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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】管理装置および依頼方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20231204BHJP
【FI】
G06Q10/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022505014
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2021001671
(87)【国際公開番号】W WO2021176867
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2020037545
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】関 善裕
(72)【発明者】
【氏名】小泉 信宏
(72)【発明者】
【氏名】中島 愛華
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-162584(JP,A)
【文献】特開2009-168730(JP,A)
【文献】国際公開第2013/065528(WO,A1)
【文献】特開2007-198986(JP,A)
【文献】国際公開第2019/064398(WO,A1)
【文献】特開2019-045446(JP,A)
【文献】特開2008-190957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の分析を行う複数の分析装置と、前記複数の分析装置が測定に使用する試薬または、前記試薬の校正/精度管理処理に使用する校正/精度管理試料を保管する保管庫とが配置される臨床検査室における前記複数の分析装置を管理する管理装置であって、
前記複数の分析装置に搭載されて測定に使用されている測定中試薬の残量を管理する試薬情報管理テーブルと、前記測定中試薬を前記保管庫に保管されている保管試薬に交換する準備に要する第1の準備時間を登録する試薬交換準備時間管理テーブルと、前記保管試薬の校正/精度管理処理の準備に要する第2の準備時間を登録する校正/精度管理処理準備時間管理テーブルとを記憶する記憶装置と、
前記試薬情報管理テーブルに管理される前記測定中試薬の残量及び前記試薬交換準備時間管理テーブルに登録される前記第1の準備時間に基づき試薬交換準備を開始するタイミングを検知する試薬交換準備タイミング検知部と、
前記試薬情報管理テーブルに管理される前記測定中試薬の残量及び前記校正/精度管理処理準備時間管理テーブルに登録される前記第2の準備時間に基づき校正/精度管理処理準備を開始するタイミングを検知する校正/精度管理処理準備タイミング検知部と、
前記試薬交換準備タイミング検知部または前記校正/精度管理処理準備タイミング検知部によるタイミングの検知を受けて、前記試薬交換準備または前記校正/精度管理処理準備の依頼を前記臨床検査室に勤務する検査技師のいずれか一人に通知する通知担当者決定部とを有する管理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記記憶装置は、前記臨床検査室に勤務する検査技師のスケジュールを登録する担当者スケジュール管理テーブルを記憶しており、
前記通知担当者決定部は、前記担当者スケジュール管理テーブルから得られる、前記臨床検査室内にいる検査技師が現在実行しているタスクの情報、及び前記保管庫の位置と前記臨床検査室内にいる検査技師の現在位置との距離に基づき、前記臨床検査室内にいる検査技師に対して、前記試薬交換準備または前記校正/精度管理処理準備の依頼を通知する優先順位付けを行う管理装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記記憶装置は、前記臨床検査室に勤務する検査技師のスキルレベルを登録する担当者スキルレベル管理テーブルを記憶しており、
前記通知担当者決定部は、前記担当者スケジュール管理テーブルから得られる、前記臨床検査室内にいる検査技師が現在実行しているタスクの情報、前記保管庫の位置と前記臨床検査室内にいる検査技師の現在位置との距離、及び前記担当者スキルレベル管理テーブルから得られる前記臨床検査室内にいる検査技師のスキルレベルに基づき、前記臨床検査室内にいる検査技師に対して、前記試薬交換準備または前記校正/精度管理処理準備の依頼を通知する優先順位付けを行う管理装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記保管庫に保管されている試薬のうち、前記保管試薬として推奨する試薬を決定する推奨交換試薬決定部を有し、
前記記憶装置は、前記保管庫に保管されている試薬のロット番号及び有効期限を含む試薬情報を登録する試薬保存情報管理テーブルを記憶しており、
前記推奨交換試薬決定部は、前記試薬情報管理テーブルに管理される前記測定中試薬のロット番号と、前記試薬保存情報管理テーブルから得られる、試薬のロット番号及び有効期限とに基づき、前記保管試薬として推奨する試薬を決定する管理装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記校正/精度管理処理として前記保管試薬のキャリブレーションを含み、
前記推奨交換試薬決定部が前記保管試薬として、前記測定中試薬と同じロット番号の試薬を決定した場合には、前記保管試薬のキャリブレーション準備の依頼を不要とする管理装置。
【請求項6】
請求項4において、
前記記憶装置は、前記臨床検査室に勤務する検査技師のスケジュールを登録する担当者スケジュール管理テーブルを記憶しており、
前記通知担当者決定部は、前記担当者スケジュール管理テーブルから得られる、前記臨床検査室内にいる検査技師が現在実行しているタスクの情報、及び前記推奨交換試薬決定部が推奨した前記保管試薬を保管する保管庫の位置と前記臨床検査室内にいる検査技師の現在位置との距離に基づき、前記臨床検査室内にいる検査技師に対して、前記試薬交換準備の依頼を通知する優先順位付けを行う管理装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記保管庫に保管されている校正/精度管理試料のうち、前記保管試薬の校正/精度管理処理に使用する校正/精度管理試料として推奨する校正/精度管理試料を決定する推奨校正/精度管理試料決定部を有し、
前記記憶装置は、前記保管庫に保管されている校正/精度管理試料の有効期限を含む校正/精度管理試料情報を登録する校正/精度管理試料保存情報管理テーブルを記憶しており、
前記推奨校正/精度管理試料決定部は、前記校正/精度管理試料保存情報管理テーブルから得られる、校正/精度管理試料の有効期限に基づき、推奨する校正/精度管理試料を決定する管理装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記記憶装置は、前記臨床検査室に勤務する検査技師のスケジュールを登録する担当者スケジュール管理テーブルを記憶しており、
前記通知担当者決定部は、前記担当者スケジュール管理テーブルから得られる、前記臨床検査室内にいる検査技師が現在実行しているタスクの情報、及び前記推奨校正/精度管理試料決定部が推奨した前記校正/精度管理試料を保管する保管庫の位置と前記臨床検査室内にいる検査技師の現在位置との距離に基づき、前記臨床検査室内にいる検査技師に対して、前記校正/精度管理処理準備の依頼を通知する優先順位付けを行う管理装置。
【請求項9】
請求項1において、
前記校正/精度管理処理は、キャリブレータを前記校正/精度管理試料として使用する前記保管試薬のキャリブレーション、またはQC検体を前記校正/精度管理試料として使用する前記保管試薬のQC測定である管理装置。
【請求項10】
試料の分析を行う複数の分析装置と、前記複数の分析装置が測定に使用する試薬または、前記試薬の校正/精度管理処理に使用する校正/精度管理試料を保管する保管庫とが配置される臨床検査室における、管理装置を用いた試薬交換準備または校正/精度管理処理準備の依頼方法であって、
