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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】光部品およびファイバレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20231205BHJP
   H01S 3/091 20060101ALI20231205BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20231205BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H01S3/067
H01S3/091
G02B6/26
G02B6/42
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022529985
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2020023181
(87)【国際公開番号】W WO2021250885
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】石橋 茂雄
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-248616(JP,A)
【文献】特開2001-251002(JP,A)
【文献】特開2007-334015(JP,A)
【文献】特開2008-077071(JP,A)
【文献】特開2013-182915(JP,A)
【文献】特開2019-202342(JP,A)
【文献】特開平08-304672(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0187159(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 3/02
H01S 3/04 - 3/0959
H01S 3/098 - 3/102
H01S 3/105 - 3/131
H01S 3/136 - 3/213
H01S 3/23 - 4/00
G02B 6/26 - 6/27
G02B 6/30 - 6/34
G02B 6/42 - 6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率nを有する単結晶ファイバと、固定台と、開口絞りとを備え、
入射光が前記開口絞りの開口を通過して、入射角度θで前記単結晶ファイバの端面に入射し、
前記単結晶ファイバ内の前記固定台の端面を含む平面上で反射し、
反射光が、前記単結晶ファイバの端面の平行面上において、前記入射光が進行する平面と前記反射光が進行する平面が角度2γをなして進行し、
前記反射光が、出射角度θ’で前記単結晶ファイバの端面から出射するとき、前記固定台の端面を含む平面上の反射点から前記単結晶ファイバの端面への垂線をZ軸としたとき、前記Z軸と前記単結晶ファイバの中心軸との角度がαであり、
前記固定台の端面の法線と前記単結晶ファイバの中心軸との角度がβであり、
前記単結晶ファイバの端面と前記開口絞りとの間の距離がLであり、
前記開口の半径がdであり、
以下の式(A)を満たす前記出射角度θ’が前記Z軸となす角度であり、かつ前記入射光が進行する平面からの前記Z軸周りの回転角が2γである方向とファイバ端面に入出射する発振光のなす角度がtan―1(d/L)より大きいことを特徴とする光部品。
【数1】
【請求項2】
前記反射光が進行する平面と前記入射光が進行する平面が同一平面であり、
以下の式(B)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光部品。
【数2】
【請求項3】
前記角度αと前記角度βが等しく、
以下の式(C)と式(D)を満たすことを特徴とする請求項に記載の光部品。
【数3】
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光部品と、前記光部品に対して前記開口絞りの反対側に配置される他の開口絞りと、共振器を構成する複数のミラーと、集光レンズと、ポンプ光光源とを備えるファイバレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高効率・高安定の光部品およびレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ発振および光増幅を目的として、結晶ファイバを用いた装置が開発されている。非特許文献1では、Cr4+:Y3Al5O12(Cr4+:YAG)単結晶ファイバを使用しモード同期レーザを構成、中心波長1.51μmにおいてパルス幅120fsの光パルスを出力している。このレーザは非線形光学顕微鏡の光源や、THz波発生用の光源として使用される。
【0003】
従来の光部品やファイバレーザ装置において、図14図17に示すように、単結晶ファイバ81をレーザ発振器に組み込む際は、専用のファイバ固定台82に取り付ける(特許文献1)。図14、15、16は、それぞれファイバ固定台82の上面図、正面図、側面図である。ここで使用されているファイバ固定台82は上下2個の金属ブロック821、822を積み重ねた構造を持つ。それら2個のブロックの内側表面には、半長円型の断面を有する直線の溝823、824がそれぞれ形成されている。それらは重ねた際に同じ位置となり、断面が長円型の穴が形成される。
【0004】
図17に示すように、溝823、824に単結晶ファイバ81が挟まれ、金属薄膜を間に介して固定される。この構造によって良好な排熱が行われ、適度な応力複屈折を単結晶ファイバ81に誘起することによりレーザ発振偏波の制御が可能になる。ファイバ固定台82の端面92は単結晶ファイバ81が挟まる溝823、824の方向に対し垂直である。単結晶ファイバ81のサイズは(非特許文献1)では、直径120μm、長さ約40mmである。ファイバ固定台82もおおむね同じ長さに設定している。
【0005】
図18に、従来の光部品やファイバレーザ装置の端部の上面図を示す。ファイバ固定台82に固定された単結晶ファイバ81の端部は、おおよそ長さ100-500μm固定台82より突き出している。単結晶ファイバ81と固定台82の長さを厳密(発振波長程度以下)に合わせることは加工費用が大きくなり現実的でない。
【0006】
また、固定台82の端面92と単結晶ファイバ81の端面91が同一面になると、緩衝用の金属薄膜が単結晶ファイバ81の端面91にかかり、光路の一部を塞いで発振効率を下げてしまう恐れがある。このように、単結晶ファイバ81の端部の突出部94は光部品やファイバレーザ装置において必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5612540号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Shigeo Ishibashi and Kazunori Naganuma,“Mode-locked operation of Cr4+:YAG single-crystal fiber laser with external cavity”, Opt. Express 22, 6764-6771 (2014).
