(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】注射デバイスに取り付けるためのデータ収集デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20231204BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
A61M5/315 550P
A61M5/31 520
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022074039
(22)【出願日】2022-04-28
(62)【分割の表示】P 2019530445の分割
【原出願日】2017-12-05
【審査請求日】2022-05-27
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マウリス・トーポレク
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ユーグル
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター・センダツキー
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・チャールズ・ガゼリー
(72)【発明者】
【氏名】プラサンナー・ナナヤッカラ
(72)【発明者】
【氏名】エイダン・マイケル・オヘア
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ビージー
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド・オーブリー・プランプトリ
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-506771(JP,A)
【文献】特表2014-516599(JP,A)
【文献】特表2016-506845(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0090603(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0350516(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0094667(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0196714(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイスに取り付け可能なデータ収集デバイスであって、
前記注射デバイスはトリガ、ダイヤル部材および排出機構を含み、
前記注射デバイスによる薬剤の排出中に、(a)
前記注射デバイスの排出機構の前進に応じて、
前記ダイヤル部材と
前記トリガとの間の相対回転が生じ、(b)
前記トリガは、
前記注射デバイスのハウジングに回転不能に固定されるように構成され、
前記データ収集デバイスは:
前記注射デバイスの
前記ダイヤル部材に取付け可能な本体と、
センサおよび対応する場所の符号化を含むセンサ配置であって、前記センサは薬剤の排出中に
前記トリガに対する
前記本体の回転を検出するように構成される
、前記センサ配置と、
検出された回転に基づいて、
前記注射デバイスによって排出された薬剤の量を判定するように構成されたプロセッサ配置と、
前記本体に取り付けられたボタンであって、
前記本体に対して軸方向に変位可能であり、
前記本体に対して自由に回転可能である
前記ボタンとを含む、前記データ収集デバイス。
【請求項2】
本体は、該本体の中空のレセプタクルセクションを形成する円筒形の側壁を有する締結部分を含み、中空のレセプタクルセクションは、ダイヤル部材を受け入れるように構成される、請求項1に記載のデータ収集デバイス。
【請求項3】
円筒形の側壁は、本体およびダイヤル部材の滑らないまたは締め付けた機械的な係合および締結を提供するように、摩擦強化構造を備える、請求項2に記載のデータ収集デバイス。
【請求項4】
ボタンは、データ収集デバイスがダイヤル部材に取り付けられるとトリガ端面に軸方向に当接する先端セクションを含む、請求項1
~3のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項5】
センサ配置は、光センサ、磁気センサ、容量センサ、および機械センサのうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項1
~4のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項6】
1つまたはそれ以上の磁石が本体の側壁の円周に提供される、請求項1~5のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項7】
対応する場所の符号化は、円周方向に沿って磁気コードを含む、請求項1
~6のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項8】
対応する場所の符号化は磁気コードを含み、センサ配置は、薬剤の排出中に、本体がトリガに対して回転するとき、磁界の変動によりその出力を変動させる、請求項1
~7のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項9】
センサ配置は磁気センサを含み、
対応する場所の符号化は磁気符号化を含む、請求項1
~8のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項10】
対応する場所の符号化は磁気符号化を含む目盛り盤を含み、センサは、目盛り盤のいくつかの部分の磁化を検出するように構成される、請求項1
~9のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項11】
センサ配置は光符号器、光源及び光検出器を含む、請求項1
~10のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項12】
センサは、ボタンの上または中に配置され、前記
対応する場所の符号化は、本体内に配置される、請求項1
~11のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項13】
ボタンは、センサおよびプロセッサ配置のうちの少なくとも1つを収納するための内部空間を形成する側壁および底部セクションを含む、請求項1
~12のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項14】
データ収集デバイスの電子構成をオンまたはオフに切り換えるように構成されたスイッチをさらに含む、請求項1
~13のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項15】
スイッチは、センサ配置およびプロセッサ配置のうちの少なくとも1つを起動するように構成される、請求項
14に記載のデータ収集デバイス。
【請求項16】
スイッチは、機械スイッチ、電気スイッチ、磁気スイッチ、または光スイッチのうちの1つを含む、請求項
14または15に記載のデータ収集デバイス。
【請求項17】
センサおよび対応する場所の符号化うちの一方が、トリガ上に位置し、またはトリガに回転不能にロック可能であり、センサおよび対応する場所の符号化のうちの他方が、本体の中または上に配置される、請求項1~16のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項18】
対応する場所の符号化は、1次元または2次元の符号化である、請求項1~17のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項19】
注射システムであって:
使用者が選択可能ないくつかの用量の薬剤を排出する注射デバイスであって、
軸方向に沿って延び、薬剤で充填されたカートリッジを収納するように構成され、
薬剤の排出のために遠位方向に変位可能な栓によって封止されている細長いハウジングと、
薬剤の排出中に
前記ハウジングに対して回転可能なダイヤル部材と、
薬剤の排出を開始または制御するための
前記ダイヤル部材に対して軸方向に変位可能であり、薬剤の排出中に
前記ハウジングに回転不能にロックされるトリガとを含む、
前記注射デバイス;と、
前記注射デバイスに取付け可能なデータ収集デバイスであって、
センサおよび対応する場所の符号化を含むセンサ配置であって、前記センダは薬剤の排出中に
前記トリガに対する
前記本体の回転を検出するように構成される、
前記センサ配置と、
本体に取り付けられたボタンであって、
前記本体に対して軸方向に変位可能である、
前記ボタンと、
検出された回転に基づいて、
前記注射デバイスによって排出された薬剤の量を判定するように構成されたプロセッサ配置とを含む、
前記データ収集デバイス:と、
を含む、前記注射システム。
【請求項20】
トリガは、注射デバイスを用量設定モードと用量投薬モードとの間で切り換えるように構成されたクラッチに連結する、請求項
19に記載の注射システム。
【請求項21】
ボタンは、データ収集デバイスがダイヤル部材に取り付けられるとトリガ端面に軸方向に当接する先端セクションを含む、請求項
19または20に記載の注射システム。
【請求項22】
ボタンは、データ収集デバイスの本体に対して自由に回転可能である、請求項
19~21のいずれか1項に記載の注射システム。
【請求項23】
1つまたはそれ以上の磁石が本体の側壁の円周に提供される、請求項
19~22のいずれか1項に記載の注射システム。
【請求項24】
注射システムであって:
注射デバイスであって、トリガ、ダイヤル部材および排出機構を含み、
前記注射デバイスによる薬剤の排出中に、(a)
前記注射デバイスの
前記排出機構の前進に応じて、
前記ダイヤル部材と
前記トリガとの間の相対回転が生じ、(b)
前記トリガは、
前記注射デバイスのハウジングに回転不能に固定されるように構成される、
前記注射デバイス;と
データ収集デバイスであって、
・
前記注射デバイスの
前記ダイヤル部材に取付けられた本体と、
・
前記本体に取り付けられたボタンであって、
前記本体に対して軸方向に変位可能であり、
前記本体に対して自由に回転可能であり、
前記トリガ
の端面に軸方向に当接する先端セクションを含む、
前記ボタンと、
・
センサおよび対応する場所の符号化を含むセンサ配置であって、薬剤の排出中に
前記トリガに対する
前記本体の回転を検出するように構成され
る前記
センサ配置と、
・検出された回転に基づいて、
前記注射デバイスによって排出された薬剤の量を判定するように構成されたプロセッサ配置とを含む、
前記データ収集デバイス;と、
を含む、前記注射システム。
【請求項25】
ボタンは、データ収集デバイスがダイヤル部材に取り付けられたときにトリガの端面に軸方向に当接する先端セクションを含む、請求項24に記載の注射システム。
【請求項26】
1つまたはそれ以上の磁石が本体の側壁の円周に提供される、請求項24または25に記載の注射システム。
【請求項27】
注射デバイスに取り付け可能なデータ収集デバイスであって、
前記注射デバイスはトリガ、ダイヤル部材および排出機構を含み、前記注射デバイスによる薬剤の排出中に、(a)前記注射デバイスの排出機構の前進に応じて、前記ダイヤル部材と前記トリガとの間の相対回転が生じ、(b)前記トリガは、、前記注射デバイスのハウジングに回転しないように構成され、
前記データ収集デバイスは:
前記注射デバイスの前記ダイヤル部材に取付け可能な本体と、
前記本体に取り付けられたボタンであって、前記本体に対して軸方向に変位可能であり、前記本体に対して自由に回転可能である、前記ボタンと、
センサを含むセンサ配置であって、前記センサは薬剤の排出中に前記トリガに対する前記本体の回転を検出するように構成される、前記センサ配置と、
検出された回転に基づいて、前記注射デバイスによって排出された薬剤の量を判定するように構成されたプロセッサ配置とを含む、前記データ収集デバイス。
【請求項28】
ボタンは、データ収集デバイスがダイヤル部材に取り付けられたときにトリガの端面に軸方向に当接する先端セクションを含む、請求項27に記載のデータ収集デバイス。
【請求項29】
1つまたはそれ以上の磁石が本体の側壁の円周に提供される、請求項27または28に記載のデータ収集デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬剤投与量情報を注射デバイスから収集するように構成された、注射デバイスに取り付けるためのデータ収集デバイスに関する。本開示はさらに、注射デバイスと、注射デバイスに取り付けるためのデータ収集デバイスとを含む注射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の注射による定期的な治療を必要とする様々な疾病が存在する。そのような注射は、注射デバイスを使用することによって実行することができ、これは医療従事者または患者自身によって施される。一例として、1型および2型の糖尿病は、たとえば1日1回または数回のインスリン用量の注射によって、患者自身が治療することができる。たとえば、充填済みの使い捨てインスリンペンを、注射デバイスとして使用することができる。別法として、再利用可能なペンを使用することもできる。再利用可能なペンでは、空の薬剤カートリッジを新しいものに交換することが可能である。どちらのペンにも、1組の使い捨ての注射針が付属しており、これらの注射針は、使用前に毎回交換される。次いで、ダイヤル部材を回し(ダイヤル設定)、インスリンペンの用量窓またはディスプレイから実際の用量を観察することによって、注射予定のインスリン用量をたとえばインスリンペンにおいて手動で設定または選択することができる。次いで、好適な皮膚部分に針を挿入し、インスリンペンのトリガを押下することによって、用量が注射される。トリガは、注射ボタンを含むことができる。インスリン注射を監視すること、たとえばインスリンペンの誤った取扱いを防止すること、またはすでに施された用量を追跡することが可能になるように、たとえば注射されたインスリンのタイプおよび用量に関する情報など、注射デバイスの状態および/または使用に関係する情報を測定および捕捉することが望ましい。
【0003】
たとえば特許文献1、特許文献2、または特許文献3に記載されているSoloSTARデバイスなどのいくつかの注射デバイスの場合、使用者は、用量ダイヤルおよび用量ダイヤルスリーブを注射デバイスの本体またはハウジングに対して時計回りまたは用量増分方向に回転させることによって、可変サイズの用量を設定しなければならない。そのような回転中、用量ダイヤルおよび用量ダイヤルスリーブは、ハウジングとのねじ係合のため、ハウジングに対して長手方向および近位方向に沿って動く。液体薬剤の用量を注射および排出するために、次いで使用者は、トリガまたは用量ボタンを遠位方向に、したがって注射デバイスの本体またはハウジングの方へ押し下げなければならない。典型的には、使用者は、自身の親指を使用して、用量ダイヤルおよび用量ダイヤルスリーブの近位端に位置する用量ボタンに遠位向きの圧力をかけながら、同じ手の残りの指によって、注射デバイスのハウジングを保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2004/078239A1
【文献】WO2004/078240A1
【文献】WO2004/078241A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのような機械動作式の注射デバイスにデータ収集デバイスを装備するためには、注射デバイスのハウジングに対する用量ダイヤルスリーブおよび用量ダイヤルの近位方向への変位が、使用者の手のサイズによって何らかの形で制限されることに留意しなければならない。したがって、その幾何学的なサイズが制限されているかなり小さい注射デバイスに
取り付けるためのデータ収集デバイスを提供することが望ましい。データ収集デバイスは、薬剤の用量を設定および排出するプロセスを使用者が両手を使用して行うべき場合でも、投与量に関係する情報の強固で確実な収集をさらに提供するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様によれば、注射デバイスに取り付けるためのデータ収集デバイスが提供される。注射デバイスは、トリガおよびダイヤル部材ならびに排出機構を含む。薬剤の排出中、排出機構またはその構成要素の前進運動に応じて、ダイヤル部材とトリガとの間の相対回転が生じる。注射デバイスのトリガは、摩擦および/またはキーイングによって注射デバイスのハウジングにトルク支持連結(torque supportive coupled)される。
【0007】
データ収集デバイスは、薬剤の排出中、ダイヤル部材に取り付けられるように構成された本体を含む。データ収集デバイスは、少なくとも本体の中または上に配置されたセンサを含むセンサ配置をさらに含む。センサは、トリガに対する本体の回転を検出するように構成される。データ収集デバイスはまた、検出された回転に基づいて、注射デバイスによって排出された薬剤の量を判定するように構成されたプロセッサ配置を含む。
【0008】
データ収集デバイスは、たとえば用量ボタンの形態のトリガが注射デバイスのハウジングに回転不能にロックされる少なくとも薬剤の用量を排出または注射するプロセス中、トリガに対して回転可能なダイヤル部材を含む注射デバイスに対して特に構成される。データ収集デバイスの本体は、注射デバイスのダイヤル部材に締結可能または取付け可能である。本体は、ダイヤル部材に回転不能にロック可能である。このようにして、本体は、少なくとも薬剤の用量の投薬または排出中、ダイヤル部材とともに回転する。センサ配置は、データ収集デバイスの本体の中または上に配置され、トリガは、注射デバイスのハウジングに回転不能にロックされるため、センサ配置は、トリガに対する本体の回転を検出するように特に構成される。
【0009】
センサ配置は、トリガに対する本体の回転を定量的に測定するようにさらに構成される。プロセッサ配置は、薬剤の用量の投薬または排出中、センサ配置から得られた電気信号を処理して、トリガ、したがって注射デバイスのハウジングに対する本体、したがってダイヤル部材の回転度を判定するように構成される。用量排出動作中のトリガに対する本体の回転数およびトリガに対するダイヤル部材の回転度は、注射デバイスから排出された薬剤の量の直接的な尺度である。注射デバイスのトリガに対するデータ収集デバイスの本体の回転度を検出し、定量的に測定することによって、プロセッサ配置は、注射デバイスによって排出された薬剤の量を判定および計算するように構成される。
【0010】
注射デバイスのトリガに対するダイヤル部材の回転度を測定することによって、データ収集デバイスに対してかなり小さく省スペースの設計を提供することができる。データ収集デバイスは、ダイヤル部材に取り付けられたとき、データ収集デバイスが注射デバイスの近位端または注射デバイスのトリガから近位方向に突出しないように、かなり小さい幾何学的な設計を含むことができる。小さく小型化された幾何学的な設計のため、データ収集デバイスは、最終消費者にとってかなり魅力的となることができ、データ収集デバイスは、比較的高い使用者許容度および使用者満足度に到達することができる。
【0011】
