IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特許7395985トナーセット、画像形成方法、及びスクラッチ画像形成物
<>
  • 特許-トナーセット、画像形成方法、及びスクラッチ画像形成物 図1
  • 特許-トナーセット、画像形成方法、及びスクラッチ画像形成物 図2
  • 特許-トナーセット、画像形成方法、及びスクラッチ画像形成物 図3
  • 特許-トナーセット、画像形成方法、及びスクラッチ画像形成物 図4
  • 特許-トナーセット、画像形成方法、及びスクラッチ画像形成物 図5
  • 特許-トナーセット、画像形成方法、及びスクラッチ画像形成物 図6
  • 特許-トナーセット、画像形成方法、及びスクラッチ画像形成物 図7
  • 特許-トナーセット、画像形成方法、及びスクラッチ画像形成物 図8
  • 特許-トナーセット、画像形成方法、及びスクラッチ画像形成物 図9
  • 特許-トナーセット、画像形成方法、及びスクラッチ画像形成物 図10
  • 特許-トナーセット、画像形成方法、及びスクラッチ画像形成物 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】トナーセット、画像形成方法、及びスクラッチ画像形成物
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20231205BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20231205BHJP
   B42D 25/27 20140101ALI20231205BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20231205BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G03G9/08 391
G03G9/08
B41M3/00 Z
B42D25/27
G03G9/087 331
G03G9/087 325
G03G9/097 365
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019211303
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021081679
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一己
(72)【発明者】
【氏名】久國 大地
(72)【発明者】
【氏名】澤田 豊志
(72)【発明者】
【氏名】金子 晃大
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-061096(JP,A)
【文献】特開2019-113684(JP,A)
【文献】特開2016-048310(JP,A)
【文献】特開2020-181025(JP,A)
【文献】特開2013-088700(JP,A)
【文献】特開2018-097016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
B41M 3/00
B42D 25/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成トナーと、スクラッチトナーとを有し、
前記画像形成トナーが、結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含有し、
前記スクラッチトナーが、結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含有し、
前記画像形成トナーに含有される前記結着樹脂が、非晶性ポリエステルを含有し、
前記スクラッチトナーに含有される前記結着樹脂が、スチレンアクリル樹脂を含有し、
前記画像形成トナーのSP値(SPi)(cal/cm0.5と、前記スクラッチトナーのSP値(SPs)(cal/cm0.5との差(SPi-SPs)の絶対値が、1.1(cal/cm0.5以上であることを特徴とするトナーセット。
【請求項2】
前記差(SPi-SPs)の絶対値が、1.4(cal/cm0.5超である請求項1に記載のトナーセット。
【請求項3】
前記画像形成トナーの前記結着樹脂における前記非晶性ポリエステルの含有量が、前記結着樹脂に対して、75質量%以上であり、
前記スクラッチトナーの前記結着樹脂における前記スチレンアクリル樹脂の含有量が、前記結着樹脂に対して、75質量%以上である、
請求項1から2のいずれかに記載のトナーセット。
【請求項4】
画像形成トナーにより画像を形成する画像形成工程と、
前記画像の少なくとも一部の上に、スクラッチトナーによりスクラッチ層を形成するスクラッチ層形成工程とを含み、
前記画像形成トナー及び前記スクラッチトナーが、請求項1からのいずれかに記載のトナーセットにおける前記画像形成トナー及び前記スクラッチトナーであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項5】
前記画像及び前記スクラッチ層の記録媒体への定着が、一度の定着工程により行われる請求項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記スクラッチ層を形成する際の前記スクラッチトナーの付着量が、0.70mg/cm以上である請求項からのいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項7】
記録媒体と、
前記記録媒体上に形成された、画像形成トナーによる画像と、
前記画像の少なくとも一部の上に形成された、スクラッチトナーによるスクラッチ層と、
を有し、
前記画像形成トナー及び前記スクラッチトナーが、請求項1からのいずれかに記載のトナーセットにおける前記画像形成トナー及び前記スクラッチトナーであることを特徴とするスクラッチ画像形成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーセット、画像形成方法、及びスクラッチ画像形成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式、静電記録、静電印刷による画像形成では、光導電性物質等の感光体上に静電荷による静電潜像を形成し、この静電潜像に対して、帯電したトナーを付着させ可視像を形成した後、紙等の記録媒体に転写後、定着され、出力画像となる。
【0003】
画像形成手段を用いて基材上に形成された画像上に、更に剥離性を有する剥離層をオンデマンド作製したスクラッチシートが特許文献1にて開示されている。
スクラッチ画像形成においては、剥離性のインクにより隠蔽層(スクラッチ隠蔽層)を作製する。スクラッチ画像形成は、インスタント宝くじ、景品くじ、ダイレクトメール、キャンペーンシート等への利用が広がっている。
スクラッチ隠蔽層は、下地画像を外部から視認させないようにする隠蔽性と、コインや爪等により擦ることで下地画像を視認させるための剥離性とを有する。
【0004】
また、従来、スクラッチ隠蔽層は、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等により形成されて少量多品種生産に不適当だった。
また、特許文献1に記載の技術では剥離層のみを形成するものでオンデマンド性として不十分であった。
【0005】
更に特許文献2、及び特許文献3にもスクラッチシートを電子写真方式にてオンデマンド作製が提案されているが、保護層を必要とし、層が追加され、工程も増えることにより、装置構成やコスト面で改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、スクラッチ層の剥離性に優れたスクラッチ画像形成物の製造に適したトナーセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としての本発明のトナーセットは、
画像形成トナーと、スクラッチトナーとを有し、
前記画像形成トナーが、結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含有し、
前記スクラッチトナーが、結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含有し、
前記画像形成トナーに含有される前記結着樹脂が、非晶性ポリエステルを含有し、
前記スクラッチトナーに含有される前記結着樹脂が、スチレンアクリル樹脂を含有し、
前記画像形成トナーのSP値(SPi)(cal/cm0.5と、前記スクラッチトナーのSP値(SPs)(cal/cm0.5との差(SPi-SPs)の絶対値が、1.1(cal/cm0.5以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スクラッチ層の剥離性に優れたスクラッチ画像形成物の製造に適したトナーセットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の画像形成装置の一例を示す模式図である。
図2図2は、本発明の画像形成装置の一例を示す模式図である。
図3図3は、本発明の画像形成装置の一例を示す模式図である。
図4図4は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す模式図である。
図5図5は、画像形成装置における現像装置の概略構成の一例を示す断面図である。
図6図6は、画像形成装置の一例の回収搬送路の搬送方向下流部における回収搬送路と攪拌搬送路との断面図である。
図7図7は、画像形成装置の一例の供給搬送路の搬送方向上流部における断面図である。
図8図8は、画像形成装置の一例の供給搬送路の搬送方向下流部における断面図である。
図9図9は、画像形成装置の一例の現像装置内における現像剤の流れの模式図である。
図10図10は、同現像装置の供給搬送路の搬送方向最下流部における断面図である。
図11図11は、プロセスカートリッジの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(トナーセット)
本発明のトナーセットは、画像形成トナーと、スクラッチトナーとを有する。
前記画像形成トナーのSP値(SPi)(cal/cm0.5と、前記スクラッチトナーのSP値(SPs)(cal/cm0.5との差(SPi-SPs)の絶対値は、1.1(cal/cm0.5以上であり、1.4(cal/cm0.5超が好ましい。
前記差(SPi-SPs)の絶対値が、1.1(cal/cm0.5未満であると、剥離性が劣る。
前記差(SPi-SPs)の絶対値が、1.4(cal/cm0.5超であると、画像形成トナーにて形成される画像とスクラッチトナーにて形成されるスクラッチ層を同時に形成しても安定した剥離性を得ることができる。
ここで、剥離性とは、スクラッチトナーによるスクラッチ層を削った際に、下地画像上のスクラッチ層が剥がれることを指す。
前記差(SPi-SPs)の絶対値の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、3.5などが挙げられる。
【0011】
前記スクラッチトナーは、前記画像形成トナーにより形成された画像を隠蔽しつつ、スクラッチにより剥離可能なスクラッチ層を形成するためのトナーである。
【0012】
前記画像形成トナーのSP値(SPi)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10.0(cal/cm0.5以上12.0(cal/cm0.5以下などが挙げられる。
前記スクラッチトナーのSP値(SPs)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、7.5(cal/cm0.5以上10.0(cal/cm0.5以下などが挙げられる。
前記画像形成トナーのSP値(SPi)は、前記スクラッチトナーのSP値(SPs)よりも大きいことが、画像定着性の点で好ましい。
【0013】
前記画像形成トナーは、例えば、結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0014】
前記画像形成トナーに含有される前記結着樹脂としては、例えば、非晶性ポリエステル、付加重合系樹脂、ハイブリッド樹脂、結晶性ポリエステルなどが挙げられる。
前記スクラッチトナーに含有される前記結着樹脂としては、例えば、非晶性ポリエステル、付加重合系樹脂、ハイブリッド樹脂、結晶性ポリエステルなどが挙げられる。
【0015】
前記画像形成トナーに含有される前記結着樹脂は、非晶性ポリエステルを含有することが好ましい。
前記スクラッチトナーに含有される前記結着樹脂は、スチレンアクリル樹脂を含有することが好ましい。
前記画像形成トナーの前記結着樹脂における前記非晶性ポリエステルの含有量は、前記結着樹脂に対して、75質量%以上であることが好ましい。
前記スクラッチトナーの前記結着樹脂における前記スチレンアクリル樹脂の含有量は、前記結着樹脂に対して、75質量%以上であることが好ましい。
【0016】
<SP値>
本発明におけるSP値(溶解性パラメーター:δ)はHildebrand-Scatchardの溶液理論において次式で定義される。
δ=(ΔEv/V)1/2
ここでΔEvは蒸発エネルギー、Vは分子容、ΔEv/Vは凝集エネルギー密度を示す。 SP値(溶解性パラメーター)の求め方としては、例えば、Smallらの方法、Fedorらの方法などが挙げられる。
前記Smallらの方法の詳細については、例えば、P.A.Small,J.Appl.Polym.Sci.,3(1953)71.に記載されている。
前記Fedorらの方法の詳細については、例えば、塗料の研究 No.152 Oct.2010 『添加剤の溶解性パラメータに関する考察』に記載されている。
本発明では、Fedorらの方法を採用した。
【0017】
本発明のトナーのSP値は、トナー結着樹脂及び結着樹脂と相溶した成分のSP値に含有比である重量パーセントをかけ合わせ平均化した値を用いる。トナー構成材料中の結着樹脂及びその相溶成分以外の離型剤、着色剤などその他の成分はSP値の算出に用いない。
【0018】
トナー構成成分の組成及び重量パーセントは以下の手段で確認できる。
【0019】
<ワックスのイオン強度比>
トナー5gにトルエン100gを加え、24時間静置した。その後、遠心分離装置(株式会社日立製作所製、HIMAC CP100NX)を使用して回転数3,000rpmで遠心分離作業を行い、不溶物を沈殿させたのち、デカンテーションにより分離し、不要物を得た。前記不溶物1gにクロロホルム20gを加え、24時間静置した。その後、上述と同様の方法により遠心分離作業を行い、不溶物を除去した。溶液成分を蒸発乾固し、得られた成分を1mg採取してクロロホルム1mlに溶解し、質量分析装置(日本電子株式会社製、JMS-T100GC)にセットした。カソード電圧:-10kv、スペクトル記録間隔:0.4s、測定質量範囲(m/z):10~2,000の条件で測定を行い、エステル化合物の各炭素数の強度を合わせて100とし、各炭素数の相対強度を算出し、最大強度を確認した。
【0020】
<ワックスの種類の分析>
トナー5gにトルエン100gを加え、24時間静置した。その後、遠心分離装置(HIMAC CP100NX、株式会社日立製作所製)を使用して、回転数3,000rpmで遠心分離作業を行い、不溶物を沈殿させたのち、デカンテーションにより分離した。 前記不溶物1gに対して、クロロホルム20gを加え、24時間静置した。その後、上述と同様の方法により遠心分離作業を行い、不溶物を除去した。溶液成分を蒸発乾固し、以下の手順、装置、及び条件により分析した。
〔試料処理〕
1mg程度の試料にメチル化剤〔テトラメチルアンモニウムヒドロキシド20%メタノール溶液:TMAH〕を約1μL滴下した物を試料とした。
〔測定装置、及び測定条件〕
測定装置:熱分解-ガスクロマトグラフ質量分析計(Py-GCMS)
分析装置:株式会社島津製作所製 QP2010
加熱炉:フロンティア・ラボ社製 Py2020D
加熱温度:320℃
カラム:Ultra ALLOY-5 長さ=30m、内径=0.25mm、膜厚=0.25μm
昇温条件:50℃(保持1分間)~昇温(10℃/分間)~340℃(保持7分間)
スプリット比:1:100
カラム流量:1.0ml/min
イオン化法:EI法(70eV)
測定モード:スキャンモード
検索用データ:NIST 20 MASS SPECTRAL LIB.