【文献】A.Yariv、「光エレクトロニクスの基礎」第3版、1988年、丸善、pp.181-187.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、単結晶ファイバ81の固定台82に挟まれた部分93は応力がかかっているのに対し、突出した端部(突出部)94には応力がかかっていない。このため、単結晶ファイバ81内の固定台82の端面と同一面95付近において、単結晶ファイバ81内に屈折率の境界が生じ、レーザ発振光96が反射する。(実際は発振光96と反射光97は同じ光路を辿るが、図18中では発振光96と反射光97を判別しやすいように反射光97の位置を紙面上方にずらして示す。)
【0010】
この反射光がレーザ発振光に混ざると、レーザ共振器に副共振器が生じ、レーザ発振光96のスペクトルに周期的変調がかかる(非特許文献2)。その結果、モード同期発振のしきい値が増大すること、モード同期パルスが共振器周回内に2個以上生じやすくなってしまうことが問題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る光部品は、屈折率nを有する単結晶ファイバと、固定台と、開口絞りとを備え、入射光が前記開口絞りの開口を通過して、入射角度θで前記単結晶ファイバの端面に入射し、前記単結晶ファイバ内の前記固定台の端面を含む平面上で反射し、反射光が、前記単結晶ファイバの端面の平行面上において、前記入射光が進行する平面と前記反射光が進行する平面が角度2γをなして進行し、前記反射光が、出射角度θ’で前記単結晶ファイバの端面から出射するとき、前記固定台の端面を含む平面上の反射点から前記単結晶ファイバの端面への垂線をZ軸としたとき、前記Z軸と前記単結晶ファイバの中心軸との角度がαであり、前記固定台の端面の法線と前記単結晶ファイバの中心軸との角度がβであり、前記単結晶ファイバの端面と前記開口絞りとの間の距離がLであり、前記開口の半径がdであり、以下の式(A)を満たす前記出射角度θ’が前記Z軸となす角度であり、かつ前記入射光が進行する平面からの前記Z軸周りの回転角が2γである方向とファイバ端面に入出射する発振光のなす角度がtan―1(d/L)より大きいことを特徴とする。
【0012】
【数1】
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高効率・高安定のファイバ増幅器と固定台とを備える光部品およびレーザ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光部品の概要図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係る光部品の外観図である。の上面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態における固定台の外観図である。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態における固定台の上面図である。
図5図5は、本発明の第1の実施の形態における固定台の正面図である。
図6図6は、本発明の第1の実施の形態における固定台の側面図である。
図7図7は、本発明の第1の実施の形態に係る光部品の正面図である。
図8図8は、本発明の第1の実施の形態に係る光部品の端部周辺の上面図である。
図9図9は、本発明の第1の実施の形態におけるファイバ端面と開口絞りの関係を示す図である。
図10図10は、本発明の第2の実施の形態に係る光部品の端部周辺の上面図である。
図11図11は、本発明の第2の実施の形態における発振光と反射光の軌跡を示す図である。
図12図12は、本発明の第3の実施の形態における発振光と反射光の軌跡を示す図である。
図13図13は、本発明の第4の実施の形態に係るファイバレーザ装置の概要図である。
図14図14は、従来の光部品における固定台の上面図である。
図15図15は、従来の光部品における固定台の正面図である。
図16図16は、従来の光部品における固定台の側面図である。
図17図17は、従来の光部品における固定台の正面図である。
図18図18は、従来の光部品の端部周辺の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態に係る光部品10について図1図9を参照して説明する。
【0016】
