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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】研磨パッド及び研磨パッド用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20231205BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20231205BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20231205BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20231205BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20231205BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20231205BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20231205BHJP
   C08G 18/16 20060101ALI20231205BHJP
   C08J 5/14 20060101ALI20231205BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20231205BHJP
   H01L 21/304 20060101ALN20231205BHJP
【FI】
C08G18/10
C08G18/76
C08G18/42
C08G18/48
C08G18/75
C08G18/72 040
C08G18/32 037
C08G18/16
C08J5/14 CFF
B24B37/24 C
H01L21/304 622F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019109530
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020200416
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】小田 善之
【審査官】山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-223833(JP,A)
【文献】特開2012-211286(JP,A)
【文献】特開2017-197679(JP,A)
【文献】特開2003-171433(JP,A)
【文献】特開2009-190121(JP,A)
【文献】特開2007-163860(JP,A)
【文献】特開2017-226828(JP,A)
【文献】特開2018-108636(JP,A)
【文献】特開昭61-026616(JP,A)
【文献】特開平06-298893(JP,A)
【文献】特開2006-022293(JP,A)
【文献】特開2008-008957(JP,A)
【文献】特開2011-105907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00 - 18/87
C08G 71/00 - 71/04
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
B24B 3/00 - 3/60
B24B 21/00 - 39/06
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマー(A)を含む主剤(i)と、硬化剤(ii)と、水を含む助剤(iii)を含み、
前記ウレタンプレポリマー(A)が、ウレタンプレポリマー(A1)及びウレタンプレポリマー(A2)を含むものであり、
前記ウレタンプレポリマー(A1)が、ポリエステルポリオール(x1)とポリイソシアネート(y1)との反応物であり、
前記ポリエステルポリオールに含まれるエステル結合基濃度が、9モル/kg以下であり、
前記ウレタンプレポリマー(A2)が、ポリオール(x2)とポリイソシアネート(y2)との反応物であり、
前記ポリイソシアネート(y1)における芳香族ポリイソシアネートの含有率が50質量%以上であり、
前記ポリイソシアネート(y2)における芳香族ポリイソシアネートの含有率が50質量%未満であることを特徴とするウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオール(x2)が、ポリエーテルポリオールを含むものである請求項1記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート(y2)が、脂環式ポリイソシアネートを含むものである請求項1又は2記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が、1,000以上3,000以下である請求項1記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基当量が、200以上500以下である請求項1~4のいずれか1項記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記硬化剤(ii)が、芳香族アミン化合物を含むものである請求項1~5のいずれか1項記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記硬化剤(ii)が、さらに、酸触媒を含むものである請求項1~6のいずれか1項記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
研磨パッド用である請求項1~のいずれか1項記載のウレタン樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド、研磨パッドの製造方法及び研磨方法に関する。本発明の研磨パッドは、ガラス基板、シリコンウェハ、半導体デバイス等の研磨に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ用(LCD)用ガラス基板、ハードディスク(HDD)用ガラス基板、記録装置用ガラスディスク、光学用レンズ、シリコンウェハ及び半導体デバイス等には、高度な表面平坦性と面内均一性が要求されており、こうした要求特性を満たすべく、その表面の研磨が行われている。
【0003】
