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特許7395216乾燥食用植物を含む組成物、その製造方法及び保存性向上方法
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  • 特許-乾燥食用植物を含む組成物、その製造方法及び保存性向上方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】乾燥食用植物を含む組成物、その製造方法及び保存性向上方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/10 20160101AFI20231204BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20231204BHJP
【FI】
A23L27/10 C
A23L19/00 Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022561102
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2022010464
(87)【国際公開番号】W WO2022191265
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2021040710
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香月 真央
(72)【発明者】
【氏名】阪野 優佳
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/136981(WO,A1)
【文献】特開2017-225417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/10
A23L 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(1)~(6)をすべて充足する、乾燥食用植物を乾燥質量換算で10質量%~100質量%含む乾燥粉砕組成物。
(1)炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量が乾燥質量換算で0.05ppb以上200000ppb以下
(2)γ-テルピネン含有量が乾燥質量換算で0.01ppb以上100000ppb以下
(3)γ-テルピネン含有量に対する、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量の割合が乾燥質量換算で0.001質量%以上
(4)乾量基準含水率が30質量%未満
(5)γ-テルピネン含有量に対するβ-ヨノン含有量の割合が乾燥質量換算で0.002質量%以上8000質量%未満
(6)乾燥粉砕組成物の2質量%エタノール分散液における超音波処理後の単位体積当たり比表面積が0.02m2/mL以上
【請求項2】
βーヨノン含有量が乾燥質量換算で0.01ppb以上50000ppb以下である、請求項1に記載の乾燥粉砕組成物。
【請求項3】
γ-テルピネン含有量に対するβ-ヨノン含有量の割合が乾燥質量換算で0.002質量%以上3000質量%未満である、請求項1又は2に記載の乾燥粉砕組成物。
【請求項4】
固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法を用いて、サンプル温度80℃20分で揮発性成分を抽出して測定した場合における、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計ピーク面積値に対する、β-カリオフィレンピーク面積値の割合が0.0002%超である、請求項1~3の何れか一項に記載の乾燥粉砕組成物。
【請求項5】
炭素数6の直鎖型脂肪酸含有量に対する、炭素数7の直鎖型脂肪酸含有量の割合が200質量%未満である請求項1~4の何れか一項に記載の乾燥粉砕組成物。
【請求項6】
乾式粉砕された状態の粉砕組成物である、請求項1~5の何れか一項に記載の乾燥粉砕組成物。
【請求項7】
食用植物が、乾燥質量換算でγ-テルピネン含有量が0.01ppb以上のγーテルピネン含有食用植物である、請求項1~6の何れか一項に記載の乾燥粉砕組成物。
【請求項8】
食用植物が、野菜類、果実類及び種実類から選択される1又は2以上の食用植物を含む、請求項1~7の何れか一項に記載の乾燥粉砕組成物。
【請求項9】
食用植物が、セリ科植物を含む、請求項1~8の何れか一項に記載の乾燥粉砕組成物。
【請求項10】
食用植物が、ニンジン、セロリ、パセリ、セリ及びパクチーから選択される1又は2以上の食用植物を含む、請求項1~9の何れか一項に記載の乾燥粉砕組成物。
【請求項11】
乾燥粉砕組成物の2質量%エタノール分散液における超音波処理後の単位体積当たり比表面積が0.02m2/mL以上2.00m2/mL以下である、請求項1~10の何れか一項に記載の乾燥粉砕組成物。
【請求項12】
乾燥粉砕組成物の2質量%エタノール分散液における超音波処理前の単位体積当り比表面積(γB)と超音波処理後の単位体積当り比表面積(γA)との比(γB/γA)が0.01以上0.99以下である、請求項1~11の何れか一項に記載の乾燥粉砕組成物。
【請求項13】
乾燥粉砕組成物の2質量%エタノール分散液における超音波処理後の個数基準平均径が0.1μm以上30μm未満である、請求項1~12の何れか一項に記載の乾燥粉砕組成物。
【請求項14】
マンセル表色系における色相が0YR乃至10YR又は0Y乃至5Yである、請求項1~13の何れか一項に記載の乾燥粉砕組成物。
【請求項15】
マンセル表色系における明度が9.0未満である、請求項1~14の何れか一項に記載の乾燥粉砕組成物。
【請求項16】
マンセル表色系における彩度が4超である、請求項1~15の何れか一項に記載の乾燥粉砕組成物。
【請求項17】
請求項1~16の何れか一項に記載の乾燥粉砕組成物を10質量%以上含有する飲食品。
【請求項18】
γ-テルピネン含有量が乾燥質量換算で0.01ppb以上100000ppb以下含有する食用植物を粉砕処理し、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量を乾燥質量換算で0.05ppb以上200000ppb以下かつγ-テルピネン含有量に対する炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量の割合が乾燥質量換算で0.001質量%以上、γ-テルピネン含有量に対するβ-ヨノン含有量の割合が乾燥質量換算で0.002質量%以上8000質量%未満、乾燥粉砕組成物の2質量%エタノール分散液における超音波処理後の単位体積当たり比表面積が0.02m 2 /mL以上となるように含有させ、任意の段階で食用植物を乾量基準含水率30質量%未満となるまで乾燥処理することを特徴とする、請求項1~16の何れか一項に記載の乾燥食用植物を乾燥質量換算で10質量%~100質量%含む乾燥粉砕組成物の製造方法。
【請求項19】
更に、γ-テルピネン含有量に対する炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量の割合が乾燥処理中に増加する、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
粉砕処理が乾式粉砕処理である、請求項18又は19に記載の製造方法。
【請求項21】
乾燥処理前後で、γ-テルピネン含有量に対する炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸合計含有量の割合が乾燥質量換算で100質量%以上増加する、請求項18~20の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項22】
γ-テルピネン含有量が乾燥質量換算で0.01ppb以上100000ppb以下含有する食用植物を粉砕処理し、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量を乾燥質量換算で0.05ppb以上200000ppb以下含有させ、任意の段階で食用植物を乾量基準含水率30質量%未満となるまで乾燥処理し、乾燥食用植物におけるγ-テルピネン含有量に対する、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量の割合が乾燥質量換算で0.001質量%以上、γ-テルピネン含有量に対するβ-ヨノン含有量の割合が乾燥質量換算で0.002質量%以上8000質量%未満、乾燥粉砕組成物の2質量%エタノール分散液における超音波処理後の単位体積当たり比表面積が0.02m 2 /mL以上となるように調整することを特徴とする、乾燥食用植物を乾燥質量換算で10質量%~100質量%含む乾燥粉砕組成物の保存性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥食用植物を含む組成物、その製造方法及び保存性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品の劣化臭を抑制する技術として、加熱劣化臭を有する食品に低級脂肪酸類を添加する技術(特許文献1)、含硫アミノ酸及び/又は不飽和脂肪酸を含有する飲食物にグルコース重合度10以上の糖成分を含有し低温でゲル化しない糖組成物を添加する技術(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-225417号公報
【文献】特開2008-295335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1は粉末醤油や酵母エキス等の加熱乾燥処理時に生じる劣化臭を、イソ吉草酸やイソ酪酸などの低級脂肪酸によって改善する方法であり、特許文献2は乳又は乳製品の加熱劣化臭を、特定の糖組成物を添加することによって抑制しようとするものであり、野菜や果実などの食用植物の乾燥処理物の劣化臭に適用できる技術ではなかった。
本発明の課題は、γ-テルピネンを含有する乾燥食用植物に生じる干草臭を抑制する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、γ-テルピネンを含有する乾燥食用植物に生じる干草臭を抑制する手段を開発すべく種々検討したところ、特定の直鎖型脂肪酸合計含有量、及びγ-テルピネン含有量に対する当該直鎖型脂肪酸合計含有量の割合をそれぞれ所定範囲内とすることで、γ-テルピネンを含有する乾燥食用植物の干草臭が改善し、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、次の発明[1]~[22]を提供するものである。
[1]次の(1)~(4)をすべて充足する乾燥食用植物を含む組成物。
(1)炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量が乾燥質量換算で0.05ppb以上、又は0.10ppb以上、又は0.50ppb以上、又は1.00ppb以上、又は3.00ppb以上、又は5.00ppb以上、又は7.00ppb以上、又は9.00ppb以上、又は10.0ppb以上、又は12.0ppb以上、又は15.0ppb以上、又は18.0ppb以上、又は20.0ppb以上、又は50.0ppb以上、又は90.0ppb以上、又は200ppb以上、又は500ppb以上であり、上限は限定されないが通常200000ppb以下、又は180000ppb以下、又は150000ppb以下、又は120000ppb以下、又は90000ppb以下、又は60000ppb以下、又は30000ppb以下、又は10000ppb以下である
(2)γ-テルピネン含有量が乾燥質量換算で0.01ppb以上、又は0.03ppb以上、又は0.05ppb以上、又は0.10ppb以上、又は0.20ppb以上、又は0.30ppb以上、又は0.40ppb以上、又は0.50ppb以上、又は1.00ppb以上、又は5.00ppb以上、又は10.0ppb以上、又は15.0ppb以上、又は20.0ppb以上、又は30.0ppb以上、又は40.0ppb以上、又は50.0ppb以上、又は80.0ppb以上、又は100ppb以上、又は150ppb以上、又は200ppb以上、又は400ppb以上、又は600ppb以上、又は800ppb以上、又は1000ppb以上、又は1200ppb以上、又は1500ppb以上、又は2000ppb以上であり、その上限は限定されないが通常100000ppb以下、又は80000ppb以下、又は60000ppb以下、又は50000ppb以下、又は40000ppb以下、又は30000ppb以下、又は20000ppb以下、又は15000ppb以下、又は10000ppb以下、又は9000ppb以下である
(3)γ-テルピネン含有量に対する、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量の割合が乾燥質量換算で0.001質量%以上、又は0.002質量%以上、又は0.003質量%以上、又は0.004質量%以上、又は0.005質量%以上、又は0.006質量%以上、又は0.007質量%以上、又は0.008質量%以上、又は0.009質量%以上、又は0.010質量%以上、又は0.040質量%以上、又は0.060質量%以上、又は0.080質量%以上、又は0.10質量%以上、又は0.30質量%以上、又は0.60質量%以上、又は1.00質量%以上、又は2.00質量%以上、又は3.00質量%以上、又は4.00質量%以上、又は5.00質量%以上、又は6.00質量%以上であり、上限は特に限定されないが、通常10000質量%未満、又は8000質量%未満、又は6000質量%未満、又は5500質量%未満、又は4500質量%未満、又は4000質量%未満、又は3500質量%未満、又は3000質量%未満、又は2500質量%未満、又は2000質量%未満、又は1500質量%未満、又は1000質量%未満、又は900質量%未満、又は800質量%未満、又は700質量%未満、又は600質量%未満、又は500質量%未満、又は400質量%未満、又は300質量%未満、又は200質量%未満、又は180質量%未満、又は170質量%未満、又は160質量%未満、又は150質量%未満、又は140質量%未満である
(4)乾量基準含水率が30質量%未満、又は25質量%未満、又は20質量%未満、又は15質量%未満、又は10質量%未満であり、その下限は通常0.5質量%以上、又は1.0質量%以上、又は1.5質量%以上、又は2.0質量%以上である
[2]β-ヨノン含有量が乾燥質量換算で0.01ppb以上、又は0.05ppb以上、又は0.10ppb以上、又は0.50ppb以上、又は1.0ppb以上であり、その上限としては通常50000ppb以下、又は30000ppb以下、又は20000ppb以下、又は10000ppb以下、又は5000ppb以下、又は1000ppb以下である、[1]に記載の乾燥食用植物を含む組成物。
[3]γ-テルピネン含有量に対する、β-ヨノン含有量の割合が乾燥質量換算で0.001質量%以上、又は0.002質量%以上、又は0.003質量%以上、又は0.004質量%以上、又は0.005質量%以上、又は0.006質量%以上、又は0.007質量%以上、又は0.008質量%以上、又は0.009質量%以上、又は0.010質量%以上であり、その上限は特に限定されないが、例えば通常12000質量%未満、又は10000質量%未満、又は8000質量%未満、又は6000質量%未満、又は3000質量%未満、又は1000質量%未満、又は900質量%未満、又は800質量%未満、又は700質量%未満、又は600質量%未満、又は550質量%未満、又は500質量%以下、又は400質量%未満、又は300質量%未満、又は200質量%未満、又は100質量%未満、又は30質量%未満、又は10質量%未満、又は5質量%未満である、[1]又は[2]に記載の乾燥食用植物を含む組成物。
[4]固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法を用いて、サンプル温度80℃20分で揮発性成分を抽出して測定した場合における、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計ピーク面積値に対する、β-カリオフィレンピーク面積値の割合が0.0002%超、又は0.0005%超、又は0.0008%超、又は0.0010%超、又は0.0020%超、又は0.0030%超、又は0.0040%超、又は0.0050%超、又は0.010%超、又は0.050%超、又は0.10%超、又は0.50%超、又は1.0%超、又は5.0%超、又は10.0%超であり、その上限は特に限定されないが、例えば通常10000%未満、又は9000%未満、又は8000%未満、又は7000%未満、又は6000%未満、又は5000%未満、又は4000%未満、又は3000%未満、又は2000%未満又は1000%未満、又は500%未満、特に300%未満である、[1]~[3]の何れかに記載の乾燥食用植物を含む組成物。
[5]炭素数6の直鎖型脂肪酸含有量に対する、炭素数7の直鎖型脂肪酸含有量の割合が200質量%未満、又は195質量%未満、又は190質量%未満、又は185質量%未満、又は180質量%未満、又は175質量%未満、又は170質量%未満、又は165質量%未満、又は160質量%未満、又は155質量%未満、又は150質量%以下であり、その下限は特に制限されないが、通常0質量%以上、又は1質量%以上、又は3質量%以上、又は5質量%以上である[1]~[4]の何れかに記載の乾燥食用植物を含む組成物。
[6]乾式粉砕された状態の粉砕組成物である、[1]~[5]の何れかに記載の乾燥食用植物を含む組成物。
[7]食用植物が、乾燥質量換算でγ-テルピネン含有量が0.01ppb以上、又は0.03ppb以上、又は0.05ppb以上、又は0.10ppb以上、又は0.20ppb以上、又は0.30ppb以上、又は0.40ppb以上、又は0.50ppb以上、又は1.00ppb以上、又は5.00ppb以上、又は10.0ppb以上、又は15.0ppb以上、又は20.0ppb以上、又は30.0ppb以上、又は40.0ppb以上、又は50.0ppb以上、又は80.0ppb以上、又は100ppb以上、又は150ppb以上、又は200ppb以上、又は400ppb以上、又は600ppb以上、又は800ppb以上、又は1000ppb以上、又は1200ppb以上、又は1500ppb以上、又は2000ppb以上であり、その上限は限定されないが通常100000ppb以下、又は80000ppb以下、又は60000ppb以下、又は50000ppb以下、又は40000ppb以下、又は30000ppb以下、又は20000ppb以下、又は15000ppb以下、又は10000ppb以下、又は9000ppb以下のγーテルピネン含有食用植物である、[1]~[6]の何れかに記載の乾燥食用植物を含む組成物。
[8]食用植物が、野菜類、果実類、及び種実類から選択される1又は2以上の食用植物を含む、[1]~[7]の何れかに記載の乾燥食用植物を含む組成物。
[9]食用植物が、セリ科植物を含む、[1]~[8]の何れかに記載の乾燥食用植物を含む組成物。