<光部品の構成>
図1に、本実施の形態に係る光部品10の概要図を示す。光部品10は、単結晶ファイバ11と、固定台12とを備える。単結晶ファイバ11は、固定台12に固定される。また、2個の開口絞り131、132が、単結晶ファイバ11を挟んで対向して配置される。入射光14は開口絞り131の開口を通過して単結晶ファイバ11に入射する、出射光15は開口絞り132の開口を通過して出射する。
【0017】
図2に、本実施の形態に係る光部品10の鳥観図を示す(開口絞り131、132は図示せず)。固定台12は、2個1組の銅製ブロック121、122により構成される。単結晶ファイバ11は、固定台12の2個1組の銅製ブロック121、122により上下から挟み込まれ、固定台12に固定される。固定台12のブロック121、122には、アルミニウム等の熱伝導性の良い金属を用いてもよい。また、固定台12は、四隅のネジ22により、ベースとなる銅製の台21上に固定される。以下、ファイバ11の中心軸16と略平行な方向を「ファイバ11の中心軸方向」という。
【0018】
単結晶ファイバ11の先端は、固定台12の端面32より外側に200μm程度突出して固定される。このファイバ11の先端の突出部は長すぎると、固定台12による冷却が十分にできない。また、突出部が長すぎると、後述のように、反射光がファイバ11の端面31から出射せずに、ファイバ11側面で全反射してファイバ11内を伝播するレーザ光に影響を与える可能性が有る。したがって、突出部の長さは50μm以上500μmが望ましい。
【0019】
図3に、ファイバ固定台12の鳥観図を示す。また、図4、5、6それぞれに、ファイバ固定台12の上面図、正面図、側面図を示す。
【0020】
本実施の形態におけるファイバ固定台12は、従来のファイバ固定台と異なり、両端面が略平行に傾斜している。固定台12における2個のブロック121、122を重ねるときに対向するそれぞれの面(以下、「光軸方向端面」という。)は、略同一形状であり、整合して重ね合わさる。ここで、光軸方向端面は完全に整合して重ね合わさる必要はなく、ファイバ11の中心軸方向にずれが生じてもよい。このずれは250μm程度であれば許容され、この場合、固定台12の端面32には2個のブロック121、122の境界で段差が生じる。
【0021】
それぞれの重ね合わさる面には、単結晶ファイバ11を固定するために直線の溝123、124が形成されている。この溝123、124の断面形状は、光源単結晶の放熱及び固定のために、半長円形状であることが望ましい。
【0022】
ブロック121、122のそれぞれの面を対向させて重ねた際に、それぞれの面に形成された溝123、124は同じ位置に重なり、図5に示すように、断面が長円形状の穴が形成される。この溝にCr4+:YAGの単結晶ファイバ11が挟まれ、5μm~50μmの厚さのインジウム箔を間に介して固定される。
【0023】
本実施の形態では、インジウム箔を用いたが、これに限らず、柔軟性を有する金属箔や樹脂製の箔を用いてもよい。熱伝導性が良い材料であれば、さらによい。これによって良好な排熱が行われ、適度な応力複屈折を単結晶ファイバ11に誘起することによりレーザ発振偏波の制御が可能になる。
【0024】
図7に、光部品10の正面図を示す(開口絞り131,132は図示せず)。固定台12の溝123、124に単結晶ファイバ11が固定される。ここで、単結晶ファイバ11のサイズが直径120μm、長さ約40mmなので、ファイバ固定台12の溝123、124の長さはおおむね同じ長さに設定する。
【0025】
また、固定台12の溝は、断面が半長円形状であり、ブロックとファイバ11の間に挟み込むインジウム箔の厚さ(5μm~50μm)を考慮して、対向するブロック面(ファセット)間の間隔が120μmとして、幅を150μm、深さを55μmとする。固定台12の溝のサイズはこれに限らず、ファイバ11のサイズに合わせて、ファイバ11を良好に固定できればよい。
【0026】
<光部品の動作原理>
本実施の形態に係る光部品10の動作原理を説明する。図8に、本実施の形態に係る光部品10の一方の端面近傍の上面図を示す。初めに、説明を簡略化するために、図8に示すファイバ11の端面31と固定台12の端面32とが平行である場合、換言すれば、ファイバ11の端面31の傾斜角度αと固定台12の端面32の傾斜角度βが等しい場合について説明する。
【0027】