特に、前記半導体デバイスでは、半導体回路の集積度が急激に増大するにすれて高密度化を目的とした微細化や多層配線化が進められ、他方、前記液晶ディスプレイ用基板においても、液晶ディスプレイの大型化が進められており、加工面のより高度な表面平坦性が要求されている。そのため、研磨加工における研磨精度や研磨効率等の要求特性がさらに高まっている。
【0004】
研磨精度や研磨効率を向上するため、化学的機械的研磨法(Chemical Mechanical Polishing法;CMP法)が広く採用されている。CMP法では、通常、砥粒(研磨粒子)をアルカリ溶液又は酸溶液に分散させたスラリー(研磨液)を研磨加工面に供給し、研磨パッドを用いてその供給面を研磨することにより研磨加工を行う遊離砥粒方式を採用している。その結果、被研磨物(の加工面)は、スラリー中の砥粒による機械的作用と、アルカリ溶液又は酸溶液による化学的作用との双方により平坦化される。
【0005】
こうした研磨パッドを製造する方法として、例えば、トルエンジイソシアネートと4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートとを用いてウレタンプレポリマーを製造し、このウレタンプレポリマーと硬化剤とを反応させて研磨パッドの原料であるポリウレタン発泡体ブロックを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1ご参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-194563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、研磨パッドの研磨特性として被研磨材の平坦性(プラナリティー)及び面内均一性に優れることが強く要求されている。被研磨材の平坦性及び面内均一性は、研磨層を高弾性率化することによりある程度改善できることが広く知られている。しかしながら、高硬度研磨パッドのウレタン樹脂組成物とすると、(すなわち、イソシアネート当量(NCO当量)を低い範囲にすると)、どうしても反応が速くなってしまい(ポットライフが短くなってしまい)、製造が困難になる(成形できなくなる)。また、高硬度組成だと耐磨耗性が落ちてしまう傾向があった。例えば、特許文献1に記載の研磨パッド用の組成物では、ウレタンプレポリマー製造時にウレタン化触媒を用いていないため、反応性の低い4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートはウレタンプレポリマーの反応に寄与せず残存すること、そのため、研磨パッドの硬度を高めること(高弾性率化)は可能であるものの、ポットライフ(主剤と硬化剤とを混合してから、安定的な製造が可能な粘度を維持できる時間)が短くなり、成形が困難になる場合があること、また、耐摩耗性が十分でない場合があることが明らかになった。ポットライフが短いと、硬化までの時間が短いため、混合不良となり、品質が安定しない、あるいは研磨パッドの製造自体が困難になる場合がある。本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高硬度研磨パッドを得ることであり、さらに、得られる研磨パッドの硬度を高めつつ、ポットライフを長くして製造安定性を高め、さらに耐摩耗性を向上することが可能な組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ウレタン樹脂組成物の主剤にウレタンプレポリマーを2種類用い、それぞれのウレタンプレポリマーに用いる芳香族ポリイソシアネートの含有率を異なるものとすることで、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明のウレタン樹脂組成物は、ウレタンプレポリマー(A)を含む主剤(i)と、硬化剤(ii)とを含み、前記ウレタンプレポリマー(A)が、ウレタンプレポリマー(A1)及びウレタンプレポリマー(A2)を含むものであり、前記ウレタンプレポリマー(A1)が、ポリオール(x1)とポリイソシアネート(y1)との反応物であり、前記ウレタンプレポリマー(A2)が、ポリオール(x2)とポリイソシアネート(y2)との反応物であり、前記ポリイソシアネート(y1)における芳香族ポリイソシアネートの含有率が50質量%以上であり、前記ポリイソシアネート(y2)における芳香族ポリイソシアネートの含有率が50質量%未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウレタン樹脂組成物は、研磨パッド成形性を維持したまま、粘度を抑制し、さらに、得られる研磨パッドの硬度を高めることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のウレタン樹脂組成物は、主剤(i)と、硬化剤(ii)とを含む。なお本発明において、主剤(i)、硬化剤(ii)は、それぞれ、ウレタンプレポリマー(A)、架橋性化合物以外の成分を含んでいてもよく、それぞれ、主剤(i)、硬化剤(ii)の組成物である場合も包含する。
【0012】
前記主剤(i)は、ウレタンプレポリマー(A)を含むものであり、前記ウレタンプレポリマー(A)は、ウレタンプレポリマー(A1)及びウレタンプレポリマー(A2)を含む。前記ウレタンプレポリマーは、末端にイソシアネート基を有するものであることが好ましい。
【0013】
前記ウレタンプレポリマー(A1)は、ポリオール(x1)とポリイソシアネート(y1)との反応物である。
【0014】
前記ポリオール(x1)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール等のポリマーポリオール;低分子量ポリオール等が挙げられる。
【0015】
前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシアルキレンポリオールが好ましく、必要に応じ活性水素原子を2個以上有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として用いて、塩基触媒の存在下、アルキレンオキシド等の環状エーテルを開環重合させたものが挙げられ、または、カルボン酸無水物を酸触媒(例えば、ブレンステッド酸、ルイス酸等の固体酸触媒など)の存在下、開始剤として環状エーテルを開環重合させ、次いで、塩基性触媒の存在下、メタノール等の低級アルコールでエステル交換反応して得られたもの等が挙げられる。
【0016】