[10]食用植物が、ニンジン、セロリ、パセリ、セリ、及びパクチーから選択される1又は2以上の食用植物を含む、[1]~[9]の何れかに記載の乾燥食用植物を含む組成物。
[11]乾燥食用植物を含む組成物の2質量%エタノール分散液における超音波処理後の単位体積当たり比表面積が0.02m2/mL以上、又は0.03m2/mL以上、又は0.04m2/mL以上、又は0.05m2/mL以上、又は0.10m2/mL以上、又は0.15m2/mL以上であり、その上限は限定されないが、通常2.00m2/mL以下、又は1.90m2/mL以下、又は1.80m2/mL以下である、[1]~[10]の何れかに記載の乾燥食用植物を含む組成物。
[12]乾燥食用植物を含む組成物の2質量%エタノール分散液における超音波処理前の単位体積当り比表面積(γB)と超音波処理後の単位体積当り比表面積(γA)との比(γB/γA)が0.99以下、又は0.95以下、又は0.90以下、又は0.85以下、又は0.80以下であると共に、その下限が0.01以上、又は0.10以上である、[1]~[11]の何れかに記載の乾燥食用植物を含む組成物。
[13]乾燥食用植物を含む組成物の2質量%エタノール分散液における超音波処理後の個数基準平均径が30μm未満、又は25μm以下、又は20μm以下、又は15μm以下、又は10μm以下であると共に、その下限が通常0.1μm以上である、[1]~[12]の何れかに記載の乾燥食用植物を含む組成物。
[14]マンセル表色系における色相が0YR乃至10YR又は0Y乃至5Y、又は0YR乃至10YR、又は2.5YR乃至10YR、又は2.5YR乃至7.5YR、又は5.0YR乃至7.5YRである、[1]~[13]の何れかに記載の乾燥食用植物を含む組成物。
[15]マンセル表色系における明度が9.0未満、又は8.5未満であり、その下限は特に制限されないが、1.0以上、又は3.0以上、又は5.0以上である、[1]~[14]の何れかに記載の乾燥食用植物を含む組成物。
[16]マンセル表色系における彩度が4超、又は5超、又は6超、又は7超であり、上限は特に制限されないが、通常14以下である、[1]~[15]の何れかに記載の乾燥食用植物を含む組成物。
[17][1]~[16]の何れかに記載の乾燥食用植物を含む組成物を10質量%以上、又は20質量%以上、又は30質量%以上、又は40質量%以上、上限は特に制限さないが、通常100質量%以下含有する飲食品。
[18]γ-テルピネン含有量が乾燥質量換算で0.01ppb以上、又は0.03ppb以上、又は0.05ppb以上、又は0.10ppb以上、又は0.20ppb以上、又は0.30ppb以上、又は0.40ppb以上、又は0.50ppb以上、又は1.00ppb以上、又は5.00ppb以上、又は10.0ppb以上、又は15.0ppb以上、又は20.0ppb以上、又は30.0ppb以上、又は40.0ppb以上、又は50.0ppb以上、又は80.0ppb以上、又は100ppb以上、又は150ppb以上、又は200ppb以上、又は400ppb以上、又は600ppb以上、又は800ppb以上、又は1000ppb以上、又は1200ppb以上、又は1500ppb以上、又は2000ppb以上であると共に、その上限が100000ppb以下、又は80000ppb以下、又は60000ppb以下、又は50000ppb以下、又は40000ppb以下、又は30000ppb以下、又は20000ppb以下、又は15000ppb以下、又は10000ppb以下、又は9000ppb以下である食用植物を粉砕処理し、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量を乾燥質量換算で0.05ppb以上、又は0.10ppb以上、又は0.50ppb以上、又は1.00ppb以上、又は3.00ppb以上、又は5.00ppb以上、又は7.00ppb以上、又は9.00ppb以上、又は10.0ppb以上、又は12.0ppb以上、又は15.0ppb以上、又は18.0ppb以上、特に20.0ppb以上であると共に、上限が200000ppb以下、又は180000ppb以下、又は150000ppb以下、又は120000ppb以下、又は90000ppb以下、又は60000ppb以下、又は30000ppb以下、かつγ-テルピネン含有量に対する炭素数が6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量の割合が乾燥質量換算で0.001質量%以上、又は0.002質量%以上、又は0.003質量%以上、又は0.004質量%以上、又は0.005質量%以上、又は0.006質量%以上、又は0.007質量%以上、又は0.008質量%以上、又は0.009質量%以上、又は0.010質量%以上、又は0.040質量%以上、又は0.060質量%以上、又は0.080質量%以上、又は0.10質量%以上、又は0.30質量%以上、又は0.60質量%以上、又は1.00質量%以上、又は2.00質量%以上、又は3.00質量%以上、又は4.00質量%以上、又は5.00質量%以上、又は6.00質量%以上であり、その上限は特に限定されないが、例えば通常10000質量%未満、又は8000質量%未満、又は6000質量%未満、又は5500質量%未満、又は4500質量%未満、又は4000質量%未満、又は3500質量%未満、又は3000質量%未満、又は2500質量%未満、又は2000質量%未満、又は1500質量%未満、又は1000質量%未満、又は900質量%未満、又は800質量%未満、又は700質量%未満、又は600質量%未満、又は500質量%未満、又は400質量%未満、又は300質量%未満、又は200質量%未満、又は180質量%未満、又は170質量%未満、又は160質量%未満、又は150質量%未満、又は140質量%未満となるように含有させ、任意の段階で食用植物を乾量基準含水率30質量%未満、又は25質量%未満、又は20質量%未満、又は15質量%未満、又は10質量%未満であり、その下限は制限されるものではないが、通常0.5質量%以上、又は1.0質量%以上、又は1.5質量%以上、又は2.0質量%以上となるまで乾燥処理することを特徴とする、[1]~[16]の何れかに記載の乾燥食用植物を含む組成物の製造方法。
[19]更に、γ-テルピネン含有量に対する炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量の割合が乾燥処理中に増加する、[18]に記載の製造方法。
[20]粉砕処理が乾式粉砕処理である、[18]又は[19]に記載の製造方法。
[21]乾燥処理前後で、γ-テルピネン含有量に対する炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸合計含有量の増加割合が乾燥質量換算で100質量%以上、又は150質量%以上、又は200質量%以上であり、その上限は特に制限されないが、通常100000質量%以下、又は50000質量%以下、又は10000質量%以下増加する、[18]~[20]の何れかに記載の製造方法。
[22]γ-テルピネン含有量が乾燥質量換算で0.01ppb以上、又は0.03ppb以上、又は0.05ppb以上、又は0.10ppb以上、又は0.20ppb以上、又は0.30ppb以上、又は0.40ppb以上、又は0.50ppb以上、又は1.00ppb以上、又は5.00ppb以上、又は10.0ppb以上、又は15.0ppb以上、又は20.0ppb以上、又は30.0ppb以上、又は40.0ppb以上、又は50.0ppb以上、又は80.0ppb以上、又は100ppb以上、又は150ppb以上、又は200ppb以上、又は400ppb以上、又は600ppb以上、又は800ppb以上、又は1000ppb以上、又は1200ppb以上、又は1500ppb以上、又は2000ppb以上であると共に、その上限が100000ppb以下、又は80000ppb以下、又は60000ppb以下、又は50000ppb以下、又は40000ppb以下、又は30000ppb以下、又は20000ppb以下、又は15000ppb以下、又は10000ppb以下、又は9000ppb以下である食用植物を粉砕処理し、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量を乾燥質量換算で0.05ppb以上、又は0.10ppb以上、又は0.50ppb以上、又は1.00ppb以上、又は3.00ppb以上、又は5.00ppb以上、又は7.00ppb以上、又は9.00ppb以上、又は10.0ppb以上、又は12.0ppb以上、又は15.0ppb以上、又は18.0ppb以上、特に20.0ppb以上であると共に、上限が200000ppb以下、又は180000ppb以下、又は150000ppb以下、又は120000ppb以下、又は90000ppb以下、又は60000ppb以下、又は30000ppb以下含有させ、任意の段階で食用植物を乾量基準含水率30質量%未満、又は25質量%未満、又は20質量%未満、又は15質量%未満、又は10質量%未満であり、その下限は制限されるものではないが、通常0.5質量%以上、又は1.0質量%以上、又は1.5質量%以上、又は2.0質量%以上となるまで乾燥処理し、乾燥食用植物におけるγ-テルピネン含有量に対する、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量の割合が乾燥質量換算で0.001質量%以上、又は0.002質量%以上、又は0.003質量%以上、又は0.004質量%以上、又は0.005質量%以上、又は0.006質量%以上、又は0.007質量%以上、又は0.008質量%以上、又は0.009質量%以上、又は0.010質量%以上、又は0.040質量%以上、又は0.060質量%以上、又は0.080質量%以上、又は0.10質量%以上、又は0.30質量%以上、又は0.60質量%以上、又は1.00質量%以上、又は2.00質量%以上、又は3.00質量%以上、又は4.00質量%以上、又は5.00質量%以上、又は6.00質量%以上であり、その上限は特に限定されないが、例えば通常10000質量%未満、又は8000質量%未満、又は6000質量%未満、又は5500質量%未満、又は4500質量%未満、又は4000質量%未満、又は3500質量%未満、又は3000質量%未満、又は2500質量%未満、又は2000質量%未満、又は1500質量%未満、又は1000質量%未満、又は900質量%未満、又は800質量%未満、又は700質量%未満、又は600質量%未満、又は500質量%未満、又は400質量%未満、又は300質量%未満、又は200質量%未満、又は180質量%未満、又は170質量%未満、又は160質量%未満、又は150質量%未満、又は140質量%未満となるように調整することを特徴とする、乾燥食用植物を含む組成物の保存性向上方法。
[23]乾量基準含水率30質量%未満、又は20質量%以下、又は10質量%以下、下限は特に限定されないが、通常0質量%以上、又は0.5質量%以上の乾燥食用植物を含有する飲食品において、γ-テルピネン含有量を乾燥質量換算で0.01ppb以上、又は0.03ppb以上、又は0.05ppb以上、又は0.10ppb以上、又は0.20ppb以上、又は0.30ppb以上、又は0.40ppb以上、又は0.50ppb以上、又は1.00ppb以上、又は5.00ppb以上、又は10.0ppb以上、又は15.0ppb以上、又は20.0ppb以上、又は30.0ppb以上、又は40.0ppb以上、又は50.0ppb以上、又は80.0ppb以上、又は100ppb以上、又は150ppb以上、又は200ppb以上、又は400ppb以上、又は600ppb以上、又は800ppb以上、又は1000ppb以上、又は1200ppb以上、又は1500ppb以上、又は2000ppb以上であると共に、その上限が100000ppb以下、又は80000ppb以下、又は60000ppb以下、又は50000ppb以下、又は40000ppb以下、又は30000ppb以下、又は20000ppb以下、又は15000ppb以下、又は10000ppb以下、又は9000ppb以下含有させ、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量を乾燥質量換算で0.05ppb以上、又は0.10ppb以上、又は0.50ppb以上、又は1.00ppb以上、又は3.00ppb以上、又は5.00ppb以上、又は7.00ppb以上、又は9.00ppb以上、又は10.0ppb以上、又は12.0ppb以上、又は15.0ppb以上、又は18.0ppb以上、特に20.0ppb以上であると共に、上限が200000ppb以下、又は180000ppb以下、又は150000ppb以下、又は120000ppb以下、又は90000ppb以下、又は60000ppb以下、又は30000ppb以下含有させ、飲食品におけるγ-テルピネン含有量に対する、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸合計含有量の割合が乾燥質量換算で0.001質量%以上、又は0.002質量%以上、又は0.003質量%以上、又は0.004質量%以上、又は0.005質量%以上、又は0.006質量%以上、又は0.007質量%以上、又は0.008質量%以上、又は0.009質量%以上、又は0.010質量%以上、又は0.040質量%以上、又は0.060質量%以上、又は0.080質量%以上、又は0.10質量%以上、又は0.30質量%以上、又は0.60質量%以上、又は1.00質量%以上、又は2.00質量%以上、又は3.00質量%以上、又は4.00質量%以上、又は5.00質量%以上、又は6.00質量%以上であり、その上限は特に限定されないが、例えば通常10000質量%未満、又は8000質量%未満、又は6000質量%未満、又は5500質量%未満、又は4500質量%未満、又は4000質量%未満、又は3500質量%未満、又は3000質量%未満、又は2500質量%未満、又は2000質量%未満、又は1500質量%未満、又は1000質量%未満、又は900質量%未満、又は800質量%未満、又は700質量%未満、又は600質量%未満、又は500質量%未満、又は400質量%未満、又は300質量%未満、又は200質量%未満、又は180質量%未満、又は170質量%未満、又は160質量%未満、又は150質量%未満、又は140質量%未満となるように調整することを特徴とする、当該飲食品の保存性向上方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、γーテルピネンを含有する乾燥食用植物の干草臭を、特定の直鎖型脂肪酸によって抑制することで、香りのバランスが良く、保存性の高い乾燥食用植物を含む組成物、及び飲食品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】マンセル表色系におけるマンセル色相環を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
なお、本発明において任意の数値範囲規定について複数の上限値及び/又は複数の下限値を示す場合、特に明示されない場合であっても少なくとも上限規定の最大値と下限規定の最小値とを組み合わせた数値範囲規定が直接的に記載されており、さらに当該上限値のうち任意の上限値と当該下限値のうち任意の下限値とを組み合わせて得られる全ての数値範囲が本発明の対象として意図される。例えば、後述のヘプタン酸/カプロン酸比の範囲規定における「上限が通常200質量%未満・・・中でも195質量%未満、更には190質量%未満、とりわけ185質量%未満、又は180質量%未満、又は175質量%未満、又は170質量%未満、又は165質量%未満、又は160質量%未満、又は155質量%未満、特に150質量%以下であることが好ましい。」及び「下限は特に制限されないが、通常0質量%以上、又は1質量%以上、又は3質量%以上、又は5質量%以上」との記載は、開示された上限と下限とを任意で組み合わせて得られる全ての数値範囲、即ち、0質量%以上200質量%未満、0質量%以上195質量%未満、0質量%以上190質量%未満、0質量%以上185質量%未満、0質量%以上180質量%未満、0質量%以上175質量%未満、0質量%以上170質量%未満、0質量%以上165質量%未満、0質量%以上160質量%未満、0質量%以上155質量%未満、0質量%以上150質量%以下、1質量%以上200質量%未満、1質量%以上195質量%未満、1質量%以上190質量%未満、1質量%以上185質量%未満、1質量%以上180質量%未満、1質量%以上175質量%未満、1質量%以上170質量%未満、1質量%以上165質量%未満、1質量%以上160質量%未満、1質量%以上155質量%未満、1質量%以上150質量%以下、3質量%以上200質量%未満、3質量%以上195質量%未満、3質量%以上190質量%未満、3質量%以上185質量%未満、3質量%以上180質量%未満、3質量%以上175質量%未満、3質量%以上170質量%未満、3質量%以上165質量%未満、3質量%以上160質量%未満、3質量%以上155質量%未満、3質量%以上150質量%以下、5質量%以上200質量%未満、5質量%以上195質量%未満、5質量%以上190質量%未満、5質量%以上185質量%未満、5質量%以上180質量%未満、5質量%以上175質量%未満、5質量%以上170質量%未満、5質量%以上165質量%未満、5質量%以上160質量%未満、5質量%以上155質量%未満、5質量%以上150質量%以下、の全てが本発明の対象に含まれることを意味する。
【0010】
[乾燥食用植物を含む組成物]
本発明の一側面は、γ-テルピネンを含有する乾燥食用植物を含む組成物であって、更に直鎖型脂肪酸を含有すると共に、これらの含有量が後述の要件を充足する組成物(これを適宜「本発明の乾燥食用植物を含む組成物」、「本発明の組成物」、又は単に「組成物」と称する。)に関する。また、本発明における「乾燥食用植物を含む組成物」における乾燥食用植を含む割合は特に限定されるものではなく、例えば乾燥食用植物を組成物全体に対して10質量%以上100質量%以下の範囲で含有してもよい。より具体的にはその下限が10質量%以上であることが好ましく、又は20質量%以上がより好ましく、又は30質量%以上がより好ましく、又は40質量%以上がより好ましく、又は50質量%以上がより好ましく、又は60質量%以上がより好ましく、又は70質量%以上がより好ましく、又は80質量%以上がより好ましく、又は90質量%以上が特に好ましい。また、上限は100質量%(すなわち乾燥食用植物のみからなる組成物)、又は100質量%以下である。
【0011】
[炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量(これを適宜「直鎖型脂肪酸含有量」、「脂肪酸含有量」と称する。)が所定範囲内である。これにより、γ-テルピネンを含有する組成物の干草臭が改善されるという効果が奏される。本発明において「干草臭」とは、γ-テルピネンの乾燥工程における変質によって生じる温かみのあるハーブ様の劣化臭を表す。具体的には、乾燥質量換算で最終的な組成物における脂肪酸含有量は例えば0.05ppb以上200000ppb以下の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその下限が通常0.05ppb以上である。中でも0.10ppb以上、更には0.50ppb以上、とりわけ1.00ppb以上、又は3.00ppb以上、又は5.00ppb以上、又は7.00ppb以上、又は9.00ppb以上、又は10.0ppb以上、又は12.0ppb以上、又は15.0ppb以上、又は18.0ppb以上、又は20.0ppb以上、又は50.0ppb以上、又は90.0ppb以上、又は200ppb以上、又は500ppb以上であることが好ましい。一方、その含有量が高すぎると当該成分の香りが目立ちすぎて香りのバランスを損なう場合があるため、その上限は通常200000ppb以下、中でも180000ppb以下、更には150000ppb以下、とりわけ120000ppb以下、又は90000ppb以下、又は60000ppb以下、又は30000ppb以下、又は10000ppb以下であることが好ましい。
さらに、炭素数6又は7の直鎖型脂肪酸のいずれか一方がそれぞれ前述する所定の含有量であることが好ましく、炭素数6及び7の直鎖型脂肪酸が共に前述する所定の含有量であることが好ましい。また、当該脂肪酸は飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であっても良いが、飽和脂肪酸(すなわちヘキサン酸(カプロン酸)及びヘプタン酸(エナント酸))であることが好ましい。
【0012】
[炭素数6の直鎖型脂肪酸]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量が前記特定量であればよいが、炭素数6の直鎖型脂肪酸(CAS登録番号:142-62-1、別名であるヘキサン酸(hexanoic acid)又はカプロン酸(caproic acid)又はC=6と称する場合がある。)を所定量含有することが好ましい。これにより、γ-テルピネンを含有する乾燥食用植物を含む組成物の干草臭が改善されるという好ましい効果がより顕著に奏される。具体的には、乾燥質量換算で最終的な組成物におけるカプロン酸含有量の下限が通常0.02ppb以上であるのが好ましい。中でも0.03ppb以上、更には0.05ppb以上、とりわけ0.10ppb以上、又は0.50ppb以上、又は1.00ppb以上、又は5.00ppb以上、又は10.0ppb以上、又は20.0ppb以上、又は50.0ppb以上、又は80.0ppb以上、又は110ppb以上、又は150ppb以上、又は200ppb以上、又は250ppb以上、又は300ppb以上、又は350ppb以上、又は400ppb以上、又は600ppb以上、特に800ppb以上であることが好ましい。一方、カプロン酸含有量が高すぎると当該成分の香りが目立ちすぎるため、上限としては通常150000ppb以下、中でも130000ppb以下、更には100000ppb以下、とりわけ90000ppb以下、又は80000ppb以下、又は70000ppb以下、又は60000ppb以下、又は50000ppb以下、又は40000ppb以下、又は30000ppb以下、又は20000ppb以下、又は10000ppb以下、又は8000ppb以下、又は6000ppb以下、又は4000ppb以下、又は2000ppb以下、特に1000ppb以下であることが好ましい。
【0013】
[炭素数7の直鎖型脂肪酸]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量が前記特定量であればよいが、炭素数7の直鎖型脂肪酸(CAS登録番号:111-14-8、別名であるヘプタン酸(heptanoic acid)又はエナント酸(enanthic acid)又はC=7と称する場合がある。)を所定量含有することが好ましい。これにより、γ-テルピネンを含有する組成物の干草臭がより顕著に改善される好ましいという効果が奏される。具体的には、乾燥質量換算で最終的な組成物におけるヘプタン酸含有量の下限が通常0.01ppb以上であるのが好ましい。中でも0.03ppb以上、更には0.05ppb以上、とりわけ0.10ppb以上、又は0.50ppb以上、又は1.00ppb以上、又は5.00ppb以上、又は10.0ppb以上、又は20.0ppb以上、又は50.0ppb以上、又は80.0ppb以上、又は110ppb以上、又は150ppb以上、又は200ppb以上、又は250ppb以上、又は300ppb以上、又は350ppb以上、又は400ppb以上、又は600ppb以上、特に800ppb以上であることが好ましい。一方、ヘプタン酸含有量が高すぎると当該成分の香りが目立ちすぎるため、上限としては通常100000ppb以下、中でも80000ppb以下、更には60000ppb以下、とりわけ40000ppb以下、又は20000ppb以下、又は10500ppb以下、又は8000ppb以下、又は6000ppb以下、又は5000ppb以下、又は4000ppb以下、又は3000ppb以下、特に2000ppb以下であることが好ましい。
【0014】
[炭素数6の直鎖型脂肪酸含有量に対する炭素数7の直鎖型脂肪酸含有量の割合]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量が特定量であればよいが、炭素数6の直鎖型脂肪酸含有量に対する、炭素数7の直鎖型脂肪酸含有量の割合(これを適宜「ヘプタン酸/カプロン酸比」、「C7/C6比」と称する。)が所定割合未満となるように当該成分を含有させることで、脂肪酸特有の刺激臭を抑制でき香りのバランスが良い組成物となるため好ましい。具体的には、乾燥質量換算で最終的な組成物におけるC7/C6比は例えば0質量%以上200質量%未満の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその上限が通常200質量%未満であるのが好ましい。中でも195質量%未満、更には190質量%未満、とりわけ185質量%未満、又は180質量%未満、又は175質量%未満、又は170質量%未満、又は165質量%未満、又は160質量%未満、又は155質量%未満、特に150質量%以下であることが好ましい。一方、下限は特に制限されないが、通常0質量%以上、又は1質量%以上、又は3質量%以上、又は5質量%以上であることが好ましい。
【0015】
[γ-テルピネン]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物においては、最終的な組成物における、γ-テルピネン(CAS登録番号:99-85-4、gamma-Terpinene)の含有量を特定量とするのが干草臭抑制効果を奏するため有用である。具体的には、乾燥質量換算で最終的な組成物におけるγ-テルピネン含有量は例えば0.01ppb以上100000ppb以下の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその下限が通常0.01ppb以上である。中でも0.03ppb以上、更には0.05ppb以上、とりわけ0.10ppb以上、又は0.20ppb以上、又は0.30ppb以上、又は0.40ppb以上、又は0.50ppb以上、又は1.00ppb以上、又は5.00ppb以上、又は10.0ppb以上、又は15.0ppb以上、又は20.0ppb以上、又は30.0ppb以上、又は40.0ppb以上、又は50.0ppb以上、又は80.0ppb以上、又は100ppb以上、又は150ppb以上、又は200ppb以上、又は400ppb以上、又は600ppb以上、又は800ppb以上、又は1000ppb以上、又は1200ppb以上、又は1500ppb以上、特に2000ppb以上の組成物において本発明はより有用であり好ましい。一方、その上限は通常100000ppb以下、中でも80000ppb以下、更には60000ppb以下、とりわけ50000ppb以下、又は40000ppb以下、又は30000ppb以下、又は20000ppb以下、又は15000ppb以下、又は10000ppb以下、特に9000ppb以下であることが好ましい。
【0016】
[γ-テルピネン含有量に対する、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量の割合]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において、γ-テルピネン含有量に対する、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量の割合(これを適宜「脂肪酸/γ-テルピネン比」と称する。)が低すぎると本発明の効果が奏されないため、所定割合以上となるようにこれらの成分を含有すればよい。具体的には、乾燥質量換算で最終的な組成物における脂肪酸/γ-テルピネン比は、例えば0.001質量%以上10000質量%未満の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその下限が通常0.001質量%以上である。中でも0.002質量%以上、更には0.003質量%以上、とりわけ0.004質量%以上、又は0.005質量%以上、又は0.006質量%以上、又は0.007質量%以上、又は0.008質量%以上、又は0.009質量%以上、又は0.010質量%以上、又は0.040質量%以上、又は0.060質量%以上、又は0.080質量%以上、又は0.10質量%以上、又は0.30質量%以上、又は0.60質量%以上、又は1.00質量%以上、又は2.00質量%以上、又は3.00質量%以上、又は4.00質量%以上、又は5.00質量%以上、特に6.00質量%以上であることが好ましい。一方、上限は特に限定されないが、例えば通常10000質量%未満、中でも8000質量%未満、更には6000質量%未満、とりわけ5500質量%未満、又は4500質量%未満、又は4000質量%未満、又は3500質量%未満、又は3000質量%未満、又は2500質量%未満、又は2000質量%未満、又は1500質量%未満、又は1000質量%未満、又は900質量%未満、又は800質量%未満、又は700質量%未満、又は600質量%未満、又は500質量%未満、又は400質量%未満、又は300質量%未満、又は200質量%未満、又は180質量%未満、又は170質量%未満、又は160質量%未満、又は150質量%未満、特に140質量%未満とすることが好ましい。また、乾燥処理によって当該割合が増加(すなわち乾燥処理前後でその値が増加)するように乾燥処理を行うことが好ましい。また、炭素数6又は7の直鎖型脂肪酸のいずれか一方がそれぞれ前述する所定の割合であることが好ましく、炭素数6及び7の直鎖型脂肪酸が共に前述する所定の割合であることが好ましい。また、当該脂肪酸は飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であっても良いが、飽和脂肪酸(すなわちカプロン酸又はヘキサン酸)であることが好ましい。
【0017】
[γ-テルピネン含有量に対する、炭素数6の直鎖型脂肪酸含有量の割合]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において、脂肪酸/γ-テルピネン比が一定割合となるように当該成分を含有すればよいが、特に、γ-テルピネン含有量に対する、炭素数6の直鎖型脂肪酸含有量の割合(これを適宜「カプロン酸/γ-テルピネン比」と称する。)が低すぎると本発明の効果が奏されないため、所定割合以上となるように当該成分を含有するのが好ましい。具体的には、乾燥質量換算で最終的な組成物におけるカプロン酸/γ-テルピネン比の下限が通常0.0005質量%以上であるのが好ましい。中でも0.0008質量%以上、更には0.0010質量%以上、とりわけ0.0030質量%以上、又は0.0050質量%以上、又は0.0070質量%以上、又は0.010質量%以上、又は0.040質量%以上、又は0.070質量%以上、又は0.10質量%以上、又は0.30質量%以上、又は0.60質量%以上、又は1.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は10.0質量%以上、又は15.0質量%以上、又は20.0質量%以上、特に30.0質量%以上であることが好ましい。一方、上限は特に限定されないが、例えば通常5000質量%未満、中でも4000質量%未満、更には3000質量%未満、とりわけ1000質量%未満、又は900質量%未満、又は800質量%未満、又は700質量%未満、又は600質量%未満、又は500質量%未満、又は400質量%未満、又は300質量%未満、又は200質量%未満、特に100質量%未満であることが好ましい。また、乾燥処理によって当該割合が増加(すなわち乾燥処理前後でその値が増加)するように乾燥処理を行うことが好ましい。
【0018】
[γ-テルピネン含有量に対する、炭素数7の直鎖型脂肪酸含有量の割合]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において、脂肪酸/γ-テルピネン比が一定割合となるように当該成分を含有すればよいが、特に、γ-テルピネン含有量に対する、炭素数7の直鎖型脂肪酸含有量の割合(これを適宜「ヘプタン酸/γ-テルピネン比」と称する。)が低すぎると本発明の効果が奏されないため、所定割合以上となるように当該成分を含有するのが好ましい。具体的には、乾燥質量換算で最終的な組成物におけるヘプタン酸/γ-テルピネン比の下限は通常0.0001質量%以上であるのが好ましい。中でも0.0002質量%以上、更には0.0005質量%以上、とりわけ0.0008質量%以上、又は0.0010質量%以上、又は0.0030質量%以上、又は0.0050質量%以上、又は0.0070質量%以上、又は0.010質量%以上、又は0.040質量%以上、又は0.070質量%以上、又は0.10質量%以上、又は0.30質量%以上、又は0.60質量%以上、又は1.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は10.0質量%以上、又は15.0質量%以上、又は20.0質量%以上、特に30.0質量%以上であることが好ましい。一方、上限は特に限定されないが、例えば通常5000質量%未満、中でも4000質量%未満、更には3000質量%未満、とりわけ1000質量%未満、又は900質量%未満、又は800質量%未満、又は700質量%未満、又は600質量%未満、又は500質量%未満、又は400質量%未満、又は300質量%未満、又は200質量%未満、特に100質量%未満であることが好ましい。
さらに、カプロン酸/γーテルピネン比とヘプタン酸/γーテルピネン比とが共に所定割合であることがより好ましい。例えば後述の固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法を用いて当該成分のピーク面積割合が一定割合に調整されていることが好ましい。また、乾燥処理によって当該割合が増加(すなわち乾燥処理前後でその値が増加)するように乾燥処理を行うことが好ましい。
【0019】
[粉砕処理]
γ-テルピネン含有食用植物を乾燥処理に加えて任意の段階で粉砕処理をした場合、本発明の課題がより強く生じるため、本発明の乾燥食用植物を含む組成物は粉砕物(乾燥粉砕食用植物又は粉砕組成物)であることが好ましく、乾燥粉砕物(乾燥粉砕組成物)であることがより好ましい。より具体的には、本発明の乾燥食用植物又はこれを含有する組成物は粉末状であってもよく、チップ状であってもよい。乾燥粉砕食用植物又はこれを含有する粉砕組成物の製造にあたっては、食用植物又はこれを含有する組成物を粉砕処理して調製すればよいが、粉砕食用植物を原料として使用することで組成物そのものでは粉砕処理を行わずに調製することもできる。尚、本発明において粉砕処理は任意の段階で行うことができるが、乾燥処理前に行ってもよく、乾燥処理中に行ってもよく、乾燥処理後に行ってもよいし、それらを組み合わせて行ってもよい。より好ましくは、少なくとも乾燥処理後に粉砕処理を行う事が好ましい。粉砕方法としては、一般的に食品の粉砕に用いられる任意の方法を用いることができる。斯かる粉砕処理のための装置の例としては、ブレンダー、ミキサー、ミル機、混練機、粉砕機、解砕機、磨砕機等の機器類が挙げられるが、これらの何れであってもよい。その装置としては、例えば乾式ビーズミル、ボールミル(転動式、振動式等)等の媒体攪拌ミル、ジェットミル、高速回転型衝撃式ミル(ピンミル等)、ロールミル、ハンマーミル等を用いることができる。また、粉砕時の温度も制限されず、高温粉砕、常温粉砕、低温粉砕の何れであってもよい。粉砕時の圧力も制限されず、高圧粉砕、常圧粉砕、低圧粉砕の何れであってもよい。また、粉砕処理は乾燥状態ではない組成物に対して粉砕を行う湿式粉砕であっても、乾燥状態の組成物に対して粉砕を行う乾式粉砕であっても良いが、乾式粉砕であることが好ましく、特に湿式粉砕工程を経ずに乾式粉砕することが好ましい。特に、粉末状組成物を製造する場合の粉砕が乾式粉砕であることが好ましく、特に湿式粉砕工程を経ずに乾式粉砕することが好ましい。この原理は不明であるが、組成物が後述する微粒子複合体化するためには糖などの水溶性成分を含有する状態の粒子が接触する乾式粉砕を行うことが好ましく、乾式粉砕を選択することで粒子同士が後述する微粒子複合体を形成し、比表面積が小さくなり、干草臭の生成が抑制されると考えられる。従って、本発明の組成物についても、乾式粉砕された状態(より好ましくは湿式粉砕工程を経ずに乾式粉砕された状態)の組成物であることがより好ましく、乾式粉砕された状態(より好ましくは湿式粉砕工程を経ずに乾式粉砕された状態)の粉末状組成物であることがより好ましい。
また、本発明において食用植物を任意の段階でブランチング処理することは、食用植物中の酵素を変性させ、干草臭前駆体が生成されない組成物にできるため、好ましい。ブランチング処理は粉砕処理前でも、粉砕処理中でも、粉砕処理後でも実施できるが、特にチップ状に粉砕処理した後に攪拌しながらブランチング処理(85℃達温)を行うことはドリップを抑えることができるためより好ましい。更にチップ状に粉砕処理した後に攪拌しながらブランチング処理(85℃達温)を行った食用植物チップについて乾燥処理(より好ましくは後述する低圧低温乾燥)を行うことで乾燥チップ状組成物とすることがより好ましい。特に、チップ状に粉砕処理した後に攪拌しながらブランチング処理(85℃達温)を行った食用植物チップについてさらに乾燥処理(より好ましくは後述する低圧低温乾燥)を行い、その後粉砕(より好ましくは前述の乾式粉砕)を行うことで乾燥粉末状組成物とすることが好ましい。また、本発明において食用植物を任意の段階で冷凍処理することができるが、粉砕処理前に冷凍処理を行いドリップと冷凍保管組成物を合わせて粉砕処理に供することで香りの豊かな組成物となるため好ましい。
【0020】
[乾燥処理]
