(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】ウレタン系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20231204BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231204BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20231204BHJP
C09J 175/08 20060101ALI20231204BHJP
C08G 18/66 20060101ALI20231204BHJP
C08G 18/72 20060101ALI20231204BHJP
C08G 18/81 20060101ALI20231204BHJP
C08L 75/08 20060101ALI20231204BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J11/06
C09J11/04
C09J175/08
C08G18/66
C08G18/72
C08G18/81 025
C08L75/08
C08L71/02
(21)【出願番号】P 2020191760
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-01-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【氏名又は名称】木内 圭
(72)【発明者】
【氏名】阿部 愛美
(72)【発明者】
【氏名】松木 裕一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 和樹
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-042291(JP,A)
【文献】特表2019-504903(JP,A)
【文献】特表2020-531647(JP,A)
【文献】特許第6948485(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/046200(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/079026(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-5/10
C09J 9/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)と、下記式(1)で表される化合物(B)とを含有する、
2液型ウレタン系接着剤組成物。
【化1】
式(1)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、nは6以上の整数を表す。
【請求項2】
前記化合物(B)の含有量が、ウレタン系接着剤組成物全質量に対して、0.01~10質量%である、請求項1に記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項3】
前記ウレタンプレポリマー(A)が、数平均分子量が500~20,000のポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネートとを、前記ポリエーテルポリオールが有する水酸基1モルに対する前記芳香族ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の割合が1.5~2.5モルになるように混合し、反応させることで得られるウレタンポリポリマーである、請求項1又は2に記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項4】
さらに、カーボンブラック又は炭酸カルシウムを含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項5】
さらに、イソシアネートの変性体を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のウレタン系接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用、建築用および構造用のシーリング剤、接着剤等としてウレタン系接着剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、様々な分野で性能や安全性に対する要求が高まる中、使用されるウレタン系接着剤組成物に対しても、硬化後のゴム物性(以下、単に「ゴム物性」とも言う)の向上がさらに求められている。特に、硬化後の強度(破断強度)及び伸び率(破断伸び)の向上が求められている。また、高温環境下に晒した後にも優れたゴム物性を示すことが求められている。
【0005】
このようななか、本発明者らが特許文献1を参考にウレタン系接着剤組成物を調製し、そのゴム物性を調べたところ、今後さらに高まるであろう要求を考慮すると、さらなる改良が必要であることが明らかになった。
【0006】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、優れたゴム物性を示すウレタン系接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定のカルダノールアルキレンオキシド付加物を配合することで上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0008】
(1) イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)と、後述する式(1)で表される化合物(B)とを含有する、ウレタン系接着剤組成物。
(2) 上記化合物(B)の含有量が、ウレタン系接着剤組成物全質量に対して、0.01~10質量%である、上記(1)に記載のウレタン系接着剤組成物。
(3) 上記ウレタンプレポリマー(A)が、数平均分子量が500~20,000のポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネートとを、上記ポリエーテルポリオールが有する水酸基1モルに対する上記芳香族ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の割合が1.5~2.5モルになるように混合し、反応させることで得られるウレタンポリポリマーである、上記(1)又は(2)に記載のウレタン系接着剤組成物。
(4) さらに、カーボンブラック又は炭酸カルシウムを含有する、上記(1)~(3)のいずれかに記載のウレタン系接着剤組成物。
(5) さらに、イソシアネートの変性体を含有する、上記(1)~(4)のいずれかに記載のウレタン系接着剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
以下に示すように、本発明によれば、優れたゴム物性を示すウレタン系接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のウレタン系接着剤組成物について説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明のウレタン系接着剤組成物が含有する各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
また、接着性に優れること、硬化後のゴム物性(強度、伸び率、硬度)に優れることを「本発明の効果等が優れる」とも言う。
