(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】硬化促進剤組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/32 20060101AFI20231204BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
C08G18/32 037
C08G18/32 053
C08G18/10
(21)【出願番号】P 2018160500
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-08-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【氏名又は名称】木内 圭
(72)【発明者】
【氏名】塩田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】福島 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】松田 俊太
(72)【発明者】
【氏名】三浦 荘栄
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-113217(JP,A)
【文献】特開2017-200970(JP,A)
【文献】特開2008-285580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5~5質量%のイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと潜在性硬化剤とを含有する、1液型のウレタン樹脂組成物に対して使用され、
ジアルキルトルエンジアミン
とジカルボン酸化合物とを含有し、
前記ジアルキルトルエンジアミンが有するアミノ基に対する、前記
ウレタンプレポリマーが有する
前記イソシアネート基のモル当量比(NCO/NH
2)が、100/10~100/70であり、
前記ジカルボン酸化合物の量が、前記ウレタン樹脂組成物に対して、0.05質量%以上、1質量%未満であり、
前記ジカルボン酸化合物が、HOOC-R-COOHで表され、前記Rが炭化水素基であり、前記炭化水素基の炭素数が10~24である、硬化促進剤組成物。
【請求項2】
前記モル当量比(NCO/NH
2)が、2.0を超え10以下である、請求項
1に記載の硬化促進剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化促進剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イソシアネート化合物(例えばウレタンプレポリマー)を含有するウレタン樹脂組成物は、例えば、建築分野において防水材等として用いられている。
一般的に、ウレタン樹脂組成物は、例えば、1液型のウレタン樹脂組成物;イソシアネート化合物(例えばウレタンプレポリマー)を主剤と硬化剤とを有する2液型のウレタン樹脂組成物に大きく分類される。
【0003】
ウレタンプレポリマーと硬化剤とを含有するウレタン防水材組成物として、例えば、特許文献1が提案されている。特許文献1には、硬化剤として、芳香族ジアミン等が記載されている。特許文献1には、ウレタン系塗膜防水材組成物が、1成分形ウレタン系塗膜防水材組成物または2成分形ウレタン系塗膜防水材組成物として使用することができると記載されている。
【0004】
また、2液型のウレタン樹脂組成物として、例えば、特許文献2が提案されている。特許文献2には、特定のイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを主成分とする主剤と、トルエンジアミン構造を有するジアミン化合物等を主成分とする硬化剤とからなること等が規定された二液常温硬化型防水材組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-249226号公報
【文献】特開2002-20727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、防水材等に使用されるウレタン樹脂組成物には、優れた硬化性が要求される。
上記硬化性について、1液型のウレタン樹脂組成物の場合、硬化速度が遅く次の作業に取り掛かるまでに時間がかかる、又は、湿気などの水分によって表面から硬化するため深部における硬化性が低いことがある。
また、2液型のウレタン樹脂組成物の場合、主剤と硬化剤とを混合して使用されるため、上記混合が十分になされないと、部分的な硬化不良が起こることがある。
【0007】
このようななか、本発明者らは特許文献1、2を参考にして、芳香族ジアミンを含有する硬化促進剤組成物を調製し、これをウレタン樹脂組成物に対して使用して評価したところ、このような硬化促進剤組成物は、硬化速度が遅い場合、又は、硬化速度が速い一方で可使時間が確保できない場合があることが明らかとなった。
そこで、本発明は、ウレタン樹脂組成物に対して使用した際、ウレタン樹脂組成物の硬化速度を速め、可使時間を確保できる硬化促進剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ジアルキルトルエンジアミンを特定の量でウレタン樹脂組成物に対して使用することによって所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0009】
[1] イソシアネート化合物を含有するウレタン樹脂組成物に対して使用され、
ジアルキルトルエンジアミンを含有し、
上記ジアルキルトルエンジアミンが有するアミノ基に対する、上記イソシアネート化合物が有するイソシアネート基のモル当量比(NCO/NH2)が、100/10~100/70である、硬化促進剤組成物。
