(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】フラーレンの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/154 20170101AFI20231205BHJP
【FI】
C01B32/154
(21)【出願番号】P 2022569768
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2021041228
(87)【国際公開番号】W WO2022130834
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2020209111
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】飯野 匡
(72)【発明者】
【氏名】神原 英二
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-336442(JP,A)
【文献】特開2005-350335(JP,A)
【文献】特開2005-330117(JP,A)
【文献】特開2003-160316(JP,A)
【文献】特開2003-192320(JP,A)
【文献】特開2004-345893(JP,A)
【文献】特開2004-051441(JP,A)
【文献】特開2003-221216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を含む原料ガスの不完全燃焼によりフラーレンを生成する反応炉と、
前記原料ガスと第1の酸素含有ガスとを前記反応炉内に噴射しながら、前記原料ガスを不完全燃焼させて、第1の燃焼炎を形成する第1の噴射部と、
前記原料ガスと同じ又は異なる炭化水素を含む補助ガスと第2の酸素含有ガスとを前記反応炉内に噴射しながら、前記補助ガスを燃焼させて、第2の燃焼炎を形成する第2の噴射部と、
前記原料ガスの炭素原子数と前記第1の酸素含有ガスの酸素原子数との比A
1
を0.60~2.00に調整して、前記原料ガスと前記第1の酸素含有ガスとを前記第1の噴射部に供給する第1の流量調整部と、
前記補助ガスの炭素原子数と前記第2の酸素含有ガスの酸素原子数との比A
2
を0.30<A
2
<A
1
に調整して、前記補助ガスと前記第2の酸素含有ガスとを前記第2の噴射部に供給する第2の流量調整部と、を備える、フラーレンの製造装置。
【請求項2】
前記第1の噴射部と前記第2の噴射部との何れか一方を囲むように何れか他方が配置されている、
請求項1に記載のフラーレンの製造装置。
【請求項3】
前記第1の噴射部の少なくとも一部と前記第2の噴射部の少なくとも一部とが同心円状に交互に並んで配置されている、
請求項1に記載のフラーレンの製造装置。
【請求項4】
前記第1の噴射部と前記第2の噴射部との間に仕切り部が設けられている、
請求項1に記載のフラーレンの製造装置。
【請求項5】
前記第1の噴射部は、前記反応炉の一端側から他端側に向けて前記原料ガスを噴射し、
前記第2の噴射部は、前記反応炉の一端側と他端側との間の周囲から前記補助ガスを噴射する、
請求項1に記載のフラーレンの製造装置。
【請求項6】
前記反応炉内を吸引しながら、前記反応炉内を減圧状態とする減圧機構を備える、
請求項1に記載のフラーレンの製造装置。
【請求項7】
炭化水素を含む原料ガスの不完全燃焼によりフラーレンを反応炉内で生成する工程を含み、
前記工程において、前記原料ガスと第1の酸素含有ガスとを前記反応炉内に噴射しながら、前記原料ガスを不完全燃焼させて、第1の燃焼炎を形成すると共に、
前記原料ガスと同じ又は異なる炭化水素を含む補助ガスと第2の酸素含有ガスとを前記反応炉内に噴射しながら、前記補助ガスを燃焼させて、第2の燃焼炎を形成することによって、前記反応炉内を加熱し、
前記原料ガスの炭素原子数と前記第1の酸素含有ガスの酸素原子数との比A
1を0.60~2.00とし、
前記補助ガスの炭素原子数と前記第2の酸素含有ガスの酸素原子数との比A
2を0.30<A
2<A
1とすることを特徴とするフラーレンの製造方法。
【請求項8】
前記反応炉内の温度を1000~2000℃とすることを特徴とする請求項7に記載のフラーレンの製造方法。
【請求項9】
前記工程において、前記反応炉内を吸引しながら、前記反応炉内を減圧状態とすることを特徴とする請求項7又は8に記載のフラーレンの製造方法。
【請求項10】
前記反応炉内の圧力を1~30kPaとすることを特徴とする請求項9に記載のフラーレンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレンの製造装置及び製造方法に関する。
本願は、2020年12月17日に、日本に出願された特願2020-209111号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
フラーレンの製造方法として、反応炉内で炭化水素を含む原料ガス(以下、「原料ガス」ともいう。)を不完全燃焼させることによって、フラーレンを生成する燃焼法や、炭化水素を含む原料ガスを熱分解させることによって、フラーレンを生成する熱分解法が知られている(例えば、特許文献1~4を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-160316号公報
【文献】特開2003-171106号公報
【文献】特開2003-221216号公報
【文献】中国特許第102757032号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フラーレンの収率を高めるためには、製造装置内の温度を高温にすることが好ましい。しかしながら、上記特許文献1~4に記載のフラーレン製造装置及び製造方法では、反応装置内を高温状態にすることや高温状態を保持することが難しいため、フラーレンの収率が高くない。したがって、フラーレンの収率を高めて、フラーレンの製造コストを更に低減することが望まれている。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記問題に鑑みてなされたものであり、フラーレンの収率を向上させることを可能としたフラーレンの製造装置及び製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0007】
(1) 炭化水素を含む原料ガスの不完全燃焼によりフラーレンを生成する反応炉と、
前記原料ガスと第1の酸素含有ガスとを前記反応炉内に噴射しながら、前記原料ガスを不完全燃焼させて、第1の燃焼炎を形成する第1の噴射部と、
前記原料ガスと同じ又は異なる炭化水素を含む補助ガスと第2の酸素含有ガスとを前記反応炉内に噴射しながら、前記補助ガスを燃焼させて、第2の燃焼炎を形成する第2の噴射部と、を備えるフラーレンの製造装置。
(2) 前記原料ガスの炭素原子数と前記第1の酸素含有ガスの酸素原子数との比A1を0.60~2.00に調整して、前記原料ガスと前記第1の酸素含有ガスとを前記第1の噴射部に供給する第1の流量調整部と、
前記補助ガスの炭素原子数と前記第2の酸素含有ガスの酸素原子数との比A2を0.30<A2<A1に調整して、前記補助ガスと前記第2の酸素含有ガスとを前記第2の噴射部に供給する第2の流量調整部と、を備えることを特徴とする前項(1)に記載のフラーレンの製造装置。
