(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ジスルフィド構造を有するレジスト下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20231205BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20231205BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20231205BHJP
C08K 5/372 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/11 502
H01L21/30 574
H01L21/30 573
C08L63/00 C
C08K5/372
(21)【出願番号】P 2019569605
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2019003574
(87)【国際公開番号】W WO2019151471
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2018017167
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018121282
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 貴文
(72)【発明者】
【氏名】後藤 裕一
(72)【発明者】
【氏名】染谷 安信
(72)【発明者】
【氏名】水落 龍太
(72)【発明者】
【氏名】上林 哲
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0081877(KR,A)
【文献】特開2014-010382(JP,A)
【文献】特開2017-120359(JP,A)
【文献】特開2013-033276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
H01L 21/027
C08L 63/00
C08K 5/372
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物と、3官能以上の化合物との反応生成物、及び溶剤を含む、レジスト下層膜形成組成物であって、
前記2官能以上の化合物が
1種であり、ジスルフィド結合を含むジカルボン酸であり、
前記3官能以上の化合物が含む官能基が各々同一であ
り、エポキシ基である、
レジスト下層膜形成組成物。
【請求項2】
前記3官能以上の化合物が、3~10つのエポキシ基を含む化合物である、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
前記ジスルフィド結合を含むジカルボン酸が、下記式(1):
【化1】
(式(1)中、X
1
及びX
2
は各々置換されてもよい炭素原子数1~10のアルキレン基、各々置換されてもよい炭素原子数6~40のアリーレン基又はそれらの組み合わせを示す。)で示される、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
前記式(1)中、X
1
及びX
2
が、各々炭素原子数1~3のアルキレン基である、請求項3に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
前記3官能以上の化合物が、複素環構造を含む、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
前記複素環構造が、トリアジン構造を含む、請求項5に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項7】
架橋触媒をさらに含む、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項8】
架橋剤をさらに含む、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項9】
界面活性剤をさらに含む、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物であることを特徴とするレジスト下層膜。
【請求項11】
半導体基板上に、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布しベークしてレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジストを塗布しベークしてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記レジストで被覆された半導体基板を露光する工程、露光後の前記レジスト膜を現像する工程を含む、
半導体装置の製造に用いるレジストパターンの形成方法。
【請求項12】
半導体基板上に、請求項1~請求項9の何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなるレジスト下層膜を形成する工程と、
前記レジスト下層膜の上にレジスト膜を形成する工程と、
レジスト膜に対する光又は電子線の照射とその後の現像によりレジストパターンを形成する工程と、
形成された前記レジストパターンを介して前記レジスト下層膜をエッチングすることによりパターン化されたレジスト下層膜を形成する工程と、
パターン化された前記レジスト下層膜により半導体基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
半導体基板上に、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布しベークしてレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジストを塗布しベークしてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記レジストで被覆された半導体基板を露光する工程、露光後の前記レジスト膜を現像し、パターニングする工程を含む、パターニングされた基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に高いドライエッチング速度を有するレジスト下層膜形成組成物、当該レジスト下層膜形成組成物を用いたレジスト下層膜及びその製造方法、レジストパターンの形成方法、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レジスト膜を露光する際、反射波がそのレジスト膜へ悪影響を及ぼす場合がある。これを抑制する目的で形成されるレジスト下層膜は、反射防止膜とも呼ばれている。
レジスト下層膜は、溶液状のレジスト下層膜形成用組成物を塗布し、硬化させることにより、容易に成膜できることが求められる。したがって、当該組成物は、加熱等によって容易に硬化すると共に、所定の溶剤に対する溶解性が高い化合物(ポリマー)を含むことが必要である。
レジスト下層膜上に形成されるレジストパターンは、基板に垂直な方向の断面形状が矩形状(いわゆるアンダーカット、裾引き等のないストレートな裾形状)であることが望ましい。例えば、レジストパターンがアンダーカット形状又は裾引き形状になると、レジストパターンの倒壊、リソグラフィー工程の際に被加工物(基板、絶縁膜等)を所望の形状又はサイズに加工できない、という問題が発生する。
また、レジスト下層膜には、上層のレジスト膜よりもドライエッチング速度が大きい、すなわちドライエッチング速度の選択比が大きいことが求められる。
特許文献1には、ジスルフィド結合を主鎖に有するポリマーを用いたレジスト下層膜形成組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体素子の製造において、高いドライエッチング速度を有するレジスト下層膜が依然として求められている。高いドライエッチング速度を有するレジスト下層膜とするためには、組成物のポリマーにヘテロ原子を含むものを適用することが知られている。
本願の発明者が、より高濃度にヘテロ原子をレジスト下層膜中に含有させるために、種々の化合物及びその反応生成物(オリゴマー及びポリマー)を検討した結果、特に3官能以上の多官能エポキシ化合物とジカルボン酸の反応生成物は、ポリマーが3次元化するために不溶化してレジスト下層膜としての適用が難しいが、ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物、好ましくはジカルボン酸を適用した場合、その反応生成物が溶剤中で不溶化することなく、高い溶解性を維持できることを見出した。さらにジスルフィド基を多官能エポキシ化合物に多点的に導入できるため、従来技術よりも高エッチレート化を達成できることを見出した。
