(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 33/04 20060101AFI20231204BHJP
C08L 51/04 20060101ALI20231204BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20231204BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
C08L33/04
C08L51/04
C08F220/18
C08J5/00 CEY
(21)【出願番号】P 2022537182
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 KR2021007345
(87)【国際公開番号】W WO2022097867
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0146750
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0074833
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】インス・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・スブ・イ
(72)【発明者】
【氏名】テ・ウ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・テ・パク
(72)【発明者】
【氏名】スク・ジョ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ミンチョル・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ミンスン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ソンウォン・ホン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・ジュン・リュ
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-199645(JP,A)
【文献】特開2001-026619(JP,A)
【文献】特開2018-203837(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0089101(KR,A)
【文献】韓国登録特許第2035035(KR,B1)
【文献】特開平01-087651(JP,A)
【文献】特開2017-039951(JP,A)
【文献】特開2012-214734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00;301/00
C08J 3/00-3/28;5/00-5/22;99/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びマレイミド系単量体を含んでなるスチレン系共重合体と、
平均粒径が50~200nmであるアクリル系ゴム質重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる第1グラフト共重合体と、
平均粒径が300~600nmであるアクリル系ゴム質重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる第2グラフト共重合体とを含み、
前記スチレン系共重合体は、残留オリゴマー含量が0.37重量%以下であり、
前記スチレン系共重合体は、(メタ)アクリレート系単量体62~88重量%、マレイミド系単量体1~10重量%及び芳香族ビニル系単量体5~26重量%を含んでなり、
前記スチレン系共重合体は、(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びマレイミド系単量体を含む単量体混合物100重量部、反応溶媒100~200重量部、開始剤0.01~1重量部、分散剤1~5重量部、及び分子量調節剤0.01~1重量部を混合した重合溶液を懸濁重合して調製され、
前記スチレン系共重合体は、屈折率が1.518以下であり、
前記スチレン系共重合体は、重量平均分子量が90,000~139,000g/molであることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物
であって、
前記熱可塑性樹脂組成物の総100重量%中に、スチレン系共重合体65~85重量%、第1グラフト共重合体10~30重量%及び第2グラフト共重合体1~15重量%を含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記マレイミド系単量体はN-フェニルマレイミドであることを特徴とする、請求項
1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記スチレン系共重合体は、ガラス転移温度が120℃以上であることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記第1グラフト共重合体は、平均粒径が50~200nmであるアクリル系ゴム質重合体20~60重量%、芳香族ビニル系単量体10~50重量%及びビニルシアン系単量体5~30重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記第2グラフト共重合体は、平均粒径が300~600nmであるアクリル系ゴム質重合体20~60重量%、芳香族ビニル系単量体10~50重量%及びビニルシアン系単量体5~30重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びマレイミド系単量体を含む単量体混合物100重量部、反応溶媒100~200重量部、開始剤0.01~1重量部、分散剤1~5重量部、及び分子量調節剤0.01~1重量部を混合した重合溶液を懸濁重合するステップと、
前記懸濁重合により生成された重合スラリーのpHを1~4に調節し、スチレン系共重合体を製造するステップと、
前記スチレン系共重合体65~85重量%に、
平均粒径が50~200nmであるアクリル系ゴム質重合体を含んでなる第1グラフト共重合体10~30重量%、及び
平均粒径が300~600nmであるアクリル系ゴム質重合体を含む第2グラフト共重合体1~15重量%を混合し、200~270℃の条件下で混練及び押出するステップとを含み、
前記スチレン系共重合体は、残留オリゴマー含量が0.37重量%以下であり、
前記スチレン系共重合体は、(メタ)アクリレート系単量体62~88重量%、マレイミド系単量体1~10重量%及び芳香族ビニル系単量体5~26重量%を含んでなり、
前記スチレン系共重合体は、屈折率が1.518以下であり、
前記スチレン系共重合体は、重量平均分子量が90,000~139,000g/molであることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記反応溶媒は水であり、前記開始剤は過酸化物であり、前記分散剤はリン酸塩であることを特徴とする、請求項
6に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記懸濁重合は、80~130℃で400~600rpm下で行うことを特徴とする、請求項
6又は
7に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記重合スラリーのpHは、酸性溶液を用いて調節することを特徴とする、請求項
6~
