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特許7396370直動機構及びパーティクルの飛散抑制方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】直動機構及びパーティクルの飛散抑制方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20231205BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231205BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/304 648L
H01L21/304 648A
H01L21/30 564
H01L21/30 569
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021563951
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2020045507
(87)【国際公開番号】W WO2021117684
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2019223916
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020197365
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飽本 正巳
(72)【発明者】
【氏名】飯田 成昭
(72)【発明者】
【氏名】中島 常長
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慶介
(72)【発明者】
【氏名】安武 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】松下 一也
(72)【発明者】
【氏名】井手 康盛
(72)【発明者】
【氏名】大関 雅人
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-101080(JP,A)
【文献】特開2007-278416(JP,A)
【文献】特開2002-305230(JP,A)
【文献】特開2011-208804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/304
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が排気されるケース体と、
前記ケース体に形成される開口部と、
前記ケース体内に設けられ、直線方向に移動する内部移動体と、
前記開口部から当該ケース体の外部へ突出するように前記内部移動体に設けられると共にケース体の外部において外部移動体と接続され、前記内部移動体の移動に伴い前記外部移動体を移動させるための接続部と、
前記直線方向に延びて前記開口部を塞ぐようにケース体内に設けられると共に、幅方向における両端部の一面側が当該開口部の口縁部に離れて対向するシールベルトと、
前記内部移動体の移動に応じて前記直線方向に移動するように当該内部移動体に接続された前記シールベルトについての変形を抑制するために、当該シールベルトの幅方向の両端部の他面側に対向して設けられる変形抑制部と、を備え、
前記変形抑制部は、前記シールベルトの幅方向の両端部の他面側に設けられ、
当該変形抑制部は、前記シールベルトの移動方向に直交する回転軸回りに回転する回転体を備える直動機構。
【請求項2】
前記直線方向に見て、当該シールベルトの両端部を各々囲む凹部が形成され、
前記変形抑制部は、前記直線方向に並んで設けられる前記回転体と前記凹部の一方の側壁と、を含み、
前記凹部の一方の側壁は、前記シールベルトの幅方向の両端部の他面側に、当該シールベルトに対して離れて設けられ、前記回転体は当該凹部の一方の側壁よりも前記シールベルトの近くに位置する請求項1記載の直動機構。
【請求項3】
内部が排気されるケース体と、
前記ケース体に形成される開口部と、
前記ケース体内に設けられ、直線方向に移動する内部移動体と、
前記開口部から当該ケース体の外部へ突出するように前記内部移動体に設けられると共にケース体の外部において外部移動体と接続され、前記内部移動体の移動に伴い前記外部移動体を移動させるための接続部と、
前記直線方向に延びて前記開口部を塞ぐようにケース体内に設けられると共に、幅方向における両端部の一面側が当該開口部の口縁部に離れて対向するシールベルトと、
前記内部移動体の移動に応じて前記直線方向に移動するように当該内部移動体に接続された前記シールベルトについての変形を抑制するために、当該シールベルトの幅方向の両端部の他面側に対向して設けられる変形抑制部と、を備え、
前記変形抑制部が、前記シールベルトの幅方向の両端部の他面側に、当該シールベルトに対して離れて設けられ、
前記直線方向に見て、当該シールベルトの両端部を各々囲む凹部が形成され、前記凹部の一方の側壁、他方の側壁は前記変形抑制部、前記開口部の口縁部により夫々構成され、
前記各変形抑制部には、当該変形抑制部と前記シールベルトとの接触を防止するための接触防止部が設けられる直動機構。
【請求項4】
前記各変形抑制部は、前記直線方向に延在し、
前記接触防止部は、前記直線方向に複数設けられるか、あるいは当該直線方向に延在するスリットとして形成された、前記シールベルトの幅方向の両端部の他面側に、当該変形抑制部への接触防止用ガスを吐出するガス吐出口を備える請求項3記載の直動機構。
【請求項5】
前記変形抑制部によって形成される前記凹部の側壁は、前記開口部の口縁部へ向けて突出すると共に前記直線方向に形成された突条部を備え、
前記ガス吐出口は当該突条部に設けられる請求項4記載の直動機構。
【請求項6】
前記突条部の先端部は、前記直線方向に見て円形である請求項5記載の直動機構。
【請求項7】
前記シールベルトと前記突条部との距離は0.5mm以下であり、前記シールベルトと前記開口部の口縁部との距離は0.5mm以上、1mm以下である請求項5記載の直動機構。
【請求項8】
前記接触防止部は、前記突条部に開口した前記ガス吐出口の口縁部から前記シールベルトの幅方向の中心部側へ向けて延伸されて形成され、当該変形抑制部と前記シールベルトとの間の前記接触防止用のガスの流れをガイドするガイド部を含む請求項5記載の直動機構。
【請求項9】
前記変形抑制部は、前記ガス吐出口から吐出されたガスを吸引するための吸引口を、当該ガス吐出口に対して前記凹部の開口側に備える請求項4記載の直動機構。
【請求項10】
前記変形抑制部によって形成される前記凹部の側壁において、前記ガス吐出口よりも当該凹部の底部寄りに、当該凹部の内外を連通させる通気口が設けられる請求項9記載の直動機構。
【請求項11】
内部が排気されるケース体と、
前記ケース体に形成される開口部と、
前記ケース体内に設けられ、直線方向に移動する内部移動体と、
前記開口部から当該ケース体の外部へ突出するように前記内部移動体に設けられると共にケース体の外部において外部移動体と接続され、前記内部移動体の移動に伴い前記外部移動体を移動させるための接続部と、
前記直線方向に延びて前記開口部を塞ぐようにケース体内に設けられると共に、幅方向における両端部の一面側が当該開口部の口縁部に離れて対向するシールベルトと、
前記内部移動体の位置に対応する第1の部位が、当該第1の部位とは前記直線方向に異なる第2の部位よりも前記開口部から離れるように当該内部移動体に掛けられる前記シールベルトについての前記両端部の一面側を吸引して、前記第2の部位を前記開口部の口縁部に密着させるために、前記ケース体に設けられる吸引部と、
を備えた直動機構。
【請求項12】
前記吸引部が設けられ、
当該吸引部は、前記ケース体に形成されたベルト密着用の吸引孔を備える請求項11記載の直動機構。
【請求項13】
前記変形抑制部は前記ケース体に対して着脱自在である請求項2記載の直動機構。
【請求項14】
内部が排気されるケース体と、
前記ケース体に形成される開口部と、
前記ケース体内に設けられ、直線方向に移動する内部移動体と、
前記開口部から当該ケース体の外部へ突出するように前記内部移動体に設けられると共にケース体の外部において外部移動体と接続され、前記内部移動体の移動に伴い前記外部移動体を移動させるための接続部と、
前記直線方向に延びて前記開口部を塞ぐようにケース体内に設けられると共に、幅方向における両端部の一面側が当該開口部の口縁部に離れて対向するシールベルトと、