【0021】
<非晶性ポリエステル、ワックス、付加重合系樹脂、ハイブリッド樹脂、結晶性ポリエステルのSP値の測定>
非晶性ポリエステル、付加重合系樹脂、ハイブリッド樹脂、及び結晶性ポリエステルについては、トナー5gにトルエン100gを加え、24時間静置した。その後、遠心分離装置(HIMAC CP100NX、株式会社日立製作所製)を使用して、回転数3,000rpmで遠心分離作業を行い、不溶物を沈殿させたのち、デカンテーションにより分離した。溶液成分を蒸発乾固し、得られた成分をGC-MSにより成分分析し、構成単位(モノマー)を同定した。
ワックスについては、上述の「ワックスの種類の分析」に記載の方法と同様にして、ワックスの種類を同定した。
更に、GC-MSにより得られたモノマー組成の情報を元にNMRを使用して定量分析を実施した。
測定手順・装置・条件は以下の通りである。
[試料調製]
(1)1H-NMR用
試料約40mg~50mgを、TMS(トリメチルシラン)を含む約0.7mL(d=1.48)のCDClに溶解させたものを用いた。
(2)13C-NMR用
試料約250mg~260mgを、TMSを含む約0.7mL(d=1.48)のCDClに溶解させたものを用いた。
[測定装置、測定条件]
装置:ECX-500 NMR、日本電子株式会社製
測定条件:
(1)測定核=1H(500MHz)、測定パルスファイル=single pulse.ex2(1H)、45°パルス
積算 16回、Relaxation Delay 5 秒、データポイント32K、観測幅=15ppm
(2)測定核=13C(125MHz)、測定パルスファイル=single pulse dec.ex2 (1H)、30°パルス
積算 1000 回(RNC-501 のみ1039 回)、Relaxation Delay 2秒、データポイント32K、
Offset 100ppm 、観測幅=250ppm
GC-MS測定、及びNMR測定により、トナー中の非晶性ポリエステル、付加重合系樹脂、ハイブリッド樹脂、及び結晶性ポリエステルのモノマー組成が確認される。
【0022】
これら結果を使用し、Fedorの方法によりそれぞれのSP値を算出した後、トナーのSP値を算出する。
【0023】
<結着樹脂>
結着樹脂としては、例えば、非晶性ポリエステル、付加重合系樹脂、ハイブリッド樹脂、結晶性ポリエステルなどが挙げられる。
【0024】
<<非晶性ポリエステル>>
非晶性ポリエステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芳香族化合物由来の構成単位を有することが好ましい。
前記芳香族化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、イソフタル酸、テレフタル酸、及びそれらの誘導体などが挙げられる。
非晶性ポリエステル中における芳香族化合物由来の構成単位の含有量は、50質量%以上が好ましい。前記含有量が50質量%以上であると、トナーの帯電性が低下するという不具合を防止することができる。
【0025】
前記非晶性ポリエステルの構成単位の求め方としては、特に制限されるものではないが、例えば、以下の方法により求めることができる。
トナー約5gを秤量し、これにトルエン100gを加えて24時間静置して、充分に溶解させたトナー溶液を遠心分離でわけた後、上澄み液を乾燥させて上澄み液の固形分を得る。得られた固形分を、GC-MSにより成分分析を行い、構成単位(モノマー組成)を決定する。得られたモノマー組成の情報に基づき、H NMR、及び13C NMRを使用して定量分析を行い、前記非晶性ポリエステルの構造を決定することができる。
【0026】
前記非晶性ポリエステルの溶解性パラメータ(SPr値)は、上述の方法により得られた非晶性ポリエステルの組成に基づき、前記Fedorの方法により求めることができる。
【0027】
前記非晶性ポリエステルのガラス転移温度は、45℃~65℃が好ましく、50℃~70℃がより好ましい。前記非晶性ポリエステルのガラス転移温度が45℃以上であると、トナーの耐熱保存性が良好となり、65℃以下であると、トナーの低温定着性が良好となる。
【0028】
前記非晶性ポリエステルの軟化温度としては、90℃~150℃が好ましく、90℃~130℃がより好ましい。前記非晶性ポリエステルの軟化温度が90℃以上であると、トナー耐ホットオフセット性が良好となり、150℃以下であると、トナーの定着時の延展性が良好となる。
【0029】
前記非晶性ポリエステルの重量平均分子量としては、1,000~100,000が好ましく、2,000~50,000がより好ましく、3,000~10,000が更に好ましい。前記非晶性ポリエステルの重量平均分子量が、1,000以上であると、トナーの耐熱保存性が良好となり、100,000以下であると、トナーの低温定着性が良好となる。
【0030】
なお、前記非晶性ポリエステルの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定されるポリスチレン換算の分子量である。
【0031】
前記画像形成トナーの前記結着樹脂における前記非晶性ポリエステルの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂に対して、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、75質量%以上が特に好ましい。
前記スクラッチトナーの前記結着樹脂における前記非晶性ポリエステルの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
一般的にトナーに使用されるモノマー構成のポリエステルは比較的SP値が大きく、SP値が10.8(cal/cm0.5から11.4(cal/cm0.5の範囲となることが多い。
【0033】
以下にトナー結着樹脂用途の非晶性ポリエステルの合成例を示す。
<<<非晶性ポリエステルA1の合成>>>
冷却管、撹拌機、及び窒素導入管を装備した反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2mol付加物352部、テレフタル酸149部、及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート1.8部を入れ、窒素気流下で、生成する水を留去しながら、230℃で6時間反応させる。次に、5mmHg~20mmHgの減圧下で、重量平均分子量が5,000に達するまで1時間反応させると、ガラス転移温度が58℃、軟化温度が100℃の[非晶性ポリエステルA1]を得られる。[非晶性ポリエステルA1]のSP値は11.1(cal/cm0.5となった。
【0034】
<<付加重合系樹脂>>
前記付加重合系樹脂とは、付加重合系モノマーを付加重合反応させて得られた樹脂のことを指す。
前記付加重合系樹脂としては、スチレンアクリル樹脂が好ましい。スチレンアクリル樹脂とは、スチレンとスチレン以外のビニル系モノマーとの共重合体である。
前記付加重合系モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル系モノマーが挙げられる。
【0035】
前記ビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-アミルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-へキシルスチレン、p-n-4-ジクロロスチレン、m-ニトロスチレン、o-ニトロスチレン、p-ニトロスチレン等のスチレン系ビニルモノマー;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸系ビニルモノマー;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸n-ドデシル、メタクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸系ビニルモノマー;その他のビニルモノマー又は共重合体を形成する他のモノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記付加重合系樹脂は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記市販品としては、例えば、BR-50、BR-52、MB-2539、BR-60、BR-64、BR-73、BR-75、MB-2389、BR-80、BR-82、BR-83、BR-84、BR-85、BR-87、BR-88、BR-90、BR-95、BR-96、BR-100、BR-101、BR-102、BR-105、BR-106、BR-107、BR-108、BR-110、BR-113、FB-676、MB-2660、MB-2952、MB-3012、MB-3015、MB-7033、BR-115、MB-2478、BR-116、BR-117、BR-118、BR-122、ER-502(以上、三菱レイヨン株式会社製)、A-11、A-12、A-14、A-21、B-38、B-60、B-64、B-66、B-72、B-82、B-44、B-48N、B-67、B-99N、DM-55(以上、ウイルバー・エリス社製)、JONCRYL67、678、586、611、680、682、683、690、819、JDX-C3000、JDX-C3080(以上、BASF社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記付加重合系樹脂の構成単位の求め方としては、特に制限されるものではないが、例えば、以下の方法により求めることができる。トナー約5gを秤量し、これにトルエン100gを加えて24時間静置して、充分に溶解させたトナー溶液を遠心分離でわけた後、上澄み液を乾燥させて上澄み液の固形分を得る。得られた固形分を、GC-MSにより成分分析を行い、構成単位(モノマー組成)を決定する。得られたモノマー組成の情報に基づき、H NMR、及び13C NMRを使用して定量分析を行い、前記付加重合系樹脂の構造を決定することができる。
【0038】
前記付加重合系樹脂の溶解性パラメータ(SPd値)は、上述の方法により得られた付加重合系樹脂の組成に基づき、前記Fedorの方法により求めることができる。
【0039】
一般的にトナーに使用されるモノマー構成の付加重合系樹脂は比較的SP値が小さく、SP値は6.5(cal/cm0.5から10.4(cal/cm0.5の範囲となる。
【0040】
前記画像形成トナーの前記結着樹脂における前記付加重合系樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂に対して、1質量%以上50質量%以下が好ましく、2質量%以上20質量%以下がより好ましい。
前記スクラッチトナーの前記結着樹脂における前記付加重合系樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂に対して、1質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、75質量%以上が特に好ましい。
【0041】
<<ハイブリッド樹脂>>
前記ハイブリッド樹脂は、縮重合系樹脂ユニット及び付加重合系樹脂ユニットを含む。
前記縮合系樹脂ユニットとしては、例えば、非晶性ポリエステルユニットが挙げられる。
前記付加重合系樹脂ユニットとしては、例えば、スチレンアクリル樹脂ユニットが挙げられる。
前記非晶性ポリエステルと前記付加重合系樹脂は双方を結合したハイブリッド樹脂を形成することができる。ハイブリッドすることで広い範囲でのSP値の調整が可能となる。それにより他の樹脂との相溶性も調整できたり、離型剤の分散剤としての機能を果たすことも可能となる。
【0042】
また、ハイブリット樹脂は、ポリエステルの熱的特性に近いものとしやすく、ポリエステルが持つ低温定着性と内部凝集力を大きく崩すものではない。
【0043】
前記ハイブリッド樹脂は、例えば、縮重合系樹脂ユニットおよび付加重合系樹脂ユニットのモノマー混合物を、同一反応容器に入れ、縮重合反応と付加重合反応を同時に並行して行うか、縮重合反応と付加重合反応、又は付加重合反応と縮重合反応を順次行うことによって得ることができる。
【0044】
前記画像形成トナーの前記結着樹脂における前記ハイブリッド樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂に対して、30質量%以上95質量%以下が好ましい。
前記スクラッチトナーの前記結着樹脂における前記ハイブリッド樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂に対して、20質量%以上95質量%以下が好ましい。
【0045】
以下にトナー結着樹脂用途のハイブリッド樹脂の合成例を示す。
<<<ハイブリッド樹脂H1の合成>>>
