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特許7396005インクジェット印刷装置、インクジェット印刷方法、及び印刷画像の光沢度制御方法
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  • 特許-インクジェット印刷装置、インクジェット印刷方法、及び印刷画像の光沢度制御方法 図1
  • 特許-インクジェット印刷装置、インクジェット印刷方法、及び印刷画像の光沢度制御方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置、インクジェット印刷方法、及び印刷画像の光沢度制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231205BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20231205BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 501
C09D11/30
B41M5/00 100
B41M5/00 120
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019221077
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021088161
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏明
(72)【発明者】
【氏名】坂内 昭子
(72)【発明者】
【氏名】増田 公則
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 由紀子
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-183112(JP,A)
【文献】特開2015-003397(JP,A)
【文献】特開2016-002753(JP,A)
【文献】特開2012-166372(JP,A)
【文献】特開2017-155137(JP,A)
【文献】特開2004-284147(JP,A)
【文献】特開2015-128826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
C09D 11/30
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するインク収容部と、
インクを吐出して印刷層を形成する吐出ヘッドと、
被印刷物を加熱する加熱手段と、
を有するインクジェット印刷装置であって、
前記インクが、ポリウレタン樹脂、及び水を含有するクリアインクであり、
前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、
前記クリアインク中の前記ポリウレタン樹脂の含有量が、8質量%以上であり、
前記インクジェット印刷装置は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記加熱手段が、該クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷領域の被印刷物の温度をTmatte(℃)とし、該クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷領域の被印刷物の温度をTgloss(℃)とすると、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記クリアインクの乾燥膜が、50℃以上、及び0℃未満にガラス転移点を有する請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記クリアインクは、樹脂粒子Aと樹脂粒子Bを含み、前記樹脂粒子Aはガラス転移点が50℃以上であり、前記樹脂粒子Bはガラス転移点が0℃未満である請求項1から2のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記加熱手段が、次式、Tmatte-Tgloss≧10℃、を満たすように加熱する請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
インクを収容するインク収容部と、
インクを吐出して印刷層を形成する吐出ヘッドと、
被印刷物を加熱する加熱手段と、
を有するインクジェット印刷装置であって、
前記インクが、ポリウレタン樹脂、及び水を含有するクリアインクであり、
前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、
前記クリアインク中の前記ポリウレタン樹脂の含有量が、8質量%以上であり、
前記インクジェット印刷装置は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記低光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTmatte(℃)とし、前記高光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTgloss(℃)とすると、次式、HTmatte>HTgloss、を満たすように加熱することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項6】
前記低光沢印刷モードで用いる被印刷物の光沢度をGmatteとし、前記高光沢印刷モードで用いる被印刷物の光沢度をGglossとすると、次式、Gmatte>Ggloss、を満たす請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【請求項7】
被印刷物にインクを吐出して印刷層を設ける印刷工程と、
印刷された被印刷物を加熱する加熱工程と、
を含むインクジェット印刷方法であって、
前記インクが、ポリウレタン樹脂、及び水を含有するクリアインクであり、
前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、
前記クリアインク中の前記ポリウレタン樹脂の含有量が、8質量%以上であり、
前記インクジェット印刷方法は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記加熱工程において、該クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷領域の被印刷物の温度をT matte (℃)とし、該クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷領域の被印刷物の温度をT gloss (℃)とすると、次式、T matte >T gloss 、を満たすように加熱することを特徴とするインクジェット印刷方法。
【請求項8】
被印刷物にインクを吐出して印刷層を設ける印刷工程と、
印刷された被印刷物を加熱手段により加熱する加熱工程と、
を含むインクジェット印刷方法であって、
前記インクが、ポリウレタン樹脂、及び水を含有するクリアインクであり、
前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、
前記クリアインク中の前記ポリウレタン樹脂の含有量が、8質量%以上であり、
前記インクジェット印刷方法は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記低光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHT matte (℃)とし、前記高光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHT gloss (℃)とすると、次式、HT matte >HT gloss 、を満たすことを特徴とするインクジェット印刷方法。
【請求項9】
被印刷物にインクを吐出して印刷層を設ける印刷工程と、
印刷された被印刷物を加熱する加熱工程と、
を含む印刷画像の光沢度制御方法であって、
前記インクが、ポリウレタン樹脂、及び水を含有するクリアインクであり、
前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、
前記クリアインク中の前記ポリウレタン樹脂の含有量が、8質量%以上であり、
前記印刷画像の光沢度制御方法は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記低光沢印刷モードで印刷する場合には、加熱温度を高くする制御を行い、
前記高光沢印刷モードで印刷する場合には、加熱温度を低くする制御を行うことを特徴とする印刷画像の光沢度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置、インクジェット印刷方法、及び印刷画像の光沢度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広告、看板等の産業用途、食品、飲料、日用品等の包装材料において、耐光性、耐水性、耐摩耗性等の耐久性を向上させるため、例えば、プラスチックフィルム等の非浸透性記録媒体が使用されており、このような非浸透性記録媒体に用いられるインクが種々開発されている。
【0003】
このようなインクとしては、例えば、溶媒として有機溶剤を用いた溶剤系インク、重合性モノマーを主成分とする紫外線硬化型インクなどが広く用いられている。しかし、前記溶剤系インクは、有機溶剤の蒸発による環境への影響が懸念される。前記紫外線硬化型インクは、安全性の面から使用する重合性モノマーの選択肢が限られる場合がある。
そこで、環境負荷が少なく、非浸透性記録媒体に直接記録できる水性インクを含むインクセットが提案されている。
【0004】
一方、インクジェット記録装置において、光沢制御の機能を有するものが開発されている。
例えば、熱可塑性樹脂粒子を含むインクをノズルから着弾対象に向けて噴射可能な液体噴射ヘッドと、前記着弾対象に着弾したインク滴を加熱する加熱手段と、を備え、前記加熱手段は、前記インク滴の表面の膜化が開始する最低成膜温度に応じた膜化制御温度で加熱することで前記インク滴の表面の膜化の度合いを制御する液体噴射装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、マット(低光沢)調及びグロス(高光沢)調の両方の光沢制御に対応でき、耐擦過性に優れたインク膜が得られるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明のインクジェット印刷装置は、インクを収容するインク収容部と、インクを吐出して印刷層を形成する吐出ヘッドと、被印刷物を加熱する加熱手段と、を有するインクジェット印刷装置であって、インクが、樹脂、及び水を含有するクリアインクであり、前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、前記インクジェット印刷装置は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、前記加熱手段が、該クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷領域の被印刷物の温度をTmatte(℃)とし、該クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷領域の被印刷物の温度をTgloss(℃)とすると、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、マット(低光沢)調及びグロス(高光沢)調の両方の光沢制御に対応でき、耐擦過性に優れたインク膜が得られるインクジェット印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の画像形成方法を実施する画像形成装置の一例を示す図である。