また、高温環境下に晒した後(例えば、90℃の環境下に2週間静置後)を「耐熱後」とも言う。
【0011】
本発明のウレタン系接着剤組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、
イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)と、後述する式(1)で表される化合物(B)とを含有する、ウレタン系接着剤組成物である。
【0012】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、上述した本発明の課題が解決されるものと考えられる。その理由は明らかではないが、伸び率が大きい理由については、化合物(B)が有するOH基がウレタンプレポリマーのイソシアネート基と反応することで架橋密度が若干緩くなったことが考えらえる。
【0013】
本発明の組成物は、硬化剤を含有しない1液型ウレタン系接着剤組成物でも、ウレタンプレポリマー(A)を含有する主剤と硬化剤とからなる2液型ウレタン系接着剤組成物でもどちらでもよいが、本発明の効果等がより優れる理由から、2液型ウレタン系接着剤組成物であることが好ましい。本発明の組成物が2液型ウレタン系接着剤組成物である場合、主剤と硬化剤のどちらに化合物(B)が含まれていてもよいが、本発明の効果等がより優れる理由から、主剤に化合物(B)が含まれているのが好ましい。
【0014】
[ウレタンプレポリマー(A)]
ウレタンプレポリマー(A)は、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーである。
ウレタンプレポリマー(A)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を末端に含有するウレタンプレポリマーであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ウレタンプレポリマー(A)としては、従来公知のものを用いることができる。
ウレタンプレポリマー(A)は、本発明の効果等がより優れる理由から、ポリイソシアネートと1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(以下、「活性水素化合物」とも言う。)とを、活性水素含有基に対してイソシアネート基が過剰となるように反応させることにより得られるウレタンプレポリマーであることが好ましい。
本発明において、活性水素含有基は活性水素を含有する基を意味する。活性水素含有基としては例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
【0015】
〔ポリイソシアネート〕
ウレタンプレポリマー(A)の製造の際に使用されるポリイソシアネートは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI。例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI。例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族及び/又は脂環式のポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート、アロファネート変性体が挙げられる。
【0016】
ポリイソシアネートは、本発明の効果等がより優れる理由から、芳香族ポリイソシアネートであることが好ましく、MDIであることがより好ましい。
ポリイソシアネートは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
〔活性水素化合物〕
ウレタンプレポリマー(A)の製造の際に使用される1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)は特に限定されない。活性水素含有基としては、例えば、水酸(OH)基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
【0018】
上記活性水素化合物としては、例えば、1分子中に2個以上の水酸(OH)基を有するポリオール、1分子中に2個以上のアミノ基および/またはイミノ基を有するポリアミン化合物等が好適に挙げられる。中でも、ポリオールであることが好ましい。
【0019】
上記ポリオールは、OH基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。ポリオールの具体例としては、ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;(メタ)アクリルポリオール;ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール;低分子多価アルコール類;これらの混合ポリオールが挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、ポリエーテルポリオールが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0020】
ポリエーテルポリオールは、主鎖としてポリエーテルを有し、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。ポリエーテルとは、エーテル結合を2以上有する基であり、その具体例としては、例えば、構造単位-Ra-O-Rb-を合計して2個以上有する基が挙げられる。ここで、上記構造単位中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。炭化水素基は特に制限されない。例えば、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレンジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体のポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、ポリイソアネートとの相溶性に優れるという観点から、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mw)は、本発明の効果等がより優れる理由から、500~20,000であることが好ましい。
なお、本明細書において、ポリオールの数平均分子量は、水酸基価と平均官能基数とから求めた値であり、具体的には、(56,100/水酸基価)×平均官能基数として求められる。
ここで、水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に記載の水酸基価であり、試料1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのmg数である。また、平均官能基数は、1分子のポリオールが有する水酸基の平均の数である。
活性水素化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
〔好適な態様〕
ウレタンプレポリマー(A)は、本発明の効果等がより優れる理由から、
ポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネートとを反応させることで得られるウレタンプレポリマーであることが好ましい。
【0022】
