(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】インク及び印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
D06P 5/30 20060101AFI20231205BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20231205BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231205BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20231205BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
D06P5/30
C09D11/30
B41J2/01 501
B41J2/18
B41J2/01 401
B41J2/01 301
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 114
(21)【出願番号】P 2019175519
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】波多 朝仁
(72)【発明者】
【氏名】橋本 賢志
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039913(JP,A)
【文献】特開2019-155834(JP,A)
【文献】特開2017-150125(JP,A)
【文献】特開2013-199605(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073562(WO,A1)
【文献】特開2017-051952(JP,A)
【文献】特開2014-163021(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0174919(US,A1)
【文献】特開2017-115127(JP,A)
【文献】特開2008-230152(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188995(WO,A1)
【文献】特開2014-159114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 2/165- 2/20
B41J 2/21- 2/215
B41M 5/00
B41M 5/50
B41M 5/52
C09D 11/00- 13/00
D06P 1/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク循環型インクジェットヘッドを備えた印刷装置を用い、インクを布帛に印刷することによって印刷物を得る印刷工程を備える印刷物の製造方法であって、
前記印刷工程において、前記インク循環型インクジェットヘッドのインク吐出口と前記布帛との最短距離が2mm以上であり、
前記インク循環型インクジェットヘッドから吐出されるインク液滴1個のサイズが10~50plの範囲であり、
前記インクが、カーボネート構造を有するポリウレタン(A)とエーテル構造を有するポリウレタン(B)と溶媒(C)とを含有することを特徴とするインクであって、
前記ポリウレタン(A)の重量平均分子量が40000~200000の範囲であり、
前記ポリウレタン(B)の重量平均分子量が10000~39000の範囲であり、
更に、界面活性剤を含有し、
前記界面活性剤が、アセチレン系界面活性剤を含むインク
であることを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項2】
前記ポリウレタン(A)と前記ポリウレタン(B)との質量割合[前記ポリウレタン(A)/前記ポリウレタン(B)]が1.5~9の範囲である請求項1に記載の
印刷物の製造方法。
【請求項3】
前記界面活性剤の含有量が、前記インクの全量に対し、0.001質量%~2質量%の範囲である請求項1または2に記載の
印刷物の製造方法。
【請求項4】
前記ポリウレタン(A)が、ウレア結合を有さない重量平均分子量40000~50000のポリウレタン、または、ウレア結合を有する重量平均分子量70000~170000のポリウレタンである請求項1~3のいずれか1項に記載の
印刷物の製造方法。
【請求項5】
前記インク循環型インクジェットヘッドがその循環経路内に孔径5μm~20μmの範囲のフィルターを備えたものである請求項1~4のいずれか1項に記載の
印刷物の製造方法。
【請求項6】
前記インクの全量に対する、前記ポリウレタン(A)及び前記ポリウレタン(B)の合計質量の割合が5質量%~15質量%の範囲である請求項1~5のいずれか1項に記載の
印刷物の製造方法。
【請求項7】
前記インク循環型インクジェットヘッドが、インク吐出ノズルと、インクの流入経路とインクの流出経路とを有し、
前記流出経路から流出されたインクが、前記流入経路を経てインクジェットヘッドに供給される構造を有するものである請求項
1~6のいずれか1項に記載の印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク循環型インクジェットヘッドを備えた印刷装置で使用可能なインクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット印刷装置としては、インクジェットヘッド内での顔料や樹脂粒子等の沈降に起因した吐出ノズルの詰まり等を防止するうえで、インク循環型インクジェットヘッドを備えた印刷装置が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
前記インク循環型インクジェットヘッドとしては、例えばインク吐出ノズルとは別に、インクの流入経路とインクの流出経路とを有し、前記流出経路から流出されたインクが、前記流入経路を経て、再びインクジェットヘッドに供給されるようなインクの循環構造を有するものが知られており、前記循環の過程で、沈降した顔料等を捕捉するためのフィルターを備えたものが知られている。
【0004】
一方、前記インクとしては、印刷物に良好な耐摩擦性や耐水性が求められるなかで、バインダー樹脂を含有するインクの開発が検討されている。とりわけ衣服等の布帛製品への印刷に使用するインクには、良好な洗濯堅牢性を備えた印刷画像を形成するうえで、普通紙等への印刷に使用するインクよりも、バインダー樹脂を多く含有するものが使用される場合がある。
【0005】
しかし、バインダー樹脂を多く含有するインクを、前記インク循環型インクジェットヘッドを備えた印刷装置に適用した場合、前記循環の過程で、経時的に前記フィルターの表面に被膜を形成し、前記フィルターの詰まりを引き起こす場合があった。
【0006】
前記フィルターの詰まりを防止する方法としては、前記バインダー樹脂等の含有量の少ないインクを用いる方法がある。
【0007】
しかし、バインダー樹脂等の含有量を減らしたインクを用いた場合、印刷物の耐摩擦性や耐水性の低下を引き起こしたり、前記インクを布帛製品に適用した場合には、洗濯堅牢性の著しい低下を引き起こす場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、インク循環型インクジェットヘッドを備えた印刷装置に適用した場合であっても、インクの循環経路の途中に設けられたフィルターの経時的な詰まりを引き起こしにくく、かつ、洗濯堅牢性に優れた印刷物の製造に使用可能なインクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、インク循環型インクジェットヘッドを備えた印刷装置に使用するインクであって、前記インクが、カーボネート構造を有するポリウレタン(A)とエーテル構造を有するポリウレタン(B)と溶媒(C)とを含有することを特徴とするインクに関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインクであれば、インク循環型インクジェットヘッドを備えた印刷装置に適用した場合であっても、インクの循環経路の途中に設けられたフィルターの経時的な詰まりを引き起こしにくく、かつ、洗濯堅牢性に優れた印刷物の製造に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明で使用するマイクロリアクターの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のインクは、インク循環型インクジェットヘッドを備えた印刷装置に使用するインクのうち、カーボネート構造を有するポリウレタン(A)とエーテル構造を有するポリウレタン(B)と溶媒(C)とを含有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明のインクとしては、単にポリウレタンを含有するものではなく、前記ポリウレタン(A)及びポリウレタン(B)を組み合わせ含有するものを使用する。前記ポリウレタン(A)及びポリウレタン(B)を組み合わせ使用することによって、インク循環型インクジェットヘッドを備えた印刷装置に適用した場合であっても、インクの循環経路の途中に設けられたフィルターの経時的な詰まりを引き起こしにくく、かつ、洗濯堅牢性に優れた印刷物を製造することができる。
【0015】
本発明のインクとしては、前記ポリウレタン(A)と前記ポリウレタン(B)との質量割合[前記ポリウレタン(A)/前記ポリウレタン(B)]が1.5~9の範囲であるものを使用することが好ましく、1.5~7の範囲のものを使用することがより好ましく、1.5~5の範囲のものを使用することが、インクの循環経路の途中に設けられたフィルターの経時的な詰まりをより一層引き起こしにくく、かつ、洗濯堅牢性に優れた印刷物を製造するうえで特に好ましい。
【0016】
本発明のインクは、本発明のインクの全量に対して、前記ポリウレタン(A)及び前記ポリウレタン(B)を合計5質量%~15質量%の範囲で含有するものを使用することが好ましく、5質量%~10質量%の範囲で含有するものを使用することが、インクの循環経路の途中に設けられたフィルターの経時的な詰まりをより一層引き起こしにくく、かつ、洗濯堅牢性に優れた印刷物を製造するうえでより好ましい。
【0017】
はじめに、本発明のインクで使用するポリウレタン(A)について説明する。
【0018】
前記ポリウレタン(A)は、カーボネート構造を有するポリウレタン(A)であって、洗濯堅牢性に優れた印刷物を製造するうえで必須の成分である。
【0019】
前記ポリウレタン(A)としては、前記ポリウレタン(A)全体の質量に対してカーボネート構造を10質量%~90質量%の範囲で有するものを使用することが好ましく、50質量%~90質量%の範囲のものを使用することが、洗濯堅牢性に優れた印刷物を得るうえでより好ましい。
【0020】
前記ポリウレタン(A)としては、重量平均分子量10000~200000の範囲のものを使用することが好ましい。特に、前記ポリウレタン(A)としては、ウレア結合を有さない重量平均分子量10000~50000のポリウレタン、または、ウレア結合を有する重量平均分子量70000~170000のポリウレタンをそれぞれ単独または組み合わせて使用することが、インクの循環経路の途中に設けられたフィルターの経時的な詰まりを引き起こしにくく、かつ、洗濯堅牢性に優れた印刷物を製造するうえでより好ましい。
【0021】
前記ポリウレタン(A)は、本発明のインクの全量に対して3質量%~13.5質量%の範囲で使用することが好ましく、3質量%~9質量%の範囲で使用することが、洗濯堅牢性に優れた印刷物を製造するうえでより好ましい。
【0022】
