(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 19/07 20210101AFI20231205BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20231205BHJP
H04N 23/45 20230101ALI20231205BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20231205BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20231205BHJP
G03B 37/00 20210101ALI20231205BHJP
【FI】
G03B19/07
G03B17/56 A
H04N23/45
H04N23/50
G03B15/00 W
G03B37/00 A
(21)【出願番号】P 2019192789
(22)【出願日】2019-10-23
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(72)【発明者】
【氏名】江口 陽介
(72)【発明者】
【氏名】奥田 龍生
(72)【発明者】
【氏名】大熊 崇文
(72)【発明者】
【氏名】松野 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】麻生 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】河 俊光
(72)【発明者】
【氏名】田口 一郎
(72)【発明者】
【氏名】白井 雅実
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 真
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-067773(JP,A)
【文献】特開2016-076202(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051815(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0321580(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 19/00-19/16
G03B 15/00
G03B 17/56-17/58
G03B 37/00-37/06
H04N 23/40-23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の腕部と、該一対の腕部を接続する接続部と、を有する装着部と、
前記一対の腕部に支持される一対の撮像部と、
前記一対の腕部に対する前記一対の撮像部の支持位置を調整する調整機構と、
を有し
、
前記調整機構は、前記一対の腕部の各々に設けられた先端側と中間側に位置する少なくとも2つの支持突起と、前記一対の撮像部の各々に設けられた前記少なくとも2つの支持突起に選択的に挿入される支持孔とを有
し、
前記支持孔が前記中間側に位置する前記支持突起に挿入されたときに、前記接続部の中央部と、前記一対の撮像部とを結んだ線の角度が60°~180°の範囲内であり、
前記支持孔が前記先端側に位置する前記支持突起に挿入されたときに、前記接続部の中央部と、前記一対の撮像部とを結んだ線の角度が60°~180°の範囲内でない、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記支持孔が前記中間側に位置する前記支持突起に挿入されたときに、前記接続部の中央部と、前記一対の撮像部とを結んだ線の角度が80°~120°の範囲内である、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記一対の撮像部は、共通光軸を形成するように対向配置され、
前記支持孔が前記中間側に位置する前記支持突起に挿入された場合において、前記共通光軸と平行をなすとともに、前記一対の撮像部から所定距離だけ離れた位置で前記接続部の中央部を含むように延びる仮想軸を規定したとき、前記接続部の中央部と前記一対の撮像部の一方又は他方とを結んだ線と前記仮想軸のなす角度が、0°~60°の範囲内である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記支持孔が前記中間側に位置する前記支持突起に挿入された場合において、前記接続部の中央部と前記一対の撮像部の一方又は他方とを結んだ線と前記仮想軸のなす角度が、30°~50°の範囲内である、