前記内部移動体の移動に応じて前記直線方向に移動するように当該内部移動体に接続された前記シールベルトについての変形を抑制するために、当該シールベルトの幅方向の両端部の他面側に対向して設けられる変形抑制部と、を備え、
前記変形抑制部が、前記シールベルトの幅方向の両端部の他面側に、当該シールベルトに対して離れて設けられ、
前記直線方向に見て、当該シールベルトの両端部を各々囲む凹部が形成され、前記凹部の一方の側壁、他方の側壁は前記変形抑制部、前記開口部の口縁部により夫々構成され、
前記凹部内には磁性流体が充填され、前記磁性流体を前記凹部内に保持するための磁石が当該凹部の外側に設けられる直動機構。
【請求項15】
前記外部移動体は、半導体製造用の基板を支持する基板支持部を備える請求項1、3、11または14記載の直動機構。
【請求項16】
開口部が形成されるケース体の内部を排気する工程と、
前記ケース体内に設けられる内部移動体を、直線方向に移動させる工程と、
前記開口部から当該ケース体の外部へ突出するように前記内部移動体に設けられると共にケース体の外部において外部移動体と接続される接続部を移動させ、前記内部移動体の移動に伴い前記外部移動体を移動させる工程と、
前記ケース体の外側に、前記接続部に接続されて設けられる外部移動体を、前記内部移動体の移動に応じて前記直線方向に移動させる工程と、
前記直線方向に延びてケース体内に設けられると共に、幅方向における両端部の一面側が当該開口部の口縁部に離れて対向するシールベルトにより、前記開口部を塞ぐ工程と、
前記シールベルトの幅方向の両端部の他面側に対向して設けられる変形抑制部により、前記内部移動体の移動に応じて前記直線方向に移動するように当該内部移動体に接続された前記シールベルトについての変形を抑制する工程と、
を備え、
前記変形抑制部は、前記シールベルトの幅方向の両端部の他面側に設けられ、当該シールベルトの移動方向に直交する回転軸回りに回転する回転体を備えるパーティクルの飛散抑制方法。
【請求項17】
開口部が形成されるケース体の内部を排気する工程と、
前記ケース体内に設けられる内部移動体を、直線方向に移動させる工程と、
前記開口部から当該ケース体の外部へ突出するように前記内部移動体に設けられると共にケース体の外部において外部移動体と接続される接続部を移動させ、前記内部移動体の移動に伴い前記外部移動体を移動させる工程と、
前記ケース体の外側に、前記接続部に接続されて設けられる外部移動体を、前記内部移動体の移動に応じて前記直線方向に移動させる工程と、
前記直線方向に延びてケース体内に設けられると共に、幅方向における両端部の一面側が当該開口部の口縁部に離れて対向するシールベルトにより、前記開口部を塞ぐ工程と、
前記シールベルトの幅方向の両端部の他面側に対向して設けられる変形抑制部により、前記内部移動体の移動に応じて前記直線方向に移動するように当該内部移動体に接続された前記シールベルトについての変形を抑制する工程と、
を備え、
前記変形抑制部は、前記シールベルトの幅方向の両端部の他面側に、当該シールベルトに対して離れて設けられ、
前記直線方向に見て、当該シールベルトの両端部を各々囲む凹部が形成され、前記凹部の一方の側壁、他方の側壁は前記変形抑制部、前記開口部の口縁部により夫々構成され、前記各変形抑制部には接触防止部が設けられ、当該接触防止部により当該変形抑制部と前記シールベルトとの接触を防止する工程を備えるパーティクルの飛散抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直動機構及びパーティクル飛散抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を製造するための基板処理装置は、基板である半導体ウエハ(以下、ウエハという)にレジストなどの各種の薬液の供給による膜の形成処理や、レジスト膜の現像処理など、種々の処理を行う。このような基板処理装置には、例えばウエハを搬送する搬送アームや薬液の供給を行うためのノズルの移動機構が含まれている。これらの搬送アームやノズルの移動機構には、ウエハの保持部やノズルなどの移動対象を直線方向に移動させる直動機構が組み込まれている。
【0003】
直動機構としては、例えば特許文献1に記載のように、内部が排気されるケースと、ケースの内部にて移動部材を直線方向に往復移動させる直動機構と、ケースに形成されたスリットと、当該スリットをケース内から塞ぐシール手段(シールベルト)と、を備えるものが知られている。そして特許文献1には、移動部材の一部を上記のスリットを介して外部に突出させて移動対象に接続し、当該移動対象を移動させるにあたり、移動部材の移動によるケース内の局所的な圧力上昇を抑制するために、ケースに当該ケースの内外を連通させる通気口を設けることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-305230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、ケース体内の内部移動体に接続される外部移動体をケース体外で直線移動させるにあたり、内部移動体と外部移動体とを接続するためにケース体に設けられた開口部から当該ケース体の外部へ、パーティクルが飛散することを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の直動機構は、内部が排気されるケース体と、
前記ケース体に形成される開口部と、
前記ケース体内に設けられ、直線方向に移動する内部移動体と、
前記開口部から当該ケース体の外部へ突出するように前記内部移動体に設けられると共にケース体の外部において外部移動体と接続され、前記内部移動体の移動に伴い前記外部移動体を移動させるための接続部と、
前記直線方向に延びて前記開口部を塞ぐようにケース体内に設けられると共に、幅方向における両端部の一面側が当該開口部の口縁部に離れて対向するシールベルトと、
前記内部移動体の移動に応じて前記直線方向に移動するように当該内部移動体に接続された前記シールベルトについての変形を抑制するために、当該シールベルトの幅方向の両端部の他面側に対向して設けられる変形抑制部と、を備え、
前記変形抑制部は、前記シールベルトの幅方向の両端部の他面側に設けられ、
当該変形抑制部は、前記シールベルトの移動方向に直交する回転軸回りに回転する回転体を備える。
本開示の別の直動機構は、内部が排気されるケース体と、
前記ケース体に形成される開口部と、
前記ケース体内に設けられ、直線方向に移動する内部移動体と、
前記開口部から当該ケース体の外部へ突出するように前記内部移動体に設けられると共にケース体の外部において外部移動体と接続され、前記内部移動体の移動に伴い前記外部移動体を移動させるための接続部と、
前記直線方向に延びて前記開口部を塞ぐようにケース体内に設けられると共に、幅方向における両端部の一面側が当該開口部の口縁部に離れて対向するシールベルトと、
前記内部移動体の移動に応じて前記直線方向に移動するように当該内部移動体に接続された前記シールベルトについての変形を抑制するために、当該シールベルトの幅方向の両端部の他面側に対向して設けられる変形抑制部と、を備え、
前記変形抑制部が、前記シールベルトの幅方向の両端部の他面側に、当該シールベルトに対して離れて設けられ、
前記直線方向に見て、当該シールベルトの両端部を各々囲む凹部が形成され、前記凹部の一方の側壁、他方の側壁は前記変形抑制部、前記開口部の口縁部により夫々構成され、
前記各変形抑制部には、当該変形抑制部と前記シールベルトとの接触を防止するための接触防止部が設けられる。

本開示の他の直動機構は、内部が排気されるケース体と、
前記ケース体に形成される開口部と、
前記ケース体内に設けられ、直線方向に移動する内部移動体と、
前記開口部から当該ケース体の外部へ突出するように前記内部移動体に設けられると共にケース体の外部において外部移動体と接続され、前記内部移動体の移動に伴い前記外部移動体を移動させるための接続部と、
前記直線方向に延びて前記開口部を塞ぐようにケース体内に設けられると共に、幅方向における両端部の一面側が当該開口部の口縁部に離れて対向するシールベルトと、
前記内部移動体の位置に対応する第1の部位が、当該第1の部位とは前記直線方向に異なる第2の部位よりも前記開口部から離れるように当該内部移動体に掛けられる前記シールベルトについての前記両端部の一面側を吸引して、前記第2の部位を前記開口部の口縁部に密着させるために、前記ケース体に設けられる吸引部と、
を備える。

本開示のさらに他の直動機構は、内部が排気されるケース体と、
前記ケース体に形成される開口部と、
前記ケース体内に設けられ、直線方向に移動する内部移動体と、