前記管理装置は、記憶装置と、試薬交換準備タイミング検知部と、校正/精度管理処理準備タイミング検知部と、通知担当者決定部とを備え、
前記記憶装置は、前記複数の分析装置に搭載されて測定に使用されている測定中試薬の残量を管理する試薬情報管理テーブルと、前記測定中試薬を前記保管庫に保管されている保管試薬に交換する準備に要する第1の準備時間を登録する試薬交換準備時間管理テーブルと、前記保管試薬の校正/精度管理処理の準備に要する第2の準備時間を登録する校正/精度管理処理準備時間管理テーブルとをあらかじめ記憶し、
前記試薬交換準備タイミング検知部は、前記試薬情報管理テーブルに管理される前記測定中試薬の残量及び前記試薬交換準備時間管理テーブルに登録される前記第1の準備時間に基づき試薬交換準備を開始する第1のタイミングを検知し、
前記校正/精度管理処理準備タイミング検知部は、前記試薬情報管理テーブルに管理される前記測定中試薬の残量及び前記校正/精度管理処理準備時間管理テーブルに登録される前記第2の準備時間に基づき校正/精度管理処理準備を開始する第2のタイミングを検知し、
前記通知担当者決定部は、前記第1のタイミングの検知を受けて前記試薬交換準備の依頼を、前記第2のタイミングの検知を受けて前記校正/精度管理処理準備の依頼を、前記臨床検査室に勤務する検査技師のいずれか一人に通知する依頼方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記記憶装置は、前記臨床検査室に勤務する検査技師のスケジュールを登録する担当者スケジュール管理テーブルをあらかじめ記憶し、
前記通知担当者決定部は、前記担当者スケジュール管理テーブルから得られる、前記臨床検査室内にいる検査技師が現在実行しているタスクの情報、及び前記保管庫の位置と前記臨床検査室内にいる検査技師の現在位置との距離に基づき、前記臨床検査室内にいる検査技師に対して、前記試薬交換準備または前記校正/精度管理処理準備の依頼を通知する優先順位付けを行い、最も優先順位の高い検査技師に対して前記依頼を通知する依頼方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記記憶装置は、前記臨床検査室に勤務する検査技師のスキルレベルを登録する担当者スキルレベル管理テーブルをあらかじめ記憶し、
前記通知担当者決定部は、前記担当者スケジュール管理テーブルから得られる、前記臨床検査室内にいる検査技師が現在実行しているタスクの情報、前記保管庫の位置と前記臨床検査室内にいる検査技師の現在位置との距離、及び前記担当者スキルレベル管理テーブルから得られる前記臨床検査室内にいる検査技師のスキルレベルに基づき、前記臨床検査室内にいる検査技師に対して、前記試薬交換準備または前記校正/精度管理処理準備の依頼を通知する優先順位付けを行い、最も優先順位の高い検査技師に対して前記依頼を通知する依頼方法。
【請求項13】
請求項10において、
前記管理装置は、前記保管庫に保管されている試薬のうち、前記保管試薬として推奨する試薬を決定する推奨交換試薬決定部を備え、
前記記憶装置は、前記保管庫に保管されている試薬のロット番号及び有効期限を含む試薬情報を登録する試薬保存情報管理テーブルをあらかじめ記憶し、
前記推奨交換試薬決定部は、前記試薬情報管理テーブルに管理される前記測定中試薬のロット番号と、前記試薬保存情報管理テーブルから得られる、試薬のロット番号及び有効期限とに基づき、前記保管庫に保管されている試薬のうち、前記保管試薬として推奨する試薬を決定し、
前記通知担当者決定部は、前記推奨交換試薬決定部が決定した前記保管試薬として推奨する試薬を前記試薬交換準備の依頼とともに通知する依頼方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記校正/精度管理処理として前記保管試薬のキャリブレーションを含み、
前記推奨交換試薬決定部が、前記保管試薬として、前記測定中試薬と同じロット番号の試薬を決定した場合には、前記校正/精度管理処理準備タイミング検知部は、前記保管試薬のキャリブレーション準備の依頼を不要とする依頼方法。
【請求項15】
請求項10において、
前記校正/精度管理処理は、キャリブレータを前記校正/精度管理試料として使用する前記保管試薬のキャリブレーション、またはQC検体を前記校正/精度管理試料として使用する前記保管試薬のQC測定である依頼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿等の生体試料を分析する複数の自動分析装置が配置された臨床検査室において、複数の自動分析装置を管理する管理装置、複数の自動分析装置に対する試薬交換や校正/精度管理処理の準備を依頼する依頼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿等の生体サンプルの分析を行う自動分析装置は、分析精度の再現性の高さ、分析処理の迅速性等のメリットから現在の診断では不可欠となっている。この種の自動分析装置は、分析の種類に応じて複数種類のものが存在する。例えば、生化学分析を行う比色分析装置、抗原・抗体反応を用いて試料中の抗原又は抗体を分析する免疫分析装置、血液の凝固能を測定する凝固分析装置、血液中の血球成分の数を測定する血球カウンターなどである。また、自動分析装置で試料を分析するに当たって、血液の遠心分離や、複数の子検体を作成するために試料を分注する等の前処理を実行する前処理装置も利用されている。1つの病院や検査センターなどでは、臨床検査室にこれらの自動分析装置や試料の前処理装置を複数台配置して、使用することが一般的である。
【0003】
こうした自動分析装置で試料を分析するにあたり、試薬が分析途中になくなってしまった場合、早急に対処しなければ分析が滞ってしまい、医師の診断を遅らせてしまうおそれがある。特許文献1では、過去の分析履歴に基づき当日の自動分析装置の稼働状況を予測し、予測した稼働状況と試薬の残量から試薬を交換するタイミングを画面に表示する技術を開示している。
【0004】
また、特許文献2では、分析結果の精度管理の観点から行われる精度管理試料の測定について、試薬ボトルの交換後に精度管理試料の測定が行われると、その間一般試料の分析が行えないため、バッファに精度管理試料を保持し、試薬量が設定値以下になると、待機試薬ボトルに対する精度管理試料の測定の推奨を画面に表示する、あるいは自動的に実行する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-45446号公報
【文献】特開2004-271265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動分析装置で試料を分析するには、試料交換時あるいは定期的に試料の濃度を算出するための検量線を得るためのキャリブレーションや、試薬が正しく測定を行えているか評価するためのQC測定を実施する必要がある。なお、本出願では、以降、キャリブレーションやQC測定のような、試薬による分析を適正化するための処理を総称して校正/精度管理処理と呼び、校正/精度管理処理に使用する試料(例えば、キャリブレーションに使用するキャリブレータあるいはQC測定に使用するQC検体)を総称して校正/精度管理試料と呼ぶものとする。
【0007】
特許文献2に開示されるように、試薬の交換には校正/精度管理処理を伴うため、これらの校正/精度管理処理のためのタイムロスを防止する必要がある。特許文献1,2はいずれも試薬の交換に伴う分析の停滞を回避するための技術であるが、自動分析装置単位での技術である。このため、特許文献2の自動分析装置では精度管理試料を保持するためのバッファを必要としている。
【0008】
これに対して、比較的規模の大きい臨床検査室においては、複数の自動分析装置が配置され、同一の試薬が複数の自動分析装置で使用されることもある。試薬や校正/精度管理試料は、それぞれ有効期限もあり、臨床検査室の運用コストに影響するため、臨床検査室全体で最適に使用することが望ましい。
【0009】
