく、-OH、-SH、-COOH、-SOH、-NRX1X2、-NHCORX1、-CONRX1X2、-NHCONRX1X2、-NHCOORX1、-NHSOX1、-B(OH)又はPO(OH)がより好ましく、-OH、-SH又はNRX1X2がさらに好ましい。
【0040】
X1及びRX2は、それぞれ独立に水素原子又は1価の置換基を表す。置換基としてはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基が挙げられる。中でも、置換基は、アルキル基が好ましい。アルキル基は直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及び、ヘテロアリール基の詳細は、G及びGで説明した範囲と同義である。
【0041】
〔環A及び環B〕
環A及び環Bは、それぞれ独立に、芳香環又は複素芳香環を表す。
【0042】
芳香環及び複素芳香環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。
【0043】
芳香環及び複素芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インデセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセタフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、及び、フェナジン環が挙げられる。
【0044】
中でも、環A及び環Bは、芳香環であることが好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環であることがより好ましい。
【0045】
芳香環は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、G及びGで説明した置換基が挙げられる。
【0046】
とG、XとGは互いに結合して環を形成してもよく、G及びGがそれぞれ複数存在する場合は、互いに結合して環を形成していてもよい。環は、5員環又は6員環が好ましい。環は単環であってもよく、複環であってもよい。
【0047】
とG、XとG、G同士又はG同士が結合して環を形成する場合、これらが直接結合して環を形成してもよく、アルキレン基、-CO-、-O-、-NH-、-BR-及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を介して結合して環を形成してもよい。XとG、XとG、G同士又はG同士が、-BR-を介して結合して環を形成することが好ましい。
【0048】
Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。置換基としては、G及びGで説明した置換基が挙げられ、アルキル基又はアリール基が好ましい。
【0049】
〔kA及びkB〕
kAは0~nAの整数を表し、kBは0~nBの整数を表し、nAは、環Aに結合可能なGの数の最大値を表し、nBは、環Bに結合可能なGの数の最大値を表す。
【0050】
kA及びkBは、それぞれ独立に0~4が好ましく、0~2がより好ましく、0~1が特に好ましい。また、kA及びkBが同時に0(ゼロ)を表す場合を含まないことが好ましい。
【0051】
式1で表されるスクアリリウム色素は、耐光性の観点から、下記式2で表される化合物であることが好ましい。
【0052】
【化4】
【0053】
式2中、R及びRは、それぞれ独立に、1価の置換基を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。
及びXは、それぞれ独立に、酸素原子、又は、-N(R)-を表す。
は、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
及びXは、それぞれ独立に、炭素原子、又は、ホウ素原子を表す。
t及びuは、X及びXがホウ素原子である場合には1を表し、X及びXが炭素原子である場合には2を表す。
、Y、Y及びYは、それぞれ独立に、1価の置換基を表す。YとY、及び、YとYは、互いに結合して環を形成していてもよい。
、Y、Y及びYは、それぞれ複数存在する場合には、互いに結合して環を形成していてもよい。
p及びsは、それぞれ独立に0~3の整数を表し、q及びrは、それぞれ独立に0~2の整数を表す。
【0054】
〔R及びR
とRは同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。また、t及びuが2である場合に、2つのR、2つのRはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0055】
及びRで表される1価の置換基としては、G及びGと同様の1価の置換基が挙げられる。中でも、R及びRは、アリール基であることが好ましい。アリール基は、1価の置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。アリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12がさらに好ましい。具体的には、R及びRは、フェニル基又はナフチル基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
【0056】
〔Y、Y、Y及びY
、Y、Y及びYで表される1価の置換基としては、G及びGと同様の1価の置換基が挙げられる。
【0057】
〔p、q、r及びs〕
p、q、r及びsは、0であることが好ましい。すなわち、式2において、Y、Y、Y及びYは存在しないことが好ましい。
【0058】
〔X及びX
とXは同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。X及びXは、-N(R)-であることが好ましい。
【0059】
〔R
で表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、無置換であってもよく、1価の置換基を有していてもよい。1価の置換基としては、G及びGと同様の1価の置換基が挙げられる。
【0060】
アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~2が特に好ましい。アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
【0061】
アリール基の炭素数は、6~20が好ましく、6~12がより好ましい。
【0062】
ヘテロアリール基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。
【0063】
は、水素原子、メチル基、又はエチル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0064】
〔X及びX
及びXは同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。X及びXは、ホウ素原子であることが好ましい。
【0065】
〔R及びR
及びRで表されるアルキル基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、及びイソブチル基が挙げられる。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0066】
式1で表されるスクアリリウム色素の分子量は、100~2,000が好ましく、150~1,000がより好ましい。
【0067】
式1で表されるスクアリリウム色素については、特開2011-2080101号公報に詳細に記載されており、ここに記載の化合物は本開示におけるスクアリリウム色素として好適に用いることができる。
【0068】
式1で表されるスクアリリウム色素、及び式2で表されるスクアリリウム色素は、それぞれの互変異性体であってもよい。互変異性体は、例えば、国際公開第2016-136783号の段落0034の記載を参照できる。
【0069】
上記の式1又は式2で表されるスクアリリウム色素の具体例(具体例B-1~B-40)を以下に示す。ただし、本開示においては、以下の化合物に制限されるものではない。式中、「Me」はメチル基を表し、「Ph」はフェニル基を表す。
【0070】
【化5】
【0071】
【化6】
【0072】
【化7】
【0073】
【化8】
【0074】
【化9】
【0075】
分散性及び経時安定性の観点から、式1で表されるスクアリリウム色素は、具体例B-1、具体例B-3又は具体例B-27であることが好ましく、具体例B-1又は具体例B-3であることがより好ましく、具体例B-1であることがさらに好ましい。
【0076】
式1で表されるスクアリリウム色素は、インク中、粒子の状態で分散されていることが好ましい。式1で表されるスクアリリウム色素の体積平均粒子径は、耐光性の観点から、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましく、20nm以上がさらに好ましく、50nm以上が特に好ましい。また、式1で表されるスクアリリウム色素の体積平均粒子径は、分散性及び吐出性の観点から、400nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、200nm以下がさらに好ましい。
【0077】
スクアリリウム色素の体積平均粒子径は、スクアリリウム色素が分散剤等で被覆されている場合は、被覆された状態での体積平均粒子径を指す。
【0078】
体積平均粒子径は、測定装置としてゼータサイザーナノZS(Malvern Panalyitical社製)を用いて動的光散乱法により測定することができる。
【0079】