前記開口部から当該ケース体の外部へ突出するように前記内部移動体に設けられると共にケース体の外部において外部移動体と接続され、前記内部移動体の移動に伴い前記外部移動体を移動させるための接続部と、
前記直線方向に延びて前記開口部を塞ぐようにケース体内に設けられると共に、幅方向における両端部の一面側が当該開口部の口縁部に離れて対向するシールベルトと、
前記内部移動体の移動に応じて前記直線方向に移動するように当該内部移動体に接続された前記シールベルトについての変形を抑制するために、当該シールベルトの幅方向の両端部の他面側に対向して設けられる変形抑制部と、を備え、
前記変形抑制部が、前記シールベルトの幅方向の両端部の他面側に、当該シールベルトに対して離れて設けられ、
前記直線方向に見て、当該シールベルトの両端部を各々囲む凹部が形成され、前記凹部の一方の側壁、他方の側壁は前記変形抑制部、前記開口部の口縁部により夫々構成され、
前記凹部内には磁性流体が充填され、前記磁性流体を前記凹部内に保持するための磁石が当該凹部の外側に設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ケース体内の内部移動体に接続される外部移動体をケース体外で直線移動させるにあたり、内部移動体と外部移動体とを接続するためにケース体に設けられた開口部から当該ケース体の外部へ、パーティクルが飛散することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る直動機構が設けられる処理部を示す斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る直動機構の横断平面図である。
図3】第1の実施形態に係る直動機構の縦断側面図である。
図4】従来の直動機構の作用を示す説明図である。
図5】従来の直動機構の作用を示す説明図である。
図6】第1の実施形態に係る直動機構に設けられる囲み部の斜視図である。
図7】前記囲み部の断面図である。
図8】第1の実施形態に係る直動機構の作用を示す説明図である。
図9】ケース体内の気流の流れを説明する説明図である。
図10】囲み部付近の気流の流れを説明する説明図である。
図11】搬送アームが移動したときのケース体内部を示す説明図である。
図12】搬送アームが移動したときのケース体内の気流の説明図である。
図13】変形抑制部の着脱を説明する説明図である。
図14】囲み部の他の例を示す縦断側面図である。
図15】囲み部の他の例を示す横断平面図である。
図16】囲み部の他の例を示す縦断側面図である。
図17】囲み部の他の例を示す縦断側面図である。
図18】ケース体内の他の例を示す縦断側面図である。
図19】第2の実施形態に係る直動機構の横断平面図である。
図20】第2の実施形態に係る直動機構の作用を示す説明図である。
図21】第2の実施形態に係る直動機構の作用を示す説明図である。
図22】第3の実施形態に係る直動機構の囲み部を示す縦断側面図である。
図23】第3の実施形態に係る直動機構の囲み部の他の例を示す縦断側面図である。
図24】塗布、現像装置を示す縦断面図である。
図25】塗布、現像装置を示す平面図である。
図26】本開示にかかる直動機構を適用した塗布モジュールの平面図である。
図27】前記ケース体の他の例を示す縦断側面図である。
図28】前記ケース体の他の例を示す縦断側面図である。
図29】前記ケース体の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
第1の実施形態として、半導体製造用の基板であるウエハWを搬送する搬送アーム11に、本技術に係る直動機構を適用した例を説明する。図1は基板搬送機構をなす上記の搬送アーム11と、搬送アーム11によりウエハWが受け渡されるモジュール群とを備えた処理部10の斜視図を示している。この処理部10は、後述する基板処理装置である塗布、現像装置を構成し、大気雰囲気に設けられる。なお、上記の半導体とは物質としての半導体の意味ではなく、半導体により構成されるトランジスタやダイオードなどの素子を含む半導体デバイスの意味である。
【0010】
図中12は、ウエハWにレジストを塗布する複数のレジスト塗布モジュール14が格納される筐体であり、ウエハWの搬送口13を備えている。筐体12は搬送アーム11が移動するウエハWの搬送路15に面しており、レジスト塗布モジュール14は、当該搬送路15の長さ方向に沿って配列されている。また、搬送路15を挟んで筐体12に対向するように、加熱モジュール17が搬送路15の長さ方向に沿って複数設けられている。加熱モジュール17は、上下2段に重ねられ、積層体を形成している。
【0011】
搬送路15の長さ方向の一端側にはタワーT1が設けられ、タワーT1には処理部10へのウエハWの搬入用モジュールである受け渡しモジュールTRSが設けられている。搬送アーム11は、受け渡しモジュールTRSからレジスト塗布モジュール14、加熱モジュール17の順でウエハWを搬送して、ウエハWにはレジスト膜の形成、加熱処理が順次行われる。続いて搬送アーム11は、加熱処理されたウエハWを、処理部10からの搬出用の受け渡しモジュールTRS(図1には不図示)に搬送する。
【0012】
搬送アーム11は、2つの支持部2、基台21、昇降台22、フレーム23及びケース体24を備え、フレーム23と、ケース体24と、により構成されている。支持部2、基台21、昇降台22、フレーム23は外部移動体に相当し、ケース体24及び後述するケース体24内に含まれるフレーム23を移動させるための各部及びケース体24内を排気するファンにより、直動機構1が構成されている。
【0013】
支持部2は、ウエハWの裏面を支持する。2つの支持部2は、互いに上下に重なるように基台21上に設けられ、互いに独立して基台21上を進退する。基台21は昇降台22上に設けられ、昇降台22上を鉛直軸周りに回転自在に構成される。昇降台22は、上下方向に延伸されたフレーム23に囲まれるように設けられ、フレーム23内を昇降する。フレーム23は、後述のように水平移動できるように構成されている。支持部2、基台21、昇降台22、フレーム23の各部の動作の協働により、モジュール間でウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0014】
続いてケース体24について、図2図3も参照して説明する。当該ケース体24は長方形状であり、加熱モジュール17の積層体の下方において、当該積層体の配列方向に延伸するように設けられている。ケース体24における搬送路15に向かう側面には、開口部25が設けられている。開口部25は、ケース体24の長さ方向である水平方向に伸びるように、直線状に形成されている。以下、ケース体24における開口部25側を前方側とし、開口部25から見たケース体24の奥側を後方側として説明する。
【0015】
ケース体24内には、移動体(内部移動体)26が設けられている。移動体26の前端部は開口部25を介してケース体24の外部に突出している。この前端部は接続部として、フレーム23に接続されると共に当該フレーム23を支持している。ケース体24内には、移動体26及びフレーム23を動作させるための移動機構30が設けられる。移動機構30は、当該ケース体24の長さ方向に沿って伸びるガイドレール31を備え、移動体26は、このガイドレール31に係止されている。
【0016】
また、移動機構30は、主動プーリ32、従動プーリ33、ベルト34及びモータ35を備えている。ケース体24内の長さ方向の一端側、他端側には主動プーリ32、従動プーリ33が設けられ、互いに並行する水平軸回りに回転自在に構成されている。これらのプーリ32、33にベルト34が巻き掛けられ、このベルト34は、移動体26に接続されている。主動プーリ32にはモータ35が接続されている。モータ35の回転によりベルト34が駆動し、移動体26が開口部25に沿って直線方向(ケース体24の長さ方向)に移動し、この移動体26の移動に伴い、フレーム23が搬送路15の長さ方向に沿って直線移動する。
【0017】
ケース体24の後方側には、当該ケース体24内を排気するファン27が設けられている。例えばファン27は、ケース体24内の長さ方向の一端側、他端側に夫々設けられ、当該ファン27の動作により、ケース体24内は、搬送路15に対して負圧にされる。移動機構30の各部の摺動により発生するパーティクルや、モータ35に用いられるグリスから発生するパーティクルは、当該ファン27により除去される。
【0018】