「トルク支持連結」という用語は、ハウジングに対してトリガに作用するトルクが所与の閾値を下回る限り、トリガが注射デバイスのハウジングに回転不能にロックされることを表す。トルクが閾値を超過した場合、トリガは、注射デバイスの完全性または機能性を損なうことなく、ハウジングに対する回転運動を受けることができる。トルク支持連結という用語は、注射デバイスのトリガとハウジングとの間に実質的な制限された回転係合が
生じうることを表す。いくつかの実施形態では、注射デバイスのトリガとハウジングとの間に回転インターロックを提供することもできる。
【0012】
「排出機構の前進」という用語は、注射デバイスの排出機構または駆動機構によって行われる用量排出動作に関する。典型的な実施形態では、排出機構または駆動機構は、カートリッジの栓に軸方向に当接するように構成されたプランジャまたはピストンロッドを含む。排出または投薬動作中、プランジャまたはピストンロッドは、遠位方向に、すなわち注射デバイスの投薬端の方へ前進し、それによってカートリッジの栓をそれに応じて遠位方向に付勢し、所定の量の薬剤をカートリッジから排出させる。排出機構またはそのいくつかの構成要素は、用量排出処置中に静止したままとすることができる。排出機構のいくつかの構成要素は、注射デバイスのハウジング内で軸方向に固定または抑制することができる。
【0013】
別の例では、データ収集デバイスのセンサ配置は、センサおよび目盛りを含む。センサおよび目盛りのうちの一方は、データ収集デバイスの本体の中または上に配置され、センサおよび目盛りのうちの他方は、トリガ上に位置し、またはトリガに回転不能にロック可能である。実際には、センサは、目盛りに対する回転を検出するように構成される。トリガは、注射デバイスのハウジングに回転不能にロックされ、データ収集デバイスの本体は、ダイヤル部材に連結可能であるため、センサは、トリガに対する本体の回転を検出するように構成される。検出された回転に基づいて、プロセッサ配置は、注射デバイスによって排出された薬剤の量を判定するように構成される。目盛りは、センサに対する回転の方向に沿って、1次元または2次元の符号化を含むことができる。目盛りがセンサに対する回転を受けるとき、符号化はセンサによって検出可能である。
【0014】
一例では、センサは、データ収集デバイスのうちトリガに回転不能にロックする部分の中または上に位置する。このようにして、センサは、目盛りがセンサに対する回転を受けている薬剤の排出中に回転することが妨げられる。ここで、目盛りは、データ収集デバイスがダイヤル部材に適当に取り付けられたとき、注射デバイスのダイヤル部材に回転不能にロックすることができる。目盛りは、データ収集デバイスの本体と回転不能に係合することができ、センサは、データ収集デバイスの本体に対して自由に回転することができる。
【0015】
別の例では、目盛りは、トリガに回転不能にロック可能であり、センサは、データ収集デバイスの本体に取り付けられまたは配置され、センサは、本体に回転不能にロックされる。ここで、目盛りは、センサが回転を受けることがある薬剤の排出中、回転することを妨げることができる。
【0016】
いずれの例でも、センサおよび目盛りは、相互の相対回転を受ける。この相対回転は、注射デバイスのトリガに対するダイヤル部材の回転と同一または同等である。
【0017】
一実施形態では、データ収集デバイスの本体は、本体の中空のレセプタクルセクションを形成する円筒形の側壁を有する締結部分を含み、中空のレセプタクルセクションは、ダイヤル部材を受け入れるように構成される。円筒形の側壁および円筒形の側壁によって形成される中空のレセプタクル部分は、注射デバイスのダイヤル部材へのデータ収集デバイスの単純明快かつ容易な取付けを提供する。円筒形の側壁の内側は、データ収集デバイスの本体および注射デバイスのダイヤル部材の滑らないまたは締め付けた機械的な係合および締結を提供するように、摩擦強化構造(friction enhancing structure)を備えることができる。
【0018】
別の実施形態によれば、センサは、データ収集デバイスの本体の側壁の内側に配置され
る。センサは、本体の側壁内に組み込みまたは埋め込むことができる。センサは、データ収集デバイスの本体の側壁に取り付けることができる。センサは、本体の側壁によって形成されたレセプタクルセクション内に配置することができる。したがって、センサは、環境の影響から保護することができる。さらに、センサは、データ収集デバイスの外側から見えなくすることができる。レセプタクル内のセンサの配置は、データ収集デバイスの外側からの妨害または干渉からセンサを保護するのに有益である。
【0019】
さらに、センサは、側壁に対して径方向内方へ位置合わせされる。別法として、センサはまた、側壁またはデータ収集デバイスの本体の管状形に対して軸方向に位置合わせすることができる。
【0020】
センサを径方向内方へ位置合わせすることによって、センサは、注射デバイスのトリガに実質上重複する軸方向位置に配置することができる。このようにして、少なくとも軸方向においてデータ収集デバイスのかなり小さい設計を提供することができる。典型的には、センサは、径方向内方へ配向または誘導される。センサは、たとえばデータ収集デバイスの本体、たとえばその円筒形の側壁によって囲まれたトリガの外面に対して、トリガに対する本体、したがってダイヤル部材の回転を検出および測定するように構成することができる。
【0021】
加えて、センサは、レセプタクルセクションから所定の軸方向距離をあけて配置することができる。このようにして、センサは、データ収集デバイスが注射デバイスのダイヤル部材に取り付けられるとき、レセプタクルセクションに対する軸方向のずれ、したがってダイヤル部材の軸方向のずれをあけて配置することができる。したがって、レセプタクルセクションにはセンサがなく、注射デバイスに対するデータ収集デバイスの確実で滑らない安定した締結を最適化することができる。
【0022】
さらに、センサ配置は、トリガ上に位置しまたはトリガに回転不能にロック可能な目盛りを含む。目盛りは、典型的には、センサ配置のセンサに対向するトリガの側壁の外周に沿って延びる。センサが側壁に対して軸方向に位置合わせされる実施形態では、目盛りは、トリガの軸方向端面、たとえばトリガの近位端面上に位置することができる。目盛りは、円形の構造を含むことができ、トリガ端面の径方向中心の周りに位置することができる。
【0023】
典型的には、目盛りは、何らかのコードまたは何らかの他の種類の視覚的もしくは触覚的に認識できる構造をその外周に沿って含み、したがってセンサは、目盛りに対するセンサの回転を定量的に検出および測定することが可能になる。センサおよび目盛りは、相互に対応する。センサがたとえばフォトダイオードなどの感光センサとして構成される場合、目盛りは、視覚的に認識できるコードまたは同様に視覚的に認識できる構造を含む。目盛りはまた、光で照明されると明確な反射パターンを提供する所定の粗さまたは表面構造を含むことができる。センサは、光源および対応する光検出器を含むことが考えられる。ここで、目盛りの表面構造から反射される光信号は、センサに対する目盛りの動きを示すことができる。光学式コンピュータマウスと同等に、反射パターンの変動が、目盛りとセンサとの間の相対変位の程度または大きさを示す。
【0024】
他の実施形態では、センサは、磁気センサを含むことができる。次いで、目盛りは、円周方向に沿って磁気コードを含む。他の実施形態では、センサは、目盛りに対して回転するときに目盛りの可変の電気伝導度または電気透過度を測定するように構成された電気センサである。したがって、センサ配置は、光センサ、磁気センサ、容量センサ、および機械センサのうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。
【0025】
目盛りは、トリガの一部として構成することができ、次いで注射デバイスに属することができる。他の実施形態では、目盛りは、データ収集デバイスの本体に取り付けられた別個の機械要素に属する。次いで目盛りは、データ収集デバイスに属することができる。したがって、センサおよび対応する目盛りを含むセンサ配置は、データ収集デバイスの上もしくは中に完全に位置することができ、またはセンサ配置は、データ収集デバイスを注射デバイスに取り付けたときに完成させることもできる。
【0026】
さらなる実施形態では、データ収集デバイスは、センサ配置およびプロセッサ配置のうちの少なくとも1つを起動するためのスイッチを含む。スイッチによって、データ収集デバイス、特にセンサ配置およびプロセッサ配置のうちの少なくとも1つをオンデマンドで起動しまたは停止状態にすることができる。スイッチは、データ収集デバイスの本体に組み込むことができる。スイッチは、遠位向きの駆動力をトリガにかける間、またはそれと同時に、少なくともプロセッサ配置を起動するように構成することができる。スイッチによって、データ収集デバイスを少なくとも2つの異なる状態または動作モード間で切り換えることができる。スイッチによって、データ収集デバイスをスリープモードまたはアイドルモードから起動モードへ切り換えることができ、逆も同様である。また、起動された後、データ収集デバイスは、用量排出処置の完了後、またはデータ収集デバイスも注射デバイスも動作されなかった所定の時間間隔の経過後、スリープモードまたはアイドルモードに戻ることができる。
【0027】
さらなる実施形態では、スイッチは、センサ配置およびプロセッサ配置に組み込まれる。目盛りは、トリガ上に配置され、トリガは、投薬処置を開始するために、用量部材、したがってデータ収集デバイスの本体に対して軸方向に変位可能である。初期構成または休止位置で、トリガの目盛りは、センサの軸方向位置から軸方向にずれて位置することができる。トリガの軸方向変位のみによって、目盛りはセンサの検出区域に入ることができる。トリガの軸方向変位は、センサによって等しく感知および検出することができる。センサは、ダイヤル部材に対するトリガの軸方向変位を検出し、定量的に測定するように構成することができる。したがって、センサに対するトリガの軸方向運動は、センサによって検出することができる。次いで、それぞれの電気信号をプロセッサ配置へ伝送することができ、それによってプロセッサ配置およびセンサを起動し、トリガに対するセンサの回転を定量的に測定することができる。このようにして、スイッチの機能をセンサ配置およびプロセッサ配置に全体的に組み込むことができる。このとき、別個のスイッチを実質上不要にすることができる。
【0028】
ダイヤル部材に対するトリガの軸方向変位を測定または検出するセンサ配置の能力はまた、ハウジングに対するトリガの回転インターロックを一時的に停止状態にすることができる状況を検出するために使用することができる。トリガの軸方向変位はまた、この場合も注射デバイスのハウジングからの回転デカップリングの直接的な標示とすることができる。このようにして、トリガの軸方向変位を測定することによって、注射デバイスが適切に使用されていないという警告または定量的な測定を提供することができる。
【0029】
別の実施形態では、スイッチは、第1のスイッチ構成要素および第2のスイッチ構成要素を含み、第1のスイッチ構成要素は、本体上に配置され、第2のスイッチ構成要素は、ハウジング内に配置可能またはハウジングに取付け可能である。
【0030】
加えて、スイッチは、機械スイッチ、電気スイッチ、磁気スイッチ、または光スイッチのうちの1つを含むことができる。2つのスイッチ構成要素をそれぞれデータ収集デバイスの本体上および注射デバイスのハウジングの中または上に配置することによって、注射デバイスのハウジングに対するデータ収集デバイスの本体の動きを検出することができる。別法として、スイッチおよびそのスイッチ構成要素は、データ収集デバイスの本体の上
または中のみに配置することができる。他の実施形態では、スイッチは、磁気または容量タイプになるように構成することができる。スイッチは、用量設定処置の初めに、すなわち使用者が注射デバイスのダイヤル部材の回転を開始したときに、したがって使用者が注射デバイスのハウジングに対してデータ収集デバイスの本体を回転させたときに、データ収集デバイスをすでに起動するように構成することができる。言い換えれば、データ収集デバイスは、用量ダイヤル処置の初めに、スイッチによって起動しまたはオンにすることができる。次いで、データ収集デバイスは、注射デバイスが用量排出処置の終了後にその初期構成、すなわちゼロ用量構成に戻るまで、起動されたままとすることができる。
【0031】
初期構成に接近または到達することは、スイッチによって等しく検出して、センサ配置およびプロセッサ配置のうちの少なくとも1つを停止状態にすることができる。スイッチは、データ収集デバイスをスリープモードから起動モードへ切り換え、逆も同様に起動モードからスリープモードへ切り換えるように構成することができる。
【0032】
概して、データ収集デバイスは一個片のデバイスであると考えられる。典型的には、データ収集デバイスは、本体を唯一の機械構成要素として構成することができる。単片または一個片のデバイスは、かなり容易に取り扱うことができ、注射デバイスへのかなり容易かつ単純明快な取付けが可能になる。さらに、データ収集デバイスには、相互作用して相互に変位可能な複数の機械構成要素がないため、データ収集デバイスは、かなり強固にすることができる。データ収集デバイスはまた、耐久性のある長持ちする使用を提供することができる。
【0033】
追加または別法として、本体は、レセプタクルセクションに同化する軸方向貫通口を含み、軸方向貫通口は、本体がダイヤル部材に取り付けられるときに軸方向貫通口を通ってトリガを受け入れるようにサイズ設定される。軸方向貫通口を提供することで、本体は、スリーブ状またはカラー状の形状を含む。注射デバイスに取り付けられたとき、中空のレセプタクルセクションを有する締結部分は、遠位方向へ、したがって注射デバイスの注射端の方へ向けられる。レセプタクルセクションに同化する軸方向貫通口は、反対側の端部、したがってデータ収集デバイスの本体の近位端に位置する。軸方向貫通口は、注射デバイスのトリガの外周または外径より少なくともわずかに大きい内径または内側断面を含む。
【0034】
このようにして、データ収集デバイスが注射デバイスに取り付けられたとき、注射デバイスのトリガは、データ収集デバイスの本体の軸方向貫通口を通って軸方向に延びることができる。このようにして、注射デバイスのトリガは、使用者によって直接アクセス可能であり、注射デバイスの使用者によって直接押下げ可能である。したがって、データ収集デバイスは、用量排出処置を開始または制御するための注射デバイスのトリガまたは用量ボタンに干渉しない。データ収集デバイスは、トリガを機械的に邪魔せず、またはデータ収集デバイスは、トリガとの機械的干渉を避けるため、少なくとも用量の排出または注射に関する注射デバイスの取扱いは、注射デバイスに取り付けられたときのデータ収集デバイスの影響を受けない。このようにして、データ収集デバイスを注射デバイスに取り付ける全体的な魅力および使用者の傾向を強化および改善することができる。
【0035】
別の実施形態では、データ収集デバイスは、本体に取り付けられたボタンを含み、ボタンは、本体に対して軸方向に変位可能であり、ボタンは、本体に対して自由に回転可能である。ボタンによって、データ収集デバイスが注射デバイスに取り付けられたとき、注射デバイスのトリガを覆うことができる。典型的には、ボタンは、使用者が用量投薬または用量排出処置を開始することを意図したとき、注射デバイスのトリガに係合するように、軸方向貫通口の代わりに本体上に提供される。データ収集デバイスのボタンは、データ収集デバイスの近位端に提供または一致することができる。ボタンは、本体に対して軸方向
に摺動可能に変位可能とすることができる。ボタンは、ボタンが所定の軸方向マージン内で本体に対して軸方向に変位可能になるように、本体に取り付けることができる。ボタンは、本体に対して自由に回転可能であるため、ボタンは、注射デバイスのトリガに回転不能にロックすることができ、ダイヤル部材に回転不能にロック可能な本体は、用量投薬または用量排出処置中に注射デバイスのダイヤル部材とともに回転することができる。
【0036】
典型的には、データ収集デバイスのボタンは、ボタンをデータ収集デバイスの本体に対して遠位方向に前進させるように、使用者によって直接押下げ可能である。典型的には、データ収集デバイスのボタンは、注射デバイスのトリガに機械的に係合可能である。ここで、ボタンは、注射デバイスのトリガに恒久的に軸方向に当接することができる。したがって、データ収集デバイスのボタンの遠位向きの押下げは、注射デバイスのハウジングまたは注射デバイスのダイヤル部材に対するトリガのそれぞれの押下げに直接伝達することができる。
【0037】
さらに、ボタンは、先端セクション(tipped end section)を有する軸方向に延びる軸を含むことができ、先端セクションは、本体がダイヤル部材に取り付けられたとき、トリガに対向して軸方向に当接する。先端セクションは、データ収集デバイスの本体の径方向中心内に位置することができる。先端セクションは、スパイクを含むことができ、トリガ端面の径方向中心に軸方向に係合するように構成することができる。データ収集デバイスのボタンが遠位に押し下げられたとき、先端セクションによって、トリガを遠位方向へ変位させることができる。このため、トリガ端面は、先端セクションを受け入れるための凹部またはくぼみを含むことができる。先端セクションとトリガ端面との間の相互接触面が比較的小さいため、トリガおよびボタンは、互いに事実上回転するようにデカップリング(rotationally decoupled)される。したがって、ボタンは回転を受けることができ、トリガおよびトリガ端面は、注射デバイスのハウジングに回転不能にロックされ、回転不能であり、または少なくともトルク支持連結されたままである。したがって、ボタンの先端セクションは、データ収集デバイスのボタンを注射デバイスのトリガから回転するようにデカップリングする。
【0038】
別の例によれば、センサは、ボタンの上または中に配置され、目盛りは、本体内に配置される。このようにして、センサおよび目盛りを環境から隠すことができる。したがって、センサおよび目盛りは、データ収集デバイスの外側から見えない。センサは、ボタン内に位置することができ、ボタンとデータ収集デバイスの本体との間のインターフェースセクション内に位置する目盛りの方へ向けることができる。
【0039】
目盛りは、データ収集デバイスの本体に回転不能にロックすることができる。使用者が注射デバイスのダイヤル部材にトルクを加えるために本体を回転させると、目盛りは、データ収集デバイスの本体とともに回転することができる。ボタンおよびデータ収集デバイスの本体は、互いに対して自由に回転する。ボタンは、本体に対して制限された軸方向変位を受けることができる。ボタンは、注射デバイスのトリガに軸方向に係合可能である。データ収集デバイスがダイヤル部材に配置されて取り付けられたとき、ボタンは、トリガに軸方向に係合することができる。
【0040】
次いで、ボタンを本体に対して押し下げることで、対応する押下げ、すなわちダイヤル部材および注射デバイスのハウジングのうちの少なくとも1つに対するトリガの軸方向変位をもたらすことができる。このようにして、ボタンは、軸方向力伝達要素(axial
force transmission element)を提供し、それによって注射デバイスのトリガは間接的に押下げ可能である。データ収集デバイスがダイヤル部材上に配置されたとき、データ収集デバイスは、注射デバイスのトリガを完全に覆うことができる。しかし、本体に対するボタンの軸方向変位によって、トリガは軸方向に変位可能で
ある。
【0041】