本発明は、このような課題解決に鑑み、特に高ドライエッチング速度を有するレジスト下層膜形成組成物を提供することを目的としてなされたものである。また本発明は、当該レジスト下層膜形成組成物を用いたレジスト下層膜及びその製造方法、レジストパターンの形成方法、及び半導体装置の製造方法を提供することをも目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下を包含する。
[1] ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物と、3官能以上の化合物、及び溶剤とを含む、レジスト下層膜形成組成物。
[2] ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物と、3官能以上の化合物との反応生成物、及び溶剤を含む、レジスト下層膜形成組成物。
[3] 前記2官能以上の化合物が、ジスルフィド結合を含むジカルボン酸である、[1]又は[2]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[4] 前記3官能以上の化合物が、3つ以上のエポキシ基を含む化合物である、[1]又は[2]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[5] 前記ジスルフィド結合を含むジカルボン酸が、下記式(1):
【0006】
【化1】
(式(1)中、X
1及びX
2は各々置換されてもよい炭素原子数1~10のアルキレン基、各々置換されてもよい炭素原子数6~40のアリーレン基又はそれらの組み合わせを示す。)
で示される、[3]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[6] 前記式(1)中、X
1及びX
2が、各々炭素原子数1~3のアルキレン基である、[5]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[7] 前記3官能以上の化合物が、複素環構造を含む、[1]、[2]又は[4]何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[8] 前記複素環構造が、トリアジン構造を含む、[7]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[9] 架橋触媒をさらに含む、[1]~[8]のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[10] 架橋剤をさらに含む、[1]~[9]のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[11] 界面活性剤をさらに含む、[1]~[10]のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[12] [1]~[11]のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物であることを特徴とするレジスト下層膜。
[13] 半導体基板上に、[1]~[11]のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布しベークしてレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジストを塗布しベークしてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記レジストで被覆された半導体基板を露光する工程、露光後の前記レジスト膜を現像する工程を含む、半導体装置の製造に用いるレジストパターンの形成方法。
[14] 半導体基板上に、[1]~[11]の何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなるレジスト下層膜を形成する工程と、
前記レジスト下層膜の上にレジスト膜を形成する工程と、
レジスト膜に対する光又は電子線の照射とその後の現像によりレジストパターンを形成する工程と、
形成された前記レジストパターンを介して前記レジスト下層膜をエッチングすることによりパターン化されたレジスト下層膜を形成する工程と、
パターン化された前記レジスト下層膜により半導体基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする、半導体装置の製造方法。
[15] ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物と、3官能以上の化合物とを反応させる工程を含む、ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する反応生成物の製造方法。
[16] ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物と、3官能以上の化合物とを反応させる工程を含む、レジスト下層膜形成組成物の製造方法。
[17]半導体基板上に、[1]~[11]のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布しベークしてレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジストを塗布しベークしてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記レジストで被覆された半導体基板を露光する工程、露光後の前記レジスト膜を現像し、パターニングする工程を含む、パターニングされた基板の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、高ドライエッチング速度を有し、レジスト膜厚の薄膜化による種々の問題を解決でき、より微細な半導体基板の微細加工が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<レジスト下層膜形成組成物、ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する反応生成物の製造方法、レジスト下層膜形成組成物の製造方法>
本願のレジスト下層膜形成組成物は、ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物と、3官能以上の化合物、及び溶剤とを含む、レジスト下層膜形成組成物、である。
「官能」とは、物質の化学的属性や化学反応性に着目した概念で、官能基というときにはそれぞれに固有の物性や化学反応性が想定されているが、本願では、他の化合物と結合できる反応性置換基のことを言う。すなわち例えば3官能とは、上記化合物中に3つの反応性置換基を有する。反応性置換基の具体例としては、ヒドロキシ基、エポキシ基、アシル基、アセチル基、ホルミル基、ベンゾイル基、カルボキシ基、カルボニル基、アミノ基、イミノ基、シアノ基、アゾ基、アジ基、チオール基、スルホ基及びアリル基が挙げられるが、これらの中でもエポキシ基又はカルボキシ基が好ましく、エポキシ基が最も好ましい。
上記化合物が含む官能基は、各々同一でも異なっていてもよいが、各々同一であることが好ましい。
尚、「ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する」とは、一分子中に「ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する」ことを意味する。
ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物と、3官能以上の化合物は、各々1種又は2種以上であるが、各々3種以下であることが好ましく、各々2種以下であることが好ましく、最も好ましくは各々1種である。
上記3官能以上の化合物とジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物のモル比は、例えば1:0.1~10である。好ましくは1:1~5であり、さらに好ましくは1:3である。
