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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/012 20060101AFI20231205BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20231205BHJP
   H01B 13/26 20060101ALI20231205BHJP
   H01B 13/24 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H01B13/012 B
H01B7/00 301
H01B13/26 A
H01B13/24 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019037316
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020140922
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-07-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】早川 良和
(72)【発明者】
【氏名】江島 弘高
(72)【発明者】
【氏名】二ツ森 敬浩
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-259297(JP,A)
【文献】特開2013-143848(JP,A)
【文献】特開2012-146591(JP,A)
【文献】特開2017-117702(JP,A)
【文献】特開2014-220043(JP,A)
【文献】特開2004-006108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/012
H01B 7/00
H01B 13/26
H01B 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線の長手方向の一部を撚り合わせる撚合工程と、
前記複数の電線を撚り合わせた撚合部の周囲に押さえ巻きテープを巻き付けるテープ巻き工程と、
前記押さえ巻きテープが巻き付けられたテープ巻き部から前記テープ巻き部の両端部から延出されている前記複数の電線の長手方向の一部にかけて、これらの周囲を覆うように樹脂をモールドしてシースを形成するシース成形工程と、を備えた、
ワイヤハーネスの製造方法。
【請求項2】
前記撚合工程の前に、前記電線の端部に端末部材を設ける端末加工工程をさらに備えた、
請求項1に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項3】
前記押さえ巻きテープが粘着層を有しておらず、
前記テープ巻き工程では、前記撚合部の周囲に前記押さえ巻きテープを螺旋状に巻き付けて前記テープ巻き部を形成した後、前記テープ巻き部の両端部それぞれの外周面に粘着テープを巻き付けることで、前記押さえ巻きテープを固定する、
請求項1または2に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項4】
前記シース成形工程の後、前記シースを形成したケーブル部の外周であって、かつ前記ケーブル部の長手方向における前記粘着テープの間の位置に、前記ケーブル部を固定対象部材に取り付けるための固定具を取り付ける固定具取付工程をさらに備えた、
請求項3に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項5】
前記複数の電線は、複数の電源線と、1本以上の信号線と、を含む、
請求項1乃至4の何れか1項に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項6】
前記電源線は、車両の停車後に車輪の回転を抑止するための電動パーキングブレーキ装置に接続される電動パーキングブレーキ装置専用の電源線である、
請求項5に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項7】
前記信号線は、車輪の回転速度を測定するためのABSセンサのセンサ部に接続されるABSセンサ専用の信号線である、
請求項5または6に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項8】
前記シース成形工程では、前記シースと一体に、前記電線の延出方向を規制するための規制部を形成する、
