(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20231205BHJP
H04L 7/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H04N1/00 C
H04L7/00 370
(21)【出願番号】P 2020003848
(22)【出願日】2020-01-14
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】今泉 勇樹
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-092778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
G06T 1/20
H04L 7/00- 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データが分割された複数の分割画像データを送信デバイスから受信デバイスに転送する画像形成装置であって、
前記送信デバイスは、
前記受信デバイスに転送される前記複数の分割画像データを副走査方向で同期させる基準となる副走査同期信号を、前記受信デバイスから入力
される副走査信号入力部と、
前記受信デバイスに転送される前記複数の分割画像データを前記副走査方向と直交する主走査方向で同期させる基準となる主走査同期信号を出力する主走査信号出力部と、
前記複数の分割画像データと、前記主走査同期信号と、前記副走査同期信号と、を前記受信デバイスに送信する複数の送信部と、を備え、
前記受信デバイスは、
前記複数の分割画像データと、前記主走査同期信号と、前記副走査同期信号と、を
前記複数の送信部から受信する複数の受信部と、
前記複数の受信部で受信した前記複数の分割画像データのそれぞれに対して所定の処理を実行する処理部と、
前記処理部と、前記送信デバイス
の前記副走査信号入力部と、に前記副走査同期信号を出力する副走査信号出力部と、
を備え、
前記副走査同期信号を前記処理部に出力する第1経路で出力された前記副走査同期信号と、前記副走査同期信号を前記送信デバイスを通過させた後に前記処理部に出力する第2経路で出力された前記副走査同期信号と、を用いて前記複数の分割画像データを同期させることで、前記第1経路と前記第2経路の経路差に起因して生じる前記副走査同期信号の時間ずれを補償する時間ずれ補償部を備える
画像形成装置。
【請求項2】
前記副走査同期信号は、前記分割画像データの前記副走査方向における有効画像領域の開始から終了までの期間を示す副走査有効領域信号である
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記時間ずれ補償部は、前記副走査信号出力部から前記処理部に入力される前記副走査同期信号を遅延させることで、前記時間ずれを補償する
請求項1、又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記副走査同期信号の遅延時間を制御する遅延時間制御部を備える
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記遅延時間制御部は、プロセッサにより構成されている
請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記副走査同期信号の時間ずれの変動を補償する変動補償部を備える
請求項1乃至
5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記変動補償部は、所定期間、前記主走査同期信号を無効状態にするマスク処理を実行することで、前記時間ずれの変動を補償する
請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記変動補償部は、前記画像形成装置により実行される画像読取動作の直前に前記マスク処理を開始させる
請求項
7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記変動補償部は、前記副走査同期信号のアサートエッジに基づき、前記マスク処理を終了させる
請求項
7、又は
8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記マスク処理の開始時期を制御するマスク制御部を備える
請求項
7乃至
9の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記マスク制御部は、プロセッサにより構成されている
請求項
10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記変動補償部による処理に伴って生じる前記画像データの走査線の欠落を補正する走査線補正部を備える
請求項
6乃至11の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
画像データが分割された複数の分割画像データを送信デバイスから受信デバイスに転送する画像形成装置による画像データ転送方法であって、
前記送信デバイスは、
副走査信号入力部により、前記受信デバイスに転送される前記複数の分割画像データを副走査方向で同期させる基準となる副走査同期信号を前記受信デバイスから入力
される工程と、
主走査信号出力部により、前記受信デバイスに転送される前記複数の分割画像データを前記副走査方向と直交する主走査方向で同期させる基準となる主走査同期信号を出力する工程と、
複数の送信部により、前記複数の分割画像データと、前記主走査同期信号と、前記副走査同期信号と、を前記受信デバイスに送信する工程と、を行い、
前記受信デバイスは、
複数の受信部により、前記複数の分割画像データと、前記主走査同期信号と、前記副走査同期信号と、を
前記複数の送信部から受信する工程と、
処理部により、前記複数の受信部で受信した前記複数の分割画像データのそれぞれに対して所定の処理を実行する工程と、
前記処理
部と、前記送信デバイス
の前記副走査信号入力部と、に前記副走査同期信号を出力する工程と、
を行い、
時間ずれ補償部により、前記副走査同期信号を前記処理部に出力する第1経路で出力された前記副走査同期信号と、前記副走査同期信号を前記送信デバイスを通過させた後に前記処理部に出力する第2経路で出力された前記副走査同期信号と、を用いて前記複数の分割画像データを同期させることで、前記第1経路と前記第2経路の経路差に起因して生じる前記副走査同期信号の時間ずれを補償する工程を行う
画像データ転送方法。
【請求項14】
画像データが分割された複数の分割画像データを送信デバイスから受信デバイスに転送する
処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
副走査信号入力部により、前記受信デバイスに転送される前記複数の分割画像データを副走査方向で同期させる基準となる副走査同期信号を前記受信デバイスから入力し、
主走査信号出力部により、前記受信デバイスに転送される前記複数の分割画像データを前記副走査方向と直交する主走査方向で同期させる基準となる主走査同期信号を出力し、
複数の送信部により、前記複数の分割画像データと、前記主走査同期信号と、前記副走査同期信号と、を前記受信デバイスに送信し、
