(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】マイクロミラーデバイス及び光走査装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20231201BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/10 C
B81B3/00
(21)【出願番号】P 2022541159
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2021024536
(87)【国際公開番号】W WO2022030146
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2020132638
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青島 圭佑
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/168385(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0180873(US,A1)
【文献】国際公開第2011/161943(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08 - 26/10
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載のマイクロミラーデバイスと、
前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータを駆動するプロセッサと、
を備える光走査装置であって、
前記プロセッサは、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータに駆動信号を与えることにより、前記ミラー部を、前記第1軸及び前記第2軸の周りにそれぞれ共振させる、
光走査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、マイクロミラーデバイス及び光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Si)の微細加工技術を用いて作製される微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)デバイスの1つとしてマイクロミラーデバイス(マイクロスキャナともいう。)が知られている。このマイクロミラーデバイスは小型かつ低消費電力であることから、レーザーディスプレイ、レーザープロジェクタ、光干渉断層計などへの幅広い応用が期待されている。
【0003】
マイクロミラーデバイスの駆動方式は様々であるが、圧電体の変形を利用した圧電駆動方式は、他の方式に比べて発生するトルクが高く、高スキャン角が得られるとして有望視されている。特に、レーザーディスプレイのように高いスキャン角が必要な場合には、圧電駆動方式のマイクロミラーデバイスを共振駆動で駆動することにより、より高いスキャン角が得られる。
【0004】
レーザーディスプレイに用いられる一般的なマイクロミラーデバイスは、ミラー部と、圧電方式のアクチュエータとを備える(例えば、特開2017-132281号公報参照)。ミラー部は、互いに直交する第1軸及び第2軸の周りに揺動自在である。アクチュエータは、外部から供給される駆動電圧に応じて、ミラー部を、第1軸及び第2軸の周りに揺動させる。上述のスキャン角は、ミラー部の振れ角の最大値(以下、最大振れ角という。)に対応する。
【0005】
レーザーディスプレイの性能指標として解像度と視野角とが挙げられる。解像度と視野角には、マイクロミラーデバイスのミラー部の揺動周波数と最大振れ角とが関連する。例えば、リサージュスキャン型レーザーディスプレイでは、ミラー部を、第1軸及び第2軸の周りに、異なる二種類の周波数で同時に揺動させることにより二次元光走査を行う。
【0006】
上記のような2軸駆動型のマイクロミラーデバイスでは、ジンバル構造が採用されることが多い。ジンバル構造のマイクロミラーデバイスは、例えば、ミラー部と、第1支持部と、可動枠と、第2支持部とを有する。第1支持部は、ミラー部を第1軸周りに揺動可能に支持する。可動枠は、第1支持部に接続されている。第2支持部は、可動枠に接続され、ミラー部及び可動枠を第2軸の周りに揺動可能に支持する。
【0007】
ここで、ミラー部の第1軸周りの最大振れ角を向上させるには、揺動時に第1支持部にかかる内部応力を緩和させ、内部応力がSiの限界応力に達しないようにする必要がある。第1支持部にかかる内部応力を緩和するために、可動枠に折り返し構造を設けることが知られている。
【0008】
例えば、特開2016-206235号公報には、第1支持部に対応する捩り梁のミラー部とは反対側の端部に、折り返し構造を有する連結部を接続することが示されている(特開2017-132281号公報の
図3参照)。折り返し構造は、連結部に第1スリット及び第2スリットを形成ことにより構成されている。第1スリット及び第2スリットは、ミラー平面に平行で、かつ捩り梁に直交する方向に沿って直線状に延在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開2016-206235号公報に記載のマイクロミラーデバイスでは、捩り梁にかかる応力を緩和させるためには、第1スリット及び第2スリットの長さを長くする必要がある。特開2016-206235号公報に記載のマイクロミラーデバイスは、1軸駆動型であるので、第1スリット及び第2スリットの長さは、ミラー部の揺動に影響を与えない。
