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特許7396500光複素振幅計測装置及び光複素振幅計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】光複素振幅計測装置及び光複素振幅計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 9/02003 20220101AFI20231205BHJP
【FI】
G01B9/02003
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022541361
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2020029767
(87)【国際公開番号】W WO2022029868
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 大樹
(72)【発明者】
【氏名】新井 薫
(72)【発明者】
【氏名】杉山 隆太
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 友哉
(72)【発明者】
【氏名】小栗 克弥
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-090176(JP,A)
【文献】T. Maeda, A. Okamoto, A. Tomita, Y. Hirasaki, Y. Wakayama, and M. Bunsen,Holographic-Diversity Interferometry for Reference-Free Phase Detection,2013 Conference on Lasers and Electro-Optics Pacific Rim,米国,Optical Society of America,2013年06月04日,paperWF4_4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/02- 9/029
G01B 11/00
G01N 21/45
G02F 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数f1の信号光を出力する第1光源と、
周波数f2の信号光を参照光として出力する第2光源と、
前記第1光源から出力後に被計測対象を通過した信号光の偏光を、前記第2光源から出力された参照光の偏光と一致させる制御を行う偏光制御器と、
前記一致された第1光源に係る信号光の中から、前記被計測対象の通過による波面歪が生じた平面波成分を抽出し、抽出された平面波成分を含む周波数f1の信号光を出力する空間フィルタと、
前記空間フィルタからの周波数f1の信号光と、前記第2光源からの周波数f2の参照光との双方を合波し、双方の周波数差(f1-f2)のビート信号を前記第2光源の制御端に入力するホモダイン干渉計と、
前記第2光源からの参照光と、前記偏光制御器からの信号光とを合波する合波器と
を備え、
前記第2光源は、前記制御端に入力されるビート信号の周波数差(f1-f2)が0となるように、当該第2光源から出力する参照光の周波数を位相同期制御する
ことを特徴とする光複素振幅計測装置。
【請求項2】
周波数f1の信号光を出力する第1光源と、
周波数f2の信号光を参照光として出力すると第2光源と、
前記第1光源から出力後に被計測対象を通過した信号光の偏光を、前記第2光源から出力された参照光の偏光と一致させる制御を行う偏光制御器と、
前記一致された第1光源に係る信号光の中から、前記被計測対象の通過による波面歪が生じた平面波成分を抽出し、抽出された平面波成分を含む周波数f1の信号光と、前記第2光源からの周波数f2の参照光との双方を合波して伝送するシングルモード光ファイバを有し、当該双方の周波数差(f1-f2)のビート信号を前記第2光源の制御端に入力するホモダイン干渉計と、
前記第2光源からの参照光と、前記偏光制御器からの信号光とを合波する合波器と
を備え、
前記第2光源は、前記制御端に入力されるビート信号の周波数差(f1-f2)が0となるように、当該第2光源から出力する参照光の周波数を位相同期制御する
ことを特徴とする光複素振幅計測装置。
【請求項3】
前記位相同期制御された参照光と前記偏光制御器からの信号光とが、前記合波器で合波されて得られる干渉縞を撮影するカメラと、