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記一対の撮像部は、自身の光軸と直交する第1軸周りであるロール方向と、自身の光軸と直交しかつ前記第1軸と直交する第2軸周りであるヨー方向との少なくとも一方に回転可能である、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記一対の撮像部は、所定の角度ピッチで回転可能である、
ことを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記一対の腕部と前記接続部の少なくとも1つは、バッテリを有する本体ボックスを支持する支持ホルダを有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項8】
前記一対の腕部は、前記一対の撮像部と接続される電気接続部を収納する、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項9】
前記装着部は、略U字形状をなし、
前記一対の撮像部は、前記装着部の前記略U字形状の頂点部を挟んだ両腕部に支持される、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、危険警告情報を提供するウェアラブルスマート装置が開示されている。ウェアラブルスマート装置は、マイクロフォンと、カメラと、プロセッサとを有している。マイクロフォンは、潜在的危険に関係するオーディオデータを検出するように構成されている。カメラは、潜在的危険に関係する画像データを検出するように構成されている。プロセッサは、マイクロフォン及びカメラに結合されると共に潜在的危険が実際の危険を提示するかどうかを、検出されたオーディオデータ又は検出された画像データのうちの少なくとも1つに基づいて決定するように構成されている。
【0003】
特許文献2には、全天球動画の撮影システムが開示されている。全天球動画の撮影システムは、取得手段と、算出手段と、生成手段とを有している。取得手段は、撮像素子から原画像データを取り込む第1の周期よりも短い「1/整数」の第2の周期で撮像素子の鉛直方向に対する傾き角を取得する。算出手段は、原画像データを取得したタイミングで取得した撮像素子の鉛直方向に対する傾き角と、その前後のタイミングで取得した撮像素子の鉛直方向に対する傾き角とに基づいて平均傾き角を算出する。生成手段は、平均傾き角に基づいて原画像データを補正した補正画像データを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-186786号公報
【文献】特開2017-017689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のウェアラブルスマート装置及び特許文献2の全天球動画の撮影システムは、必ずしも、ユーザの使い勝手の良さや利便性に優れたものとは言えず、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、以上の問題意識に基づいてなされたものであり、好適な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の撮像装置は、一対の腕部と、該一対の腕部を接続する接続部と、を有する装着部と、前記一対の腕部に支持される一対の撮像部と、前記一対の腕部に対する前記一対の撮像部の支持位置を調整する調整機構と、を有し、前記調整機構は、前記一対の腕部の各々に設けられた先端側と中間側に位置する少なくとも2つの支持突起と、前記一対の撮像部の各々に設けられた前記少なくとも2つの支持突起に選択的に挿入される支持孔とを有し、前記支持孔が前記中間側に位置する前記支持突起に挿入されたときに、前記接続部の中央部と、前記一対の撮像部とを結んだ線の角度が60°~180°の範囲内であり、前記支持孔が前記先端側に位置する前記支持突起に挿入されたときに、前記接続部の中央部と、前記一対の撮像部とを結んだ線の角度が60°~180°の範囲内でない、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、好適な撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のウェアラブル装置の正面図である。
【
図2】本実施形態のウェアラブル装置の背面図である。
【
図3】本実施形態のウェアラブル装置の上面図である。
【
図4】本実施形態のウェアラブル装置を上斜め方向から見た斜視図である。
