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特許7395466サンプル検査における画像コントラスト強調
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】サンプル検査における画像コントラスト強調
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/28 20060101AFI20231204BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
H01J37/28 B
H01L21/66 L
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020513841
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2018075984
(87)【国際公開番号】W WO2019063558
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-04-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】62/566,195
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イーシャン
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,フランク,ナン
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】松川 直樹
【審判官】野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-151927(JP,A)
【文献】特開平10-294345(JP,A)
【文献】米国特許第9666412(US,B1)
【文献】国際公開第2011/121875(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J37/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル画像の空間的コントラストを強調する方法であって、
第1の期間の間、サンプルのうちのある領域内に第1の荷電粒子のビームを照射することによって、前記領域から放散される電荷の量と前記領域に堆積される電荷の量との第1の正味の量の電荷を堆積させることと、
第2の期間の間、前記領域内に前記第1の荷電粒子のビームを照射することによって、前記領域から放散される電荷の量と前記領域に堆積される電荷の量との第2の正味の量の電荷を堆積させることと、
前記第1の期間の間、前記第1の正味の量の電荷を前記領域内に堆積させることと、前記第2の期間の間、前記第2の正味の量の電荷を前記領域内に堆積させることと、を交互に反復することと、
前記反復することの後に、前記サンプル上に生成されたプローブスポットを第2の荷電粒子のビームによってスキャンしながら、前記プローブスポットから前記第2の荷電粒子のビームと前記サンプルとの相互作用を表す信号を記録することと、
を備える方法であって、
前記第1の期間における前記第1の正味の量の電荷の平均堆積速度と前記第2の期間における前記第2の正味の量の電荷の平均堆積速度は、異なる、
法。
【請求項2】
前記第1の正味の量と前記第2の正味の量は、異なる、請求項1の方法。
【請求項3】
前記第1の期間の長さと前記第2の期間の長さは、異なる、請求項1の方法。
【請求項4】
前記領域は、化学的特性又は物理的特性の不均一な空間的分布を有する、請求項1の方法。
【請求項5】
前記化学的特性又は前記物理的特性は、組成、ドーピングレベル、電気抵抗、電気容量、電気インダクタンス、厚さ、結晶化度、及び誘電率からなる群から選択される、請求項4の方法。
【請求項6】
前記第1の荷電粒子のビームは、前記第2の荷電粒子のビームと同一である、請求項1の方法。
【請求項7】
前記第1の荷電粒子のビームは、前記第2の荷電粒子のビームと同一ではなく、電荷を備える別のビームである、請求項1の方法。
【請求項8】
前記第1の荷電粒子のビームは、前記第2の荷電粒子のビームの断面積の少なくとも2倍の断面積を有する、請求項7の方法。
【請求項9】
前記領域は、第1のサブ領域及び第2のサブ領域を備えており、
前記第1のサブ領域から放散される電荷の量の変化率と前記第2のサブ領域から放散される電荷の量の変化率は、異なる、請求項1の方法。
【請求項10】
前記領域は、第1のサブ領域及び第2のサブ領域を備えており、
前記第1のサブ領域内に堆積される電荷の量の変化率と前記第2のサブ領域内に堆積される電荷の量の変化率は、同一である、請求項1の方法。
【請求項11】
前記領域は、第1のサブ領域及び第2のサブ領域を備えており、
前記第1のサブ領域における電荷の正味の量の変化率又は前記第2のサブ領域における電荷の正味の量の変化率は、負である、請求項1の方法。
【請求項12】
前記領域は、第1のサブ領域及び第2のサブ領域を備えており、
前記第1のサブ領域における電荷の正味の量と前記第2のサブ領域における電荷の正味の量との間の差は、経時的に増加する、請求項1の方法。
【請求項13】
サンプル画像の空間的コントラスト強調するように構成された装置であって、
第1の荷電粒子又は第2の荷電粒子のソースと、
ステージと、
前記ソースからの第1の荷電粒子のビーム又は第2の荷電粒子のビームを前記ステージ上に支持されたサンプルに向けるように構成された光学部品と、
前記ソース及び前記光学部品を制御するように構成されたコントローラと、を備えており、
前記ソース、前記光学部品及び前記コントローラは、
第1の期間の間、前記サンプルのうちのある領域内に前記第1の荷電粒子のビームを照射することによって、前記領域から放散される電荷の量と前記領域に堆積される電荷の量との第1の正味の量の電荷を堆積させ、
第2の期間の間、前記領域内に前記第1の荷電粒子のビームを照射することによって、前記領域から放散される電荷の量と前記領域に堆積される電荷の量との第2の正味の量の電荷を堆積させ、