前記カメラで得られた干渉縞情報から信号光の強度分布及び位相分布を計算するための画像処理を行う計算機と
を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の光複素振幅計測装置。
【請求項4】
光複素振幅計測装置による光複素振幅計測方法であって、
前記光複素振幅計測装置は、第1光源と、第2光源と、偏光制御器と、空間フィルタと、ホモダイン干渉計と、合波器とを備え、
前記第1光源から周波数f1の信号光を出力するステップと、
前記第2光源から周波数f2の信号光を参照光として出力するステップと、
前記偏光制御器によって、前記第1光源から出力後に被計測対象を通過した信号光の偏光を、前記第2光源から出力された参照光の偏光と一致させる制御を行うステップと、
前記空間フィルタによって、前記一致された第1光源に係る信号光の中から、前記被計測対象の通過による波面歪が生じた平面波成分を抽出し、抽出された平面波成分を含む周波数f1の信号光を出力するステップと、
前記ホモダイン干渉計によって、前記空間フィルタからの周波数f1の信号光と、前記第2光源からの周波数f2の参照光との双方を合波し、双方の周波数差(f1-f2)のビート信号を前記第2光源の制御端に入力するステップと、
前記第2光源によって、前記制御端に入力されるビート信号の周波数差(f1-f2)が0となるように、当該第2光源から出力する参照光の周波数を位相同期制御するステップと、
前記合波器によって、前記位相同期制御された参照光と、前記偏光制御器からの信号光とを合波するステップと
を実行することを特徴とする光複素振幅計測方法。
【請求項5】
光複素振幅計測装置による光複素振幅計測方法であって、
前記光複素振幅計測装置は、第1光源と、第2光源と、偏光制御器と、シングルモード光ファイバを有するホモダイン干渉計と、合波器とを備え、
前記第1光源から周波数f1の信号光を出力するステップと、
前記第2光源から周波数f2の信号光を参照光として出力するステップと、
前記偏光制御器によって、前記第1光源から出力後に被計測対象を通過した信号光の偏光を、前記第2光源から出力された参照光の偏光と一致させる制御を行うステップと、
前記ホモダイン干渉計のシングルモード光ファイバによって、前記一致された第1光源に係る信号光の中から、前記被計測対象の通過による波面歪が生じた平面波成分を抽出し、抽出された平面波成分を含む周波数f1の信号光と、前記第2光源からの周波数f2の参照光との双方を合波し、合波により得られる当該双方の周波数差(f1-f2)のビート信号を前記第2光源の制御端に入力するステップと、
前記第2光源によって、前記制御端に入力されるビート信号の周波数差(f1-f2)が0となるように、当該第2光源から出力する参照光の周波数を位相同期制御するステップと、
前記合波器によって、前記位相同期制御された参照光と、前記偏光制御器からの信号光とを合波するステップと
を実行することを特徴とする光複素振幅計測方法。
【請求項6】
前記光複素振幅計測装置は、カメラと、計算機とを更に備え、
前記カメラによって、前記位相同期制御された参照光と前記偏光制御器からの信号光とが、前記合波器で合波されて得られる干渉縞を撮影するステップと、
前記計算機によって、前記カメラで得られた干渉縞情報から、前記信号光の強度分布及び位相分布の計算を行うステップと
を更に実行することを特徴とする請求項4又は5に記載の光複素振幅計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体計測や表面計測等の様々な分野に適用される、ホモダイン干渉計を用いた光複素振幅計測装置及び光複素振幅計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したような様々な分野で、光波の強度及び位相の両方の情報を含む光複素振幅を計測する技術が用いられており、光複素振幅計測技術における代表的な手法として、ディジタルホログラフィがある。
【0003】
ディジタルホログラフィでは、計測物体の情報を有する信号光に対して、この信号光とコヒーレントな参照光を合波させ、合波による干渉で生じる強度分布(干渉縞)をカメラで取得する。この取得された干渉縞に対して計算機で特定の画像処理を行うことで、強度分布と位相分布(波面)とを計測可能となっている。
【0004】