ボタンは、中空の空間を含むことができ、したがってセンサおよび/またはプロセッサ配置に対するレセプタクルを形成する。センサおよび/またはプロセッサ配置は、ボタン内に封入することができる。ボタンは、センサおよび/またはプロセッサ配置に電力を提供するために、ボタンまたはコイン電池を受け入れるのに好適な円形の断面を含むことができる。
【0042】
目盛りは、本体の側壁の内側セクションとの形状嵌め係合によって、本体に回転不能に連結することができる。そのような機械的連結は、センサとの軸方向の位置合わせにとって有益となりうる。目盛りが回転を受けると、軸方向を向いているトリガまたはハウジングに回転不能に連結されたセンサは、目盛りの表面上で様々な符号化を検出するように構成される。
【0043】
別の例によれば、目盛りは、少なくとも1つの径方向の突起または径方向の凹部を有する目盛り盤を含み、径方向の突起または径方向の凹部は、本体の内側の対応する形状の径方向の突起または径方向の凹部に係合し、回転不能にロックされる。目盛り盤は、たとえば光センサのために所望の反射率を有するプラスチック盤または金属盤を含むことができる。別法として、目盛り盤は、磁気符号化を含むことができ、センサは、目盛り盤のいくつかの部分の磁化を検出するように構成される。目盛りの外縁部および本体の側壁の内側上の相互に対応する径方向の突起または径方向の凹部によって、目盛り盤と本体との間のトルクに耐える機械的係合を提供することができる。したがって、目盛り盤および本体は回転不能にロックされる。
【0044】
トリガに対する本体の回転は、目盛り盤のそれぞれの回転へ不変に伝達される。目盛り盤は、本体の内側の対応する形状の突起および/または凹部に係合するために、多数の径方向の凹部または径方向の突起を含むと、特に有益である。このようにして、本体に加えられるトルクを、目盛り盤の円周に位置する多数の対の径方向の突起および凹部の間で均一に分散させることができる。
【0045】
別の例によれば、目盛り盤は、ボタンに軸方向に係合され、すなわちボタンに軸方向に連結される。このため、本体の内側上の径方向の突起または凹部は、目盛り盤の少なくとも1つの径方向の突起または径方向の凹部とのスロット付きリンクを含みまたは形成することができる。したがって、目盛り盤および本体は、長手方向または軸方向に摺動係合することができる。たとえば、本体の側壁の内側は、目盛り盤の外縁部上の対応する形状の凹部に係合する1つまたは多数の軸方向に延びるリブを含む。このようにして、目盛り盤は、本体に対して軸方向に変位させることができるが、回転不能のままであり、トルクに耐えてデータ収集デバイスの本体に係合する。
【0046】
ボタンに対する目盛り盤の軸方向係合は、センサがボタンの中または上に位置すると有益である。このようにして、ボタンが本体に対して軸方向に変位されたときでも、センサと目盛り盤との間の軸方向距離は一定のままである。目盛り盤と本体との間の一定の軸方向距離は、センサの動作にとって有益である。センサは、たとえば、光源および光検出器を含む光反射センサとして実施することができる。センサによって放出される光は、目盛りの表面上に反射させることができる。目盛り盤とセンサとの間の軸方向距離が一定のままであるとき、目盛り盤、したがって目盛りの概略的な反射挙動も同様に一定のままであり、光検出器によって検出可能な可変の光信号は、目盛り盤がセンサに対する回転を受けたことの直接的な標示である。ここで、目盛りがセンサに対して回転すると、光特性の点で異なるコードパターンまたは目盛りパターンが、センサと交互に位置合わせされる。
【0047】
それに加えて、目盛り盤はまた、本体に軸方向に係合させることができる。目盛り盤は、本体に対して軸方向または長手方向に近位端位置と遠位端位置との間で摺動可能とすることができる。このようにして、目盛り盤は、本体およびボタンの分解を防止するように動作可能とすることができる。目盛り盤によって、本体およびボタンを組み立てたままとすることができる。
【0048】
別の例によれば、目盛り盤は、貫通口を含み、ボタンは、軸方向に延びるソケットセクションを含み、ソケットセクションは、目盛り盤の貫通口の内縁部に係合するための溝を外側セクション上に有する。ソケットセクションの溝のリムは、目盛り盤の貫通口の内径よりやや大きい外径を含むことができる。ソケットセクションおよびボタンは、弾性材料から形成することができる。ソケットセクションおよびボタンは、射出成形プラスチック材料を含むことができる。たとえば金属盤から作られる目盛り盤は、貫通口の内縁部によって溝に留めることができる。このようにして、目盛り盤は、ボタンに軸方向に固定することができる。
【0049】
ボタンの底部セクションの外側上の軸方向に延びるまたは軸方向に突出するソケットセクションは、目盛り盤の環状貫通口の内縁部を受け入れるための環状溝を含む。このようにして、目盛り盤の貫通口の内縁部が、ボタンのソケットセクションの溝に係合するとき、目盛り盤の上向きまたは近位向きの表面が、底部セクションの下向きまたは遠位向きの表面に当接することができる。このようにして、目盛り盤は、ボタンの底部セクションによって軸方向でも支持および補強される。
【0050】
別の例によれば、ボタンは、センサおよびプロセッサ配置のうちの少なくとも1つを収納するための内部空間を形成する側壁および底部セクションを含む。底部セクションは、ボタンの円筒形の側壁と一元的に形成された実質上閉じた平坦な形状の円形の底部を含むことができる。底部セクション内には、1つまたはいくつかの貫通口を提供することができる。底部セクション内には、内部空間内に位置するセンサに対する妨げられていない見通し線のために、少なくとも1つの貫通口または窓を提供することができる。したがって、センサによって伝送および/または受信される光信号は、実質上減衰されずに貫通口を通って伝播することができる。
【0051】
内部空間は、頂部によって覆うことができ、したがって頂部は、ボタンの蓋を形成する。頂部は、注射デバイスの用量排出動作を開始するために使用者の親指によって押し下げられる推力受け面(thrust receiving surface)として働く端面を構成および提供することができる。頂部は、側壁に直接接触して、加えられた推力を頂部から側壁へ伝達することができる。
【0052】
さらなる例によれば、ボタンは、底部セクションの外側にボタンステムおよびトルク伝達構造(torque transmission structure)のうちの少なくとも1つを含む。たとえば底部セクションの外側から軸方向に突出するボタンステムによって、トリガが対応するボタンステムレセプタクルを含むとき、注射デバイスのトリガに対するボタンの径方向の中心合わせを提供することができる。
【0053】
さらに、別の例では、底部セクションは、たとえば突出スロットの形態のトルク伝達構造を備えており、トルク伝達構造は、トリガの近位面上の対応する形状の凹部スロットに係合する。このようにして、データ収集デバイスの本体がダイヤル部材に正確に組み立てられて取り付けられたとき、ボタンは、注射デバイスのトリガへトルクを伝達するように配置することができる。
【0054】
その限りにおいて、注射デバイスのトリガは、ボタンのトルク伝達構造に係合するトル
ク伝達カウンタ構造(torque transmission counter-structure)を含むことができる。データ収集デバイスがダイヤル部材に適当に組み立てられたとき、ボタンは、トルクに耐えて注射デバイスのトリガに係合する。データ収集デバイスの本体が注射デバイスのダイヤル部材とともに回転するのに対して、トリガは、薬剤の用量の排出中に注射デバイスのハウジングに対して回転することが妨げられるため、ボタンもまた、注射デバイスのハウジングに対して回転することが妨げられる。ボタンと本体との間の相対回転は、センサおよび目盛りによって検出し、定量的に監視することができ、センサおよび目盛りのうちの一方は、本体の中または上に配置され、センサおよび目盛りのうちの他方は、トリガ上に位置し、またはトリガに回転不能にロックされる。特に、目盛りは、本体の中または上に配置され、したがって本体に回転不能にロックされ、センサは、トリガに回転不能にロックされる。
【0055】
別の例では、データ収集デバイスは、本体がダイヤル部材に取り付けられたときにトリガに回転不能にロック可能な目盛りドラムを含む。目盛りドラムによって、目盛りドラムをトリガに回転不能にロックすることで、目盛りドラムは、その外周上に、センサ配置のセンサと通信する目盛りを提供することができる。目盛りドラムは、トリガの側壁がセンサ配置のセンサにとってアクセス可能でないときに、特に有益である。
【0056】
別の実施形態によれば、目盛りは、目盛りドラムの外周上に配置される。目盛りドラムは、トリガから軸方向にずれて位置することができる。これにより、センサの位置決めに関する柔軟性を増大させることが可能および有効になる。典型的には、目盛りドラムの目盛りおよびセンサは、共通の横断面内に位置するべきであり、この横断面は、長手方向軸に実質上直交して、したがって注射デバイスの軸方向に直交して延びる。目盛りドラムおよびその外周上に提供される目盛りによって、センサは、たとえばトリガの近位端から所定の軸方向のずれをあけて位置することができる。目盛りドラムにより、データ収集デバイスが注射デバイスに取り付けられたとき、センサおよびトリガの軸方向に重複しない配置が有効になる。
【0057】
別の実施形態では、目盛りドラムは、ボタンに連結され、目盛りドラムは、ボタンに対して自由に回転可能である。典型的には、目盛りドラムおよびボタンは軸方向に連結される。目盛りドラムは、ボタンに軸方向にロックされる。本体に対するボタンのあらゆる軸方向の変位または運動は、本体に対する目盛りドラムのそれぞれの軸方向変位に等しく伝達される。典型的には、目盛りドラムは、ボタンに軸方向に固定される。データ収集デバイスが注射デバイスに取り付けられたとき、特にデータ収集デバイスの本体のレセプタクルセクションがダイヤル部材を受け入れたとき、目盛りドラムは、ボタンと注射デバイスのトリガとの間で軸方向に挟まれる。ボタンに作用する軸方向の負荷または遠位向きの力は、目盛りドラムを通ってトリガ上へ不変に伝達することができ、逆も同様である。
【0058】
目盛りドラムは、ボタンに対して自由に回転可能であるため、目盛りドラムは、データ収集デバイスのボタンから回転するようにデカップリングされる。これにより、トリガに対するデータ収集デバイスのボタンの回転が有効になる。目盛りドラムは、トリガに回転不能にロック可能であるため、トリガまたはデータ収集デバイスの本体に対する本体の回転は、センサ配置によって行われる検出または測定に影響を与えない。目盛りドラムおよびボタンの回転デカップリングにより、測定処置中、または注射デバイスによって行われる用量排出もしくは用量投薬処置中、データ収集デバイスのボタンの回転が可能になり、支持される。これにより、両手での注射デバイスの取扱いが有効になり、支持される。したがって、注射デバイスのトリガに対するデータ収集デバイスのボタンの回転は許容可能であり、データ収集デバイスのセンサ配置および/またはプロセッサ配置によって行われる測定または検出に悪影響を与えない。
【0059】
さらなる実施形態では、データ収集デバイスは、目盛りドラムをボタンに回転不能に連結する回転支承部270を含む。回転支承部によって、目盛りドラムは、ボタンに軸方向に固定され、ボタンに対して自由に回転可能である。回転支承部は、起こりうる摩擦損失を無視できるほど最小に抑えるために、ボール支承部を含むことができる。
【0060】
別の実施形態では、目盛りドラムは、トリガに対向するドラム端面を含み、ドラム端面は、摩擦強化構造または摩擦強化仕上げ(friction enhancing finish)を含む。摩擦強化仕上げは、ドラム端面と注射デバイスのトリガのそれぞれの端面との間に比較的高度の摩擦を提供するドラム端面の粗面によって提供することができる。摩擦強化構造によって、目盛りドラムをトリガに回転不能にロックすることができる。摩擦強化構造は、注射デバイスのトリガとの滑らない係合を提供することができる。
【0061】
さらなる実施形態では、摩擦強化構造は、摩擦パッドを含む。摩擦パッドは、弾性または塑性変形可能とすることができる。摩擦パッドは、摩擦強化仕上げを備えることができる。摩擦パッドは、データ収集デバイスが注射デバイスに取り付けられまたは据え付けられたとき、注射デバイスのトリガに対する目盛りドラムの回転インターロックを有効にするように、所定の粘着摩擦または静止摩擦を示すエラストマまたはポリマー系の材料を含むことができる。
【0062】
さらなる実施形態では、摩擦強化構造は、少なくとも1つのスパイクを含む。少なくとも1つのスパイクは、ボタンが遠位方向に押下されたとき、ペンのトリガの近位面を穿孔し、それによってドラム端面およびトリガを回転不能にインターロックしまたは回転不能に固定する。弾性部材は、ドラム端面およびトリガを互いに分離することによって圧力を除去するとき、回転固定を解放するのを助けることができる。強化構造は、短く、薄く、かつ堅く構成された複数のスパイクを含むことができ、したがって圧力が解放されたとき、回転固定も解放される。この場合、ドラム端面をトリガから分離するために弾性部材は必要とされない。
【0063】
別の実施形態では、ボタンは、円板状のボタン端面と、本体内に回転不能に支持された細長い軸とを含む。ボタン端面は、細長い軸の伸長に実質上直交して延びることができる。したがって、ボタンは、ややT字形の幾何形状を含むことができる。ボタン端面は、実質上均一かつ平坦な形状とすることができる。ボタン端面は、環状の外側リムまたはカラーを含むことができる。ボタン端面の内径方向中心は、細長い軸に連結することができる。細長い軸は、データ収集デバイスの本体の対応する形状の軸方向の孔または貫通口内で、回転不能に支持することができ、軸方向に変位可能に配置することができる。円板状のボタン端面は、ボタンの近位端を形成することができ、その細長い軸は、遠位方向に延びることができる。細長い軸および円板状のボタン端面は、一体形成することができる。ボタン全体は、射出成形プラスチック材料として製造することができる。
【0064】
さらなる実施形態では、回転支承部は、ボタン端面から離れる方を向いている細長い軸の端部セクションに連結される。典型的には、回転支承部は、細長い軸に対して径方向に広げることができる。回転支承部の径方向の延長は、細長い軸が延びる孔の貫通口より大きい。径方向に広げられた回転支承部および径方向に広げられた円板状のボタン端面によって、ボタンは、データ収集デバイスの本体に対して軸方向に抑制される。円板状のボタン端面および回転支承部はどちらも、本体との軸方向の当接を提供し、その働きをすることができ、したがって近位方向ならびに遠位方向に関して、本体に対するボタンの軸方向運動の範囲を定めることができる。
【0065】
別の態様では、使用者が選択可能ないくつかの用量の薬剤を排出するペン型注射デバイスが提供される。注射デバイスは、軸方向に沿って延び、薬剤で充填されたカートリッジ
を収納するように構成され、薬剤の排出のために遠位方向に変位可能な栓によって封止されている細長いハウジングを含む。注射デバイスはまた、ハウジングに螺旋状に連結された数字スリーブを有するダイヤル延長部を含み、ダイヤル延長部は、ダイヤル部材およびトリガをさらに有し、ダイヤル部材は、薬剤の排出を開始または制御するように構成され、ダイヤル部材は、使用者がダイヤル延長部をハウジングに対して伸長位置へ動かすことが可能になるように、数字スリーブに対して固定された回転関係で配置され、伸長位置は、注射デバイスによって送達可能な用量のサイズに対応する。ダイヤル延長部は、トリガを押し下げることによって、休止位置へ押し戻すことができ、トリガは、ハウジングに対する固定された角度関係でトリガ部材を維持するトルク伝達部材によって、ハウジングに回転不能に連結される。
【0066】
ペン型注射デバイスは、手持ち式注射デバイスとして構成される。使用者は、ダイヤル部材を用量増分方向に回転させ、それによって数字スリーブも同じ方向に、たとえば時計回り方向に回転させることによって、薬剤の用量を設定することができる。数字スリーブは、ハウジングにねじ連結されまたは螺旋状に連結されているため、その回転は、ハウジングに対する数字スリーブおよびダイヤル延長部全体の近位方向の軸方向変位をもたらす。ダイヤル部材および数字スリーブを用量増分方向に回転させると、ダイヤル延長部は突出し続け、ハウジングの近位端を越えて延びる。ハウジングに対するダイヤル延長部の軸方向変位の大きさは、設定および投薬予定の薬剤の用量のサイズに正比例する。
【0067】
トリガは、典型的には、ダイヤル延長部の近位端に配置される。トリガは、ダイヤル延長部の近位端面を形成することができる。トリガは、注射デバイスの駆動機構を用量設定モードから用量投薬モードへ切り換えるために、数字スリーブに対して軸方向に変位可能である。トリガは、注射デバイスを用量設定モードと用量投薬モードとの間で切り換えるように構成されたクラッチに連結することができる。トリガをたとえば遠位方向に押し下げたとき、駆動機構は用量投薬モードに切り換えられる。トリガに作用する遠位向きの推力または力により、数字スリーブは、逆方向、すなわち用量減分方向に回転し始め、数字スリーブおよびダイヤル延長部は休止位置へ戻る。
【0068】
一実施形態では、伝達部材は、トリガとハウジングとの間で0.005Nm、0.010Nm、0.015Nm、0.020Nm、0.025Nm、または0.030Nmのトルクまでは、ハウジングに対する固定された角度関係でトリガを維持する。伝達部材は、トリガと注射デバイスのハウジングとの間のトルク支持連結を提供する。0.005Nm、0.010Nm、0.015Nm、0.020Nm、0.025Nm、または0.030Nmの閾値を上回るトルクがトリガに印加されると、ハウジングに対するトリガの回転を生じることがある。そのような回転は、注射デバイスまたはその排出もしくは駆動機構の完全性または機能性を損なうことはないはずである。しかし、ハウジングに対してトリガに印加されるトルクが、0.005Nm、0.010Nm、0.015Nm、0.020Nm、0.025Nm、または0.030Nmを下回る限り、ハウジングに対するトリガの回転を防止するように構成されたトルク支持連結は、注射デバイス内でかなり容易に実施することができる。
【0069】
さらなる実施形態では、伝達部材は、トリガに回転不能にロックされたまたは回転不能にロック可能な駆動スリーブを含む。駆動スリーブは、伝達部材を構成することができ、または伝達部材に一致することができる。伝達部材および駆動スリーブは、ハウジングおよびトリガと恒久的または選択的に回転不能に係合可能とすることができる。たとえば、注射デバイスが用量設定モードにあるとき、駆動スリーブは、ハウジングに対して回転可能とすることができる。このとき駆動スリーブは、数字スリーブに回転不能にロックすることができる。
【0070】
別の実施形態では、注射デバイスが用量設定モードにあるとき、伝達部材は、ハウジングに選択的に回転不能にロック可能であり、伝達部材は、数字スリーブに回転不能にロックされる。注射デバイスが用量投薬モードにあるとき、伝達部材は、ハウジングに回転不能にロックされ、ハウジングに対して摺動可能かつ軸方向に変位可能である。
【0071】