8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物で製造される、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2020年11月05日付の韓国特許出願第10-2020-0146750号及びこれに基づいて2021年06月09日付で再出願された韓国特許出願第10-2021-0074833号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関し、より詳細には、耐候性及び耐熱性に優れ、着色性及び耐熱度の低下を最小化しながら、加工性及び耐スクラッチ性を大きく改善した熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene、以下、「ABS系」という)樹脂に代表されるABS系樹脂は、剛性、耐薬品性、加工性、機械的強度及び美麗な外観特性により、自動車用品、電気/電子製品及び事務用機器などに多様に使用されている。しかし、ABS系樹脂は、ブタジエンゴム重合体を使用するため、耐候性が脆弱であり、室外用材料としては不適であるという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、物性に優れながらも耐候性及び耐老化性に優れた熱可塑性樹脂を得るために、グラフト共重合体内に紫外線による老化を引き起こすエチレン系不飽和重合体が存在しない、架橋されたアルキル(メタ)アクリレートゴム重合体を使用したアクリロニトリル-スチレン-アクリレート(Acrylonitrile-Styrene-Acrylate、以下、「ASA系」という)樹脂に代表されるASA系樹脂が開発された。このようなASA系樹脂は、優れた耐候性及び耐老化性を有し、自動車、船舶、レジャー用品、建築資材、園芸用など多方面に使用されている。
【0005】
この中で、耐熱ASA系樹脂を提供するように、アルキル置換スチレン系単量体を含む技術が開発された。しかし、アルキル置換スチレン系単量体を含むことによってガラス転移温度が高くなり、これによって耐候性、耐熱性及び耐スクラッチ性が改善された分だけ、屈折率も著しく高くなることにより着色度が低下してしまい、黒色度(Color L)の具現に不利であるという欠点がある。
【0006】
また、このようなアルキル置換スチレン系単量体を含む技術は塊状重合により製造されるが、この場合、高粘度により製品の収率が低く、共重合体が分解されて残留オリゴマーの生成が多くなり、耐熱性がむしろ低下するという問題を伴う。
【0007】
したがって、耐候性及び耐熱性を維持すると同時に、着色性、加工性及び耐スクラッチ性が改善され、かつ残留オリゴマー含量が少ない熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法に関する研究が続けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の従来技術の問題点を解決するために、本発明は、耐候性及び耐熱性に優れながらも、着色性、加工性及び耐スクラッチ性が非常に優れ、残留オリゴマー含量が少ない熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、前記の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、前記の熱可塑性樹脂組成物から製造される成形品を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、
(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びマレイミド系単量体を含んでなるスチレン系共重合体と;
アクリル系ゴム質重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる第1グラフト共重合体と;
アクリル系ゴム質重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる第2グラフト共重合体とを含み、
前記スチレン系共重合体は、残留オリゴマー含量が0.37重量%以下であり、
前記第1グラフト共重合体と第2グラフト共重合体は、アクリル系ゴム質重合体の平均粒径が互いに異なる、熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、
(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びマレイミド系単量体を含む単量体混合物100重量部、反応溶媒100~200重量部、開始剤0.01~1重量部、分散剤1~5重量部、及び分子量調節剤0.01~1重量部を混合した重合溶液を懸濁重合するステップと、
前記懸濁重合により生成された重合スラリーのpHを1~4に調節し、ビーズ状のスチレン系共重合体を製造するステップと、
前記スチレン系共重合体65~85重量%に、アクリル系ゴム質重合体を含んでなる第1グラフト共重合体10~30重量%、及びアクリル系ゴム質重合体を含む第2グラフト共重合体1~15重量%を混合し、200~270℃の条件下で混練及び押出するステップとを含み、
前記スチレン系共重合体は、残留オリゴマー含量が0.37重量%以下であり、
前記第1グラフト共重合体と第2グラフト共重合体は、アクリル系ゴム質重合体の平均粒径が互いに異なる、熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、前述した熱可塑性樹脂組成物で製造される成形品を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐候性及び耐熱性に優れながらも、着色性、加工性及び耐スクラッチ性が非常に優れ、残留オリゴマー含量が少ない熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品を提供する効果がある。
【0017】
したがって、本発明に係る前記熱可塑性樹脂組成物及び成形品は、これを必要とする様々な産業分野に広く適用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明をより詳細に説明する。
【0019】
本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語や単語は、通常の又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者が発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという点を勘案して、本発明の技術的思想に符合する意味及び概念で解釈されなければならない。
【0020】
本記載において、「含んでなる」の意味は、別途の定義がない限り、「含んで重合製造された」、「含んで重合された」、または「由来の単位として含む」として定義され得る。
【0021】
本記載において、耐熱性は、この技術分野で公知された様々な方式により測定することができ、特に特定しない限り、示差熱量分析器(製造社:Taインスツルメント、製品名:DISCOVERY DSC25)を用いて測定したガラス転移温度(Tg)を指す。
【0022】
当該ガラス転移温度(Tg)が116℃以上である場合、耐熱共重合体として判断することができる。
【0023】
本記載において、平均粒径は、動的光散乱(Dynamic Light Scattering)法を用いて測定することができ、詳細には、ラテックス状態で粒度分布分析器(Nicomp380)を用いてガウスモードで測定することができ、動的光散乱法により測定される粒度分布における算術平均粒径、具体的には散乱強度(Intensity Distribution)平均粒径を意味することができる。
【0024】