前記環状エーテルの炭素原子数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4である。前記環状エーテルに含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。前記環状エーテルとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、テトラヒドロフラン、アルキル化テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0017】
前記開始剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、水等の活性水素原子を2個有する化合物;グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ペンタエリスリトール、糖類等の活性水素原子を3個以上有する化合物などが挙げられる。
【0018】
前記カルボン酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸等が挙げられる。
【0019】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオール(例えば、分子量50以上300以下のポリオール)とポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオール;ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルポリオール;これらの共重合ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0020】
前記ポリエステルポリオールの製造に用いられる低分子量ポリオールとしては、分子量が50以上300以下程度のポリオールを用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、トリメチルールプロパン、グリセリン等の炭素原子数2以上6以下の脂肪族ポリオール(ジオール又は3官能以上のポリオール);1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式構造含有ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物及びそれらのアルキレンオキシド付加物等の芳香族構造含有ポリオールなどが挙げられる。
【0021】
前記ポリエステルポリオールの製造に用いられるポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;並びに前記脂肪族ポリカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸の無水物又はエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0022】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルとポリオールとの反応物;ホスゲンとビスフェノールA等との反応物などが挙げられる。
【0023】
前記炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0024】
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えば、上記低分子量ポリオールとして例示したポリオール;ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、ポリエステルポリオール(ポリヘキサメチレンアジペート等)等の高分子量ポリオール(重量平均分子量500以上5,000以下)などが挙げられる。
【0025】
前記ポリラクトンポリオールとしては、前記ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる1種以上及び/又は前記ポリエステルポリオールの製造に用いられる低分子量ポリオールを開始剤として、ラクトン化合物と反応(付加)させたもの等を用いることができる。
【0026】
前記ラクトン化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、δ-バレロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、β-メチル-ε-カプロラクトン、γ-メチル-ε-カプロラクトン、β、δ-ジメチル-ε-カプロラクトン、3,3,5-トリメチル-ε-カプロラクトン、エナントラクトン(7-ヘプタノリド)、ドデカノラクトン(12-ドデカノリド)等を用いることができる。
【0027】
前記ラクトン化合物の付加率は、前記ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる1種以上及び/又は前記低分子量ポリオールの合計100質量部に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0028】
前記ポリマーポリオールの官能数は、2以上であり、3以上であってもよく、5以下であることが好ましい。
【0029】
前記ポリマーポリオールの数平均分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは500以上であり、好ましくは5,000以下、より好ましくは3,000以下である。
【0030】
前記ポリオール(x1)として、ポリエステルポリオールが含まれる場合、前記ポリエステルポリオールの数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは1,500以上であり、好ましくは5,000以下、より好ましくは3,000以下である。
【0031】
前記ポリエステルポリオールに含まれるエステル結合基濃度は、好ましくは20モル/kg以下、より好ましくは12モル/kg以下、さらに好ましくは9モル/kg以下であり、下限は0モル/kgであり、例えば0.1モル/kg以上、1モル/kg以上、3モル/kg以上であってもよい。前記エステル結合基濃度は、ポリエステルポリオール合成に用いた原料及びその配合量に基づいて算出することができる。
【0032】
本明細書において、重量平均分子量、数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ法により、ポリスチレンを標準試料とした換算値として測定することができる。