【
図5】本実施形態のウェアラブル装置を下斜め方向から見た斜視図である。
【
図6】本実施形態のウェアラブル装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】本実施形態のウェアラブル装置をユーザに装着した状態を示す図である。
【
図8】ネックマウント部に対する一対の撮像部の取付位置を最適化した場合の第1の例を示す図である。
【
図9】ネックマウント部に対する一対の撮像部の取付位置を最適化した場合の第2の例を示す図である。
【
図10】ネックマウント部及びこれに配置する撮像部の変形例を示す図である。
【
図11】レンズ回転と画像カバーエリアの工夫を示す第1の図である。
【
図12】レンズ回転と画像カバーエリアの工夫を示す第2の図である。
【
図13】レンズ回転と画像カバーエリアの工夫を示す第3の図である。
【
図14】レンズ回転と画像カバーエリアの工夫を示す第4の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1、
図2、
図3、
図4、
図5は、本実施形態のウェアラブル装置(撮像装置)1の正面図、背面図、上面図、上斜め方向から見た斜視図、下斜め方向から見た斜視図である。
図6は、本実施形態のウェアラブル装置1の構成を示すブロック図である。
図7は、本実施形態のウェアラブル装置1をユーザに装着した状態を示す図である。なお、
図7では、ユーザに装着されたウェアラブル装置1の外観が
図1~
図5とは異なっているが、これは作図の便宜上の理由によるものである。
図7はウェアラブル装置1がユーザの首に掛けて使用するものであることを概念的に示すものであり、本実施形態のウェアラブル装置1の特徴的な構成は、例えば、
図1~
図5や後述する
図8、
図9等に表現されている。
【0011】
以下の説明における上、下、前、後、左、右の各方向は、図中に示す矢線方向を基準とする。
【0012】
ウェアラブル装置1は、ユーザの首に掛けられるように、ユーザの首の形状に沿った略U字形状(略C字形状)をなすネックマウント部(装着部)100を有している。ネックマウント部100は、例えば、中空の天然ゴム、柔軟性織物、合成樹脂、革、金属、非金属のいずれか又はこれらの少なくとも一部の組み合わせから構成されている。ネックマウント部100の内部には、信号伝送用ケーブル(図示略)が引き回されていてもよい。
【0013】
ネックマウント部100は、略U字(略C字)形状の頂点部101と、この頂点部101を挟んだ両腕部102R、102Lとを有している。両腕部102R、102Lは「一対の腕部」を構成しており、頂点部101は、両腕部102R、102L(一対の腕部)を接続する「接続部の中央部」を構成している。この頂点部101は、略U字(略C字)形状における、湾曲部の中央部、すなわち略U字(略C字)形状の対称の軸上(線対称)に位置しているとも定義できる。ネックマウント部100は、頂点部101のうち略U字形状の開放側の反対側に位置する支持ホルダ103を有している。支持ホルダ103には、本体ボックス104が支持されている。なお、支持ホルダ103は、ネックマウント部100の両腕部102R、102L(一対の腕部)と頂点部101(接続部)の少なくとも1つに設けられていればよい。
【0014】
ネックマウント部100の両腕部102R、102Lには、側方突出腕105R、105Lが設けられている。側方突出腕105R、105Lは、両腕部102R、102Lの構成要素である。側方突出腕105Rには、前方に突出する支持突起105RFと、上方に突出する支持突起105RUとが設けられている。側方突出腕105Lには、前方に突出する支持突起105LFと、上方に突出する支持突起105LUとが設けられている。支持突起105RU、105LUは、
図1、
図2のみに破線で描いている。ネックマウント部100の両腕部102R、102Lには、前方に突出する支持突起102RF、102LFが設けられている。
【0015】
ネックマウント部100の両腕部102R、102Lの側方突出腕105R、105Lには、一対の撮像部110R、110Lが支持されている。一対の撮像部110R、110Lは、ネックマウント部100の略U字形状の頂点部101を挟んだ両腕部102R、102L(側方突出腕105R、105L)に支持されている。具体的に、ネックマウント部100の側方突出腕105R、105Lの支持突起105RU、105LUには、一対の撮像部110R、110Lが支持されている。一対の撮像部110R、110Lは、支持孔110RH、110LHを有しており、この支持孔110RH、110LHに支持突起105RU、105LUを挿入することにより、一対の撮像部110R、110Lが支持される。一対の撮像部110R、110Lの支持孔110RH、110LHは、
