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特許7396474位置測定システム、位置測定装置、及び位置測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】位置測定システム、位置測定装置、及び位置測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20231205BHJP
   G01D 5/26 20060101ALI20231205BHJP
   G01S 5/16 20060101ALI20231205BHJP
   G01S 11/12 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G01B11/00 B
G01B11/00 C
G01D5/26 D
G01S5/16
G01S11/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022522497
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2020028052
(87)【国際公開番号】W WO2021229833
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/019070
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】河北 敦子
(72)【発明者】
【氏名】谷口 友宏
(72)【発明者】
【氏名】原 一貴
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-024083(JP,A)
【文献】特開2008-026814(JP,A)
【文献】特開平02-156105(JP,A)
【文献】米国特許第07329857(US,B1)
【文献】特開昭63-030914(JP,A)
【文献】米国特許第07541569(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0195598(US,A1)
【文献】米国特許第06777666(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第109205213(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
G01D 5/26
G01S 5/16
G01S 11/12
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に搭載される位置測定装置と、
前記被測定物の移動領域に設置された光ファイバと、
前記光ファイバに少なくとも2波長の光を入射する光源と、
を備え、
前記位置測定装置は、
前記光ファイバの側面から放出された散乱光を受光する受光部と、
前記散乱光について前記2波長の光の減衰量の違いを表現した情報と2次元的な前記被測定物の位置との対応関係を格納するデータベースと、
前記データベースが格納する前記対応関係に基づいて前記受光部が受光した前記散乱光の前記情報から2次元的な前記被測定物の位置を判断する判断部と、
を備えることを特徴とする位置測定システム。
【請求項2】
前記光源は、前記光ファイバの一端に接続され、
前記光ファイバの他端に接続された終端器をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項3】
前記光源は、所定の周期で波長切替を行う1つの波長可変光源であり、
前記位置測定装置は、前記光源の波長切替を検知する機能をさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載の位置測定システム。
【請求項4】
1つの前記光源が前記光ファイバの一端に接続され、1つの前記光源と異なる波長の光を出力する他の前記光源が前記光ファイバの他端に接続されることを特徴とする請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項5】
前記散乱光の情報が波長毎の光強度であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の位置測定システム。
【請求項6】
前記散乱光の情報が色情報であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の位置測定システム。
【請求項7】
被測定物に搭載される位置測定装置であって、
前記被測定物の移動領域に設置され、少なくとも2波長の光が入射された光ファイバの側面から放出された散乱光を受光する受光部と、
前記散乱光について前記2波長の光の減衰量の違いを表現した情報と2次元的な前記被測定物の位置との対応関係を格納するデータベースと、
前記データベースが格納する前記対応関係に基づいて前記受光部が受光した前記散乱光の前記情報から2次元的な前記被測定物の位置を判断する判断部と、
を備えることを特徴とする位置測定装置。
【請求項8】
被測定物の移動領域に光ファイバを設置すること、