駆動機構が用量設定モードから用量投薬モードに切り換えられると、トリガによって動作されたクラッチは、駆動スリーブがハウジングに回転不能にロックされ、数字スリーブから回転不能に係合解除されるように、伝達部材または駆動スリーブと相互作用することができる。用量投薬モードでは、駆動スリーブはまた、ハウジングに対して軸方向に変位可能である。トリガは、駆動スリーブに恒久的または選択的に回転不能にロックするまたはロック可能とすることができる。トリガは、用量投薬処置を開始するために押し下げられたとき、駆動スリーブに回転不能にロックすることが考えられる。伝達部材は、用量排出中にハウジングに対するトリガの回転を防止する。したがって、トリガの位置および向きは、用量投薬中にハウジングに対するダイヤル部材の回転を測定するための基準として使用することができる。用量投薬モードで、駆動スリーブは、ハウジングに回転不能にロックされる。駆動スリーブは、数字スリーブから回転するようにデカップリングされ、数字スリーブは、用量注射中、ハウジングに対する螺旋運動を受ける。
【0072】
別の態様では、注射システムが提供され、注射システムは:注射デバイスと、注射デバイスのダイヤル部材に取付け可能な上述したデータ収集デバイスとを含む。注射デバイスは、軸方向(z)に沿って延び、薬剤で充填されたカートリッジを収納するように構成され、薬剤の排出のために遠位方向に変位可能な栓によって封止されている細長いハウジングを含む。注射デバイスは、薬剤の排出中にハウジングに対して回転可能なダイヤル部材と、薬剤の排出を開始または制御するようにダイヤル部材に対して軸方向に変位可能なトリガとを含み、トリガは、薬剤の排出中にハウジングに回転不能にロックされる。
【0073】
注射デバイスは、典型的には、ダイヤル部材およびトリガによって制御可能および構成可能な駆動機構を含む。ダイヤル部材によって、可変サイズの用量を設定することができる。その後、トリガを押し下げることによって、事前に設定された用量をカートリッジから投薬または排出することができる。典型的には、ダイヤル部材は、注射デバイスのハウジングにねじ係合された用量ダイヤルスリーブに連結された環状リングを含む。用量の設定またはダイヤル設定中、用量ダイヤルスリーブは、ハウジングに対する螺旋運動を受け、ハウジングに対する近位向きの運動を受ける。
【0074】
典型的には用量ダイヤルスリーブの近位端またはその付近に位置するダイヤル部材もまた、用量の設定中にハウジングに対する近位向きの変位を受ける。注射デバイスのトリガは、用量ダイヤルスリーブの近位端に位置する。トリガを遠位または投薬方向に押し下げることで、用量設定モードから用量投薬または用量排出モードへの注射デバイスの駆動機構の切換えが生じる。遠位向きの力がトリガに作用することに応答して、用量ダイヤルスリーブは、逆方向、したがって用量減分方向に回転し、その間、ダイヤル部材も同じ用量減分方向に回転する。ダイヤル部材および用量ダイヤルスリーブの回転運動には、注射デバイスのハウジングに対する用量ダイヤルスリーブおよびダイヤル部材の遠位方向のそれぞれの動きが伴う。
【0075】
用量設定中、したがって注射デバイスのハウジングに対するダイヤル部材の用量増分回転中、トリガは、ダイヤル部材とともに回転することができる。少なくとも用量投薬中、トリガは、注射デバイスのハウジングに回転不能にロックされ、ダイヤル部材は、ハウジングに対する用量減分回転を受ける。また用量設定中、トリガは、ハウジングに回転不能にロックすることができ、したがってハウジングに対して回転することが妨げられる。
【0076】
用量投薬または用量排出中、データ収集デバイスの本体は、ダイヤル部材とともに回転し、注射デバイスのトリガは、注射デバイスのハウジングに回転不能にロックされる。したがって、トリガは回転を受けないが、ダイヤル部材およびデータ収集部材の本体は、ハウジングに対して、したがって注射デバイスのトリガに対して回転する。次いで、センサ配置は、トリガに対する本体の回転度を定量的に検出および測定することが可能になる。プロセッサ配置によって、トリガおよびハウジングに対するダイヤル部材の回転度を厳密に判定することができる。これは、カートリッジから実際に投薬または排出された薬剤の用量のサイズに対する直接的な標示または直接的な尺度である。
【0077】
注射システムの別の例では、トリガは、トリガ端面と、トリガ端面上のボタンステムレセプタクルおよびトルク伝達カウンタ構造のうちの少なくとも1つとを含む。ボタンステムレセプタクルは、データ収集デバイスのボタンステムを受け入れるように、たとえばデータ収集デバイスのボタンのボタンステムを受け入れるように構成される。トリガのトルク伝達カウンタ構造は、データ収集デバイスの相補形のトルク伝達構造に係合するように構成される。たとえば、トルク伝達カウンタ構造は、トリガ端面を横切って径方向に延びる凹状スロットを含むことができ、トルク伝達構造は、対応する形状の突出スロットをデータ収集デバイスのボタンの遠位面または下面上に含む。適当に組み立てられたとき、たとえば突出スロットおよび凹状スロットの形態である、2つの相互に対応する構造、したがってトルク伝達構造およびトルク伝達カウンタ構造は、トルクを伝達するように相互に係合する。このようにして、注射デバイスが用量排出処置を受けると、データ収集デバイスのボタンは、トリガに対して回転することが妨げられる。
【0078】
別の例によれば、トリガは、円板状のトリガ端面および円筒形のトリガ側壁を含み、目盛りは、トリガ側壁上に位置し、目盛りは、トリガ側壁の円周に沿って延びる。このようにして、円筒形のトリガ側壁上に目盛りを提供することによって、データ収集デバイスが注射デバイスに取り付けられたとき、注射デバイスのトリガは、データ収集デバイスの本体の対応する形状の貫通口を通って軸方向に延びることができる。注射デバイスのトリガは、使用者が注射デバイスを動作させるために、それでもなお完全にアクセス可能である。同時に、トリガに対するダイヤル部材の回転は、データ収集デバイスによって厳密に測定することができる。データ収集デバイスが注射デバイスに組み立てられるとき、注射デバイスの近位端がデータ収集デバイスを軸方向に交差することができるため、注射システムの全体的な軸方向の延長は、注射デバイスの全体的な軸方向寸法を超過することなく、この範囲内に収まる。これにより、データ収集デバイスが注射デバイスに取り付けられているが、注射デバイスのかなり直接的かつ直感的な動作が可能になる。
【0079】
追加または代替として、目盛りはまた、トリガ端面上、たとえばトリガの近位端面に提供することができる。そのような実施形態により、データ収集デバイスの側壁またはペン型注射デバイスの伸長に対する軸方向または長手方向に沿ったセンサの位置合わせが有効になる。目盛りは、トリガ端面上の円形の構造に沿って延びる。目盛りは、トリガ端面上に円または円形の構造を含むことができ、トリガ端面の径方向中心から径方向の距離をあけて位置することができる。センサは、トリガ端面の径方向中心から径方向のずれをあけて位置する。センサは、トリガ端面から所定の軸方向距離をあけて位置することができ、軸方向に沿って位置合わせすることができる。
【0080】
注射システムの別の実施形態では、注射デバイスは、ハウジングにねじ係合された数字スリーブを有するダイヤル延長部を含み、ダイヤル部材は、ダイヤル延長部の近位端部に配置され、ダイヤル部材は、数字スリーブに回転不能にロックされる。
【0081】
数字スリーブは、ダイヤル部材に恒久的に回転不能にロックまたは連結することができる。たとえば用量増分方向、たとえば時計回りにおけるダイヤル部材の使用者に誘起され
る回転は、数字スリーブの対応する回転を生じる。典型的には、数字スリーブは、その外周上に提供または印刷された一続きの数字を有する。一続きの数字は、数字スリーブがハウジングに対する回転を受けると、注射デバイスのハウジングの用量標示窓内に現れる。これらの数字は、典型的には、螺旋に沿って提供され、数字のピッチは、数字スリーブおよび注射デバイスのハウジングのねじ係合のピッチに対応する。数字スリーブが、用量投薬または用量排出処置中にハウジングに対する用量減分回転を受けると、ダイヤル部材もまた、用量減分方向、たとえば反時計回りに回転する。
【0082】
別の実施形態では、ダイヤル延長部は、細長いハウジングから近位方向に突出し、ダイヤル延長部は、ダイヤル部材が用量増分方向に回転すると、ハウジングに対して近位方向に動く。
【0083】
さらなる実施形態では、数字スリーブおよびダイヤル部材は、薬剤の排出中、または薬剤の排出のために、トリガが遠位方向に付勢されたとき、用量減分方向に回転する。さらに、薬剤で充填されたカートリッジが、注射デバイスのハウジング内に配置される。注射デバイスのハウジングは、主ハウジング部材または近位ハウジング部材と、遠位ハウジング部材としてカートリッジホルダとを含むことができる。したがって、注射デバイスのハウジングは、いくつかの構成要素を含むことができる。カートリッジは、典型的には、遠位に位置するハウジング構成要素、すなわちカートリッジホルダ内に収納され、駆動機構とも呼ばれる注射デバイスの排出機構は、典型的には、近位ハウジング構成要素、すなわち主ハウジング部材内に収納および配置される。
【0084】
典型的には、注射デバイスの駆動機構は、少なくとも、注射デバイスのハウジングの伸長に沿って延びるピストンロッドを含む。ピストンロッドは、典型的には径方向に広げられた圧力片を遠位端に含んでおり、カートリッジのピストンに動作可能に係合して、ピストンを遠位方向に変位させ、それによって薬剤の用量をカートリッジから排出するように構成される。いくつかの注射デバイスでは、ピストンロッドを遠位方向に変位させる駆動力は、使用者によってトリガを遠位方向に押し下げたときに完全に提供される。他の注射デバイスでは、ピストンロッドを遠位方向に駆動するために必要な駆動力の少なくとも一部分が、予圧ばねなどの機械もしくは電気エネルギーの貯蔵部または電気駆動部に給電するように構成された電池によって提供される。
【0085】
一実施形態では、薬剤で充填されたカートリッジが、注射デバイスのハウジング内に配置される。ここで、注射デバイスは、充填済みデバイスとして構成することができ、デバイスが使用者または患者に送達されるとき、カートリッジは充填済みデバイス内に容易に組み立てられる。
【0086】
別の実施形態では、データ収集デバイスは、注射デバイスのダイヤル部材に取り付けられる。データ収集デバイスは、注射デバイスのダイヤル部材に恒久的にロックすることができる。データ収集デバイスは、ダイヤル部材に、したがって注射デバイスにさらに取外し可能に連結可能とすることができる。データ収集デバイスは、使い捨ての注射デバイスに取り付けられるように構成することができ、使い捨ての注射デバイスは、1回または数回の連続使用後、完全に廃棄されることが意図される。使い捨ての注射デバイスの廃棄前、データ収集デバイスは、その注射デバイスから取り外されるべきであり、新しい注射デバイスに取り付けられるべきである。このようにして、データ収集デバイスは、いくつかの注射デバイスの医薬品投与量情報(medical dosage information)を収集およびログ記録するように構成される。したがって、データ収集デバイスによって集められる医薬品投与量情報は、特有の注射デバイスに依存しない。
【0087】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な
化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン-3もしくはエキセンジン-4もしくはエキセンジン-3もしくはエキセンジン-4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0088】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0089】
インスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0090】
エキセンジン-4は、たとえば、H-His-Gly-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-Met-Glu-Glu-Glu-Ala-Val-Arg-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-NH2配列のペプチドであるエキセンジン-4(1-39)を意味する。
【0091】
エキセンジン-4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H-(Lys)4-desPro36,desPro37エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)5-desPro36,desPro37エキセンジン-4(1-39
)-NH2、
desPro36エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン-(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン-(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
(ここで、基-Lys6-NH2が、エキセンジン-4誘導体のC-末端に結合していてもよい);
【0092】
または、以下の配列のエキセンジン-4誘導体:
desPro36エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2(AVE0010)、
H-(Lys)6-desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
H-desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Lys6-desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
H-desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(S1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン-4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0093】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳
下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0094】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0095】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0096】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70~110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0097】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0098】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0099】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211~217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0100】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(V
L)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0101】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH-H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0102】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1~R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1~C6アルキル基、場合により置換されたC2~C6アルケニル基、場合により置換されたC6~C10アリール基、または場合により置換されたC6~C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0103】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0104】
特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を本発明に加えることができることが、当業者にはさらに明らかになるであろう。さらに、添付の特許請求の範囲で使用するあらゆる参照番号は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0105】
以下、注射デバイスに関連するデータ収集デバイスの様々な実施形態について、図面を参照することによって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1】本発明の一実施形態によるデータ収集デバイスとともに使用するための注射デバイスの分解図である。
【
図2】注射デバイスの近位端に取り付けられたデータ収集デバイスの概略側面図である。
【
図3】データ収集デバイスの様々な電気および電子構成要素を示す概略ブロック図である。
【
図4】データ収集デバイスの本体が部分的に切り取られている、
図2による注射デバイスに連結されたデータ収集デバイスの別の図である。
【
図5】注射デバイスに取り付けられたデータ収集デバイスの別の実施形態の側面図である。
【
図6】
図5によるデータ収集デバイスの断面図である。
【
図7】データ収集デバイスの別の実施形態の断面図である。
【
図9】
図1に示す注射デバイスのさらなる分解図である。
【
図10】データ収集デバイスの別の例が取り付けられている、注射デバイスの近位部分の断面図である。
【
図11】データ収集デバイスの本体の分離斜視図である。
【
図13】データ収集デバイスの構成要素の分解図である。
【
図16】注射デバイスのトリガの分離斜視図である。
【
図17】注射デバイスのダイヤルの分離斜視図である。
【
図18】A-Aに沿って切り取った
図10の注射デバイスの断面図である。
【
図20】注射デバイスのクラッチの近位端の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0107】
図1および
図8に示す注射デバイス1は、ハウジング10を含む充填済みの使い捨て注射デバイスであり、ハウジング10に注射針15を取り付けることができる。注射針15は、内側ニードルキャップ16と、注射デバイス1のハウジング10の遠位セクションを囲んで保護するように構成された外側ニードルキャップ17または保護キャップ18とによって保護される。ハウジング10は、
図9に示す駆動機構8を収納するように構成された主ハウジング部材を含み、これを形成することができる。注射デバイス1は、カートリッジホルダ14として示す遠位ハウジング構成要素をさらに含むことができる。カートリッジホルダ14は、主ハウジング10に恒久的または解放可能に連結することができる。カートリッジホルダ14は、典型的には、液体薬剤で充填されたカートリッジ6を収納するように構成される。カートリッジ6は、円筒形または管状のバレル25を含み、バレル25は、バレル25内に位置する栓7によって近位方向3に封止される。栓7は、ピストンロッド20によってカートリッジ6のバレル25に対して遠位方向2に変位可能である。カートリッジ6の遠位端は、セプタムとして構成された穿孔可能な封止部26によって封止されており、封止部26は、注射針15の近位向きの先端によって穿孔可能である。カートリッジホルダ14は、ねじ付ソケット28をその遠位端に含み、ねじ付ソケット28は、注射針15の対応するねじ付部分にねじ係合する。注射針15をカートリッジホルダ14の遠位端に取り付けることによって、カートリッジ6の封止部26を貫通し、それによってカートリッジ6の内部への流体伝達アクセスを確立する。