乾燥食用植物、乾燥粉砕食用植物、乾燥組成物又は乾燥粉砕組成物の製造にあたっては、食用植物又は組成物を乾燥処理して調製すればよいが、乾燥食用植物を原料として使用することで組成物そのものでは乾燥処理を行わずに調製することもできる。乾燥方法としては、一般的に食品の乾燥に用いられる任意の方法を用いることができる。例としては、天日乾燥、陰干し、フリーズドライ、エアドライ(例えば熱風乾燥、流動層乾燥法、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥等)、加圧乾燥、減圧乾燥、マイクロウェーブドライ、油熱乾燥等が挙げられる。中でも、植物が本来有する色調や風味の変化の程度が小さく、食品以外の香り(こげ臭等)を制御できるという点から、エアドライ(例えば熱風乾燥、流動層乾燥法、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥等)又はフリーズドライによる方法が好ましい。また、乾燥時の圧力も制限されず、高圧乾燥、常圧乾燥、低圧乾燥(乾燥時圧力は大気圧の90%以下、又は80%以下、又は70%以下であることが好ましい。下限は特に制限されないが0%(すなわち真空状態または実質的に真空状態)、又は0%以上である)の何れであってもよいが、低圧乾燥またはドラム乾燥を採用することが好ましく、特に利用可能炭水化物を乾燥質量換算で10質量%以上含有する食材(特にセリ科植物、より好ましくはニンジン、セロリ、パセリ、セリ、及びパクチー)において低圧乾燥またはドラム乾燥を採用することが好ましい。また、乾燥時の温度も制限されず、高温乾燥、常温乾燥、低温乾燥(乾燥温度は95℃以下、又は90℃以下、又は80℃以下、又は70℃以下であることが好ましい。下限は特に制限されないが0℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、又は30℃である。)の何れであってもよいが、低温乾燥を採用することが好ましい。特に、前述の低圧条件化での低温乾燥(圧力と温度は適宜設定することができるが、水の沸点が95℃以下、又は90℃以下、又は80℃以下、又は70℃以下となるように設定することが好ましい。下限は特に制限されないが0℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、又は30℃である。)が、より好ましい。その原理は不明であるが、乾燥時に高温条件化に曝露されると、植物に内在される酵素の反応により干草臭の前駆体が蓄積され干草臭が生成しやすい性質の組成物になると考えられる。具体的には、熱負荷の少ない真空式ドラム乾燥または減圧マイクロ波乾燥による方法を採用することが好ましい。
【0021】
尚、本発明における‘乾燥’状態とは、例えば乾量基準含水率が0質量%以上30質量%未満の範囲を表す。より具体的にはその上限は、乾量基準含水率が30質量%未満である状態を指し、より好ましくは乾量基準含水率が20質量%以下の状態を指し、より好ましくは乾量基準含水率が10質量%以下の状態を指す。下限は特に限定されないが、通常0質量%以上、又は0.5質量%以上である。
さらに、本発明における乾燥食用植物とは、乾燥処理を加えた食用植物のことであり、乾燥粉砕食用植物とは、乾燥処理及び粉砕処理を加えた食用植物である。また、本発明における粉砕組成物とは、原料及び/又は組成物そのものに粉砕処理を加えた組成物のことであり、乾燥粉砕組成物とは、原料及び/又は組成物そのものに乾燥処理及び粉砕処理を加えた組成物のことである。
【0022】
[乾量基準含水率(含水率)]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において、組成物の乾量基準含水率が所定範囲であればよい。具体的には、本発明の乾燥食用植物を含む組成物の最終的な組成物における乾量基準含水率は例えば0.5質量%以上30質量%未満の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその上限が通常30質量%未満である。中でも25質量%未満、更には20質量%未満、とりわけ15質量%未満、又は10質量%未満であってもよい。一方、本発明の乾燥食用植物を含む組成物中の乾量基準含水率の下限は、制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点から、通常0.5質量%以上、中でも1.0質量%以上、更には1.5質量%以上、又は2.0質量%以上とすることができる。尚、本発明の乾燥食用植物を含む組成物中の乾量基準含水率は、組成物の各種成分に由来するものであってもよいが、更に添加された水に由来するものであってもよい。また、乾燥食用植物についても、同様の乾量基準含水率であることが好ましい。
【0023】
本発明において「乾量基準含水率」とは、本発明の組成物中の固形分に対する、組成物中水分量(乾燥食用植物を含む組成物原料に由来する水分量と別途添加した水分量との合計量)の割合を意味する。その数値は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、減圧加熱乾燥法で90℃に加温することで測定する。具体的には、あらかじめ恒量になったはかり容器(W0)に適量の試料を採取して秤量し(W1)、常圧において、所定の温度(より詳しくは90℃)に調節した減圧電気定温乾燥器中に、はかり容器の蓋をとるか、口を開けた状態で入れ、扉を閉じ、真空ポンプを作動させて、所定の減圧度において一定時間乾燥し、真空ポンプを止め、乾燥空気を送って常圧に戻し、はかり容器を取り出し、蓋をしてデシケーター中で放冷後、質量をはかる。そのようにして恒量になるまで乾燥、放冷、秤量する(W2)ことを繰り返し、次の計算式で乾量基準含水率(質量%)を求める。
【0024】
乾量基準含水率(質量%)=(W1-W2)/(W2-W0)×100
W0:恒量としたはかり容器の質量(g)
W1:試料を入れたはかり容器の乾燥前の質量(g)
W2:試料を入れたはかり容器の乾燥後の質量(g)
【0025】
ここで、本発明において「乾燥質量」とは、前述の「乾量基準含水率」から算出される水分含有量を組成物等全体の質量から除いた残分の質量を表し、「乾燥質量換算」又は「乾燥質量基準」とは組成物の乾燥質量を分母、各成分の含有量を分子として算出される、各成分の含有割合を表す。また、特に記載がない場合、割合は乾燥質量換算として表す。
【0026】
[β-ヨノン]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において特定量のβ-ヨノン(CAS登録番号:14901-07-6、beta-Ionone)を含有することが好ましい。具体的には、乾燥質量換算で最終的な組成物におけるβ-ヨノン含有量は例えば0.01ppb以上50000ppb以下の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその下限は通常0.01ppb以上であるのが好ましい。中でも0.05ppb以上、更には0.10ppb以上、とりわけ0.50ppb以上、又は1.0ppb以上であることが好ましい。一方、β-ヨノン含有量が高すぎるとその香りが目立ちすぎるため、上限としては通常50000ppb以下、中でも30000ppb以下、又は20000ppb以下、又は10000ppb以下、又は5000ppb以下、特に1000ppb以下であることが好ましい。
【0027】
[γ-テルピネン含有量に対する、β-ヨノン含有量の割合]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において、γ-テルピネン含有量に対する、β-ヨノン含有量の割合(これを適宜「β-ヨノン/γ-テルピネン比」と称する。)が所定割合以上となるように当該成分を含有することで、本発明における課題である干草臭の抑制効果が組成物を常温(20℃)で保管した場合にも長期間(例えば1か月以上)保持されるため好ましい。具体的には、乾燥質量換算で最終的な組成物におけるβ-ヨノン/γ-テルピネン比は例えば0.001質量%以上12000質量%未満の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその下限は通常0.001質量%以上であるのが好ましい。中でも0.002質量%以上、又は0.003質量%以上、又は0.004質量%以上、又は0.005質量%以上、又は0.006質量%以上、又は0.007質量%以上、又は0.008質量%以上、又は0.009質量%以上、又は0.010質量%以上であることが好ましい。一方、上限は特に限定されないが、例えば通常12000質量%未満、中でも10000質量%未満、更には8000質量%未満、とりわけ6000質量%未満、又は3000質量%未満、又は1000質量%未満、又は900質量%未満、又は800質量%未満、又は700質量%未満、又は600質量%未満、又は550質量%未満、又は500質量%以下、又は400質量%未満、又は300質量%未満、又は200質量%未満、又は100質量%未満、又は30質量%未満、又は10質量%未満、又は5質量%未満とすることが好ましい。また、乾燥処理によって当該割合が増加(すなわち乾燥処理前後でその値が増加)するように乾燥処理を行うことが好ましい。
【0028】
[炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸合計含有量に対する、β-ヨノン含有量の割合]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸合計含有量に対する、β-ヨノン含有量の割合(これを適宜「β-ヨノン/脂肪酸比」と称する。)が所定割合以上となるように含有させることで、保管中の干草臭が抑制されやすくなるため、好ましい。具体的には、乾燥質量換算で最終的な組成物におけるβ-ヨノン/脂肪酸比の下限が通常0.001質量%以上であるのが好ましい。中でも0.002質量%以上、又は0.003質量%以上、又は0.004質量%以上、又は0.005質量%以上、又は0.007質量%以上、又は0.010質量%以上、又は0.040質量%以上、又は0.070質量%以上、又は0.10質量%以上、又は0.30質量%以上、又は0.60質量%以上、又は1.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は10.0質量%以上、又は15.0質量%以上、又は20.0質量%以上、特に30.0質量%以上であることが好ましい。一方、上限は特に限定されないが、例えば通常12000質量%未満、中でも10000質量%未満、更には8000質量%未満、とりわけ6000質量%未満、又は3000質量%未満、又は1000質量%未満、又は900質量%未満、又は800質量%未満、又は700質量%未満、又は600質量%未満、又は500質量%未満、又は400質量%未満、又は300質量%未満、又は200質量%未満、特に100質量%未満とすることが好ましい。また、乾燥処理によって当該割合が増加(すなわち乾燥処理前後でその値が増加)するように乾燥処理を行うことが好ましい。さらに、炭素数6又は7の直鎖型脂肪酸のいずれか一方がそれぞれ前述する所定の割合であることが好ましく、炭素数6及び7の直鎖型脂肪酸が共に前述する所定の割合であることが好ましい。また、当該脂肪酸は飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であっても良いが、飽和脂肪酸(すなわちカプロン酸又はヘキサン酸)であることが好ましい。
【0029】
[炭素数6の直鎖型脂肪酸含有量に対する、β-ヨノン含有量の割合]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において、炭素数6の直鎖型脂肪酸含有量に対する、β-ヨノン含有量の割合(これを適宜「β-ヨノン/カプロン酸比」と称する。)が所定割合以上となるように含有させることで、保管中の干草臭が抑制されやすくなるため、好ましい。具体的には、乾燥質量換算で最終的な組成物におけるβ-ヨノン/カプロン酸比の下限が通常0.001質量%以上であるのが好ましい。中でも0.002質量%以上、又は0.003質量%以上、又は0.004質量%以上、又は0.005質量%以上、又は0.007質量%以上、又は0.010質量%以上、又は0.040質量%以上、又は0.070質量%以上、又は0.10質量%以上、又は0.30質量%以上、又は0.60質量%以上、又は1.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は10.0質量%以上、又は15.0質量%以上、又は20.0質量%以上、特に30.0質量%以上であることが好ましい。一方、上限は特に限定されないが、例えば通常20000質量%未満、中でも15000質量%未満、更には10000質量%未満、とりわけ8000質量%未満、又は6000質量%未満、又は3000質量%未満、又は1000質量%未満、又は900質量%未満、又は800質量%未満、又は700質量%未満、又は600質量%未満、又は500質量%未満、又は400質量%未満、又は300質量%未満、又は200質量%未満、特に100質量%未満とすることが好ましい。また、乾燥処理によって当該割合が増加(すなわち乾燥処理前後でその値が増加)するように乾燥処理を行うことが好ましい。
【0030】
[炭素数7の直鎖型脂肪酸含有量に対する、β-ヨノン含有量の割合]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において、炭素数7の直鎖型脂肪酸含有量に対する、β-ヨノン含有量の割合(これを適宜「β-ヨノン/ヘプタン酸比」と称する。)が所定割合以上となるように含有させることで、保管中の干草臭が抑制されやすくなるため、好ましい。具体的には、乾燥質量換算で最終的な組成物におけるβ-ヨノン/ヘプタン酸比の下限が通常0.001質量%以上であることが好ましい。中でも0.002質量%以上、又は0.003質量%以上、又は0.004質量%以上、又は0.005質量%以上、又は0.007質量%以上、又は0.010質量%以上、又は0.040質量%以上、又は0.070質量%以上、又は0.10質量%以上、又は0.30質量%以上、又は0.60質量%以上、又は1.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は10.0質量%以上、又は15.0質量%以上、又は20.0質量%以上、特に30.0質量%以上であることが好ましい。一方、上限は特に限定されないが、例えば通常100000質量%未満、中でも80000質量%未満、更には60000質量%未満、とりわけ40000質量%未満、又は20000質量%未満、又は9000質量%未満、又は8000質量%未満、又は7000質量%未満、又は6000質量%未満、特に5000質量%未満とすることが好ましい。また、乾燥処理によって当該割合が増加(すなわち乾燥処理前後でその値が増加)するように乾燥処理を行うことが好ましい。
また、β-ヨノン/カプロン酸比と、β-ヨノン/ヘプタン酸比とが共に所定割合であることで、保管中の干草臭生成がさらに抑制されやすくなるためより好ましい。例えば後述の固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法を用いて当該成分のピーク面積割合が一定割合に調整されていることが好ましい。
【0031】
[β-カリオフィレン]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において、特定量のβ-カリオフィレン(CAS登録番号:87-44-5、β-caryophyllene、単にカリオフィレンと称する場合もある。)を含有するのが好ましい。これにより、β-カリオフィレン特有の豊潤な風味が付与され、より嗜好性の高い組成物となる。具体的には、乾燥質量換算で最終的な組成物におけるβ-カリオフィレン含有量の下限が通常0.01ppb以上であるのが好ましい。中でも1.0ppb以上、更には3.0ppb以上、とりわけ5.0ppb以上、又は8.0ppb以上、又は11.0ppb以上、又は15.0ppb以上、又は20.0ppb以上、又は30.0ppb以上、又は40.0ppb以上、又は50.0ppb以上、又は80.0ppb以上、又は100ppb以上、又は150ppb以上、又は200ppb以上、又は400ppb以上、又は600ppb以上、又は800ppb以上、又は1000ppb以上、又は1200ppb以上、又は1500ppb以上、特に2000ppb以上の組成物において本発明はより有用であり好ましい。一方、上限としては通常100000ppb以下、中でも80000ppb以下、更には60000ppb以下、とりわけ40000ppb以下、又は20000ppb以下、特に9000ppb以下であることが好ましい。
【0032】
[炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸合計ピーク面積値に対する、β-カリオフィレンピーク面積値の割合]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において、後述の固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法を用いて、サンプル温度80℃20分で揮発性成分を抽出して測定した場合における、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸合計ピーク面積値(特に炭素数6及び7の直鎖型脂肪酸がともに含有される組成物においては、その合計ピーク面積値(「C6+C7」と称する場合がある)、すなわち炭素数6の直鎖型脂肪酸合計ピーク面積値と炭素数7の直鎖型脂肪酸合計ピーク面積の合計面積値であることが好ましい)に対する、β-カリオフィレンピーク面積値の割合(これを適宜「β-カリオフィレン/脂肪酸ピーク面積値比」と称する。)が所定割合を超えるように含有することが好ましい。これにより組成物に豊潤な風味が付与され、より嗜好性の高い組成物となる。ここで、ピーク面積値は成分の揮発性を反映した数値であり、成分の濃度比率とは全く異なる数値であり、各成分の香気放出性を規定したものである。具体的には、比較的揮発性が高いβ-カリオフィレンが、本来揮発性の低い炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の香気放出性を向上させ、放出性が高まった両香気が相まって組成物の豊潤な香りを高めている可能性がある。具体的には、最終的な組成物におけるβ-カリオフィレン/脂肪酸ピーク面積値比は例えば0.0002%超10000%未満の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその下限が通常0.0002%超であることが好ましい。中でも0.0005%超、更には0.0008%超、とりわけ0.0010%超、又は0.0020%超、又は0.0030%超、又は0.0040%超、又は0.0050%超、又は0.010%超、又は0.050%超、又は0.10%超、又は0.50%超、又は1.0%超、又は5.0%超、又は10.0%超であることが好ましい。一方、上限は特に限定されないが、例えば通常10000%未満、中でも9000%未満、更には8000%未満、とりわけ7000%未満、又は6000%未満、又は5000%未満、又は4000%未満、又は3000%未満、又は2000%未満又は1000%未満、又は500%未満、特に300%未満とすることが好ましい。また、乾燥処理によって当該割合が減少(すなわち乾燥処理前後でその値が減少)するように乾燥処理を行うことが好ましい。なお、本発明において「ピーク面積値比」を算出する際には、特に指定がない限り各成分の確認イオンピーク面積(γ-テルピネン:m/z=136、カプロン酸:m/z=87、ヘプタン酸:m/z=87、β-ヨノン:m/z=177、β-カリオフィレン:m/z=133)の値を用いる。さらに、炭素数6又は7の直鎖型脂肪酸のいずれか一方がそれぞれ前述する所定の割合であることが好ましく、炭素数6及び7の直鎖型脂肪酸が共に前述する所定の割合であることが好ましい。また、当該脂肪酸は飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であっても良いが、飽和脂肪酸(すなわちカプロン酸又はヘキサン酸)であることが好ましい。