ディジタルホログラフィによる計測において、遠隔のビル間の光ファイバや、ビル間の大気等のように被計測対象が長距離になる場合がある。その被計測対象を計測する場合、光源からの信号光を事前に2光路に分岐し、一方を参照光とする方法がある。この方法では、参照光を伝送する光ファイバを別途用意して伝送する必要がある。このため、伝送コストが高く掛ってしまう。また、光ファイバの敷設が、経済的、物理的に難しい環境では実現できない。
【0005】
そこで、光源からの信号光を光学的に分岐後、後述の空間フィルタを通過させて平面波成分を含む参照光を作り出す参照光不要型のディジタルホログラフィが提案されている。このディジタルホログラフィとしての光複素振幅計測装置の構成例を図5に示す。
【0006】
図5に示す光複素振幅計測装置10は、光源としてのレーザ11と、ビームスプリッタ12,16と、空間フィルタ13と、ミラー14,15と、カメラ17と、パソコン(パーソナルコンピュータ)18とを備えて構成されている。但し、レーザ11とビームスプリッタ12との間には、例えば大気としての被計測対象21が介在している。
【0007】
レーザ11はレーザ光を出力(出射)する。この出力されたレーザ光が被計測対象21を通過して得られる信号光L11が、ビームスプリッタ12に入力(入射)される。ビームスプリッタ12は、信号光L11を透過及び反射して分岐し、分岐された一方の信号光L11を空間フィルタ13へ出力し、他方の信号光L11をミラー15へ出力する。ミラー15は、信号光L11を反射してビームスプリッタ16へ出力する。
【0008】
空間フィルタ13は、被計測対象21の通過により波面が歪んだ信号光L11の中に存在する平面波成分を抽出し、抽出された平面波成分を含む参照光L12を出力する。この出力された参照光L12は、ミラー14で反射され、ビームスプリッタ16へ出力される。
【0009】
ビームスプリッタ16は、信号光L11と参照光L12とを合波し、合波による強度分布である干渉縞I1をカメラ17へ出力する。カメラ17は、干渉縞I1を取得してパソコン18へ導線を介して干渉縞情報I1aを出力する。パソコン18は、干渉縞情報I1aに対して特定の画像処理を行うことで、信号光の強度分布及び位相分布を算出する(計測処理を行う)。
この種の技術として非特許文献1に記載のものがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】T. Maeda, A. Okamoto, A. Tomita, Y. Hirasaki, Y. Wakayama, and M. Bunsen, “Holographic-Diversity Interferometry for Reference-Free Phase Detection,” in 2013 Conference on Lasers and Electro-Optics Pacific Rim, (Optical Society of America, 2013), paper WF4_4 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述した光複素振幅計測装置10においては、空間フィルタ13で得られる参照光L12の光パワーは、被計測対象21を通過した信号光L11に含まれる平面波成分量に依存している。空間フィルタ13は、信号光L11の中の平面波成分を抽出するが、信号光L11中の波面の歪量が変わってくると、平面波成分量が変わり、参照光L12の光パワーが変動する。
【0012】
その信号光L11の平面波成分量と参照光L12の光パワーとの関係を、図6に線E1で示す。この線E1で示すように、参照光L12の光パワーが変動して低くなると、これに比例して平面波成分量が少なくなる。このため、干渉縞I1のコントラストの低下や干渉縞の消失を招き、計測精度の劣化や計測不能が生じる課題があった。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、被計測対象を通過した信号光に係る干渉縞のコントラストの低下や干渉縞の消失を防止でき、この防止により干渉縞の強度分布と位相分布とを高精度に計測することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の光複素振幅計測装置は、周波数f1の信号光を出力する第1光源と、周波数f2の信号光を参照光として出力する第2光源と、前記第1光源から出力後に被計測対象を通過した信号光の偏光を、前記第2光源から出力された参照光の偏光と一致させる制御を行う偏光制御器と、前記一致された第1光源に