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特許7395038超音波システムおよび超音波システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】超音波システムおよび超音波システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023010040
(22)【出願日】2023-01-26
(62)【分割の表示】P 2020513446の分割
【原出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2023038342
(43)【公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2018077886
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 弘行
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第7219761(JP,B2)
【文献】特開2012-245021(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0066893(US,A1)
【文献】特開2011-087698(JP,A)
【文献】国際公開第2008/146208(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブと画像表示装置とを備える超音波システムであって、
前記超音波プローブは、
振動子アレイと、
前記振動子アレイから超音波を送信し且つ前記振動子アレイにより取得された受信信号に基づいて音線信号を生成する送受信部と、
前記送受信部により生成された前記音線信号に基づいて画像情報データを生成する画像情報データ生成部と、
前記画像情報データの生成レートを取得する画像生成レート取得部と、
前記画像情報データ生成部により生成された前記画像情報データおよび前記画像生成レート取得部により取得された前記画像生成レートを前記画像表示装置に無線送信するプローブ側無線通信部と
を含み、
前記画像表示装置は、
前記超音波プローブから無線送信された前記画像生成レートに基づいて表示フレームレートを決定する表示フレームレート決定部と、
前記超音波プローブから無線送信された前記画像情報データおよび前記表示フレームレート決定部により決定された前記表示フレームレートに基づいて超音波画像を表示する表示部と、
前記画像表示装置の動作状態を取得する動作状態取得部と、
前記動作状態取得部により取得された前記画像表示装置の前記動作状態を前記超音波プローブに無線送信する表示装置側無線通信部と
を含み、
前記超音波プローブは、前記画像表示装置から無線送信された前記画像表示装置の前記動作状態に応じた超音波送受信条件に基づいて前記送受信部による超音波の送受信を制御する超音波送受信制御部、および、前記画像表示装置から無線送信された前記画像表示装置の前記動作状態に基づいて前記超音波プローブから前記画像表示装置へ無線送信する前記画像情報データの出力フォーマットを設定する出力フォーマット設定部のうち少なくとも前記超音波送受信制御部を備え、
前記画像表示装置は、前記超音波プローブの前記超音波送受信制御部により制御される超音波の送受信の条件に基づいて安全性評価指標を算出し且つ前記表示部に表示する安全性評価指標算出部を有し、
前記超音波プローブは、前記画像表示装置から無線送信された前記画像表示装置の前記動作状態に応じた超音波送受信条件に基づいて前記送受信部による超音波の送受信が制御される旨の通知を前記画像表示装置へ無線送信し、
前記安全性評価指標算出部は、前記超音波プローブから無線送信された前記通知を受け取った後に、前記安全性評価指標を算出し且つ前記表示部に表示する超音波システム。
【請求項2】
前記画像表示装置は、中央処理装置を含むプロセッサを有し、
前記画像表示装置の前記動作状態は、前記中央処理装置の構成、前記中央処理装置のクロック周波数、前記表示部の解像度、前記表示部におけるリフレッシュレートのうち少なくとも1つである請求項1に記載の超音波システム。
【請求項3】
前記画像表示装置は、温度センサと、前記温度センサにより検出された温度に応じて前記中央処理装置のクロック周波数を制御するクロック制御部とを有し、
前記画像表示装置の前記動作状態は、前記クロック制御部により制御された前記中央処理装置のクロック周波数である請求項2に記載の超音波システム。
【請求項4】
前記画像表示装置は、前記超音波プローブと前記画像表示装置の間における無線通信状態を検知する通信状態検知部を有し、
前記画像表示装置の前記動作状態は、前記通信状態検知部により検知された前記無線通信状態である請求項1に記載の超音波システム。
【請求項5】
前記画像情報データは、前記送受信部により生成された前記音線信号に超音波の反射位置の深度に応じた減衰補正および包絡線検波処理を施した信号である請求項1~のいずれか一項に記載の超音波システム。
【請求項6】
前記画像情報データは、前記送受信部により生成された前記音線信号に超音波の反射位置の深度に応じた減衰補正および包絡線検波処理を施し、且つ、定められた画像表示方式に従って変換された超音波画像信号である請求項1~のいずれか一項に記載の超音波システム。
【請求項7】
前記送受信部は、
前記振動子アレイから超音波の送信を行わせる送信部と、
前記振動子アレイにより取得された受信信号に基づいて前記音線信号を生成する受信部と
を含む請求項1~のいずれか一項に記載の超音波システム。
【請求項8】
超音波プローブと画像表示装置とを備える超音波システムの制御方法であって、
前記超音波プローブの振動子アレイによる超音波の送受信を行わせることにより音線信号を生成し、
生成された前記音線信号に基づいて画像情報データを生成し、
前記画像情報データの生成レートを取得し
生成された前記画像情報データおよび取得された前記生成レートを前記超音波プローブから前記画像表示装置に無線送信し、
前記超音波プローブから無線送信された前記画像生成レートに基づいて表示フレームレートを決定し、
前記超音波プローブから無線送信された前記画像情報データおよび決定された前記表示フレームレートに基づいて超音波画像を前記画像表示装置の表示部に表示し、
画像表示装置の動作状態を前記画像表示装置から前記超音波プローブに無線送信し、
前記超音波プローブは、前記画像表示装置から無線送信された前記画像表示装置の前記動作状態に応じた超音波送受信条件に基づく超音波の送受信制御、および、前記画像表示装置から無線送信された前記画像表示装置の前記動作状態に基づく前記画像表示装置へ無線送信する画像情報データの出力フォーマットの設定のうち、少なくとも前記超音波の送受信制御を行い、
前記超音波送受信条件に基づいて超音波の送受信が制御される旨の通知を前記超音波プローブから前記画像表示装置へ無線送信し、
前記画像表示装置において、前記超音波プローブから無線送信された前記通知を受け取った後に、前記超音波送受信条件に基づいて安全性評価指標を算出し且つ前記表示部に表示する超音波システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波システムおよび超音波システムの制御方法に係り、特に、超音波プローブと画像表示装置とが無線通信により接続された超音波システムおよび超音波システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信し、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