【0033】
[炭素数6の直鎖型脂肪酸ピーク面積値に対する、β-カリオフィレンピーク面積値の割合]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において、後述の固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法を用いて、サンプル温度80℃20分で揮発性成分を抽出して測定した場合における、炭素数6の直鎖型脂肪酸ピーク面積値に対する、β-カリオフィレンピーク面積値の割合(これを適宜「β-カリオフィレン/カプロン酸ピーク面積値比」と称する。)が所定割合を超えることが好ましい。これによって、豊潤な風味が付与され、より嗜好性の高い組成物となる。その原理は不明であるが、比較的揮発性が高いβ-カリオフィレンが、本来揮発性の低い炭素数6の直鎖型脂肪酸の香気放出性を向上させ、放出性が高まった両香気が相まって組成物の豊潤な香りを高めている可能性がある。具体的には、最終的な組成物におけるβ-カリオフィレン/カプロン酸ピーク面積値比の下限が通常0.0002%超であることが好ましい。中でも0.0005%超、更には0.0008%超、とりわけ0.0010%超、又は0.0020%超、又は0.0030%超、又は0.0040%超、又は0.0050%超、又は0.010%超、又は0.050%超、又は0.10%超、又は0.50%超、又は1.0%超、又は5.0%超、又は10.0%超であることが好ましい。一方、上限は特に限定されないが、例えば通常50000%未満、中でも40000%未満、更には30000%未満、とりわけ20000%未満、又は10000%未満、又は9000%未満、又は8000%未満、又は7000%未満、又は6000%未満、又は5000%未満、又は4000%未満、又は3000%未満、又は2000%未満又は1000%未満、又は500%未満、特に300%未満とすることが好ましい。また、乾燥処理によって当該割合が減少(すなわち乾燥処理前後でその値が減少)するように乾燥処理を行うことが好ましい。
【0034】
[炭素数7の直鎖型脂肪酸ピーク面積値に対する、β-カリオフィレンピーク面積値の割合]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、最終的な組成物において、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法を用いて、サンプル温度80℃20分で揮発性成分を抽出して測定した場合における、炭素数7の直鎖型脂肪酸ピーク面積値に対する、β-カリオフィレンピーク面積値の割合(これを適宜「β-カリオフィレン/ヘプタン酸ピーク面積値比」と称する。)が所定割合を超えることが好ましい。これにより組成物に豊潤な風味が付与され、より嗜好性の高い組成物となる。その原理は不明であるが、比較的揮発性が高いβ-カリオフィレンが、本来揮発性の低い炭素数7の直鎖型脂肪酸の香気放出性を向上させ、放出性が高まった両香気が相まって組成物の豊潤な香りを高めている可能性がある。具体的には、最終的な組成物におけるβ-カリオフィレン/ヘプタン酸ピーク面積値比の下限が通常0.002%超であることが好ましい。中でも0.005%超、更には0.008%超、とりわけ0.010%超、又は0.020%超、又は0.030%超、又は0.040%超、又は0.050%超、又は0.10%超、又は0.50%超、又は0.10%超、又は0.50%超、又は1.0%超、又は5.0%超、又は10.0%超、又は20.0%超、又は30.0%超、特に50.0%超であることが好ましい。一方、上限は特に限定されないが、例えば通常30000%未満、中でも20000%未満、更には10000%未満、とりわけ9000%未満、又は8000%未満、又は7000%未満、又は6000%未満、又は5000%未満、又は4000%未満、又は3000%未満、又は2000%未満又は1000%未満、又は900%未満、又は800%未満、又は700%未満、特に600%未満とすることが好ましい。また、乾燥処理によって当該割合が減少(すなわち乾燥処理前後でその値が減少)するように乾燥処理を行うことが好ましい。
また、β-カリオフィレン/カプロン酸ピーク面積値比と、β-カリオフィレン/ヘプタン酸ピーク面積値比とが共に所定割合であることで、さらに豊潤な風味が付与され、特に嗜好性の高い組成物となるため、より好ましい。
【0035】
尚、本発明において、組成物が「含有する」炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸としては、本発明の乾燥食用植物を含む組成物の原料となる食用植物等の食材に含まれるものであってもよく、当該食材とは別に添加されるものであってもよく、本発明の乾燥食用植物を含む組成物の製造に伴い生じるものであってもよく、それらが組み合わさった合計量が所定の含有量及び/又は割合となっていればよい。当該脂肪酸を食材とは別に添加する場合、当該脂肪酸が組成物に含有された状態であっても、精製抽出された高純度の試薬の状態であってもよい。具体的には、当該脂肪酸含有量の異なる2以上の組成物を混合することで当該脂肪酸含有量を調整する方法を採用できる。特に、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸が乾燥食用植物に含有された状態で組成物に含有されることが好ましく、より具体的には乾燥野菜類(例えばセリ科植物、より好ましくはニンジン、セロリ、パセリ、セリ、及びパクチー、特にニンジン)に含有された状態で組成物に含有されることが好ましい。尚、γ-テルピネン、又はβ-ヨノン、又はβ-カリオフィレンについても同様であり、各成分が乾燥食用植物に含有された状態で組成物に含有されることが好ましく、より具体的にはγ-テルピネンが含有された状態の乾燥果実類(例えば柑橘類、特にウンシュウミカン、オレンジ、レモン、ヒュウガナツ、さらには柑橘類の果皮部)の状態で組成物に含有されることが好ましい。
【0036】
また、2以上の成分の含有割合又はピーク面積割合の調整方法は制限されるものではないが、各成分における沸点の違いを利用した方法が採用できる。例えば、脂肪酸に比べて相対的に沸点が低く揮発しやすいγ-テルピネンと、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸とを共に含有する状態で乾燥処理を行うことにより、γ-テルピネンに対する脂肪酸割合を相対的に高めることで、各成分を所定の含有割合となるように含有させる製造方法であってもよい。また、γ-テルピネンとβ-ヨノンとについても、各成分を共に含有する状態で乾燥処理を行うことにより、各成分を所定の含有割合となるように含有させる製造方法であってもよい。その原理は不明であるが、該成分を共に含有する状態で乾燥処理を行うことにより、γ-テルピネンに比べて相対的に沸点が低く揮発しやすいβ-ヨノンが、γ-テルピネンの香気放出性を向上させると考えられる。尚、β-カリオフィレンと炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸とについても同様である。
【0037】
[固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法]
本発明において、乾燥食用植物を含む組成物における、炭素数が6及び/又は7の直鎖型脂肪酸、γ-テルピネン、β-ヨノン、β-カリオフィレンの各成分の含有量及びピーク面積値の測定は、定法に従い、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(これを適宜「SPME-GC-MS」、「SPME」と称する。)によって行う。
【0038】
固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法は、測定試料をSPME(Solid Phase Micro Extraction)法(ファイバーを気相に露出して、揮発性成分を吸着剤に捕集する静的な抽出方法)によって吸着させた後、ガスクロマトグラフ質量分析(GS/MS)法によって測定を行う方法である。具体的な手順としては、例えば、試料を10mL平底のバイアルに少量(1g)計り取った後に密閉し、試料中における揮発成分の性質に応じた吸着樹脂(SPMEファイバー)で吸着した後、加熱脱着システムを用いて処理することでガスクロマトグラフィー分析装置に導入し分析を行うことができる。また、試料中の成分含有量を測定するためには、試料と任意の含有量に希釈した標準品試料とを分析し、両試料の確認イオンピーク面積値を把握し、その値を比較することで、試料中の当該成分含有量を測定することができる。
【0039】
上記分析後、試料の一部を質量分析計にかけてマススペクトルを求め、各成分の関連イオン(γ-テルピネン:m/z=91、93、136、カプロン酸:m/z=60、73、87、ヘプタン酸:m/z=60、73、87、β-ヨノン:m/z=91、135、177、β-カリオフィレン:m/z=91、93、133)で各成分の保持時間の確認を行う。質量分析計(MS)としては、四重極型の7000C Mass Selective Detector(agilent社製)を用いる。イオン化法、イオン化電圧は、イオン化法:EI+、イオン化電圧:70eVの条件で行い、結果はスキャンモードで取り込み、各成分に特徴的なイオン(γ-テルピネン:m/z=91、93、136、カプロン酸:m/z=60、73、87、ヘプタン酸:m/z=60、73、87、β-ヨノン:m/z=91、135、177、β-カリオフィレン:m/z=91、93、133)を関連イオンとして用いて同定を行うことで質量スペクトル解析を行うことができ、標準品においてこれら関連イオンが全て検出される保持時間を特定することで、炭素数が6及び/又は7の直鎖型脂肪酸、γ-テルピネン、β-ヨノン、及びβ-カリオフィレンの保持時間を特定することができる。なお、測定アプリケーションソフトウェアとしては、例えばUnknowns Analysis(MassHnter Workstation Software Quantitative Analysis、バージョン:B.09.00、ビルド:9.0.647.0、agilent社製)を使用する。また、本発明における「m/z」とは、各成分のm/z中心値における-0.3~+0.7の範囲において検出された値をいう。例えば、m/z=136は135.7~136.7において検出されたイオンピークの累積値を表す。
【0040】
具体的には、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析は以下の条件で行う。
【0041】
<固相マイクロ抽出条件>
・SPMEファイバー StableFlex 50/30μm,DVB/Carboxen/PDMS(SUPELCO社製)
・揮発性成分抽出装置
PAL3 RSI120(CTC Analytics社製)
予備加熱:80℃15min
攪拌速度:300rpm
揮発性成分抽出:80℃20min
脱着時間:10分
<ガスクロマトグラフ条件>
・測定機器:Agilent 7980B GC System(Agilent Technologies社製)
・GCカラム:DB-WAX(Agilent Technologies社製)長さ30m,口径0.25mm,膜厚0.25μm
・キャリア:Heガス、ガス流量1.0mL/min(コンスタントフロー)
・温度条件:[40℃(3分)]-[10℃/分]-[250℃(10分)]
<質量分析条件>
・測定機器:Agilent 7000C GC/MS Triple Quad(Agilent Technologies社製)
・イオン化方式:EI(イオン化電圧70eV)
・スキャン質量:m/z 29.0~350.0
【0042】
上記の条件にて、含有量既知のγ-テルピネン(CAS登録番号:99-85-4、Sigma社製、製品コード:223190)、カプロン酸(CAS登録番号:142-62-1、東京化成工業社製、製品コード:H0105)、ヘプタン酸(CAS登録番号:111-14-8、東京化成工業社製、製品コード:H0030)、β-ヨノン(CAS登録番号:14901-07-6、東京化成工業社製、製品コード:I0077)、β-カリオフィレン(CAS登録番号:87-44-5、Sigma社製、製品コード:22075)の標品を、前述した方法で調整したものと試料とを分析に供する。質量分析計のマススペクトルパターンに基づく分析によって、標準品保持時間との比較により、ターゲット成分と思しきピークの保持時間付近(例えば、保持時間5~11分付近をγ-テルピネン、保持時間13~19分付近をカプロン酸、保持時間14~20分付近をヘプタン酸、保持時間13~20分付近をβ-ヨノン、保持時間10~16分付近をβ-カリオフィレン)における、それらの調整標品と試料との確認イオン(γ-テルピネン:m/z=136、カプロン酸:m/z=87、ヘプタン酸:m/z=87、β-ヨノン:m/z=177、β-カリオフィレン:m/z=133)のピーク面積値の比較によって、試料中の成分の定量を行うことができる。尚、確認イオンのピーク面積値は、直接的に確認イオンのピーク面積を測定しても良いが、関連イオンのピーク面積値から算出することもできる。例えば、γ-テルピネンの関連イオンであるm/z=91のピーク面積値から、γ-テルピネンの確認イオンであるm/z=136のピーク面積値を公知のマススペクトルデータベース(例えば米国国立標準技術研究所 (NIST) におけるマススペクトルデータベース)における当該成分におけるマススペクトルパターン(両イオンの比率)に基づいて算出することができる。
【0043】
尚、組成物中の各成分含有量を調整する場合、当該成分含有量の異なる2以上の組成物を混合することで当該成分含有量を調整する方法を採用できる。尚、本発明における単位(例えばppm、ppb)は全て分子分母とも重量基準の数値である。
【0044】
[乾燥食用植物]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、食用植物を含有する。本発明における「食用植物」とは、その可食部及び/又は非可食部を含有する、ヒトの飲食に供される植物を指す。本発明における食用植物としては、ヒトの飲食に供されるものであれば何ら制限されるものではないが、野菜類、穀類、きのこ類、果実類、イモ類、藻類、種実類、豆類等が挙げられるが、野菜類、果実類、及び種実類に対して特に有用である。具体的には、たとえば、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2018年」(厚生労働省が定めている食品成分表、特に第236頁表1参照)に記載された分類のうち、野菜類、穀類、きのこ類、果実類、イモ類、藻類、種実類、豆類等を参照することで、いかなる食品が食用植物に該当するかを理解することができる。これらの食用植物は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。また、これらの食用植物はそのまま用いてもよく、各種の処理(例えば乾燥、加熱、灰汁抜き、皮むき、種実抜き、追熟、塩蔵、果皮加工等)を加えてから使用してもよい。また、食材は、非可食部と合わせた植物全体の状態でその分類や具体的な種類(名称)を判断することができる。尚、非可食部の部位や比率は、その食品や食品の加工品を取り扱う当業者であれば、当然に理解することが可能である。例としては、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載の「廃棄部位」及び「廃棄率」を参照し、これらをそれぞれ非可食部の部位及び比率として扱うことができる。尚、食用植物における非可食部の部位や比率から、可食部の部位や比率についても理解することができる。また、その可食部及び/又は非可食部を任意の組み合わせで使用することが可能である。
【0045】
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、1種の食用植物のみを含有していてもよく、2種以上の食用植物を含有していてもよい。本発明の乾燥食用植物を含む組成物が2種以上の食用植物を含有する場合、それらの食用植物の組み合わせ及び比率は任意である。即ち、それら2種以上の食用植物は、同一の分類に属する食用植物であってもよく、異なる2種以上の分類に属する食用植物であってもよい。
【0046】
具体的には、本発明の乾燥食用植物を含む組成物における食用植物の含有率の下限は、乾燥質量換算で通常10質量%以上であるのが好ましい。中でも12質量%以上、更には15質量%以上、とりわけ20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は40質量%以上、特に50質量%以上であることが好ましい。一方、本発明の組成物における食用植物含有率の上限は特に制限されないが、通常100質量%以下であるのが好ましい。尚、本発明の乾燥食用植物を含む組成物に対する食用植物の含有量が100質量%の場合以外の当該組成物における、他の組成物の種類としては、本発明の効果を妨げない限りにおいて、何ら制限されないが、好ましくは、粉末状及び/又はチップ状組成物であるのが好ましい。また、他の成分としては最終的な組成物に対する所望の風味、品質に合わせて、種類やその組み合わせ、用途に限られず適宜選択できる。このようなものとしては、食塩、ショ糖、デキストリン等を挙げることができる。
【0047】
以下、本発明の乾燥食用植物を含む組成物に含まれる食用植物の具体例を説明するが、食用植物はこれらの具体例に限定されるものではなく、任意のものを使用することが可能である。
【0048】
[食用植物/野菜類]
前記野菜類に分類される食用植物の種類の例としては、これらに限定されるものではないが、ダイコン、ニンジン、ルタバガ、パースニップ、カブ、ブラック・サルシファイ、レンコン、ビート(好適にはビーツ(ビートルート):ビートの根を食用とするために改良された品種)、クワイ、エシャロット、ニンニク、ラッキョウ、ユリネ、ケール、タマネギ(特にペコロス)、アスパラガス、ウド、キャベツ、レタス、ホウレンソウ、ハクサイ、アブラナ、コマツナ、チンゲンサイ、ニラ、ネギ、ノザワナ、フキ、フダンソウ(不断草、スイスチャード)、ミズナ、トマト(トマトの一種であるミニトマトを含む)、ナス、カボチャ、ピーマン、キュウリ、ミョウガ、カリフラワー、ブロッコリー、食用菊、ニガウリ、オクラ、アーティチョーク、ズッキーニ、てんさい、タイガーナッツ、ショウガ、シソ、ワサビ、パプリカ、ハーブ類(クレソン、コリアンダー、クウシンサイ、セロリ、タラゴン、チャイブ、チャービル、セージ、タイム、ローレル、パセリ、マスタードグリーン(からしな)、ヨモギ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、サボリー、レモングラス、ディル、ワサビ葉、山椒の葉、ステビア)、ワラビ、ゼンマイ、タケノコ等が挙げられる。中でも、セリ科植物(ニンジン、セロリ、パセリ、セリ、パクチー、ウド、ミツバ等)、シソ科植物(タイム等)、ナス科植物(トマト等)を使用することが好ましい。尚、上記の各食材は、その可食部と非可食部の区別を問わず使用できる。