係る信号光の中から、前記被計測対象の通過による波面歪が生じた平面波成分を抽出し、抽出された平面波成分を含む周波数f1の信号光を出力する空間フィルタと、前記空間フィルタからの周波数f1の信号光と、前記第2光源からの周波数f2の参照光との双方を合波し、双方の周波数差(f1-f2)のビート信号を前記第2光源の制御端に入力するホモダイン干渉計と、前記第2光源からの参照光と、前記偏光制御器からの信号光とを合波する合波器とを備え、前記第2光源は、前記制御端に入力されるビート信号の周波数差(f1-f2)が0となるように、当該第2光源から出力する参照光の周波数を位相同期制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被計測対象を通過した信号光に係る干渉縞のコントラストの低下や干渉縞の消失を防止でき、この防止により干渉縞の強度分布と位相分布とを高精度に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係るホモダイン干渉計を用いた光複素振幅計測装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る光複素振幅計測装置による光複素振幅計測の動作を説明するための第1のフローチャートである。
図3】第1実施形態に係る光複素振幅計測装置による光複素振幅計測の動作を説明するための第2のフローチャートである。
図4】本発明の第2実施形態に係るホモダイン干渉計を用いた光複素振幅計測装置の構成を示すブロック図である。
図5】従来の光複素振幅計測装置の構成を示すブロック図である。
図6】参照光の光パワーと信号光中の平面波成分量との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。但し、本明細書の全図において機能が対応する構成部分には同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
<第1実施形態の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るホモダイン干渉計を用いた光複素振幅計測装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示す光複素振幅計測装置30は、光源としての第1レーザ31及び第2レーザ32と、偏光制御器33と、ビームスプリッタ34a,34b,34cと、ミラー35と、空間フィルタ36と、ホモダイン干渉計37と、カメラ17と、パソコン18とを備えて構成されている。ホモダイン干渉計37は、ミラー37a、ビームスプリッタ37b及びフォトダイオード37cを備えて構成されている。但し、第1レーザ31と偏光制御器33との間には、被計測対象21が介在している。本例では被計測対象21は大気であるとするが、光ファイバ等であってもよい。
【0019】
なお、第1レーザ31は請求項記載の第1光源を構成し、第2レーザ32は請求項記載の第2光源を構成する。ビームスプリッタ34bは請求項記載の合波器を構成する。パソコン18は、請求項記載の計算機を構成する。
【0020】
第1実施形態の特徴として、光複素振幅計測装置30は、同じ周波数f1,f2のレーザ光を出力(出射)する第1及び第2レーザ31,32である光源を2つ用いるようにした。2つのレーザ光の周波数f1,f2が一致していないと、カメラ17に入力される干渉縞I1が薄れたり消失したりして適正に検出できない。このため、ホモダイン干渉計37を用いて、第2レーザ32からのレーザ光の周波数f2を、第1レーザ31から出力後に被計測対象21を通過したレーザ光の周波数f1に一致させるようにした。
【0021】
第1レーザ31は、周波数f1のレーザ光を出力する。この出力されたレーザ光が被計測対象21を通過して得られる周波数f1の信号光L1は、偏光制御器33へ入力(入射)される。
【0022】
偏光制御器33は、信号光L1の偏光を、第2レーザ32からのレーザ光である参照光L2の偏光に一致させる制御を行う。この一致後の信号光L1はビームスプリッタ34aに入力される。なお、偏光制御器33に入力される第2レーザ32からの参照光L2は、ビームスプリッタ34c,37b、空間フィルタ36、ビームスプリッタ34aの経路を介して偏光制御器33へ入力される。
【0023】
ビームスプリッタ34aは、偏光制御器33からの周波数f1の信号光L1を透過及び反射して分岐し、分岐された一方の信号光L1を空間フィルタ36へ出力し、他方の信号光L1をミラー35へ出力する。ミラー35は、信号光L1を反射してビームスプリッタ34bへ出力する。