ポリエステルの原料モノマーとして、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが45モル%、セバシン酸が30モル%の比率になるように配合された単量体を、蒸留塔を有する5リットルのオートクレーブに全量が4000gとなるように仕込み、エステル化触媒として酸化ジブチル錫5gを窒素雰囲気下、230℃で6時間縮重合させた後、160℃まで冷却した。反応容器に、付加重合系樹脂の原料モノマーとしてスチレンが25モル%、重合開始剤としてジ-tert-ブチルベルオキシド25gの混合物を、160℃で攪拌しながら1時間かけて滴下し、さらに1時間同温度を保持して付加重合反応を行った後、200℃に昇温し、縮重合反応を行うと、[ハイブリッド樹脂H1]を得られる。[ハイブリッド樹脂H1]のSP値は10.3(cal/cm0.5だった。
【0046】
<<結晶性ポリエステル>>
前記結晶性ポリエステルとは、主鎖が規則的に配向する結晶構造をとっている割合が特に高く、融点近傍で樹脂の粘度が大きく変化するポリエステルのことを指す。前記結晶性ポリエステルを含有することにより、低温定着性に対する余裕度を広く確保することができる。
【0047】
前記結晶性ポリエステルの合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールとポリカルボン酸との重縮合、ラクトンの開環重合、ヒドロキシカルボン酸の重縮合、ヒドロキシカルボン酸の2分子間又は3分子間の脱水縮合物に相当する炭素数が4~12の環状エステルの開環重合などが挙げられる。これら中でも、ポリオールとポリカルボン酸との重縮合により得られるものが好ましい。前記ポリオールとしては、ジオールを単独であっても、ジオールと3価以上のアルコールを併用したものであってもよい。前記ポリオールとポリカルボン酸との重縮合の中でも、ジオールとジカルボン酸の重縮合により得られる結晶性ポリエステルが好ましい。
【0048】
前記画像形成トナー又は前記スクラッチトナーにおける前記結晶性ポリエステルの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0049】
以下にトナー結着樹脂用途の結晶性ポリエステルの合成例を示す。
<<<結晶性ポリエステルC1の合成>>>
冷却管、撹拌機、及び窒素導入管を装備した反応槽中に、1,6-ヘキサンジオール118部、フマル酸104部、及び縮合触媒としてのテトラブトキシチタネート1.8部を入れ、窒素気流下、生成する水を留去しながら、230℃で6時間反応させる。次に、5mmHg~20mmHgの減圧下、重量平均分子量が5,000に達するまで1時間反応させると、融点が114℃、軟化温度が111℃の[結晶性ポリエステルC1]を得られる。
[結晶性ポリエステルC1]のSP値は、10.7(cal/cm0.5となった。
【0050】
<離型剤>
離型剤の例としては、脂肪酸エステル、フタル酸等の芳香族酸のエステル、燐酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、イタコン酸エステル、その他エステル、ベンジル、ベンゾイン化合物、ベンゾイル化合物等のケトン類、ヒンダードフェノール化合物、べンゾトリアゾール化合物、芳香族スルホンアミド化合物、脂肪族アミド化合物、長鎖アルコール、長鎖ジアルコール、長鎖カルボン酸、長鎖ジカルボン酸、などが挙げられる。
【0051】
具体的には、ジメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノブチルフマレート、モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジフェニルアジペート、ジベンジルテレフタレート、ジベンジルイソフタレート、ベンジル、ベンゾインイソプロピルエーテル、4-ベンゾイルビフェニル、4-ベンゾイルジフェニルエーテル、2-ベンゾイルナフタレン、ジベンゾイルメタン、4-ビフェニルカルボキシリックアシッド、ステアリルステアリン酸アミド、オレイルステアリン酸アミド、ステアリンオレイル酸アミド、オクタデカノール、n-オクチルアルコール、テトラコサン酸、エイコサン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ノナデカン酸、パルミチン酸ヒドロキシオクタン酸、ドコサン酸、特開2002-105414号公報に記載の一般式(1)~(17)の化合物、等が挙げられる。
【0052】
また、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;などの天然ワックスが挙げられる。また、これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;などが挙げられる。更に、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート、ポリ-n-ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、などを用いてもよい。
これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
離型剤の溶融温度は100℃以下が好ましく、更に好ましくは90℃以下である。
また、離型剤の溶融粘度としては、該有機低分子物質の融点より10℃高い温度での測定値として、5~1000cpsが好ましく、10~100cpsがより好ましい。
【0054】
中でも離型剤としてモノエステルワックスを含んでいることが好ましい。モノエステルワックスは、一般的な結着樹脂との相溶性が低いため、定着時に表面に染み出しやすく、高い離型性を示し、高光沢と高い低温定着性を確保できる。
【0055】
また、前記モノエステルワックスは、トナー100質量部に対して4~8質量部含有されることが好ましく、5~7質量部がより好ましい。
【0056】
前記モノエステルワックスは合成エステルワックスを用いることが好ましい。合成エステルワックスの例としては、長鎖直鎖飽和脂肪酸と長鎖直鎖飽和アルコールから合成されるモノエステルワックスが挙げられる。長鎖直鎖飽和脂肪酸は一般式C2n+1COOHで表わされ、n=5~28程度のものが好ましく用いられる。また長鎖直鎖飽和アルコールはC2n+1OHで表わされn=5~28程度のものが好ましく用いられる。
【0057】
ここで長鎖直鎖飽和脂肪酸の具体例としては、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラモン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸およびメリシン酸等が挙げられる。一方長鎖直鎖飽和アルコールの具体例としては、アミルアルコール、ヘキシールアルコール、ヘプチールアルコール、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコールおよびヘプタデカンノオール等が挙げられ、低級アルキル基、アミノ基、ハロゲン等の置換基を有していてもよい。
【0058】
<着色剤>
本発明の画像形成トナーに用いられる着色剤は、特に限定されないが一般的なプロセスカラーに用いられるブッラク、シアン、マゼンタ、イエロー顔料が好適に使用される。
【0059】
ブラックの着色剤としては、カーボンブラック、各種磁性体、ペリレンブラック、ペリノンブラック、及び以下に示すシアン色材、マゼンタ色材およびイエロー色材を混合して黒色に調色された色材などを用いる。
【0060】
シアン色材では、C.I.ピグメントブルー15:3が好ましい。マゼンタ色材では、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド269、及びC.I.ピグメントレッド81:4が好ましい。イエロー色材では、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、及びC.I.ピグメントイエロー185が好ましい。これらの着色剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
本発明のスクラッチトナーに含まれる着色剤は全可視光波長を吸収又は反射し、透過光の少ない顔料が好ましく用いられる。
このような特性を有する顔料としては、例えば、アルミニウム粉、黄銅粉、銅粉、鉄粉、銀粉、金粉、白金粉などの金属粉;炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、ホワイトカーボン、シリカ、アルミナホワイト、水酸化アルミニウム、カオリンクレー等の粘土鉱物;タルク、マイカ、ネフェリンサイナイト等の体質顔料;カーボンブラック、磁性体、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤を混合して黒色に調色された着色剤などの黒色顔料;酸化チタン、チタン白、酸化亜鉛、亜鉛白、硫化亜鉛、リトポン、鉛白、アンチモン白、ジルコニア、酸化ジルコニア等の白色顔料が例示される。
なお、以上のような顔料は、単独で又は複数を混合して、固体及び液体の状態で用いることができ、隠蔽性、耐候性、トナー中への分散性なども考慮して選択される。
【0062】
特に隠蔽性を有する顔料である金属顔料または白色顔料を用いることが好ましく、金属顔料であればアルミニウム顔料、白色顔料であれば酸化チタン顔料がより好ましい。
【0063】
アルミニウム顔料の場合、スクラッチトナーにおける含有量は、10質量%以上20質量%以下が好ましい。10質量%以上であると、隠蔽性に優れ、20質量%以下であると、帯電特性、電気特性に優れる。
【0064】
更に前記適正添加量のアルミニウム顔料を用いたスクラッチトナーで十分な隠蔽性を得るためには、スクラッチトナーの単位面積中の付着量は0.6mg/cm以上が好ましい。
【0065】
酸化チタン顔料の場合、スクラッチトナーにおける含有量は、40質量%以上60質量%以下が好ましい。40質量%以上であると、隠蔽性に優れ、40質量%以下であると、帯電特性、電気特性に優れる。
【0066】
更に前記適正添加量の白色顔料を用いたスクラッチトナーで十分な隠蔽性を得るためには、スクラッチトナーの単位面積中の付着量は0.6mg/cm以上が好ましい。
【0067】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、通常、トナーに使用されるものを含有することができ、例えば、荷電制御剤、着色剤、外添剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
<<荷電制御剤>>
前記荷電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン、炭素数2~16のアルキル基を含むアジン系染料(特公昭42-1627号公報)、塩基性染料(例えばC.I.Basic Yello 2(C.I.41000)、C.I.Basic Yello 3、C.I.Basic Red 1(C.I.45160)、C.I.Basic Red 9(C.I.42500)、C.I.Basic Violet 1(C.I.42535)、C.I.Basic Violet 3(C.I.42555)、C.I.Basic Violet 10(C.I.45170)、C.I.Basic Violet 14(C.I.42510)、C.I.Basic Blue 1(C.I.42025)、C.I.Basic Blue 3(C.I.51005)、C.I.Basic Blue 5(C.I.42140)、C.I.Basic Blue 7(C.I.42595)、C.I.Basic Blue 9(C.I.52015)、C.I.Basic Blue 24(C.I.52030)、C.I.Basic Blue 25(C.I.52025)、C.I.Basic Blue 26(C.I.44045)、C.I.Basic Green 1(C.I.42040)、C.I.Basic Green 4(C.I.42000)など、これらの塩基性染料のレーキ顔料、C.I.Solvent Black 8(C.I.26150)、ベンゾイルメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルクロライド等の4級アンモニウム塩、あるいはジブチル又はジオクチルなどのジアルキル錫化合物、ジアルキル錫ボレート化合物、グアニジン誘導体、特公昭41-20153号公報、特公昭43-27596号公報、特公昭44-6397号公報、特公昭45-26478号公報に記載されているモノアゾ染料の金属錯塩、特公昭55-42752号公報、特公昭59-7385号公報に記載されているサルチル酸、ジアルキルサルチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸のZn、Al、Co、Cr、Fe等の金属錯体、スルホン化した銅フタロシアニン顔料、有機ホウ素塩類、含フッ素四級アンモニウム塩、カリックスアレン系化合物などが挙げられる。
なお、ブラック以外のカラートナーは、当然目的の色を損なう荷電制御剤の使用は避けるべきであり、白色のサリチル酸誘導体の金属塩などが好ましい。
【0069】
<<外添剤>>