前記ポリウレタン(A)としては、本発明のインク中における水分散安定性を向上させるうえで親水性基を有するポリウレタンを使用することが好ましい。
【0023】
前記親水性基としては、一般にアニオン性基やカチオン性基、ノニオン性基といわれるものを使用することができる。なかでも、前記親水性基としては、アニオン性基またはカチオン性基を使用することが好ましい。
【0024】
前記アニオン性基としては、例えばカルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基等を使用することができ、なかでも、一部または全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが、良好な水分散安定性を維持するうえで好ましい。
【0025】
前記アニオン性基としてのカルボキシル基やスルホン酸基の中和に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミンや、Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基化合物等が挙げられる。なかでも、前記塩基性化合物としては、本発明のインクによって形成された印刷画像(すなわち乾燥皮膜)中に残存することで、印刷画像の洗濯堅牢性に課題が生じることを防止するうえで、前記有機アミンを使用することが好ましく、アンモニアやトリエチルアミン等の沸点100℃以下の有機アミンを使用することがより好ましい。
【0026】
また、前記カチオン性基としては、例えば3級アミノ基等を使用することができる。前記3級アミノ基の一部または全てを中和する際に使用可能な酸性化合物としては、例えば、蟻酸、酢酸等を使用することができる。また、前記3級アミノ基の一部または全てを4級化する際に使用可能な4級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸類を使用することができる。
【0027】
また、前記ノニオン性基としては、例えばポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、ポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)基、及びポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を使用することができる。なかでも、前記ノニオン性基としては、オキシエチレン単位を有するポリオキシアルキレン基を使用することが、親水性をより一層向上させるうえで好ましい。
【0028】
前記ポリウレタン(A)としては、前記ポリウレタン(A)の全量に対して、前記親水性基を0.5質量%~30質量%有するものを使用することが好ましく、1質量%~20質量%有するものを使用することが、より一層優れた水分散安定性を備えたインクを得るうえでより好ましい。
【0029】
前記ポリウレタン(A)としては、より具体的にはポリカーボネートポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートとの反応物を使用することができる。また、前記ポリウレタン(A)としては、ポリカーボネートポリオールと親水性基を有するポリオールとを含むポリオール及びポリイソシアネートの反応物を使用することができる。また、前記ポリウレタン(A)としてウレア結合を有するポリウレタンを使用する場合には、ポリカーボネートポリオールを含むポリオール及びポリイソシアネートの反応物とポリアミン等の鎖伸長剤との反応物を使用することができる。
【0030】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルと、低分子量のポリオール、好ましくは直鎖脂肪族ジオールとの反応物を使用することができる。
【0031】
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ-ト等を使用することできる。
【0032】
前記炭酸エステルと反応しうる低分子量のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール-A、ビスフェノール-F、4,4’-ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等を使用することができる。
【0033】
前記親水性基を有するポリウレタンの製造に使用可能な前記親水性基を有するポリオールとしては、例えば3級アミノ基を有するポリオール等のカチオン性基を有するポリオールを使用することができる。前記3級アミノ基を有するポリオールとしては、具体的にはN-メチル-ジエタノールアミン、エポキシを2つ有する化合物と2級アミンとを反応させて得られるポリオール等を使用することができる。
【0034】
前記親水性基を有するポリオールとしては、アニオン性基を有するものを使用することができ、例えば1,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸や1,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸等を使用することができる。
【0035】
前記親水性基を有するポリオールとしては、ノニオン性基を有するものを使用することができ、例えばエチレンオキサイド由来の構造単位を有するポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等を使用することができる。
【0036】
前記ポリウレタン(A)の製造に使用可能なポリオールとしては、前記ポリカーボネートポリオールや親水性基を有するポリオールのほかに、必要に応じてその他のポリオールを使用することができる。
【0037】
前記その他のポリオールとしては、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどを使用することができる。
【0038】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ショ糖、アコニット糖、フェミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタール酸、1,2,3-プロパントリチオール等の活性水素基を2個以上有する化合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロフェキシレン等の環状エーテル化合物を付加重合したもの、又は、前記環状エーテル化合物をカチオン触媒、プロトン酸、ルイス酸等を触媒として開環重合したものなどを使用することができる。
【0039】
また、前記ポリエステルポリオールとしては、ジオールとジカルボン酸との反応物、ヒドロキシカルボン酸単独またはジオールやジカルボン酸と組み合わせ脱水縮合反応して得られたもの、ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応物等を使用することができる。
【0040】
前記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン、及びこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0041】
前記ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸等が挙げられる。
【0042】
前記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸等が挙げられる。
【0043】
また、前記その他のポリオールとしては、上記したもの以外にエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン及びそれらのアルキレンオキシド付加物、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタエリスリトール等の比較的低分子量のポリオール等を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0044】
前記ポリオールと反応する前記ポリイソシアネートとしては、例えばフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂肪族環式構造含有ジイソシアネート等を、単独で使用または2種以上を併用して使用することができる。
【0045】
なかでも、本発明のインクを衣服等の布帛への印刷に使用する場合、前記ポリイソシアネートとしては、印刷物の風合いをより一層向上させるうえで、イソホロンジイソシアネートやジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族または脂肪族環式構造含有ジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0046】
また、本発明のインクは、洗濯堅牢性等の耐摩擦性をより一層向上することを目的として、後述する架橋剤を使用することができる。前記架橋剤を使用する場合、前記ウレタン樹脂としては、前記架橋剤の有する官能基と架橋反応しうる官能基を有するものを使用することが好ましい。
【0047】
しかし、架橋剤を含有するインクは、前記インク循環型インクジェットヘッドの循環経路内で架橋する可能性が否定できないため、前記循環経路内に設けられたフィルタの詰まり等を防止するうえ、前記架橋剤を含有しないインクであることが好ましい。
【0048】
また、前記ポリウレタン(A)としてウレア結合を有するポリウレタンを使用する場合には、前記ポリカーボネートポリオール等のポリオールとポリイソシアネートと鎖伸長剤であるポリアミンとの反応物を使用することが好ましい。
【0049】
前記ウレア結合を有するポリウレタンを含有するインクは、一般に、洗濯堅牢性に優れた印刷物を製造するうえで好適であるものの、インク循環型インクジェットヘッドが備えたフィルタの経時的な詰まりを引き起こすことが懸念される場合がある。
【0050】
しかし、カーボネート構造を有するポリウレタン(A)とエーテル構造を有するポリウレタン(B)とを組み合わせ含有する本発明のインクであれば、前記ポリウレタン(A)として前記ウレア結合を有するポリウレタンを使用した場合であっても前記詰まりを引き起こしにくく、かつ、洗濯堅牢性に優れた印刷物を製造できるという有利な効果を有する。
【0051】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N-ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N-エチルアミノエチルアミン、N-メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン;ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β-セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3-セミカルバジッド-プロピル-カルバジン酸エステル、セミカルバジッド-3-セミカルバジドメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサンを使用することができ、ヒドラジンを使用することが、前記詰まりを引き起こしにくく、かつ、洗濯堅牢性に優れた印刷物を製造可能なインクをえるうえで好ましい。
【0052】
前記ポリアミンとしては、前記ポリアミンが有するアミノ基の当量が、前記ポリオールとポリイソシアネートとの反応物であるウレタンプレポリマーの有するイソシアネート基の当量に対して、0.01~1.0(当量比)となる範囲で使用することが好ましく、0.01~0.5(当量比)の範囲で使用することがより好ましく、より好ましくは0.01~0.3(当量比)が好ましい。