【0024】
空間フィルタ36は、被計測対象21の通過により波面が歪んだ信号光L1の中に存在する平面波成分を抽出し、抽出された平面波成分を含む周波数f1の信号光L1aをホモダイン干渉計37のビームスプリッタ37bへ出力する。
【0025】
一方、第2レーザ32は、周波数f1と同じ周波数f2のレーザ光を参照光L2として出力する。この出力された参照光L2は、ビームスプリッタ34cで分岐され、分岐された一方の参照光L2がビームスプリッタ34bへ出力される。他方の参照光L2は、ホモダイン干渉計37のビームスプリッタ37bへ出力される。
【0026】
ホモダイン干渉計37において、ビームスプリッタ37bで反射された参照光L2は、ミラー37aで反射されて再度ビームスプリッタ37bに入力される。このビームスプリッタ37bで参照光L2と、空間フィルタ36からの信号光L1aとが合波される。この合波された信号光L1aと参照光L2の周波数f1,f2の差分(周波数差ともいう)によるビート光がフォトダイオード37cで電気信号であるビート信号B1に変換される。この変換されたビート信号B1が導線を介して第2レーザ32の制御端に入力される。
【0027】
第2レーザ32は、ビート信号B1の周波数差(f1-f2)が0となるように、第2レーザ32から出力される参照光L2の周波数f2を位相同期制御する。この制御された参照光L2は、ビームスプリッタ34cを透過してホモダイン干渉計37にフィードバックされると共に、ビームスプリッタ34cで反射されて他のビームスプリッタ34bに入力される。
【0028】
このビームスプリッタ34bは、信号光L1と参照光L2とを合波し、合波による強度分布である干渉縞I1をカメラ17へ出力する。カメラ17は、干渉縞I1を取得してパソコン18へ導線を介して干渉縞情報I1aを出力する。パソコン18は、干渉縞情報I1aに対して特定の画像処理を行うことで、信号光L1の光強度と位相を算出する(計測処理を行う)。
【0029】
<第1実施形態の動作>
次に、第1実施形態に係る光複素振幅計測装置30による光複素振幅計測の動作を、図2及び図3のフローチャートを参照して説明する。
【0030】
図2に示すステップS1において、第1レーザ31から出力された周波数f1のレーザ光が被計測対象21を通過し、この通過により得られた周波数f1の信号光L1が偏光制御器33へ入力される。
【0031】
ステップS2において、偏光制御器33によって、これに入力された信号光L1の偏光が、第2レーザ32から出力された参照光L2の偏光に一致される制御が行われ、一致後の信号光L1がビームスプリッタ34aに入力される。
【0032】
ステップS3において、ビームスプリッタ34aで偏光制御器33からの周波数f1の信号光L1が分岐され、分岐された一方の信号光L1が空間フィルタ36へ、他方の信号光L1がミラー35へ出力される。
【0033】
ステップS4において、ミラー35で、その信号光L1が反射されてビームスプリッタ34bへ出力される。
【0034】
ステップS5において、空間フィルタ36で、被計測対象21の通過により波面が歪んだ信号光L1の中に存在する平面波成分が抽出される。更に、空間フィルタ36から、その抽出された平面波成分を含む周波数f1の信号光L1aが、ホモダイン干渉計37のビームスプリッタ37bへ出力される。
【0035】
ステップS6において、第2レーザ32から周波数f2の参照光L2が出力され、この参照光L2がビームスプリッタ34cで分岐される。分岐された一方の参照光L2がビームスプリッタ34bへ出力され、他方の参照光L2がホモダイン干渉計37のビームスプリッタ37bへ出力される。
【0036】
ステップS7において、ホモダイン干渉計37のビームスプリッタ37bで反射された参照光L2が、ミラー37aで反射されて再度ビームスプリッタ37bに入力される。このビームスプリッタ37bにおいて、参照光L2と、空間フィルタ36からの信号光L1aとが合波される。この合波された信号光L1aと参照光L2の周波数差(f1-f2)によるビート信号B1が、フォトダイオード37cから導線を介して第2レーザ32の制御端に入力される。
【0037】
図3に進み、ステップS8において、周波数差(f1-f2)が0となるように、第2レーザ32から出力される参照光L2の周波数f2が位相同期制御される。この次にステップS9へ進む。