図2図2は、図1の画像形成装置のメインタンクの一例を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(インクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法)
本発明のインクジェット印刷装置は、第1の形態では、インクを収容するインク収容部と、インクを吐出して印刷層を形成する吐出ヘッドと、被印刷物を加熱する加熱手段と、を有するインクジェット印刷装置であって、インクが、樹脂、及び水を含有するクリアインクであり、前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、前記インクジェット印刷装置は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、前記加熱手段が、該クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷領域の被印刷物の温度をTmatte(℃)とし、該クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷領域の被印刷物の温度をTgloss(℃)とすると、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0010】
本発明のインクジェット印刷装置は、第2の形態では、インクを収容するインク収容部と、インクを吐出して印刷層を形成する吐出ヘッドと、被印刷物を加熱する加熱手段と、を有するインクジェット印刷装置であって、前記インクが、樹脂、及び水を含有するクリアインクであり、前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、前記インクジェット印刷装置は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、前記低光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTmatte(℃)とし、前記高光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTgloss(℃)とすると、次式、HTmatte>HTgloss、を満たすように加熱し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0011】
本発明のインクジェット印刷方法は、第1の形態では、被印刷物にインクを吐出して印刷層を設ける印刷工程と、印刷された被印刷物を加熱する加熱工程と、を含むインクジェット印刷方法であって、インクが、樹脂、及び水を含有するクリアインクであり、前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、インクジェット印刷方法は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、加熱工程において、該クリアインクを被印刷物に付着させるときの低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷領域の被印刷物の温度をTmatte(℃)とし、該クリアインクを被印刷物に付着させるときの高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷領域の被印刷物の温度をTgloss(℃)とすると、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱し、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0012】
本発明のインクジェット印刷方法は、第2の形態では、被印刷物にインクを吐出して印刷層を設ける印刷工程と、印刷された被印刷物を加熱手段により加熱する加熱工程と、を含むインクジェット印刷方法であって、前記インクが、樹脂、及び水を含有するクリアインクであり、前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、前記インクジェット印刷方法は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、前記低光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTmatte(℃)とし、前記高光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTgloss(℃)とすると、次式、HTmatte>HTgloss、を満たし、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0013】
従来から、紫外線の照射によって硬化するクリアインク(UVクリアインク)を使用したインクジェット記録装置においては、照射光量を制御することにより、マット調やグロス調に光沢制御できる光沢制御方法が提案されている。
しかしながら、UVクリアインクは臭気が強いことが課題であり、印刷物にも臭気が残るので、室内用途の印刷物には不向きである。このため、インクジェット印刷装置の設置場所も、排気ができる環境が必要となり、設置場所が限られてしまう。また、UVクリアインクは紫外線照射装置が必要であり、装置の大型化やコストが高くなるという問題がある。
【0014】
本発明のインクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法は、特許文献1の従来技術では、色材を含むカラーインクを用い、加熱手段によりインク滴の表面の膜化が開始する最低成膜温度に応じた膜化制御温度で加熱することでインク滴の表面の膜化の度合いを制御して光沢度を調整しているが、色材を含むカラーインクは色材を含まないクリアインクに比べて、十分な光沢度差が得られず、マット調及びグロス調の両方の光沢制御に対応できないという知見に基づくものである。
【0015】
高光沢印刷モードは、高光沢を付与する印刷モードであり、印刷物の表面が滑らかで高光沢となる。低光沢印刷モードは、低光沢を付与する印刷モードであり、印刷物の表面に細かな凹凸を有するマット調で低光沢となる。なお、高光沢印刷モードは「グロス光沢印刷モード」と称することもある。低光沢印刷モードは「マット光沢印刷モード」と称することもある。
【0016】
本発明のインクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法は、樹脂及び水を含むクリアインクを用い、加熱温度の制御によりグロス調及びマット調の両方の光沢制御を行う。低光沢付与を行う場合は、印刷時の温度は、高光沢付与モードに比べて、高い温度で印刷を行う。印刷時の温度が高いため、樹脂を含んだクリアインクは、ドットの濡れ広がりが抑制され、隣接ドットの合一が抑制され、かつドット球の高さ(パイルハイト)が高いドットが形成される。これらのドットが、表面凹凸を形成し、低光沢を付与する。
一方、高光沢付与を行う場合は、低光沢付与モードに比べ、低い温度で印刷を行う。印刷時の温度が低いため、樹脂を含んだクリアインクは、ドットの濡れ広がり、隣接ドットの合一が促進され、平滑な表面が形成されて、高光沢が付与される。
また、カラーインクの上にクリアインクをオーバーコートする場合には、クリアインク膜の耐擦過性が優れていることが必要とされる。
【0017】
したがって、本発明のインクジェット印刷装置は、樹脂、及び水を含有するクリアインクを用い、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、加熱手段が、該クリアインクを被印刷物に付着させるときの低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷領域の被印刷物の温度をTmatte(℃)とし、該クリアインクを被印刷物に付着させるときの高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷領域の被印刷物の温度をTgloss(℃)とすると、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱することにより、又は低光沢印刷モードにおける加熱手段の温度をHTmatte(℃)とし、高光沢印刷モードにおける加熱手段の温度をHTgloss(℃)とすると、次式、HTmatte>HTgloss、を満たすことにより、マット調及びグロス調の両方の光沢制御に対応できる。
【0018】
本発明においては、クリアインクの乾燥膜が、50℃以上にガラス転移点(Tg)を有することによって、クリアインク膜が強靭になって耐擦過性が向上する。更に、クリアインクの乾燥膜は、50℃以上及び0℃未満にガラス転移点を有することによって、クリアインク膜(層)と下地との密着性が向上する。
ここで、クリアインクの乾燥膜のガラス転移点(Tg)は、以下のようにして、測定することができる。
示差走査熱量計(TA-60WS及びDSC-60、株式会社島津製作所製)を用いて、まず、直径50mmのテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)製シャーレにインク4gを均一に広がるように入れ、50℃で1週間乾燥後、得られたインク乾燥膜から5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、該試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。
【0019】
本発明のインクジェット印刷装置の加熱手段は、被印刷物の温度が、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱し、次式、Tmatte-Tgloss≧10℃、を満たすように加熱することが好ましく、次式、Tmatte-Tgloss≧20℃、を満たすように加熱することがより好ましい。また、加熱手段の温度HT(℃)としては、低光沢印刷モードにおける加熱手段の温度をHTmatte(℃)とし、高光沢印刷モードにおける加熱手段の温度をHTgloss(℃)とすると、次式、HTmatte>HTgloss、を満たすこと、HTmatte>HTgloss≧10℃を満たすことが好ましく、HTmatte>HTgloss≧20℃を満たすことがより好ましい。
これにより、低光沢印刷モードでは加熱温度を高くして、ドットの濡れ広がりを抑制して、パイルハイトが高いドットを形成して、凹凸の大きな表面を形成する。一方、高光沢印刷モードでは、加熱温度を低くして、ドットの濡れ広がりを促進し、隣接ドットの合一により、平滑な表面を形成することができる。
加熱手段の温度HT(℃)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱手段の設定温度を用いることができる。
【0020】