近年、例えば、特許文献1に開示されているように、超音波プローブと装置本体との間を無線通信により接続することにより、超音波プローブの操作性、機動性を向上させようとする超音波システムが開発されている。
このような無線型の超音波システムでは、超音波プローブの振動子アレイから出力された受信信号を無線通信により装置本体へ伝送する、あるいは、超音波プローブ内に信号処理のための回路を内蔵して、振動子アレイから出力された受信信号を超音波プローブ内でデジタル処理した上で無線通信により装置本体に伝送することにより、装置本体において超音波画像の生成が行われる。このようにして生成された超音波画像は、一定の表示フレームレートで装置本体により表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-211726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、装置本体の温度が一定の温度以上に上昇すると、装置本体に含まれる回路および表示部等が正常に機能することが困難になるおそれがある。その場合には、装置本体の処理能力を低下させることにより、装置本体における温度上昇を防ぐことが多い。このようにして、装置本体の処理能力が低下すると、装置本体において超音波画像を生成し、生成された超音波画像を表示させるために、多大な処理時間を要するため、超音波プローブから無線通信により伝送される信号の処理が間に合わなくなり、超音波画像を正常に表示させることが困難なことがあった。
【0006】
また、装置本体における表示部の解像度、表示部のリフレッシュレート、超音波プローブと装置本体との間の無線通信状態等により、表示部において正常に表示することができる超音波画像のデータ量が変わるため、超音波プローブから無線通信により伝送される信号の処理が間に合わなくなり、超音波画像を正常に表示させることが困難なことがあった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解消するためになされたものであり、装置本体における処理能力等の動作状態に関わらず、超音波画像を正常に表示することができる超音波システムおよび超音波システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る超音波システムは、超音波プローブと画像表示装置とを備える超音波システムであって、超音波プローブは、振動子アレイと、振動子アレイから超音波を送信し且つ振動子アレイにより取得された受信信号に基づいて音線信号を生成する送受信部と、送受信部により生成された音線信号に基づいて画像情報データを生成する画像情報データ生成部と、画像情報データ生成部により生成された画像情報データを画像表示装置に無線送信するプローブ側無線通信部とを含み、画像表示装置は、超音波プローブから無線送信された画像情報データに基づいて超音波画像を表示する表示部と、画像表示装置の動作状態を取得する動作状態取得部と、動作状態取得部により取得された画像表示装置の動作状態を超音波プローブに無線送信する表示装置側無線通信部とを含み、超音波プローブは、画像表示装置から無線送信された画像表示装置の動作状態に応じた超音波送受信条件に基づいて送受信部による超音波の送受信を制御する超音波送受信制御部、および、画像表示装置から無線送信された画像表示装置の動作状態に基づいて超音波プローブから画像表示装置へ無線送信する画像情報データの出力フォーマットを設定する出力フォーマット設定部のうち少なくとも超音波送受信制御部を備え、画像表示装置は、超音波プローブの超音波送受信制御部により制御される超音波の送受信の条件に基づいて安全性評価指標を算出し且つ表示部に表示する安全性評価指標算出部を有し、超音波プローブは、画像表示装置から無線送信された画像表示装置の動作状態に応じた超音波送受信条件に基づいて送受信部による超音波の送受信が制御される旨の通知を画像表示装置へ無線送信し、安全性評価指標算出部は、超音波プローブから無線送信された通知を受け取った後に、安全性評価指標を算出し且つ表示部に表示することを特徴とする。
【0009】
画像表示装置は、中央処理装置を含むプロセッサを有し、画像表示装置の動作状態は、中央処理装置の構成、中央処理装置のクロック周波数、表示部の解像度、表示部におけるリフレッシュレートのうち少なくとも1つであることが好ましい。
この際に、画像表示装置は、温度センサと、温度センサにより検出された温度に応じて中央処理装置のクロック周波数を制御するクロック制御部とを有し、画像表示装置の動作状態は、クロック制御部により制御された中央処理装置のクロック周波数であることが好ましい。
【0010】
もしくは、画像表示装置は、超音波プローブと画像表示装置の間における無線通信状態を検知する通信状態検知部を有し、画像表示装置の動作状態は、通信状態検知部により検知された無線通信状態であることが好ましい。
この際に、画像表示装置は、少なくとも無線通信状態に基づいて表示フレームレートを決定する表示フレームレート決定部を有し、表示部は、表示フレームレート決定部により決定された表示フレームレートに基づいて超音波画像を表示することができる。
【0011】
また、画像情報データは、送受信部により生成された音線信号に超音波の反射位置の深度に応じた減衰補正および包絡線検波処理を施した信号であることが好ましい。
また、画像情報データは、送受信部により生成された音線信号に超音波の反射位置の深度に応じた減衰補正および包絡線検波処理を施し、且つ、定められた画像表示方式に従って変換された超音波画像信号であってもよい。
【0012】
送受信部は、振動子アレイから超音波の送信を行わせる送信部と、振動子アレイにより取得された受信信号に基づいて音線信号を生成する受信部とを含むことが好ましい。
【0013】
本発明の超音波システムの制御方法は、超音波プローブと画像表示装置とを備える超音波システムの制御方法であって、超音波プローブの振動子アレイによる超音波の送受信を行わせることにより音線信号を生成し、生成された音線信号に基づいて画像情報データを生成し、生成された画像情報データを超音波プローブから画像表示装置に無線送信し、超音波プローブから無線送信された画像情報データに基づいて超音波画像を画像表示装置の表示部に表示し、画像表示装置の動作状態を画像表示装置から超音波プローブに無線送信し、超音波プローブは、画像表示装置から無線送信された画像表示装置の動作状態に応じた超音波送受信条件に基づく超音波の送受信制御、および、画像表示装置から無線送信された画像表示装置の動作状態に基づく画像表示装置へ無線送信する画像情報データの出力フォーマットの設定のうち、少なくとも超音波の送受信制御を行い、超音波送受信条件に基づいて超音波の送受信が制御される旨の通知を超音波プローブから画像表示装置へ無線送信し、画像表示装置において、超音波プローブから無線送信された通知を受け取った後に、超音波送受信条件に基づいて安全性評価指標を算出し且つ表示部に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、超音波プローブが、画像表示装置から無線送信された画像表示装置の動作状態に応じた超音波送受信条件に基づいて送受信部による超音波の