【0108】
注射デバイス1がたとえばヒトインスリンを投与するように構成されるとき、注射デバイス1の近位端にあるダイヤル部材12によって設定された投与量を、いわゆる国際単位(IU)で表示することができ、1IUは、約45.5μgの純結晶インスリン(1/22mg)と生物学的に同等である。
【0109】
図2、
図4、
図5、および
図6により詳細に示すように、ハウジング10は投与量窓13を含み、投与量窓13は、ハウジング10内のアパーチャの形態とすることができる。投与量窓13は、現在設定されている用量の視覚標示を提供するために、ダイヤル部材12が回されると動くように構成された数字スリーブ80のうちの制限された部分を使用者が見ることを可能にする。ダイヤル部材12は、用量の設定および/または投薬もしくは排出中、回されるとハウジング10に対して螺旋状の経路上を回転する。
図1に示す例で
は、ダイヤル部材12は、注射デバイス1、特にダイヤル部材12へのデータ収集デバイス100、200の取付けを容易にするために、1つまたはそれ以上の形成部71a、71b、71cを含む。
【0110】
注射デバイス1は、投与量ノブ12を回すことで機械クリック音を引き起こし、使用者に音響フィードバックを提供するように構成することができる。数字スリーブ80は、インスリンカートリッジ6内のピストンと機械的に相互作用する。針15が患者の皮膚部分に突き刺されて、トリガ11または注射ボタンが押されたとき、表示窓13内に表示されているインスリン用量が、注射デバイス1から放出される。トリガ11が押された後、注射デバイス1の針15が特定の時間にわたって皮膚部分内に留まると、用量の大部分は患者の体内へ実際に注射される。インスリン用量の放出もまた、機械クリック音を引き起こすことができるが、この音は、ダイヤル部材12を使用したときに生じる音とは異なる。
【0111】
この実施形態では、インスリン用量の送達中、ダイヤル部材12は、軸方向運動で、すなわち回転なく、その初期位置へ戻され、数字スリーブ80は、回転してその初期位置へ戻り、たとえばゼロ単位の用量を表示する。
【0112】
注射デバイス1は、カートリッジ6が空になるまで、または注射デバイス1内の薬剤の有効期日(たとえば、最初の使用から28日後)に到達するまで、数回の注射プロセスに対して使用することができる。
【0113】
さらに、注射デバイス1を最初に使用する前に、カートリッジ6および針15から空気を除去するために、たとえば薬剤の2単位を選択し、針15を上向きにして注射デバイス1を保持しながらトリガ11を押下することによって、いわゆる「プライムショット」を実行することが必要な可能性がある。説明を簡単にするために、以下、放出される量は、注射される用量に実質上対応し、したがってたとえば注射デバイス1から放出される薬剤の量は、使用者によって受け取られる用量に等しいと想定する。
【0114】
図2は、データ収集デバイス100が取り付けられたときの注射デバイス1の近位端の側面図である。データ収集デバイス100は、本体102を含む。本体の内側には、
図4に示すように、プロセッサ配置50および電源54が提供される。さらに、本体102に取り付けられまたは組み込まれたセンサ112を有するセンサ配置110が提供される。
図4に示すように、センサ112は、有線接続59によってプロセッサ配置50に接続される。有線接続59は、センサ112への電気エネルギーの伝送、ならびにセンサ112からプロセッサ配置50への電気信号の伝送のために構成することができる。本体102は、注射デバイス1のダイヤル部材12に取り付けられるように構成された締結部分103を含む。本体102は、ダイヤル部材12の上に嵌るように、スリーブまたはカラーの幾何学的な形態を有することができる。本体102および締結部分103は、ダイヤル部材12を受け入れるための中空のレセプタクルセクション105を形成する。締結部分103は、円筒形の側壁104を含む。側壁104の内側には、
図4に示すように、ダイヤル部材12上の形成部71a、71b、71cと協働する形成部107を提供することができる。相互に対応する形成部107、71a、71b、71cによって、データ収集デバイス100が注射デバイス1に取り付けられたとき、本体102とダイヤル部材12との間に回転インターロックを提供することができる。本体102は、ダイヤル部材12に締め付けることができる。本体102は、ダイヤル部材12に留めることができる。
【0115】
形成部107はまた、ダイヤル部材12上の形成部71a、71b、71cと協働するのに十分な厚さの何らかの種類の弾性の詰め物を含むことができる。詰め物は、ダイヤル部材12の表面と共形となるのに十分なほど柔らかくすることができる。詰め物は、形成部71a、71b、71cと共形となるのに十分なほど柔らかくすることができる。弾性
の詰め物は、側壁104の内面上の1つまたはそれ以上の形成部107に加えてさらに提供することができる。弾性の詰め物は、レセプタクルセクション105内、したがって本体102の空洞内にダイヤル部材12を収納するように変形することができる。摩擦は、レセプタクルセクション105へのダイヤル部材12の挿入に応答して、反力を提供する。これにより、データ収集デバイス100がダイヤル部材12の上に受け取られたことを示す触覚フィードバックが使用者に提供される。データ収集デバイス100が完全に設置された後は、さらなる軸方向運動が防止される。データ収集デバイス100とダイヤル部材12との間の摩擦により、データ収集デバイス100を注射デバイス1上に設置したままとすることができる。これは、さらなる締結手段またはさらなる機構なしで実現することができる。データ収集デバイス100を注射デバイス1から取り除くには、この摩擦力に打ち勝つ必要がある。これは、たとえば30Nまたはそれ以上の比較的強い引張り力を近位方向へデータ収集デバイス100に加えることによって実現することができる。
【0116】
詰め物および/または形成部107はまた、用量設定中に使用者によって加えられる回転力をデータ収集デバイス100とダイヤル部材12との間で伝達するのに十分な係合を提供する。回転力は、本体102とダイヤル部材12との間の摩擦によって伝えることができる。データ収集デバイス100とダイヤル部材12との間で回転方向に作用する摩擦力は、典型的には、これらの構成要素間の滑りを回避するのを助けるために、注射デバイス1の内部の力を克服するために必要とされる力を、少なくとも5倍またはさらに少なくとも10倍超過する。
【0117】
データ収集デバイス100の本体102は、ダイヤル部材12の外周を完全に囲んでいるため、注射処置の実行前に用量を設定するために、実際にはデータ収集デバイス100およびその本体102を、たとえば時計回りに、したがって用量増分方向4に回転させる必要がある。データ収集デバイス100の本体102が使用者によって回転されると、ダイヤル部材12は、ハウジング10に対する対応する回転を受ける。用量排出または用量投薬中、使用者は、投薬動作を開始および/または制御するために、トリガ11を遠位方向2に押し下げなければならない。用量投薬中、ダイヤル部材12、したがって本体102は、逆の用量減分方向5、たとえば反時計回りに回転する。少なくとも用量投薬または用量排出プロセス中、トリガ11はハウジング10に回転不能にロックされるため、ダイヤル部材12への本体102の滑らない締結および取付けにより、本体102は、用量投薬処置中にトリガ11に対して回転する。
【0118】
典型的には、トリガ11の円板状または平坦状のトリガ端面11aが、使用者の親指によって遠位方向2に押下げ可能である。
図4にさらに示すように、トリガ11はまた、実質上円筒形または環状のトリガ側壁11bを含む。トリガ側壁11bの外周には、センサ配置110のセンサ112と協働するように、目盛り114が提供される。目盛り114は、円周方向または接線方向に、すなわちトリガ側壁11bの外周に沿って符号化される。本体102および本体102に堅く締結されたセンサ112が、用量投薬中にトリガ11に対して回転し始めると、センサ112は、目盛り114に対応する一連の電気センサ信号を作成および生成するように構成される。用量投薬中のセンサ112および目盛り114の相対回転運動は、ハウジング10に対する本体102の回転度の直接的な尺度である。したがって、この相対回転運動は、カートリッジ6から投薬または排出された薬剤の用量のサイズに対する直接的な標示および直接的な尺度である。
【0119】
注射デバイス1を、
図3および
図4に示す用量設定モードから、用量注射または用量投薬モード(図示せず)へ切り換えるために、使用者は、
図4に矢印によって示すように、トリガ11を遠位方向2に押し下げなければならない。次いで、注射デバイス1は、用量投薬モードに切り換えられ、用量ボタンとして働くトリガ11は、遠位方向2にわずかに変位し、したがって目盛り114は、軸方向に対してセンサ112と実質上位置合わせさ
れる。
図4に示すように、用量設定モードで、目盛り114は、センサ112の位置からわずかに軸方向にずれている。
図4に示すように、センサ112は、径方向内方へ位置合わせされる。センサ112は、側壁104の内側に位置し、トリガ11の外周の方へ径方向内方を向いている。注射デバイス1のトリガ11は、本体102の軸方向貫通口106を通って軸方向に延びる。トリガ11の近位に位置するトリガ端面11aは、データ収集デバイス100の本体102の近位端から近位に位置する。
【0120】
軸方向貫通口106、および注射デバイス1の近位端部によるデータ収集デバイス100の交差は、注射デバイス1およびデータ収集デバイス100を含む注射システム190のかなり省スペースの配置を提供する。注射デバイスの近位端、したがってトリガ11が、データ収集デバイス100の本体102を通って延びているため、データ収集デバイス100がダイヤル部材12に取り付けられたときでも、注射デバイスの全体的なデバイス取扱いは実質上変わらず、影響を受けないままである。
【0121】
軸方向貫通口106および貫通口106を通って軸方向に延びるトリガ11により、注射デバイス1を用いて設定および投薬予定の最大用量は、データ収集デバイス100のない注射デバイスの構成と比較しても、実質上変化しないままである。特に、データ収集デバイス100は、注射デバイス1の軸方向の伸長を延長または増大させない。
【0122】
ダイヤル部材12、数字スリーブ80、およびトリガ11は、ダイヤル延長部90に属し、ダイヤル延長部90は、用量が設定されるとき、ハウジング10から完全に軸方向に離れる。用量投薬動作中、ダイヤル延長部90の全体が、
図2に示すゼロ用量構成の方へ戻る。
【0123】
図4に示すように、データ収集デバイス100の本体102は、径方向内方へ延びるフランジ部分108をその近位端に含む。フランジ部分108の領域内の内径または内側断面は、ダイヤル部材12の外径より小さい。このようにして、フランジ部分108は、軸方向、特に近位方向3において、本体102のレセプタクルセクション105の範囲を定め、または制限する。したがって、径方向内方へ延びるフランジ部分108は、ダイヤル部材12の近位端面に軸方向に当接するための軸方向の止め具として働く。ダイヤル部材12をレセプタクルセクション105内へ挿入するとき、径方向内方へ延びるフランジ部分108は、それぞれの組立て運動の範囲を定める。
図4に示す当接構成に到達したとき、センサ112は、目盛り114に対してセンサ112を適切に位置合わせするように、ダイヤル部材12の近位端から所定の軸方向距離をあけて位置する。少なくとも1つのセンサ112は、フランジ部分108の内側に配置される。少なくとも1つのセンサ112はまた、目盛り114に対向している限り、側壁104の内向き部分上の別の場所に位置することもできる。
【0124】
データ収集デバイス100の電子構成要素を起動または始動させるために、データ収集デバイス100は、
図2に示すように、スイッチ130を備えることができる。スイッチ130は、第1のスイッチ構成要素131および第2のスイッチ構成要素132を含むことができる。第1のスイッチ構成要素131は、データ収集デバイス100の本体102上に配置され、第2のスイッチ構成要素132は、ハウジング10内に配置可能であり、またはハウジング10に取付け可能である。第2のスイッチ構成要素132は、注射デバイス1のハウジング10の中または上に容易に組み立てて提供することができる。ゼロ用量構成で、第1および第2のスイッチ構成要素131、132は、電気スイッチを閉じるように協働することが考えられる。たとえば用量の設定中、本体102がハウジング10に対して回転するとすぐに、第1のスイッチ構成要素131は、第2のスイッチ構成要素132から離れ、それによってスイッチ130を遮りまたは開く。このスイッチ構成の変化は、プロセッサ配置50によって感知もしくは追跡することができ、かつ/またはプロ
セッサ配置50と電源54との間の電気接続を変えることができる。
【0125】
第1および第2のスイッチ構成要素の相対変位によりスイッチから得ることができるスイッチング信号は、プロセッサ配置50を始動させることができ、かつ/またはセンサ配置110を始動させることができる。
図2および
図4に示すように、電子構成要素、すなわちプロセッサ配置50および電源54は、本体102の延長部109内に配置することができる。概して、本体102は、環状のダイヤル部材12の全体的な幾何形状に実質上適用された円筒形またはカラー形を含むことができる。プロセッサ配置50および電源54などの電子構成要素を収納するのに十分な空間を提供するために、本体102は、遠位に延びる延長部109を含む。延長部109内にスイッチ130を提供することもできる。
【0126】
図2に示すゼロ用量構成で、延長部109は、投与量窓13と軸方向に重複するが、延長部109は、投与量窓13に対して円周方向または接線方向にずれて位置する。このようにして、投与量窓13は、延長部109によって邪魔されたり覆われたりしない。延長部109の軸方向の伸長は、用量の設定中、ハウジング10に対する本体102の1回転後に延長部109が投与量窓13から軸方向にずれて位置するように選択される。このようにして、ハウジング10に対するデータ収集デバイス100のあらゆる考えられる配置および位置に対して、投与量窓13が邪魔されずに見えることが保証される。
【0127】
場合により、
図2に示すように、データ収集デバイス100は、データ収集デバイス100によって測定されまたは集められた医薬品投与量情報を視覚化するために、ディスプレイ22aを備えることができる。
【0128】
第1および第2のスイッチ構成要素131、132は、ゼロ用量構成で機械的に直接相互接触する電気接点を含むことができる。別法として、第1および第2のスイッチ構成要素131、132は、第1および第2のスイッチ構成要素131、132間に機械的な直接接触がなくてもスイッチ信号を提供する容量センサまたは誘導センサとして実施されることが考えられる。
【0129】
図3は、データ収集デバイス100、200のブロック図である。データ収集デバイス100、200は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの1つまたはそれ以上のプロセッサを含むプロセッサ配置50を、メモリユニット52a、52bとともに含み、メモリユニット52a、52bは、プログラムメモリ52aおよび主メモリ52bを含み、プロセッサ配置50によって実行するためのソフトウェア、および計数したパルス、導出した用量サイズ、タイムスタンプなどのデータ収集デバイスの使用中に生成されたデータを記憶することができる。スイッチ53は、動作したとき、センサ配置110、210を含むデバイスの電子構成要素に電源54を接続する。ディスプレイ22aは、存在してもしなくてもよい。スイッチ53は、スイッチ130に同一とすることができ、またはスイッチ130に一致することができる。1つまたはそれ以上のセンサを含むセンサ配置110は、本体102とトリガ11との間の回転運動を検出するように提供される。
【0130】
センサ配置110の分解能は、注射デバイス1の設計によって決定される。センサ配置110の好適な角度分解能は、等式(1)によって決定することができる。
【数1】
【0131】
たとえば、ダイヤル部材12の1回転が24IUの薬剤投与量に対応する場合、センサ配置110に対する好適な分解能は、15°以下になるはずである。
【0132】
図2の実施形態では、1つまたはそれ以上の第1の磁石56aが、トリガ側壁11bの外面の円周に提供され、1つまたはそれ以上の第2の磁石56bが、本体102の側壁104の円周に提供される。センサ配置110は、本体102がトリガ11に対して回転するとき、ホール効果に基づいて、磁界の変動によりその出力を変動させる変換器として実施することができる。
【0133】
薬剤が注射デバイス1から排出されると、本体102はダイヤル部材12とともに回転するため、センサ配置110によって測定される回転角は、排出される薬剤の量に比例する。注射デバイス1内に収容されている薬剤のゼロレベルまたは絶対量を判定する必要はない。さらに、投与量窓13を通して表示される数字スリーブ80上の数字またはチェックマークを監視する必要がないため、データ収集デバイス100は、投与量窓13を覆い隠さないように設計することができる。
【0134】
送達された薬剤量は、注射デバイス1にプログラムされた投与量とは独立して、データ収集デバイス100によって判定される。設定されている、したがって投薬することが意図されている薬剤の量を判定するデータ収集デバイスと比較すると、送達された薬剤量を判定することで、注射された薬剤の量に関する直接的な、したがってより確実な情報が提供される。
【0135】
しかし、他の実施形態では、異なるタイプのセンサを使用することができる。たとえば、変換器の代わりに、センサ配置は、磁界の変化を検出する微小電子機械(MEMS)デバイスまたは他の磁気センサを含むことができる。感知配置の別の例としては、発光ダイオード(LED)などの光源を含む光符号器、および第1の部分の内面から反射する光の変化を監視する光変換器などの光検出器が挙げられ、第1の部分の内面は、チェックマークなどのその円周で反射率が変動する1つもしくはそれ以上の領域、または少なくとも1つの成形された反射領域を有する。そのようなセンサ配置は、上述した第2~第4の変形形態で使用される。
【0136】
他の実施形態では、センサ配置110は、ポテンシオメータとすることができる。さらに別の実施形態では、容量感知配置を使用することができ、トリガ11上に提供される要素が、センサ112内の2つの板同士の間の静電容量に影響を与えることができる。さらなる例では、機械スイッチおよび/またはトラックとともに機械センサを使用して、本体102とトリガ11との間の相対回転を検出することができる。
【0137】
詳細に記載されている実施形態は、センサ配置110内に特定のタイプのセンサのみを含むが、センサ配置110が1つまたはそれ以上のタイプの複数のセンサを含む他の実施形態も考案することができる。
【0138】
プロセッサ配置50の出力57が提供され、出力57は、Wi-FiもしくはBluetooth(登録商標)などの無線ネットワークを介して別のデバイスと通信する無線通信インターフェース、またはユニバーサルシリアルバス(USB)、ミニUSB、もしく