請求項1乃至7の何れか1項に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のワイヤハーネスとして、複数の電線をシースで一括して覆ったケーブルを用い、各電線の端部にコネクタ等の端末部材を設けたものが知られている。従来、このようなワイヤハーネスを製造する際には、ケーブルの端末部分においてシースを除去して各電線を露出させ、各電線の端部にそれぞれ端末部材を設けていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/103499号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワイヤハーネスとして、シースで覆われた部分が短く、シースで覆われない部分(シースから電線が露出されている部分)が非常に長いものがある。このようなワイヤハーネスを製造する場合、シースを剥ぎ取る区間が長くなるため、シースを剥ぎ取る作業に手間がかかってしまい、またシースとなる材料の無駄が多くなってしまうという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、シースを剥ぎ取る作業の手間を抑制可能であり、シースとなる材料の無駄が少ないワイヤハーネスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の電線の長手方向の一部を撚り合わせる撚合工程と、前記複数の電線を撚り合わせた撚合部の周囲に押さえ巻きテープを巻き付けるテープ巻き工程と、前記押さえ巻きテープが巻き付けられたテープ巻き部から前記テープ巻き部の両端部から延出されている前記複数の電線の長手方向の少なくとも一部にかけて、これらの周囲を覆うように樹脂をモールドしてシースを形成するシース成形工程と、を備えた、ワイヤハーネスの製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の電線と、前記複数の電線を撚り合わせた撚合部の周囲に巻き付けられた押さえ巻きテープと、前記押さえ巻きテープが巻き付けられたテープ巻き部から前記テープ巻き部の両端部から延出されている前記複数の電線の長手方向の少なくとも一部にかけて、これらの周囲を覆うように設けられたシースと、を備えた、ワイヤハーネスを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シースを剥ぎ取る作業の手間を抑制可能であり、シースとなる材料の無駄が少ないワイヤハーネスの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係るワイヤハーネスを示す図であり、(a)は概略構成図、(b)はそのA-A線断面図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るワイヤハーネスの製造方法を説明する図であり、(a)は端末加工工程、(b)は撚合工程、(c)はテープ巻き工程を説明する図である。
図3】(a)はテープ巻き工程における押さえ巻きテープの固定を説明する図であり、(b)はシース成形工程を説明する図である。
図4】固定具取付工程を説明する図である。
図5】ワイヤハーネスの一変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係るワイヤハーネスを示す図であり、(a)は概略構成図、(b)はそのA-A線断面図である。
【0013】
図1(a),(b)に示すように、ワイヤハーネス1は、複数の電線2と、複数の電線2を撚り合わせた撚合部3の周囲に巻き付けられた押さえ巻きテープ4と、押さえ巻きテープ4が巻き付けられたテープ巻き部5、及び、テープ巻き部5の両端部から延出されている複数の電線2の周囲を覆うように設けられたシース6と、を備えている。
【0014】
本実施の形態では、複数の電線2は、2本の電源線21と、1本の信号線22と、から構成されている。なお、電線2の本数はこれに限定されず、3本以上の電源線21を有していてもよいし、2本以上の信号線22を有していてもよい。また、電源線21と信号線22のいずれか一方のみを有していてもよい。
【0015】
電源線21は、第1導体21aと、第1導体21aの外周を覆う第1絶縁体21bと、を有している。第1導体21aは、銅等からなる素線を複数本撚り合わせた親撚り線を複数用い、さらに複数の親撚り線を撚り合わせた複合撚り線からなる。親撚り線は、複数本の素線を集合撚りして構成され、第1導体21aは、複数本の親撚り線を同心撚りして構成される。
【0016】
第1導体21aとして複合撚り線からなるものを用いることで、電源線21の柔軟性(可とう性)を高めて、配策しやすくすることができる。また、第1導体21aとして複合撚り線からなるものを用いることで、信号線22との剛性の差を少なくし、電源線21と信号線22とを撚り合わせた際に、自然に捩れて蛇行してしまうような曲がり癖(以下、単に曲がり癖という)がついてしまうことを抑制できる。
【0017】
電源線21の第1導体21aに用いる素線としては、外径が0.08mm以上0.16mm以下のものを用いるとよい。これは、素線の外径が0.08mm未満であると、電源線21を曲げた際等(特にシース6で覆った部分で曲げた際)に素線が断線しやすくなり、素線の外径が0.16mmを超えると、第1導体21aが硬くなり、電源線21の剛性が高くなってしまうため、配策性が低下してしまい、また信号線22との剛性の差が大きくなって撚り合わせた際に曲がり癖が生じたりするおそれがあるためである。
【0018】
第1絶縁体21bは、例えば、XLPE(架橋ポリエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)などからなる。
【0019】
電源線21は、車両の停車後に車輪の回転を抑止するための電動パーキングブレーキ装置(不図示)に接続される電動パーキングブレーキ専用の電源線である。電動パーキングブレーキ装置に電源供給する時間は短く、また後述するABSセンサが使用されない停車時に電源供給が行われるため、電源線21は、ノイズ対策用のシールド導体を有していない。電源線21の両端部には、電動パーキングブレーキ装置、あるいは制御装置に接続するためのコネクタ7がそれぞれ設けられている。コネクタ7は、本発明の端末部材の一態様である。