【0053】
前記鎖伸長剤としては、前記ポリアミンの他に、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類及び水等を使用することもできる
【0054】
前記鎖伸長剤は、前記ポリオールとポリイソシアネートを反応させる際、または、反応後に使用することができる。
【0055】
次に、前記ポリウレタン(B)について説明する。
【0056】
前記ポリウレタン(B)は、エーテル構造を有するポリウレタン(B)であって、インクの循環経路の途中に設けられたフィルターの経時的な詰まりを抑制するための必須成分である。
【0057】
前記ポリウレタン(B)としては、前記ポリウレタン(B)全体の質量に対してエーテル構造を10質量%~90質量%の範囲で有するものを使用することが好ましく、50質量%~90質量%の範囲のものを使用することが、インクの循環経路の途中に設けられたフィルターの経時的な詰まりをより一層抑制するうえでより好ましい。
【0058】
前記ポリウレタン(B)としては、重量平均分子量10000~50000の範囲のものを使用することが好ましく、30000~50000の範囲のものを使用することが、インクの循環経路の途中に設けられたフィルターの経時的な詰まりを抑制するうえでより好ましい。
【0059】
前記ポリウレタン(B)は、本発明のインクの全量に対して0.5質量%~6質量%の範囲で使用することが好ましく、0.5質量%~4質量%の範囲で使用することが、インクの循環経路の途中に設けられたフィルターの経時的な詰まりを抑制するうえでより好ましい。
【0060】
前記ポリウレタン(B)としては、本発明のインク中における水分散安定性を向上させるうえで親水性基を有するポリウレタンを使用することが好ましい。
【0061】
前記親水性基としては、前記ポリウレタン(A)に付与可能なものとして例示した親水性基と同様のものを使用することがきる。
【0062】
前記ポリウレタン(B)としては、より具体的にはポリエーテルポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートとの反応物を使用することができる。また、前記ポリウレタン(B)としては、ポリエーテルポリオールと親水性基を有するポリオールとを含むポリオール及びポリイソシアネートの反応物を使用することができる。
【0063】
前記ポリエーテルポリオールとしては、前記ポリウレタン(A)の製造に使用可能なポリオールとして例示したポリエーテルポリオールと同様のものを使用することがきる。前記ポリエーテルポリオールとしては、数平均分子量500~2000程度のトリメチレングリコールやプロピレングリコール等を使用することが好ましい。
【0064】
前記親水性基を有するポリオールとしては、前記ポリウレタン(A)の製造に使用可能なポリオールとして例示した親水性基を有するポリオールと同様のものを使用することがきる。
【0065】
前記ポリウレタン(B)の製造に使用可能なポリオールとしては、前記したものの他に必要に応じてその他のポリオールを使用することができる。
【0066】
前記ポリエーテルポリオール等を含むポリオールと反応する前記ポリイソシアネートとしては、前記ポリウレタン(A)の製造に使用可能なポリオールとして例示したポリイソシアネートと同様のものを使用することがきる。
【0067】
なかでも、本発明のインクを衣服等の布帛への印刷に使用する場合、前記ポリイソシアネートとしては、印刷物の風合いをより一層向上させるうえで、イソホロンジイソシアネートやジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族または脂肪族環式構造含有ジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0068】
前記ポリウレタン(B)を製造する際に鎖伸長剤を使用する場合には、例えばポリアミン以外のエチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類及び水等を使用することができる。
【0069】
本発明のインクとしては、バインダーとして前記ポリウレタン(A)及びポリウレタン(B)の他に、必要に応じてその他のバインダーを含有するものを使用することができる。
【0070】
前記バインダーとしては、例えばアクリル樹脂を使用することができる。前記アクリル樹脂としては、特に制限はなく、(メタ)アクリレートの単独重合体または共重合体、(メタ)アクリレートとその他のビニルモノマーとの共重合体等を使用することができる。
【0071】
次に、本発明で使用する溶媒(C)について説明する。
【0072】
前記溶媒(C)としては、例えば水を単独、または、水と後述する有機溶剤(F)との混合溶媒を使用することができる。
【0073】
前記水としては、具体的にはイオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を使用することができる。
【0074】
前記溶媒(C)は、前記インクの全量に対し50質量%~95質量%の範囲で使用することが好ましく、65質量%~95質量%の範囲で使用することが、インクのノズル近傍で乾燥することを防止し、被記録媒体へ着弾した後の乾燥のしやすさを調整しやすく、かつ、鮮明で、特に布帛への印刷に使用した場合に良好な風合いの印刷物を製造可能なインクを得るうえで特に好ましい。
【0075】
前記有機溶剤(F)としては、例えばグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン(n)ポリグリセリルエーテル、ポリオキシエチレン(n)ポリグリセリルエーテル等を使用することができる。
【0076】
前記有機溶剤(F)としては、前記したもののほかに、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、2-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、1-ブタノール、2-メトキシエタノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールおよびこれらと同族のジオール、ラウリン酸プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、および、トリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノールや2-ブタノール等のブチルアルコール、ペンチルアルコール、およびこれらと同族のアルコール、スルホラン;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;N-(2-ヒドロキシエチル)ピロリドン等のラクタム類などを、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0077】
前記有機溶剤(F)としては、前記したもののほかに、例えば3-メトキシ-1-ブタノール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコール-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、4-メトキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチルラクテート等の水溶性有機溶剤を単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0078】
前記有機溶剤(F)としては、前記したなかでも、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジグリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコールを使用することが好ましく、グリセリンとプロピレングリコールとを組み合わせ使用することが、布帛等の被記録媒体に浸透し乾燥しやすく、インク循環型インクジェットヘッドではノズルやフィルターでの乾燥や凝固を防止可能なインクを得るうえで好ましい。
【0079】
本発明のインクとしては、前記ポリウレタン(A)と前記ポリウレタン(B)と溶媒(C)の他に、必要に応じて色材(D)を含有するものを使用することができる。前記ポリウレタン(A)と前記ポリウレタン(B)と色材(D)とは、水等の前記溶媒(C)中に溶解または分散した状態で存在することが好ましい。
【0080】
前記色材(D)としては、公知慣用の顔料や染料等を使用することができる。なかでも、耐候性等に優れた印刷物を製造するうえで、顔料を使用することが好ましい。また、前記色材(D)としては、前記顔料が樹脂で被覆された着色剤を使用することもできる。
【0081】
前記顔料としては、特に限定はなく、従来のスクリーン捺染や水性インクジェット記録用インクにおいて通常使用される有機顔料または無機顔料を使用することができる。
【0082】
また、前記顔料としては、未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができ、ドライパウダー及びウェットケーキ状のどちらであっても使用することができる。
【0083】
前記無機顔料としては、例えば、酸化鉄や酸化チタン、コンタクト法、ファーネス法またはサーマル法等の方法で製造されたカーボンブラック等を使用することができる。
【0084】
前記有機顔料としては、例えばアゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、レーキ顔料(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等を使用することができる。
【0085】
前記顔料の具体例としては、黒インクに使用される顔料であれば、三菱化学社製のNo.2300、No.2200B、No.900、No.980、No.960、No.950、No.33、No.40、No,45、No.45L、No.52、HCF88、MCF88、MA7、MA8、MA100、等が、コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、Raven700等が、キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Mogul 700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400等が、デグサ社製のColor Black FW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、Printex 35、同U、同V、同1400U、Special Black 6、同5、同4、同4A、NIPEX150、NIPEX160、NIPEX170、NIPEX180等のカーボンブラックを使用することができる。
【0086】
イエローインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、174、180、185等が挙げられる。
【0087】
マゼンタインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、168、176、184、185、202、209及びこれらの顔料から選ばれる少なくとも2種以上の顔料の混合物もしくは固溶体が挙げられる。
【0088】
シアンインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、15:6、16、22、60、63、66等が挙げられる。
【0089】
レッドインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド17、49:2、112、149、150、177、178、179、188、254、255及び264からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0090】
オレンジインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63、64、71、73、81等が挙げられる。
【0091】
グリーンインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントグリーン7、10、36、58、59等が挙げられる。
【0092】
バイオレットインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。
【0093】
また、白インクに使用可能な顔料の具体例としては、アルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、微粉ケイ酸、合成珪酸塩、等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が挙げられる。これらは、表面処理されていてもよい。
【0094】
前記顔料としては、前記したものを単独または2種類以上を組み合わせ使用することができる。
【0095】
前記顔料は、インク中に安定に存在させるために、水等の水性媒体に良好に分散させる手段を講じてあることが好ましい。
【0096】
前記手段としては、例えば
(i)顔料を顔料分散剤と共に、後述する分散方法で水等の水性媒体中に分散させる方法
(ii)顔料の表面に分散性付与基(親水性官能基および/またはその塩)を直接またはアルキル基、アルキルエーテル基またはアリール基等を介して間接的に結合させた自己分散型顔料を水等の水性媒体に分散および/または溶解させる方法が挙げられる。
【0097】
前記自己分散型顔料としては、例えば、顔料に物理的処理または化学的処理を施し、分散性付与基または分散性付与基を有する活性種を顔料の表面に結合(グラフト)させたものを使用することができる。前記自己分散型顔料は、例えば、真空プラズマ処理、次亜ハロゲン酸および/または次亜ハロゲン酸塩による酸化処理、またはオゾンによる酸化処理等や、水中で酸化剤により顔料表面を酸化する湿式酸化法や、p-アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法によって製造することができる。
【0098】
自己分散型顔料を含有する水性インクは、前記顔料分散剤を含む必要がないため、顔料分散剤に起因する発泡等がほとんどなく、吐出安定性に優れたインクを調製しやすい。また、自己分散型顔料を含有する水性インクは、取り扱いが容易で、顔料分散剤に起因する大幅な粘度上昇が抑えられるため顔料をより多く含有することが可能となり、印字濃度の高い印刷物の製造に使用することができる。
【0099】
自己分散型顔料としては、市販品を利用することも可能であり、そのような市販品としては、マイクロジェットCW-1(商品名;オリヱント化学工業(株)製)、CAB-O-JET200、CAB-O-JET300(以上商品名;キャボット社製)が挙げられる。
【0100】
前記色材(D)は、色材(D)の優れた分散安定性を維持し、かつ、印刷物の印字濃度や耐洗濯性を向上させるうえで、前記インクの全量に対して1質量%~20質量%の範囲で使用することが好ましく、2質量%~10質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0101】
(顔料分散剤)
前記顔料分散剤は、前記色材(D)として顔料を使用する場合に、好適に使用することができる。
【0102】
前記顔料分散剤としては、例えばポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体などのアクリル樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体などのスチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体の水性樹脂、及び、前記水性樹脂の塩を使用することができる。前記顔料分散剤としては、味の素ファインテクノ(株)製品)のアジスパーPBシリーズ、ビックケミー・ジャパン(株)のDisperbykシリーズ、BASF社製のEFKAシリーズ、日本ルーブリゾール株式会社製のSOLSPERSEシリーズ、エボニック社製のTEGOシリーズ等を使用することができる。
【0103】
前記顔料分散剤としては、粗大粒子を著しく低減でき、その結果、前記インクをインクジェット方式で吐出する場合に求められる良好な吐出安定性を付与するうえで、後述するポリマー(E)を使用することが好ましい。
【0104】
前記ポリマー(E)としては、アニオン性基を有するものを使用することができ、なかでも、水への溶解度が0.1g/100ml以下であり、かつ、前記アニオン性基の塩基性化合物による中和率を100%にしたときに水中で微粒子を形成可能な、数平均分子量が1000~6000の範囲内のポリマーを使用することが好ましい。
【0105】
前記ポリマー(E)の水への溶解度は、次のように定義した。すなわち、目開き250μmおよび90μmの篩を用い250μm~90μmの範囲に粒子径を整えたポリマー(E)0.5gを、400メッシュ金網を加工した袋に封入し、水50mlに浸漬、25℃の温度下で24時間緩やかに攪拌放置した。24時間浸漬後、ポリマー(E)を封入した400メッシュ金網を110℃に設定した乾燥機で2時間乾燥させた。ポリマー(E)を封入した400メッシュ金網の水浸漬前後の重量の変化を測定し、次式により溶解度を算出した。
【0106】
【0107】
また、本発明において、アニオン性基の塩基性化合物による中和率を100%にしたときに水中で微粒子を形成するか否かは、次のように判断した。
(1)ポリマー(E)の酸価を予め、JIS試験方法K 0070-1992に基づく酸価測定方法により測定する。具体的には、テトラヒドロフランにポリマー(E)0.5gを溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として、0.1M水酸化カリウムアルコール溶液で滴定し酸価を求める。
(2)水50mlに対して、ポリマー(E)を1g添加後、得られた酸価を100%中和するだけの0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を加え、100%中和とする。
(3)100%中和させた液を、25℃の温度下で、2時間超音波洗浄器(株式会社エスエヌディ超音波洗浄器US-102、38kHz自励発振)中で超音波を照射させた後24時間室温で放置する。
【0108】
24時間放置後、液面から2センチメートルの深部にある液をサンプリングしたサンプル液を、動的光散乱式粒子径分布測定装置(日機装株式会社製、動的光散乱式粒子径測定装置「マイクロトラック粒度分布計UPA-ST150」)を用い、微粒子形成による光散乱情報が得られるか判定することにより、微粒子が存在するか確認する。
【0109】
本発明で使用するポリマー(E)が形成する微粒子の水中で安定をより一層向上させるために、前記微粒子の粒子径は、5nm~1000nmの範囲であることが好ましく、7nm~700nmの範囲であることがより好ましく、10nm~500nmの範囲であることが最も好ましい。また、前記微粒子の粒度分布は、狭いほうがより分散安定性に優れる傾向にあるが、粒度分布が広い場合であっても、従来よりも優れた分散安定性を備えたインクを得ることができる。なお、前記粒子径及び粒度分布は、前記微粒子の測定方法と同様に、動的光散乱式粒子径分布測定装置(日機装株式会社製動的光散乱式粒子径測定装置「マイクロトラック粒度分布計UPA-ST150」)を用い測定した。
【0110】
本発明で使用するポリマー(E)の中和率は、以下の式により決定した。
【0111】
【0112】
また、前記ポリマー(E)の酸価は、JIS試験方法K 0070-1992に基づいて測定した。具体的には、テトラヒドロフランに試料0.5gを溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として、0.1M水酸化カリウムアルコール溶液で滴定することにより求めた。
【0113】
前記ポリマー(E)の数平均分子量は1000~6000の範囲のものを使用することが好ましく、1300~5000であることがより好ましく、1500~4500であることが、溶媒(C)中における顔料等の色材(D)の凝集等を効果的に抑制でき、前記色材(D)の良好な分散安定性を備えたインクを得るうえでより好ましい。
【0114】
なお、前記数平均分子量は、GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)によって測定されるポリスチレン換算の値とし、具体的には以下の条件で測定した値とする。
【0115】
(数平均分子量(Mn)の測定方法)
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した。
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
【0116】
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0117】
前記ポリマー(E)としては、それを含むインクの表面張力が30dyn/cm以上であることが好ましく、40dyn/cm以上であることがより好ましく、水の表面張力に近い65dyn/cm~75dyn/cmであるものを使用することが特に好ましい。なお、前記表面張力は、ポリマー(E)1gを水に添加後、得られた酸価を100%中和するだけの0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を加え、100%中和したポリマー溶液について測定した値である。
【0118】
前記ポリマー(E)としては、水に対し、未中和の状態では不溶もしくは難溶性であり、且つ100%中和された状態では微粒子を形成するポリマーを使用することができ、親水性基であるアニオン性基のほかに疎水性基を1分子中に有するポリマーであるならば、特に限定はされない。
【0119】
このようなポリマーとして、疎水性基を有するポリマーブロックとアニオン性基を有するポリマーブロックとを有するブロックポリマーがあげられる。ポリマー(E)において、前記アニオン性基の数と水への溶解度は、必ずしも酸価や、ポリマー設計時のアニオン性基の数で特定されるものではなく、例えば同一の酸価を有するポリマーであっても、分子量の低いものは水への溶解度が高くなる傾向にあり、分子量の高いものは水への溶解度は下がる傾向にある。このことから、本発明においては、ポリマー(E)を水への溶解度で特定している。
【0120】
前記ポリマー(E)は、ホモポリマーでも良いが、共重合体であることが好ましく、ランダムポリマーであってもブロックポリマーであっても、交互ポリマーであっても良いが、なかでもブロックポリマーであることが好ましい。また、ポリマーは分岐ポリマーであっても良いが、直鎖ポリマーであることが好ましい。
【0121】
また、前記ポリマー(E)は設計の自由度からビニルポリマーであることが好ましく、本発明において所望される分子量や、溶解度特性を有するビニルポリマーを製造する方法としては、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビングアニオン重合といった、「リビング重合」を用いることにより製造することが好ましい。
【0122】
