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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ポリマー被覆シリコン粒子
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/14 20060101AFI20231205BHJP
   C08G 77/42 20060101ALI20231205BHJP
   H01L 31/0216 20140101ALI20231205BHJP
【FI】
C08F290/14
C08G77/42
H01L31/04 240
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019181160
(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公開番号】P2020152891
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2019049366
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩嶋 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】荒川 太地
(72)【発明者】
【氏名】石塚 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】阿部 昌則
(72)【発明者】
【氏名】津吉 徹
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/140645(WO,A1)
【文献】特表2020-507192(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0164081(US,A1)
【文献】特表2009-537445(JP,A)
【文献】特開2014-075325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 283/01、290/00-290/14、
299/00-299/08
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 77/00-77/62
H01L 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン粒子のメディアン径(D50)が100~1000nmであり、1つのポリマー内に含まれる平均シリコン粒子数が4以下であり、かつ、前記ポリマーがポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル又はポリアクリル酸メチルからなる群から選ばれる1種以上であるポリマー被覆シリコン粒子。
【請求項2】
シリコン粒子の表面が改質されている請求項1に記載のポリマー被覆シリコン粒子。
【請求項3】
シリコン粒子がSiO、Si(I)O、Si(II)O、Si(III)O、またはSiOHを介してポリマーと結合している請求項1又は2に記載のポリマー被覆シリコン粒子。
【請求項4】
シリコン粒子の平均長径度が4以下である請求項1~3のいずれかに記載のポリマー被覆シリコン粒子。
【請求項5】
シリコン粒子に対する被覆ポリマーの体積比が1以上である請求項1~4のいずれかに記載のポリマー被覆シリコン粒子。
【請求項6】
シリコン粒子の純度が98重量%以上である請求項1~5のいずれかに記載のポリマー被覆シリコン粒子。
【請求項7】
D50が200~1200nmである請求項1~6のいずれかに記載のポリマー被覆シリコン粒子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のポリマー被覆シリコン粒子を用いた太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料、電池等に用いられるポリマー被覆シリコンに関する。
【背景技術】
【0002】
粒径がナノメートルオーダーまで微細化されたシリコンナノ粒子は、高効率LEDや太陽電池、リチウムイオン二次電池等に用いられている。例えば太陽電池にシリコンナノ粒子を塗布することにより、シリコンナノ粒子から太陽電池材料へのエネルギー移動を可能として変換効率が向上する(例えば特許文献1、非特許文献1参照)。また、シリコンはリチウムイオン二次電池の負極材として黒鉛の10倍以上の理論容量を持つため、次世代の負極材料として期待されている。シリコンは充放電の際に大きく体積変化するため、粒子の崩壊を防いで電池寿命を向上させるためにシリコンナノ粒子が有用である(例えば非特許文献2参照)。
【0003】
様々な用途で用いられるシリコンナノ粒子であるが、活性な粒子表面の保護が大きな課題である。ナノサイズ化により表面原子数の割合が増し、バルクシリコンに比して表面活性が非常に大きく容易に酸化される。解決策の一つとして、シリコンナノ粒子の表面修飾が挙げられる。ナノ粒子表面をフッ酸等の強力な酸でエッチングし、アルキル基で置換して被覆層を形成することでシリコンナノ粒子の安定性が向上することが知られている(例えば特許文献2参照)。アルキル基による置換は表面保護として有効であるが、フッ酸等の強力な酸を必要とし実際の使用の際に大きな問題がある。また、置換基による被覆層の膜厚はせいぜい10nm程度であり非常に薄い。
【0004】
このような背景のもと、フッ酸等の強力な酸を用いることなく、シリコンナノ粒子の周囲を10nm以上の厚みで均一に被覆する方法が求められている。球状のシリコンナノ粒子にポリスチレンを被覆する方法が最近報告されているが、適用できるシリコンナノ粒子形状が球状に限られ、かつ、シリコン粒子の平均粒径が100nm以下と小さく、シリコン同士の分散性が非常に悪く凝集している(例えば非特許文献3参照)。異方性を持ったシリコンナノ粒子の周囲を均一かつ分散性良く化学種で被覆する方法は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2013-505597号公報
【文献】特開2009-132872号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】M.Dutta et al.,ACS NANO,2015,9(7),6891-6899.
【文献】D.Wang et al.,Journal of Power Sources,2014,256,190-199.