(3) 前記第1の噴射部と前記第2の噴射部との何れか一方を囲むように何れか他方が配置されていることを特徴とする前項(1)又は(2)に記載のフラーレンの製造装置。
(4) 前記第1の噴射部の少なくとも一部と前記第2の噴射部の少なくとも一部とが同心円状に交互に並んで配置されていることを特徴とする前項(1)又は(2)に記載のフラーレンの製造装置。
(5) 前記第1の噴射部と前記第2の噴射部との間に仕切り部が設けられていることを特徴とする前項(1)~(3)の何れか一項に記載のフラーレンの製造装置。
(6) 前記第1の噴射部は、前記反応炉の一端側から他端側に向けて前記原料ガスを噴射し、
前記第2の噴射部は、前記反応炉の一端側と他端側との間の周囲から前記補助ガスを噴射することを特徴とする前項(1)又は(2)に記載のフラーレンの製造装置。
(7) 前記反応炉内を吸引しながら、前記反応炉内を減圧状態とする減圧機構を備えることを特徴とする前項(1)~(6)の何れか一項に記載のフラーレンの製造装置。
(8) 炭化水素を含む原料ガスの不完全燃焼によりフラーレンを反応炉内で生成する工程を含み、
前記工程において、前記原料ガスと第1の酸素含有ガスとを前記反応炉内に噴射しながら、前記原料ガスを不完全燃焼させて、第1の燃焼炎を形成すると共に、
前記原料ガスと同じ又は異なる炭化水素を含む補助ガスと第2の酸素含有ガスとを前記反応炉内に噴射しながら、前記補助ガスを燃焼させて、第2の燃焼炎を形成することによって、前記反応炉内を加熱し、
前記原料ガスの炭素原子数と前記第1の酸素含有ガスの酸素原子数との比A1を0.60~2.00とし、
前記補助ガスの炭素原子数と前記第2の酸素含有ガスの酸素原子数との比A2を0.30<A2<A1とすることを特徴とするフラーレンの製造方法。
(9) 前記反応炉内の温度を1000~2000℃とすることを特徴とする前項(8)に記載のフラーレンの製造方法。
(10) 前記工程において、前記反応炉内を吸引しながら、前記反応炉内を減圧状態とすることを特徴とする前項(8)又は(9)に記載のフラーレンの製造方法。
(11) 前記反応炉内の圧力を1~30kPaとすることを特徴とする前項(10)に記載のフラーレンの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、フラーレンの収率を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフラーレンの製造装置の一例を示す構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るバーナ9A及びバーナ10Aを備える反応炉の構成を示す断面図である。
【
図3】
図2に示すバーナ9A及びバーナ10Aの噴射部の先端面の構成を例示した平面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るバーナ9B及びバーナ10Bを備える反応炉の構成を示す断面図である。
【
図5】
図4に示すバーナ9B及びバーナ10Bの噴射部の先端面の構成を示す平面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係るバーナ9C及びバーナ10Cを備える反応炉の構成を示す断面図である。
【
図7】
図6に示すバーナ9C及びバーナ10Cの噴射部の先端面の構成を例示した平面図である。
【
図8】本発明の第4の実施形態に係るバーナ9D及びバーナ10Dを備える反応炉の構成を示す断面図である。
【
図9】
図8に示すバーナ10Dが備える第2の噴射部25d及び第2の噴射口22aの形状及び配置を例示する縦断面図である。
【
図10】
図8に示すバーナ10Dが備える第2の噴射部25dの第2の噴射口22aの配置を例示する横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用したフラーレンの製造装置及び製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を模式的に示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0011】
(フラーレンの製造装置)
先ず、本発明の一実施形態として、例えば
図1に示すフラーレンの製造装置1について説明する。
なお、
図1は、フラーレンの製造装置1の一例を示す構成図である。
【0012】
本実施形態のフラーレンの製造装置1は、
図1に示すように、炭化水素を含む原料ガスの不完全燃焼によりフラーレンを含む煤状物を生成する反応炉2と、反応炉2内で生成された煤状物を回収する回収機構3と、回収機構3を通過したガスを冷却する冷却機構4と、冷却機構4で冷却されたガスを吸引しながら、反応炉2内を減圧状態とする減圧機構5とを備えている。
【0013】
また、このフラーレンの製造装置1は、反応炉2と回収機構3との間を接続する第1の配管6と、回収機構3と冷却機構4との間を接続する第2の配管7と、冷却機構4と減圧機構5との間を接続する第3の配管8とを有している。
【0014】
反応炉2は、円筒状の周壁部2aと、周壁部2aの上端側(一端側)を閉塞する上壁部2bと、周壁部2aの下端側(他端側)を閉塞する下壁部2cとを有して、鉛直方向に起立した状態で配置されている。また、反応炉2は、内部温度を測定するためのサファイアガラス窓2dを有していてもよい。
【0015】
なお、反応炉2の材質については、例えば、ジルコニア(ZrO2)やタングステン(W)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、アルミナ(Al2O3)、炭化ケイ素(SiC)などの耐熱材料が挙げられる。また、その外側及び内側の少なく一部には、例えばアルミナ質の耐火煉瓦やアルミナ質の不定形耐火材等の断熱材がライニングされていてもよい。
【0016】
なお、反応炉2の配置については、上述した鉛直方向に配置することが、煤状物の滞留の影響が少ないことから好ましい。また、反応炉2の配置方向が鉛直方向である場合、原料ガスは上方から供給することが好ましい。一方、反応炉2については、例えば、水平方向や斜め方向に傾けた状態で配置することも可能である。
【0017】
第1の配管6は、反応炉2の下壁部2cに設けられた排ガスを排出する排出口30d(以下、「排ガス排出口30d」という。)と接続されている。一方、反応炉2の上壁部2b側には、バーナ9及びバーナ10が設けられている。反応炉2では、バーナ9から噴射された原料ガスと第1の酸素含有ガスとを不完全燃焼させることによりフラーレンを含む煤状物を生成する。
【0018】
また、バーナ10から反応炉2内に噴射された補助ガスと第2の酸素含有ガスとを燃焼させることにより反応炉2内を加熱する。これにより、原料ガス及び補助ガスの燃焼により生成した煤状物や一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気等を含む高温の排ガスが第1の配管6を通過して回収機構3に到達する。
【0019】
回収機構3は、フィルタ11が収容された捕集器12と、捕集器12の上端(一端)側に電磁弁13を介して接続されたタンク14と、捕集器12の下端(他端)側に設けられた排出弁15とを有している。
【0020】