複数の受信部により、前記複数の分割画像データと、前記主走査同期信号と、前記副走査同期信号と、を
前記複数の送信部から受信し、
処理部により、前記複数の受信部で受信した受信後の前記複数の分割画像データのそれぞれに対して所定の処理を実行し、
前記
処理部と、前記送信デバイス
の前記副走査信号入力部と、に前記副走査同期信号を出力
する処理をコンピュータに実行させ、
時間ずれ補償部により、前記副走査同期信号を前記処理部に出力する第1経路で出力された前記副走査同期信号と、前記副走査同期信号を前記送信デバイスを通過させた後に前記処理部に出力する第2経路で出力された前記副走査同期信号と、を用いて前記複数の分割画像データを同期させることで、前記第1経路と前記第2経路の経路差に起因して生じる前記副走査同期信号の時間ずれを補償する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像データが分割された複数の分割画像データを送信デバイスから受信デバイスに転送する画像形成装置では、複数の分割画像データとともに同期信号を送信することで、アナログ信号を用いた調整を行うことなく、転送される複数の分割画像データを同期させる技術が知られている。この同期信号には、主走査方向の同期信号と副走査方向の同期信号が含まれる。
【0003】
また、送信デバイスで生成した共通の副走査同期信号を利用して、転送される複数の分割画像データを同期させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、受信デバイスで生成される副走査同期信号と、送信デバイスから送信される副走査同期信号の両方を用いて同期させることが求められる場合には、従来の技術を適用できず、転送される複数の分割画像データを同期させることが困難な場合がある。
【0005】
本発明は、受信デバイスで生成される副走査同期信号と、送信デバイスから送信される副走査同期信号とを用いて、転送される複数の分割画像データを同期させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る画像形成装置は、画像データが分割された複数の分割画像データを送信デバイスから受信デバイスに転送する画像形成装置であって、前記送信デバイスは、前記受信デバイスに転送される前記複数の分割画像データを副走査方向で同期させる基準となる副走査同期信号を、前記受信デバイスから入力される副走査信号入力部と、前記受信デバイスに転送される前記複数の分割画像データを前記副走査方向と直交する主走査方向で同期させる基準となる主走査同期信号を出力する主走査信号出力部と、前記複数の分割画像データと、前記主走査同期信号と、前記副走査同期信号と、を前記受信デバイスに送信する複数の送信部と、を備え、前記受信デバイスは、前記複数の分割画像データと、前記主走査同期信号と、前記副走査同期信号と、を前記複数の送信部から受信する複数の受信部と、前記複数の受信部で受信した前記複数の分割画像データのそれぞれに対して所定の処理を実行する処理部と、前記処理部と、前記送信デバイスの前記副走査信号入力部と、に前記副走査同期信号を出力する副走査信号出力部と、を備え、前記副走査同期信号を前記処理部に出力する第1経路で出力された前記副走査同期信号と、前記副走査同期信号を前記送信デバイスを通過させた後に前記処理部に出力する第2経路で出力された前記副走査信号と、を用いて前記複数の分割画像データを同期させることで、前記第1経路と前記第2経路の経路差に起因して生じる前記副走査同期信号の時間ずれを補償する時間ずれ補償部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、受信デバイスで生成される副走査同期信号と、送信デバイスから送信される副走査同期信号とを用いて、転送される複数の分割画像データを同期させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成例のブロック図である。
【
図2】実施形態に係る転送装置の構成例のブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る転送装置の機能構成例のブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係る遅延部の動作例のタイミングチャートである。
【
図5】副走査同期信号の時間ずれの変動例を示すタイミングチャートである。
【
図6】第1実施形態に係るマスク部の動作例のタイミングチャートである。
【
図7】実施形態に係る転送装置による処理例を示すフローチャートである。
【
図8】比較例に係る転送装置の機能構成例のブロック図である。
【
図9】第2実施形態に係るCPUの機能構成例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
実施形態では、画像データが分割された複数の分割画像データを送信デバイスから受信デバイスに転送する。また、送信デバイスは、複数の分割画像データ、送信デバイスで生成した主走査同期信号、及び受信デバイスから入力した副走査同期信号のそれぞれを受信デバイスに送信する。
【0011】
受信デバイスは、複数の分割画像データ、主走査同期信号及び副走査同期信号を受信し、受信後の複数の分割画像データに対して所定の処理を実行する処理部及び送信デバイスに副走査同期信号を出力する。
【0012】
受信デバイスが出力した共通の副走査同期信号を、送信デバイスを通過させた後に処理部に入力させる経路と、処理部に直接入力させる経路の両方で用いることで、転送される複数の分割画像データを同期させやすくする。また伝送の経路差に起因して生じる副走査同期信号の時間ずれを補償する。
【0013】
これにより、受信デバイスで生成される副走査同期信号と、送信デバイスから送信される副走査同期信号とを用いて、転送される複数の分割画像データを同期させる。
【0014】
<実施形態における用語について>
(分割画像データ)
画像データを分割したものをいう。この分割画像データには、画像データの画像領域を複数の領域に分割したものや、カラーの画像データを色毎に分けるもの等が挙げられる。
【0015】
(主走査方向)
2次元の画像データを構成する複数の画素データが配列する2つの方向のうちの一方の方向をいう。
【0016】
(副走査方向)
2次元の画像データを構成する複数の画素データが配列する2つの方向のうちの他方の方向をいい、主走査方向とは直交する方向をいう。主走査方向に配列された画素データのライン(行)が副走査方向に配列することで、2次元の画像データが構成される。
【0017】
(主走査同期信号)
転送される複数の分割画像データを主走査方向で同期させるための基準となる信号をいう。
【0018】
(副走査同期信号)
転送される複数の分割画像データを副走査方向で同期させるための基準となる信号をいう。
【0019】
(副走査有効領域信号)
複数の分割画像データの副走査方向における有効画像領域の開始から終了までの期間を示す信号をいう。
【0020】
(有効画像領域)
画像データの画像領域のうちで有効な画像領域をいう。なお、無効な画像領域は、画像データの画像領域のうちの端部領域等である。
【0021】
(所定の処理)