スクアリリウム色素は、分散機を用いて分散されることが好ましい。分散機としては、例えば、循環式ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル及びペイントシェーカーが挙げられる。
【0080】
式1で表されるスクアリリウム色素の含有量は、インクの全質量に対して、0.1質量%~20質量%が好ましく、0.1質量%~10質量%がより好ましく、0.3質量%~7質量%がさらに好ましい。
【0081】
(重合性化合物)
本開示に係るインクは、重合性化合物を含む。インクに含まれる重合性化合物は1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0082】
重合性化合物としては、光の照射によって重合反応が進行する光重合性化合物、及び、加熱又は赤外線の照射によって重合反応が進行する熱重合性化合物が挙げられる。光重合性化合物としては、ラジカル重合可能なラジカル重合性基を有する重合性化合物(すなわち、ラジカル重合性化合物)、及びカチオン重合可能なカチオン重合性基を有する重合性化合物(すなわち、カチオン重合性化合物)が挙げられる。中でも、重合性化合物は、光重合性化合物であることが好ましく、ラジカル重合性化合物であることがより好ましい。
【0083】
ラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和化合物であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、単官能エチレン性不飽和化合物及び多官能エチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0084】
単官能エチレン性不飽和化合物とは、エチレン性不飽和基を1つ有する化合物であり、例えば、単官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリルアミド、単官能芳香族ビニル化合物、単官能ビニルエーテル及び単官能N-ビニル化合物が挙げられる。
【0085】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert-オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-n-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-クロロエチル(メタ)アクリレート、4-ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-(2-メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2-テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5-テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4-クロロフェニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシメチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(PO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(3-エチル-3-オキセタニルメチル)(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、及び環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0086】
単官能(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0087】
単官能芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、3-プロピルスチレン、4-プロピルスチレン、3-ブチルスチレン、4-ブチルスチレン、3-ヘキシルスチレン、4-ヘキシルスチレン、3-オクチルスチレン、4-オクチルスチレン、3-(2-エチルヘキシル)スチレン、4-(2-エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4-t-ブトキシカルボニルスチレン及び4-t-ブトキシスチレンが挙げられる。
【0088】
単官能ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4-メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2-ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル及びフェノキシポリエチレングリコールビニルエーテルが挙げられる。
【0089】
単官能N-ビニル化合物としては、例えば、N-ビニル-ε-カプロラクタム及びN-ビニルピロリドンが挙げられる。
【0090】
単官能エチレン性不飽和化合物は、硬化性向上の観点から、環構造を有する化合物であることが好ましい。環構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-n-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5-テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4-クロロフェニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシメチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(3-エチル-3-オキセタニルメチル)(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等の環構造を有する単官能(メタ)アクリレート;
単官能芳香族ビニル化合物;
シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4-メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2-ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等の環構造を有する単官能ビニルエーテル;
N-ビニル-ε-カプロラクタム、N-ビニルピロリドン等の環構造を有する単官能N-ビニル化合物が挙げられる。
【0091】
中でも、酸素によって重合が阻害されないようにする観点から、単官能エチレン性不飽和化合物は、さらにヘテロ原子を有することが好ましい。環構造を有し、かつ、ヘテロ原子を有する単官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、N-ビニル-ε-カプロラクタム及びN-ビニルピロリドンが挙げられる。
【0092】
多官能エチレン性不飽和化合物とは、エチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物であり、例えば、多官能(メタ)アクリレート及び多官能ビニルエーテルが挙げられる。
【0093】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート及び2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0094】
多官能ビニルエーテルとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、EO付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、PO付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、EO付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、PO付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、EO付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、PO付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、EO付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル及びPO付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルが挙げられる。
【0095】
多官能エチレン性不飽和化合物は、硬化性向上の観点から、酸素原子を有する化合物であることが好ましく、1分子中に含まれる炭素原子数に対する酸素原子数の比率が0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。比率の上限値は特に限定されないが、例えば、0.5である。1分子中に含まれる炭素原子数に対する酸素原子数の比率が0.2以上である化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレートが挙げられる。
【0096】
また、重合性化合物は、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品であってもよい。
【0097】
重合性化合物の分子量は、硬化性の観点から、100~1000が好ましく、100~800がより好ましく、150~700以下がさらに好ましい。
【0098】
