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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】水処理設備および水処理設備の運転方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20231205BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20231205BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20231205BHJP
   C02F 1/20 20230101ALI20231205BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D61/58
C02F1/44 D
B01D19/00 B
C02F1/20 A
B01D65/02 520
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022072081
(22)【出願日】2022-04-26
(65)【公開番号】P2023161633
(43)【公開日】2023-11-08
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】中里 寛時
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-022448(JP,A)
【文献】特開2016-215089(JP,A)
【文献】国際公開第2009/008463(WO,A1)
【文献】特開2004-216264(JP,A)
【文献】特開2000-246069(JP,A)
【文献】国際公開第2013/047466(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/065422(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/20- 1/26
C02F 1/30- 1/38
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1膜ろ過装置と、
前記第1膜ろ過装置の後段に設置された第2膜ろ過装置と、
前記第1膜ろ過装置を透過した透過水の一部が貯留される貯留槽と、
前記第1膜ろ過装置と前記貯留槽との間に設置されて、前記貯留槽に貯留された前記透過水を、前記第1膜ろ過装置と前記貯留槽との間で循環可能とする循環流路と、
前記循環流路に備えられたポンプと、
前記第1膜ろ過装置に対する空気導入を伴うろ過膜洗浄の終了後に、前記貯留槽に貯留された前記透過水を、前記循環流路を介して、前記第1膜ろ過装置と前記貯留槽との間で循環させるように前記ポンプを制御する制御部と、を備えた水処理設備。
【請求項2】
前記循環流路は、
前記第1膜ろ過装置を透過した前記透過水を前記貯留槽に供給する第1循環流路と、
前記貯留槽に貯留された前記透過水を前記第1膜ろ過装置の一次側に供給可能にする第2循環流路と、から構成され、
前記第2循環流路に前記ポンプが備えられている、請求項1に記載の水処理設備。
【請求項3】
前記循環流路が閉鎖型の流路であり、前記貯留槽が開放型の貯留槽である、請求項1または請求項2に記載の水処理設備。
【請求項4】
前記第1膜ろ過装置は、相互に並列接続された複数の膜ろ過ユニットから構成され、
前記循環流路は、前記膜ろ過ユニットのそれぞれに対して前記透過水を供給可能とされ、
前記制御部は、前記貯留槽に貯留された前記透過水を、前記循環流路を介して、いずれか1つの前記膜ろ過ユニットと前記貯留槽との間で循環させる、請求項1または請求項2に記載の水処理設備。
【請求項5】
第1膜ろ過装置と、前記第1膜ろ過装置の後段に設置された第2膜ろ過装置と、前記第1膜ろ過装置を透過した透過水の一部が貯留される貯留槽と、が備えられた水処理設備の運転方法であって、
前記第1膜ろ過装置においてろ過された前記透過水を前記第2膜ろ過装置に供給する通水工程と、
前記通水工程の途中において、前記第1膜ろ過装置に対してろ過膜洗浄を行う洗浄工程と、を備え、
前記洗浄工程には、少なくとも、
前記第1膜ろ過装置に対して空気を用いたろ過膜洗浄を行うエア洗浄段階と、
前記エア洗浄段階の後に、前記第1膜ろ過装置の一次側から前記透過水を透過させつつ、前記第1膜ろ過装置と前記貯留槽との間で前記透過水を循環させるエア抜き段階と、が備えられている、水処理設備の運転方法。
【請求項6】
前記貯留槽が開放型の貯留槽とされており、
前記エア抜き段階において前記第1膜ろ過装置から前記透過水とともに排出された空気を、前記貯留槽において脱気する、請求項5に記載の水処理設備の運転方法。
【請求項7】
前記第1膜ろ過装置は、相互に並列接続された複数の膜ろ過ユニットから構成され、
前記第1膜ろ過装置と前記貯留槽との間で前記透過水を循環させる循環流路、前記循環流路は、前記複数の膜ろ過ユニットそれぞれに対して前記透過水を供給可能とされ、
前記複数の膜ろ過ユニットのうち、一部の膜ろ過ユニットに対して前記洗浄工程を行うともに、残りの膜ろ過ユニットに対して前記通水工程を行う、請求項5または請求項6に記載の水処理設備の運転方法。
【請求項8】