前記第1の期間の間、前記第1の正味の量の電荷を前記領域内に堆積させることと、前記第2の期間の間、前記第2の正味の量の電荷を前記領域内に堆積させることと、を交互に反復し、
前記反復することの後に、前記サンプル上に生成されたプローブスポットを前記第2の荷電粒子のビームによってスキャンしながら、前記プローブスポットから前記第2の荷電粒子のビームと前記サンプルとの相互作用を表す信号を記録するように一括して構成されており、
前記第1の期間における前記第1の正味の量の電荷の平均堆積速度と前記第2の期間における前記第2の正味の量の電荷の平均堆積速度は、異なる、
置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
[0001] 本願は、2017年9月29日に提出された米国出願第62/566,195号の優先権を主張するものであり、同出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本開示は、集積回路(IC)の製造等のデバイス製造プロセスにおいて用いられるウェーハ及びマスクなどのサンプルを検査する(例えば観察し、測定し、撮像する)方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] デバイス製造プロセスは、基板に所望のパターンを適用することを含み得る。代替的にマスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスが、所望のパターンを生成するために用いられるであろう。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つ又は幾つかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板に設けた放射感応性材料(レジスト)の層への結像により行われる。1枚の基板は、順次パターンが付与される隣接したターゲット部分のネットワークを含み得る。この転写には、リソグラフィ装置が用いられるであろう。あるタイプのリソグラフィ装置はステッパと呼ばれ、ステッパでは、パターン全体をターゲット部分に一回で露光することによって、各ターゲット部分が照射される。別のタイプのリソグラフィ装置はスキャナと呼ばれ、スキャナでは、基板を所与の方向と平行あるいは逆平行に同期的にスキャンしながらパターンを所与の方向に放射ビームでスキャンすることによって、各ターゲット部分が照射される。パターンを基板へインプリントすることによってパターンをパターニングデバイスから基板へと転写することも可能である。
【0004】
[0004] デバイス製造プロセス(例えば露光、レジスト処理、エッチング、現像、ベークなど)の1つ以上のステップを監視するためには、デバイス製造プロセスによってパターニングされた基板又はその際に用いられるパターニングデバイスなどのサンプルを検査し、そのサンプルの1つ以上のパラメータを測定してもよい。1つ以上のパラメータは、例えば、基板又はパターニングデバイス上のパターンの端部とそれに対応するパターンの意図された設計の端部との間の距離である、端部位置誤差(EPE)を含み得る。検査によって、パターン欠陥(例えば接続不良又は分離不良)及び余計なパーティクルも見つかるであろう。
【0005】
[0005] デバイス製造プロセスにおいて用いられる基板及びパターニングデバイスの検査は、歩留まりの向上に役立ち得る。検査から得られた情報は、欠陥を特定するため又はデバイス製造プロセスを調節するために使用することができる。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 本明細書において開示されるのは、第1の期間の間、サンプルのうちのある領域内に第1の量の電荷を堆積させることと、第2の期間の間、その領域内に第2の量の電荷を堆積させることと、荷電粒子のビームによってサンプル上に生成されたプローブスポットをスキャンしながら、そのプローブスポットから荷電粒子のビームとサンプルとの相互作用を表す信号を記録することと、を備える方法であり、ここで、第1の期間の平均堆積速度と第2の期間の平均堆積速度とは異なる。
【0007】
[0007] 一実施形態によれば、方法は更に、第1の期間の間、第1の量の電荷を領域内に堆積させることと、第2の期間の間、第2の量の電荷を領域内に堆積させることと、を反復することを備える。
【0008】
[0008] 一実施形態によれば、第1の量又は第2の量はゼロである。
【0009】
[0009] 一実施形態によれば、第1の量と第2の量とは異なる。
【0010】
[0010] 一実施形態によれば、第1の期間の長さと第2の期間の長さとは異なる。
【0011】
[0011] 一実施形態によれば、領域は、化学的特性又は物理的特性の不均一な空間的分布を有する。
【0012】
[0012] 一実施形態によれば、化学的特性又は物理的特性は、組成、ドーピングレベル、電気抵抗、電気容量、電気インダクタンス、厚さ、結晶化度、及び誘電率からなる群から選択される。
【0013】
[0013] 一実施形態によれば、第1の量の電荷を堆積させること又は第2の量の電荷を堆積させることは、荷電粒子のビームを用いて行われる。
【0014】
[0014] 一実施形態によれば、第1の量の電荷を堆積させること又は第2の量の電荷を堆積させることは、荷電粒子のビームを用いてではなく、電荷を備える別のビームを用いて行われる。
【0015】
[0015] 一実施形態によれば、別のビームは、荷電粒子のビームの断面積の少なくとも2倍の断面積を有する。
【0016】
[0016] 一実施形態によれば、領域は第1のサブ領域及び第2のサブ領域を備えており、第1のサブ領域から放散される電荷の量の変化率と第2のサブ領域から放散される電荷の量の変化率とは異なる。
【0017】
[0017] 一実施形態によれば、領域は第1のサブ領域及び第2のサブ領域を備えており、第1のサブ領域内に堆積される電荷の量の変化率と第2のサブ領域内に堆積される電荷の量の変化率とは同一である。
【0018】
[0018] 一実施形態によれば、領域は第1のサブ領域及び第2のサブ領域を備えており、第1のサブ領域における電荷の量の正味の変化率と第2のサブ領域における電荷の量の正味の変化率とは異なる。
【0019】
[0019] 一実施形態によれば、領域は第1のサブ領域及び第2のサブ領域を備えており、第1のサブ領域における電荷の量の正味の変化率又は第2のサブ領域における電荷の量の正味の変化率は負である。