前記外添剤としては、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、疎水化処理されたシリカ、酸化チタン、及びアルミナの微粒子;樹脂微粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、前記外添剤に加えて、脂肪属金属塩、ポリフッ化ビニリデンの微粒子などの滑剤なども併用可能である。
前記外添剤を含有させることにより、トナーの流動性、転写性などを向上させることができる。
【0070】
本発明のトナーでは、疎水化処理された酸化チタンを外添することにより湿度変化による帯電量の変動を著しく減少させることができる。また、疎水化処理されたシリカ及び疎水化処理された酸化チタンを外添し、疎水化処理されたシリカの外添量より疎水化処理された酸化チタンの外添量を多くすることにより、トナーの流動性や転写性等を向上させとともに、湿度変化による帯電量の変動を減少させることができる。
さらに、1次粒子径0.01μm~0.03μmの疎水化処理されたシリカ及び比表面積20m/g~60m/gの疎水化処理されたシリカ、疎水化処理された酸化チタンを外添することにより、実使用時の帯電性の低下を減少させることができ耐久性が向上する。
【0071】
前記疎水化処理された酸化チタンは、酸化チタンを疎水化処理剤により処理することにより得られる。前記疎水化処理剤としては、例えば、ジメチルジクロルシラン、トリメチルクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルジクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α-クロルエチルトリクロルシラン、p-クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、クロルメチルトリクロルシラン、p-クロルフェニルトリクロルシラン、3-クロルプロピルトリクロルシラン、3-クロルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジビニルジクロルシラン、ジメチルビニルクロルシラン、オクチル-トリクロルシラン、デシル-トリクロルシラン、ノニル-トリクロルシラン、(4-t-プロピルフェニル)-トリクロルシラン、(4-t-ブチルフェニル)-トリクロルシラン、ジベンチル-ジクロルシラン、ジヘキシル-ジクロルシラン、ジオクチル-ジクロルシラン、ジノニル-ジクロルシラン、ジデシル-ジクロルシラン、ジドデシル-ジクロルシラン、ジヘキサデシル-ジクロルシラン、(4-t-ブチルフェニル)-オクチル-ジクロルシラン、ジオクチル-ジクロルシラン、ジデセニル-ジクロルシラン、ジノネニル-ジクロルシラン、ジ-2-エチルヘキシル-ジクロルシラン、ジ-3,3-ジメチルベンチル-ジクロルシラン、トリヘキシル-クロルシラン、トリオクチル-クロルシラン、トリデシル-クロルシラン、ジオクチル-メチル-クロルシラン、オクチル-ジメチル-クロルシラン、(4-t-プロピルフェニル)-ジエチル-クロルシラン、オクチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ジエチルテトラメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ヘキサトリルジシラザン、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
<画像形成トナー、及びスクラッチトナーの特性>
<<トナー粒径>>
前記画像形成トナーの重量平均粒径としては、4μm以上8μm以下が好ましく、5μm以上7μm以下がより好ましい。
前記重量平均粒径が前記範囲内であると、600dpi以上の微少ドットを再現し、高画質な画像を得ることができる。これは、微小な潜像ドットに対して、十分に小さい粒径のトナー粒子を有することができ、ドット再現性に優れるという利点が得られる。
特に、前記画像形成トナーにおいては、画像出力媒体上に転写され定着前の状態において、高密度に配置され、その上に重ねられるスクラッチトナーがその隙間に入り込まないようにすることにより、再現性の高い定着後の画像を得ることができる。
【0073】
また前記スクラッチトナーの重量平均粒径については、隠蔽性の高い金属顔料類は粒径が大きく、8μm以上30μm以下程度の粒径であることが一般的であることから、該顔料を完全に内包できる様、含有した顔料粒径の120%から150%程度が好ましい。
酸化チタンなど粒径が300μm以下の顔料を用いた場合は、画像形成トナー同様4μm以上8μm以下が好ましく、5μm以上7μm以下がより好ましい
【0074】
トナー粒子の粒度分布の測定は、コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置を用いて行うことができる。前記装置としては、例えば、コールターカウンターTA-IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)が挙げられる。
具体的な測定方法は以下のとおりである。
まず、電解水溶液100mL~150mL中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩など)を0.1mL~5mL加える。前記電解水溶液とは、1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えば、ISOTON-II(コールター社製)が挙げられる。
次に、測定試料を2mg~20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1分間~3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの重量、個数を測定して、重量分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)を求めることができる。
チャンネルとしては、2.00~2.52μm未満;2.52~3.17μm未満;3.17~4.00μm未満;4.00~5.04μm未満;5.04~6.35μm未満;6.35~8.00μm未満;8.00~10.08μm未満;10.08~12.70μm未満;12.70~16.00μm未満;16.00~20.20μm未満;20.20~25.40μm未満;25.40~32.00μm未満;32.00~40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0075】
<トナーのガラス転移点Tg>
画像形成トナーのガラス転移点Tgiとスクラッチトナーのガラス転移点Tgsの関係は、0<Tgi-Tgs<10であることが好ましい。「Tgi-Tgs」が0より大きいことで定着時のオフセットが発生しにくくなる。さらに「Tgi-Tgs」が10より小さいことで、スクラッチ画像の低温定着性が確保される。
【0076】
(Tgの測定)
測定装置:島津製作所製TA-60WS、及びDSC-60
測定条件サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(フタあり)
サンプル量:5mg
リファレンス:アルミニウム製サンプルパン(アルミナ10mg)
雰囲気:窒素(流量50ml/min)
温度条件開始温度:20℃
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
保持時間:なし
降温温度:10℃/min
終了温度:20℃
保持時間:なし
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
測定した結果は島津製作所製データ解析ソフト(TA-60、バージョン1.52)を用いて解析を行う。
解析方法は2度目の昇温のDSC微分曲線であるDrDSC曲線のもっとも低温側に最大ピークを示す点を中心として±5℃の範囲を指定し、解析ソフトのピーク解析機能を用いてピーク温度を求める。
次にDSC曲線で前記ピーク温度+5℃、及び-5℃の範囲で解析ソフトのピーク解析機能を用いてDSC曲線の最大吸熱温度を求める。
ここで示された温度がトナーのTgに相当する。
【0077】
<トナーの製造方法>
本発明のトナーセットの製造方法としては、溶融混練-粉砕法、重合法など従来公知の方法が適用できる。また、画像形成トナーとスクラッチトナーの製造法は同じ製造法を用いてもよいし、異なる製造法を用いてもよい。例えば、画像形成トナーは重合法で製造し、スクラッチトナーは溶融混練粉砕法で製造してもよい。また、例えば、画像形成トナーは溶融混練粉砕法で製造し、スクラッチトナーは重合法で製造してもよい。
【0078】
<<溶融混練-粉砕法>>
前記溶融混練-粉砕法においては、その製造工程では、(1)少なくとも結着樹脂と着色剤と離型剤とを溶融混錬する工程(2)溶融混錬されたトナー組成物を粉砕/分級する工程(3)無機微粒子を外添する工程を有する。また、(2)の粉砕/分級工程で複製する微紛を(1)の原料として再度混練することがコストの面で好ましい。
【0079】
混練に使用する混錬機としては、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、又はオープンロール型混練機等を用いることができる。混錬機の種類としては、例えば、KRCニーダー(栗本鉄工所社製)、ブス・コ・ニーダー(Buss社製)、TEM型押し出し機(東芝機械社製)、TEX二軸混練機(日本製鋼所社製)、PCM混練機(池貝鉄工所社製)、三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製)、ニーデックス(三井鉱山社製)、MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製)、バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)などが挙げられる。
【0080】
粉砕機としては、例えば、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製)、IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製)、クロスジェットミル(栗本鉄工所社製)、ウルマックス(日曹エンジニアリング社製)、SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製)、クリプトロン(川崎重工業社製)、ターボミル(ターボエ業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)などが挙げられる。
分級機としては、例えば、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製)、ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製)、ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製)、YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。 粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、例えば、ウルトラソニック(晃栄産業社製)、レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社)、バイブラソニックシステム(ダルトン社製)、ソニクリーン(新東工業社製)、ターボスクリーナー(ターボエ業社製)、ミクロシフター(槙野産業社製)、円形振動篩いなどが挙げられる。
【0081】
<<重合法>>
前記重合法としては、従来公知の方法を用いることができる。重合法としては、例えば、以下のような手順が挙げられる。先ず、前記着色剤、結着樹脂、離型剤を有機溶媒中に分散させ、トナー材料液(油相)を作る。トナー材料液には、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を添加し、造粒中に反応させて、ウレア変性ポリエステルをトナーに含有させることが好ましい。
【0082】
次に、トナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。
前記水系媒体としては、水系媒体に用いる水系溶媒は、水単独でもよいし、アルコールなどの有機溶媒を含むものであってもよい。
トナー材料液100質量部に対する前記水系溶媒の使用量は、通常50質量部~2,000質量部が好ましく、100質量部~1,000質量部がより好ましい。
前記樹脂微粒子としては、水性分散体を形成しうる樹脂であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステルなどが挙げられる。
【0083】
分散後、乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。
【0084】
前記画像形成トナー、及びスクラッチトナーは、一成分現像剤としても、二成分現像剤として用いることができる。