複数の分割画像データに対して実行される処理をいう。画像処理や、ディスプレイ等に画像を表示させるための処理、外部装置に画像データを出力するための処理等が挙げられる。実施形態では、所定の処理が画像処理である場合を一例として説明する。
【0022】
(アサートエッジ)
信号又は論理を有効にする信号の立ち上がりのタイミングをいう。
【0023】
<画像形成装置100のハードウェア構成>
まず、実施形態に係る画像形成装置100のハードウェア構成を説明する。画像形成装置100は、スキャン機能、コピー機能、印刷機能、ファクシミリ機能等を一つの筐体に搭載したMFP(Multifunction Peripheral/Printer/Product)や、プリンタ等の印刷機能を有する電子機器である。
【0024】
図1は、画像形成装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、画像形成装置100は、コントローラ910と、近距離通信回路920、エンジン制御部930と、操作パネル940と、ネットワークI/F945とを備えている。
【0025】
これらのうち、コントローラ910は、コンピュータの主要部であるCPU901と、システムメモリ(MEM-P)902と、ノースブリッジ(NB)903と、サウスブリッジ(SB)904とを備えている。また、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)906と、記憶部であるローカルメモリ(MEM-C)907と、HDDコントローラ908と、記憶部であるHD909とを備えている。そして、NB903とASIC906との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス921で接続した構成となっている。
【0026】
CPU901は、画像形成装置100の全体制御を行う制御部である。NB903は、CPU901と、MEM-P902、SB904及びAGPバス921とを接続するためのブリッジである。NB903は、MEM-P902に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCI(Peripheral Component Interconnect)マスタ及びAGPターゲットとを備えている。
【0027】
MEM-P902は、コントローラ910の各機能を実現させるプログラムやデータの格納用メモリであるROM902aと、プログラムやデータの展開及びメモリ印刷時の描画用メモリ等として用いるRAM902bとを備えている。なお、RAM902bに記憶されているプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0028】
SB904は、NB903とPCIデバイス及び周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。ASIC906は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス921、PCIバス922、HDD908及びMEM-C907をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。
【0029】
このASIC906は、PCIターゲット及びAGPマスタと、ASIC906の中核をなすアービタ(ARB)と、MEM-C907を制御するメモリコントローラとを備えている。また、ハードウェアロジック等により画像データの回転等を行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)と、スキャナ部931及びプリンタ部932との間でPCIバス922を介したデータ転送を行うPCIユニットとを備えている。
【0030】
なお、ASIC906には、USB(Universal Serial Bus)のインターフェースや、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)のインターフェースを接続するようにしてもよい。
【0031】
MEM-C907は、コピー用画像バッファ及び符号バッファとして用いるローカルメモリである。HD909は、画像データの蓄積や、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、フォームの蓄積等を行うためのストレージである。
【0032】
HD909は、CPU901の制御に従ってHD909に対するデータの読出又は書込を制御する。AGPバス921は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレータカード用のバスインタフェースである。MEM-P902に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレータカードを高速にすることができる。
【0033】
また近距離通信回路920は、近距離通信回路920aを備えている。近距離通信回路920は、NFC(Near Field Communication)、Bluetooth(登録商標)等の通信回路である。
【0034】
更に、エンジン制御部930は、スキャナ部931と、プリンタ部932とを備えている。また、操作パネル940は、現在の設定値や選択画面等を表示させ、操作者からの入力を受け付けるタッチパネル等のパネル表示部940aと、濃度の設定条件等の画像形成に関する条件の設定値を受け付けるテンキー及びコピー開始指示を受け付けるスタートキー等からなる操作パネル940bとを備えている。
【0035】
コントローラ910は、画像形成装置100全体の制御を行い、例えば、描画、通信、操作パネル940からの入力等を制御する。スキャナ部931又はプリンタ部932には、誤差拡散やガンマ変換などの画像処理部分が含まれている。
【0036】
なお、画像形成装置100は、操作パネル940のアプリケーション切り替えキーにより、ドキュメントボックス機能、コピー機能、プリンタ機能及びファクシミリ機能を順次に切り替えて選択することが可能となる。
【0037】
ドキュメントボックス機能の選択時にはドキュメントボックスモードとなり、コピー機能の選択時にはコピーモードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリンタモードとなり、ファクシミリモードの選択時にはファクシミリモードとなる。
【0038】
また、ネットワークI/F950は、通信ネットワークを利用してデータ通信をするためのインターフェースである。近距離通信回路920及びネットワークI/F950は、PCIバス922を介して、ASIC906に電気的に接続されている。
【0039】
さらに、画像形成装置100は、コントローラ転送部950と、CPU960とを備えている。コントローラ転送部950は、スキャナ部931で読み取った原稿の画像データ(原稿データ)をコントローラ910に転送する電気回路である。スキャナ部931からコントローラ転送部950への画像データの転送は、次述する転送装置により行われる。CPU960は、転送装置によるスキャナ部931からコントローラ転送部950への画像データの転送等を制御するプロセッサである。
【0040】
<転送装置200の構成>
次に、画像形成装置100の備える転送装置200の構成を説明する。