本開示に係るインクは、重合性化合物として、多官能重合性化合物を含むことが好ましく、単官能重合性化合物及び多官能重合性化合物を含むことがより好ましい。インクに多官能重合性化合物を含有させることにより、硬化性に優れる画像を記録することができる。また、インクに多官能重合性化合物を含有させることにより、画像記録物から未反応の重合性化合物が外部へ転着する現象(いわゆるマイグレーション)を抑制することができる。特に、基材における安全性が厳格に要求される食品包装分野及び化粧品包装分野において、包装材料へ適用可能であるという点で優れる。
【0099】
インクに含まれる重合性化合物に占める多官能重合性化合物の割合は、硬化性の観点から、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。また、インクに含まれる重合性化合物に占める多官能重合性化合物の割合の上限値は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0100】
重合性化合物の含有量は、硬化性の観点から、インクの全質量に対して60質量%~95質量%であることが好ましく、70質量%~95質量%であることがより好ましく、75質量%~95質量%であることがさらに好ましい。
【0101】
本開示では、重合性化合物のうち少なくとも1種は、溶解度パラメータ(以下、「SP値」ともいう)が18MPa1/2以上の重合性化合物であることが好ましく、SP値が18MPa1/2以上の重合性化合物の含有量は、インクの全質量に対して10質量%~40質量%であることが好ましく、20質量%~35質量%であることがより好ましい。
【0102】
重合性化合物のうち少なくとも1種は、SP値が18MPa1/2~40MPa1/2であることが好ましく、18MPa1/2~30MPa1/2であることがより好ましい。また、SP値が18MPa1/2以上の重合性化合物の含有量は、重合性化合物の全質量に対して20質量%~40質量%であることが好ましく、30質量%~40質量%であることがより好ましい。
【0103】
SP値が18MPa1/2以上の重合性化合物は極性が高く、インク中、空気界面に存在しやすい。そのため、インク滴が基材上に着弾した後、インク滴の乾燥によって形成されるインク膜において、SP値が18MPa1/2以上の重合性化合物は、インク膜の表面に多く存在する。インク膜の表面は、酸素によって重合が阻害されやすいため、インク膜の表面に重合性化合物を多く存在させることにより、インク膜の表面における硬化性を高めることができる。これにより、インク膜の表面での剥がれを抑制することができる。
【0104】
SP値が18MPa1/2以上の重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和化合物であることがより好ましい。SP値が18MPa1/2以上の重合性化合物は、単官能重合性化合物であっても、多官能重合性化合物であってもよいが、柔軟性の観点から、単官能重合性化合物であることがより好ましい。
【0105】
本開示において、SP値は、ハンセン(Hansen)溶解度パラメータを用いるものとする。ハンセン(Hansen)溶解度パラメータは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメータを、分散項δd、極性項δp、及び水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間に表したものである。本開示では、SP値をδ[MPa1/2]で表し、下記式を用いて算出される値とする。
δ[MPa1/2]=(δd+δp+δh1/2
【0106】
なお、分散項δd、極性項δp、及び水素結合項δhは、ハンセン、及び研究後継者らにより多く求められており、Polymer Handbook (fourth edition)、VII-698~711に詳しく掲載されている。
【0107】
また、多くの溶媒及び樹脂のハンセン溶解度パラメータの値が調べられており、例えば、Wesley L. Archer著、Industrial Solvents Handbookに記載されている。
【0108】
18MPa1/2以上の重合性化合物の具体例を以下に示す。
【0109】
【化10】
【0110】
【化11】
【0111】
【化12】
【0112】
中でも、18MPa1/2以上の重合性化合物は、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシド付加モル数9)又はN-ビニルカプロラクタムであることが好ましい。
【0113】
(シナジスト)
本開示に係るインクは、カルボキシ基及びスルホ基からなる群より選択される少なくとも1種の基、並びに、芳香環及び複素芳香環からなる群より選択される少なくとも1種の環を有するシナジストを含む。
【0114】
シナジストに含まれるカルボキシ基及びスルホ基は、インク中で水素原子が解離していてもよく、塩の状態であってもよい。塩を形成するカチオンは、アンモニムイオン又はアルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオン)であることが好ましく、アルカリ金属イオンであることがより好ましい。
【0115】
シナジストに含まれる芳香環及び複素芳香環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。スクアリリウム色素とのπ-π相互作用をより高める観点から、シナジストは少なくとも1つの縮合環を有することが好ましい。
【0116】
芳香環及び複素芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インデセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセタフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、インドリジン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環、及び、フェナジン環が挙げられる。中でも、芳香環及び複素芳香環は、イソインドール環、トリアジン環又はアントラキノン環であることが好ましい。
【0117】
本開示において、シナジストとは、分子内に色素に由来する構造を有する色素誘導体を意味し、分子量が1000未満の化合物である。
【0118】
シナジストは、下記式3で表されることが好ましい。
P-[R10-X10]m ・・・(3)
【0119】
式3中、Pは芳香環及び複素芳香環からなる群より選択される少なくとも1種の環を含む基を表し、R10は2価の連結基を表し、X10はそれぞれ独立に、カルボキシ基又はスルホ基を表す。mはPに置換可能な最大の整数を表す。
芳香環及び複素芳香環からなる群より選択される少なくとも1種の環を含む基は色素残基であってもよい。
なお、色素残基とは、色素から水素原子をm個除いた基を意味する。
【0120】
〔P〕
Pとしては、例えば、ジケトピロロピロール系色素;アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素;フタロシアニン系色素;ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラトロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素;キナクリドン系色素;ジオキサジン系色素;ペリノン系色素;ペリレン系色素;チオインジゴ系色素;イソインドリン系色素;イソインドリノン系色素;キノフタロン系色素;スレン系色素及び金属錯体系色素の残基が挙げられる。
【0121】
中でも、Pは、分散性及び経時安定性を向上させる観点から、ジケトピロロピロール系色素、フタロシアニン系色素、アントラキノン系色素又はジオキサジン系色素の残基であることが好ましく、ジケトピロロピロール系色素、フタロシアニン系色素又はアントラキノン系色素であることがより好ましい。
【0122】
〔R10
10としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-C=O-、-NR30-、-CONR30-、-SONR30、-NR30CO-、-NR30SO-からなる群より選択される2価の基、これらの2種以上を組み合わせた2価の基、及び単結合が挙げられる。R30は、水素原子又はアルキル基を表す。
【0123】
中でも、R10は、単結合であることが好ましい。
【0124】
〔X10
10は、スルホ基であることが好ましい。複数のX10は同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0125】
〔m〕
mは1~10であることが好ましく、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。
【0126】
シナジストは、市販品であってもよい。市販品としては、例えば、EFKA 6745(BASF社製)、SOLSPERSE 5000S、SOLSPERSE 12000S(日本ルーブリゾール社製)、Direct 106(東京化成社製)、Tilosperse 5006、Tilosperse 5007(TIANLONG CHEMICALS社製)、BYK-SYNERGIST 2100(BYK社製)、ニューカルゲンPS-P、タケサーフA45-K(竹本油脂株式会社)、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸(東京化成社製)が挙げられる。
【0127】
インクに含まれるシナジストは1種であってもよく2種以上であってもよい。
【0128】
シナジストの含有量は、分散性及び経時安定性を向上させる観点から、インクの全質量に対して0.001質量%~0.2質量%であることが好ましく、0.005質量%~0.1質量%であることがより好ましい。
【0129】