[2] 更に、ジカルボン酸化合物を含有する、[1]に記載の硬化促進剤組成物。
[3] 上記ジカルボン酸化合物の量が、上記ウレタン樹脂組成物に対して、0.05質量%以上、1質量%未満である、[2]に記載の硬化促進剤組成物。
[4] 上記ジカルボン酸化合物が、HOOC-R-COOHで表され、上記Rが炭化水素基であり、上記炭化水素基の炭素数が10~24である、[1]~[3]のいずれかに記載の硬化促進剤組成物。
[5] 更に、潜在性硬化剤を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の硬化促進剤組成物。
[6] 上記ウレタン樹脂組成物が、湿気硬化型である、[1]~[5]のいずれかに記載の硬化促進剤組成物。
[7] 上記ウレタン樹脂組成物が、1液型である、[1]~[6]のいずれかに記載の硬化促進剤組成物。
[8] 上記ウレタン樹脂組成物が、1液型であり、更に、潜在性硬化剤を含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の硬化促進剤組成物。
[9] 上記モル当量比(NCO/NH2)が、2.0を超え10以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の硬化促進剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化促進剤組成物は、ウレタン樹脂組成物に対して使用した際、ウレタン樹脂組成物の硬化速度を速め、可使時間を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、本発明の硬化促進剤組成物をウレタン樹脂組成物に対して使用した際、ウレタン樹脂組成物の硬化速度をより速めることができる、及び/又は、ウレタン樹脂組成物の可使時間をより長くできることを、「本発明の効果により優れる」ということがある。
【0012】
[硬化促進剤組成物]
本発明の硬化促進剤組成物(本発明の組成物)は、
イソシアネート化合物を含有するウレタン樹脂組成物に対して使用され、
ジアルキルトルエンジアミンを含有し、
上記ジアルキルトルエンジアミンが有するアミノ基に対する、上記イソシアネート化合物が有するイソシアネート基のモル当量比(NCO/NH2)が、100/10~100/70である、硬化促進剤組成物である。
【0013】
本発明の硬化促進剤組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、本発明者らは、ウレタン樹脂組成物に対して使用する硬化促進剤組成物に含有される芳香族ジアミンについて、トルエンジアミン構造を有するジアミン化合物を検討したところ、ジエチルトルエンジアミンのようなジアルキルトルエンジアミンが、メチルチオトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン等よりも、ウレタン樹脂組成物の硬化速度を速めることを見出した。
また、ジアルキルトルエンジアミンによる硬化速度は非常に速いにもかかわらず、ジアルキルトルエンジアミンの量を調整することによって、ウレタン樹脂組成物の可使時間を確保できることを見出した。
上記のように、本発明の硬化促進剤組成物によれば、ジアルキルトルエンジアミンをウレタン樹脂組成物に対して特定の量で使用することによって、ウレタン樹脂組成物の硬化速度を速め、ウレタン樹脂組成物の可使時間を確保できる。
このように、本発明の硬化促進剤組成物はウレタン樹脂組成物の硬化速度と可使時間とを非常に高いレベルでバランスできると言える。
【0014】
本発明の硬化促進剤組成物について以下に説明する。
本発明の硬化促進剤組成物は、イソシアネート化合物を含有するウレタン樹脂組成物に対して使用される。上記ウレタン樹脂組成物については後述する。
【0015】
<ジアルキルトルエンジアミン>
本発明の硬化促進剤組成物は、ジアルキルトルエンジアミンを含有する。
本発明の硬化促進剤組成物はジアルキルトルエンジアミンを含有することによって、ウレタン樹脂組成物に対して使用した際、ウレタン樹脂組成物の硬化速度を速め、可使時間を確保できる。
上記ジアルキルトルエンジアミンは、2つのアルキル基及び2つのアミノ基(-NH2)がそれぞれトルエンを構成するベンゼン環に直接結合する化合物である。
【0016】
上記ジアルキルトルエンジアミンが有する上記アルキル基は特に制限されない。
上記アルキル基は、直鎖状、分岐状若しくは環状又はこれらの組み合わせのいずれであってもよい。
上記アルキル基の炭素数は、本発明の効果により優れ、基材等との密着性に優れるという観点から、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、2が更に好ましい。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
上記アルキル基は、本発明の効果により優れ、基材等との密着性に優れるという観点から、エチル基が好ましい。
【0017】
上記ジアルキルトルエンジアミンとしては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
式(1)中、R
1はそれぞれ独立にアルキル基を表す。R
1としてのアルキル基は上記と同様である。
【0018】
上記ジアルキルトルエンジアミンは、本発明の効果により優れ、基材等との密着性に優れるという観点から、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)が好ましい。
ジエチルトルエンジアミンとしては、例えば、2,3-ジエチルトルエンジアミン、2,6-ジエチルトルエンジアミン、3,6-ジエチルトルエンジアミン、下記式(2)で表される化合物(3,5-ジエチル-2,4-トルエンジアミン又は3,5-ジエチル-2,6-トルエンジアミン)が挙げられる。
【0019】
【0020】