【0033】
前記ポリオール(x1)中、前記ポリマーポリオールの含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0034】
前記ポリオール(x1)としての低分子量ポリオールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、2-イソプロピル-1,4-ブタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等の脂肪族ジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン等の脂肪族トリオール;シクロヘキサンジメタノール(例えば1,4-シクロヘキサンジメタノール)、シクロヘキサンジオール(例えば1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール)、2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン等の脂環式ジオールなどが挙げられる。
【0035】
前記ポリオール(x1)中、前記低分子量ポリオールを含む場合、前記低分子量ポリオールの含有量は、前記ポリマーポリオール100質量部に対して、好ましくは25質量部以下、より好ましくは10質量部以下であり、下限は0質量部である。
【0036】
前記ポリオール(x1)は、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオール(好ましくはポリエステルポリオール)を含むものであることが好ましい。前記ポリオール(x1)中、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオール(好ましくはポリエステルポリオール)の含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0037】
前記ポリイソシアネート(y1)は、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート(本発明において、「脂環式構造を有する」ことを単に「脂環式」という)及び芳香族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上を含むものであり、前記ポリイソシアネート(y1)における芳香族ポリイソシアネートの含有率は50質量%以上である。
【0038】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネトメチル)ベンゼン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられ、前記脂環式ポリイソシアネートとしては、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネトメチル)シクロヘキサン等が挙げられ、前記芳香族ポリイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、パラフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0039】
前記ポリイソシアネート(y1)において、芳香族ポリイソシアネートの含有率は、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0040】
前記ウレタンプレポリマー(A2)は、ポリオール(x2)とポリイソシアネート(y2)との反応物であり、前記ポリイソシアネート(y2)は、脂環式ポリイソシアネートを含む。
【0041】
前記ポリオール(x2)は、としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール等のポリマーポリオール;低分子量ポリオール等が挙げられる。
【0042】
前記ポリオール(x2)としてのポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール、低分子量ポリオールとしては、前記ポリオール(x1)として用いることができるポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール、低分子量ポリオールとして例示した化合物と同様の化合物を用いることができる。
【0043】
前記ポリオール(x2)は、ポリエーテルポリオールを含むものであることが好ましい。前記ポリオール(x2)中、ポリエーテルポリオールの含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0044】
前記ウレタンプレポリマー(A1)のイソシアネート基当量(NCO当量)は、好ましくは500以下、より好ましくは450以下であり、例えば200以上、好ましくは250以上、さらに好ましくは280以上である。前記ウレタンプレポリマー(A2)のイソシアネート基当量が前記範囲にあると、得られる研磨パッドの硬度を高めることが容易である。
【0045】
前記ウレタンプレポリマー(A1)のイソシアネート基当量は、JIS K 7301に準じて測定することができる。
【0046】
前記ポリオール(x2)中、低分子量ポリオールの含有量は、前記ポリマーポリオール100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、いっそう好ましくは1質量部以下であり、下限は0質量部である。
【0047】
前記ポリイソシアネート(y2)は、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート及び芳香族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上を含むものであり、前記ポリイソシアネート(y1)における芳香族ポリイソシアネートの含有率は50質量%未満である。
【0048】
前記ポリイソシアネート(y2)としての脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートとしては、前記ポリイソシアネート(y1)として用いることができる脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートとして例示した化合物と同様の化合物を用いることができる。
【0049】
前記ポリイソシアネート(y2)において、芳香族ポリイソシアネートの含有率は、50質量%未満であり、好ましくは30質量%未満、より好ましくは20質量%未満、さらに好ましくは10質量%未満であり、下限は0質量%である。