前記複数の膜ろ過ユニットに対して、順次、洗浄工程を行う場合において、膜ろ過ユニットに対する先行の洗浄工程と、別の膜ろ過ユニットに対する後行の洗浄工程との間で、全ての膜ろ過ユニットに対して通水工程を行う、請求項7に記載の水処理設備の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理設備および水処理装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、膜ろ過装置は、濁質成分や有機物を除去する手段として、純水製造や排水回収分野などで広く用いられている。膜ろ過装置の一例として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。膜ろ過装置のろ過膜には、精密濾過膜(MF膜)や限界濾過膜(UF膜)などが分離対象に応じて使い分けられており、前者は0.1μm前後、後者は0.005~0.5μmの細孔が一般的である。
【0003】
例えば、ろ過膜装置として、UF膜装置とRO膜装置とが備えられた水処理設備が知られている。UF膜装置、RO膜装置にはそれぞれ、UF膜、RO膜が備えられている。この水処理設備では、UF膜によって原水中の濁質成分を除去してから、RO膜によって脱塩を行うことにより、純水を製造している。図7に、このような水処理設備の一例を示す。
【0004】
図7に示す水処理設備201には、原水槽202、UF膜装置203、RO膜装置204および透過水槽205が備えられている。また、図7に示す水処理設備201には、UF膜装置203とRO膜装置204の間に、中継タンク206と除染フィルタ207とが設置されている。これらの設置理由は後述する。これらはそれぞれ、流路L202~L204、L206およびL207によって接続されている。更に、中継タンク206には、UF膜装置203の一次側または二次側に洗浄水を供給する供給路L209が接続されている。
【0005】
UF膜装置203には、UF膜装置203に空気供給する空気供給系210が接続されるとともに、洗浄後の洗浄水を排出する洗浄水排出系211が接続されている。
【0006】
流路L202、L206、L207、L209にはそれぞれ、ポンプP202、P206、P207、P209が備えられている。このうち、ポンプP206およびP207は加圧ポンプとされている。ポンプP202およびP207にはそれぞれ、VVVFインバータ装置216、217が付属されている。また、流路L203、L204には流量計226、227が備えられている。流量計226、227による流量の測定結果はVVVFインバータ装置216、217に出力されるように構成されている。VVVFインバータ装置216、217は流量の測定結果に基づき、ポンプP202およびP207を制御するように構成されている。
【0007】
図7に示す水処理設備201において、UF膜装置203のUF膜を洗浄する場合は、空気を利用した洗浄が行われ、その際に、UF膜装置203の内部に空気が残留する。空気を利用した洗浄は、空気供給系210からUF膜装置203に空気を供給することにより行われる。また、空気供給と同時に、中継タンク206から洗浄水としてUF膜処理水が送られる場合もある。
【0008】
UF膜装置203の内部に空気が残留したままの状態で、純水の製造を再開すると、UF膜処理水には気泡が含有される。ここで仮に、気泡を含んだままのUF膜処理水が加圧ポンプP207に送られると、加圧ポンプP207が誤動作を起こす。そこで、従来の水処理設備201には、前述したように、中継タンク206と除染フィルタ207とが設置されている。中継タンク206は開放型のタンクとされている。
【0009】
中継タンク206は、UF膜装置203を通過したUF膜処理水が貯留される。中継タンク206は開放型とされているため、UF膜処理水中の気泡は、中継タンク206において脱気される。また、中継タンク206には、RO膜装置204への供給水量を調整するためのバッファとしての役割を担う。
【0010】
一方、中継タンク206が開放型であることから、外部からUF膜処理水に異物が混入する場合がある。そこで、RO膜装置204への異物の混入を防止するために、除染フィルタ207が設置される。
【0011】
以上説明したように、従来の水処理設備201には、UF膜装置203とRO膜装置204の間に、中継タンク206と除染フィルタ207とを設置しなければならず、機器点数が多くなり、水処理設備201の設置スペースが増大する問題があった。特に、建屋内に可搬式の水処理設備201を設置する場合に、水処理設備201の設置スペースの増大は大きな問題になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2020/194820号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、設置スペースを小さくすることが可能な水処理設備およびその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 第1膜ろ過装置と、
前記第1膜ろ過装置の後段に設置された第2膜ろ過装置と、
前記第1膜ろ過装置を透過した透過水の一部が貯留される貯留槽と、
前記第1膜ろ過装置と前記貯留槽との間に設置されて、前記貯留槽に貯留された前記透過水を、前記第1膜ろ過装置と前記貯留槽との間で循環可能とする循環流路と、
前記循環流路に備えられたポンプと、
前記第1膜ろ過装置に対する空気導入を伴うろ過膜洗浄の終了後に、前記貯留槽に貯留された前記透過水を、前記循環流路を介して、前記第1膜ろ過装置と前記貯留槽との間で循環させるように前記ポンプを制御する制御部と、を備えた水処理設備。
[2] 前記循環流路は、
前記第1膜ろ過装置を透過した前記透過水を前記貯留槽に供給する第1循環流路と、
前記貯留槽に貯留された前記透過水を前記第1膜ろ過装置の一次側に供給可能にする第2循環流路と、から構成され、
前記第2循環流路に前記ポンプが備えられている、[1]に記載の水処理設備。
[3] 前記循環流路が閉鎖型の流路であり、前記貯留槽が開放型の貯留槽である、[1]または[2]に記載の水処理設備。