図2は、転送装置200の構成の一例を説明するブロック図である。
図2では、破線で囲って示した転送装置200と、その周辺の構成とを併せて示している。
【0041】
図2に示すように、スキャナ部931は、送信デバイス300と、読取部970とを備えている。またコントローラ転送部950は、受信デバイス400と、メモリ980とを備えている。
【0042】
これらのうち、読取部970は、原稿台に載置された原稿をレンズ等の光学系を用いて読み取り、読み取ったアナログデータを送信デバイス300に出力する。
【0043】
送信デバイス300は、読取部970から入力したアナログデータをデジタルの画像データに変換し、LVDS(Low voltage differential signaling)フォーマットでコントローラ転送部950に転送する電子回路である。ここで、LVDSとは、短距離伝送に好適なデジタル有線伝送方式であり、小振幅、低消費電力で高速の差動インターフェースをいう。
【0044】
また、送信デバイス300は、画像データを分割した複数の分割画像データを複数のチャネルに振り分けて、複数のチャネルのそれぞれに送信する。
【0045】
受信デバイス400は、複数の分割画像データを複数のチャネル毎に受信し、受信した画像データに対して画像処理を実行するとともに、メモリ転送のインターフェース機能を備える電子回路である。
【0046】
メモリ980は、受信した複数の分割画像データに対し、画像処理を実行するために一時格納する。格納された複数の分割画像データは、メモリ980から順次読み出され、画像処理が実行された後に、受信デバイス400からコントローラ910に転送される。
【0047】
送信デバイス300から受信デバイス400には、複数の分割画像データとともに、複数のチャネル間で分割画像データを同期させるための主走査同期信号及び副走査同期信号がLVDS差動信号で転送される。
【0048】
図2において送信デバイス300から受信デバイス400に送信される信号のうち、破線の矢印で示した信号は画像データを表し、一点鎖線の矢印で示した信号は主走査同期信号を表し、二点鎖線で示した信号は副走査同期信号を表す。また詳細は後述するが、副走査同期信号には、受信デバイス400で生成されて受信デバイス400から送信デバイス300に出力され、その後、送信デバイス300から受信デバイス400に送信されるものが含まれる。
【0049】
このような送信デバイス300及び受信デバイス400により、転送装置200が構成されている。
【0050】
[第1実施形態]
<転送装置200の機能構成>
次に、転送装置200の機能構成について説明する。
図3は、転送装置200の機能構成の一例を説明するブロック図である。
【0051】
転送装置200は、0ch系統と1ch系統の2つのチャネルを使用して、画像データを分割した複数(ここでは2つ)の分割画像データを高速シリアル転送する装置である。
【0052】
0ch系統を使用して転送される分割画像データに対して画像処理を実行する0ch処理部46は、受信デバイス400に設けられた副走査同期信号生成部44で生成され、受信デバイス400内を伝送した副走査同期信号を入力する(第1経路201)。
【0053】
また、1ch系統を使用して転送される分割画像データに対して画像処理を実行する1ch処理部47は、副走査同期信号生成部44で生成され、送信デバイス300を通って伝送した副走査同期信号を入力する(第2経路202)。
【0054】
このような第1経路201及び第2経路202を用いることで、0ch処理部46及び1ch処理部47は、副走査同期信号生成部44で生成された共通の副走査同期信号を基準とすることができ、2つの分割画像データを同期させやすくなる。
【0055】
また第1経路201と第2経路202とでは経路が異なるため、各経路での副走査同期信号間に時間ずれが生じるが、受信デバイス400に設けた遅延部45によりこれを補償する。さらに送信デバイス300に設けたマスク部34により、主走査同期信号をマスク処理することで、各経路での副走査同期信号間における時間ずれの変動を補償する。これらにより、2つのチャネルを使用して画像データを転送しても、2つのチャネル間で分割画像データが適切に同期しないことによるラインずれ等を防止し、異常画像を発生させずに画像データを転送する。
【0056】
図3に示すように、転送装置200における送信デバイス300は、画像データ生成部31と、主走査同期信号生成部32と、前段画像処理部33と、マスク部34と、0ch送信部35と、1ch送信部36とを備えている。
【0057】
これらのうち、画像データ生成部31は、読み取ったアナログデータをデジタルデータに変換し、さらにLVDSフォーマットへ変換する。
【0058】
主走査同期信号生成部32は主走査同期信号を生成して出力する。この主走査同期信号生成部32は、主走査信号出力部の一例である。
【0059】
前段画像処理部33は、画像データを分割した2つの分割画像データを0ch送信部35と1ch送信部36に振り分ける。この振り分けは、Red(R)、Green(G)、Blue(B)の3色で構成されるカラー画像データのうち、Rの画像データを0ch送信部35に、Gの画像データを1ch送信部36に、Bの画像データを0ch送信部35及び1ch送信部36の両方に振り分ける等、色版毎に行われる。
【0060】
また前段画像処理部33は、副走査同期信号を受信デバイス400から入力する機能も備える。この前段画像処理部33は副走査信号入力部の一例である。さらに、受信デバイス400に実装されていない画像処理機能を追加して拡張する場合に前段画像処理部33を用いることもできる。
【0061】
マスク部34は、受信デバイス400に出力する主走査同期信号を所定期間だけマスク処理することで、副走査同期信号の時間ずれの変動を補償する。この時間ずれの変動については、別途
図6を用いて詳述する。ここで、マスク部34は変動補償部の一例である。
【0062】
上記の所定期間は、一例としてスキャナ部931が画像読取動作を開始する直前を開始時期とし、副走査同期信号のアサートエッジに基づく時期を終了時期とする。開始時期は予め定められたものである。
【0063】
0ch送信部35及び1ch送信部36は、2つの分割画像データ、主走査同期信号及び副走査同期信号をLVDS差動信号で転送して送信する。2つのチャネルのうちの一方を0ch送信部35が受け持ち、他方を1ch送信部36が受け持つ。0ch送信部35及び1ch送信部36のそれぞれの機能は、LVDSトランシーバ回路等で実現される。この0ch送信部35及び1ch送信部36は、複数の送信部の一例である。
【0064】
また、転送装置200における受信デバイス400は、0ch受信部41と、1ch受信部42と、フォーマット変換部43と、副走査同期信号生成部44と、遅延部45と、0ch処理部46と、1ch処理部47と、メモリ制御部48と、共通画像処理部49とを備えている。
【0065】
これらのうち、0ch受信部41及び1ch受信部42は、LVDS差動信号により、2つの分割画像データ、主走査同期信号、及び副走査同期信号を受信する。0ch送信部35が送信したLVDS差動信号を0ch受信部41が受信し、1ch送信部36が送信したLVDS差動信号を1ch受信部42が受信する。0ch受信部41及び1ch受信部42のそれぞれの機能は、LVDSレシーバ回路等により実現される。この0ch受信部41及び1ch受信部42は複数の受信部の一例である。