【0020】
[0020] 一実施形態によれば、領域は第1のサブ領域及び第2のサブ領域を備えており、第1のサブ領域における電荷の量と第2のサブ領域における電荷の量との間の差は経時的に増加する。
【0021】
[0021] 一実施形態によれば、領域はサブ領域を備えており、サブ領域における電荷の量は、第2の期間の一部の間、ゼロである。
【0022】
[0022] 本明細書において開示されるのは、命令を記録された非一時的コンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品であって、命令は、コンピュータによって実行されるとき、上記の方法のいずれかを実施する。
【0023】
[0023] 本明細書において開示されるのは、サンプルを検査するように構成された装置であって、この装置は、荷電粒子のソースと、ステージと、荷電粒子のビームをステージ上に支持されたサンプルに向けるように構成された光学部品と、ソース及び光学部品を制御するように構成されたコントローラと、を備えており、ここで、ソース、光学部品及びコントローラは、第1の期間の間、サンプルのうちのある領域内に第1の量の電荷を堆積させ、第2の期間の間、その領域内に第2の量の電荷を堆積させるように、一括して構成されており、第1の期間の平均堆積速度と第2の期間の平均堆積速度とは異なる。
【0024】
[0024] 一実施形態によれば、装置は更に、ビームとサンプルとの相互作用を表す信号を記録するように構成された検出器を備えている。
【0025】
[0025] 一実施形態によれば、ソース、光学部品及びコントローラは信号を生成するように一括して構成されている。
【0026】
[0026] 一実施形態によれば、光学部品は、サンプルに対してビームによってサンプル上に形成されたプローブスポットをスキャンするように構成されている。
【0027】
[0027] 一実施形態によれば、ステージはサンプルを移動させるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】[0028] 荷電粒子ビーム検査を実行することのできる装置を概略的に示す。
図2A】[0029] 荷電粒子の複数のビームを用いて荷電粒子ビーム検査を実行することのできる装置を概略的に示し、複数のビームの荷電粒子は単一のソースに由来する(「マルチビーム」装置)。
図2B】[0030] 代替的なマルチビーム装置を概略的に示す。
図2C】[0031] 代替的なマルチビーム装置を概略的に示す。
図3】[0032] サンプルのうちのある領域を一例として概略的に示す。
図4】[0033] サンプルの化学的及び物理的特性を用いて荷電粒子のビームとサンプルとの相互作用を表す信号の空間的コントラストを生じさせる一例を概略的に示す。
図5A】[0034] 検査に対する電荷の堆積の特性の影響を説明するための例を概略的に示す。
図5B】[0034] 検査に対する電荷の堆積の特性の影響を説明するための例を概略的に示す。
図5C】[0034] 検査に対する電荷の堆積の特性の影響を説明するための例を概略的に示す。
図5D】[0034] 検査に対する電荷の堆積の特性の影響を説明するための例を概略的に示す。
図6A】[0034] 検査に対する電荷の堆積の特性の影響を説明するための例を概略的に示す。
図6B】[0034] 検査に対する電荷の堆積の特性の影響を説明するための例を概略的に示す。
図6C】[0034] 検査に対する電荷の堆積の特性の影響を説明するための例を概略的に示す。
図6D】[0034] 検査に対する電荷の堆積の特性の影響を説明するための例を概略的に示す。
図7A】[0034] 検査に対する電荷の堆積の特性の影響を説明するための例を概略的に示す。
図7B】[0034] 検査に対する電荷の堆積の特性の影響を説明するための例を概略的に示す。
図7C】[0034] 検査に対する電荷の堆積の特性の影響を説明するための例を概略的に示す。
図7D】[0034] 検査に対する電荷の堆積の特性の影響を説明するための例を概略的に示す。
図8】[0035] 一実施形態による、荷電粒子のビームを用いたサンプルの検査方法のフローチャートを示す。
図9】[0036] 一実施形態による、荷電粒子のビームを用いてサンプルを検査するように構成された装置のコンポーネント図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[0037] サンプル(例えば基板及びパターニングデバイス)を検査するには、様々な技術がある。検査技術の一つの種類は光学検査であり、光学検査では、光ビームが基板又はパターニングデバイスへ向けられ、光ビームとサンプルとの相互作用(例えば散乱、反射、回折)を表す信号が記録される。検査技術の別の一つの種類は荷電粒子ビーム検査であり、荷電粒子ビーム検査では、荷電粒子(例えば電子)のビームがサンプルへ向けられ、荷電粒子とサンプルとの相互作用(例えば二次発光及び後方散乱発光)を表す信号が記録される。
【0030】
[0038] 本明細書において用いられる「又は」という用語は、具体的に別段の規定が無い限り、実行不可能である場合を除き、可能なあらゆる組み合わせを含む。例えば、あるデータベースがA又はBを備え得ると述べられている場合、具体的に別段の規定が無いか又は実行不可能でない限り、そのデータベースは、A、又はB、又はA及びBを備え得る。二つ目の例として、あるデータベースがA、B、又はCを備え得ると述べられている場合、具体的に別段の規定が無いか又は実行不可能でない限り、そのデータベースは、A、又はB、又はC、又はA及びB、又はA及びC、又はB及びC、又はA及びB及びCを備え得る。
【0031】
[0039] 図1は、荷電粒子ビーム検査を実行することのできる装置100を概略的に示す。装置100は、自由空間内に荷電粒子を生じさせることのできるソース10、ビーム抽出電極11、集光レンズ12、ビームブランキング偏向器13、アパーチャ14、スキャン偏向器15、及び対物レンズ16など、荷電粒子のビームを生成及び制御するように構成された構成要素を含み得る。装置100は、E×B荷電粒子迂回デバイス17、信号検出器21など、荷電粒子のビームとサンプルとの相互作用を表す信号を検出するように構成された構成要素を含んでいてもよい。装置100は、信号を処理するように又は他の構成要素を制御するように構成された、プロセッサなどの構成要素も含み得る。
