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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】ホットメルト組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20231204BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20231204BHJP
   C08L 23/22 20060101ALI20231204BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20231204BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20231204BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20231204BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20231204BHJP
   C09J 123/16 20060101ALI20231204BHJP
   C09J 123/22 20060101ALI20231204BHJP
   C09J 165/00 20060101ALI20231204BHJP
   C09J 191/00 20060101ALI20231204BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231204BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
C08L53/02
C08L23/16
C08L23/22
C08L65/00
C08L91/00
C08K5/01
C09J153/02
C09J123/16
C09J123/22
C09J165/00
C09J191/00
C09J11/06
C09J11/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020213744
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099760
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-03-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 圭
(72)【発明者】
【氏名】松村 美沙樹
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-195797(JP,A)
【文献】特開平09-208928(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01584654(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第112094608(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー(1)として、重量平均分子量30万以上のスチレン系熱可塑性エラストマー(1a)、重量平均分子量30万未満、スチレン含有量が20質量%以下のスチレン系熱可塑性エラストマー(1b)、並びに、エチレンプロピレンゴム及び/又はブチルゴムを含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)と、
粘着付与材(2)として、芳香族系石油樹脂(2a)、テルペンフェノール樹脂(2b)、及び、非晶性ポリアルファオレフィン(2c)と、
重量平均分子量1000以上の高分子量パラフィンオイル(3a)と、
重量平均分子量1000未満の低分子量パラフィンオイル(3b)とを含有し、
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)100質量部に対して、
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)の含有量が10質量部以上であり、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)の含有量が30質量部以上であり、前記芳香族系石油樹脂(2a)と前記テルペンフェノール樹脂(2b)の合計含有量が200質量部以上であり、前記非晶性ポリアルファオレフィン(2c)の含有量が1質量部以上であり、前記高分子量パラフィンオイル(3a)及び前記低分子量パラフィンオイル(3b)の含有量の合計が500質量部以上である、ホットメルト組成物。
【請求項2】
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)100質量部に対して、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)の含有量が50質量部以下であり、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)の含有量が70質量部以下であり、前記芳香族系石油樹脂(2a)と前記テルペンフェノール樹脂(2b)の合計含有量が600質量部以下であり、前記非晶性ポリアルファオレフィン(2c)の含有量が20質量部以下であり、前記高分子量パラフィンオイル(3a)及び前記低分子量パラフィンオイル(3b)の含有量の合計が3000質量部以下である、請求項1に記載のホットメルト組成物。
【請求項3】
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)が、SEEPSを含む、請求項1又は2に記載のホットメルト組成物。
【請求項4】
自動車ランプ用である、請求項1~3のいずれか1項に記載のホットメルト組成物。
【請求項5】
ホットメルト組成物の製造方法であって、
熱可塑性エラストマー(1)として、重量平均分子量30万以上のスチレン系熱可塑性エラストマー(1a)、重量平均分子量30万未満、スチレン含有量が20質量%以下のスチレン系熱可塑性エラストマー(1b)、並びに、エチレンプロピレンゴム及び/又はブチルゴムを含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)と、
粘着付与材(2)として、芳香族系石油樹脂(2a)、テルペンフェノール樹脂(2b)、及び、非晶性ポリアルファオレフィン(2c)と、
重量平均分子量1000以上の高分子量パラフィンオイル(3a)と、