第1の配管6は、捕集器12の上部側の側面に接続されている。第2の配管7は、捕集器12の上部に接続されている。フィルタ11には、例えば、焼結金属フィルタが用いられている。電磁弁13は、第2の配管7から分岐して接続されている。タンク14には、例えば、窒素ガス(N2)やアルゴンガス(Ar)などの高圧の不活性ガスが貯留されている。
【0021】
回収機構3では、第1の配管6から供給される排ガスの中に含まれる煤状物をフィルタ11により捕集した後、電磁弁13を定期的に開放することで、タンク14から捕集器12に向けて不活性ガスを噴射する。これにより、フィルタ11に付着された煤状物が脱落する。その後、排出弁15を開放することで、捕集器12内に溜まった煤状物を回収することが可能となっている。
【0022】
冷却機構4は、通常の熱交換器と同一又は近似した構造を有し、その一端(上端)側が第2の配管7と接続され、その他端(下端)側が第3の配管8と接続されている。
【0023】
冷却機構4では、回収機構3を通過したガスが冷却される。また、冷却機構4では、ガス中の未反応の炭化水素や、水蒸気を液化させ、下部側に設けられたドレーン16から排出することが可能となっている。
【0024】
なお、このような冷却機構4とは別に、第1の配管6を通過する排ガスが高温であることから、この第1の配管6が冷却される構成としてもよい。
【0025】
減圧機構5は、真空ポンプからなり、第3の配管8を通して冷却機構4で冷却されたガスを吸引する。これにより、反応炉2との間で負圧を発生させながら、反応炉2内で生成された煤状物を第1の配管6を通して回収機構3側へと排出することが可能である。
【0026】
原料ガスに含まれる炭化水素としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の炭素数6~15の芳香族炭化水素、クレオソート油、カルボン酸油等の石炭系炭化水素、エチレン系不飽和炭化水素、アセチレン系不飽和炭化水素、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族飽和炭化水素等が挙げられる。また、これらの炭化水素を2種以上混合して用いてもよい。原料ガスには、上述した炭化水素の中でも、芳香族炭化水素を含むことが好ましい。なお、原料ガスは、必要に応じて、窒素ガスやアルゴンなどの不活性ガスで希釈されていてもよい。
【0027】
補助ガスに含まれる炭化水素は、上述した原料ガスと同じものであってもよく、異なるものであってもよい。例えば、炭素数1~8のアルカン、炭素数2~8のアルケン、炭素数2~8のアルキン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の炭素数6~15の芳香族炭化水素、クレオソート油、カルボン酸油等の石炭系炭化水素、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族飽和炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類が挙げられる。また、これらの炭化水素を2種以上混合して用いてもよい。補助ガスには、上述した炭化水素の中でも、炭素数1~8のアルカン、炭素数2~8のアルケン、炭素数2~8のアルキンを含むことが好ましい。なお、補助ガスは、必要に応じて、窒素ガスやアルゴンなどの不活性ガスで希釈されていてもよい。
【0028】
また、第1の酸素含有ガス及び第2の酸素含有ガスは、酸素分子を含むガスであり、例えば、酸素ガスや空気などが挙げられる。第1の酸素含有ガス及び第2の酸素含有ガスは、原料ガスと補助ガスとは別に反応炉2に供給してもよく、若しくは、予め原料ガス及び補助ガスをそれぞれ混合してから反応炉2に供給してもよい。
【0029】
生成されるフラーレンについては、例えば、C60フラーレン(C60)、C70フラーレン(C70)、C76、C78、C84、C90、C96等の高次フラーレンが挙げられる。
【0030】
(フラーレンの製造方法)
次に、上記フラーレンの製造装置1を用いたフラーレンの製造方法について説明する。
本実施形態のフラーレンの製造方法は、炭化水素を含む原料ガスを反応炉2内で不完全燃焼させることによりフラーレンを生成する工程を含み、この工程において、原料ガスと第1の酸素含有ガスとを反応炉2内に噴射しながら、原料ガスを不完全燃焼させ、第1の燃焼炎を形成すると共に、補助ガスと第2の酸素含有ガスとを反応炉2内に噴射しながら、補助ガスを燃焼させ、第2の燃焼炎を形成することによって、反応炉2内を加熱することを特徴とする。
【0031】
反応炉2内に噴射される原料ガスの炭素原子数と第1の酸素含有ガスとの酸素原子との比A1は、0.60~2.00であることが好ましく、0.80~1.70であることがより好ましく、1.00~1.50であることが更に好ましい。これにより、フラーレンの収率を高めることが可能である。
【0032】
例えば、原料ガスが気化されたトルエン(炭素原子数:7)の場合、原料ガスの供給速度が20g/minであるとき、すなわち0.217mol/minのときの、原料ガス中の炭素原子数供給速度は、7×0.217×6.02×1023個/minとなる。酸素分子の供給速度が、13NL/min(0.582mol/min)のとき、酸素原子の供給速度は、2×0.582×6.02×1023個/minとなる。したがって、A1は、(7×0.217)/(2×0.582)=1.31と計算される。A2についても同様である。
【0033】
また、反応炉2内に噴射された補助ガスの炭素原子数と第2の酸素含有ガスの酸素原子との比A2は、0.30<A2<A1を満たすことが好ましい。A2が0.30により大きいと、第2の酸素含有ガスの過剰がなく又は少ないため、原料ガスの不完全燃焼への影響が少ない。一方、A2がA1より小さいと、補助ガスを燃焼させて生成した第2の燃焼炎は、原料ガスを不完全燃焼させて生成した第1の燃焼炎(不完全燃焼炎)よりも高温であるため、第2の燃焼炎により反応炉2内を加熱することができる。
【0034】
なお、A2は、0.30<A2<A1を満たすと共に、0.35~0.85であることが好ましく、0.35~0.55であることがより好ましい。A2が0.35~0.85であれば、補助ガスの燃焼は完全燃焼又は完全燃焼に近く、生成した第2の燃焼炎の温度が高くなるため、好ましい。
【0035】
通常、フラーレンを生成するための第1の燃焼炎温度は、500℃~2000℃である。一方、補助ガスを燃焼させて生成した第2の燃焼炎の温度は好ましく1000℃~2500℃であり、より好ましくは1100℃~2200℃である。これにより、反応炉2内の温度(雰囲気)を高温に保つことが可能である。
【0036】
そして、この高温の反応炉2内で、上述した原料ガスを不完全燃焼させることにより煤状物を生成する。これにより、生成された煤状物の中に含まれるフラーレンの収率を向上させることが可能である。
【0037】
ここで、第2の燃焼炎により加熱された反応炉2内の温度は、フラーレンの収率を向上させる観点から、1000~2000℃とすることが好ましく、より好ましくは1500~2000℃である。反応炉2内の温度が1000℃未満であると、フラーレンの収率を向上させる効果が低い。一方、反応炉2内の温度が2000℃を超えると、反応炉2内の温度を高めるための補助ガスが大量に必要となるため、非効率である。反応炉2内の温度は、超高温熱電対又は放射温度計によって測定できる。