上記化合物(ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物と、3官能以上の化合物)は、分子量が100以上であることが好ましい。上記化合物の分子量の上限は、例えば999である。
【0009】
本願のレジスト下層膜形成組成物は、ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物と、3官能以上の化合物との反応生成物(オリゴマー及び/又はポリマー)を含んでもよい。
上記スルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物と、3官能以上の化合物のモル比は例えば1:0.1~10である。好ましくは1:1~5であり、さらに好ましくは1:3である。
本願の反応生成物としては、オリゴマーであってもよく、分子量が300以上であることが好ましい。分子量の上限は、例えば999である。上記反応生成物(オリゴマー及び/又はポリマー)は、自体公知の方法による他、例えば特許第5041175号公報に記載の方法により製造することができる。
ポリマーとしては、重量平均分子量が、例えば1,000~100,000であり、又は1,100~50,000であり、又は1,200~30,000であり、又は1,300~20,000であるポリマーを使用することができる。
【0010】
本願のレジスト下層膜形成組成物は、上記化合物及び/又は上記反応生成物を含有してもよい。
【0011】
本願のレジスト下層膜形成組成物は、ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物であればよいが、ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能の化合物であることが好ましい。ジスルフィド結合を含むジカルボン酸であることがさらに好ましい。ジスルフィド結合が炭素原子数2以上のアルキレン基を中断しているジカルボン酸であることがさらに好ましい。ジスルフィド結合が炭素原子数2~10のアルキレン基を中断しているジカルボン酸であることがさらに好ましい。
前記ジスルフィド結合を含むジカルボン酸は、下記式(1):
【0012】
【化2】
(式(1)中、X
1及びX
2は各々置換されてもよい炭素原子数1~10のアルキレン基、各々置換されてもよい炭素原子数6~40のアリーレン基又はそれらの組み合わせを示す。)であることが好ましい。
【0013】
X1及びX2は同一であっても異なってもよいが、同一であることが好ましい。
上記炭素原子数1~10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、シクロプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、シクロブチレン基、1-メチル-シクロプロピレン基、2-メチル-シクロプロピレン基、n-ペンチレン基、1-メチル-n-ブチレン基、2-メチル-n-ブチレン基、3-メチル-n-ブチレン基、1,1-ジメチル-n-プロピレン基、1,2-ジメチル-n-プロピレン基、2,2-ジメチル-n-プロピレン基、1-エチル-n-プロピレン基、シクロペンチレン基、1-メチル-シクロブチレン基、2-メチル-シクロブチレン基、3-メチル-シクロブチレン基、1,2-ジメチル-シクロプロピレン基、2,3-ジメチル-シクロプロピレン基、1-エチル-シクロプロピレン基、2-エチル-シクロプロピレン基、n-ヘキシレン基、1-メチル-n-ペンチレン基、2-メチル-n-ペンチレン基、3-メチル-n-ペンチレン基、4-メチル-n-ペンチレン基、1,1-ジメチル-n-ブチレン基、1,2-ジメチル-n-ブチレン基、1,3-ジメチル-n-ブチレン基、2,2-ジメチル-n-ブチレン基、2,3-ジメチル-n-ブチレン基、3,3-ジメチル-n-ブチレン基、1-エチル-n-ブチレン基、2-エチル-n-ブチレン基、1,1,2-トリメチル-n-プロピレン基、1,2,2-トリメチル-n-プロピレン基、1-エチル-1-メチル-n-プロピレン基、1-エチル-2-メチル-n-プロピレン基、シクロヘキシレン基、1-メチル-シクロペンチレン基、2-メチル-シクロペンチレン基、3-メチル-シクロペンチレン基、1-エチル-シクロブチレン基、2-エチル-シクロブチレン基、3-エチル-シクロブチレン基、1,2-ジメチル-シクロブチレン基、1,3-ジメチル-シクロブチレン基、2,2-ジメチル-シクロブチレン基、2,3-ジメチル-シクロブチレン基、2,4-ジメチル-シクロブチレン基、3,3-ジメチル-シクロブチレン基、1-n-プロピル-シクロプロピレン基、2-n-プロピル-シクロプロピレン基、1-イソプロピル-シクロプロピレン基、2-イソプロピル-シクロプロピレン基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピレン基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピレン基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピレン基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-3-メチル-シクロプロピレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基又はn-デカニレン基が挙げられる。
【0014】
上記炭素原子数6~40のアリーレン基としては、フェニレン基、o-メチルフェニレン基、m-メチルフェニレン基、p-メチルフェニレン基、α-ナフチレン基、β-ナフチレン基、o-ビフェニリレン基、m-ビフェニリレン基、p-ビフェニリレン基、1-アントリレン基、2-アントリレン基、9-アントリレン基、1-フェナントリレン基、2-フェナントリレン基、3-フェナントリレン基、4-フェナントリレン基及び9-フェナントリレン基が挙げられる。
【0015】
上記アルキレン基、アリーレン基の置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0016】
前記式(1)中、X1及びX2が同一または異なり、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキレン基であることが好ましい。炭素数1~3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、プロピリデン基又はイソプロピレン基であることが好ましく、メチレン基又はエチレン基であることが特に好ましい。
上記X1及びX2は、上記1種又は2種以上の、置換されてもよい炭素原子数1~10のアルキレン基と、上記1種又は2種以上の、置換されてもよい炭素原子数6~40のアリーレン基との組み合わせでもよい。
好ましくは、上記1種の、置換されてもよい炭素原子数1~10のアルキレン基と、上記1種の、置換されてもよい炭素原子数6~40のアリーレン基との組み合わせである。 本願発明に用いられる前記式(1)で示されるジスルフィド結合を有するジカルボン酸(B)として特に好ましい化合物は、例えば下記式(B-1)~(B-4)を例示することができる。
【0017】
【化3】
好ましくはジスルフィド結合を有するジカルボン酸(B)で式(B-1)のジチオジグリコール酸又は式(B-3)の3,3’-ジチオジプロピオン酸である。
本願のレジスト下層膜形成組成物は、3官能以上の化合物を含めばよいが、3官能の化合物を含むことが好ましい。
尚、「3つ以上のエポキシ基を含む」とは、一分子中に「3つ以上のエポキシ基を含む」ことを意味する。
前記3官能以上の化合物は、好ましくは3つ以上のエポキシ基を含む化合物である。
前記3官能以上の化合物が、3~10つのエポキシ基を含む化合物であることが好ましい。3~8つのエポキシ基を含む化合物であることが好ましい。3~6つのエポキシ基を含む化合物であることが好ましい。3つ又は4つのエポキシ基を含む化合物であることがさらに好ましい。3つのエポキシ基を含む化合物であることが最も好ましい。
3つ以上のエポキシ基を含む化合物(A)としては例えば、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジル基含有イソシアヌレートを挙げることができる。本願発明に用いられるエポキシ化合物(A)として、下記式(A-1)~(A-15)を例示することができる。
【0018】
【化4】
式(A-1)は日産化学(株)製、商品名TEPIC-G、TEPIC-S、TEPIC-SS、TEPIC-HP、TEPIC-L(いずれも1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌル酸)として入手することができる。