ウレタンプレポリマー(A)が、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させることで得られるウレタンプレポリマーである場合、ポリオールの水酸基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、本発明の効果等がより優れる理由から、1.5~2.5であることが好ましい。
【0023】
ウレタンプレポリマー(A)は、本発明の効果等がより優れる理由から、
数平均分子量が500~20,000のポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネートとを、ポリエーテルポリオールが有する水酸基1モルに対する芳香族ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の割合が1.5~2.5モル(すなわち、NCO/OH=1.5~2.5)になるように混合し、反応させることで得られるウレタンポリポリマーであることが好ましい。
【0024】
〔含有量〕
本発明の組成物において、ウレタンプレポリマー(A)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、組成物全質量に対して、10~95質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましい。
【0025】
[化合物(B)]
化合物(B)は、下記式(1)で表される化合物である。
【0026】
【0027】
式(1)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、nは6以上の整数を表す。
【0028】
Rは、本発明の効果等がより優れる理由から、水素原子であることが好ましい。
Rがアルキル基である場合、Rは、本発明の効果等がより優れる理由から、炭素数が1~6のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1~3のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0029】
nは、本発明の効果等がより優れる理由から、6~20の整数であることが好ましく、8~18の整数であることがより好ましく、10~16の整数であることがさらに好ましい。
【0030】
〔合成方法〕
化合物(B)の合成方法は特に制限されないが、例えば、カルダノールにエチレンオキシドを反応させる方法等が挙げられる。
【0031】
なお、化合物(B)の製品としては、例えば、Cardolite社製のGX-5170、GX-5167、GX-5166等がある。
【0032】
〔含有量〕
本発明の組成物において、化合物(B)の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、組成物全質量に対して、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~1質量%であることがより好ましい。
また、上述したウレタンプレポリマー(A)の含有量に対する化合物(B)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、0.01~30質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましく、0.2~1質量%であることがさらに好ましい。
また、後述するイソシアヌレート変性体の含有量に対する化合物(B)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、1~1000質量%であることが好ましく、2~100質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることがさらに好ましく、10~20質量%であることが特に好ましい。
【0033】
[硬化剤]
上述のとおり、本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、ウレタンプレポリマー(A)を含有する主剤と硬化剤とからなる2液型ウレタン系接着剤組成物であることが好ましい。
【0034】
上記硬化剤は、1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)を含有する。活性水素化合物の具体例及び好適な態様は上述した活性水素化合物と同じである。
【0035】
〔含有量〕
本発明の組成物において、硬化剤中の活性水素化合物の活性水素含有基の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基の含有量に対して、1~100モル%であることが好ましく、5~50モル%であることがより好ましい。
【0036】
〔混合比〕
本発明の組成物が2液型ウレタン系接着剤組成物である場合、主剤に対する硬化剤の質量比(硬化剤/主剤)は、本発明の効果等がより優れる理由から、0.01~1であることが好ましく、0.05~0.2であることがより好ましい。
また、ウレタンプレポリマー(A)に対する硬化剤中の活性水素化合物の質量比は、本発明の効果等がより優れる理由から、0.01~1であることが好ましく、0.05~0.2であることがより好ましい。
【0037】
[その他の成分]
本発明の組成物は上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。
2液型の場合、その他の成分を主剤又は硬化剤の何れに添加するかは、適宜選択することができる。
そのようなその他の成分としては、例えば、充填剤(例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム)、イソシアネートの変性体(例えば、イソシアヌレート体、アロファネート体、ビュレット体)、触媒(硬化触媒)、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料(染料)、接着付与剤、ターピネオールのようなテルペン化合物、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を更に含有することができる。
なお、上記充填剤は、例えば、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物及び脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の処理剤で表面処理されていてもよい。
また、本発明の組成物が2液型の場合、上記任意成分を主剤又は硬化剤の何れに添加するかは、適宜選択することができる。
本発明の組成物は本発明の効果等がより優れる理由から、テルペン化合物を含有しないのが好ましい。
【0038】
〔イソシアネートの変性体〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、イソシアネートの変性体を含有するのが好ましい。
イソシアネートの変性体は、本発明の効果等がより優れる理由から、イソシアネートのイソシアヌレート体(ヌレート体)、イソシアネートのアロファネート体、及び、イソシアネートのビュレット体からなる群より選択される少なくとも1種を含有するのが好ましく、イソシアネートのイソシアヌレート体(ヌレート体)を含有するのがより好ましい。
【0039】
イソシアネートの変性体を構成するイソシアネートの具体例は、上述したポリイソシアネートと同じである。
イソシアネートの変性体を構成するイソシアネートは、本発明の効果等がより優れる理由から、脂肪族イソシアネートであることが好ましく、HDIであることがより好ましい。
【0040】
<含有量>