上記ジエチルトルエンジアミンは、本発明の効果により優れ、基材等との密着性に優れるという観点から、上記式(2)で表される化合物が好ましく、3,5-ジエチル-2,4-トルエンジアミン及び3,5-ジエチル-2,6-トルエンジアミンの混合物がより好ましい。
【0021】
<モル当量比(NCO/NH2)>
本発明において、上記ジアルキルトルエンジアミンが有するアミノ基に対する、(後述する)ウレタン樹脂組成物に含有されるイソシアネート化合物が有するイソシアネート基のモル当量比(NCO/NH2)は、100/10~100/70である。
本発明の硬化促進剤組成物は、上記モル当量比が所定の範囲であることによって、ウレタン樹脂組成物の硬化速度が速く、ウレタン樹脂組成物の可使時間を確保できる。
【0022】
上記モル当量比(NCO/NH2)は、本発明の効果により優れ、基材等との密着性に優れるという観点から、2.0を超え10以下であることが好ましく、2.2~5.0がより好ましく、3.0を超え4.0以下であることが更に好ましい。
【0023】
(ジカルボン酸化合物)
本発明の硬化促進剤組成物は、ウレタン樹脂組成物を硬化させる際の消泡性に優れ、又は、本発明の効果により優れ若しくは基材等との密着性に優れるという観点から、更に、ジカルボン酸化合物を含有することが好ましい。
【0024】
ジカルボン酸化合物は、カルボキシ基(-COOH)を2個有する化合物である。
上記カルボキシ基は炭化水素基に結合することができる。
上記炭化水素基は特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状若しくは環状)、芳香族炭化水素基、又は、これらの組み合わせが挙げられる。
上記炭化水素基は、消泡性に優れ、又は、本発明の効果により優れ若しくは基材等との密着性に優れるという観点から、脂肪族炭化水素基が好ましく、分岐状の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0025】
上記炭化水素基の炭素数は、消泡性に優れ、又は、本発明の効果により優れ若しくは基材等との密着性に優れるという観点から、3~24が好ましく、10~23がより好ましく、18~22が更に好ましい。なお、本明細書において、ジカルボン酸化合物を構成する上記炭化水素基の炭素数は、上記カルボキシ基を構成する炭素数を含まない。
【0026】
上記ジカルボン酸化合物において、カルボキシ基は、消泡性に優れ、又は、本発明の効果により優れ若しくは基材等との密着性に優れるという観点から、上記炭化水素基(又はジカルボン酸化合物)の末端に結合することが好ましい。
【0027】
上記ジカルボン酸化合物としては、例えば、HOOC-R-COOHで表される化合物が挙げられる。上記式中、Rは炭化水素基を表す。Rとしての炭化水素基は上記と同様である。
【0028】
上記ジカルボン酸化合物としては、具体的には例えば、ドデカン二酸、エイコサン二酸、エイコサジエン二酸のような直鎖二塩基酸(直鎖状のジカルボン酸化合物);
イソエイコサン二酸、イソドコサン二酸、イソドコサジエン二酸、ブチルオクタン二酸のような分岐二塩基酸(分岐状のジカルボン酸化合物);
上記二塩基酸の誘導体等が挙げられる。
【0029】
なかでも、上記ジカルボン酸化合物は、消泡性に優れ、又は、本発明の効果により優れ若しくは基材等との密着性に優れるという観点から、分岐二塩基酸(分岐状のジカルボン酸化合物)が好ましく、イソエイコサン二酸、イソドコサン二酸(HOOC-C20H40-COOH。-C20H40-は分岐している。)、イソドコサジエン二酸、ブチルオクタン二酸がより好ましく、イソドコサン二酸が更に好ましい。
【0030】
・ジカルボン酸化合物の量
上記ジカルボン酸化合物の量は、消泡性に優れ、又は、本発明の効果により優れ若しくは基材等との密着性に優れるという観点から、後述するウレタン樹脂組成物(全量)に対して、0.05質量%以上、1質量%未満であることが好ましく、0.07~0.5質量%がより好ましい。
【0031】
本発明の硬化促進剤組成物は、更に、後述する潜在性硬化剤を含有することも可能である。本発明の硬化促進剤組成物が更に潜在性硬化剤を含有する場合、本発明の効果により優れ、及び/又は、基材等との密着性、消泡性、耐膨れ性に優れる。
【0032】
・その他の成分
本発明の硬化促進剤組成物は、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、更に、例えば、上記所定のジアルキルトルエンジアミン以外のジアミン、補強剤、硬化触媒、可塑剤、溶剤、酸化防止剤、老化防止剤、顔料を含有することができる。
また、本発明の硬化促進剤組成物は、更に、保護基でキャップされたイソシアネート基を有する化合物(キャップされたイソシアネート化合物)を含有してもよい。上記保護基は特に制限されない。上記キャップされたイソシアネート化合物を構成するイソシアネート化合物としては、例えば、後述するウレタン樹脂組成物に含有されるイソシアネート化合物と同様のものが挙げられる。
上記各種成分の含有量は適宜選択できる。
【0033】
補強剤としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、タルク、クレー、生石灰、カオリン、ゼオライト、けいそう土、微粉末シリカ、疎水性シリカ、カーボンブラック等が挙げられる。
【0034】
硬化触媒としては、例えば、有機金属系触媒が挙げられる。
有機金属系触媒としては、具体的には、例えば、オクテン酸鉛、オクチル酸鉛のような鉛系触媒;オクチル酸亜鉛のような有機亜鉛化合物;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズラウレートのような有機スズ化合物;オクチル酸カルシウム、ネオデカン酸カルシウムのような有機カルシウム化合物;有機バリウム化合物;有機ビスマス化合物等が挙げられる。
【0035】