はマイクロUSBコネクタを受け入れるソケットなどの有線通信リンクに対するインターフェースとすることができる。
図3は、注射システム290の一例を示し、データ収集デバイス100は、データ転送のためにデータ接続66を介してパーソナルコンピュータ65などの別の外部デバイスに接続される。データ接続66は、有線または無線のタイプとすることができる。たとえば、プロセッサ配置50は、使用者に投与されるとき、判定された送達済み薬剤量および注射に対するタイムスタンプを記憶し、後にその記憶されているデータを外部電子デバイス65へ転送することができる。デバイス65は、たとえば医療従事者による再調査のために、治療ログを維持し、かつ/または治療履歴情報を遠隔地へ送る。
【0139】
データ収集デバイス100は、35回またはそれ以上の注射事象などの多数の注射事象の送達済み薬剤量およびタイムスタンプなどのデータを記憶するように構成することができる。1日に1回の注射療法によれば、これは約1カ月の治療履歴を記憶するのに十分なはずである。データ記憶は、先入れ先出し方式で組織化されており、最近の注射事象が常にデータ収集デバイス100のメモリ内に存在することを確実にする。外部電子デバイス65へ転送された後、データ収集デバイス100内の注射事象履歴は削除される。別法として、データはデータ収集デバイス100内に留まり、新しいデータが記憶されると、最も古いデータが自動的に削除される。これにより、データ収集デバイス内のログが使用中に時間とともに構築され、常に最近の注射事象を含む。別法として、他の構成は、療法の要件および/または使用者の好みに応じて、70回(1日2回)、100回(3か月)、または任意の他の好適な数の注射事象の記憶容量を含むこともできる。
【0140】
別の実施形態では、出力57は、無線通信リンクを使用して情報を伝送するように構成することができ、かつ/またはプロセッサ配置50は、そのような情報を外部電子デバイス65へ周期的に伝送するように構成することができる。
【0141】
プロセッサ配置50は、判定された薬剤用量情報、および/または最後の薬剤用量の送達からの経過時間を示すように、任意選択のディスプレイ22aを制御することができる。たとえば、プロセッサ配置50は、ディスプレイ22aに、最近の判定された薬剤投与量情報と経過時間との間で表示を周期的に切り換えさせることができる。
【0142】
電源54は、電池とすることができる。電源54は、1つのコインセル、または直列もしくは並列に配置された複数のコインセルとすることができる。別の実施形態では、
図5および
図6に示すように、電源54は、データ収集デバイス200のボタン240が使用者によって押下されると電力を生成する圧電ジェネレータとすることができ、それによって場合により、電池の必要を回避することができる。
【0143】
タイマ55を提供することもできる。データ収集デバイス100をオンおよびオフに切り換えることに対する追加または代替として、スイッチ130は、係合および/または係合解除されたときにタイマ55をトリガするように配置することができる。たとえば、スイッチの第1および第2の電気接点の係合もしくは係合解除の際、またはスイッチ130の動作および動作中止の際、タイマ55がトリガされた場合、プロセッサ配置50は、タイマからの出力を使用して、トリガ11が押下された時間の長さを判定し、たとえば注射の持続時間を判定することができる。
【0144】
別法または追加として、プロセッサ配置50は、タイマ55を使用して、第1および第2のスイッチ構成要素131、132の係合解除またはスイッチ130の動作中止の時間によって示される注射の完了から経過した時間の長さを監視することができる。場合により、経過時間は、ディスプレイ22a上に示すことができる。また場合により、第1および第2のスイッチ構成要素131、132が次に係合したとき、またはスイッチ130が
次に動作したとき、プロセッサ配置50は、経過時間を所定の閾値と比較して、使用者が前の注射からあまりに早く別の注射を投与しようとしている可能性があるかどうかを判定することができ、早過ぎる場合、可聴信号および/またはディスプレイ22a上の警報メッセージなどの警告を生成することができる。他方では、経過時間が非常に短い場合、これは、使用者が薬剤量を「分割用量」として投与していることを示すことができ、プロセッサ配置50は、投与量がそのように送達されたことを示す情報を記憶することができる。そのようなシナリオでは、経過時間は、数秒、たとえば10秒から、最大数分、たとえば5分の範囲内で、所定の閾値と比較される。一例によれば、所定の閾値は、2分に設定される。最後の注射から経過した時間が2分またはそれ以下である場合、プロセッサ配置50は、投与量が「分割用量」として送達されたことを示す情報を記憶する。
【0145】
プロセッサ配置50によって経過時間を監視する別の任意選択の目的は、経過時間が所定の閾値を超えたことを判定することであり、これは使用者が別の注射を投与することを忘れた可能性があることを示唆しており、またその場合、警告を生成することである。
【0146】
図5および
図6では、注射デバイス1を含む注射システム290の別の実施形態が示されており、注射システム290は、注射デバイス1の近位端部に取り付けられた別のデータ収集デバイス200をさらに含む。
図2および
図4に関連して説明したデータ収集デバイス100と同様に、データ収集デバイス200はまた、締結部分203および側壁204を有する本体202を含み、注射デバイス1のダイヤル部材12を収納して受け入れるように構成された中空のレセプタクルセクション205を形成する。
図5および
図6には示されていないが、データ収集デバイス200はまた、プロセッサ配置50および電源54などの様々な電子構成要素を含む。上記と同じように、側壁204の内向きの側壁部分は、ダイヤル部材12への本体202の滑らない取付けを有効にするために、発泡ゴムパッドなど、1つまたはいくつかの形成部107および/または弾性の詰め物を含むことができる。
【0147】
本体202はまた、径方向内方へ延びるフランジ部分208を含み、フランジ部分208は、側壁204から径方向内方へ延びており、軸方向に、特に近位方向3へ、締結部分203、したがってレセプタクルセクション205の範囲を定めている。レセプタクルセクション205の反対側の遠位端には、実質上円筒形の側壁204から径方向内方へ延びるさらなるフランジセクション209が提供される。フランジセクション209は、遠位フランジセクション209であり、フランジセクション208は、近位フランジセクションである。近位フランジセクション208と遠位フランジセクション209との間の軸方向距離は、ダイヤル部材12の軸方向寸法に実質上等しい。近位フランジセクション208は、レセプタクルセクション205へのダイヤル部材12の挿入運動の範囲を定めるために、軸方向端面として作用および挙動する。挿入構成の端部に到達するとすぐ、遠位フランジセクション209は、ダイヤル部材12の遠位端の上に留まる。このようにして、本体202とダイヤル部材12との間の一種のクリップ連結が得られる。このようにして、ダイヤル部材12および本体202は、軸方向ならびに円周方向に相互に固定される。
【0148】
図2および
図4に示すデータ収集デバイス100の実施形態とは逆に、データ収集デバイス200は、トリガ11を受け入れるのに十分な大きさであるはずの軸方向貫通口を含まない。代わりに、本体202は、はるかに小さい貫通口206または孔を含み、貫通口206は、本体202に取り付けられたボタン240の軸244を受け入れるのに十分に大きく、軸244は、本体202に対して軸方向に変位可能である。本体202は、径方向中心部分内に凹部223を有する近位端面222を含む。凹部223は、やや円筒形の形状であり、ボタン240の近位端を受け入れるようにサイズ設定される。
図5および
図6に示す用量設定構成では、ボタン240、特に円板状のボタン端面242は、近位方向3に本体202の端面222から突出する。ボタン240は、遠位方向2に押下げ可能で
あり、それにより対応する遠位向きの圧力を注射デバイス1のトリガ11に加える。ボタン240は、遠位方向に延びる環状のカラー243を有する円板状のボタン端面242を含む。ボタン端面242の径方向中心部分は、本体202の対応する形状の貫通口206または孔を通って延びる軸244に連結または一体形成される。
【0149】
貫通口206は、中空のレセプタクルセクション205の内部へ延びる。
図6に示す構成では、ボタン240の遠位端部245は、軸方向に延びる棒状の軸244と比較すると、径方向に拡大されまたは径方向に広げられている。このようにして、径方向に広げられた端部セクション245は、本体202に対するボタン240の近位向きの変位の範囲を定める。他方の方向では、カラー243が凹部223の底部に軸方向に当接すると、カラー243は、本体202に対するボタン240の遠位向きの変位の範囲を定める。軸244、したがってボタン240全体が、本体202に対して自由に回転可能である。
【0150】
ボタン240の遠位端には、目盛りドラム260が提供される。目盛りドラムは、ボタン240に対して自由に回転可能である。目盛りドラムは、ボタン240から回転するようにデカップリングされる。ボタン240はまた、本体202から回転するようにデカップリングされる。ボタン240は、所定の軸方向マージン内で本体202に対して軸方向に変位可能である。ボタン240の遠位端部245は、目盛りドラム260に軸方向に固定される。目盛りドラム260およびボタン240の連結は、圧縮状態で固定される。本体202に対するボタン240の遠位向きの変位は、目盛りドラム260のそれぞれの遠位向きの変位へ等しく伝わる。目盛りドラム260は、遠位向きのドラム端面262を含み、ドラム端面262は、摩擦強化構造264または摩擦パッド266を備える。このようにして、摩擦強化構造264および/または摩擦パッド266によって、目盛りドラムをトリガ11に回転不能にロックすることができる。
【0151】
典型的には、目盛りドラム260は、環状または円筒形の側壁268を含み、側壁268は、センサ配置210のセンサ212と協働する目盛り214を備える。センサ112と同様に、センサ212もまた、レセプタクル205の内向き部分に位置する。センサ212はまた、側壁204に対して径方向内方へ位置合わせされる。
【0152】
さらに、目盛りドラム260とボタン240の遠位端部245との間に、回転支承部270が提供される。言い換えれば、回転支承部270は、目盛りドラム260とボタン240との間に軸方向に挟まれている。回転支承部によって、目盛りドラム260は、ボタン240に軸方向に固定されるが、ボタン240に対して自由に回転することができる。
【0153】
図6では、凹部223の底部上に位置するスイッチ230がさらに概略的に示されている。ボタン240が遠位方向2に押し下げられると、スイッチ230を押し下げて、電子構成要素、したがってデータ収集デバイスのプロセッサ配置50およびセンサ配置210のうちの少なくとも1つを起動することができる。ここで、スイッチ230は、感圧スイッチまたは圧力センサを含むことができる。ボタン240のカラー243がスイッチ230に軸方向に当接すると、スイッチ230を起動することができる。別法として、スイッチ230は、第1のスイッチ構成要素を含むことができ、ボタン240は、第2のスイッチ構成要素を含むことができ、第1および第2のスイッチ構成要素は、ボタン240が本体202に対して動かされると、相互作用してスイッチング信号を生成することができる。
【0154】
注射デバイス1によって実際に投薬された用量のサイズを検出および測定するために、プロセッサ配置50およびセンサ配置210は、目盛りドラム260に対する本体202の回転を検出および測定するように構成される。動作の際、目盛りドラム260は、トリガ11に回転不能にロックまたは回転不能に締結され、トリガ11自体は、少なくとも用
量投薬または用量排出処置中、ハウジング10に回転不能にロックされることが意図される。本体202、したがって本体202に堅く締結されたセンサ212は、用量投薬中にダイヤル部材12とともに回転する。目盛りドラム260は、トリガ11、したがってハウジング10に対して回転不能のままである。このようにして、センサ212は、目盛りドラム260の側壁268の外周を回転しながら、用量のサイズを定量的に測定するように構成される。用量投薬処置中、および用量投薬処置を開始するために、使用者は、ボタン240を遠位方向2に押し下げ、それによってトリガ11上へ圧力をかけることが必要とされ、それによりダイヤル部材12に対するトリガ11のそれぞれの押下げおよび遠位向きの変位が生じる。
【0155】
ボタン240、回転支承部270、および目盛りドラム260のアセンブリは、圧縮状態で固定されるため、ボタン240に作用するあらゆる遠位向きの力は、トリガ11へ直接的かつ不変に伝達される。加えて、遠位向きの圧力がボタン240に作用するため、ドラム端面262とトリガ端面11aとの間の摩擦は実質上増大し、したがってトリガ11と目盛りドラム260との間のあらゆる滑りまたは相対回転を事実上防止することができる。
【0156】
通常の使用状態下で、ボタン240は、使用者の親指によって押し下げられる。典型的には、ほとんどの場合、使用者の親指、したがってボタン240は、注射デバイス1のハウジング10に対する回転を受けない。しかし、たとえば注射処置が片手だけで行われるのではなく、注射処置が使用者の両手で行われるとき、ボタン240が用量投薬処置中に回転を受ける状況もあり得る。このとき、ボタン240を実際に押し下げる親指または任意の他の指が、ハウジング10に対して捩れたり回転したりすることがある。本実施形態では、目盛りドラム260はトリガ11に回転不能にロックされ、目盛りドラム260はボタン240から回転するようにデカップリングされているため、そのような回転は、本体202に対する目盛りドラム260の回転の測定に影響を与えない。
【0157】
スイッチ130、230は、機械スイッチとして実施することができる。さらに、スイッチ130、230は、本体102、202の外周上の他の場所に位置し、スイッチ130、230は、投薬処置を行う前に使用者によって手動で起動されることが考えられる。
【0158】
目盛り114、214は、トリガ側壁11bの外周上または目盛りドラム260の側壁268上に印刷することができる。目盛り114、214はまた、それぞれの側壁セクション上に刻印または彫刻することができる。さらに、目盛りは、所定の粒状化または格子サイズを有する内在する粗さを含み、センサ112、212は、フォトダイオードだけではなく発光ダイオード(LED)などの光源も含むことが考えられる。LEDは、目盛り114、214を照明することができ、目盛り114、214がセンサ112、212に対する運動または回転を受けるとき、スペックルパターンが動くにつれて、回転度を定量的に判定することを可能にする明確な構造または粒度を有するスペックルパターンが生じることができる。
【0159】
図7では、注射デバイス1を含む注射システム390の別の実施形態がさらに示されており、注射システム390は、注射デバイス1の近位端部に取り付けられた別のデータ収集デバイス300をさらに含む。
図5および
図6に関連して説明したデータ収集デバイス300と同様に、データ収集デバイス300はまた、締結部分303および側壁304を有する本体302を含み、注射デバイス1のダイヤル部材12を収納して受け入れるように構成された中空のレセプタクルセクション305を形成する。
図7には示されていないが、データ収集デバイス300はまた、プロセッサ配置50および電源54などの様々な電子構成要素を含む。上記と同じように、側壁304の内向きの側壁部分は、ダイヤル部材12に対する本体302の滑らない取付けを有効にするために、発泡ゴムパッドなど、
1つまたはいくつかの形成部107および/または弾性の詰め物を含むことができる。
【0160】
本体302はまた、径方向内方へ延びるフランジ部分308を含み、フランジ部分308は、側壁304から径方向内方へ延びており、軸方向に、特に近位方向3へ、締結部分303、したがってレセプタクルセクション305の範囲を定めている。レセプタクルセクション305の反対側の遠位端には、実質上円筒形の側壁304から径方向内方へ延びるさらなるフランジセクション309が提供される。フランジセクション309は、遠位フランジセクション309であり、フランジセクション308は、近位フランジセクションである。近位フランジセクション308と遠位フランジセクション309との間の軸方向距離は、ダイヤル部材12の軸方向寸法に実質上等しい。近位フランジセクション308は、レセプタクルセクション305へのダイヤル部材12の挿入運動の範囲を定めるために、軸方向端面として作用および挙動する。挿入構成の端部に到達するとすぐ、遠位フランジセクション309は、ダイヤル部材12の遠位端の上に留まる。このようにして、本体302とダイヤル部材12との間の一種のクリップ連結が得られる。このようにして、ダイヤル部材12および本体302は、軸方向ならびに円周方向に相互に固定される。
【0161】
データ収集デバイス200の本体202と同様に、データ収集デバイス300の本体302は、貫通口306または孔を含み、貫通口306は、本体302に取り付けられたボタン340の軸344を受け入れるのに十分に大きく、軸344は、本体302に対して軸方向に変位可能である。本体302は、径方向中心部分内に凹部323を有する近位端面322を含む。凹部323は、やや円筒形の形状であり、ボタン340の近位端を受け入れるようにサイズ設定される。
図7に示す用量設定構成では、ボタン340、特に円板状のボタン端面342は、近位方向3に本体302の端面322から突出する。ボタン340は、遠位方向2に押下げ可能であり、それにより対応する遠位向きの圧力を注射デバイス1のトリガ11に加える。
【0162】
ボタン340は、遠位方向に延びる環状のカラー343を有する円板状のボタン端面342を含む。ボタン端面342の径方向中心部分は、本体302の対応する形状の貫通口306または孔を通って延びる軸344に連結または一体形成される。
【0163】
貫通口306は、中空のレセプタクルセクション305の内部へ延びる。
図7に示す構成では、レセプタクルセクション305内に位置する軸244の一部分が、軸方向に延びる棒状の軸344と比較すると、径方向に拡大されまたは径方向に広げられたフランジ部分345を含む。フランジ部分345の径方向寸法は、貫通口306の直径より大きい。このようにして、フランジ部分345は、本体302に対するボタン340の近位向きの変位の範囲を定める。他方の方向では、カラー343が凹部323の底部に軸方向に当接すると、カラー343は、本体302に対するボタン340の遠位向きの変位の範囲を定める。軸344、したがってボタン340全体が、本体302に対して自由に回転可能である。
【0164】
ボタン340は、データ収集デバイス300がダイヤル部材12に取り付けられるとトリガ端面11aに軸方向に当接する先端セクション360を含む。先端セクション360は、ボタン340の遠位端を形成する。先端セクション360は、径方向に広げられたフランジセクション345から遠位に位置する。遠位の先端セクション360は、トリガ端面11aに対してかなり小さいまたはほとんど無視できるほどの接触面を有するスパイクを含むことができる。ボタン340およびトリガ11の安定した確実かつ明確な軸方向の当接のために、トリガ端面11aは、端部セクション360に対する明確な支持を形成する軸方向の凹部11dを含む。トリガ端面11aはまた、ボタン340の端部セクション360と連通する幾何学的な形状を有する軸方向のくぼみ11eを含むことができる。