なかでも、前記ポリマー(E)は(メタ)アクリレートモノマーを原料の1つとして用い製造されるビニルポリマーであることが好ましく、そのようなビニルポリマーの製造方法としては、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合が好ましく、さらにブロックポリマーの分子量や各セグメントをより精密に設計できる観点からリビングアニオン重合が好ましい。
【0123】
リビングアニオン重合によって製造される前記ポリマー(E)は、具体的には、一般式(3)で表されるポリマーである。
【0124】
【0125】
一般式(3)中、A1は有機リチウム開始剤残基を表し、A2は疎水性基を有するポリマーブロックを表し、A3はアニオン性基を含むポリマーブロックを表し、nは1~5の整数を表し、Bは芳香族基またはアルキル基を表す。
【0126】
一般式(3)中、A1は有機リチウム開始剤残基を表す。有機リチウム開始剤として具体的にはメチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム(n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、iso-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムなど)、ペンチルリチウム、へキシルリチウム、メトキシメチルリチウム、エトシキメチルリチウムなどのアルキルリチウム;ベンジルリチウム、α-メチルスチリルリチウム、1,1-ジフェニル-3-メチルペンチルリチウム、1,1-ジフェニルヘキシルリチウム、フェニルエチルリチウムなどのフェニルアルキレンリチウム;ビニルリチウム、アリルリチウム、プロペニルリチウム、ブテニルリチウムなどのアルケニルリチウム;エチニルリチウム、ブチニルリチウム、ペンチニルリチウム、ヘキシニルリチウムなどのアルキニルリチウム;フェニルリチウム、ナフチルリチウムなどのアリールリチウム;2-チエニルリチウム、4-ピリジルリチウム、2-キノリルリチウムなどのヘテロ環リチウム;トリ(n-ブチル)マグネシウムリチウム、トリメチルマグネシウムリチウムなどのアルキルリチウムマグネシウム錯体などが挙げられる。
【0127】
有機リチウム開始剤は、有機基とリチウムとの結合が開裂し有機基側に活性末端が生じ、そこから重合が開始される。従って得られるポリマー末端には有機リチウム由来の有機基が結合している。本発明においては、該ポリマー末端に結合した有機リチウム由来の有機基を、有機リチウム開始剤残基と称する。例えばメチルリチウムを開始剤として使用したポリマーであれば、有機リチウム開始剤酸基はメチル基となり、ブチルリチウムを開始剤として使用したポリマーであれば、有機リチウム開始剤酸基はブチル基となる。
【0128】
前記一般式(3)中、A2は疎水性基を有するポリマーブロックを表す。A2は、前述の通り適度な溶解性のバランスを取る目的の他、顔料と接触したときに顔料への吸着の高い基であることが好ましく、その観点から、A2は芳香環または複素環を有するモノマーのポリマーブロックであることが好ましい。
芳香環または複素環を有するモノマーのポリマーブロックとは、具体的には、スチレン系モノマー等の芳香族環を有するモノマーや、ビニルピリジン系モノマー等の複素環を有するモノマーを単独重合または共重合して得たホモポリマーまたはコポリマーのポリマーブロックである。
【0129】
芳香環を有するモノマーとしては、スチレン、p-tert-ブチル、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-tert-ブトキシスチレン、m-tert-ブトキシスチレン、p-tert-(1-エトキシメチル)スチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、p-フロロスチレン、α-メチルスチレン、p-メチル-α-メチルスチレン、などのスチレン系モノマーや、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどがあげられる。
【0130】
また、複素環を有するモノマーとしては、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジンなどのビニルピリジン系モノマーがあげられる。これらのモノマーは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0131】
前記一般式(3)中、A3はアニオン性基を含むポリマーブロックを表す。A3は、前述の通り適度な溶解性を与える目的の他、顔料分散体となったときに水中で分散安定性を付与する目的がある。
前記ポリマーブロックA3におけるアニオン性基は、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基または燐酸基等があげられる。なかでも、カルボキシル基がその調製やモノマー品種の豊富さ入手し易さから好ましい。また2つのカルボキシル基が分子内または分子間において脱水縮合した酸無水基となっていてもよい。
【0132】
前記A3のアニオン性基の導入方法は特に限定はなく、例えば該アニオン性基がカルボキシル基の場合は、(メタ)アクリル酸を単独重合もしくは他のモノマーと共重合させて得たホモポリマーまたはコポリマーのポリマーブロック(PB1)であってもよいし、脱保護をすることによりアニオン性基に再生可能な保護基を有する(メタ)アクリレートを単独重合もしくは他のモノマーと共重合させて得たホモポリマーまたはコポリマーの、該アニオン性基に再生可能な保護基の一部または全てがアニオン性基に再生されたポリマーブロック(PB2)であってもよい。
【0133】
なお、前記ポリマーブロックA3で使用する(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸の総称を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートとの総称を表す。
【0134】
(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリレートとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸iso-プロピル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸iso-アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸ペンタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸オクタフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸ペンタデカフルオロオクチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレンオキサイド基含有(メタ)アクリレート等があげられる。これらのモノマーは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0135】
リビングアニオン重合法においては、使用するモノマーがアニオン性基等の活性プロトンを持つ基を有するモノマーの場合、リビングアニオン重合ポリマーの活性末端が直ちにこれら活性プロトンを持つ基と反応し失活するため、ポリマーが得られない。リビングアニオン重合では活性プロトンを持つ基を有するモノマーをそのまま重合することは困難であるため、活性プロトンを持つ基を保護した状態で重合し、その後、保護基を脱保護することで活性プロトンを持つ基を再生することが好ましい。
【0136】
このような理由から、前記ポリマーブロックA3においては、脱保護をすることによりアニオン性基に再生可能な保護基を有する(メタ)アクリレートを含むモノマーを用いることが好ましい。該モノマーを使用することで、重合時には前述の重合の阻害を防止できる。また保護基により保護されたアニオン性基は、ブロックポリマーを得た後に脱保護することにより、アニオン性基に再生することが可能である。
【0137】
例えばアニオン性基がカルボキシル基の場合、カルボキシル基をエステル化し、後工程として加水分解等で脱保護することによりカルボキシル基を再生することができる。この場合のカルボキシル基に変換可能な保護基としてはエステル結合を有する基が好ましく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基等の第1級アルコキシカルボニル基;イソプロポキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基等の第2級アルコキシカルボニル基;t-ブトキシカルボニル基等の第3級アルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のフェニルアルコキシカルボニル基;エトキシエチルカルボニル基等のアルコキシアルキルカルボニル基などが挙げられる。
【0138】
アニオン性基がカルボキシル基の場合、使用できるモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコサニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のフェニルアルキレン(メタ)アクリレート;エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの(メタ)アクリレートの中でも、t-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートを用いると、カルボキシル基への変換反応が容易であることから好ましい。また、工業的に入手のしやすさを考慮すると、t-ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0139】
一般式(3)中、Bは芳香族基または炭素原子数1~10のアルキル基を表す。またnは1~5の整数を表す。
【0140】
リビングアニオン重合法においては、(メタ)アクリレートモノマーを求核性の強いスチレン系ポリマーの活性末端に直接重合しようとした場合、カルボニル炭素への求核攻撃により、ポリマー化できない場合がある。このため、前記A1-A2に(メタ)アクリレートモノマーの重合を行う際には反応調整剤を使用し、求核性を調整した後、(メタ)アクリレートモノマーを重合することが行われる。一般式(3)におけるBは該反応調整剤に由来する基である。反応調整剤としては、具体的にはジフェニルエチレンやα-メチルスチレン、p-メチル-α-メチルスチレン等があげられる。
【0141】
リビングアニオン重合法は、反応条件を整えることにより、従来のフリーラジカル重合で用いられるようなバッチ方式により実施できる他、マイクロリアクターによる連続的に重合する方法を挙げることもできる。マイクロリアクターは、重合開始剤とモノマーの混合性が良好であるため、反応が同時に開始し、温度が均一で重合速度を揃えることができるため、製造される重合体の分子量分布を狭くできる。また同時に、成長末端が安定であるためブロックの両成分が混じりあわないブロック共重合体を製造することが容易になる。また、反応温度の制御性が良好であるため副反応を抑えることが容易である。
【0142】
マイクロリアクターを使用したリビングアニオン重合の一般的な方法を、マイクロリアクターの模式図である
図1を参照しながら説明する。
第一のモノマーと重合を開始させる重合開始剤とを、それぞれチューブリアクターP1及びP2(
図1中7及び8)から、複数の液体を混合可能な流路を備えるT字型マイクロミキサーM1(
図1中1)に導入し、T字型マイクロミキサーM1内で、第一のモノマーをリビングアニオン重合し第一の重合体を形成する(工程1)。
【0143】
次に、得られた第一の重合体をT字型マイクロミキサーM2(