可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ジブチルベンジルフタレート(BBP)、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)、トリオクチルフォスフェート(TOP)、トリス(クロロエチル)フォスフェート(TCEP)、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート(TDCPP)、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
【0036】
溶剤としては、例えば、ヘキサン、トルエンのような炭化水素化合物;テトラクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素化合物;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル;酢酸エチルのようなエステル;ミネラルスピリット等が挙げられる。
【0037】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシトルエンアニソール(BHA)、ジフェニルアミン、フェニレンジアミン、亜リン酸トリフェニル等を挙げることができる。
【0038】
顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化亜鉛、群青、ベンガラのような金属酸化物;リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウムの硫化物、これらの塩酸塩またはこれらの硫酸塩;アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
【0039】
本発明の硬化促進剤組成物は、活性水素と反応しうるイソシアネート化合物を実質的に含有しないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記「活性水素と反応しうるイソシアネート化合物」は、活性水素と反応しうるイソシアネート基を有する化合物(具体的には、保護基でキャップされていないイソシアネート基を有する化合物)を指す。上記「活性水素と反応しうるイソシアネート化合物」は、後述するウレタン樹脂組成物に含有されるイソシアネート化合物と同じである。
本発明において、「本発明の硬化促進剤組成物は、活性水素と反応しうるイソシアネート化合物を実質的に含有しない」は、上記イソシアネート化合物の含有量が、本発明の硬化促進剤組成物全量に対して、0~0.3質量%であることを指す。
【0040】
・本発明の硬化促進剤組成物の製造方法
本発明の硬化促進剤組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、上記ジアルキルトルエンジアミンと、必要に応じて使用できる、上記ジカルボン酸化合物、上記潜在性硬化剤等とを、撹拌機等で混合することによって本発明の硬化促進剤組成物を製造することができる。
【0041】
<用途>
本発明の硬化促進剤組成物は、イソシアネート化合物を含有するウレタン樹脂組成物に対して使用される。
本発明の硬化促進剤組成物は、例えば、ウレタン樹脂組成物(例えば1液型のウレタン樹脂組成物)に対する添加剤、又は、2液型のウレタン樹脂組成物の硬化剤として使用できる。
【0042】
本発明の硬化促進剤組成物を、湿気硬化型又は1液型のウレタン樹脂組成物に対して使用することが好ましい。
本発明の硬化促進剤組成物は、1液型のウレタン樹脂組成物に対する添加剤として使用することが好ましい。
本発明の硬化促進剤組成物を、1液型のウレタン樹脂組成物の添加剤として使用する場合、上述のとおり、硬化速度を速め可使時間を確保できるほか、上記ウレタン樹脂組成物の深部硬化性を向上させることができる。
また、上記の場合において、1液型のウレタン樹脂組成物の長所であった、混合不良による部分的な効果不良が発生しない点を損なうことがない。
【0043】
・使用方法
本発明の硬化促進剤組成物の使用方法としては、例えば、本発明の硬化促進剤組成物を上記ウレタン樹脂組成物と混合して混合物を得て、上記混合物を基材に適用する方法が挙げられる。
上記混合の方法、条件等は特に制限されない。基材への適用方法も同様である。なお、上記混合物を基材に一度適用した後、その上に再度上記混合物を適用してもよい。
上記基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、金属屋根、トップコートが塗布されたウレタン塗膜の上;ベランダ、屋上等が挙げられる。
【0044】
上記混合物を、例えば、防水材(建築用塗膜防水材)、土木コーティング材用等に用いることができる。
【0045】
上記混合物を基材に適用後、上記混合物を例えば0~50℃、0~95%RHの条件下において硬化させることによって、上記混合物の硬化物を得ることができる。
上記硬化に必要な時間(次工程可能時間)を例えば1~8時間とできる。
【0046】
上記硬化物はその上に、更に、別の層を有してもよい。上記別の層としては、例えば、トップコート層、別のウレタン樹脂組成物、プライマー層等が挙げられる。
上記混合物を施工する前に、基材に対してプライマーを使用してもよい。
【0047】
<ウレタン樹脂組成物>
本発明において、本発明の硬化促進剤組成物が使用されるウレタン樹脂組成物は、イソシアネート化合物を含有する。
【0048】
<イソシアネート化合物>
上記ウレタン樹脂組成物に含有されるイソシアネート化合物は、イソシアネート基を有する化合物である。
上記イソシアネート化合物はイソシアネート基を1分子あたり複数有することが好ましい。