重量平均分子量1000未満の低分子量パラフィンオイル(3b)とを、前記ホットメルト組成物の成分として添加するステップを含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホットメルト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車灯具(例えばヘッドランプのような自動車ランプ)においてレンズとハウジングとの接着にはホットメルト組成物が使用されている。
自動車灯具におけるレンズとハウジングとの接着に使用されるホットメルト組成物には、作業性に優れること(具体的には例えば、ホットメルト組成物を基材に適用する際のホットメルト組成物の粘度が適切な範囲であること。以下同様)、耐熱流動性に優れること(具体的には例えば、ホットメルト組成物で基材を接着させた後のホットメルト組成物(接着層)が高温条件下において軟化又は変形しにくいこと。以下同様)、密着性と解体性とのバランスが優れること、耐揮発性に優れること(これによって自動車灯具(自動車ランプ)の内部が曇りにくくなる)、耐熱クリープ性に優れること(加熱及び負荷がかかった状態での密着保持性)等が要求される。
密着性は、ホットメルト組成物を用いて第1の部材と第2の部材とを接着させた後の密着性を意味する。
解体性(分離性)は、ホットメルト組成物を用いて第1の部材と第2の部材とを接着させた後、第1の部材から第2の部材を外す際、ホットメルト組成物が固化した硬化物が第1の部材又は第2の部材から界面剥離しやすいこと、さらに、基材(被着体)から上記硬化物を分離する際、上記接着層が切れにくいことを意味する。
【0003】
自動車灯具においてレンズとハウジングとの接着に使用できるホットメルト組成物としては例えば特許文献1、2等が提案されている。
特許文献1には、重量平均分子量が30万以上のスチレン系熱可塑性エラストマーと、
粘着付与剤と、
重量平均分子量が1,000以上のパラフィンオイル1と、
重量平均分子量が1,000未満のパラフィンオイル2と、を含有する、ホットメルト組成物が記載されている。
【0004】
特許文献2には、重量平均分子量が15万以上のSEEPSブロックコポリマー(A)100重量部に対して、動粘度(40℃)が200~1000mm2/sのパラフィンオイル(B)300~1000重量部と、軟化点が100℃以上の芳香族系石油樹脂(C)50~400重量部と、テルペン樹脂(D)50~600重量部と、を含み、ポリプロピレンワックスを含まないことを特徴とする易解体性ホットメルト組成物が記載されている。また、特許文献2には、粘着付与剤として、テルペンフェノール樹脂を用いた場合、解体性に劣る傾向があることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-104594号公報
【文献】特許第6634044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようななか、本発明者は特許文献1、2を参考にしてホットメルト組成物を調製しこれを評価したところ、このような組成物は、作業性、耐熱流動性、密着性と解体性とのバランス、耐揮発性、耐熱クリープ性のうちの少なくともいずれかが悪い場合があることが明らかとなった。
【0007】
そこで、本発明は、作業性、耐熱流動性、密着性と解体性とのバランス、耐揮発性、耐熱クリープ性が優れるホットメルト組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、作業性、耐熱流動性、密着性と解体性とのバランス、耐揮発性、耐熱クリープ性の少なくともいずれかにおいて従来よりも優れるホットメルト組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、熱可塑性エラストマー(1)として、重量平均分子量30万以上のスチレン系熱可塑性エラストマー(1a)、スチレン含有量が20質量%以下のスチレン系熱可塑性エラストマー(1b)、並びに、エチレンプロピレンゴム及び/又はブチルゴムを含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)を含有し、
粘着付与材(2)として、芳香族系石油樹脂(2a)、テルペンフェノール樹脂(2b)、及び、非晶性ポリアルファオレフィン(2c)を含有し、
パラフィンオイルとして、重量平均分子量1000以上の高分子量パラフィンオイル(3a)と、重量平均分子量1000未満の低分子量パラフィンオイル(3b)とを含有する、ホットメルト組成物によれば、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0009】
[1] 熱可塑性エラストマー(1)として、重量平均分子量30万以上のスチレン系熱可塑性エラストマー(1a)、スチレン含有量が20質量%以下のスチレン系熱可塑性エラストマー(1b)、並びに、エチレンプロピレンゴム及び/又はブチルゴムを含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)と、
粘着付与材(2)として、芳香族系石油樹脂(2a)、テルペンフェノール樹脂(2b)、及び、非晶性ポリアルファオレフィン(2c)と、
重量平均分子量1000以上の高分子量パラフィンオイル(3a)と、
重量平均分子量1000未満の低分子量パラフィンオイル(3b)とを含有する、ホットメルト組成物。
[2] 上記スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)の含有量が、上記スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)100質量部に対して10~50質量部である、[1]に記載のホットメルト組成物。
[3] 上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)の含有量が、上記スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)100質量部に対して30~70質量部である、[1]又は[2]に記載のホットメルト組成物。
[4] 上記スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)が、SEEPSを含む、[1]~[3]のいずれかに記載のホットメルト組成物。
[5] 上記芳香族系石油樹脂(2a)と上記テルペンフェノール樹脂(2b)の合計含有量が、上記スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)100質量部に対して200~600質量部である、[1]~[4]のいずれかに記載のホットメルト組成物。