シナジストの含有量は、分散性及び経時安定性を向上させる観点から、スクアリリウム色素の全質量に対して0.1質量%~20質量%が好ましく、0.12質量%~15質量%であることがより好ましく、0.15質量%~12質量%であることがさらに好ましい。
【0130】
(分散剤)
本開示に係るインクは、分散剤を含む。分散剤は、式1で表されるスクアリリウム色素を分散させる機能を有する。
【0131】
分散剤は、分子量1000以上のポリマーであることが好ましい。ポリマーは、ランダム共重合体及びブロック共重合体のいずれであってもよい。分散剤は、塩基性官能基又は酸性官能基を有することが好ましく、塩基性官能基を有することがより好ましい。本開示では、シナジストがカルボキシ基及びスルホ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有するため、分散剤が塩基性官能基を有すると、酸塩基相互作用によってシナジストが分散剤に吸着しやすい。分散剤同士の立体反発によって、スクアリリウム色素をインク中で安定に分散させることができる。
【0132】
塩基性官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基及びイミノ基が挙げられる。分散剤は、塩基性官能基を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0133】
分散剤は、市販品であってもよい。市販品としては、例えば、ルーブリゾール社のSOLSPERSE(登録商標)シリーズ(例:SOLSPERSE 16000、21000、32000、35000、41000、41090、43000、44000、46000、54000、71000等)、ビックケミー社のDISPERBYK(登録商標)シリーズ(例:DISPERBYK 102、110、111、118、170、190、194N、2015、2090、2096等)、エボニック社のTEGO(登録商標)Dispersシリーズ(例:TEGO Dispers 610、610S、630、651、655、750W、755W等)、楠本化成社のディスパロン(登録商標)シリーズ(例:DA-375、DA-1200等)、及び共栄化学工業社のフローレンシリーズ(例:WK-13E、G-700、G-900、GW-1500、GW-1640、WK-13E等)が挙げられる。
【0134】
分散剤の重量平均分子量は、1000~100,000であることが好ましく、20,000~100,000であることがより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値を意味する。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定は、測定装置として、HLC(登録商標)-8020GPC(東ソー社製)を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super Multipore HZ-H(4.6mmID×15cm、東ソー社製)を3本用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、測定は、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、及び測定温度を40℃とし、RI検出器を用いて行う。検量線は、東ソー社製の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」、「A-1000」、及び「n-プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
【0135】
分散剤は、インクの分散性及び経時安定性を向上させる観点から、塩基価が15mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましく、25mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。分散剤の塩基価の上限値は特に限定されないが、例えば、40mgKOH/gである。
【0136】
本開示において、塩基価は、JIS K 2501:2003によって規定された過塩素酸法によって測定される値である。なお、塩基価とは、試料1g中に含まれる全塩基性成分を中和するのに要する塩酸又は過塩素酸と当量の水酸化カリウムのミリグラム(mg)数として得られる。
【0137】
塩基価が15mgKOH/g以上である分散剤は、ポリマーであることが好ましく、主鎖がポリエチレンイミンであるポリマーがより好ましい。
【0138】
分散剤の含有量は、インクの分散性及び経時安定性を向上させる観点から、インクの全質量に対して0.7質量%~5質量%であることが好ましく、0.8質量%~4質量%であることがより好ましい。
【0139】
式1で表されるスクアリリウム色素の含有量に対する分散剤の含有量の比率は、質量基準で0.1~20であることが好ましく、0.2~5であることがより好ましく、0.5~5であることがさらに好ましい。
【0140】
(重合開始剤)
本開示に係るインクは、重合開始剤を含むことが好ましい。インクに含まれる重合開始剤は1種であってもよく2種以上であってもよい。本開示に係るインクが、重合性化合物としてラジカル重合性化合物を含む場合に、重合開始剤はラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0141】
ラジカル重合開始剤としては、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
【0142】
中でも、重合開始剤は、アシルホスフィン化合物及びチオ化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、アシルホスフィンオキシド化合物及びチオキサントン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、アシルホスフィンオキシド化合物及びチオキサントン化合物の併用であることがさらに好ましい。
【0143】
アシルホスフィンオキシド化合物としては、モノアシルホスフィンオキシド化合物及びビスアシルホスフィンオキシド化合物が挙げられ、ビスアシルホスフィンオキシド化合物が好ましい。
【0144】
モノアシルホスフィンオキシド化合物としては、例えば、イソブチリルジフェニルホスフィンオキシド、2-エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキシド、o-トルイルジフェニルホスフィンオキシド、p-t-ブチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、3-ピリジルカルボニルジフェニルホスフィンオキシド、アクリロイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ピバロイルフェニルホスフィン酸ビニルエステル、アジポイルビスジフェニルホスフィンオキシド、ピバロイルジフェニルホスフィンオキシド、p-トルイルジフェニルホスフィンオキシド、4-(t-ブチル)ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、テレフタロイルビスジフェニルホスフィンオキシド、2-メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、バーサトイルジフェニルホスフィンオキシド、2-メチル-2-エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキシド、1-メチル-シクロヘキサノイルジフェニルホスフィンオキシド、ピバロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル及びピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステルが挙げられる。
【0145】
ビスアシルホスフィンオキシド化合物としては、例えば、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-2-ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-クロロフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,4-ジメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)デシルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-オクチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロ-3,4,5-トリメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロ-3,4,5-トリメトキシベンゾイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2-メチル-1-ナフトイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2-メチル-1-ナフトイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2-メチル-1-ナフトイル)-2-ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2-メチル-1-ナフトイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2-メチル-1-ナフトイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2-メトキシ-1-ナフトイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2-クロロ-1-ナフトイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド及びビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドが挙げられる。