[4] 前記第1膜ろ過装置は、相互に並列接続された複数の膜ろ過ユニットから構成され、
前記循環流路は、前記膜ろ過ユニットのそれぞれに対して前記透過水を供給可能とされ、
前記制御部は、前記貯留槽に貯留された前記透過水を、前記循環流路を介して、いずれか1つの前記膜ろ過ユニットと前記貯留槽との間で循環させる、[1]または[2]に記載の水処理設備。
[5] 第1膜ろ過装置と、前記第1膜ろ過装置の後段に設置された第2膜ろ過装置と、前記第1膜ろ過装置を透過した透過水の一部が貯留される貯留槽と、が備えられた水処理設備の運転方法であって、
前記第1膜ろ過装置においてろ過された前記透過水を前記第2膜ろ過装置に供給する通水工程と、
前記通水工程の途中において、前記第1膜ろ過装置に対してろ過膜洗浄を行う洗浄工程と、を備え、
前記洗浄工程には、少なくとも、
前記第1膜ろ過装置に対して空気を用いたろ過膜洗浄を行うエア洗浄段階と、
前記エア洗浄段階の後に、前記第1膜ろ過装置の一次側から前記透過水を透過させつつ、前記第1膜ろ過装置と前記貯留槽との間で前記透過水を循環させるエア抜き段階と、が備えられている、水処理設備の運転方法。
[6] 前記貯留槽が開放型の貯留槽とされており、
前記エア抜き段階において前記第1膜ろ過装置から前記透過水とともに排出された空気を、前記貯留槽において脱気する、[5]に記載の水処理設備の運転方法。
[7] 前記第1膜ろ過装置は、相互に並列接続された複数の膜ろ過ユニットから構成され、
前記第1膜ろ過装置と前記貯留槽との間で前記透過水を循環させる循環流路、前記複数の膜ろ過ユニットそれぞれに対して前記透過水を供給可能とされ、
前記複数の膜ろ過ユニットのうち、一部の膜ろ過ユニットに対して前記洗浄工程を行うともに、残りの膜ろ過ユニットに対して前記通水工程を行う、[5]または[6]に記載の水処理設備の運転方法。
[8] 前記複数の膜ろ過ユニットに対して、順次、洗浄工程を行う場合において、膜ろ過ユニットに対する先行の洗浄工程と、別の膜ろ過ユニットに対する後行の洗浄工程との間で、全ての膜ろ過ユニットに対して通水工程を行う、[7]に記載の水処理設備の運転方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、設置スペースを小さくすることが可能な水処理設備およびその運転方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態である水処理設備を示す模式図。
図2図2は、本発明の実施形態である水処理設備に備えられた第1膜ろ過装置を示す模式図。
図3図3は、第1膜ろ過装置の要部を示す模式図。
図4図4は、本発明の実施形態である水処理設備の運転方法を説明する模式図。
図5図5は、本発明の実施形態である水処理設備の運転方法を説明する模式図。
図6図6は、本発明の実施形態である水処理設備の運転方法を説明する模式図。
図7図7は、従来の水処理設備を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態である水処理設備およびその運転方法について図面を参照して説明する。
本実施形態の水処理設備100は、第1膜ろ過装置102と、第1膜ろ過装置102の後段に設置された第2膜ろ過装置103と、第1膜ろ過装置102を透過した透過水の一部が貯留される貯留槽105と、第1膜ろ過装置102と貯留槽105との間に設置された循環流路L110と、循環流路L110に備えられたポンプP3と、制御部110と、が備えられている。また、第1膜ろ過装置102の前段には原水槽101が備えられている。更に、第2膜ろ過装置103の後段には処理水槽104が備えられている。更にまた、水処理設備100には、第1膜ろ過装置102に空気供給する空気供給部107と、第1膜ろ過装置102からの洗浄水を排出する洗浄水排出部106とが備えられている。
【0018】
本実施形態の水処理設備100においては、第1膜ろ過装置102において原水をろ過して一次透過水とし、第2膜ろ過装置103において一次透過水をろ過して二次透過水とする。第1膜ろ過装置102によって調製された一次透過水の一部は、貯留槽105に一時的に貯留される。第1膜ろ過装置102に対して洗浄工程を行う際には、第1膜ろ過装置102と貯留槽105との間で一次透過水を循環させる。
【0019】
以下、水処理設備100を構成する各種の装置並びに流路および付属機器について詳細に説明する。
【0020】
図1に示す水処理設備100には、流路L101~L107が備えられている。これらの流路は密閉型とされる。これらの流路は、原水槽101、第1膜ろ過装置102、第2膜ろ過装置103、処理水槽104、貯留槽105、空気供給部107および洗浄水排出部106をそれぞれ、相互に接続している。また、流路L102およびL104には、弁V102およびV104が備えられている。
【0021】
循環流路L110は、第1循環流路および第2循環流路から構成される。第1循環流路は、流路L102の一部と、流路L102から分岐した流路L104からなり、第1膜ろ過装置102によって調製された一次透過水の一部を貯留槽105に供給する。第2循環流路は、流路L105よりなり、貯留槽105に貯留された一次透過水を第1膜ろ過装置102の一次側に供給可能にする。また、循環流路L110には貯留槽105も含まれる。流路L105(第2循環流路)には、第1膜ろ過装置102と貯留槽105との間で一次透過水を循環させるためのポンプP3が設けられている。循環流路L110は密閉型の流路とされる。
【0022】
また、後述するように、第1膜ろ過装置102は、相互に並列接続された複数の膜ろ過ユニット102A、102Bから構成される。このような第1膜ろ過装置102に対して、循環流路L110は、膜ろ過ユニット102A、102Bのそれぞれに一次透過水を供給可能とされる。