また、ケース体24内のパーティクルが搬送路15に飛散すること防ぐため、開口部25を内側から塞ぐシールベルト40が設けられている。図3に示すようにシールベルト40は、開口部25の上下方向の開口幅よりも大きな幅を有する環状ベルトである。図2に示すようにケース体24の内部には、平面で見て四隅近辺に回転自在に構成された従動ローラ42が設けられており、各従動ローラ42の回転軸41は、鉛直向きである。このような4つの従動ローラ42に、上記のシールベルト40が張架され、シールベルト40は、その幅方向における両端部の一面側(表面側)が開口部25の口縁部に離れて対向する。より詳しくは当該両端部の表面側は、開口部25の口縁部に設けられる前方壁形成部材51に対向するが、後述する。
【0019】
また、既述した移動体26は、開口部25を塞ぐシールベルト40を貫通している。従って、移動体26はシールベルト40に接続されており、移動体26が移動機構30により直線移動したときに、シールベルト40は、移動体26の移動に従ってケース体24内の概略矩形の軌道を周動し、シールベルト40の各部位のうち、開口部25に臨む部位について見ると、ケース体24の長さ方向に沿って直線方向に移動する。このように移動体26と共にシールベルト40は移動するが、移動体26の位置に関わらず、シールベルト40のうち、前方側の2つの従動ローラ42の間に張架される部位によって開口部25が塞がれた状態が維持される。
なお、以下明細書中では、シールベルト40における開口部25から臨む面を一面側(表面側)とし、一面とは反対側の従動ローラ42に接する側の面を他面側(裏面側)とする。そして、以下の説明では特に部位を指定しない場合、シールベルト40とは、当該シールベルト40の周のうち、前方側にて張架されている部位(前方側の従動ローラ42間に張架される部位)のことを指すものとする。
【0020】
ところで背景技術の項目で述べたように、従来構成の直動機構として、ケース体内の雰囲気に含まれるパーティクルがケース体の開口部から当該ケース体外へ飛散しないようにケース体内を排気するファンを備え、開口部にシールベルトを備えた構成の装置が知られている。その従来の直動機構を仮に搬送アーム11に適用したとする場合について、図4図5を参照して説明する。従来の直動機構であるために、図4図5に示すケース体24には、後述するシールベルト40の変形を防ぐための囲み部5が設けられていない。
【0021】
ファン27による排気でケース体24内が搬送路15に対して負圧となり、図4に示すように搬送路15の空気が開口部25を介してケース体24内に流入する。この空気の流入により、シールベルト40の幅方向(上下方向)の両端部がケース体24の後方側に向かって押され、シールベルト40が側面視円弧状に反るように変形し、ケース体24の開口部25の口縁部と、シールベルト40の幅方向の両端部との隙間が広がるおそれが有る。なお図4では、実線で上記のように反ったシールベルト40を、破線で反りがないときのシールベルト40を夫々示している。
【0022】
その一方で、ケース体24内を移動体26が移動すると、ケース体24内の長さ方向のうちの移動体26の移動先の領域の雰囲気が移動体26により圧縮され、昇圧する。このとき既述したようにシールベルト40が変形して、ケース体24の開口部25の口縁部と、シールベルト40の表面側における幅方向両端部との隙間が広がっていると、図5に示すように昇圧された雰囲気が、当該隙間からケース体24外に流れ出るおそれが有る。そして、ケース体24内のパーティクル100が、その雰囲気の流れに乗って、搬送路15に放出されることが考えられる。
【0023】
そこで本実施の形態においては、上記した開口部25の口縁部と、シールベルト40の幅方向の両端部(上端部、下端部)の隙間の広がりを抑えるために、シールベルト40の上端部、下端部を各々囲う囲み部5を設けている。従って、囲み部5は計2つ、シールベルト40の上端側、下端側に夫々設けられている。シールベルト40の上端側に設けられる囲み部5と、下端側に設けられる囲み部5とは、シールベルト40の中心を通過する水平面に対して、鏡面対称に構成されており、以下では、シールベルト40の上端側に設けられる囲み部5を例に説明する。
【0024】
囲み部5は、ケース体24の開口部25の上側の縁部と、当該縁部に設けられる前方壁形成部材51と、シールベルト40の変形を抑制する変形抑制部52と、により構成されている。そして、囲み部5については当該シールベルト40の移動方向(ケース体24の長さ方向)に見て、シールベルト40の幅方向の端部を囲む凹部として形成されている。前方壁形成部材51は、ケース体24から後方へ突出すると共に、開口部25の長さ方向に沿って長尺に形成された角型の部材であり、当該開口部25の長さ方向の一端から他端に亘って形成されている。前方壁形成部材51の下端の高さは開口部25の上縁の高さに揃っており、前方壁形成部材51の上縁の高さは、シールベルト40の上縁の高さよりも高い。前方壁形成部材51は、上記の凹部の前方側の側壁を形成しており、シールベルト40の上端部の表面と隙間を介して対向する。このように前方壁形成部材51は、シールベルト40の幅方向の端部の前方側に形成される隙間の大きさを調整し、シールベルト40のシール性を所望のものとする。前方壁形成部材51は、例えばUPE(超高分子量ポリエチレン:Ultra High Molecular Weight Polyethylene)で構成されている。
【0025】
続いて、変形抑制部52について説明する。変形抑制部52は、水平壁50Aと垂直壁50Bとを備える。ケース体24の内壁において前方壁形成部材51の上方に若干離れた位置から、後方に突出するように水平壁50Aが設けられている。この水平壁50Aの後端側は下方へと屈曲し、上記の垂直壁50Bを形成する。垂直壁50Bの下端から例えばおよそ6mmの範囲の部位は前方へ向けて突出して、開口部25の長さ方向に沿った突条部53を構成している。突条部53の前端部は、シールベルト40の裏面の上端部に対して、隙間を介して対向している。また突条部53は、シールベルト40の移動方向に見て円形に構成されている。このように変形抑制部52は、上記した凹部の底部及び後方側の側壁を形成しており、例えば前方壁形成部材51と同様にUPEで構成されている。そのようにUPEを材料として用いるのは、シールベルト40が接触した際に、シールベルト40との間に発生する摩擦を低減するためであるが、UPEを材料とすることには限られない。なお、シールベルト40による適正なシール性を得るために、シールベルト40の表面と前方壁形成部材51との間の隙間寸法は例えば、0.5mm以上、1.0mm以下である。また、後述する突条部53から吐出するガスの適切な作用を得るために、シールベルト40の裏面と突条部53との間の隙間は、例えば0.5mm以下である。
【0026】
また、シールベルト40のうち開口部25に面する領域全体での変形を抑制できるように、例えば変形抑制部52についてはケース体24の長さ方向に沿って、開口部25の一端から他端に亘って形成されている。つまり開口部25の長さ方向において、変形抑制部52の一端の位置は、開口部25の一端と同じ位置かあるいは開口部25の外側の位置であると共に、変形抑制部52の他端の位置は、開口部25の他端と同じ位置かあるいは開口部25の外側の位置である。
【0027】
また移動体26が移動し、シールベルト40が移動したときにシールベルト40と変形抑制部52の垂直壁50Bとがこすれてしまうと、シールベルト40の劣化が早まったり、パーティクル100が発生するおそれがある。それを防ぐため、垂直壁50Bにおける突条部53の前端には、シールベルト40の裏面側に向けて、例えば窒素ガス(Nガス)を吐出するガス吐出口54が設けられている。このガスの吐出により、垂直壁50Bと前記シールベルト40との接触を防止する。
【0028】
ガス吐出口54は、シールベルト40の移動方向に沿って伸びるスリット状に形成され、例えば開口部25の一端から他端に亘って形成されている。ガス吐出口54は、突条部53内部に形成されるバッファ室55に連通している。バッファ室55は、変形抑制部52の延在方向(ケース体24の長さ方向)にガスを拡散するための空間であり、当該延在方向に見て、例えば直径4mmの円形に構成されている。変形抑制部52には、バッファ室55に接触防止用ガスとして上記のNガスを供給するガス供給路56をなす配管が接続され、当該配管の上流側はNガス供給源57に接続されている。なお図7中の符号58、59は夫々、流量調整部及びバルブである。
【0029】
また垂直壁50Bにおいて突条部53よりも上方の位置(ケース体24の長さ方向に見て、凹部の底部寄りの位置)には、当該垂直壁50Bの厚さ方向に沿った通気口60が形成されている。上記のように搬送路15に対して、ケース体24内が負圧となることで搬送路15からケース体24内に開口部25を介して流入する空気は、当該通気口60を通過して、ケース体24の後方へ向けて排気される。通気口60は、例えば変形抑制部52の延在方向に沿って等間隔に複数設けられている。