本発明では、臨床検査室単位で、複数の自動分析装置に対する試薬交換や校正/精度管理処理を管理する。この際、その準備に要する時間を考慮して検査技師に準備を依頼することにより、臨床検査室に配置される自動分析装置の稼働率を高めることができる。あるいは、臨床検査室の試薬や校正/精度管理試料を適切に選択することにより、臨床検査室の運用コストを適正化できる。さらに、臨床検査室単位で自動分析装置の稼働率を高めることにより、個々の自動分析装置に搭載される機構を簡素化でき、臨床検査室のコストを低減できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施の形態である管理装置は、試料の分析を行う複数の分析装置と、複数の分析装置が測定に使用する試薬または、試薬の校正/精度管理処理に使用する校正/精度管理試料を保管する保管庫とが配置される臨床検査室における複数の分析装置を管理する管理装置であって、複数の分析装置に搭載されて測定に使用されている測定中試薬の残量を管理する試薬情報管理テーブルと、測定中試薬を保管庫に保管されている保管試薬に交換する準備に要する第1の準備時間を登録する試薬交換準備時間管理テーブルと、保管試薬の校正/精度管理処理の準備に要する第2の準備時間を登録する校正/精度管理処理準備時間管理テーブルとを記憶する記憶装置と、試薬情報管理テーブルに管理される測定中試薬の残量及び試薬交換準備時間管理テーブルに登録される第1の準備時間に基づき試薬交換準備を開始するタイミングを検知する試薬交換準備タイミング検知部と、試薬情報管理テーブルに管理される測定中試薬の残量及び校正/精度管理処理準備時間管理テーブルに登録される第2の準備時間に基づき校正/精度管理処理準備を開始するタイミングを検知する校正/精度管理処理準備タイミング検知部と、試薬交換準備タイミング検知部または校正/精度管理処理準備タイミング検知部によるタイミングの検知を受けて、試薬交換準備または校正/精度管理処理準備の依頼を臨床検査室に勤務する検査技師のいずれか一人に通知する通知担当者決定部とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、臨床検査室に配置される自動分析装置の稼働率を高めることができる。
【0012】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】臨床検査室の例である。
図2】自動分析システムの概略構成を表すブロック図である。
図3】試薬情報管理テーブルの例である。
図4】試薬交換準備時間管理テーブルの例である。
図5】キャリブレーション準備時間管理テーブルの例である。
図6】QC測定準備時間管理テーブルの例である。
図7】担当者スケジュール管理テーブルの例である。
図8】担当者位置情報管理テーブルの例である。
図9】臨床検査室マップの例である。
図10】試薬交換準備通知画面の例である。
図11】キャリブレーション準備通知画面の例である。
図12】QC測定準備通知画面の例である。
図13】通知処理ロジックを表すフローチャートである。
図14】試薬保存情報管理テーブルの例である。
図15】キャリブレータ保存情報管理テーブルの例である。
図16】QC検体保存情報管理テーブルの例である。
図17】試薬交換準備通知画面の例である。
図18】推奨対象決定ロジックを表すフローチャートである。
図19】担当者スキルレベル管理テーブルの例である。
図20】通知処理ロジックを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
実施例1では、臨床検査室内の分析装置で試薬(測定中試薬)の残り測定回数が少なくなり、試薬交換時期が近付いた状況において、管理装置は、試薬交換を開始すべき試薬交換タイミング、交換した試薬(保管試薬)に対してキャリブレーションを行うための準備を開始すべきキャリブレーション準備タイミング、あるいは交換した試薬(保管試薬)に対してQC測定を行うための準備を開始すべきQC測定準備タイミングを検知し、検査技師にタスクとして通知する。このとき、臨床検査室に勤務する検査技師が現在従事しているタスクや所在地を考慮して、適切な検査技師の順にタスクを依頼する。
【0015】
図1は臨床検査室の例である。臨床検査を行う領域である臨床検査室101内には種々の装置、保管庫、作業台などが配置されている。この例では、管理装置102、分析装置103,104,105,106,107、前処理装置108、試薬保管庫109,110、キャリブレータ保管庫111、QC検体保管庫112、作業台113が配置され、検査技師114,115,116,117が在室している。また、図1には示されていないが、検査技師の位置情報を取得するための位置情報取得装置も臨床検査室101内にあるものとする。
【0016】
管理装置102は、分析装置103~107、前処理装置108、検査技師の持つ端末とネットワークを介して通信し、これらの装置を管理する。分析装置103~107は臨床検査を行うための装置であり、単独で動作する場合と、複数の分析装置同士が組み合わさって動作する場合とがある。この例では、分析装置106,107は単独で動作し、分析装置103,104,105は組み合わさって動作している。前処理装置108は、臨床検査を行うための前処理を自動で行う装置であり、分析装置103~105,107と接続され、前処理の終了した検体を分析装置に搬送する。分析装置103~107、前処理装置108で発生したアラーム及び管理装置102自身が発生したアラームは、管理装置102が管理する。試薬保管庫109,110は、分析装置が分析を行うために必要な試薬の保管を行う。キャリブレータ保管庫111、QC検体保管庫112は、分析装置でキャリブレーションやQC測定を行うためのキャリブレータやQC検体の保管を行う。検査技師114~117は、臨床検査室101内で臨床検査の準備、分析装置、前処理装置の操作などを行う担当者であり、1人1台以上、管理装置102にネットワークで接続した端末を所持している。検査技師114~117は試薬交換準備通知、キャリブレーション準備通知、QC測定準備通知を受け取った後、試薬交換、キャリブレーション準備、QC測定準備を行うための試薬、キャリブレータ、QC検体を取り出すために保管庫の正面まで移動する。検査技師が作業する、臨床検査室101内の装置や保管庫の正面は三角印118で示す。
【0017】
図2は自動分析システムの概略構成を表すブロック図である。端末225は、図1中の検査技師114~117が所持する端末である。管理装置102は、位置情報取得装置224とネットワーク230を介して、分析装置103~107、前処理装置108とネットワーク231を介して、端末225とネットワーク232を介して通信可能に接続されている。
【0018】
管理装置102は、入力装置202、出力装置203、通信装置204、情報処理装置205、記憶装置213を備えている。入力装置202は、例えばキーボード、マウスなどのポインティングデバイスなど、検査技師あるいは管理者の指示を入力する装置である。画面タッチパネルなど、出力装置203と兼用することも可能である。出力装置203は、入力装置202からの入力情報やその他の結果情報を表示するモニタ、あるいはプリンタである。通信装置204は、管理装置102が位置情報取得装置224、分析装置/前処理装置103~108、端末225とネットワークを介して通信を行うための通信装置であり、有線/無線のローカルエリアネットワーク、有線/無線のグローバルエリアネットワーク、携帯電話回線網、またはこれらの組合せを用いることができる。
【0019】
情報処理装置205は、管理装置102の種々のアプリケーションを実行するための計算機である。情報処理装置205は、試薬を交換すべきタイミングを検知するロジックである試薬交換準備タイミング検知部206、キャリブレーション準備を開始すべきタイミングを検知するロジックであるキャリブレーション準備タイミング検知部207、QC測定準備を開始すべきタイミングを検知するロジックであるQC測定準備タイミング検知部208、タスクを通知する担当者を決定するロジックである通知担当者決定部209、推奨交換試薬を決定するロジックである推奨交換試薬決定部210、推奨キャリブレータを決定するロジックである推奨キャリブレータ決定部211、推奨QC検体を決定するロジックである推奨QC検体決定部212を備えている。これらの詳細については後述する。
【0020】