【0146】
中でも、アシルホスフィンオキシド化合物は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(製品名「Omnirad 819」、IGM Resins B.V.社製)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(製品名「Omnirad TPO H」、IGM Resins B.V.社製)又は(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキシド(製品名「Omnirad TPO-L」、IGM Resins B.V.社製)が好ましい。
【0147】
チオキサントン化合物としては、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-ドデシルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-メトキシカルボニルチオキサントン、2-エトキシカルボニルチオキサントン、3-(2-メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4-ブトキシカルボニルチオキサントン、3-ブトキシカルボニル-7-メチルチオキサントン、1-シアノ-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-エトキシチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-アミノチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-フェニルスルフリルチオキサントン、3,4-ジ[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-(1-メチル-1-モルホリノエチル)チオキサントン、2-メチル-6-ジメトキシメチルチオキサントン、2-メチル-6-(1,1-ジメトキシベンジル)チオキサントン、2-モルホリノメチルチオキサントン、2-メチル-6-モルホリノメチルチオキサントン、n-アリルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、n-オクチルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、N-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)チオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、1-フェノキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メトキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メチルチオキサントン、チオキサントン-2-ポリエチレングリコールエステル、及び2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリドが挙げられる。
【0148】
チオキサントン化合物は、市販品であってもよい。市販品としては、Lambson社製のSPEEDCUREシリーズ(例:SPEEDCURE 7010、SPEEDCURE CPTX、SPEEDCURE ITX等)が挙げられる。
【0149】
重合開始剤の含有量は、インクの分散性及び経時安定性を向上させる観点から、インクの全質量に対して10質量%以上であることが好ましい。重合開始剤の含有量の上限値は特に限定されないが、例えば、30質量%である。
【0150】
(重合禁止剤)
本開示に係るインクは、重合禁止剤を含むことが好ましい。インクに含まれる重合禁止剤は1種であってもよく2種以上であってもよい。
【0151】
重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン化合物、フェノチアジン、カテコール類、アルキルフェノール類、アルキルビスフェノール類、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、サリチル酸銅、チオジプロピオン酸エステル、メルカプトベンズイミダゾール、ホスファイト類、ニトロソアミン化合物、ヒンダードアミン化合物、及びニトロキシルラジカルが挙げられる。
【0152】
中でも、重合禁止剤は、ニトロソアミン化合物、ヒンダードアミン化合物、ヒドロキノン化合物及びニトロキシルラジカルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ニトロソアミン化合物、ヒドロキノン化合物及びニトロキシルラジカルからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ニトロソアミン化合物、ヒドロキノン化合物及びニトロキシルラジカルを含むことがさらに好ましい。
【0153】
ニトロソアミン化合物としては、例えば、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩及びN-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンが挙げられる。中でも、ニトロソアミン化合物は、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩であることが好ましい。
【0154】
ヒンダードアミン化合物は、分子内にヒンダードアミン構造を有する化合物である。ヒンダードアミン化合物としては、特開昭61-91257号公報に記載されている化合物が挙げられる。中でも、ヒンダードアミン化合物は、ピペリジンの2位及び6位の炭素上の全ての水素がメチル基で置換された構造を有する2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの誘導体であることが好ましい。ヒンダードアミン化合物としては、例えば、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン及び1-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシエチル)-4-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンが挙げられる。
【0155】
ヒドロキノン化合物としては、例えば、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、及び、p-メトキシフェノールが挙げられる。中でも、ヒドロキノン化合物は、p-メトキシフェノールであることが好ましい。
【0156】
ニトロキシルラジカルとしては、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)及び2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル(TEMPOL)が挙げられる。中でも、ニトロキシルラジカルは、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル(TEMPOL)であることが好ましい。
【0157】
重合禁止剤の含有量は、インクの経時安定性を向上させる観点から、インクの全質量に対して1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい。重合禁止剤の含有量の上限値は特に限定されないが、重合性の観点から、5質量%であることが好ましい。
【0158】
重合禁止剤がニトロソアミン化合物を含む場合、ニトロソアミン化合物の含有量は、インクの経時安定性を向上させる観点から、インクの全質量に対して0.5質量%~5質量%であることが好ましく、0.5質量%~2質量%であることがより好ましい。
【0159】
重合禁止剤がヒドロキノン化合物を含む場合、ヒドロキノン化合物の含有量は、インクの経時安定性を向上させる観点から、インクの全質量に対して0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.3質量%~1質量%であることがより好ましい。
【0160】
重合禁止剤がニトロキシルラジカルを含む場合、ニトロキシルラジカルの含有量は、インクの経時安定性を向上させる観点から、インクの全質量に対して0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.2質量%~0.8質量%であることがより好ましい。
【0161】
(増感剤)
本開示に係るインクが光重合開始剤を含む場合、光重合開始剤と共に増感剤を含有してもよい。インクが増感剤を含有すると、硬化性が向上し、特にLED光源を用いた場合の硬化性が向上する。また、増感剤は、インクの耐光性の向上にも寄与する。
【0162】
増感剤は、特定の活性エネルギー線を吸収して電子励起状態となる物質である。電子励起状態となった増感剤は、光重合開始剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱等の作用を生じる。これにより、光重合開始剤の化学変化が促進される。
【0163】