送受信を制御する超音波送受信制御部、および、画像表示装置から無線送信された画像表示装置の動作状態に基づいて超音波プローブから画像表示装置へ無線送信する画像情報データの出力フォーマットを設定する出力フォーマット設定部のうち少なくとも一方を備えているため、画像表示装置における動作状態に関わらず、超音波画像を正常に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係る超音波システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態1における受信部の内部構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態2における画像表示装置の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施の形態3における画像表示装置の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施の形態4における画像表示装置の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の実施の形態5に係る超音波システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に本発明の実施の形態1に係る超音波システム1の構成を示す。図1に示すように、超音波システム1は、超音波プローブ2と画像表示装置3を備えており、超音波プローブ2と画像表示装置3とは、無線通信により接続されている。
【0017】
超音波システム1の超音波プローブ2は、振動子アレイ11を備えており、振動子アレイ11に、送信部12および受信部13がそれぞれ接続されている。送信部12および受信部13は、送受信部14を形成しており、送信部12および受信部13に超音波送受信制御部15が接続されている。受信部13には、信号処理部16、画像処理部17およびプローブ側無線通信部18が順次接続されている。信号処理部16および画像処理部17は、画像情報データ生成部19を形成している。
【0018】
また、プローブ側無線通信部18に、通信制御部20が接続され、画像情報データ生成部19に、出力フォーマット設定部22が接続されている。さらに、超音波送受信制御部15、信号処理部16、画像処理部17、通信制御部20および出力フォーマット設定部22に、プローブ制御部21が接続されている。また、超音波プローブ2は、バッテリ24を内蔵している。
送信部12、受信部13、超音波送受信制御部15、信号処理部16、画像処理部17、通信制御部20、プローブ制御部21および出力フォーマット設定部22により、プローブ側プロセッサ25が構成されている。
【0019】
超音波システム1の画像表示装置3は、表示装置側無線通信部32を備えており、表示装置側無線通信部32に、表示制御部33および表示部34が順次接続されている。また、表示装置側無線通信部32に、通信制御部35、通信状態検知部39および動作状態取得部40がそれぞれ接続されている。また、表示制御部33、通信制御部35、通信状態検知部39および動作状態取得部40に、本体制御部36が接続されており、本体制御部36に、操作部37および格納部38がそれぞれ接続されている。表示装置側無線通信部32と本体制御部36とは、双方向に情報の受け渡しが可能に接続されており、本体制御部36と格納部38とは、双方向に情報の受け渡しが可能に接続されている。
【0020】
さらに、表示制御部33、通信制御部35、本体制御部36、通信状態検知部39および動作状態取得部40により、表示装置側プロセッサ41が構成されている。
また、超音波プローブ2のプローブ側無線通信部18と画像表示装置3の表示装置側無線通信部32とは、双方向に情報の受け渡しが可能に接続されており、これにより、超音波プローブ2と画像表示装置3とが無線通信により接続される。
【0021】
超音波プローブ2の振動子アレイ11は、1次元または2次元に配列された複数の超音波振動子を有している。これらの振動子は、それぞれ送信部12から供給される駆動電圧号に従って超音波を送信すると共に被検体からの反射波を受信して受信信号を出力する。各振動子は、例えば、PZT(Lead Zirconate Titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック、PVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride:ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子およびPMN-PT(Lead Magnesium Niobate-Lead Titanate:マグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成した素子を用いて構成される。
【0022】
送受信部14の送信部12は、例えば、複数のパルス発生器を含んでおり、超音波送受信制御部15からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ11の複数の振動子から送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号を、遅延量を調節して複数の振動子に供給する。このように、振動子アレイ11の振動子の電極にパルス状または連続波状の電圧が印加されると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状または連続波状の超音波が発生して、それらの超音波の合成波から、超音波ビームが形成される。
【0023】
送信された超音波ビームは、例えば、被検体の部位等の対象において反射され、振動子アレイ11に向かって伝搬する。このように振動子アレイ11に向かって伝搬する超音波は、振動子アレイ11を構成するそれぞれの超音波振動子により受信される。この際に、振動子アレイ11を構成するそれぞれの超音波振動子は、伝搬する超音波エコーを受信することにより伸縮して電気信号を発生させ、これらの電気信号である受信信号を受信部13に出力する。
【0024】
送受信部14の受信部13は、超音波送受信制御部15からの制御信号に従って、振動子アレイ11から出力される受信信号の処理を行う。図2に示すように、受信部13は、増幅部26、AD(Analog Digital)変換部27およびビームフォーマ28が直列接続された構成を有している。増幅部26は、振動子アレイ11を構成するそれぞれの振動子から入力された受信信号を増幅し、増幅した受信信号をAD変換部27に送信する。AD変換部27は、増幅部26から送信された受信信号をデジタル化された素子データに変換し、これらの素子データをビームフォーマ28に送出する。ビームフォーマ28は、超音波送受信制御部15からの制御信号に応じて選択された受信遅延パターンに基づき、設定された音速に従う各素子データにそれぞれの遅延を与えて加算(整相加算)を施す、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号が生成される。
【0025】