【0038】
ステップS9において、周波数差(f1-f2)が一致した参照光L2が、ビームスプリッタ34cで反射されて他のビームスプリッタ34bに入力される。
【0039】
ステップS10において、ビームスプリッタ34bで、信号光L1と参照光L2とが合波され、合波により得られた干渉縞I1がカメラ17へ出力される。
【0040】
ステップS11において、カメラ17で、干渉縞I1が撮影により取得され、取得により得られる干渉縞情報I1aがパソコン18へ出力される。
【0041】
ステップS12において、パソコン18で、干渉縞情報I1aから信号光L1の光強度と位相を算出する特定の画像処理を行う(計測処理を行う)。
【0042】
<第1実施形態の効果>
第1実施形態に係る光複素振幅計測装置30の効果について説明する。
【0043】
(1a)光複素振幅計測装置30は、第1レーザ31と、第2レーザ32と、偏光制御器33と、空間フィルタ36と、ホモダイン干渉計37と、ビームスプリッタ34bとを備える。
【0044】
第1レーザ31は、周波数f1の信号光L1を出力する。第2レーザ32は、周波数f2の信号光L1を参照光L2として出力すると共に、周波数f2を周波数f1に一致させる位相同期制御を行う。偏光制御器33は、第1レーザ31から出力後に被計測対象21を通過した信号光L1の偏光を、第2レーザ32から出力された参照光L2の偏光と一致させる制御を行う。
【0045】
空間フィルタ36は、一致された第1レーザ31に係る信号光L1の中から、被計測対象21の通過による波面歪が生じた平面波成分を抽出し、抽出された平面波成分を含む周波数f1の信号光L1aを出力する。ホモダイン干渉計37は、空間フィルタ36からの周波数f1の信号光L1aと、第2レーザ32からの周波数f2の参照光L2との双方を合波し、双方の周波数差(f1-f2)のビート信号B1を第2レーザ32の制御端に入力する。ビームスプリッタ34bは、第2レーザ32からの参照光L2と、偏光制御器33からの信号光L1とを合波する。更に、第2レーザ32は、制御端に入力されるビート信号B1の周波数差(f1-f2)が0となるように、当該第2レーザ32から出力する参照光L2の周波数を位相同期制御する構成とした。
【0046】
この構成によれば、第1レーザ31から出力される周波数f1の信号光L1の偏光が、第2レーザ32から出力される周波数f2の参照光L2の偏光と一致される。また、周波数f1の信号光L1と周波数f2の信号光L1との周波数差(f1-f2)が0となるように、第2レーザ32から出力される参照光L2の周波数が位相同期制御される。この制御により周波数差(f1-f2)が0となった際の信号光L1と、参照光L2とがビームスプリッタ34bで合波される。
【0047】
この際の参照光L2は、第2レーザ32から直接出力されるので、光パワーを安定させることができる。また、第1レーザ31に係る周波数f1の信号光L1と上記周波数f2の参照光L2とは、位相同期制御により周波数差(f1-f2)が0となっている。このため、ビームスプリッタ34bで信号光L1と参照光L2とを合波した干渉縞は、コントラストが明確となっている。言い換えれば、被計測対象21を通過した信号光L1に係る干渉縞のコントラストの低下や干渉縞の消失を防止できる。
【0048】
(2a)第2レーザ32からの参照光L2と偏光制御器33からの信号光L1とが、ビームスプリッタ34bで合波されて得られる干渉縞を撮影し、撮影された干渉縞から干渉縞情報を得るカメラ17を備える。更に、カメラ17で得られた干渉縞情報から信号光L1の強度分布及び位相分布の計測を行うパソコン18を、更に備える構成とした。
【0049】
この構成によれば、ビームスプリッタ34bで信号光L1に合波される参照光L2は、第2レーザ32から直接出力されるため光パワーが安定している。このため、ビームスプリッタ34bで信号光L1と参照光L2とを合波した干渉縞を、カメラ17で撮影して得られる干渉縞情報をパソコン18で計算すれば、信号光L1の強度分布及び位相分布の計測を高精度に行うことができる。
【0050】
<第2実施形態の構成>
図4は、本発明の第2実施形態に係るホモダイン干渉計を用いた光複素振幅計測装置の構成を示すブロック図である。
【0051】
図4に示す第2実施形態の光複素振幅計測装置30Aが、第1実施形態の光複素振幅計測装置30(図1)と異なる点は、第1実施形態と異なる構成のホモダイン干渉計37Aを備え、空間フィルタ36(図1)を備えないことにある。
【0052】