前記光ファイバに少なくとも2波長の光を入射すること、
前記光ファイバの側面から放出された散乱光を受光すること、及び
前記散乱光について前記2波長の光の減衰量の違いを表現した情報と2次元的な前記被測定物の位置との対応関係に基づいて、受光した前記散乱光の前記情報から2次元的な前記被測定物の位置を判断すること、
を行うことを特徴とする位置測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体の位置を測定する位置測定システム、位置測定装置、及び位置測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の位置測定に用いられる代表的な方法として衛星や光を用いた測距方法が挙げられる。衛星測距で最も代表的な技術として、全地球測位システム(以下、GPS: Global Positioning System)がある。GPSは上空の複数個のGPS衛星からの信号をGPS受信機で受け取り、衛星が持つ3以上の「時刻」や「位置」の情報から3点測位をベースとした連立方程式を解くことで受信者が自身の現在位置を知るシステムである。GPSの測定精度は、大気遅延や環境によるマルチパスの影響、衛星配置数(捕捉数)の影響により、数メートル程度と言われている。
【0003】
一方で、光を使った測距の代表的な技術として、LiDAR(Light Detection and Ranging)が挙げられる。LiDARはレーザ光源などのコヒーレンス性の高い光源と受光器を利用し、空間上を伝播する光の往復時間(以下、ToF: Time of Flight)から被測定物との距離を測定する。LiDARの測定精度は、変調するパルスの繰り返し周期、パルス幅、光源以外の背景光からのショットノイズの影響により数cm程度と言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6187500号
【文献】特表2016-526148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した2つの測距技術には測定環境によって利用が制限されるという課題がある。
例えば、工場のような電磁ノイズに晒された屋内環境でのGPSによる測距を考えると、屋内利用による測定精度の低下、かつ電磁干渉のため利用できない。一方で、LiDARの場合、他の光を利用した機器からの光波干渉も考えられるが、電波と比較して直進性が高いゆえ、電磁ノイズに晒された環境下においてもその影響は小さく、測距が可能である。
【0006】
しかしながら、LiDARには、図1に示すような工場内の環境下で位置測定(測距)を行うと測定精度が低下して被測定物の正確な位置を取得することが困難になる。例えば、図1の被測定物(例としてロボット)を監視制御するために位置測定(測距)が必要である場合、二次元LiDARを利用した方法が考えられる。工場のような環境下においては、被測定物の移動範囲内に様々な機器や作業者が想定される。LiDARは、空間中と被測定物の間(光軸上)に光を遮る遮蔽物があると正確な測距が困難になる。
【0007】
上記のようなLiDARの測定精度の低下に対しては、次のような対応が考えられる。(1)被測定物の駆動範囲を考慮してLiDARの設置位置を設計すること、
(2)複数のLiDARを利用し複数LiDARからの結果を処理すること、
(3)特許文献1に記載されているように被測定物の動作軌道の両脇に安全柵を設け、安全柵に自己位置推定用ランドマークを取り付けること。
しかし、これらの対応は、被測定物の動作範囲を考慮しなければならず、工場の設計が制限されたり、LiDARの設置数増加や、面的な安全柵及び自己位置推定用ランドマークの設置が必要でコストがかかる。
【0008】
更に、水中での位置測定をしようとすれば、次のような同様の課題が発生する。
(1)GPSは水中での電波の減衰が大きいため利用できない、
(2)LiDARの場合、例えば特許文献2に示すように3次元LiDARを備えた自律型水中機を用いて海中構造物及び水中構造物の検査を行うシステムが挙げられる。しかし、被測定物がLiDARの光軸上に制限されるため、海中構造物及び水中構造物の位置に合わせてLiDARの光軸の向きを合わせるステアリング機能が必要となりコストが上昇する。また、前記空間中(水中)と被測定物間に光を遮る遮蔽物があると正確な位置測定が困難である。
【0009】
つまり、物体の位置を測定する場合に、GPSでは工場のような電磁ノイズに晒された環境、あるいは電波の減衰の大きい水中で測定することが困難であり、LiDARでは物体の位置と光軸との関係を考慮すると設置コストが高くなるという課題があった。
【0010】
そこで、本発明は、前記課題を解決するために、環境や光軸に制限されずに被測定物の位置を正確に測定できる位置測定システム、位置測定装置、及び位置測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る位置測定システムは、被測定物に設置された位置測定装置が、被測定物の軌道に沿って設置された光ファイバの側面から放出された散乱光を受光し、受光した散乱光の強度または色情報に基づいて被測定物の位置を推定することとした。
【0012】
具体的には、本発明に係る位置測定システムは、