具体的な測定例として、サンプルは、ラテックス(TSC35~50wt%)0.1gを脱イオン水又は蒸留水で1,000~5,000倍希釈し、すなわち、インテンシティセットポイント(Intensity Setpoint) 300kHzを大きく外れないように適切に希釈し、ガラス管(glass tube)に入れて準備し、測定方法は、自動希釈(Auto-dilution)してフローセル(flow cell)で測定し、測定モードは、動的光散乱法(dynamic light scattering)/強度(Intensity) 300KHz/強度-荷重ガウス分析(Intensity-weight Gaussian Analysis)とし、設定(setting)値は、温度23℃、測定波長632.8nm、チャンネル幅(channel width) 10μsecとして測定することができる。
【0025】
本記載において、重量平均分子量は、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を通じて、標準PS(標準ポリスチレン;standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができ、詳細には、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography、PL GPC220、Agilent Technologies)によりポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めたものを適用した値である。
【0026】
具体的には、測定する重合体を1%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに10μL注入するが、0.3mL/分の流速で流入させ、試料の濃度2.0mg/mL(100μL インジェクション;injection)に対して30℃で分析を行うことができる。ここで、カラムは、Waters社のPLmixed B2個を直列に接続し、検出器としてはRI検出器(Agilent Waters社製、2414)を用いて40℃で測定した後、ChemStationを使用してデータを加工したものであってもよい。
【0027】
本記載において、(共)重合体の組成比は、(共)重合体を構成する単位体の含量を意味するか、または(共)重合体の重合時に投入される単位体の含量を意味することができる。
【0028】
本記載において、「含量」は、別途の定義がない限り、重量を意味する。
【0029】
本発明者らは、ゴムの平均粒径が異なる2種のグラフト共重合体と共に、(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びマレイミド系単量体を含むが、(メタ)アクリレート単量体混合物を重合して形成され、残留オリゴマー含量が特定値以下であるスチレン系共重合体を所定の含量範囲内で混合する場合、耐熱性、耐候性、着色性、加工性及び耐スクラッチ性が全て改善されることを確認し、これに基づいて研究を続けて本発明を完成するに至った。
【0030】
本発明の一実施例に係る熱可塑性樹脂組成物は、(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びマレイミド系単量体を含んでなるスチレン系共重合体と;アクリル系ゴム質重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる第1グラフト共重合体と;アクリル系ゴム質重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる第2グラフト共重合体とを含み、前記スチレン系共重合体は、残留オリゴマー含量が0.37重量%以下であり、前記第1グラフト共重合体と第2グラフト共重合体は、アクリル系ゴム質重合体の平均粒径が互いに異なることを特徴とし、この場合、耐候性及び耐熱性が維持されながらも、着色性、加工性及び耐スクラッチ性が向上するという効果がある。
【0031】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成別に詳細に説明する。
【0032】
<熱可塑性樹脂組成物>
スチレン系共重合体
前記スチレン系共重合体は、(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びマレイミド系単量体を含む単量体混合物を重合して形成される耐熱共重合体であり得る。
【0033】
このとき、各単量体は、耐熱共重合体の単位となる。
【0034】
前記スチレン系共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の着色性、耐熱性及び耐スクラッチ性を改善させることができる。そして、前記スチレン系共重合体は、(メタ)アクリレート系単量体を含むことによって、熱可塑性樹脂組成物の耐候性も改善させることができる。
【0035】
前記単量体混合物、すなわち、スチレン共重合体は、前記(メタ)アクリレート系単量体62~88重量%、前記芳香族ビニル系単量体5~26重量%及びマレイミド系単量体1~10重量%を含むことができ、前記(メタ)アクリレート系単量体64~86重量%、前記芳香族ビニル系単量体10~26重量%、及びマレイミド系単量体2~10重量%を含むことが好ましい。上述した範囲を満たす場合、屈折率が低いと共に、ガラス転移温度が高いスチレン系共重合体を製造することができる。
【0036】
また、このようなスチレン系共重合体を熱可塑性樹脂組成物に適用する際、熱可塑性樹脂組成物の着色性及び耐熱性が改善されるだけでなく、耐スクラッチ性及び耐候性も改善され得る。
【0037】
このとき、前記(メタ)アクリレート系単量体が少量しか含まれない場合、屈折率が高いスチレン系共重合体が製造されるため、このようなスチレン系共重合体を熱可塑性樹脂組成物に適用する際、熱可塑性樹脂組成物の着色性が低下することがあり、過量含まれる場合、相対的に芳香族ビニル系単量体とマレイミド系単量体が少量含まれるため、ガラス転移温度が低いスチレン系共重合体が製造され得、このようなスチレン系共重合体を熱可塑性樹脂組成物に適用する際、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性及び耐スクラッチ性が低下することがある。
【0038】
また、前記マレイミド系単量体が少量しか含まれない場合、ガラス転移温度の高いスチレン系共重合体が製造できず、このようなスチレン系共重合体を熱可塑性樹脂組成物に適用する際、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が低下することがあり、過量含まれる場合には、相対的に(メタ)アクリレート系単量体と芳香族ビニル系単量体が少量しか含まれないため、屈折率の高いスチレン系共重合体が製造され得、このようなスチレン系共重合体を熱可塑性樹脂組成物に適用する際、熱可塑性樹脂組成物の着色性及び耐スクラッチ性が低下することがある。
【0039】
前記スチレン系共重合体に含まれた(メタ)アクリレート系単量体は、一例として、(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上であってもよく、このうちメチルメタクリレートが好ましい。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートをいずれも含むことができる。
【0040】
前記スチレン系共重合体に単位として含まれた芳香族ビニル単量体は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン及びρ-メチルスチレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、このうちスチレンが好ましい。
【0041】