式(A-2)は日産化学(株)製、商品名TEPIC-VLとして入手することができる。
式(A-3)は日産化学(株)製、商品名TEPIC-FLとして入手することができる。
式(A-4)は日産化学(株)製、商品名TEPIC-UCとして入手することができる。
式(A-5)はナガセケムテック(株)製、商品名デナコールEX-411として入手することができる。
式(A-6)はナガセケムテック(株)製、商品名デナコールEX-521として入手することができる。
式(A-7)は三菱ガス化学(株)製、商品名TETRAD-Xとして入手することができる。
式(A-8)は昭和電工(株)製、商品名BATGとして入手することができる。
式(A-9)は新日鉄住金化学(株)製、商品名YH-434Lとして入手することができる。
式(A-10)は旭有機材工業(株)製、商品名TEP-Gとして入手することができる。
式(A-11)はDIC(株)製、商品名EPICLON HP-4700として入手することができる。
式(A-12)は(株)ダイセル製、商品名エポリード GT401として入手することができる。尚、a、b、c、dはそれぞれ0又は1であり、a+b+c+d=1である。
【0019】
前記3官能以上の化合物が、複素環構造を含むことが好ましい。
前記複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドール、プリン、キノリン、イソキノリン、キヌクリジン、クロメン、チアントレン、フェノチアジン、フェノキサジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、カルバゾール、トリアジンオン、トリアジンジオン及びトリアジントリオンが挙げられる。
前記複素環構造が、トリアジンオン、トリアジンジオン及びトリアジントリオン構造であることが好ましく、トリアジントリオン構造であることが最も好ましい。
3つ以上のエポキシ基を含む化合物(A)で特に好ましくは式(A-1)の1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌル酸である。または(A-13)のトリグリシジルアセテートイソシアヌル酸である。
本願のジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能の化合物と、3官能の化合物は、具体的には下記の式(P-1)~式(P-5)の構造を有する反応生成物であってもよい。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【化9】
さらに本発明のレジスト下層膜形成組成物は、ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物及び3官能以上の化合物とは異なる、1種又は2種以上の化合物をさらに含有してもよい。化合物としては、例えば酸性基及びヒドロキシ基を含む化合物が挙げられる。具体例としては、グリコール酸が挙げられる。
【0025】
[溶媒]
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、上記各成分を、有機溶剤に溶解させることによって製造でき、均一な溶液状態で用いられる。
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物の溶媒としては、上記化合物、又はその反応生成物を溶解できる溶媒であれば、特に制限なく使用することができる。特に、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は均一な溶液状態で用いられるものであるため、その塗布性能を考慮すると、リソグラフィー工程に一般的に使用される溶媒を併用することが推奨される。
前記有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、4-メチル-2-ペンタノール、2―ヒドロキシイソ酪酸メチル、2―ヒドロキシイソ酪酸エチル、エトキシ酢酸エチル、酢酸2-ヒドロキシエチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2-ヘプタノン、メトキシシクロペンタン、アニソール、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの溶媒の中でプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、及びシクロヘキサノン等が好ましい。特にプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0026】
[架橋触媒]
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、任意成分として、架橋反応を促進させるために、架橋触媒を含有することができる。当該架橋触媒としては、酸性化合物、塩基性化合物に加え、熱により酸又は塩基が発生する化合物を用いることができる。酸性化合物としては、スルホン酸化合物又はカルボン酸化合物を用いることができ、熱により酸が発生する化合物としては、熱酸発生剤を用いることができる。
スルホン酸化合物又はカルボン酸化合物として、例えば、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、ピリジニウム-p-トルエンスルホネート、サリチル酸、カンファースルホン酸、5-スルホサリチル酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ピリジニウム-4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、4-ニトロベンゼンスルホン酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸が挙げられる。
熱酸発生剤として、例えば、K-PURE〔登録商標〕CXC-1612、同CXC-1614、同TAG-2172、同TAG-2179、同TAG-2678、同TAG2689(以上、King Industries社製)、及びSI-45、SI-60、SI-80、SI-100、SI-110、SI-150(以上、三新化学工業株式会社製)が挙げられる。
これら架橋触媒は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、塩基性化合物としては、アミン化合物又は水酸化アンモニウム化合物を用いることができ、熱により塩基が発生する化合物としては、尿素を用いることができる。
【0027】
アミン化合物として、例えば、トリエタノールアミン、トリブタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリノルマルプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリノルマルブチルアミン、トリ-tert-ブチルアミン、トリノルマルオクチルアミン、トリイソプロパノールアミン、フェニルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、及びジアザビシクロオクタン等の第3級アミン、ピリジン及び4-ジメチルアミノピリジン等の芳香族アミンが挙げられる。また、ベンジルアミン及びノルマルブチルアミン等の第1級アミン、ジエチルアミン及びジノルマルブチルアミン等の第2級アミンもアミン化合物として挙げられる。これらのアミン化合物は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
水酸化アンモニウム化合物としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリエチルアンモニウム、水酸化セチルトリメチルアンモニウム、水酸化フェニルトリメチルアンモニウム、水酸化フェニルトリエチルアンモニウムが挙げられる。
また、熱により塩基が発生する化合物としては、例えば、アミド基、ウレタン基又はアジリジン基のような熱不安定性基を有し、加熱することでアミンを生成する化合物を使用することができる。その他、尿素、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムクロリド、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、コリンクロリドも熱により塩基が発生する化合物として挙げられる。