【0066】
フォーマット変換部43は、受信されたLVDSフォーマットを順次画像データに変換し、後段の0ch処理部46及び1ch処理部47が画像処理を実行できるようにする。また、フォーマット変換部43は、転送装置200の外部から入力される60MHzの信号を200MHzの信号に周波数変調する場合等に生じる非同期成分を吸収する機能も備える。
【0067】
副走査同期信号生成部44は副走査同期信号を生成し、送信デバイス300及び0ch処理部46のそれぞれに出力する。この副走査同期信号生成部44は、副走査信号出力部の一例である。また実施形態における副走査同期信号は、副走査方向における有効画像領域の開始から終了までの期間を示す副走査有効領域信号である。
【0068】
遅延部45は、副走査同期信号生成部44から0ch処理部46に入力される副走査同期信号を所定のライン数分だけ遅延させることで、副走査同期信号の時間ずれを補償する。
【0069】
ここで、副走査同期信号生成部44で生成される副走査同期信号の伝送経路には、第1経路201(破線太矢印)と第2経路202(実線太矢印)の2つがある。副走査同期信号は、受信デバイス400内の第1経路201を通って0ch処理部46に入力し、また送信デバイス300を経由する第2経路202を通って1ch処理部47に入力する。
【0070】
第1経路201では特段の処理が行われることなく、副走査同期信号が0ch処理部46に入力する。一方の第2経路202では前段画像処理部33及びフォーマット変換部43等で処理が実行された後、副走査同期信号が1ch処理部47に入力する。処理を実行する分だけ、0ch処理部46に対して1ch処理部47への副走査同期信号の入力時期が遅くなり、遅延による時間ずれが生じる。
【0071】
遅延部45は、0ch処理部46への副走査同期信号の入力を遅延させることで、0ch処理部46への入力時期に対する1ch処理部47への入力時期の遅延をなくし、副走査同期信号の時間ずれを補償する。遅延の補償はライン数を増減させることで行うことができ、遅延を補償するためのライン数は予め定められている。この遅延部45は時間ずれ補償部の一例である。
【0072】
0ch処理部46及び1ch処理部47は、転送される分割画像データに対して、画像処理を実行し、処理後の分割画像データをメモリ制御部48に出力する。
【0073】
より詳しくは、0ch処理部46は、メモリ制御部48を介してメモリ980にアクセスしながら、0ch受信部41が受信する分割画像データに対して画像処理を実行する。また1ch処理部47は、メモリ制御部48を介してメモリ980にアクセスしながら、1ch受信部42が受信する分割画像データに対して画像処理を実行する。色版が異なる場合等には、0ch受信部41が受信する分割画像データと、1ch受信部42が受信する分割画像データとでは、適用する画像処理が色版に応じて異なる画像処理を実行する。チャネル毎に0ch処理部46及び1ch処理部47を設けることで、2つの分割画像データに対して異なる画像処理を実行できる。実行される画像処理としては、画像の変倍処理やシェーディング補正処理、ライン間補正処理等が挙げられる。
【0074】
メモリ制御部48は、メモリ980に対してアクセス制御やDMA(Direct Memory Access)を行う。副走査同期信号をトリガとして、画像データをメモリ980にライト(書き込み)するが、有効画像領域より大きいサイズの副走査同期信号がアサートされた場合、有効画像領域外の不要な領域をメモリ980にライトしないように制御することもできる。
【0075】
共通画像処理部49は、2つの分割画像データに対して共通の画像処理を実行する。例えば、全ての色版に対して共通の画像処理が実行される。
【0076】
<転送装置200の動作例>
次に、転送装置200の動作について説明する。
【0077】
図4は、転送装置200における遅延部45の動作の一例を説明するタイミングチャートである。
図4は、受信デバイス400の副走査同期信号生成部44で生成される副走査同期信号500を基準とし、0ch系統50の0ch処理部46に入力される主走査同期信号501、分割画像データ502及び副走査同期信号503の各タイミングを示している。また同様に、1ch系統51の1ch処理部47に入力される主走査同期信号511、分割画像データ512及び副走査同期信号513の各タイミングを示している。
【0078】
主走査同期信号501及び511は、それぞれ分割画像データにおける主走査方向の各ラインの開始タイミングを示している。
【0079】
分割画像データ502は、副走査同期信号503が有効状態になる開始時期503aから終了時期503bまでの期間における各ライン画像データにより構成される。この開始時期503aから終了時期503bまでの期間における副走査同期信号503は、副走査有効領域の一例である。
【0080】
副走査同期信号503における開始時期503aは、信号生成時の副走査同期信号500の開始時期500aに対応し、終了時期503bは、副走査同期信号500の終了時期500bに対応する。副走査同期信号生成部44での生成時から0ch処理部46に入力されるまでの間に遅延時間504が生じている。
【0081】
一方、分割画像データ512は、副走査同期信号513が有効状態になる開始時期513aから終了時期513bまでの期間における主走査方向の各ラインにより構成される。
【0082】
副走査同期信号513における開始時期513aは、信号生成時の副走査同期信号500の開始時期500aに対応し、終了時期513bは、副走査同期信号500の終了時期500bに対応する。副走査同期信号生成部44での生成時から1ch処理部47に入力されるまでの間に時間ずれ514が生じている。
【0083】
1ch系統51における時間ずれ514は、前段画像処理部33及びフォーマット変換部43等での処理、並びに周波数変調に伴う非同期成分等に起因して生じる。一方の0ch系統50における遅延時間504は、遅延部45により生成されたものである。開始時期503aと開始時期513aが揃うように遅延部45により遅延時間504を調整することで、経路差に起因した0ch処理部46及び1ch処理部47への副走査同期信号の入力時期の時間ずれが補償される。
【0084】
ここで、送信デバイス300と受信デバイス400は非同期で動作するため、受信デバイス400から送信デバイス300に出力される副走査同期信号と、送信デバイス300で生成される主走査同期信号の位相関係によっては、経路差に起因した副走査同期信号の入力時期の時間ずれが変動する場合がある。
【0085】
換言すると、経路差に起因した副走査同期信号の入力時期の時間ずれを遅延部45で補償しても、受信デバイス400から送信デバイス300に出力される副走査同期信号と、送信デバイス300で生成される主走査同期信号の位相関係によっては、副走査同期信号の入力時期の時間ずれ変動によりラインずれ等が生じる場合がある。
【0086】
図5は、このような副走査同期信号の時間ずれの変動の一例を説明するためのタイミングチャートである。
図5は、送信デバイス300と受信デバイス400における各種信号のタイミングを示している。
【0087】