【0032】
[0040] 検査プロセスの一例においては、荷電粒子のビーム18が、ステージ30上に位置決めされたサンプル9(例えばウェーハ又はマスク)に向けられる。ビーム18とサンプル9との相互作用を表す信号20が、E×B荷電粒子迂回デバイス17によって、信号検出器21へと導かれる。プロセッサは、ステージ30を移動させるか、又はビーム18にスキャンをさせてもよい。
【0033】
[0041] 荷電粒子ビーム検査においては光学検査において用いられるよりも短い波長の荷電粒子が用いられるので、荷電粒子ビーム検査は光学検査よりも高い解像度を有し得る。デバイス製造プロセスの進化につれて基板及びパターニングデバイス上のパターンの寸法はどんどん小さくなるので、荷電粒子ビーム検査はより幅広く用いられるようになる。
【0034】
[0042] ある例においては、荷電粒子の複数のビームが、サンプル上の複数の領域を同時にスキャンするであろう。複数のビームのスキャンは、同期化されてもよいし、独立であってもよい。複数の領域は、互いに重なりを有していてもよいし、連続するエリアをカバーするように傾けられてもよいし、又は互いに隔離されていてもよい。ビームとサンプルとの相互作用から生成された信号が、複数の検出器によって収集されてもよい。検出器の数は、ビームの数より少なくても、ビームの数と等しくても、又はビームの数より多くてもよい。複数のビームは、個々に制御されてもよいし、又は集合的に制御されてもよい。
【0035】
[0043] 荷電粒子の複数のビームは、サンプルの表面上に複数のプローブスポットを形成し得る。プローブスポットは、表面上の複数の領域をそれぞれに又は同時にスキャンすることができる。ビームの荷電粒子はプローブスポットの位置から信号を生成し得る。信号の一例が、二次電子である。二次電子は通常、50eV未満のエネルギを有する。信号の別の一例は、ビームの荷電粒子が電子であるときの、後方散乱された電子である。後方散乱された電子は通常、ビームの電子のランディングエネルギに近いエネルギを有する。プローブスポットの位置からの信号は、複数の検出器によって、それぞれに又は同時に収集され得る。
【0036】
[0044] 複数のビームは、それぞれ複数のソースに由来してもよいし、又は単一のソースに由来してもよい。ビームが複数のソースに由来する場合には、複数のカラムがビームをスキャンして表面上に合焦させてもよく、ビームによって生成された信号はそれぞれカラム内の検出器によって検出されてもよい。複数のソースからのビームを用いる装置は、マルチカラム装置と称され得る。カラムは、独立であってもよいし、又は、多軸の磁気又は電磁複合対物レンズを共有していてもよい。米国特許第8,294,095号を参照のこと。同特許の開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。マルチカラム装置によって生成されたプローブスポットは、30~50nm程度の距離を隔てて離間し得る。
【0037】
[0045] ビームが単一のソースに由来する場合には、ソース変換ユニットを用いて、その単一のソースの複数の虚像又は実像が形成されてもよい。像の各々及び単一のソースは、ビームのエミッタと見なされ得る(「ビームレット」と称されてもよい。なぜなら、ビームレットのすべては同一のソースに由来するからである)。ソース変換ユニットは、単一のソースからの荷電粒子を複数のビームレットに分割することのできる複数の開口を備えた導電層を有していてもよい。ソース変換ユニットは、単一のソースの複数の虚像又は実像を形成するようにビームレットに影響し得る光学素子を備えていてもよい。像の各々が、ビームレットのうち1つを放出するソースと見なされ得る。ビームレットは、数マイクロメートルの距離だけ離間していてもよい。投影システム及び偏向スキャンユニットを有し得る単一のカラムを用いて、サンプルの複数の領域でビームレットをスキャンし合焦させてもよい。ビームレットによって生成された信号はそれぞれ、単一のカラム内の検出器の複数の検出素子によって検出されてもよい。単一のソースからのビームを用いる装置は、マルチビーム装置と称され得る。
【0038】
[0046] 単一のソースの像を形成するためには、少なくとも2つの方法がある。第1の方法では、1つのビームレットを合焦させ、それによって1つの実像を形成する静電マイクロレンズを、各光学素子が有している。例えば、米国特許第7,244,949号を参照のこと。同特許の開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。第2の方法では、1つのビームレットを偏向させ、それによって1つの虚像を形成する静電マイクロ偏向器を、各光学素子が有している。例えば、米国特許第6,943,349号及び米国特許出願第15/065,342号を参照のこと。これらの開示は全体が参照により本明細書に組み込まれる。実像はより高い電流密度を有するので、第2の方法における荷電粒子間の相互作用(例えばクーロン効果)は、第1の方法におけるそれよりも弱いであろう。
【0039】
[0047] 図2Aは、荷電粒子の複数のビームを用いて荷電粒子ビーム検査を実行することのできる装置400を概略的に示しており、複数のビーム中の荷電粒子は単一のソースに由来する。つまり、装置400はマルチビーム装置である。装置400は、自由空間内に荷電粒子を生じさせることのできるソース401を有する。一例においては、荷電粒子は電子であり、ソース401は電子銃である。装置400は、荷電粒子によってサンプル407の表面上に複数のプローブスポットを生成すること及びサンプル407の表面上のプローブスポットをスキャンすることのできる光学系419を有する。光学系419は、集光レンズ404と、集光レンズ404に対して上流又は下流にメインアパーチャ405と、を有し得る。本明細書において用いられる「構成要素Aは構成要素Bに対して上流にある」という表現は、装置の通常動作時に、荷電粒子のビームが、構成要素Bに到達する前に構成要素Aに到達するであろうことを意味する。本明細書において用いられる「構成要素Bは構成要素Aに対して下流にある」という表現は、装置の通常動作時に、荷電粒子のビームが、構成要素Aに到達した後で構成要素Bに到達するであろうことを意味する。