前記レジスト下層膜形成組成物が架橋触媒を含む場合、その含有量は、レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して、0.0001~20重量%、好ましくは0.01~15重量%、さらに好ましくは0.1~10質量%である。
上記の中でも、酸性化合物及び/又は熱により酸が発生する化合物(架橋酸触媒)が好ましい。
【0028】
[架橋剤]
本発明のレジスト下層膜形成組成物は架橋剤成分を含むことができる。その架橋剤としては、メラミン系、置換尿素系、またはそれらのポリマー系等が挙げられる。好ましくは、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋剤であり、メトキシメチル化グリコールウリル、ブトキシメチル化グリコールウリル、メトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン、メトキシメチル化ベンゾグワナミン、ブトキシメチル化ベンゾグワナミン、メトキシメチル化尿素、ブトキシメチル化尿素、メトキシメチル化チオ尿素、またはメトキシメチル化チオ尿素等の化合物である。また、これらの化合物の縮合体も使用することができる。
また、上記架橋剤としては耐熱性の高い架橋剤を用いることができる。耐熱性の高い架橋剤としては分子内に芳香族環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)を有する架橋形成置換基を含有する化合物を用いることができる。この化合物は下記式(5-1)の部分構造を有する化合物や、下記式(5-2)の繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0029】
【化10】
上記R
11、R
12、R
13、及びR
14は水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基である。炭素原子数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等が挙げられる。
m1は1≦m1≦6-m2、m2は1≦m2≦5、m3は1≦m3≦4-m2、m4は1≦m4≦3である。
式(5-1)及び式(5-2)の化合物、ポリマー、オリゴマーは以下に例示される。
【0030】
【0031】
【化12】
上記化合物は旭有機材工業(株)、本州化学工業(株)の製品として入手することができる。例えば上記架橋剤の中で式(6-22)の化合物は旭有機材工業(株)、商品名TMOM-BPとして入手することができる。架橋剤の添加量は、使用する塗布溶剤、使用する下地基板、要求される溶液粘度、要求される膜形状などにより変動するが、レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して0.001~80重量%、好ましくは0.01~50重量%、さらに好ましくは0.1~40重量%である。これら架橋剤は自己縮合による架橋反応を起こすこともあるが、本発明の上記のポリマー中に架橋性置換基が存在する場合は、それらの架橋性置換基と架橋反応を起こすことができる。
【0032】
[界面活性剤]
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、任意成分として、半導体基板に対する塗布性を向上させるために界面活性剤を含有することができる。前記界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ〔登録商標〕EF301、同EF303、同EF352(三菱マテリアル電子化成株式会社製)、メガファック〔登録商標〕F171、同F173、同R-30、同R-30N、同R-40、同R-40-LM(DIC株式会社製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム株式会社製)、アサヒガード〔登録商標〕AG710、サーフロン〔登録商標〕S-382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子株式会社製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業株式会社製)を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。前記レジスト下層膜形成組成物が界面活性剤を含む場合、その含有量は、レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して、0.0001~10重量%、好ましくは0.01~5重量%である。
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物の固形分は通常0.1~70質量%、好ましくは0.1~60質量%とする。固形分はレジスト下層膜形成組成物から溶媒を除いた全成分の含有割合である。固形分中における本願の化合物又は反応生成物の割合は、1~100質量%、1~99.9質量%、50~99.9質量%、50~95質量%、50~90質量%の順で好ましい。
【0033】
[その他の成分]
本発明のレジスト下層膜形成組成物には、吸光剤、レオロジー調整剤、接着補助剤などを添加することができる。レオロジー調整剤は、レジスト下層膜形成組成物の流動性を向上させるのに有効である。接着補助剤は、半導体基板またはレジストと下層膜の密着性を向上させるのに有効である。吸光剤としては例えば、「工業用色素の技術と市場」(CMC出版)や「染料便覧」(有機合成化学協会編)に記載の市販の吸光剤、例えば、C.I.Disperse Yellow 1,3,4,5,7,8,13,23,31,49,50,51,54,60,64,66,68,79,82,88,90,93,102,114及び124;C.I.Disperse Orange 1,5,13,25,29,30,31,44,57,72及び73;C.I.Disperse Red 1,5,7,13,17,19,43,50,54,58,65,72,73,88,117,137,143,199及び210;C.I.Disperse Violet 43;C.I.Disperse Blue 96;C.I.Fluorescent Brightening Agent 112,135及び163;C.I.Solvent Orange2及び45;C.I.Solvent Red 1,3,8,23,24,25,27及び49;C.I.Pigment Green 10;C.I.Pigment Brown 2等を好適に用いることができる。上記吸光剤は通常、レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下の割合で配合される。
【0034】
レオロジー調整剤は、主にレジスト下層膜形成組成物の流動性を向上させ、特にベーキング工程において、レジスト下層膜の膜厚均一性の向上やホール内部へのレジスト下層膜形成組成物の充填性を高める目的で添加される。具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソオクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、またはノルマルブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体を挙げることができる。これらのレオロジー調整剤は、レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常30質量%未満の割合で配合される。
接着補助剤は、主に基板あるいはレジストとレジスト下層膜形成組成物の密着性を向上させ、特に現像においてレジストが剥離しないようにする目的で添加される。具体例としては、トリメチルクロロシラン、ジメチルメチロールクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメチロールエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’-ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、メチロールトリクロロシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環式化合物や、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア等の尿素、またはチオ尿素化合物を挙げることができる。これらの接着補助剤は、レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常5質量%未満、好ましくは2質量%未満の割合で配合される。