増感剤としては、例えば、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル(EDB)、アントラキノン、3-アシルクマリン誘導体、ターフェニル、スチリルケトン、3-(アロイルメチレン)チアゾリン、ショウノウキノン、エオシン、ローダミン、エリスロシン、特開2010-24276号公報に記載の一般式(i)で表される化合物、及び特開平6-107718号公報に記載の一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0164】
インクが増感剤を含有する場合、増感剤の含有量は、インクの全質量に対して、1.0質量%~15.0質量%であることが好ましく、1.5質量%~10.0質量%であることがより好ましく、2.0質量%~6.0質量%であることがさらに好ましい。
【0165】
(他の成分)
本開示に係るインクは、以下の他の成分をさらに含有してもよい。
【0166】
本開示に係るインクは、少なくとも1種の界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、アセチレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、変性ポリジメチルシロキサン(例えば、ビックケミー社製のBYK-307)等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、及びカルボベタイン、スルホベタイン等のベタイン型界面活性剤が挙げられる。また、界面活性剤は、フッ素系界面活性剤であってもよい。
【0167】
中でも、界面活性剤は、分散安定性の観点から、ノニオン性界面活性剤であることが好ましく、変性ポリジメチルシロキサンであることがより好ましい。
【0168】
本開示に係るインクが界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、インクの全質量に対して0.01質量%~5質量%が好ましく、0.05質量%~3質量%がより好ましく、0.05質量%~1.5質量%が更に好ましい。
【0169】
本開示に係るインクは、少なくとも1種の有機溶剤を含有してもよい。
【0170】
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン;メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、1-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール;クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤;ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸イソプロピル等のエステル系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;及び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート系溶剤が挙げられる。
【0171】
本開示に係るインクが有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の含有量は、インクの全質量に対して1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。本開示に係るインクは、有機溶剤を含まない組成(すなわち、有機溶剤の含有量がインクの全質量に対して0質量%)であってもよい。
【0172】
本開示に係るインクは、さらに、紫外線吸収剤、共増感剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩等の添加剤を含有してもよい。添加剤については、特開2011-225848号公報、特開2009-209352号公報等の公知文献を適宜参照することができる。
【0173】
<物性>
本開示に係るインクの粘度は、10mPa・s~50mPa・sであることが好ましく、10mPa・s~30mPa・sであることがより好ましく、10mPa・s~25mPa・sであることがさらに好ましい。粘度は、粘度計を用い、25℃で測定される値である。粘度は、例えば、VISCOMETER TV-22型粘度計(東機産業社製)を用いて測定される。
【0174】
本開示に係るインクの表面張力は、20mN/m~45mN/mであることが好ましく、23mN/m~30mN/mであることがより好ましい。表面張力は、表面張力計を用い、25℃で測定される値である。表面張力は、例えば、DY-700(共和界面科学社製)を用いて測定される。
【0175】
[画像記録方法]
本開示に係る画像記録方法は、本開示に係るインクを、インクジェット記録方式で基材上に付与してインク画像を記録する工程(以下、「インク付与工程」ともいう)と、インク画像に活性エネルギー線を照射する工程(以下、「活性エネルギー線照射工程」ともいう)と、を含む。
【0176】
(インク付与工程)
本開示の画像記録方法では、まず、本開示に係るインクを、インクジェット記録方式で基材上に付与してインク画像を記録する。
【0177】
〔基材〕
【0178】
基材は、インク画像を形成し得るものであれば特に限定されず、例えば、紙、布、木材、金属及びプラスチックが挙げられる。
【0179】
紙としては、上質紙、コート紙、アート紙等のセルロースを主体とする一般印刷用紙、及びインクジェット記録用紙が挙げられる。また、紙は、油性ニス又は水性ニスが付与されたものであってもよい。
【0180】
基材は、浸透性基材であってもよく非浸透性基材であってもよい。「非浸透性」とは、インクに含まれる水の吸収が少ない又は吸収しないことをいい、具体的には、水の吸収量が10.0g/m以下である性質をいう。
【0181】
本開示に係る画像記録方法では、特に、基材として非浸透性基材を用いた場合に、硬化性に優れた画像を得ることができる。
【0182】
非浸透性基材の形状は特に限定されず、ボトル等の立体形状、シート状及びフィルム状のいずれであってもよい。
【0183】
非浸透性基材としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム)、プラスチック(例えば、ポリ塩化ビニル、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリビニルアセタール)及びガラスが挙げられる。
【0184】
中でも、非浸透性基材は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0185】
非浸透性基材は、表面処理がなされていてもよい。
【0186】
表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、熱処理、摩耗処理、光照射処理(例えば、紫外線照射処理)及び火炎処理が挙げられる。
【0187】
コロナ処理は、例えば、コロナマスター(信光電気計社製、PS-10S)を用いて行うことができる。コロナ処理の条件は、非浸透性基材の種類、インクの組成等に応じて適宜選択すればよい。コロナ処理は、例えば、下記の条件で行うことができる。
・処理電圧:10~15.6kV
・処理速度:30~100mm/s
【0188】
また、基材は、透明な基材、ポリエチレン又はポリプロピレンによってラミネート加工された基材であってもよい。
【0189】
透明な基材としては、ガラス、石英、及びプラスチック(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、アクリル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール等)が挙げられる。透明な基材は、1層であってもよく2層以上であってもよい。
【0190】
〔インクジェット記録方式〕
インクジェット記録方式は、画像を記録し得る方式であれば特に限定されず、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式のいずれであってもよい。
【0191】
インクジェット記録方式としては、特に、特開昭54-59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット記録方式を有効に利用することができる。
【0192】
また、インクジェット記録方式については、特開2003-306623号公報の段落0093~0105に記載の方法も参照できる。
【0193】
インクジェット記録方式に用いるインクジェットヘッドとしては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを基材の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、基材の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とが挙げられる。
【0194】
ライン方式では、記録素子の配列方向と交差する方向に基材を走査させることで基材の全面にパターン形成を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。
【0195】
また、キャリッジの移動と基材との複雑な走査制御が不要になり、基材だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
【0196】
インクジェットヘッドから吐出されるインクの打滴量は、1pL(ピコリットル)~100pLであることが好ましく、3pL~80pLであることがより好ましく、3pL~20pLであることがさらに好ましい。
【0197】