【文献】X.Huang et al.,Journal of Materials Chemistry A,2018,6,2593-2599.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、電子材料や電池等に用いることができる、シリコンナノ粒子の周囲がポリマーで被覆されたポリマー被覆シリコンナノ粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、種々検討の結果、以下の構成によって上記課題を解決できることを見出した。
(1)
シリコン粒子のメディアン径(D50)が100~1000nmであるポリマー被覆シリコン粒子。
(2)
シリコン粒子の表面が改質されている(1)に記載のポリマー被覆シリコン粒子。
(3)
シリコン粒子がSiO、Si(I)O、Si(II)O、Si(III)O、またはSiOHを介してポリマーと結合している(1)又は(2)に記載のポリマー被覆シリコン粒子。
(4)
シリコン粒子の平均長径度が4以下である(1)~(3)のいずれかに記載のポリマー被覆シリコン粒子。
(5)
シリコン粒子に対する被覆ポリマーの体積比が1以上である(1)~(4)のいずれかに記載のポリマー被覆シリコン粒子。
(6)
1つのポリマー内に含まれる平均シリコン粒子数が4以下である(1)~(5)のいずれかに記載のポリマー被覆シリコン粒子。
(7)
D50が200~1200nmである(1)~(6)のいずれかに記載のポリマー被覆シリコン粒子。
(8)
被覆ポリマーが、ポリスチレン、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸n-プロピル、ポリメタクリル酸イソプロピル、ポリメタクリル酸n-ブチル、ポリメタクリル酸sec-ブチル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリメタクリル酸tert-ブチル、ポリメタクリル酸2-エチルへキシル、ポリメタクリル酸イソボニル、ポリメタクリル酸ベンジル、ポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチル、ポリメタクリル酸ヒドロキシプロピル、ポリメタクリル酸ヒドロキシブチル、ポリメタクリル酸トリエチレングリコ-ルなどのポリメタクリル酸系、ポリイタコン酸無水物、ポリイタコン酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸n-プロピル、ポリアクリル酸イソプロピル、ポリアクリル酸n-ブチル、ポリアクリル酸sec-ブチル、ポリアクリル酸イソブチル、ポリアクリル酸tert-ブチル、ポリアクリル酸2-エチルへキシル、ポリアクリル酸イソボルニル、ポリアクリル酸ベンジル、ポリアクリル酸フェニル、ポリアクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸2-ヒドロキシエチル、ポリアクリル酸ヒドロキシプロピル、ポリアクリル酸ヒドロキシブチルなどのポリアクリル酸系、ポリメタクリルアミド、ポリ(N-メチルアクリルアミド)、ポリ(N、N’-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N-tert-ブチルメタクリルアミド)、ポリ(N-n-ブチルメタクリルアミド)、ポリ(N-メチロ-ルメタクリルアミド)、ポリ(N-エチロ-ルメタクリルアミド)などのポリメタクリルアミド系、ポリ(N,N’-メチレンビスアクリルアミド)、ポリN-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N-tert-ブチルアクリルアミド)、ポリ(N-n-ブチルアクリルアミド)、ポリ(N-メチロ-ルアクリルアミド)、ポリ(N-エチロ-ルアクリルアミド)などのポリアクリルアミド系、ポリ安息香酸ビニル、ポリジエチルアミノスチレン、ポリジエチルアミノアルファ-メチルスチレン、ポリ(p-ビニルベンゼンスルホン酸)、ポリ(p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩)、ポリ(p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム塩)、ポリジビニルベンゼン、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリ無水マレイン酸、ポリ(N-フェニルマレイミド)、ポリ(N-ブチルマレイミド)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(N-ビニルカルバゾ-ル)、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリピロ-ル、ウレタン重合に用いられるポリオ-ル系又はイソシアネ-ト系からなる群から選ばれる1種以上のモノマーの単独重合体又は共重合体である(1)~(7)のいずれかに記載のポリマー被覆シリコン粒子。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリコンの酸化が抑制されたD50が100~1000nmであるシリコン粒子の周囲がポリマーで被覆された、ポリマー被覆シリコン粒子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のポリマー被覆シリコン粒子について、本発明の一例を示しながら詳述する。ただし、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0011】
本発明のポリマー被覆シリコン粒子は、少なくともシリコンとポリマーとを含み、シリコン粒子がポリマーに被覆されているものである。ここでいう被覆されている状態とは、図1で示すようにシリコン粒子の表面被覆率が80%以上である状態を言う。表面被覆率は、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;以下、TEMと称する。)写真を視覚的に検査することにより評価することができる。
【0012】
本発明のポリマー被覆シリコン粒子におけるシリコンは、純度が98重量%程度の汎用グレ-ドの金属シリコン、純度が2~4Nのケミカルグレ-ドの金属シリコン、塩素化して蒸留精製した4Nより高純度のポリシリコン、単結晶成長法による析出工程を経た超高純度の単結晶シリコン、もしくはそれらに周期表13族もしくは15族元素をド-ピングして、p型又はn型としたもの、半導体製造プロセスで発生したウエハの研磨や切断の屑、プロセスで不良となった廃棄ウエハなど、汎用グレ-ドの金属シリコン以上の純度のものであれば特に限定されない。シリコンは、純度2~4Nの金属シリコンであることが好ましい。