低光沢印刷モードの印刷部の被印刷物の温度Tmatte(℃)は、50℃以上が好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。
高光沢印刷モードの印刷部の被印刷物の温度Tgloss(℃)は、70℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
低光沢印刷モードにおける加熱手段の温度をHTmatte(℃)は、50℃以上が好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。
高光沢印刷モードにおける加熱手段の温度をHTgloss(℃)は、70℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
このような温度範囲とすることで、クリアインクを用いた各印刷モードにおいて、大きな光沢度の変化を実現することができる。
印刷部の被印刷物の温度の測定は、例えば、被印刷物としての記録媒体に熱電対を設置し、直接、記録媒体温度を測定する方法、記録媒体を加熱するヒーターの温度を測定し記録媒体温度とする方法、放射型温度計等により非接触的に記録媒体の周囲の温度を測定し、記録媒体温度とする方法などが挙げられる。
【0021】
本発明においては、低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷画像の印刷率をDmatteとし、高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷画像の印刷率をDglossとすると、次式、Dgloss>Dmatte、を満たすことが好ましく、次式、Dgloss-Dmatte>10%、を満たすことがより好ましい。
印刷率が高い方が、平滑表面が形成されやすいため、高光沢印刷モードでは印刷率が高い画像にする。一方、低光沢印刷モードでは、印刷率が高いと、隣接ドットの合一が発生し、表面凹凸が形成されにくくなるため、印刷率が低い画像とする。
ここで、印刷率は下記を意味する
印刷率(%)=クリアインク印刷ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(ただし、前記式中、「クリアインク印刷ドット数」は単位面積当たりのクリアインクを実際に印刷したドット数であり、「縦解像度」及び「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。なお、同じドット位置となるようにクリアインクを重ねて印刷する場合には、「クリアインク印刷ドット数」は単位面積当たりのクリアインクを実際に印刷した合計のドット数で表す。)
なお、印刷率100%とは、画素に対する単色の最大インク重量を意味する。
【0022】
<インク収容部>
インク収容部は、インクを収容する。
インク収容部としては、インクを収容できる部材であれば特に制限はなく、例えば、インク収容容器、インクタンクなどが挙げられる。
前記インク収容容器としては、前記インクを容器中に収容してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材などを有してなる。
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じて、その形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを少なくとも有するものなどが挙げられる。
インクタンクとしては、メインタンク、サブタンクなどが挙げられる。
【0023】
<吐出ヘッド>
吐出ヘッドは、インクを吐出して印刷層を形成する。
吐出ヘッドは、ノズルプレート、加圧室、及び刺激発生手段を有する。
【0024】
-ノズルプレート-
ノズルプレートは、ノズル基板と、前記ノズル基板上に撥インク膜とを有する。
【0025】
-加圧室-
前記加圧室は、前記ノズルプレートに設けられた複数の前記ノズル孔に個別に対応して配置され、前記ノズル孔と連通する複数の個別流路であり、インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室などと称することもある。
【0026】
-刺激発生手段-
前記刺激発生手段は、インクに印加する刺激を発生する手段である。
前記刺激発生手段における刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱(温度)、圧力、振動、光などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適に挙げられる。
前記刺激発生手段としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライトなどが挙げられる。前記刺激発生手段としては、具体的には、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いてインクの膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどが挙げられる。
【0027】
前記刺激が「熱」の場合、前記インク吐出ヘッド内のインクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーを、例えば、サーマルヘッド等を用いて付与する。前記熱エネルギーにより前記インクに気泡を発生させ、前記気泡の圧力により、前記ノズルプレートの前記ノズル孔から前記インクを液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
前記刺激が「圧力」の場合、例えば、前記インク吐出ヘッド内のインク流路内にある前記圧力室と呼ばれる位置に接着された前記圧電素子に電圧を印加することにより、前記圧電素子が撓む。それにより、前記圧力室の容積が収縮して、前記インク吐出ヘッドの前記ノズル孔から前記インクを液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
これらの中でも、ピエゾ素子に電圧を印加してインクを飛翔させるピエゾ方式が好ましい。
【0028】
<加熱手段>
加熱手段は、被印刷物を加熱する。
加熱手段としては、被印刷物としての記録媒体の印刷面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれ、例えば、赤外線ヒーター、温風ヒーター、加熱ローラなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
被印刷物としての記録媒体を乾燥させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクが付与された記録媒体に乾燥手段として温風等の加熱された流体を接触させる方法、インクが付与された記録媒体と加熱部材とを接触させ伝熱により加熱する方法、赤外線や遠赤外線等のエネルギー線を照射することによりインクが付与された記録媒体を加熱する方法などが挙げられる。
加熱は、印刷前、印刷中、及び印刷後の少なくともいずれかに行うことができる。
印刷前、印刷中の加熱により、加温したメディアに印刷することが可能となり、印刷後の加熱では、印刷物を乾燥することができる。
加熱時間は、記録媒体の表面温度が所望温度に制御することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
加熱時間の制御は、被印刷物としての記録媒体の搬送速度を制御することにより行うことが好ましい。
【0030】
<インク>
インクとしては、クリアインクが用いられる。
クリアインクとは、色材を実質的に含まない無色透明のインクを意味する。
クリアインクとしては、溶媒として水を含む水系クリアインクを意味し、必要に応じて有機溶剤を含んでいてもよい。
クリアインクは、水、及び樹脂を含有する。また、界面活性剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0031】
<<水>>
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記水の含有量は、クリアインク全量に対して、15質量%以上60質量%以下が好ましい。前記含有量が、15質量%以上であると、高粘度になることを防止し、吐出安定性を向上することができる。一方、60質量%以下であると、非浸透性記録媒体への濡れ性が好適となり、画像品位を向上できる。
【0032】
<<樹脂>>
クリアインクの乾燥膜が50℃以上にガラス転移点を有するため、クリアインクはガラス転移点が50℃以上の樹脂を含有する。
ガラス転移点が50℃以上の樹脂を含有することによって、クリアインクの乾燥膜のガラス転移点を50℃以上になるように、容易に調整することができる。
前記樹脂の種類としては、ガラス転移点が50℃以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル-スチレン樹脂、アクリル-シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
インクを製造する際には、これらの樹脂からなる樹脂粒子として添加するのが好ましい。前記樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、インクに添加してもよい。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
2種以上の樹脂粒子を組み合わせる場合は、少なくとも1種類のガラス転移点(Tg)が50℃以上の樹脂をインクに含有し、ガラス転移点(Tg)が50℃未満の樹脂を併用してもよく、ガラス転移点(Tg)が50℃以上の樹脂粒子と、ガラス転移点(Tg)が0℃未満の樹脂粒子の2種類の樹脂粒子を少なくとも含むクリアインクとすることによって、クリアインクの乾燥膜が50℃以上及び0℃未満にガラス転移点(Tg)を有するように、容易に調整することができる。
【0034】
ガラス転移点(Tg)が50℃以上の樹脂粒子と、ガラス転移点(Tg)が0℃未満の樹脂粒子との2種類の樹脂粒子を少なくとも含むクリアインクを用いることにより、耐擦過性と密着性を両立させることができる。
ガラス転移点(Tg)が50℃以上の樹脂粒子と、ガラス転移点(Tg)が0℃未満の樹脂粒子の添加量比は、質量比で98:2~80:20が好ましく、ガラス転移点(Tg)が50℃以上の樹脂粒子を多く含むことがより好ましい。
ここで、前記樹脂粒子のガラス転移点(Tg)は、例えば、示差走査熱量計(TA-60WS及びDSC-60、株式会社島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0035】
本発明においては、前記樹脂の中でも、ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。ポリウレタン樹脂を添加することにはより、クリアインクを用いてインク膜を形成した際に、塗膜自体が強靭になる。それにより、塗膜の内部で破断して、塗膜の一部が剥がれたり、塗膜の表面状態が変化して、摩擦部の色味が変化することを抑制しやすくなる点から好ましい。
【0036】
-ポリウレタン樹脂-
ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0037】
前記ポリウレタン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0038】
-ポリオール-
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