【0050】
前記ポリイソシアネート(y2)は、脂肪族ポリイソシアネート及び/又は脂環式ポリイソシアネートを含み、好ましくは脂環式ポリイソシアネートを含む。前記ポリイソシアネート(y2)中、脂肪族ポリイソシアネート及び/又は脂環式ポリイソシアネート(好ましくは脂環式ポリイソシアネート)の含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、いっそう好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0051】
前記ウレタンプレポリマー(A2)のイソシアネート基当量(NCO当量)は、好ましくは500以下、より好ましくは450以下であり、例えば200以上、好ましくは250以上、さらに好ましくは280以上である。前記ウレタンプレポリマー(A2)のイソシアネート基当量が前記範囲にあると、得られる研磨パッドの硬度を高めることが容易である。
【0052】
前記ウレタンプレポリマー(A2)のイソシアネート基当量は、JIS K 7301に準じて測定することができる。
【0053】
前記ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基当量(NCO当量)は、好ましくは500以下、より好ましくは450以下であり、例えば200以上、好ましくは250以上、さらに好ましくは280以上である。前記ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基当量が前記範囲にあると、得られる研磨パッドの硬度を高めることが容易である。
【0054】
前記ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基当量は、JIS K 7301に準じて測定することができる。
【0055】
前記硬化剤(ii)は、活性水素原子を2個以上有する化合物(以下、「架橋性化合物」という場合がある。)を含むものであることが好ましい。前記活性水素原子を2個以上有する化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等の脂肪族又は脂環式アミン化合物;フェニレンジアミン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ポリアミノクロロフェニルメタン化合物等の芳香族アミン化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等の2個以上の水酸基を有する化合物;前記芳香族アミン化合物の多量体(好ましくは2~4量体);及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0056】
前記混合物は、前記芳香族アミン化合物の多量体を含む混合物であってもよく、前記混合物において、前記芳香族アミン化合物の多量体の含有率は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0057】
前記混合物は、さらにポリオール(好ましくはポリエーテルポリオール)を含んでいてもよい。前記混合物に含まれていてもよいポリオールとしては、ポリエーテルポリオール(特にポリオキシテトラメチレングリコール)が好ましく、該ポリオールの数平均分子量は、好ましくは300以上、好ましくは3,000以下、より好ましくは2,000以下、さらに好ましくは1,500以下である。
【0058】
前記硬化剤(ii)中、架橋性化合物の含有率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、上限は100質量%であることが好ましく、99.99質量%以下であってもよい。
【0059】
前記硬化剤(ii)は、さらに、酸触媒を含むものであることが好ましい。前記酸触媒としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、オレイン酸、リノール酸等の一塩基酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等の二塩基酸;乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシ酸;アコニット酸等の三塩基酸等が挙げられる。
【0060】
前記酸触媒は、二塩基酸を含むことが好ましい。前記二塩基酸の含有率は、前記酸触媒中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0061】
前記硬化剤(ii)中、酸触媒の含有率は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下であり、下限は0質量%であり、0.01質量%以上であってもよい。
【0062】
前記ウレタン樹脂組成物は、前記主剤(i)及び硬化剤(ii)を必須成分として含むものであり、必要に応じて、さらに、ポリオール(iii)、その他の添加剤(iv)を含んでいてもよい。
【0063】
前記ウレタン樹脂組成物に含まれるポリオール(iii)は、前記ウレタンプレポリマー(a)を形成するポリオール(a1)と同一の化合物であっても異なる化合物であってもよい。前記ポリオール(iii)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、上記環状エーテルの開環重合により得られるポリオキシアルキレンポリオールが挙げられ、開始剤として上記活性水素原子を有する基を2個以上有する化合物の1種又は2種以上を用いて得られたものであってもよい。
【0064】
前記ウレタン樹脂組成物にポリオール(iii)を含む場合、ポリオール(iii)の含有量は、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、例えば0.1質量部以上、さらには1質量部以上であってもよく、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0065】
前記その他の添加剤(iv)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、発泡剤(B)、触媒(C)、整泡剤(D)、砥粒、充填剤、顔料、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤等が挙げられる。中でも、前記ウレタン樹脂組成物を使用して水発泡法により研磨パッドを得る場合には、前記発泡剤(B)を用いることが好ましい。