【0030】
上記したように2つの囲み部5は鏡面対称であるため、下側の囲み部5についての詳細な説明は省略するが、ごく簡単に上側の囲み部5との差異点を説明しておく。当該下側の囲み部5は、ケース体24の開口部25の下側の縁部により構成される。そして、当該開口部25の下側の縁部に設けられる前方壁形成部材51は、シールベルト40の下端部の表面に対向する。また、当該前方壁形成部材51については、その上端の高さが開口部25の下端縁の高さに揃うと共に、シールベルト40の下縁の高さよりも高く位置する。そして、変形抑制部52については、水平壁50Aが前方壁形成部材51の下方に設けられること、垂直壁50Bが水平壁50Aから上方に向かって形成されること、及び突条部53の前端部がシールベルト40の裏面の下端部に対向することが、差異点として挙げられる。
【0031】
なお搬送アーム11の外部移動体をなす各部の構成について補足しておくと、支持部2の基台21上の移動、昇降台22の昇降も、フレーム23の移動と同様にガイドレール31、プーリ32、33、ベルト34及びモータ35からなる駆動系により行われる。支持部2の前記駆動系は基台21内に、昇降台22の駆動系はフレーム23内に設けられる。また、基台21の昇降台22上での回転も、モータ35により構成される駆動系により行われ、当該駆動系は昇降台22内に設けられる。各駆動系が設けられた空間が、ケース体24内の空間に連通し、ファン27により排気されるが、各駆動系及び当該駆動系が設けられる空間の図示は省略している。
【0032】
続いて上記した搬送アーム11の作用について説明する。まずウエハWの搬送を開始する前において、搬送アーム11は、例えばタワーT1の受け渡しモジュールTRSからウエハWを受け取る位置に待機している。そのためにケース体24内においては、図8に示すように移動体26が当該受け渡しモジュールTRS側に位置している。このときファン27は回転しており、ケース体24内のパーティクル100を含む雰囲気が排気されると共に、ガス吐出口54からシールベルト40の裏面に向けてNガスが吐出されている。
【0033】
上記のファン27の排気により、ケース体24内が負圧となっている。図9図10に示すように搬送路15から開口部25内へ空気が流れ、当該空気は、シールベルト40と前方壁形成部材51との隙間、変形抑制部52に形成された通気口60を順に通過して、ファン27に向けて流れて排気される。また、ガス吐出口54からシールベルト40に吐出されたNガスの一部は、囲み部5によって形成される凹部の底部側へ向かって突条部53の表面に沿って流れ、上記の通気口60を通過する空気の流れと合流し、通気口60を通過してファン27へ向けて流れて排気される。シールベルト40に吐出されたNガスの他の一部は、凹部の開口部側へ向かって突条部53の表面に沿って流れ、上下の2つの囲み部5の間からファン27に向けて流れて排気される。
【0034】
上記した空気の気流によって、シールベルト40の幅方向の両端部は、各々後方側に押される。しかし、後方側からNガスの吐出が行われているため、当該幅方向の両端部の後方移動、即ち図4図5で説明したシールベルト40の変形が抑制される。そして、この空気の気流による作用が比較的大きく、シールベルト40が変形した場合であっても、シールベルト40の幅方向の両端部は突条部53に当接し、その変形量が抑制される。従って、シールベルト40の幅方向の両端部と、前方壁形成部材51(開口部25の口縁部)と隙間が大きくならない。
【0035】
そのようにシールベルト40の変形が抑制された状態で、搬送アーム11がタワーT1の受け渡しモジュールTRSからウエハWを受け取り、例えばタワーT1から見て最も奥手側のレジスト塗布モジュール14に搬送し、図11に示すように移動体26については、タワーT1から見て手前側から奥手側に移動する。これによりケース体24内における移動体26の進行方向の空間(奥手側の空間)の雰囲気が圧縮されて昇圧する。
【0036】
しかしながら既述のようにシールベルト40の変形が抑制されているので、その幅方向の両端部と、前方壁形成部材51と隙間が狭い状態になっている。そのため圧縮された雰囲気について、図12に示すように搬送路15への放出が抑制される。従って、パーティクル100についてもケース体24内から搬送路15へ放出されることが抑制される。一例として、受け渡しモジュールTRSからレジスト塗布モジュール14へウエハWを受け渡す際のシールベルト40の状態を説明したが、他のモジュール間でのウエハWの受け渡しを行う場合にも同様にシールベルト40の変形は抑制され、パーティクル100の搬送路15への放出が抑制される。
【0037】
この搬送アーム11によれば、ケース体24に収納された移動体26を移動させて、開口部25を介して当該移動体26に接続されるフレーム23を直線移動させるにあたり、開口部25を塞ぐシールベルト40を設けている。そして、シールベルト40の幅方向両端の他面側に対向する変形抑制部52を備えた囲み部5を設けている。従って、ファン27によりケース体24内を排気しても、シールベルト40の変形による当該シールベルト40の幅方向の両端部と、開口部25の口縁部との隙間の大きさが増大することが抑制される。そのため、開口部25を介してケース体24内から搬送路15へパーティクル100が飛散することが抑制される。結果として、搬送路15を通過するウエハWへのパーティクル100の付着が抑制され、ウエハWから製造される半導体製品の歩留りの低下を抑制することができる。
さらに、シールベルト40の変形が抑制され、開口部25のシール性が高いので、ファン27の回転数を抑えつつ、パーティクルの搬送路15への飛散を抑制することができる。そのようにファン27の回転数が抑制されることで、ファン27に供給する電力を低下させることができる。従って、搬送アーム11の運用コストの低減を図ることができる。
【0038】
また、変形抑制部52の垂直壁50Bに設けた突条部53からシールベルト40の幅方向の両端部の裏面にNガスを吐出する。それにより、より確実にシールベルト40の変形が抑制されると共に、変形抑制部52に対するシールベルト40の接触が抑制される。そのように接触が抑制されることでパーティクルの発生が抑えられるので、搬送路15へのパーティクルの飛散が、より確実に抑制される。また、上記したようにシールベルト40の劣化についても抑制することができる。
【0039】
またガス吐出口54がシールベルト40の移動方向に沿って伸びるスリット状に形成されているため、開口部25の長さ方向に沿ったシールベルト40の各位置について、上記のように変形抑制部52との接触を抑制することができるので好ましい。ただし、このガス吐出口54としては小径の吐出口が、シールベルト40の移動方向に沿って間隔を空けて多数形成されるように構成してもよい。ガス吐出口54をスリット状に形成する場合も、間隔を空けて複数形成されるようにしてもよい。
【0040】
また、ガス吐出口54は変形抑制部52をなす垂直壁50Bの突条部53に設けられ、シールベルト40に対する位置が比較的近い位置からNガスが吐出される。従って、シールベルト40に対するガスの押圧力を比較的大きくすることができる。また、垂直壁50Bにおいて、そのようにガス吐出口54が形成された突条部53以外の箇所はシールベルト40から比較的離れているため、シールベルト40に接触し難い。つまり、突条部53からガスを吐出することで、上記のシールベルト40と変形抑制部52との接触を、より確実に抑制することができるので好ましい。
【0041】
また、突条部53はシールベルト40の移動方向に見て円形であるため、ガス吐出口54から吐出されたNガスは、突条部53の表面に沿って淀まずに流れてファン27へ向かう。従って、シールベルト40の裏面側に吐出されたNガスが滞留して、当該裏面側の圧力が高くなり、シールベルト40の前方側が前方壁形成部材51に接触することを防止することができる。さらに、突条部53がそのように円形であることで、シールベルト40と接触した場合であっても、発生する摩擦が比較的小さく、シールベルト40の劣化及びパーティクル100の発生が抑制されるため、好ましい。
【0042】