-ポリエーテルポリオール-
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素原子を2個以上有する化合物の少なくとも1種を出発原料として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものなどが挙げられる。
【0040】
前記活性水素原子を2個以上有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記ポリエーテルポリオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、非常に優れた耐擦過性を付与できるインク用バインダーを得る点から、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
-ポリカーボネートポリオール-
また、前記ポリウレタン樹脂の製造に使用できるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるもの、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール-A、ビスフェノール-F、4,4’-ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール;ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
-ポリエステルポリオール-
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるもの、ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステル、これらの共重合ポリエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、これらの無水物又はエステル形成性誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
-ポリイソシアネート-
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐候性の点から、脂環式ジイソシアネートが好ましい。
【0049】
更に、少なくとも1種の脂環式ジイソシアネートを使用することにより、目的とする塗膜強度、及び耐擦過性を得やすくなる。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記脂環式ジイソシアネートの含有量としては、イソシアネート化合物全量に対して、60質量%以上が好ましい。
【0050】
[ポリウレタン樹脂の製造方法]
ポリウレタン樹脂は、特に制限はなく、従来一般的に用いられている製造方法により得ることができ、例えば、次の方法などが挙げられる。
まず、無溶剤下又は有機溶剤の存在下で、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとを、イソシアネート基が過剰になる当量比で反応させて、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを製造する。
次いで、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマー中のアニオン性基を必要に応じて中和剤により中和し、その後、鎖延長剤と反応させて、最後に必要に応じて系内の有機溶剤を除去することによって得ることができる。
【0051】
前記ポリウレタン樹脂の製造に使用できる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン等のアミド類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記鎖延長剤としては、例えば、ポリアミンやその他の活性水素基含有化合物などが挙げられる。
【0052】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類;ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン等のヒドラジン類;コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
前記その他の活性水素基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類;水などが挙げられる。これらは、インクの保存安定性が低下しない範囲内であれば、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記ポリウレタン樹脂としては、カーボネート基の高い凝集力により耐水性、耐熱性、耐摩耗性、耐候性、及び画像の耐擦過性の点から、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。前記ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂である場合、屋外用途のような過酷な環境において使用される記録物に適したインクが得られる。
【0055】
前記ポリウレタン樹脂としては、市販品を使用してもよく、例えば、ユーコートUX-485(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)、ユーコートUWS-145(ポリエステル系ポリウレタン樹脂)、パーマリンUA-368T(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)、パーマリンUA-200(ポリエーテル系ポリウレタン樹脂)(以上、三洋化成工業株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
クリアインク中に含まれる樹脂の含有量は、8質量%以上が好ましく、8質量%以上25質量%以下がより好ましい。樹脂の含有量が8質量%以上であると、少ないクリアインク量で低光沢及び高光沢を制御できる。一方、樹脂の含有量が25質量%を超えると、インクの吐出安定性が低下してしまうことがある。
【0057】
低光沢は、ドット球の高さ(パイルハイト)の高い孤立ドットを形成し、表面に凹凸を付与することにより実現される。
クリアインク中の樹脂の含有量が多いと、パイルハイトが高いドットが形成されやすくなり、低光沢を付与しやすい点から好ましい。
一方、高光沢は、表面の凹凸をクリアインクで埋めて、平滑表面を形成することで、平滑性を付与する。表面の凹凸をクリアインクで埋めるには、クリアインク中の樹脂の含有量が多いほうが、少ないクリアインク量で、表面の凹凸を埋めることができ、高光沢を付与しやすい点から好ましい。
【0058】
<界面活性剤>
クリアインクは、界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤をインクに添加することで、表面張力が低下し、紙等の記録媒体にインク滴が着弾した後の記録媒体中への浸透が速くなるため、フェザリングやカラーブリードを軽減することができる。
界面活性剤は、親水基の極性によりノニオン性、アニオン性、両性に分類される。
また、疎水基の構造により、フッ素系、シリコーン系、アセチレン系等に分類される。
本発明においては、主にフッ素系界面活性剤を用いるが、シリコーン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤を併用してもよい。
界面活性剤の含有量は、2質量%以下が好ましく、0.05質量%以上2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上2質量%以下が更に好ましい。界面活性剤の含有量を2質量%以下とすることにより、低光沢印刷モードにおいて、大きな光沢度低下が得られる。
【0059】
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、及びアニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)などが挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0060】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(S-1)式で表される、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【0061】
[一般式(S-1)]
【化1】
(但し、前記一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表し、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
【0062】
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社製)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社製)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社製)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社製)などが挙げられる。
【0063】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に下記一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表されるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0064】
[一般式(F-1)]
【化2】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【0065】
[一般式(F-2)]
2n+1-CHCH(OH)CH-O-(CHCHO)-Y
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はC2m+1でmは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-C2m+1でmは4~6の整数、又はC2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
【0066】
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。
この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、DIC株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印刷品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0067】
<<有機溶剤>>
クリアインクは有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水溶性有機溶剤などが挙げられる。なお、水溶性とは、例えば、25℃の水100gに5g以上溶解することを意味する。
【0068】
水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物;プロピレンカーボネイト、炭酸エチレンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