【0020】
信号線22は、一対の絶縁電線221を撚り合わせた対撚線222と、対撚線222を一括して覆う内部シース223と、を有している。対撚線222を構成する絶縁電線221は、銅等からなる素線を複数本撚り合わせた第2導体221aと、第2導体221aの外周を覆う第2絶縁体221bと、を有している。第2絶縁体221bは、例えば、XLPE(架橋ポリエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)などからなる。本実施の形態では、内部シース223をウレタン樹脂で構成した。
【0021】
信号線22は、車輪の回転速度を測定するためのABSセンサのセンサ素子を収容するケース8に接続されるABSセンサ専用の信号線である。信号線22のケース8と反対側の端部には、制御装置に接続するためのコネクタ9が設けられている。ケース8及びコネクタ9は、本発明の端末部材の一態様である。本実施の形態において、ケース8は、信号線22の端部に樹脂モールドされることにより形成された樹脂成形体であり、ケース8と信号線22の端部とは樹脂モールドにより一体化されている。
【0022】
2本の電源線21と1本の信号線22とは、その長手方向の一部において撚り合わされており、その撚合部3の周囲に、押さえ巻きテープ4が巻き付けられている。電線2を撚り合わせることにより、屈曲や揺動に対する耐久性が向上する。
【0023】
押さえ巻きテープ4としては、粘着層を有さないものを用いるとよく、例えば、紙や不織布、樹脂テープ等からなるものを用いることができる。押さえ巻きテープ4は、電源線21と信号線22との撚りが解けてしまうことを抑制する役割と、シース6の成形時にシース6と内部シース223とが溶着されてしまうことを抑制し、電源線21や信号線22の屈曲や揺動に対する耐久性を向上する役割を果たす。また、押さえ巻きテープ4が粘着層を有していないため、押さえ巻きテープ4内で電線2が動くことが可能となっており、これにより、電源線21や信号線22の屈曲や揺動に対する耐久性が向上されている。
【0024】
図1(a),(b)では図示されていないが、押さえ巻きテープ4が巻き付けられたテープ巻き部5の両端部には、粘着テープ41が巻き付けられている(図3(a)参照)。粘着テープ41は、非粘着の押さえ巻きテープ4が解けてしまわないように固定する役割を果たすものであり、テープ巻き部5の両端部それぞれの外周面に環状に巻き付けられ粘着固定されている。これにより、電源線21と信号線22との撚りがより解けにくくなる。なお、粘着テープ41が電線2に粘着固定されると、テープ巻き部5(後述するケーブル部10)が曲げられた際に押さえ巻きテープ4内で電線2が動きにくくなり、屈曲や揺動に対する耐久性が低下してしまうおそれがある。そのため、粘着テープ41は、電線2に粘着固定されないように、テープ巻き部5の外周面に粘着固定されている。
【0025】
シース6は、押さえ巻きテープ4が巻き付けられたテープ巻き部5からテープ巻き部5の両端部から延出されている複数の電線2の長手方向の少なくとも一部にかけて、これらの周囲を覆うように設けられている。特に、本実施の形態においては、シース6は、テープ巻き部5の両端部から延出されている複数の電線2の長手方向の一部の全周を覆っている。本実施の形態では、シース6は、ウレタン系樹脂からなる。以下では、このシース6を形成した部分をケーブル部10と呼称する。シース6は、ケーブル部10が長手方向にわたって略円柱状となるように、ケーブル部10の長手方向にわたって断面外形が略円形に形成されている。そして、その略円形の径は、ケーブル部10の長手方向にわたって略一定である。ここで、「略一定」とは、±3%程度の誤差を含むものである。なお、シース6の材料としては、ウレタン系樹脂のみならず、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、フッ素樹脂、ポリエチレン等を用いてもよい。
【0026】
テープ巻き部5だけでなく、テープ巻き部5の両端部から延出されている複数の電線2の周囲までを覆うようにシース6を形成することで、シース6が各電線2の外周面に密着し、シース6内に水分が浸入してしまうことを抑制可能になる。
【0027】
ケーブル部10には、ケーブル部10を車体等の固定対象部材に固定するための固定具11が取り付けられている。ここでは、車輪側と車体側にそれぞれ固定するために、2つの固定具11がケーブル部10の両端部に設けられている。固定具11は、例えば板状の金属からなり、その一部をケーブル部10の外周面に巻き付けるように変形させて、ケーブル部10を狭持させることで、ケーブル部10の外周に固定される。本実施の形態においては、固定具11は、ケーブル部10の外周に直接取り付けられるものとしたが、固定具11は、例えばEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等からなる筒状のゴム部材を介してケーブル部10の外周に取り付けられてもよい。ケーブル部10における2つの固定具11の間の部分は、車両走行の際における転舵により複数回屈曲する屈曲部である。
【0028】