【0010】
しかしながら、特開2016-206235号公報に記載のマイクロミラーデバイスを2軸駆動型に適用した場合には、第1スリット及び第2スリットの長さを長くすると、連結部の外側に設けられる第2軸周りの慣性モーメントが増加する。第2軸周りの慣性モーメントが増加すると、第2軸周りの共振周波数が低下する。この結果、光走査による解像度の低下を招いてしまう。
【0011】
また、第1支持部にかかる内部応力を緩和するための簡単な方法として、第1支持部を延伸させることが考えられる。しかしながら、この場合にも第1支持部の長さが長くなることにより第2軸周りの慣性モーメントが増加し、第2軸周りの共振周波数が低下してしまう。
【0012】
このように、2軸駆動型のマイクロミラーデバイスにおいて、第2軸周りの共振周波数を低下させることなく、第1支持部にかかる内部応力を緩和することにより、第1軸周りの最大振れ角を大きくすることが望まれている。
【0013】
本開示の技術は、第2軸周りの共振周波数を低下させることなく、第1軸周りの最大振れ角を大きくすることを可能とするマイクロミラーデバイス及び光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本開示のマイクロミラーデバイスは、入射光を反射する反射面を有するミラー部と、ミラー部の静止時の反射面を含む平面内にある第1軸上でミラー部と接続され、かつミラー部を第1軸周りで揺動可能に支持する第1支持部と、第1支持部に接続され、第1軸を挟んで対向した一対の可動枠と、ミラー部の静止時の反射面を含む平面内であって第1軸に直交する第2軸上で可動枠に接続され、かつミラー部と第1支持部と可動枠とを第2軸周りで揺動可能に支持する第2支持部と、第2支持部に接続され、第2軸を挟んで対向した一対の第1アクチュエータであって、圧電素子を有する第1アクチュエータと、を備えたマイクロミラーデバイスであって、
第1支持部は、第1軸に沿って延伸した主軸と、第1軸を挟んで主軸の両側に対称に配置され、第1軸に沿って延伸した複数の副軸とで構成され、第1支持部は、複数の副軸が接続されることにより形成された3個以上の折り返し部を有する折り返し構造を備え、折り返し部の内側の曲率半径を、第1軸に近い方から順にR1,R2,R3・・・とした場合に、
0.73≦Rk+1/Rk≦0.9 (k=1,2,・・・)
の関係を満たす。
【0015】
主軸、及び複数の副軸は、それぞれ厚みが均一であることが好ましい。
【0016】
第1アクチュエータは、延伸方向に直交する方向への幅の少なくとも一部が、主軸の第2軸に沿った方向への幅よりも大きいことが好ましい。
【0017】
可動枠及び第1アクチュエータは、それぞれU字形状であることが好ましい。
【0018】
第1アクチュエータは、ミラー部及び可動枠に第2軸周りの回転トルクを作用させることにより、ミラー部を第2軸周りに揺動させることが好ましい。
【0019】
第1アクチュエータを囲んで配置された固定枠と、第1アクチュエータと固定枠とを接続する接続部と、接続部に接続され、固定枠の内側に配置された第2アクチュエータであって、圧電素子を有する第2アクチュエータと、を備え、第2アクチュエータは、ミラー部、可動枠、及び第1アクチュエータに第1軸周りの回転トルクを作用させることにより、ミラー部を第1軸周りに揺動させることが好ましい。
【0020】
接続部は、第1軸に沿って配置されていることが好ましい。
【0021】
上記マイクロミラーデバイスと、第1アクチュエータ及び第2アクチュエータを駆動するプロセッサと、を備える光走査装置であって、プロセッサは、第1アクチュエータ及び第2アクチュエータに駆動信号を与えることにより、ミラー部を、第1軸及び第2軸の周りにそれぞれ共振させる光走査装置。
【発明の効果】
【0022】
本開示の技術によれば、第2軸周りの共振周波数を低下させることなく、第1軸周りの最大振れ角を大きくすることを可能とするマイクロミラーデバイス及び光走査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】駆動制御部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】マイクロミラーデバイスの外観斜視図である。
【
図4】マイクロミラーデバイスを光入射側から見た平面図である。
【
図7】第2アクチュエータの駆動例を示す図である。
【
図8】第1アクチュエータの駆動例を示す図である。
【
図9】第1駆動信号及び第2駆動信号の一例を示す図である。
【
図10】第1支持部21及び第2支持部23の構成を示す図である。
【
図11】マイクロミラーデバイスの構成要素の寸法に関するパラメータを示す図である。
【
図12】マイクロミラーデバイスの構成要素の寸法に関するパラメータを示す図である。
【
図13】マイクロミラーデバイスの構成要素の寸法に関するパラメータを示す図である。
【
図14】マイクロミラーデバイスの構成要素の寸法に関するパラメータを示す図である。
【
図15】シミュレーションで用いた各種パラメータの設定値を示す図である。
【
図16】複数のモデルについてのシミュレーション結果を示す図である。
【
図17】ミーゼス応力と第1共振周波数との関係を示すグラフである。
【
図18】ミーゼス応力と第2共振周波数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面に従って本開示の技術に係る実施形態の一例について説明する。