有機溶剤のクリアインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0070】
クリアインクは、その他の成分として、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などを必要に応じて含有することができる。
【0071】
-消泡剤-
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0072】
-防腐防黴剤-
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0073】
-防錆剤-
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0074】
-pH調整剤-
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0075】
クリアインクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印刷濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば、回転式粘度計(東機産業株式会社製、RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
クリアインクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
クリアインクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0076】
<被印刷物>
被印刷物としては、記録媒体として用いられるものに限られず、例えば、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツ等の衣料用布、テキスタイル、皮革などを適宜使用することができる。なお、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、被印刷物としてセラミックス、ガラス、金属などを使用することもできる。
記録媒体としては、特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材をいう。
前記非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
【0077】
本発明においては、低光沢印刷モードでは、光沢度が高い被印刷物を用いることが好ましい。光沢度が高い被印刷物の方がクリアインクによる低光沢効果が強調されやすい点から好ましい。
一方、高光沢印刷モードでは、光沢度が低い被印刷物を用いることが好ましい。光沢度が低い被印刷物の方がクリアインクによる高光沢効果が強調されやすい点から好ましい。
したがって、低光沢印刷モードで用いる被印刷物の光沢度をGmatteとし、高光沢印刷モードで用いる被印刷物の光沢度をGglossとすると、次式、Gmatte>Ggloss、を満たすことが好ましく、次式、Gmatte-Ggloss≧100、を満たすことがより好ましい。
【0078】
(印刷画像の光沢度制御方法)
被印刷物にインクを吐出して印刷層を設ける印刷工程と、
印刷された被印刷物を加熱する加熱工程と、
を含む印刷画像の光沢度制御方法であって、
前記インクが、樹脂、及び水を含有するクリアインクであり、
前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、
前記印刷画像の光沢度制御方法は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記低光沢印刷モードで印刷する場合には、加熱温度を高くする制御を行い、
前記高光沢印刷モードで印刷する場合には、加熱温度を低くする制御を行う。
【0079】
(印刷物)
本発明の印刷物は、被印刷物と、前記被印刷物上に印刷層とを有する印刷物であって、
前記印刷層が樹脂を含むクリアインクの乾燥膜からなり、
前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、
前記印刷物が、低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷画像と、高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷画像とを有し、
前記高光沢印刷画像の60°光沢度Gaと、高光沢印刷モードで用いる被印刷物の60°光沢度Gbとの光沢度差(Ga-Gb)が20以上であり、
前記低光沢印刷画像の60°光沢度Gcと、低光沢印刷モードで用いる被印刷物の60°光沢度Gdとの光沢度差(Gc-Gd)が-20以下である。
インクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法により画像形成して印刷物とすることができる。
【0080】
<記録装置、記録方法>
以下の記録装置、記録方法の説明では、ブラック(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクを用いた場合について説明するが、これらに代えて、あるいは、これらに加えて、クリアインクを用いればよい。
本発明で用いられるクリアインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
インクジェット印刷装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、インクジェット印刷装置には、卓上型だけでなく、広幅の記録装置や、例えば、ロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインク及び各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インク及び各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置、例えば、ロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について図1乃至図2を参照して説明する。図1は記録装置の斜視説明図である。図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えば、アルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱可能に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0081】
この記録装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0082】
なお、インクの使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
【0083】
インクの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。更に、インクとして用いて2次元の文字、画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段、乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物及び構造体に対して、加熱延伸、打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーター、操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0084】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
【0085】
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例
【0086】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に記載が無い場合、実施例における調製、作製、評価等は、室温25℃、湿度60%RHの条件下で行った。
【0087】
(調製例1)
<樹脂エマルジョン1の調製>
-ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の調製-
撹拌機、還流冷却管、及び温度計を挿入した反応容器に、ポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとの反応生成物(数平均分子量(Mn)1,000)1,500質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸(以下、「DMPA」とも称することがある)220質量部、及びN-メチルピロリドン(以下、「NMP」とも称することがある)1,347質量部を窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。
次に、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1,615質量部、ジブチルスズジラウリレート(触媒)2.6質量部を加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。この反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン194質量部を添加し、混合したものの中から4,340質量部を抜き出して、強撹拌下、水5,400質量部、及びトリエチルアミン15質量部の混合溶液の中に加えた。
次に、氷1,500質量部を投入し、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液783質量部を加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が30質量%となるように溶媒を留去し、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂エマルジョン1を得た。
得られたポリカーボネート系ポリウレタン樹脂エマルジョンについて、ガラス転移点の測定を行ったところ「53℃」であった。
【0088】
<ガラス転移点の測定方法>
前記樹脂エマルジョンのガラス転移点は、以下のようにして測定した。
まず、直径50mmのテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)製シャーレに樹脂エマルジョン4gを均一に広がるように入れ、50℃で1週間乾燥後、得られた樹脂膜から5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、該試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。
次いで、窒素雰囲気下、0℃から昇温速度10℃/minで150℃まで昇温し、その後、150℃から降温速度5℃/minで-80℃まで降温した後、更に昇温速度10℃/minで150℃まで昇温してDSC曲線を計測した。
得られたDSC曲線から、DSC-60システム中の解析プログラムを用いて、2回目の昇温時における変曲部からミッドポイント法で解析し、ガラス転移点(Tg)を求めた。
【0089】
(調製例2)
<樹脂エマルジョン2の調製>