本発明のトナーを二成分系現像剤に用いる場合には、磁性キャリアと混合して用いればよく、現像剤中のキャリアとトナーの含有比は、キャリア100質量部に対して、トナー1質量部~10質量部が好ましい。
前記磁性キャリアとしては、従来から公知のものを使用することができ、例えば、粒子径20μm~200μm程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリアなどが挙げられる。
前記磁性キャリアは、被覆されたものも使用することができる。前記磁性キャリアを被覆するための被覆材料としては、例えば、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等のアミノ系樹脂;ポリビニル等のポリビニリデン系樹脂;アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂などが挙げられる。
更に必要に応じて、導電粉等を被覆樹脂中に含有させてもよい。導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が使用できる。これらの導電粉は、平均粒子径1μm以下のものが好ましい。平均粒子径が1μm以下であると、電気抵抗の制御が困難になるという不具合を防止することができる。
【0085】
(画像形成方法、及び画像形成装置)
本発明の画像形成方法は、画像形成トナーにより画像を形成する画像形成工程と、前記画像の少なくとも一部の上に、スクラッチトナーによりスクラッチ層を形成するスクラッチ層形成工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
前記画像形成トナー及び前記スクラッチトナーは、本発明の前記トナーセットにおける前記画像形成トナー及び前記スクラッチトナーである。
本発明の画像形成方法によれば、短い納期で少量多品種の需要に対応する、工程の少ないオンデマンド生産により、剥離性に優れたスクラッチシートを多く工程を経ずに低コストで製造することができる。
【0086】
前記画像及び前記スクラッチ層の記録媒体への定着は、一度の定着工程により行われてもよい。
前記画像及び前記スクラッチ層の記録媒体への定着は、それぞれ異なる定着工程により行われてもよい。
【0087】
前記スクラッチ層を形成する際の前記スクラッチトナーの付着量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.60mg/cm以上が好ましく、0.70mg/cm以上がより好ましい。前記付着量の上限値としては、例えば、0.90mg/cmなどが挙げられる。
【0088】
本発明の画像形成装置の一例は、少なくとも、感光体と、該感光体を帯電させる帯電手段と、該帯電した感光体に露光して静電潜像を形成する露光手段と、該感光体に形成された静電潜像を、本発明のトナーセットを用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、該感光体に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。
本発明に関する画像形成方法の一例は、感光体を帯電させる帯電工程と、該帯電した感光体に露光して静電潜像を形成する露光工程と、該感光体に形成された静電潜像を、本発明のトナーセットを用いて現像してトナー像を形成する現像工程と、該感光体に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0089】
<感光体>
前記感光体の材質、構造、大きさとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、その材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体などが挙げられる。
【0090】
<帯電手段及び帯電工程>
前記帯電手段としては、感光体を帯電させる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記帯電工程としては、感光体を帯電させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記帯電手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器などが挙げられる。
前記帯電は、例えば、前記帯電手段を用いて前記感光体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電手段の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等どのような形態をとってもよく、前記画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択することができる。 前記帯電手段としては、前記接触式の帯電手段に限定されるものではないが、帯電手段から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電手段を用いることが好ましい。
【0091】
<露光手段及び露光工程>
前記露光手段としては、該帯電した感光体に露光して静電潜像を形成する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記露光工程としては、該帯電した感光体に露光して静電潜像を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記露光手段としては、前記帯電手段により帯電された前記感光体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系等の各種露光手段などが挙げられる。
前記露光手段に用いられる光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般などが挙げられる。
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
前記露光は、例えば、前記露光手段を用いて前記感光体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
なお、本発明においては、前記感光体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0092】
<現像手段及び現像工程>
前記現像手段としては、感光体に形成された静電潜像を、本発明のトナーセットを用いて現像してトナー像を形成する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記現像工程としては、感光体に形成された静電潜像を、本発明のトナーセットを用いて現像してトナー像を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記現像手段(以下、「現像付着手段」とも言う)は、例えば、前記トナーセットの各トナーをそれぞれ収容し、前記静電潜像に該トナーセットの各トナーを接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適であり、トナー入り容器を備えた現像器等がより好ましい。
【0093】
前記現像器は、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナーセットの各トナー(以下、「トナー」と称することがある)を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有するもの等が好適に挙げられる。
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該静電潜像担持体(感光体)の表面に該トナーによるトナー像が形成される。
前記トナー像は、例えば、画像形成トナーによるトナー像と、スクラッチトナーによるトナー像とを含む。
【0094】
<転写手段及び転写工程>
前記転写手段としては、感光体に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記転写工程としては、感光体に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記転写手段としては、トナー像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
前記転写工程としては、中間転写体を用い、該中間転写体上にトナー像を一次転写した後、該トナー像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。
前記転写工程は、例えば、前記トナー像を、転写帯電器を用いて前記感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。
【0095】
ここで、前記記録媒体上に二次転写される画像が複数色のトナーからなるカラー画像である場合に、前記転写手段により、前記中間転写体上に各色のトナーを順次重ね合わせて当該中間転写体上に画像を形成し、前記中間転写手段により、当該中間転写体上の画像を前記記録媒体上に一括で二次転写する構成とすることができる。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルトなどが好適に挙げられる。
【0096】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記感光体上に形成された前記トナー像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写器としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器などが挙げられる。
なお、前記記録媒体としては、代表的には紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0097】
<定着手段及び定着工程>
前記定着手段としては、該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記定着工程としては、該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記定着手段としては、公知の加熱加圧部材が好ましい。前記加熱加圧部材としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せなどが挙げられる。
前記定着工程としては、例えば、各トナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各トナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
【0098】
前記定着工程は、前記定着手段により行うことができる。
前記加熱加圧部材における加熱は、通常、80℃~200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
前記定着工程における面圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10N/cm~80N/cmであることが好ましい。
【0099】
<その他の手段及びその他の工程>
前記その他の手段としては、例えば、クリーニング手段、除電手段、リサイクル手段、制御手段などが挙げられる。
前記その他の工程としては、例えば、クリーニング工程、除電工程、リサイクル工程、制御工程などが挙げられる。
【0100】
<<除電手段及び除電工程>>
前記除電手段としては、前記感光体に対し除電バイアスを印加して除電する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除電ランプなどが挙げられる。
前記除電工程としては、前記感光体に対し除電バイアスを印加して除電する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記除電手段により行うことができる。
【0101】
<<リサイクル手段及びリサイクル工程>>
前記リサイクル手段としては、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像手段にリサイクルさせる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の搬送手段などが挙げられる。
前記リサイクル工程としては、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記リサイクル手段により行うことができる。
【0102】
ここで、図面を用いて本発明の画像形成方法、及び画像形成装置について説明する。
図1は、画像形成装置の一例の全体を示した図である。画像処理部(以下、「IPU」という)(14)に送られた画像データは、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)、S(スクラッチ)、の5色の各画像信号を作成する。