【0038】
また、反応炉2内の圧力は、1~30kPaとすることが好ましく、より好ましくは1~10kPaである。反応炉2内の圧力が1kPa未満になると、減圧機構5の負荷が大きくなる。一方、反応炉2内の圧力が30kPaを超えると、火炎が逆火を起こす可能性がある。
【0039】
(第1の実施形態)
次に、本発明の第1の実施形態に係るフラーレンの製造装置1について説明する。
本発明の第1の実施形態に係るフラーレンの製造装置1は、
図2に示すバーナ9(以下、「バーナ9A」として区別する。)及びバーナ10(以下、「バーナ10A」として区別する。)を備えている。
【0040】
なお、
図2は、バーナ9A及びバーナ10Aを備える反応炉2の構成を示す断面図である。
図3(A),(B)は、後述する第1の噴射部23cと第2の噴射部25aとの先端面の構成を例示した平面図である。
【0041】
本実施形態のバーナ9Aは、反応炉2の上壁部2bを貫通した状態で取り付けられた有天円筒状のバーナホルダ23と、バーナホルダ23の内側には、上側から順に設けられている第1の予混合室23aと、蓄圧室23bと、第1の噴射部23cとを有している。また、バーナホルダ23の上部には、原料ガスを導入する配管24aと、第1の酸素含有ガスを導入する配管24bとが接続されている。
【0042】
配管24aには、原料ガス(又は液体の炭化水素)の流量を制御する第1の流量計35aが設けられている。なお、配管24aには、第1の流量計35aとバーナホルダ23の上部との間に位置して、液体の炭化水素をガス化する加熱装置等のガス化装置が設けられていてもよい。
【0043】
配管24bには、第1の酸素含有ガスの流量を制御する第1の流量計35bが設けられている。第1の流量調整部は、第1の流量計35a,35bを用いて、原料ガスの炭素原子数と第1の酸素含有ガスの酸素原子数との比A1を0.60~2.00に調整して、原料ガスと第1の酸素含有ガスとを第1の噴射部23cに供給する。
【0044】
なお、第1の流量計35a,35bは、原料ガス(又は液体の炭化水素)と第1の酸素含有ガスとを所定の流量に調整できるものであればよく、例えば、市販のマスフローコントローラーなどを用いることができる。
【0045】
第1の予混合室23aは、配管24aから導入される原料ガスと、配管24bから導入された第1の酸素含有ガスとを均一に混合する。蓄圧室23bは、第1の予混合室23aで混合された原料ガスと第1の酸素含有ガス(以下、「第1の混合ガス」ともいう。)を所定の圧力で蓄圧する。第1の噴射部23cは、複数の第1の噴射口21aを有し、蓄圧室23bで蓄圧された第1の混合ガスを第1の噴射口21aから下方(排ガス排出口30dに向かう方向)に向けて噴射する。第1の噴射部23cは、多孔質のセラミック焼結体や金属粉末の焼結体で構成されていてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、バーナホルダ23の内側に、第1の予混合室23aと、蓄圧室23bと、第1の噴射部23cとが設けられた構成となっているが、第1の予混合室23aを省略した構成としてもよい。さらに、必要に応じて、第1の予混合室23a及び蓄圧室23bをバーナホルダ23の外部に設けた構成としもよい。
【0047】
バーナ10Aは、第2の噴射部25aと、反応炉2の外部に配置された第2の予混合室26と、第2の噴射部25aと第2の予混合室26との間を接続する接続配管27とを有している。
【0048】
第2の噴射部25aは、例えば、一定の厚みを有する筒であり、先端面において、反応炉2内に補助ガスと第2の酸素含有ガスとを噴射する第2の噴射口22aが設けられている。また、第2の噴射部25aの内部には、第2の噴射口22aと接続配管27とを接続する通路22bが設けられている。第2の噴射部25aは、第1の噴射部23cの周囲を囲むように配置されている。
【0049】
第2の噴射口22aの形状及び数については、特に限定していないが、一例として、
図3(A)に示すように、円形状である。
図3(A)において、第2の噴射部25aの先端面がリンク状であり、複数の第2の噴射口22aが第2の噴射部25aの先端面に均等に配置されている。
【0050】
また、
図3(B)に示すように、リング状の第2の噴射部25aの先端面にリンク状の第2の噴射口22aが配置されていてもよい。
【0051】
第2の予混合室26には、補助ガスを導入する配管28aと、第2の酸素含有ガスを導入する配管28bとが接続されている。
【0052】
配管28aには、補助ガス(又は液体の炭化水素)の流量を制御する第2の流量計36aが設けられている。なお、配管28aには、第2の流量計36aと第2の予混合室26との間に位置して、液体の炭化水素をガス化する加熱装置等のガス化装置が設けられていてもよい。
【0053】
配管28bには、第2の酸素含有ガスの流量を制御する第2の流量計36bが設けられている。第2の流量調整部は、第2の流量計36a,36bを用いて、補助ガスの炭素原子数と第2の酸素含有ガスの酸素原子数との比A2を0.30<A2<A1に調整して、補助ガスと第2の酸素含有ガスとを第2の噴射部25aに供給する。
【0054】
なお、第2の流量計36a,36bは、補助ガス(又は液体の炭化水素)と第2の酸素含有ガスとを所定の流量に調整できるものであればよく、例えば、市販のマスフローコントローラーなどを用いることができる。
【0055】
第2の予混合室26は、配管28aから導入される補助ガスと、配管28bから導入された第2の酸素含有ガスとを均一に混合する。
【0056】
接続配管27は、反応炉2の周壁部2aにおける上部を貫通した状態で、第2の予混合室26で混合された補助ガスと第2の酸素含有ガス(以下、「第2の混合ガス」ともいう。)を第2の噴射部25aに供給する。接続配管27は、反応炉2の上壁部2bを貫通して、第2混合ガスを第2の噴射部25aに供給してもよい。第2の噴射部25aは、この接続配管27を介して供給された第2の混合ガスを第2の噴射口22aから下方(排ガス排出口30dに向かう方向)に向けて噴射する。
【0057】
また、第1の噴射部23cと第2の噴射部25aとの間に仕切り部29を備えている。仕切り部29は、第1の噴射部23cと第2の噴射部25aとの先端面において、第1の噴射口21aと第2の噴射口22aとの間から、第1の噴射口21a及び第2の噴射口22aよりも下方に突出した仕切り壁29aを有している。
【0058】
仕切り部29は、反応炉2内に配置された断熱部材30と一体に構成されていてもよい。断熱部材30は、反応炉2の内側の周壁部2aに沿って配置された円筒状の周壁30aと、反応炉2の内側の下壁部2cに沿って配置された底壁30bと、周壁30aの上部を閉塞する天壁30cとを有している。
【0059】
バーナホルダ23及び第2の噴射部25aは、天壁30cを貫通した状態で、第1の噴射口21a及び第2の噴射口22aを断熱部材30の内側に臨ませている。また、底壁30bには、第1の配管6と連通される排ガス排出口30dが設けられている。なお、断熱部材30の材質には、例えば、アルミナ質の耐火煉瓦やアルミナ質の不定形耐火材などが挙げられる。
【0060】
また、反応炉2の第1の配管6が接続される位置の近傍には、原料ガス及び補助ガスを着火するための着火機構31が設けられている。
【0061】