[6] 自動車ランプ用である、[1]~[5]のいずれかに記載のホットメルト組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明のホットメルト組成物は、作業性、耐熱流動性、密着性と解体性とのバランス、耐揮発性、耐熱クリープ性が優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを表す。
本明細書において、作業性、耐熱流動性、密着性と解体性とのバランス、耐揮発性、及び、耐熱クリープ性のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。密着性と解体性とのバランスがより優れることは、例えば、密着性に必要な密着力(剥離強度)を維持しつつ、解体に必要な剥離強度をより低くできることを意味する。
【0012】
[ホットメルト組成物]
本発明のホットメルト組成物(本発明の組成物)は、
熱可塑性エラストマー(1)として、重量平均分子量30万以上のスチレン系熱可塑性エラストマー(1a)、スチレン含有量が20質量%以下のスチレン系熱可塑性エラストマー(1b)、並びに、エチレンプロピレンゴム及び/又はブチルゴムを含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)と、
粘着付与材(2)として、芳香族系石油樹脂(2a)、テルペンフェノール樹脂(2b)、及び、非晶性ポリアルファオレフィン(2c)と、
重量平均分子量1000以上の高分子量パラフィンオイル(3a)と、
重量平均分子量1000未満の低分子量パラフィンオイル(3b)とを含有する、ホットメルト組成物である。
【0013】
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
なお、本発明の組成物に含有される、重量平均分子量30万以上のスチレン系熱可塑性エラストマー(1a)を、「特定St系エラストマー(1a)」、又は、単に「(1a)」と称する場合がある。
また、スチレン含有量が20質量%以下のスチレン系熱可塑性エラストマー(1b)を、「特定St系エラストマー(1b)」、又は、単に「(1b)」と称する場合がある。
オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)を、「特定オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)」、又は、単に「(1c)」と称する場合がある。
重量平均分子量が1,000以上の高分子量パラフィンオイル(3a)を、「高分子量パラフィンオイル(3a)」、又は、単に「(3a)」と称する場合がある。
重量平均分子量が1,000未満の低分子量パラフィンオイル(3b)を、「低分子量パラフィンオイル(3b)」、又は、単に「(3b)」と称する場合がある。
【0014】
<<熱可塑性エラストマー(1)>>
本発明の組成物は、熱可塑性エラストマー(1)として、重量平均分子量30万以上のスチレン系熱可塑性エラストマー(1a)、スチレン含有量が20質量%以下のスチレン系熱可塑性エラストマー(1b)、及び、オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)を含有する。また、上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)は、エチレンプロピレンゴム及び/又はブチルゴムを含む。
【0015】
本発明において、熱可塑性エラストマーとは、加熱により軟化し、冷却するとゴム弾性を有するポリマーを指す。
スチレン系熱可塑性エラストマーとは、スチレンまたはスチレン誘導体によって形成される繰り返し単位を有する重合体ブロックと共役ジエン由来の構造単位を含有する重合体ブロックとを有するブロック共重合体を指す。
【0016】
<スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)>
本発明において、熱可塑性エラストマー(1)として含有されるスチレン系熱可塑性エラストマー(1a)は、その重量平均分子量が30万以上である。本発明の組成物は特定St系エラストマー(1a)を含有することによって、耐熱流動性が優れる。
【0017】
上記スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)としては、例えば、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)が挙げられる。
【0018】
スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)は、本発明の効果がより優れるという観点から、SEEPSを含むことが好ましい。
【0019】
<スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)の重量平均分子量>
本発明において、スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)の重量平均分子量は30万以上である。
上記スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果により優れ、耐熱性、機械特性、解体性に優れるという観点から、30万~60万が好ましく、30万以上50万未満がより好ましく、35万以上45万未満が更に好ましい。
【0020】
本発明において、スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。上記スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)の重量平均分子量の測定条件は以下のとおりである。
【0021】
(測定条件)
GPC:LC Solution(SHIMAZU製)
検出器:SPD-20A(SHIMAZU製)
カラム:ALPHA-5000(TOSO製)を直列に2本接続
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
流速:0.5ml/min
濃度:2mg/ml
標準試料:ポリスチレン
【0022】
・スチレン含有量
上記スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)のスチレン含有量は、本発明の効果により優れ、耐熱性、機械特性に優れるという観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)中の25~40質量%が好ましく、25~35質量%がより好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量は、スチレン系熱可塑性エラストマー中の、スチレンによる繰り返し単位の含有量の比率を意味する。