次に画像処理部で、Y、M、C、Bk、Sの各画像信号は、書き込み部(15)へ伝達される。上記書き込み部(15)は、Y、M、C、Bk、S用の5つのレーザービームをそれぞれ変調・走査して、帯電部(51、52、53、54、55)によって感光体ドラム上を帯電した後に順次各感光体ドラム(21、22、23、24、25)上に、静電潜像を作る。ここでは、例えば第1の感光体ドラム(21)がYに、第2の感光体ドラム(22)がMに、第3の感光体ドラム(23)がCに、第4の感光体ドラム(24)がBkに、第5の感光体ドラム(25)がSに対応している。
次に、現像付着手段としての現像ユニット(31、32、33、34、35)によって各色のトナー像が上記感光体ドラム(21、22、23、24、25)上に作られる。また、給紙部(16)によって給紙された転写紙は、転写ベルト(70)上を搬送され、転写チャージャ(61、62、63、64、65)によって順次に上記感光体ドラム(21、22、23、24、25)上のトナー像が転写紙上に転写される。
【0103】
この転写工程終了後、上記転写紙は定着ユニット(80)に搬送されて、この定着ユニット(80)で、上記転写されたトナー像は転写紙上に定着され、搬送ベルト(90)に搬送される。
転写工程終了後、上記感光体ドラム(21、22、23、24、25)上に残留したトナーは、クリーニング部(41、42、43、44、45)によって除去される。
【0104】
図2の装置及びこれを用いた画像形成方法においては、図1同様に感光体ドラム(21、22、23、24、25)上に形成されたトナー像を一旦転写ドラム上に転写し、二次転写手段(66)によって転写紙上にトナー像は転写され、定着機(80)で定着される。
したがって、図1の装置を用いた画像形成方法の現像順序と逆の順序で転写紙上に転写されるため、スクラッチ層をカラー画像上に積層するにはS(スクラッチ)を最初に転写ドラム上に転写し、順次その他のトナーを転写し、二次転写手段(66)によって転写紙上にトナー像は転写する必要がある。
【0105】
スクラッチトナーを厚く載せる場合、転写ドラム上のスクラッチ層が厚くなり二次転写がし難くなるため、図3のように別転写ドラムにすることも出来る。この場合は最後に転写される別転写ドラムを用いた転写工程に配置される。
【0106】
次に、現像ユニット周辺の構成について説明する。
図5は、5つの現像付着手段としての現像ユニット(31、32、33、34、35)及び感光体ドラム(21、22、23、24、25)のうちの1つを示す拡大構成図であり、それぞれ扱うトナーの色が異なる点の他がほぼ同様の構成になっているので、同図では現像ユニット(4)及び感光体ドラム(1)と示す。
【0107】
本実施形態の現像ユニット(4)は、二成分現像剤を収容した現像容器(2)を備え、感光体ドラム(1)と対面した現像容器(2)の開口部に、現像剤担持体としての現像スリーブ(11)が感光体(1)と所定の間隔を開けて回転自在に設置されている。現像スリーブ(11)は、非磁性材料の円筒形からなり、矢印の方向に回転する感光体(1)に対して、対向部が同方向に移動する向きに回転する。現像スリーブ(11)の内側には磁界発生手段のマグネットローラが固定配置されている。マグネットローラは、5つの磁極(N1,S1,N2,N3,S2)を有している。現像スリーブ(11)上方の現像容器(2)の部分には現像剤規制部材としての規制ブレード(10)が取付けられ、この規制ブレード(10)は、マグネットローラの鉛直方向最上点に略位置した磁極(S2)の近傍に向けて、現像スリーブ(11)と非接触に配置されている。
【0108】
現像容器(2)内には第1現像剤攪拌搬送手段である供給スクリュー(5)、第2現像剤攪拌搬送手段である回収スクリュー(6)、第3現像剤攪拌搬送手段である攪拌スクリュー(7)をそれぞれ収容する供給搬送路(2a)、回収搬送路(2b)、攪拌搬送路(2c)の3つの現像剤搬送路が設けられている。供給搬送路(2a)と攪拌搬送路(2c)とは、斜め上下方向に配置されている。また、回収搬送路(2b)は、現像スリーブ(11)の現像領域下流側で、攪拌搬送路(2c)と略水平な側方に配置されている。
【0109】
現像容器(2)内に収容された二成分現像剤は、供給スクリュー(5)、回収スクリュー(6)、攪拌スクリュー(7)の撹拌、搬送により供給搬送路(2a)、回収搬送路(2b)、攪拌搬送路(2c)を循環搬送されながら、供給搬送路(2a)より現像スリーブ(11)に供給される。現像スリーブ(11)に供給された現像剤は、マグネットローラの磁極(N2)により現像スリーブ(11)上に汲み上げられる。現像スリーブ(11)の回転にともない、現像スリーブ(11)上を磁極(S2)から磁極(N1)、磁極(N1)から磁極(S1)と搬送され、現像スリーブ(11)と感光体(1)とが対向した現像領域に至る。その搬送の途上で現像剤は、規制ブレード(10)により磁極(S2)と共同して磁気的に層厚を規制され、現像スリーブ(11)上に現像剤の薄層が形成される。現像スリーブ(11)内の現像領域に位置されたマグネットローラの磁極(S1)は現像主極であり、現像領域に搬送された現像剤は、磁極(S1)によって穂立ちして感光体(1)の表面に接触し、感光体(1)の表面に形成された静電潜像を現像する。潜像を現像した現像剤は、現像スリーブ(11)の回転にともない現像領域を通過し、搬送極(N3)を経て現像容器(2)内に戻され、磁極(N2、N3)の反発磁界により現像スリーブ(11)から離脱し、回収スクリュー(6)により回収搬送路(2b)に回収される。
【0110】
供給搬送路(2a)と斜め下方の回収搬送路(2b)とは、第1仕切り部材(3A)によって仕切られている。
回収搬送路(2b)と側方に配置される攪拌搬送路(2c)とは第2仕切り部材(3B)によって仕切られているが、回収搬送路(2b)の回収スクリュー(6)による搬送方向下流部には、回収された現像剤を攪拌搬送路(2c)に供給するための現像剤供給用開口部が設けられている。
また、供給搬送路(2a)と斜め下方に配置される攪拌搬送路(2c)とは第3仕切り部材(3C)により仕切られているが、供給搬送路(2a)の供給スクリュー(5)による搬送方向上流部と下流部には、現像剤を供給するための現像剤供給用開口部が設けられている。
【0111】
図6は、回収スクリュー(6)による搬送方向下流部における回収搬送路(2b)と攪拌搬送路(2c)との断面図であり、回収搬送路(2b)と攪拌搬送路(2c)とを連通する開口部(2d)が設けられている。
【0112】
図7は、供給スクリュー(5)による搬送方向上流部における現像ユニット(4)の断面図であり、第3仕切り部材(3C)に攪拌搬送路(2c)と供給搬送路(2a)とを連通する開口部(2e)が設けられている。
【0113】
また、図8は、供給スクリュー(5)による搬送方向下流部における現像ユニット(4)の断面図であり、第3仕切り部材(3C)に攪拌搬送路(2c)と供給搬送路(2a)とを連通する開口部(2f)が設けられている。
【0114】
次に、3つの現像剤搬送路内での現像剤の循環について説明する。
図9は、現像ユニット(4)内での現像剤の流れの模式図である。図9中の各矢印は現像剤の移動方向を示している。攪拌搬送路(2c)から現像剤の供給を受けた供給搬送路(2a)では、現像スリーブ(11)に現像剤を供給しながら、供給スクリュー(5)の搬送方向下流側に現像剤を搬送する。そして、現像スリーブ(11)に供給されずに供給搬送路(2a)の搬送方向下流部まで搬送された余剰現像剤は第3仕切り部材(3C)に設けられた第1現像剤供給用開口部としての開口部(2f)より攪拌搬送路(2c)に供給される。
【0115】
また、回収スクリュー(6)により現像スリーブ(11)から回収搬送路(2b)に回収され、供給搬送路(2a)の現像剤と同方向に搬送方向下流部まで搬送された回収現像剤は第2仕切り部材(3B)に設けられた第2現像剤供給用開口部としての開口部(2d)より攪拌搬送路(2c)に供給される。
【0116】
攪拌搬送路(2c)では、攪拌スクリュー(7)により供給された余剰現像剤と回収現像剤とを攪拌し、回収搬送路(2b)及び供給搬送路(2a)の現像剤と逆方向に搬送する。そして、攪拌搬送路(2c)の搬送方向下流側に搬送された現像剤は、第3仕切り部材(3C)に設けられた第3現像剤供給用開口部としての開口部(2e)より供給搬送路(2a)の搬送方向上流部に供給される。
【0117】
また、攪拌搬送路(2c)の下方には、トナー濃度センサ(不図示)が設けられ、センサ出力により不図示のトナー補給制御装置を作動し、トナー収容部(不図示)からトナー補給を行っている。攪拌搬送路(2c)では攪拌スクリュー(7)によって、必要に応じてトナー補給口(3)から補給されるトナーを、回収現像剤及び余剰現像剤と攪拌しながら搬送方向下流側へ搬送する。トナーを補給する際には攪拌スクリュー(7)の上流にて補給すると補給から現像までの攪拌時間を長くとれるので好ましい。
【0118】
このように現像ユニット(4)では、供給搬送路(2a)と回収搬送路(2b)とを備え、現像剤の供給と回収とを異なる現像剤搬送路で行うので、現像済みの現像剤が供給搬送路(2a)に混入することがない。よって、供給搬送路(2a)の搬送方向下流側ほど現像スリーブ(11)に供給される現像剤のトナー濃度が低下することを防止することができる。また、回収搬送路(2b)と攪拌搬送路(2c)とを備え、現像剤の回収と攪拌とを異なる現像剤搬送路で行うので、現像済みの現像剤が攪拌の途中に落ちることがない。よって、十分に攪拌がなされた現像剤が供給搬送路(2a)に供給されるため、供給搬送路(2a)に供給される現像剤が攪拌不足となることを防止することができる。
このように、供給搬送路(2a)内の現像剤のトナー濃度が低下することを防止し、供給搬送路(2a)内の現像剤が攪拌不足となることを防止することができるので現像時の画像濃度を一定にすることができる。
【0119】
また、図7に示す供給搬送路(2a)の搬送方向上流部では、斜め下方に配置される攪拌搬送路(2c)から上方の供給搬送路(2a)へ現像剤を供給するものである。この現像剤の受け渡しは、攪拌スクリュー7の回転で現像剤を押し込むことにより、現像剤を盛り上がらせて開口部(2e)より現像剤を溢れさせて供給搬送路(2a)に現像剤を供給するものである。このような現像剤の移動は、現像剤に対してストレスを与えることになり、現像剤の寿命低下の一因となる。
現像ユニット(4)では、供給搬送路(2a)を攪拌搬送路(2c)の斜め上方になるように配置することにより、供給搬送路(2a)を攪拌搬送路(2c)の垂直上方に設け、現像剤を持ち上げるものに比べて、上方への現像剤の移動における現像剤のストレスを軽減することができる。
【0120】
また、図8に示す供給スクリュー(5)による搬送方向下流部では、上方に配置される供給搬送路(2a)から斜め下方に配置される攪拌搬送路(2c)へ現像剤を供給するために、供給搬送路(2a)と攪拌搬送路(2c)とを連通する開口部(2f)が設けられている。ここで、攪拌搬送路(2c)と供給搬送路(2a)とを仕切る第3仕切り部材(3C)は、供給搬送路(2a)の最下点から上方に延伸しており、開口部(2f)は最下点よりも上方の位置に設けられている。また、図10は、供給スクリュー(5)による搬送方向最下流部における現像ユニット(4)の断面図である。図10に示すように、供給スクリュー(5)による搬送方向に関して開口部(2f)よりも下流部には、第3仕切り部材(3C)に攪拌搬送路(2c)と供給搬送路(2a)とを連通する開口部(2gが設けられている。また、開口部(2g)は開口部(2f)の最上部よりも上方に設けられている。
【0121】
開口部(2f,2g)を有する供給搬送路(2a)では、供給スクリュー(5)により供給搬送路(2a)を軸方向に開口部(2f)まで搬送されてきた現像剤のうち嵩が開口部(2f)の最下部の高さに達するものは、開口部(2f)を介して下方の攪拌搬送路(2c)へこぼれ落ちる。一方、開口部(2f)の最下部の高さに達しない現像剤は、供給スクリュー(5)によりさらに下流側へ搬送されながら現像スリーブ(11)に供給される。そこで、供給搬送路(2a)内の開口部(2f)よりも下流側では、現像剤の嵩は開口部(2f)の最下部よりも徐々に低くなっていく。供給搬送路(2a)の最下流部は行き止まりとなっているため最下流部で現像剤の嵩が高くなることもあるが、ある程度の高さになると供給スクリュー(5)に逆らって現像剤が押し戻されて開口部(2f)まで戻り、開口部(2f)の最下部の高さに達するものは開口部(2f)を介して下方の攪拌搬送路(2c)へこぼれ落ちる。これらにより、供給搬送路(2a)の開口部(2f)よりも下流側では、現像剤の嵩は増え続けることはなく、開口部(2f)の最下部近傍である勾配を持った平衡状態となる。開口部(2g)を、開口部(2f)の最上部より高い位置、すなわち、この平衡状態よりも高い位置に設けることで、開口部(2f)が現像剤で塞がれて通気が不十分となる虞は少なく、攪拌搬送路(2c)と供給搬送路(2a)とで十分な通気を確保することができる。すなわち、開口部(2g)は、供給搬送路(2a)と攪拌搬送路(2c)との間の現像剤供給用開口部としての機能ではなく、供給搬送路(2a)と攪拌搬送路(2c)との間で十分な通気を確保するための通気用開口部としての機能を果たすものである。このような通気用の開口部(2g)を設けることで、下方に配置される攪拌搬送路(2c)および攪拌搬送路(2c)と連通する回収搬送路(2b)で内圧が上昇しても、空気を通過させるフィルタを設けた上方の供給搬送路(2a)と十分な通気を確保することができ、現像ユニット(4)全体の内圧上昇を抑制することができる。