記憶装置213は、情報処理装置205が実行するプログラムやデータなどを記憶する記憶装置であって、例えばEEPROM、フラッシュメモリのような不揮発メモリ、HDD、SSDなどを利用できる。記憶装置213は、分析装置103~107に搭載され、臨床検査を行うために使用されている試薬の情報を管理する試薬情報管理テーブル214、各試薬に対して試薬交換準備にかかる時間を管理する試薬交換準備時間管理テーブル215、各試薬に対してキャリブレーション準備にかかる時間を管理するキャリブレーション準備時間管理テーブル216、各試薬に対してQC測定準備にかかる時間を管理するQC測定準備時間管理テーブル217、各検査技師のタスクを管理する担当者スケジュール管理テーブル218、位置情報取得装置224によって取得した各検査技師の臨床検査室101内の位置情報を管理する担当者位置情報管理テーブル219、試薬の在庫情報を管理する試薬保存情報管理テーブル220、キャリブレータの在庫情報を管理するキャリブレータ保存情報管理テーブル221、QC検体の在庫情報を管理するQC検体保存情報管理テーブル222、各検査技師のスキルレベルを管理する担当者スキルレベル管理テーブル223を備えている。これらの詳細については後述する。
【0021】
また、管理装置102の種々のアプリケーションが情報処理装置205によりプログラムを実行することによって実現される場合には、情報処理装置205の実行するロジックに対応するプログラムが記憶装置213に格納され、それらのプログラムを情報処理装置205が読み込んで実行することにより、検知部206~208あるいは決定部209~212の各機能が実現される。
【0022】
位置情報取得装置224は、例えば、検査技師の携帯する端末225を用いて位置情報を把握してもよく、臨床検査室101内に設置された監視カメラ映像の画像解析により、検査技師の位置情報を把握してもよい。例えば、GPS(Global Positioning System)、Beacon、UWB(Ultra Wide Band)、Wi-Fi測位、音波測位、デッドレコニング、IMES(Indoor Messaging System)や、これらの組み合わせを用いることができる。
【0023】
検査技師は、端末225により、管理装置102から送られてくる通知の閲覧や対処の回答や対処完了の回答を行う。端末225の入力装置226、出力装置227、通信装置228はそれぞれ管理装置102のそれと同等の機能を有する。通知回答装置229は、管理装置102からの通知に対して回答する機能である。端末225は、検査技師が携帯する携帯端末やウェアラブル端末が望ましいが、ノート型またはデスクトップ型のPCなどを用いてもよい。
【0024】
図3は、試薬情報管理テーブル214である。管理装置102とネットワークを介して接続される臨床検査室101内の分析装置103~107に搭載される試薬は、全て試薬情報管理テーブル214で管理される。試薬が分析装置に搭載される際に、試薬情報管理テーブル214に登録される。
【0025】
欄302は、搭載試薬管理番号であり、分析装置に搭載されている試薬を識別するための番号である。欄303は、試薬名である。欄304は、試薬ロットNo.(試薬ロット番号)であり、試薬ロットNo.は、試薬製造メーカが試薬を製造されたときに付与される。試薬交換の際、交換前後の試薬が同じ試薬ロットNo.の場合にはキャリブレーションの結果を引き継ぐことができるという特徴がある。つまり、交換する試薬が同じ試薬ロットNo.である場合は、試薬交換の際に、キャリブレーションを行う必要がない。欄305は、試薬搭載装置位置であり、試薬が搭載されている装置の位置を表す。この例では、後述する臨床検査室マップにおいて定義される識別番号で表示されている。欄306は、試薬の有効期限である。有効期限を過ぎた試薬は交換する必要がある。欄307は、試薬の残量である。分析装置が残量を測定してもよいし、分析装置での臨床検査回数から算出してもよい。欄308は、試薬の残り測定回数であり、欄307の試薬残量から算出することができる。欄309は、試薬切れ予測時刻であり、試薬が切れるタイミングを予測した時刻を格納する。試薬切れ予測時刻は、試薬の残量と分析装置のその日の分析頻度から予測できる。例えば、欄307の試薬の残量から、測定1回あたりに使用する試薬量を除算することで、欄308の残り測定回数を算出し、その日の分析装置の分析頻度から欄309の試薬切れの時刻を予測することができる。なお、この試薬切れの時刻の予測は、試薬の残量が十分な場合には予測精度が落ちるため、試薬の残り測定回数が10回を超える場合には、欄309の試薬切れ予測時刻をNULLとしている。
【0026】
欄310は、試薬交換準備開始通知フラグであり、初期値はゼロが登録され、試薬交換準備を開始すべきタイミングとなったときに値が1となる。欄311は、キャリブレーション準備開始通知フラグであり、初期値はゼロが登録され、キャリブレーション準備を開始すべきタイミングとなったときに1となる。欄312は、QC測定準備開始通知フラグであり、初期値はゼロが登録され、QC測定の準備を開始すべきタイミングとなったときに1となる。以下、これらのフラグを1にするロジックについて説明する。これらのフラグの更新は、それぞれ、試薬交換準備タイミング検知部206、キャリブレーション準備タイミング検知部207、QC測定準備タイミング検知部208によって実行される。
【0027】
図4は、試薬交換準備時間管理テーブル215である。試薬交換は一律に試薬保管庫109,110から試薬を取り出して装置に投入すればよいのではなく、保管庫から取り出した後すぐに装置に投入するものや、試薬が常温になるまで待ってから装置に投入するものがあり、試薬ごとに準備時間が異なる。そのため、試薬交換準備時間管理テーブル215には、各試薬について試薬交換準備にかかる時間が登録されている。試薬交換準備にかかる時間は、試薬メーカによって事前に登録されていたり、臨床検査室の管理者によって登録されたりすることがあり得る。また、検査技師の試薬準備にかかる時間の実績に基づき、臨床検査室内で試薬交換準備時間を算出して更新することもあり得る。欄402は、試薬管理番号であり、欄403の試薬名に1対1対応して付けられる管理番号である。欄404は、試薬交換準備時間であり、検査技師が試薬交換準備にかかる時間を示している。欄404の試薬交換準備時間は、前述した試薬情報管理テーブル214(図3参照)の試薬交換準備開始通知フラグ(欄310)を1にするために用いられる。試薬交換準備タイミング検知部206(管理装置102)は、試薬交換準備開始通知フラグを、現在時刻が試薬切れ予測時刻(欄309)から試薬交換準備時間(欄404)を遡った時刻に0から1に更新する。例えば、試薬切れ予測時刻が14時20分で試薬交換準備時間が10分の場合、現在時刻が14時10分になったときに試薬交換準備開始通知フラグが1に更新される。欄405は、作業難易度であり、各試薬に対する試薬交換準備の難易度を5段階で表している。欄405の作業難易度は、1であると作業難易度が最も低く、5であると作業難易度が高い。
【0028】
図5は、キャリブレーション準備時間管理テーブル216である。キャリブレーションを実施する場合、作業者はキャリブレータ保管庫111からキャリブレータを取り出し、解凍、攪拌した後に装置に投入する。キャリブレータは濃度が既知の検体試料であって、検量線の作成のために用いられる。キャリブレータも、保管庫から取り出した後すぐに使用するものや、常温になるまで待ってから使用するものなどがある。さらに、キャリブレータによって攪拌の時間も異なるため、キャリブレータによって準備時間が異なる。キャリブレーション準備時間管理テーブル216では、各キャリブレータに対してキャリブレーション準備にかかる時間が登録されている。キャリブレーション準備にかかる時間も、試薬同様、メーカによって事前に登録されていたり、臨床検査室の管理者によって登録されたりすることがあり得る。また、検査技師のキャリブレーション準備にかかる時間の実績に基づき、更新されることもあり得る。欄502はキャリブレータ管理番号、欄503はキャリブレータ名であり、試薬同様、1対1対応している。欄504は、キャリブレーション準備時間であり、検査技師がキャリブレーション準備にかかる時間を示している。欄504のキャリブレーション準備時間は、前述した試薬情報管理テーブル214(図3参照)のキャリブレーション準備開始通知フラグ(欄311)を1にするために用いられる。キャリブレーション準備タイミング検知部207(管理装置102)は、キャリブレーション準備開始通知フラグを、現在時刻が試薬切れ予測時刻(欄309)からキャリブレーション準備時間(欄504)を遡った時刻に0から1に更新する。例えば、試薬切れ予測時刻が14時20分でキャリブレーション準備時間が40分の場合、現在時刻が13時40分になったときにキャリブレーション準備開始通知フラグが1に更新される。欄505は、作業難易度であり、各キャリブレータに対してキャリブレーション準備の難易度を5段階で表している。欄505の作業難易度は、1であると作業難易度が最も低く、5であると作業難易度が高い。