ホモダイン干渉計37Aは、ミラー37a、ビームスプリッタ37b、光ファイバカプラ37d、シングルモード光ファイバ37e及びフォトダイオード37cを備えて構成されている。
【0053】
シングルモード光ファイバ37eは、一端が光ファイバカプラ37dを介してビームスプリッタ37bに接続され、他端がフォトダイオード37cに接続されている。このシングルモード光ファイバ37eは、空間フィルタ36(図1)と同じ処理である平面波成分の抽出処理を行う。即ち、シングルモード光ファイバ37eは、被計測対象21の通過により波面が歪んだ信号光L1の中に存在する平面波成分を抽出し、抽出された平面波成分を含む周波数f1の信号光L1aと、周波数f2の参照光L2とを合波してフォトダイオード37cへ出力する。
【0054】
フォトダイオード37cは、その合波された信号光L1aと参照光L2との周波数差(f1-f2)によるビート光を電気信号であるビート信号B1に変換し、導線を介して第2レーザ32の制御端に入力する。
【0055】
第2レーザ32は、ビート信号B1の周波数差(f1-f2)が0となるように、第2レーザ32から出力される参照光L2の周波数f2を位相同期制御する。この制御された参照光L2は、ビームスプリッタ34cを透過してホモダイン干渉計37Aにフィードバックされると共に、ビームスプリッタ34cで反射されて他のビームスプリッタ34bに入力される。
【0056】
このビームスプリッタ34bでは、信号光L1と参照光L2とが合波された干渉縞I1がカメラ17へ出力され、カメラ17からパソコン18へ導線を介して干渉縞情報I1aが出力される。パソコン18では、干渉縞情報I1aから信号光L1の強度分布及び位相分布の計算処理が実行される。
【0057】
<第2実施形態の効果>
第2実施形態に係る光複素振幅計測装置30Aの効果について説明する。
【0058】
(1b)光複素振幅計測装置30Aは、第1レーザ31と、第2レーザ32と、偏光制御器33と、ホモダイン干渉計37Aと、ビームスプリッタ34bとを備える。
【0059】
第1レーザ31は、周波数f1の信号光L1を出力する。第2レーザ32は、周波数f2の信号光L1を参照光L2として出力すると共に、周波数f2の周波数f1への位相同期制御を行う。偏光制御器33は、第1レーザ31から出力後に被計測対象21を通過した信号光L1の偏光を、第2レーザ32から出力された参照光L2の偏光と一致させる制御を行う。
【0060】
ホモダイン干渉計37Aは、上記一致された第1レーザ31に係る信号光L1の中から、被計測対象21の通過による波面歪が生じた平面波成分を抽出し、抽出された平面波成分を含む周波数f1の信号光L1aと、第2レーザ32からの周波数f2の参照光L2との双方を合波して伝送するシングルモード光ファイバ37eを有する。更に、ホモダイン干渉計37Aは、シングルモード光ファイバ37eからの上記双方の周波数差(f1-f2)のビート信号B1を第2レーザ32の制御端に入力する。ビームスプリッタ34bは、第2レーザ32からの参照光L2と、偏光制御器33からの信号光L1とを合波する。更に、第2レーザ32は、制御端に入力されるビート信号B1の周波数差(f1-f2)が0となるように、当該第2レーザ32から出力する参照光L2の周波数を位相同期制御する構成とした。
【0061】
この構成によれば、第1実施形態の光複素振幅計測装置30(図1)と同様の作用効果が得られる。更に、その光複素振幅計測装置30に比べ、第2実施形態の光複素振幅計測装置30Aでは空間フィルタ36が不要となるので、その分、装置の小型化を図ることができる。
【0062】
(2b)第2実施形態の光複素振幅計測装置30Aは、第1実施形態と同様に、カメラ17及びパソコン18を更に備える構成とした。この構成によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0063】
実際の測定にあたっては、干渉縞情報I1aから信号光の強度分布及び位相分布を算出する際に用いるアルゴリズムに合わせて第1及び第2実施形態を適宜変更する必要がある。例えば、光複素振幅計測装置30,30Aにおいて、ビームスプリッタ34cとビームスプリッタ34bとの間に位相変調素子を挿入する場合やビームスプリッタ34bを傾けて参照光L2に角度を付けて信号光L1と合波する場合がある。
【0064】
<効果>