【0023】
流路L101、L102にはそれぞれ、ポンプP1、P2が備えられている。ポンプP1は原水を加圧して第1膜ろ過装置102の一次側に供給する。ポンプP2は一次透過水を加圧して第2膜ろ過装置103の一次側に供給する。ポンプP2にはVVVFインバータ装置113が付属されている。また、流路L103には流量計114が備えられている。流量計114による流量の測定結果はVVVFインバータ装置113に出力されるように構成されている。VVVFインバータ装置113は流量の測定結果に基づき、ポンプP2を制御するように構成されている。これにより、第2膜ろ過装置103への供給水量が制御される。
【0024】
貯留槽105は、第1膜ろ過装置102によって調製された一次透過水が一時的に貯留される。貯留槽105は、循環流路L110の一部をなす。貯留槽105は、開放型の貯留槽とされている。これにより、後述する運転方法において、気泡が混入した一次透過水が循環される場合に、貯留槽105において気泡が脱気される。
【0025】
第1膜ろ過装置102は、図2に示すように、相互に並列接続された複数の膜ろ過ユニット102A、102Bから構成される。図2には2基の膜ろ過ユニット102A、102Bが示されているが、膜ろ過ユニットの数は2基に限らず、3基でもよく、4基でもよく、5基以上でもよい。
【0026】
図3に、膜ろ過ユニット102Aの拡大断面図を示す。なお、膜ろ過ユニット102Bの構造は、膜ろ過ユニット102Aと同じである。図3に示すように、膜ろ過ユニット102Aは、円筒の軸心線方向を上下方向(この実施形態では鉛直方向)にして配置された容器1を備えている。この容器1内に、複数の中空糸膜2が配置されている。
【0027】
中空糸膜2は、容器1の上部側において、固定部としての合成樹脂製ポッティング部3で固定され、容器1の下部側では固定されていない。ポッティング部3の合成樹脂としては例えばエポキシ樹脂を用いることができる。例えば、中空糸膜2をU字型に組み込み、中空糸膜2の両端をポッティング部3で固定する。この場合、中空糸膜2の中間部が容器1の下部に位置する。
【0028】
中空糸膜2は、例えば、限界濾過膜(UF膜)とする。UF膜は、0.005~0.5μmの細孔を有するものを例示できる。中空糸膜2は特に制限はないが、通常、内径0.2~1.0mm、外径0.5~2.0mm、有効長さ300~2500mm程度のものが用いられる。UF膜の膜素材についても特に制限はないが、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリエチレン、ポリプロピレン等を用いることができる。なお、第1膜ろ過装置102に備えられるUF膜は中空糸膜に限らず、スパイラル膜でもよく、チューブラー膜でもよく、平膜でもよい。
【0029】
ポッティング部3の上側と下側にはそれぞれ処理水室(透過水室)7と原水室10とが区画形成されている。中空糸膜2の上端側はポッティング部3を貫通しており、その上端の開口は処理水室7に臨み、中空糸膜2の内部は処理水室7に連通している。中空糸膜2をU字型に組み込む場合は、中空糸膜2の両端がポッティング部3を貫通する。また、原水室10が中空糸膜2の一次側とされ、透過水室7が中空糸膜2の二次側とされる。
【0030】
ポッティング部3は例えば円盤状であり、その外周面又は外周縁部が容器1の内面に水密的に接している。
【0031】
容器1の内部(原水室10)には、中心管4が略鉛直方向(容器1の軸方向)に延びている。中心管4は、例えば容器1の中心軸に沿って配置されている。中心管4は先端(上端)が閉じた円管であり、側周面には上下にわたって、かつ周方向に、間隔を空けて複数の噴出孔4aが全体的に設けられている。
【0032】
中心管4の高さ(上下方向の長さ)は特に限定されないが、中心管4の上端がポッティング部3の下面近傍に位置していることが好ましい。なお、中心管4の上端がポッティング部3に埋設されていてもよい。
【0033】
以下、膜ろ過ユニット102Aと、流路L101、L102、L104(第1循環流路)、L105(第2循環流路)、L106(L106a、L106b)およびL107(L107a、L107b)との接続状態について説明する。膜ろ過ユニット102Bと各流路との接続状態は、膜ろ過ユニット102Aの場合と同様である。
【0034】
中心管4の下端は、容器1の底面の開口11に臨んでいる。開口11には流路L101が接続され、流路L101には弁V101が設けられている。流路L101の弁V101よりも容器1側では流路L105が合流している。流路L101は、原水槽101に接続されている。通水工程においては、流路L101によって、原水槽101から容器1の内部(原水室10(一次側))に対して原水が供給される。
【0035】
流路L105(第2循環流路)は、貯留槽105に接続されている。第1膜ろ過装置102の洗浄工程においては、流路L105によって、貯留槽105から容器1の内部(原水室10(一次側))に対して一次透過水(透過水)が供給される。原水室10に供給された一次透過水は、中空糸膜2よってろ過され、透過水室7を経由して容器1の外部に送り出される。
【0036】
弁V101と弁V105の開閉を切り替えることで、容器1への原水/一次透過水の供給を切り替えることができる。弁V101を開、弁V105を閉とし、ポンプP1により流路L101を介して原水を送り出すことで、原水室10の下部から原水を供給できる。また、弁V101を閉、弁V105を開とし、ポンプP3により流路L105を介して一次透過水を送り出すことで、原水室10の下部から一次透過水を供給できる。
【0037】