被測定物に搭載される位置測定装置と、
前記被測定物の移動領域に設置された光ファイバと、
前記光ファイバに少なくとも2波長の光を入射する光源と、
を備え、
前記位置測定装置は、
前記光ファイバの側面から放出された散乱光を受光する受光部と、
前記散乱光の情報と前記被測定物の位置との対応関係を格納するデータベースと、
前記データベースが格納する前記対応関係に基づいて前記受光部が受光した前記散乱光の情報から前記被測定物の位置を判断する判断部と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る位置測定装置は、被測定物に搭載される位置測定装置であって、
前記被測定物の移動領域に設置され、少なくとも2波長の光が入射された光ファイバの側面から放出された散乱光を受光する受光部と、
前記散乱光の情報と前記被測定物の位置との対応関係を格納するデータベースと、
前記データベースが格納する前記対応関係に基づいて前記受光部が受光した前記散乱光の情報から前記被測定物の位置を判断する判断部と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明に係る位置測定方法は、
被測定物の移動領域に光ファイバを設置すること、
前記光ファイバに少なくとも2波長の光を入射すること、
前記光ファイバの側面から放出された散乱光を受光すること、及び
前記散乱光の情報と前記被測定物の位置との対応関係に基づいて、受光した前記散乱光の情報から前記被測定物の位置を判断すること、
を行うことを特徴とする。
【0015】
本位置測定システムは、光ファイバ側面からの散乱光の光強度を測定するため、GPS測定が困難な場所でも被測定部の位置を測定できる。また、本位置測定システムは、光ファイバ側面からの散乱光を測定するため、光源と被測定物間の遮蔽物の有無に依らない面的な測距が可能である。また、本位置測定システムは、複数の波長を用い、それぞれの波長の減衰量の違いを利用することで2次元に移動する被測定物の位置を測定することができる。
【0016】
従って、本発明は、環境や光軸に制限されずに被測定物の位置を正確に測定できる位置測定システム、位置測定装置、及び位置測定方法を提供することができる。
【0017】
ここで、本位置測定システムは、前記光源が、前記光ファイバの一端に接続され、前記光ファイバの他端に接続された終端器をさらに備えるとしてもよい。この場合、前記光源は、所定の周期で波長切替を行う1つの波長可変光源であり、前記位置測定装置は、前記光源の波長切替を検知する機能をさらに備えることが好ましい。
【0018】
また、本位置測定システムは、1つの前記光源が前記光ファイバの一端に接続され、1つの前記光源と異なる波長の光を出力する他の前記光源が前記光ファイバの他端に接続されるとしてもよい。
【0019】
ここで、本位置測定システムは、前記散乱光の情報が波長毎の光強度としてもよい。また、本位置測定システムは、前記散乱光の情報が色情報としてもよい。
【0020】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、環境や光軸に制限されずに被測定物の位置を正確に測定できる位置測定システム、位置測定装置、及び位置測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の課題を説明する図である。
図2】本発明に係る位置測定システムを説明する図である。
図3】本発明に係る位置測定装置を説明する図である。
図4】本発明に係る位置測定システムの測定原理を説明する図である。
図5】本発明に係る位置測定装置のデータベースを説明する図である。
図6】本発明に係る位置測定システムを説明する図である。
図7】本発明に係る位置測定装置を説明する図である。
図8】本発明に係る位置測定装置のデータベースを説明する図である。
図9】本発明に係る位置測定システムを説明する図である。
図10】本発明に係る位置測定システムの測定原理を説明する図である。
図11】本発明に係る位置測定装置のデータベースを説明する図である。
図12】本発明に係る位置測定システムの測定原理を説明する図である。
図13】本発明に係る位置測定装置のデータベースを説明する図である。
図14】本発明に係る位置測定システムを説明する図である。
図15】本発明に係る位置測定装置を説明する図である。
図16】本発明に係る位置測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0024】
(実施形態1)
図2は、本実施形態の位置測定システム301を説明する図である。位置測定システム301は、
被測定物10に搭載される位置測定装置20Aと、
被測定物10の移動領域15に設置された光ファイバ50と、
光ファイバ50に少なくとも2波長の光を入射する光源30と、
を備える。
ここで、光源30は、光ファイバ50の一端に接続される。具体的には、光源30は、波長λ1を出力するレーザ30-1、波長λ2を出力するレーザ30-2、及びこれらから出力された光を合波して光ファイバ50の一端に入射する光合波器31である。本実施形態では、光ファイバ50に2波長の光を入射するが、波長数は3以上であってもよい。