光学系419は、ソース401の複数の虚像(例えば虚像402及び403)を形成するように構成されたソース変換ユニット410を有する。虚像及びソース401は、それぞれがビームレット(例えばビームレット431,432及び433)のエミッタと見なされ得る。ソース変換ユニット410は、ソース401からの荷電粒子を複数のビームレットに分割することのできる複数の開口を備えた導電層412と、ソース401の虚像を形成するようにビームレットに影響を及ぼすことのできる光学素子411と、を有していてもよい。光学素子411は、ビームレットを偏向させるように構成されたマイクロ偏向器であってもよい。ビームレットの電流は、導電層412の開口の大きさ又は集光レンズ404の合焦パワーによって影響を受け得る。光学系419は、複数のビームレットを合焦させるとともにそれによってサンプル407の表面上に複数のプローブスポットを形成するように構成された対物レンズ406を含む。ソース変換ユニット410は、プローブの収差(例えばフィールド曲率及び非点収差)を低減させるように又はなくすように構成されたマイクロ補償器も有し得る。
【0040】
[0048] 図2Bは、代替的なマルチビーム装置を概略的に示す。集光レンズ404はソース401からの荷電粒子をコリメートする。ソース変換ユニット410の光学素子411は、マイクロ補償器413を備えていてもよい。マイクロ補償器413は、マイクロ偏向器と分離していてもよいし、又はマイクロ偏向器と一体であってもよい。分離している場合には、マイクロ補償器413は、マイクロ偏向器よりも上流に位置決めされ得る。マイクロ補償器413は、集光レンズ404又は対物レンズ406のオフアクシス収差(例えばフィールド曲率、非点収差及びディストーション)を補償するように構成されている。オフアクシス収差は、オフアクシス(すなわち装置の一次光軸に沿っていない)ビームレットによって形成されたプローブスポットの大きさ又は位置に悪影響を及ぼし得る。対物レンズ406のオフアクシス収差は、ビームレットの偏向によって完全に排除されはしないであろう。マイクロ補償器413が、対物レンズ406の残余オフアクシス収差(すなわち、オフアクシス収差のうちビームレットの偏向によっては排除できない部分)又はプローブスポットの大きさの不均一性を補償してもよい。マイクロ補償器413の各々は、導電層412の開口うちの1つと整列される。マイクロ補償器413はそれぞれ4つ以上の極を有していてもよい。ビームレットの電流は、導電層412の開口の大きさ及び/又は集光レンズ404の位置によって影響され得る。
【0041】
[0049] 図2Cは、代替的なマルチビーム装置を概略的に示す。ソース変換ユニット410の光学素子411は、事前曲げマイクロ補償器414を備え得る。事前曲げマイクロ偏向器414は、導電層412の開口を通る前にビームレットを曲げるように構成されたマイクロ偏向器である。
【0042】
[0050] 単一のソースからの荷電粒子の複数のビームを用いる装置の更なる説明は、米国特許出願公開第2016/0268096号、第2016/0284505号及び第2017/0025243号、米国特許第9607805号、米国特許出願第15/365,145号、第15/213,781号、第15/216,258号及び第62/440,493号、ならびにPCT出願第PCT/US17/15223号に認められるであろう。これらの開示は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0043】
[0051] サンプル(例えば基板又はパターニングデバイス)のうちのある領域が荷電粒子のビームで検査されるとき、その領域においてビームによって形成されたプローブスポットから、ビームとサンプルとの相互作用を表す信号が記録される。信号によって表される相互作用は、ビームの荷電粒子とサンプルの電荷との相互作用を含み得る。ビームの荷電粒子と相互作用し得る電荷は、サンプルの内部にあってもよい。したがって、サンプルにおける電荷の空間的分布を用いて信号の空間的コントラストが生み出されてもよい。
【0044】
[0052] 電荷の空間的分布は、サンプル内で有意に変動し得る。サンプルにおける化学的及び物理的特性の空間的分布は、電荷の空間的分布に影響を及ぼし得る。これらの特性の例は、組成、ドーピングレベル、電気抵抗、電気容量、電気インダクタンス、厚さ、結晶化度、誘電率などを含んでいてもよい。図3は、サンプルのうちのある領域1000を、一例として概略的に示す。領域1000は、1つ以上の化学的及び物理的特性が異なり得る幾つかのサブ領域1010~1070を含む。この例においては、サブ領域1010~1070は異なる電気抵抗を有する。この例においては、サブ領域1070は厚い金属層であり、サブ領域1050及びサブ領域1060は薄い金属層であり、サブ領域1040は低濃度ドープされた半導体層であり、サブ領域1030は薄い誘電体層であり、サブ領域1020及びサブ領域1010は厚い誘電体層である。サブ領域1010~1070の電気抵抗の順が図3に概略的に示されている。サブ領域1010~1070の間での電気抵抗の差は、荷電粒子のビームとサンプルとの相互作用を表す信号の空間的コントラストを生じさせ得る。
【0045】
[0053] 一例においては、電荷は、より大きな電気抵抗を有するサブ領域からよりも、より小さな電気抵抗を有するサブ領域からの方が、迅速に放散され得る。より小さな電気抵抗を有するサブ領域とより大きな電気抵抗を有するサブ領域とが同じ量の電荷で始まる場合、より小さな電気抵抗を有するサブ領域は、ある有限期間の後、より大きな電気抵抗を有するサブ領域よりも少ない電荷を有するであろう。したがって、その有限期間の後では、荷電粒子のビームとより大きな電気抵抗を有するサブ領域との相互作用は、荷電粒子のビームとより小さな電気抵抗を有するサブ領域との相互作用とは異なり得る。こうして、これらの相互作用を表す信号の空間的コントラストが生じ得る。
【0046】
[0054] 荷電粒子のビームとサンプルとの相互作用を表す信号の空間的コントラストを生じさせるための電気抵抗のある1つの使用法は、特定の欠陥を検出するというものである。例えば、不良な導電経路を有する深いビアは、通常の導電経路を有する同様の深いビアよりも電気抵抗が高い。したがって、信号のコントラストは、不良な導電経路を有する深いビアのような欠陥を明らかにし得る。
