(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20231205BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H01L27/04 C
(21)【出願番号】P 2020058087
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 寛
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-535835(JP,A)
【文献】特開平05-175448(JP,A)
【文献】特開2004-266248(JP,A)
【文献】特開平03-147327(JP,A)
【文献】特開平06-021387(JP,A)
【文献】特開平06-029465(JP,A)
【文献】特開平08-078639(JP,A)
【文献】特開平08-088333(JP,A)
【文献】特開2002-016236(JP,A)
【文献】特開2012-079960(JP,A)
【文献】国際公開第2019/243882(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2019/0123135(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/04
H01L 21/822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の1の面から内部に向かって伸長し、側壁表面に凹凸構造を有するトレンチと、
前記トレンチの側壁表面を覆い且つ前記側壁表面から連続して前記半導体基板の前記1の面に延在するように形成された半導体膜と、
前記半導体膜を挟んで前記半導体基板と対向する位置に設けられ、前記半導体基板の前記1の面に延在する第1の部分と、前記第1の部分から連続して前記トレンチを埋めるように延在する第2の部分と、を有する対向電極と、
前記半導体膜と前記対向電極とを絶縁する絶縁膜と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体膜は、ノンドープのポリシリコン膜であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体膜は、不純物がドープされたポリシリコン膜であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体膜は、表面に半球状粒子構造を有する粗面ポリシリコンを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記凸構造は、尖頭形の凸部を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記トレンチは、ボッシュエッチによって形成されており、
前記凹凸構造は、前記ボッシュエッチの過程において形成される鱗状の凹凸構造であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の半導体装置。
【請求項7】
ボッシュエッチにより、半導体基板の1の面から内部に向かって伸長するトレンチを形成するステップと、
前記トレンチの側壁表面を覆い且つ前記側壁表面から連続して前記半導体基板の前記1の面に延在するように半導体膜を形成するステップと、
前記半導体膜の表面に絶縁膜を形成するステップと、
前記半導体基板の前記1の面に延在する第1の部分と、前記第1の部分から連続して前記トレンチを埋めるように延在する第2の部分と、を有する対向電極を前記絶縁膜上に形成するステップと、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁膜を形成するステップの後、熱アニール処理を実行するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記半導体膜を形成するステップは、
不純物がドープされた第1のポリシリコン膜を形成する第1のステップと、
前記第1のポリシリコン膜の表面にノンドープの第2のポリシリコン膜を形成する第2のステップと、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記半導体膜を形成するステップは、
不純物がドープされた第1のポリシリコン膜を形成する第1のステップと、
前記第1のポリシリコン膜の表面にノンドープの第2のポリシリコン膜を形成する第2のステップと、
前記第2のポリシリコン膜の表面に粗面ポリシリコン膜を形成する第3のステップと、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造技術の向上に伴い、回路内の単位面積(単位情報投影面積)当たりにより多く且つ高性能の素子を搭載する高密度化が進んでいる。半導体メモリ等に用いられるキャパシタ素子では、半導体基板に溝(トレンチ)を形成し、3次元構造化することによって表面積を大きくし、単位面積当たりの容量密度を上げる手法が知られている。
【0003】
また、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)分野では、半導体基板を加工する技術としてボッシュエッチ技術が知られている。ボッシュエッチ技術では、エッチステップと側壁のパッシベーションステップとを繰り返しながら半導体基板を掘り進むことにより、半導体基板に溝形状を形成する。ボッシュエッチ技術を用いて形成された溝の側面には、鱗状の凹凸(scallop)が発生する。
【0004】
凹凸が形成された面は、平滑な面と比べて表面積が大きい。そこで、ボッシュエッチによってトレンチを形成し、側壁部分に凹凸構造を設けて表面積を大きくすることにより、トレンチキャパシタの容量を増大させる手法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2012/0127625号公報
【文献】米国特許10,510,828号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ボッシュエッチによって形成される鱗状の凹凸構造は、先端付近が鋭角な形状(すなわち、尖頭形)の凸部を有する。このため、側壁表面に凹凸構造を有するトレンチによってキャパシタ(トレンチキャパシタ)を形成した場合、トレンチの側壁表面に形成される容量絶縁膜が、凹凸構造の鋭角な形状の部分において薄膜化する。また、対向電極に電圧をかけた際には、この鋭角な形状の部分に電界が集中する。これらは、いずれも容量絶縁膜の耐圧低下につながるという問題があった。
【0007】