また、位置測定システム301は、光ファイバ50の他端に接続された終端器40をさらに備える。
【0025】
図3は、位置測定装置20Aの構成を説明する図である。
位置測定装置20Aは、
光ファイバ50の側面から放出された散乱光Lscを受光する受光部21と、
前記散乱光の情報と前記被測定物の位置との対応関係を格納するデータベース22と、
データベース22が格納する前記対応関係に基づいて受光部21が受光した前記散乱光の情報から被測定物10の位置を判断する判断部23と、
を備えることを特徴とする。
【0026】
受光部21は、受光した光の光強度を電圧値に変換するものであればよく、例えばPD(Photo Diode)である。
本実施形態では、光ファイバ50に入射される光の波長はλ1とλ2の2つなので、受光部21も、それぞれの波長を受光できる受光部21-1と受光部21-2で構成されている。ただし、受光可能レンジに波長λ1と波長λ2が含まれる場合、受光部は1つでもよい。
【0027】
本実施形態では、散乱光Lscの情報が波長毎の光強度であることを特徴とする。
位置測定システム301は、散乱光Lscを受光したときの電圧値から被測定物10の位置を推定する。
【0028】
位置測定システム301は、2光源(30-1、30-2)の2波長の光(連続光又はパルス光)を光合波器31で合波し、光ファイバ50の一端に入射する。また、光ファイバ50の他端に終端器40を設ける。光ファイバ50は、例えば、LDF(Light Defusing Fiber)のように、その側面から光(散乱光)を放出する光ファイバである。このため、光ファイバ50に入射された光は、一端からの距離に応じた光強度の散乱光として光ファイバ50外に漏洩する。位置測定装置20Aは、その散乱光を受光したときの光強度(電圧値)から被測定物10の位置推定を行う。
【0029】
図4は、位置測定システム301の測定原理を説明する図である。位置測定システム301は、波長によって伝搬損失が違うという光ファイバの特性を利用する。
レーザ30-1の出力パワーをP1、レーザ30-2の出力パワーをP2とする。波長λ1の光の、光ファイバ50での単位長当たりの伝搬損失をα、空間中での単位長当たりの伝搬損失をγとする。波長λ2の光の、光ファイバ50での単位長当たりの伝搬損失をβ、空間中での単位長当たりの伝搬損失をγとする。
この場合、座標(X,Y)=(6、4)の位置G1における波長λ1と波長λ2の光強度は、次のように計算できる。
(波長λ1の光強度,波長λ2の光強度)=(P1-6α-4γ,P2-6β-4γ)
また、座標(X,Y)=(8、2)の位置G1における波長λ1と波長λ2の光強度は、次のように計算できる。
(波長λ1の光強度,波長λ2の光強度)=(P1-8α-2γ,P2-8β-2γ)
【0030】
被測定物10の移動領域15内の各位置について、上述のように波長λ1と波長λ2の光強度を計算し、受光部21で受光したときの電圧値に変換して位置情報格納データベース22に保管しておく。あるいは、被測定物10の移動領域15内の各位置について予め波長λ1と波長λ2の光強度(電圧値)を実測した値を位置情報格納データベース22に保管しておいてもよい。図5は、位置情報格納データベース22が保管する座標と光強度(電圧値)の対応関係の例を説明する図である。
【0031】
位置測定装置20Aは、任意の時点で光ファイバ50からの散乱光Lscを受光部21で受光し、波長λ1及び波長λ2の光強度(電圧値)と位置情報格納データベース22が保管する対応関係とを比較し、被測定物10の位置を推定する。
具体的には、受光部21は受光した光強度を電圧値に変換し、位置情報検索部23aはこれを位置情報格納DB22が予め保持する対応関係の値に照会し、位置判断・決定部23bはその電圧値が一致する位置に被測定物10が存在すると推定する。その電圧値が位置情報格納DB22の対応関係の値と一致しない場合、位置判断・決定部23bは、その電圧値と最も近い対応関係の値の位置をその時の被測定物10の位置と推定する。無線信号生成部24は、決定した位置情報を外部の測定者に送信する。
【0032】
図3では、位置測定装置20Aが波長λ1の光と波長λ2の光を受光する受光部をそれぞれ備えてる場合を説明した。位置測定システム301は、他の形態として、波長を波長λ1と波長λ2の双方を検出できる受光部を位置測定装置20Aに1つ備え、光源30から光の波長を時分割して出力し、時間ごとにそれぞれの波長の光強度を検出してもよい。
【0033】
位置測定システム301は、二次元の移動の自由度を持つ被測定物10の位置について、簡易的な方法で検知することができる。
【0034】
(実施形態2)
図6は、本実施形態の位置測定システム302を説明する図である。位置測定システム302は、位置測定装置20Aの代替として位置測定装置20Bを備えることが図2の位置測定システム301との違いである。以下は、位置測定システム301との相違点のみを説明する。
【0035】
図7は、位置測定装置20Bの構成を説明する図である。
位置測定装置20Bは、
光ファイバ50の側面から放出された散乱光Lscを受光する受光部21と、
前記散乱光の情報と前記被測定物の位置との対応関係を格納するデータベース22と、