図1、
図2のみに破線で描いている。
【0016】
ここで、一対の撮像部110R、110Lの支持孔110RH、110LHは、支持突起105RU、105LUの他にも、支持突起105RF、105LFあるいは支持突起102RF、102LFにも挿入可能となっている。すなわち、一対の撮像部110R、110Lの支持孔110RH、110LHを、支持突起102RF、102LF、支持突起105RF、105LF又は支持突起105RU、105LUに選択的に挿入することにより、ネックマウント部100の両腕部102R、102Lに対する一対の撮像部110R、110Lの支持位置を調整することができる(調整機構を構成することができる)。
【0017】
ネックマウント部100の両腕部102R、102Lに対する一対の撮像部110R、110Lの支持位置を調整する調整機構は、例えば、ネックマウント部100の両腕部102R、102Lの各々に設けられた先端側と中間側に位置する少なくとも2つの支持突起と、一対の撮像部110R、110Lの各々に設けられた少なくとも2つの支持突起に選択的に挿入される支持孔とを有していればよい。また、一対の撮像部110R、110Lに設ける支持孔の数は、上述した支持孔110RH、110LHのように1つずつでもよいし、2つ以上ずつでもよい。
【0018】
あるいは、ネックマウント部100の両腕部102R、102Lに対する一対の撮像部110R、110Lの支持位置を調整する調整機構として、ネックマウント部100の両腕部102R、102Lに対して一対の撮像部110R、110Lを先端側又は基端側にスライドさせるスライド機構を適用することも可能である。このスライド機構は、例えば、一対の撮像部110R、110Lの各々に形成された、ネックマウント部100の両腕部102R、102Lを咥え込むリング部と、所定の位置でリング部のスライドを規制するストッパ部とを有することができる。
【0019】
ネックマウント部100の両腕部102R、102Lは、一対の撮像部110R、110Lと接続される電気接続部(例えばワイヤーハーネスやフレキシブル回路基板など)を収納(内蔵)していてもよい。
【0020】
図3、
図4に示すように、ネックマウント部100の腕部102Lの先端部の近傍には、ウェアラブル装置1の撮影操作や設定操作などの各種操作を実行するための操作スイッチ111が設けられている。
【0021】
図6に示されるように、撮像部110Rには、撮影レンズ10R及び撮像素子12Rが備えられ、撮像部110Lには、撮影レンズ10L及び撮像素子12Lが備えられている。
【0022】
本実施形態では、以下に説明するように、各2組の撮影レンズ10R、10L及び撮像素子12R、12Lによって撮影された2枚の撮影画像を繋ぎ合せて単一の合成画像(全天球画像)を生成する構成となっているが、別の実施形態では、各3組以上の撮影レンズ及び撮像素子によって撮影された3枚以上の撮影画像を繋ぎ合せて単一の合成画像を生成する構成としてもよい。
【0023】
ウェアラブル装置1は、撮影レンズ10R、10L、撮像素子12R、12Lに加えて、画像処理部14、CPU(Central Processing Unit)16、ROM(Read Only Memory)18、RAM(Random Access Memory)20、RAMインタフェース22、ストレージ24、ストレージインタフェース26、3軸加速度センサ28、バッテリ30、モータ32、34及び操作スイッチ111を備える。
【0024】
操作スイッチ111には、電源スイッチやレリーズスイッチ、操作ダイヤル、操作キーなど、ユーザがウェアラブル装置1を操作するために必要な各種操作部が含まれる。ユーザにより電源スイッチが押されると、バッテリ30からウェアラブル装置1の各部に電源が供給される。CPU16は、ROM18にアクセスして制御プログラムをワークエリアにロードし、ロードされた制御プログラムを実行することにより、ウェアラブル装置1の全体の制御を行う。
【0025】
撮影レンズ10Rと撮影レンズ10Lは、同一の光学性能を有する魚眼レンズ(又は広角レンズ)であり、180度を超える画角(撮影範囲)を有している。
【0026】
撮像素子12Rは、撮像面の中心(有効画素領域の中心)が撮影レンズ10Rの光軸と直交し且つ撮像面が撮影レンズ10Rの結像面となる位置に設置されている。撮像素子12Lは、撮像面の中心(有効画素領域の中心)が撮影レンズ10Lの光軸と直交し且つ撮像面が撮影レンズ10Lの結像面となる位置に設置されている。