【0025】
図1は、一実施形態に係る光走査装置10を概略的に示す。光走査装置10は、マイクロミラーデバイス(以下、MMD(Micro Mirror Device)という。)2と、光源3と、
駆動制御部4とを有する。光走査装置10は、駆動制御部4の制御に従って、光源3から照射された光ビームLをMMD2により反射することにより被走査面5を光走査する。被走査面5は、例えばスクリーンである。
【0026】
MMD2は、第1軸a
1と、第1軸a
1に直交する第2軸a
2との周りに、ミラー部20(
図3参照)を揺動させることを可能とする圧電型2軸駆動方式のマイクロミラーデバイスである。以下、第1軸a
1と平行な方向をX方向、第2軸a
2と平行な方向をY方向、第1軸a
1及び第2軸a
2に直交する方向をZ方向という。
【0027】
光源3は、光ビームLとして、例えばレーザ光を発するレーザ装置である。光源3は、MMD2のミラー部20が静止した状態において、ミラー部20が備える反射面20A(
図3参照)に垂直に光ビームLを照射することが好ましい。
【0028】
駆動制御部4は、光走査情報に基づいて光源3及びMMD2に駆動信号を出力する。光源3は、入力された駆動信号に基づいて光ビームLを発生してMMD2に照射する。MMD2は、入力された駆動信号に基づいて、ミラー部20を第1軸a1及び第2軸a2の周りに揺動させる。
【0029】
詳しくは後述するが、駆動制御部4は、ミラー部20を第1軸a1及び第2軸a2の周りにそれぞれ共振させることにより、ミラー部20で反射される光ビームLは、被走査面5上においてリサージュ波形を描くように走査される。この光走査方式は、リサージュスキャン方式と呼ばれる。
【0030】
光走査装置10は、例えば、リサージュスキャン方式のレーザーディスプレイに適用される。具体的には、光走査装置10は、AR(Augmented Reality)グラス又はVR(Virtual Reality)グラス等のレーザースキャンディスプレイに適用可能である。
【0031】
図2は、駆動制御部4のハードウェア構成の一例を示す。駆動制御部4は、CPU(Central Processing Unit)40、ROM(Read Only Memory)41、RAM(Random Access Memory)42、光源ドライバ43、及びMMDドライバ44を有する。CPU40は
、ROM41等の記憶装置からプログラム及びデータをRAM42に読み出して処理を実行することにより、駆動制御部4の全体の機能を実現する演算装置である。CPU40は、本開示の技術に係るプロセッサの一例である。
【0032】
ROM41は、不揮発性の記憶装置であり、CPU40が処理を実行するためのプログラム、及び前述の光走査情報等のデータを記憶している。RAM42は、プログラム及びデータを一時的に保持する不揮発性の記憶装置である。
【0033】
光源ドライバ43は、CPU40の制御に従って、光源3に駆動信号を出力する電気回路である。光源ドライバ43においては、駆動信号は、光源3の照射タイミング及び照射強度を制御するための駆動電圧である。
【0034】
MMDドライバ44は、CPU40の制御に従って、MMD2に駆動信号を出力する電気回路である。MMDドライバ44においては、駆動信号は、MMDドライバ44のミラー部20を揺動させるタイミング、周期、及び振れ角を制御するための駆動電圧である。
【0035】
CPU40は、光走査情報に基づいて光源ドライバ43及びMMDドライバ44を制御する。光走査情報は、被走査面5に走査する光ビームLの走査パターンと、光源3の発光タイミングとを含む情報である。
【0036】
次に、
図3~
図6を用いてMMD2の一例を説明する。
図3は、MMD2の外観斜視図である。
図4は、MMD2を光入射側から見た平面図である。
図5は、
図4のA-A線に沿った断面図である。
図6は、
図4のB-B線に沿った断面図である。
【0037】
図3に示すように、MMD2は、ミラー部20、一対の第1支持部21、一対の可動枠22、一対の第2支持部23、一対の第1アクチュエータ24、一対の第2アクチュエータ25、一対の接続部26、及び固定枠27を有する。MMD2は、いわゆるMEMSスキャナである。
【0038】
ミラー部20は、入射光を反射する反射面20Aを有する。反射面20Aは、ミラー部20の一面に設けられた、例えば、金(Au)又はアルミニウム(Al)等の金属薄膜で形成されている。反射面20Aの形状は、例えば、第1軸a1と第2軸a2との交点を中心とした円形状である。
【0039】
第1軸a1及び第2軸a2は、ミラー部20が静止した静止時において反射面20Aを含む平面内に存在する。MMD2の平面形状は、矩形状であって、第1軸a1に関して線対称であり、かつ第2軸a2に関して線対称である。
【0040】
一対の第1支持部21は、第2軸a2を挟んで対向する位置に配置されており、かつ、第2軸a2に関して線対称な形状である。また、第1支持部21の各々は、第1軸a1に関して線対称な形状である。第1支持部21は、第1軸a1上でミラー部20と接続されており、ミラー部20を第1軸a1周りに揺動可能に支持している。
【0041】
一対の可動枠22は、第1軸a1を挟んで対向する位置に配置されており、かつ、第1軸a1に関して線対称となる形状である。可動枠22の各々は、第2軸a2に関して線対称な形状である。また、可動枠22の各々は、ミラー部20の外周に沿って円弧状に湾曲したU字形状である。可動枠22の両端はそれぞれ第1支持部21に接続されている。