【0029】
図6は、QC測定準備時間管理テーブル217である。QC測定を実施する場合、作業者はQC検体保管庫112からQC検体を取り出し、解凍、攪拌した後に装置に投入する。QC検体は分析装置の精度が維持されていることを確認するための検体試料であって、数か月あるいは年単位で使用される。QC検体も保管庫から取り出した後すぐに使用するものや、常温になるまで待ってから使用するものなどがある。さらに、QC検体によって攪拌の時間も異なるため、QC検体によって準備時間が異なる。QC測定準備時間管理テーブル217では、各QC検体に対してQC測定準備にかかる時間が登録されている。QC測定準備にかかる時間も、試薬同様、メーカによって事前に登録されていたり、臨床検査室の管理者によって登録されたりすることがあり得る。また、検査技師のQC測定準備にかかる時間の実績に基づき、更新されることもあり得る。欄602はQC検体管理番号、欄603はQC検体名であり、試薬同様、1対1対応している。欄604 は、QC測定準備時間であり、検査技師がQC測定準備にかかる時間を示している。欄604のQC測定準備時間は、前述した試薬情報管理テーブル214(図3参照)のQC測定準備開始通知フラグ(欄312)を1にするために用いられる。QC測定準備タイミング検知部208(管理装置102)は、QC測定準備開始通知フラグを、現在時刻が試薬切れ予測時刻(欄309)からQC測定準備時間(欄604)を遡った時刻に0から1に更新する。例えば、試薬切れ予測時刻が14時20分でQC測定準備時間が20分の場合、現在時刻が14時00分になったときにQC測定準備開始通知フラグが1に更新される。欄605は、作業難易度であり、各QC検体に対してQC測定準備の難易度を5段階で表している。欄605の作業難易度は、1であると作業難易度が最も低く、5であると作業難易度が高い。
【0030】
図7は、担当者スケジュール管理テーブル218である。担当者スケジュール管理テーブル218は、検査技師が行うタスクとそのタスクの難易度を管理する。欄702は、タスクIDであり、検査技師が行うタスクの識別番号である。欄703は、担当者管理番号であり、タスクを行う検査技師の識別番号である。欄704は、作業内容であり、タスクの内容である。図中記載の他、例えば、試薬交換準備、キャリブレーション準備、QC測定準備も欄704に登録されるタスクである。欄705は、作業難易度である。作業難易度は、作業を完了するのに時間を要するタスクほど難易度が高く、短時間で完了できるタスクほど難易度が低いとする。ここでは、5から1までの5段階で評価し、作業難易度の値が大きくなるほど、難易度が高くなるものとしている。欄706は、タスク開始時刻であり、検査技師がタスクを開始した時刻を登録する。検査技師が持つ端末による通知やその他の手段で、管理装置102がタスク開始時刻を検知し、欄706のタスク開始時刻を更新する。欄706のタスク開始時刻の初期値はNULLである。欄707は、完了フラグであり、検査技師がタスク完了したかを管理する。欄707の完了フラグは、初期値としてタスク未完了をあらわす0が登録され、タスク完了後にタスク完了を表す1が登録される。検査技師が持つ端末による通知やその他の手段で、管理装置102がタスク完了を検知し、欄707の完了フラグを更新する。
【0031】
後述するように、試薬交換準備、キャリブレーション準備、QC測定準備が通知され、検査技師が対処する意思を回答した場合は、それぞれ担当者スケジュール管理テーブル218に新しいタスクとして登録される。また、そのときの作業難易度は、試薬交換準備時間管理テーブル215、キャリブレーション準備時間管理テーブル216、QC測定準備時間管理テーブル217それぞれに登録されている作業難易度が登録される。
【0032】
図8は、担当者位置情報管理テーブル219である。臨床検査室101内にいる検査技師の位置情報は、リアルタイム、または、一定時間毎に測定され、担当者位置情報管理テーブル219に登録されている。欄802は、担当者管理番号であり、検査技師を特定するための番号である。欄803は、臨床検査室マップ現在位置であり、後述する臨床検査室マップによって決まる検査技師の位置情報である。
【0033】
図9は、臨床検査室マップ901であり、臨床検査室101内の位置を識別番号により特定する。図9のマップは、図1の臨床検査室101に対応している。臨床検査室マップ901において、管理装置102は領域902に、分析装置103~107はそれぞれ領域903~907に、前処理装置108は領域908、試薬保管庫109,110はそれぞれ領域909,910に、キャリブレータ保管庫111は領域911に、QC検体保管庫112は領域912に、作業台113は領域913に配置されている。これらの装置/保管庫/作業台が配置された領域は網掛けをしてその他の領域と区別をしている。さらに、現在の検査技師114~117の所在地が、それぞれ検査技師914~917として表示されている。
【0034】
臨床検査室マップ901では、臨床検査室をブロックで分割し、ブロックのX座標とY座標とにより識別番号を定義する。X座標は左側から右に順に数値で1~11の整数により、Y座標は上から下にA~Eのアルファベットで定義されている。例えば、検査技師917の位置は、X座標が9で、Y座標がEなので、9Eと表す。前述のように、臨床検査室マップ901中の網掛けされたブロックは装置/保管庫/作業台が配置されたブロックであり、検査技師は網掛けブロック上を移動することはできない。三角印918は、装置や保管庫の正面を表し、検査技師は作業のために装置や保管庫に移動する場合は三角印918のあるブロックまで移動する。例えば、検査技師916が前処理装置908まで移動する場合、道順は4C、4D、4E、3E、2E、1E、1D、1Cであり、そのときの道のりは7ブロックの移動であるので7とする。
【0035】
一方、正面918が指定されていない管理装置、作業台については、検査技師は、該当するブロックまで移動するものとして道のりを算出する。網掛けブロックが複数連結している場合は、X座標の数値が最も小さく、Y座標のアルファベットが最もAに近いブロックの位置まで移動するものとして算出する。
【0036】
図10は、試薬交換準備通知画面1001である。検査技師は、試薬交換準備依頼を端末225に表示される試薬交換準備通知画面1001を通して確認し、試薬交換の担当者となる意思を回答する。ボタン1002は「はい」ボタンであり、検査技師がその通知の担当者となる意思を回答するボタンである。ボタン1003は「いいえ」ボタンであり、検査技師が、その通知の担当者とはなることができない意思を回答するボタンである。
【0037】
図11は、キャリブレーション準備通知画面1101である。図10と同様に、ボタン1102,1103により、検査技師は通知されたキャリブレーションの担当者になる意思について回答する。
【0038】
図12は、QC測定準備通知画面1201である。図10または図11と同様に、ボタン1202,1203により、検査技師は通知されたQC測定の担当者になる意思について回答する。
【0039】
図13は、通知担当者決定部209(図2参照)で実行される通知処理ロジック1301である。管理装置102は、試薬情報管理テーブル214(図3参照)に登録されている試薬に対し、通知処理ロジック1301の処理を実行する。通知処理ロジック1301は、試薬交換準備通知、キャリブレーション準備通知、QC測定準備通知を実行する際に共通で利用され、フラグ確認1303で確認するフラグや担当者位置情報点数計算1305での位置情報基準点が、通知内容に応じて異なる。以下では、試薬交換準備タスクについて通知する担当者を決定する処理を中心に説明する。
【0040】