インク付与工程では、インクを1種のみ付与してもよく、2種以上を付与してもよい。例えば、カラー画像を記録する場合には、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各色インクを少なくとも付与することが好ましく、ホワイト、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各色インクを付与することがより好ましい。また、上記各色インクと、ライトマゼンタ、ライトシアン等の淡色インク、オレンジ、グリーン及びバイオレット等の特色インク、クリアインク又はメタリックインクとを組み合わせて付与してもよい。
【0198】
(活性エネルギー線照射工程)
本開示の画像記録方法では、インク画像に活性エネルギー線を照射することが好ましい。インク画像中、重合性化合物は、活性エネルギー線の照射によって重合し、硬化する。活性エネルギー線としては、例えば、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線及び電子線が挙げられる。中でも、安全性及びコストの観点から、活性エネルギー線は、紫外線(以下、「UV」ともいう)又は可視光線であることが好ましく、紫外線であることがより好ましい。
【0199】
紫外線の露光量は、20mJ/cm~5J/cmであることが好ましく、100mJ/cm~1,500mJ/cmであることがより好ましい。照射時間は、好ましくは0.01秒間~120秒間、より好ましくは0.1秒間~90秒間である。照射条件及び基本的な照射方法は、特開昭60-132767号公報に開示されている照射条件及び照射方法を適用することができる。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査する方式、又は、駆動を伴わない別光源によって行われる方式が好ましい。
【0200】
紫外線照射用の光源としては、水銀ランプ、ガスレーザー及び固体レーザーが主に利用されており、水銀ランプ、メタルハライドランプ及び紫外線蛍光灯が広く知られている。また、GaN(窒化ガリウム)系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用であり、UV-LED(発光ダイオード)及びUV-LD(レーザダイオード)は小型、高寿命、高効率、かつ、低コストであり、紫外線照射用の光源として期待されている。中でも、紫外線照射用の光源は、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ又はUV-LEDであることが好ましい。
【0201】
UV-LEDとして、例えば、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LED(日亜化学社製)が挙げられる。さらに短い波長を有するLEDとして、米国特許第6,084,250号明細書には、300nmと370nmとの間の波長の紫外線を放出し得るLEDが開示されている。また、いくつかのUV-LEDを組み合わせることにより、異なる波長域の紫外線を照射することができる。紫外線のピーク波長は、例えば、200nm~405nmであることが好ましく、220nm~400nmであることがより好ましく、340nm~400nmであることがさらに好ましい。
【0202】
インク付与工程の後、酸素濃度1体積%以下の雰囲気下で活性エネルギー線を照射することにより、酸素によって重合が阻害されるのを抑制し、硬化性を向上させることができる。酸素濃度の下限値は特に限定されない。真空下にするか、又は、空気以外の気体(例えば、窒素)で照射雰囲気を置換することにより酸素濃度を事実上0にすることができる。活性エネルギー線照射工程における酸素濃度は、0.01体積%~1体積%であることが好ましく、0.1体積%~1体積%であることがより好ましい。
【0203】
照射雰囲気の酸素濃度を制御する手段としては、例えば、インクジェット記録装置を閉じた系にして、窒素雰囲気又は二酸化炭素雰囲気にする方法、及び、窒素等の不活性ガスをフローさせる方法が挙げられる。窒素の供給方法としては、例えば、窒素ボンベを用いる方法、及び、酸素と窒素の中空糸膜に対する透過性の違いを利用して空気中から窒素ガスのみを分離する装置を用いる方法がある。二酸化炭素の供給方法としては、例えば、二酸化炭素ボンベを用いる方法が挙げられる。不活性ガスとは、N、H、CO等の一般的な気体、及び、He、Ne、Ar等の希ガスをいう。中でも、安全性、入手しやすさ、及びコストの観点から、不活性ガスはNであることが好ましい。
【0204】
(その他の工程)
本開示に係る画像記録方法は、インク付与工程及び活性エネルギー線照射工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、インク付与工程の後における、インク画像を乾燥させる乾燥工程が挙げられる。乾燥工程における乾燥手段及び乾燥温度は、適宜調整できる。
【実施例
【0205】
以下、本開示の実施例を表すが、本開示は以下の実施例には限定されない。
【0206】
実施例及び比較例のインクに含まれる各成分の詳細は、以下のとおりである。
【0207】
<顔料>
・化合物B-1:スクアリリウム色素
・化合物B-3:スクアリリウム色素
・化合物B-39:スクアリリウム色素
・化合物B-27:スクアリリウム色素
・化合物P-1:ピロロピロールホウ素色素
各顔料の構造式は、以下のとおりである。式中、「Ph」はフェニル基を表す。
【0208】
【化13】
【0209】
<シナジスト>
・EFKA 6745(BASF社製):スルホ基を有するフタロシアニン銅
・SOLSPERSE 5000S(日本ルーブリゾール社製):スルホ基を有するフタロシアニン銅
・2,6-ナフタレンジカルボン酸(東京化成社製)
・ニューカルゲンPS-P(竹本油脂株式会社製):ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩
・Direct 106(東京化成社製):スルホ基を有するジオキサジン系色素誘導体
・化合物S-1:スルホ基を有するアントラキノン系色素誘導体
・化合物S-2:スルホ基を有するジケトピロロピロール系色素誘導体
・化合物S-3:スルホ基を有しないアゾ系色素誘導体
各シナジストの構造式は、以下のとおりである。
【0210】
【化14】
【0211】
<重合性化合物>
・SR341(Sartomer社製):3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート)、SP値17.6MPa1/2
・CTFA:環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、SP値18.9MPa1/2
・NVC:N-ビニルカプロラクタム、SP値20.0MPa1/2
・SR344(Sartomer社製):ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、SP値18.6MPa1/2
【0212】
<分散剤>
・EFKA PX 4701(BASF社製):ブロックコポリマー、塩基価40mgKOH/g
・SOLSPERSE 71000(日本ルーブリゾール社製):主鎖がポリエチレンイミンのグラフトポリマー、塩基価77mgKOH/g
・SOLSPERSE 35000(日本ルーブリゾール社製):主鎖がポリエチレンイミンのグラフトポリマー、塩基価15mgKOH/g
・DISPER BYK 167(BYK社製):トルエンジイソシアネート、バレロラクトン及びデカノールに由来する構造を有するポリマー、塩基価13mgKOH/g
【0213】
<重合開始剤>
・Omnirad 819(IGM Resins B.V.社製):ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド
・Omnirad TPO H(IGM Resins B.V.社製):2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド
・Omnirad TPO-L(IGM Resins B.V.社製):(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキシド
・Speedcure7010L:1,3-ジ({α-[1-クロロ-9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イル)オキシ]アセチルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]}オキシ)-2,2-ビス({α- [1-メチルエチレン)]}オキシメチル)プロパンとトリメチロールプロパンEO付加トリアクリレートとの混合物(混合比(質量基準)1:1)
【0214】
<界面活性剤>
・BYK-307(ビックケミー社製):変性ポリジメチルシロキサン
【0215】
<重合禁止剤>
・FLORSTAB UV12(Kromachem社製):N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩
・TEMPOL:2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル
・MEHQ:p-メトキシフェノール
なお、表中、FLORSTAB UV12を「UV12」と記す。
[実施例10]
下記組成となるように各成分を混合し、スターラーを用いて30分間予備分散を行った。その後、バッチ式ビーズミル(製品名「イージーナノRMB」、AIMEX社製)を用いて、直径0.5mmφのジルコニアビーズを用いて、1000rpm(回転数/分)で目標粒子径となるまで分散処理を行った。67μmのろ布及び5μmのフィルターを用いてろ過を行い、分散液A1を得た。
<組成>
・化合物B-1 ・・・2質量%
・EFKA 6745・・・0.01質量%
・SR341 ・・・95.99質量%