また、開口11には流路L107aが接続され、流路L107aには弁V107aが設けられている。また、中心管4の下部に流路L107bが接続され、流路L107bに弁V107bが設けられている。流路L107aおよびL107bは、流路L107から分岐されたものである。流路L107は、空気供給部107に接続されている。これにより、流路L107および流路L107aを介して、空気供給部107から容器1の内部(原水室10)に空気が供給される。また、流路L107および流路L107bを介して、空気が中心管4に供給される。
【0038】
弁V107aと弁V107bの開閉を切り替えることで、容器1への空気の供給経路を切り替えることができる。弁V107aを開、弁V107bを閉とすることで、開口11を介して容器1の内部(原水室10)の下方側から空気を供給できる。また、弁V107aを閉、弁V107bを開とすることで、中心管4を介して容器1の内部(原水室10)の上方側から空気を供給できる。また、容器1の内部(原水室10)が水で満たされた状態で、流路L107aまたはL107bから空気を供給することで、開口11または中心管4から気泡を供給し、中心糸膜2をバブリング洗浄することもできる。
【0039】
更に、容器1の側面の上部には上部排出口8が設けられている。上部排出口8はポッティング部3の下面近傍に設けられている。上部排出口8には流路L106aが接続され、流路L106aには弁V106aが設けられている。また、開口11には流路L106bが接続され、流路L106bには弁V106bが設けられている。そして、流路L106aおよびL106bは、合流して流路L106となり、洗浄水排出部106の排水タンク106aに接続される。流路L106a、L106bおよびL106によって、容器1の内部(原水室10)の洗浄排水または空気が排出される。
【0040】
弁V106aと弁V106bの開閉を切り替えることで、容器1からの洗浄排水または空気の何れか一方または両方の排出経路を切り替えることができる。弁V106aを開、弁V106bを閉とすることで、上部排出口8を介して容器1の上方側から洗浄排水または空気の何れか一方または両方を排出できる。また、弁V106aを閉、弁V106bを開とすることで、開口11を介して容器1の下方側から洗浄排水または空気の何れか一方または両方を排出できる。洗浄排水は、流路L106を介して排水タンク106aに送られる。
【0041】
容器1の頂部には一次透過水の出口5が設けられている。出口5には流路L102が接続されている。一次透過水は流路L102を介して容器1の外部に取り出されて第2膜ろ過装置103に送られる。また、流路L102の途中には、流路L107cが分岐されている。流路L107cには弁V107cが設けられている。流路L107cは、空気供給部107に接続されている。
【0042】
更に、流路L102の途中には、流路L104が分岐されている。この分岐箇所よりも下流側の流路L102には弁V102が設けられ、流路L104には弁V104が設けられている。流路L104は貯留槽105に接続されている。
【0043】
弁V107cを閉じた状態で、弁V102と弁V104の開閉を切り替えることで、一次透過水の供給先を第2膜ろ過装置103または貯留槽105に切り替えることができる。通水工程において、弁V102を開、弁V104を閉とすることで、一次透過水を第2膜ろ過装置103に供給できる。また、洗浄工程において、弁V102を閉、弁V104を開とすることで、一次透過水を貯留槽105に供給できる。
【0044】
また、洗浄工程において、弁V102および弁V104を閉じた状態で、弁V107cを開くことで、出口5を介して容器1の内部(透過水室7)に空気を供給できる。これにより、中心糸膜2を空気逆洗することができる。
【0045】
流路L102は、容器1の頂部の出口5から一定の長さまで、鉛直方向に延在させる必要がある。また、容器1の出口5は、容器1の最上端に設ける必要がある。本実施形態の運転方法では、エア抜き工程において、一次透過水を循環させることで容器1内に残留する空気を排出させる必要があるが、流路L102が一定の長さまで鉛直方向に延在させることで、空気がそれ自体の浮力によって、早期に容器1から流路L102に向けて排出させることが可能になる。
【0046】
次に、図1に示す第2膜ろ過装置103は、一次透過水をろ過することによって二次透過水を調製する。第2膜ろ過装置103には、中空糸膜が備えられている。第2膜ろ過装置103の中空糸膜は、例えば、逆浸透膜(RO膜)とする。RO膜の膜素材についても特に制限はないが、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド等を用いることができる。なお、第2膜ろ過装置103に備えられるRO膜は中空糸膜に限らず、スパイラル膜でもよく、チューブラー膜でもよい。
【0047】
処理水槽104は、第2膜ろ過装置103によって調製された二次透過水を貯留する。
【0048】
洗浄水排出部106は、第1膜ろ過装置102の洗浄工程において発生した洗浄排水が排出される。第1膜ろ過装置102および洗浄水排出部106は、流路L106によって接続されている。洗浄水排出部106には、図2に示すように、洗浄排水を一時的に貯留する排出タンク106aが備えられる。
【0049】
空気供給部107は、第1膜ろ過装置102の洗浄工程において第1膜ろ過装置102に空気を供給する。第1膜ろ過装置102および空気供給部107は、流路L107によって接続されている。
【0050】
制御部110は、第1膜ろ過装置102に対する空気導入を伴うろ過膜洗浄の終了後に、貯留槽105に貯留された一次透過水を、循環流路L110を介して、第1膜ろ過装置102と貯留槽105との間で循環させるようにポンプP3を制御する。また、制御部110は、貯留槽105に貯留された一次透過水を、循環流路L110を介して、いずれか1つの膜ろ過ユニット102A、102Bと貯留槽105との間で循環させる。