フラグ確認1303は、管理装置102が試薬交換準備通知、キャリブレーション準備通知、QC測定準備通知のいずれかの通知の必要があるかを確認する処理である。このため、管理装置102は、試薬情報管理テーブル214の試薬交換準備開始通知フラグ(欄310)、キャリブレーション準備開始通知フラグ(欄311)、QC測定準備開始通知フラグ(欄312)を確認する。
【0041】
試薬交換準備開始通知フラグ(欄310)が、試薬交換準備通知が必要であることを表す1である場合には、担当者スケジュール点数計算1304の処理を実行する。一方、試薬交換準備開始通知フラグ(欄310)が、試薬交換準備通知が不要であることを表す0である場合には、他に試薬交換準備開始通知フラグが1であるレコードがなければ、終了1308する。
【0042】
担当者スケジュール点数計算1304は、現在臨床検査室101内にいる検査技師全員に対して、担当者スケジュール管理テーブル218(図7参照)を参照し、現在作業中のタスクの難易度を取得する。担当者スケジュール点数計算1304において、現在作業中のタスクは、タスク開始時刻(欄706)に初期値NULL以外が、完了フラグ(欄707)にタスク未完了0が登録されている。担当者スケジュール点数計算1304において、作業難易度は、欄705から取得する。作業難易度が取得できない場合は、作業中のタスク無しとして作業難易度を1とする。担当者スケジュール点数は、5段階に評価された作業難易度5、4、3、2、1に基づき、5点、4点、3点、2点、1点として、点数が高いほど作業難易度が高いものとする。担当者スケジュール点数計算1304の結果として、臨床検査室101にいる検査技師それぞれに対する担当者スケジュール点数sが出力される。
【0043】
担当者位置情報点数計算1305は、現在臨床検査室101内にいる検査技師全員の位置情報に基づいて担当者位置情報点数を計算する。検査技師の位置情報は、位置情報取得装置224から臨床検査室マップ901における識別番号として取得する。次に、試薬交換準備通知の場合には試薬保管庫109,110の位置情報を位置情報基準点として取得する。なお、キャリブレーション準備通知の場合にはキャリブレータ保管庫111の位置情報を、QC測定準備通知の場合にはQC検体保管庫112の位置情報をそれぞれ位置情報基準点として取得する。タスクの実行のためには担当者は、位置情報基準点へ移動ののち、分析装置や作業台に移動することになるが、位置情報基準点以降の移動はいずれの担当者であっても同じである。そのため、担当者位置情報点数計算1305では、取得した位置情報基準点と検査技師の位置情報とに基づき、それぞれの検査技師が位置情報基準点にたどり着くまでの最短の道のり(距離)を計算する。具体的には、臨床検査室マップ901に基づき位置情報基準点である保管庫の正面918にたどり着くための最短の道のりとして計算される。この結果として、それぞれの検査技師に対する担当者位置情報点数pが出力される。なお、位置情報基準点が複数ある場合には、それぞれに対して最短の道のりを計算し、その平均値を担当者位置情報点数pとすればよい。
【0044】
通知可能担当者優先度点数計算1306は、担当者スケジュール点数計算1304と担当者位置情報点数計算1305で計算した、担当者スケジュール点数と担当者位置情報点数を入力として、臨床検査室101内にいる検査技師に対して、通知する優先度を決めるための通知優先度点数計算を行う処理である。例えば、通知優先度点数Prは以下の(式1)で与えられる。
Pr=m・s+m・p ・・・(式1)
ここで、mは正の定数で表される担当者スケジュール点数sに対する重み、mは正の定数で表される担当者位置情報点数pに対する重みである。通知優先度点数Prが小さいほど優先度が高く、大きいほど優先度が低くなる。この結果、臨床検査室101内にいる検査技師全員に対する通知優先度点数Prが出力される。
【0045】
通知1307は、通知可能担当者優先度点数計算1306の結果に基づき、最も優先度の高い検査技師の持つ端末225に通知を送信し、送信先の検査技師から回答を取得する処理である。検査技師から担当者となることができない回答を受け取った場合には、一定時間経過するまでその検査技師を除外して、担当者スケジュール点数計算1304、担当者位置情報点数計算1305、通知可能担当者優先度点数計算1306を再度行い、担当者が決まるまで次の通知先に通知を送信する。もし臨床検査室101内にいる検査技師全員から担当者となることができない回答を受け取った場合には、臨床検査室101内の検査技師の業務を取りまとめる管理者に通知を送信する。
【0046】
実施例1に係る臨床検査室における具体例な処理例を説明する。ここでは、分析装置106(試薬搭載装置位置5D)でAFP試薬の残量が残りわずかとなり、試薬交換が必要になった場合について説明する。
【0047】
試薬交換準備タイミング検知部206が試薬交換準備開始通知フラグを更新した後、通知担当者決定部209がフラグ確認1303の処理を行う。このときの試薬情報管理テーブル214が図3に示される。すなわち、搭載試薬管理番号(欄302)「20190821-003」のレコードにおいて、試薬交換準備開始通知フラグ(欄310)が1になっている。そこで、担当者スケジュール点数計算1304の処理を行う。このときの担当者スケジュール管理テーブル218が図7に示される。検査技師P001は行っていたタスクを完了し、現在はタスク無しの状態、検査技師P002は作業難易度5のタスク作業中、検査技師P003は作業難易度2のタスク作業中、検査技師P004の検査技師は現在行っているタスクなしの状態である。また、管理番号P001、P002、P004、P005の検査技師は、それぞれ図1の検査技師114~117であるとする。したがって、検査技師114~117の担当者スケジュール点数sは、それぞれ1点、5点、2点、1点である。
【0048】
続いて、通知担当者決定部209は担当者位置情報点数計算1305の処理を行う。このときの検査技師の所在地は図9の臨床検査室マップ901に示される通りであり、検査技師114~117の位置情報は、それぞれ10C、8C、4C、9Eである。また、位置情報基準点となる試薬保管庫は2つあり、それぞれ7B、8Bに配置され、それぞれについて正面918が設定されている。したがって、それぞれの検査技師の現在位置から試薬保管庫までの最短距離を計算すると、検査技師114~117の担当者位置情報点数pは、それぞれ2.5点、0.5点、3.5点、3.5点である。位置情報基準点である試薬保管庫が2つあるので、それぞれの試薬保管庫までの最短の道のりを計算し、その平均を担当者位置情報点数pとしたものである。
【0049】
続いて、通知担当者決定部209は、通知可能担当者優先度点数計算1306を行い、通知優先度点数Prを計算する。このとき、重みmを1、重みmを1とした(式1)を用いて、通知優先度点数Prを計算するとすれば、検査技師114~117の通知優先度点数Prは、それぞれ3.5点、5.5点、5.5点、4.5点である。
【0050】
この結果、通知担当者決定部209は、最も点数の低かった検査技師114の持つ端末225に試薬交換準備通知(図10参照)を送信する。通知を送信した後、通知担当者決定部209は、検査技師114から試薬交換の担当者となるか否かの回答を待つ。もし一定時間以上回答が得られない場合は、検査技師114は担当者となることはできないと判断して、再度、通知先を決めるための処理を行う。
【0051】
以上、試薬交換準備通知に対する処理を説明してきたが、キャリブレーション準備通知、QC測定準備通知についても処理の流れは同じである。
【実施例2】
【0052】
実施例2では、実施例1に加えて、管理装置は、検査技師へのタスク依頼の際に、推奨する対象(交換試薬、キャリブレータ、QC検体)を特定して提示する。
【0053】
本実施例において、試薬やキャリブレータ、QC検体の在庫は、それぞれ試薬保管庫109,110、キャリブレータ保管庫111、QC検体保管庫112に格納されているものとする。また、試薬、キャリブレータ、QC検体の在庫情報は、管理装置102で管理されている。試薬、キャリブレータ、QC検体の在庫情報は、それぞれの容器に付されたバーコード、二次元バーコード、RFIDの情報を読み取って登録する。具体的には、仕入れ担当者が試薬保管庫109,110、キャリブレータ保管庫111、QC検体保管庫112に試薬、キャリブレータ、QC検体を格納する際に、管理装置102にこれらの在庫情報を登録するものとする。なお、仕入れ担当者ではなく、臨床検査室101内で勤務する検査技師が登録してもよい。