本発明の組成物において、イソシアネートの変性体の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、組成物全体の質量に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
本発明の組成物において、イソシアネートの変性体の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して、1~20質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。
【0041】
〔シランカップリング剤〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。
【0042】
<含有量>
本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。
【0043】
〔カーボンブラック〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、カーボンブラックを含有するのが好ましい。
カーボンブラックは特に制限されない。例えば、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)、HAF(High Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace)、FT(Fine Thermal)、MT(Medium Thermal)等が挙げられる。
具体的には、上記SAFとしてはシースト9(東海カーボン社製)、ISAFとしてはショウワブラックN220(昭和キャボット社製)、HAFとしてはシースト3(東海カーボン社製)、ニテロン#200(新日化カーボン社製)、FEFとしてはHTC#100(中部カーボン社製)等が例示される。また、GPFとしては旭#55(旭カーボン社製)、シースト5(東海カーボン社製)、SRFとしては旭#50(旭カーボン社製)、三菱#5(三菱化学社製)、FTとしては旭サーマル(旭カーボン社製)、HTC#20(中部カーボン社製)、MTとしては旭#15(旭カーボン社製)等が例示される。
【0044】
<含有量>
本発明の組成物において、カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して、30~70質量%であることが好ましく、40~60質量%であることがより好ましい。
【0045】
〔炭酸カルシウム〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、炭酸カルシウムを含有するのが好ましい。
炭酸カルシウムは特に制限されない。例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0046】
<含有量>
本発明の組成物において、炭酸カルシウムの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して、20~150質量%であることが好ましく、20~120質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることがさらに好ましい。
【0047】
〔可塑剤〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、可塑剤を含有するのが好ましい。
可塑剤の具体例としては、ジイソノニルフタレート(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0048】
<含有量>
本発明の組成物において、可塑剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して、1~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましい。
【0049】
〔触媒(硬化触媒)〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、硬化触媒を含有するのが好ましい。
硬化触媒は、特に限定されないが、具体例としては、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸などカルボン酸類;ポリリン酸、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェートなどのリン酸類;オクチル酸ビスマスなどのビスマス触媒;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレートなどのスズ触媒;1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(例えば、DMP-30)、ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含む化合物などの第三級アミン触媒等が挙げられる。
【0050】
硬化触媒は、接着性により優れるという点で、ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むことが好ましい。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造は、ジモルフォリノジエチルエーテルを基本骨格とする構造である。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造において、モルフォリン環が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。置換基は特に制限されない。例えば、アルキル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
硬化触媒はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
<含有量>
本発明の組成物において、硬化触媒の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して、0.05~2.0質量%であることが好ましく、0.1~0.5質量%であることがより好ましい。
【0052】
[製造方法]
本発明の組成物が1液型である場合、その製造方法は、特に限定されず、例えば、ウレタンプレポリマー(A)と、化合物(B)と、必要に応じてその他の成分とを混合する方法によって製造することができる。
【0053】
本発明の組成物が2液型の場合、その製造方法は、特に限定されず、例えば、上記主剤、上記硬化剤をそれぞれ別の容器に入れて、各容器内を窒素ガス雰囲気下で混合する方法により製造することができる。
また、2液型の使用方法としては上記主剤と上記硬化剤とを混合して使用すればよい。
【0054】
[基材]
本発明の組成物を適用することができる基材としては、例えば、プラスチック、ガラス、ゴム、金属等が挙げられる。
基材は、オレフィン樹脂を含む基材が好適に挙げられる。
オレフィン樹脂を含む基材は、オレフィン樹脂と、
例えば、炭素繊維、ガラスフィラーのようなガラス、タルク、炭酸カルシウム又はアルミナのような、充填剤との混合物から得られる基材であってもよい。
【0055】
プラスチックは、例えば、単独重合体、共重合体、水素添加物であってもよい。ゴムも同様である。
【0056】
具体的なプラスチックとしては例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンプロピレン共重合体、COP(シクロオレフィンポリマー)、COC(シクロオレフィンコポリマー)のようなオレフィン樹脂;
ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂;
ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂);ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;アセテート樹脂;ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂);ポリアミド樹脂が挙げられる。
上記COCは、例えば、テトラシクロドデセンとエチレン等のオレフィンとの共重合体のようなシクロオレフィンコポリマーを意味する。
また、上記COPは、例えば、ノルボルネン類を開環重合し、水素添加して得られる重合体のようなシクロオレフィンポリマーを意味する。
プラスチックは、難接着性樹脂であってもよい。
【0057】
基材は表面処理がなされていてもよい。表面処理としては、例えば、フレーム処理、コロナ処理、イトロ処理が挙げられる。上記各表面処理の方法は特に制限されない。例えば従来公知の方法が挙げられる。
【0058】
本発明の組成物を基材に適用する方法は特に制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。
【0059】
本発明の組成物を用いる場合、基材にプライマーを用いずとも、本発明の効果を優れたレベルで発現させることができる。
【0060】
本発明の組成物は、湿気等によって硬化することができる。例えば、5~90℃、相対湿度(RH)5~95%の条件下で本発明の組成物を硬化させることができる。
【0061】
[用途]
本発明の組成物は、例えば、自動車用、建築用および構造用のシーリング剤、接着剤として有用である。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
[ウレタン系接着剤組成物の調製]
下記表1に示される各成分を同表に示される割合(質量部)で混合することで各2液型ウレタン系接着剤組成物(主剤、硬化剤)を調製した。
【0064】
[評価]
得られたウレタン系接着剤組成物(主剤、硬化剤)を表1の混合比の欄に記載の割合で混合して23℃、50%RHの環境下で3日間静置し硬化させた。そして、得られた硬化物について以下のとおり、強度、伸び率及び硬度を測定した(初期)。また、得られた硬化物を90℃の環境下に2週間静置してから同様に強度、伸び率及び硬度を測定した(耐熱後)。結果を下記表1に示す。
実用上、初期の強度は6.0MPa以上であることが好ましく、初期の伸び率は300%以上であることが好ましく、90℃の環境下に2週間静置後の強度は5.5MPa以上であることが好ましく、90℃の環境下に2週間静置後の伸び率は200%以上であることが好ましい。
【0065】
〔強度、伸び率〕
JIS K6850:1999に準じて引張試験(引張り速度50mm/分、20℃、50%RHの環境下)を行い、強度(破断強度)[MPa]、及び、伸び率(破断伸び)(%)を測定した。
【0066】
〔硬度〕
JIS K6253に規定されるデュロメータ硬さ試験に準拠して、温度20℃、55%RHの環境下でタイプAのデュロメータを用いて硬度を測定した。
【0067】
【0068】
上記表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
【0069】
<主剤>
・ウレタンプレポリマー:ポリオキシプロピレンジオール(商品名サンニックスPP2000、三洋化成工業社製、水酸基価56、数平均分子量2,000)70質量部とポリオキシプロピレントリオール(商品名サンニックスGP3000、三洋化成工業社製、水酸基価56、数平均分子量3,000)とMDI(商品名スミジュール44S、住化バイエルウレタン社製)とをNCO/OHが2.0となるように混合し、混合物を80℃の条件下で5時間反応させることで得られたイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー
【0070】
・GX-5170:上述した式(1)で表される化合物(式(1)中、Rは水素原子、nは11)(上述した化合物(B)に該当する)(Cardolite社製)
・GX-5167:上述した式(1)で表される化合物(式(1)中、Rは水素原子、nは8)(上述した化合物(B)に該当する)(Cardolite社製)
・GX-5166:上述した式(1)で表される化合物(式(1)中、Rは水素原子、nは6)(上述した化合物(B)に該当する)(Cardolite社製)
【0071】
・イソシアヌレート:D-170N(HDIヌレート、三井化学社製)
【0072】
・LITE 2020:上述した式(1)で表される化合物(ただし、式(1)中、Rは水素原子、nは0)(式(1)中のnが0であるため上述した化合物(B)に該当しない)(Cardolite社製)
【0073】
・カーボンブラック:親日化カーボン社製#200MP(HAF級カーボンブラック)
・炭酸カルシウム:丸尾カルシウム社製スーパーS(重質炭酸カルシウム)
・可塑剤:ジェイプラス社製DINP(ジイソノニルフタレート)
・触媒:サンアプロ社製UCAT-660M(DMDEE(ジモルフォリノジエチルエーテル))
【0074】
<硬化剤>
・ポリオール1:旭硝子社製EXCENOL450ED(ポリオキシプロピレンテトラオール(EO(エチレンオキシド)末端)、水酸基価 450mgKOH/g、数平均分子量500)
・ポリオール2:旭硝子社製PREMINOL7001K(ポリオキシプロピレントリオール(EO(エチレンオキシド)末端)、水酸基価 28mgKOH/g、数平均分子量6,500)
・炭酸カルシウム:丸尾カルシウム社製カルファイン200(脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウム)
・触媒:日東化成社製U-810(ジオクチル-スズ-ジラウレート)
【0075】
表1から分かるように、化合物(B)を含有する実施例1~7のウレタン系接着剤組成物は、初期及び耐熱後いずれについても優れたゴム物性(強度、伸び率)を示した。
実施例2~4の対比(化合物(B)の種類のみが異なる態様同士の対比)から、式(1)中のnが8以上である実施例2~3は、耐熱後のゴム物性(強度、伸び率、硬度)がより優れていた。なかでも、式(1)中のnが10以上である実施例2は、耐熱後のゴム物性(強度、伸び率、硬度)がさらに優れていた。
また、実施例2と実施例5~7との対比(化合物(B)の含有量のみが異なる態様同士の対比)から、化合物(B)の含有量がウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して0.01~20質量%である実施例2及び実施例5~6は、初期及び耐熱後いずれについてもゴム物性(強度、硬度)がより優れていた。なかでも、化合物(B)の含有量がウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して0.1~2.0質量%である実施例2及び実施例5は、初期及び耐熱後いずれについてもゴム物性(強度、硬度)がさらに優れていた。そのなかでも、化合物(B)の含有量がウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して0.5~1.0質量%である実施例2は、初期及び耐熱後いずれについてもゴム物性(強度、硬度)がさらに優れていた。
【0076】
一方、化合物(B)を含有しない比較例1~3のウレタン系接着剤組成物は、初期及び耐熱後いずれについてもゴム物性(強度、伸び率)のいずれかが不十分であった。