【0051】
次に、本実施形態の水処理設備100の運転方法について説明する。
本実施形態の水処理設備100の運転方法は、第1膜ろ過装置102においてろ過された一次透過水を第2膜ろ過装置103に供給する通水工程と、通水工程の途中において、第1膜ろ過装置102に対してろ過膜洗浄を行う洗浄工程と、を備える。洗浄工程には、少なくとも、エア洗浄段階と、エア抜き段階とが備えられている。エア洗浄段階は、第1膜ろ過装置102に内蔵されたろ過膜に対して空気を用いたろ過膜洗浄を行う。エア抜き段階は、エア洗浄段階の後に、第1膜ろ過装置102の一次側からろ過膜に対して一次透過水を透過させつつ、第1膜ろ過装置102と貯留槽105との間で一次透過水を循環させる。
【0052】
以下、図1図3を参照しつつ、水処理設備100を運転方法の詳細を説明する。なお、以下に説明における弁の開閉動作およびポンプの作動および停止の動作は、いずれも、制御部110の指令によって行われる。
【0053】
通水工程では、図1において、ポンプP1、P2を作動させ、弁V102を開とし、弁V104を閉とする。これにより、原水槽101から流路L101を介して原水が第1膜ろ過装置102に供給される。原水は、第1膜ろ過装置102に備えられたUF膜(中空糸膜2)によってろ過されて一次透過水とされる。一次透過水は、流路L102によって第2膜ろ過装置103に送られる。このとき、一次透過水は、流路L102の途中に設けられたポンプP2によって加圧された状態で、第2膜ろ過装置103に送られる。一次透過水は、第2膜ろ過装置103に備えられたRO膜によってろ過されて二次次透過水とされる。二次透過水は、流路L103によって処理水槽104に送られる。
【0054】
通水工程における第1膜ろ過装置102の動作について、図2図4を参照して詳細に説明する。
通水工程では、図2および図3において、流路L101の弁V101および流路L102の弁V102を開にする。一方、流路L105(第2循環流路)の弁V105および流路L104(第1循環流路)の弁V104を閉にする。また、流路L107の弁V1107a~V107cを閉とし、流路L106aおよびL106bの弁V106aおよびV106bを閉とする。
【0055】
これにより、膜ろ過ユニット102A、102Bの両方に、流路L101によって原水が供給される。原水は、容器1の原水室10(一次側)に供給され、中空糸膜2によってろ過されて一次透過水とされる。一次透過水は、中空糸膜2を透過して容器1の透過水室7(二次側)に取り出される。そして、流路L102によって第2膜ろ過装置103に送られる。
【0056】
通水工程を継続することにより、中空糸膜2の一次側には、原水に含まれていた濁質、有機物等(以後、濁質という)が徐々に堆積する。そのため、中空糸膜2の目詰まりを防止するために、洗浄工程を行う。
【0057】
洗浄工程は、第1膜ろ過装置102に備えられる複数の膜ろ過ユニット102A、102Bのうち何れか1基に対して行い、他の膜ろ過ユニットにおいては通水工程を継続する。これにより、洗浄工程と並行して通水工程を継続することができ、一次透過水の調製を中断することなく継続できる。膜ろ過ユニットが3基以上の場合であっても、1基の膜ろ過ユニットに対して洗浄工程を行い、残りは通水工程を継続すればよい。以下の説明では、膜ろ過ユニット102Aに対して洗浄工程を行い、膜ろ過ユニット102Bに対して通水工程を継続する場合について説明する。
【0058】
本実施形態の洗浄工程では、エア洗浄段階およびエア抜き段階を順次行う。
【0059】
エア洗浄段階は、第1膜ろ過装置102に内蔵された中空糸膜2(ろ過膜)に対して空気を用いたろ過膜洗浄を行う。空気を用いたろ過膜洗浄には、様々なタイプのものがある。例えば、中空糸膜2の二次側からエアを送る空気逆洗、中空糸膜2の一次側に空気を供給して中空糸膜2を洗浄する空気洗浄、中空糸膜2の一次側を水で満たした状態で空気を吹き込むことにより中空糸膜2を洗浄するバブリング洗浄が挙げられる。本実施形態のエア洗浄段階では、空気を用いたろ過膜洗浄として、空気逆洗、空気洗浄、バブリング洗浄のいずれか1つを行ってもよく、2つ以上を行ってもよい。また、洗浄工程では、空気を用いたろ過膜洗浄のほかに、中空糸膜2の一次側に洗浄水を供給して中空糸膜2を洗浄する水洗浄を行ってもよい。
【0060】
以下、エア洗浄段階の一例を、図2図5を参照しつつ説明する。以下に説明する例では、空気逆洗、水洗浄、バブリング洗浄を順次行う場合について説明する。
【0061】
図4(a)には、通水工程が継続中の膜ろ過ユニット102Aを示している。流路L101により原水を原水室10(一次側)に供給し、中空糸膜2によってろ過し、一次透過水として透過水室7(二次側)に取り出し、流路L102から排出している。このとき、弁V101、V102は開とされ、その他の弁は閉じられている。
【0062】
また、もう一方の膜ろ過ユニット102Bにおける弁の開閉状況は、膜ろ過ユニット102Aの場合と同様とする。以後、膜ろ過ユニット102Aに対する洗浄工程を説明するが、通水工程を継続中の膜ろ過ユニット102Bにおける弁の開閉状況はそのまま維持する。
【0063】
以下、膜ろ過ユニット102Aに対する洗浄工程のエア洗浄段階を説明する。まず、流路L101の弁V101を閉じて原水の供給を停止し、流路L102の弁V102も閉じる。また、流路L106bの弁V106bは開く。これにより図4(b)に示すように、原水室10(一次側)に充填されていた原水が、流路L106bによって原水室10から排出される。排出された原水は、洗浄水排出部106に送られる。
【0064】