【0035】
[レジスト下層膜、レジストパターン、半導体装置及びパターニングされた基板の製造方法]
以下、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物を用いて製造されるレジスト下層膜、レジストパターン形成方法、パターニングされた基板の製造方法及び半導体装置の製造方法について説明する。
本発明に係るレジストパターンは、上記したレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し、焼成することにより製造することができる。
本発明のレジスト下層膜形成組成物が塗布される半導体基板としては、例えば、シリコンウエハ、ゲルマニウムウエハ、及びヒ化ガリウム、リン化インジウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化アルミニウム等の化合物半導体ウエハが挙げられる。
表面に無機膜が形成された半導体基板を用いる場合、当該無機膜は、例えば、ALD(原子層堆積)法、CVD(化学気相堆積)法、反応性スパッタ法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スピンコーティング法(スピンオングラス:SOG)により形成される。前記無機膜として、例えば、ポリシリコン膜、酸化ケイ素膜、窒化珪素膜、BPSG(Boro-Phospho Silicate Glass)膜、窒化チタン膜、窒化酸化チタン膜、タングステン膜、窒化ガリウム膜、及びヒ化ガリウム膜が挙げられる。
このような半導体基板上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明のレジスト下層膜形成組成物を塗布する。その後、ホットプレート等の加熱手段を用いてベークすることによりレジスト下層膜を形成する。ベーク条件としては、ベーク温度100℃~400℃、ベーク時間0.3分~60分間の中から適宜、選択される。好ましくは、ベーク温度120℃~350℃、ベーク時間0.5分~30分間、より好ましくは、ベーク温度150℃~300℃、ベーク時間0.8分~10分間である。
形成されるレジスト下層膜の膜厚としては、例えば0.001μm(1nm)~10μm、好ましくは0.002μm(2nm)~1μm、より好ましくは0.005μm(5nm)~0.5μm(500nm)である。ベーク時の温度が、上記範囲より低い場合には架橋が不十分となり、形成される保護膜の、レジスト溶剤又は塩基性過酸化水素水溶液に対する耐性が得られにくくなることがある。一方、ベーク時の温度が上記範囲より高い場合は、レジスト下層膜が熱によって分解してしまうことがある。
【0036】
レジスト下層膜の上に自体公知の方法で塗布、焼成して形成されるフォトレジストとしては露光に使用される光に感光するものであれば特に限定はない。ネガ型フォトレジスト及びポジ型フォトレジストのいずれも使用できる。ノボラック樹脂と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、及び酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジストなどがある。例えば、JSR(株)製商品名V146G、シプレー社製商品名APEX-E、住友化学工業(株)製商品名PAR710、及び信越化学工業(株)製商品名AR2772、SEPR430等が挙げられる。また、例えば、Proc.SPIE,Vol.3999,330-334(2000)、Proc.SPIE,Vol.3999,357-364(2000)、やProc.SPIE,Vol.3999,365-374(2000)に記載されているような、含フッ素原子ポリマー系フォトレジストを挙げることができる。
【0037】
露光は、所定のパターンを形成するためのマスク(レチクル)を通して行われ、例えば、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV(極端紫外線)またはEB(電子線)が使用される。現像にはアルカリ現像液が用いられ、現像温度5℃~50℃、現像時間10秒~300秒から適宜選択される。アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第4級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。さらに、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びコリンである。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。アルカリ現像液に代えて、酢酸ブチル等の有機溶媒で現像を行い、フォトレジストのアルカリ溶解速度が向上していない部分を現像する方法を用いることもできる。
次いで、形成したレジストパターンをマスクとして、前記レジスト下層膜をドライエッチングする。その際、用いた半導体基板の表面に前記無機膜が形成されている場合、その無機膜の表面を露出させ、用いた半導体基板の表面に前記無機膜が形成されていない場合、その半導体基板の表面を露出させる。
【実施例】
【0038】
次に実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記合成例で得られたポリマーの重量平均分子量の測定に用いた装置等を示す。
装置:東ソー株式会社製HLC-8320GPC
GPCカラム:Shodex〔登録商標〕・Asahipak〔登録商標〕(昭和電工(株))
カラム温度:40℃
流量:0.6mL/分
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)
標準試料:ポリスチレン(東ソー株式会社)
【0039】
<実施例1>
1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌル酸(製品名:TEPIC-SS、日産化学(株)製)4.00g、ジチオジグリコール酸7.42g、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド0.38gにプロピレングリコールモノメチルエーテル47.19gを加えた反応フラスコ中を窒素雰囲気下、100℃で20時間加熱撹拌することで透明な反応生成物の溶液が得られた。式(C-1)に相当する反応生成物が得られ、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは880であった。尚、式(C-1)中、a:b=100:300(モル比)である。
前記式(C-1)に相当する反応生成物の溶液(固形分は17.5重量%)6.65g、架橋酸触媒としてピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート0.03g、界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック〔商品名〕R-40、フッ素系界面活性剤)0.001g、プロピレングリコールモノメチルエーテル11.43g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.88gを加え、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0040】
【0041】
<実施例2>
1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌル酸(製品名:TEPIC-SS、日産化学(株)製)4.00g、3,3’-ジチオジプロピオン酸8.56g、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド0.38gにプロピレングリコールモノメチルエーテル51.76gを加えた反応フラスコ中を窒素雰囲気下、100℃で21時間加熱撹拌することで透明な反応生成物の溶液が得られた。式(C-2)に相当する反応生成物が溶液として得られ、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは5700であった。尚、式(C-2)中、a:b=100:300(モル比)である。