【0165】
図7による実施形態では、センサ配置310は、軸方向に位置合わせされたセンサ312を含み、トリガ端面11a上に提供された目盛り314をさらに含む。目盛り314は、トリガ端面11aの外縁部上またはその付近の想像円に沿って延びるコードまたは別の視覚的に認識できる構造を含むことができる。目盛り314は近位方向3を向いており、センサ312は位置合わせされ、遠位方向2へ向けられる。典型的には、目盛り314は、トリガ端面11aの径方向中心またはくぼみ11eから規則的な距離に位置する。同様に、センサ312は、トリガ端面11aの中心から径方向のずれをあけて、また本体302の貫通口306から所与の径方向のずれをあけて位置する。センサ312は、本体302のレセプタクルセクション305を近位方向3へ軸方向に制限しまたは軸方向にその範囲を定める本体302の遠位向きの端面に位置する。
【0166】
ボタン340の端部セクション360は、トリガ端面11aの径方向中心に係合するため、ボタン340の遠位向きの推力および対応する遠位向きの変位は、ダイヤル部材12に対するトリガ11のそれぞれの遠位向きの動きをもたらす。
図7から明らかなように、側壁304の内向きの側壁セクションとトリガ11の外向きの側壁11bとの間に少なくとも小さい間隙が提供される。加えて、ボタン340およびトリガ11の径方向中心の当接により、トリガ11は、この場合も遠位方向に押し下げられたとき、傾斜運動を受けない。用量を排出するためにトリガ11が押し下げられたとき、ダイヤル部材12の近位端面とトリガ側壁11bとの間に間隙が生じることもできる。このようにして、トリガ11は、本体302およびダイヤル部材12に対して非接触の構成とすることができる。ダイヤル部材12がデータ収集デバイス300の本体302とともに回転するとき、トリガ11と本体302またはダイヤル部材12のいずれか1つとの間に摩擦は実質上生じない。ボタン340およびトリガ11に作用する遠位向きの推力は、トリガ11を注射デバイス1の駆動または排出機構8のさらなる構成要素に摩擦係合させることができる。
【0167】
ボタン340とトリガ11との間に提供される接触面は、かなり小さくほとんど無視できるほどであるため、ボタン340は、トリガ11上に回転不能に支持される。先端セクション360とトリガ11との間の摩擦力は、ほぼ無視できるほどである。実際には、先端セクション360により、データ収集デバイス300がダイヤル部材12に取り付けられたとき、ボタン340は、トリガ11から事実上回転するようにデカップリングされる。用量排出処置中、ボタン340は、トリガ11に対する回転を受けることができる。そのような回転運動は、センサ配置310によって行われる測定に影響を与えないはずである。
【0168】
図5および
図6に示すデータ収集デバイス200の実施形態と比較すると、
図7に示すデータ収集デバイス300の実施形態には、目盛りドラム260がない。したがって、
図7によるデバイス300は、デバイス200と比較すると、低減された軸方向の延長を含むことができる。ボタン340の先端セクション360は、データ収集デバイス300の構成要素の総数を制限し、その全体的な寸法を低減させることが有益である。
【0169】
図8および
図9により詳細に示す排出または駆動機構8は、多数の機械的に相互作用する構成要素を含む。ハウジング10のフランジ状の支持体は、ねじ付の軸方向貫通口を含み、この貫通口は、ピストンロッド20の第1のねじ山または遠位ねじ山22にねじ係合する。ピストンロッド20の遠位端は、支承部21を含み、支承部21上では押さえ23が、ピストンロッド20の長手方向軸を回転軸として自由に回転することができる。押さえ23は、カートリッジ6の栓7の近位向きの推力受け面に軸方向に当接するように構成される。投薬動作中、ピストンロッド20は、ハウジング10に対して回転し、それによってハウジング10、したがってカートリッジ6のバレル25に対する遠位向きの前進運動を受ける。その結果、カートリッジ6の栓7は、ピストンロッド20とハウジング10とのねじ係合により、明確な距離だけ遠位方向2に変位する。
【0170】
ピストンロッド20は、第2のねじ山24をその近位端にさらに備える。遠位ねじ山22および近位ねじ山24は、反対側に位置する。
【0171】
さらに、駆動スリーブ30が提供され、駆動スリーブ30は、ピストンロッド20を受け入れるための中空の内部を有する。駆動スリーブ30は、ピストンロッド20の近位ねじ山24にねじ係合する内側のねじ山を含む。さらに、駆動スリーブ30は、外側ねじ付セクション31をその遠位端に含む。ねじ付セクション31は、遠位フランジ部分32と、遠位フランジ部分32から所定の軸方向距離をあけて位置する別のフランジ部分33との間で、軸方向に制限される。2つのフランジ部分32、33間には、駆動スリーブ30のねじ付セクション31に嵌合する雌ねじを有する半円形ナットの形態で、最終用量制限部材(last dose limiting member)35が提供される。
【0172】
最終用量制限部材35は、径方向の凹部または突起をその外周にさらに含み、この凹部または突起は、ハウジング10の側壁の内側に位置する相補形の凹部または突起に係合する。このようにして、最終用量制限部材35は、ハウジング10にスプライン連結される。連続する用量設定処置中の用量増分方向4または時計回り方向における駆動スリーブ30の回転は、駆動スリーブ30に対する最終用量制限部材35の累積的な軸方向変位をもたらす。さらに、フランジ部分33の近位向き表面に軸方向に当接する環状ばね40が提供される。さらに、管状のクラッチ部材60が提供される。クラッチ部材60は、第1の端部に、一連の円周方向に向けられた鋸歯を備える。クラッチ部材60の第2の反対側の端部には、径方向内方へ向けられたフランジが位置する。
【0173】
さらに、数字スリーブ80としても示されている用量ダイヤルスリーブが提供される。数字スリーブ80は、ばね40およびクラッチ部材60の外側に提供され、ハウジング10の径方向内方へ位置する。数字スリーブ80の外面の周りには、螺旋溝81が提供される。ハウジング10は、投与量窓13を備えており、投与量窓13を通して、数字スリーブ80の外面の一部を見ることができる。ハウジング10は、挿入片62の内側壁部分に、螺旋リブをさらに備え、螺旋リブ63は、数字スリーブ80の螺旋溝81内に着座される。管状の挿入片62は、ハウジング10の近位端へ挿入される。挿入片62は、ハウジング10に回転不能に、および軸方向に固定される。数字スリーブ80がハウジング10に対して螺旋運動で回転する用量設定処置を制限するために、ハウジング10上に第1および第2の止め具が提供される。
【0174】
用量ダイヤルグリップの形態の用量部材12が、数字スリーブ80の近位端の外面の周りに配置される。用量部材12の外径は、典型的には、ハウジング10の外径に対応および一致する。用量部材12は、用量部材12と数字スリーブ80との間の相対運動を防止するために、数字スリーブ80に固定される。用量部材12は、中心開口部を備える。
【0175】
トリガ11は、用量ボタンとしても示されており、実質上T字形である。トリガ11は、注射デバイス1の近位端に提供される。トリガ11のステム64が、用量部材12内の開口部を通り、駆動スリーブ30の延長部の内径を通って、ピストンロッド20の近位端に位置する受入れ凹部内へ延びる。ステム64は、駆動スリーブ30内の軸方向運動を制限し、駆動スリーブ30に対する回転を防ぐように保持される。トリガ11のヘッド11cは、略円形である。トリガ側壁11bまたはスカートが、ヘッド11cの周辺部から延び、用量部材12の近位にアクセス可能な環状凹部内に着座するようにさらに適用される。
【0176】
用量をダイヤル設定するために、使用者は用量部材12を回転させる。ばね40もクリッカとして作用し、クラッチ部材60が係合されたとき、駆動スリーブ30、ばねまたは
クリッカ40、クラッチ部材60、および数字スリーブ80は、用量部材12とともに回転する。用量がダイヤル設定されたという可聴および触覚フィードバックが、ばね40およびクラッチ部材60によって提供される。鋸歯を通ってばね40とクラッチ部材60との間でトルクが伝達される。数字スリーブ80上の螺旋溝81および駆動スリーブ30内の螺旋溝は、同じリードを有する。これにより、数字スリーブ80がハウジング10および駆動スリーブ30から延びて、同じ速度でピストンロッド20を上がることが可能になる。行程の限界では、数字スリーブ80上の径方向止め具が、ハウジング10上に提供された第1の止め具または第2の止め具に係合して、さらなる動きを防止する。ピストンロッド20の回転は、ピストンロッド20上の全体的な駆動ねじ山の方向が逆になっているために防止される。
【0177】
ハウジング10に掛止された最終用量制限部材35は、駆動スリーブ30の回転によってねじ付セクション31に沿って前進される。最終用量投薬位置に到達すると、最終用量制限部材35の表面上に形成された径方向止め具が、駆動スリーブ30のフランジ部分33上の径方向止め具に当接し、最終用量制限部材35および駆動スリーブ30の両方がさらに回転することを防止する。
【0178】
使用者が不注意で所望の投与量を超えてダイヤル設定した場合、ペン注射器として構成された注射デバイス1は、薬剤をカートリッジ6から投薬することなく、投与量を下方へダイヤル設定することを可能にする。このため、用量部材12は、簡単に逆回転される。これにより、システムは逆に作用する。次いで、ばねまたはクリッカ40の可撓アームが、ばね40が回転するのを防止するラチェットとして作用する。クラッチ部材60を通って伝達されるトルクにより、鋸歯が互いを載り越え、ダイヤル設定された用量の低減に対応するクリックを生み出す。典型的には、鋸歯は、各鋸歯の円周方向の範囲が単位用量に対応するように配置される。
【0179】
所望の用量がダイヤル設定されたとき、使用者は、トリガ11を押し下げることによって、設定された用量を簡単に投薬することができる。これにより、クラッチ部材60を数字スリーブ80に対して軸方向に変位させ、その鋸歯を係合解除させる。しかし、クラッチ部材60は、回転に関して駆動スリーブ30に掛止されたままである。数字スリーブ80および用量部材12はここで、螺旋溝81に応じて自由に回転することができる。
【0180】
軸方向運動は、ばね40の可撓アームを変形させて、投薬中に鋸歯が緩まないことを確実にする。これにより、駆動スリーブ30がハウジング10に対して依然として軸方向に自由に動くことができるのに対して、駆動スリーブ30がハウジング10に対して回転することが防止される。後に、遠位向きの投薬圧力がトリガ11から除去されたとき、この変形を使用して、ばね40およびクラッチ部材60を駆動スリーブ30に沿って逆方向に付勢し、クラッチ部材60と数字スリーブ80との間の連結を回復する。
【0181】
駆動スリーブ30の長手方向の軸方向運動は、ハウジング10の支持部の貫通口を通ってピストンロッド20を回転させ、それによってカートリッジ6内で栓7を前進させる。ダイヤル設定された用量が投薬された後、数字スリーブ80は、用量部材12から延びる複数の部材と対応する複数の止め具との接触によって、さらなる回転が防止される。数字を示すスリーブ80の部材の軸方向に延びる縁部のうちの1つと、ハウジング10の対応する止め具との当接によって、ゼロ用量位置が最終的に判定される。
【0182】
上述した排出機構または駆動機構8は、使い捨てのペン注射器内で概して実施可能な複数の異なる構成の駆動機構のうちの1つに対する単なる例示である。上述した駆動機構は、たとえば、WO2004/078239A1、WO2004/078240A1、またはWO2004/078241A1により詳細に説明されている。これらの文献全体を、
参照により本明細書に組み入れる。
【0183】
図8に示す注射デバイスは、WO2004/078239A1、WO2004/078240A1、またはWO2004/078241A1のいずれかに記載されているデバイスと比較すると、さらなる機能を有する。ここで、トリガ11は、軸方向に細長いステム64の底部またはその付近に、径方向に広げられた肩部セクション69を有する。肩部セクション69は、遠位向きの端面67を含む。遠位端面67は、歯状構造68を備える。遠位端面67は、たとえば、駆動スリーブ30の対応する形状の歯状構造38に係合する冠歯車セクションを含むことができる。歯状構造38は、駆動スリーブ30の近位端または近位端面37に位置することができる。駆動スリーブ30の近位端はまた、トリガ11の径方向に広げられた肩部セクション69と協働動作する径方向に広げられた肩部36を含むことができる。
【0184】
加えて、ボタン11とダイヤル部材12との間に軸方向に位置する圧縮ばね39を提供することができる。このようにして、トリガ11は、ばね39の作用に逆らって遠位方向2に押下げ可能である。初期構成または用量設定構成では、歯状構造38および68間に小さい間隙が提供され、したがってトリガ11は、ダイヤル部材12から回転するようにデカップリングされる。用量の投薬のためにトリガ11を遠位方向2に押し下げたとき、トリガ11は、ばね39の作用に逆らって、ダイヤル部材12に対して遠位方向2に動かされる。次いで、歯状構造38および68のため、トリガ11は、駆動スリーブ30に回転不能にロックされる。それらの排出または用量投薬中、駆動スリーブ30はハウジング10に回転不能にロックされるため、トリガ11はまた、用量投薬動作中にハウジング10に回転不能にロックされる。
【0185】
トリガ11を解放するとき、ばね39は、トリガ11を近位方向3にダイヤル部材12から離れる方へ変位させる働きをする。次いで、駆動スリーブ30とトリガ11との間の回転インターロックがなくなり、トリガ11は、駆動機構8が用量設定モードにある限り、ハウジング10およびダイヤル部材12に対して自由に回転可能となることができる。
【0186】
相互に対応する歯状構造38および68の代わりに、駆動スリーブ30の近位端面37および遠位端面67、ならびにトリガ11は、摩擦強化表面仕上げを備えることができる。次いで、用量投薬中、摩擦係合によって、トリガ11を駆動スリーブ30に回転不能にロックすることができる。別の実施形態では、トリガ11は、たとえばスプライン連結係合によって、駆動スリーブ30に恒久的に回転不能にロックすることができる。
【0187】
図8で、トリガ11と駆動スリーブ30との間の回転インターロックを提供するさらなる実施形態が示されている。歯状構造38および68の代わりに、トリガ11のステム64の外周上に歯状またはスプライン連結構造168を提供することができ、歯状またはスプライン連結構造168は、駆動スリーブ30の内向きの側壁セクションに位置する対応する形状の歯状またはスプライン連結構造138に回転不能に係合する。トリガ11の歯状またはスプライン連結構造168は、駆動スリーブ30の歯状またはスプライン連結構造138から軸方向のずれをあけて配置することができる。トリガ11を遠位方向2の方へ押し下げたとき、歯状またはスプライン連結構造168は、歯状またはスプライン連結構造138に係合し、それによってトリガ11を駆動スリーブ30に回転不能にインターロックすることができる。
【0188】
別法として、トリガ11および駆動スリーブ30は、歯状またはスプライン連結構造168および138によって恒久的にインターロックされることも考えられる。一例として、歯状またはスプライン連結構造138、168のうちの一方が、径方向に延びるピンを含むことができ、このピンは、スプライン連結構造138、168のうちの他方の対応す
る形状の溝に軸方向に摺動可能に係合される。このようにして、トリガ11および駆動スリーブ30を恒久的に回転不能にロックすることができる。
【0189】
図10に示す注射デバイスは、
図9に示す注射デバイスと実質上同一である。用量の投薬中にトリガ11と注射デバイスの外側ハウジング10との間の回転連結を実現するために、
図8に示す例と比較するといくつかの修正がある。
【0190】
図10に関連して
図18~20に示すように、クラッチ60は、駆動スリーブ30と用量ダイヤル12との間に径方向に挟まれており、その近位端にはいかなる軸方向の突起もない。
図20に示すように、クラッチ60の近位上向き端は、管状の側壁61を含み、側壁61は、軸方向を向いている多数の歯61aを有しており、歯61aは、クラッチ60の近位端面に歯状リムを形成する。ここで、様々な歯61aの先端は、クラッチ60の近位端面に一致する。
【0191】
クラッチ60のこの構成により、トリガ11と駆動スリーブ30との間の直接的な回転係合が有効になる。
図18に示すように、駆動スリーブ30は、2つの両側に位置するキーイング機能(keying feature)41、42を含み、2つの両側に位置する凹部43が、キーイング機能41、42間に円周方向に配置される。凹部43は、駆動スリーブ30の近位端で互いに直径に沿って反対側に位置する。キーイング機能41、42は、2つの長手方向に延びる脚部を含み、これらの脚部は、駆動スリーブの近位端の方へ開いている長手方向に延びるスリット状の凹部43を囲む。トリガ11は、
図19に示すように、円形のヘッド11cおよび環状のトリガ側壁11bを含む。
図10に示すように、ヘッド11cの径方向中心には、トリガステム64が軸方向に突出する。
【0192】
トリガステム64は、直径に沿って両側に位置する2つのキーイング機能64aを含む。キーイング機能64aは、
図18に示すように、キーイング機能41、42間の凹部43に嵌るようにサイズ設定および成形される。キーイング機能64aの円周方向の延長部は、凹部43の円周方向または接線方向の延長部に嵌合する。このようにして、ボタン11は、駆動スリーブ30に回転不能にロックすることができる。用量排出動作中、駆動スリーブ30は、ハウジング10に対する長手方向変位を受けるが、ハウジング10に対して回転することは妨げられる。このようにして、駆動スリーブ30とトリガ11との間のトルクに耐える係合により、トリガ11もまた、注射デバイス1の用量排出動作中にハウジング10に対して回転することが妨げられる。
【0193】
図16で、トリガ11は、反対の外側から示されている。トリガ11は、近位向きのトリガ端面11aを含む円板状のトリガヘッド11cを含む。トリガ端面11aは、トルク伝達カウンタ構造462を含む。トルク伝達カウンタ構造462は、トリガ端面11aの一方の外縁部から円板状のトリガ端面11aの反対側の外縁部へ延びる細長い凹状スロットを含む。
【0194】
トリガ端面11aの径方向中心内には、ボタンステムレセプタクル460が提供される。ボタンステムレセプタクル460は、トルク伝達カウンタ構造462の長手方向または径方向中心内に位置する。
図16に示すように、トルク伝達カウンタ構造462は、両側に位置する長手方向側縁部463を含み、長手方向側縁部463は、
図10~15に関連して詳細に説明するデータ収集デバイス400のボタン440の底部セクション445の外側から突出するトルク伝達構造452の対応する形状の側縁部に係合するように構成される。
【0195】
ボタンステムレセプタクル460は、軸方向に円錐形のプロファイルを含むことができる。ボタンステムレセプタクル460は、
図10に示すように、遠位方向2へ先細りし、
したがって細くなっている形状を含むことができる。
図15に示すように、ボタン440の底部セクション445上には、対応して先細りしたまたは円錐形の形状を含むボタンステム450を提供することができる。ボタンステム450は、注射デバイスの近位端、したがってダイヤル部材12にデータ収集デバイス400を組み立てたとき、ボタンステムレセプタクル460内へ嵌るようにサイズ設定される。