【0066】
前記発泡剤(B)は、少なくとも水を含むことが好ましい。水は、水発泡法における発泡剤の役割を果たすものであり、例えば、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。
水の含有量は、発泡剤(B)100質量%中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0067】
前記発泡剤(B)が水の場合、前記発泡剤(B)の含有量は、前記ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上2質量部以下である。
水以外の発泡剤としては、化学発泡剤や物理発泡剤も使用できる。化学発泡剤としては、有機系のADCA(アゾジカーボンアミド)、DPT(N,N’-ジニトロペンタメチレンテトラミン)、OBSH(4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド)や無機系の炭酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩と有機酸塩の組み合わせなどがある。物理発泡剤としては、炭化水素系のシクロペンタンやノルマルペンタンが、フロン系のHFC-245fa、HFC-365mfc、HCFO-1233zd、HFO-1336mzz、HFO-1233zdなどがある。
【0068】
前記その他の添加剤(iv)は、安定した発泡を形成できることから、触媒(C)を含むことが好ましい。
【0069】
前記触媒(C)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、N,N-ジメチルアミノエチルエーテル、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N-メチルイミダゾール等の三級アミン触媒;ジオクチルチンジラウレート等の金属触媒などが挙げられる。これらの中では、安定した発泡を成形できることから、三級アミン触媒がこのましく、N,N-ジメチルアミノエチルエーテルがより好ましい。
【0070】
前記触媒(C)を用いる場合、前記触媒(C)の含有量は、安定した発泡を形成できることから、前記ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0071】
前記整泡剤(D)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社製「東レシリコーン SH-193」、「東レシリコーン SH-192」、「東レシリコーン SH-190」等が挙げられる。
【0072】
前記整泡剤(D)を用いる場合、前記整泡剤(D)の含有量は、微細な気泡を安定的に形成できることから、前記ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0073】
前記ウレタン樹脂組成物を使用して研磨パッドを製造する方法としては、例えば、前記主剤(i)、前記硬化剤(ii)、並びに、必要に応じて用いる前記ポリオール(iii)及びその他の添加剤(iv)を含有するウレタン樹脂組成物を混合し、金型に注入し、発泡、硬化させて発泡成形物を得、次いで、該発泡成形物を型から取り出し、シート状にスライスして製造する方法が挙げられる。
前記ウレタン樹脂組成物を混合する方法としては、前記その他の添加剤(iv)を用いる場合、主剤(i)、硬化剤(ii)及び必要に応じて用いるポリオール(iii)のいずれか1種以上と添加剤(iv)とを予め混合しておいてもよく、主剤(i)、硬化剤(ii)及び必要に応じて用いるポリオール(iii)と添加剤(iv)とを同時に混合してもよい。例えば、前記主剤(i)、前記硬化剤(ii)、及び、予め必要に応じて用いるポリオール(iii)と添加剤(iv)との混合液を混合注型機のそれぞれ別々のタンクへ入れて、前記主剤(i)を好ましくは40~80℃に加温し、前記硬化剤(ii)を好ましくは40~120℃に加温し、予め必要に応じて用いるポリオール(iii)と添加剤(iv)との混合液を30~70℃に加温し、それぞれを混合注型機で混合する方法が挙げられる。
【0074】
前記ウレタン樹脂組成物から研磨パッドを製造する方法としては、前記ウレタン樹脂組成物を型内(好ましくは金型内)で発泡硬化させて発泡硬化物を得、さらにアフターキュアを行う方法が挙げられる。必要に応じて、得られた発泡硬化物をさらに成型してもよい。具体的には、前記ウレタン樹脂組成物を前記混合注型機で混合した後、混合注型機からそれぞれの成分を吐出し、得られた混合物を40~120℃に予め加温した金型に注入し、前記金型の蓋を閉め、例えば、50~130℃の温度で10分~10時間、発泡硬化させて発泡硬化物を得る。その後、得られた発泡硬化物を取出し、好ましくは100~120℃で8~20時間の条件にてアフターキュアを行う。このようにして得られた発泡硬化物をスライスして、本発明の研磨パッドとすることができる。
【0075】
前記研磨パッドの厚さは、用途に応じて適宜決定されるが、例えば、0.6~3mmの範囲であることが好ましい。
【0076】
また、前記ウレタン樹脂組成物を使用して研磨パッドを製造する他の方法としては、例えば、前記主剤(i)をガスローディング法により微細気泡を含有させた主剤(i’)(以下、「微細気泡含有主剤(i’)」と略記する。)を得、前記微細気泡含有主剤(i’)、及び、硬化剤(ii)を含有するウレタン組成物を混合し、型内に注入し、硬化させて微細気泡含有成形物を得、次いで、該成形物を型から取り出し、シート状にスライスする方法が挙げられる。
【0077】
前記主剤(i)から微細気泡含有主剤(i’)を得る方法としては、例えば、前記主剤(i)に対して、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等の非反応性気体を導入し、機械的に気泡を導入する方法が挙げられる。
【0078】
前記ウレタン組成物を混合する方法としては、例えば、前記微細気泡含有主剤(i’)、及び、前記硬化剤(ii)を混合注型機のそれぞれ別々のタンクへ入れて、前記微細気泡含有主剤(i’)を好ましくは40~80℃に加温し、前記硬化剤(ii)を好ましくは40~120℃に加温し、それぞれを混合注型機で混合する。
【0079】
次いで、混合注型機からそれぞれの成分を吐出し、得られた混合物を40~120℃に予め加温した金型に注入し、前記金型の蓋を閉め、例えば、50~130℃の温度で10分~10時間、発泡、硬化させて発泡成形物を得る。その後、得られた発泡成形物を取出し、好ましくは100~120℃で8~20時間の条件にてアフターキュアを行う。