上記イソシアネート化合物としては、例えば、低分子のイソシアネート化合物、ウレタンプレポリマーが挙げられる。上記低分子のイソシアネート化合物としては、例えば、後述する、ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物と同様の化合物が挙げられる。
上記イソシアネート化合物はウレタンプレポリマーを含むことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0049】
(ウレタンプレポリマー)
上記ウレタンプレポリマーは、特に限定されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。具体的には例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを、ヒドロキシ基(OH基)に対してイソシアネート基(NCO基)が過剰となるように反応させることにより得られる反応生成物等を用いることができる。
ウレタンプレポリマーは、0.5~5質量%のNCO基を含有することができる。ウレタンプレポリマーは分子末端にNCO基を有することが好ましい。
【0050】
・ポリイソシアネート化合物
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、TDI(例えば、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI))、MDI(例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′-MDI)、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′-MDI))、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;
これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;
これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0051】
これらのうち、得られるウレタンプレポリマーが低粘度となり、取り扱いが容易となる理由から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、芳香族ジイソシアネートがより好ましい。
【0052】
・ポリオール化合物
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、これらの混合ポリオール等が挙げられる。
これらのうち、ポリエーテルポリオールが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0053】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1-トリメチロールプロパン、1,2,5-ヘキサントリオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールおよびペンタエリスリトールからなる群から選択される少なくとも1種に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびポリオキシテトラメチレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種を付加させて得られるポリオール等が挙げられる。具体的には、ポリプロピレンエーテルジオール、ポリプロピレンエーテルトリオールが好適に例示される。
【0054】
なかでも、ポリプロピレンエーテルジオール及び/又はポリプロピレンエーテルトリオールが、得られるウレタンプレポリマーの粘度が適切となり、取り扱いが容易となり、得られる硬化物の引張物性に優れるという理由から好ましい。
【0055】
本発明においては、ウレタンプレポリマーを製造する際のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との組み合わせとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)からなる群から選択される少なくとも1種と、ポリプロピレンエーテルジオールおよび/またはポリプロピレンエーテルトリオールとの組み合わせが好適に例示される。
【0056】
また、本発明においては、ウレタンプレポリマーを製造する際のポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との量は、NCO基/OH基(モル当量比)が、1.2~2.5となるのが好ましく、1.5~2.2となるのがより好ましい。モル当量比がこのような範囲である場合、得られるウレタンプレポリマーの粘度が適切となり、貯蔵安定性が良好となる。
【0057】
ウレタンプレポリマーの製造方法は特に限定されない。例えば、上述のモル当量比のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを、50~130℃で加熱かくはんすることによって製造することができる。また、必要に応じて、例えば、有機錫化合物、有機ビスマス、アミンのようなウレタン化触媒を用いることができる。
【0058】
・硬化剤
上記ウレタン樹脂組成物は、更に、硬化剤(上記イソシアネート化合物と反応しうる硬化成分:狭義の硬化剤)を含有することができる。
上記(狭義の)硬化剤としては、例えば、ヒドロキシ基、メルカプト基およびアミノ基(イミノ基も含む。以下同様。)からなる群より選択される置換基(活性水素含有基)を分子内に2個以上有する化合物が挙げられる。
上記硬化剤としては、例えば、ヒドロキシ基を2個以上有するポリオール化合物、アミノ基を2個以上有するポリアミン化合物(ただし、上記ジアルキルトルエンジアミンを除く。)、潜在性硬化剤等が挙げられる。
【0059】