一方、前記スチレン系共重合体を製造するにおいて、アルキルスチレン系単量体を用いた共重合体の製造は、重合速度が遅く、長時間の反応時間が必要であるだけでなく、生成された共重合体の重量平均分子量が低く、熱分解が容易に起こり得る。また、ガラス転移温度は高いが、屈折率も著しく高い共重合体が製造され得るため、本発明ではアルキルスチレン系単量体を含まないことが好ましい。
【0042】
前記スチレン系共重合体に含まれたマレイミド系単量体は、一例として、N-フェニルマレイミドを使用することが好ましく、イソプロピルマレイミドと比較して、透明性、着色性、耐熱性、反応性などが全て優れるという利点がある。
【0043】
前記スチレン系共重合体は、前記芳香族ビニル系単量体と(メタ)アクリレート系単量体を1:2.25~1:3.5の重量比、または1:4.8~1:10の重量比で含むことができ、このうち、1:2.46~1:3.5の重量比、または1:4.8~1:8.6の重量比で含むことが好ましい。上述した範囲を満たす場合、ガラス転移温度の高いスチレン系共重合体が製造され得、このようなスチレン系共重合体を熱可塑性樹脂組成物に適用する際、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性がさらに改善され得る。
【0044】
前記スチレン系共重合体は、屈折率が、一例として1.518以下、好ましくは1.499~1.517、より好ましくは1.499~1.515である低屈折率の耐熱共重合体であってもよい。
【0045】
本記載において、屈折率は、公知の方法、すなわち、一般にASTM D542に準拠して、アッベ屈折計(Abbe Refractometer)を用いて25℃で測定することができる。
【0046】
また、スチレン系共重合体の屈折率は、当該スチレン系共重合体を構成する各構成成分(又は重合体)の屈折率及び含量を用いて、下記数式1によって計算することができる。
【0047】
【0048】
前記数式1において、Wtiは、スチレン系共重合体における各構成成分(又は重合体)の重量分率(%)であり、RIiは、スチレン系共重合体形成重合体の屈折率である。
【0049】
前記スチレン系共重合体は、ガラス転移温度が改善されることによって、耐スクラッチ性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【0050】
前記スチレン系共重合体は、ガラス転移温度が、一例として120℃以上、好ましくは120~130℃、より好ましくは120.1~124.3℃であってもよい。
【0051】
本記載において、ガラス転移温度は、示差熱量分析器(製造社:Taインスツルメント、製品名:DSC Q20)を用いて測定することができる。
【0052】
前記スチレン系共重合体は、重量平均分子量が90,000~139,000g/mol、好ましくは96,000~133,000g/molであってもよい。
【0053】
本記載において、重量平均分子量は、カラム充填物質として多孔性シリカが充填されたゲルクロマトグラフィー(GPC)を介して、温度40℃で、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて、標準PS(標準ポリスチレン;Standard Polystyrene)試料に対する相対値を測定する。
【0054】
前記スチレン系共重合体は、残留オリゴマー含量が0.37重量%以下、好ましくは0.32~0.36重量%であってもよい。
【0055】
本記載において、残留オリゴマー含量は、関連分野における通常の方法により測定することができ、一例として、サンプル1gをクロロホルム10mLに溶解させた後、メタノールで高分子を沈殿させ、試料の上澄液を取り、0.2μmのディスクシリンジフィルターを使用して濾過した後、ALS-GC/FIDを用いて分析することができる。
【0056】
スチレン系共重合体中に含まれた残留オリゴマー含量が低いほど、純度が高い共重合体を製造することができる。
【0057】
本発明において、スチレン系共重合体は、前述した屈折率、ガラス転移温度、重量平均分子量及び残留オリゴマー含量の条件を全て満たす場合、着色性と耐熱性との間にバランスを取ることができ、このような共重合体を熱可塑性樹脂組成物に適用する際、着色性及び熱変形温度が全て優れた熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
【0058】
また、熱変形温度が改善されることによって、耐スクラッチ性に優れた熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
【0059】
前記スチレン系共重合体は、メチルメタクリレート-スチレン-N-フェニルマレイミド共重合体であることが好ましい。
【0060】
前記スチレン系共重合体は、上述した単量体混合物を、後述したように懸濁重合して製造することができる。参考に、溶液重合により製造する場合、高粘度により製品の収率が低く、残留オリゴマー含量が高いため耐熱性が低下し得る。
【0061】
前記スチレン系共重合体は、一例として、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して65~85重量%、好ましくは70~80重量%、より好ましくは72~77重量%であってもよく、この範囲内で、耐熱性が維持されながら、耐候性、着色性、加工性及び耐スクラッチ性が向上するという効果がある。
【0062】
第1グラフト共重合体
前記第1グラフト共重合体は、アクリル系ゴム、芳香族ビニル単量体及びビニルシアン系単量体をグラフト重合してなるものであってもよく、一例として、平均粒径が50~200nmであるアクリル系ゴム質重合体を含むグラフト共重合体であってもよく、この場合、衝撃強度、引張強度などの機械的物性に優れながらも、耐熱性、着色性及び耐候性に優れるという効果がある。
【0063】
前記第1グラフト共重合体に含まれたアクリル系ゴムは、一例として、平均粒径が50~200nm、好ましくは70~150nm、より好ましくは100~130nmであってもよい。上述した範囲を満たす場合、機械的物性、耐熱性及び耐候性が全て優れ、前記範囲未満である場合、衝撃強度、引張強度などの機械的物性が低下する問題が発生することがあり、前記範囲を超える場合、熱安定性が低下する問題が発生することがある。
【0064】
前記第1グラフト共重合体に含まれたアクリル系ゴムは、一例として第1グラフト共重合体の総重量に対して20~60重量%、好ましくは30~55重量%、より好ましくは40~50重量%であってもよく、この範囲内で、耐候性、衝撃強度及び耐スクラッチ性に優れるという効果がある。
【0065】
本記載において、平均粒径は、動的レーザー光散乱(Dynamic laser light scattering)法によりインテンシティガウス分布(Intensity gaussian distribution、Nicomp380)を用いて測定する。
【0066】
前記アクリル系ゴムは、一例として、(メタ)アクリレート系単量体を乳化重合して製造することができ、具体例として、(メタ)アクリレート系単量体、乳化剤、開始剤、グラフト剤、架橋剤、電解質及び水を混合して乳化重合して製造することができ、この場合、グラフティング効率に優れるため、耐衝撃性などの物性に優れるという効果がある。
【0067】
前記(メタ)アクリレート系単量体は、一例として、炭素数が2~8個であるアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、アルキル基の炭素数が4~8個であるアルキルアクリレートであり、さらに好ましくは、ブチルアクリレートまたはエチルヘキシルアクリレートであってもよい。
【0068】
乳化重合は、グラフト乳化重合であってもよく、一例として50~85℃、好ましくは60~80℃で行われてもよい。
【0069】
前記乳化重合は、開始剤及び乳化剤の存在下で行うことができる。
【0070】