図16にさらに示すように、トリガ11はまた、貫通口466を含み、貫通口466は、貫通口466を通ってピン456を受け入れるように成形および構成される。
【0196】
たとえばダイヤルボタンの形態のダイヤル部材12が、
図17に示されている。ダイヤル部材12は、外側カラーを含み、外側カラーは、多数の長手方向に延びる径方向に突出するリブ12aと、それらのリブ12a間に位置する長手方向に延びる溝12bとを備える。リブおよび溝12a、12bの配置は、ダイヤル部材12の固有の符号化を提供し、データ収集デバイス400の本体402の対応して符号化された側壁404に係合する。このようにして、データ収集デバイス400の側壁404および本体402は、ダイヤル部材12に滑らないように組み立てることができ、データ収集デバイスの本体402がダイヤル部材12に組み立てられているときにハウジング10に対する回転を受けたとき、ダイヤル部材12へのトルクの滑らない伝達を有効にすることができる。本体402の外側には、本体402の滑らない把持を有効にする多数の軸方向に延びる突起および/または溝を特色とする把持面408が提供される。
【0197】
図17では、ダイヤル部材12がその近位端から示されている。ダイヤル部材12は、トリガ11の外縁部に提供された遠位向きの側壁11bを受け入れるための溝状の環状レセプタクル12cを含む。
【0198】
ダイヤル部材12の外周上のリブ12aおよび溝12bの形状および構造は固有であり、データ収集デバイス400の本体402の側壁404の内側に同一に提供される対称破壊機能を含む。このようにして、データ収集デバイス400および本体402は、単一または固有の向きでのみダイヤル部材12に組み立てることができることが実現される。
【0199】
溝12bおよび突起12aは、
図11に示す側壁404の対応する形状の突起420に係合されたとき、回転連結を確実にする。そこで、側壁404は、多数の径方向内方へ延びかつ軸方向に細長い突起420を含み、各突起420は、ダイヤル部材12の溝12bに係合するように構成される。
【0200】
図10にさらに示すように、本体402の側壁404は、側壁404の遠位端に隣接して細長いスリット404aを含む。スリット404aは、側壁404を外側セクション404bおよび内側セクション404cに分割する。内側セクション404cは、径方向内方へ延びる突起を側壁404の内側に含み、この突起は、ダイヤル部材12の外面上の対応する形状の凹部12dに係合する。
【0201】
凹部12dは、突起404dを受け入れるような形状である。突起404dは、凹部12dにスナップ嵌めすることができる。凹部12dは、細長いリブ12aのうちの1つの遠位端に位置することができる。突起404dが凹部12dに係合することによって、本体402は、ダイヤル部材12に軸方向に係合する。加えて、ダイヤル部材12の外面の形状および側壁404の内面の形状は、データ収集デバイス400をダイヤル部材12の上に被せたとき、側壁404とダイヤル部材12との間の摩擦係合を有効にするように構成することができる。
【0202】
たとえば、ダイヤル部材12および/または突起12aは、本体402とダイヤル部材12との間の摩擦嵌めまたはクランプ嵌めを有効にして支持するように比較的高い摩擦係
数を示す、ゴム材料などのエラストマ材料を含むことができる。
【0203】
本体402の多数の突起420の数、形状、および向きは、ダイヤル部材12の溝12bの形状、サイズ、および位置または向きに一致する。このようにして、データ収集デバイス400がダイヤル部材12に組み立てられたとき、本体402とダイヤル部材12との間に、滑らない回転連結を確立することができる。突起420は、本体402の締結部分403を形成または構成する。側壁404の内面は、用量部材12の外面に係合するレセプタクルセクション405を形成する。
【0204】
データ収集デバイス400は、注射デバイス1のダイヤル部材12に取り付けられるように構成された本体402を含む。データ収集デバイス400は、本体402に取り付けられたボタン440をさらに含む。ボタン440は、本体402に対して軸方向に変位可能である。ボタン440は、本体402に摺動係合する。ボタン440は、本体402に対して自由に回転することができる。ボタン440は、実質上平面状の底部セクション445および円周方向の側壁444を有するカップ状の底部部材を含む。側壁444は、管状または円筒形の形状である。側壁444は、底部セクション445と一元的または一体的に形成される。
【0205】
頂部または近位方向に向かって、側壁444は、径方向外方へ延びるカラー443を含む。カラー443の半径または外周は、本体402の近位端面422に提供された貫通口または凹部423の直径より大きい。側壁444は、本体402の近位端面422に提供された凹部423または貫通口に嵌るようにサイズ設定された外形および断面を含む。このようにして、底部セクション445は、カラー443が本体402の近位端面422に軸方向に当接するまで、本体402内へ軸方向に案内して動かすことができる。
【0206】
ボタン440は、
図13に示すように、センサハウジング338を形成する。底部セクション445および側壁444は、データ収集デバイス400の電子構成要素の全体を受け入れるための中空のレセプタクルを形成する。センサハウジング338、したがってボタン440は、蓋として働く平面状の頂部441で覆われている。頂部441は、ボタン440、したがってセンサハウジング338の内部を封止することができる。側壁444は、少なくとも1つまたはいくつかの径方向内方へ突出するフランジ部分436を含み、フランジ部分436は、
図14に示すように、カラー443からセンサハウジング338の内部に径方向内方へ延びる。これらの径方向内方へ突出するフランジ部分436は、カラー443の近位端面から所定の距離をあけて位置する。この所定の距離は、頂部441の材料厚さに実質上等しい。頂部441または蓋は、円周方向に分散させたフランジ状の突起436上に軸方向に当接するように構成される。これにより、外面、したがってボタン端面442と周囲カラー443との同一平面に取り付けられた組立てが有効になる。
図10に示すように、あらゆる圧力を、ボタン440の内部に位置する電子構成要素から遠ざけることができる。
【0207】
ボタン440の底部セクション445は、センサ412と位置合わせされた少なくとも1つの貫通口または窓434を含む。センサ412は、光送信器および受信器として実施することができる。センサ412は、発光ダイオード(LED)およびフォトダイオードを含むことができる。貫通口434の上に貫通口434と軸方向に位置合わせされたセンサ412の配置により、貫通口434の下に位置する目盛り414への邪魔されないアクセスまたは視界が可能になる。目盛り414は、
図12および
図13に示すように、目盛り盤415を含む。目盛り盤415は、金属またはプラスチック盤を含むことができる。目盛り盤415は、内縁部418を有する中心の円形貫通口419を含む。内縁部418に向かって、多数の突起418aおよび凹部418bが提供される。突起418aおよび凹部418bは、内縁部418の円周に沿って交互に配置される。目盛り盤415は、金
属スタンピングまたはプラスチック成形プロセスから形成することができる。典型的には、センサ412は、赤外スペクトル範囲内で動作する。このため、目盛り盤415、少なくともその突起418aが、赤外スペクトル範囲内で比較的高い反射率を含むと有益である。
【0208】
径方向内方へ延びる1つおきの突起418aが、軸方向に約90°曲げられた自由縁部419cを含む。このようにして、目盛り盤415の軸方向総寸法が、内縁部418の領域内でやや拡大される。外縁部に沿って、目盛り盤415は、多数の径方向の凹部416および突起417を含む。凹部416は、本体402の側壁404の内側の突起420に一致する。このようにして、目盛り盤415は、側壁404、したがって本体402に対して長手方向に摺動するように構成される。
【0209】
底部セクション445の外側または下側には、平面状の底部セクション445から突出する円形のソケットセクション446が提供される。ソケットセクション446は、目盛り盤415の内縁部418上の突起418aを受け入れるように構成された円周方向の溝447を含む。溝447の軸方向寸法は、目盛り盤415の曲げられた自由縁部418cの軸方向の延長または寸法に一致する。このようにして、わずかな数の曲げられた部分418cによって、目盛り盤415をボタン440のソケットセクション446に軸方向に固定することができる。このようにして、目盛り盤415、したがって目盛り414は、ボタン440に軸方向に抑制される。径方向の突起418aの曲げられた部分または曲げられた自由縁部418cは、目盛り盤415をボタン440の底部セクション445の外面に近位方向3に付勢する働きをする軸方向保持機能として作用する。これにより、センサ412と目盛り盤415との間の制御された軸方向の間隙が確実になる。
【0210】
目盛り盤415は、ボタン440が本体402に対して軸方向に変位すると、本体402に沿って自由に摺動することができる。長手方向の突起420を受け入れる凹部416を介して、目盛り盤415、したがって目盛り414は、本体402に回転不能にロックされる。
【0211】
図12には、多数、たとえば10個の突起418aが示されており、突起418aは、等しい数の凹部418bと円周方向または接線方向に交互に位置する。このようにして、交互の突起418aおよび凹部418bが、センサ412の径方向位置と重複する径方向位置に位置するバイナリフラグを提供する。目盛り盤415に軸方向に隣接して位置するセンサ412は、目盛り盤415がセンサ412に対する回転を受けると、内縁部418、したがって交互の突起418aおよび凹部418bに向けられる。たとえば、10対の交互の突起418aおよび凹部418bという数は、1回転当たり20単位の分解能を提供する。
【0212】
図10にさらに示すように、目盛り盤415の外縁部、したがって外側突起417は、側壁404の近位端付近に提供された内方へ延びるフランジ424に軸方向に当接するように構成される。このようにして、このフランジ424が遠位方向を指す面法線を含むため、目盛り盤415は、本体402の近位端に提供された凹部または貫通口423を通過することが妨げられる。その限りにおいて、目盛り盤415は、2重の機能を提供する。目盛り盤415は、回転符号器として働き、かつ本体402からのボタン440の分解を防止する。
【0213】
図15にさらに示すように、ソケットセクション446は、径方向に広げられた円板部分448を含み、円板部分448は面取り縁部449を有する。円板部分448は、底部セクション445から所定の軸方向距離をあけて位置する。この軸方向距離は、溝447の軸方向の幅を画成する。面取り縁部449により、目盛り盤415と溝447とのスナ
ップ嵌め係合が有効になる。
【0214】
底部セクション445の外面には、ソケットセクション446から軸方向に突出する細長いスロットの形態のトルク伝達構造452がさらに提供され、トルク伝達構造452は、ソケットセクション446をすべて横切って径方向に延びる。トルク伝達構造452は、両側に位置する側面453を含む。トルク伝達構造452は、対応して、トリガ11のトルク伝達カウンタ構造462に相補形である。
【0215】
注射システム490が適当に組み立てられ、データ収集デバイス400が注射デバイス1の近位端に正確に取り付けられたとき、トルク伝達構造452は、トルクに耐えてトルク伝達カウンタ構造462に係合する。ここで、側面453および463は直接当接し、トリガ11およびボタン440のインターフェースを介して角運動量またはトルクを伝達する。相互に係合するトルク伝達構造452、462、したがって相互に係合する突出および凹状スロットによって、ボタン440およびトリガ11のトルクに耐える係合が得られる。このようにして、ボタン440は、注射デバイスの用量排出動作中に回転することが妨げられる。
【0216】
トルク伝達構造452の径方向中心には、やや円錐形の構造を含むボタンステム450が提供され、ボタンステム450は、平面の底部セクション445から離れてさらに遠位に延びる。ボタンステム450は、トリガ11内に提供された対応する形状のボタンステムレセプタクル460に係合するように構成される。ボタンステムレセプタクル460は、少なくとも部分的に中空のスタッド64内に形成される。ボタンステムレセプタクル460の内面は、円錐形の形状である。相互に円錐形のボタンステム450および対応する形状のボタンステムレセプタクル460は、注射システム490の組立て中、すなわちデータ収集デバイス400を注射デバイス1に取り付けるとき、ボタンステム450がボタンステムレセプタクル460内へ挿入されると、自己中心合わせを確立するように構成される。トルク伝達構造452は、雄型スロット機能を含み、トリガ11およびトルク伝達カウンタ構造462は、対応する形状の雌型スロット機能を含む。ボタンステムは、トリガ11に対するボタン440の同軸中心合わせを提供するように構成された雄型スピゴットを含むことができる。
【0217】
図10および
図15にさらに示すように、ボタン440の底部セクション445上に可撓アーム455が提供される。可撓アーム455は、軸方向に延びるピン456を有する自由端を含む。ピン456は、
図16に示すように、トリガ11内に提供されたさらなる貫通口466を通って延びるように成形および構成される。レセプタクル466から突出するピン456は、
図10にも示されている。
図10に示すように、ピン456の遠位端は、ボタン440が近位状態、したがって用量ダイヤル設定状態にあるときでも、ダイヤル部材12に軸方向に当接する。ピン456は、データ収集デバイス400の電子構成要素をオンまたはオフに切り換えるように構成されたスイッチ430に動作可能に連結される。
【0218】
ボタン440が遠位方向2に、したがって
図10の下方へ押し下げられたとき、ボタン440およびボタンセクション445は、トリガ11に遠位向きの圧力をかけ、それによって用量排出動作を引き起こす。この運動により、ピン456をダイヤル部材12に対して遠位方向にこれ以上変位させることができなくなる。代わりに、ピン456は、ボタン440内に位置するスイッチ430内の接点を開閉する。ダイヤル部材12との軸方向の当接により、ピン456は遠位方向にこれ以上変位させることができないのに対して、ボタン440はハウジング10に対して遠位方向2に変位されるため、ピン456はボタン440に対して近位方向3に動く。
【0219】
センサ配置410は、プリント回路基板(PCB)を含む。PCBは、表面実装構成要素を有する剛性タイプとすることができる。PCBは、コインセルまたはボタン電池を含むことができる。
【0220】
スイッチ430は、マイクロスイッチを含むことができる。ピン456がボタン440に対する近位向きの変位を受けると、データ収集デバイス400の電子構成要素、特にプロセッサ配置50およびセンサ配置410が起動される。ダイヤル部材12が用量排出動作中に回転し始めると、ボタン440は回転しなくなり、本体402とのスプライン連結によってダイヤル部材12に回転不能に連結されたコード付きの目盛り盤415は、センサ412に対して回転する。
【0221】
センサハウジング338内には、2つの別個の光センサを提供することができる。2つのセンサ412は、目盛り盤415の回転中に回転の方向を検出し、状態変化の数を計数するために、マイクロコントローラなどのプロセッサ配置50によって処理可能な増分直交信号を提供するように構成することができる。
【符号の説明】
【0222】
1 注射デバイス
2 遠位方向
3 近位方向
4 用量増分方向
5 用量減分方向
6 カートリッジ
7 栓
8 駆動機構
10 ハウジング
11 トリガ
11a トリガ端面
11b トリガ側壁
11c ヘッド
11d 凹部
11e くぼみ
12 ダイヤル部材
12a リブ
12b 溝
12c レセプタクル
12d 凹部
13 投与量窓
14 カートリッジホルダ
15 注射針
16 内側ニードルキャップ
17 外側ニードルキャップ
18 保護キャップ
20 ピストンロッド
21 支承部
22 第1のねじ山
22a ディスプレイ
23 押さえ
24 第2のねじ山
25 バレル
26 封止部
28 ねじ付ソケット
30 駆動スリーブ
31 ねじ付セクション
32 フランジ
33 フランジ
35 最終用量制限部材
36 肩部
37 近位端面
38 歯状構造
39 ばね
40 ばね
41 キーイング機能
42 キーイング機能
43 凹部
50 プロセッサ配置
52a メモリユニット
52b メモリユニット
53 スイッチ
54 電源
55 タイマ
56a 磁石
56b 磁石
57 出力
59 接続
60 クラッチ部材
61 側壁
61a 歯
62 挿入片
63 リブ
64 ステム
64a キーイング機能
65 外部電子デバイス
66 データ接続
67 遠位端面
68 歯状構造
69 肩部セクション
71a 形成部
71b 形成部
71c 形成部
80 数字スリーブ
90 ダイヤル延長部
100 データ収集デバイス
102 本体
103 締結部分
104 側壁
105 レセプタクルセクション
106 貫通口
107 形成部
108 フランジ部分
109 延長部
110 センサ配置
112 センサ
114 目盛り
130 スイッチ
131 スイッチ構成要素
132 スイッチ構成要素
138 歯状セクション
168 歯状セクション
190 注射システム
200 データ収集デバイス
202 本体
203 締結部分
204 側壁
205 レセプタクルセクション
206 貫通口
208 フランジ部分
209 フランジ部分
210 センサ配置
212 センサ
214 目盛り
222 端面
223 凹部
230 スイッチ
240 ボタン
242 ボタン端面
243 カラー
244 軸
245 端部セクション
260 目盛りドラム
262 ドラム端面
264 摩擦強化構造
266 摩擦パッド
268 側壁
270 回転支承部
290 注射システム
300 データ収集デバイス
302 本体
303 締結部分
304 側壁
305 レセプタクルセクション
306 貫通口
308 フランジ部分
309 フランジ部分
310 センサ配置
312 センサ
314 目盛り
322 端面
323 凹部
314 目盛り
340 ボタン
342 ボタン端面
343 カラー
344 軸
345 フランジ部分
360 端部セクション
390 注射システム
400 データ収集デバイス
402 本体
403 締結部分
404 側壁
404a スリット
404b 外側セクション
404c 内側セクション
404d 突起
405 レセプタクルセクション
406 貫通口
408 把持面
410 センサ配置
412 センサ
414 目盛り
415 目盛り盤
416 凹部
417 突起
418 内縁部
418a 突起
418b 凹部
418c 曲げられた部分
419 貫通口
420 突起
422 端面
423 凹部
424 フランジ
430 スイッチ
436 突起
438 センサハウジング
440 ボタン
441 頂部
442 ボタン端面
443 カラー
444 側壁
445 底部セクション
446 ソケットセクション
447 溝
448 円板部分
449 面取り縁部
450 ボタンステム
452 トルク伝達構造
453 側面
455 可撓アーム
456 ピン
460 ボタンステムレセプタクル
462 トルク伝達カウンタ構造
463 側面
466 貫通口
490 注射システム