【0054】
試薬、キャリブレータ、QC検体の在庫情報は、記憶装置213に格納された試薬保存情報管理テーブル220、キャリブレータ保存情報管理テーブル221、QC検体保存情報管理テーブル222(図2参照)によって管理される。
【0055】
図14は、試薬保存情報管理テーブル220である。欄1402は、保存試薬管理番号であり、臨床検査室内にある試薬の在庫を一意に識別する管理番号である。欄1403は、試薬名であり、試薬交換準備通知の際に担当者に通知される試薬の名称である。欄1404は、試薬ロットNo.であり、試薬が製造された際のロットNo.である。欄1405は、有効期限であり、有効期限内の試薬のみ推奨交換試薬に選ぶことができる。欄1406は、格納場所であり、試薬が保存されている場所を臨床検査室マップ901の位置を表すコードで表している。
【0056】
図15は、キャリブレータ保存情報管理テーブル221である。欄1502は、保存キャリブレータ管理番号であり、臨床検査室内にあるキャリブレータの在庫を一意に識別する管理番号である。欄1503は、キャリブレータ名であり、キャリブレーション準備通知の際に担当者に通知されるキャリブレータの名称である。欄1504は、有効期限であり、有効期限内のキャリブレータのみ推奨キャリブレータに選ぶことができる。欄1505は、格納場所であり、キャリブレータが保存されている場所を臨床検査室マップ901の位置を表すコードで表している。
【0057】
図16は、QC検体保存情報管理テーブル222である。欄1602は、保存QC検体管理番号であり、臨床検査室内にあるQC検体の在庫を一意に識別する管理番号である。欄1603は、QC検体名であり、QC測定準備通知の際に担当者に通知されるQC検体の名称である。欄1604は、有効期限であり、有効期限内のQC検体のみ推奨QC検体に選ぶことができる。欄1605は、格納場所であり、QC検体が保存されている場所を臨床検査室マップ901の位置を表すコードで表している。
【0058】
図17は、実施例2の試薬交換準備通知画面1701である。実施例1の試薬交換準備通知画面1001との違いは、推奨する交換対象の試薬1702が表示されている点である。この例では、交換する試薬と同じロット番号の試薬が推奨する交換対象として表示されている。同じロット番号の試薬であれば、キャリブレーションを不要にできる効果がある。ここでは、試薬交換準備通知の画面例について説明しているが、キャリブレーション準備通知画面、QC測定準備通知画面についても、同様に推奨するキャリブレータ、QC検体を画面に表示することができる。具体的には、有効期限までの期間の短いキャリブレータ、QC検体を推奨することで、有効期限切れの校正/精度管理試料の発生を抑制することができる。
【0059】
図18は、推奨対象決定ロジック1801であり、交換する試薬または、準備するキャリブレータ、QC検体について、臨床検査室における試薬、キャリブレータ、QC検体の在庫に対して、推奨対象として優位かどうかを決めるために点数を付与する処理である。自動分析システムが、交換する試薬が同じロットNo.の試薬の場合はキャリブレーションを実施しない仕様になっていれば、可能な限り同じロットNo.の試薬に交換することで検査技師の負担を減らすことができる。そのため、試薬交換の場合には、推奨条件として、有効期限が近いもの、同じロットNo.であるものの2つがあげられる。また、キャリブレータ、QC検体の場合には、推奨条件は有効期限が近いものの1つである。推奨交換試薬決定部210、推奨キャリブレータ決定部211、推奨QC検体決定部212は、それぞれ推奨対象決定ロジック1801にしたがった処理を行う。
【0060】
処理1803は、ロットNo.点数計算の処理であり、交換する対象が試薬の場合に実行される。つまり、試薬交換準備通知の際、ロットNo.が同じである場合には、ロットNo.点数lとして1が出力される。一方、キャリブレーション準備通知、QC測定準備通知の際には、ロットNo.点数lは常に0が出力される。
【0061】
処理1804は、有効期限点数計算の処理であり、有効期限が近いかどうかで推奨対象として優位かどうかを決める処理である。例えば、現在日と期限日の差分が有効期限点数dとして出力される。例えば、現在日が2019/09/24であり、期限日が2019/09/28である場合、有効期限点数dとして5が出力される。
【0062】
処理1805は、推奨対象点数計算であり、処理1803のロットNo.点数計算の結果と処理1804の有効期限点数計算の結果から、推奨対象としての優先度を計算する処理である。例えば、推奨対象点数Avは以下の(式2)で与えられる。
Av=m・l+m・d ・・・(式2)
ここで、mは正の定数で表されるロットNo.点数lに対する重み、mは負の定数で表される有効期限点数dに対する重みである。推奨対象点数Avが大きいほど優先度が高く、小さいほど優先度が低くなる。この結果、臨床検査室101の試薬、キャリブレータ、QC検体の全在庫に対する推奨対象点数Avが出力される。
【0063】
実施例2に係る臨床検査室における具体例な処理例を説明する。実施例1と同様に、分析装置106(試薬搭載装置位置5D)でAFP試薬の残量が残りわずかとなり、試薬交換が必要になった場合について説明する。
【0064】
試薬交換準備タイミング検知部206が試薬交換準備開始通知フラグを更新した後、通知担当者決定部209がフラグ確認1303の処理を行う。フラグ確認1303の処理を行う。このときの試薬情報管理テーブル214(図3参照)より、搭載試薬管理番号(欄302)「20190821-003」のレコードにおいて、試薬交換準備開始通知フラグ(欄310)が1になっていることが確認できる。交換対象の試薬はAFP試薬である(欄303)。そこで、管理装置102は推奨交換試薬決定部210の処理を割り込み実行させる。
【0065】
推奨交換試薬決定部210は、交換対象の試薬であるAFP試薬の在庫について、推奨対象決定ロジック1801を実行する。このときの試薬保存情報管理テーブル220が図14に示される。これより、AFP試薬の在庫は、保存試薬管理番号が0002と0003の試薬であることが分かる(欄1403)。
【0066】
保存試薬管理番号0002と0003のAFP試薬に対して、ロットNo.点数lを計算する(ロットNo.点数計算1803)。交換が必要な試薬のロットNo.が「20190725-004」(図3参照)であるので、保存試薬管理番号0002のロットNo.点数lは1、保存試薬管理番号0003のロットNo.点数lは0となる。
【0067】
次に、保存試薬管理番号0002と0003のAFP試薬に対して、有効期限点数dを計算する(有効期限点数計算1804)。現在日が2019/09/24とすると、それぞれの有効期限(図14参照)から、保存試薬管理番号002の有効期限点数dは9、保存試薬管理番号003の有効期限点数dは8となる。
【0068】
続いて、推奨交換試薬決定部210は、推奨対象点数計算1805を行い、推奨対象点数Avを計算する。このとき、重みmを3、重みmを-1とした(式2)を用いて、推奨対象点数Avを計算するとすれば、保存試薬管理番号0002、0003のAFP試薬の推奨対象点数Avは、それぞれ-6点、-8点である。
【0069】
この結果、推奨試薬として保存試薬管理番号0002が特定され、試薬交換準備通知画面1701(図17参照)に表示される。通知先の決定は、推奨試薬決定後に通知担当者決定部209の処理を実行することで行われる。この処理は実施例1と同様の処理であるので説明を省略する。ただし、実施例2においては、交換対象とする試薬、キャリブレータ、QC検体の格納場所が一意に特定されるので、担当者位置情報点数pの値が異なる値になる可能性はある。
【0070】
なお、ここでは試薬交換準備を行う担当者の決定において推奨交換試薬の決定を行う例を示したが、キャリブレーション準備が試薬交換準備に先立つ場合が多いと考えられる。このため、キャリブレーション準備を行う担当者の決定において推奨交換試薬の決定を行うことが望ましい。このとき、同じロットNo.の試薬が交換対象として特定される場合には、キャリブレーション準備の通知を保留する。その後、同じロットNo.の試薬が交換対象として試薬交換を完了したことを受けて、キャリブレーション準備開始通知フラグを0に更新する。
