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特許7395998液体を吐出する装置、ヘッド駆動制御装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置、ヘッド駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20231205BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019217428
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021084428
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【弁護士】
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】荒木 理美
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-018423(JP,A)
【文献】特開2015-174404(JP,A)
【文献】特開2011-207079(JP,A)
【文献】特開2019-059131(JP,A)
【文献】特開2013-121665(JP,A)
【文献】特開2003-112414(JP,A)
【文献】米国特許第10357967(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出させる駆動パルスを含む共通駆動波形を生成出力する駆動波形生成手段と、
前記共通駆動波形の内、前記液体吐出ヘッドの圧力発生素子に与える前記駆動パルスの波形部分を選択する選択手段と、
前記選択手段で選択する波形部分を指定する選択信号を出力する手段と、を備え、
前記駆動パルスは、少なくとも、前記液体吐出ヘッドの圧力室を膨張させる膨張波形要素と、前記膨張波形要素で膨張された状態を保持する保持波形要素とを含み、
前記選択信号には、前記保持波形要素で保持される状態を終端とする前記膨張波形要素よりも前の波形部分の少なくとも一部を非選択にする信号を含む
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
前記駆動パルスは、前記圧力室を膨張させる第1段膨張波形要素と、前記第1段膨張波形要素で膨張された状態を保持する第1段保持波形要素と、前記第1段保持波形要素で保持された状態から前記圧力室を膨張させる第2段膨張波形要素と、を含み、
前記第2段膨張波形要素が前記保持波形要素で保持される状態を終端とする波形要素であり、
前記非選択にする信号は、前記共通駆動波形の内の、少なくとも、前記駆動パルスの前記第1段保持波形要素の途中までを含む波形部分を非選択にする信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記駆動パルスは、前記膨張波形要素の前で、前記圧力室を収縮させる前収縮波形要素と、前記前収縮波形要素で収縮された状態を保持する前保持波形要素とを含み、
前記非選択にする信号は、前記共通駆動波形の内の、少なくとも、前記駆動パルスの前記前保持波形要素の途中までを含む波形部分を非選択にする信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項4】
前記駆動パルスは、前記圧力室を膨張させる第1段膨張波形要素と、前記第1段膨張波形要素で膨張された前記圧力室を連続的に膨張させる第2段膨張波形要素と、を含み、
前記第2段膨張波形要素が前記保持波形要素で保持される状態を終端とする波形要素であり、
前記非選択にする信号は、前記共通駆動波形の内の、少なくとも、前記駆動パルスの前記第1段膨張波形要素の途中までを含む波形部分を非選択にする信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項5】
前記駆動パルスは、前記圧力室を膨張させる第1段膨張波形要素と、前記第1段膨張波形要素で膨張された状態を保持する第1段保持波形要素と、前記第1段保持波形要素で保持された状態から前記圧力室を膨張させる第2段膨張波形要素と、前記第2段膨張波形要素で膨張された状態を保持する第2段保持波形要素と、前記第2段保持波形要素で保持された状態から前記圧力室を膨張させる第3段膨張波形要素と、含み、
前記第3段膨張波形要素が前記保持波形要素で保持される状態を終端とする波形要素であり、
前記非選択にする信号は、前記共通駆動波形の内の、少なくとも、前記駆動パルスの前記第2段保持波形要素の途中までを含む波形部分を非選択にする信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項6】
前記駆動パルスは、前記圧力室を膨張させる第1段膨張波形要素と、前記第1段膨張波形要素で膨張された状態を保持する第1段保持波形要素と、前記第1段保持波形要素で保持された状態から前記圧力室を膨張させる第2段膨張波形要素と、
前記第1段膨張波形要素の前で、前記圧力室を収縮させる前収縮波形要素と、前記前収縮波形要素で収縮された状態を保持する前保持波形要素とを含み、
前記第1段膨張波形要素は前記前保持波形要素で保持された状態から前記圧力室を膨張させる波形であり、
前記第2段膨張波形要素が前記保持波形要素で保持される状態を終端とする波形要素であり、
前記非選択にする信号は、前記共通駆動波形の内の、少なくとも、前記駆動パルスの前記前保持波形要素の途中までを含む波形部分を非選択にする信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項7】
前記駆動パルスは、前記圧力室を多段で膨張させる複数の膨張波形要素と、最終段の前記膨張波形要素で膨張された状態を保持する保持波形要素と、含み、
前記最終段の膨張波形要素が前記保持波形要素で保持される状態を終端とする波形要素であり、
前記非選択にする信号は、前記共通駆動波形の内の、少なくとも、前記駆動パルスの前記最終段の膨張波形要素より前の波形要素の途中までを含む波形部分を非選択にする信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項8】
複数種類の前記選択信号があり、
前記選択信号を出力する手段は、1つの前記ノズルについて、前記複数種類の選択信号の内の1つを出力し、
前記複数種類の選択信号には、前記駆動パルスの全部を選択する信号を含む
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項9】
複数種類の前記選択信号があり、
前記選択信号を出力する手段は、1つの前記ノズルについて、前記複数種類の選択信号の内の1つを出力し、
前記複数種類の選択信号には、前記駆動パルスの一部の波形部分を非選択にし、かつ、前記非選択にする前記波形部分が異なる信号を含む
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項10】
駆動周波数によって前記選択信号が異なる
ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項11】
吐出モードによって前記選択信号が異なる
ことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項12】
液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出させる駆動パルスを含む共通駆動波形を生成出力する駆動波形生成手段と、
前記共通駆動波形の内、前記液体吐出ヘッドの圧力発生素子に与える前記駆動パルスの波形部分を選択する選択手段と、
前記選択手段で選択する波形部分を指定する選択信号を出力する手段と、を備え、
前記駆動パルスは、少なくとも、前記液体吐出ヘッドの圧力室を膨張させる膨張波形要素と、前記膨張波形要素で膨張された状態を保持する保持波形要素とを含み、
前記選択信号には、前記保持波形要素で保持される状態を終端とする前記膨張波形要素よりも前の波形部分の少なくとも一部を非選択にする信号を含む