【0027】
一対の撮像部110R、110Lは、支持突起105RU、105LUに対する支持孔110RH、110LHの回動位置(回転位置)を調整することにより、撮影レンズ10R、10Lの光軸と直交する第1軸周りであるロール方向に回転可能となっている。
【0028】
一対の撮像部110R、110Lは、支持孔110RH、110LHが支持突起102RF、102LF又は支持突起105RF、105LFに挿入されている状態で、支持突起102RF、102LF又は支持突起105RF、105LFに対する支持孔110RH、110LHの回動位置(回転位置)を調整することにより、撮影レンズ10R、10Lの光軸と直交しかつ第1軸と直交する第2軸周りであるヨー方向に回転可能となっている。
【0029】
このように、一対の撮像部110R、110Lは、撮影レンズ10R、10Lの光軸と直交する第1軸周りであるロール方向と、撮影レンズ10R、10Lの光軸と直交しかつ第1軸と直交する第2軸周りであるヨー方向との少なくとも一方に回転可能となっている。その際、一対の撮像部110R、110Lは、所定の角度ピッチで回転可能となっている。
【0030】
撮像素子12R、12Lは、同一仕様(有効画素数や画素サイズ等が同一)のイメージセンサである。例示的には、撮像素子12R、12Lは、ベイヤ配列フィルタを搭載したCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサであり、それぞれ、対応する撮影レンズ10R、10Lを介して撮像面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積する。撮像素子12R、12Lは、蓄積された電荷をフローティングディフュージョンアンプにて電圧(以下「画像信号」と記す。)に変換する。撮像素子12R、12Lより出力された画像信号は、画像処理部14に入力される。撮像素子12R、12Lは、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであってもよく、また、補色系フィルタを搭載したイメージセンサであってもよい。また、撮像素子12R、12Lは、暗視や好感度が求められる用途などにおいては、白黒イメージセンサであってもよい。
【0031】
画像処理部14は、撮像素子12R、12Lより入力される画像データに対して所定の信号処理を施す。なお、説明の便宜上、各画素の画像信号を含む撮影画像一枚分のデータを「画像データ」と記す。また、説明の便宜上、撮像素子12Rより入力されて画像処理部14内で処理される画像データを「画像データDA」と記し、撮像素子12Lより入力されて画像処理部14内で処理される画像データを「画像データDB」と記す。
【0032】
画像処理部14は、画像データDA、DBに対して、OB(Optical Black)補正処理、欠陥画素補正処理、リニア(Linear)補正処理、シェーディング(Shading)補正処理、領域分割平均処理を行い、領域分割平均処理後の画像データDA、DBをRAMインタフェース22によってRAM20に保存する。
【0033】
ROM18には、例えば製造時の検査工程で検出された撮像素子12R、12Lの欠陥画素の情報(アドレス)が予め記憶されている。欠陥画素補正処理では、ROM18に記憶されたアドレスの欠陥画素に対し、隣接する複数の画素からの合成信号に基づく画素値の補正が行われる。
【0034】
画像処理部14は、次いで、RAM20に保存された画像データDA、DBに対して、ホワイトバランス処理、ガンマ(γ)補正処理、ベイヤ補間処理、YUV変換処理、エッジ強調処理及び色補正処理を行い、色補正処理後の画像データDA、DBをRAMインタフェース22によってRAM20に保存する。
【0035】
画像処理部14は、RAM20に保存された色補正処理後の画像データDA、DBに対してクロップ処理を施し、次いで、歪曲補正処理及び合成処理を施す。歪曲補正処理では、2つの画像データDA、DBに対して、3軸加速度センサ28より出力される情報をもとに歪曲補正及び天地補正(傾き補正)が施される。合成処理では、歪曲補正処理後の2つの画像データDA、DBが合成されて(言い換えると、撮像素子12R、12Lによって撮像された2枚の撮影画像が繋ぎ合わされて)、全天球画像(立体角4πラジアンの画像)データが生成される。
【0036】
なお、画像処理部14は、画像データDA、DBの夫々を単独の画像データとして別個に保存することもできる。
【0037】