【0023】
本発明において、スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量は、熱分解GC-MS(熱分解ガスクロマトグラフ質量分析装置)にて測定することができる(以下同様)。
スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量(質量%)は、スチレン系熱可塑性エラストマーを製造する際に使用されたモノマー全量中のスチレン及び/又はスチレン誘導体の割合としてもよい。
【0024】
<スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)>
本発明において、熱可塑性エラストマー(1)として含有されるスチレン系熱可塑性エラストマー(1b)は、そのスチレン含有量が20質量%以下である。
スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)を含有することによって、本発明の組成物は作業性、密着性と解体性とのバランスに優れる。
【0025】
上記スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)としては、例えば、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)が挙げられる。
【0026】
スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)は、本発明の効果がより優れるという観点から、SEPS及び/又はSEBSを含むことが好ましく、SEPSを含むことがより好ましい。
【0027】
SEPSとしては、例えば、下記式で表されるポリマーが挙げられる。
【化1】
上記式中、l+m+nは、後述する、スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)の重量平均分子量に対応する値とすることができ、l+nは、後述する、スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)のスチレン含有量に対応する値とすることができる。
【0028】
<スチレン含有量>
本発明において、上記スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)のスチレン含有量は、20質量%以下である。
上記スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)のスチレン含有量は、本発明の効果(特に、作業性、密着性と解体性とのバランス)により優れるという観点から、上記スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)中の10~18質量%が好ましく、10~15質量%がより好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)のスチレン含有量の測定方法は、上記と同様である。
【0029】
(スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)の重量平均分子量)
上記スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果により優れるという観点から、30万未満であることが好ましく、5万~25万がより好ましく、10万~20万が更に好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)の重量平均分子量の測定方法は、上記のスチレン系熱可塑性エラストマー(1a)の重量平均分子量の測定方法と同様である。
【0030】
(スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)の含有量)
スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)の含有量は、本発明の効果がより優れる(特に、作業性、及び/又は、密着性と解体性とのバランス)という観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)100質量部に対して10~50質量部であることが好ましく、20~40質量部がより好ましい。
【0031】
<オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)>
本発明の組成物は、熱可塑性エラストマー(1)としてオレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)を含有し、上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)は、エチレンプロピレンゴム及び/又はブチルゴムを含む。
本発明の組成物は、上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)を含有することによって、作業性、耐熱クリープ性が優れる。
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)は、本発明の効果がより優れる(特に、密着性と解体性とのバランス、耐熱クリープ性)という観点から、エチレンプロピレンゴムを含むことが好ましい。
【0032】
(エチレンプロピレンゴム)
オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)としてのエチレンプロピレンゴムは、エチレンとプロピレンとのみの共重合ゴムである。なお、本発明において、エチレンプロピレンゴムは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含まない。
【0033】
(ブチルゴム)
ブチルゴムは、イソブテンとイソプレンとの共重合ゴムである。一般的に、ブチルゴムを構成する繰り返し単位の主成分はイソブテンによる繰り返し単位である。
【0034】
(オレフィン系エラストマー(1c)の重量平均分子量)
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果により優れるという観点から、20万~50万が好ましく、30万~40万がより好ましい。
【0035】
オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)の重量平均分子量の測定方法は、以下のとおりである。
(測定条件)
GPC:HLC-8321GPC/HT(東ソー製)
検出器:示差屈折率(RI)東ソー製