ことを特徴とするヘッド駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体を吐出する装置、ヘッド駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドは、製造上のばらつきなどにより、ヘッド間、あるいは、ノズル間で、液体の吐出速度、吐出量にばらつきが生じる。
【0003】
従来、共通駆動波形における圧力室を膨張させる膨張波形要素(立下り波形要素)から膨張状態を保持する保持波形要素までの期間におけるトリミング範囲を調整するようにしたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2018-509320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ヘッドの固有振動周期が短くなると、圧力室を膨張させた状態を保持する保持波形要素の期間も短くなる。そのため、特許文献1に開示の構成にあっては、圧力室を膨張させた状態を保持する保持波形要素をトリミングすることができなくなり、吐出特性のばらつきを低減できなくなるという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、吐出特性のばらつきを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体を吐出する装置は、
液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出させる駆動パルスを含む共通駆動波形を生成出力する駆動波形生成手段と、
前記共通駆動波形の内、前記液体吐出ヘッドの圧力発生素子に与える前記駆動パルスの波形部分を選択する選択手段と、
前記選択手段で選択する波形部分を指定する選択信号を出力する手段と、を備え、
前記駆動パルスは、少なくとも、前記液体吐出ヘッドの圧力室を膨張させる膨張波形要素と、前記膨張波形要素で膨張された状態を保持する保持波形要素とを含み、
前記選択信号には、前記保持波形要素で保持される状態を終端とする前記膨張波形要素よりも前の波形部分の少なくとも一部を非選択にする信号を含む
構成とした。
【0008】
本発明によれば、吐出特性のばらつきを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の概略説明図である。
図2】同印刷装置の吐出ユニットの平面説明図である。
図3】ヘッドの一例のノズル配列方向と直交する方向の断面説明図である。
図4】同じくノズル配列方向に沿う断面説明図である。
図5】同印刷装置のヘッド駆動制御装置に係る部分のブロック説明図である。
図6】ヘッドドライバの共通駆動波形の選択を行う部分の異なる例の説明図である。
図7】本発明の第1実施形態における駆動波形及び選択信号の説明に供する説明図である。
図8】同じく選択信号でトリミングしたときの吐出速度(滴速度)の変化量の一例の説明図である。
図9】比較例1の駆動波形及び選択信号の説明に供する説明図である。
図10】本発明の第2実施形態における駆動波形及び選択信号の説明に供する説明図である。
図11】同実施形態の作用説明に供する2つのノズルと選択信号の関係の一例を説明する説明図である。
図12】同じく補正前後の吐出速度の説明に供する説明図である。
図13】同実施形態におけるグループ分けによる補正の説明に供する説明図である。
図14】本発明の第3実施形態における駆動波形及び選択信号の説明に供する説明図である。
図15】本発明の第4実施形態における駆動波形及び選択信号の説明に供する説明図である。
図16】本発明の第5実施形態における駆動波形及び選択信号の説明に供する説明図である。
図17】同実施形態のトリミング波形PA、PBによる吐出速度の補正量の一例の説明図である。
図18】本発明の第6実施形態における異なる駆動条件とノズル位置に対応する吐出滴速度のばらつきの関係の一例を示す説明図である。
図19】同じく駆動条件と選択信号との関係の一例を示す説明図である。
図20】同じく駆動条件と選択信号との関係の他の例を示す説明図である。
図21】本発明の第7実施形態における駆動波形及び選択信号の説明に供する説明図である。
図22】本発明の第8実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の概略説明図である。
図23】同印刷装置の吐出ユニットの説明図である。
図24】同実施形態におけるヘッドモジュールの一例の分解斜視説明図である。
図25】同ヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視説明図である。
図26】同実施形態におけるヘッドの一例のノズル面側から見た外観斜視説明図である。
図27】同じくノズル面と反対側から見た外観斜視説明図である。
図28】同じく分解斜視説明図である。
図29】同じく流路構成部材の分解斜視説明図である。
図30図29の要部拡大斜視説明図である。
図31】同じく流路部分の断面斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置について図1及び図2を参照して説明する。図1は同印刷装置の概略説明図、図2は同印刷装置の吐出ユニットの平面説明図である。
【0011】
印刷装置500は、シート材Pを搬入する搬入部510と、前処理部520と、印刷部530と、乾燥部540と、搬出部550とを備えている。印刷装置500は、搬入部510から搬入(供給)されるシート材Pに対し、前処理手段である前処理部520で必要に応じて前処理液を付与(塗布)し、印刷部530で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部540でシート材Pに付着した液体を乾燥させた後、シート材Pを搬出部550に排出する。
【0012】
搬入部510は、複数のシート材Pを収容する搬入トレイ511(下段搬入トレイ511A、上段搬入トレイ511B)と、搬入トレイ511からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置512(512A、512B)とを備え、シート材Pを前処理部520に供給する。
【0013】
前処理部520は、例えばインクを凝集させ、裏写りを防止する作用効果を有する処理液をシート材Pの印刷面に付与する処理液付与手段である塗布部521などを備えている。
【0014】
印刷部530は、シート材Pを周面に担持して回転する担持部材(回転部材)であるドラム531と、ドラム531に担持されたシート材Pに向けて液体を吐出する液体吐出部532を備えている。
【0015】
また、印刷部530は、前処理部520から送り込まれたシート材Pを受け取ってドラム531との間でシート材Pを渡す渡し胴534と、ドラム531によって搬送されたシート材Pを受け取って反転機構部560に渡す受け渡し胴535を備えている。
【0016】
前処理部520から印刷部530へ搬送されてきたシート材Pは、渡し胴534に設けられた把持手段(シートグリッパ)によって先端が把持され、渡し胴534の回転に伴って搬送される。渡し胴534により搬送されたシート材Pは、ドラム531との対向位置でドラム531へ受け渡される。
【0017】
ドラム531の表面にも把持手段(シートグリッパ)が設けられており、シート材Pの先端が把持手段(シートグリッパ)によって把持される。ドラム531の表面には、複数の吸引穴が分散して形成され、吸引手段によってドラム531の所要の吸引穴から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。
【0018】
そして、渡し胴534からドラム531へ受け渡されたシート材Pは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸引手段による吸い込み気流によってドラム531上に吸着担持され、ドラム531の回転に伴って搬送される。
【0019】
液体吐出部532は、液体吐出手段である吐出ユニット533(533A~533D)を備えている。例えば、吐出ユニット533Aはシアン(C)の液体を、吐出ユニット533Bはマゼンタ(M)の液体を、吐出ユニット533Cはイエロー(Y)の液体を、吐出ユニット533Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出する。また、その他、白色、金色(銀色)などの特殊な液体の吐出を行う吐出ユニットを使用することもできる。
【0020】