【0047】
[0055] 図4は、サンプルの化学的及び物理的特性(例えば図3のような電気抵抗)を用いて荷電粒子のビームとサンプルとの相互作用を表す信号の空間的コントラストを生じさせる一例を概略的に示す。電荷は、例えば電荷を含む拡張されたビーム1999を用いて、領域1000上に堆積され得る。拡張されたビーム1999は、領域1000の全体を包含するのに十分なほど大きくてもよいし、大きくなくてもよい。拡張されたビーム1999は、領域1000全体でスキャンされ得る。拡張されたビーム1999の電荷は、サンプルを検査するためのビームの荷電粒子と同じ粒子又はそれとは異なる粒子によって担持され得る。拡張されたビーム1999が担う電流は、図4に示されるように変調され得る。例えば、拡張されたビーム1999が担う電流は、期間T1の間は高い値C1、期間T1に続く期間T2の間は低い値C2であってもよい。本例では方形の波形が示されているが、拡張されたビーム1999が担う電流は、他の適当な波形を有していてもよい。電荷が領域1000上に堆積された後では、サブ領域における電荷の量は、サブ領域の電気抵抗の差に起因して、経時的に異なったものになるであろう。サブ領域の電荷の量の差は、C1,C2,T1及びT2のように変調された電荷の堆積の特性の影響を受けるであろう。
【0048】
[0056] 図5Aから図5D図6Aから図6D及び図7Aから図7Dは、検査に対する電荷の堆積の特性の影響を説明するための例を概略的に示す。これらの図においては単純化がなされており、サンプル上の電荷の堆積及び放散の背後にある物理的機構をすべて示してはいないであろう。例えば、放散速度は、サンプル上の電荷の量に無関係と近似される。
【0049】
[0057] 図5Aは、領域1000の2つのサブ領域1050及び1070内に堆積された電荷の量の変化率5011と、サブ領域1070から放散された電荷の量の変化率5012と、サブ領域1050から放散された電荷の量の変化率5013と、を示す。サブ領域1070から放散された電荷の量の変化率5012は、サブ領域1050から放散された電荷の量の変化率5013よりも絶対値が高い。なぜなら、サブ領域1070は、図3に示されるように、サブ領域1050よりも低い電気抵抗を有するからである。図5Bは、サブ領域1070の電荷の量の正味の変化率5022と、サブ領域1050の電荷の量の正味の変化率5023と、を示す。正味の変化率5022は、変化率5011と変化率5012との和である。正味の変化率5023は、変化率5011と変化率5013との和である。図5Cは、Tがゼロのときサブ領域1050及び1070はゼロ電荷を有するものと仮定して、サブ領域1050の電荷の量5033を時間Tの関数として、及びサブ領域1070の電荷の量5032を時間Tの関数として示している。電荷の量5032及び5033は、時間Tに対して正味の変化率5022及び5023を積分することによって導き出され得る。図5Cは、サブ領域1050及び1070の各々の電荷の量の最大値5035も示す。サブ領域1050又はサブ領域1070の電荷の量が最大値5035を超える場合には、望ましくない効果が生じ得る(例えば、サブ領域1050又はサブ領域1070の構造が損傷するかもしれない)。図5Dは、サブ領域1050の電荷の量とサブ領域1070の電荷の量との間の差5046を時間Tの関数として示す。図5C及び図5Dは、サブ領域1050及び1070内に堆積された電荷の量の変化率5011の変調、及びサブ領域1070から放散された電荷の量の変化率5012とサブ領域1050から放散された電荷の量の変化率5013との格差の結果、差5046が時間Tにつれて増加し得ることを示している。最大値5035の存在によって、サブ領域1050及び1070内への電荷の堆積の時間の長さが制限され、ひいてはサブ領域1050の電荷の量とサブ領域1070の電荷の量との間の差5046が制限される。図4に示される拡張されたビーム1999は、図5Aの変化率5011を生じさせるために用いられ得る。例えば、C2がC1の約半分であり、T2がT1の長さの約半分であるとき、拡張されたビーム1999は図5Aの変化率5011を生じさせることができる。図5Aから図5Dに示される例においては、差5046は、最大値5035の約2/5に達し得る。
【0050】
[0058] 図6Aは、領域1000の2つのサブ領域1050及び1070内に堆積された電荷の量の変化率6011と、サブ領域1070から放散された電荷の量の変化率6012と、サブ領域1050から放散された電荷の量の変化率6013と、を示す。サブ領域1070から放散された電荷の量の変化率6012は、サブ領域1050から放散された電荷の量の変化率6013よりも絶対値が高い。なぜなら、サブ領域1070は、図3に示されるように、サブ領域1050よりも低い電気抵抗を有するからである。図6Bは、サブ領域1070の電荷の量の正味の変化率6022と、サブ領域1050の電荷の量の正味の変化率6023と、を示す。正味の変化率6022は、変化率6011と変化率6012との和である。正味の変化率6023は、変化率6011と変化率6013との和である。図6Cは、Tがゼロのときサブ領域1050及び1070はゼロ電荷を有するものと仮定して、サブ領域1050の電荷の量6033を時間Tの関数として、及びサブ領域1070の電荷の量6032を時間Tの関数として示している。電荷の量6032及び6033は、時間Tに対して正味の変化率6022及び6023を積分することによって導き出され得る。図6Cは、正味の変化率6022及び6023が負であり得る(すなわち、サブ領域1050及び1070の電荷の量は減少し得る)ことを示している。図6Cは、サブ領域1050及び1070の各々の電荷の量の最大値6035も示す。サブ領域1050又はサブ領域1070の電荷の量が最大値6035を超える場合には、望ましくない効果が生じ得る(例えば、サブ領域1050又はサブ領域1070の構造が損傷するかもしれない)。図6Dは、サブ領域1050の電荷の量とサブ領域1070の電荷の量との間の差6046を時間Tの関数として示す。