(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】歯間清掃具セット
(51)【国際特許分類】
A61C 15/02 20060101AFI20231204BHJP
【FI】
A61C15/02 502
(21)【出願番号】P 2020082592
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】吉川 侑
(72)【発明者】
【氏名】朝山 紘貴
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-118959(JP,A)
【文献】特表2016-513049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯間清掃具と、
表面側部材と、前記表面側部材に対向する裏面側部材とで前記歯間清掃具を収容する空間を規定する包装容器と、を備える歯間清掃具セットであって、
前記歯間清掃具は、
基部と、前記基部から延在する軸部と、を有する基材部と、
前記軸部の少なくとも一部を被覆する軟質部と、を備え、
前記軟質部は、前記軸部の外周面を被覆する被覆部と、前記被覆部から突き出る複数の突起部と、を備え、
前記複数の突起部のうちの最も高い突起部が、前記歯間清掃具の全長の中点を含む前記歯間清掃具の中央セクションに配置され、
前記包装容器の前記表面側部材及び/又は前記裏面側部材は、前記歯間清掃具の前記中央セクションの最も高い前記突起部に接触して前記包装容器内で前記歯間清掃具を保持する、歯間清掃具セット。
【請求項2】
前記歯間清掃具を、前記中央セクションよりも先端側の先端セクションと、前記中央セクションと、前記中央セクションよりも基端側の基端セクションとに分けた場合、前記先端セクション、前記中央セクション及び前記基端セクションの長さの比は3:4:3である、請求項
1に記載の歯間清掃具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間清掃具及び歯間清掃具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯間を清掃する歯間清掃具が知られている。例えば特許文献1に開示された歯間清掃具は、合成樹脂から形成された基材部と、エラストマーから形成された軟質部と、を備えている。基材部は、持ち手としての扁平なハンドル部と、ハンドル部の先端から延びる細長い芯基材部と、を備えている。軟質部は、芯基材部の少なくとも一部を覆う被覆部と、被覆部の表面から突き出る複数の突起部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯間清掃具は通常、複数の歯間清掃具が並列に接続された状態で包装容器内に収容されて販売されている。包装容器は、透明な合成樹脂材料から形成された扁平なブリスターと、ブリスターの口部を覆うフィルムとから構成されており、ブリスターとフィルムとによって形成される平たい収容空間に複数の歯間清掃具が配置されている。例えばいくつかの歯間清掃具が使用されると、収容空間内には使用された歯間清掃具の分だけ空間に余裕ができる。そのため、包装容器の持ち運び時に収容空間内で歯間清掃具が動いてしまい、例えば歯間に挿入される部分である芯基材部が破損するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、包装容器内での移動を抑制することができる歯間清掃具及び歯間清掃具セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る歯間清掃具は、基部と、基部から延在する軸部と、を有する基材部と、軸部の少なくとも一部を被覆する軟質部と、を備え、軟質部は、軸部の外周面を被覆する被覆部と、被覆部から突き出る複数の突起部と、を備え、複数の突起部のうち最も高い突起部が、歯間清掃具の全長の中点を含む歯間清掃具の中央セクションに配置される。
【0007】
この態様によれば、歯間清掃具は、歯間清掃具の全長の中点を含む中央セクションにおいて、複数の突起部のうち最も高い突起部が包装容器の内面に接触することができる。その結果、歯間清掃具のより中点に近い位置で歯間清掃具は包装容器内に保持されることができるので、歯間清掃具の包装容器内での移動を抑制することができる。したがって、歯間清掃具の破損を防止することができる。一方で、例えば中央セクション以外のセクションで偏って突起部が包装容器の内面に接触したとしても、中点からの偏りが増大するにつれて当該突起部を支点として歯間清掃具を移動させるモーメントが増大するため、歯間清掃具の移動を容易に引き起こしてしまう。
【0008】
上記態様において、歯間清掃具を、中央セクションよりも先端側の先端セクションと、中央セクションと、中央セクションよりも基端側の基端セクションとに分けた場合、先端セクション、中央セクション及び基端セクションの長さの比は3:4:3であることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係る歯間清掃具セットは、歯間清掃具と、表面側部材と、表面側部材に対向する裏面側部材とで歯間清掃具を収容する空間を規定する包装容器と、を備え、歯間清掃具は、基部と、基部から延在する軸部と、を有する基材部と、軸部の少なくとも一部を被覆する軟質部と、を備え、軟質部は、軸部の外周面を被覆する被覆部と、被覆部から突き出る複数の突起部と、を備え、複数の突起部のうち最も高い突起部が、歯間清掃具の全長の中点を含む歯間清掃具の中央セクションに配置され、包装容器の表面側部材及び/又は裏面側部材は、歯間清掃具の中央セクションの最も高い突起部に接触して包装容器内で歯間清掃具を保持する。