吐出ユニット533は、例えば、図2に示すように、複数のノズル11を配列したノズル列を複数列有する複数の液体吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)1をベース部材103に千鳥状に配置したフルライン型ヘッドを含むヘッドモジュール100を有している。
【0021】
液体吐出部532の各吐出ユニット533は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。ドラム531に担持されたシート材Pが液体吐出部532との対向領域を通過するときに、吐出ユニット533から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0022】
反転機構部560は、受け渡し胴535から渡されたシート材Pに対して両面印刷をおこなうときに、スイッチバック方式で、シート材Pを反転する機構であり、反転されたシート材Pは印刷部530の搬送経路561を通じて渡し胴534よりも上流側に逆送される。
【0023】
乾燥部540は、印刷部530でシート材P上に付着した液体を乾燥させる。これにより液体中の水分等の液分が蒸発し、シート材P上に液体中に含まれる着色剤が定着し、また、シート材Pのカールが抑制される。
【0024】
搬出部550は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ551を備えている。乾燥部540から搬送されてくるシート材Pは、搬出トレイ551上に順次積み重ねられて保持される。
【0025】
なお、本実施形態では、シート材がカットシート材である例で説明しているが、連帳紙、ロール紙などの連続体(ウェブ)を使用する装置、壁紙などのシート材を使用する装置などにも本発明を適用することができる。
【0026】
次に、ヘッドの一例について図3及び図4を参照して説明する。図3は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図、図4は同じくノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【0027】
本実施形態のヘッド1は、ノズル板10と、流路板20と、壁面部材としての振動板部材30とを積層接合している。そして、振動板部材30の振動領域(ダイアフラム領域、振動板)31を変位させる圧電アクチュエータ40と、ヘッド1のフレーム部材を兼ねている共通流路部材50とを備えている。
【0028】
ノズル板10は、複数のノズル11を配列したノズル列を有している。
【0029】
流路板20は、複数のノズル11に通じる複数の圧力室21、各圧力室21にそれぞれ通じる流体抵抗部を兼ねる個別供給流路22、1又は複数の個別供給流路22に通じる1又は複数の中間供給流路23を形成している。隣り合う圧力室21、21は隔壁28にて隔てられている。
【0030】
振動板部材30は、流路板20の圧力室21の壁面を形成する変位可能な複数の振動領域31を有する。ここでは、振動板部材30は2層構造(限定されない)とし、流路板20側から薄肉部を形成する第1層30aと、厚肉部を形成する第2層30bで構成されている。
【0031】
そして、薄肉部である第1層30aで圧力室21に対応する部分に変形可能な振動領域31を形成している。振動領域31内には、第2層30bで圧電アクチュエータ40と接合する厚肉部である島状の凸部31aを形成している。また、振動板部材30の圧力室間隔壁28に対応する部位に第2層30bで厚肉部である接合部38を形成している。
【0032】
そして、振動板部材30の圧力室21とは反対側に、振動板部材30の振動領域31を変形させる圧力発生素子(駆動手段、アクチュエータ手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ40を配置している。
【0033】
この圧電アクチュエータ40は、ベース部材44上に接合した圧電部材41にハーフカットダイシングによって溝加工をして、ノズル配列方向において、所要数の柱状の圧電素子42と支柱部43を所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0034】
そして、圧電素子42は、駆動電圧を与えることで振動領域31を変位させる圧電素子である。支柱部43は、駆動電圧を与えないで圧力室21,21間の隔壁28を支える圧電素子である。
【0035】
そして、圧電素子42は、振動板部材30の振動領域31に形成した厚肉部である島状の凸部31aに接着剤で接合している。一方、支柱部43は、振動板部材30の隔壁28に対応する部位に設けた厚肉部である接合部38に接着剤で接合している。
【0036】
圧電部材41は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極(端面電極)に接続され、外部電極にフレキシブル配線部材45が接続される。
【0037】
共通流路部材50は共通供給流路51を形成している。共通供給流路51は、振動板部材30に設けたフィルタ部39を介して中間供給流路23に通じている。
【0038】
このヘッド1においては、例えば圧電素子42を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子42が収縮し、振動板部材30の振動領域31が引かれて圧力室21の容積が膨張することで、圧力室21内に液体が流入する。
【0039】
その後、圧電素子42に印加する電圧を上げて圧電素子42を積層方向に伸長させ、振動板部材30の振動領域31をノズル11に向かう方向に変形させて圧力室21の容積を収縮させることにより、圧力室21内の液体が加圧され、ノズル11から液体が吐出される。
【0040】
次に、ヘッドを駆動制御するヘッド駆動制御装置に係る部分について図5のブロック説明図を参照して説明する。
【0041】
ヘッド駆動制御装置400は、ヘッド制御部401と、駆動波形生成手段を構成する駆動波形生成部402及び波形データ格納部403と、ヘッドドライバ410と、吐出タイミングを生成するための吐出タイミング生成部404を備えている。
【0042】
ヘッド制御部401は、吐出タイミングパルスstbを受信すると、共通駆動波形の生成のトリガーとなる吐出同期信号LINEを駆動波形生成部402へ出力する。また、ヘッド制御部401は、吐出同期信号LINEからの遅延量に当たる吐出タイミング信号CHANGEを駆動波形生成部402へ出力する。
【0043】
駆動波形生成部402は、吐出同期信号LINEと、吐出タイミング信号CHANGEに基づいたタイミングで共通駆動波形Vcomを生成出力する。
【0044】
ヘッド制御部401は、ヘッドドライバ410のアナログスイッチASで構成される選択手段で選択する波形部分を指定する選択信号を出力する手段を兼ねている。
【0045】
ヘッド制御部401は、画像データを受け取り、この画像データをもとに、ヘッド1の各ノズル11から吐出させる液体の大きさ、ノズル11の特性ばらつきに応じて、各ノズル11毎に、共通駆動波形Vcomの所定の所要の波形部分を選択するための選択信号MNを生成する。したがって、選択信号MNは、ノズル11の数だけ出力される。また、選択信号MNは吐出タイミング信号CHANGEに同期したタイミングの信号である。
【0046】
そして、ヘッド制御部401は、画像データSDと、同期クロック信号SCKと、画像データのラッチを命令するラッチ信号LTと、生成した選択信号MNとを、ヘッドドライバ410に転送する。
【0047】
ヘッドドライバ410は、ヘッド制御部401からの各種信号に基づいて、共通駆動波形Vcomの内、液体吐出ヘッド1の各圧力発生素子(圧電素子42)に与える波形部分を選択する選択手段である。
【0048】
このヘッドドライバ410は、シフトレジスタ411、ラッチ回路412、階調デコーダ413、レベルシフタ414、及びアナログスイッチアレイ415を備える。
【0049】
シフトレジスタ411は、ヘッド制御部401から転送される画像データSD及び同期クロック信号SCKを入力する。ラッチ回路412は、シフトレジスタ411の各レジスト値を、ヘッド制御部401から転送されるラッチ信号LTによってラッチする。
【0050】