【0013】
本発明のポリマー被覆シリコン粒子におけるシリコン粒子の粒径(D50:50%体積粒径)は、100~1000nmであり、好ましくは120nm~800nmであり、特に好ましくは120~600nmであり、より好ましくは150~400nmである。
【0014】
D50は、レ-ザ-回折散乱法により測定した累積粒度分布において微粒側から累積50%の粒径に該当する。粒径の測定に際しては、シリコン粒子やポリマー被覆シリコン粒子を液体に加えて超音波等を利用しながら激しく混合することで分散液を作製し、作製した分散液を装置に測定サンプルとして導入し、粒径の測定を行えばよい。
【0015】
本発明のポリマー被覆シリコン粒子では、シリコンとポリマーの密着性を向上できることから、シリコン粒子の表面が改質されていることが好ましく、具体的には、シリコン粒子がSiO、Si(I)O、Si(II)O、Si(III)O、またはSiOHを介してポリマーと結合していることが好ましい。SiO、Si(I)O、Si(II)O、Si(III)O、またはSiOHの存在および組成は、例えばX線光電分光法などの分析手法により測定できる。
【0016】
本発明のポリマー被覆シリコン粒子におけるシリコン粒子の平均長径度は4以下であることが好ましく、特に好ましくは3以下である。長径度がこの範囲にあることで、シリコン粒子の端部までポリマーで被覆しやすくなる。
【0017】
長径度は、一つの粒子について(長径度)=(長径)/(短径)で定義される。シリコン粒子の長径度を測定する方法として、例えば、図1に示すようなTEM画像において、各粒子内のシリコン粒子の長径と短径を画像処理で計測する方法が挙げられる。シリコン平均長径度は、例えば、TEM画像内の20個以上の粒子について求めた長径度の平均を算出することで求められる。
【0018】
本発明のポリマー被覆シリコン粒子ではシリコン粒子に対する被覆ポリマーの体積比が1以上であることが好ましく、特に好ましくは3以上である。
【0019】
シリコン粒子に対する被覆ポリマーの体積比の算出方法として、以下の方法が挙げられる。
【0020】
まず、得られたポリマー被覆シリコン粒子のTEM画像の上に透明シートを2枚重ね、1枚のシートにはシリコンに相当する部分をペンで模写し、もう1枚のシートにはポリマーに相当する部分をペンで模写する。透明シートとしては作業性が良いことから、OHPシート(オーバーヘッドプロジェクター用シート)を用いる。計測する粒子数としては多いほど良いが、作業性の観点から10粒子以上、好ましくは20粒子以上計測する。次に、それぞれの画像をJPEGやTIFFデータに変換し、Nano Hunter NS2K-Pro(ナノシステム株式会社)を用いて2値化し、シリコン部分とポリマー部分それぞれの総面積を算出する。次に、シリコン粒子の総面積を計測個数で割ることで、シリコン粒子1個の平均面積(SSi、nm)を算出し、シリコン粒子1個の平均体積(VSi、nm)=(4/3)×SSi×√(SSi/π)の式からシリコン粒子1個の平均体積を算出する。さらに、ポリマーの総面積を計測個数で割ることで、1つの複合粒子に含まれるポリマー部分の面積(SPS、nm)を求め、SSiとSpsを加算することで複合粒子1個の面積(S)を算出する。その後、複合粒子1個の平均体積(V、nm)=(4/3)×S×√(S/π)の式から複合粒子1個の平均体積を算出する。複合粒子1個に含まれるポリマー部分の体積(Vps、nm)はVps=V-VSiから算出できる。最後にVpsをVSiで割ることで、シリコン粒子に対する被覆ポリマーの体積比を算出することができる。
【0021】
本発明のポリマー被覆シリコン粒子では、シリコン同士の凝集を防止できることから、1つのポリマー内に含まれる平均シリコン粒子数は4以下であることが好ましく、特に好ましくは2以下である。
【0022】
1つのポリマー内に含まれる平均シリコン粒子数を測定する手法として、例えばポリマー被覆シリコン粒子のTEM画像を視覚的に検査する方法が挙げられる。図2に示すようにポリマー被覆シリコン粒子が20個以上映ったTEM画像を用意し、各ポリマー内に含まれるシリコン粒子の個数を計上し、その平均を計算することで1つのポリマー内に含まれる平均シリコン粒子数を求めることができる。測定のばらつきを小さくするために、20個以上のポリマーについて調べることが好ましい。
【0023】
本発明のポリマー被覆シリコン粒子のD50は200~1200nmであることが好ましく、特に好ましくは260~1000nmである。ポリマー被覆シリコンの粒径がこの範囲にあることで粒子同士が凝集しにくくなる。
【0024】
本発明のポリマー被覆シリコン粒子における被覆ポリマーとしては、ポリスチレン、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸n-プロピル、ポリメタクリル酸イソプロピル、ポリメタクリル酸n-ブチル、ポリメタクリル酸sec-ブチル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリメタクリル酸tert-ブチル、ポリメタクリル酸2-エチルへキシル、ポリメタクリル酸イソボニル、ポリメタクリル酸ベンジル、ポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチル、ポリメタクリル酸ヒドロキシプロピル、ポリメタクリル酸ヒドロキシブチル、ポリメタクリル酸トリエチレングリコ-ルなどのポリメタクリル酸系、ポリイタコン酸無水物、ポリイタコン酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸n-プロピル、ポリアクリル酸イソプロピル、ポリアクリル酸n-ブチル、ポリアクリル酸sec-ブチル、ポリアクリル酸イソブチル、ポリアクリル酸tert-ブチル、ポリアクリル酸2-エチルへキシル、ポリアクリル酸イソボルニル、ポリアクリル酸ベンジル、ポリアクリル酸フェニル、ポリアクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸2-ヒドロキシエチル、ポリアクリル酸ヒドロキシプロピル、ポリアクリル酸ヒドロキシブチルなどのポリアクリル酸系、ポリメタクリルアミド、ポリ(N-メチルアクリルアミド)、ポリ(N、N’-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N-tert-ブチルメタクリルアミド)、ポリ(N-n-ブチルメタクリルアミド)、ポリ(N-メチロ-ルメタクリルアミド)、ポリ(N-エチロ-ルメタクリルアミド)などのポリメタクリルアミド系、ポリ(N,N’-メチレンビスアクリルアミド)、ポリN-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N-tert-ブチルアクリルアミド)、ポリ(N-n-ブチルアクリルアミド)、ポリ(N-メチロ-ルアクリルアミド)、ポリ(N-エチロ-ルアクリルアミド)などのポリアクリルアミド系、ポリ安息香酸ビニル、ポリジエチルアミノスチレン、ポリジエチルアミノアルファ-メチルスチレン、ポリ(p-ビニルベンゼンスルホン酸)、ポリ(p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩)、ポリ(p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム塩)、ポリジビニルベンゼン、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリ無水マレイン酸、ポリ(N-フェニルマレイミド)、ポリ(N-ブチルマレイミド)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(N-ビニルカルバゾ-ル)、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリピロ-ル、ウレタン重合に用いられるポリオ-ル系又はイソシアネ-ト系からなる群から選ばれる1種以上のモノマーの単独重合体又は共重合体等が挙げられ、好ましくはポリスチレン、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸n-プロピル、ポリメタクリル酸イソプロピル、ポリメタクリル酸n-ブチル、ポリメタクリル酸sec-ブチル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリメタクリル酸tert-ブチル、ポリメタクリル酸2-エチルへキシル、ポリメタクリル酸イソボニル、ポリメタクリル酸ベンジル、ポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチル、ポリメタクリル酸ヒドロキシプロピル、ポリメタクリル酸ヒドロキシブチル、ポリメタクリル酸トリエチレングリコ-ルなどのメチルメタクリル酸系、ポリイタコン酸無水物、ポリイタコン酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸n-プロピル、ポリアクリル酸イソプロピル、ポリアクリル酸n-ブチル、ポリアクリル酸sec-ブチル、ポリアクリル酸イソブチル、ポリアクリル酸tert-ブチル、ポリアクリル酸2-エチルへキシル、ポリアクリル酸イソボルニル、ポリアクリル酸ベンジル、ポリアクリル酸フェニル、ポリアクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸2-ヒドロキシエチル、ポリアクリル酸ヒドロキシプロピル、ポリアクリル酸ヒドロキシブチルなどのポリアクリル酸系、ポリアクリロニトリルからなる群から選ばれる1種以上のモノマーの単独重合体又は共重合体等であり、さらに好ましくは、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸n-プロピル、ポリメタクリル酸n-ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸n-プロピル、ポリアクリル酸n-ブチル、ポリアクリロニトリルからなる群から選ばれる1種以上のモノマーの単独重合体又は共重合体等であり、特に好ましくはポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル又はポリアクリル酸メチルからなる群から選ばれる1種以上のモノマーの単独重合体又は共重合体等である。
【0025】
本発明のポリマー被覆シリコン粒子の製造方法としては、シリコン粒子をポリマーとなる高分子モノマーとを反応させ、そこに開始剤を加えることで得られる高分子モノマーのスラリーを重合することにより、ポリマー被覆シリコン粒子を得る方法が挙げられる。
【0026】
本発明のポリマー被覆シリコン粒子の製造方法では、シリコン粒子と高分子モノマーを反応させる際には、反応を促進させるために、シリコン粒子の表面を改質することが好ましい。ここでいう改質とは、表面改質剤を用いる化学反応によってシリコン粒子の表面状態を変化させ、ポリマーの被覆を容易にする工程である。表面改質剤としては、分子内にアルコキシド基、カルボキシ基、又はヒドロキシ基を含む分子、塩基および酸化剤からなる群より選ばれた1種以上の化合物を用いることが好ましく、具体的な表面改質剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ系、p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリル系、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリル系、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリル系、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレ-トなどのイソシアヌレ-ト系又は3-イソシアネ-トプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネ-ト系、テトラエトキシシラン、過酸化水素、硝酸、硫酸、過マンガン酸カリウム、二クロム酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、三酸化クロム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの酸化剤、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの塩基が挙げられ、好ましくは3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、過酸化水素、硝酸、アンモニア、水酸化ナトリウムの群から選ばれる1種以上、特に好ましくは3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、アンモニアの群から選ばれる1種以上である。