カラム:TSKgel guardcolumn HHR(S)を1本と、TSKgel GMHHR-H(S)HTを2本とを直列に接続
溶媒:o-ジクロロベンゼン
温度:145℃
流速:1.0ml/min
濃度:0.1wt%/vol%
標準試料:ポリスチレン
【0036】
(オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)の含有量)
オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)の含有量(エチレンプロピレンゴム又はブチルゴムの含有量。オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)がエチレンプロピレンゴムとブチルゴムとを併用する場合は両者の合計含有量)は、本発明の効果がより優れる(特に、密着性と解体性とのバランス、耐熱クリープ性)という観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)100質量部に対して30~70質量部であることが好ましく、40~60質量部がより好ましい。
【0037】
<<粘着付与材(2)>>
本発明の組成物は、粘着付与材(2)として、芳香族系石油樹脂(2a)、テルペンフェノール樹脂(2b)、及び、非晶性ポリアルファオレフィン(2c)とを含有する。
本発明において粘着付与材(2)は、ホットメルト性の組成物に粘着性を付与できるものである。
なお、熱可塑性エラストマー(1)は、粘着付与材(2)を含まない。
【0038】
<芳香族系石油樹脂(2a)>
本発明において粘着付与材(2)として含有される芳香族系石油樹脂(2a)は、芳香族炭化水素基を有する樹脂を意味する。
【0039】
芳香族系石油樹脂(2a)は、重合体が好ましい態様の1つとして挙げられる。
芳香族系石油樹脂(2a)としては、例えば、スチレン系モノマー(例えば、スチレン、α-メチル-スチレン、4-メチル-α-メチル-スチレン)の重合体が挙げられる。
芳香族系石油樹脂(2a)としては、芳香族系炭化水素樹脂が挙げられる。
【0040】
(芳香族系石油樹脂(2a)の含有量)
芳香族系石油樹脂(2a)の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)100質量部に対して、100~500質量部であることが好ましく、150~300質量部であることがより好ましく、180~220質量部が更に好ましい。
【0041】
<テルペンフェノール樹脂(2b)>
本発明において粘着付与材(2)として含有されるテルペンフェノール樹脂(2b)は、テルペン化合物由来の構造単位及びフェノール系化合物由来の構造単位を含むポリマーを指す。
本発明の組成物は、テルペンフェノール樹脂(2b)を含有することによって、作業性、密着性と解体性とのバランスが優れる。
【0042】
テルペンフェノール樹脂(2b)を構成しうる上記テルペン化合物としては、例えば、α-ピネン、β-ピネン、リモネン(d体、l体およびd/l体(ジペンテン)を包含する。)等のモノテルペン類が挙げられる。
テルペンフェノール樹脂(2b)を構成しうるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、m-クレゾール、o-クレゾール、p-クレゾール、ビスフェノールA等が挙げられる。
テルペンフェノール樹脂(2b)としては、例えば、テルペン類とフェノール化合物との共重合体(テルペン-フェノール共重合体樹脂)、テルペン類の単独重合体または共重合体をフェノール変性したもの(フェノール変性テルペン樹脂)、これらを水素添加した水添テルペンフェノール樹脂が挙げられる。
【0043】
(テルペンフェノール樹脂(2b)の含有量)
テルペンフェノール樹脂(2b)の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)100質量部に対して、100~300質量部であることが好ましく、110~200質量部であることがより好ましく、120~180質量部であることが更に好ましい。
【0044】
(芳香族系石油樹脂(2a)とテルペンフェノール樹脂(2b)の合計含有量)
芳香族系石油樹脂(2a)とテルペンフェノール樹脂(2b)の合計含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)100質量部に対して200~600質量部であることが好ましく、200~500質量部であることがより好ましく、300~400質量部が更に好ましい。
【0045】
<非晶性ポリアルファオレフィン(2c)>
非晶性ポリアルファオレフィン(2c)は、主鎖骨格がα-オレフィンから誘導される、非晶性(アモルファス状)の重合体を意味する。
【0046】
非晶性ポリアルファオレフィン(2c)としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテンの単独重合体;
エチレン、プロピレン及びブテンからなる群から選ばれる少なくとも2種の共重合体が挙げられる。
上記重合体としては、例えば、プロピレン/エチレン共重合体(プロピレンとエチレンとの共重合体)、プロピレン/ブテン共重合体(プロピレンとブテンとの共重合体)、エチレン/プロピレン/ブテン共重合体(エチレンとプロピレンとブテンとの共重合体)が挙げられる。
なお、上記のとおり、熱可塑性エラストマー(1)は粘着付与材(2)を含まないので、熱可塑性エラストマー(1)としてのオレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)は、非晶性ポリアルファオレフィン(2c)を含まない。また、本明細書において、非晶性ポリアルファオレフィンをAPAOと称する場合がある。
【0047】
(非晶性ポリアルファオレフィン(2c)の重量平均分子量)
上記非晶性ポリアルファオレフィン(2c)の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果がより優れるという観点から、3万~15万が好ましく、4万~10万がより好ましい。
非晶性ポリアルファオレフィン(2c)の重量平均分子量の測定方法は、上述のオレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)の重量平均分子量の測定方法と同様である。
【0048】
(非晶性ポリアルファオレフィン(2c)の含有量)
上記非晶性ポリアルファオレフィン(2c)の含有量は、上記スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部がより好ましく、1~5質量部が更に好ましい。
【0049】
<高分子量パラフィンオイル(3a)>