-ポリエステル系ポリウレタン樹脂の調製-
撹拌機、温度計、窒素シール管及び冷却器の付いた容量2Lの反応容器に、メチルエチルケトンを100質量部、ポリエステルポリオール(1)(iPA/AA=6/4(モル比)とEG/NPG=1/9(モル比)から得られたポリエステルポリオール、数平均分子量:2,000、平均官能基数:2、iPA:イソフタル酸、AA:アジピン酸、EG:エチレングリコール、及びNPG:ネオペンチルグリコール)345質量部、及び2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)9.92質量部を仕込み、60℃にて均一に混合した。
その後、トリエチレングリコールジイソシアネート(TEGDI)40.5質量部、及びジオクチルチンジラウレート(DOTDL)0.08質量部を仕込み、72℃で3時間反応させて、ポリウレタン溶液を得た。
このポリウレタン溶液に、IPA80質量部、MEK220質量部、トリエタノールアミン(TEA)3.74質量部、及び水596質量部を仕込んで転相させた後、ロータリーエバポレーターにてMEK及びIPAを除去して、ポリウレタン樹脂エマルジョン1を得た。
得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水
溶液と、を添加して固形分濃度30質量%、pH8に調整した。
樹脂エマルジョン1と同様に、ガラス転移点の測定を行ったところ、「-4℃」であった。
【0090】
(調製例3)
<樹脂エマルジョン3の調製>
-ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の調製-
撹拌機、還流冷却管、及び温度計を挿入した反応容器に、ポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとの反応生成物(数平均分子量(Mn)1,000)1,500質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸(以下、「DMPA」とも称することがある)220質量部、及びN-メチルピロリドン(以下、「NMP」とも称することがある)1,347質量部を窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。
次に、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1,530質量部、ジブチルスズラウリレート(触媒)2.6質量部を加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。この反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン170質量部を添加し、混合したものの中から4,340質量部を抜き出して、強撹拌下、水5,400質量部、及びトリエチルアミン15質量部の混合溶液の中に加えた。
次に、氷1,500質量部を投入し、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液705質量部を加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が30質量%となるように溶媒を留去し、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂エマルジョン1を得た。
得られたポリカーボネート系ポリウレタン樹脂エマルジョンについて、ガラス転移点の測定を行ったところ「46℃」であった。
【0091】
(クリアインクの製造例1)
-クリアインクAの製造-
調製例1のポリウレタン樹脂エマルジョン1(固形分濃度:30質量%)25質量%、1,2-プロパンジオール19質量%、1,3-プロパンジオール11質量%、1,2-ブタンジオール3質量%、界面活性剤として商品名「FS-300」(デュポン社製、フッ素系界面活性剤、固形分濃度40質量%)6質量%、及び高純水36質量%を添加し、混合撹拌して混合物を調製した。
次いで、得られた混合物を、平均孔径が0.2μmのポリプロピレンフィルター(商品名:BetafineポリプロピレンプリーツフィルターPPGシリーズ、3M社製)にてろ過することにより、クリアインクAを作製した。
【0092】
(クリアインクの製造例2~7)
-クリアインクB~Gの製造-
クリアインクの製造例1において、表1-1及び表1-2に示すインク組成に変更した以外は、クリアインクの製造例1と同様にして、クリアインクB~Gを作製した。
【0093】
次に、得られたクリアインクA~Gについて、各クリアインクの乾燥膜のガラス転移点(Tg)を以下のようにして測定した。結果を表1-1及び表1-2に示した。
【0094】
<クリアインクの乾燥膜のガラス転移点(Tg)の測定>
示差走査熱量計(TA-60WS及びDSC-60、株式会社島津製作所製)を用いて以下のようにして測定した。
まず、直径50mmのテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)製シャーレにインク4gを均一に広がるように入れ、50℃で1週間乾燥後、得られたインク乾燥膜から5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、該試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。
次いで、窒素雰囲気下、0℃から昇温速度10℃/minで150℃まで昇温し、その後、150℃から降温速度5℃/minで-80℃まで降温した後、更に昇温速度10℃/minで150℃まで昇温してDSC曲線を計測した。
得られたDSC曲線から、DSC-60システム中の解析プログラムを用いて、2回目の昇温時における変曲部からミッドポイント法で解析し、クリアインクの乾燥膜のガラス転移点(Tg)を求めた。
【0095】
【表1-1】
【0096】
【表1-2】
【0097】
(マゼンタインクの製造例1)
<自己分散型マゼンタ顔料分散体の調製>
以下の処方混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、KDL型、メディア:直径0.3mmジルコニアボール使用)で7時間循環分散して自己分散型マゼンタ顔料分散体(顔料固形分濃度:15質量%)を得た。
・ピグメントレッド122(商品名:トナーマゼンタEO02、クラリアントジャパン株式会社製)・・・15質量部
・アニオン性界面活性剤(商品名:パイオニンA-51-B、竹本油脂株式会社製)・・・2質量部
・イオン交換水・・・83質量部
【0098】
<マゼンタインクの製造>
調製例1のポリウレタン樹脂エマルジョン1(固形分濃度:30質量%)25質量%、自己分散型マゼンタ顔料分散体(顔料固形分濃度:15質量%)20質量%、1,2-プロパンジオール20質量%、1,3-プロパンジオール11質量%、1,2-ブタンジオール3質量%、界面活性剤として商品名「FS-300」(デュポン社製、フッ素系界面活性剤、固形分濃度40質量%)6質量%、及び高純水15質量%を添加し、混合撹拌して、混合物を調製した。
次いで、得られた混合物を、平均孔径が0.2μmのポリプロピレンフィルター(商品名:BetafineポリプロピレンプリーツフィルターPPGシリーズ、3M社製)にてろ過することにより、マゼンタインク1を作製した。
【0099】
(実施例1)
<インクジェット印刷>
インクジェットプリンターGXe5500改造機(株式会社リコー製)のインクカートリッジにクリアインクの製造例1のクリアインクAを充填し、インクを充填したインクカートリッジをインクジェットプリンターGXe5500改造機に装着して、インクジェット印刷を実施した。
インクジェットプリンターGXe5500改造機には、印刷前、印刷中、及び印刷後において記録媒体を裏面から加熱することができるように、ヒーター(温度調節コントローラ、型式 MTCD、株式会社ミスミ製)を設けた。これにより、印刷前、及び印刷中においてヒーターにより加熱された記録媒体に印刷が可能となり、印刷後においてヒーターにより印刷物の加熱乾燥が可能となる。
高光沢印刷モード、及び低光沢印刷モードで記録媒体の種類、加熱条件、及び印刷画像を変更して印刷を実施した。
【0100】
-記録媒体-
高光沢印刷モードでは、記録媒体1として、株式会社ユポ・コーポレーション製合成紙VJFN160(白色ポリプロピレンフィルム、光沢度16(60°光沢値))を使用した。
低光沢印刷モードでは、記録媒体2として、リンテックサインシステム株式会社製ウインドウフィルムGIY-0305(透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、光沢度159(60°光沢値))を使用した。
【0101】
-加熱条件-
加熱条件は、高光沢印刷モードでは印刷前、印刷中、及び印刷後に配置した各ヒーター(加熱手段)の加熱温度を60℃、60℃、及び70℃に設定した。低光沢印刷モードでは各ヒーター(加熱手段)の加熱温度を65℃、65℃、及び70℃に設定した。印刷中の記録媒体の温度を測定すると、高光沢印刷モードの記録媒体温度(=Tgloss)は59℃であり、印刷中の高光沢印刷モードにおける加熱手段の温度(=HTgloss(℃))60℃である。また、印刷中の記録媒体の温度を測定すると、低光沢印刷モードの記録媒体温度(=Tmatte)は64℃であり、印刷中の低光沢印刷モードにおける加熱手段の温度(=HTmatte(℃))は65℃である。
印刷中の記録媒体の温度の測定は、デジタル放射温度センサ(FT-H10、株式会社キーエンス製)により行った。
高光沢印刷モードで印刷した画像は、画像解像度が600dpi×600dpiで印刷率が100%の全べた画像であった。
低光沢印刷モードで印刷した画像は、画像解像度が600dpi×600dpiで印刷率が40%のハーフトーン画像であった。
【0102】
-印刷率-
なお、印刷率については、ここでは、下記を意味する。
印刷率(%)=クリアインク印刷ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(ただし、前記式中、「クリアインク印刷ドット数」は単位面積当たりのクリアインクを実際に印刷したドット数であり、「縦解像度」及び「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。同じドット位置となるようにクリアインクを重ねて印刷する場合には、「クリアインク印刷ドット数」は単位面積当たりのクリアインクを実際に印刷した合計のドット数で表す。)
低光沢印刷モード、及び高光沢印刷モードのいずれの場合も、記録媒体上にクリアインクAを、直接、同じドット位置に重なるように1回重ね塗りすることにより印刷した。
次に、得られた印刷物について、以下のようにして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
【0103】
<光沢度>
クリアインクAを印刷したクリアインク印刷部、及びクリアインクAを印刷していないクリアインク未印刷部(記録媒体)のそれぞれの60°光沢値を、光沢度測定機器(マイクロトリグロス、BYK社製)を用いて測定した。なお、60°光沢値を光沢度とした。
【0104】
(実施例2)
実施例1において、高光沢印刷モードで印刷した画像を、画像解像度が600dpi×600dpiで印刷率が80%のハーフトーン画像に変更し、低光沢印刷モードで印刷した画像を、画像解像度が600dpi×600dpiで印刷率が70%のハーフトーン画像に変更した以外は、実施例1と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