データベース22が格納する前記対応関係に基づいて受光部21が受光した前記散乱光の情報から被測定物10の位置を判断する判断部23と、
を備えることを特徴とする。
【0036】
本実施形態では、散乱光Lscの情報が色情報(RGB)であることを特徴とする。
受光部21は、受光した光をRGB値に変換するものであればよく、例えばCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサである。位置測定システム302は、受光部21で受光した散乱光LscをRGB値に変換し、その値から被測定物10の位置を推定する。
【0037】
位置測定システム302の測定原理は、図4と同じである。図4で説明したように、各色についての光ファイバ50中の単位長当たりの損失と空間中の単位長当たりの伝搬損失に基づいて、被測定物10の移動領域15内の各位置についてのRGB値を計算することができる。
【0038】
被測定物10の移動領域15内の各位置について、上述のようにRGB値を計算して位置情報格納データベース22に保管しておく。あるいは、被測定物10の移動領域15内の各位置について予めRGBを実測した値を位置情報格納データベース22に保管しておいてもよい。図8は、位置情報格納データベース22が保管する座標とRGB値の対応関係の例を説明する図である。
【0039】
位置測定装置20Bは、任意の時点で光ファイバ50からの散乱光Lscを受光部21で受光し、そのRGB値と位置情報格納データベース22が保管する対応関係とを比較し、被測定物10の位置を推定する。
具体的には、受光部21は受光した光強度をRGB値に変換し、位置情報検索部23aはこれを位置情報格納DB22が予め保持する対応関係の値に照会し、位置判断・決定部23bはそのRGB値が一致する位置に被測定物10が存在すると推定する。そのRGB値が位置情報格納DB22の対応関係の値と一致しない場合、位置判断・推定部23bは、そのRGB値と最も近い対応関係の値の位置をその時の被測定物10の位置と推定する。無線信号生成部24は、決定した位置情報を外部の測定者に送信する。
【0040】
位置測定システム302は、二次元の移動の自由度を持つ被測定物10の位置について、簡易的な方法で検知することができる。
【0041】
(実施形態3)
図9は、本実施形態の位置測定システム303を説明する図である。位置測定システム303は、波長λ1のレーザ30-1が光ファイバ50の一端に接続され、波長λ2のレーザ30-2が光ファイバ50の他端に接続されることが図2の位置測定システム301と異なる。位置測定システム303も、散乱光Lscを受光したときの電圧値から被測定物10の位置を推定する。
【0042】
位置測定システム303は、2光源(30-1、30-2)、2波長の光(連続光又はパルス光)をそれぞれ別の光ファイバ50の端に入射する。散乱光の取得電圧値から被測定物の位置推定を行う。光ファイバ50に入射された光は、一端からの距離に応じた光強度の散乱光として光ファイバ50外に漏洩する。位置測定装置20Aは、その散乱光を受光したときの光強度(電圧値)から被測定物10の位置推定を行う。
【0043】
図10は、位置測定システム303の測定原理を説明する図である。位置測定システム303は、波長によって光ファイバ50の内部の伝搬損失が異なることを利用する。
レーザ30-1の出力パワーをP1、レーザ30-2の出力パワーをP2とする。波長λ1の光の、光ファイバ50での伝搬損失をα、空間中での伝搬損失をγとする。波長λ2の光の、光ファイバ50での伝搬損失をβ、空間中での伝搬損失をγとする。
この場合、座標(X,Y)=(6、4)の位置G1における波長λ1と波長λ2の光強度は、次のように計算できる。
(波長λ1の光強度,波長λ2の光強度)=(P1-6α-4γ,P2-6β-4γ)
また、座標(X,Y)=(8、2)の位置G1における波長λ1と波長λ2の光強度は、次のように計算できる。
(波長λ1の光強度,波長λ2の光強度)=(P1-8α-2γ,P2-4β-2γ)
【0044】
被測定物10の移動領域15内の各位置について、上述のように波長λ1と波長λ2の光強度を計算し、受光部21で受光したときの電圧値に変換して位置情報格納データベース22に保管しておく。あるいは、被測定物10の移動領域15内の各位置について予め波長λ1と波長λ2の光強度(電圧値)を実測した値を位置情報格納データベース22に保管しておいてもよい。図11は、位置情報格納データベース22が保管する座標と光強度(電圧値)の対応関係の例を説明する図である。
【0045】
位置測定装置20Aが被測定物10の位置を推定する手法は、実施形態1の位置測定システム301の説明と同じである。従って、位置測定システム303も、二次元の移動の自由度を持つ被測定物10の位置について、簡易的な方法で検知することができる。
【0046】
(実施形態4)
図12は、本実施形態の位置測定システム304を説明する図である。位置測定システム304は、位置測定装置20Aの代替として位置測定装置20Bを備えることが図9の位置測定システム303との違いである。つまり、位置測定システム304は、受光部21としてCCDカメラを用い、受光した散乱光LscをRGB値に変換し、その値から被測定物10の位置を推定する。
【0047】