(1)周波数f1の信号光を出力する第1光源と、周波数f2の信号光を参照光として出力する第2光源と、前記第1光源から出力後に被計測対象を通過した信号光の偏光を、前記第2光源から出力された参照光の偏光と一致させる制御を行う偏光制御器と、前記一致された第1光源に係る信号光の中から、前記被計測対象の通過による波面歪が生じた平面波成分を抽出し、抽出された平面波成分を含む周波数f1の信号光を出力する空間フィルタと、前記空間フィルタからの周波数f1の信号光と、前記第2光源からの周波数f2の参照光との双方を合波し、双方の周波数差(f1-f2)のビート信号を前記第2光源の制御端に入力するホモダイン干渉計と、前記第2光源からの参照光と、前記偏光制御器からの信号光とを合波する合波器とを備え、前記第2光源は、前記制御端に入力されるビート信号の周波数差(f1-f2)が0となるように、当該第2光源から出力する参照光の周波数を位相同期制御することを特徴とする光複素振幅計測装置である。
【0065】
この構成によれば、第1光源から出力される周波数f1の信号光の偏光が、第2光源から出力される周波数f2の参照光の偏光と一致される。また、周波数f1の信号光と周波数f2の信号光との周波数差(f1-f2)が0となるように、第2光源から出力される参照光の周波数が位相同期制御される。この制御により周波数差(f1-f2)が0となった際の信号光と、参照光とが合波器で合波される。
【0066】
この際の参照光は、第2光源から直接出力されるので、光パワーを安定させることができる。また、第1光源に係る周波数f1の信号光と上記周波数f2の参照光とは、位相同期制御により周波数差(f1-f2)が0となっている。このため、合波器で信号光と参照光とを合波した干渉縞は、コントラストが明確となる。言い換えれば、被計測対象を通過した信号光に係る干渉縞のコントラストの低下や干渉縞の消失を防止できる。
【0067】
(2)周波数f1の信号光を出力する第1光源と、周波数f2の信号光を参照光として出力すると第2光源と、前記第1光源から出力後に被計測対象を通過した信号光の偏光を、前記第2光源から出力された参照光の偏光と一致させる制御を行う偏光制御器と、前記一致された第1光源に係る信号光の中から、前記被計測対象の通過による波面歪が生じた平面波成分を抽出し、抽出された平面波成分を含む周波数f1の信号光と、前記第2光源からの周波数f2の参照光との双方を合波して伝送するシングルモード光ファイバを有し、当該双方の周波数差(f1-f2)のビート信号を前記第2光源の制御端に入力するホモダイン干渉計と、前記第2光源からの参照光と、前記偏光制御器からの信号光とを合波する合波器とを備え、前記第2光源は、前記制御端に入力されるビート信号の周波数差(f1-f2)が0となるように、当該第2光源から出力する参照光の周波数を位相同期制御することを特徴とする光複素振幅計測装置である。
【0068】
この構成によれば、請求項1の光複素振幅計測装置と同様の作用効果が得られるが、この光複素振幅計測装置に比べ、空間フィルタが不要となるので、その分、装置の小型化を図ることができる。
【0069】
(3) 前記位相同期制御された参照光と前記偏光制御器からの信号光とが、前記合波器で合波されて得られる干渉縞を撮影するカメラと、前記カメラで得られた干渉縞情報から信号光の強度分布及び位相分布を計算するための画像処理を行う計算機とを更に備えることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の光複素振幅計測装置である。
【0070】
この構成によれば、合波器で信号光に合波される参照光は、第2光源から直接出力されるため光パワーが安定している。このため、合波器で信号光と参照光とを合波した干渉縞を、カメラで撮影して得られる干渉縞情報に対して、計算機で画像処理を行うことで、信号光の強度分布及び位相分布の計測を高精度に行うことができる。
【0071】
その他、具体的な構成について、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
17 カメラ
18 パソコン(計算機)
30,30A 光複素振幅計測装置
31 第1レーザ(第1光源)
32 第2レーザ(第2光源)
33 偏光制御器
34a,34c,37b ビームスプリッタ
34b ビームスプリッタ(合波器)
35,37a ミラー
36 空間フィルタ
37,37A ホモダイン干渉計
37c フォトダイオード
37d 光ファイバカプラ
37e シングルモード光ファイバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6