以上のような構成を有する本実施形態のバーナ9A及びバーナ10Aは、上述した第1の噴射口21aから原料ガスと第1の酸素含有ガスとを噴射しながら、この原料ガスを不完全燃焼させて反応炉2内でフラーレンを含む煤状物を生成するための第1燃焼炎を形成すると同時に、上述した第2の噴射口22aから補助ガスと第2の酸素含有ガスとを噴射しながら、この補助ガスを燃焼させて第1の燃焼炎より高温な第2の燃焼炎(好ましく完全燃焼炎)を形成することによって、反応炉2内を加熱する。
【0062】
これにより、本実施形態のバーナ9A及びバーナ10Aを備えるフラーレンの製造装置1では、反応炉2内を高温に保つことができ、生成された煤状物の中に含まれるフラーレンの収率を向上させることが可能である。
【0063】
また、本実施形態のバーナ9A及びバーナ10Aでは、上述した第1の噴射部23c(第1の噴射口21a)と第2の噴射部25a(第2の噴射口22a)との間に仕切り部29を設けることで、互いに同一方向に向けて噴射される第1の燃焼炎と第2の燃焼炎とが混じり合うことを防ぐことが可能である。これにより、生成された煤状物の中に含まれるフラーレンが第2の燃焼炎により燃焼されてしまうことを防ぐことが可能である。
【0064】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るフラーレンの製造装置1について説明する。
本発明の第2の実施形態に係るフラーレンの製造装置1は、
図4及び
図5に示すバーナ9(以下、「バーナ9B」として区別する。)及びバーナ10(以下、「バーナ10B」として区別する。)を備えている。
【0065】
なお、
図4は、バーナ9B及びバーナ10Bを備える反応炉2の構成を示す断面図である。
図5は、バーナ9Bの第1の噴射部23cとバーナ10Bの後述する第2の噴射部25bの先端面の構成を示す平面図である。また、以下の説明では、上記バーナ9A及びバーナ10Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0066】
本実施形態において、
図4に示すように、バーナ10Bが管状の第2の噴射部25bを有している。第2の噴射部25bは、バーナホルダ23の内側中央に設置され、第1の予混合室23aと、蓄圧室23bと、第1の噴射部23cとを鉛直方向に貫通している。これにより、第2の噴射部25bは、第1の噴射部23cにより囲まれる。また、
図5に示すように、第2の噴射部25bの先端面に、第2の噴射口22aが設けられていて、第1の噴射部23cの第1の噴射口21aにより囲まれている。なお、第2の噴射部25bは、第2の予混合室26に直接に接続している。
【0067】
バーナ9Bは、第1の予混合室23aと、蓄圧室23bと、第1の噴射部23cとが第2の噴射部25bにより鉛直方向に貫通されている以外は、上記バーナ9Aと同様な構造を有している。
【0068】
また、第2の噴射部25bの先端(下端)は、第1の噴射部23cの先端(下端)よりも下方に突出している。これにより、第1の噴射口21aと第2の噴射口22aとの噴射方向(排ガス排出口30dに向かう方向)における位置が異なっている。すなわち、第2の噴射口22aは、第1の噴射口21aよりも下方に位置している。
【0069】
以上のような構成を有する本実施形態のバーナ9B及びバーナ10Bは、上述した第1の噴射口21aから原料ガスと第1の酸素含有ガスとを噴射しながら、この原料ガスを不完全燃焼させて反応炉2内でフラーレンを含む煤状物を生成するための第1燃焼炎を形成すると同時に、上述した第2の噴射口22aから補助ガスと第2の酸素含有ガスとを噴射しながら、この補助ガスを燃焼させて第1の燃焼炎より高温な第2の燃焼炎(好ましく完全燃焼炎)を形成することによって、反応炉2内を加熱する。
【0070】
これにより、本実施形態のバーナ9B及びバーナ10Bを備えるフラーレンの製造装置1では、反応炉2内を高温に保つことができ、生成された煤状物の中に含まれるフラーレンの収率を向上させることが可能である。
【0071】
また、本実施形態のバーナ9B及びバーナ10Bでは、上述した第1の噴射口21aと第2の噴射口22aとの噴射方向における位置が異なることで、互いに同一方向に向けて噴射される第1の燃焼炎と第2の燃焼炎とが混じり合うことを防ぐことが可能である。これにより、生成された煤状物の中に含まれるフラーレンが第2の燃焼炎により燃焼されてしまうことを防ぐことが可能である。
【0072】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係るフラーレンの製造装置1について説明する。
本発明の第3の実施形態に係るフラーレンの製造装置1は、
図6及び
図7に示すバーナ9(以下、「バーナ9C」として区別する。)及びバーナ10(以下、「バーナ10C」として区別する。)を備えている。
【0073】
なお、
図6は、バーナ9C及びバーナ10Cを備える反応炉2の構成を示す断面図である。
図7(A),(B)は、バーナ9Cの第1の噴射部23cとバーナ10Bの後述する第2の噴射部25cの先端面の構成を例示した平面図である。また、以下の説明では、上記バーナ9A及びバーナ10Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0074】
本実施形態において、バーナ10Cは、
図6に示すように、バーナホルダ23内に設けられる第2の噴射部25cを有している。第2の噴射部25cは、接続配管27から分岐した複数のノズル部34を有している。ノズル部34は、蓄圧室23bと、第1の噴射部23cとを鉛直方向に貫通した状態で配置されている。また、接続配管27は、バーナホルダ23の上側中央部を貫通した状態で、第2の噴射部25cと第2の予混合室26との間を接続している。
【0075】
具体的に、ノズル部34は、例えば、管状であってもよく、一定の厚みを有する筒状であってもよい。ノズル部34の先端面に、第2の噴射口22aが配置されている。また、ノズル部34が筒状である場合、ノズル部34の内部には、接続配管27と第2の噴射口22aとを接続する通路22cが設けられている。第2の噴射部25cは、管状のノズル部34(以下、「ノズル部34a」ともいう。)と、筒状のノズル部34(以下、「ノズル部34b」ともいう。)との一方のみを備えていてもよく、両方を備えていてもよい。
【0076】
例えば、
図7(A)に示すバーナ10Cの第2の噴射部25cは、ノズル部34aを複数備えている。第1の噴射部23cと第2の噴射部25cとの先端面において、各ノズル部34aは、円形状に開口した第2の噴射口22aを有している。これにより、第2の噴射部25c(第2の噴射口22a)が第1の噴射部23c(第1の噴射口21a)により囲まれている。
【0077】
一方、
図7(B)に示すバーナ10Cの第2の噴射部25cは、中心部にノズル部34aが一つ配置され、ノズル部34aを中心にノズル部34bが複数配置されている。第1の噴射部23cと第2の噴射部25cとの先端面において、ノズル部34aは、円形状に開口した複数の第2の噴射口22aを有し、ノズル部34bがリング状に開口した複数の第2の噴射口22aを有している。
【0078】
そして、ノズル部34a(第2の噴射口22a)は、第1の噴射部23c(第1の噴射口21a)により囲まれ、ノズル部34b(第2の噴射口22a)と第1の噴射部23c(第1の噴射口21a)の一部とが同心円状に交互に並んで配置されている。