ここで、ファイバ11の端面31の傾斜角度αは、ファイバ11の概ね楕円形状の端面31の長軸を水平面と平行にしたときのファイバ11の端面31の法線がファイバ11の中心軸方向となす角度をいう。一方、固定台12の端面32の傾斜角度βは、固定台12の端面32の法線とファイバ11の中心軸方向がなす角度をいう。
【0028】
単結晶ファイバ11は、固定台12の端面32から突出して固定されている。図8では、説明を容易にするために、入射光(発振光)41のファイバ11の端面31に入射する成分のみを示す。
【0029】
単結晶ファイバ11において、固定台12に挟まれた部分には応力がかかる。以下、この応力がかかる部分を「応力付与部」33という。一方、単結晶ファイバ11先端の突出部34は固定台12に挟まれていないので、応力がかからない。
【0030】
その結果、固定台12の端面32付近において、単結晶ファイバ11の応力付与部33と突出部34との境界で、屈折率差が生じるので、ファイバ11の先端の端面31から入射した入射光(発振光)41が、この境界で反射する。換言すれば、入射光(発振光)41は、ファイバ11内部における固定台12の端面32と略同一の面で反射する。
【0031】
単結晶ファイバ11の端面31はその法線がファイバ11の中心軸方向に対し角度αを持つよう端面斜め研磨を施してある。また、ファイバ固定台12の端面32も単結晶ファイバ11の端面31に平行となるように、端面の法線がファイバ11の中心軸方向に対し角度αに設定している。
【0032】
入射光(発振光)41のファイバ11の端面31に対する入射角θが、スネルの法則による式(1)を満たすときに、入射光(発振光)41は、ファイバ11の端面31から入射して、ファイバ11内をファイバ11の中心軸方向に伝播する。
【0033】
【数2】
【0034】
nは屈折率であり、本実施の形態で用いるCr4+:YAGの場合、n=1.82である。
【0035】
単結晶ファイバ11先端の突出部34とファイバ固定台12による応力付与部33に屈折率差が生じるので、入射光(発振光)41は、ファイバ固定台12の端面32付近で反射する。換言すれば、入射光(発振光)41は、ファイバ11内部における固定台12の端面32と略同一の面で反射する。
【0036】
本実施の形態では、固定台12の端面32が傾斜しているので、反射光42は、ファイバ11内を伝播する入射光(発振光)41とは異なる光路を伝播する。反射光42がファイバ11内を伝播する入射光(発振光)41となす角度は2θである。
【0037】
その後、反射光42はファイバ11の端面31より出射する。このときの出射角度θ’は、入射角度と等しくθである。
【0038】
したがって、固定台12の端面32で反射した反射光42がファイバ11内を伝播してファイバ11の端面31に入射する角度(ファイバ11の端面31の法線となす角度)はαであり、ファイバ11の端面31からの出射角度θ’(=θ)なので、反射光42がファイバ11の端面31からの出射するθは式(1)を満たす。
【0039】
出射する反射光42が発振光41に影響を回避するためには、反射光42が開口絞り131、132に入射しないようにする必要がある。したがって、図9に示すように、開口絞り131、132のファイバ11の端面31からの距離をL、開口絞り131、132の開口の直径を2dとするときに、式(2)を満たす必要がある。
【0040】
【数3】
【0041】
本実施の形態に係る光部品10によれば、単結晶ファイバ11内の反射点からの反射光42が共振器内に留まることがなく、発振光41の縦モード分布に変調をかけることはない。
【0042】
本実施の形態では、ファイバ11の端面31の傾斜角度はα=4.5°、開口絞り131、132の開口直径とファイバ11の端面31からの距離はそれぞれ、2d=24mm、L=50mmであるので、2θ=16.4°、tan-1(d/L)=13.5°となり、式(2)は満たされる。
【0043】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態に係る光部品50について図10図11を参照して説明する。
【0044】
本実施の形態に係る光部品50は、第1の実施の形態と略同様の構成を有するが、ファイバ端面31と固定台12の端面32とが非平行である点で異なる。
【0045】
<光部品の構成>