【0010】
この態様によれば、包装容器の収容空間に、使用した歯間清掃具の分だけ余裕ができる場合、歯間清掃具の中点を含む中央セクションにおいて、複数の突起部のうち最も高い突起部が表面側部材及び/又は裏面側部材に接触する。その結果、収容空間内で歯間清掃具のより中点に近い位置で歯間清掃具を保持することができるので、歯間清掃具の収容空間内での移動を抑制することができる。したがって、歯間清掃具の破損を防止することができる。一方で、例えば中央セクション以外のセクションで偏って突起部が表面側部材及び/又は裏面側部材に接触したとしても、中点からの偏りが増大するにつれて当該突起部を支点として歯間清掃具を移動させるモーメントが増大するため、歯間清掃具の移動を容易に引き起こしてしまう。
【0011】
上記態様において、歯間清掃具を、中央セクションよりも先端側の先端セクションと、中央セクションと、中央セクションよりも基端側の基端セクションとに分けた場合、先端セクション、中央セクション及び基端セクションの長さの比は3:4:3であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、包装容器内での移動を抑制することができる歯間清掃具及び歯間清掃具セットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る歯間清掃具の構造を概略的に示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る歯間清掃具の構造を概略的に示す平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る歯間清掃具セットの構造を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
図1~
図3に示すように、本発明の一実施形態に係る歯間清掃具1は、基材部10と、基材部10の少なくとも一部を被覆する軟質部20と、を備えている。歯間清掃具1は、例えば基材部10に形成された1対の接続部30、30によって歯間清掃具1の短手方向D1に例えば10個の歯間清掃具1が並列に接続されて形成された接続体40から個別に切り離されたものである。
【0015】
基材部10は、使用者が把持する基部11と、基部11の先端から歯間清掃具1の短手方向D1に直交する長手方向D2に延在して、使用者の歯間に挿入される軸部12と、を備えている。なお、本明細書において、基部11から軸部12に向かう側を先端側とし、軸部12から基部11に向かう側を基端側とする。
【0016】
基部11は、例えば扁平に広がる板状に形成されており、本実施形態では、例えば平たい直方体形状に形成されているが、使用者が把持することができる形状であれば、その他の形状に形成されてもよい。
【0017】
軸部12は、基部11の一端である先端から長手方向D2に延在している。軸部12は、基部11から連続して扁平な板状に延在する移行部13と、移行部13の先端から軸部12の先端まで細い軸状に延びる先端部14と、を備えている。移行部13は、軸部12の先端に向かうにつれて短手方向D1に沿って規定される幅を減少させるテーパ形状に形成される。
【0018】
基材部10は例えば合成樹脂材料から成形される。合成樹脂材料としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリアミド等を採用することができる。また、合成樹脂材料には、例えば1~30重量%程度の割合でガラス繊維等の繊維素材が添加されてもよい。
【0019】
軟質部20は、軸部12の先端部14の少なくとも一部の外周面を被覆する被覆部21と、被覆部21から突き出る複数の突起部22と、を備えている。突起部22は、例えば円錐形状に形成されており、被覆部21の基端から先端まで、軸部12の先端部14の軸心周りに螺旋状に配置されている。本実施形態では、被覆部21の外周面からの突起部22の高さは、被覆部21の基端から先端に向かうにつれて減少する。すなわち、突起部22の高さは被覆部21の最も基端側で最大となる。
【0020】
軟質部20は、基部10の合成樹脂材料の硬度よりも低い硬度を有する樹脂材料から形成される。樹脂材料としてはエラストマーを採用することができ、エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、シリコーン、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が用いられてもよい。エラストマーの硬度は、デュロメータ硬さタイプA(JISK6253)が、10~50であることが好ましく、10~40であることがより好ましい。本実施形態では、デュロメータ硬さタイプAは35である。
【0021】
本実施形態の歯間清掃具1において、長手方向D2に規定される基材部10の長さL1は例えば45mm~55mmに設定されている。本実施形態では、基材部10の長さL1は50mmに設定されている。なお、基材部10の長さL1は歯間清掃具1の長さにほぼ一致する。短手方向D1に規定される基部11の幅W1は例えば3mm~10mmに設定されている。また、短手方向D1及び長手方向D2に直交する厚さ方向D3に規定される基部11の厚さT1は例えば0.5mm~10mmに設定されている。