【0105】
(実施例3)
実施例1において、加熱条件を、高光沢印刷モードでは印刷前、印刷中、及び印刷後の各ヒーターの加熱温度を50℃、50℃、及び70℃に設定し、低光沢印刷モードでは各ヒーターの加熱温度を70℃、70℃、及び70℃に設定した以外は、実施例1と同様にして、インクジェット印刷を行った。得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
なお、印刷中の記録媒体温度を測定すると、高光沢印刷モードの記録媒体温度(=Tgloss)は49℃であり、印刷中の高光沢印刷モードにおける加熱手段の温度(=HTgloss(℃))は50℃である。また、印刷中の記録媒体の温度を測定すると、低光沢印刷モードの記録媒体温度(=Tmatte)は68℃であり、印刷中の低光沢印刷モードにおける加熱手段の温度(=HTmatte(℃))は70℃である。
【0106】
(実施例4)
実施例3において、クリアインクの製造例1のクリアインクAをクリアインクの製造例2のクリアインクBに変更した以外は、実施例3と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
【0107】
(実施例5)
実施例3において、クリアインクの製造例1のクリアインクAをクリアインクの製造例3のクリアインクCに変更した以外は、実施例3と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
【0108】
(実施例6)
実施例3において、クリアインクの製造例1のクリアインクAをクリアインクの製造例4のクリアインクDに変更した以外は、実施例3と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
【0109】
(実施例7)
実施例3において、クリアインクの製造例1のクリアインクAをクリアインクの製造例5のクリアインクEに変更した以外は、実施例3と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
【0110】
(実施例8)
実施例3において、クリアインクの製造例1のクリアインクAをクリアインクの製造例6のクリアインクFに変更した以外は、実施例3と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
【0111】
(実施例9)
実施例6において、マゼンタインクの製造例1のマゼンタインク1を印刷した記録媒体を使用した以外は、実施例6と同様にして、インクジェット印刷を行った。即ち、マゼンタインクを印刷した塗膜の上にクリアインクDを印刷した。
記録媒体に印刷するマゼンタインクは、マゼンタインクの製造例1のマゼンタインク1を用いた。マゼンタインク1の印刷はクリアインクDと同じ印刷装置で行い、高光沢印刷モードに使用したマゼンタインク塗膜は、印刷前、印刷中、及び印刷後の各ヒーターの加熱温度を50℃、50℃、及び70℃に設定し、低光沢印刷モードで使用したマゼンタインク塗膜の各ヒーターの加熱温度を70℃、70℃、及び70℃に設定して、記録媒体にマゼンタインクのみを印刷した。マゼンタの印刷画像は、いずれも画像解像度が600dpi×600dpiで印刷率が100%の全べた画像を印刷した。
このマゼンタインク塗膜を印刷した記録媒体を、再度、印刷装置でクリアインクDを印刷した。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
【0112】
(実施例10)
<インクジェット印刷>
インクジェットプリンターGXe5500改造機(株式会社リコー製)のインクカートリッジに製造例1のクリアインクAを充填し、インクを充填したインクカートリッジをインクジェットプリンターGXe5500改造機に装着して、インクジェット印刷を実施した。
インクジェットプリンターGXe5500改造機には、印刷前、印刷中、及び印刷後に おいて記録媒体を裏面から加熱することができるように、ヒーター(温度調節コントローラ、型式 MTCD、株式会社ミスミ製)を設けた。これにより、印刷前、及び印刷中においてヒーターにより加熱された記録媒体に印刷が可能となり、印刷後においてヒーターにより印刷物の加熱乾燥が可能となる。
【0113】
-加熱条件-
高光沢印刷モードでは、加熱条件が、印刷前、印刷中、及び印刷後に配置した各ヒーター(加熱手段)の加熱温度を50℃、50℃、及び70℃に設定した。記録媒体温度(=Tgloss)は49℃であり、印刷中の加熱手段の温度(=HTgloss(℃))50℃である。
印刷中の記録媒体の温度の測定は、デジタル放射温度センサ(FT-H10、株式会社キーエンス製)により行った。画像解像度が600dpi×600dpiで印刷率が100%の全べた画像であった。
低光沢印刷モードでは各ヒーターの加熱温度を70℃、70℃、及び70℃に設定した。
低光沢モードでは、画像解像度が600dpi×600dpiで印刷率が40%のハーフトーン画像であった。
【0114】
-記録媒体-
高光沢印刷モードでは、記録媒体として、株式会社ユポ・コーポレーション製合成紙VJFN160(白色ポリプロピレンフィルム、光沢度16(60°光沢値))を使用した。記録媒体には、マゼンタインクの製造例1のマゼンタインク1を予め印刷してきおき、マゼンタインクを印刷した塗膜の上にクリアインクAを印刷した。マゼンタインク1の印刷はクリアインクAと同じ印刷装置で行い、印刷前、印刷中、及び印刷後の各ヒーターの加熱温度を50℃、50℃、及び70℃に設定し記録媒体にマゼンタインク1を印刷した。マゼンタの印刷画像は、いずれも画像解像度が600dpi×600dpiで印刷率が100%の全べた画像を印刷した。
このマゼンタインク塗膜を印刷した記録媒体を、再度、印刷装置でクリアインクAを印刷した。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
【0115】
低光沢印刷モードでは、記録媒体としてリンテックサインシステム株式会社製ウインドウフィルムGIY-0305(透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、光沢度159(60°光沢値))を使用した。
記録媒体には、マゼンタインクの製造例1のマゼンタインク1を予め印刷してきおき、マゼンタインクを印刷した塗膜の上にクリアインクAを印刷した。マゼンタインク1の印刷はクリアインクAと同じ印刷装置で行い、印刷前、印刷中、及び印刷後の各ヒーターの加熱温度を70℃、70℃、及び70℃に設定し記録媒体にマゼンタインク1を印刷した。マゼンタの印刷画像は、いずれも画像解像度が600dpi×600dpiで印刷率が100%の全べた画像を印刷した。
このマゼンタインク塗膜を印刷した記録媒体を、再度、印刷装置でクリアインクAを印刷した。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
【0116】
次に、高光沢印刷モード及び低光沢印刷モードで得られた印刷物について、以下のようにして、耐擦過性試験を行った。結果を表5に示した。
【0117】
<耐擦過性試験>
各印刷物について、学振形摩耗試験機(摩擦試験機II形)(装置名:染色物摩擦堅ろう試験機 AR-2(BC)、インテック株式会社製)にセットし、接触部に白綿布(JIS L 0803準拠 染色堅ろう度試験用添付白布 カナキン3号)を取り付けた摩擦子(荷重:500g)にて500往復及び1000往復の耐擦過性試験を実施した。試験後の塗膜を目視で確認し、ランク付け評価を行った。なお、500往復の試験で、ランク3以上を合格とする。
[評価基準]
ランク5:擦った跡が見られない。
ランク4:近くで良く見ると、若干擦った跡がみられる。
ランク3:近くで見ると、擦った部分の色変化、光沢変化がみられる。
ランク2:遠くからみても、擦った部分の色変化、光沢変化がみられる
ランク1:メディア地肌部の一部が露出している
【0118】
(実施例11)
実施例10において、クリアインクAをクリアインクBに変更した以外は、実施例10と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
また、実施例10と同様にして耐擦過性試験を行った。結果を表5に示した。
【0119】
(実施例12)
実施例10において、クリアインクAをクリアインクCに変更した以外は、実施例10と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
また、実施例10と同様にして、耐擦過性試験を行った。結果を表5に示した。
【0120】
(実施例13)
実施例10において、クリアインクAをクリアインクDに変更した以外は、実施例10と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
また、実施例10と同様にして、耐擦過性試験を行った。結果を表5に示した。
【0121】
(実施例14)
実施例10において、クリアインクAをクリアインクEに変更した以外は、実施例10と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
また、実施例10と同様にして、耐擦過性試験を行った。結果を表5に示した。
【0122】
(実施例15)
実施例10において、クリアインクAをクリアインクFに変更した以外は、実施例10と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
また、実施例10と同様にして、耐擦過性試験を行った。結果を表5に示した。
【0123】
(比較例1)
実施例2において、高光沢印刷モードのヒーター温度設定を、低光沢印刷モードのヒーター温度設定と同じ、65℃、65℃、及び70℃に設定した以外は、実施例2と同様にして、インクジェット印刷を行った。得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
なお、印刷中の記録媒体温度を測定すると、高光沢印刷モードの記録媒体温度(=Tgloss)は64℃であり、印刷中の高光沢印刷モードにおける加熱手段の温度(=HTgloss(℃))は65℃である。また、印刷中の記録媒体の温度を測定すると、低光沢印刷モードの記録媒体温度(=Tmatte)は64℃であり、印刷中の低光沢印刷モードにおける加熱手段の温度(=HTmatte(℃))は65℃である。
【0124】
(比較例2)
実施例1において、高光沢印刷モードのヒーター温度設定を、低光沢印刷モードのヒーター温度設定と同じ、65℃、65℃、及び70℃に設定した以外は、実施例1と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
なお、印刷中の記録媒体温度を測定すると、高光沢印刷モードの記録媒体温度(=Tgloss)は64℃であり、印刷中の高光沢印刷モードにおける加熱手段の温度(=HTgloss(℃))は65℃である。また、印刷中の記録媒体の温度を測定すると、低光沢印刷モードの記録媒体温度(=Tmatte)は64℃であり、印刷中の低光沢印刷モードにおける加熱手段の温度(=HTmatte(℃))は65℃である。
【0125】
(比較例3)