【0042】
第1支持部21と可動枠22とは、互いに接続されることにより、ミラー部20を囲んでいる。
【0043】
一対の第2支持部23は、第1軸a1を挟んで対向する位置に配置されており、かつ、第1軸a1に関して線対称な形状である。第2支持部23の各々は、第2軸a2に関して線対称な形状である。第2支持部23は、第2軸a2上で可動枠22に接続されており、ミラー部20と第1支持部21と可動枠22を、第2軸a2周りに揺動可能に支持している。また、第2支持部23の両端はそれぞれ第1アクチュエータ24に接続されている。
【0044】
一対の第1アクチュエータ24は、第2軸a2を挟んで対向する位置に配置されており、かつ、第2軸a2に関して線対称な形状である。また、第1アクチュエータ24の各々は、第1軸a1に関して線対称な形状である。第1アクチュエータ24は、第1支持部21の外周に沿って湾曲したU字形状である。第1アクチュエータ24は、圧電素子を備えた圧電アクチュエータである。
【0045】
第2支持部23と第1アクチュエータ24とは、互いに接続されることにより、ミラー部20、第1支持部21、及び可動枠22を囲んでいる。
【0046】
一対の第2アクチュエータ25は、第1軸a1を挟んで対向する位置に配置されており、かつ、第1軸a1に関して線対称な形状である。また、第2アクチュエータ25の各々は、第2軸a2に関して線対称な形状である。第2アクチュエータ25は、第1アクチュエータ24及び第2支持部23の外周に沿って湾曲したU字形状である。また、第2アクチュエータ25の両端はそれぞれ接続部26に接続されている。
【0047】
一対の接続部26は、第2軸a2を挟んで対向する位置に配置されており、かつ、第2軸a2に関して線対称な形状である。また、接続部26の各々は、第1軸a1に関して線対称な形状である。接続部26は、第1軸a1に沿って配置されており、第1軸a1上で、第1アクチュエータ24と固定枠27とを接続している。接続部26の中央部には、第2アクチュエータ25が接続されている。
【0048】
第2アクチュエータ25と接続部26とは、互いに接続されることにより、ミラー部20、第1支持部21、可動枠22、及び第1アクチュエータ24を囲んでいる。
【0049】
固定枠27は、外形が矩形状の枠状部材であって、第1軸a1及び第2軸a2のそれぞれに関して線対称な形状である。固定枠27は、第2アクチュエータ25及び接続部26の外周を囲んでいる。すなわち、固定枠27は、第1アクチュエータ24を囲んで配置されている。また、第2アクチュエータ25は、固定枠27の内側に配置されている。
【0050】
第1アクチュエータ24及び第2アクチュエータ25は、それぞれ圧電素子を備えた圧電アクチュエータである。一対の第1アクチュエータ24は、ミラー部20及び可動枠22に第2軸a2周りの回転トルクを作用させることにより、ミラー部20を第2軸a2周りに揺動させる。一対の第2アクチュエータ25は、ミラー部20、可動枠22、及び第1アクチュエータ24に第1軸a1周りの回転トルクを作用させることにより、ミラー部20を第1軸a1周りに揺動させる。
【0051】
図4に示すように、第1支持部21は、揺動軸21Aと、一対の連結部21Bとで構成されている。揺動軸21Aは、第1軸a
1に沿って延伸した、いわゆるトーションバーである。揺動軸21Aは、一端がミラー部20に接続されており、他端が連結部21Bに接続されている。揺動軸21Aは、本開示の技術に係る主軸の一例である。
【0052】
一対の連結部21Bは、第1軸a1を挟んで対向する位置に配置されており、かつ、第1軸a1に関して線対称な形状である。連結部21Bは、一端が揺動軸21Aに接続されており、他端が可動枠22に接続されている。連結部21Bは、折り返し構造を有している。連結部21Bは、折り返し構造により弾性を有するため、ミラー部20が第1軸a1周りに揺動する際に、揺動軸21Aにかかる内部応力を緩和する。
【0053】
第2支持部23は、揺動軸23Aと、一対の連結部23Bとで構成されている。揺動軸23Aは、第2軸a2に沿って延伸した、いわゆるトーションバーである。揺動軸23Aは、一端が可動枠22に接続されており、他端が連結部23Bに接続されている。
【0054】
一対の連結部23Bは、第2軸a2を挟んで対向する位置に配置されており、かつ、第2軸a2に関して線対称な形状である。連結部23Bは、一端が揺動軸23Aに接続されており、他端が第1アクチュエータ24に接続されている。連結部23Bは、折り返し構造を有している。連結部23Bは、折り返し構造により弾性を有するため、ミラー部20が第2軸a2周りに揺動する際に、揺動軸23Aにかかる内部応力を緩和する。
【0055】
第1アクチュエータ24は、円弧状部24Aと、一対の扇状部24Bとで構成されている。円弧状部24Aは、第1軸a1に関して線対称な形状である。円弧状部24Aの両端はそれぞれ扇状部24Bに接続されている。
【0056】
一対の扇状部24Bは、第1軸a1を挟んで対向する位置に配置されており、かつ、第1軸a1に関して線対称な形状である。扇状部24Bは、一端が円弧状部24Aに接続されており、他端が第2支持部23の連結部23Bに接続されている。第1アクチュエータ24は、面積が大きい扇状部24Bを有するので、圧電素子の面積が大きい。この結果、第1アクチュエータ24により、第2軸a2周りに大きな駆動トルクが得られる。
【0057】
また、ミラー部20には、反射面20Aの外側に、反射面20Aの外周に沿って複数のスリット20B,20Cが形成されている。複数のスリット20B,20Cは、第1軸a1及び第2軸a2のそれぞれに関して線対称となる位置に配置されている。スリット20Bは、ミラー部20が揺動することにより反射面20Aに生じる歪を抑制する作用を有する。