図10に、本実施の形態に係る光部品50の一方の端面近傍の上面図を示す。ここで、固定台12の端面32を含む平面上の反射点51からファイバ11の端面31への垂線をZ軸52とする。図11は、図10と同様の光部品50の一方の端面近傍について、Z軸52を紙面上下方向とする座標で示す図である。ここで、図10中の矢印53は、角度の正方向を示す。
【0046】
ファイバの端面31は傾斜しており、ファイバ端面31の法線がファイバ11の中心軸方向と傾斜角度αをなす。また、固定台12の端面32は、ファイバ端面31と同方向に傾斜し、固定台12の端面32の法線が進行方向との傾斜角度βをなす。
【0047】
ここで、同方向に傾斜する場合とは、図11に示すように、入射光(発振光)41がファイバ11に入射してファイバ11内を伝播する面(以下、「発振光進行面」という。)54と、ファイバ端面31の法線と、固定台12の端面32の法線が平行である場合をいう。ここで、Z軸52に対して、固定台12の端面32の法線は角度α-βをなす。
【0048】
このとき、反射光42は、ファイバ端面31の上方から見れば、換言すれば、ファイバ端面31の平行面上において、入射光41の進行方向と同方向に進行する。
【0049】
<光部品の動作原理>
本実施の形態に係る光部品50の動作原理を説明する。入射光(発振光)41は入射角θでファイバ11に入射して、ファイバ11内を進行方向と平行に伝播し、固定台12の端面32付近でファイバ11の中心軸方向と2βの角度で反射して、ファイバ端面31に角度α-2βをもって到達し、ファイバ端面31から出射角度θ’で出射する。
【0050】
したがって、ファイバ端面31から出射する反射光42の出射角度θ’は、式(3)を満たす。また、反射光42の開口絞り131、132への入射を回避するためには、式(4)を満たす必要がある。
【0051】
【数4】
【0052】
【数5】
【0053】
本実施の形態に係る光部品50によれば、単結晶ファイバ11内の反射点からの反射光42が共振器内に留まることがなく、発振光41の縦モード分布に変調をかけることはない。
【0054】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態に係る光部品60について図12を参照して説明する。
【0055】
本実施の形態に係る光部品60は、第1の実施の形態と略同様の構成を有するが、ファイバ端面31と固定台12の端面32とが非平行である点で異なる。さらに、第2の実施の形態と略同様の構成を有するが、固定台12の端面32の法線が発振光進行面54に非平行である点で異なる。
【0056】
本実施の形態に係る光部品60では、固定台12の端面32が任意の方向に傾斜するので、反射光42も任意の方向に進行する。本実施の形態では、発振光進行面54に対して反射光42の進行する面(以下、「反射光進行面」という。)55がZ軸52を中心に所定の角度で回転するものとして、その他は入射光と反射光42の光路を第2の実施の形態と略同様と想定する。ここで、固定台12の端面32を含む平面上の反射点51からファイバ11の端面31への垂線をZ軸52とすることも第2の実施の形態と同様である。詳細を以下に説明する。
【0057】
<光部品の構成>
図12は、本実施の形態に係る光部品60の一方の端面近傍について、Z軸52を紙面上下方向とする座標で示す図である。
【0058】
ファイバ端面31は傾斜しており、ファイバ端面31の法線がファイバ11の中心軸方向と傾斜角度αをなす。また、固定台12の端面32は傾斜し、固定台12の端面32の法線がZ軸52に対して角度α-βをなすとする。
【0059】
<光部品の動作原理>
本実施の形態に係る光部品60の動作原理を説明する。入射光(発振光)41は入射角θでファイバに入射して、ファイバ内をファイバ11の中心軸方向に伝播する。ここで、入射光(発振光)41は同一面内(発振光進行面)54を進行する。
【0060】
次に、入射光(発振光)41は、固定台12の端面32付近の反射点51で反射する。
【0061】
ここで、固定台12の端面32の法線が、発振光進行面からZ軸52を中心に角度γ回転させた面上にあるとすれば、反射光42は、Z軸52を回転軸として発振光進行面54から角度2γ回転させた面(反射光進行面)55上を進行する。このように、反射光42は、ファイバ端面31の上方から見れば、換言すれば、ファイバ端面31の平行面上において、入射光(発振光)41の進行方向と角度2γをなす方向に進行する。