上記潜在性硬化剤において、上記置換基(活性水素含有基)を保護する保護基は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0060】
上記ウレタン樹脂組成物が1液型である場合、1液型のウレタン樹脂組成物は、潜在性硬化剤を更に含有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
なお、上記ウレタン樹脂組成物が2液型である場合、2液型のウレタン樹脂組成物が有する(広義の)硬化剤は狭義の硬化剤として、例えば、ヒドロキシ基を2個以上有するポリオール化合物、アミノ基を2個以上有するポリアミン化合物(ただし、上記ジアルキルトルエンジアミンを除く。)を含有することができる。
【0061】
・・ポリオール化合物
上記硬化剤としての上記ポリオール化合物としては、例えば、上述したウレタンプレポリマーを製造する際に使用されるポリオール化合物が挙げられる。
【0062】
・・ポリアミン化合物
上記硬化剤としての上記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、イソホロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1-シクロヘキシルアミノ-3-アミノプロパン、3-アミノメチル-3,3,5-トリメチル-シクロヘキシルアミン、ノルボルナン骨格のジメチレンアミン、メタキシリレンジアミン(MXDA)、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの脂肪族ポリアミン;
3,3′-ジクロロ-4,4′-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、4,4′-ジアミノジフェニルメタン、2,4′-ジアミノジフェニルメタン、3,3′-ジアミノジフェニルメタン、3,4′-ジアミノジフェニルメタン、2,2′-ジアミノビフェニル、3,3′-ジアミノビフェニル、2,4-ジアミノフェノール、2,5-ジアミノフェノール、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、トリレンジアミンなどの芳香族ポリアミン等が挙げられる。
【0063】
・・潜在性硬化剤
潜在性硬化剤は一般的に硬化剤として機能しうる化合物の官能基が保護基で保護されているものを指す。上記保護基は例えば熱又は水によって分解され、硬化剤が生成する。
本発明において、上記潜在性硬化剤を構成する硬化剤は、例えば、イソシアネート基と反応しうる官能基(活性水素含有基)を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0064】
上記潜在性硬化剤としては、例えば、オキサゾリジン化合物、ケチミン化合物が挙げられる。
上記潜在性硬化剤は、本発明の効果により優れ、及び/又は、基材等との密着性、消泡性、耐膨れ性に優れるという観点から、オキサゾリジン化合物が好ましい。
【0065】
・・・オキサゾリジン化合物
オキサゾリジン化合物は、オキサゾリジン環を有する化合物である。
オキサゾリジン環は例えば湿気(水)の存在下で開環して、ヒドロキシ基及び第2級アミノ基(-NH-)を生成しうる。
オキサゾリジン化合物としては、例えば、N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジン、オキサゾリジンシリルエーテル、カーボネートオキサゾリジン、エステルオキサゾリジン;N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとポリイソシアネート化合物との反応物等が挙げられる。
【0066】
上記オキサゾリジン化合物は、本発明の効果により優れ、及び/又は、基材等との密着性、消泡性、耐膨れ性に優れるという観点から、N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンが好ましく、2-アルキル-N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンがより好ましい。
【0067】
N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとしては、例えば、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2-(1-メチルブチル)-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン(5BO)、2-(2-メチルブチル)-3-(2-ヒドロキシエチル)-5-メチルオキサゾリジンのような2-アルキル-N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジン;
2-フェニル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2-(p-メトキシフェニル)-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジンのような2-アリール-N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(2位に芳香族環を有するN-ヒドロキシアルキルオキサゾリジン)等が挙げられる。
N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンは、本発明の効果により優れ、及び/又は、基材等との密着性、消泡性に優れるという観点から、2-(1-メチルブチル)-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン(5BO)が好ましい。
【0068】
・・・ケチミン化合物
ケチミン化合物は、アルデヒドまたはケトン化合物とアミン化合物とから導かれるケチミン(C=N)結合を有する化合物である。ケチミン化合物は例えば加水分解により1級アミノ基を生起しうる。