本発明の組成物は、パラフィンオイルとして、重量平均分子量1000以上の高分子量パラフィンオイル(3a)を含有する。
本発明の組成物は、高分子量パラフィンオイル(3a)を含有することによって、耐熱流動性、耐揮発性に優れる。
【0050】
高分子量パラフィンオイル(3a)としては、例えば、石油留分若しくは残油を水素添加し、精製したもの、又は、分解により得られる潤滑油基油が挙げられる。
高分子量パラフィンオイル(3a)は、例えば、式Cn2n+2で表される化合物を含むことが好ましい態様の1つとして挙げられる。なお、本発明において、上記nは高分子量パラフィンオイル(3a)の重量平均分子量にそれぞれ応じた値とできる。
また、高分子量パラフィンオイル(3a)は、例えば、室温(23℃)条件下で液体であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0051】
<高分子量パラフィンオイル(3a)の重量平均分子量>
本発明において、上記高分子量パラフィンオイル(3a)の重量平均分子量は、1,000以上である。
上記高分子量パラフィンオイル(3a)の重量平均分子量は、本発明の効果がより優れるという観点から、1,200~3,000であることが好ましく、1,300~2,000がより好ましい。
【0052】
本発明において、パラフィンオイルの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算の重量平均分子量をいう(以下同様)。上記パラフィンオイルの重量平均分子量の測定条件は以下のとおりである。
【0053】
(測定条件)
GPC:LC Solution(SHIMAZU製)
検出器:SPD-20A(SHIMAZU製)
カラム:MIXED-E(Polymer Laboratories製)を直列に2本
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
流速:0.5ml/min
濃度:2mg/ml
標準試料:ポリスチレン
【0054】
<低分子量パラフィンオイル(3b)>
本発明の組成物は、パラフィンオイルとして、重量平均分子量1000未満の低分子量パラフィンオイル(3b)を含有する。
本発明の組成物は、低分子量パラフィンオイル(3b)を含有することによって、作業性、密着性と解体性とのバランスに優れる。
【0055】
低分子量パラフィンオイル(3b)としては、例えば、石油留分若しくは残油を水素添加し、精製したもの、又は、分解により得られる潤滑油基油が挙げられる。
低分子量パラフィンオイル(3b)は、例えば、式Cn2n+2で表される化合物を含むことが好ましい態様の1つとして挙げられる。なお、本発明において、上記nは低分子量パラフィンオイル(3b)の重量平均分子量にそれぞれ応じた値とできる。
また、低分子量パラフィンオイル(3b)は、例えば、室温(23℃)条件下で液体であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0056】
<低分子量パラフィンオイル(3b)の重量平均分子量>
本発明において、低分子量パラフィンオイル(3b)の重量平均分子量は、500~11000未満であることが好ましく、700~1,000未満がより好ましい。
低分子量パラフィンオイル(3b)の重量平均分子量の測定方法は、上記のパラフィンオイルの重量平均分子量の測定条件と同様である。
【0057】
(高分子量パラフィンオイル(3a)、低分子量パラフィンオイル(3b)の含有量の合計)
上記高分子量パラフィンオイル(3a)及び低分子量パラフィンオイル(3b)の含有量の合計は、本発明の効果がより優れるという観点から、上記スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)100質量部に対して、500~3000質量部が好ましく、700~1500質量部がより好ましい。
【0058】
・高分子量パラフィンオイル(3a)/低分子量パラフィンオイル(3b)(質量比B)
上記低分子量パラフィンオイル(3b)の含有量に対する上記高分子量パラフィンオイル(3a)の含有量の質量比B(高分子量パラフィンオイル(3a)/低分子量パラフィンオイル(3b))は、本発明の効果(特に、作業性、耐熱クリープ性)がより優れるという観点から、5/95~95/5であることが好ましく、20/80~70/30であることがより好ましく、30/70~50/50がさらに好ましい。
【0059】
(添加剤)
本発明の組成物は必要に応じてさらに添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)、(1b)、エチレンプロピレンゴム及びブチルゴム以外の熱可塑性エラストマー;ヒンダードフェノール系化合物のような老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、パラフィンオイル以外の軟化剤又は可塑剤、補強剤が挙げられる。添加剤の量は適宜決定することができる。
【0060】
(製造方法)
本発明の組成物はその製造方法について特に制限されない。例えば、上記の必須成分、および必要に応じて使用することができる添加剤を150~250℃の条件下で混合することによって製造することができる。
【0061】
(使用方法)
本発明のホットメルト組成物の使用方法としては、例えば、本発明の組成物を190~230℃に加熱して溶融させ被着体(例えば第1の部材および/または第2の部材)に付与し、上記被着体を接合又は積層させて、接合体又は積層体とし、上記接合体又は積層体を室温の条件下に置いて本発明の組成物を固化させる方法が挙げられる。第2の部材の材質は第1の部材と同じでも異なってもよい。
【0062】
本発明の組成物を適用することができる基材(被着体)としては、例えば、プラスチック[例えば、ポリプロピレンのようなポリオレフィン;ポリカーボネート;(メタ)アクリル樹脂]、木材、ゴム、ガラス、金属が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂又はポリプロピレンの接着;ポリカーボネート樹脂又は(メタ)アクリル樹脂とポリプロピレンとの接着に本発明の組成物を使用することが好ましい態様として挙げられる。
【0063】
本発明の組成物を基材(被着体)に付与する方法としては例えば吐出機(アプリケーター)を用いる方法が挙げられる。
【0064】
本発明の組成物は例えばランプ用のホットメルト組成物として使用することができる。ランプとしては、例えば、自動車ランプ(例えば、ヘッドランプ、リアコンビネーションランプ等)、二輪車(オートバイ)ランプが挙げられる。自動車ランプの場合、例えば、自動車ランプのレンズとハウジングとのシール(接着)、レンズのシール部に本発明の組成物を使用することができる。