画像処理部14は、全天球画像データをJPEG(Joint Photographic Experts Group)等の所定のフォーマットで圧縮する。圧縮後の全天球画像データは、ストレージインタフェース26を介してストレージ24に保存される。ストレージ24は、例えばmicroSDカードである。
【0038】
全天球画像データは、Wi-FiやBluetooth(登録商標)等の無線経由でPCやスマートフォン等の外部装置に転送されてもよい。ユーザは、撮影した全天球画像を外部装置の画面で見ることができる。なお、ウェアラブル装置1と外部装置との接続は無線に限らず有線であってもよい。
【0039】
なお、
図6に示す一対の撮像部110R、110L以外の構成要素、例えば、画像処理部14やCPU16等は、本体ボックス104の構成要素とすることができる。すなわち、一対の撮像部110R、110Lによる撮像画像データは、有線又は無線を通じて、本体ボックス104の画像処理部14やCPU16に伝送することができる。
【0040】
本体ボックス104は、支持ホルダ103に支持されることなく、ウェアラブル装置1と分離された形で配置してもよい。例えば、本体ボックス104は、ウェアラブル装置1と有線又は無線で通信可能として、ユーザのポケットに入れられてもよい。例えば、本体ボックス104が大容量バッテリを搭載する場合は、本体ボックス104の重量が大きくなるので、本体ボックス104をウェアラブル装置1から分離して、ユーザの首に与える重さの負担を小さくすることが好ましい。また、ウェアラブル装置1が熱を帯びる場合は、本体ボックス104をウェアラブル装置1から分離して、ユーザの首に熱が伝わることを防止することが好ましい。
【0041】
ところで、本実施形態の撮像装置1は、ユーザの首に掛けて、当該ユーザを中心とした全天球画像(360°画像)を取得することができるウェアラブル装置である。従って、当該ユーザ以外の者が全天球画像を見たとき、当該全天球画像を、あたかも、当該ユーザと同じ場所にいた全天球画像、当該ユーザになり代わった全天球画像、当該ユーザに憑依した全天球画像として捉えることができる。これにより、当該ユーザの見る景色、環境をそのまま体感し、いわゆる追体験することが可能となる。自分視点の映像を共有して、ハンズフリーで遠くにいる人に憑依することで、例えば、現場作業者や障がい者への支援やセキュリティ強化を図ったり、技術の伝承や教育の支援を図ったりすることが可能になる。さらには、優れたアスリートに憑依してその実体験画像を得ることが可能になる。
【0042】
本発明者は、鋭意研究の結果、ユーザの首に掛けて使用するようなウェアラブル装置1において、当該ユーザを中心とした全天球画像を取得するに当たって、ネックマウント部100に対する一対の撮像部110R、110Lの取付位置が重要であることを見出した。ネックマウント部100に対する一対の撮像部110R、110Lの取付位置が不適切であると、ユーザの体の少なくとも一部(例えば肩や胸や首等)が邪魔になって全天球画像に写り込む結果、好適な全天球画像を取得することが困難になってしまう。
【0043】
図8は、ネックマウント部100に対する一対の撮像部110R、110Lの取付位置を最適化した場合の第1の例を示す図である。
【0044】
図8において、ネックマウント部100の両腕部(一対の腕部)102R、102Lを接続する接続部の中央部である頂点部101を規定する。また、一対の撮像部110R、110Lの位置を規定する。
図8では、「一対の撮像部110R、110Lの位置」として、一対の撮像部110R、110Lの本体中央部分を例示している。しかし、「一対の撮像部110R、110Lの位置」は、一対の撮像部110R、110Lの撮影レンズ10R、10Lあるいは撮像素子12R、12Lであってもよい。さらに、「一対の撮像部110R、110Lの位置」は、支持孔110RH、110LHに対する支持突起105RU、105LUの挿入部であってもよいし、側方突出腕(一対の腕部)105R、105Lの所定位置であってもよい。このように、「一対の撮像部110R、110Lの位置」をどのように規定するかには自由度があり、種々の設計や解釈の変更が可能である。
【0045】
図8において、ネックマウント部100の頂点部101(接続部の中央部)と、一対の撮像部110R、110Lとを結んだ線の角度αは、60°~180°の範囲内であること(60≦α≦180)が好ましく、80°~120°の範囲内であること(80≦α≦120)がより好ましい。この条件を満足することで、一対の撮像部110R、110Lがユーザの両肩の上部かつ首の左右に配置され、ユーザの体が全天球画像に写り込むことなく、好適な全天球画像を取得することができる。角度αが60°を下回ると(α<60)、一対の撮像部110R、110Lがネックマウント部100の両腕部102R、102Lの先端部に近すぎるため、ユーザの体が全天球画像に写り込む結果、好適な全天球画像を取得することが困難になってしまう。角度αが180°を上回ると(α>180)、ネックマウント部100をユーザに装着する(ユーザの首に掛ける)ことが困難になってしまう。