【0058】
図3及び
図4では、第1アクチュエータ24及び第2アクチュエータ25に駆動信号を与えるための配線及び電極パッドについては図示を省略している。電極パッドは、固定枠27上に複数設けられる。
【0059】
図5及び
図6に示すように、MMD2は、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板30をエッチング処理することにより形成されている。SOI基板30は、単結晶シリコンからなる第1シリコン活性層31の上に、酸化シリコン層32が設けられ、酸化シリコン層32の上に単結晶シリコンからなる第2シリコン活性層33が設けられた基板である。
【0060】
ミラー部20、第1支持部21、可動枠22、第2支持部23、第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ25、及び接続部26は、SOI基板30からエッチング処理により第1シリコン活性層31及び酸化シリコン層32を除去することで残存した第2シリコン活性層33により形成されている。第2シリコン活性層33は、弾性を有する弾性部として機能する。固定枠27は、第1シリコン活性層31、酸化シリコン層32、及び第2シリコン活性層33の3層で形成されている。
【0061】
第2アクチュエータ25は、第2シリコン活性層33をエッチング処理することにより、第1アクチュエータ24よりも第2シリコン活性層33の厚みが薄く形成されている。すなわち、第2アクチュエータ25は、第1アクチュエータ24よりもZ方向に関する厚みが薄い。
【0062】
第1アクチュエータ24及び第2アクチュエータ25は、第2シリコン活性層33上に圧電素子28を有する。圧電素子28は、第2シリコン活性層33上に、下部電極51、圧電膜52、及び上部電極53が順に積層された積層構造を有する。なお、上部電極53上には絶縁膜が設けられるが、図示は省略している。
【0063】
上部電極53及び下部電極51は、例えば、金(Au)又は白金(Pt)等で形成されている。圧電膜52は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)で形成されている。上部電極53及び下部電極51は、配線及び電極パッドを介して、前述の駆動制御部4に電気的に接続されている。
【0064】
上部電極53には、駆動制御部4から駆動電圧が印加される。下部電極51は、配線及び電極パッドを介して駆動制御部4に接続され、基準電位(例えば、グランド電位)が付与されている。
【0065】
圧電膜52は、分極方向に正又は負の電圧が印加されると、印加電圧に比例した変形(例えば、伸縮)が生じる。すなわち、圧電膜52は、いわゆる逆圧電効果を発揮する。圧電膜52は、駆動制御部4から上部電極53に駆動電圧が印加されることにより逆圧電効果を発揮して、第1アクチュエータ24及び第2アクチュエータ25を変位させる。
【0066】
図7は、一対の第2アクチュエータ25の一方の圧電膜52を伸張させ、他方の圧電膜52を収縮させることにより、第2アクチュエータ25に、第1軸a
1周りの回転トルクを発生させる例を示している。このように、一対の第2アクチュエータ25の一方と他方とが互いに逆方向に変位することにより、ミラー部20が第1軸a
1の周りに回動する。
【0067】
また、
図7は、一対の第2アクチュエータ25の変位方向と、ミラー部20の回動方向とが互いに逆方向である逆位相の共振モードで、第2アクチュエータ25を駆動した例である。なお、一対の第2アクチュエータ25の変位方向と、ミラー部20の回動方向とが同じ方向である同位相の共振モードで、第2アクチュエータ25を駆動してもよい。
【0068】
ミラー部20の第1軸a1周りの振れ角は、駆動制御部4が第2アクチュエータ25に与える駆動信号(以下、第1駆動信号という。)により制御される。第1駆動信号は、例えば正弦波の交流電圧である。第1駆動信号は、一対の第2アクチュエータ25の一方に印加される駆動電圧波形V1A(t)と、他方に印加される駆動電圧波形V1B(t)とを含む。駆動電圧波形V1A(t)と駆動電圧波形V1B(t)は、互いに逆位相(すなわち位相差180°)である。
【0069】
なお、ミラー部20の第1軸a1周りの振れ角とは、反射面20Aの法線が、YZ平面においてZ方向に対して傾斜する角度をいう。
【0070】
図8は、一対の第1アクチュエータ24の一方の圧電膜52を伸張させ、他方の圧電膜52を収縮させることにより、第1アクチュエータ24に、第2軸a
2周りの回転トルクを発生させる例を示している。このように、一対の第1アクチュエータ24の一方と他方とが互いに逆方向に変位することにより、ミラー部20が第2軸a
2の周りに回動する。
【0071】
また、
図8は、一対の第1アクチュエータ24の変位方向と、ミラー部20の回動方向とが同じ方向ある同位相の共振モードで、第1アクチュエータ24を駆動した例を示している。なお、一対の第1アクチュエータ24の変位方向と、ミラー部20の回動方向とが互いに逆方向である逆位相の共振モードで、第1アクチュエータ24を駆動してもよい。
【0072】
ミラー部20の第2軸a2周りの振れ角は、駆動制御部4が第1アクチュエータ24に与える駆動信号(以下、第2駆動信号という。)により制御される。第2駆動信号は、例えば正弦波の交流電圧である。第2駆動信号は、一対の第1アクチュエータ24の一方に印加される駆動電圧波形V2A(t)と、他方に印加される駆動電圧波形V2B(t)とを含む。駆動電圧波形V2A(t)と駆動電圧波形V2B(t)は、互いに逆位相(すなわち位相差180°)である。