位置測定システム304の測定原理は、図10と同じである。図10で説明したように、各色についての光ファイバ50中の単位長当たりの損失と空間中の単位長当たりの伝搬損失に基づいて、被測定物10の移動領域15内の各位置についてのRGB値を計算することができる。
【0048】
被測定物10の移動領域15内の各位置について、上述のようにRGB値を計算して位置情報格納データベース22に保管しておく。あるいは、被測定物10の移動領域15内の各位置について予めRGBを実測した値を位置情報格納データベース22に保管しておいてもよい。図13は、位置情報格納データベース22が保管する座標とRGB値の対応関係の例を説明する図である。
【0049】
位置測定装置20Bが被測定物10の位置を推定する手法は、実施形態2の位置測定システム302の説明と同じである。従って、位置測定システム304も、二次元の移動の自由度を持つ被測定物10の位置について、簡易的な方法で検知することができる。
【0050】
(実施形態5)
図14は、本実施形態の位置測定システム305を説明する図である。位置測定システム305は、図2の位置測定システム301に対して、光源を1つとした構成である。具体的には、位置測定システム305の光源は、所定の周期で波長切替を行う1つの波長可変光源30-3である。波長の切替周期は、被測定物10の移動速度に対して、十分短い周期とする。例えば、被測定物10の移動速度vが5m/secで、位置測定精度Acを0.1m以下としたい場合、切替周期をAc/v=0.02sec以下とする。
なお、本実施形態では、光ファイバ50に2波長の光を入射するが、波長数は3以上であってもよい。
【0051】
図15は、位置測定システム305の位置測定装置20Cの構成を説明する図である。
位置測定装置20Cは、図3の位置測定装置20Aに対して、波長可変光源30-3の波長切替を検知する機能をさらに備える。波長切替を検知する機能とは、時刻同期部25である。時刻同期部25は、波長可変光源30-3の波長切替と同期して、受光器21-1と受光器21-2を切り替え、測定波長の切替を行う。時刻同期部25と波長可変光源30-3の波長切替のタイミングとの同期は、無線通信で行われることが望ましい。
【0052】
時刻同期部25からの情報により、受光部21-1は波長可変光源30-3が出力した波長λ1の光を受光し、受光部21-2は波長可変光源30-3が出力した波長λ2の光を受光するように動作する。それぞれの受光部(21-1、21-2)は、受光した光強度を電圧値に変換する。判断部23は、実施形態1で説明したように、当該電圧値を位置情報格納DB22があらかじめ保持している図5のような対応関係に照会し、値が一致する座標の位置に被測定物10が存在すると判断する。また、照会した結果、取得電圧値が位置情報格納DB22が保持する電圧値と一致しない場合、位置判断・推定部23bは、実施形態1で説明したように被測定物10の位置を推定する。無線信号生成部24は、被測定物10の位置の情報を外部の測定者にデータ送信する。
【0053】
(他の例1)
受光部が波長毎に用意されておらず、単一の受光部で全波長の光を受光しつつ、時刻同期部25からの情報により、時間スロット毎に光の波長を特定してもよい。
(他の例2)
実施形態2で説明したように、位置測定装置20CはCCDイメージセンサの受光部21を有してもよい。受光部21は電圧値ではなくRGB値を取得し、位置情報格納DB22があらかじめ保持している図8のような対応関係に照会し、被測定物10が存在すると判断してもよい。
(他の例3)
波長切替を検知する機能は、時刻同期部25ではなく、次のような構成であってもよい。波長可変光源30-3が波長毎にそれぞれ異なる周波数で変調をかけて光を送出し、位置測定装置20Cが当該周波数を検知する機能を有することで、受光した光がいずれの波長であるかを判断できる。この構成は、時刻同期不要で波長を判別することができる。
【0054】
(実施形態6)
図16は、位置測定システム(301~304)で位置測定を行う作業を説明するフローチャートである。
当該作業方法は、
被測定物10の移動領域15に光ファイバ50を設置すること(ステップS01)、
光ファイバ50に少なくとも2波長の光を入射すること(ステップS02)、
光ファイバ50の側面から放出された散乱光Lscを受光すること(ステップS03)、及び
散乱光Lscの情報と被測定物10の位置との対応関係に基づいて、受光した散乱光Lscの情報から被測定物10の位置を判断すること(ステップS04)、
を行う。
【0055】
(他の実施形態)
本発明の位置測定装置(20、20a)は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
10:被測定物
15:移動領域
20A、20B、20C:位置測定装置
21、21-1、21-2:受光部
22:データベース
23:判断部
23a:位置情報検索部
23b:位置判断決定部
24:無線信号生成部
25:時刻同期部
30、30-1、30-2:光源
31:光合波器
40:終端器
50:光ファイバ
301~305:位置測定システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16