また、固定具11は、ケーブル部10の長手方向において、テープ巻き部5の両端部に設けられた粘着テープ41の間の位置(すなわち、粘着テープ41よりも内側の位置)に設けられている(図4参照)。これは、粘着テープ41よりも外側に固定具11が設けられていると、押さえ巻きテープ4内で電線2が動きにくくなり、屈曲や揺動に対する耐久性が低下してしまうおそれがあるためである。
【0029】
(ワイヤハーネス1の製造方法)
次に、本実施の形態に係るワイヤハーネスの製造方法について図2乃至図4を用いて説明する。
【0030】
まず、図2(a)に示すように、複数の電線2それぞれの両端部に端末部材を設ける端末加工工程を行う。本実施の形態では、2本の電源線21の両端部それぞれにコネクタ7を設けると共に、信号線22の一端部にセンサ素子を収容するケース8、その他端部にコネクタ9を設ける。なお、端末加工工程では、一部の端末部材(例えばケース8)のみを設けるようにし、他の端末部材(例えばコネクタ7,9)を後述するシース成形工程後に設けるようにしてもよい。
【0031】
端末加工工程の後、図2(b)に示すように、複数の電線2の長手方向の一部を撚り合わせる撚合工程を行う。これにより、複数の電線2が撚り合わされた撚合部3が形成される。撚合部3の長さは、ケーブル部10の長さ(シース6の長さ)よりも短くされる。
【0032】
撚合工程の後、図2(c)に示すように、撚合部3の周囲に押さえ巻きテープ4を巻き付けるテープ巻き工程を行う。これにより、押さえ巻きテープ4が巻き付けられたテープ巻き部5が形成される。テープ巻き部5の長さは、撚合部3の長さと略同じとされる。なお、ここでは、端末加工工程の後に撚合工程を行ったが、撚合工程の後に端末加工工程を行ってもよい。
【0033】
また、テープ巻き工程では、撚合部3の周囲に押さえ巻きテープ4を螺旋状に巻き付けてテープ巻き部5を形成した後、図3(a)に示すように、テープ巻き部5の両端部それぞれの外周面に粘着テープ41を環状に巻き付けることで、押さえ巻きテープ4を固定する。
【0034】
テープ巻き工程の後、図3(b)に示すように、テープ巻き部5、及び、テープ巻き部5の両端部から延出されている複数の電線2の周囲を覆うように樹脂をモールドしてシース6を形成するシース成形工程を行う。これにより、シース6に覆われたケーブル部10が形成される。シース成形工程では、テープ巻き部5とその近傍の電線2を金型に収容し、金型内に樹脂を流し込むことでシース6を形成する。
【0035】
シース成形工程の後、図4に示すように、ケーブル部10の外周に固定具11を取り付ける固定具取付工程を行う。固定具取付工程では、ケーブル部10の両端部それぞれに固定具11を取り付けるが、この際、ケーブル部10の長手方向における粘着テープ41の間の位置(つまり粘着テープ41よりも内側の位置)に、両固定具11を取り付ける。以上により、ワイヤハーネス1が得られる。
【0036】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るワイヤハーネスの製造方法では、複数の電線2の長手方向の一部を撚り合わせる撚合工程と、複数の電線2を撚り合わせた撚合部3の周囲に押さえ巻きテープ4を巻き付けるテープ巻き工程と、押さえ巻きテープ4が巻き付けられたテープ巻き部5からテープ巻き部5の両端部から延出されている複数の電線2の長手方向の少なくとも一部にかけて、これらの周囲を覆うように樹脂をモールドしてシース6を形成するシース成形工程と、を備えている。
【0037】
従来のようにケーブルの端末部分のシースを除去して各電線を露出させ、各電線の端部にそれぞれ端末部材を設ける方法では、シースを剥ぎ取る区間が長くなると、剥ぎ取り作業に手間がかかり、また材料の無駄が多くなってしまっていた。また、この従来の方法では、シースを剥ぎ取った後に各電線の端部に順番に端末部材を設ける必要があることから、端末加工に時間がかかり、端末加工時の取り回し性(加工しやすさ)も十分でないという課題もあった。
【0038】
これに対して、本実施の形態に係るワイヤハーネスの製造方法では、必要な部分のみにシース6を設けるために、シース6を剥ぎ取る必要がなくなる。そのため、シース6を剥ぎ取る作業の手間を抑制可能であり、シース6となる材料の無駄を少なくすることが可能となる。さらに、予め端末部材を設けた電線を準備しておけばよいので、製造時間を短縮でき量産性を向上できると共に、端末加工時の取り回し性も向上させることができる。また、テープ巻き部5とその両端部から延出されている複数の電線2の周囲を覆うようにシース6を形成することで、シース6内に水分が浸入してしまうことを抑制可能になる。特に、上記屈曲部(2つの固定具11の間の部分における複数の電線2とテープ巻き部5との間)に水が浸入すると、氷点下の環境下において上記屈曲部に浸入した水が凍結し、当該凍結した状態で上記屈曲部が揺動すると、複数の電線2やシース6が損傷するおそれがある。しかしながら、テープ巻き部5とその両端部から延出されている複数の電線2の周囲を覆うようにシース6を形成することで、当該おそれを抑制可能になる。さらにまた、ケーブル部10からの電線2の延出長等を適宜調整できるため、配策レイアウトの変更に容易に追随させることができる。
【0039】
(変形例)