【0073】
なお、ミラー部20の第2軸a2周りの振れ角とは、反射面20Aの法線が、XZ平面においてZ方向に対して傾斜する角度をいう。
【0074】
図9は、第1駆動信号及び第2駆動信号の一例を示す。
図9(A)は、第1駆動信号に含まれる駆動電圧波形V
1A(t)及びV
1B(t)を示す。
図9(B)は、第2駆動信号に含まれる駆動電圧波形V
2A(t)及びV
2B(t)を示す。
【0075】
駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)は、それぞれ次のように表される。
V1A(t)=Voff1+V1sin(2πfd1t)
V1B(t)=Voff1+V1sin(2πfd1t+α)
【0076】
ここで、V1は振幅電圧である。Voff1はバイアス電圧である。fd1は駆動周波数(以下、第1駆動周波数という。)である。tは時間である。αは、駆動電圧波形V1
A(t)及びV1B(t)の位相差である。本実施形態では、例えば、α=180°とする。
【0077】
駆動電圧波形V
1A(t)及びV
1B(t)が一対の第2アクチュエータ25に印加されることにより、ミラー部20は、第1駆動周波数f
d1で第1軸a
1周りに揺動する(
図7参照)。
【0078】
駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)は、それぞれ次のように表される。
V2A(t)=Voff2+V2sin(2πfd2t+φ)
V2B(t)=Voff2+V2sin(2πfd2t+β+φ)
【0079】
ここで、V2は振幅電圧である。Voff2はバイアス電圧である。fd2は駆動周波数(以下、第2駆動周波数という。)である。tは時間である。βは、駆動電圧波形V2
A(t)及びV2B(t)の位相差である。本実施形態では、例えば、β=180°とする。また、φは、駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)と、駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)との位相差である。また、本実施形態では、例えば、Voff1=Voff2=0Vとする。
【0080】
駆動電圧波形V
2A(t)及びV
2B(t)が一対の第1アクチュエータ24に印加されることにより、ミラー部20は、第2駆動周波数f
d2で第2軸a
2周りに揺動する(
図8参照)。
【0081】
第1駆動周波数fd1は、ミラー部20の第1軸a1周りの共振周波数(以下、第1共振周波数という。)に一致するように設定される。第2駆動周波数fd2は、ミラー部20の第2軸a2周りの共振周波数(以下、第2共振周波数という。)に一致するように設定される。本実施形態では、fd1>fd2とする。すなわち、ミラー部20は、第1軸a1周りの揺動周波数が、第2軸a2周りの揺動周波数よりも高い。
【0082】
ミラー部20の共振には、前述の位相(同位相又は逆位相)に加えて、次数が異なる複数の共振モードが存在する。例えば、第1駆動周波数fd1は、第1軸a1周りの逆位相の共振モード群のうちから、最も大きな振れ角が得られる共振モードの共振周波数に一致する値とする。本実施形態では、例えば、第1駆動周波数fd1を、逆位相の共振モード群のうちから、最低次から2番目の共振モードの共振周波数に一致させる。以下、第1軸a1周りの共振モードを、高速スキャンモードという。
【0083】
また、例えば、第2駆動周波数fd2は、第2軸a2周りの同位相の共振モード群のうちから、最も大きな振れ角が得られる共振モードの共振周波数に一致する値とする。本実施形態では、例えば、第2駆動周波数fd2を、同位相の共振モード群のうちから、最低次から2番目の共振モードの共振周波数に一致させる。以下、第2軸a2周りの共振モードを、低速スキャンモードという。
【0084】
なお、最も大きな振れ角が得られる共振モードの次数は、第1アクチュエータ24及び第2アクチュエータ25の形状等に応じて変化する。このため、第1駆動周波数fd1及び第2駆動周波数fd2を、それぞれ他の次数の共振モードの周波数に一致させてもよい。
【0085】
図10は、第1支持部21及び第2支持部23の構成の一例を詳細に示す。第1支持部21に含まれる連結部21Bは、主軸としての第1軸a
1の両側に対称に配置され、第1軸a
1に沿って延伸した複数の副軸を有する。主軸及び複数の副軸は、それぞれ厚みが均一である。
【0086】
本実施形態では、連結部21Bは、第1副軸60A、第2副軸60B、及び第3副軸60Cの3個の副軸を有する。第1副軸60A、第2副軸60B、及び第3副軸60Cは、揺動軸21A側から順に、揺動軸21Aと並列に配置されている。第1副軸60A、第2副軸60B、及び第3副軸60Cは、同一の幅Wbを有する。幅Wbは、揺動軸21Aの幅Waよりも小さい。幅Waは、揺動軸21Aの長さLaよりも小さい。
【0087】
第1副軸60A、第2副軸60B、及び第3副軸60Cが互いに接続されることにより、第1折り返し部61、第2折り返し部62、及び第3折り返し部63が形成されている。なお、折り返し部は、3個に限られず、3個以上形成されていればよい。
【0088】
第1折り返し部61は、第1副軸60Aの一端と、揺動軸21Aのミラー部20とは反対側の端部とが接続されることにより形成されている。第1折り返し部61は、幅Wrを有する円環の一部である。第1折り返し部61は、内側の円の揺動軸21A側の頂点が揺動軸21Aに接するように配置されている。