【0049】
本発明の乾燥食用植物を含む組成物に、前述の野菜類に分類される食用植物が1種類以上含まれる場合、その合計含有量は乾燥質量換算で、乾燥食用植物を含む組成物全体の通常50質量%以上、中でも70質量%以上、更には90質量%以上であることが好ましく、実質的に100質量%であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、乾燥食用植物を含む組成物全体の通常100質量%以下である。尚、乾燥食用植物を含む組成物に、同一又は異なる1種又は2種以上の野菜類が上記の割合で含有されることが好ましく、同一の1種又は2種以上の野菜類が上記の割合で含有されることがより好ましい。
【0050】
尚、一態様によれば、野菜類としてはγ-テルピネンの干草臭の発生が問題となりやすいセリ科植物が好ましい。具体的にはニンジン、セロリ、パセリ、セリ、及びパクチーから選択される1又は2以上の食用植物であることが好ましく、特にニンジンが好ましい。ニンジンとしては、西洋ニンジン及び/又は東洋ニンジン(一般にニンジンと称される根の長さが10cm~20cm程のニンジン)であればどのようなものでもよいが、例えば五寸ニンジン、京ニンジン、金美ニンジン、ミニニンジン、島ニンジン、紫ニンジン、黒ニンジン、パリジャンキャロット、大長ニンジン、リコピンニンジン、こいくれない(NKアグリ製)、京くれない(NKアグリ製)、ベータリッチ(サカタのタネ製)、ゴールドラビット、ピッコロ、イエローハーモニー、ラブリーキャロット、熊本長ニンジン、愛紅(住化農業資材製)、ゆうべに(住化農業資材製)、ドクターカロテン(タキイ種苗製)、バイオレットハーモニー、ホワイトハーモニー、クリスティーヌ(みかど協和製)、紅あかり、アロマレッド(トーホク製)、へきなん美人(JAあいち製)、向陽二号(タキイ種苗製)、ひとみ五寸(カネコ種苗製)、馬込三寸ニンジン、甘美人(ナント種苗製)、国分にんじん、ベータキャロット、大塚にんじん、恋ごころ(タキイ種苗製)、彩誉(フジイシード製)、スノースティック、黒田五寸等が挙げられる)を用いることができる。
乾燥食用植物を含む組成物に上記の割合でセリ科植物(より好ましくはニンジン、セロリ、パセリ、セリ、及びパクチー、特にニンジン)を含有する場合、乾燥粉砕前の段階で炭素数が6及び/又は7の直鎖型脂肪酸が10ppb未満含有される品種を用いることが好ましい。例えば向陽二号を用いることができる。
【0051】
乾燥食用植物を含む組成物に上記の割合でセリ科植物(より好ましくはニンジン、セロリ、パセリ、セリ、及びパクチー、特にニンジン)を含有する場合、その下限は乾燥質量換算で通常10質量%以上であるのが好ましい。中でも12質量%以上、更には15質量%以上、とりわけ20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は40質量%以上、特に50質量%以上であることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、通常100質量%以下である。
【0052】
[食用植物/果実類]
前記果実類に分類される食用植物の種類の例としては、これらに限定されるものではないが、アケビ、アセロラ、アテモヤ、アボカド、アンズ、イチゴ、イチジク、イヨカン、ウメ、ウンシュウミカン、オリーブ、オレンジ、カキ、カボス、カリン、キウイフルーツ、キワノ、キンカン、グァバ、グズベリー、グミ、グレープフルーツ、ゴレンシ、サクランボ、ザクロ、サンポウカン、シイクワシャー、スイカ、スダチ、スモモ、プルーン、ダイダイ、タンゴール、タンゼロ、チャリモヤ、ドリアン、ハッサク、パッションフルーツ、バナナ、パパイア、ピタヤ、ヒュウガナツ、ビワ、ブドウ、ブルーベリー、ブンタン、ホワイトサポテ、ポンカン、マクワウリ、マルメロ、マンゴー、マンゴスチン、メロン、モモ、ネクタリン、ヤマモモ、ユズ、ライチー、ライム、ラズベリー、ゴールデンベリー、デーツ(ナツメヤシの実)、リュウガン、リンゴ、レモン等が挙げられる。中でも、柑橘類(特にウンシュウミカン、オレンジ、レモン、ヒュウガナツ)、マンゴー等を好適に用いることができる。尚、上記の各食材は、その可食部と非可食部の区別を問わず使用できる。
【0053】
本発明の乾燥食用植物を含む組成物に、前述の果実類に分類される食用植物が1種類以上含まれる場合、その合計含有量は乾燥質量換算で、乾燥食用植物を含む組成物全体の通常通常50質量%以上、中でも70質量%以上、更には90質量%以上であることが好ましく、実質的に100質量%であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、乾燥食用植物を含む組成物全体の通常100質量%以下である。尚、乾燥食用植物を含む組成物に、同一又は異なる1種又は2種以上の果実類が上記の割合で含有されることが好ましく、同一の1種又は2種以上の果実類が上記の割合で含有されることが好ましい。
【0054】
[食用植物/種実類]
前記種実類に分類される食用植物の種類の例としては、これらに限定されるものではないが、アーモンド、カシューナッツ、ペカン(ピーカン)、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、松の実、ヒマワリの種、カボチャの種、スイカの種、シイ、クルミ、クリ、銀杏、ごま、ブラジルナッツ等が挙げられる。中でも、アーモンド、カシューナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、クルミ等のナッツ類を好適に用いることができる。尚、上記の各食材は、その可食部と非可食部の区別を問わず使用できる。
【0055】
本発明の乾燥食用植物を含む組成物に、前述の種実類に分類される食用植物が1種類以上含まれる場合、その合計含有量は乾燥質量換算で、乾燥食用植物を含む組成物全体の通常50質量%以上、中でも70質量%以上、更には90質量%以上であることが好ましく、実質的に100質量%であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、乾燥食用植物を含む組成物全体の通常100質量%以下である。尚、乾燥食用植物を含む組成物に、同一又は異なる1種又は2種以上の種実類が上記の割合で含有されることが好ましく、同一の1種又は2種以上の種実類が上記の割合で含有されることが好ましい。
【0056】
本発明の乾燥食用植物を含む組成物中の乾燥食用植物の形態は、食用植物の乾燥及び粉砕処理物であるのが好ましく、より具体的に粉末状又はチップ状であるのが好ましく、粒子径として、1メッシュパスから超音波処理後の組成物中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の単位体積当たり比表面積が0.02m2/mL以上の範囲であるのが好ましい。
【0057】
[食用植物/γ-テルピネン含有食用植物]
本発明はγーテルピネンを含有する乾燥食用植物の干草臭を特定の直鎖型脂肪酸によって抑制することで品質の良い乾燥食用植物および乾燥食用植物を含む組成物を製造する方法であるところ、本発明に用いる食用植物が、乾燥質量換算でγ-テルピネン含有量を所定割合以上含有するγーテルピネン含有食用植物であることで、本発明を有用に用いることができる。具体的には、本発明における「γーテルピネン含有食用植物」は、乾燥質量換算でγ-テルピネン含有量が例えば0.01ppb以上100000ppb以下の範囲である。より具体的にはその下限が通常0.01ppb以上である。中でも0.03ppb以上、更には0.05ppb以上、とりわけ0.10ppb以上、又は0.20ppb以上、又は0.30ppb以上、又は0.40ppb以上、又は0.50ppb以上、又は1.00ppb以上、又は5.00ppb以上、又は10.0ppb以上、又は15.0ppb以上、又は20.0ppb以上、又は30.0ppb以上、又は40.0ppb以上、又は50.0ppb以上、又は80.0ppb以上、又は100ppb以上、又は150ppb以上、又は200ppb以上、又は400ppb以上、又は600ppb以上、又は800ppb以上、又は1000ppb以上、又は1200ppb以上、又は1500ppb以上、特に2000ppb以上の組成物において本発明はより有用であり好ましい。一方、その上限は通常100000ppb以下、中でも80000ppb以下、更には60000ppb以下、とりわけ50000ppb以下、又は40000ppb以下、又は30000ppb以下、又は20000ppb以下、又は15000ppb以下、又は10000ppb以下、特に9000ppb以下であることが好ましい。γ-テルピネン含有食用植物として乾燥処理された状態の乾燥食用植物(一定以上の大きさを有する乾燥チップ又は一定以下の大きさを有する乾燥粉末)を用いる場合、乾燥処理前又は乾燥処理後の状態における食用植物が上記規定を充足する食用植物を用いることができ、乾燥処理前後で共に上記規定を充足する食用植物を用いることができる。
また、γ-テルピネン含有食用植物における食用植物が、野菜類、果実類、種実類のうち1種類以上であることができる。野菜類としては、セリ科植物、シソ科植物、ナス科植物を用いてもよく、セリ科植物、例えばニンジンを用いても良く、乾燥粉砕前の段階で炭素数が6及び/又は7の直鎖型脂肪酸が10ppb未満含有されるセリ科植物(より好ましくはニンジン、セロリ、パセリ、セリ、及びパクチー、特にニンジン)を用いても良い。果実類としては、柑橘類(例えばウンシュウミカン、オレンジ、レモン、ヒュウガナツ、ユズ)又はマンゴーを用いてもよい。種実類としては、アーモンド、カシューナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、クルミなどのナッツ類を用いても良い。
【0058】
[メッシュ]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物(特にチップ状の組成物)は、前記の各種要件に加えて、以下の要件を満たす一定以下のメッシュを通過する程度の大きさであることが好ましい。以下の要件を満たす乾燥食用植物を含む組成物は、酸素や光等による劣化を受けやすいため干草臭などが生成しやすく、さらに環境中への香気放出性が高くその香りを感じやすい特性を有するため、本発明の課題を特に顕著に有する。従って、斯かる干草臭を抑制することができる本発明は特に有用である。具体的には、本発明の組成物がチップ状の組成物である場合、その大きさの上限は特に制限されないが1メッシュパスであるのが好ましく、下限としては10メッシュオンであるのが好ましい。また、チップ状組成物に含まれる乾燥食用植物についても同様の大きさであることが好ましい。
一方、本発明の組成物が粉末状組成物である場合、その大きさは後述する、組成物分散液の超音波処理後の単位体積当たり比表面積が所定範囲であることが好ましい。その大きさの上限は特に制限されないが例えば10メッシュパスであってもよく、その大きさの下限は特に制限されないが、635メッシュオンであっても良い。また、粉末状組成物に含まれる乾燥食用植物についても同様の大きさであることが好ましい。
【0059】
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、篩分画によって特定メッシュオン及び/又は特定メッシュパスの組成物とすることができる。本発明において、「メッシュオン」とは、特定サイズの篩上にとどまる組成物であることを指し、「メッシュパス」とは、特定サイズの篩を通過する組成物であることを指す。本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、目開きの異なる篩によってその大きさを規定することができる。例えば、「1メッシュオン」とは、目開き25.0mm、線径(Wire Dia.)3.55mmの1メッシュ(例えばU.S.A. Standard Testing Sieves ASTM Specifications E 11-04にて、同文献中のNominal Dimensions, Permissible Variation for Wire Cloth of Standard Testing Sieves (U.S.A.) Standard Seriesにおける「Alternative」に規定された「1.00”」と対応する篩)の篩上にとどまることを意味し、「1メッシュパス」とは当該篩下に通過することを意味する。同様に、「10メッシュオン」とは、目開き2.0mm、線径(Wire Dia.)0.9mmの10メッシュ(例えばU.S.A. Standard Testing Sieves ASTM Specifications E 11-04にて、同文献中のNominal Dimensions, Permissible Variation for Wire Cloth of Standard Testing Sieves (U.S.A.) Standard Seriesにおける「Alternative」に規定された「No.10」と対応する篩)上にとどまることを意味し、「10メッシュパス」とは当該篩下に通過することを意味する。さらに、「635メッシュオン」とは、目開き20μm、線径(Wire Dia.)0.02mmの635メッシュ(例えばU.S.A. Standard Testing Sieves ASTM Specifications E 11-04にて、同文献中のNominal Dimensions, Permissible Variation for Wire Cloth of Standard Testing Sieves (U.S.A.) Standard Seriesにおける「Alternative」に規定された「No.635」と対応する篩)の篩上にとどまることを意味する。
【0060】
尚、本発明では乾燥状態の乾燥食用植物を含む組成物を測定する。より具体的には、測定したい乾燥食用植物を含む組成物サンプル(20℃)100gを、目開きが大きい篩から細かい篩へと順番に上から重ねた篩上(例えば、上から順番に1メッシュ、10メッシュ)に均等に広げて、軽く振動を加えつつ1分間放置することで分画することができる。尚、本発明において、2000μmを超えるような組成物(特にチップ状の組成物)は、前述した方法でサイズの規定を行うことができる。
【0061】
[組成物分散液の超音波処理前の単位体積当たり比表面積(γB)]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物(特に粉末状の組成物)は、前記の各種要件に加えて、擾乱を加える前、即ち、超音波処理前の組成物中の粒子の単位体積当たり比表面積(γB)が、以下の要件を満たすことが好ましい。具体的には、組成物分散液に擾乱を加える前、即ち、超音波処理前の組成物中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の単位体積当たり比表面積(γB)は、通常0.02m2/mL以上であるのが好ましい。中でも0.03m2/mL以上、更には0.04m2/mL以上、とりわけ0.05m2/mL以上、又は0.10m2/mL以上、特に0.15m2/mL以上とすることが好ましい。一方、前記比表面積(γB)の上限は限定されないが、通常2.00m2/mL以下、中でも1.90m2/mL以下、更には1.80m2/mL以下、とりわけ1.70m2/mL以下、又は1.60m2/mL以下、又は1.50m2/mL以下、又は1.40m2/mL以下、又は1.30m2/mL以下、又は1.20m2/mL以下、又は1.10m2/mL以下、特に1.00m2/mL以下であってもよい。尚、超音波処理前の粒子径(d50、d90など)の測定条件については、後述の手順で、エタノールを溶媒として測定することができる。また、乾燥食用植物(特に粉末状の乾燥食用植物)についても、同様の比表面積範囲であることが好ましい。
【0062】
[組成物分散液の超音波処理後の単位体積当たり比表面積(γA)]
本発明の乾燥食用植物を含む組成物(特に粉末状の組成物)は、前記の各種要件に加えて、擾乱を加えた後、即ち、超音波処理後の組成物中の粒子(擾乱によって解砕された微粒子及び未解砕の微粒子複合体を含む)の単位体積当たり比表面積(γA)が、以下の要件を満たすことが好ましい。具体的には、組成物分散液に擾乱を加えた後、即ち、超音波処理後の組成物中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の単位体積当たり比表面積(γA)は例えば0.02m2/mL以上2.00m2/mL以下の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその下限は、通常0.02m2/mL以上であるのが好ましい。中でも0.03m2/mL以上、更には0.04m2/mL以上、とりわけ0.05m2/mL以上、又は0.10m2/mL以上、特に0.15m2/mL以上の範囲とすることが好ましい。一方、前記比表面積(γA)の上限は限定されないが、通常2.00m2/mL以下、中でも1.90m2/mL以下、特に1.80m2/mL以下であってもよい。尚、本発明において「超音波処理」とは、特に断りがない限り、周波数40kHzの超音波を出力40Wにて3分間の処理をすることを意味し、超音波処理後の粒子径の測定条件については、後述の手順で、エタノールを溶媒として測定することができる。また、乾燥食用植物(特に粉末状の乾燥食用植物)についても、同様の比表面積範囲であることが好ましい。
【0063】
また、本発明の組成物は擾乱によって解砕する特性を有することが好ましく、より具体的には組成物分散液に擾乱を加える前後、即ち、超音波処理前後の組成物中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の単位体積当り比表面積の比、即ち(γB/γA)(これを適宜「解砕率」と称する。)が、所定範囲を満たすことが好ましい。具体的には、(γB/γA)は例えば0.01以上、0.99以下の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその上限が0.99以下であることが好ましい。中でも0.95以下、更には0.90以下、とりわけ0.85以下、特に0.80以下であることが好ましい。なお、(γB/γA)の下限は限定されないが、通常は0.01以上、または0.10以上であることが好ましい。また、乾燥食用植物(特に粉末状の乾燥食用植物)についても、同様の比表面積の比(γB/γA)であることが好ましい。その原理は不明であるが、粒子同士が複合体を形成していることで比表面積が小さくなり、干草臭の生成が抑制されると考えられる。また、複合体化のためには糖などの水溶性成分を含有する状態の粒子が接触する乾式粉砕を行うことが好ましいと考えられ、その結果として得られる組成物は所定割合以下の乾量基準含水率かつ所定の(γB/γA)を有する組成物であることが好ましい。
【0064】