【実施例3】
【0071】
実施例3では、実施例1に加えて、管理装置は、検査技師へのタスク依頼する順序を決める際、検査技師のスキルレベルを考慮する。
【0072】
新人など、作業に不慣れな検査技師の場合、試薬交換、キャリブレーション準備、QC測定準備にかかる時間が、熟練の検査技師に比べ時間を要するおそれがある。実施例3では、作業に時間を要するスキルレベルの低い検査技師の方が通知の優先度を高くなるようにする。これにより、処理に時間のかかるおそれのある担当者には早めにタスクの割り当てを実行し、検査技師の不慣れによる処理の遅延の影響を小さくすることができる。
【0073】
図19は、担当者スキルレベル管理テーブル223であり、臨床検査室に勤務する検査技師のスキルレベルを管理するテーブルである。欄1902は、担当者管理番号であり、検査技師を一意に識別するための番号である。欄1903は、検査技師の出勤状態であり、1が登録されている場合は検査技師が臨床検査室に出勤していることを表し、0が登録されている場合は検査技師が未出勤であることを表す。欄1903は初期値として0が登録されており、検査技師が出勤した際に、PCや検査技師が所持する端末の立ち上げを検知して1に変更される。また、検査技師が退勤した際に、PCや検査技師が所持する端末の電源OFFを検知して0に変更される。欄1904は担当者スキルレベルであり、スキルレベルを1から5までの5段階で区分した値が登録される。スキルレベル1がもっとも低い(最も未熟)、スキルレベル5がもっとも高い(最も習熟)とする。スキルレベルの初期値は臨床検査室内の管理者によって登録される。欄1904の予想作業平均乖離時間は、標準的な作業時間と各検査技師が実際に作業終了にまでかかった時間との差の平均である。標準的な作業時間は、具体的には、試薬交換準備時間管理テーブル215(図4参照)の試薬準備時間(欄404)、キャリブレーション準備時間管理テーブル216(図5参照)のキャリブレーション準備時間(欄504)、QC測定準備時間管理テーブル217(図6参照)のQC測定準備時間(欄604)により与えられる。
【0074】
管理装置102は、担当者スキルレベル管理テーブル223の予想作業平均乖離時間(欄1905)が、臨床検査室内に勤務する検査技師の平均と比べて、平均的な場合は担当者スキルレベル(欄1904)を3に、大幅に時間がかかっている場合は1に近づけるように、まったく時間がかかっていない場合は5に近づけるように変更する。例えば、予想作業乖離時間が正規分布に従うと仮定して、分布の下側から20%、40%、60%、80%、100%に区切り、0%~20%に分布する検査技師のスキルレベルを1、20%~40%に分布する検査技師のスキルレベルを2、40%~60%に分布する検査技師のスキルレベルを3、60%~80%に分布する検査技師のスキルレベルを4、80%~100%に分布する検査技師のスキルレベルを5に変更する。
【0075】
図20は、通知担当者決定部209(図2参照)で実行される通知処理ロジック2001である。処理2003、処理2004、処理2005、処理2007、処理2008は、それぞれ図13中の処理1303、処理1304、処理1305、処理1306、処理1307と同様である。このため、図13のフローチャートにおける処理と異なる処理を中心に説明する。
【0076】
処理2006は、担当者スキルレベル点数計算の処理である。管理装置102は、担当者スキルレベル管理テーブル223(図19参照)の担当者出勤状態(欄1903)をチェックし、値が1である出勤している検査技師のリストを取得する。出勤している検査技師のリストに対して、担当者スキルレベル(欄1904)をチェックする。ここでは、担当者スキルレベル(欄1904)に登録されている値を担当者スキルレベル点数kとして出力する。
【0077】
処理2007は、臨床検査室101内にいる検査技師に対して、通知する優先度を決めるための通知優先度点数計算を行う処理である。例えば、通知優先度点数Prは以下の(式3)で与えられる。
Pr=m・s+m・p+m・k ・・・(式3)
ここで、mは正の定数で表される担当者スケジュール点数sに対する重み、mは正の定数で表される担当者位置情報点数pに対する重み、mは負の定数で表される担当者スキルレベル点数kに対する重みである。通知優先度点数Prが小さいほど優先度が高く、大きいほど優先度が低くなる。この結果、臨床検査室101内にいる検査技師全員に対する通知優先度点数Prが出力される。
【0078】
実施例3に係る臨床検査室における具体例な処理例を説明する。実施例1、2と同様に、分析装置106(試薬搭載装置位置5D)でAFP試薬の残量が残りわずかとなり、試薬交換が必要になった場合について説明する。
【0079】
試薬交換準備タイミング検知部206が試薬交換準備開始通知フラグを更新した後、通知担当者決定部209がフラグ確認1303の処理を行う。このときの試薬情報管理テーブル214(図3参照)より、搭載試薬管理番号(欄302)「20190821-003」のレコードにおいて、試薬交換準備開始通知フラグ(欄310)が1になっていることが確認できる。
【0080】
通知担当者決定部209は、まず担当者スケジュール点数計算2004の処理を行う。詳細は実施例1の場合と同様であるので省略し、検査技師114~117の担当者スケジュール点数sは、それぞれ1点、5点、2点、1点である。
【0081】
続いて、担当者位置情報点数計算2005の処理を行う。詳細は実施例1の場合と同様であるので省略し、検査技師114~117の担当者位置情報点数pは、それぞれ2.5点、0.5点、3.5点、3.5点である。なお、実施例2におけるように推奨対象を特定する場合には、位置情報基準点が一意に特定されるため、点数pの値は上記とは異なったものになる。
【0082】
次に、通知担当者決定部209は、担当者スキルレベル点数計算2006の処理を行う。このときの担当者スキルレベル管理テーブル223は図19に示される。出勤している検査技師は、検査技師P001,P002,P003,P004である。検査技師P001~P004は、それぞれ検査技師114~117に対応するため、検査技師114~117の担当者スキルレベル点数kは、それぞれ3点、2点、4点、1点である。
【0083】
続いて、通知担当者決定部209は、通知可能担当者優先度点数計算2007を行い、通知優先度点数Prを計算する。このとき、重みmを1、重みmを1、重みmを-1とした(式3)を用いて、通知優先度点数Prを計算するとすれば、検査技師114~117の通知優先度点数Prは、それぞれ0.5点、3.5点、1.5点、3.5点である。
【0084】
この結果、管理装置102は、最も点数の低かった検査技師114の持つ端末225に試薬交換準備通知(図10参照)を送信する。
【符号の説明】
【0085】
101:臨床検査室、102:管理装置、103,104,105,106,107:分析装置、108:前処理装置、109,110:試薬保管庫、111:キャリブレータ保管庫、112:QC検体保管庫、113:作業台、114,115,116,117:検査技師、202:入力装置、203:出力装置、204:通信装置、205:情報処理装置、206:試薬交換準備タイミング検知部、207:キャリブレーション準備タイミング検知部、208:QC測定準備タイミング検知部、209:通知担当者決定部、210:推奨交換試薬決定部、211:推奨キャリブレータ決定部、212:推奨QC検体決定部、213:記憶装置、214:試薬情報管理テーブル、215:試薬交換準備時間管理テーブル、216:キャリブレーション準備時間管理テーブル、217:QC測定準備時間管理テーブル、218:担当者スケジュール管理テーブル、219:担当者位置情報管理テーブル、220:試薬保存情報管理テーブル、221:キャリブレータ保存情報管理テーブル、222:QC検体保存情報管理テーブル、223:担当者スキルレベル管理テーブル、224:位置情報取得装置、225:端末、226:入力装置、227:出力装置、228:通信装置、229:通知回答装置、901:臨床検査室マップ、1001,1701:試薬交換準備通知画面、1101:キャリブレーション準備通知画面、1201:QC測定準備通知画面。
図1
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