【0122】
本発明のトナーセットは、感光体と、静電潜像形成手段、現像手段、クリ-ニング手段より選ばれる少なくとも一つの手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカ-トリッジにおいて用いることができる。
図4に本発明の静電潜像現像用現像剤を有するプロセスカ-トリッジを備えた画像形成装置の一例の概略構成を示す。
図4において、プロセスカ-トリッジは感光体(20)、静電潜像形成手段(32)、現像手段(40)、クリーニング手段(61)からなる。
本発明においては、上述の感光体(20)、静電潜像形成手段(32)、現像手段(40)及びクリ-ニング手段(61)等の構成要素のうち、複数のものをプロセスカ-トリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカ-トリッジを複写機やプリンタ-等の画像形成装置本体に対して着脱可能に構成する。
【0123】
本発明の静電潜像現像用現像剤を有するプロセスカ-トリッジを備えた画像形成装置の動作を説明すると次の通りである。
感光体が所定の周速度で回転駆動される。感光体は回転過程において、静電潜像形成手段によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の像露光手段からの画像露光光を受け、こうして感光体の周面に静電潜像が順次形成され、形成された静電潜像は、次いで現像手段によりトナー現像され、現像されたトナー像は、給紙部から感光体と転写手段との間に感光体の回転と同期されて給送された転写材に、転写手段により順次転写されていく。像転写を受けた転写材は感光体面から分離されて像定着手段へ導入されて像定着され、複写物(コピ-)として装置外へプリントアウトされる。像転写後の感光体の表面は、クリ-ニング手段によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更に除電された後、繰り返し画像形成に使用される。
【0124】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、感光体と、前記感光体に形成された静電潜像を、前記現像剤を用いて現像してトナー像を形成する、前記現像剤を備える現像手段を有し、
画像形成装置に着脱可能とした装置(部品)である。
【0125】
本発明に関するプロセスカートリッジは、各種画像形成装置に着脱可能に形成されており、静電潜像を担持する感光体と、感光体上に担持された静電潜像を本発明の現像剤で現像してトナー像を形成する現像手段を少なくとも有する。なお、本発明のプロセスカートリッジは、必要に応じて、他の手段をさらに有していてもよい。
前記現像手段としては、本発明の現像剤を収容する現像剤収容部と、現像剤収容部内に収容された現像剤を担持すると共に搬送する現像剤担持体を少なくとも有する。なお、現像手段は、担持する現像剤の厚さを規制するため規制部材等をさらに有してもよい。
図11に、本発明に関するプロセスカートリッジの一例を示す。プロセスカートリッジ111は、感光体ドラム110、コロナ帯電器158、現像器140、転写ローラ180及びクリーニング装置190を有する。符号195は転写紙である。符号Lはレーザービームである。
【0126】
(スクラッチ画像形成物)
本発明のスクラッチ画像形成物は、記録媒体と、画像と、スクラッチ層とを有し、更に必要に応じて、その他の構成を有する。
前記画像は、前記記録媒体上に形成される。
前記画像は、画像形成トナーにより形成される。
前記スクラッチ層は、前記画像の少なくとも一部の上に形成される。
前記スクラッチ層は、スクラッチトナーにより形成される。
前記画像形成トナー及び前記スクラッチトナーは、本発明の前記トナーセットにおける前記画像形成トナー及び前記スクラッチトナーである。
【0127】
前記スクラッチ層を形成する際の前記スクラッチトナーの付着量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.60mg/cm以上が好ましく、0.70mg/cm以上がより好ましい。前記付着量の上限値としては、例えば、0.90mg/cmなどが挙げられる。
【0128】
前記記録媒体の材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0129】
前記スクラッチ画像形成物は、インスタント宝くじ、景品くじ、ダイレクトメール、キャンペーンシートなどに好適に用いることができる。
【実施例
【0130】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、「部」は、特に断りのない限り「質量部」を表す。
【0131】
<画像形成トナーセットの作製>
(画像形成トナーセットAの作製)
<<画像形成トナーA-Bkの作製>>
以下の組成のトナー原材料を用いて、トナーを製造した。
-トナー原材料の組成-
・非晶性ポリエステルA(花王社製RN-306SF、SP値11.2(cal/cm0.5) 60部
・非晶性ポリエステルB(花王社製RN-290SF、SP値11.0(cal/cm0.5) 30部
・ワックス分散樹脂(三洋化成社製EXD-001)5部
・ワックス(日油株式会社製、WE-11) 5部
・カーボンブラック 10部
・サリチル酸誘導体ジルコニウム塩 1部
なお、サリチル酸誘導体ジルコニウム塩は、以下の構造式(1)の化合物を用いた。
【化1】
【0132】
構造式(1)中のL1は、次の構造を示す。
【化2】
【0133】
上記組成のトナー原材料を、へンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製、FM20B)を用いて予備混合した後、一軸混練機(Buss社製、コニーダ混練機)で100℃~130℃で溶融、混練した。
得られた混練物は室温まで冷却後、ロートプレックスにて200μm~300μmに粗粉砕した。
粗粉砕した粒子を、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製、100AFG)を用いて、重量平均粒径が6.2±0.3μmとなるように粉砕エアー圧を適宜調整しながら微粉砕した後、気流分級機(株式会社マツボー製、EJ-LABO)で、重量平均粒径が7.0±0.2μm、重量平均粒径/個数平均粒径の比が1.20以下となるようにルーバー開度を適宜調整しながら分級し、トナー母体粒子A-Bkを得た。
【0134】
次いで、100部のトナー母体粒子A-Bkに対し、添加剤(HDK-2000、クラリアント株式会社製)1.0部、及び(H05TD、クラリアント株式会社製)1.0部をヘンシェルミキサーで撹拌混合し、画像形成トナーA-Bkを製造した。
【0135】
<<画像形成トナーA-C>>
画像形成トナーA-Bkの作製において、カーボンブラック 10部を、Pigment Blue 15;3 5部に変更した以外は、画像形成トナーA-Bkの作製と同様にして、画像形成トナーA-Cを作製した。
【0136】
<<画像形成トナーA-M>>
画像形成トナーA-Bkの作製において、カーボンブラック 10部を、Pigment Red 269 6部に変更した以外は、画像形成トナーA-Bkの作製と同様にして、画像形成トナーA-Mを作製した。
【0137】
<<画像形成トナーA-Y>>
画像形成トナーA-Bkの作製において、カーボンブラック 10部を、Pigment Yellow 185 7部に変更した以外は、画像形成トナーA-Bkの作製と同様にして、画像形成トナーA-Yを作製した。
【0138】
画像形成トナーA-Bk、画像形成トナーA-C、画像形成トナーA-M、及び画像形成トナーA-YのSP値は、11.1(cal/cm0.5であった。
【0139】
(画像形成トナーセットBの作製)
<<画像形成トナーB-Bkの作製>>
以下の組成のトナー原材料を用いて、それ以外は画像形成トナーA-Bkと同様に画像形成トナーB-Bkトナーを製造した。
-トナー原材料の組成-
・ハイブリッド樹脂A(花王社製RNH-104SF、SP値10.7(cal/cm0.5) 90部
・付加重合系樹脂A(三菱レイヨン社製FB-1518、SP値7.7(cal/cm0.5) 5部
・ワックス(日油株式会社製、WE-11) 5部
・カーボンブラック 10部
・サリチル酸誘導体ジルコニウム塩(構造式(1)の化合物) 1部
【0140】
<<画像形成トナーB-C>>
画像形成トナーB-Bkの作製において、カーボンブラック 10部を、Pigment Blue 15;3 5部に変更した以外は、画像形成トナーB-Bkの作製と同様にして、画像形成トナーB-Cを作製した。
【0141】
<<画像形成トナーB-M>>
画像形成トナーB-Bkの作製において、カーボンブラック 10部を、Pigment Red 269 6部に変更した以外は、画像形成トナーB-Bkの作製と同様にして、画像形成トナーB-Mを作製した。
【0142】
<<画像形成トナーB-Y>>
画像形成トナーB-Bkの作製において、カーボンブラック 10部を、Pigment Yellow 185 7部に変更した以外は、画像形成トナーB-Bkの作製と同様にして、画像形成トナーB-Yを作製した。
【0143】
画像形成トナーB-Bk、画像形成トナーB-C、画像形成トナーB-M、及び画像形成トナーB-YのSP値は、10.5(cal/cm0.5であった。
【0144】
(画像形成トナーセットCの作製)
<<画像形成トナーC-Bkの作製>>
以下の組成のトナー原材料を用いて、それ以外は画像形成トナーA-Bkと同様に画像形成トナーC-Bkトナーを製造した。
-トナー原材料の組成-
・ハイブリッド樹脂A(花王社製RNH-104SF、SP値10.7(cal/cm0.5) 95部
・ワックス(日油株式会社製、WE-11、SP値8.6(cal/cm0.5) 5部
・カーボンブラック 10部
・サリチル酸誘導体ジルコニウム塩(構造式(1)の化合物) 1部
【0145】
<<画像形成トナーC-C>>
画像形成トナーC-Bkの作製において、カーボンブラック 10部を、Pigment Blue 15;3 5部に変更した以外は、画像形成トナーC-Bkの作製と同様にして、画像形成トナーC-Cを作製した。
【0146】
<<画像形成トナーC-M>>
画像形成トナーC-Bkの作製において、カーボンブラック 10部を、Pigment Red 269 6部に変更した以外は、画像形成トナーC-Bkの作製と同様にして、画像形成トナーC-Mを作製した。
【0147】
<<画像形成トナーC-Y>>
画像形成トナーC-Bkの作製において、カーボンブラック 10部を、Pigment Yellow 185 7部に変更した以外は、画像形成トナーC-Bkの作製と同様にして、画像形成トナーC-Yを作製した。
【0148】
画像形成トナーC-Bk、画像形成トナーC-C、画像形成トナーC-M、及び画像形成トナーC-YのSP値は、10.7(cal/cm0.5であった。
【0149】
(画像形成トナーセットDの作製)
<<画像形成トナーD-Bkの作製>>
以下の組成のトナー原材料を用いて、それ以外は画像形成トナーA-Bkと同様に画像形成トナーD-Bkトナーを製造した。
-トナー原材料の組成-
・非晶性ポリエステルA(花王社製RN-306SF、SP値11.2(cal/cm0.5) 40部
・結晶性ポリエステルC(花王社製RNC-100、SP値10.7(cal/cm0.5) 10部
・ハイブリッド樹脂A(花王社製RNH-104SF、SP値10.7(cal/cm0.5) 45部
・ワックス(日油株式会社製、WE-11、SP値8.6(cal/cm0.5) 5部
・カーボンブラック 10部
・サリチル酸誘導体ジルコニウム塩(構造式(1)の化合物) 1部
【0150】
<<画像形成トナーD-C>>
画像形成トナーD-Bkの作製において、カーボンブラック 10部を、Pigment Blue 15;3 5部に変更した以外は、画像形成トナーD-Bkの作製と同様にして、画像形成トナーD-Cを作製した。
【0151】
<<画像形成トナーD-M>>
画像形成トナーD-Bkの作製において、カーボンブラック 10部を、Pigment Red 269 6部に変更した以外は、画像形成トナーD-Bkの作製と同様にして、画像形成トナーD-Mを作製した。
【0152】
<<画像形成トナーD-Y>>
画像形成トナーD-Bkの作製において、カーボンブラック 10部を、Pigment Yellow 185 7部に変更した以外は、画像形成トナーD-Bkの作製と同様にして、画像形成トナーD-Yを作製した。
【0153】
画像形成トナーD-Bk、画像形成トナーD-C、画像形成トナーD-M、及び画像形成トナーD-YのSP値は、10.9(cal/cm0.5であった。
【0154】
(画像形成トナーセットE)