図6C及び図6Dは、サブ領域1050及び1070内に堆積された電荷の量の変化率6011の変調、及びサブ領域1070から放散された電荷の量の変化率6012とサブ領域1050から放散された電荷の量の変化率6013との格差の結果、差6046が時間Tにつれて増加し得ることを示している。最大値6035の存在によって、サブ領域1050及び1070内への電荷の堆積の時間の長さが制限され、ひいてはサブ領域1050の電荷の量とサブ領域1070の電荷の量との間の差6046が制限される。図4に示される拡張されたビーム1999は、図6Aの変化率6011を生じさせるために用いられ得る。例えば、C2が約ゼロであり、T2がT1の長さの約半分であるとき、拡張されたビーム1999は図6Aの変化率6011を生じさせることができる。図6Aから図6Dに示される例において、差6046は、最大値6035の約3/5に達し得る。図6Aから図6Dに示される例においては、T2の間に電荷が堆積されず、したがって最大値6035を超過する前のサブ領域1050及び1070内への電荷の堆積の時間の長さは、図5Aから図5Dにおいて最大値5035を超過する前のサブ領域1050及び1070内への電荷の堆積の時間の長さよりも長い。差6046及び差5046は、時間Tにつれて単調に増加する。よって、より長い堆積によって、差6046は差5046よりも大きくなる。
【0051】
[0059] 図7Aは、領域1000の2つのサブ領域1050及び1070内に堆積された電荷の量の変化率7011と、サブ領域1070から放散された電荷の量の変化率7012と、サブ領域1050から放散された電荷の量の変化率7013と、を示す。サブ領域1070から放散された電荷の量の変化率7012は、サブ領域1050から放散された電荷の量の変化率7013よりも絶対値が高い。なぜなら、サブ領域1070は、図3に示されるように、サブ領域1050よりも低い電気抵抗を有するからである。図7Bは、サブ領域1070の電荷の量の正味の変化率7022と、サブ領域1050の電荷の量の正味の変化率7023とを示す。正味の変化率7022は、変化率7011と変化率7012との和である。正味の変化率7023は、変化率7011と変化率7013との和である。図7Cは、Tがゼロのときサブ領域1050及び1070はゼロ電荷を有するものと仮定して、サブ領域1050の電荷の量7033を時間Tの関数として、及びサブ領域1070の電荷の量7032を時間Tの関数として示している。電荷の量7032及び7033は、時間Tに対して正味の変化率7022及び7023を積分することによって導き出され得る。図7Cは、サブ領域1050及び1070の各々の電荷の量の最大値7035も示す。サブ領域1050又はサブ領域1070の電荷の量が最大値7035を超える場合には、望ましくない効果が生じ得る(例えば、サブ領域1050及びサブ領域1070の構造が損傷するかもしれない)。図7Dは、サブ領域1050の電荷の量とサブ領域1070の電荷の量との間の差7046を時間Tの関数として示す。図7C及び図7Dは、サブ領域1050及び1070内に堆積された電荷の量の変化率7011の変調、及びサブ領域1070から放散された電荷の量の変化率7012とサブ領域1050から放散された電荷の量の変化率7013との格差の結果、差7046が時間Tにつれて増加し得ることを示している。最大値7035の存在によって、サブ領域1050及び1070内への電荷の堆積の時間の長さが制限され、ひいてはサブ領域1050の電荷の量とサブ領域1070の電荷の量との間の差7046が制限される。図4に示される拡張されたビーム1999は、図7Aの変化率7011を生じさせるために用いられ得る。例えば、C2が約ゼロであり、T1がT2の長さの約半分であるとき、拡張されたビーム1999は図7Aの変化率7011を生じさせることができる。図7Aから図7Dに示される例において、差7046は、最大値7035の約7/8に達し得る。図7Aから図7Dに示される例において、T1の間にサブ領域1070に堆積された電荷のすべてはT2の間にサブ領域1070から放散し、したがってサブ領域1070の電荷の量は、T2の一部の間、ゼロである。その一方で、サブ領域1050の電荷の量は、T1及びT2の周期数につれて増加し、最終的には最大値7035に近づく。よって、差7046は、最大値7035の略最大の大きさに達し得る。差7046は図5Aから図5D図6Aから図6D及び図7Aから図7Dの例の中で最も大きいので、図7Aから図7Dの例は、荷電粒子のビームとサンプルとの相互作用を表す信号の最大の空間的コントラストを生じるであろう。
【0052】
[0060] 図8は、一実施形態による、荷電粒子のビームを用いたサンプルの検査方法のフローチャートを示す。手順810において、サンプルの領域内への変調された電荷の堆積が行われる。変調された堆積は、少なくとも第1の期間と第2の期間とを含む。手順810は、第1の量の電荷が第1の期間の間に領域内に堆積されるサブ手順811を含む。手順810は、第2の量の電荷が第2の期間の間に領域内に堆積されるサブ手順812を含む。サブ手順811及び812は繰り返されてもよい。第1の期間における平均堆積速度(すなわち、第1の量割る第1の期間の長さ)は、第2の期間における平均堆積速度(すなわち、第2の量割る第2の期間の長さ)とは異なる。第1の量又は第2の量はゼロであってもよい。第1の量と第2の量とは異なっていてもよい。第1の期間の長さと第2の期間の長さとは異なっていてもよい。領域は、1つ以上の化学的又は物理的特性の不均一な空間的分布を有していてもよい。ステップ820において、荷電粒子のビームが領域全体でスキャンされ、荷電粒子とサンプルとの相互作用を表す信号が記録される。手順810の変調された堆積は、ステップ820において用いられるのと同じ荷電粒子のビームを用いて行われてもよい。手順810の変調された堆積は、ステップ820で用いられる荷電粒子のビームとは異なるビームで行われてもよく、その場合、その異なるビームは、ステップ820で用いられる荷電粒子のビームの断面積の少なくとも2倍の断面積を有していてもよい。
【0053】