【実施例
【0065】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0066】
<組成物の製造>
下記第1表に示す、熱可塑性エラストマーとパラフィンオイルとを同表に示す量(質量部)で用いて、これらを3L双腕型ニーダー(日本スピンドル社製)に仕込み、200℃の条件下で40分間攪拌し、混合物を得た。次に、上記混合物に同表に示す粘着付与材(2)に該当する化合物(又は(比較)ポリテルペン樹脂)及び老化防止剤を添加し、これらをさらに1時間混合し、各ホットメルト組成物を製造した。
なお、第1表のスチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量は「St**%」と表示されているが、上記%は質量%を意味する。
【0067】
<評価>
上記のとおり製造された各組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
(作業性)
上記のとおり製造した組成物を220℃の条件下で30分間溶融した後、BF型粘度計(ブルックフィールド型粘度計)を用い、No.29号ローターを用いて回転させ、5rpmにおいて、JIS K 6833-1に準じて、上記組成物の粘度を測定し、評価を行った。
【0068】
・作業性の評価基準
上記粘度が100Pa・s以下であった場合、作業性に非常に優れると評価し、これを「〇」と表示した。
上記粘度が100Pa・sを超え150Pa・s以下であった場合、作業性にやや優れると評価し、これを「△」と表示した。
一方、上記粘度が150Pa・sを超えた場合、作業性が悪いと評価し、これを「×」と表示した。
【0069】
(耐熱流動性:垂直フロー)
上記のとおり製造された組成物をハンドガンで220℃の条件で溶融し、アルミ板の上にφ(直径)4mm×(長さ)50mmのビードを塗布した。その後120℃オーブンに上記アルミ板を90°に立てた状態で24時間入れて、24時間後の材料(組成物)の垂れ具合(24時間後、アルミ板を90°に立てた状態で、アルミ板とこれに付着しているビードの下面において、アルミ板とビードとの付着の最下位置から、ビードが垂れ下がった距離。)を測定した。
【0070】
・耐熱流動性の評価基準
垂れ下がった距離が5mm以下であった場合、耐熱流動性に優れると評価し、これを「○」と表示した。
一方、垂れ下がった距離が5mmを超えた場合、耐熱流動性が悪いと評価し、これを「×」と表示した。
【0071】
(密着性/解体性)
上記のとおり製造された各組成物を220℃に加熱し、溶融し、PP板(ポリプロピレン製、縦25mm×横75mm×厚さ3mm)に塗布した。塗布後、上記PP板の組成物上に、PC板(ポリカーボネート製、縦25mm×横75mm×厚さ3mm)を十字になるように重ね、接着面積25mm×25mmで3mm厚まで組成物を圧着し、20℃、50%RHの条件下に24時間置いて養生(固化)させ、試験片を得た。試験片は、PP板とPC板との間にホットメルト組成物(接着層)を有する。
得られた試験片について、引張試験機を用いて、20℃、50mm/minの引張速度の条件下でPP板の面に対して垂直方向にPC板を引っ張る引張試験を行い、上記試験片の剥離強度を測定した。また、破壊後の破壊面の状態(破壊モード)を目視で観察した。
各試験片について測定された剥離強度を強度(N)として表1に結果を示す。また、破壊モードについては、PP板から接着層がきれいに剥がれた場合を「○」、PP板に接着層が残った場合は「×」と表示した。
【0072】
・密着性と解体性とのバランスの評価
上記強度(剥離強度)が60~130Nであり、かつ、破壊モードが「〇」であった場合、密着性と解体性とのバランスが優れると評価した。
また、上記強度が70~120Nであり、かつ、破壊モードが「〇」であった場合、密着性と解体性とのバランスがより優れると評価し、上記強度が75~90Nであり、かつ、破壊モードが「〇」であった場合、密着性と解体性とのバランスが更に優れると評価した。
一方、上記強度が60N未満であった場合、密着性が悪く、したがって密着性と解体性とのバランスが悪いと評価した。
また、上記強度が130Nを超えた場合、又は、破壊モードが「×」であった場合、解体性が悪く、したがって密着性と解体性とのバランスが悪いと評価した。
【0073】
(耐揮発性)
試験管に上記のとおり製造された各組成物を3g入れ、試験管の上部をガラス板で密閉した。120℃のオイルバスに試験管を浸して加熱した。
加熱開始から24時間後、上記ガラス板の内側表面(試験管と密閉空間を構成した部分)の汚れの有無を目視で確認した。
上記ガラス板の内側表面に汚れが無かった場合、これを「汚れ無し」と表示し、耐揮発性に優れると評価した。
一方、上記ガラス板の内側表面に汚れが認められた場合、これを「汚れ有り」と表示し、耐揮発性に優れると評価した。
【0074】
(耐熱クリープ性)
上記のとおり製造された各組成物を220℃に加熱し、溶融し、PP板(ポリプロピレン製、縦25mm×横75mm×厚さ3mm)に塗布した。塗布後、上記PP板の組成物上に、PC板(ポリカーボネート製、縦25mm×横75mm×厚さ3mm)を十字になるように重ね、接着面積25mm×25mmで3mm厚まで組成物を圧着し、20℃、50%RHの条件下に24時間置いて養生させ、試験片を得た。試験片は、PP板とPC板との間にホットメルト組成物(接着層)を有する。
得られた初期試験片について、PP板の面に対して垂直方向にPC板を引っ張り、接着層が150%伸長した状態で上記各試験片を固定し、そのままの状態で60℃の条件下に24時間置く耐熱試験を行った。
上記耐熱試験後の試験片(固定は維持された状態。以下同様)におけるホットメルト組成物(接着層)のはがれ具合を目視で確認した。
【0075】
・耐熱クリープ性の評価基準
上記耐熱試験後の試験片において、ホットメルト組成物(接着層)が基材から全くはがれていなかった場合、又は、ホットメルト組成物がPP板及びPC板と接着している部分の面積が接着面全体(縦25mm×横25mm。以下同様)に対して80%以上であった場合、耐熱クリープ性に最も優れる(加熱後の密着保持率が最も高い)と評価し、これを「◎」と表示した。
ホットメルト組成物がPP板及びPC板と接着している部分の面積が接着面全体に対して60%以上80%未満であった場合、耐熱クリープ性が非常に優れる(加熱後の密着保持率が非常に高い)と評価し、これを「〇」と表示した。
ホットメルト組成物がPP板及びPC板と接着している部分の面積が接着面全体に対して30%以上60%未満であった場合、耐熱クリープ性がやや優れる(加熱後の密着保持率がやや高い)と評価し、これを「△」と表示した。