【0079】
バーナ9Cは、第1の予混合室23aと、蓄圧室23bと、第1の噴射部23cとが接続配管27とノズル部34とにより鉛直方向に貫通されている以外は、上記バーナ9Aと同様な構造を有している。
【0080】
また、ノズル部34の先端(下端)は、第1の噴射部23cの先端(下端)よりも下方に突出している。これにより、第1の噴射口21aと第2の噴射口22aとの噴射方向(排ガス排出口30dに向かう方向)における位置が異なっている。すなわち、第2の噴射口22aは、第1の噴射口21aよりも下方に位置している。
【0081】
以上のような構成を有する本実施形態のバーナ9C及びバーナ10Cでは、上述した第1の噴射口21aから原料ガスと第1の酸素含有ガスとを噴射しながら、この原料ガスを不完全燃焼させて反応炉2内でフラーレンを含む煤状物を生成するための第1の燃焼炎を形成すると同時に、上述した第2の噴射口22aから補助ガスと第2の酸素含有ガスとを噴射しながら、この補助ガスを燃焼させて第1の燃焼炎より高温な第2の燃焼炎(好ましく完全燃焼炎)を形成することによって、反応炉2内を加熱する。
【0082】
これにより、本実施形態のバーナ9C及びバーナ10Cを備えるフラーレンの製造装置1では、反応炉2内を高温に保つことができ、生成された煤状物の中に含まれるフラーレンの収率を向上させることが可能である。
【0083】
また、本実施形態のバーナ9C及びバーナ10Cでは、上述した第1の噴射口21aと第2の噴射口22aとの噴射方向における位置が異なることで、互いに同一方向に向けて噴射される第1の燃焼炎と第2の燃焼炎とが混じり合うことを防ぐことが可能である。これにより、生成された煤状物の中に含まれるフラーレンが第2の燃焼炎により燃焼されてしまうことを防ぐことが可能である。
【0084】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係るフラーレンの製造装置1について説明する。
本発明の第4の実施形態に係るフラーレンの製造装置1は、
図8及び
図9に示すバーナ9(以下、「バーナ9D」として区別する。)及びバーナ10(以下、「バーナ10D」として区別する。)を備えている。
【0085】
なお、
図8は、バーナ9D及びバーナ10Dを備える反応炉2の構成を示す断面図である。
図9は、バーナ10Dが備える第2の噴射部25d及び第2の噴射口22aの形状及び配置を例示する縦断面図である。
図10は、バーナ10Dが備える第2の噴射部25dの第2の噴射口22aの配置を例示する横断面図である。また、以下の説明では、上記バーナ9A及びバーナ10Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0086】
本実施形態のバーナ9Dは、上記バーナ9Aと同じ構成を有している。
【0087】
バーナ10Dは、
図8に示しているような第2の噴射部25dを有している。第2の噴射部25dは、バーナホルダ23の周囲を囲む位置から下方に延在する円筒形状を有し、反応炉2の一端側(上壁部2b側)と他端側(下壁部2c側)との間の周囲に設けられている。
【0088】
第2の噴射部25dの内周面には、複数の第2の噴射口22aが並んで設けられている。また、第2の噴射部25dの内部には、接続配管27と第2の噴射口22aとを接続する通路22dが設けられている。これにより、第2の噴射部25dは、第2の噴射口22aから反応炉2内に補助ガスを噴射することができる。
【0089】
第2の噴射部25dの内周面における第2の噴射口22aは、第2の噴射部25dの軸線方向において、
図9(A),(B),(C)に示すような形状及び配置を有してもよい。例えば、
図9(A)に示す複数の第2の噴射口22aは、第2の噴射部25dの軸線方向において、それぞれ軸線方向にスリット状に開口されて、第2の噴射部25dの周方向に並んで配置されている。
【0090】
一方、
図9(B)に示す複数の第2の噴射口22aは、それぞれ円形状に開口されて、第2の噴射部25dの周方向及び軸線方向に並んで配置されている。
【0091】
一方、
図9(C)に示す複数の第2の噴射口22aは、それぞれ第2の噴射部25dの周方向にスリット状に開口されて、第2の噴射部25dの軸線方向に並んで配置されている。
【0092】
また、第2の噴射部25dは、その周方向において、
図9(A),(B)に示すような複数の第2の噴射口22aを有する場合に、複数の第2の噴射口22aは、
図10に示すように形成されていてもよい。例えば、
図10(A)に示す複数の第2の噴射口22aは、第2の噴射部25dの内周面の互いに同じ方向に斜めに開口している突起部33により形成されている。これにより、各第2の噴射口22aから噴射される補助ガスの渦状の流れを形成することが可能である。
【0093】
一方、
図10(B)に示す複数の第2の噴射口22aは、第2の噴射部25dの周方向において、互いに反応炉2の中心方向に向かって開口している。これにより、各第2の噴射口22aから噴射される補助ガスを反応炉2の中心に向かって噴射することが可能である。
【0094】
本実施形態において、第1の噴射部23cは、反応炉2の一端側(上壁部2b側)にある第1の噴射口21aから他端側(下壁部2c側)に向けて原料ガスを噴射することが可能である。第2の噴射部25dは、反応炉2の一端側(上壁部2b側)と他端側(下壁部2c側)との間の周囲にある第2の噴射口22aから補助ガスを噴射することが可能である。
【0095】
以上のような構成を有する本実施形態のバーナ9D及びバーナ10Dでは、上述した第1の噴射口21aから原料ガスと第1の酸素含有ガスとを噴射しながら、この原料ガスを不完全燃焼させて反応炉2内でフラーレンを含む煤状物を生成するための第1の燃焼炎を形成すると同時に、上述した第2の噴射口22aから補助ガスと第2の酸素含有ガスとを噴射しながら、この補助ガスを燃焼させて第1の燃焼炎より高温な第2の燃焼炎(好ましく完全燃焼炎)を形成することによって、反応炉2内を加熱する。
【0096】
これにより、本実施形態のバーナ9D及びバーナ10Dを備えるフラーレンの製造装置1では、反応炉2内を高温に保つことができ、生成された煤状物の中に含まれるフラーレンの収率を向上させることが可能である。
【0097】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【実施例】
【0098】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0099】
[フラーレンの算出]
下記の実施例1~7及び比較例1では、C60及びC70の収率の合計をフラーレンの収率として算出した。
また、「JIS Z 8981」に準拠して、回収した煤状物に含まれるC60及びC70の含有率を、以下のように測定した。
【0100】
具体的には、回収した煤状物0.05gに対して、15gの1,2,3,5-テトラメチルベンゼン(TMB)を添加した後、15分間超音波処理し、懸濁液を得た。得られた懸濁液を孔径0.5μmメンブランフイルターで濾過した後、高速液体クロマトグラフ(HPLC)で濾液(試料液)を分析してC60及びC70を定量し、煤状物に含まれるC60及びC70の含有率[質量%]を算出した。
【0101】
ここで、煤状物に含まれるC60及びC70の含有率を算出する際には、事前に複数の既知濃度のC60及びC70のTMB溶液により作成した検量線を用いた。