階調デコーダ413は、ラッチ回路412でラッチした値(画像データSD)と各ノズル11毎の選択信号MNとをデコードして結果を出力する。レベルシフタ414は、階調デコーダ413のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチアレイ415のアナログスイッチASが動作可能なレベルへとレベル変換する。
【0051】
アナログスイッチアレイ415のアナログスイッチASは、レベルシフタ414を介して与えられる階調デコーダ413の出力でオン/オフするスイッチであり、共通駆動波形Vcomの通過/非通過(遮断)を行う手段である。
【0052】
このアナログスイッチASは、ヘッド1が備えるノズル11毎に設けられ、各ノズル11に対応する圧電素子42の個別電極に接続されている。また、アナログスイッチASには、駆動波形生成部402からの共通駆動波形Vcomが入力されている。また、上述したように選択信号MNのタイミングが共通駆動波形Vcomのタイミングと同期している。
【0053】
したがって、レベルシフタ414を介して与えられる階調デコーダ413の出力に応じて適切なタイミングでアナログスイッチASのオン/オフが切り替えられることにより、共通駆動波形Vcomから各ノズル11に対応する圧電素子42に印加される波形部分が選択される。その結果、ノズル11から吐出される滴の大きさなどが制御される。
【0054】
吐出タイミング生成部404は、ドラム531の回転量を検出するロータリエンコーダ405の検出結果から、シート材Pが所定量移動される毎に吐出タイミングパルスstbを生成して出力する。ロータリエンコーダ405は、ドラム531と共に回転するエンコーダホイールと、エンコーダホイールのスリットを読取るエンコーダセンサで構成される。
【0055】
次に、ヘッドドライバの共通駆動波形の選択を行う部分の異なる例について図6を参照して説明する。図6は同ヘッドドライバのスイッチ部分の説明図である。
【0056】
図6(a)の第1例では、共通駆動波形Vcomを入力する選択スイッチSa(Sa1、Sa2・・・)を介して圧電素子42に駆動波形を印加する。
【0057】
選択スイッチSaを選択信号MNによってオン・オフすることで、共通駆動波形Vcomの所要の波形部分が切り出されて圧電素子42に印加波形として印加される。
【0058】
図6(a)の第2例では、共通駆動波形Vcomを入力する滴量スイッチSb(Sb1、Sb2・・・)とトリミング選択スイッチSc(Sc1、Sc2・・・)の並列回路を介して圧電素子42に駆動波形を印加する。
【0059】
滴量スイッチSbは滴量(大滴、中滴、小滴)に応じてオン・オフさせる。
【0060】
トリミング選択スイッチScを選択信号MNによってオン・オフすることで、共通駆動波形Vcomの所要の波形部分が切り出されて圧電素子42に印加波形として印加される。
【0061】
次に、本発明の第1実施形態における駆動波形及び選択信号について図7を参照して説明する。図7は同実施形態における共通駆動波形、選択信号及び圧力発生素子に与えられる印加波形(トリミング波形)の説明に供する説明図である。
【0062】
図7(a)に示すように、本実施形態の駆動波形Vcomは、圧力室21を加圧して液体を吐出させる吐出パルスとしての駆動パルスPを含んでいる。駆動パルスPは、例えば、小さな滴(小滴)を吐出させるパルスである(小滴のパルスに限定されない。以下の実施形態でも同じ)。
【0063】
駆動パルスPは、圧力室21を膨張させる膨張波形要素aと、膨張波形要素aで膨張された圧力室21の状態を保持する保持波形要素bと、保持波形要素bで保持された状態から圧力室21を収縮させて液体を吐出させる収縮波形要素cとで構成されている。
【0064】
膨張波形要素aは、本実施形態では、2段階膨張を行う波形である。膨張波形要素aは、圧力室21を膨張させる第1段膨張波形要素a1と、第1段膨張波形要素a1で膨張された状態を保持する第1段保持波形要素a2と、第1段保持波形要素a2で保持された状態から圧力室21を更に膨張させる第2段膨張波形要素a3とを含む。
【0065】
第1段膨張波形要素a1は、中間電位(又は基準電位)V1との電位差ΔVの電位V2(V1<V2)まで立ち下がる。第1段保持波形要素a2は、電位V2を保持する。第2段膨張波形要素a3は、電位V2から電位V3(V3<V2)まで立ち下がる。
【0066】
保持波形要素bは、第2段膨張波形要素a3の終端電位である電位V3を保持する。つまり、本実施形態では、第2段膨張波形要素a3が保持波形要素bで保持される状態(電位)を終端とする膨張波形要素となる。
【0067】
収縮波形要素cは、保持された電位V3から中間電位V1まで立ち上がる。
【0068】
一方、ヘッド制御部401から出力される駆動パルスPを選択する選択信号MNは、図6(b)、(d)に示すように、複数種類(ここでは2つ)の選択信号A、Nを含んでいる。ヘッド制御部401は、ノズル11毎に予め定められた選択信号A、Nのいずれか1つを選択信号MNとして出力する。
【0069】
本実施形態では、選択信号A、Nが「ON」であるとき、アナログスイッチASが「ON」状態になって、共通駆動波形VcomはアナログスイッチASを通過する。選択信号A、Nが「OFF」であるとき、アナログスイッチASが「OFF」状態になって、共通駆動波形VcomはアナログスイッチASを通過しない(非通過となる)ものとしている。つまり、選択信号A、Nを「ON」にすることで、アナログスイッチAS(選択手段)で選択する波形部分を指定する。なお、選択信号A、Nは、例えば「H」のとき「OFF」、「L」のとき「OFF」にする2値信号であるが、図7ではアナログスイッチASの「ON」、「OFF」で表記する。
【0070】
選択信号Aは、図7(b)に示すように、時点t0から「ON」になり、中間電位保持波形要素dの途中(時点t1)で「ON」から「OFF」に遷移し、第1段保持波形要素a2の途中(時点t2)で「OFF」から「ON」に遷移する。
【0071】
つまり、選択信号Aは、保持波形要素bで保持される状態(電位V3)を終端とする第2段膨張波形要素a3よりも前の波形部分である、第1段保持波形要素a2の途中よりも前の波形部分の一部を非選択にする。
【0072】
このように、選択信号Aが中間電位保持波形要素dの途中で「ON」から「OFF」に遷移することで、共通駆動波形Vcomが非通過になると、圧電素子42の印加電圧はそのときの電位(中間電位)V1に保持される。そして、選択信号Aが「OFF」から「ON」に遷移したとき、遷移したときの電位である第1段保持波形要素a2の電位V2まで立ち下がることになる。
【0073】
したがって、選択信号Aが出力されたときには、図7(c)に示すように、中間電位保持波形要素dが時点t2まで延び、時点t2から第1段膨張波形要素a1が開始されるトリミング波形PBが印加波形として圧電素子42に与えられる。
【0074】
この場合、選択信号AをONにする時点t2は、第1段保持波形要素a2の期間Twにおいて、ノズル11毎に最適なタイミングに設定することができる。これにより、ノズル11毎に、必要な補正量に応じたトリミング波形を印加波形として印加することができる。
【0075】
このとき、共通駆動波形Vcomの駆動パルスPの直前の中間電位V1の波形部分を利用してトリミングを行うことで、固有周期が短いヘッドに対しても吐出特性のばらつきの補正が可能である。
【0076】
一方、選択信号Nは、図7(d)に示すように、時点t0から「ON」になる信号であり、「OFF」にはならない。つまり、選択信号Nは、選択手段としてのアナログスイッチASが駆動パするPの全部を選択するように指定する。したがって、選択信号Nが出力されたときには、駆動パルスPの全部が通過し、圧電素子42には共通駆動波形Vcomがそのまま印加波形PNとして与えられる。
【0077】
そこで、選択信号Nで選択した印加波形PN又は選択信号Aで選択した印加波形PAを、ノズル11の吐出特性に応じて印加することで、吐出特性のばらつきを低減できる。なお、前述したように、選択信号AとしてONにする時点t2が異なる2以上に選択信号を使用することもでき、この場合には、選択信号Nを使用しないでもよい。
【0078】
次に、選択信号Aでトリミングしたときの吐出速度(滴速度)の変化量の一例について図8を参照して説明する。図8は同選択信号Aを「OFF」から「ON」に遷移する時点t2を変化させて第1段保持波形要素a2の期間Twを変化させたときの吐出速度の変化量(Δ滴速度)の一例の説明図である。