前記式(C-2)に相当する反応生成物の溶液(固形分は16.4重量%)7.09g、架橋酸触媒としてピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート0.03g、界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック〔商品名〕R-40、フッ素系界面活性剤)0.001g、プロピレングリコールモノメチルエーテル11.00g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.88gを加え、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0042】
【0043】
<実施例3>
1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌル酸(製品名:TEPIC-SS、日産化学(株)製)4.00g、3,3’-ジチオジプロピオン酸4.40g、グリコール酸1.59g、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド0.39gにプロピレングリコールモノメチルエーテル41.51gを加えた反応フラスコ中を窒素雰囲気下、100℃で15時間加熱撹拌することで透明な反応生成物の溶液が得られた。式(C-3)に相当する反応生成物が得られ、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1400であった。尚、式(C-3)中、a:b:c=100:150:150(モル比)である。
前記式(C-3)に相当する反応生成物の溶液(固形分は18.2重量%)6.41g、架橋酸触媒としてピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート0.03g、界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック〔商品名〕R-40、フッ素系界面活性剤)0.001g、プロピレングリコールモノメチルエーテル11.67g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.88gを加え、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0044】
【0045】
<合成例1>
米国特許第3230220号明細書に記載の方法に従って合成したトリカルボキシメチルイソシアヌル酸(TAICA)38.70g、N-メチル-2-ピロリドン(関東化学(株)製)300.00g、アリルブロミド(東京化成工業(株)製)70.91g、炭酸カリウム(関東化学(株)製)79.38gを仕込み、80~90℃まで昇温した。その後、2時間反応を行い反応が恒量となったことを確認した。反応終了後、トルエン(関東化学(株)製)580.50gを追加した。ろ過を行い、水580.50gで3回水洗した。有機層を濃縮乾燥した後にエタノール(関東化学(株)製)387.00gを仕込み、20-30℃で30分撹拌した。撹拌終了後、ろ過し、得られた結晶を乾燥したところ、式(М-1)で示される目的の生成物(トリアリルアセテートイソシアヌル酸:TAAICA)を44.32g、収率85%で得た。
【0046】
【0047】
<合成例2>
合成例1にて合成したTAAICA44.32g、クロロホルム(関東化学(株)製)443.20gを仕込み、そこへm-クロロ過安息香酸(東京化成工業(株)製)125.06gを加えた。47時間反応を行った。反応終了後、クロロホルム(関東化学(株)製)88.64gを追加した。更に、5%炭酸水素ナトリウム(関東化学(株)製)886.40gで洗浄した。引き続き、10%亜硫酸ナトリウム(関東化学(株)製)443.20g、5%炭酸水素ナトリウム(関東化学(株)製)886.40gで洗浄し、さらに水443.20gで2回洗浄した。濃縮後、カラム精製を行った。カラム精製後、式(A-13)で示される目的の生成物トリグリシジルアセテートイソシアヌル酸:TAGICA)を41.31g、収率84%で得た。
【0048】
【0049】
<実施例4>
合成例2で得たTAGICA 9.00g、ジチオジグリコール酸6.99g、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド0.53gにプロピレングリコールモノメチルエーテル66.11gを加えた反応フラスコ中を窒素雰囲気下、70℃で23時間加熱撹拌することで透明な式(C-4)に相当する反応生成物が得られ、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3000であった。尚、式(C-4)中、a:b=100:200(モル比)である。
前記式(C-4)に相当する反応生成物の溶液(固形分は11.56重量%)8.31g、架橋酸触媒としてピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート0.04g、界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック〔商品名〕R-40、フッ素系界面活性剤)0.001g、プロピレングリコールモノメチルエーテル9.75g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.90gを加え、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0050】
【0051】
<比較例1>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(製品名:MADGIC、四国化成工業(株)製)6.00g、3,3’-ジチオジプロピオン酸4.70g、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド0.40gにプロピレングリコールモノメチルエーテル44.39gを加えた反応フラスコ中を窒素雰囲気下、100℃で24時間加熱撹拌することで透明な反応生成物の溶液が得られた。式(D-1)に相当する反応生成物が得られ、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3900であった。尚、式(D-1)中、a:b=100:105(モル比)である。
前記式(D-1)に相当する反応生成物の溶液(固形分は17.0重量%)6.78g、架橋酸触媒としてピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート0.05g、界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック〔商品名〕R-40、フッ素系界面活性剤)0.001g、プロピレングリコールモノメチルエーテル11.30g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.88gを加え、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0052】
【0053】
<比較例2>
ジグリシジルジメチルヒダントイン(製品名:DG-DMH、四国化成工業(株)製、30重量%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)15.00g、3,3’-ジチオジプロピオン酸4.32g、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド0.36gにプロピレングリコールモノメチルエーテル10.84gを加えた反応フラスコ中を窒素雰囲気下、100℃で24時間加熱撹拌することで透明な反応生成物の溶液が得られた。式(D-2)に相当する反応生成物が得られ、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3500であった。尚、式(D-2)中、a:b=100:105(モル比)である。
前記式(D-2)に相当する反応生成物の溶液(固形分は12.4重量%)9.29g、架橋酸触媒としてピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート0.04g、界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック〔商品名〕R-40、フッ素系界面活性剤)0.001g、プロピレングリコールモノメチルエーテル8.79g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.88gを加え、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0054】