さらに、変形抑制部52の垂直壁50Bについて、囲み部5により構成される凹部の底部寄りの位置に通気口60が設けられている。搬送路15から開口部25に流れる空気について、この通気口60を介してケース体24の後方へ流れることで、突条部53とシールベルト40との間を通過する空気の量が低減される。つまり、ガス吐出口54から吐出されるNガス流を横切るように空気が流れてNガス流のシールベルト40に対する押圧力が弱まることを抑制することが抑制される。従って、上記したシールベルト40と変形抑制部52との接触が、より確実に抑制される。
【0043】
後述するように本開示の直動機構1は、搬送アーム11に適用することには限られない。ただし、昇降台22、基台21、フレーム23については駆動機構を備えることで、比較的重量が大きい。従って、これらの各部材を支持すると共にフレーム23に接続される移動体26の接続部については、強度を高くするために比較的大型とすることが必要となる場合が有る。そのように移動体26を構成する場合、ケース体24の開口部25が広くなる。開口部25が広くなると、開口部25を塞ぐシールベルト40の面積も大きくする必要がある。そのように面積が大きくなることで、シールベルト40の弛みが起こり、図4図5にて説明したシールベルト40の変形が起こりやすくなるおそれが有る。つまり、直動機構1を搬送アーム11に適用することで、その変形を抑制し、パーティクルの飛散を抑制するについての高い効果が得られると考えられるため、好ましい。
【0044】
ところでケース体24は分解し、内部を開放することができる。具体的には例えばケース体24の上壁部を蓋24Aとして、当該ケース体24の他の部位(ケース本体)24Bに対して着脱自在な構成することができる。そして、図13に示すように、変形抑制部52はケース体24に対して着脱自在に構成される。蓋24Aを取り外したケース本体24Bから変形抑制部52を取り外し、清掃などのメンテナンスを行うことができる。ケース体24と変形抑制部52との着脱、及びケース本体24Bと蓋24Aとの着脱は、例えばボルトやナットなどの締結具(不図示)を用いて行う。
【0045】
また本開示にかかるシールベルト40の変形抑制部の変形例について、変形抑制部52との差異点を中心に説明する。また、各変形例について示す図14図17では、図3等の表示に比べて、シールベルト40を囲む凹部を構成する前方壁形成部材51及び変形抑制部を構成する水平壁50Aを、簡略化して示している。
【0046】
図14に示す変形抑制部52Aは、上記した垂直壁50Bの代わりに起立した円柱状の回転体であるカムフォロア62と、軸61と、を備えている。水平壁50Aの後部からシールベルト40の幅方向の中央部側に向けて軸61が伸び、その軸61の端部にカムフォロア62が、軸61回りに回転自在に設けられている。従って、軸61及びカムフォロア62により、側面で見た凹部の後方側の側壁が構成されている。上記の軸61は鉛直方向に沿って伸びており、従ってシールベルト40の移動方向に直交している。軸61及びカムフォロア62については、図15に示すようにシールベルト40の移動方向に沿って、例えば等間隔に複数個配置する。
【0047】
このようにシールベルト40の裏面側にカムフォロア62を複数設けることで、シールベルト40の幅方向の両端部の位置を規制し、当該シールベルト40の変形を抑制できる。また、シールベルト40が移動したときに、シールベルト40にカムフォロア62の周面が接触している場合、シールベルト40の移動方向に回転する。そのためカムフォロア62と、シールベルト40との間の摩擦を軽減することができ、シールベルト40の劣化が抑制されると共に、パーティクルの発生が抑制される。なお、シールベルト40が変形していない状態において、当該シールベルト40はカムフォロア62の周面と接しても良いし、若干離れていても良い。
【0048】
また図16に示す変形抑制部52Bについては、垂直壁50Bに通気口60が設けられていない。そして、この変形抑制部52Bの突条部53は板状の気流ガイド部材63を備えている。気流ガイド部材63は、突条部53のガス吐出口54の口縁部から、シールベルト40の幅方向の中心部側へ向けて延伸されるように設けられている。気流ガイド部材63は、上記のようにガス吐出口54の口縁部から伸びるため、シールベルト40に近接する。ガス吐出口54から吐出されたNガス、及び搬送路15から開口部25に流れ込んだ空気は、この気流ガイド部材63とシールベルト40との間に形成された隙間を流れて、ケース体24内から排気される。このように気流ガイド部材63は、シールベルト40の幅方向の両端部の裏面側に前後幅が小さい隙間を形成して、気流を規制するガイド部である。そのようにシールベルト40の裏面側の隙間を流れる気流により、ベルヌーイの法則に従った真空吸引力が発生し、シールベルト40の幅方向の両端部は、気流ガイド部材63に対して吸引されると共に非接触の状態となる。従って、その幅方向の両端部の位置が規制されてシールベルト40の変形が抑制されると共に、シールベルト40と、突条部53との接触を、より確実に抑制することができるため好ましい。
【0049】
またガス吐出口54と、気流ガイド部材63と、を前方壁形成部材51に設け、シールベルト40の幅方向両端部を前方へ吸引すると共に、前方壁形成部材51に非接触な状態としてもよい。あるいはガス吐出口54と、気流ガイド部材63と、をシールベルト40の表面側及び裏面側の両方に設けてもよい。
【0050】
続いて、図17に示す変形抑制部52Cについて説明する。この変形抑制部52Cには、通気口60が設けられていない。そして、垂直壁50Bの端部が、突条部53よりもシールベルト40の幅方向中心部へ向けて延伸されている。その延伸された部位について、内部には排気路65が形成され、シールベルト40に対向する前面には、排気路65に連通する吸引口64が開口している。従って、吸引口64はガス吐出口54に対して凹部の開口側に設けられている。搬送路15から流入した空気及びガス吐出口54から吐出されたNガスについて、一部は吸引口64に流入して排気され、他の一部は垂直壁50Bの前方を通過してファン27に流入して排気される。このようにガス吐出口54からのガスの吐出と共に吸引口64からの吸引を行うことで、ガス吐出口54から吐出されるNガスによって、シールベルト40の裏面側の圧力が高くなりすぎることを防ぐことができる。そのような裏面側の圧力の上昇を防ぐことで、シールベルト40の前方壁形成部材51への接触を抑制することができる。
【0051】
ところで、図18にケース体24の他の構成例を示しておく。図18のケース体24内の前後の中央部には、水平な仕切り板68が設けられ、移動体26及びベルト34が移動する領域と、その上方の領域(区画領域66とする)とを区画する。区画領域66には、ファン27とは別個にファン67が設けられる。開口部25からケース体24内に流入した空気は、ファン67により区画領域66に流れ、さらに区画領域66の後方へ向かい、ファン27によって排気される。つまり、移動体26が移動する領域を迂回する排気経路が形成されている。このように構成することで移動体26の移動領域におけるパーティクル100の数が低減される。従って、この移動領域で移動体26の移動による雰囲気の昇圧が起こり、当該雰囲気が開口部25へ流れても、その雰囲気に含まれるパーティクル100の数は少ない。従って、搬送路15へのパーティクル100の飛散を、より確実に抑制することができる。
【0052】
[第2の実施形態]
第2の実施の形態に係る直動機構について説明する。図19に示すように第2の実施形態に係る直動機構は、ケース体24内に設けられたガイドレール31に沿って直線移動する内部移動体70を備えている。内部移動体70は、第1の実施形態の移動体26に相当し、移動体26と同様にモータ35及びベルト34等のケース体24内に設けられる各部材により水平移動するが、これらの各部材の図示は省略している。
【0053】
内部移動体70の高さ寸法は、開口部25の幅寸法及びシールベルト40の幅寸法よりも大きく、内部移動体70の前面における上下端部の周縁が、開口部25の幅方向の口縁部と夫々対向する。また内部移動体70の前方には、図示しない外部移動体に接続され、開口部25からケース体24の外部へ突出する接続部71が設けられている。
【0054】
またケース体24の内側には、シールベルト40をその幅方向における両端部の一面側がケース体24の開口部25の口縁部に離れて対向するように配置している。シールベルト40は、内部移動体70を貫通するように設けられている。そして、第2の実施形態では、シールベルト40は環状ではない。シールベルト40の長さ方向の一端側と他端側とが夫々ケース体24内の支持柱72に固定され、当該シールベルト40は、開口部25を塞ぐように配置されている。図19中の符号73は、シールベルト40が開口部25の近辺に張架されるように位置を規制するための従動ローラであり、開口部25の長さ方向における当該開口部25の外側に配置されている。