【0079】
図8では、図7の選択信号Aを「ON」から「OFF」に遷移する時点t1=0として、時点t2を横軸に取っている。共通駆動波形Vcomの駆動パルスPの第1段保持波形要素a2の期間Twは、圧力室21の固有振動周期の1/2としている。ただし、期間Twの長さは、必ずしも圧力室21の固有振動周期の1/2にする必要はなく、それ以上長くても短くても良いが、圧力室21の固有振動周期の1/2~1倍程度とすることが好ましい。
【0080】
ここで、時点t2を早くするほど、選択信号Aが「ON」になっている時間が短くなり、第1段保持波形要素a2の期間Twが長くなる。第1段保持波形要素a2の期間Twが長くなるほど、吐出速度は遅くなり、滴速度の変化量(Δ滴速度)はマイナス側に大きくなる。
【0081】
一方、時点t2を遅くするほど、選択信号Aが「ON」になっている時間が長くなり、第1段保持波形要素a2の期間Twが短くなる。第1段保持波形要素a2の期間Twが短くなるほど、吐出速度は速くなり、滴速度の変化量(Δ滴速度)はプラス側に大きくなる。
【0082】
これにより、選択信号Aを「OFF」から「ON」に遷移させるタイミング(時点t2)を異ならせることで、吐出速度を変化させることができる。したがって、ノズル11の吐出速度の特性に応じた時点t2を有する選択信号A与えることで、吐出速度のばらつきを低減することができる。
【0083】
ここで、比較例1について図9を参照して説明する。図9は比較例1における共通駆動波形、選択信号及び圧力発生素子に与えられる印加波形(トリミング波形)の説明に供する説明図である。
【0084】
この比較例1では、選択信号は、図9(b)に示すように、膨張波形要素aの第1段保持波形要素a2の途中で「ON」から「OFF」に遷移し、保持波形要素bの途中で「OFF」から「ON」に遷移する。
【0085】
これにより、図9(a)に示す共通駆動波形Vcomの駆動パルスPがトリミングされて、図9(c)に示すように、保持波形要素bの幅Pwが変化したトリミング波形(印加波形)が得られる。
【0086】
ところで、ラインプリンタなどの印刷速度の高速化に伴って、ヘッドを高速駆動するために、ヘッドの固有周期は短くなる傾向がある。また、高画質化の目的で吐出滴を微小滴化しようとする場合にも、ヘッドの固有周期は短くなる傾向がある。
【0087】
このような固有周期が短いヘッドに対して、比較例1のようなトリミングを行うと、スイッチングに必要な時間、電圧変位に必要な時間を差し引くと、保持波形要素bの期間(幅Pw)に十分な時間を取ることができなくなる。
【0088】
例えば、固有周期が3μsec程度のヘッドの場合、膨張波形要素aの開始から収縮波形要素cの終了までの時間は1.5~2.5μsec程度しかないため、幅Pwに使える時間はほとんど残らず、吐出特性ばらつきの補正ができなくなる。
【0089】
これに対し、本実施形態では、最も膨張した状態を保持する保持波形要素bにかかるトリミングを行わないので、固有周期が短いヘッドについてもトリミングを行って吐出特性のばらつきを低減することができる。
【0090】
次に、本発明の第2実施形態について図10を参照して説明する。図10は同実施形態における共通駆動波形、選択信号の説明に供する説明図である。
【0091】
本実施形態では、共通駆動波形Vcom、駆動パルスPの構成は、前記第1実施形態と同様である。ヘッド制御部401は、選択する波形部分が異なる複数種類(ここでは、2つ)のヘッド選択信号A又はBを、ノズル11毎に出力する。
【0092】
選択信号Aは、時点t0から「ON」になり、中間電位保持波形要素dの途中(時点t1)で「ON」から「OFF」に遷移し、第1段保持波形要素a2の途中(時点t2a)で「OFF」から「ON」に遷移する。
【0093】
選択信号Bは、時点t0から「ON」になり、中間電位保持波形要素dの途中(時点t1)で「ON」から「OFF」に遷移し、第1段保持波形要素a2の途中(時点t2b:時点t2aより遅い時点)で「OFF」から「ON」に遷移する。
【0094】
つまり、選択信号A、Bは、いずれも、保持波形要素bで保持される状態(電位V3)を終端とする第2段膨張波形要素a3よりも前の波形部分である、第1段保持波形要素a2の途中よりも前の波形部分の一部を非選択にする。
【0095】
この場合、選択信号Bにおける第1段保持波形要素a2の期間Twは、選択信号Aにおける第1段保持波形要素a2の期間Twよりも短くなる。したがって、前述した図8で説明したように、選択信号Bでトリミングした印加波形の方が、選択信号Aでトリミングした印加波形よりも、吐出速度が速くなる。
【0096】
次に、本実施形態の作用の一例について図11及び図12を参照して説明する。図11は2つのノズルと選択信号の関係の一例を説明する説明図、図12は補正前後の吐出速度の説明に供する説明図である。
【0097】
ここで、図12に示すように、2つのノズルn1、n2からそれぞれ液滴D1、D2が吐出されるものとする。2つのノズルn1、n2に対して、同じ駆動パルスPを与えた場合、図12(a)に示すように、ノズルn1の液滴D1の吐出速度が、ノズルn2の液滴D2の吐出速度より速くなる。
【0098】
そこで、図11に示すように、各ノズルn1、n2についてそれぞれ選択信号A、Bを割り当てる。吐出速度が相対的に速い特性を有するノズルn1には選択信号Aでトリミングした印加波形を印加し、吐出速度が相対的に遅い特性を有するノズルn2には選択信号Bでトリミングした印加波形を印加する。
【0099】
これにより、図12(b)に示すように、各ノズルn1、n2から吐出される液滴D1、D2の吐出速度のばらつきが低減して、ほぼ同じ(同一を含む。)吐出速度になるように調整(補正)することができる。
【0100】
なお、本実施形態では、第1実施形態における選択信号N(駆動パルスPのすべてを選択する選択信号)について説明していないが、同選択信号Nを使用することもできる。
【0101】
次に、本実施形態におけるグループ分けによる補正について図13を参照して説明する。図13はトリミングを行う選択信号が「OFF」から「ON」に遷移する時点t2を変化させて第1段保持波形要素a2の期間Twを変化させたときの吐出速度の変化量(Δ滴速度)と期間Twのグループ分けの一例の説明図である。
【0102】
ここで、液体吐出ヘッド1が有する複数のノズル11について吐出特性のばらつきに応じて複数のグループに分ける。一方、図13に示すように、第1段保持波形要素a2の期間TwについてはN分割し、「OFF」から「ON」に遷移する時点t2が異なるN個の選択信号を設定する。
【0103】
そして、各ノズル11のグループの吐出特性に応じた吐出速度の補正量が得られる第1段保持波形要素a2の期間Tw(選択信号を「OFF」から「ON」にするタイミング)を割り当てる。
【0104】
これにより、すべてのノズル11の吐出特性のばらつきを低減することができる。
【0105】
次に、本発明の第3実施形態について図14を参照して説明する。図14は同実施形態における共通駆動波形、選択信号及び圧力発生素子に与えられる印加波形(トリミング波形)の説明に供する説明図である。
【0106】
図14(a)に示すように、本実施形態の駆動波形Vcomは、圧力室21を加圧して液体を吐出させる吐出パルスとしての駆動パルスPを含んでいる。駆動パルスPは、例えば、小さな滴(小滴)を吐出させるパルスである。
【0107】
駆動パルスPは、圧力室21を膨張させる膨張波形要素aと、膨張波形要素aで膨張された圧力室21の状態を保持する保持波形要素bと、保持波形要素bで保持された状態から圧力室21を収縮させて液体を吐出させる収縮波形要素cとを含んでいる。
【0108】
また、駆動パルスPは、膨張波形要素aの前に、圧力室21を収縮させる前収縮波形要素fと、前収縮波形要素fで収縮された状態を保持する前保持波形要素gとを含み、膨張波形要素aは前保持波形要素gで保持された状態から圧力室21を膨張させる。
【0109】
前収縮波形要素fは、中間電位(又は基準電位)V1から電位V2(V2>V1)まで立ち上がる。前保持波形要素gは、前収縮波形要素fの終端電位である電位V2を保持する。
【0110】
膨張波形要素aは、本実施形態では、1段階膨張を行う波形であり、前保持波形要素gで保持された電位V2を開始電位として電位V3まで立ち下がる。
【0111】
