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  • 特許-タンク内液位の計測装置及び計測方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】タンク内液位の計測装置及び計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/18 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
G01F23/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019218865
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2021089183
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】長尾 信明
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-324964(JP,A)
【文献】特開平05-248918(JP,A)
【文献】特開2012-150090(JP,A)
【文献】特開平04-169819(JP,A)
【文献】実開昭59-194022(JP,U)
【文献】特開2000-088629(JP,A)
【文献】特開2003-75229(JP,A)
【文献】特開昭61-230029(JP,A)
【文献】特開昭62-135733(JP,A)
【文献】特開昭51-16070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0000295(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0090490(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/00,23/14-23/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内に上方から下方に向って差し込まれるガイドパイプと、
該ガイドパイプ内に先端側から差し込まれるフッ素樹脂製のチューブと、
該チューブの先端部に取り付けられた重りと、
該チューブの後端側に接続された、該チューブ内の圧力の検出器と
を有するタンク内液位の計測装置であって、
前記ガイドパイプは、複数のパイプを繋ぐことにより構成されたものであるタンク内液位の計測装置
【請求項2】
タンク内に上方からガイドパイプを差し込む工程と、
後端に圧力検出器が接続され、先端部に重りが取り付けられたフッ素樹脂製のチューブを先端側から該ガイドパイプ内に差し込む工程と、
該圧力検出器でチューブ内の圧力を計測して該タンク内の液位を算出する工程と
を有するタンク内液位の計測方法であって、
前記ガイドパイプを構成するための複数のパイプを繋ぎながら前記タンク内に差し込んで前記ガイドパイプを構成することを特徴とするタンク内液位の計測方法
【請求項3】
前記フッ素樹脂はポリテトラフルオロエチレン樹脂である請求項2のタンク内液位の計測方法。
【請求項4】
前記ガイドパイプの上端に鍔部を設けておき、
前記タンクの上面部に設けられた開口の上縁に該鍔部を係止させることにより該ガイドパイプを該タンク内に配置することを特徴とする請求項2又は3のタンク内液位の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液タンクなどのタンク内の液位を計測する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの工場では、様々な薬品が使用され、それらを備蓄するための貯蔵タンクが薬品毎、使用する目的ごとに配置される。タンク内に貯蔵される薬品は、想定される使用量・使用頻度から設計され、それぞれ生産活動に必要な容量を備えるが、使用される量は季節や需要状況により変化するため、タンク内残存量の管理は欠かせない。そのため、送液ポンプの稼働時間や流量計による使用量の管理や、薬液タンクにレベル計を設置し、残存量を確認することがある(例えば特許文献1)。
【0003】
しかし、前者の方法はタンク内水位による吸引圧や吐出圧の変化や、送液の脈動などにより誤差を伴うことが多い。後者のように、レベル計による残存量の管理を行う場合、多数のタンク水位を計測することを人が実施することは、時間がかかる上に天候や時間帯による目視誤差などを伴うだけでなく、人的な負荷も大きい。そこで、電気的な出力を持つレベル計をタンクに設置してタンク残量を管理することが多く行われる(例えば特許文献2)。
【0004】
特許文献2には、タンク内の液位を遠隔位置で検出する液面計として、タンク内に上方から下方にパイプを差し込み、該パイプ内の空気圧を検出して液位を計測する空気圧式液面計が記載されている。
【0005】
特許文献3には、貯留水に導圧管の一端を浸漬し、導圧管の他端を圧力センサの圧力ポートに接続し、導圧管内の封入気体圧力の検出値に基づいて液位を計測することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-8990号公報
【文献】実開昭62-156835号公報
【文献】特開平5-248918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液位計測用パイプを既設のタンク上部からタンク内に差し込んで設置する場合、タンク高さが大きい時には、長さの大きいパイプをタンク上に持ち上げて鉛直姿勢とし、パイプ上面のパイプ設置座からタンク内に差し込むことになるが、タンク高さが大きい場合などには、パイプ設置作業にかなりの手間がかかり、コスト高である。
【0008】
パイプの代りに、可撓性を有したチューブをタンク上部からタンク内に垂らすように差し込むことが考えられる。
【0009】
即ち、一端側に圧力計が接続されたチューブをタンク内に挿入し、チューブ内の圧力(水頭圧)を計測して、挿入したチューブの下端からの水頭長を算出することで水位を管理するレベル計を用いることが考えられる。
【0010】
この場合、チューブの下端が常に安定してタンク内の一定高さ位置に固定されることが必要であるが、既設のタンクの場合、チューブ下端をタンク内の任意の部分に固定することは困難である。
【0011】
また、チューブ下端に重りを取り付けてチューブを挿入する方法も考えられるが、十分な重量を有する重りを取り付けると、挿入時の作業が難しくなるばかりでなく、チューブを交換や点検する場合の作業も難しくなる。
【0012】