プローブ側プロセッサ25の超音波送受信制御部15は、送受信部14の送信部12および受信部13を制御することにより、プローブ制御部21から指示された検査モードおよび走査方式に基づいて、超音波ビームの送信および超音波エコーの受信を行う。ここで、検査モードとは、B(輝度)モード、CF(カラードプラ)モード、PD(パワードプラ)モード、PW(パルスドプラ)モード、CW(連続波ドプラ)モード、M(モーション)モード等、超音波診断装置において使用可能な検査モードのうちのいずれかを示し、走査方式とは、電子セクタ走査方式、電子リニア走査方式、電子コンベックス走査方式等の走査方式のうちのいずれかを示すものとする。
【0026】
また、超音波送受信制御部15は、画像表示装置3から無線送信された画像表示装置3の動作状態に応じた超音波送受信条件に基づいて、送受信部14による超音波の送受信を制御する。ここで、超音波送受信条件には、例えば、単位時間あたりの超音波の送受信回数、いわゆる超音波のスキャンレートが含まれる。画像表示装置3の動作状態については後述する。
【0027】
画像情報データ生成部19の信号処理部16は、受信部13のビームフォーマ28により生成された音線信号に対して、超音波が反射した位置の深度に応じて伝搬距離に起因する減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施して、被検体内の組織に関する断層画像情報である信号を生成する。
画像情報データ生成部19の画像処理部17は、信号処理部16により生成された信号を、通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号にラスター変換し、このようにして生成された画像信号に対して、明るさ補正、諧調補正、シャープネス補正および色補正等の各種の必要な画像処理を施すことにより超音波画像信号を生成した後、超音波画像信号を画像情報データとしてプローブ側無線通信部18に送出する。
【0028】
超音波プローブ2のプローブ側無線通信部18は、電波の送信および受信を行うためのアンテナを含んでおり、画像表示装置3の表示装置側無線通信部32と無線通信を行う。この際に、プローブ側無線通信部18は、画像情報データ生成部19の画像処理部17により生成された超音波画像信号に基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、生成された伝送信号を、画像表示装置3の表示装置側無線通信部32に無線送信する。キャリアの変調方式としては、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying:振幅偏移変調)、PSK(Phase Shift Keying:位相偏移変調)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying:四位相偏移変調)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation:16直角位相振幅変調)等が用いられる。
【0029】
また、例えば、プローブ側無線通信部18は、後述する画像表示装置3の動作状態取得部40により取得され、画像表示装置3の表示装置側無線通信部32により無線送信された、画像表示装置3の動作状態を表す伝送信号を復調して、画像表示装置3の動作状態を表す情報を、プローブ制御部21に出力する。
【0030】
プローブ側プロセッサ25のプローブ制御部21は、予め記憶しているプログラム等に基づいて、超音波プローブ2の各部の制御を行う。
超音波プローブ2のバッテリ24は、超音波プローブ2に内蔵されており、超音波プローブ2の各回路に電力を供給する。
【0031】
プローブ側プロセッサ25の通信制御部20は、プローブ制御部21により設定された送信電波強度で超音波画像信号の伝送が行われるようにプローブ側無線通信部18を制御する。
【0032】
プローブ側プロセッサの出力フォーマット設定部22は、画像表示装置3の動作状態に基づいて、画像表示装置3へ無線送信される超音波画像信号の出力フォーマットを設定する。ここで、超音波画像信号の出力フォーマットには、例えば、超音波画像信号の圧縮率、プローブ側無線通信部18から画像表示装置3の表示装置側無線通信部32に伝送信号を無線送信する際の転送レート、超音波画像信号が表示部34において超音波画像として表示される際の画像サイズが含まれる。ここで、転送レートとは、プローブ側無線通信部18から表示装置側無線通信部32に無線送信される超音波画像信号の単位時間あたりの送信回数である。また、画像表示装置3の動作状態については、後述する。
【0033】
画像表示装置3の表示装置側無線通信部32は、電波の送信および受信を行うためのアンテナを含んでおり、超音波プローブ2のプローブ側無線通信部18と無線通信を行う。この際に、画像表示装置3の表示装置側無線通信部32は、例えば、超音波プローブ2のプローブ側無線通信部18から無線送信された伝送信号を、アンテナを介して受信し、受信した伝送信号を復調することにより、超音波画像信号を出力する。
【0034】
また、表示装置側無線通信部32は、動作状態取得部40に取得された画像表示装置3の動作状態を表す情報に基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、生成された伝送信号を、超音波プローブ2のプローブ側無線通信部18に無線送信する。キャリアの変調方式としては、例えば、超音波プローブ2のプローブ側無線通信部18と同様に、ASK、PSK、QPSK、16QAM等が用いられる。
【0035】
表示装置側プロセッサ41の通信制御部35は、超音波プローブ2のプローブ側無線通信部18からの伝送信号の受信およびプローブ側無線通信部18への伝送信号の送信が行われるように、画像表示装置3の表示装置側無線通信部32を制御する。
【0036】
表示装置側プロセッサ41の通信状態検知部39は、超音波プローブ2のプローブ側無線通信部18と画像表示装置3の表示装置側無線通信部32との間の無線通信状態を検知する。例えばこの際に、通信状態検知部39は、プローブ側無線通信部18と表示装置側無線通信部32との間において単位時間あたりに無線通信されるデータ量いわゆるデータ通信速度を無線通信状態として検知することができる。また、例えば、通信状態検知部39は、プローブ側無線通信部18から表示装置側無線通信部32への超音波画像信号の転送レートを無線通信状態として検知することもできる。
【0037】
表示装置側プロセッサ41の表示制御部33は、本体制御部36の制御の下、表示装置側無線通信部32により復調された超音波画像信号に所定の処理を施して、表示部34に超音波画像を表示させる。
表示装置側プロセッサ41の本体制御部36は、格納部38等に予め記憶されているプログラムおよび操作部37を介したユーザの操作に基づいて、画像表示装置3の各部の制御を行う。
【0038】
画像表示装置3の表示部34は、表示制御部33により生成された画像を表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)等のディスプレイ装置を含む。
画像表示装置3の操作部37は、ユーザが入力操作を行うためのものであり、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッドおよびタッチパネル等を備えて構成することができる。
【0039】