・EFKA PX 4701・・・2質量%
【0216】
次に、下記組成となるように各成分を混合し、インクを調製した。
<組成>
・上記の分散液A1 ・・・50質量%
・SR341 ・・・6.1質量%
・NVC ・・・30質量%
・Omnirad 819 ・・・4質量%
・Omnirad TPO H ・・・4質量%
・Speedcure 7010L ・・・4質量%
・FLORSTAB UV12 ・・・1質量%
・TEMPOL ・・・0.3質量%
・MEHQ ・・・0.5質量%
・BYK-307 ・・・0.1質量%
【0217】
[実施例1~9、実施例11~実施例63、比較例1~3]
実施例10において、インクに含まれる各成分の含有量が表1~表8に記載の含有量(質量%)となるように変更したこと以外は、実施例10と同様の方法で、分散液を調製し、さらにインクを調製した。
【0218】
<画像記録>
実施例及び比較例で調製した各インクをそれぞれ、インクジェット記録装置(製品名「DMP-2850」、富士フイルム社製)に付属のインクカートリッジに充填し、600dpi(dots per inch)及び打滴量10pLの条件で、基材上に100%網点画像を記録した。基材として、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム及びコート紙(OKトップコート、王子製紙社製)を用いた。その後、紫外線を照射し、画像記録物を得た。
【0219】
実施例及び比較例で調製した各インクを用いて、分散性、経時安定性、硬化性及び耐光性の評価を行った。評価結果を表1~表8に示す。
【0220】
[分散性]
インクを調製した直後に、インクに含まれる顔料の粒子径を、粒子径測定装置(製品名「ゼータサイザーナノZS」、Malvern Panalytical社製)を用いて測定した。粒子径が小さいほど分散性に優れるといえる。評価基準は以下のとおりである。
A:粒子径が300nm未満である。
B:粒子径が300nm以上450nm未満である。
C:粒子径が450nm以上である。
【0221】
[経時安定性]
インクを調製した後、インクを入れた密閉容器を40℃で1週間静置させた。1週間後、インクに含まれる顔料の粒子径を、粒子径測定装置製品名「ゼータサイザーナノZS」、Malvern Panalytical社製)を用いて測定した。粒子径が小さいほど経時安定性に優れるといえる。評価基準は以下のとおりである。
A:粒子径が300nm未満である。
B:粒子径が300nm以上450nm未満である。
C:粒子径が450nm以上である。
【0222】
[硬化性]
インクジェット記録装置(製品名「DMP-2850」、富士フイルム社製)に付属のインクカートリッジにインクを充填し、600dpi及び打滴量10pLの条件で、PETフィルム上に100%網点画像を記録した。
露光条件1として、画像記録中に、395nmLEDランプ(製品名「PEL UV CURE UNIT」、PRINTED ELECTRONICS社製)を用いて約250mW/cmで露光した。
露光条件2として、画像記録中には露光せず、画像記録後にメタルハライドランプ(製品名「CSOT-40」、GSユアサ社製)を用いて、出力100W、10m/分の速度で露光した。
露光条件3として、画像記録中には露光せず、画像記録後に波長385nmのLED光源を用いて窒素雰囲気下(酸素濃度1%以下)、4000mW/cmで露光した。
露光条件1で露光した後の画像記録物、露光条件2で露光した後の画像記録物、及び、露光条件3で露光した後の画像記録物をそれぞれ綿棒で擦り、インクが綿棒に付着しているか否かを目視で観察した。インクが綿棒に付着しなかった場合には、インクが硬化していると判定し、インクが綿棒に付着した場合には、インクが硬化していないと判定した。評価基準は以下のとおりである。
A:露光条件1、露光条件2及び露光条件3の全てで、インクが硬化していた。
B:露光条件2及び露光条件3のみで、インクが硬化していた。
C:露光条件3のみで、インクが硬化していた。
D:いずれの露光条件でも、インクが硬化しなかった。
【0223】
[耐光性]
インクジェット記録装置(製品名「DMP-2850」、富士フイルム社製)に付属のインクカートリッジにインクを充填し、600dpi及び打滴量10pLの条件で、コート紙(OKトップコート、王子製紙社製)上に100%網点画像を記録した。画像記録後にメタルハライドランプ(製品名「CSOT-40」、GSユアサ社製)を用いて、出力100W、10m/分の速度で露光した。得られた画像記録物を用いて、耐光性試験を行った。耐光性は、反射率変化量に基づいて評価した。反射率変化量は、以下の式に基づいて算出した。
反射率変化量=(1回露光した後の画像記録物の850nmにおける反射率)-(4回露光した後の画像記録物の850nmにおける反射率)
反射率は、紫外可視近赤外分光光度計装置(製品名「V-570」、日本分光社製)を用いて測定した。
反射率変化量が小さいほど耐光性に優れるといえる。評価基準は以下のとおりである。
A:反射率変化量が10%未満である。
B:反射率変化量が10%以上25%未満である。
C:反射率変化量が25%以上である。
【0224】
表1~表8中、「分散剤/顔料」は、顔料の含有量に対する分散剤の含有量の比率(質量比)を意味する。また、「シナジスト/顔料×100」は、顔料の全質量に対するシナジストの含有量(質量%)を意味する。
【0225】
【表1】
【0226】
【表2】
【0227】
【表3】
【0228】
【表4】
【0229】
【表5】
【0230】
【表6】
【0231】
【表7】
【0232】
【表8】
【0233】
表1~表7に示すように、実施例1~実施例63では、インクが、式1で表されるスクアリリウム色素と、重合性化合物と、分散剤と、カルボキシ基及びスルホ基からなる群より選択される少なくとも1種の基、並びに、芳香環及び複素芳香環からなる群より選択される少なくとも1種の環を有するシナジストと、を含むため、分散性及び経時安定性に優れることが分かった。
【0234】
一方、表8に示すように、比較例1では、インクがシナジストを含まないため、分散性及び経時安定性に劣ることが分かった。
【0235】
比較例2では、インクがシナジストを含むが、シナジストがカルボキシ基及びスルホ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有するシナジストではないため、分散性及び経時安定性に劣ることが分かった。
【0236】
比較例3では、インクがスクアリリウム色素ではなく、ピロロピロールホウ素色素を含むため、分散性及び経時安定性に劣ることが分かった。
【0237】
また、実施例4及び実施例33では、塩基価が15mgKOH/g以上の分散剤を含むため、実施例1と比較すると、分散性に優れることが分かった。同様に、実施例40では、塩基価が15mgKOH/g以上の分散剤を含むため、実施例39と比較すると、分散性に優れることが分かった。
【0238】
実施例13では、分散剤の含有量がインクの全質量に対して0.7質量%~5質量%であるため、実施例20及び実施例23と比較して、分散性及び経時安定性に優れることが分かった。同様に、実施例46では、分散剤の含有量がインクの全質量に対して0.7質量%~5質量%であるため、実施例54及び実施例57と比較して、分散性及び経時安定性に優れることが分かった。
【0239】
実施例7では、SP値が18MPa1/2以上の重合性化合物の含有量が、インクの全質量に対して10質量%~40質量%であるため、実施例4及び実施例5と比較して硬化性に優れ、実施例6と比較して経時安定性に優れることが分かった。
【0240】
実施例10では、重合禁止剤の含有量が、インクの全質量に対して1質量%以上であるため、実施例7~実施例9と比較して経時安定性に優れることが分かった。同様に、実施例45では、重合禁止剤の含有量が、インクの全質量に対して1質量%以上であるため、実施例44と比較して経時安定性に優れることが分かった。
【0241】
実施例13では、重合開始剤の含有量がインクの全質量に対して10質量%以上であるため、実施例10~実施例12と比較して硬化性に優れることが分かった。同様に、実施例43では、重合開始剤の含有量がインクの全質量に対して10質量%以上であるため、実施例40~実施例42と比較して硬化性に優れることが分かった。
【0242】
実施例13、実施例15及び実施例16では、シナジストの含有量がインクの全質量に対して0.005質量%~0.1質量%であるため、実施例14と比較して経時安定性に優れ、実施例17と比較して分散性に優れることが分かった。同様に、実施例46、実施例48及び実施例49では、シナジストの含有量がインクの全質量に対して0.005質量%~0.1質量%であるため、実施例47と比較して経時安定性に優れ、実施例50と比較して分散性に優れることが分かった。
【0243】
実施例13、実施例15及び実施例16では、シナジストの含有量がスクアリリウム色素の全質量に対して0.12質量%~15質量%であるため、実施例14と比較して経時安定性に優れ、実施例17と比較して分散性に優れることが分かった。同様に、実施例46、実施例48及び実施例49では、シナジストの含有量がスクアリリウム色素の全質量に対して0.12質量%~15質量%であるため、実施例47と比較して経時安定性に優れ、実施例50と比較して分散性に優れることが分かった。
【0244】
また、実施例35及び実施例37では、シナジストの含有量がスクアリリウム色素の全質量に対して0.12質量%~15質量%であるため、実施例34及び実施例36と比較して、分散性に優れることが分かった。
【0245】
なお、2020年3月30日に出願された日本国特許出願2020-061102号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。