【0027】
表面改質剤を用いる際には、シリコン粒子100質量部に対して表面改質剤を0.1~800質量部添加することが好ましい。修飾反応中の粒子の凝集を防ぐため、必要に応じてポリカルボン酸系の安定化剤を添加してもよい。修飾反応を促進するため、必要に応じてアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は炭酸水素ナトリウムなどの水に溶けてアルカリ性を示す化合物や、塩酸、硝酸、酢酸又は硫酸などの水に溶けて酸性を示す化合物などの残存反応促進剤を添加してもよい。反応性が高く、金属化合物が残存しないことから、アンモニア又は塩酸であることが好ましい。残存反応促進剤を用いる場合、シリコン粒子100質量部に対して残存反応促進剤を0.005~54質量部添加することが好ましい。反応に用いる溶媒としては表面改質剤が溶解する溶媒であればよく、水、エタノ-ル、メタノ-ル、アセトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが挙げられ、必要に応じて混合溶媒を用いても良い。表面改質剤として3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン又はテトラエトキシシランを用いてシリコン粒子表面を修飾する際には、水とエタノ-ルの混合溶媒を用いることが好ましい。該混合溶媒における各溶媒の比率は、エタノ-ル100質量部に対して、水が10~100質量部であることが好ましい。該混合溶媒中のエタノ-ルの比率がこの範囲内であることで、溶媒中のシリコン粒子が分散しやすく、なおかつ、修飾反応が十分に進みやすくなる。
【0028】
シリコン粒子の表面を改質した後に、必要に応じて、ボ-ルミルやビ-ズミルを用いて上記表面改質シリコン粒子を粉砕・微粒化しても良い。解砕に用いるボ-ルはジルコニア又はアルミナが好ましい。解砕時間は1~24時間が好ましく、より好ましくは1~12時間である。
【0029】
また、表面改質シリコン粒子を粉砕・微粒化した後、必要に応じて遠心分離によりシリコン粒子表面を改質する際に用いた溶媒を水に置換してもよい。
【0030】
シリコン粒子と高分子モノマーの反応中は、マグネチックスタ-ラ-、スリ-ワンモ-タ-、ホモミキサ-、インラインミキサ-、ビ-ズミル、ボ-ルミルなどの一般的な混合機や攪拌機を用い、各原料を均一に混合することが好ましい。反応温度は40~100℃が好ましい。また、反応時間は0.5~72時間が好ましく、より好ましくは0.5~24時間である。反応時間がこの範囲であることで、修飾反応が十分に進行し、なおかつ、生産性が低下しにくくなる。
【0031】
シリコン粒子に反応させる高分子モノマーとしては、例えば、スチレン、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸イソボニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸トリエチレングリコ-ルなどのメタクリル酸系、イタコン酸無水物、イタコン酸、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルなどのアクリル酸系、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N、N’-ジメチルアクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-メチロ-ルメタクリルアミド、N-エチロ-ルメタクリルアミドなどのメタクリルアミド系、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-メチロ-ルアクリルアミド、N-エチロ-ルアクリルアミドなどのアクリルアミド系、安息香酸ビニル、ジエチルアミノスチレン、ジエチルアミノアルファ-メチルスチレン、p-ビニルベンゼンスルホン酸、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム塩、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、酢酸ブチル、塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニル、無水マレイン酸、N-フェニルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾ-ル、アクリロニトリル、アニリン、ピロ-ル、ウレタン重合に用いられるポリオ-ル系又はイソシアネ-ト系が挙げられ、好ましくはスチレン、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸イソボニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸トリエチレングリコ-ルなどのメタクリル酸系、イタコン酸無水物、イタコン酸、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルなどのアクリル酸系、アクリロニトリルであり、さらに好ましくは、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリロニトリル、特に好ましくはスチレン、メタクリル酸メチル又はアクリル酸メチルである。
【0032】
用いる開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、ジイソブチリルパ-オキシド、ジ-n-プロピルパ-オキシジカ-ボネ-ト、ジイソプロピルパ-オキシジカ-ボネ-ト、ジラウロイルパ-オキシド、ジベンゾイルパ-オキシド、1,1-ジ(tert-へキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルヒドロパ-オキシドやジイソブチリルパ-オキシド、tert-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカルボネ-ト、tert-ブチルペルオキシイソプロピルモノカルボネ-ト、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルペルオキシアセテ-ト、ジ-tert-ヘキシルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド等の過酸化物が挙げられる。