【0062】
反射進行面上の反射光42は、第2の実施の形態と同様に、入射角度α-2βでファイバ端面31に到達して、出射角度θ’で出射する。
【0063】
したがって、図12に示すように、反射光42のファイバ端面31から出射角度θ’は、スネルの法則により、式(5)を満たす。
【0064】
【数6】
【0065】
また、反射光42の開口絞り131,132への入射を回避するためには、入射光(発振光)41の入射角度θと、反射光42の出射角度θ’と、発振光進行面54と反射光進行面55がなす角度2γによって規定される入射光41と反射光42のなす角度が、tan-1(d/L)より大きい必要がある。
【0066】
本実施の形態に係る光部品60によれば、単結晶ファイバ11内の反射点からの反射光42が共振器内に留まることがなく、発振光41の縦モード分布に変調をかけることはない。
【0067】
<第4の実施の形態>
本発明の第4の実施の形態に係るレーザ装置70について図13を参照して説明する。
【0068】
図13に、本実施の形態に係るレーザ装置70を示す。レーザ装置70は、第1の実施に係る光部品10と、光部品10を挟んで対向する2個の開口絞り131、132と、光部品10と開口絞り131、132を挟んで対向する前記凹面鏡71、72と、集光レンズ73と、ポンプ光光源74を備える。このように、レーザ装置70では、凹面鏡71、72を設けて共振器構造を構成する。
【0069】
凹面鏡71、72の曲率半径は100mmである。一方の凹面鏡71は、1.40μm~1.60μmの波長の光に対して反射率は99.9%であり、他方の凹面鏡72は、出力結合鏡であり、1.40μm~1.60μmの波長の光に対して1%の透過率を持つ。また、集光レンズ73の焦点距離は120mmである。また、ポンプ光光源74は、波長1.064μmのポンプ光を出射する。
【0070】
ポンプ光光源74を出射するポンプ光を、集光レンズ73で集光して、レーザ発振させた結果、単結晶ファイバ11内の応力付与部での反射光の影響が抑制され、雑音が低減される発振光が得られる。
【0071】
本実施の形態では、第1の実施に係る光部品を用いるが、第2、第3の実施に係る光部品を用いても同様の結果を奏する。
本実施の形態では、レーザ共振器を構成するミラーが2枚であるが、3枚以上のミラーを用いて、Z型形状、X型形状、もしくはリング型構造のレーザ共振器を構成しても同様の結果を奏する。
【0072】
本発明の実施の形態では、Cr4+:YAG単結晶ファイバの場合だけではなく、他のレーザ結晶を用いた単結晶ファイバを固定する場合についても有効であることは明らかである。レーザ結晶としてYb、Nd、Er、Tm、Hoを添加したYAG結晶、Tiサファイア結晶、Crフォルステライト結晶、を用いることが出来る。また多結晶ファイバを用いる場合にも有効である。
【0073】
本発明の実施の形態では、固定台を水平面に設置した場合に、2個のブロックをファイバの上下に配置してファイバを挟み込んで固定したが、2個のブロックをファイバの左右に配置してファイバを挟み込んで固定してもよい。
【0074】
本発明に係る実施の形態では、固定台の両端面が略平行である場合を示したが、これに限らない。両端面それぞれの面が略平行でなくとも、第1~第3の実施の形態それぞれにおいて式(1)~(5)による条件を満たせばよい。
【0075】
本発明の実施の形態では、光部品およびレーザ装置の構成、動作原理において、各構成部の構造、寸法、材料等の一例を示したが、これに限らない。本発明の実施の形態に係る光部品およびレーザ装置の機能を発揮し効果を奏するものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、情報通信分野おける光通信用機器、システムの他、工業分野における材料加工等、医療分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
10 光部品
11 単結晶ファイバ
12 固定台
131、132 開口絞り
16 単結晶ファイバの中心軸
31 単結晶ファイバの端面
32 固定台の端面
41 入射光
42 反射光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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