前記開始剤は、好ましくは、ラジカル開始剤であってもよく、具体例として、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素をはじめとする無機過酸化物;t-ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノールペルオキシド、t-ブチルペルオキシイソブチレートをはじめとする有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニルニトリル、アゾビスイソ酪酸(ブチル酸)メチルをはじめとするアゾ化合物から選択された1種以上であってもよい。
【0071】
前記開始剤と共に、開始反応を促進させるために活性化剤がさらに投入されてもよい。
【0072】
前記活性化剤は、一例として、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第一鉄、デキストロース、ピロリン酸ナトリウム、無水ピロリン酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムから選択された1種以上であってもよい。
【0073】
前記開始剤は、前記第1グラフト共重合体を構成するゴムと単量体の合計100重量部に対して、一例として0.001~1重量部、好ましくは0.01~0.5重量部、より好ましくは0.02~0.1重量部投入されてもよい。前記範囲内で、乳化重合が容易に行われ得ると共に、前記第1グラフト共重合体中の開始剤の残留量は数十ppm単位に最小化することができる。
【0074】
前記乳化剤は、一例として、アルキルベンゼンスルホネートのカリウム化合物、アルキルベンゼンスルホネートのナトリウム化合物、アルキルカルボキシレートのカリウム化合物、アルキルカルボキシレートのナトリウム化合物、オレイン酸のカリウム化合物、オレイン酸のナトリウム化合物、アルキルスルフェートのカリウム化合物、アルキルスルフェートのナトリウム化合物、アルキルジカルボキシレートのカリウム化合物、アルキルジカルボキシレートのナトリウム化合物、アルキルエーテルスルホネートのカリウム化合物、アルキルエーテルスルホネートのナトリウム化合物、及びアリルオキシノニルフェノキシプロパン-2-イルオキシメチルスルホネートのアンモニウム化合物から選択された1種以上であってもよく、このうちドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0075】
前記乳化剤は、市販の物質を用いることができるが、この場合、SE10N、BC-10、BC-20、HS10、Hitenol KH10及びPD-104から選択された1種以上を用いることができる。
【0076】
前記乳化剤は、前記第1グラフト共重合体を構成するゴムと単量体の合計100重量部に対して、一例として0.15~2.0重量部、好ましくは0.3~1.5重量部、より好ましくは0.5~1.2重量部投入されてもよく、前記範囲内で、乳化重合が容易に行われるだけでなく、第1グラフト共重合体中の開始剤の残留量は数十ppm単位に最小化することができる。
【0077】
前記乳化重合時に、分子量調節剤がさらに投入されてもよい。前記分子量調節剤は、一例として、t-ドデシルメルカプタン、N-ドデシルメルカプタン及びα-メチルスチレンダイマーから選択された1種以上であってもよく、このうちt-ドデシルメルカプタンが好ましい。
【0078】
前記分子量調節剤は、前記第1グラフト共重合体を構成するゴムと単量体の合計100重量部に対して、一例として0.1~1重量部、好ましくは0.2~0.8重量部、さらに好ましくは0.4~0.6重量部投入されてもよい。
【0079】
前記乳化重合は単量体などを反応器に一括投入した後に開始するか、または乳化重合の開始前に反応器に単量体などを一部投入し、開始後に残りは連続投入するか、または単量体などを一定時間連続投入しながら乳化重合を行うことができる。
【0080】
このようにして収得された第1グラフト共重合体はラテックス形態であって、凝集、脱水及び乾燥の工程によりドライパウダー形態で回収することができる。
【0081】
前記凝集に使用される凝集剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの塩、硫酸、硝酸、塩酸などの酸性物質、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0082】
前記第1グラフト共重合体に含まれる芳香族ビニル系単量体は、一例として第1グラフト共重合体の総重量に対して10~50重量%、好ましくは20~45重量%であってもよく、この範囲内で、引張強度、衝撃強度などの機械的物性、及び加工性に優れるという効果がある。
【0083】
前記芳香族ビニル系単量体は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、ρ-メチルスチレン、m-メチルスチレン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t-ブチルスチレン、ο-ブロモスチレン、ρ-クロロスチレン、m-ブロモスチレン、ο-クロロスチレン、ρ-クロロスチレン、m-クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、フルオロスチレン及びビニルナフタレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合、流動性が適切であるため加工性に優れ、引張強度、衝撃強度などの機械的物性も優れるという効果がある。
【0084】
前記第1グラフト共重合体に含まれるビニルシアン系単量体は、一例として第1グラフト共重合体の総重量に対して5~30重量%、好ましくは5~25重量%、より好ましくは10~20重量%であってもよく、この範囲内で、耐衝撃性、加工性などに優れるという効果がある。
【0085】
前記ビニルシアン系単量体は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、またはこれらの混合であってもよく、この場合、耐衝撃性、加工性などに優れるという効果がある。
【0086】
前記第1グラフト共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して10~30重量%、好ましくは15~25重量%、より好ましくは20~25重量%であってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度などの機械的物性に優れながらも、耐熱性、耐候性、耐スクラッチ性及び着色性に優れるという効果があり、前記範囲未満である場合、耐衝撃性が低下する問題が発生することがあり、前記範囲を超える場合、流動性及び耐スクラッチ性が低下する問題が発生することがある。
【0087】
第2グラフト共重合体
前記第2グラフト共重合体は、前記第1グラフト共重合体と異なる平均粒径を有するアクリル系ゴム、芳香族ビニル単量体及びビニルシアン系単量体をグラフト重合してなるものであってもよく、一例として、平均粒径が300~600nmであるアクリル系ゴム質重合体を含むグラフト共重合体であってもよい。この場合、衝撃強度、引張強度などの機械的物性に優れながらも、耐熱性、着色性及び耐候性に優れるという効果がある。
【0088】
前記第2グラフト共重合体に含まれたアクリル系ゴムは、一例として平均粒径が300~600nm、好ましくは300~500nm、より好ましくは350~450nmであってもよい。上述した範囲を満たす場合、衝撃強度及び引張強度などの機械的物性に優れるという効果がある。前記範囲未満である場合、耐衝撃性が低下することがあり、前記範囲を超える場合、流動性及び加工性が低下する問題が発生することがある。
【0089】