【0033】
高分子モノマーのスラリーとする際に用いる溶媒としては、例えば、水、エタノ-ル、メタノ-ル、イソプロピルアルコ-ル、プロパノ-ル又はトルエンなどが挙げられ、好ましくは水、エタノ-ル又はメタノ-ル、特に好ましくは水又はエタノ-ルである。これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0034】
高分子モノマーのスラリーにおける高分子モノマーの含有量は、0.5~20重量%が好ましく、特に好ましくは1.5~10重量%である。高分子モノマーの含有量がこの範囲であることで、シリコン粒子周囲の被覆体が十分な厚みとなる。
【0035】
高分子モノマーのスラリーにおける開始剤の含有量は、0.01~3重量%が好ましく、特に好ましくは0.01~1重量%である。
【0036】
高分子モノマーのスラリーにおいては、シリコン粒子の分散性を向上させるため、又は重合を促進させるため、分散剤を含有することが好ましく、該分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、スチレンスルホン酸エチルエステルなどのスチレンスルホン酸系、カルボキシスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などのポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、ポリエチレングリコ-ル、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエ-テル系、ポリアルキレンポリアミン系、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系、高級アルコ-ルアルキレンオキサイド系、多価アルコ-ルエステル系、アルキルポリアミン系又はポリリン酸塩系が挙げられ、好ましくはポリアクリル酸系添加剤、スチレンスルホン酸系、ポリビニルピロリドン、特に好ましくはスチレンスルホン酸系及びポリビニルピロリドンである。
【0037】
高分子モノマースラリーにおける分散剤の含有量は、3重量%以下が好ましく、特に好ましくは0.001~2重量%である。分散剤の量がこの範囲内にあることで、シリコン粒子同士の凝集が進行しにくくなる。もしくは、シリコン粒子周囲のポリマー膜厚が薄くなりにくくなる。
【0038】
高分子モノマースラリーにおいては、重合を促進するために、重合促進剤を含有してもよい。該重合促進剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム又は水酸化カリウムなどのpH調整剤が挙げられ、好ましくは炭酸水素ナトリウムである。
【0039】
本発明のポリマー被覆シリコン粒子は、高効率LEDや太陽電池等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の実施例1で製造したポリマー被覆シリコン粒子のTEM像(30,000倍)である。
図2】本発明の実施例1で製造したポリマー被覆シリコン粒子のTEM像(5,000倍)である。
図3】本発明の実施例2で製造したポリマー被覆シリコン粒子のTEM像(30,000倍)である。
図4】本発明の実施例6で製造したポリマー被覆シリコン粒子のTEM像(5,000倍)である。
【実施例
【0041】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
<実施例1>
(シリコン粉砕工程)
粒径(D50)が7μmのケミカルグレ-ドの金属シリコン(純度3N)をエタノ-ルに20重量%混合し、直径0.3mmのジルコニアビ-ズを用いた微粉砕湿式ビ-ズミルを9時間行い、粒径(D50)200nm、乾燥時のBET比表面積が100m/gのシリコンスラリーを得た。なお、BET比表面積は、窒素吸着によるBET法(JIS Z 8830、一点法)を用いて測定された値である。
【0043】
(シリコン表面改質工程)
上記粉砕シリコンスラリーを37gビ-カ-に投入し、15分間超音波照射を行い、その後、追加エタノ-ル94gを追加し、シリコンスラリーを得た。その後、ポリカルボン酸系分散剤11g、アンモニウムヒドロキシド4.5g、水40gを上記シリコンスラリーに添加し、マグネチックスターラーを用いて回転数250rpmの条件で1時間撹拌を行った。その後、テトラエトキシシラン(TEOS)10gを上記スラリーに添加した。室温で1.5時間撹拌を行い、その後、得られたシリコンスラリーを回転数4800rpm、回転時間10分の条件で遠心分離処理し、エタノ-ルで再分散した。得られたスラリーに対して、直径1.0mmのジルコニアボ-ルを用いたボ-ルミルを8時間行い、粒径(D50)256nmのシリコンスラリーを得た。これを回転数4800rpm、回転時間60分の条件で遠心分離処理し、水で再分散した。
【0044】
(ポリマー被覆工程)
上記スラリーをシリコン固形分量が0.79gとなるように秤量して丸底フラスコに移し、合計の水量が218gとなるように追加で水を添加した。フラスコ系内を窒素パ-ジした後、液温を35℃に昇温した。その後、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPS)0.03gをフラスコ内に加え、30分間攪拌した。蒸留したスチレンモノマー5.0gと8gの水に溶解させたp-スチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)0.03gを添加し、2時間攪拌した。その後、液温を62℃に昇温させ、8gの水に溶解させた過硫酸アンモニウム(APS)0.11gを添加した。その後、還流下で10時間加熱撹拌を続けた。得られた反応液を回転数4800rpm、回転時間45分の条件で遠心分離処理し、沈殿をエタノ-ルで再分散することでポリマー被覆シリコンのスラリーを得た。ポリマー被覆シリコン粒子のD50は349nm、シリコン粒子の平均長径度は2.2、シリコン粒子に対する被覆ポリマーの体積比は6.3、1つのポリマー内に含まれる平均シリコン粒子数は1.4であった。
【0045】
<実施例2>