【0089】
第2折り返し部62は、第1副軸60Aの他端と、第2副軸60Bの一端とが接続されることにより形成されている。第2折り返し部62は、幅Wrを有する円環の一部である。第2折り返し部62は、内側の円の揺動軸21A側の頂点が第1副軸60Aに接するように配置されている。
【0090】
第3折り返し部63は、第2副軸60Bの他端と、第3副軸60Cの一端とが接続されることにより形成されている。第3折り返し部63は、幅Wrを有する円環の一部である。第3折り返し部63は、内側の円の揺動軸21A側の頂点が第2副軸60Bに接するように配置されている。第3副軸60Cは、幅Wfを有する可動枠22に接続されている。
【0091】
第1折り返し部61の内側の曲率半径をR1とし、第2折り返し部62の内側の曲率半径をR2とし、第3折り返し部63の内側の曲率半径をR3とした場合、曲率半径R1,R2,R3は、下式(1)及び(2)の関係を満たす。
0.73≦R2/R1≦0.9 ・・・(1)
0.73≦R3/R2≦0.9 ・・・(2)
【0092】
詳しくは後述するが、曲率半径R1,R2,R3が上記関係を満たす場合、ミラー部20が第1軸a1周りに揺動する際に、揺動軸21Aにかかる内部応力が緩和される。この内部応力の緩和により、ミラー部20の第1軸a1周りの最大振れ角を大きくすることが可能となる。また、曲率半径R1,R2,R3が上記関係を満たす範囲では、連結部21Bの折り返し構造が大きくなりすぎず、第2軸a2周りの慣性モーメントの増加を抑制することができる。これにより、第2共振周波数の低下を抑制することができる。
【0093】
なお、連結部21Bが3個以上の折り返し部を有する場合には、折り返し部の内側の曲率半径を、第1軸に近い方から順にR1,R2,R3・・・とした場合に、下式(3)の関係を満たせばよい。
0.73≦Rk+1/Rk≦0.9 (k=1,2,・・・) ・・・(3)
【0094】
第2支持部23の連結部23Bは、第2軸a2の方向に延伸した複数の副軸を有する。本実施形態では、連結部23Bは、第1副軸70A及び第2副軸70Bの2個の副軸を有する。第1副軸70A及び第2副軸70Bは、揺動軸23A側から順に、揺動軸23Aと並列に配置されている。第1副軸70A及び第2副軸70Bは、同一の幅Wdを有する。幅Wdは、揺動軸23Aの幅Wcよりも小さい。幅Wcは、揺動軸23Aの長さLcよりも小さい。
【0095】
第1副軸70Aは、一端が揺動軸23Aのミラー部20とは反対側の端部に接続されており、他端が第2副軸70Bの一端に接続されている。第2副軸70Bの他端は、第1アクチュエータ24の扇状部24Bに接続されている。
【0096】
第1副軸70Aと揺動軸23Aとの間には、第2軸a2の方向に延伸したスリット71が形成されている。第1副軸70Aと第2副軸70Bとの間には、第2軸a2の方向に延伸したスリット72が形成されている。第2副軸70Bと扇状部24Bとの間には、第2軸a2の方向に延伸したスリット73が形成されている。スリット71,72,73は、いずれも同一の幅Δ1を有する。
【0097】
また、連結部23Bは、可動枠22との間、及び第2アクチュエータ25との間に、等しい間隔Δ2を有する。
【0098】
また、第1アクチュエータ24は、延伸方向(すなわち、ミラー部20の中心を回転軸とする円周方向)に直交する方向への幅の少なくとも一部が、揺動軸21Aの第2軸a2に沿った方向への幅Waよりも大きい。本実施形態では、扇状部24Bの幅Weが揺動軸21Aの幅Waよりも大きい。幅Weは、扇状部24Bの半径に対応する。このように、第1アクチュエータ24は、延伸方向に直交する方向への幅の少なくとも一部を、揺動軸21Aの幅Waよりも大きくすることにより、第1アクチュエータ24の面積が広がり、大きな回転トルクが得られる。
【0099】
また、MMD2では、第1支持部21及び第2支持部23には圧電素子は設けられておらず、第1支持部21及び第2支持部23とは別に圧電型の第1アクチュエータ24及び第2アクチュエータ25が設けられている。このため、第1軸a1及び第2軸a2周りの慣性モーメントを大きくすることなく、大きな回転トルクが得られる。
【0100】
[実施例]
以下に、本開示の技術に係るマイクロミラーデバイス(MMD)の実施例について説明する。本出願人は、有限要素法による振動解析シミュレーションにより、MMD2を第1軸a1及び第2軸a2の周りに同時に駆動した場合に、第1支持部21の揺動軸21Aにかかる内部応力(Si応力の最大値)を求めた。
【0101】
(MMDの寸法)
まず、本実施例で用いたMMD2の各構成要素の寸法に関するパラメータについて説明する。第1支持部21及び第2支持部23に含まれる各構成要素の幅及び長さ等に関するパラメータについては、
図10で説明した通りである。
【0102】
図11~
図14は、MMD2の構成要素の寸法に関するその他のパラメータを示す。
図11において、R
mは、反射面20Aの半径である。R
Sは、スリット20B,20Cの外周部の曲率半径である。R
fは、可動枠22の外周部の曲率半径である。W
sは、スリット20Bとスリット20Cとの間隔である。θ
sは、スリット20Bとスリット20Cとの間の部分と反射面20Aの中心とを結ぶ線が、第2軸a
2となす角度である。
【0103】