画像表示装置3の格納部38は、画像表示装置3の動作プログラム等を格納するものであり、格納部38として、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive:ハードディスクドライブ)、SSD(Solid State Drive:ソリッドステートドライブ)、FD(Flexible Disc:フレキシブルディスク)、MOディスク(Magneto-Optical disc:光磁気ディスク)、MT(Magnetic Tape:磁気テープ)、RAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)、CD(Compact Disc:コンパクトディスク)、DVD(Digital Versatile Disc:デジタルバーサタイルディスク)、SDカード(Secure Digital card:セキュアデジタルカード)、USBメモリ(Universal Serial Bus memory:ユニバーサルシリアルバスメモリ)等の記録メディア、またはサーバ等を用いることができる。
【0040】
ここで、超音波プローブ2において、送受信部14、超音波送受信制御部15、プローブ側無線通信部18、画像情報データ生成部19、通信制御部20、プローブ制御部21および出力フォーマット設定部22を有するプローブ側プロセッサ25と、画像表示装置3において、表示制御部33、通信制御部35、本体制御部36、通信状態検知部39および動作状態取得部40を有する表示装置側プロセッサ41は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、および、CPUに各種の処理を行わせるための制御プログラムから構成されるが、FPGA(Field Programmable Gate Array:フィードプログラマブルゲートアレイ)、DSP(Digital Signal Processor:デジタルシグナルプロセッサ)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:アプリケーションスペシフィックインテグレイテッドサーキット)、GPU(Graphics Processing Unit:グラフィックスプロセッシングユニット)、その他のIC(Integrated Circuit:集積回路)を用いて構成されてもよく、もしくはそれらを組み合わせて構成されてもよい。
【0041】
また、プローブ側プロセッサ25の送受信部14、超音波送受信制御部15、プローブ側無線通信部18、画像情報データ生成部19、通信制御部20、プローブ制御部21および出力フォーマット設定部22を部分的にあるいは全体的に1つのCPU等に統合させて構成することもできる。また、表示装置側プロセッサ41の表示制御部33、通信制御部35、本体制御部36、通信状態検知部39および動作状態取得部40も同様に、部分的にあるいは全体的に1つのCPU等に統合させて構成することもできる。
【0042】
表示装置側プロセッサ41の動作状態取得部40は、画像表示装置3の動作状態を表す情報を取得し、取得された情報を表示装置側無線通信部32に送出する。例えば、表示装置側プロセッサ41がCPUにより構成されているかCPUを含んでいる場合には、動作状態取得部40は、画像表示装置3の動作状態として、このCPUの構成、CPUの処理能力、CPUのクロック周波数を取得することができる。ここで、CPUの構成とは、例えば、CPUに内蔵されるコアの数のことをいう。また、CPUの処理能力とは、例えば、CPUが同時に処理することができるスレッド数のことをいう。
【0043】
また、例えば、動作状態取得部40は、画像表示装置3の動作状態として、表示部34の解像度、表示部34におけるリフレッシュレート、通信状態検知部39により検知された超音波プローブ2と画像表示装置3との間の無線通信状態を取得することもできる。ここで、表示部34におけるリフレッシュレートとは、表示部34が単位時間あたりに表示を更新することが可能な回数のことを指し、例えば、表示部34として使用されるディスプレイ装置毎に固有のリフレッシュレートを有する。
なお、動作状態取得部40は、このような複数の種類の動作状態のうち少なくとも1つの動作状態を表す情報を取得することができる。
【0044】
ところで、画像表示装置3の表示部34に超音波画像を表示するために必要な表示装置側プロセッサ41の処理能力は、画像表示装置3の動作状態に応じて変化する。超音波プローブと画像表示装置とを無線通信により互いに接続する従来の超音波システムでは、画像表示装置3の動作状態に起因して表示装置側プロセッサ41における十分な処理能力が得られない場合に、超音波プローブから無線送信される信号の処理が間に合わなくなり、超音波画像を正常に表示させることが困難なことがあった。
【0045】
本発明の実施の形態1に係る超音波システム1では、表示装置側プロセッサ41の動作状態取得部40により取得された画像表示装置3の動作状態を表す情報が超音波プローブ2に無線送信され、画像表示装置3の動作状態に基づいて、超音波送受信制御部15により超音波の送受信が制御される。この際に、超音波送受信制御部15は、画像表示装置3における処理能力、および、超音波プローブ2と画像表示装置3との間の無線通信状態のうち少なくとも一方が悪化するほど、送受信部14におけるスキャンレートを低下させるように送受信部14を制御して、画像情報データ生成部19において単位時間あたりに生成される超音波画像信号の数を減少させることができる。このため、プローブ側無線通信部18から画像表示装置3に無線送信される単位時間あたりのデータ量を低減させ、さらに、表示装置側プロセッサ41において単位時間あたりに処理する超音波画像信号のデータ量を低減させることができる。
【0046】
このように、プローブ側プロセッサ25の超音波送受信制御部15が画像表示装置3の動作状態に応じて超音波の送受信を制御することにより、表示装置側プロセッサ41において単位時間あたりに処理する超音波画像信号のデータ量が低減するため、表示装置側プロセッサ41の処理能力に関わらず、超音波画像を表示部34に正常に表示することができる。
【0047】
また、本発明の超音波システム1においては、出力フォーマット設定部22により画像表示装置3の動作状態に応じた超音波画像信号の出力フォーマットが設定されるが、例えば、出力フォーマット設定部22が、超音波画像信号の圧縮率を増大させる等により、超音波画像信号のデータ量を低減するように出力フォーマットを設定した場合には、表示装置側プロセッサ41において処理が行われる超音波画像信号のデータ量が低減される。
【0048】
また、例えば、超音波送受信制御部15により、送受信部14におけるスキャンレートを低下させるように送受信部14の制御がなされ、出力フォーマット設定部22により、プローブ側無線通信部18から表示装置側無線通信部32への超音波画像信号の転送レートを低減するように出力フォーマットが設定された場合には、表示装置側プロセッサ41において単位時間あたりに処理が行われるデータ量が低減される。
【0049】
以上により、本発明の実施の形態1に係る超音波システム1によれば、画像表示装置3の動作状態に応じて、表示装置側プロセッサ41により単位時間あたりに処理がなされるデータ量が低減されるため、画像表示装置3における動作状態に関わらず、超音波画像を正常に表示することができる。
【0050】
なお、実施の形態1に係る超音波システム1の超音波プローブ2は、超音波送受信制御部15と出力フォーマット設定部22を備えているが、超音波送受信制御部15と出力フォーマット設定部22のどちらか一方のみが超音波プローブ2に備えられている場合であても、画像表示装置3の動作状態に応じて、表示装置側プロセッサ41により単位時間あたりに処理がなされるデータ量を低減することができるため、画像表示装置3の動作状態に関わらず、超音波画像を表示部34に正常に表示することができる。