保持波形要素bは、段膨張波形要素aの終端電位である電位V3を保持する。つまり、本実施形態では、膨張波形要素aが保持波形要素bで保持される状態(電位)を終端とする膨張波形要素となる。
【0112】
収縮波形要素cは、保持された電位V3から中間電位V1まで立ち上がる。
【0113】
一方、ヘッド制御部401は、図14(b)に示すように、駆動パルスPを選択する選択信号MNとして選択信号Aを出力する。なお、第1実施形態と同様に、駆動パルスPを全部選択する選択信号Nも併せて出力することができる。
【0114】
選択信号Aは、時点t0から「ON」になり、中間電位保持波形要素dの途中(時点t1)で「ON」から「OFF」に遷移し、前保持波形要素gの途中(時点t2)で「OFF」から「ON」に遷移する。
【0115】
つまり、選択信号Aは、保持波形要素bで保持される状態(電位V3)を終端とする膨張波形要素aよりも前の波形部分である、前保持波形要素gの途中よりも前の波形部分の一部を非選択にする。
【0116】
したがって、選択信号Aが出力されたときには、図14(c)に示すように、中間電位保持波形要素dが時点t2まで延び、時点t2から前収縮波形要素fが開始されて電位V2に立ち上がり、前保持波形要素gで電位V2が保持されるトリミング波形PAが印加波形として圧電素子42に与えられる。
【0117】
ここで、選択信号Aが「OFF」から「ON」に遷移する時点t2を変化させることで、前保持波形要素gの期間Twの長さが変化し、吐出速度が変化する。
【0118】
そこで、選択信号Aが「OFF」から「ON」に遷移する時点t2を、ノズル11毎に最適なタイミングに設定することができる。これにより、ノズル11毎に、必要な補正量に応じたトリミング波形を印加波形として印加することができる。
【0119】
次に、本発明の第4実施形態について図15を参照して説明する。図15は同実施形態における共通駆動波形、選択信号及び圧力発生素子に与えられる印加波形(トリミング波形)の説明に供する説明図である。
【0120】
図15(a)に示すように、本実施形態の駆動波形Vcomは、圧力室21を加圧して液体を吐出させる吐出パルスとしての駆動パルスPを含んでいる。駆動パルスPは、例えば、小さな滴(小滴)を吐出させるパルスである。
【0121】
駆動パルスPは、圧力室21を膨張させる膨張波形要素aと、膨張波形要素aで膨張された圧力室21の状態を保持する保持波形要素bと、保持波形要素bで保持された状態から圧力室21を収縮させて液体を吐出させる収縮波形要素cとを含んでいる。
【0122】
膨張波形要素aは、本実施形態では、圧力室21を膨張させる第1段膨張波形要素a1と、第1段膨張波形要素a1に連続し、第1段膨張波形要素a1で膨張された状態から圧力室21を更に膨張させる第2段膨張波形要素a3とを含む。つまり、前記第1実施形態の第1段保持波形要素a2に相当する保持期間のない波形である。
【0123】
第1段膨張波形要素a1は、中間電位(又は基準電位)V1から電位V2(V1<V2)まで立ち下がる。第2段膨張波形要素a3は、電位V2から電位V3(V3<V2)まで立ち下がる。
【0124】
保持波形要素bは、段膨張波形要素aの終端電位である電位V3を保持する。つまり、本実施形態では、第2段膨張波形要素a3が保持波形要素bで保持される状態(電位)を終端とする膨張波形要素となる。
【0125】
収縮波形要素cは、保持された電位V3から中間電位V1まで立ち上がる。
【0126】
一方、ヘッド制御部401は、図15(b)に示すように、駆動パルスPを選択する選択信号MNとして選択信号Aを出力する。なお、第1実施形態と同様に、駆動パルスPを全部選択する選択信号Nも併せて出力することができる。
【0127】
選択信号Aは、時点t0から「ON」になり、中間電位保持波形要素dの途中(時点t1)で「ON」から「OFF」に遷移し、第1段膨張波形要素a1の途中(時点t2)で「OFF」から「ON」に遷移する。
【0128】
つまり、選択信号Aは、保持波形要素bで保持される状態(電位V3)を終端とする段膨張波形要素a2よりも前の波形部分である、第1段膨張波形要素a1の途中よりも前の波形部分の一部を非選択にする。
【0129】
したがって、選択信号Aが出力されたときには、図15(c)に示すように、中間電位保持波形要素dが時点t2まで延び、時点t2から第1段膨張波形要素a1の電位まで立ち下がり、第1段膨張波形要素a1の電圧変化を開始するトリミング波形PAが印加波形として圧電素子42に与えられる。
【0130】
ここで、選択信号Aが「OFF」から「ON」に遷移する時点t2を変化させることで、前保持波形要素gの期間Twの長さが変化し、吐出速度が変化する。
【0131】
そこで、選択信号Aが「OFF」から「ON」に遷移する時点t2を、ノズル11毎に最適なタイミングに設定することができる。これにより、ノズル11毎に、必要な補正量に応じたトリミング波形を印加波形として印加することができる。
【0132】
次に、本発明の第5実施形態について図16を参照して説明する。図16は同実施形態における共通駆動波形、選択信号及び圧力発生素子に与えられる印加波形(トリミング波形)の説明に供する説明図である。
【0133】
図16(a)に示すように、本実施形態の駆動波形Vcomは、圧力室21を加圧して液体を吐出させる吐出パルスとしての駆動パルスPを含んでいる。駆動パルスPは、例えば、小さな滴(小滴)を吐出させるパルスである。
【0134】
駆動パルスPは、圧力室21を膨張させる膨張波形要素aと、膨張波形要素aで膨張された圧力室21の状態を保持する保持波形要素bと、保持波形要素bで保持された状態から圧力室21を収縮させて液体を吐出させる収縮波形要素cとを含んでいる。
【0135】
膨張波形要素aは、本実施形態では、3段階膨張を行う波形である。膨張波形要素aは、圧力室21を膨張させる第1段膨張波形要素a1と、第1段膨張波形要素a1で膨張された状態を保持する第1段保持波形要素a2と、第1段保持波形要素a2で保持された状態から圧力室21を膨張させる第2段膨張波形要素a3と、第2段膨張波形要素a3で膨張された状態を保持する第2段保持波形要素a4と、第2段保持波形要素a4で保持された状態から圧力室21を膨張させる第3段膨張波形要素a5とを含んでいる。
【0136】
第1段膨張波形要素a1は、中間電位(又は基準電位)V1から電位V2a(V1<V2a)まで立ち下がる。第1段保持波形要素a2は、電位V2aを保持する。第2段膨張波形要素a3は、電位V2aから電位V2b(V2b<V2a)まで立ち下がる。第2段保持波形要素a4は、電位V2bを保持する。第3段膨張波形要素a5は、電位V2bから電位V3まで立ち下がる。
【0137】
保持波形要素bは、第3段膨張波形要素a5の終端電位である電位V3を保持する。つまり、本実施形態では、第3段膨張波形要素a5が保持波形要素bで保持される状態(電位)を終端とする膨張波形要素となる。
【0138】
収縮波形要素cは、保持された電位V3から中間電位V1まで立ち上がる。
【0139】
一方、ヘッド制御部401は、図16(b)に示すように、駆動パルスPを選択する選択信号MNとして選択信号A、Bを出力する。なお、第1実施形態と同様に、駆動パルスPを全部選択する選択信号Nも併せて出力することができる。
【0140】
選択信号Aは、時点t0から「ON」になり、中間電位保持波形要素dの途中(時点t1a)で「ON」から「OFF」に遷移し、第2段保持波形要素a4の途中(時点t2)で「OFF」から「ON」に遷移する。
【0141】
選択信号Bは、時点t0から「ON」になり、第1段保持波形要素a2の途中(時点t1b)で「ON」から「OFF」に遷移し、第2段保持波形要素a4の途中(時点t2)で「OFF」から「ON」に遷移する。
【0142】
つまり、選択信号A、Bは、保持波形要素bで保持される状態(電位V3)を終端とする第3段膨張波形要素a5よりも前の波形部分である、第2段保持波形要素a4の途中よりも前の波形部分の一部を非選択にする。
【0143】
したがって、選択信号Aが出力されたときには、図16(c)に示すように、中間電位保持波形要素dが時点t2まで延び、時点t2から第2段保持波形要素a4の電位V2bまで立ち下がるトリミング波形PAが印加波形として圧電素子42に与えられる。このトリミング波形PAには、第1段膨張波形要素a1が含まれない。
【0144】