Whは、ミラー部20のスリット20B,20Cの外側に位置する外縁部(いわゆるリム)の幅である。R0は、揺動軸21Aとミラー部20との接続部分における曲率半径である。δは、連結部21Bに含まれる副軸の間隔である。Xr1は、第1折り返し部61の円の中心から第2軸a2までの距離である。Xr2は、第2折り返し部62の円の中心から第2軸a2までの距離である。Xr3は、第3折り返し部63の円の中心から第2軸a2までの距離である。
【0104】
図12において、X
acは、第2アクチュエータ25のX方向に関する端部から第2軸a
2までの距離である。Y
acは、第2アクチュエータ25のY方向に関する端部から第1軸a
1までの距離である。W
acは、第1アクチュエータ24の円弧状部24Aの幅である。W
gは、接続部26の幅である。L
gは、接続部26の長さである。Δ3は、接続部26の第1アクチュエータ24側の端部から、第2アクチュエータ25が接続された箇所までの長さである。Δ4は、第2アクチュエータ25と固定枠27とのX方向に関する間隔である。
【0105】
図13において、L
Xは、X方向に関する固定枠27の一辺の長さである。L
Yは、Y方向に関する固定枠27の一辺の長さである。
【0106】
図14において、D
1は、固定枠27の厚みである。D
2は、ミラー部20、第1支持部21、可動枠22、第2支持部23、及び第1アクチュエータ24を構成する第2シリコン活性層33の厚みである。D
3は、第2アクチュエータ25を構成する第2シリコン活性層33の厚みである。
【0107】
図15は、本シミュレーションで用いた各種パラメータの設定値である。本出願人は、有限要素法による共振モード解析シミュレーションにて、高速スキャンモードにおける第1共振周波数f
1と、低速スキャンモードにおける第2共振周波数f
2と、第1支持部21の揺動軸21Aにかかる内部応力(Si応力の最大値)とを求めた。内部応力は、高速スキャンモードでミラー部20を、最大振れ角が±17°となるまで駆動した場合におけるミーゼス応力σ
Misesを算出することにより求めた。
【0108】
高速スキャンモードは、前述の逆位相の共振モード群のうち、最低次から2番目の共振モードである。低速スキャンモードは、前述の同位相の共振モード群のうち、最低次から2番目の共振モードである。
【0109】
また、本出願人は、
図16に示すように、前述の曲率半径R
1,R
2,R
3が異なる12個のモデルを作成し、各モデルについて第1共振周波数f
1、第2共振周波数f
2、及びミーゼス応力σ
Misesと求めた。
【0110】
一般的に、ミーゼス応力σ
Misesが大きいほどSi破壊のリスクが高まる。経験上、2.26GPa以上のミーゼス応力σ
MisesでSi破壊が生じる。このことから、本出願人は、σ
Mises≧2.26GPaとなったモデルを不合格(F)と判定し、σ
Mises<2.26GPaとなったモデルを合格(P)と判定した。
図16に示すように、モデル番号1~5は、すべて不合格と判定され、モデル番号6~12はすべて合格と判定された。
【0111】
モデル番号1~5は、比R2/R1及びR3/R2のうち、少なくともいずれか一方が0.9より大きい。一方、モデル番号6~12は、比R2/R1及びR3/R2の両方が0.9以下である。したがって、下式(4)の関係を満たす場合に、σMises<2.26GPaとなる。
Rk+1/Rk≦0.9 (k=1,2,・・・) ・・・(4)
【0112】
すなわち、モデル番号6~12は、本開示の技術の実施例であり、モデル番号1~5は比較例である。
【0113】
図17は、ミーゼス応力σ
Misesと第1共振周波数f
1との関係を示す。
図17に示すように、実施例に属するモデル(モデル番号6~12)では、高い第1共振周波数f
1が得られる。
【0114】
図18は、ミーゼス応力σ
Misesと第2共振周波数f
2との関係を示す。
図18によれば、第2共振周波数f
2については、R
k+1/R
kの値が小さい場合に、第2共振周波数f
2が低下することが分かる。これは、R
k+1/R
kの値を小さくしすぎると、連結部21Bの構造が大きくなりすぎることにより、慣性モーメントが増加することが原因である。本出願人は、連結部21Bに含まれる副軸同士が接触しない極限として、0.73をR
k+1/R
kの下限値を決定した。
【0115】
上記実施形態で示したMMD2の構成は一例であり、適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、第2支持部23の連結部23Bが折り返し構造を有しているが、この折り返し構造は必須ではなく、省略可能である。
【0116】
また、駆動制御部4のハードウェア構成は種々の変形が可能である。駆動制御部4の処理部は、1つのプロセッサで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせで構成されてもよい。プロセッサには、CPU、プログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、専用電気回路等が含まれる。CPUは、周知のとおりソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサである。PLDは、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の、
製造後に回路構成を変更可能なプロセッサである。専用電気回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計され
た回路構成を有するプロセッサである。
【0117】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。