送信デバイス300における副走査同期信号521は、受信デバイス400の副走査同期信号生成部44で生成され、送信デバイス300の前段画像処理部33に入力する副走査同期信号を示している。主走査同期信号522は、主走査同期信号生成部32が生成する主走査同期信号を示している。副走査同期信号523は前段画像処理部33による処理後の副走査同期信号を示している。
【0088】
主走査同期信号524は、送信デバイス300から送信される0ch系統及び1ch系統で共通の主走査同期信号を示している。副走査同期信号525は送信デバイス300から受信デバイス400に送信される1ch系統の副走査同期信号を示している。画像データ526は、送信デバイス300から送信される0ch系統の画像データを示している。
【0089】
また、受信デバイス400における副走査同期信号531は、副走査同期信号生成部44で生成される副走査同期信号を示している。主走査同期信号532は、0ch処理部46に入力される0ch系統の主走査同期信号を示している。副走査同期信号533は、0ch処理部46に入力される0ch系統の副走査同期信号を示している。画像データ534は、0ch処理部46に入力される0ch系統の画像データを示している。
【0090】
主走査同期信号535は、1ch処理部47に入力される1ch系統の主走査同期信号を示している。副走査同期信号536は、1ch処理部47に入力される1ch系統の副走査同期信号を示している。画像データ537は、1ch処理部47に入力される1ch系統の画像データを示している。
【0091】
送信デバイス300における時間ずれ527は、前段画像処理部33の処理による1ch系統の副走査同期信号の時間ずれである。また受信デバイス400における遅延時間538は遅延部45により生成された0ch系統の副走査同期信号の遅延時間である。
【0092】
1ch系統の副走査同期信号525の開始時期525aと0ch系統の副走査同期信号533の開始時期533aの時間ずれが遅延部45で補償される。しかし、この補償を行っても、副走査同期信号533の開始時期533aに対し、0ch系統の画像データ534の開始時期534aとの間で1ライン分のラインずれ539が生じている。このラインずれ539は、経路差に起因した0ch処理部46及び1ch処理部47への副走査同期信号の入力時期の時間ずれ変動により生じたものである。
【0093】
受信デバイス400の0ch処理部46と1ch処理部47で行う画像処理では、ラインずれ539等によって、色版に該当する分割画像データ同士でラインが揃わないと、画像処理後に異常画像が出力される場合がある。
【0094】
このような異常画像を防止するために、マスク部34は、受信デバイス400に出力する主走査同期信号を所定期間だけマスク処理することで、ラインずれ539をなくす。換言すると、マスク部34は、経路差に起因した0ch処理部46及び1ch処理部47への副走査同期信号の入力時期の時間ずれの変動を補償する。
【0095】
図6は、マスク部34の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図6において、
図5と共通する部分には
図5と同じ部品番号を付し、重複する説明を省略する。
【0096】
マスク部34は、主走査同期信号生成部32が生成した主走査同期信号522を、マスク540によりマスク処理して無効状態にし、副走査同期信号523のアサートエッジ523aを検知後にマスク処理を解除する。主走査同期信号524'はこのようなマスク処理を実行後の主走査同期信号を示している。
【0097】
マスク処理の開始時期は、スキャナ部931による画像読取動作の直前に設定され、終了時期は副走査同期信号のアサートエッジに基づき決定されている。
【0098】
主走査同期信号524'が受信デバイス400に送信されることで、0ch系統の主走査同期信号532'では、マスク540に対応するマスク対応期間541だけ主走査同期信号が無効状態になる。これにより、マスク対応期間541に対応するライン分(この例では1ライン)だけ0ch系統の副走査同期信号533'の開始時期533a'がずれる。この1ライン分のずれによって、色版に該当する分割画像データ同士でラインが揃い、画像処理後における異常画像が防止される。
【0099】
また、
図6に斜線ハッチングで示したように、マスク部34の作用で1ch系統の副走査同期信号536'の最終ライン543が削られる場合がある。これに対し、副走査同期信号536'における有効画像領域の開始から終了までの期間を予め長く設定しておき、受信デバイス400で不要な領域を削除する。これにより、不要な画像転送を防止できる。
【0100】
<画像形成装置100の動作例>
次に、転送装置200を備える画像形成装置100の動作について説明する。
図7は、画像形成装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0101】
まず、ステップS71において、画像形成装置100はスキャナ部931による原稿の読取を開始するか否かを判定する。
【0102】
ステップS71で読取を開始しないと判定された場合には(ステップS71、No)、ステップS71の動作が再度実行される。
【0103】
一方、ステップS71で読取を開始すると判定された場合には(ステップS71、Yes)、画像形成装置100は、転送装置200における送信デバイス300にステップS72~S78の動作を実行させ、また受信デバイス400にステップS80~S85の動作を実行させる。この送信デバイス300の動作と受信デバイス400の動作は並行して行われる。以下では、送信デバイス300によるステップS72~S78の動作と画像形成装置100によるステップS79の動作をまず説明し、その後、受信デバイス400によるステップS80~S85の動作と画像形成装置100によるステップS86の動作を説明する。
【0104】
まず、ステップS72において、送信デバイス300における画像データ生成部31は、読み取ったアナログデータをデジタルデータに変換し、さらにLVDSフォーマットへ変換する。
【0105】
続いて、ステップS73において、主走査同期信号生成部32は、主走査同期信号を生成する。
【0106】
続いて、ステップS74において、マスク部34は、受信デバイス400に出力する主走査同期信号をマスク処理する。
【0107】
続いて、ステップS75において、マスク部34は、受信デバイス400から入力される副走査同期信号のアサートエッジを検出する。
【0108】
ステップS75で、アサートエッジが検出されない場合には(ステップS75、No)、ステップS75の動作が再度行われる。
【0109】
一方、ステップS75で、アサートエッジが検出された場合には(ステップS75、Yes)、ステップS76において、マスク部34は、主走査同期信号のマスク処理を解除する。
【0110】
続いて、ステップS77において、前段画像処理部33は、画像データ生成部31から入力される画像データを分割した2つの分割画像データを0ch送信部35と1ch送信部36に振り分ける。なお、副走査同期信号はあくまで有効画像領域を規定しているだけなので、副走査同期信号をネゲートした時の分割画像データの振り分け及び画像処理は実行してもしなくてもよい。
【0111】