【0069】
上記ケチミン化合物の合成に用いられるアルデヒド若しくはケトン化合物又はアミン化合物は、特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0070】
(イソシアネート基/活性水素含有基)
ウレタン樹脂組成物において、上記(狭義の)硬化剤は、活性水素含有基に対する上記イソシアネート化合物(例えば、ウレタンプレポリマー)のイソシアネート基のモル当量比(イソシアネート基/活性水素含有基)が、0.8~2.0となるように配合するのが好ましく、0.9~1.5となるように配合するのがより好ましい。
【0071】
ウレタン樹脂組成物が1液型であり、潜在性硬化剤を更に含有する場合、上記潜在性硬化剤を形成する(実質的な)硬化剤が有する活性水素含有基に対する上記イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル当量比(イソシアネート基/活性水素含有基)は、0.8~2.0が好ましく、0.9~1.5がより好ましい。
なお、潜在性硬化剤がN-ヒドロキシオキサゾリジン化合物である場合、イソシアネート基/活性水素含有基の「活性水素含有基」には、オキサゾリジン環の開環で生成したヒドロキシ基及び-NH-、並びに、オキサゾリジン環に結合していたヒドロキシ基が含まれうる。
【0072】
・その他の成分
上記ウレタン樹脂組成物は、上述したイソシアネート化合物、硬化剤以外に、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、更に、補強剤、硬化触媒、可塑剤、分散剤、溶剤、酸化防止剤、老化防止剤、顔料を含有することができる。
上記各種成分の具体例は、本発明の硬化促進剤組成物が更に含有できる各種その他の成分と同様である。上記各種成分の含有量は適宜選択できる。
上記ウレタン樹脂組成物が2液型の場合、上記各種成分は、主剤および/または(広義の)硬化剤に添加することができる。なお、広義の硬化剤は、上記狭義の硬化剤を少なくとも含むものを意味する。
【0073】
上記ウレタン樹脂組成物は、ジアルキルトルエンジアミンを実質的に含有しないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記ジアルキルトルエンジアミンは、2つのアルキル基及び2つのアミノ基(-NH2)がぞれぞれトルエンを構成するベンゼン環に結合する化合物を指す。上記ジアルキルトルエンジアミンは、本発明の硬化促進剤組成物に含有されるジアルキルトルエンジアミンと同じである。
本発明において、「ウレタン樹脂組成物は、ジアルキルトルエンジアミンを実質的に含有しない」は、上記ウレタン樹脂組成物において、上記ジアルキルトルエンジアミンの含有量が、ウレタン樹脂組成物全量に対して、0~0.3質量%であることを指す。
【0074】
上記ウレタン樹脂組成物は、1液型及び2液型のいずれであってもよい。
1液型のウレタン樹脂組成物は通常全ての成分が1つの容器に収納されている。
2液型のウレタン樹脂組成物は、通常、イソシアネート化合物を含有する主剤と、(狭義の)硬化剤を含有する(広義の)硬化剤とを有する。
上記ウレタン樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0076】
<硬化促進剤組成物の製造>
下記第1表の硬化促進剤組成物欄に示す各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを撹拌機で混合し、硬化促進剤組成物を製造した。
なお、比較例4のNCO/NH2(モル当量比)欄の値は、ジメチルチオトルエンジアミンが有するアミノ基に対する、イソシアネート化合物が有するイソシアネート基のモル当量比(NCO/NH2)である。
次の混合液の調製に際し、上記のとおり製造された各硬化促進剤組成物をそのまま用いた。
【0077】
<混合液の調製>
上記のとおり製造された各硬化促進剤組成物を第1表に示すウレタン樹脂組成物1(1液型のウレタン樹脂組成物。10,000質量部)に対して使用し、これらを混合して、混合液を得た。
【0078】
上記ウレタン樹脂組成物1の配合は以下のとおりである。
・後述のとおり調製されたウレタンプレポリマー100質量部
・炭酸カルシウム100質量部
・フタル酸系可塑剤30質量部
・潜在性硬化剤7質量部
・熱安定剤1質量部
・光安定剤2質量部
・顔料0.1質量部
【0079】
・・ウレタンプレポリマーの調製
数平均分子量4000のポリプロピレンエーテルトリオール100g(T4000、旭硝子社製)と、数平均分子量2000のポリプロピレンエーテルジオール150g(D2000、旭硝子社製)とを反応容器に入れて、可塑剤としてフタル酸ジイソノニル15g(DINP、ジェイ・プラス社製)を加え、110℃に加熱し、6時間脱水処理した。次いで、ここにトリレンジイソシアネート(コスモネートT80、三井武田ケミカル社製)をNCO基/OH基の当量比が1.98となるように加え、これを80℃に加熱し、窒素雰囲気下で12時間混合、かくはんし、ウレタンプレポリマーを調製した。得られたウレタンプレポリマーのNCO基の含有量は、ウレタンプレポリマー全量中、3.0質量%であった。
【0080】
<試験体の作製>
高さ2cmのポリエチレン製の角型バックアップ材を用いて、モルタル材の上に縦10cm、横10cmの四角枠をあらかじめ組んだ。
上記のとおり調製された各混合物を、混合後直ちに、上記四角枠の中に気泡が入り込まないようにモルタル材の表面からの高さが4mmになるまで流し込み、その後流し込まれた混合物の表面を平らにならして、試験体を作製した。
【0081】
<評価>
上記のとおり作製された各試験体を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
・可使時間