また、選択信号Bが出力されたときには、図16(c)に示すように、第1段保持波形要素a2で保持している電位V2aが時点t2まで延び、時点t2から第2段保持波形要素a4の電位V2bまで立ち下がるトリミング波形PBが印加波形として圧電素子42に与えられる。
【0145】
次に、本実施形態のトリミング波形PA、PBによる吐出速度の補正量について図17を参照して説明する。図17はトリミング波形PA、PBによる吐出速度の補正量(Δ滴速度)の一例の説明図である。
【0146】
図17では、図16の時点t1bを0として、時点t2を横軸に取っている。時点t2は、第2段保持波形要素a4の期間Twの補正幅を持っている。トリミング波形PAとトリミング波形PBとは、時点t2における電圧変位差が異なるため、図17に示すように、トリミング波形PAを使用するか、トリミング波形PBを使用するかによって吐出速度の補正量(補正幅)を変えることができる。
【0147】
次に、本発明の第6実施形態について図18ないし図20を参照して説明する。図18は同実施形態における異なる駆動条件とノズル位置に対応する吐出滴速度のばらつきの関係の一例を示す説明図である。図19及び図20は同じく駆動条件と選択信号との関係の異なる例を示す説明図である。
【0148】
図19に示すように、駆動条件Aと駆動条件Bとで吐出滴速度のばらつき幅が異なり、駆動条件Bの方が駆動条件Aよりもばらつき幅が大きくなっている。
【0149】
ここで、駆動条件A、Bは、例えば、図19に示すように、ヘッドの駆動周波数の違い、あるいは、図20に示すように、印刷解像度(印刷モード、吐出モード)の違いである。
【0150】
そこで、前記第5実施形態で説明した選択信号A、Bでトリミングしたトリミング波形PA、PBを使用して吐出滴速度のヘッド内ばらつきを補正する。
【0151】
つまり、図19の例では、ヘッド駆動周波数10kHzの駆動条件Aに対しては、選択波形Aを使用してトリミング波形PAで吐出速度を補正し、ヘッド駆動周波数60kHz駆動条件Bに対しては、選択波形Bを使用してトリミング波形PBで吐出速度を補正する。
【0152】
図20の例では、1200×1200dpiの駆動条件Aに対しては、選択波形Aを使用してトリミング波形PAで吐出速度を補正し、600×600dpiの駆動条件Bに対しては、選択波形Bを使用してトリミング波形PBで吐出速度を補正する。
【0153】
このように、駆動条件が異なっても、ノズル毎のトリミング値(時点t2)は共通なままで補正を行える。
【0154】
そして、前述したように、共通駆動波形の駆動パルスの膨張波形要素の直前の中間電位部分(第2段保持波形要素a3)を利用して波形トリミングするため、固有周期が短いヘッドに対しても吐出ばらつきの補正が可能になる。
【0155】
次に、本発明の第7実施形態について図21を参照して説明する。図21は同実施形態における共通駆動波形、選択信号及び圧力発生素子に与えられる印加波形(トリミング波形)の説明に供する説明図である。
【0156】
図21(a)に示すように、本実施形態の駆動波形Vcomは、圧力室21を加圧して液体を吐出させる吐出パルスとしての駆動パルスPを含んでいる。駆動パルスPは、例えば、小さな滴(小滴)を吐出させるパルスである。
【0157】
駆動パルスPは、圧力室21を膨張させる膨張波形要素aと、膨張波形要素aで膨張された圧力室21の状態を保持する保持波形要素bと、保持波形要素bで保持された状態から圧力室21を収縮させて液体を吐出させる収縮波形要素cとを含んでいる。
【0158】
また、駆動パルスPは、膨張波形要素aの前に、圧力室21を収縮させる前収縮波形要素fと、前収縮波形要素fで収縮された状態を保持する前保持波形要素gとを含み、膨張波形要素aは前保持波形要素gで保持された状態から圧力室21を膨張させる。
【0159】
前収縮波形要素fは、中間電位(又は基準電位)V1から電位V2a(V2a>V1)まで立ち上がる。前保持波形要素gは、前収縮波形要素fの終端電位である電位V2aを保持する。
【0160】
膨張波形要素aは、本実施形態では、2段階膨張を行う波形である。膨張波形要素aは、前保持波形要素gで保持された電位V2aを開始電位として電位V2b(V2b<V1)まで立ち下がる第1段膨張波形要素a1と、電位V2bを保持する第1段保持波形要素a2と、電位Vb2から電位V3まで立ち下がる第2段膨張波形要素a3とで構成している。
【0161】
保持波形要素bは、段膨張波形要素aの第2段膨張波形要素a3の終端電位である電位V3を保持する。つまり、本実施形態では、第2段膨張波形要素a3が保持波形要素bで保持される状態(電位)を終端とする膨張波形要素となる。
【0162】
収縮波形要素cは、保持された電位V3から中間電位V1まで立ち上がる。
【0163】
一方、ヘッド制御部401は、図21(b)に示すように、駆動パルスPを選択する選択信号MNとして選択信号A、Bを出力する。なお、第1実施形態と同様に、駆動パルスPを全部選択する選択信号Nも併せて出力することができる。
【0164】
選択信号Aは、時点t0から「ON」になり、中間電位保持波形要素dの途中(時点t1a)で「ON」から「OFF」に遷移し、第1段保持波形要素a2の途中(時点t2)で「OFF」から「ON」に遷移する。
【0165】
選択信号Bは、時点t0から「ON」になり、前保持波形要素gの途中(時点t1b)で「ON」から「OFF」に遷移し、第1段保持波形要素a2の途中(時点t2)で「OFF」から「ON」に遷移する。
【0166】
つまり、選択信号A、Bは、保持波形要素bで保持される状態(電位V3)を終端とする第2段膨張波形要素a3よりも前の波形部分である、第1段保持波形要素a2の途中よりも前の波形部分の一部を非選択にする。
【0167】
したがって、選択信号Aが出力されたときには、図21(c)に示すように、中間電位保持波形要素dが時点t2まで延び、時点t2から第1段保持波形要素a2の電位V2bまで立ち下がるトリミング波形PAが印加波形として圧電素子42に与えられる。このトリミング波形PAには、前収縮波形要素fが含まれない。
【0168】
また、選択信号Bが出力されたときには、図21(c)に示すように、前保持波形要素gで保持している電位V2aが時点t2まで延び、時点t2から第1段保持波形要素a2の電位V2bまで立ち下がるトリミング波形PBが印加波形として圧電素子42に与えられる。
【0169】
本実施形態のトリミング波形PA、PBを使用して前記第6実施形態で説明したような異なる駆動条件について吐出特性のばらつきを低減することができる。
【0170】
なお、上記各実施形態において、膨張波形要素が2段階、3段階の膨張を行う波形要素である例で説明したが、4段階以上の膨張を行う波形要素であってもよい。このように多段の膨張を行う場合には、最終段の膨張波形要素が保持波形要素で保持される膨張状態を終端(電位)とする波形要素となる。
【0171】
また、上記各実施形態においては、選択信号MNに2種類以上の信号が含まれる例で説明しているが、1種類の選択信号MNによって複数の波形部分の指定ができるようにしても良い。
【0172】
次に、本発明の第8実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置について図22及び図23を参照して説明する。図22は同印刷装置の概略説明図、図23は同印刷装置の吐出ユニットの説明図である。
【0173】
印刷装置500は、連続体、ロール紙、ウェブなどのシート材Pを搬入する搬入部510と、搬入部510から搬入されたシート材Pを印刷部530に案内搬送する案内搬送部570と、シート材Pに対して液体を吐出して印刷を行う印刷部530と、シート材Pを乾燥する乾燥部540と、シート材Pを搬出する搬出部550などを備えている。
【0174】
シート材Pは搬入部510の元巻きローラ591から送り出され、搬入部510、案内搬送部570、乾燥部540、搬出部550の各ローラによって案内、搬送されて、搬出部550の巻取りローラ592にて巻き取られる。
【0175】
このシート材Pは、印刷部530において、吐出ユニット533に対向して搬送され、吐出ユニット533から吐出される液体によって画像が印刷される。
【0176】
ここで、吐出ユニット533は、2つのヘッドモジュール100A、100Bを共通ベース部材113に備えている。
【0177】