一方、ホットメルト組成物がPP板及びPC板と接着している部分の面積が接着面全体に対して30%未満であった場合、耐熱クリープ性が悪い(加熱後の密着保持率が低い)と評価し、これを「×」と表示した。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
<スチレン系熱可塑性エラストマー(1a)>
・スチレン系熱可塑性エラストマー(1a-1):SEEPS(St含有量30質量%、Mw39万)。商品名セプトン4077、クラレ社製。
・比較スチレン系熱可塑性エラストマー1:SEEPS(St含有量30質量%、Mw25万)。商品名セプトン4055、クラレ社製。
・比較スチレン系熱可塑性エラストマー2:SEBS(St含有量30質量%、Mw11万)。商品名クレイトンG1650、クラレ社製。
【0079】
<スチレン系熱可塑性エラストマー(1b)>
・スチレン系熱可塑性エラストマー(1b-1):SEPS(St含有量13質量%、Mw12万)。商品名セプトン2063、クラレ社製。
・スチレン系熱可塑性エラストマー(1b-2):SEBS(St含有量12質量%、Mw18万)。商品名タフテックH-1221、旭化成社製。
【0080】
・比較スチレン系熱可塑性エラストマー3:SEPS(St含有量65質量%、Mw9万)。商品名セプトン2104、クラレ社製。
なお、上記の比較スチレン系熱可塑性エラストマー1~3は、いずれも、本発明におけるスチレン系熱可塑性エラストマー(1a)及びスチレン系熱可塑性エラストマー(1b)に該当しない。
【0081】
<オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c)>
・オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c-1):エチレンプロピレンゴム。商品名三井EPT0045、三井化学社製。(モノマーとしての)第3成分無し。Mw35万。エチレンとプロピレンのみで形成されたゴム
・オレフィン系熱可塑性エラストマー(1c-2):ブチルゴム。商品名ブチル365、JSR社製。Mw44万
【0082】
<<粘着付与材(2)>>
<芳香族系石油樹脂(2a)>
・芳香族系石油樹脂(2a-1):芳香族系炭化水素樹脂(スチレン系炭化水素樹脂)。商品名FMR0150、三井化学社製。
【0083】
<テルペンフェノール樹脂(2b)>
・テルペンフェノール樹脂(2b-1):商品名YSポリスターU115、ヤスハラケミカル社製。非水添のテルペンフェノール樹脂。
・(比較)ポリテルペン樹脂:テルペンモノマー単独(100%)重合樹脂。商品名YSレジンPX1150、ヤスハラケミカル社製
【0084】
<非晶性ポリアルファオレフィン(2c)>
・非晶性ポリアルファオレフィン(2c-1):APAO(プロピレン/ブテン-1共重合体)。商品名RT2780、rextac社製。Mw7万
・非晶性ポリアルファオレフィン(2c-2):APAO(プロピレン/エチレン共重合体)。商品名RT2585、rextac社製。Mw6万
【0085】
<高分子量パラフィンオイル(3a)>
・高分子量パラフィンオイル(3a-1):高分子量パラフィンオイル。重量平均分子量1500。商品名PW-380、出光興産社製。
【0086】
<低分子量パラフィンオイル(3b)>
・低分子量パラフィンオイル(3b-1):低分子量パラフィンオイル。重量平均分子量900。商品名PW-90、出光興産社製。
【0087】
(老化防止剤)
・老化防止剤:ヒンダードフェノール系化合物。商品名イルガノックス1010、BASF社製。
【0088】
第1表に示す結果から明らかなように、特定St系エラストマー(1a)を含有せず、代わりに比較スチレン系熱可塑性エラストマー1を含有する比較例1は、耐熱流動性が悪かった。
特定St系エラストマー(1b)を含有しない比較例2は、作業性が悪く、密着性が悪いため密着性と解体性のバランスが悪かった。
特定St系エラストマー(1b)を含有せず、代わりに比較スチレン系熱可塑性エラストマー3を含有する比較例3は、耐熱流動性が悪く、解体性が悪いため密着性と解体性のバランスが悪かった。
特定オレフィン系エラストマー(1c)を含有しない比較例4は、密着性と解体性とのバランスが優れるものの、作業性、耐熱クリープ性が悪かった。
芳香族系石油樹脂(2a)を含有しない比較例5は、密着性及び解体性が悪いため密着性と解体性のバランスが悪かった。
テルペンフェノール樹脂(2b)を含有しない比較例6は、作業性、解体性が悪いため密着性と解体性のバランスが悪かった。
テルペンフェノール樹脂(2b)を含有せず、代わりにポリテルペン樹脂を含有する比較例7は、作業性が悪く、密着性が悪いため密着性と解体性のバランスが悪かった。
非晶性ポリアルファオレフィン(2c)を含有しない比較例8は、密着性が悪いため密着性と解体性のバランスが悪かった。
高分子量パラフィンオイル(3a)を含有しない比較例9は、耐熱流動性、耐揮発性が悪かった。
特定St系エラストマー(1b)、特定オレフィン系エラストマー(1c)及びテルペンフェノール樹脂(2b)を含有しない比較例10は、耐熱クリープ性が悪かった。
特定St系エラストマー(1b)、特定オレフィン系エラストマー(1c)、テルペンフェノール樹脂(2b)及び非晶性ポリアルファオレフィン(2c)を含有せず、テルペンフェノール樹脂(2b)の代わりにポリテルペン樹脂を含有する比較例11は、作業性が悪く、密着性が悪いため密着性と解体性のバランスが悪く、耐熱クリープ性が悪かった。
特定St系エラストマー(1b)、特定オレフィン系エラストマー(1c)及びテルペンフェノール樹脂(2b)を含有せず、テルペンフェノール樹脂(2b)の代わりにポリテルペン樹脂を含有する比較例12は、作業性が悪く、密着性が悪いため密着性と解体性のバランスが悪く、耐熱クリープ性が悪かった。
特定St系エラストマー(1b)及び特定オレフィン系エラストマー(1c)を含有しない比較例13は、作業性、耐熱クリープ性が悪かった。
特定オレフィン系エラストマー(1c)、テルペンフェノール樹脂(2b)、非晶性ポリアルファオレフィン(2c)及び低分子量パラフィンオイル(3b)を含有しない比較例14は、耐揮発性、耐熱クリープ性が悪かった。
特定St系エラストマー(1a)を含有せず、代わりに比較スチレン系熱可塑性エラストマー2を含有し、特定St系エラストマー(1b)、非晶性ポリアルファオレフィン(2c)及び低分子量パラフィンオイル(3b)を含有しない比較例15は、密着性が強すぎて解体できず、密着性と解体性のバランスが悪かった。
特定St系エラストマー(1b)を含有せず、代わりに比較スチレン系熱可塑性エラストマー2を含有する比較例18は、耐熱流動性が悪かった。
【0089】
これに対して、本発明の組成物は、作業性、耐熱流動性、密着性と解体性のバランス、耐揮発性及び耐熱クリープ性が優れた。