【0055】
さらに内部移動体70内において、内部移動体70の移動方向(ケース体24の長さ方向)に向かう両側壁の近辺には、外側従動ローラ74が夫々設けられている。外側従動ローラ74は、内部移動体70の外側においてシールベルト40が開口部25近辺を通るように位置を規制する役割を有し、当該開口部25付近に設けられている。また内部移動体70の内部には、内部移動体70の内部を通過するシールベルト40を開口部25から離れた位置を通るように規制する従動ローラ75が2つ、外側従動ローラ74よりも後方位置に、ケース体24の長さ方向に離れて設けられている。なお、各ローラ73~75の回転軸は、鉛直軸に沿っている。
【0056】
つまり、この第2の実施形態ではシールベルト40に対して内部移動体70が移動する。そして、ケース体24における内部移動体70の位置に対応し、シールベルト40の長さ方向の各部位について、前後の位置が変わるように、当該シールベルト40は内部移動体70のローラ74、75に掛けられている。具体的に、シールベルト40のうち内部移動体70内に収まった部位(第1の部位)については後方側に、内部移動体70の外側の部位(第2の部位)については前方側、即ち開口部25付近に位置する。
【0057】
さらに図20に示すようにケース体24の内面における開口部25の上縁部、下縁部に、夫々吸引孔76が後方に向けて開口している。この例では、上縁部、下縁部の夫々に上下2段に吸引孔76が形成されている。そして上縁部、下縁部夫々において、開口部25の長さ方向に沿って各吸引孔76は間隔を空けて多数設けられている。吸引孔76は、シールベルト40の幅方向両端部の表面側を吸引する吸引部として構成され、シールベルト40における内部移動体70の外側の部位を、開口部25の口縁部に密着させることができる。
【0058】
内部移動体70が移動し、シールベルト40のうち内部移動体70内に進入する領域は、この内部移動体70の移動により加えられる応力によって、図21に示すように開口部25の口縁部から引き離される。その一方で、シールベルト40のうち、内部移動体70の内側から外側に出る領域は、図20に示すように開口部25の付近に位置し、吸引孔76により吸引されて、開口部25の口縁部に密着する。
【0059】
このようにシールベルト40が密着することで、ケース体24内を排気して負圧にしたときにも、開口部25を塞ぐシールベルト40がケース体24の後方に引き込まれない。従ってシールベルト40の幅方向両端部の周縁と、開口部25の口縁部との隙間が広くならず、内部移動体70の移動によりケース体24内が昇圧したときも、パーティクル100を含む雰囲気が、ケース体24の外部に流出することを抑制することができる。
【0060】
上記の吸引孔76としては、横長のスリットであってもよい。また、シールベルト40をケース体24に吸引する吸引部としては上記の構成に限られない。例えばシールベルト40の幅方向の縁部が金属を含み、ケース体の開口部25の口縁部には磁石が配置される構成とする。シールベルト40において、内部移動体70の外側で開口部25付近に位置した部位が、磁石の磁力により口縁部に吸引されて、密着する構成としてもよい。つまり、排気によってシールベルト40を吸引する構成とすることには限られない。
【0061】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係る直動機構について、第1の実施形態に係る直動機構1との差異点を中心に説明する。第3の実施形態に係る直動機構1は、囲み部5の構成が第1の実施形態に係る直動機構1と異なる。図22に示すように第3の実施形態に係る直動機構の囲み部5は、ケース体24の長さ方向に沿って延在する保持具77を備えている。この保持具77の縦断面は凹部77Aを形成している。2つの保持具77は、凹部77Aの開口側を互いに対向させるように配置されている。つまり、上側の保持具77の凹部77Aは下方に向かって開口し、下側の保持具77の凹部77Aは上方に向かって開口している。そして保持具77については、凹部77Aの開口側とは反対側、即ち凹部77Aの外側に電磁石79が設けられており、電磁石79は、保持具77の長さ方向(ケース体24の長さ方向)に沿って配置されている。そして各凹部77A内には、磁性流体78が充填されており、電磁石79の磁力により当該凹部77A内に保持されている。そして、シールベルト40の幅方向の両端部は凹部77A内に位置し、磁性流体78と接触する一方で、保持具77とは非接触となっている。
【0062】
つまり、磁性流体78によりシールベルト40と開口部25との間の隙間がシールされている。このような構成とする場合も、シールベルト40の幅方向の両端部は凹部77A内に位置しているので、後方への移動が規制される。さらに上記のように磁性流体78により隙間がシールされるため、ケース体24から搬送路15へのパーティクルの飛散が、より確実に抑制される。またシールベルト40の端部は磁性流体78中を移動するため、シールベルト40の端部に大きな摩擦力が働かず、シールベルト40の劣化やシールベルト40の擦れによるパーティクルの発生を抑制することができる。
【0063】
また図23に示すように凹部77Aが後方に向けて開口するように各保持具77を設置し、シールベルト40の幅方向両端を前方側に折り曲げて磁性流体78に接触させる構成でも良い。
【0064】
続いて図1に示した処理部10が設けられる塗布、現像装置1Aについて詳しく説明する。図24図25、は夫々塗布、現像装置の概略縦断側面図、平面図である。この塗布、現像装置は、キャリアブロックD1、処理ブロックD2、インターフェイスブロックD3が順に直線状に接続されることで構成される。インターフェイスブロックD3について、処理ブロックD2の接続方向と反対側には、露光装置D4が接続される。キャリアブロックD1は、キャリアCを塗布、現像装置1A内に搬入出する役割を有し、キャリアCの載置台91と、キャリアCの蓋部を開閉するために昇降する開閉部92と、開閉部92を介してキャリアCからウエハWを搬送するための移載機構93とを備えている。
【0065】
処理ブロックD2は、単位ブロックE1~E6が下から順に積層されて構成されている。単位ブロックE1~E3は各々が上記の処理部10に相当し、ウエハWにレジスト膜を形成する。単位ブロックE4~6は、単位ブロックE1~E3と略同様の構成であるが、レジスト塗布モジュール14の代わりに現像モジュールを備えている。
【0066】
図1に示したタワーT1は、キャリアブロックD1側に設けられ、各単位ブロックE1~E6に跨って上下に伸びる。そして、単位ブロックE1~E6の各高さに、受け渡しモジュールTRSを備える。また、図1では表示を省略したが、タワーT1に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な受け渡しアーム95が設けられている。なお図24では各単位ブロックE1~E6の搬送アーム11は、F1~F6として示している。
【0067】
インターフェイスブロックD3は、単位ブロックE1~E6に跨って上下に伸びるタワーT2、T3、T4を備えている。タワーT2とタワーT3に対しては、昇降自在なインターフェイスアーム96により、タワーT2とタワーT4に対しては昇降自在なインターフェイスアーム97により、夫々ウエハWの受け渡しが行われる。またタワーT2と露光装置D4の間でウエハWの受け渡しを行うためのインターフェイスアーム98が設けられている。タワーT2には、受け渡しモジュールTRSなどのモジュールが互いに積層されている。またタワーT3、T4にも夫々モジュールが設けられているが、ここでは説明を省略する。
【0068】
この塗布、現像装置1Aでは、キャリアCにより搬送されたウエハWは、単位ブロックE1~E3に搬送され、既述したようにレジスト膜の形成処理、加熱処理を順に受ける。そして、当該ウエハWはインターフェイスブロックD3のタワーT2の単位ブロックE1~E3の各高さの受け渡しモジュールTRSを介して露光装置D4へと搬送され、露光処理を受ける。露光後のウエハWは、タワーT2の単位ブロックE4~E6の各高さの受け渡しモジュールTRSに搬送される。続いてウエハWは、単位ブロックE4~E6にて加熱処理、現像処理を順に受けて、レジスト膜にパターンが形成された後、キャリアCに戻される。
【0069】
本開示にかかる直動機構1は、図24に示した塗布、現像装置におけるキャリアCの蓋部を開放する開閉部92に適用してもよい。本開示にかかる直動機構を適用することでキャリアCから運び出されるウエハWの搬送経路へのパーティクルの放出を抑制でき、ウエハWへのパーティクルの付着を抑制できる。