本発明は、タンクに容易に設置することができ、しかも計測精度も高いタンク内液位の計測装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のタンク内液位の計測装置は、タンク内に上方から下方に向って差し込まれるガイドパイプと、該ガイドパイプ内に先端側から差し込まれるチューブと、該チューブの後端側に接続された、該チューブ内の圧力の検出器とを有する。
【0014】
本発明のタンク内液位の計測方法は、タンク内に上方からガイドパイプを差し込む工程と、後端に圧力検出器が接続されたチューブを先端側から該ガイドパイプ内に差し込む工程と、該圧力検出器でチューブ内の圧力を計測して該タンク内の液位を算出する工程とを有する。
【0015】
本発明の一態様では、前記ガイドパイプを構成するための複数のパイプを繋ぎながらタンク内に差し込んで前記ガイドパイプを構成する。
【0016】
本発明の一態様では、前記ガイドパイプの上端に鍔部を設けておき、前記タンクの上面部に設けられた開口の上縁に該鍔部を係止させることにより該ガイドパイプを該タンク内に配置する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様では、タンク内に上方からガイドパイプを差し込んでおき、このガイドパイプ内にチューブを上方から差し込むので、チューブをその下端がタンク内の規定位置となるようにタンク内に容易に差し込むことができ、チューブの配置作業が容易である。
【0018】
また、チューブが浮き上がるようにして変形したり移動したりすることがガイドパイプによって防止されるので、精度よく液位を計測することができる。
【0019】
タンク高さが大きい場合には、長さがタンク高さの半分以下の比較的短いパイプを繋ぎ合わせながら差し込むようにすることにより、ガイドパイプをタンク内の下部にまで容易に差し込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態に係るタンク内液位の計測装置を備えたタンクの概略的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1を参照して実施の形態について説明する。
【0022】
タンク1の上面1aに計測装置の設置口(開口)2が設けられている。この設置口2からタンク1内の下部に向ってパイプ3が差し込まれている。
【0023】
パイプ3の下端はタンク1の底面1bの近傍に位置しているが、底面1bより若干上位に位置している。パイプ3の上端に鍔部3aが設けられており、該鍔部3aが設置口2の上縁に係合している。
【0024】
この実施の形態では、パイプ3は鉛直に配置されているが、略上下方向であればよく、鉛直に限定されない。
【0025】
パイプ3内に可撓性を有したチューブ4が挿入されている。チューブ4の下端はパイプ3内の下部に位置している。チューブ4の下端は開放している。チューブ4の下部に、小重量の重りを取り付けておいてもよい。
【0026】
チューブ4の上端に、チューブ4内の圧力を検出するための圧力センサユニット5が取り付けられている。
【0027】
圧力センサユニット5は、半導体圧力センサ等の圧力計測器を備えている。圧力センサユニット5にはノズル状のチューブ接続部5aが下向きに突設されており、チューブ4の上端が該チューブ接続部5aに外嵌状に装着されている。チューブ接続部5aの外周面とチューブ4の上端部の内周面との間は、Oリング(図示略)等によって気密に封じられている。
【0028】
圧力センサユニット5は直接に、又は支持部材(図示略)等によって、タンク1の上面1a又はガイドパイプ3に支持されている。
【0029】
タンク1内の液位がチューブ4の下端よりも上位にまで上昇すると、タンク1内の液がチューブ4の下端からチューブ4内に入り込み、チューブ4内の空気を圧縮するので、チューブ4内の圧力が上昇する。従って、チューブ4内の圧力を圧力センサユニット5で計測することにより、タンク1内の液位を検出することができる。
【0030】
圧力センサユニット5の検出圧力をP1とし、チューブ4内の圧縮空気圧(水圧)をPとし、図1の通り、
L0:チューブ4の全長(予め測定しておいた値)(cm)
L1:タンク1内の水位(cm)
L2:チューブ4の下端からチューブ4内の水面位までの高さ(cm)
L3:チューブ4下端のタンク底面1bからの高さ(cm)
としたとき、タンク1内の水位L1は、下記の計算により求めることができる。
【0031】
すなわち、タンク1内の水位とチューブ4内の水位差による検出圧力P1(kPa)は、高さ1000cmの水柱の水頭圧が98kPaであるとすると、
P1=(L1-(L2+L3))/1000*98 …(1)
と表される。また、チューブ4内の空気が圧縮されたことにより、チューブ4内の圧縮空気圧P(kPa)は、
P=L0/(L0-L2)*100 …(2)
となっている。ここで、圧力センサユニット5の検出圧力P1が0kPaを示しているとき、チューブ4内の圧縮空気圧Pは、大気圧、つまり1気圧(101.325kPa)である。計算を簡単にする為、P=P1+100とし、(2)式をL2について解くと、次の(3)式となる。
【0032】
L2=L0*(1-100/(P1+100)) …(3)
【0033】
(1)式をL1について解くと、次の(4)式となる。(4)式に(3)式を代入すると(5)式が得られる。
【0034】
L1=L3+L2+1000/98*P1 …(4)
=L3+L0*(1-100/(P1+100)+1000/98*P1…(5)
【0035】
(5)式において、L3はチューブ4の全長L0と、タンク1の全高と、チューブ4のタンク上面1aからの突出長さとから算出される一定値であり、予め(5)式に代入しておく。従って、圧力検出値P1を(5)式に代入することにより、水位L1(cm)が算出される。実際には水温や周囲の気温によりチューブ内に封入した空気の圧力が変化することで計測水位値L1は変化するので、温度による補正を行うことで、誤差を少なくするのが好ましい。
【0036】
ガイドパイプ3としては、塩化ビニルなど、耐久性と硬度とを有した硬質な合成樹脂製のものが好適である。
【0037】
ガイドパイプ3は、図1では上端から下端まで一続きの一本物となっているが、タンク1の高さが大きいときには、複数本のパイプを用意しておき、開口2から第1のパイプをある程度差し込んだ後、第1のパイプの上端に第2のパイプの下端を接続するようにして、所要長さのガイドパイプをタンク1内に配置することができる。
【0038】
パイプ同士をつなぐには、パイプの両端にフランジを設けており、ボルト及びナットや、クランプ等によってフランジ同士を連結するのが好適である。
【0039】
チューブ4としては、ポリテトラフルオロエチレン等の軟質なフッ素樹脂製のものが好適であるが、これに限定されない。
【符号の説明】
【0040】
1 タンク内液位の計測装置
2 設置口(開口)
3 ガイドパイプ
4 チューブ
5 圧力センサユニット
図1