図1中2)に移動させ、同ミキサーM2内で、得られた重合体の成長末端を、チューブリアクターP3(
図1中9)から導入された反応調整剤によりトラップし、反応調節を行う(工程2)。
なお、このとき反応調整剤の種類や使用量により、前記一般式(3)におけるnの数をコントロールすることが可能である。
【0144】
次に、前記T字型マイクロミキサーM2内の反応調節を行った第一の重合体を、T字型マイクロミキサーM3(
図1中3)に移動させ、同ミキサーM3内で、チューブリアクターP4から導入された第二のモノマーと、前記反応調節を行った第一の重合体とを、連続的にリビングアニオン重合を行う(工程3)。
【0145】
その後メタノール等活性プロトンを有する化合物で反応をクエンチすることで、ブロック共重合体を製造する。
【0146】
本発明の一般式(3)で表されるポリマー(E)を、前記マイクロリアクターで製造する場合は、前記第一のモノマーとして芳香環または複素環を有するモノマーを使用し、前記開始剤として有機リチウム開始剤により反応させることで、前記A2の芳香環または複素環を有するモノマーのポリマーブロック(該ポリマーブロックA2の片末端には前記A1の有機リチウム開始剤残基である有機基が結合している)を得る。
次に、反応調整剤を使用して成長末端の反応性を調整した後、前記アニオン性基に再生可能な保護基を有する(メタ)アクリレートを含むモノマーを前記第二のモノマーとして反応させポリマーブロックを得る。
【0147】
この後、加水分解等の脱保護反応によりアニオン性基に再生することにより、前記A3即ちアニオン性基を含むポリマーブロックが得られる。
【0148】
前記アニオン性基に再生可能な保護基のエステル結合を、加水分解等の脱保護反応によりアニオン性基に再生させる方法を詳細に述べる。
【0149】
エステル結合の加水分解反応は、酸性条件下でも塩基性条件下でも進行するが、エステル結合を有する基によって条件がやや異なる。例えばエステル結合を有する基がメトキシカルボニル基等の第1級アルコキシカルボニル基又はイソプロポキシカルボニル基等の第2級アルコキシカルボニル基の場合は、塩基性条件下で加水分解を行うことでカルボキシル基を得ることができる。この際、塩基性条件下とする塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物などが挙げられる。
【0150】
また、エステル結合を有する基が、t-ブトキシカルボニル基等の第3級アルコキシカルボニル基の場合は、酸性条件下で加水分解を行うことにより、カルボキシル基を得ることができる。この際、酸性条件下とする酸性化合物としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸;トリフルオロ酢酸等のブレステッド酸;トリメチルシリルトリフラート等のルイス酸などが挙げられる。t-ブトキシカルボニル基の酸性条件下で加水分解の反応条件については、例えば、「日本化学会編第5版 実験化学講座16 有機化合物の合成IV」に開示されている。
【0151】
さらに、t-ブトキシカルボニル基をカルボキシル基に変換する方法として、上記の酸に代えて、陽イオン交換樹脂を用いた方法も挙げられる。前記陽イオン交換樹脂としては、例えば、ポリマー鎖の側鎖にカルボキシル基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)等の酸基を有する樹脂が挙げられる。これらの中でも、当該樹脂の側鎖にスルホ基を有する強酸性を示す陽イオン交換樹脂が、反応の進行を速くできることから好ましい。本発明で使用できる陽イオン交換樹脂の市販品としては、例えば、オルガノ株式会社製強酸性陽イオン交換樹脂「アンバーライト」等が挙げられる。この陽イオン交換樹脂の使用量は、効果的に加水分解できることから、前記一般式(3)で表されるポリマー100質量部に対し、5質量部~200質量部の範囲が好ましく、10質量部~100質量部の範囲がより好ましい。
【0152】
また、エステル結合を有する基が、ベンジルオキシカルボニル基等のフェニルアルコキシカルボニル基の場合は、水素化還元反応を行うことにより、カルボキシル基に変換できる。この際、反応条件としては、室温下、酢酸パラジウム等のパラジウム触媒の存在下で、水素ガスを還元剤として用いて反応させることにより定量的にフェニルアルコキシカルボニル基をカルボキシル基に再生できる。
【0153】
上記のように、エステル結合を有する基の種類によってカルボキシル基への変換の際の反応条件が異なるため、例えばA3の原料としてt-ブチル(メタ)アクリレートとn-ブチル(メタ)アクリレートを用い共重合して得られたポリマーは、t-ブトキシカルボニル基とn-ブトキシカルボニル基とを有することになる。ここで、t-ブトキシカルボニル基が加水分解する酸性条件下では、n-ブトキシカルボニル基は加水分解しないことから、t-ブトキシカルボニル基のみを選択的に加水分解してカルボキシル基へ脱保護が可能となる。したがって、A3の原料モノマーであるアニオン性基に再生可能な保護基を有する(メタ)アクリレートを含むモノマーを適宜選択することにより親水ブロック(A3)の酸価の調整が可能となる。
【0154】
また、前記一般式(3)で表されるポリマー(E)において、ポリマーブロック(A2)とポリマーブロック(A3)がランダムに配列して結合したランダム共重合体でなく、前記ポリマーブロックがある程度の長さのまとまりとなって規則的に結合したブロック共重合体であるほうが、前記顔料が前記ポリマー(E)によって水中に分散された水性顔料分散体の安定性を向上させるうえで有利である。水性顔料分散体は、インクの製造に使用する原料であり、前記顔料を前記ポリマー(E)を用いて高濃度で水中に分散させた液体である。ポリマーブロック(A2)とポリマーブロック(A3)のモル比A2:A3は、100:10~100:500の範囲であることが好ましく、A2:A3=100:10~100:450であることが、例えばインクジェット方式でインクを吐出する際に求められる良好な吐出安定性を維持することができ、かつ、より一層、発色性などに優れた印刷物を製造可能なインクを得るうえでより好ましい。
【0155】
また、前記一般式(3)で表されるポリマー(E)において、ポリマーブロック(A2)を構成する芳香環または複素環を有するモノマー数は5~40の範囲が好ましく、6~30の範囲がなお好ましく、7~25の範囲が最も好ましい。またポリマーブロック(A3)を構成するアニオン性基の数は、3~20の範囲が好ましく、4~17の範囲がなお好ましく、5~15の範囲が最も好ましい。
前記ポリマーブロック(A2)とポリマーブロック(A3)のモル比A2:A3を、ポリマーブロック(A2)を構成する芳香環または複素環を有するモル数と、(A3)を構成するアニオン性基のモル数のモル比で表した場合は100:7.5~100:400が好ましい。
【0156】
また、前記一般式(3)で表されるポリマー(E)の酸価は40mgKOH/g~400mgKOH/gが好ましく、40mgKOH/g~300mgKOH/gでより好ましく、40mgKOH/g~190mgKOH/gであることが、例えばインクジェット方式でインクを吐出する際に求められる良好な吐出安定性を維持することができ、かつ、耐擦過性等の点でより一層優れた印刷物を製造可能なインクを得るうえでより好ましい。
【0157】
なお、本発明におけるポリマーの酸価は、前記ポリマー(E)の微粒子の測定方法と同様の酸価測定方法による酸価とした。
【0158】
前記インクにおいて、前記ポリマー(E)のアニオン性基は中和されていることが好ましい。
【0159】
前記ポリマー(E)のアニオン性基を中和する塩基性化合物としては、公知慣用のものがいずれも使用出来、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等の無機塩基性物質や、アンモニア、トリエチルアミン、アルカノールアミンの様な有機塩基性化合物を用いることができる。
【0160】
前記水性顔料分散体中に存在する前記ポリマー(E)の中和量は、ポリマーの酸価に対して100%中和されている必要はない。具体的には、前記ポリマー(E)の中和率が20%~200%になるように中和されることが好ましく、80%~150%がなお好ましい。
【0161】
本発明のインクは、前記成分のほかに必要に応じて、界面活性剤、糖類、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等のその他の添加剤を含有するものを使用することができる。
【0162】
前記界面活性剤は、インクの表面張力を低下させるなどすることでインクのレベリング性を向上させるうえで使用することができる。さらに、前記界面活性剤は、インクジェットヘッドの吐出口から吐出されたインクが布帛に着弾後、表面で良好に濡れ広がらせることで、印刷物のモットリングの発生を防止することができる。
【0163】
前記界面活性剤としては、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを使用することができ、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0164】
前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩などを挙げることができる。
【0165】
前記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、等を挙げることができ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーが好ましい。中でもアセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物が、記録媒体に対するインク液滴の接触角を低減し、良好な印刷物を得られることからより好ましい。
【0166】
その他の界面活性剤としては、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント等も使用することができる。
【0167】
前記界面活性剤としては、水を主溶媒とするインクに前記界面活性剤が溶解した状態を安定的に維持するうえで、HLBが4~20の範囲であるものを使用することが好ましい。
【0168】
前記界面活性剤としては、前記インクの全量に対し、0.001質量%~2質量%の範囲で使用することが好ましく、0.001質量%~1.5質量%の範囲で使用することがより好ましく、0.1質量%~1.5質量%の範囲で使用することが好ましい。上記範囲の前記界面活性剤を含有するインクジェットインクは、吐出液滴の布帛表面での濡れ性良好であり、布帛上で十分な濡れ広がりを有し、印刷物のモットリングの発生を防止する効果を奏するうえで好ましい。更に、上記範囲の前記界面活性剤を含有するインクは、布帛への濡れ性を向上させる効果を奏する。
【0169】
前記糖類としては、単糖類および多糖類が挙げられ、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の他にアルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類を用いることができる。
【0170】
前記防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2-ジベンジソチアゾリン-3-オン(アーチケミカルズ社のプロキセルGXL、プロキセルXL-2、プロキセルLV、プロキセルAQ、プロキセルBD20、プロキセルDL)等が挙げられる。
【0171】
前記粘度調整剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、スターチ等の主として水溶性の天然あるいは合成高分子物が挙げられる。
【0172】