[0061] 図9は、一実施形態による、荷電粒子のビームを用いてサンプルを検査するように構成された装置9000のコンポーネント図を概略的に示す。装置9000は、荷電粒子のソース9001と、ステージ9003と、荷電粒子のビームをステージ9003上に支持されたサンプルに向けるように構成された光学部品9002とを有している。ステージ9003は、サンプルを移動させるように構成されていてもよい。光学部品9002は、サンプルに対してビームによってサンプル上に形成されたプローブスポットをスキャンするように構成されていてもよい。装置9000は、ソース9001及び光学部品9002を制御するように構成されたコントローラ9010を含む。装置9000は、荷電粒子のビームとサンプルとの相互作用を表す信号を記録するように構成された検出器9004も含む。ソース9001、光学部品9002及びコントローラ9010は、記録対象の信号を生成するように構成されていてもよく、サンプル内への電荷の変調された堆積を行うようにも構成され得る。一実施形態においては、装置9000は任意選択的に、サンプル内への電荷の変調された堆積を専用に行う別のソース9101、別の光学部品9102及びコントローラ9110を含む。
【0054】
[0062] 実施形態はさらに以下の条項を用いて記載することもできる。
【0055】
1.第1の期間の間、サンプルのうちのある領域内に第1の量の電荷を堆積させることと、
第2の期間の間、その領域内に第2の量の電荷を堆積させることと、
荷電粒子のビームによってサンプル上に生成されたプローブスポットをスキャンしながら、そのプローブスポットから荷電粒子のビームとサンプルとの相互作用を表す信号を記録することと、
を備える方法であって、
第1の期間における平均堆積速度と第2の期間における平均堆積速度とは異なる、方法。
【0056】
2.第1の期間の間、第1の量の電荷を領域内に堆積させることと、第2の期間の間、第2の量の電荷を領域内に堆積させることと、を反復することを更に備える、条項1の方法。
【0057】
3.第1の量又は第2の量はゼロである、条項1から2のいずれか一項の方法。
【0058】
4.第1の量と第2の量は異なる、条項1から3のいずれか一項の方法。
【0059】
5.第1の期間の長さと第2の期間の長さは異なる、条項1から4のいずれか一項の方法。
【0060】
6.領域は、化学的特性又は物理的特性の不均一な空間的分布を有する、条項1から5のいずれか一項の方法。
【0061】
7.化学的特性又は物理的特性は、組成、ドーピングレベル、電気抵抗、電気容量、電気インダクタンス、厚さ、結晶化度、及び誘電率からなる群から選択される、条項6の方法。
【0062】
8.第1の量の電荷を堆積させること又は第2の量の電荷を堆積させることは、荷電粒子のビームを用いて行われる、条項1から7のいずれか一項の方法。
【0063】
9.第1の量の電荷を堆積させること又は第2の量の電荷を堆積させることは、荷電粒子のビームを用いてではなく、電荷を備える別のビームを用いて行われる、条項1から8のいずれか一項の方法。
【0064】
10.別のビームは、荷電粒子のビームの断面積の少なくとも2倍の断面積を有する、条項9の方法。
【0065】
11.領域は第1のサブ領域及び第2のサブ領域を備えており、第1のサブ領域から放散される電荷の量の変化率と第2のサブ領域から放散される電荷の量の変化率とは異なる、条項1から10のいずれか一項の方法。
【0066】
12.領域は第1のサブ領域及び第2のサブ領域を備えており、第1のサブ領域内に堆積される電荷の量の変化率と第2のサブ領域内に堆積される電荷の量の変化率とは同一である、条項1から11のいずれか一項の方法。
【0067】
13.領域は第1のサブ領域及び第2のサブ領域を備えており、第1のサブ領域における電荷の量の正味の変化率と第2のサブ領域における電荷の量の正味の変化率とは異なる、条項1から12のいずれか一項の方法。
【0068】
14.領域は第1のサブ領域及び第2のサブ領域を備えており、第1のサブ領域における電荷の量の正味の変化率又は第2のサブ領域における電荷の量の正味の変化率は負である、条項1から13のいずれか一項の方法。
【0069】
15.領域は第1のサブ領域及び第2のサブ領域を備えており、第1のサブ領域における電荷の量と第2のサブ領域における電荷の量との間の差は経時的に増加する、条項1から14のいずれか一項の方法。
【0070】
16.領域はサブ領域を備えており、そのサブ領域における電荷の量は、第2の期間の一部の間、ゼロである、条項1から15のいずれか一項の方法。
【0071】
17.命令を記録された非一時的コンピュータ可読媒体を備え、命令は、コンピュータによって実行されるとき、条項1から16のいずれかの方法を実施する、コンピュータプログラム製品。
【0072】
18.サンプルを検査するように構成された装置であって、
荷電粒子のソースと、
ステージと、
荷電粒子のビームをステージ上に支持されたサンプルに向けるように構成された光学部品と、
ソース及び光学部品を制御するように構成されたコントローラと、
を備えており、
ソース、光学部品及びコントローラは、
第1の期間の間、サンプルのうちのある領域内に第1の量の電荷を堆積させ、
第2の期間の間、その領域内に第2の量の電荷を堆積させるように一括して構成されており、
第1の期間における平均堆積速度と第2の期間における平均堆積速度とは異なる、装置。
【0073】
19.ビームとサンプルとの相互作用を表す信号を記録するように構成された検出器を更に備える、条項18の装置。
【0074】
20.ソース、光学部品及びコントローラは、信号を生成するように一括して構成されている、条項19の装置。
【0075】
21.光学部品は、サンプルに対してビームによってサンプル上に形成されたプローブスポットをスキャンするように構成されている、条項19の装置。
【0076】
22.ステージはサンプルを移動させるように構成されている、条項19の装置。
【0077】
[0063] 本明細書に開示される概念は、シリコンウェーハなどのサンプル又はガラス上のクロムなどのパターニングデバイスの検査に用いられ得るものであるが、この開示される概念は、任意の種類のサンプル、例えばシリコンウェーハ以外のサンプルとともに用いられてもよいことが理解されなければならない。
【0078】
[0064] 上記の説明は例示的であることを意図されたものであって、限定的であることは意図されていない。したがって、下記の特許請求の範囲を逸脱することなく、記載された変更が行われ得ることが、当業者には明らかであろう。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9