作製直後の各試験体を20℃又は35℃、50%RHの条件下に置いて養生させた。
試験体の作製直後から、上記養生中の試験体の表面が硬化して、指で触っても、指に試験体の材料が付着しなくなるまでの時間(可使時間)を測定した。
【0082】
・・評価基準
本発明において、上記のとおり測定された可使時間が15分以上であった場合、これを可使時間を確保できたと評価した。
可使時間が20分以上であった場合、これを可使時間がより長いと評価した。
可使時間が15分未満であった場合、これを可使時間を確保できなかったと評価した。
【0083】
・硬化速度(次工程可能時間)
作製直後の各試験体を20℃、50%RHの条件下に置いて、養生させた。
次に、各試験体の上に、各時間おきにトップコートを0.2kg/m2塗布し、トップコートを塗布することにより、試験体における混合物の層に、しわ又は波うち等が発生しないか(次の工程を実施可能か)を目視で確認した。
各試験体の作製直後から、トップコートの塗布直前まで(トップコートの塗布によって、はじめて試験体の混合物の層に上記しわ等が発生しなくなった場合に限る)の時間を、次工程可能時間とした。
【0084】
・・評価基準
本発明において、上記のとおり測定された次工程可能時間が540分以内であった場合、これを硬化速度が速いと評価した。
次工程可能時間が480分以内であった場合、これを硬化速度がより速いと評価した。
次工程可能時間が240分以内であった場合、これを硬化速度が非常に速いと評価した。
次工程可能時間が540分を超えた場合、これを硬化速度が遅いと評価した。
【0085】
・ピンホール@20℃
作製直後の各試験体を20℃、50%RHの条件下に24時間置いて養生させた。
養生後の各試験体の表面状態を目視で観察し、ピンホールの有無を確認した。
【0086】
・・評価基準
養生後の各試験体の表面のピンホールが0個又は10個未満であった場合、消泡性に優れると評価し、これを「A」と表示した。
上記ピンホールが10個以上であった場合、消泡性に劣ると評価して、これを「B」と表示した。
なお、ピンホールの有無が評価されなかった場合を「-」と表示した。
【0087】
・密着性
上記のとおり調製された各混合物を、コンクリート片(50mm×180mm×5mm)に塗装し(塗装厚み約2mm)、塗装後20℃、50%RHの条件下に24時間置いて、コンクリート片の上に第1の塗膜を設けた。
24時間後に、上記第1の塗膜の上にさらに上記と同じ混合物を塗装し(塗布厚み1mm、塗布幅25mm)、塗装後、さらに、20℃、50%RHの条件下で、24時間養生させ、第1の塗膜の上に第2の塗膜を設け、密着性評価用試験体を得た。
上記のとおり得られた密着性評価用試験体において、第2の塗膜を第1の塗膜から180°の角度で剥離する剥離試験を行って、剥離強度(単位:N/25mm)を測定した。
また、剥離試験後の破壊状態を目視で観察した。
【0088】
・密着性の評価基準
本発明において、上記破壊状態が第1若しくは第2の塗膜の材料破壊(凝集破壊)である場合、又は、上記剥離強度が10N/25mm以上である場合、密着性に優れると評価し、これを「※」と表示した。
上記破壊状態が界面剥離(第1の塗膜とコンクリート片との間の剥離)であり、かつ、上記剥離強度が10N/25mm未満である場合、密着性が悪いと評価し、密着性欄に剥離強度の値(単位:N/25mm)を示した。
なお、密着性が評価されなかった場合を「-」と表示した。
実施例1~5、7、8、比較例1~3の材料破壊は第2の塗膜における破壊であった。
【0089】
【0090】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
・ウレタン樹脂組成物1:上記のとおり調製されたウレタン樹脂組成物1
【0091】
(硬化促進剤組成物)
・ジアルキルトルエンジアミン1(DETDA):ジエチルトルエンジアミン。商品名ハートキュア10/DETDA。ハンソングループLLC社製。下記式(2)で表される2種の化合物(3,5-ジエチル-2,4-トルエンジアミン及び3,5-ジエチル-2,6-トルエンジアミン)の混合物。
【化3】
【0092】
・ジカルボン酸化合物1(IPU22):商品名IPU-22。岡村製油社製長鎖二塩基酸(IPU22)。分岐二塩基酸。分岐状のアルキレン基の両末端にカルボキシ基をそれぞれ有する。上記アルキレン基の炭素数は20である。なお、上記アルキレン基の炭素数20は、カルボキシ基を構成する炭素を含まない。
【0093】
・潜在性硬化剤1:3-(2-ヒドロキシエチル)-2-(1-メチルブチル)オキサゾリジン(5BO、東洋合成社製)(下記構造)
【化4】
【0094】
・(比較)ジメチルチオトルエンジアミン:エタキュアー300(3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミン80重量%と3,5-ジメチルチオ-2,6-トルエンジアミン20重量%との混合物)、エチルコーポレーション社製
【0095】
第1表に示す結果から明らかなように、ジアルキルトルエンジアミンを含有しない比較例1をウレタン樹脂組成物に対して使用した場合、ウレタン樹脂組成物の硬化速度が遅かった。
ジアルキルトルエンジアミンの量が所定の範囲を満たさない比較例2をウレタン樹脂組成物に対して使用した場合、ウレタン樹脂組成物の硬化速度が遅かった。
ジアルキルトルエンジアミンの量が所定の範囲を満たさない比較例3をウレタン樹脂組成物に対して使用した場合、ウレタン樹脂組成物の可使時間が短かった。
ジアルキルトルエンジアミンを含有せず、代わりに、ジメチルチオトルエンジアミンを含有する比較例4をウレタン樹脂組成物に対して使用した場合、ウレタン樹脂組成物の硬化速度が遅かった。
【0096】
これに対して、本発明の硬化促進剤組成物は、ウレタン樹脂組成物に対して使用した際、ウレタン樹脂組成物の硬化速度を速めることができ、ウレタン樹脂組成物の可使時間を確保できた。