次に、中空糸膜2の空気逆洗を行う。流路L107cの弁V107cを開ける。流路L106bの弁V106bは開けたままとする。そして図4(c)に示すように、空気供給部107から流路L107cおよびL102を介して空気を透過水室7(二次側)に供給し、中空糸膜2を通過させ、原水室10(一次側)に取り出し、流路L106bから排出させる。これにより、中空糸膜2の空気逆洗が行われる。
【0065】
次に、空気供給部107からの空気の供給を停止する。これにより図4(d)に示すように、透過水室7および原水室10内の空気圧を大気圧まで低下させる。
【0066】
次に、中空糸膜2の一次側に一次透過水を供給して、中空糸膜2の水洗浄を行う。流路L107cの弁V107cおよび流路L106bの弁L106bは閉じる。流路L105の弁V105および流路L106aの弁V106aは開ける。そして、ポンプP3を作動させる。これにより、図5(a)に示すように、貯留槽105から一次透過水を原水室10(一次側)に供給して、中空糸膜2の一次側の表面を洗浄する。洗浄後の一次透過水は、洗浄排水として、流路L106aから排出する。水洗浄を行うことにより、中空糸膜2の一次側の表面に堆積されていた濁質が除去される。
【0067】
次に、中空糸膜2の一次側に対して、バブリング洗浄を行う。原水室10に一次透過水を満たしたまま、流路L105の弁V105は閉じる。ポンプP3は止める。流路L107bの弁V107bは開ける。流路L106aの弁V106aは開けたままとする。これにより、図5(b)に示すように、流路L107bから原水室10(一次側)に空気が供給される。空気は、流路L107bから中心管4に供給され、中心管4に設けられた噴出孔4aから原水室10内に噴出される。原水室10には一次透過水が満たされたままなので、噴出された空気は気泡となって中空糸膜2の中心管4に対向する表面に接触し、中空糸膜2の上部をバブリング洗浄する。洗浄に供された空気は、一部の洗浄排水とともに、流路L106aから排出される。このようにして、中空糸膜2の上部がバブリング洗浄される。
【0068】
次に、中空糸膜2の一次側に対して、引き続きバブリング洗浄を行う。原水室10に一次透過水を満たしたまま、流路L107bの弁V107bは閉じる。流路L107aの弁V107aは開ける。流路L106aの弁V106aは開けたままとする。これにより、図5(c)に示すように、流路L107aから原水室10(一次側)に空気が供給される。空気は、容器1の下部の開口11から供給される。原水室10には一次透過水が満たされたままなので、供給された空気は気泡となって中空糸膜2の一次側の表面に接触して、中空糸膜2の下部をバブリング洗浄する。洗浄に供された空気は、流路L106aから排出される。このようにして、中空糸膜2の下部がバブリング洗浄される。
【0069】
次に、流路L107aの弁V107aは開けたままとし、流路L106aの弁V106aを閉じ、流路L106bの弁V106bを開ける。これにより、図5(d)に示すように、中空糸膜2の下部へのバブリング洗浄を継続しつつ、原水室10内の洗浄水を流路L106bから排出する。
【0070】
図5(b)~図5(d)において説明したように、空気の供給経路を変更することで、中空糸膜2の全体をバブリング洗浄することができる。
【0071】
次に、エア抜き段階について説明する。エア洗浄段階終了後の第1膜ろ過装置102の膜ろ過ユニット102Aの内部には、空気が残留しているため、このままの状態で通水工程を再開すると、気泡を含む一次透過水が流路L102を介してポンプP2および第2膜ろ過装置103に送られることになる。そうすると、気泡を含む一次透過水によって、ポンプP2および第2膜ろ過装置103の動作が異常をきたすおそれがある。そこで、本実施形態では、エア抜き工程を行うことによって、膜ろ過ユニット102Aの内部から気泡を完全に除去する。
【0072】
具体的には、まず、流路L104(第1循環流路)の弁V104および流路L105(第2循環流路)の弁V105を開とする。また、流路L106aの弁V106aも開とする。流路L106bの弁V106bは閉とし、流路L107aの弁V1067aも閉とする。そして、ポンプP3を作動させる。これにより、図6(a)に示すように、貯留槽105から一次透過水を原水室10(一次側)に供給する。一次透過水は、その一部が、流路L106bから排出する。排出された一次透過水は洗浄水排出部106に送られる。これにより、原水室10(一次側)内に残留する空気を早期に排出して、原水室10を一次透過水によって満たすことができる。
【0073】
また、原水室10(一次側)に供給された一次透過水の残部は、中空糸膜2を透過して、透過水室7(二次側)から取り出される。取り出された一次透過水は、流路L104によって貯留槽105に戻される。戻された一次透過水は、流路L105によって再び膜ろ過ユニット102Aに送られる。このようにして、循環流路による一次透過水の循環を安定化させる。
【0074】
次に、流路L106aの弁V106aを閉とする。流路L104(第1循環流路)の弁V104および流路L105(第2循環流路)の弁V105は開のままとし、ポンプP3も作動させたままとする。これにより、図6(b)に示すように、貯留槽105に貯留された一次透過水が、循環流路L110によって、貯留槽105と膜ろ過ユニット102Aとの間で循環させられる。
【0075】
この一次透過水の循環によって、膜ろ過ユニット102Aの容器1の内部において、一次透過水の水流が生じ、容器1の内部に残留する気泡は、この水流によって容器1の出口5から流路L102に排出される。ここで、流路L102は、容器1の頂部の出口5から一定の長さまで、鉛直方向に延在されており、また、容器1の出口5は、容器1の最上端に設けられているので、空気自体の浮力によって、容器1の内部に残留する気泡が、早期に容器1の外部に排出させることが可能になる。