【0046】
図9は、ネックマウント部100に対する一対の撮像部110R、110Lの取付位置を最適化した場合の第2の例を示す図である。「一対の撮像部110R、110Lの位置」の定義については、
図8で説明したものと同様である。
【0047】
図9において、一対の撮像部110R、110Lは、共通光軸を形成するように対向配置されている。また、共通光軸と平行をなすとともに、一対の撮像部110R、110Lから所定距離だけ離れた位置でネックマウント部100の頂点部101(接続部の中央部)を含むように延びる仮想軸を規定する。
【0048】
図9において、仮想軸から一対の撮像部110R、110Lの各々までの角度βは、0°~60°の範囲内であること(0≦β≦60)が好ましく、30°~50°の範囲内であること(30≦β≦50)がより好ましい。この条件を満足することで、一対の撮像部110R、110Lがユーザの両肩の上部かつ首の左右に配置され、ユーザの体が全天球画像に写り込むことなく、好適な全天球画像を取得することができる。角度βが0°を下回ると(β<0)、ネックマウント部100をユーザに装着する(ユーザの首に掛ける)ことが困難になってしまう。角度βが60°を上回ると(β>60)、一対の撮像部110R、110Lがネックマウント部100の両腕部102R、102Lの先端部に近すぎるため、ユーザの体が全天球画像に写り込む結果、好適な全天球画像を取得することが困難になってしまう。
【0049】
図10A、
図10Bは、ネックマウント部100及びこれに配置する撮像部の変形例を示す図である。
【0050】
図10Aでは、ネックマウント部100がユーザの頭と首を取り囲む略コ字形状をなし、互いに平行に延びる一対の対向部120と、一対の対向部120の端部どうしを接続する接続部130とを有している。なお、本変形例では略U字(略C字)形状の湾曲部を備えないかわりに、一対の対向部を直角に接続する直線状の接続部130を備えている。また、一対の対向部120と接続部130の接続部に2つの撮像部140Aが設けられており、一対の対向部120の中間部に2つの撮像部140Bが設けられている。そして、例えば、接続部130の中央部と、2つの撮像部140Bとを結んだ線の角度α’は、60°~180°の範囲内であること(60≦α’≦180)が好ましく、80°~120°の範囲内であること(80≦α’≦120)がより好ましい。
【0051】
図10Bでは、ネックマウント部100がユーザの頭と首を取り囲む中空リング形状をなし、互いに平行に延びる一対の対向部150と、一対の対向部150の端部どうしを接続する中空リング接続部(接続部)160とを有している。また、一対の対向部150と中空リング接続部160の接続部に2つの撮像部170Aが設けられており、一対の対向部150の中間部に2つの撮像部170Bが設けられている。そして、例えば、中空リング接続部160の中央部と、2つの撮像部170A又は2つの撮像部170Bとを結んだ線の角度α”は、60°~180°の範囲内であること(60≦α”≦180)が好ましく、80°~120°の範囲内であること(80≦α”≦120)がより好ましい。なお、中空リング形状は曲線形状を呈しているが、ユーザの頭と首を取り囲む形状であればよく、例えば直線形状の略ロ字であっても構わない。
【0052】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記の実施形態において、添付図面に図示されている構成要素の大きさや形状、機能などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0053】
例えば、以上の実施形態では、ウェアラブル装置1をユーザの首に掛けるネックレス型とした場合を例示して説明したが、ユーザの頭部や手首などの別の部位に掛けるタイプに適用することも可能である。
【0054】
例えば、以上の実施形態では、撮像装置をウェアラブル装置1に適用した場合を例示して説明したが、撮像装置をウェアラブル装置以外の各種装置に適用することも可能である。
【0055】
また、一対の撮像部110R、110Lの各々の光軸が互いに平行になる位置で撮影処理を行った場合に、立体画像に関する処理を行うために必要な情報を取得・解析したり、当該情報を撮影画像データに付加したりしてもよい。