RICOH PRO C7201Sに用いられるPxP-EQRトナーのプロセスカラートナーセットを画像形成トナーセットEとして用いた。画像形成トナーセットEのトナーのSP値は10.8(cal/cm0.5であった。
【0155】
<スクラッチトナーの作製>
(スクラッチトナーVの作製)
以下の組成のトナー原材料を用いて、トナーを製造した。
-トナー原材料の組成-
・付加重合系樹脂A(三菱レイヨン社製FB-1518、SP値7.7(cal/cm0.5) 45部
・付加重合系樹脂B(三菱レイヨン社製FB-1765、SP値7.8(cal/cm0.5) 50部
・ワックス(日油株式会社製、WE-11) 5部
・アルミニウム顔料(東洋アルミニウム社製BP-4696乾燥品) 15部
・サリチル酸誘導体ジルコニウム塩(構造式(1)の化合物) 1部
【0156】
上記組成のトナー原材料を、へンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製、FM20B)を用いて予備混合した後、一軸混練機(Buss社製、コニーダ混練機)で100℃~130℃で溶融、混練した。
得られた混練物は室温まで冷却後、ロートプレックスにて200μm~300μmに粗粉砕した。
粗粉砕した粒子を、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製、100AFG)を用いて、重量平均粒径が10.0±0.3μmとなるように粉砕エアー圧を適宜調整しながら微粉砕した後、気流分級機(株式会社マツボー製、EJ-LABO)で、重量平均粒径が12.0±0.3μm、重量平均粒径/個数平均粒径の比が1.30以下となるようにルーバー開度を適宜調整しながら分級し、スクラッチトナー母体粒子Vを得た。
【0157】
次いで、100部のスクラッチトナー母体粒子Vに対し、添加剤(HDK-2000、クラリアント株式会社製)0.5部、及び(H05TD、クラリアント株式会社製)0.5部をヘンシェルミキサーで撹拌混合し、スクラッチトナーVを製造した。
スクラッチトナーVのトナーのSP値は7.8(cal/cm0.5であった。
【0158】
(スクラッチトナーWの作製)
以下の組成のトナー原材料を用いて、それ以外はスクラッチトナーVと同様にスクラッチトナーWを製造した。
-トナー原材料の組成-
・ハイブリッド樹脂A(花王社製RNH-104SF、SP値10.7(cal/cm0.5) 55部
・付加重合系樹脂B(三菱レイヨン社製FB-1765、SP値7.8(cal/cm0.5) 40部
・ワックス(日油株式会社製、WE-11) 5部
・アルミニウム顔料(東洋アルミニウム社製BP-4696乾燥品) 15部
・サリチル酸誘導体ジルコニウム塩(構造式(1)の化合物) 1部
【0159】
スクラッチトナーWのトナーのSP値は9.5(cal/cm0.5であった。
【0160】
(スクラッチトナーXの作製)
以下の組成のトナー原材料を用いて、それ以外はスクラッチトナーVと同様にスクラッチトナーXを製造した。
-トナー原材料の組成-
・ハイブリッド樹脂A(花王社製RNH-104SF、SP値10.7(cal/cm0.5) 70部
・付加重合系樹脂B(三菱レイヨン社製FB-1765、SP値7.8(cal/cm0.5) 25部
・ワックス(日油株式会社製、WE-11) 5部
・アルミニウム顔料(東洋アルミニウム社製BP-4696乾燥品) 15部
・サリチル酸誘導体ジルコニウム塩(構造式(1)の化合物) 1部
【0161】
スクラッチトナーXのトナーのSP値は9.9(cal/cm0.5であった。
【0162】
(スクラッチトナーYの作製)
以下の組成のトナー原材料を用いて、それ以外はスクラッチトナーVと同様にスクラッチトナーYを製造した。
-トナー原材料の組成-
・ハイブリッド樹脂A(花王社製RNH-104SF、SP値10.7(cal/cm0.5) 90部
・付加重合系樹脂A(三菱レイヨン社製FB-1518、SP値7.7(cal/cm0.5) 5部
・ワックス(日油株式会社製、WE-11) 5部
・アルミニウム顔料(東洋アルミニウム社製BP-4696乾燥品) 15部
・サリチル酸誘導体ジルコニウム塩(構造式(1)の化合物) 1部
【0163】
スクラッチトナーYのトナーのSP値は10.5(cal/cm0.5であった。
【0164】
(スクラッチトナーZの作製)
以下の組成のトナー原材料を用いて、それ以外はスクラッチトナーVと同様にスクラッチトナーZを製造した。
-トナー原材料の組成-
・ハイブリッド樹脂A(花王社製RNH-104SF、SP値10.7(cal/cm0.5) 55部
・付加重合系樹脂B(三菱レイヨン社製FB-1765、SP値7.8(cal/cm0.5) 40部
・ワックス(日油株式会社製、WE-11) 5部
・酸化チタン顔料(石原産業社製 PF-739) 65部
・サリチル酸誘導体ジルコニウム塩(構造式(1)の化合物) 1部
【0165】
スクラッチトナーZのトナーのSP値は9.5(cal/cm0.5であった。
【0166】
なお、ハイブリッド樹脂Aは、非晶性ポリエステルユニットとスチレンアクリル樹脂ユニットとを含むハイブリッド樹脂である。
付加重合系樹脂A及び付加重合系樹脂Bは、スチレンアクリル樹脂である。
【0167】
[二成分現像剤の製造]
<キャリアAの作製>
-混合物の組成-
シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコ-ン)・・・・・・・・・100部
トルエン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100部
γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン・・・・・・5部
カーボンブラック・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10部
【0168】
上記混合物をホモミキサーで20分間分散し、コート層形成液を調製した。このコート層形成液を、芯材として重量平均粒径が35μmのMnフェライト粒子を用いて、芯材表面において平均膜厚が0.20μmになるように、流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥した。
得られたキャリアを電気炉中にて、180℃/2時間焼成し、キャリアAを得た。
【0169】
<二成分現像剤の作製>
作製した各トナーと、キャリアAとを、ターブラーミキサー(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製)を用いて48rpmで5分間均一混合し帯電させ、それぞれ二成分現像剤を作製した。なお、トナーとキャリアの混合比率は、評価機の初期現像剤のトナー濃度:6質量%に合わせて混合した。
【0170】
(実施例及び比較例)
評価を行った各画像形成トナーセット現像剤とスクラッチトナー現像剤の組み合わせとSPi値(cal/cm0.5、SPs値(cal/cm0.5、及びSPi-SPsを表1に記載する。SP値は、前述のFedorらの方法により求めた。
【0171】
【表1】
【0172】
表1に記載した画像形成トナーセットとスクラッチトナーの組み合わせにおいて以下の評価を実施した。
【0173】
「RICOH PRO C7201S」のプロセスカラーユニットに画像形成トナー各色を設置し、スペシャルトナーユニットにスクラッチトナーを設置した。スペシャルトナーユニットはスペシャルトナーが記録媒体最上層に形成されるよう設定した。
このとき評価に用いた用紙は株式会社リコーPPC用紙TYPE6000(70W)を使用した。
【0174】
(スクラッチ画像作成条件A)
先ず画像形成トナーセットのみを用いて、下地画像の電子写真学会テストチャート No.1-R 1993を印刷した。下地画像が印刷された用紙を再度給紙トレイにセットして、全ベタのスクラッチ層を積層し、スクラッチシートを作成した。この時のスクラッチ層の付着量は0.65mg/cmとした。
【0175】
(スクラッチ画像作成条件B)
条件Aにおいて2回印刷で作成したスクラッチシートを1回印刷で下地画像(電子写真学会テストチャート No.1-R 1993)およびスクラッチ層を同時形成しスクラッチシートを作成した。この時のスクラッチ層の付着量は0.75mg/cmとした。
【0176】
作製したそれぞれのスクラッチシートについて以下の評価を行った。各評価は官能評価にて行い、評価者は25歳から55歳までの男女の中からランダムに選出した20名によって実施した。
その結果を表2に示す。
【0177】
(隠蔽性)
各スクラッチシートのスクラッチ層を削る前の下地画像が十分隠蔽されているかを評価した。
全員が下地画像を読み取ることができなかった場合を合格〇、一人でも読み取ることができた場合を不合格×とした。
【0178】
(剥離性)
各スクラッチシートを100円玉を用いて削り、スクラッチ層をはがしたときの下地画像とスクラッチ層の剥離状態を評価した。
下地画像上のスクラッチ層が完全に剥がれた場合を優「ランク〇」、一部剥がし残りはあるが下地画像が読み取れる程度は可「ランク△」、剥離せず下地画像が確認できない場合を不可「ランク×」とした。可「ランク△」より良い結果(ランク△又は〇)を合格とした。
20名の評価においてもっとも多かったランクを、その評価結果とした。
【0179】
【表2】
【0180】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 画像形成トナーと、スクラッチトナーとを有し、
前記画像形成トナーのSP値(SPi)(cal/cm0.5と、前記スクラッチトナーのSP値(SPs)(cal/cm0.5との差(SPi-SPs)の絶対値が、1.1(cal/cm0.5以上であることを特徴とするトナーセットである。
<2> 前記差(SPi-SPs)の絶対値が、1.4(cal/cm0.5超である前記<1>に記載のトナーセットである。
<3> 前記画像形成トナーが、結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含有し、
前記スクラッチトナーが、結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含有する、
前記<1>から<2>のいずれかに記載のトナーセットである。
<4> 前記画像形成トナーに含有される前記結着樹脂が、非晶性ポリエステルを含有し、
前記スクラッチトナーに含有される前記結着樹脂が、スチレンアクリル樹脂を含有する、
前記<3>に記載のトナーセットである。
<5> 前記画像形成トナーの前記結着樹脂における前記非晶性ポリエステルの含有量が、前記結着樹脂に対して、75質量%以上であり、
前記スクラッチトナーの前記結着樹脂における前記スチレンアクリル樹脂の含有量が、前記結着樹脂に対して、75質量%以上である、
前記<4>に記載のトナーセットである。
<6> 画像形成トナーにより画像を形成する画像形成工程と、
前記画像の少なくとも一部の上に、スクラッチトナーによりスクラッチ層を形成するスクラッチ層形成工程とを含み、
前記画像形成トナー及び前記スクラッチトナーが、前記<1>から<5>のいずれかに記載のトナーセットにおける前記画像形成トナー及び前記スクラッチトナーであることを特徴とする画像形成方法である。
<7> 前記画像及び前記スクラッチ層の記録媒体への定着が、一度の定着工程により行われる前記<6>に記載の画像形成方法である。
<8> 前記スクラッチ層を形成する際の前記スクラッチトナーの付着量が、0.70mg/cm以上である前記<6>から<7>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<9> 記録媒体と、
前記記録媒体上に形成された、画像形成トナーによる画像と、
前記画像の少なくとも一部の上に形成された、スクラッチトナーによるスクラッチ層と、
を有し、
前記画像形成トナー及び前記スクラッチトナーが、前記<1>から<5>のいずれかに記載のトナーセットにおける前記画像形成トナー及び前記スクラッチトナーであることを特徴とするスクラッチ画像形成物である。
【0181】
前記<1>から<5>のいずれかに記載のトナーセット、前記<6>から<8>のいずれかに記載の画像形成方法、及び前記<9>に記載のスクラッチ画像形成物は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0182】
14 画像処理部(IPU)
15 書き込み部
16 給紙部
17 定着済み転写紙搬送部
21 ブラック(Bk)トナー、現像剤用感光体ドラム
22 イエロー(Y)トナー、現像剤用感光体ドラム
23 マゼンタ(M)トナー、現像剤用感光体ドラム
24 シアン(C)トナー、現像剤用感光体ドラム
20 感光体ドラム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0183】
【文献】特許第4139643号公報
【文献】特開2013-068787号公報
【文献】特開2013-088700号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11