前記第2グラフト共重合体に含まれたアクリル系ゴムは、一例として第2グラフト共重合体の総重量に対して20~60重量%、好ましくは30~55重量%、より好ましくは40~50重量%であってもよく、この範囲内で、耐候性、衝撃強度及び耐スクラッチ性に優れるという効果がある。
【0090】
前記アクリル系ゴムは、一例として、(メタ)アクリレート系単量体を乳化重合して製造することができ、具体例として、(メタ)アクリレート系単量体、乳化剤、開始剤、グラフト剤、架橋剤、電解質及び水を混合して乳化重合して製造することができ、この場合、グラフティング効率に優れるため、耐衝撃性などの物性に優れるという効果がある。
【0091】
前記アクリル系ゴムの製造に使用される(メタ)アクリレート系単量体、乳化剤、開始剤、グラフト剤などは、前述した第1グラフト共重合体に含まれるアクリル系ゴムの製造時に使用されるものと同じ種類、同じ含量範囲内で選択されてもよい。
【0092】
前記芳香族ビニル系単量体及び前記ビニルシアン系単量体は、前述した第1グラフト共重合体に含まれる芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体の種類と同じものであってもよい。
【0093】
前記第2グラフト共重合体に含まれる芳香族ビニル系単量体は、一例として第2グラフト共重合体の総重量に対して10~50重量%、好ましくは20~45重量%であってもよく、この範囲内で、耐衝撃性、耐候性及び耐化学性に優れるという効果がある。
【0094】
前記第2グラフト共重合体に含まれるビニルシアン系単量体は、一例として第2グラフト共重合体の総重量に対して5~30重量%、好ましくは5~25重量%、より好ましくは10~20重量%であってもよく、この範囲内で、耐衝撃性、加工性などに優れるという効果がある。
【0095】
本記載において、共重合体の総重量というのは、得られる共重合体の実際の総重量を意味するか、またはこれを代替して投入されたゴム及び/又は単量体の総重量を意味することができる。
【0096】
前記第2グラフト共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して1~15重量%、好ましくは1~10重量%、より好ましくは3~7重量%であってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度などの機械的物性に優れながらも、耐熱性、耐候性、耐スクラッチ性及び着色性に優れるという効果があり、前記範囲未満である場合、耐衝撃性が低下する問題が発生することがあり、前記範囲を超える場合、グラフト率が低くなってしまい、硬度及び耐スクラッチ性が低下する問題が発生することがある。
【0097】
熱可塑性樹脂組成物
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、滑剤、酸化防止剤、UV安定剤、離型剤、顔料、染料及び紫外線安定剤からなる群から選択された1種以上を含むことができ、この場合、機械的物性が低下しないながらも、耐候性、耐熱性、加工性及び耐スクラッチ性が優れたレベルに維持されるという効果がある。
【0098】
前記滑剤は、一例として、エチレンビスステアロアミド、酸化ポリエチレンワックス及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはエチレンビスステアロアミドであることが、本記載の組成物の濡れ性を向上させると同時に、機械的物性に優れるという効果がある。
【0099】
前記滑剤は、一例として、スチレン系共重合体、第1グラフト共重合体及び第2グラフト共重合体の総100重量部に対して0.1~3重量部、好ましくは0.1~2重量部、より好ましくは0.05~1.5重量部であってもよく、この範囲内で、本記載の組成物の濡れ性を向上させると同時に、機械的物性に優れるという効果がある。
【0100】
前記酸化防止剤は、一例として、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、またはこれらの混合物を含むことができ、この場合、押出工程時に熱による酸化を防止し、本発明の機械的物性に優れるという効果がある。
【0101】
前記酸化防止剤は、一例として、スチレン系共重合体、第1グラフト共重合体及び第2グラフト共重合体の総100重量部に対して0.01~3重量部、好ましくは0.01~1重量部、より好ましくは0.1~1重量部であってもよく、この範囲内で、押出工程時に熱による酸化を防止し、本発明の機械的物性に優れるという効果がある。
【0102】
前記染料は、一例として、スチレン系共重合体、第1グラフト共重合体及び第2グラフト共重合体の総100重量部に対して0.1~1.5重量部、好ましくは0.5~1重量部であってもよく、この範囲内で、本記載の組成物本来の物性を低下させないながらも、色相の発現に優れるという効果がある。
【0103】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として耐候性(ΔE)が1.8以下、好ましくは1.0~1.8、より好ましくは1.5~1.8であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れるという効果がある。
【0104】
本記載において、耐候性(ΔE)は、耐候性測定装置(QUV)により測定することができ、測定条件は、UVランプの照度0.77W/m2、湿度50%、ブラックパネル(BLACK PANEL)の温度60℃、20時間滞留後であり、ΔEは、下記数式2で計算された滞留前後のハンターLab(Hunter Lab)値の算術平均値であり、その値が0に近いほど耐候性に優れることを意味する。
【0105】
【0106】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ハンターLab(Hunter Lab)を用いて測定したL値(着色性)が24.8以下、好ましくは20~24.8、より好ましくは23~24.8であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れるという効果がある。
【0107】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D1238に準拠して220℃、10kgの荷重下で測定した流動性が11~16g/10分、好ましくは12~16g/10分であってもよく、この範囲内で、加工性に優れるという効果がある。
【0108】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、鉛筆硬度計(Cometech)を用いて、ASTM D3363に準拠して0.5kgの荷重で45°の角度で測定した鉛筆硬度が2H以上、好ましくは2H~4Hであってもよく、この範囲内で、物性バランス及び耐スクラッチ性に優れるという効果がある。
【0109】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D648に準拠して測定した熱変形温度が89℃以上、好ましくは89~100℃、より好ましくは89~96℃であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れるという効果がある。
【0110】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D256に準拠して測定したアイゾット衝撃強度(1/4”、23℃)が5kgf・cm/cm以上、好ましくは5~10kgf・cm/cm、より好ましくは5~8kgf・cm/cmであってもよく、この範囲内で、全ての物性バランスに優れるという効果がある。
【0111】
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
本記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法の説明において、上述した熱可塑性樹脂組成物の内容をすべて含む。