続いて、ステップS78において、0ch送信部35及び1ch送信部36は、2つの分割画像データ、主走査同期信号、及び副走査同期信号をLVDS差動信号で送信する。
【0112】
続いて、ステップS79において、画像形成装置100は、有効画像領域の画像データの転送を完了したか否かを判定する。
【0113】
ステップS79で、完了していないと判定された場合には(ステップS79、No)、ステップS77以降の動作が再度行われる。一方、ステップS79で、完了したと判定された場合には(ステップS79、Yes)、動作は終了する。
【0114】
一方、ステップS80において、受信デバイス400における副走査同期信号生成部44は、副走査同期信号を生成し、送信デバイス300及び0ch処理部46に出力する
ここで、副走査同期信号の生成は、任意のタイミングで開始可能である。一般に原稿の搬送や読取光学系の搬送(スキャン)等に連動して開始される。
【0115】
続いて、ステップS81において、遅延部45は、副走査同期信号生成部44から0ch処理部46に入力される副走査同期信号を所定のライン数分だけ遅延させる。
【0116】
続いて、ステップS82において、0ch受信部41及び1ch受信部42は、LVDS差動信号により、2つの分割画像データ、主走査同期信号及び副走査同期信号を受信する。
【0117】
続いて、ステップS83において、フォーマット変換部43は、受信されたLVDSフォーマットを順次画像データに変換し、後段のch処理部46及び1ch処理部47のそれぞれが処理を実行できるようにする。
【0118】
送信デバイス300から送信される分割画像データは、偶数ライン画素及び奇数ライン画素のパラレル転送等により、そのままでは画像処理を実行できないデータフォーマットで送信される場合がある。そのため、画像データを構成する画素の順番を画像処理が可能な形式に適宜並び替えることが好ましい。
【0119】
続いて、ステップS84において、0ch処理部46及び1ch処理部47は、転送された分割画像データに対して、画像処理を実行し、処理後の分割画像データをメモリ制御部48に出力する。
【0120】
続いて、ステップS85において、共通画像処理部49は、メモリ制御部48を介してメモリ980にアクセスしながら、2つの分割画像データに対して共通の画像処理を実行する。
【0121】
続いて、ステップS86において、画像形成装置100は、有効画像領域の画像データの転送を完了したか否かを判定する。
【0122】
ステップS86で、完了していないと判定された場合には(ステップS86、No)、ステップS83以降の動作が再度行われる。一方、ステップS86で、完了したと判定された場合には(ステップS86、Yes)、動作は終了する。
【0123】
このようにして、画像形成装置100は、転送装置200を用いて、読み取った原稿を画像形成装置100のコントローラ910等に転送することができる。
【0124】
<画像形成装置100の作用効果>
画像データが分割された複数の分割画像データを送信デバイスから受信デバイスに転送する画像形成装置では、複数の分割画像データとともに同期信号を送信することで、アナログ信号を用いた調整を行うことなく、転送される複数の分割画像データを同期させる技術が知られている。また、送信デバイスで生成した共通の副走査同期信号を利用して、転送される複数の分割画像データを同期させる技術が開示されている。
【0125】
しかしながら、受信デバイスで生成される副走査同期信号と、送信デバイスから送信される副走査同期信号の両方を用いて同期させることが求められる場合がある。例えば、受信デバイスに原稿搬送系や光学系の搬送系等と連動可能な既存のデバイスを用い、送信デバイスに新たな画像処理機能を追加して拡張する場合等である。
【0126】
受信デバイスで生成される副走査同期信号と、送信デバイスから送信される副走査同期信号の両方を用いて同期させることで、原稿搬送系や光学系の搬送系等と連動させる部分を変更するような大幅な変更を行うことなく、新たな機能を転送装置に追加できる。
【0127】
しかし、既存の受信デバイスと送信デバイスとの間で、転送される画像データを同期させるためには、受信デバイス側で生成された共通の副走査同期信号を利用し、一旦送信デバイスを通過させて受信デバイスに戻した副走査同期信号と、受信デバイス内で伝送した副走査同期信号とを用いることが要求される。この場合には、従来の技術を適用することが困難になる。
【0128】
ここで、
図8は比較例に係る転送装置200Xの機能構成の一例を示すブロック図である。なお、
図3に示した転送装置200の機能構成と同様の機能を備える構成には、同じ部品番号を付している。
【0129】
図8では、送信デバイス300Xにおける同期信号生成部32Xで生成された主走査同期信号及び副走査同期信号が、受信デバイス400に送信される経路201Xが示されている。また経路201Xに加えて、受信デバイス400Xにおける副走査同期信号生成部44Xで生成された副走査同期信号が、0ch処理部46及び1ch処理部47のそれぞれに入力される経路202Xが示されている。
【0130】
経路201Xでは、送信デバイス300Xのみで同期信号が生成されるため、送信デバイス300Xと受信デバイス400Xで同期信号を共通化できず、受信デバイス400X及び受信デバイス400Xに連動する原稿の搬送系等の動作と、送信デバイス300Xの動作とを同期させることが困難になる。
【0131】
また、経路202Xでは、受信デバイス400Xのみで同期信号が生成されるため、送信デバイス300Xと受信デバイス400Xで同期信号を共通化できず、経路201Xと同様に受信デバイス400X及び受信デバイス400Xに連動する原稿の搬送系等の動作と、送信デバイス300Xの動作とを同期させることが困難になる。
【0132】
これに対し、本実施形態では、送信デバイス300は、複数の分割画像データ、送信デバイス300で生成した主走査同期信号、及び受信デバイス400から入力した副走査同期信号のそれぞれを受信デバイス400に送信する。
【0133】
また、受信デバイス400は、複数の分割画像データ、主走査同期信号、及び副走査同期信号を受信し、また0ch処理部46及び送信デバイス300に副走査同期信号を出力する。
【0134】
受信デバイス400が出力した副走査同期信号を、送信デバイス300と受信デバイス400との間で共通化し、送信デバイス300を通過させた後に1ch処理部47に入力させる経路と、また0ch処理部46に直接入力させる経路の両方で用いる。これにより、複数の分割画像データを同期させやすくする。
【0135】
また伝送の経路差に起因する副走査同期信号の時間ずれを補償する。具体的には、遅延部45により第1経路201における副走査同期信号を遅延させることで、副走査同期信号の時間ずれを補償する。
【0136】
これにより、受信デバイス400で生成される副走査同期信号と、送信デバイス300から送信される副走査同期信号とを用いて、転送される複数の分割画像データを同期させることができる。
【0137】
また、本実施形態では、マスク部34により、送信デバイス300から受信デバイス400に送信される主走査同期信号をマスク処理する。これにより、受信デバイス400から送信デバイス300に出力される副走査同期信号と、送信デバイス300で生成される主走査同期信号の位相関係等に起因して生じる副走査同期信号の時間ずれの変動を補償できる。