(シリコン表面改質工程)
実施例1のシリコン粉砕工程と同様の手法で得た粉砕シリコンを固形分量が100gとなるように秤量し、その後、超音波照射を15分間行い、合計のエタノ-ル量が2528gとなるように追加でエタノ-ルを添加してシリコンスラリーを得た。その後、ポリカルボン酸系分散剤220g、アンモニウムヒドロキシド180g、水800gを上記シリコンスラリーに添加し、攪拌羽を用いて回転数300rpmの条件で1時間撹拌を行った。その後、TEOS5.2gを上記スラリーに添加した。室温で1.5時間撹拌を行い、その後、得られたシリコンスラリーを回転数4800rpm、回転時間25分の条件で遠心分離処理し、エタノ-ルで再分散した。得られたスラリーに対して、直径1.0mmのジルコニアボ-ルを用いたボ-ルミルを8時間行い、粒径(D50)248nmのシリコンスラリーを得た。これを回転数4800rpm、回転時間60分の条件で遠心分離処理し、水で再分散した。
【0046】
(ポリマー被覆工程)
分散剤としてp-スチレンスルホン酸リチウム(LiSS)を用いる以外は実施例1と同様の方法でポリマー被覆シリコンのスラリーを得た。ポリマー被覆シリコン粒子のD50は332nm、シリコン粒子の平均長径度は2.2、シリコン粒子に対する被覆ポリマーの体積比は5.4、1つのポリマー内に含まれる平均シリコン粒子数は1.5であった。
【0047】
<実施例3>
(シリコン表面改質工程)
実施例1のシリコン粉砕工程と同様の手法で得た粉砕シリコンを固形分量が40gとなるように秤量し、その後、超音波照射を15分間行い、合計のエタノ-ル量が1011gとなるように追加でエタノ-ルを添加してシリコンスラリーを得た。その後、ポリカルボン酸系分散剤88g、アンモニウムヒドロキシド7.2g、水320gを上記シリコンスラリーに添加し、攪拌羽を用いて回転数250rpmの条件で5時間撹拌を行った。その後、得られたシリコンスラリーを回転数4800rpm、回転時間25分の条件で遠心分離処理し、エタノ-ルで再分散した。得られたスラリーに対して、直径1.0mmのジルコニアボ-ルを用いたボ-ルミルを8時間行い、粒径(D50)243nmのシリコンスラリーを得た。これを回転数4800rpm、回転時間60分の条件で遠心分離処理し、水で再分散した。
【0048】
(ポリマー被覆工程)
実施例1と同様の方法でポリマー被覆シリコンのスラリーを得た。ポリマー被覆シリコン粒子のD50は297nm、シリコン粒子の平均長径度は2.5、シリコン粒子に対する被覆ポリマーの体積比は6.6、1つのポリマー内に含まれる平均シリコン粒子数は1.3であった。
【0049】
<実施例4>
(シリコン表面改質工程)
実施例1のシリコン粉砕工程と同様の手法で得た粉砕シリコンを固形分量が52.5gとなるように秤量し、その後、超音波照射を15分間行い、合計のエタノ-ル量が1327gとなるように追加でエタノ-ルを添加してシリコンスラリーを得た。その後、ポリカルボン酸系分散剤116g、10mol/Lの塩酸3.5g、水420gを上記シリコンスラリーに添加し、攪拌羽を用いて回転数250rpmの条件で30分間攪拌を行った。その後、TEOS105gを上記スラリーに添加し、液温を70℃に昇温した。70℃で12時間撹拌を行い、その後、得られたシリコンスラリーを回転数4800rpm、回転時間25分の条件で遠心分離処理し、エタノ-ルで再分散した。得られたスラリーに対して、直径1.0mmのジルコニアボ-ルを用いたボ-ルミルを8時間行い、粒径(D50)238nmのシリコンスラリーを得た。これを回転数4800rpm、回転時間60分の条件で遠心分離処理し、水で再分散した。
【0050】
(ポリマー被覆工程)
上記スラリーをシリコン固形分量が0.79gとなるように秤量して丸底フラスコに移し、合計の水量が175gとなるように追加で水を添加した。フラスコ系内を窒素パ-ジした後、液温を35℃に昇温した。その後、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPS)0.03gをフラスコ内に加え、30分間攪拌した。蒸留したスチレンモノマー5.0gと8gの水に溶解させたポリビニルピロリドンK30(PVP)1.0gを添加し、2時間攪拌した。その後、液温を60℃に昇温させ、35gのエタノールに溶解させたアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)8mgを添加した。その後、還流下で10時間加熱撹拌を続けた。得られた反応液を回転数4800rpm、回転時間45分の条件で遠心分離処理し、沈殿をエタノ-ルで再分散することでポリマー被覆シリコンのスラリーを得た。ポリマー被覆シリコン粒子のD50は503nm、シリコン粒子の平均長径度は2.2、シリコン粒子に対する被覆ポリマーの体積比は5.6、1つのポリマー内に含まれる平均シリコン粒子数は1.6であった。
【0051】
<実施例5>
(シリコン粉砕工程)
粒径(D50)が7μmのケミカルグレ-ドの金属シリコン(純度3N)をエタノ-ルに20重量%混合し、直径0.3mmのジルコニアビ-ズを用いた微粉砕湿式ビ-ズミルを6時間行い、粒径(D50)288nm、乾燥時のBET比表面積が68m/gのシリコンスラリーを得た。
【0052】
(シリコン表面改質工程)
上記粉砕シリコンスラリーを固形分量が10gとなるように秤量し、その後、超音波照射を15分間行い、合計のエタノ-ル量が253gとなるように追加でエタノ-ルを添加してシリコンスラリーを得た。その後、ポリカルボン酸系分散剤22g、アンモニウムヒドロキシド9.0g、水80gを上記シリコンスラリーに添加し、マグネチックスターラーを用いて回転数250rpmの条件で1時間撹拌を行った。その後、TEOS20gを上記スラリーに添加した。室温で1.5時間撹拌を行い、その後、得られたシリコンスラリーを回転数4800rpm、回転時間25分の条件で遠心分離処理し、エタノ-ルで再分散した。得られたスラリーに対して、直径1.0mmのジルコニアボ-ルを用いたボ-ルミルを8時間行い、粒径(D50)317nmのシリコンスラリーを得た。これを回転数4800rpm、回転時間60分の条件で遠心分離処理し、水で再分散した。
【0053】
(ポリマー被覆工程)