【0080】
次に、前記発泡成形物を適切な厚さでシート状にスライスすることにより研磨パッドが得られる。スライス後の研磨パッドの厚さは、用途に応じて適宜決定されるが、例えば、0.6~3mmの範囲である。
【0081】
また、前記ウレタン組成物を使用して研磨パッドを製造する他の方法としては、例えば、前記主剤(i)及び硬化剤(ii)を混合注型機で混合する際、ミキサー部に非反応性気体を導入し混合し、メカニカルフロス状の混合物を型内に注入し、硬化させて発泡成形物を得、次いで、前記発泡成形物を型から取り出し、シート状にスライスするする方法が挙げられる。
【0082】
さらに、前記ウレタン樹脂組成物を使用して研磨パッドを製造する他の方法としては、例えば、前記主剤(i)または、硬化剤(ii)に直径20~120μmの中空状のプラスチック球体(マイクロバルーン)を含有させておき、主剤、硬化剤の2液を混合し、硬化させて中空プラスチック球体を含有する成形物を得、次いで、シート状にスライスするする方法が挙げられる。
【0083】
上記本発明の研磨パッドは、研磨レート、耐摩耗性及び加工面の平滑性を両立することが可能であり、液晶ディスプレイ(LCD)用ガラス基板、ハードディスク(HDD)用ガラス基板、記録装置用ガラスディスク、光学用レンズ、シリコンウェハ、半導体デバイス等の高度な表面平坦性と面内均一性が要求されるような高い精度の研磨加工に有用である。特に、ビッカース硬度1,500以下の被研磨材の研磨に有用であり、詳細にはシリコンウェハの研磨に有用である。
【0084】
ビッカース硬度は、押し込み硬さの指標の一種であり、ダイヤモンドでできた剛体(圧子)を披試験物に対し押し込み、そのときにできる圧痕の面積で判断する。試験方法としては、JIS-Z-2244がある。各種被研磨のおおよそのビッカース硬度はおおよそ次のとおりである。
炭化珪素(SiC):2,300~2,500、サファイヤ:2,300、シリコン:1,050、石英ガラス:950、各種ガラス:500~700。
【0085】
本発明の研磨パッドを用いた研磨方法としては、例えば、シリコンウェハの研磨の場合、研磨パッド上にスラリー(弱塩基性のコロイダルシリカ水溶液)を滴下しつつ、被研磨体をスラリーと馴染んだパッドに加圧圧着させて、パッドを貼り付けた定盤を稼動(回転)させて研磨する方法などが挙げられる(遊離砥粒によるCMP研磨法)。
【実施例
【0086】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0087】
実施例において、ポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・グラフィー法(GPC法)により測定した。
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:以下のカラム(いずれも東ソー株式会社製)を直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:以下の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0088】
(合成例1:ウレタンプレポリマー(a1)の合成)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた5リットル4ツ口丸底フラスコに、トルエンジイソシアネート(T80)を1920部(表1記載×40)仕込み、攪拌を開始した。次いで、PTMG1000を1612部(表1記載×40)仕込み混合し、窒素雰囲気下80℃で3時間反応を行った。次いで、ジエチレングリコール(DEG) 468部(表1記載×40)を発熱に注意しながら80℃で3時間反応させ、表1に示すNCO当量のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(a1)を得た。
【0089】
(合成例2~7:ウレタンプレポリマー(a2)~(a7)の合成)
合成例1と同様に表1に示すNCO当量のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(a2)~(a7)を得た。
【0090】
(合成例8:ウレタンプレポリマー(a8)の合成)
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた5リットル4ツ口丸底フラスコに、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)を1676部(表1記載×40)仕込み、攪拌を開始した。次いで、PTMG650 2324部(表1記載×40)とジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II) 0.04部(表1記載×40)仕込み混合し、窒素雰囲気下90℃で4時間反応を行った。表1に示すNCO当量のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(a8)を得た。
【0091】
【表1】
【0092】
表1中、各略号は、それぞれ以下の化合物を表す。
PTMG650:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量650)
PTMG1000:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量1,000)
BG・HG/AA・SebA#2000:ブタンジオール・ヘキサンジオール/アジピン酸・セバシン酸を脱水縮合させたポリエステルポリオール(数平均分子量2,000)
EG開始剤ラクトン#2000:エチレングリコールを開始剤としたε-カプロラクトンを開環重合させたポリエステルポリオール(数平均分子量2,000)
EG/AA#2000:エチレングリコール、/アジピン酸を脱水縮合させたポリエステルポリオール(数平均分子量2,000)
BG/AA#2000:ブタンジオール/アジピン酸を脱水縮合させたポリエステルポリオール(数平均分子量2,000)
BG/AA#1000:ブタンジオール/アジピン酸を脱水縮合させたポリエステルポリオール(数平均分子量1,000)
DEG:ジエチレングリコール
T100:2,4-TDI(トルエンジイソシアネート)
T80:2,4-TDI/2,6-TDIの異性体比80/20のTDI(トルエンジイソシアネート)