本実施の形態では、ケーブル部10を曲げていない状態において、略円柱状となるようにケーブル部10を形成したが、これに限らず、ケーブル部10の形状は適宜変更可能である。例えば、図5に示すワイヤハーネス1aのように、ケーブル部10は、その両端部に、電線2の延出方向を規制するための規制部10a,10bを有していても良い。規制部10a,10bは、シース成形工程にて、シース6と一体に成形されるとよい。ここでは、電源線21の延出方向を規制する第1規制部10aと、信号線22の延出方向を規制する第2規制部10bとを設けているが、第1規制部10aと第2規制部10bのいずれか一方のみを形成してもよい。図5の例では、電源線21をケーブル部10から直線状に(ケーブル部10の延長線上に)延出し、信号線22を電源線21の延出方向に対して斜め方向に延出されるように(つまり、電源線21と信号線22とが異なる方向に延出されるように)構成しているが、電線2の延出方向は適宜変更可能である。なお、規制部10a,10bは、シース6の一部であり、シース6と別体に形成されたものではない。つまり、規制部10a,10bは、規制部10a,10bを除く部分のシース6と溶着や密着等により一体に形成されているわけではなく、シース6の一部を構成するようにシース6と一体に形成されたものである。例えば、本実施の形態における規制部10a,10bは、シース6に(シース6とは別部材である)モールド樹脂を樹脂モールドすることにより形成されたものではない。
【0040】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0041】
[1]複数の電線(2)の長手方向の一部を撚り合わせる撚合工程と、前記複数の電線(2)を撚り合わせた撚合部(3)の周囲に押さえ巻きテープ(4)を巻き付けるテープ巻き工程と、前記押さえ巻きテープ(4)が巻き付けられたテープ巻き部(5)から前記テープ巻き部(5)の両端部から延出されている前記複数の電線(2)の長手方向の少なくとも一部にかけて、これらの周囲を覆うように樹脂をモールドしてシース(6)を形成するシース成形工程と、を備えた、ワイヤハーネスの製造方法。
【0042】
[2]前記撚合工程の前に、前記電線(2)の端部に端末部材(7,8,9)を設ける端末加工工程をさらに備えた、[1]に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【0043】
[3]前記押さえ巻きテープ(4)が粘着層を有しておらず、前記テープ巻き工程では、前記撚合部(3)の周囲に前記押さえ巻きテープ(4)を螺旋状に巻き付けて前記テープ巻き部(5)を形成した後、前記テープ巻き部(5)の両端部それぞれの外周面に粘着テープ(41)を巻き付けることで、前記押さえ巻きテープ(4)を固定する、[1]または[2]に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【0044】
[4]前記シース成形工程の後、前記シース(6)を形成したケーブル部(10)の外周であって、かつ前記ケーブル部(10)の長手方向における前記粘着テープ(41)の間の位置に、前記ケーブル部(10)を固定対象部材に取り付けるための固定具(11)を取り付ける固定具取付工程をさらに備えた、[3]に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【0045】
[5]前記複数の電線(2)は、複数の電源線(21)と、1本以上の信号線(22)と、を含む、[1]乃至[4]の何れか1項に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【0046】
[6]前記電源線(21)は、車両の停車後に車輪の回転を抑止するための電動パーキングブレーキ装置に接続される電動パーキングブレーキ装置専用の電源線である、[5]に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【0047】
[7]前記信号線(22)は、車輪の回転速度を測定するためのABSセンサのセンサ部(8)に接続されるABSセンサ専用の信号線である、[5]または[6]に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【0048】
[8]前記シース成形工程では、前記シース(6)と一体に、前記電線(2)の延出方向を規制するための規制部(10a,10b)を形成する、[1]乃至[7]の何れか1項に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【0049】
[9]複数の電線(2)と、前記複数の電線(2)を撚り合わせた撚合部(3)の周囲に巻き付けられた押さえ巻きテープ(4)と、前記押さえ巻きテープ(4)が巻き付けられたテープ巻き部(5)から前記テープ巻き部(5)の両端部から延出されている前記複数の電線(2)の長手方向の少なくとも一部にかけて、これらの周囲を覆うように設けられたシース(6)と、を備えた、ワイヤハーネス(1)。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0051】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…ワイヤハーネス
2…電線
21…電源線
22…信号線
3…撚合部
4…押さえ巻きテープ
41…粘着テープ
5…テープ巻き部
6…シース
7,9…コネクタ(端末部材)
8…センサ部(端末部材)
10…ケーブル部
10a,10b…規制部
11…固定具
図1
図2
図3
図4
図5