上記スラリーをシリコン固形分量が2.77gとなるように秤量して丸底フラスコに移し、合計の水量が765gとなるように追加で水を添加した。フラスコ系内を窒素パ-ジした後、液温を35℃に昇温した。その後、MPS0.11gをフラスコ内に加え、30分間攪拌した。蒸留したスチレンモノマー17.5gと10gの水に溶解させたNaSS0.08gを添加し、2時間攪拌した。その後、液温を62℃に昇温させ、10gの水に溶解させたAPS0.39gを添加した。その後、還流下で10時間加熱撹拌を続けた。得られた反応液を回転数4800rpm、回転時間45分の条件で遠心分離処理し、沈殿をエタノ-ルで再分散することでポリマー被覆シリコンのスラリーを得た。ポリマー被覆シリコン粒子のD50は348nm、シリコン粒子の平均長径度は2.3、シリコン粒子に対する被覆ポリマーの体積比は4.6、1つのポリマー内に含まれる平均シリコン粒子数は1.3であった。
【0054】
<実施例6>
(シリコン粉砕工程)
粒径(D50)が7μmのケミカルグレ-ドの金属シリコン(純度3N)をエタノ-ルに20重量%混合し、直径0.3mmのジルコニアビ-ズを用いた微粉砕湿式ビ-ズミルを行い、粒径(D50)325nm、乾燥時のBET比表面積が34m/gのシリコンスラリーを得た。
【0055】
(シリコン表面改質工程)
上記粉砕シリコンスラリーを固形分量が17.5gとなるように秤量し、その後、超音波照射を15分間行い、合計のエタノ-ル量が442gとなるように追加でエタノ-ルを添加してシリコンスラリーを得た。その後、ポリカルボン酸系分散剤38.5g、10mol/Lの塩酸1.2g、水140gを上記シリコンスラリーに添加し、攪拌羽を用いて回転数250rpmの条件で30分間攪拌を行った。その後、TEOS35gを上記スラリーに添加し、液温を70℃に昇温した。70℃で12時間撹拌を行い、その後、得られたシリコンスラリーを回転数4800rpm、回転時間25分の条件で遠心分離処理し、エタノ-ルで再分散した。得られたスラリーに対して、直径1.0mmのジルコニアボ-ルを用いたボ-ルミルを8時間行い、粒径(D50)321nmのシリコンスラリーを得た。これを回転数4800rpm、回転時間60分の条件で遠心分離処理し、水で再分散した。
【0056】
(ポリマー被覆工程)
実施例2と同様の方法でポリマー被覆シリコンのスラリーを得た。ポリマー被覆シリコン粒子のD50は419nm、シリコン粒子の平均長径度は2.1、シリコン粒子に対する被覆ポリマーの体積比は5.9、1つのポリマー内に含まれる平均シリコン粒子数は1.1であった。
【0057】
<実施例7>
(シリコン粉砕工程)
粒径(D50)が7μmのケミカルグレ-ドの金属シリコン(純度3N)を水に17重量%混合し、直径0.3mmのジルコニアビ-ズを用いた微粉砕湿式ビ-ズミルを行い、粒径(D50)291nm、乾燥時のBET比表面積が82m/gのシリコンスラリーを得た。
【0058】
(シリコン表面改質工程)
上記粉砕シリコンスラリーを固形分量が20gとなるように秤量し、その後、超音波照射を15分間行い、合計の水量が333gとなるように追加で水を添加してシリコンスラリーを得た。その後、アンモニウムヒドロキシド0.036g、水4gを上記シリコンスラリーに添加し、マグネチックスターラーを用いて回転数500rpmの条件で1時間撹拌を行った。その後、テトラエトキシシラン(TEOS)40gを上記スラリーに添加した。室温で5時間撹拌を行い、粒径(D50)290nmのシリコンスラリーを得た。
【0059】
(ポリマー被覆工程)
上記スラリーをシリコン固形分量が7.5gとなるように秤量して丸底フラスコに移し、合計の水量が605gとなるように追加で水を添加した。フラスコ系内を窒素パ-ジした後、液温を35℃に昇温した。その後、MPS1.1gをフラスコ内に加え、30分間攪拌した。蒸留したスチレンモノマー47.2gと10gの水に溶解させたNaSS0.24gを添加し、2時間攪拌した。その後、液温を62℃に昇温させ、40gの水に溶解させたAPS1.0gをシリンジポンプを用いて4cc/hの速度で添加した。その後、還流下で10時間加熱撹拌を続けた。得られた反応液を回転数4800rpm、回転時間45分の条件で遠心分離処理し、沈殿をエタノ-ルで再分散することでポリマー被覆シリコンのスラリーを得た。ポリマー被覆シリコン粒子のD50は340nm、シリコン粒子の平均長径度は2.3、シリコン粒子に対する被覆ポリマーの体積比は5.5、1つのポリマー内に含まれる平均シリコン粒子数は1.4であった。
【0060】
<実施例8>
(シリコン粉砕工程)
粒径(D50)が7μmのケミカルグレ-ドの金属シリコン(純度3N)を水に16重量%混合し、直径0.3mmのジルコニアビ-ズを用いた微粉砕湿式ビ-ズミルを行い、粒径(D50)255nm、乾燥時のBET比表面積が68m/gのシリコンスラリーを得た。
【0061】
(シリコン表面改質工程)
実施例7と同様の方法で、粒径(D50)249nmのシリコンスラリーを得た。これを回転数4800rpm、回転時間60分の条件で遠心分離処理し、水で再分散した。
【0062】
(ポリマー被覆工程)
上記スラリーをシリコン固形分量が16gとなるように秤量して丸底フラスコに移し、合計の水量が1302gとなるように追加で水を添加した。フラスコ系内を窒素パ-ジした後、液温を35℃に昇温した。その後、MPS2.4gをフラスコ内に加え、30分間攪拌した。蒸留したスチレンモノマー101gと10gの水に溶解させたNaSS0.51gを添加し、2時間攪拌した。その後、液温を62℃に昇温させ、80gの水に溶解させたAPS2.2gをシリンジポンプを用いて8cc/hの速度で添加した。その後、還流下で10時間加熱撹拌を続けた。得られた反応液を回転数4800rpm、回転時間45分の条件で遠心分離処理し、沈殿をエタノ-ルで再分散することでポリマー被覆シリコンのスラリーを得た。ポリマー被覆シリコン粒子のD50は319nm、シリコン粒子の平均長径度は2.2、シリコン粒子に対する被覆ポリマーの体積比は5.8、1つのポリマー内に含まれる平均シリコン粒子数は1.4であった。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例で得られたポリマー被覆シリコン粒子は、シリコンがポリマーで被覆されていることからシリコンの酸化が抑制されている。
【0065】
<比較例1>
比較例1のポリマー被覆していないシリコン粒子としては、実施例1の粉砕シリコンを、ポリマー被覆していないシリコン粒子とした。
【0066】
この比較例1のポリマー被覆していないシリコン粒子は、ポリマー被覆していないことから、シリコンの酸化が促進されている。
【符号の説明】
【0067】
1 シリコン粒子
2 被覆ポリマー
図1
図2
図3
図4