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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】混合器
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/10 20220101AFI20231205BHJP
   B01F 25/4314 20220101ALI20231205BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20231205BHJP
【FI】
B01F25/10
B01F25/4314
C02F1/00 K
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020047950
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021146265
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】三輪 聡志
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-206751(JP,A)
【文献】実開昭51-157975(JP,U)
【文献】実公昭47-009389(JP,Y1)
【文献】特開2016-107218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 25/40 - 25/434
B01F 25/10
C02F 1/00
C02F 1/50
C02F 1/66
C02F 5/00
B01D 21/01
C02F 1/52 - 1/56
G01N 1/00 - 1/44
F01N 3/24
B01D 53/86 - 53/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が一端から他端(末端)に向かって流れる円筒体内の該一端側に螺旋流形成手段が設けられた混合器であって、
該螺旋流形成手段から円筒体末端までの長さLと該円筒体の内径Dとの比L/Dが3~5であり、
前記螺旋流形成手段の流入側の外周縁の点Aと、流出側の外周縁における点Aと反対側の点Bとを結ぶ直線と、円筒体の軸心線と垂直な面との交角θが1~30゜であり、
前記円筒体の軸心線方向における螺旋流形成手段の長さHと、円筒体の直径(内径)Dとの比H/Dが1/32~1/8であり、
前記螺旋流形成手段は、螺旋面を有したプレートよりなり、
前記螺旋流形成手段は、長方形のプレート、又は長方形の左辺と右辺を外側凸の円弧形状としたプレートを、上辺と下辺に直交する軸の周りに120~240゜捻った形状であり、
前記円筒体の側周面のうち、前記一端側と前記螺旋流形成手段との間に流体の注入口が設けられている
混合器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体などの流体を混合するための混合器に関する。
【背景技術】
【0002】
排水や用水などの水処理では、原水に水処理薬品を添加して、原水と水処理薬品を混合した後、凝集沈殿処理や加圧浮上処理や膜ろ過処理したり、薬品によって設備や配管へのスケール生成や腐食などの抑制を図ることが一般的に行われている。
【0003】
水処理薬品には、例えば、凝集剤やpH調整剤(酸やアルカリなど)やスケール防止剤や腐食防止剤などがある。
【0004】
原水と水処理薬品を混合する操作として、動力装置と攪拌羽根を備える攪拌槽や、配管に設置する静置型混合器などが挙げられる。配管を流れる原水に水処理薬品を注入する場合、加工を容易にすると共に、流れを阻害したり、析出物や固形物などが薬品注入口に付着しにくいように、一般的には、配管側面に水処理薬品添加口を設ける。
【0005】
従来の静置型混合器(スタテイックミキサ)は、特許文献1~3の通り、円筒部材と、該円筒部材内に配置されたねじり羽根部材(エレメント)とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-106817号公報
【文献】特開2001-120973号公報
【文献】特許第6229185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、流れ方向に向かって180°右捻りまたは180°左捻りのユニット(ユニット長と配管直径の比が1.5倍程度)を交互に違えて複数ユニットを連ねて液流を分割して混合する為、長い流路を要する。また、捻り方向が反対であるディスク型ユニットを複数枚重ねて液体の分割と集合により混合する為、ディスク型ユニットの構造が複雑である。そのため、固形物や析出物のある流体の混合には不向きである。また、原水に添加する液体の添加位置を配管中央部とし、液体を流れ方向に水平に添加しなければならない。
【0008】
特許文献2及び3においても、円筒部材内に配置するエレメントの長さが大きい。
【0009】
本発明は、小型で簡単な構造を有し、添加する液体の添加位置に特別な工夫を要さない混合器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の混合器は、流体が一端から他端(末端)に向かって流れる円筒体内の該一端側に螺旋流形成手段が設けられた混合器であって、該螺旋流形成手段から円筒体末端までの長さLと該円筒体の内径Dとの比L/Dが3~5である。
【0011】
本発明の一態様では、前記螺旋流形成手段の流入側の外周縁の点Aと、流出側の外周縁における点Aと反対側の点Bとを結ぶ直線と、円筒体の軸心線と垂直な面との交角(螺旋角度)θが1~30゜である。
【0012】
本発明の一態様では、前記円筒体の軸心線方向における螺旋流形成手段の長さHと、円筒体の直径(内径)Dとの比H/Dが1/32~1/8である。
【0013】
本発明の一態様では、前記螺旋流形成手段は、螺旋面を有したプレートよりなる。
【0014】