またさらに、本発明の乾燥食用植物を含む組成物(特に粉末状の組成物)は、組成物分散液に擾乱を加えた後、即ち、超音波処理後の組成物中の粒子(擾乱によって解砕された微粒子及び未解砕の微粒子複合体を含む)の個数基準平均径が特定の範囲にあることで食感の良い組成物となるため、好ましい。具体的には、擾乱を加えた後、即ち、超音波処理後の組成物中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の個数基準平均径は例えば0.1μm以上30μm未満の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその上限は30μm未満であるのが好ましい。中でも25μm以下、更には20μm以下、とりわけ15μm以下、特に10μm以下が好ましい。下限としては、特に規定されるものではないが、工業的な便宜の観点から、0.1μm以上であることが好ましい。超音波処理後の粒子径の測定条件については、後述の手順で、エタノールを溶媒として測定することができる。また、乾燥食用植物(特に粉末状の乾燥食用植物)についても、同様の個数基準平均径であることが好ましい。さらに、超音波処理後の個数基準平均径が所定の値より大きい組成物は表面積が大きく劣化しやすくなる場合があるが、さらに所定範囲の(γB/γA)を有する組成物とすることで、食感が良くかつ干草臭が生成しにくい組成物とすることができるため、より好ましい。
【0065】
本発明において、超音波処理前後の単位体積当たり比表面積及び超音波処理後の個数基準平均径は、乾燥食用植物を含む組成物分散液を擾乱後、以下の条件で測定するものとする。まず、測定時には、溶媒として乾燥食用植物を含む組成物の測定時の試料の構造に影響を与え難いエタノールを用いる。そして、測定する際には、試料をあらかじめ溶媒で希釈し懸濁された組成物分散液を用い、試料が溶媒に均質に懸濁された状態で測定を行う。尚、具体的には、試料1gをエタノール50gに浸漬し、5分程度静置し、その後、スパーテルでよく攪拌、懸濁させ(これを適宜、「懸濁液」と称する。)、目開き2.36mm、線径(Wire Dia.)1.0mmの8メッシュ(例えばU.S.A. Standard Testing Sieves ASTM Specifications E 11-04にて、同文献中のNominal Dimensions, Permissible Variation for Wire Cloth of Standard Testing Sieves (U.S.A.) Standard Seriesにおける「Alternative」に規定された「No.8」と対応する篩)を通過した溶液(これを適宜「2質量%エタノール分散液」、「組成物分散液」と称する。)を用いて測定する。より具体的には、懸濁液(20℃)100gを、篩上に均等に散布し、篩上の画分重量が一定となるまで処理した場合に篩を通過した溶液を2質量%エタノール分散液として測定に供した。測定に使用されるレーザー回折式粒度分布測定装置としては、レーザー回折散乱法によって少なくとも0.02μmから2000μmの測定範囲を有するレーザー回折式粒度分布測定装置を用いる。例えばマイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3300 EX2システムを使用し、測定アプリケーションソフトウェアとしては、例えばDMSII(Data Management System version 2、マイクロトラック・ベル株式会社)を使用する。前記の測定装置及びソフトウェアを使用する場合、測定に際しては、同ソフトウェアの洗浄ボタンを押下して洗浄を実施したのち、同ソフトウェアのSetzeroボタンを押下してゼロ合わせを実施し、サンプルローディングで試料の濃度が適正範囲内に入るまで試料を直接投入する。擾乱前の試料、即ち超音波処理を行なわない試料は、試料投入後のサンプルローディング2回以内にその濃度を適正範囲内に調整した後、直ちに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折した結果を測定値とする。一方、擾乱後の試料、即ち超音波処理を行った試料を測定する場合、試料投入後に前記の測定装置を用いて超音波処理(周波数40kHzの超音波を出力40Wにて3分間の処理)を行い、続いて測定を行う。その場合、超音波処理を行っていない試料を投入し、サンプルローディングにて濃度を適正範囲内に調整した後、同ソフトの超音波処理ボタンを押下して超音波処理を行う。その後、3回の脱泡処理を行った上で、再度サンプルローディング処理を行い、濃度が依然として適正範囲であることを確認した後、速やかに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折した結果を測定値とする。測定時のパラメーターとしては、例えば分布表示:体積、粒子屈折率:1.60、溶媒屈折率:1.36、測定上限(μm)=2000.00μm、測定下限(μm)=0.021μmとする。
【0066】
本発明において、組成物の単位体積当たり比表面積とは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した粒子を球状と仮定した場合の単位体積(1mL)当たり比表面積を表す。なお、粒子を球状と仮定した場合の単位体積あたりの比表面積は、粒子の成分や表面構造等を反映した測定値(透過法や気体吸着法等で求められる体積あたり、質量あたり比表面積)とは異なる測定メカニズムに基づく数値である。また、粒子を球状と仮定した場合の単位体積あたりの比表面積は、粒子1個当たりの表面積をai、粒子径をdiとした場合に、6×Σ(ai)÷Σ(ai・di)によって求められる。尚、本発明における「個数基準平均径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した粒子を球状と仮定して求められた仮想の個数分布から求めた平均径であり、Σ(v/d2)/Σ(v/d3)によって算出するものであって(d:各粒径チャンネルの代表値、v:チャンネルごとの体積基準のパーセント)、体積基準平均径とは、その数値が大きく異なる。
【0067】
また、組成物の単位体積当たり比表面積及び個数基準平均径を求める際には、チャンネル(CH)毎の粒子径分布を測定した上で、後記の表1に記載した測定チャンネル毎の粒子径を規格として用いて求めることが好ましい。具体的には、後記の表1の各チャンネルに規定された粒子径以下で、且つ数字が一つ大きいチャンネルに規定された粒子径(測定範囲の最大チャンネルにおいては、測定下限粒子径)よりも大きい粒子の頻度を、後記の表1のチャンネル毎に測定し、測定範囲内の全チャンネルの合計頻度を分母として、各チャンネルの粒子頻度%を求めることができる(これを「○○チャンネルの粒子頻度%」とも称する)。例えば、1チャンネルの粒子頻度%は、2000.00μm以下かつ1826.00μmより大きい粒子の頻度%を表す。
【0068】
【表1】
【0069】
[マンセル表色系において規定される色相、明度、彩度]
本発明における乾燥食用植物を含む組成物は、マンセル表色系(JISZ8721)において規定される色相が所定範囲にあることで、保管中の干草臭の生成を抑制できるため好ましい。その原理は不明であるが、β-カロテンなど特定の色調を有する油脂の分解に伴って蓄積される前駆成分が、保管中に酸化劣化することで干草臭が生成すると考えられる。すなわち当該色相範囲の組成物は特定の色調を有する油脂が比較的分解されていない品質であることを表す。そのため、所定の色相範囲の組成物であることで、干草臭が生成しづらい性質の組成物になると考えられる。具体的には、最終的な組成物の色相が0YR乃至10YR(0Y)又は0Y乃至5Yであることが好ましい。中でも0YR乃至10YRであることが好ましく、2.5YR乃至10YRであることが好ましく、2.5YR乃至7.5YRであることが好ましく、5.0YR乃至7.5YRであることが特に好ましい。なお、組成物中の乾燥食用植物(中でもセリ科植物、より好ましくはニンジン、セロリ、パセリ、セリ、及びパクチー、特にニンジン)が前記色相であることがさらに好ましい。
【0070】
また、本発明における乾燥食用植物を含む組成物は、前記色相範囲であることに加えてマンセル表色系(JISZ8721)において規定される明度が所定範囲にあることで、保管中の干草臭の生成を抑制できるためより好ましい。すなわち当該明度範囲の組成物は特定の色調を有する油脂が比較的分解されていない品質であることを表す。具体的には、最終的な組成物の明度は例えば1.0以上9.0未満の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその上限は9.0未満であることが好ましい。特に8.5未満であるのが好ましい。一方、下限は特に制限されないが、1.0以上、又は3.0以上、特に5.0以上であるのが好ましい。なお、組成物中の乾燥食用植物(中でもセリ科植物、より好ましくはニンジン、セロリ、パセリ、セリ、及びパクチー、特にニンジン)が前記色相範囲であることに加えて前記明度範囲であることがさらに好ましい。
【0071】
さらに、本発明における乾燥食用植物を含む組成物は、前記色相範囲であることに加えてマンセル表色系(JISZ8721)において規定される彩度が所定範囲にあることで、保管中の干草臭の生成を抑制できるため、より好ましい。すなわち当該彩度範囲の組成物は特定の色調を有する油脂が比較的分解されていない品質であることを表す。具体的には、最終的な組成物の彩度は例えば4超14以下の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその下限は4超であるのが好ましい。中でも5超、更には6超、特に7超であるのが好ましい。一方、上限は特に制限されないが、14以下であってもよい。また、明度と、彩度とが共に所定範囲であることで、保管中の干草臭生成が抑制されやすくなるためより好ましい。なお、組成物中の乾燥食用植物(中でもセリ科植物、より好ましくはニンジン、セロリ、パセリ、セリ、及びパクチー、特にニンジン)が前記色相範囲であることに加えて前記彩度範囲であることがさらに好ましく、明度と、彩度とが共に所定範囲であることが特に好ましい。
【0072】
尚、マンセル表色系におけるマンセル色相環(図1)において、色相はRYGBPを主要5色相とし、それぞれの中間にYR、GY、BG、PB、RPを加えた10色相を基準として、環状に時計回りに循環させて並べ、さらにそれぞれの間を等歩度に10分割してメモリをふって1Y~10Yというように表示し、色相全体を表現する。また、本発明において色相の範囲を記載する場合は、特に指定が無い場合、図1の表において時計回りの範囲を表し、また、主要色相の境界部分、例えばYRとYの境界部分は10YRまたは0Yと表現することができる。例えば、0YR乃至10YRまたは0Y乃至5Yとは、0YR→10YR(または0Y)→5Yと連続的に変化する色相の範囲を表す(図1参照)。マンセル表色系において規定される明度は、反射率0の理想的な黒が0、完全反射の理想的な白を10として定義される。
【0073】
[組成物]
本発明における乾燥食用植物を含む組成物は前述される構成を充足するものであればどのような態様であってもよく、乾燥食用植物を含有する組成物であれば、前述されるような粉砕組成物の態様であってもよく、乾燥食用植物(特に乾燥粉砕食用植物)そのものの態様であってもよく、飲食品の態様であってもよい。
また、組成物の形態は、液状、半固体状及び固体状のいずれでも構わない。例えば、半固体状である場合、流動性のある半固形であれば特に限定されないが、例えば、常温で液体状の油脂及び/または常温で固体状の油脂に乾燥食用植物を含有せしめたペースト状食品であってもよい。更に、固体状である場合、例えば、粉末状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状等の種々の形状とすることができる。中でも、本発明の効果をより顕著に奏効させる観点から、粉末状の形態が好ましい。
さらに、本発明の組成物が飲食品である場合、前述される構成を充足する飲食品であればその種類は何ら限定されるものではないが、食料類等の半固体状又は固体状食品(例えばピューレ、パスタ)、飲料類等の液状食品(例えばスープ、スムージー、ペースト)、調味料類等の液状又は半固体状又は固体状の飲食品(例えばマヨネーズ、ドレッシング、バター、マーガリン)、菓子類などの半固体状又は固体状食品(例えばグラノーラ、スティック、クラッカー、キャラメル、グミ、チップス)、乾燥調味料類などの粉末状食品が挙げられる。中でも、乾燥食用植物を含有するスティック状食品、チップスであることが好ましい。
【0074】
[組成物を含有する飲食品]
本発明には、本発明の乾燥食用植物を含む組成物を添加や配合などの方法によって含有した飲食品も含まれる。本発明の乾燥食用植物を含む組成物の被添加飲食品への配合量が所定割合以上であることで、最終的な飲食品においても良好な品質となる。その割合は、特に限定されるものではなく適宜調整すればよいが、例えば本発明の乾燥食用植物を含む組成物を飲食品全体に対して10質量%以上100質量%以下の範囲含有することが好ましい。より具体的にはその下限が10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が特に好ましい。また、上限は100質量%以下が好ましい。
【0075】
その飲食品の形態は、液状、半固体状及び固体状のいずれでも構わない。液状である場合、例えば、希釈せずにそのまま飲用できるRTD飲料でも、濃縮還元飲料でもよい。また、半固体状である場合、流動性のある半固形であれば特に限定されないが、例えば、ペースト状食品の他、容器に備え付けられた吸い口やストローから吸引するゼリー状飲料とすることもできる。更に、固体状である場合、例えば、粉末状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状等の種々の形状とすることができる。中でも、本発明の効果をより顕著に奏効させる観点から、粉末状食品が好ましい。
【0076】
また、飲食品の種類としては何ら限定されるものではないが、食料類等の半固体状又は固体状食品(例えばピューレ、パスタ)、飲料類等の液状食品(例えばスープ、スムージー、ペースト)、調味料類等の液状又は半固体状又は固体状の飲食品(例えばマヨネーズ、ドレッシング、バター、マーガリン)、菓子類などの半固体状又は固体状食品(例えばグラノーラ、スティック、クラッカー、キャラメル、グミ、チップス)、乾燥調味料類などの粉末状食品が挙げられる。
【0077】
[製造方法]
本発明の組成物は、例えば、γ-テルピネンが乾燥質量換算で0.01ppb以上100000ppb以下含有する食用植物を粉砕処理し、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量を乾燥質量換算で0.05ppb以上200000ppb以下かつγ-テルピネン含有量に対する炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量の割合が乾燥質量換算で0.001質量%以上となるように含有させ、任意の段階で食用植物を乾量基準含水率30質量%未満となるまで乾燥処理することにより製造することができる。本発明において「含有させる」とは、組成物における成分割合を調整して含有させることを表し、その調整の方法は組成物の原料となる食用植物等の食材に含まれる成分を用いて調整してもよく、当該食材とは別に添加される成分を用いて調整してもよく、本発明の乾燥食用植物を含む組成物の製造に伴い生じる成分を用いて調整してもよく、それらを組み合せて用いてもよい。
【0078】
また、本発明によれば、乾量基準含水率30質量%未満の乾燥食用植物を含有する組成物又は飲食品において、γ-テルピネンを乾燥質量換算で0.01ppb以上100000ppb以下含有させ、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量を乾燥質量換算で0.05ppb以上200000ppb以下含有させ、当該組成物又は飲食品におけるγ-テルピネン含有量に対する、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸合計含有量の割合が乾燥質量換算で0.001質量%以上となるように調整することを特徴とする、当該組成物又は飲食品の保存性向上方法も提供することができる。
【0079】
具体的に、本発明の乾燥食用植物を含む組成物中の、γ-テルピネンの含有量と炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量は、食用植物を粉末状及び/又はチップ状に乾燥処理する前に調整してもよいし、乾燥処理中に調整してもよいし、乾燥処理後に調整してもよく、それらを組み合わせて調整しても良いが、少なくとも乾燥処理中に調整することが好ましい。また、当該組成物を含有した飲食品の状態で調整してもよい。さらに、食用植物を粉砕処理する前に調整してもよいし、粉砕処理中に調整してもよいし、粉砕処理後に調整してもよく、それらを組み合わせて調整しても良い。尚、調整の手法は制限されないが、一例としては、乾燥食用植物を含む組成物に外部からγ-テルピネン又は炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸を添加することにより行っても良く、所定の乾燥処理を行うことで、γ-テルピネンの含有量と炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量とを所望の範囲に調整する手法を用いても良いが、γ-テルピネンを含有する状態の食用植物に、所定の乾燥処理を行うことで、γ-テルピネンの含有量と炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量を所望の範囲に調整する手法を用いることが好ましい。
【0080】
また本発明によれば、冷蔵保管を行わなくても組成物のγ-テルピネンに由来する干草臭が抑制され、品質が保持されるため、好ましい。従って本発明には、γ-テルピネンが乾燥質量換算で0.01ppb以上100000ppb以下含有する食用植物を粉砕処理し、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量を乾燥質量換算で0.05ppb以上200000ppb以下含有させ、任意の段階で食用植物を乾量基準含水率30質量%未満となるまで乾燥処理することで、乾燥食用植物の干草臭を改善し、保存性を向上させる方法が含まれる。特に、β-ヨノンを所定の割合で含有する場合、効果が長期間保持されるためより好ましい。また、特に組成物が粉末状である場合はその表面積の大きさから干草臭が生成しやすいため、本方法はより有用である。
【0081】
本発明において、γ-テルピネンを乾燥質量換算で所定割合含有する食用植物(γーテルピネン含有食用植物)を粉砕処理後に任意の段階で乾燥処理することで、干草臭抑制効果を奏するため有用である。具体的には、γ-テルピネン含有量は例えば0.01ppb以上100000ppb以下の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその下限は通常0.01ppb以上である。中でも0.03ppb以上、更には0.05ppb以上、とりわけ0.10ppb以上、又は0.20ppb以上、又は0.30ppb以上、又は0.40ppb以上、又は0.50ppb以上、又は1.00ppb以上、又は5.00ppb以上、又は10.0ppb以上、又は15.0ppb以上、又は20.0ppb以上、又は30.0ppb以上、又は40.0ppb以上、又は50.0ppb以上、又は80.0ppb以上、又は100ppb以上、又は150ppb以上、又は200ppb以上、又は400ppb以上、又は600ppb以上、又は800ppb以上、又は1000ppb以上、又は1200ppb以上、又は1500ppb以上、特に2000ppb以上であることが好ましい。一方、その上限は通常100000ppb以下、中でも80000ppb以下、更には60000ppb以下、とりわけ50000ppb以下、又は40000ppb以下、又は30000ppb以下、又は20000ppb以下、又は15000ppb以下、又は10000ppb以下、特に9000ppb以下であることが好ましい。