そして、ヘッドモジュール100の搬送方向と直交する方向におけるヘッド1の並び方向をヘッド配列方向とするとき、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1A1,1A2で同じ色の液体を吐出する。同様に、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1B1、1B2を組とし、ヘッドモジュール100Bのヘッド列1C1、1C2を組とし、ヘッド列1D1、1D2を組として、それぞれ所要の色の液体を吐出する。
【0178】
次に、本実施形態におけるヘッドモジュールの一例について図24及び図25を参照して説明する。図24は同ヘッドモジュールの分解斜視説明図、図25は同ヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視説明図である。
【0179】
ヘッドモジュール100は、液体を吐出する液体吐出ヘッドである複数のヘッド1と、複数のヘッド1を保持するベース部材103とを備えている。
【0180】
また、ヘッドモジュール100は、放熱部材104と、複数のヘッド1に対して液体を供給する流路を形成しているマニホールド105と、フレキシブル配線部材101と接続するプリント基板(PCB)106と、モジュールケース107とを備えている。
【0181】
次に、本実施形態におけるヘッドの一例について図26ないし図31を参照して説明する。図26は同ヘッドをノズル面側から見た外観斜視説明図、図27は同じくノズル面と反対側から見た外観斜視説明図、図28は同じく分解斜視説明図、図29は同じく流路構成部材の分解斜視説明図、図30図29の要部拡大斜視説明図、図31は同じく流路部分の断面斜視説明図である。
【0182】
液体吐出ヘッド1は、ノズル板10と、流路板(個別流路部材)20と、振動板部材30と、共通流路部材50と、ダンパ部材60と、共通流路部材70、フレーム部材80と、配線部材(フレキシブル配線基板)45などを備えている。配線部材45にはヘッドドライバ(ドライバIC)410が実装されている。
【0183】
ノズル板10には、液体を吐出する複数のノズル11を有している。複数のノズル11は、二次元状にマトリクス配置されている。
【0184】
個別流路部材20は、複数のノズル11に各々連通する複数の圧力室(個別液室)21と、複数の圧力室21に各々通じる複数の個別供給流路22と、複数の圧力室21に各々通じる複数の個別回収流路23とを形成している。1つの圧力室21及びこれに通じる個別供給流路22と個別回収流路23を併せて個別流路25と称する。
【0185】
振動板部材30は、圧力室21の変形な可能な壁面である振動板31を形成し、振動板31には圧電素子42が一体に設けられている。また、振動板部材30には、個別供給流路22に通じる供給側開口32と、個別回収流路23に通じる回収側開口33とが形成されている。圧電素子42は、振動板31を変形させて圧力室21内の液体を加圧する圧力発生手段である。
【0186】
なお、個別流路部材20と振動板部材30とは、部材として別部材であることに限定さるものではない。例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板を使用して個別流路部材20及び振動板部材30を同一部材で一体に形成することができる。つまり、シリコン基板上に、シリコン酸化膜、シリコン層、シリコン酸化膜の順に成膜されたSOI基板を使用し、シリコン基板を個別流路部材20とし、シリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜とで振動板31を形成することができる。この構成では、SOI基板のシリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜の層構成が振動板部材30となる。このように、振動板部材30は個別流路部材20の表面に成膜された材料で構成されるものを含む。
【0187】
共通流路部材50は、共通流路支流部材であり、2以上の個別供給流路22に通じる複数の共通供給流路支流52と、2以上の個別回収流路23に通じる複数の共通回収流路支流53とを交互に隣接して形成している。
【0188】
共通流路部材50には、個別供給流路22の供給側開口32と共通供給流路支流52を通じる供給口54となる貫通孔と、個別回収流路23の回収側開口33と共通回収流路支流53を通じる回収口55となる貫通孔が形成されている。
【0189】
また、共通流路部材50は、複数の共通供給流路支流52に通じる1又は複数の共通供給流路本流56の一部56aと、複数の共通回収流路支流53に通じる1又は複数の共通回収流路本流57の一部57aを形成している。
【0190】
ダンパ部材60は、共通供給流路支流52の供給口54と対面する(対向する)供給側ダンパ62と、共通回収流路支流53の回収口55と対面する(対向する)回収側ダンパ63を有している。
【0191】
ここで、共通供給流路支流52及び共通回収流路支流53は、同じ部材である共通流路部材50に交互に並べて配列された溝部を、変形可能な壁面を形成するダンパ部材60で封止することで構成している。
【0192】
共通流路部材70は、共通流路本流部材であり、複数の共通供給流路支流52に通じる共通供給流路本流56と、複数の共通回収流路支流53に通じる共通回収流路本流57を形成する。
【0193】
フレーム部材80には、通供給流路本流56の一部56bと、共通回収流路本流57の一部57bが形成されている。共通供給流路本流56の一部56bはフレーム部材80に設けた供給ポート81に通じ、共通回収流路本流57の一部57bはフレーム部材80に設けた回収ポート82に通じている。
【0194】
このヘッド1においては、液体は共通供給流路本流56から共通供給流路支流52を通り、供給口54から圧力室21へ供給され、ノズル11から液体が吐出される。ノズル11から吐出されない液体は、回収口55から共通回収流路支流53を通り、共通回収流路本流57に流れ、回収ポート82から外部の循環装置を経て供給ポート81を通じて、再度、共通供給流路本流56に供給される。
【0195】
このように、ノズル11が2次元マトリクス配置されたヘッド1を備える場合にも、前記第1ないし第7実施形態によるヘッド駆動制御を適用することができる。
【0196】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0197】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0198】
また、「液体を吐出する装置」には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0199】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0200】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0201】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0202】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0203】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0204】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0205】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0206】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0207】
1 液体吐出ヘッド(ヘッド)
21 圧力室
42 圧電素子
100 ヘッドモジュール
500 印刷装置
510 搬入部
520 前処理部
530 印刷部
533 吐出ユニット
540 乾燥部
550 搬出部
400 ヘッド駆動制御装置
401 ヘッド制御部
402 駆動波形生成部
403 波形データ格納部
410 ヘッドドライバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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