【0051】
実施の形態2
実施の形態2に係る超音波システムは、図1に示す実施の形態1の超音波システム1の画像表示装置3の代わりに、図3に示す画像表示装置3Aを備えている。実施の形態2における画像表示装置3Aは、図1に示す実施の形態1における画像表示装置3において、本体制御部36の代わりに本体制御部36Aを備え、温度センサ51とクロック制御部52をさらに追加したものである。
【0052】
図3に示すように、画像表示装置3Aにおいて、表示制御部33、通信制御部35、操作部37、格納部38、通信状態検知部39、動作状態取得部40、温度センサ51およびクロック制御部52に、本体制御部36Aが接続されている。この際に、本体制御部36Aとクロック制御部52とは、双方向に情報の受け渡しが可能に接続されている。また、表示制御部33、通信制御部35、本体制御部36A、通信状態検知部39、動作状態取得部40およびクロック制御部52により、表示装置側プロセッサ41Aが構成されている。
また、画像表示装置3Aの表示装置側プロセッサ41Aは、全部または一部がCPUにより構成されている。
【0053】
画像表示装置3Aの温度センサ51は、画像表示装置3Aに内蔵され、画像表示装置3Aの温度を検出する。例えば、温度センサ51として、温度に応じた電気抵抗の変化に基づいて温度の検出を行うサーミスタ、2種類の金属間の熱起電力に基づいて温度の検出を行う熱電対等が用いられる。
【0054】
表示装置側プロセッサ41Aのクロック制御部52は、温度センサ51により検出された画像表示装置3Aの温度に応じて、表示装置側プロセッサ41Aに含まれるCPUのクロック周波数を制御する。ここで、一般的には、CPUのクロック周波数が高くなるほどCPUにおける発熱量が増大する。そのため、クロック制御部52は、温度センサ51により検出された温度が高いほどCPUのクロック周波数を低下させることにより、CPUにおける発熱を抑制し、画像表示装置3Aの温度上昇を防ぐことができる。
【0055】
この際に、表示装置側プロセッサ41Aの動作状態取得部40は、実施の形態1で例示されているCPUの構成、CPUの処理能力、表示部34の解像度、表示部34におけるリフレッシュレート等に加えて、クロック制御部52により制御されたCPUのクロック周波数を、画像表示装置3Aの動作状態として取得することができる。
【0056】
ここで、画像表示装置3Aにおける温度上昇を防ぐためにCPUのクロック周波数を低下させると、表示装置側プロセッサ41Aにおける処理能力も低下するが、本発明の実施の形態2においても、実施の形態1に示す態様と同様に、表示装置側プロセッサ41Aの動作状態取得部40により画像表示装置3Aの動作状態が表示装置側無線通信部32を介して超音波プローブ2に伝送される。
【0057】
この際に、図1に示すプローブ側プロセッサ25の超音波送受信制御部15は、動作状態取得部40により取得された画像表示装置3Aの動作状態に応じて送受信部14におけるスキャンレートを低下させるように送受信部14を制御して、画像情報データ生成部19において単位時間あたりに生成される超音波画像信号の数を減少させる。また、超音波プローブ2の出力フォーマット設定部22は、画像表示装置3Aの動作状態に応じて超音波画像信号のデータ量を低減するように、超音波画像信号の出力フォーマットを設定する。そのため、本発明の実施の形態2に係る超音波システムによれば、実施の形態1の超音波システム1と同様に、画像表示装置3Aにおける動作状態に関わらず、超音波画像を正常に表示することができる。
【0058】
実施の形態3
実施の形態3に係る超音波システムは、図1に示す実施の形態1の超音波システム1の画像表示装置3の代わりに、図4に示す画像表示装置3Bを備えている。実施の形態2における画像表示装置3Bは、図1に示す実施の形態1における画像表示装置3において、本体制御部36の代わりに本体制御部36Bを備え、表示フレームレート決定部61をさらに追加したものである。
【0059】
図4に示すように、画像表示装置3Bにおいて、表示制御部33、通信制御部35、操作部37、格納部38、通信状態検知部39、動作状態取得部40および表示フレームレート決定部61に、本体制御部36Bが接続されている。また、表示制御部33、通信制御部35、本体制御部36B、通信状態検知部39、動作状態取得部40および表示フレームレート決定部61により、表示装置側プロセッサ41Bが構成されている。
【0060】
ところで、超音波プローブと画像表示装置とが無線通信により接続される従来の超音波システムにおいては、画像表示装置における処理能力の低下、超音波プローブと画像表示装置との間の無線通信状態の悪化等により、単位時間あたりに表示部に送出される超音波画像の数すなわち表示部への超音波画像の送出レートが画像表示装置に備えられる表示部における表示フレームレートよりも小さくなり、且つ、変動することがある。
【0061】
このような場合には、単位時間あたりに表示部に送出されるフレーム数が単位時間あたりに表示部に表示されるフレーム数よりも少なくなり、且つ、単位時間あたりに表示部に送出されるフレーム数が変動するため、表示部に表示されるフレーム間の時間間隔が変動するおそれがある。このような、表示部におけるフレーム間の時間間隔の変動は、表示部に表示された超音波画像を視認して診断を行う医師等のユーザが安定した診断を妨げる要因である。
【0062】
表示装置側プロセッサ41Bの表示フレームレート決定部61は、少なくとも通信状態検知部39により検知された、超音波プローブ2のプローブ側無線通信部18と画像表示装置3Bの表示装置側無線通信部32との間の無線通信状態に基づいて、表示部34における超音波画像の表示フレームレートを決定する。この際に、表示フレームレート決定部61は、表示部34への超音波画像の送出レートが表示部34における表示フレームレートよりも大きくなるように表示部34における表示フレームレートを決定する。
【0063】
例えば、通信状態検知部39がプローブ側無線通信部18から表示装置側無線通信部32への伝送信号の転送レートを検知する場合に、表示フレームレート決定部61は、通信状態検知部39により検知された転送レートに一定の割合を乗じた値を表示フレームレートとして決定する。より具体的な例としては、表示フレームレート決定部61は、通信状態検知部39により検知された転送レートの70%程度のレートを表示フレームレートとして決定することができる。
【0064】
表示制御部33は、本体制御部36Bの制御の下、表示フレームレート決定部61により決定された表示フレームレートにより超音波画像が表示されるように、表示可能な画像データを表示部34に送出する。
【0065】
以上により、実施の形態3に係る超音波システムによれば、少なくとも超音波プローブ2と画像表示装置3Bとの間の無線通信状態に基づいて、表示部34への超音波画像の送出レートが表示部34における表示フレームレートよりも大きくなるように、表示部34における表示フレームレートが決定されるため、十分に余裕を持って表示部34に超音波画像を表示することにより、表示部34におけるフレーム間の時間間隔の変動を防ぐことができる。
【0066】