【0112】
前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、一例として、次の通りである。
【0113】
前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、一例として、(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びマレイミド系単量体を含む単量体混合物100重量部、反応溶媒100~200重量部、開始剤0.01~1重量部、分散剤1~5重量部及び分子量調節剤0.01~1重量部を混合した重合溶液を懸濁重合してスチレン系共重合体を製造するステップを含むことができる。
【0114】
前記スチレン系共重合体を製造するステップでの反応溶媒は、一例として水であってもよく、この場合、反応熱の制御が容易であり、高粘度でも重合を行うことができるため、高い重合転化率を有することができる。
【0115】
前記反応溶媒は、一例として単量体混合物100重量部に対して100~200重量部、好ましくは110~150重量部であってもよく、この範囲内で、単量体の混合が容易であり、重合安定性が向上して、組成が均一でありながらも、高い重合転化率を有するという効果がある。
【0116】
前記スチレン系共重合体を製造するステップでの開始剤は、一例として過酸化物であり、好ましくは、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシイソブチレート、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキサン)プロパン、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシラウレート、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシアセテート、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド及びジ-t-アミンペルオキシドからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0117】
この場合、重合反応を容易にして、機械的物性、耐候性、耐熱性及び耐スクラッチ性を優れたレベルに維持するという効果がある。
【0118】
前記開始剤は、一例として、単量体混合物100重量部に対して0.01~1重量部、好ましくは0.01~0.5重量部、より好ましくは0.01~0.2重量部であってもよく、この範囲内で、重合反応を容易にして、機械的物性、耐候性、耐熱性及び耐スクラッチ性を優れたレベルに維持するという効果がある。
【0119】
前記スチレン系共重合体を製造するステップでの分散剤は、一例としてリン酸塩であり、好ましくは金属リン酸塩、より好ましくはリン酸三カルシウムであってもよい。この場合、重合安定性を向上させ、高い重合転化率を有する共重合体を製造することができる。
【0120】
前記分散剤は、一例として単量体混合物100重量部に対して1~5重量部、好ましくは1~3重量部であってもよく、この範囲内で、重合反応を容易にし、均一な粒子を製造できるため加工に有利であるという効果がある。
【0121】
前記スチレン系共重合体を製造するステップでの懸濁重合は、一例として、前記重合溶液を80~130℃で撹拌速度400~600rpm下で反応を3~10時間維持して行われてもよく、この場合、共重合体の重合転化率を向上させることができ、粒子中の残留モノマー及び残留オリゴマーを低減させ、機械的物性、耐候性、耐熱性、耐スクラッチ性及び着色性を向上させる効果がある。
【0122】
具体例として、80~100℃で3~6時間重合した後、100~130℃で1~3時間重合することが、スチレン系共重合体の転化率、着色性及び残留オリゴマー含量の面で最も好ましい。前記範囲を超えて長時間重合させる場合、転化率の差は僅かであり、着色性及び残留オリゴマー含量が増加することがあり、前記範囲未満で短時間重合させる場合、転化率が減少するだけでなく、着色性及び残留モノマーが増加することがある。
【0123】
その次に、前記懸濁重合により生成された重合スラリーのpHを1~4に調節し、ビーズ状のスチレン系共重合体を製造することができる。上述したpHの範囲を満たす場合、反応に含まれた分散剤を効果的に除去することができ、製品が高純度化される効果がある。
【0124】
本記載において、pHは、関連分野で通常用いる方法により測定することができ、一例として、pHメーターを用いて測定することができる。
【0125】
このとき、前記重合スラリーのpHは、酸性溶液を用いて調節することができ、一例として、ギ酸、または塩酸を用いることができる。
【0126】
前記混練及び押出は、一例として、一軸押出機、二軸押出機、またはバンバリーミキサを通じて行われてもよく、この場合、組成物が均一に分散されて相溶性に優れるという効果がある。
【0127】
前記混練及び押出は、一例としてバレル温度が200~270℃、好ましくは220~270℃である範囲内で行われてもよく、この場合、単位時間当たりの処理量が適切であると共に、十分な溶融混練が可能となり得、樹脂成分の熱分解などの問題を引き起こさないという効果がある。
【0128】
前記混練及び押出は、一例としてスクリュー回転数が200~300rpm、好ましくは250~300rpmである条件下で行われてもよく、この場合、単位時間当たりの処理量が適切であるため、工程効率に優れながらも、過度の切断を抑制するという効果がある。
【0129】
本記載の成形品は、一例として、本記載の熱可塑性樹脂組成物から製造されたものであってもよく、この場合、耐熱性が維持されながらも、耐候性、着色性、加工性及び耐スクラッチ性が向上するという効果がある。
【0130】
前記成形品は、一例として、自動車部品、電気電子部品または建築用資材からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0131】
本記載の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及び成形品を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装置などは、当業界において通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0132】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定するものではない。
【0133】
[実施例]
下記の実施例及び比較例で用いられた物質は、次の通りである。
【0134】
*(B)第1グラフト共重合体:ゴムの平均粒径が120nmであるグラフト共重合体(LG化学社製のSA130)
*(C)第2グラフト共重合体:ゴムの平均粒径が400nmであるグラフト共重合体(LG化学社製のSA927)
*滑剤:エチレンビスステアロアミド(EBA)
*酸化防止剤:ソンウォン産業社製のSongnox 11B
*染料:LG化学社製のBK-39
【0135】
実施例1
<(A)スチレン系共重合体の製造>
反応器にイオン交換水140重量部、メチルメタクリレート(以下、‘MMA’という)86重量部、N-フェニルマレイミド(以下、‘PMI’という)4重量部及びスチレン(以下、‘SM’という)10重量部、開始剤としてt-ブチルペルオキシベンゾエート0.06重量部、分散剤としてリン酸三カルシウム1.3重量部、分子量調節剤としてt-ドデシルメルカプタン0.2重量部を投入し、500rpm下で100℃に昇温して重合を開始し、6時間維持して重合を完了した。
【0136】