マゼンタインクの製造例1のマゼンタインクを記録媒体に印刷した。マゼンタインクの印刷はクリアインクと同じ印刷装置で行い、高光沢印刷モードではマゼンタインク塗膜は、印刷前、印刷中、及び印刷後の各ヒーターの加熱温度を50℃、50℃、及び70℃に設定し、低光沢印刷モードで使用したマゼンタインク塗膜の各ヒーターの加熱温度を70℃、70℃、及び70℃に設定して、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
マゼンタの印刷画像は、いずれも画像解像度が600dpi×600dpiで印刷率が100%の全べた画像を印刷している。
高光沢モード印刷のマゼンタインク塗膜部の光沢度は31(メディア地肌部光沢度=16)であり、低光沢印刷モードのマゼンタインク塗膜部の光沢度は104(メディア地肌部光沢度=159)であった。
【0126】
(比較例4)
比較例2において、低光沢印刷モードのヒーター温度設定を、60℃、60℃、及び70℃に設定した以外は、比較例2と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
【0127】
(比較例5)
実施例10において、クリアインクAを印刷しないで、マゼンタインク1のみを用いた以外は、実施例10と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
また、実施例10と同様にして、耐擦過性試験を行った。結果を表5に示した。
【0128】
(比較例6)
実施例10において、クリアインクAをクリアインクGに変更した以外は、実施例10と同様にして、インクジェット印刷を行った。
得られた印刷物について、実施例1と同様にして、光沢度を測定した。結果を表4に示した。
また、実施例10と同様にして、耐擦過性試験を行った。結果を表5に示した。
【0129】
【表2】
【0130】
【表3】
【0131】
【表4】
【0132】
【表5】
【0133】
表2から表5の結果から、Tmatte>Tgloss(HTmatte>HTgloss)である実施例1~8は、Tmatte=Tgloss(HTmatte=HTgloss)である比較例1及び2、Tmatte<Tgloss(HTmatte<HTgloss)である比較例4に比べて、低光沢印刷モードでは光沢が大きく低下し、高光沢印刷モードでは光沢が大きく上昇することがわかった。
また、実施例1と実施例2を比較すると、Dgloss-Dmatteが60%である実施例1は、Dgloss-Dmatteが10%である実施例2に比べて、大きな光沢変化が得られることがわかった。
また、実施例3、実施例4、及び実施例6を比較すると、クリアインク中の樹脂含有量が多いほうが、クリアインク印刷による光沢変化が大きくなり、クリアインク中の樹脂含有量が8質量%以上である実施例4及び実施例6は、クリアインク中の樹脂含有量が8質量%未満である実施例3に比べて、大きな光沢変化が得られることがわかった。
また、実施例4と実施例5を比較すると、界面活性剤の含有量が2質量%以下である実施例5は、界面活性剤の含有量が2質量%を超える実施例4に比べて、低光沢印刷モードにおいて、大きな光沢変化が得られることがわかった。
実施例9と比較例3を比較すると、比較例3のようにマゼンタインクを単独で印刷した時に比べ、実施例9のようにマゼンタインク塗膜の上にクリアインク印刷した場合のほうが、低光沢モードではより低光沢に、高光沢モードで印刷した場合より高光沢になっていることがわかった。
表5の結果から、実施例10~15と比較例5及び6を比較すると、カラーインクの上にクリアインクをオーバーコートする場合、50℃以上のガラス転移点(Tg)を有するクリアインクの乾燥膜を有する実施例10~15は、比較例5及び6に比べて、耐擦過性に優れていることが分かった。
【0134】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> インクを収容するインク収容部と、
インクを吐出して印刷層を形成する吐出ヘッドと、
被印刷物を加熱する加熱手段と、
を有するインクジェット印刷装置であって、
前記インクが、樹脂、及び水を含有するクリアインクであり、
前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、
前記インクジェット印刷装置は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記加熱手段が、該クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷領域の被印刷物の温度をTmatte(℃)とし、該クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷領域の被印刷物の温度をTgloss(℃)とすると、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱することを特徴とするインクジェット印刷装置である。
<2> 前記クリアインクの乾燥膜が、50℃以上、及び0℃未満にガラス転移点を有する前記<1>に記載のインクジェット印刷装置である。
<3> 前記クリアインクは、樹脂粒子Aと樹脂粒子Bを含み、前記樹脂粒子Aはガラス転移点が50℃以上であり、前記樹脂粒子Bはガラス転移点が0℃未満である前記<1>から<2>のいずれかに記載のインクジェット印刷装置である。
<4> 前記加熱手段が、次式、Tmatte-Tgloss≧10℃、を満たすように加熱する前記<1>から<3>のいずれかに記載のインクジェット印刷装置である。
<5> インクを収容するインク収容部と、
インクを吐出して印刷層を形成する吐出ヘッドと、
被印刷物を加熱する加熱手段と、
を有するインクジェット印刷装置であって、
前記インクが、樹脂、及び水を含有するクリアインクであり、
前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、
前記インクジェット印刷装置は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記低光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTmatte(℃)とし、前記高光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTgloss(℃)とすると、次式、HTmatte>HTgloss、を満たすように加熱することを特徴とするインクジェット印刷装置である。
<6> 前記低光沢印刷モードで用いる被印刷物の光沢度をGmatteとし、前記高光沢印刷モードで用いる被印刷物の光沢度をGglossとすると、次式、Gmatte>Ggloss、を満たす前記<1>から<5>のいずれかに記載のインクジェット印刷装置である。
<7> 前記クリアインク中の樹脂の含有量が8質量%以上である前記<1>から<6>のいずれかに記載のインクジェット印刷装置である。
<8> 前記樹脂がポリウレタン樹脂である前記<1>から<7>のいずれかに記載のインクジェット印刷装置である。
<9> 被印刷物にインクを吐出して印刷層を設ける印刷工程と、
印刷された被印刷物を加熱する加熱工程と、
を含むインクジェット印刷方法であって、
前記インクが、樹脂、及び水を含有するクリアインクであり、
前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、
前記インクジェット印刷方法は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記加熱工程において、該クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷領域の被印刷物の温度をTmatte(℃)とし、該クリアインクを被印刷物に付着させるときの前記高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷領域の被印刷物の温度をTgloss(℃)とすると、次式、Tmatte>Tgloss、を満たすように加熱することを特徴とするインクジェット印刷方法である。
<10> 被印刷物にインクを吐出して印刷層を設ける印刷工程と、
印刷された被印刷物を加熱手段により加熱する加熱工程と、
を含むインクジェット印刷方法であって、
前記インクが、樹脂、及び水を含有するクリアインクであり、
前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、
前記インクジェット印刷方法は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記低光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTmatte(℃)とし、前記高光沢印刷モードにおける前記加熱手段の温度をHTgloss(℃)とすると、次式、HTmatte>HTgloss、を満たすことを特徴とするインクジェット印刷方法である。
<11> 前記クリアインクの乾燥膜が、50℃以上、及び0℃未満にガラス転移点を有する前記<10>に記載のインクジェット印刷方法である。
<12> 前記クリアインクは、樹脂粒子Aと樹脂粒子Bを含み、前記樹脂粒子Aはガラス転移点が50℃以上であり、前記樹脂粒子Bはガラス転移点が0℃未満である前記<10>から<11>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法である。
<13> 被印刷物にインクを吐出して印刷層を設ける印刷工程と、
印刷された被印刷物を加熱する加熱工程と、
を含む印刷画像の光沢度制御方法であって、
前記インクが、樹脂、及び水を含有するクリアインクであり、
前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、
前記印刷画像の光沢度制御方法は、低光沢を付与する印刷モードである低光沢印刷モード及び高光沢を付与する印刷モードである高光沢印刷モードを有し、
前記低光沢印刷モードで印刷する場合には、加熱温度を高くする制御を行い、
前記高光沢印刷モードで印刷する場合には、加熱温度を低くする制御を行うことを特徴とする印刷画像の光沢度制御方法である。
<14> 被印刷物と、前記被印刷物上に印刷層とを有する印刷物であって、
前記印刷層が樹脂を含むクリアインクの乾燥膜からなり、
前記クリアインクの乾燥膜は、50℃以上にガラス転移点を有し、
前記印刷物が、低光沢印刷モードで印刷する低光沢印刷画像と、高光沢印刷モードで印刷する高光沢印刷画像とを有し、
前記高光沢印刷画像の60°光沢度Gaと、高光沢印刷モードで用いる被印刷物の60°光沢度Gbとの光沢度差(Ga-Gb)が20以上であり、
前記低光沢印刷画像の60°光沢度Gcと、低光沢印刷モードで用いる被印刷物の60°光沢度Gdとの光沢度差(Gc-Gd)が-20以下であることを特徴とする印刷物である。
【0135】
前記<1>から<8>のいずれかに記載のインクジェット印刷装置、前記<9>から<12>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法、前記<13>に記載の印刷画像の光沢度制御方法、及び前記<14>に記載の印刷物によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0136】
400 画像形成装置
401 外装
401c カバー
404 カートリッジホルダ
410、410k、410c、410m、410y メインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
L インク収容容器
【先行技術文献】
【特許文献】
【0137】
【文献】特開2015-3397号公報
図1
図2