なお、実施の形態3では、表示フレームレート決定部61が、通信状態検知部39により検知された転送レートのみに基づいて表示部34における表示フレームレートを決定する例を説明しているが、表示フレームレートの決定方法は、これに限定されない。例えば、表示フレームレート決定部61は、超音波プローブ2と画像表示装置3Bとの間の無線通信状態に加えて、図1に示すプローブ側プロセッサ25の画像情報データ生成部19における超音波画像信号の生成レートおよび画像表示装置3Bにおける処理能力をさらに加味して、表示部34における表示フレームレートを決定することができる。
【0067】
この際に、表示フレームレート決定部61は、例えば、超音波プローブ2と画像表示装置3Bとの間の無線通信状態に基づく第1の表示フレームレート候補値、超音波プローブ2における超音波画像信号の生成レートに基づく第2の表示フレームレート候補値、画像表示装置3Bにおける処理能力に基づく第3の表示フレームレート候補値のうちの最低値を、表示部34における表示フレームレートとして決定することができる。
【0068】
例えば、表示フレームレート決定部61は、表示装置側プロセッサ41Bの通信状態検知部39により検知された伝送信号の転送レートに一定の割合を乗じて算出された値を第1の表示フレームレート候補値とし、プローブ側プロセッサ25の画像情報データ生成部19における超音波画像信号の生成レートを第2の表示フレームレート候補値とし、画像表示装置3Bにおいて表示部34に表示可能な画像が生成される画像処理レートを第3の表示フレームレート候補値とすることができる。ここで、第3の表示フレームレート候補値である画像表示装置3Bにおける画像処理レートには、表示装置側無線通信部32における伝送信号の復調に関する処理能力、表示制御部33における表示可能な画像データの生成に関する処理能力等の影響が含まれる。
【0069】
また、画像表示装置3Bが図3に示すような温度センサ51を備えている場合には、表示フレームレート決定部61は、第3の表示フレームレート候補値を取得する際に、例えば、画像表示装置3Bにおける動作時間と温度の関係および画像表示装置3Bにおける温度と画像処理レートの関係を予め保持しておき、画像表示装置3Bを5分程度動作させた場合の画像処理レートを、温度センサ51により計測された画像表示装置3Bの現在の温度に基づいて予測して、第3の表示フレームレート候補値とすることができる。
【0070】
このようにして、第1の表示フレームレート候補値、第2の表示フレームレート候補値、第3の表示フレームレート候補値に基づいて表示部34における表示フレームレートを決定することにより、さらに余裕を持って表示部34に超音波画像を表示して、表示部34におけるフレーム間の時間間隔の変動を防ぐことができる。
【0071】
実施の形態4
実施の形態4に係る超音波システムは、図1に示す実施の形態1の超音波システム1の画像表示装置3の代わりに、図5に示す画像表示装置3Cを備えている。実施の形態4における画像表示装置3Cは、図1に示す実施の形態1における画像表示装置3において、本体制御部36の代わりに本体制御部36Cを備え、安全性評価指標算出部62をさらに追加したものである。
【0072】
図5に示すように、画像表示装置3Cにおいて、表示制御部33、通信制御部35、本体制御部36C、通信状態検知部39、動作状態取得部40および安全性評価指標算出部62に、本体制御部36Cが接続されている。また、表示制御部33、通信制御部35、本体制御部36C、通信状態検知部39、動作状態取得部40および安全性評価指標算出部62により、表示装置側プロセッサ41Cが構成されている。
【0073】
表示装置側プロセッサ41Cの安全性評価指標算出部62は、図1に示す超音波プローブ2の超音波送受信制御部15により制御される超音波の送受信の条件に基づいて安全性評価指標を算出し、算出された安全性評価指標を表示部34に表示する。この際に、まず、超音波プローブ2により、画像表示装置3Cの動作状態に応じた超音波送受信条件に基づいて送受信部14による超音波の送受信が制御される旨の通知が画像表示装置3Cに無線送信され、無線送信された通知が安全性評価指標算出部62により受け取られた後に、安全性評価指標が算出され、算出された安全性評価指標が表示部34に表示される。
【0074】
ここで、超音波送受信制御部15により制御される超音波送受信条件には、送受信部14におけるスキャンレートの他に、振動子アレイ11から送信される超音波の強度すなわち送信部12により送信される駆動信号の電圧の大きさ、超音波の中心周波数、受信信号の増幅率等が含まれる。
【0075】
また、安全性評価指標とは、超音波が生体に与える影響に対する安全性を評価する指標であり、例えば、生体内に対する超音波の放射圧および振動等の機械的な作用の安全性を評価するMI(Mechanical Index:メカニカルインデックス)値および生体内に超音波のエネルギーが吸収されることによる生体の加熱作用に対する安全性を評価するTI(Thermal Index:サーマルインデックス)値等を含む。
【0076】
例えば、安全性評価指標としてMI値が算出される場合には、安全性評価指標算出部62は、生体内における減衰を考慮した超音波の最大負音圧を振動子アレイ11から送信される超音波の中心周波数の平方根で除することにより、MI値を算出することができる。また、安全性評価指標としてTI値が算出される場合には、安全性評価指標算出部62は、生体内における超音波の出力強度を、生体組織の温度を1℃上昇させるために必要な超音波の出力強度で除することにより、TI値を算出することができる。
ユーザは、表示部34に表示された、このような安全性評価指標の値を確認することにより、振動子アレイ11から送信された超音波が被検体内に与える影響について把握することができる。
【0077】
以上により、実施の形態4に係る超音波システムによれば、画像表示装置3Cにおける動作状態に関わらず、表示部34に超音波画像を正常に表示するために、プローブ側プロセッサ25の超音波送受信制御部15により超音波送受信条件が新たに設定された場合であっても、設定された超音波送受信条件に対応する安全性評価指標を表示部34に表示するため、ユーザは、振動子アレイ11から送信された超音波が被検体内に与える影響についてより正確に把握することができる。
【0078】
実施の形態5
図6に、実施の形態5に係る超音波システム1Aの構成を示す。超音波システム1Aは、図1に示す実施の形態1の超音波システム1の超音波プローブ2の代わりに超音波プローブ2Aを備え、画像表示装置3の代わりに画像表示装置3Dを備えたものである。
【0079】
超音波システム1Aの超音波プローブ2Aは、図1に示す超音波プローブ2において、信号処理部16および画像処理部17を有する画像情報データ生成部19の代わりに信号処理部16のみを有する画像情報データ生成部19Aを備え、プローブ制御部21の代わりにプローブ制御部21Aを備えたものである。実施の形態5における超音波プローブ2Aは、画像情報データ生成部19Aおよびプローブ制御部21D以外は、実施の形態1の超音波プローブ2と同様の構成を有している。
【0080】
超音波プローブ2Aにおいて、信号処理部16は、プローブ側無線通信部18に直接接続されている。また、送信部12、受信部13、超音波送受信制御部15、信号処理部16、通信制御部20、プローブ制御部21Aおよび出力フォーマット設定部22により、プローブ側プロセッサ25Aが構成されている。
【0081】