【0056】
例えば、一対の撮像部110R、110Lを内側のユーザに向けて、当該ユーザの顔情報を取得・解析することにより、当該ユーザに関する状態(例えば、喜怒哀楽のレベル等の心理状態、交感神経や副交感神経の状態、脈拍や血圧等の生体の状態、疲労の状態など)を把握することができる。さらには、ユーザの特定情報と一緒に周囲の状況を撮影画像データに含ませることにより、撮影画像データを証拠として用いることが可能になる(例えば、ユーザがいつどこで何をしたか等の証拠情報として残すことができる)。
【0057】
例えば、一対の撮像部110R、110Lを前方に向けて情報を取得することにより、当該情報に基づく物体検出処理(測距処理)を行うことができる。つまり、ウェアラブル装置1をステレオカメラ(測距装置)として使用することができる。
【0058】
また、一対の撮像部110R、110Lの各々の光軸を互いに異ならせてもよい。例えば、一対の撮像部110R、110Lの一方を前に向けて他方を横に向けてもよい。
【0059】
また、一対の撮像部110R、110Lの取付位置にフォーカスすることに代えて/加えて、回転によるステッチ距離を短くする態様も可能である。つまり、一対の撮像部110R、110Lの位置と回転の応用例である。
図11~
図14は、レンズ回転と画像カバーエリアの工夫を示す第1~第4の図である。
【0060】
図11において、魚眼レンズが広角になればなるほど、カバー範囲は大きくなり、ステッチポイントは近くなる。つまり、両側画像がステッチされる位置が近くなり、近距離の両側画像を繋ぐことができる。広角レンズにするほど、レンズは大型化、高コスト化するため、185°~230°程度が望ましい。大型化は、ウェアラブルデバイスには致命的に好ましくない。
図11のように、両側の魚眼レンズを配置して、イメージセンサ面の角度を平行にした場合、ステッチポイントまでの距離はA=Bである。この場合、360°ステッチして正面から背面まで全周囲を等距離まで撮像する場合に好都合である。しかし、正面、例えば手元の作業を重視して撮像したい場合(例えば、手術、工芸、アート、工作など)、距離Bを短くしたい場合がある。距離Bが長いと、画像がステッチされない問題があるためである。
【0061】
そこで、
図12に示すように、両側の魚眼レンズを回転して外を向いた状態で固定して撮像することで、正面方向を重視して、ステッチ距離を短くすることが考えられる。この場合、背面方向は犠牲にすることになる。これは、手元作業を重視して撮像する用途に対して有効な方式である。
【0062】
あるいは、
図13に示すように、両側の魚眼レンズを正面に向けて回転させて固定して撮像することでステレオイメージングを可能としてもよい。この場合、両画像のステッチは行わない。この場合、距離情報が重要なステレオ視に適する。特にヘッドマウントディスプレイでステレオ視鑑賞するときに、遠近感ある手元作業などに適する。
【0063】
あるいは、
図14に示すように、両側の魚眼レンズを、内側に回転させて固定させて撮像すると、自分の顔を画像に含めることができる。この場合、装着者の顔が映る程度の画角が得られるようにレンズ画角やレンズ間距離を設定する必要がある。当然ながら正面方向の画角は狭くなるが、正面の被写体と自分の顔の両方が画像に写り込む。自分と相手の表情データを取得したり、顔や首表面画像から脈拍をセンシングしたりするような用途にも使うことができる。
【符号の説明】
【0064】
1 ウェアラブル装置(撮像装置)
10R 10L 撮影レンズ
12R 12L 撮像素子
14 画像処理部
16 CPU(Central Processing Unit)
18 ROM(Read Only Memory)
20 RAM(Random Access Memory)
22 RAMインタフェース
24 ストレージ
26 ストレージインタフェース
28 3軸加速度センサ
30 バッテリ
32 34 モータ
100 ネックマウント部(装着部)
101 頂点部(接続部の中央部)
102R 102L 両腕部(一対の腕部)
102RF 102LF 支持突起(調整機構)
103 支持ホルダ
104 本体ボックス
105R 105L 側方突出腕(一対の腕部)
105RF 105RU 105LF 105LU 支持突起(調整機構)
110R 110L 撮像部(一対の撮像部)
110RH 110LH 支持孔(調整機構)
111 操作スイッチ
120 一対の対向部
130 接続部
140A 140B 撮像部
150 一対の対向部
160 中空リング接続部(接続部)
170A 170B 撮像部