【0022】
被覆部21は、長手方向D2に規定されるその基端から先端までの長さは例えば10mm~25mmに設定されている。長手方向D2に規定される被覆部21の長さは好ましくは15mm以上であり、本実施形態では、被覆部21の長さは例えば20mmに設定されている。被覆部21は、長手方向D2の同じ位置では均一な厚さで形成されており、その厚さは例えば0.1mm~2.5mmに設定されている。被覆部21の外周面からの突起部22の高さは例えば0.1mm~5.0mmに設定されている。
【0023】
軸部12の軸心に直交する軸部12の先端部14の断面はほぼ正円形状に設定されている。先端部14は、その基端から先端に向かうにつれてその縮径するテーパ形状に形成されており、その直径は例えば0.6mm~3.0mmに設定されている
【0024】
図1を参照すると、長手方向D2において各歯間清掃具1は、先端セクションと、中央セクションと、基端セクションとに分けられる。言い換えれば、歯間清掃具1の長さL1はこれら3つのセクションに分けられる。中央セクションは、長手方向D2における歯間清掃具1の全長(長さL1)の中点を含む領域である。先端セクションは、中央セクションよりも先端側の領域であり、基端セクションは、中央セクションよりも基端側の領域である。
【0025】
長手方向D2における先端セクション、中央セクション及び基端セクションの長さの比は3:4:3である。本実施形態では、基材部10の長さL1は50mmに設定されているので、先端セクションの長さは15mm、中央セクションの長さは20mm、基端セクションの長さは15mmである。一方で、本実施形態では、被覆部21の長さは20mmであり、被覆部21の最も基端側に配置された最も高い突起部22が中央セクションに配置される。なお、ここでいう高さは、軸部12の軸心から突起部22の先端までの距離をいうが、本実施形態では、当該距離は、被覆部21の最も基端側に配置された突起部22で最大となる。その他、最も高い突起部22以外の突起部22が中央セクションに配置されてもよい。
【0026】
図4は、本発明の一実施形態に係る歯間清掃具セットを示す正面図である。歯間清掃具セットは、歯間清掃具1の接続体40と、接続体40を収容する包装容器50とを備えている。包装容器50は、例えば扁平なブリスターである表面側部材60と、例えばフィルムである表面側部材60に対向する裏面側部材70と、を備えている。表面側部材60は、例えば透明な合成樹脂材料から形成されており、接続体40を収容する扁平な収容空間を規定している。収容空間の口部は、例えば合成樹脂製フィルムから形成された裏面側部材70によって覆われており、裏面側部材70は、表面側部材60の収容空間から外側に延在するフランジ部分に着脱自在に貼り付けられている。フランジ部分の輪郭は裏面側部材70の輪郭に一致する。こうした構成によれば、裏面側部材70を一旦表面側部材60から剥がして歯間清掃具1を取り出した後、裏面側部材70を再度表面側部材60のフランジ部分に貼り付けることができる。
【0027】
図4から明らかなように、歯間清掃具1の長さL1に対応する包装容器50の収容空間の長さは、歯間清掃具1の長さL1とほぼ同一に設定されている。したがって、歯間清掃具1の先端セクション、中央セクション及び基端セクションは包装容器50の収容空間にも同様に当てはめることができる。収容空間の幅は、例えば10個の歯間清掃具1の接続体40を収容可能な大きさに設定されている。一方で、
図5に示すように、収容空間の厚さは、少なくとも最も高い突起部22が表面側部材60及び裏面側部材70の内面に押し付けられる程度の大きさに設定されている。なお、中央セクションにおいて、最も高い突起部22以外の突起部22が表面側部材60及び/又は裏面側部材70の内面に押し付けられてもよい。
【0028】
以上のような歯間清掃具1によれば、接続体40からいくつかの歯間清掃具1を切り離して使用すると、包装容器50の収容空間には、その幅方向に使用した歯間清掃具1の分だけ余裕ができる。こうした場合、各歯間清掃具1では、長さL1の中点を含む中央セクションにおいて、少なくとも最も高い突起部22が表面側部材60及び/又は裏面側部材70に押し付けられる。その結果、収容空間内で歯間清掃具1のより中点に近い位置で歯間清掃具1を保持することができるので、歯間清掃具1の収容空間内での移動を抑制することができる。したがって、歯間清掃具1の破損を防止することができる。一方で、例えば中央セクション以外のセクションで偏って突起部22が表面側部材60及び/又は裏面側部材70に押し付けられたとしても、中点からの偏りが増大するにつれて当該突起部22を支点として歯間清掃具1を移動させるモーメントが増大するため、歯間清掃具1の移動を引き起こしやすい。
【0029】
次に、歯間清掃具1の製造方法について以下に説明する。まず、基材部10の外形を象った第1金型の充填空間に溶融した合成樹脂材料が充填されて基材部10が成形される。その後、基材部10は第1金型から取り出される。続いて、成形された基材部10は、軟質部20の外形を象った第2金型の充填空間内に配置される。充填空間には、溶融したエラストマーが充填され軟質部20が成形される。こうして歯間清掃具1が成形される。歯間清掃具1は、その後、第2金型から取り出される。
【0030】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1…歯間清掃具、10…基材部、11…基部、12…軸部、20…軟質部、21…被覆部、22…突起部