【0138】
なお、本実施形態では、送信デバイス300及び受信デバイス400のそれぞれが備える機能を、ASIC等の電子回路で実現する例を示したが、これに限定されるものではない。一部、又は全部の機能をCPU960が所定のプログラムを実行することで実現するように構成してもよい。
【0139】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る画像形成装置100aについて説明する。
【0140】
図9は、画像形成装置100aにおけるCPU960の機能構成の一例を示すブロック図である。
図9に示すように、プロセッサの一例としてのCPU960は、マスク制御部961と、遅延時間制御部962と、走査線補正部963とを備えている。
【0141】
マスク制御部961は、マスク部34によるマスク処理の開始時期を制御する機能を有する。例えば、マスク制御部961は、スキャナ部931が画像読取を実行する直前にマスク部34をイネーブルすることで、マスク処理を有効にする。そして、マスク処理の終了時期は、上述したように、副走査同期信号のアサートエッジをトリガにして決定され、マスク処理が解除(終了)される。
【0142】
これによりマスク処理の開始時期を任意に設定できる。また副走査同期信号のアサートエッジに基づきマスク処理を終了させることで、マスク処理の期間を適正化できる。
【0143】
遅延時間制御部962は、遅延部45による遅延時間(
図4の遅延時間504等)を制御する。例えば、遅延時間制御部962は、遅延時間に対応するライン数を出力することで、遅延部45による遅延時間を設定して制御する。遅延部45は、副走査同期信号生成部44で生成され、0ch処理部46に入力する副走査同期信号を、遅延時間制御部962から入力したライン数分だけ遅延させる。
【0144】
この遅延時間は、任意に設定可能であり、前段画像処理部33とフォーマット変換部43における非同期吸収分のライン遅延を考慮したものを設定することが好ましい。
【0145】
遅延時間制御部962により、受信デバイス400で任意のライン数を遅延可能にすることで、送信デバイス300のライン遅延が変わっても対応することができる。
【0146】
走査線補正部963は、副走査同期信号生成部44で生成される副走査同期信号における有効画像領域の開始から終了までの期間を制御することで、マスク部34によるマスク処理に伴うライン(走査線)の欠落を補正する。例えば、マスク部34の作用で生じる1ch系統の副走査同期信号536'の最終ライン543の欠落(
図6参照)を、副走査同期信号における有効画像領域の開始から終了までの期間を予め1ライン分だけ長く設定しておくことで補正する。
【0147】
走査線補正部963により、マスク処理に伴うラインの欠落を補正し、不要な画像データが後段のコントローラ910に転送されることを防止できる。
【0148】
なお、マスク制御部961、遅延時間制御部962及び走査線補正部963の機能はASIC等の電子回路で実現されてもよいが、CPU960を用いることで機能変更等に容易に対応可能となる。
【0149】
以上、実施形態に係る画像形成装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【0150】
上述した実施形態では、スキャナ部931で読み取った画像データを転送する例を示したが、これに限定されるものではなく、種々の画像データの転送において実施形態を適用可能である。
【0151】
また、実施形態では、CPU901とは別にCPU960を設ける例を説明したが、CPU960の機能をCPU901が集約して備えるようにしてもよい。
【0152】
なお、実施形態は、画像データ転送方法も含む。例えば、画像データ転送方法は、画像データが分割された複数の分割画像データを送信デバイスから受信デバイスに転送する画像形成装置による画像データ転送方法であって、前記送信デバイスは、転送される前記複数の分割画像データを副走査方向で同期させる基準となる副走査同期信号を前記受信デバイスから入力する工程と、転送される前記複数の分割画像データを前記副走査方向と直交する主走査方向で同期させる基準となる主走査同期信号を出力する工程と、前記複数の分割画像データと、前記主走査同期信号と、前記副走査同期信号と、を前記受信デバイスに送信する工程と、を行い、前記受信デバイスは、前記複数の分割画像データと、前記主走査同期信号と、前記副走査同期信号と、を受信する工程と、受信後の前記複数の分割画像データのそれぞれに対して所定の処理を実行する工程と、前記所定の処理を実行する処理部と、前記送信デバイスと、に前記副走査同期信号を出力する工程と、前記副走査同期信号の時間ずれを補償する工程と、を行う。この画像データ転送方法により、上述した画像形成装置と同様の効果を得ることができる。このような画像データ転送方法は、CPU、LSIなどの回路、ICカード又は単体のモジュール等によって、実現されてもよい。
【0153】
さらに実施形態は、プログラムも含む。例えば、プログラムは、画像データが分割された複数の分割画像データを送信デバイスから受信デバイスに転送するプログラムであって、転送される前記複数の分割画像データを副走査方向で同期させる基準となる副走査同期信号を前記受信デバイスから入力し、転送される前記複数の分割画像データを前記副走査方向と直交する主走査方向で同期させる基準となる主走査同期信号を出力し、前記複数の分割画像データと、前記主走査同期信号と、前記副走査同期信号と、を前記受信デバイスに送信し、前記複数の分割画像データと、前記主走査同期信号と、前記副走査同期信号と、を受信し、受信後の前記複数の分割画像データのそれぞれに対して所定の処理を実行し、前記所定の処理を実行する処理部と、前記送信デバイスと、に前記副走査同期信号を出力し、前記副走査同期信号の時間ずれを補償する処理をコンピュータに実行させる。このようなプログラムにより、上述した画像形成装置と同様の効果を得ることができる。
【0154】
また、上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0155】
100 画像形成装置
200 転送装置
201 第1経路
202 第2経路
300 送信デバイス
31 画像データ生成部
32 主走査同期信号生成部(主走査信号出力部の一例)
33 前段画像処理部(副走査信号入力部の一例)
34 マスク部(変動補償部の一例)
35 0ch送信部(複数の送信部の一例)
36 1ch送信部(複数の送信部の一例)
400 受信デバイス
41 0ch受信部(複数の受信部の一例)
42 1ch受信部(複数の受信部の一例)
43 フォーマット変換部
44 副走査同期信号生成部(副走査信号出力部の一例)
45 遅延部(時間ずれ補償部の一例)
46 0ch処理部
47 1ch処理部
48 メモリ制御部
49 共通画像処理部
504、538 遅延時間
514、527 時間ずれ
539 ラインずれ
540 マスク
910 コントローラ
931 スキャナ部
950 コントローラ転送部
960 CPU
961 マスク制御部
962 遅延時間制御部
963 走査線補正部
970 読取部
980 メモリ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0156】