前記pH調整剤の具体例としては、コリジン、イミダゾール、燐酸、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ほう酸等が挙げられる。
【0173】
前記キレート化剤の具体例としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、ニトリロ三酢酸、1,3-プロパンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、イミノ二酢酸、ウラミル二酢酸、1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸及びこれらの塩(水和物を含む)等があげられる。
【0174】
前記酸化防止剤または紫外線吸収剤としては、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類等、L-アスコルビン酸およびその塩等、チバガイギー社製のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024等、あるいはランタニドの酸化物等が挙げられる。
【0175】
(インクの製造方法)
本発明のインクは、前記色材(D)が顔料である場合、顔料を高濃度で含有する水性顔料分散体を製造し、前記水性顔料分散体と、前記溶媒(C)と、前記ポリウレタン(A)、ポリウレタン(B)、必要に応じてその他のバインダー樹脂や界面活性剤や添加剤とを混合することによって製造することができる。
【0176】
前記水性顔料分散体の製造方法としては、例えば以下の(1)~(3)の方法が挙げられる。
(1)分散樹脂及び水を含有する混合物に、顔料を添加した後、攪拌分散装置を用いて顔料を前記混合物中に分散させることにより水性顔料分散体を調製する方法。
(2)顔料及び分散樹脂を2本ロールやミキサー等の混練機を用いて混練し、得られた混練物を、水、および必要に応じて水と混和する有機溶剤を添加し、攪拌分散装置を用いて水性顔料分散体を調製する方法。
(3)メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等のような水と相溶性を有する有機溶剤中に分散樹脂を溶解して得られた溶液に顔料を添加した後、攪拌分散装置を用いて顔料を有機溶液中に分散させ、次いで水等の水性媒体を用いて転相乳化させた後、前記有機溶剤を留去し水性顔料分散体を調製する方法。
【0177】
混練機としては、特に限定されることなく、例えば、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、プラネタリーミキサー、バタフライミキサーなどがあげられる。
【0178】
攪拌分散装置としては、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザー等を単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0179】
前記水性顔料分散体としては、前記水性顔料分散体の全量に対して顔料を5質量%~60質量%含有するものを使用することが、画像濃度の高い印刷物を形成可能で分散安定性に優れたインクを得るうえで好ましく、10質量%~50質量%である水性顔料分散体を使用することがより好ましい。
【0180】
また、水性顔料分散体に含まれる粗大粒子は、画像特性を劣化させる原因になるため、インクを製造する前後に、遠心分離または濾過処理等により粗大粒子を除去した水性顔料分散体を使用することが好ましい。
【0181】
前記水性顔料分散体を製造する際には、分散工程の後にイオン交換処理や限外処理による不純物除去工程を経て、その後に後処理を行っても良い。イオン交換処理によって、カチオン、アニオンといったイオン性物質(2価の金属イオン等)を除去することができ、限外処理によって、不純物溶解物質(顔料合成時の残留物質、分散液組成中の過剰成分、有機顔料に吸着していない樹脂、混入異物等)を除去することができる。イオン交換処理は、公知のイオン交換樹脂を用いる。限外処理は、公知の限外ろ過膜を用い、通常タイプ又は2倍能力アップタイプのいずれでもよい。
【0182】
前記方法で得られた水性顔料分散体と、前記ポリウレタン(A)と、前記ポリウレタン(B)等とを混合する方法としては、例えば、予め前記ポリウレタン(A)の水分散体と、前記ポリウレタン(B)の水分散体等との混合物を製造し、前記混合物と水性顔料分散体とを混合する方法や、前記水性顔料分散体と前記ポリウレタン(A)の水分散体と前記ポリウレタン(B)の水分散体を混合した後、さらに界面活性剤等のその他の添加剤を混合する方法が挙げられる。』
【0183】
前記方法で得られた本発明のインクとしては、充分な画像濃度を得る必要性と、インク中での顔料の良好な分散安定性を確保するうえで、前記インクの全量に対する顔料の質量割合(顔料濃度)が1質量%~20質量%であることが好ましい。
【0184】
前記インクのpHは、インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させ、インク易吸収性または難吸収性の布帛に印刷した際の濡れ広がり、印字濃度、耐水堅牢性を向上させるうえで、好ましくは7.0以上、より好ましくは7.5以上、更により好ましくは8.0以上である。前記インクのpHの上限は、インクの塗布または吐出装置を構成する部材(例えば、インク吐出口、インク流路等)の劣化を抑制し、かつ、インクが皮膚に付着した場合の影響を小さくするうえで、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.0以下、更により好ましくは9.5以下である。
【0185】
前記方法で得られた本発明のインクは、例えばインクジェット印刷法やスクリーン印刷法等で使用することができ、好ましくはインクジェット印刷法、より好ましくはインク循環型インクジェットヘッドによる印刷法に使用することができる。
【0186】
前記インク循環型インクジェットヘッドを備えた印刷装置としては、例えばインク吐出ノズルとは別に、インクの流入経路とインクの流出経路とを有し、前記流出経路から流出されたインクが、前記流入経路を経て、再びインクジェットヘッドに供給されるようなインクの循環構造を有するものヘッドを備えた印刷装置が挙げられる。また、前記印刷装置としては、前記循環構造の途中にフィルターが設けられたものを好適に使用することができる。
【0187】
前記フィルターとしては、孔径が5μm~20μmの範囲のものを使用することが好ましく、5μm~10μmの範囲ものを使用することが、ノズル近傍で発生する可能性のある異物を除去する効果を奏するうえで好ましい。
【0188】
本発明のインクと前記印刷法や印刷装置を用いて印刷物を製造する際に使用可能な被記録媒体としては、例えば普通紙、コート紙、アート紙、フィルム、インクジェット印刷専用紙、布帛等が挙げられる。
【0189】
本発明のインクはもっぱら布帛への印刷に好適に使用することができる。
【0190】
前記布帛は、一般に、綿などの繊維からなる糸を縦方向と横方向に交互に織ることで作られる織物を意味する。本発明のインクは一般的な意味での布帛だけでなく、不織布や編物などの繊維で構成される媒体に好適である。素材は綿、絹、羊毛、麻、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン等の任意の天然繊維や合成繊維からなる布帛や、これらが混紡された布帛を用いることができる。
【0191】
前記布帛への印刷方法としては、例えばインク循環型インクジェットヘッドを備えた印刷装置を用い、本発明のインクを布帛に印刷する方法が挙げられる。
【0192】
その際、前記インク循環型インクジェットヘッドのインク吐出口と前記布帛との最短距離が好ましくは1mm以上に設定することが好ましい。
【0193】
前記最短距離は、インクジェットヘッドのインク吐出口を有する面(x)から、前記面(x)の垂線(面(x)に対して仮定した垂線)と布帛とが交わる位置(y)までの距離(ギャップ)であってよい。
【0194】
本発明の印刷物の製造方法で適用されるインクジェット記録方式では、前記最短距離(ギャップ)が2mm以上、好ましくは3mm以上である構成を備えたインクジェット記録装置を使用することができる。
【0195】
前記最短距離は、布帛の毛羽立ちや凹凸が大きいものであっても、前記布帛の表面(記録面)と前記インク吐出口とが接触することを防止し、前記インク吐出口の損傷や、前記インク吐出口が備える場合の多い撥水機能の低下に起因したインク吐出不良を効果的に防止するとともに、布帛の表面とインクジェットヘッドとの距離が長い場合であっても、スジを有さない印刷物を製造するうえで、前記距離の下限は3mm以上であることが好ましく、前記距離の上限は、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることが特に好ましい。
【0196】
前記最短距離において、前記インク循環型インクジェットヘッドから吐出される際のインクの液滴のサイズの下限は、好ましくは10pl、より好ましくは15pl、さらに好ましくは20plであり、上限は、好ましくは50pl、より好ましくは45pl、更に好ましくは40plであることが、スジなどのない優れた画像品質を備えた印刷物を製造でき、かつ、より一層優れた耐洗濯性を備えた印刷物をえるうえで好ましい。
【実施例】
【0197】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
【0198】
<分散樹脂(P-1)の合成例>
BuLiのヘキサン溶液と、スチレンを予めテトラヒドロフランに溶解したスチレン溶液とを
図1に示すチューブリアクターP1及びP2から、T字型マイクロミキサーM1に導入し、リビングアニオン重合させることによって重合体を得た。
【0199】
次に、前記工程で得られた重合体を
図1に示すチューブリアクターR1を通じてT字型マイクロミキサーM2に移動させ、前記重合体の成長末端を、チューブリアクターP3から導入した反応調整剤(α-メチルスチレン(α-MeSt))によりトラップした。
【0200】
次いで、tert-ブチルメタクリレートを予めテトラヒドロフランに溶解したtert-ブチルメタクリレート溶液を
図1に示すチューブリアクターP4からT字型マイクロミキサーM3に導入し、チューブリアクターR2を通じて移動させた前記トラップされた重合体と、連続的なリビングアニオン重合反応を行った。その後、メタノールを供給することによって前記リビングアニオン重合反応をクエンチすることによってブロック共重合体(PA-1)組成物を製造した。
【0201】
前記ブロック共重合体(PA-1)組成物を製造する際、
図1に示すマイクロリアクター全体を恒温槽に埋没させることで、反応温度を24℃に設定した。
【0202】
前記方法で得られたブロック共重合体(PA-1)を構成するモノマーのモル比は、
(BuLi/スチレン/α-メチルスチレン/tert-ブチルメタクリレート)=1.0/12.0/1.3/8.1であった。
【0203】
得られたブロック共重合体(PA-1)組成物を、陽イオン交換樹脂で処理することで加水分解した後減圧下で留去し、得られた固体を粉砕することによって、重量平均分子量2710、酸価145の、粉状の分散樹脂(P-1)を得た。
【0204】
得られた分散樹脂(P-1)及び後述するポリウレタンの各種物性値は以下のように測定した。
【0205】
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した。
【0206】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
【0207】