【0055】
<比較例3>
テレフタル酸ジグリシジル(製品名:デナコールEX-711、ナガセケムテックス(株)製)6.00g、3,3’-ジチオジプロピオン酸4.56g、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド0.38gにプロピレングリコールモノメチルエーテル43.77gを加えた反応フラスコ中を窒素雰囲気下、100℃で24時間加熱撹拌することで透明な反応生成物の溶液が得られた。式(D-3)に相当する反応生成物が得られ、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4500であった。尚、式(D-3)中、a:b=100:105(モル比)である。
前記式(D-3)に相当する反応生成物の溶液(固形分は14.8量%)7.82g、架橋酸触媒としてピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート0.04g、界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック〔商品名〕R-40、フッ素系界面活性剤)0.001g、プロピレングリコールモノメチルエーテル10.25g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.88gを加え、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0056】
【0057】
<比較例4>
1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌル酸(製品名:TEPIC-SS、日産化学(株)製)4.00g、2,2’-チオジグリコール酸6.11g、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド0.38gにプロピレングリコールモノメチルエーテル41.97gを加えた反応フラスコ中を窒素雰囲気下、100℃で21時間加熱撹拌し、式(D-4)に相当する樹脂溶液の作成を試みたが、反応生成物の一部が不溶物として析出した。尚、式(D-4)中、a:b=100:300(モル比)である。
【0058】
【0059】
<比較例5>
1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌル酸(製品名:TEPIC-SS、日産化学(株)製)4.00g、メチレンビス(チオグリコール酸)7.99g、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド0.38gにプロピレングリコールモノメチルエーテル49.47gを加えた反応フラスコ中を窒素雰囲気下、100℃で21時間加熱撹拌し、式(D-5)に相当する樹脂溶液の作成を試みたが、反応生成物の一部が不溶物として析出した。尚、式(D-5)中、a:b=100:300(モル比)である。
【0060】
【0061】
<比較例6>
1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌル酸(製品名:TEPIC-SS、日産化学(株)製)4.00g、(エチレンンジチオ)二酢酸8.56g、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド0.38gにプロピレングリコールモノメチルエーテル51.76gを加えた反応フラスコ中を窒素雰囲気下、100℃で21時間加熱撹拌し、式(D-6)に相当する樹脂溶液の作成を試みたが、反応生成物の一部が不溶物として析出した。尚、式(D-6)中、a:b=100:300(モル比)である。
【0062】
【0063】
〔反応生成物の溶解性評価〕
実施例1~実施例4、及び比較例1~比較例6で得られた反応生成物を含む反応溶液の様態を表1に示す。
【0064】
【表1】
上記の結果より、実施例1~実施例4で示される3官能以上のエポキシ基を含む化合物とジスルフィド結合を含むジカルボン酸から得られる反応生成物を含む反応溶液は均一な溶液状態を示していたものの、比較例4~比較例6で示される3官能以上のエポキシ基を含む化合物とジスルフィド結合を含まないジカルボン酸から得られる反応生成物は反応溶液中で不溶物が析出した。したがって、実施例1~実施例4で得られる反応生成物はレジスト溶剤である反応溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)に対して高い溶解性を示すことから、レジスト下層膜形成組成物として好適に用いることができる。
【0065】
〔レジスト溶剤耐性の評価〕
実施例1~実施例4及び比較例1~比較例3で調製されたリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物をスピンコーターにてシリコンウェハー上に塗布(スピンコート)した。ホットプレート上で215℃または250℃、1分間ベーク(焼成)し、膜厚200nmのレジスト下層膜を形成した。尚、レジスト下層膜の膜厚測定には、光干渉膜厚計(Nanospec AFT6100、ナノメトリクス社製)を用いた。次に、ウェハ上に製膜されたレジスト下層膜のレジスト溶剤耐性を確認するために、プロピレングリコールモノメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを重量比7対3で混合した溶剤に、成膜したレジスト下層膜を1分間浸漬し、スピンドライ後に100℃、30秒間ベークした。混合溶剤を浸漬する前後のレジスト下層膜の膜厚を測定した。
レジスト溶剤耐性の評価は、((溶剤浸漬前の膜厚)-(溶剤浸漬後の膜厚))÷(溶剤浸漬前の膜厚)×100の計算式から、溶剤浸漬によって除去されたレジスト下層膜の膜厚減少率(%)を評価した。尚、膜厚減少率が約1%以下であれば十分なレジスト溶剤耐性を有すると言える。このレジスト下層膜の膜厚減少率(%)を表2に示す。
【0066】
〔光学定数の評価〕
実施例1~実施例4及び比較例1~比較例3で調製されたリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物をスピンコーターにてシリコンウェハー上に塗布(スピンコート)した。ホットプレート上で215℃または250℃、1分間加熱し、膜厚50nmの被膜を形成した。これらのレジスト下層膜を分光エリプソメーター(J.A.Woolam社製、VUV-VASE)を用い、波長193nmでのn値(屈折率)及びk値(減衰係数)を測定した。その結果を表2に示す。
【0067】
[エッチング選択比の評価]
実施例1~実施例4及び比較例1~比較例3で調製されたリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物をシリコンウェハー上に塗布し、215℃又は250℃、1分間加熱することで、膜厚200nmとなるように成膜した。これらをサムコ(株)製ドライエッチング装置(RIE-10NR)を用い、窒素ガスによるドライエッチングを60秒間行うことで、レジスト下層膜のドライエッチング速度を測定した。比較例1から得られるレジスト下層膜のエッチング選択比を1とした場合の各下層膜のエッチング選択比を表2に示す。
【0068】
【表2】
上記の結果から、実施例1~実施例4はレジスト溶剤に対して十分な溶剤耐性を発現するため、レジスト下層膜として好適に用いることができる。さらに、実施例1~実施例4は波長193nmに対するk値を有していることから、リソグラフィー用レジスト下層膜として下地からの反射を抑制する反射防止膜としての機能も有している。また、実施例1~実施例4は比較例1~比較例3よりも十分高いエッチング選択性を有していることから、本願発明によって得られるリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物はレジスト下層膜のドライエッチング時のエッチング時間を短縮することができ、レジスト下層膜をドライエッチングで除去する際に、レジスト膜厚が減少する好ましくない現象を抑制できる。さらに、ドライエッチング時間を短縮できることは、レジスト下層膜の下地基板に対して好ましくないエッチングダメージを抑制することができるため、レジスト下層膜として特に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は、特に高ドライエッチング速度を有するレジスト下層膜を提供するものである。