【0102】
HPLCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Infinity1260(Agilent製)
試料液の注入量:5μL
溶離液:トルエン(47体積%)/メタノール(53体積%)混合溶媒
溶離液の流速:1ml/分
カラム:YMC-Pack ODS-AM 100*4.6mmID S-3μm,12nm
測定温度:40℃
検出器:UV 325nm(JIS)
【0103】
次に、煤状物に含まれるフラーレンの含有率(C60及びC70の含有率の合計)から、式{(煤状物の回収量[g])/(原料ガスの消費量[g])}×(フラーレンの含有率[質量%])により、フラーレン収率[質量%]を算出した。
【0104】
「反応炉の炉内温度測定」
下記の実施例1~7及び比較例1の反応炉2内の温度は、サファイアガラス窓2dを利用して、高性能単色温度計マラソンMM(レイテック社製)によって測定した。
【0105】
(実施例1)
図2に示す反応炉2を有するフラーレンの製造装置1を用いて、フラーレンを製造した。第2の噴射部25aの先端部は、
図3(A)に示す構造を有している。
【0106】
ここで、反応炉2は、鉛直方向に配置されるアルミナ製の円筒で、高さは1000mm、内径は200mmである。反応炉2の上壁部2bを貫通するように、バーナ9Aが設けられている。反応炉2に60mm×60mmのサファイアガラス窓2dが設置され、サファイアガラス窓2dの上の辺は第1の噴射部23cの先端面と平行する。第1の噴射部23cは、直径が100mmの円板状の多孔質のセラミックス焼結体で構成されており、このセラミックス焼結体に直径0.5mm~1.0mm程度の孔(第1の噴射口21a)が、1cm2当たりに60~80個形成されている。
【0107】
バーナ10Aの第2の噴射部25aは、ステンレス製で内径が160mm円筒で内部に冷却水路がある。第2の噴射部25aの先端面には、直径10mmの第2の噴射口22aが40個均等に配置されている。鉛直方向において、第2の噴射部25aの先端面と第1の噴射部23cの先端面とが同じ高さにある。また、第1の噴射部23cと第2の噴射部25aとの間から、第1の噴射部23cと第2の噴射部25aとの先端面よりも下方に40mm突出したアルミナ製の仕切り壁29aが設けられている。
【0108】
原料ガスとして、トルエンを使用し、第1の酸素含有ガスとして、純酸素ガス(純度99.9体積%)を使用した。ここで、トルエンを、配管24aに設置された気化装置で加熱してガス状とした後に、バーナ9Aに供給した。
【0109】
トルエンの流量は、第1の流量計35aであるマスコントローラー(AeraSFC168、日立金属社製)により制御した。純酸素ガスの流量は、第1の流量計35bであるマスフローメーター(マスコントローラーAera、FC-7810CD、日立金属社製)により制御した。
【0110】
トルエンの流量を20g/minとし、純酸素ガスの流量を13NL/minとした。また、反応炉2に供給された原料ガスの炭素原子数と第1の酸素含有ガスの酸素原子数との比:A1は、1.31であった。
【0111】
補助ガスとして、トルエンを使用し、第2の酸素含有ガスとして、純酸素ガス(純度99.9体積%)を使用した。ここで、トルエンを、配管28aに設置された気化装置で加熱してガス状とした後に、バーナ10Aに供給した。
【0112】
トルエンの流量は、第2の流量計36aであるマスコントローラー(AeraSFC168、日立金属社製)により制御した。純酸素ガスの流量は、第2の流量計36bであるマスフローメーター(マスコントローラーAera、FC-7810CD、日立金属社製)により制御した。
【0113】
トルエンの流量を20g/minとし、純酸素ガスの流量を18NL/minとした。また、フラーレンを生成させる際に、反応炉2の内部の圧力を5.33kPaとした。また、反応炉2に供給された補助ガスの炭素原子数と第2の酸素含有ガスの酸素原子数との比:A2は、0.95であり、0.30<A2(0.95)<A1(1.31)であった。
【0114】
フラーレンを生成させる際の反応炉2の炉内温度は1120℃であった。また、上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、生成した煤状物を回収機構3から回収した。また、上記[フラーレンの算出]に記載した方法で、回収した煤状物中に含まれるフラーレンの含有率を測定した後、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は1.2%であった。
【0115】
(実施例2)
補助ガスとしてトルエンの流量を20g/minとし、第2の酸素含有ガスとして純酸素の流量を21NL/minとした以外は、実施例1と同様にフラーレンを生成した。また、反応炉2に供給された補助ガスの炭素原子数と第2の酸素含有ガスの酸素原子数との比:A2は、0.81であり、0.30<A2(0.81)<A1(1.31)であった。
【0116】
フラーレンを生成させる際の反応炉2の温度は1680℃であった。また、上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、生成した煤状物を回収機構3から回収した。また、上記[フラーレンの算出]に記載した方法で、回収した煤状物中に含まれるフラーレンの含有率を測定した後、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は1.5%であった。
【0117】
(実施例3)
補助ガスとしてトルエンの流量を20g/minとし、第2の酸素含有ガスとして純酸素の流量を25NL/minとした以外は、実施例1と同様にフラーレンを生成した。また、反応炉2に供給された補助ガスの炭素原子数と第2の酸素含有ガスの酸素原子数との比A2は、0.68であり、0.30<A2(0.68)<A1(1.31)であった。
【0118】
フラーレンを生成させる際の反応炉2の温度は1870℃であった。また、上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、生成した煤状物を回収機構3から回収した。また、上記[フラーレンの算出]に記載した方法で、回収した煤状物中に含まれるフラーレンの含有率を測定した後、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は2.1%であった。
【0119】
(実施例4)
補助ガスとして1-ヘキセンを用い、1-ヘキセンの流量を13g/minとし、第2の酸素含有ガスとして純酸素の流量を25NL/minとした以外は、実施例5と同様にフラーレンを生成した。反応炉2に供給された補助ガスの炭素原子数と第2の酸素含有ガスの酸素原子数との比:A2は、0.42であり、0.30<A2(0.42)<A1(1.31)であった。
【0120】
フラーレンを生成させる際の反応炉2の温度は1810℃であった。また、上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、生成した煤状物を回収機構3から回収した。また、上記[フラーレンの算出]に記載した方法で、回収した煤状物中に含まれるフラーレンの含有率を測定した後、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は1.9%であった。