本発明の一態様では、前記螺旋流形成手段は、中心角が180゜である、2葉の螺旋面を有する。また、本発明の一態様では、前記螺旋流形成手段は、長方形のプレート、又は長方形の左辺と右辺を外側凸の円弧形状としたプレートを、上辺と下辺に直交する軸の周りに120~240゜捻った形状である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の混合器は、螺旋流形成手段によって円筒体内に螺旋流を発生させ、発生した螺旋流によって液体を混合する。
【0016】
本発明では、螺旋流形成手段の螺旋角度θを浅くすることにより、混合効率を向上させることができる。これにより、簡単で小型の構造で、特別に液体注入の工夫の必要なしに液体を混合でき、配管の長さを短くできる。また、液体注入部の構造を簡単にできるので、省スペースで簡便な配管混合系が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る混合器の一端側の斜視図である。
図2】ミキシングプレートの斜視図である。
図3】ミキシングプレートの製作方法の一例を示す斜視図である。
図4】実施の形態に係る混合器の軸心線方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施の形態に係る混合器1について説明する。
【0019】
図1,4の通り、この混合器1は、円筒体2と、該円筒体2内の軸心線方向の一端側近傍に配置された螺旋流形成手段としてのミキシングプレート3と、該円筒体2の側周面において、該ミキシングプレート3よりも該一端側に設けられた被混合物の注入口4とを有する。なお、図4では、円筒体2を断面としており、ミキシングプレート3については側面視として表わしている。
【0020】
ミキシングプレート3は、図3のように、長方形の板材3Aの一辺3a及び対向辺3bをそれぞれチャックし、一辺3a側を固定し、対向辺3b側を180゜捻る(捻回させる)こと等により形成されたものである。なお、板材3Aは、辺3a,3bの中点同士を結ぶ線分を中心として180゜捻られる。ミキシングプレート3は、中心角180゜の範囲にわたって延在する2葉の螺旋面3f,3fを有した螺旋プレートよりなる。
【0021】
ミキシングプレート3は、螺旋の軸心線が円筒体2の軸心線と同軸となるように円筒体2内に配置される。ミキシングプレート3の外周縁と円筒体2の内周面とは溶接、ろう付け、接着等により固着される。
【0022】
図4において、流体は円筒体2の上端(一端)から下端(他端(末端))に向って流れ、被混合物は注入口4から円筒体2内に供給される。流体は液体、気体、スラリーのいずれでもよい。被混合物は、液体、気体、スラリー、粉体のいずれでもよい。
【0023】
図4において、ミキシングプレート3の下端辺から円筒体2の下端までの長さをLとし、ミキシングプレート3の軸心線方向の寸法(高さ)をHとし、円筒体2の内径(ミキシングプレートの直径)をDとした場合、H/Dは1/32~1/8特に1/24~1/8が好適である。L/D比は3~5が好適である。
【0024】
また、図4において、ミキシングプレート3の流入側(上端側)の外周縁の点Aと流出側(下端側)かつ点Aと反対側(軸心線を挟んで反対側)の外周縁の点Bとを結ぶ直線と、ミキシングプレート3の軸心線と垂直な面との交角(螺旋角度)θは、1~30゜特に2~20゜が好適である。
【0025】
なお、図4では、円筒体2は軸心線が直線状となっているが、ミキシングプレート3よりも下流側では円筒体の軸心線が曲線となるように湾曲していてもよい。
【0026】
また、上記実施の形態では、ミキシングプレート3は板材3Aを180゜捻ることにより形成されたものとなっているが、捻る角度は正確な180゜に限定されるものではなく螺旋流を発生させることが可能な角度であればよく、具体的には120゜以上、好ましくは150゜以上であればよい。一方、過度に角度が大きいと加工の負担が大きくなるので、240゜以下、好ましくは210゜以下程度とする。
また、上記実施の形態では板材3Aの形状は長方形となっているが、形状は長方形に限定されるものではなく、長方形の左辺と右辺を外側凸の円弧形状とした形状や、その他の略長方形状などであってもよい。
本発明では、ミキシングプレート3以外の螺旋流形成手段を用いてもよい。例えば、外形が円筒形状の雌ネジ構造の整流部材を螺旋流形成手段として用いることもできる。この整流無事を配管内周壁に内設して通水することにより、螺旋流を形成できる。
【実施例
【0027】
[実施例1]
<実験条件>
図1~4の混合器において、円筒体の内径(ミキシングプレート直径)D=150mm、H=18.85mm、L=450mm、ミキシングプレート3を構成するプレートの厚み1mm、円筒体2の上端からミキシングプレート3の上辺までの距離50mm、注入口4の直径5mm、円筒体2の上端から注入口4の上端までの距離56.925mmとした。
【0028】
温度20℃の水を130m/hrで上から下に流すと共に、色素の水溶液(温度20℃、色素濃度2×10-4g/L)を注入口4から注入液量0.04m/hrで注入した。
【0029】
<結果・考察>
本条件での色素(注入液)分布と配管内での流線分布をコンピュータでシミュレーションした結果、水は円筒体2内を螺旋状に旋回していることが認められた。また、円筒体出口の水平断面における色素の濃度分布は極めて均一であることが認められた。
【0030】
[比較例1]
<実験条件>
D=150mmでH=225mmの180°右捻りの第1のミキシングプレートと、D=150mmでH=225mmの180°左捻りの第2のミキシングプレート(図3における捻り方向を第1のミキシングプレートと反対方向としたもの)を円筒体2内に各1段ずつこの順序に配置した。円筒体上端から第1のミキシングプレートの上端までの距離は50mmとした。水量や色素水溶液注入量など、その他の条件を実施例1と同様にして実験を行った。
その結果、円筒体2内の流れは螺旋流を殆ど形成しなかった。また、円筒体出口の水平断面における色素濃度の分布は著しく不均一であることが認められた。
【符号の説明】
【0031】
1 混合器
2 円筒体
3 ミキシングプレート
3f 螺旋面
4 注入口
図1
図2
図3
図4