また、画像表示装置3Dは、図1に示す実施の形態1における画像表示装置3において、表示装置側無線通信部32と表示制御部33との間に画像処理部17が接続され、本体制御部36の代わりに本体制御部36Dを備えたものである。画像表示装置3Dは、画像処理部17および本体制御部36D以外は、実施の形態1における画像表示装置3と同様の構成を有している。
【0082】
画像処理部17、表示制御部33、通信制御部35、本体制御部36D、通信状態検知部39および動作状態取得部40により、表示装置側プロセッサ41Dが構成されている。また、画像表示装置3Dの画像処理部17は、実施の形態1における超音波プローブ2に備えられている画像処理部17と同一のものである。
【0083】
画像情報データ生成部19Aの信号処理部16は、受信部13のビームフォーマ28により生成された音線信号に対して、超音波が反射した位置の深度に応じて伝搬距離に起因する減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施して、被検体内の組織に関する断層画像情報である信号を、画像情報データとして生成する。
【0084】
超音波プローブ2Aのプローブ側無線通信部18は、画像情報データ生成部19Aの信号処理部16により生成された信号に基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、生成された伝送信号を、画像表示装置3Dの表示装置側無線通信部32に無線送信する。
画像表示装置3Dの表示装置側無線通信部32は、超音波プローブ2Aから無線送信された伝送信号を復調することにより、画像情報データ生成部19の信号処理部16により生成された信号を取得し、この信号を表示装置側プロセッサ41Dの画像処理部17に送出する。
【0085】
表示装置側プロセッサ41Dの画像処理部17は、表示装置側無線通信部32から送出された信号を、通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号にラスター変換し、このようにして生成された画像信号に対して、明るさ補正、諧調補正、シャープネス補正および色補正等の各種の必要な画像処理を施すことにより超音波画像信号を生成し、生成された超音波画像信号を表示制御部33に送出する。このようにして表示制御部33に送出された超音波画像信号は、表示制御部33により表示可能な画像データに変換されて、表示部34に表示される。
【0086】
表示装置側プロセッサ41Dの動作状態取得部40は、画像表示装置3Dの動作状態を表す情報を取得し、取得された情報を、表示装置側無線通信部32に送出する。
表示装置側無線通信部32に画像表示装置3Dの動作状態を表す情報が送出されると、表示装置側無線通信部32は、この情報に基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、生成された伝送信号をプローブ側無線通信部18に無線送信する。
【0087】
表示装置側無線通信部32からプローブ側無線通信部18に無線送信された伝送信号は、プローブ側無線通信部18により復調されて画像表示装置3Dの動作状態を表す情報となり、プローブ制御部21Aに送出される。
そこで、超音波送受信制御部15は、画像表示装置3Dの動作状態に応じて超音波送受信条件を設定し、設定された超音波送受信条件に基づいて、送受信部14の制御を行う。この際に、例えば、超音波送受信制御部15は、画像表示装置3Dの動作状態に応じて送受信部14におけるスキャンレートを低下させるように、送受信部14を制御する。これにより、表示装置側プロセッサ41Dの画像処理部17における超音波画像信号の生成レートを低下させ、表示装置側プロセッサ41Dにおいて単位時間あたりに処理するデータ量を低減させることができる。
【0088】
また、プローブ側プロセッサ25Aの出力フォーマット設定部22は、画像表示装置3Dの動作状態に応じて信号処理部16により生成される信号の出力フォーマットを設定する。この際に、出力フォーマット設定部22は、例えば、信号処理部16により生成された信号を圧縮する等により、信号のデータ量を低減するように出力フォーマットを設定することができる。これにより、表示装置側プロセッサ41Dにおいて処理が行われるデータ量が低減される。
【0089】
また、例えば、超音波送受信制御部15により、送受信部14におけるスキャンレートを低下させるように送受信部14の制御がなされ、出力フォーマット設定部22により、プローブ側無線通信部18から表示装置側無線通信部32への伝送信号の転送レートを低減するように出力フォーマットが設定された場合には、表示装置側プロセッサ41において単位時間あたりに処理が行われるデータ量が低減される。
【0090】
以上により、実施の形態5の超音波システム1Aのように、画像処理部17が超音波プローブ2Aではなく画像表示装置3Dに備えられている場合であっても、実施の形態1の超音波システム1と同様に、画像表示装置3Dの動作状態に応じて、表示装置側プロセッサ41Dにより単位時間あたりに処理がなされるデータ量が低減されるため、画像表示装置3Dにおける動作状態に関わらず、超音波画像を正常に表示することができる。
【0091】
なお、上述した実施の形態1~4では、画像情報データ生成部19の信号処理部16により減衰の補正および包絡線検波処理が施された後に、画像処理部17によりラスター変換された超音波画像信号が、画像情報データとしてプローブ側無線通信部18から画像表示装置3、画像表示装置3A~3Cに無線送信され、また、実施の形態5では、画像情報データ生成部19Aの信号処理部16により減衰の補正および包絡線検波処理が施された信号が、画像情報データとしてプローブ側無線通信部18から画像表示装置3Dに無線送信されたが、このように、超音波プローブ2から画像表示装置3、3A~3Cに無線送信される画像情報データ、および、超音波プローブ2Aから画像表示装置3Dに無線送信される画像情報データは、検波後の信号であることが好ましい。ただし、画像情報データは、検波後の信号に限定されるものではない。
【0092】
また、上述した実施の形態1~5における画像表示装置3、3A、3B、3C、3Dは、表示部34にタッチセンサを組み合わせて、タッチセンサを操作部37として使用することができる。これにより、実施の形態1の超音波システム1、実施の形態2~4の超音波システム、実施の形態5の超音波システム1Aは、緊急治療等の際に、屋外における診断にも極めて有効なものとなる。
【符号の説明】
【0093】
1,1A 超音波システム、2,2A 超音波プローブ、3,3A,3B,3C,3D 画像表示装置、11 振動子アレイ、12 送信部、13 受信部、14 送受信部、15 超音波送受信制御部、16 信号処理部、17 画像処理部、18 プローブ側無線通信部、19,19A 画像情報データ生成部、20 通信制御部、21,21A プローブ制御部、22 出力フォーマット設定部、24 バッテリ、25,25A プローブ側プロセッサ、26 増幅部、27 AD変換部、28 ビームフォーマ、32 表示装置側無線通信部、33 表示制御部、34 表示部、35 通信制御部、36,36A,36B,36C,36D 本体制御部、37 操作部、38 格納部、39 通信状態検知部、40 動作状態取得部、41,41A,41B,41C,41D 表示装置側プロセッサ、51 温度センサ、52 クロック制御部、61 表示フレームレート決定部、62 安全性評価指標算出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6