【0070】
また本開示にかかる直動機構は、レジスト塗布モジュール14に適用してもよい。より具体的には、例えばレジストを吐出するノズルの移動機構に適用する。以下、図26を参照して説明する。図中87は、ウエハWを処理するために囲むカップである。
【0071】
図26に示すようにノズル移動機構8は、第1の実施形態に示した直動機構1と各々略同じ構造の第1の筐体81と、第2の筐体82と、を備えている。第1の筐体81及び第2の筐体82と、第1の実施形態に示した直動機構との差異点を中心に説明すると、第1の筐体81は、外部移動体であるノズル80を接続部であるアーム83を介して内部移動体である移動体84に接続されており、ノズル80を上下方向に移動させるように配置されている。さらに第1の筐体81には、ファン27が設けられることに代えて、下面に排気口85が形成されている。
【0072】
第2の筐体82は、開口部25が上方を向くように設置され、外部移動体である第1の筐体81を水平方向に移動するように構成されている。さらに例えば第1の筐体81を支持する接続部86は管状に構成されている。この接続部86の一端が第1の筐体81の排気口85に接続されており、他端が第2の筐体82内に開口している。そして第2の筐体82のファン27により排気したときに、接続部86を介して第1の筐体81内も一括して排気される。
ノズル移動機構8の作用により、ノズル80についてはカップ87内のウエハWに対する所定の高さの処理位置と、カップ87の外側における所定の高さの待機位置との間で移動する。第1の筐体81及び第2の筐体82の各々が直動機構1と同様に構成されることで、そのようにノズル80を移動させるにあたり、各筐体からのパーティクルの飛散が抑制され、当該パーティクルのウエハWへの付着を抑制することができる。
【0073】
このように本開示の直動機構は、搬送アーム11に適用されることには限られない。レジスト以外の薬液を供給する装置のノズル移動機構に本技術の直動機構を適用してもよい。さらに上記した例の他には例えば、基板を処理する装置、モジュールにおいて、搬送機構に対して基板を受け渡すために設けられる昇降ピンを昇降させる昇降機構に当該直動機構を適用してもよい。また、キャリアCの載置台91をアンロード位置(載置台91にキャリアCを受け渡す位置)と、ロード位置(装置へウエハWを搬入させる位置)との間で移動させる移動機構に、当該直動機構を適用してもよい。さらに直動機構による外部移動体の移動方向は、既述した各例のように上下方向、水平方向に限られることはなく、例えば斜め方向であってもよい。
【0074】
[第1の実施形態の更なる変形例]
続いて、第1の実施形態の更なる変形例について図27及び図28の縦断側面図、図29の斜視図を参照して、図6等で示した第1の実施形態との差異点を中心に説明する。なお、図27図28はシールベルト40の移動方向(直線方向)において、互いに異なる位置の断面を示している。この変形例においても第1の実施形態と同様、ケース体24の内部の上側、下側に、シールベルト40の移動方向に見て凹部をなす囲み部5が各々設けられている。以下、代表して上側の囲み部5について説明する。
【0075】
この変形例における囲み部5については、シールベルト40の移動方向に長尺な部材であり、例えば樹脂により構成され、凹部をなす各側壁及び底壁が一体的に形成されている。より具体的に説明すると、第1の実施形態で述べた前方壁形成部材51は水平壁50Aに接続されるように構成され、当該前方壁形成部材51、水平壁50A及び垂直壁50Bが、一体となって凹部である囲み部5を形成しており、当該囲み部5が、シールベルト40の上端部を囲んでいる。そして、この変形例の囲み部5の垂直壁50B(凹部の一方側の側壁)には突条部53及び通気口60が設けられておらず、垂直壁50Bの前面はシールベルト40の上端部の裏面側(他面側)に対向すると共に近接する(即ち、シールベルト40に対してわずかに離れて設けられる)垂直面59として構成されている。この囲み部5はケース体24内の上側において、当該シールベルト40の移動方向に間隔を空けて、複数設けられている。
【0076】
そしてケース体24内の上側には、複数のローラユニット110が設けられている。各ローラユニット110は、台部101及びローラ102を備えている。台部101は、シールベルト40の上端よりも上方位置に設けられ、当該台部101から縦長のローラ102が下方へ伸び出し、当該ローラ102の周面がシールベルト40の上端部の裏面に対向している。ローラ102は鉛直軸を回転軸として回転する回転体であり、ローラ102の上端側はベアリング103に囲まれ、当該ベアリング103を介して当該台部101に接続されている。シールベルト40の移動方向に向って見ると、ローラ102の前方側の端部は、上記した囲み部5の垂直壁50Bにおける垂直面55よりもシールベルト40の裏面に近い位置に設けられており、例えば当該裏面に近接または接触している。このローラユニット110についてもシールベルト40の上部側に複数設けられており、ローラユニット110と囲み部5とが、シールベルト40の移動方向において交互に配置されている。従ってローラ102と垂直壁50Bとが当該移動方向に並んで設けられている。
【0077】
そして、この第1の実施形態の更なる変形例においても、既述した各例と同様に、ケース体24の開口部付近の構成は上下に鏡面対称とされている。従って、ケース体24内の下方側には、複数の囲み部5及び複数のローラユニット110が設けられており、これらの囲み部5及び当該ローラユニット110が、シールベルト40の移動方向に沿って交互に配置されている。そのようにケース体24内の下方側の囲み部5によってシールベルト40の下端部が囲まれ、当該囲み部5の垂直壁50Bがシールベルト40の下端部の裏面に対向する。また、そのようにケース体24内の下方側に設けられたローラユニット110の台部101は、シールベルト40の下端よりも下方に位置しており、当該台部101から上方へローラ102が突出して、シールベルト40の下端部の裏面に対向する。そのようにケース体24内の下方側に各々設けられる囲み部5の垂直壁50Bと、ローラ102との位置関係は、既述したケース体24内の上側に各々設けられる囲み部5の垂直壁50Bと、ローラ102との位置関係と同様である。なお、上側における囲み部5及びローラユニット110と、下側における囲み部5及びローラユニット110とについて、シールベルト40の移動方向における互いの位置は同じであることには限られず、例えば若干ずれていてもよい。
【0078】
以上に述べた更なる変形例においては、シールベルト40の裏面側に位置する囲み部5の垂直壁50Bにより、シールベルト40の比較的大きな変形が防止される。また、垂直壁50Bと同じくシールベルト40の裏面側に位置するローラ102もシールベルト40の変形の抑制に寄与する。従って、第1の実施形態と同様、ケース体24の開口部25についてのシール性を高くすることができる。この変形例においては、垂直壁50B及びローラ102がシールベルト40の変形抑制部に相当する。そして、シールベルト40が変形していないとき、あるいはシールベルト40の変形量が小さいときには、ローラ102によりシールベルト40と垂直壁50Bとの摺動が防止されるように当該シールベルト40の移動がガイドされるので、当該シールベルト40からのパーティクルの発生が抑制される。また、上記の摺動が抑制されることで、シールベルト40の長寿命化を図ることができる。
【0079】
なお、ローラユニット102については図14で示しているように軸61と、当該軸61よりも大きな径を持つと共に軸61に対して回転するローラであるカムフォロア62と、を備えた構成としてもよい。しかし上記のローラユニット110によれば、シールベルト40に対して上方、下方に夫々配置されるベアリング103を備えた基部102から下方、上方にローラ102が伸び出す構成とされている。当該構成によりローラ102を小径とし、ローラ102の回転軸について比較的前方の開口部25寄りの位置とすることができる。従って、ローラユニット110の前後の幅を抑えることができるため、ケース体24の大型化を防止することができる。
【0080】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更、組み合わせが行われてもよい。
【符号の説明】
【0081】
24 ケース体
25 開口部
26 移動体
40 シールベルト
52 変形抑制部
76 吸引孔


図1
図2
図3
図4
図5
図6
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