製造された重合スラリーにギ酸を投入してスラリーのpHを2.5にし、分散剤を除去した後、水洗、脱水及び乾燥してビーズ状のスチレン系共重合体を製造し、製造された共重合体は、屈折率1.499、ガラス転移温度121.8℃、及び重量平均分子量113,000g/molであった。
【0137】
<熱可塑性樹脂組成物の製造>
前記で製造された(A)スチレン系共重合体75重量部、(B)第1グラフト共重合体20重量部及び(C)第2グラフト共重合体5重量部で構成された共重合体組成物100重量部に、滑剤1重量部、酸化防止剤0.5重量部及び染料0.5重量部を添加して、240℃の押出機(28Φ)に投入してペレット状の樹脂を製造した後、射出して試験片を製造した。
【0138】
実施例2~6
前記(A)スチレン系共重合体の製造時に下記表1の成分及び含量を使用した以外は、前記実施例1と同様の方法を繰り返して試験片を製造した。
【0139】
比較例1~6
前記(A)スチレン系共重合体の製造時に下記表2の成分及び含量を使用した以外は、前記実施例1と同様の方法を繰り返して試験片を製造した。参考に、比較例6では、SMの代わりにα-メチルスチレン(以下、‘AMS’という)を投入した。
【0140】
比較例7
前記(A)スチレン系共重合体の製造工程を、次のように代替した以外は、実施例1と同じ工程を繰り返した。
【0141】
具体的には、トルエン25重量%、メチルメタクリレート67.5重量%、N-フェニルマレイミド2.25重量%及びスチレン5.25重量%で構成された単量体溶液100重量部に、ジクミルペルオキシド0.03重量部を添加した重合溶液を、12kg/hrの速度で145℃の連続反応器に投入して重合した後、250℃の揮発槽を経て未反応単量体と反応溶媒を除去してペレット状に耐熱共重合体を製造した。
【0142】
比較例8
前記実施例1の(A)スチレン系共重合体を、メチルメタクリレート(以下、‘MMA’という)60重量部、アクリロニトリル(以下、‘AN’という)7重量部及びスチレン33重量部を含む(A-1)スチレン系共重合体で代替し、(B)第1グラフト共重合体及び(C)第2グラフト共重合体を下記表2に示した含量範囲で投入した以外は、実施例1と同じ工程を繰り返してペレット状に共重合体を製造した。
【0143】
[試験例]
前記実施例1~6、及び比較例1~8で製造された試験片の物性を下記の方法により測定し、その結果を下記の表1及び表2に示した。
【0144】
物性の測定
*屈折率:ASTM D542に準拠して、アッベ屈折計を用いて25℃で測定した。
【0145】
*重量平均分子量(g/mol):カラム充填物質として多孔性シリカが充填されたゲルクロマトグラフィー(GPC)を介して、温度40℃で、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて、標準PS(Standard Polystyrene)試料に対する相対値を測定した。
【0146】
*ガラス転移温度(℃):示差熱量分析器(製造社:Taインスツルメント、製品名:DISCOVERY DSC25)を用いて測定した。
【0147】
*転化率(重量%):反応器内の重合物を一部取り出して含水率を測定し、下記数式3で実際のサンプルの重量を求めた後、THF/MeOHで溶かした後、沈殿させ、浮遊物を乾燥させて測定された重量をもって、下記数式4を用いて算出した。
【0148】
[数式3]
実際のサンプルの重量=(取り出された反応物)-(取り出された反応物×含水率/100)
【0149】
[数式4]
重合転化率(%)=(乾燥後のサンプル)/(乾燥前のサンプル)×100
【0150】
*残留オリゴマー含量(重量%):サンプル1gをクロロホルム10mLに溶解させた後、メタノールで高分子を沈殿させ、試料の上澄液を取り、0.2μmのディスクシリンジフィルターを使用して濾過した後、ALS-GC/FIDを用いて分析した。
【0151】
*アイゾット衝撃強度(kgf・cm/cm):厚さ1/4”の試験片を用いてASTM D256に準拠して測定した。
【0152】
*流動性(g/10分):ASTM D1238に準拠して、220℃、10kgの荷重下で10分間測定した。
【0153】
*熱変形温度(℃):ASTM D648に準拠して、厚さ6.4mmの試験片を用いて18.6kgf/cm2の荷重下で測定した。
【0154】
*鉛筆硬度:鉛筆硬度計(Cometech社)を用いて、ASTM D3363に準拠して、荷重0.5kg、角度45°で鉛筆を固定させた後、試験片の表面を硬度別(2B、B、HB、F、Hの順)に引っ掻き、引っ掻かれたか否かを目視で測定した。
【0155】
*着色性(黒色度:Color L):CIE1976 L*a*b*表色系に準拠して、カラーメータ(製品名:Color Eye 7000A)を用いてcolor L値を測定した。このとき、Lが100であると純白色、Lが0であると純黒色をそれぞれ意味するもので、L値が低いほどブラック感に優れることを示す。
【0156】
*耐候性(ΔE):耐候性測定装置(QUV)により測定し、測定条件は、UVランプの照度0.77W/m2、湿度50%、ブラックパネル(BLACK PANEL)の温度60℃、20時間滞留後であり、ΔEは、下記数式2で計算された滞留前後のハンターLab値の算術平均値であり、その値が0に近いほど耐候性に優れることを意味する。
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
前記表1及び表2に示したように、本発明によって製造された実施例1~6は、本発明の範囲を外れた比較例1~8と比較して、衝撃強度、耐熱性及び耐候性に優れながらも、流動性、熱変形温度、鉛筆硬度(耐スクラッチ性)及び着色性に優れるという効果が確認できた。
【0161】
また、前記表1において、本発明によって製造された実施例1~6の(A)スチレン系共重合体は、屈折率が低くなり、ガラス転移温度が上昇し、これによって、樹脂組成物の着色性及び熱変形温度が改善される効果があった。
【0162】
反面、前記表2において、比較例1~8によると、残留オリゴマー含量が全て0.38重量%以上であった。
【0163】
また、(A)スチレン系共重合体においてSM/MMAの重量比が1:2.46~1:3.5、または1:4.8~1:8.6を満たさない比較例2及び3は、共通して鉛筆硬度(耐スクラッチ性)が不良であり、特に、比較例2よりも使用するMMAの含量がさらに少量である比較例3の場合、流動性、熱変形温度、着色性が全て不良になる結果が確認できた。
【0164】
また、SM/MMAの重量比が1:2.46未満である比較例5、そして、SM/MMAの重量比が1:8.6を超える比較例1では、スチレン系共重合体の重量平均分子量が不良であるため、鉛筆硬度(耐スクラッチ性)が劣った。
【0165】
また、SMと比較してPMIの含量が著しく少ない比較例4では、Tg及び熱変形温度が低いだけでなく、鉛筆硬度(耐スクラッチ性)が不良であった。
【0166】
また、スチレンの代わりにアルキル置換された芳香族ビニル系化合物を使用した比較例6では、重合転化率が低下するだけでなく、残留オリゴマー含量が増加し、屈折率の上昇により着色性が低下した。
【0167】
一方、塊状重合を用いた比較例7では、スチレン系共重合体の重量平均分子量が不良であるため、鉛筆硬度(耐スクラッチ性)が劣悪になるか、または残留オリゴマー含量が増加した。
【0168】
さらに、耐熱性単量体を含まない透明スチレン系共重合体を使用した比較例8では、透明残留オリゴマー含量が適切な範囲内であるとしても、耐熱性が非常に低下するだけでなく、鉛筆硬度(耐スクラッチ性)及び着色性が著しく劣悪であった。
【0169】
結論的に、ゴムの粒径が異なるグラフト共重合体に加え、特定の屈折率、分子量、ガラス転移温度及び残留オリゴマー含量を有するスチレン系共重合体を含む場合、耐候性及び耐熱性に優れながらも、着色性、加工性及び耐スクラッチ性が全て優れた成形品に適する熱可塑性樹脂組成物を提供することが確認できた。