【0076】
排出された気泡は、一次透過水とともに、流路L104によって貯留槽105に送られる。貯留槽105は、開放式とされているので、貯留槽105に到達した気泡は直ちに脱気される。
【0077】
このようにして、エア洗浄段階において膜ろ過ユニット102Aの内部に導入された空気を、エア抜き段階によってほぼ完全に排出させることが可能になる。
【0078】
洗浄工程が終了後の膜ろ過ユニット102Aは、すみやかに通水工程に移行するとよい。
【0079】
なお、複数の膜ろ過ユニットに対して、順次、洗浄工程を行ってもよい。すなわち、膜ろ過ユニット102Aに対する洗浄工程の終了後に、別の膜ろ過ユニット102Bに対する洗浄工程を開始してよいのはもちろんである。ただし、膜ろ過ユニット102Aの洗浄工程の終了後に、直ちに、別の膜ろ過ユニット102Bに対する洗浄工程を開始すると、一次透過水の供給量が大きく変動し、第2膜ろ過装置103における一次透過水の供給量と、二次透過水の生産量とのバランスが崩れて、第2膜ろ過装置103の作動が不安定になるおそれがある。
【0080】
そのため、複数の膜ろ過ユニットに対して、順次、洗浄工程を行う場合は、膜ろ過ユニットに対する先行の洗浄工程と、別の膜ろ過ユニットに対する後行の洗浄工程との間に、全ての膜ろ過ユニットに対して通水工程を行うことが好ましい。すなわち、膜ろ過ユニット102Aに対する洗浄工程が終了して、膜ろ過ユニット102Aが通水工程に移行してから、膜ろ過ユニット102Bに対する洗浄工程を開始するとよい。膜ろ過ユニット102Aが通水工程に移行した際は、膜ろ過ユニット102Bにおいても通水工程が進行中である。このように、一旦、全ての膜ろ過ユニットが通水工程に移行してから、次の洗浄工程を行うとよい。
【0081】
以上説明したように、本実施形態の水処理設備100によれば、貯留槽105に貯留された一次透過水を第1膜ろ過装置102と貯留槽105との間で循環可能とする循環流路L110と、ポンプP3と、制御部110とが備えられているので、第1膜ろ過装置102に対する空気導入を伴うろ過膜洗浄を行った場合でも、第1膜ろ過装置102内に残留する気泡を早期に除去できる。また、従来の水処理設備に比べて、機器点数を大幅に削減できるので、水処理設備100をコンパクト化することができる。
【0082】
また、循環流路L110が、一次透過水を貯留槽105に供給する第1循環流路と、貯留槽105に貯留された一次透過水を第1膜ろ過装置102に供給可能にする第2循環流路と、から構成されるので、一次透過水の循環経路が短くなり、水処理設備100をコンパクトにすることができる。
【0083】
また、貯留槽105が開放型の貯留槽であるので、一次透過水に含まれる気泡を貯留槽105において解放させることができる。また、循環流路L110が閉鎖型の流路であるので、外部からの気泡の混入を抑制できる。
【0084】
また、第1膜ろ過装置102が、相互に並列接続された複数の膜ろ過ユニット102A、102Bから構成され、また、循環流路L110が、膜ろ過ユニット102A、102Bのそれぞれに対して一次透過水を供給可能とされ、更に制御部110は、貯留槽105に貯留された一次透過水を、循環流路L110を介して、いずれか1つの膜ろ過ユニットと貯留槽105との間で循環させるので、1つの膜ろ過ユニットが洗浄工程中であっても、他の膜ろ過ユニットでは通水工程を継続できるので、二次透過水の生産量を低下させることがない。
【0085】
本実施形態の水処理設備の運転方法によれば、通水工程の途中において、第1膜ろ過装置102に対してろ過膜洗浄を行う洗浄工程を備え、洗浄工程には、少なくとも、第1膜ろ過装置102に対して空気を用いたろ過膜洗浄を行うエア洗浄段階と、エア洗浄段階の後に、第1膜ろ過装置102の一次側から一次透過水を透過させつつ、第1膜ろ過装置102と貯留槽105との間で一次透過水を循環させるエア抜き段階と、が備えられているので、エア洗浄段階後に第1膜ろ過装置102内に空気が気泡として残留した場合でも、エア抜き段階によって残留する気泡を早期に除去することができる。
【0086】
また、貯留槽105が開放型の貯留槽であるので、一次透過水に含まれる気泡を貯留槽105において解放させることができる。
【0087】
また、第1膜ろ過装置102が、相互に並列接続された複数の膜ろ過ユニット102A、102Bから構成され、循環流路L110が膜ろ過ユニット102A、102Bのそれぞれに対して一次透過水を供給可能とされ、複数の膜ろ過ユニットのうち、一部の膜ろ過ユニット102Aに対して洗浄工程を行うともに、残りの膜ろ過ユニット102Bに対して通水工程を行うので、二次透過水の生産量を低下させることがない。
【0088】
更に、複数の膜ろ過ユニットに対して、順次、洗浄工程を行う場合において、膜ろ過ユニット102Aに対する先行の洗浄工程と、膜ろ過ユニット102Bに対する後行の洗浄工程との間で、全ての膜ろ過ユニット102A、102Bに対して通水工程を行うので、第2膜ろ過装置103における一次透過水の供給量と、二次透過水の生産量とのバランスが適正な範囲に維持され、水処理設備100全体を安定して操業できる。
【0089】
以上のように、本実施形態によれば、設置スペースを小さくすることが可能な水処理設備およびその運転方法を提供できる。
【符号の説明】
【0090】
100…水処理装置、101…原水槽、102…第1膜ろ過装置、102A、102B…膜ろ過ユニット、103…第2膜ろ過装置、104…処理水槽、105…貯留槽、L110…循環流路、P3…ポンプ、110…制御部、L102、L104…第1循環流路、L105…第2循環流路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7