【0121】
(実施例5)
図4に示す反応炉2を有するフラーレンの製造装置1を用いて、フラーレンを製造した。
【0122】
バーナ10Bの第2の噴射部25bは、ジルコニア製の管である。第2の噴射部25bの先端部には、直径20mmの円形状な第2の噴射口22aが設けられている。鉛直方向において、第2の噴射部25bの先端面は、第1の噴射部23cの先端面より40mm低くなっている。
【0123】
補助ガスとしてトルエンの流量を20g/minとし、第2の酸素含有ガスとして純酸素の流量を21NL/minとした以外は、実施例1と同様にフラーレンを生成した。また、反応炉2に供給された補助ガスの炭素原子数と第2の酸素含有ガスの酸素原子数との比:A2は、0.81であり、0.30<A2(0.81)<A1(1.31)であった。
【0124】
フラーレンを生成させる際の反応炉2の温度は1300℃であった。また、上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、生成した煤状物を回収機構3から回収した。また、上記[フラーレンの算出]に記載した方法で、回収した煤状物中に含まれるフラーレンの含有率を測定した後、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は1.1%であった。
【0125】
(実施例6)
補助ガスとしてトルエンの流量を20g/minとし、第2の酸素含有ガスとして純酸素の流量を25NL/minとした以外は、実施例4と同様にフラーレンを生成した。また、反応炉2に供給された補助ガスの炭素原子数と第2の酸素含有ガスの酸素原子数との比:A2は、0.68であり、0.30<A2(0.68)<A1(1.31)であった。
【0126】
フラーレンを生成させる際の反応炉2の温度は1500℃であった。また、上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、生成した煤状物を回収機構3から回収した。また、上記[フラーレンの算出]に記載した方法で、回収した煤状物中に含まれるフラーレンの含有率を測定した後、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は1.4%であった。
【0127】
(実施例7)
図6に示す反応炉2を有するフラーレンの製造装置1を用いて、フラーレンを製造した。
【0128】
第2の噴射部25cの先端部は、
図7(A)のような構造を有している。バーナ10Cの第2の噴射部25cのノズル部34aは、ジルコニア製である。ノズル部34aの先端部には、直径8mmの円形状の第2の噴射口22aが配置されている。また、第2の噴射部25cのノズル部34aが16個であり、互いに均等な距離で配置されている。鉛直方向において、第2の噴射部25cの先端面は、第1の噴射部23cの先端面より40mm低くなっている。
【0129】
補助ガスとしてトルエンの流量を20g/minとし、第2の酸素含有ガスとして純酸素の流量を25NL/minとした以外は、実施例1と同様にフラーレンを生成した。また、反応炉2に供給された補助ガスの炭素原子数と第2の酸素含有ガスの酸素原子数との比:A2は、0.68であり、0.30<A2(0.68)<A1(1.31)であった。
【0130】
フラーレンを生成させる際の反応炉2の温度は1830℃であった。また、上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、生成した煤状物を回収機構3から回収した。また、上記[フラーレンの算出]に記載した方法で、回収した煤状物中に含まれるフラーレンの含有率を測定した後、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は1.9%であった。
【0131】
(実施例8)
図8に示す反応炉2を有するフラーレンの製造装置1を用いて、フラーレンを製造した。
【0132】
バーナ10Dは、
図9(A)に示す第2の噴射口22aを有している。また、第2の噴射口22aは、
図10(B)のように開口している。バーナ10Dの第2の噴射部25dは、ジルコニア製の円筒であり、円筒の内径は160mm、高さは400mmである。第2の噴射部25dの内周面には、幅が8mm、高さが45mmのスリット状の第2の噴射口22aが16個であり、互いに均等な距離で配置されている。鉛直方向において、スリット状の第2の噴射口22aの上側は、バーナ9Dの先端面と同じ高さである。
【0133】
補助ガスとしてトルエンの流量を20g/minとし、第2の酸素含有ガスとして純酸素の流量を25NL/minとした。前記以外は実施例1と同様にフラーレンを生成した。また、反応炉2に供給された補助ガスの炭素原子数と第2の酸素含有ガスの酸素原子数との比:A2は、0.68であり、0.30<A2(0.68)<A1(1.31)であった。
【0134】
フラーレンを生成させる際の反応炉2の温度は1960℃であった。また、上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、生成した煤状物を回収機構3から回収した。また、上記[フラーレンの算出]に記載した方法で、回収した煤状物中に含まれるフラーレンの含有率を測定した後、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は2.2%であった。
【0135】
(比較例1)
バーナ10Aを有しないフラーレンの製造装置1を用いてフラーレンを製造した以外は実施例1と同様にフラーレンを生成した。反応炉2に供給された原料ガスの炭素原子数と第1の酸素含有ガスの酸素原子との比:A1は、1.31であった。
【0136】
フラーレンを生成させる際の反応炉2の温度は500℃であった。また、上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、生成した煤状物を回収機構3から回収した。また、上記[フラーレンの算出]に記載した方法で、回収した煤状物中に含まれるフラーレンの含有率を測定した後、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は0.6%であった。
【0137】
以上のことから、実施例1~7は、比較例1と比べて、フラーレンの収率が向上していることがわかる。すなわち、第2の燃焼炎により反応炉2内を高温に保つことで、フラーレンの収率を向上させることが可能である。
【符号の説明】
【0138】
1…フラーレンの製造装置 2…反応炉 3…回収機構 4…冷却機構 5…減圧機構(真空ポンプ) 6…第1の配管 7…第2の配管 8…第3の配管 9,9A~9D…バーナ 10,10A~10D…バーナ 11…フィルタ 12…捕集器 13…電磁弁 14…タンク 15…排出弁 16…ドレーン 21a…第1の噴射口 22a…第2の噴射口 23…バーナホルダ 23a…第1の予混合室 23b…蓄圧室 23c…第1の噴射部 24a…配管 24b…配管 25a~25d…第2の噴射部 26…第2の予混合室 27…接続配管 28a…配管 28b…配管 29…仕切り部 30…断熱部材 31…着火機構 34,34a,34b…ノズル部 35a,35b…第1の流量計(第1の流量調整部) 36a,36b…第2の流量計(第2の流量調整部)