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のTHF溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0208】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0209】
(酸価の測定方法)
JIS試験方法K 0070-1992に準拠して測定した。THFに試料0.5gを溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として、0.1M水酸化カリウムアルコール溶液で滴定することにより求めた。
【0210】
<製造例1>水性顔料分散体(A1)の製造方法
顔料としてFastogen Blue SBG-SD(DIC株式会社製、C.I.PigmentBlue 15)を150質量部、前記分散樹脂(P-1)を30質量部、トリエチレングリコールを105質量部、34質量%水酸化カリウム水溶液12.8質量部を、1.0Lのインテンシブミキサー(日本アイリッヒ株式会社)に仕込み、ローター周速2.94m/s、パン周速1m/sで、60分間混練した。
【0211】
次に、インテンシブミキサー容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水450質量部を徐々に加えた後、イオン交換水208.5質量部をさらに加え混合することによって、顔料濃度15.0質量%の水性顔料分散体(1)を得た。
【0212】
<ウレタン樹脂組成物PUD-A1の製造方法>
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6-ヘキサンジオールとメチルカーボネートとを反応して得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量2000)500質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸37.7質量部及びメチルエチルケトン 420質量部を加え、均一に混合した。次いで、イソホロンジイソシアネート140.8質量部を加えた後、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、80℃で7時間反応させることによって、重量平均分子量が40000のポリウレタン(酸価35mgKOH/g)の有機溶剤溶液を得た。その後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン29.8質量部及び水2069質量部を加え、減圧下、40℃~60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ポリウレタンが水性媒体中に分散された不揮発分23質量%のウレタン樹脂組成物PUD-A1を得た。
【0213】
<ウレタン樹脂組成物PUD-A2の製造方法>
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6-ヘキサンジオールとメチルカーボネートとを反応して得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量2000)500質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸36.5質量部及びメチルエチルケトン436質量部を加え、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを183.5質量部使用し、80℃で3時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。上記で得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン41.3質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中のカルボキシル基を中和した後、水1504質量部を加えた。次いで、ヒドラジン5.2質量部を加えて反応させた。反応終了後、減圧下、40℃~60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%の重量平均分子量が150000で酸価23mgKOH/gのポリウレタンを含有するウレタン樹脂組成物PUD-A2を得た。
【0214】
<ウレタン樹脂組成物PUD-B1の製造方法>
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量1000)500質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸28.2質量部及びメチルエチルケトン436質量部を加え、イソホロンジイソシアネートを133.8質量部使用し、80℃で3時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。上記で得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液に25%アンモニア水溶液14.3質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中のカルボキシル基を中和した後、水1504質量部を加えた。次いで、ヒドラジン1.1質量部を加えて反応させた。反応終了後、減圧下、40℃~60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%の重量平均分子量が39000で酸価7mgKOH/gのポリウレタンを含有するウレタン樹脂組成物PUD-B1を得た。
【0215】
<ウレタン樹脂組成物PUD-B2の製造方法>
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量2000)500質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸122.7質量部及びメチルエチルケトン420質量部を加え、均一に混合した。次いで、イソホロンジイソシアネート280.0質量部を加えた後、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、80℃で7時間反応させることによって、重量平均分子量が38000のポリウレタン(酸価55mgKOH/g)の有機溶剤溶液を得た。その後、50℃まで冷却し、40質量%水酸化カリウム水溶液122.9質量部及び水2069質量部を加え、減圧下、40℃~60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ポリウレタンが水性媒体中に分散された不揮発分23質量%のウレタン樹脂組成物PUD-B2を得た。
【0216】
<実施例1>水性インク及び印刷物の調製
前記水性顔料分散体(1)29.3質量部、ポリウレタン(A)としてウレタン樹脂組成物PUD-A1(不揮発分23質量%)18.3 質量部、ポリウレタン(B)としてウレタン樹脂組成物PUD-B1(不揮発分23質量%)12.2質量部、サーフィノール440(EVONIK製、アセチレン系界面活性剤)1質量部、グリセリンを25.0質量部、プロピレングリコールを5.0質量部、防腐剤としてACTICIDE B-20(ソー・ジャパン(株)製)0.05質量部、イオン交換水9.15質量部を混合することによって水性インクを得た。前記水性インクの25℃での粘度は10mPa・s、表面張力は33mN/mであった。
【0217】
インク吐出ノズルと、インクの流入経路とインクの流出経路とを有し、前記流出経路から流出されたインクが、前記流入経路を経てインクジェットヘッドに供給される構造を有するインク循環型インクジェットヘッドを備えた印刷装置に、前記で得た水性インクを充てんした。
【0218】
次に、前記インク循環型インクジェットヘッドのインク吐出口を有する面(x)から、前記面(x)に対して仮定した垂線と、布帛とが交わる位置(y)までの距離(ギャップ)は3mmに設定した。布帛としては綿ブロード(株式会社色染社製)を使用した。
【0219】
前記インク循環型インクジェットヘッドのノズル面のワイピングをおこなった後、駆動周波数10kHzで、前記布帛に、100%ベタ画像を印刷し、次に100℃で1分間乾燥させ、次に150℃で5分間の加熱処理を行うことによって印刷物を得た。
【0220】
前記水性インクの粘度及び静的表面張力は、下記の方法で測定した。
【0221】
インクの粘度は、E型粘度計に相当する円錐平板形(コーン・プレート形)回転粘度計を使用し、下記条件にて測定した。
測定装置:TVE-25形粘度計(社製、TVE-25 L)
校正用標準液:JS20
測定温度:25℃
回転速度:10~100rpm
注入量:1200μL
インクの静的表面張力は、ウィルへルミ法を適用した自動表面張力計を用い、下記条件にて測定した。
測定装置:自動表面張力計(協和界面科学(株)社製、CBVP-Z型)
測定温度:25℃
測定子:白金プレート
【0222】
<実施例及び比較例>水性インクの調製
水性インクの配合を下記表1及び2に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性インクを調整し、印刷物を得た。
【0223】
[循環ろ過特性(インクの循環経路の途中に設けられたフィルターの詰まりにくさ)の評価]
前記循環ろ過特性は、孔径12μmのSUS製のメッシュフィルター(真鍋工業株式会社製)を備えた循環経路を有する循環装置内で、実施例及び比較例で得られた水性インク200gを循環させることによって評価した。前記循環開始直後の水性インクの流速は50g/minに調整した。
【0224】
前記循環開始から1時間ごとに水性インクの流速を測定し、その流速が25g/min以下になった時の経過時間と、下記評価基準に基づいて、循環ろ過性を評価した。
【0225】
A:循環開始から168時間
B:循環開始から120時間以上168時間未満
C:循環開始から72時間以上120時間未満
D:循環開始から24時間以上72時間未満
E:循環開始から24時間未満
【0226】
[洗濯堅牢性の評価]
前記方法で得られた印刷物の洗濯堅牢性を、JIS L 0844:2005のA-2法に準拠して、試験を行った後、JIS L 0801:2004の変退色用グレースケールを用いた視感法の判定基準にしたがって、1級~5級で等級を判定した。なお、等級は、1級が最も退色が大きく、5級に近づくほど退色が少ないことを指す。
【0227】
・○:4級以上
・△:3級以上4級未満
・×:3級未満
【0228】
[粘度の安定性の評価]
製造直後の水性インクの粘度V0を、上記した方法で測定した。次に、前記水性インク20mLをガラス容器に密閉し、60℃の環境下に4週間静置した後、上記と同様の方法で粘度V1を測定した。前記測定結果と、式[(V1-V0)/V0]×100に基づいて粘度の変化率を算出し、下記基準に基づいて評価した。
【0229】
・○:粘度の変化率が±5%未満
・△:粘度の変化率が±5%以上±10%未満
・×:粘度の変化率が±10%以上
【0230】
[インクの再溶解性の評価]
水性インク1mLをSUS基板上に塗布し、40℃のホットプレート上で5分間加熱することによって印刷物を得た。前記印刷物を20mLの純水に浸漬し、1分経過後、前記印刷物の印刷面を目視で観察し、下記基準で評価した。
【0231】
○:着色なし
△:薄い着色膜が残る
×:濃い着色膜が残る
【0232】
【0233】
【符号の説明】
【0234】
1:T字型マイクロミキサーM1
2:T字型マイクロミキサーM2
3:T字型マイクロミキサーM3
4:チューブリアクターR1
5:チューブリアクターR2
6:チューブリアクターR3
7:プレクーリングの為のチューブリアクターP1
8:プレクーリングの為のチューブリアクターP2
9:プレクーリングの為のチューブリアクターP3
10:プレクーリングの為のチューブリアクターP4