【0082】
本発明は、γ-テルピネンを乾燥質量換算で所定割合含有する食用植物(γーテルピネン含有食用植物)を粉砕処理し、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量を乾燥質量換算で所定割合となるように含有させる方法であればよい。具体的に、当該脂肪酸割合は例えば0.05ppb以上、200000ppb以下の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその下限は通常0.05ppb以上である。中でも0.10ppb以上、更には0.50ppb以上、とりわけ1.00ppb以上、又は3.00ppb以上、又は5.00ppb以上、又は7.00ppb以上、又は9.00ppb以上、又は10.0ppb以上、又は12.0ppb以上、又は15.0ppb以上、又は18.0ppb以上、特に20.0ppb以上であることが好ましい。一方、上限は特に限定されないが、例えば通常200000ppb以下、中でも180000ppb以下、更には150000ppb以下、とりわけ120000ppb以下、又は90000ppb以下、又は60000ppb以下、特に30000ppb以下であることが好ましい。
【0083】
また、本発明は、γ-テルピネンを乾燥質量換算で所定割合含有する食用植物(γーテルピネン含有食用植物)を粉砕処理し、γ-テルピネン含有量に対する炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量の割合が乾燥質量換算で所定割合以上となるように含有させる方法であれば良い。具体的に、当該γ-テルピネン含有量に対する直鎖型脂肪酸の合計含有量割合は例えば0.001質量%以上10000質量%未満の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその下限は通常0.001質量%以上である。中でも0.002質量%以上、更には0.003質量%以上、とりわけ0.004質量%以上、又は0.005質量%以上、又は0.006質量%以上、又は0.007質量%以上、又は0.008質量%以上、又は0.009質量%以上、又は0.010質量%以上、又は0.040質量%以上、又は0.060質量%以上、又は0.080質量%以上、又は0.10質量%以上、又は0.30質量%以上、又は0.60質量%以上、又は1.00質量%以上、又は2.00質量%以上、又は3.00質量%以上、又は4.00質量%以上、又は5.00質量%以上、特に6.00質量%以上であることが好ましい。一方、上限は特に限定されないが、例えば通常10000質量%未満、中でも8000質量%未満、更には6000質量%未満、とりわけ5500質量%未満、又は4500質量%未満、又は4000質量%未満、又は3500質量%未満、又は3000質量%未満、又は2500質量%未満、又は2000質量%未満、又は1500質量%未満、又は1000質量%未満、又は900質量%未満、又は800質量%未満、又は700質量%未満、又は600質量%未満、又は500質量%未満、又は400質量%未満、又は300質量%未満、又は200質量%未満、又は180質量%未満、又は170質量%未満、又は160質量%未満、又は150質量%未満、特に140質量%未満とすることができる。尚、γ-テルピネン含有量と炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸合計含有量とは前述の方法で測定することができる。また、乾燥処理によって当該割合が増加(すなわち乾燥処理前後でその値が増加)するように乾燥処理を行うことが好ましい。さらに、炭素数6又は7の直鎖型脂肪酸のいずれか一方がそれぞれ前述する所定の割合であることが好ましく、炭素数6及び7の直鎖型脂肪酸が共に前述する所定の割合であることが好ましい。また、当該脂肪酸は飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であっても良いが、飽和脂肪酸(すなわちカプロン酸又はヘキサン酸)であることが好ましい。
【0084】
また、本発明は、任意の段階で食用植物を乾量基準含水率が所定割合未満となるまで乾燥処理することを含む方法であれば良い。具体的に、当該乾量基準含水率は例えば0.5質量%以上30質量%未満の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその上限は、通常30質量%未満である。中でも25質量%未満、更には20質量%未満、とりわけ15質量%未満、又は10質量%未満であってもよい。一方、その下限は、制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点から、通常0.5質量%以上、中でも1.0質量%以上、更には1.5質量%以上、又は2.0質量%以上とすることができる。尚、乾量基準含水率は前述の方法で測定することができる。
また、上記乾燥処理は粉砕処理前の組成物に対して行われても良く、粉砕処理中に行われても良く、粉砕処理後に行われても良く、それらを組み合わせて行われても良いが、粉砕処理後の組成物に対して行われることが好ましい。
【0085】
さらに本発明は、γ-テルピネンを乾燥質量換算で所定割合含有する食用植物(γーテルピネン含有食用植物)を粉砕処理し、β-ヨノン含有量が乾燥質量換算で0.01ppb以上50000ppb以下含有させる方法であっても良い。具体的に、当該β-ヨノン含有量の下限は通常0.01ppb以上であることが好ましい。中でも0.05ppb以上、更には0.10ppb以上、とりわけ0.50ppb以上、又は1.00ppb以上であることが好ましい。一方、上限は特に限定されないが、通常20000ppb以下、中でも10000ppb以下、又は5000ppb以下、特に1000ppb以下であることが好ましい。尚、β-ヨノン含有量は前述の方法で測定することができる。
【0086】
本発明においては、乾燥食用植物を含む組成物の2質量%エタノール分散液における超音波処理後の単位体積当たり比表面積が所定値以上となるまで粉砕処理を行う方法であってもよい。具体的に、当該比表面積の下限は通常0.02m2/mL以上であることが好ましい。中でも0.03m2/mL以上、更には0.04m2/mL以上、とりわけ0.05m2/mL以上、又は0.10m2/mL以上、特に0.15m2/mL以上の範囲とすることが好ましい。一方、前記比表面積の上限は限定されないが、通常2.00m2/mL以下、中でも1.90m2/mL以下、特に1.80m2/mL以下であることが好ましい。尚、超音波処理後の組成物中の粒子の単位体積当たり比表面積は前述の方法で測定することができる。
【0087】
本発明においては、脂肪酸に比べて相対的に沸点が低く揮発しやすいγ-テルピネンと、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸とを共に含有する状態で乾燥処理を行うことで、γ-テルピネン含有量に対する炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量の割合を相対的に高めることが可能である。従って、本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、乾燥処理前後で、γ-テルピネン含有量に対する炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸合計含有量の割合が乾燥質量換算で所定割合以上増加する(すなわち、「(乾燥処理後の本発明組成物における当該割合-乾燥処理前の本発明組成物における当該割合)/乾燥処理前の本発明組成物における当該割合」で規定される増加率が一定以上の数値となる)ことが好ましい。具体的には例えば100質量%以上100000質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的にはその下限が100質量%以上、更には150質量%以上、とりわけ200質量%以上増加することが好ましい。その割合の上限は特に制限されないが、例えば通常100000質量%以下、又は50000質量%以下、又は10000質量%以下とすることができる。
【0088】
本発明の乾燥食用植物を含む組成物は、当該組成物における上記の特定成分を、最終的な乾燥食用植物を含む組成物において所定範囲になるように含有させる以外は、通常の乾燥食用植物を含む組成物の製造方法に従って製造すればよい。例えば、乾燥処理原料を粉砕した後、容器に充填することにより製造できる。
【0089】
また、本発明の組成物を充填する容器には、あらゆる容器が使用できる。例えば、製造からの賞味期限が4ヶ月よりも長いロングライフ常温保存容器、一部または全部に樹脂を使用した容器、開封後に容器開口部を密封して複数回に亘って使用することができる非使い切り容器、中身が漏出しない程度の再密封可能なキャップや栓などの機構を持つ再密封可能な容器など、中身の組成物が劣化しやすい容器であっても使用できる。
【0090】
また、本発明の組成物の保存の方法も限定されず、常温保存であって冷蔵保存であってもよい。特に常温で流通・保存されるドライグロサリー製品として提供しても、中身組成物の劣化が抑制されるため好ましい。
【0091】
尚、本発明の粉末状組成物には、本発明の作用効果を妨げない限りにおいて、その他の食材を含有していてもよい。具体的には、レーザー回折式粒子径分布測定の測定対象とならない2000μm(2mm)より大きいチップ状の食材や具材をいう。斯かるその他の食材としては、穀類のパフや乾燥種実類や乾燥果実類等が挙げられるが、いずれを用いてもよい。これらの食材は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。
尚、この場合、超音波処理を行った状態における粒子径(擾乱後比表面積等)の測定に際しては、これら具材のうち、測定上限2000.00μm以上のものを除いてから測定する。
【実施例
【0092】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0093】
[乾燥食用植物を含む組成物の製造及び調整方法]
各試験例及び各比較例の乾燥食用植物を含む組成物は、乾燥処理前におけるγ-テルピネンを乾燥質量換算で0.01ppb以上含有する食用植物(γテルピネン含有食用植物)を乾燥処理及び粉砕処理して、γテルピネン含有食用植物含有割合100質量%の乾燥食用植物を含む組成物を調製した。食用植物は、表2に示した通り、野菜類の一種であるニンジン、セロリ、タイム、トマト、果実類の一種であるオレンジ、ウンシュミカン、マンゴー、種実類の一種であるクルミを使用した。尚、ニンジンは乾燥粉砕前の段階で炭素数が6及び/又は7の直鎖型脂肪酸が10ppb未満含有される向陽二号を用いた。
【0094】
乾燥処理は、一辺5mmで食用植物を粉砕処理(ダイス状にカット)し、粉砕処理した後に攪拌しながらブランチング処理(85℃達温)を行った後、表2に示した乾量基準含水率となるまで熱風乾燥(条件:70℃5h、多目的電気乾燥機、DSK―10-1、静岡製機社製)を行った。次に、上記熱風乾燥処理した食用植物を、表2に示したサイズ(1メッシュパス10メッシュオン)のチップ状組成物に調製した。その後、ワンダークラッシャー(大阪ケミカル販、ワンダークラッシャーWC-3)で乾式粉砕処理し、表2に示したサイズ(単位体積当たり比表面積)の粉末状組成物に調製した。なお、表中試験例の組成物のうち、食用植物としてニンジンを使用した組成物および組成物中の乾燥食用植物の外観については、マンセル表色系(JISZ8721)において規定される色相が5YR乃至7.5YR、明度は8.0、彩度は8乃至14であった。
【0095】
尚、試験例及び比較例の乾燥食用植物を含む組成物における各成分含有量及び割合は、前記粉末状及び/又はチップ状組成物に対し、各香気成分の標準品(γ-テルピネン(CAS登録番号:99-85-4、Sigma社製、製品コード:223190)、カプロン酸(CAS登録番号:142-62-1、東京化成工業社製、製品コード:H0105)、ヘプタン酸(CAS登録番号:111-14-8、東京化成工業社製、製品コード:H0030)、β-ヨノン(CAS登録番号:14901-07-6、東京化成工業社製、製品コード:I0077)、β-カリオフィレン(CAS登録番号:87-44-5、Sigma社製、製品コード:22075))を組成物に含有される当該成分に対して必要に応じて添加・混合することにより最終的な含有量、割合が表2、表3、表4に示された数値となるように調製した。
更に、試験例35のサンプルと食塩とを表5に記載された割合で混合した本発明における飲食品(粉末状飲食品)を製造し、本発明の効果が認められるかを確認した。
また、表5における食塩の代替として同じ重量の液状油脂(オリーブオイル)を用い、試験例35のサンプルと液状油脂とを所定の割合で混合した本発明における飲食品(ペースト状飲食品)を製造した。尚、試験例及び比較例の乾燥食用植物を含む組成物は、乾燥処理前後で、γ-テルピネン含有量に対する炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸合計含有量の割合が乾燥質量換算で100質量%以上増加する乾燥処理を実施した。
【0096】
[乾燥食用植物を含む組成物のパラメーター測定]
上記手順で得られた各試験例及び比較例の乾燥食用植物を含む組成物について、前記の手法により各種パラメーターを測定した。得られた各試験例及び各比較例の乾燥食用植物を含む組成物の各パラメーターを下記表2、表3、表4に示す。尚、表中の「-」は分母が検出不能(ND<1ppt)のため算出不可能であることを意味する。また、形状がチップ状(1メッシュパス10メッシュオン)の組成物については、その大きさがレーザー回折式粒度分布測定装置の測定範囲外(上限2000μm)であるため、単位体積当たり比表面積は記載しなかった。
【0097】
[乾燥食用植物を含む組成物の官能評価]
各試験例及び各比較例の乾燥食用植物を含む組成物について、以下の手順により官能評価を行った。尚、官能検査員としては、下記A)~C)の識別訓練を実施した上で、特に成績が優秀で、商品開発経験があり、食品の味や食感といった品質についての知識が豊富で、各官能検査項目に関して絶対評価を行うことが可能な検査員を選抜した。
【0098】
A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
C)メーカーA社醤油2つにメーカーB社醤油1つの計3つのサンプルからB社醤油を正確に識別する3点識別試験。
【0099】
また、何れの評価項目でも、事前に検査員全員で標準サンプルの評価を行い、評価基準の各スコアについて標準化を行った上で、10名によって客観性のある官能検査を行った。即ち、各組成物、飲食品について訓練された官能検査員10名が香り評価し、「干草臭」、「総合評価」、及び「豊潤な香り」の各観点から、下記の基準で評価を行った。また、総合評価に際して脂肪酸の刺激臭についてもコメントを記載した。そして、官能検査員10名の評点の算術平均値を算出し、小数第1位を四捨五入して最終評点とした。また、得られた試験品について、既報(業界の動向 「賞味期限延長」技術の考え方 JAS情報,503,2-5(2011)を参考に40℃にて10日間保存することによって20℃40日間相当の劣化度合いを再現するサンプルを調製し、保管後サンプルにおける干草臭を官能検査にて評価し、「総合評価」のコメント欄に記載した(保管中の干草臭)。
【0100】
・「干草臭」の評価基準:
各組成物の干草臭について、下記の5段階で評価した。
5:干草臭が全く感じられず、非常に好ましい
4:干草臭がほとんど感じられず、好ましい
3:干草臭がわずかに感じられるが、好ましい
2:干草臭がやや目立ち、好ましくない
1:干草臭が目立ち、非常に好ましくない
【0101】
・「総合評価」の評価基準:
各組成物の香りのバランスについて、下記の5段階で評価した。「脂肪酸の刺激臭」及び「保管中の干草臭」についてコメントとして記載した。
5:香りのバランスが特に良く、非常に品質が優れている
4:香りのバランスが良く、品質が優れている
3:香りのバランスがやや良く、品質がやや優れている
2:香りのバランスがやや悪く、品質が劣る
1:96のバランスが悪く、非常に品質が劣る
【0102】
・「豊潤な香り」の評価基準:
各組成物の豊潤な香りについて、下記の5段階で評価した。
5:豊潤な香りが特に強く感じられる
4:豊潤な香りが感じられる
3:豊潤な香りがやや感じられる
2:豊潤な香りがやや弱い
1:豊潤な香りが特に弱い
【0103】
上記手順で得られた各試験例及び各比較例の乾燥食用植物を含む組成物、飲食品についての官能評価の結果を下記表2~表8に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】
【0108】
【表6】
【0109】
【表7】
【0110】
【表8】
【0111】
結果は表2~表8に示す通り、乾燥質量換算でγ-テルピネンを所定割合含有する組成物において、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量及びγ-テルピネン含有量に対する、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計含有量の割合が所定範囲内であることで、干草臭が抑制され、本発明の効果が奏されることが明らかになった。更に、γ-テルピネン含有量に対する、β-ヨノン含有量の割合が所定範囲内であることで、保管中の干草臭の生成が抑制され、より好ましいことが分かった。また、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法を用いて、サンプル温度80℃20分で揮発性成分抽出して測定した場合における、炭素数6及び/又は7の直鎖型脂肪酸の合計ピーク面積値に対する、β-カリオフィレンピーク面積値の割合が所定範囲内であることで、組成物の豊潤な香りが感じられ好ましいことが分かった。
また、本発明組成物を一定割合含有する飲食品においても表5のように良好な効果が得られた。また、乾燥食用植物を含む組成物(粉末状食品全体)に対する乾燥食用植物含有量は、所定の範囲(10質量%以上)で効果が奏され好ましいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明によれば、乾燥粉砕処理後における干草臭が抑制されると共に、長期保管中の干草臭の抑制効果を発揮し、香りのバランスが優れた乾燥食用植物を含有する組成物を提供することができ、食品分野において極めて高い有用性を有する。
図1