HMDI:ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)
【0093】
(主剤配合例1:主剤(i1))
窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた5リットルフラスコに、合成例1で得た(a1)2400部(表2記載×40)と合成例8で得た(a8) 1600部(表2記載×40)仕込み、混合した。表2に示したNCO当量の主剤(i1)を得た。
【0094】
(主剤配合例2~4:主剤(i2)~主剤(i4))
主剤配合例1と同様に表2に示すNCO当量の主剤(i2)~(i4)を得た。
【0095】
【表2】
【0096】
(硬化剤配合例(ii))
窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた2リットルフラスコに事前に120℃で溶解させておいたMBOCA 1997部(表3記載×20)を仕込み、120で温調し、攪拌を開始した。次いで、アジピン酸 3部(表3記載×20)を仕込み、混合(溶解)させた。十分混合後、取り出し硬化剤(ii)を得た。
【0097】
【表3】
【0098】
(助剤配合例(iii))
窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた1リットルフラスコにPPG(1分子中に含まれる水酸基の個数は3)#3000 448部(表3記載×5)を仕込み、40℃で温調し、攪拌を開始した。次いで、東ソー製TOYOCAT ET 2.5部(表3記載×5)と東レ・ダウコーニング製SH-193 2.5部(表3記載×5)を仕込み混合した。更に、水 3.2部(表3記載×5)を仕込み、混合した。十分混合後、取り出し硬化剤(iii)を得た。
【0099】
表3中、各略号は、それぞれ以下の化合物を表す。
MBOCA:3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノフェニルメタン
PPG#3000(f3):ポリプロピレングリコール(官能基数=3) (数平均分子量:3000)
TOYOCAT ET:ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル(70%)とジプロピレングリコール(30%)の混合物 東ソー株式会社製
SH-193:シリコーン整泡剤 東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製
【0100】
(実施例1~6、比較例1~9:研磨パッド用樹脂としての評価)
主剤配合例1~4及び合成例1~9で得られた(A1)~(A4)(a1)~(a9)の樹脂を評価した。結果を表4に示す。主剤と硬化剤の配合比は、以下の通りである。
配合比条件:R値(NCO/OHモル比)=0.9
なお、実施例1及び2は参考例である。
【0101】
[主剤の原料に用いられたポリエステルポリオールのエステル基濃度]
ポリエステルポリオール合成に用いた原料及びその配合量から計算により求めた。
【0102】
[NCO当量]
JIS K 7301に準じて測定した。
【0103】
[粘度]
BM型粘度計にて測定した。
【0104】
[ポットライフ]
JIS K 7301:1995に準じ、主剤/硬化剤=80/120で混合し、油浴:80℃の条件下、混合開始から、混合物の粘度が50,000mPa・sに到達するまでの時間を粘度計で測定した。
【0105】
[硬度]
以下の条件で成形品を製造し、得られた成形品の硬度をJIS K 7312に準じて、D硬度計で測定した。
主剤/硬化剤=80/120℃ 成形品サイズ:φ29.0×12.5mm
一次キュア:80℃×1時間 二次キュア:110℃×16時間
【0106】
【表4】
【0107】
(実施例1~6、比較例1~9:研磨パッドとしての評価)
主剤配合例1~4及び合成例1~9で得られた(A1)~(A4)(a1)~(a9)を80℃に温調し、主剤とした。次に、MBOCAと硬化剤配合例で得られた(ii)を120℃で溶融温調し、硬化剤とした。更に助剤配合例で得られた(iii)を35℃で温調し、助剤とした。
【0108】
次に、反応容器中に主剤を表4に示された部数(表記載値×22)を仕込み80℃に温調後、その後35℃の助剤を表に示された部数(表記載値×22)を投入し、直ちに120℃の硬化剤を表に示された部数(表記載×22)投入して、直ちに高速ミキサーにて20秒間攪拌した。混合された主剤/硬化剤/助剤の混合液の1875部を80℃に温調した250×250×50mmの金型に流し込み、金型の蓋を閉め、80℃で1時間保持した。その後、インゴット状の発泡成形品を取り出し110℃で16時間のアフターキュアを行った。
【0109】
次いで、得られたインゴット状の発泡成形品をスライサーで厚さ1.5mmに切り出し、シート状の研磨パッドを得た。得られた研磨パッドの密度、硬度、テーバー磨耗を測定した。結果を表5に示す。
【0110】
パッド作成条件は以下の通りとした。
配合比条件1:R(NCO/OHモル比)=0.9
配合比条件2:注入密度0.6g/cm3で適切なパックになる様、発泡剤量を決定した。本件等では、水分率=0.25%(対樹脂)に設定した。
パッド製造条件:パッド密度を0.5~0.6g/cm3で統一した。注入密度を0.6g/cm3に設定した。
【0111】
[密度]
ノギスでパッドの縦×横×厚みを測定し体積を求めた。重量を測定した。密度は、重量/体積で計算した。
【0112】
[硬度]
JIS K 7312に準じ、D硬度計で測定した。
【0113】
[テーバー磨耗]
H-22磨耗輪を用い、荷重9.8N、回転1000回転の条件で、JIS K 7312 に準じて測定した。
【0114】
【表5】
【0115】
実施例1~6は、本発明の実施例であり、組成物としてのポットライフが長く、得られた研磨パッドの硬度が高く、さらに、摩耗量が低減されていた。特に実施例3~6は、主剤の原料に用いたポリエステルポリオールのエステル基濃度は9以下であり、摩耗量が低減されていた。
【0116】
比較例1~7は、ウレタンプレポリマー(A2)を含まない例であり、ポットライフが十分でなく、また、得られた研磨パッドの硬度が十分でないか、耐摩耗性が十分でなかった。
【0117】
比較例8は、ウレタンプレポリマー(A1)を含まない例であり、発泡性が乏しく、研磨パッド成形ができなかった。
【0118】
比較例9は、ウレタンプレポリマー(A2)を含まず、主剤中に未反応の脂環式ポリイソシアネートを含む例であり、ポットライフが十分でなく、また、耐摩耗性に劣っていた。