また、ボッシュエッチにより凹凸構造が形成された側壁の表面には、当該凹凸構造よりも小さい、表面荒れと認識されるレベルの微細な凹凸も発生する。このような微細な凹凸の角の部分においても容量絶縁膜の薄膜化や電界の集中が発生し、やはり容量絶縁膜の耐圧低下の要因になるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、トレンチキャパシタの容量を増大させつつ容量絶縁膜の耐圧の低下を抑えることが可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板の1の面から内部に向かって伸長し、側壁表面に凹凸構造を有するトレンチと、前記トレンチの側壁表面を覆い且つ前記側壁表面から連続して前記半導体基板の前記1の面に延在するように形成された半導体膜と、前記半導体膜を挟んで前記半導体基板と対向する位置に設けられ、前記半導体基板の前記1の面に延在する第1の部分と、前記第1の部分から連続して前記トレンチを埋めるように延在する第2の部分と、を有する対向電極と、前記半導体膜と前記対向電極とを絶縁する絶縁膜と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、ボッシュエッチにより、半導体基板の1の面から内部に向かって伸長するトレンチを形成するステップと、前記トレンチの側壁表面を覆い且つ前記側壁表面から連続して前記半導体基板の前記1の面に延在するように半導体膜を形成するステップと、前記半導体膜の表面に絶縁膜を形成するステップと、前記半導体基板の前記1の面に延在する第1の部分と、前記第1の部分から連続して前記トレンチを埋めるように延在する第2の部分と、を有する対向電極を前記絶縁膜上に形成するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体装置によれば、容量絶縁膜の耐圧の低下を抑えつつ、トレンチキャパシタの単位面積当たりの容量を大きくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の実施例1に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図1B】
図1Aの破線で囲われた部分を拡大して示す図である。
【
図2】実施例1の半導体装置の製造手順を示すフローチャートである。
【
図3A】比較例の半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図3B】
図3Aの破線で囲われた部分を拡大して示す図である。
【
図4A】比較例のトレンチキャパシタの基板表面の一部を模式的に示す断面図である。
【
図4B】比較例のトレンチキャパシタの表面の一部を拡大して示す断面図である。
【
図5A】本発明の実施例2に係るトレンチキャパシタの構造を示す断面図である。
【
図5B】
図5Aの破線で囲われた部分を拡大して示す図である。
【
図6】実施例2の半導体装置の製造手順を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施例3に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図8】実施例3の半導体装置の製造手順を示すフローチャートである。
【
図9A】本発明の実施例3に係るトレンチキャパシタの容量絶縁膜の形成工程における表面の一部を示す断面図である。
【
図9B】本発明の実施例3に係るトレンチキャパシタのアニール処理後の表面の一部を示す断面図である。
【
図10】本発明の実施例4に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図11】実施例4の半導体装置の製造手順を示すフローチャートである。
【
図12A】本発明の実施例4に係るトレンチキャパシタの容量絶縁膜の形成工程における表面の一部を示す断面図である。
【
図12B】本発明の実施例4に係るトレンチキャパシタのアニール処理後の表面の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一または等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例1】
【0014】
図1Aは、本発明の実施例1に係る半導体装置100の構成を示す断面図である。半導体装置100は、半導体基板10及び対向電極11を含む。半導体基板10には、トレンチキャパシタTCが形成されている。
【0015】
半導体基板10は、例えばシリコン(Si)基板から構成されている。半導体基板10の素子搭載領域を構成する面(以下、1の面と称する)には、ポリシリコン膜12及び容量絶縁膜13が形成されている。
【0016】
半導体基板10の1の面には、内部に向かって伸長する溝形状の凹部(以下、トレンチT1と称する)が形成されている。トレンチT1は、表面に形成されたポリシリコン膜12及び容量絶縁膜13とともに、トレンチキャパシタTCを構成している。
【0017】
トレンチT1は、半導体基板10に対し、ボッシュエッチによってトレンチ加工を行うことにより形成される。ボッシュエッチでは、エッチステップと側壁のパッシベーションステップとを繰り返しながら基板を掘り進む。このため、エッチ側面には、鱗状の凹凸(scallop)が形成される。
【0018】
したがって、本実施例のトレンチT1は、側壁表面に、複数の凹部及び凸部からなる凹凸構造を有する。当該凹凸構造では、凹部が比較的丸みを帯びた形状を有しているのに対し、凸部は先端付近が鋭角な形状(すなわち、尖頭形)を有している。換言すれば、トレンチT1の側壁表面の凹凸構造における凸部の幅は、凹部の幅よりも小さい。凹部の各々は、例えば1~2μm程度の大きさを有する。
【0019】
対向電極11は、ポリシリコン(Poly-Si)から構成されている。対向電極11は、容量絶縁膜13及びポリシリコン膜12を介して半導体基板10と対向するように形成されている。対向電極11は、半導体基板10の1の面に延在するように形成された平板状の部分(第1の部分)と、当該平板状の部分から連続して半導体基板10のトレンチを埋めるように半導体基板10の内部に向かって延在する部分(第2の部分)と、を有する。
【0020】
ポリシリコン膜12は、トレンチT1の内部の表面(特に、側壁表面)を覆い且つ半導体基板10の1の面に延在するように形成された半導体膜である。本実施例では、ポリシリコン膜12は、不純物が導入されていないノンドープのポリシリコン(Non-dope Poly-Si)からなるポリシリコン膜によって構成されている。ポリシリコン膜12は、LP-CVD法によって、トレンチT1が形成された半導体基板10の表面に直接ノンドープポリシリコンを成膜することにより形成される。
【0021】
容量絶縁膜13は、対向電極11とポリシリコン膜12との間に設けられた絶縁膜である。容量絶縁膜13は、ポリシリコン膜12の表面に形成され、トレンチT1の内部の表面を覆い且つ半導体基板10の1の面に延在するように形成されている。容量絶縁膜13は、例えば窒化シリコン(SiN)膜等の絶縁膜から構成されており、例えばLP-CVD法によって、ポリシリコン膜12の表面に直接SiNを成膜することにより形成される。
【0022】
半導体基板10の1の面には、コンタクトCT1が設けられている。コンタクトCT1は、電圧の印加を受ける基板側のコンタクトであり、ポリシリコン膜12を介して半導体基板10に接続されている。
【0023】
対向電極11の平板状の部分の表面(半導体基板10と対向する面とは反対側の面)には、コンタクトCT2が設けられている。コンタクトCT2は、電圧の印加を受ける電極側のコンタクトであり、対向電極11に接続されている。コンタクトCT1及びCT2は、例えばタングステン等の導電体から構成されている。
【0024】
上記の通り、本実施例の半導体装置100では、ボッシュエッチ技術を用いて半導体基板10にトレンチT1が形成されており、ボッシュエッチの特性により、トレンチT1の側壁には鱗状の凹凸構造(“scallop”)が形成されている。
【0025】
したがって、本実施例のトレンチT1は、このような凹凸構造が形成されていない平滑な側壁を有するトレンチと比べて、表面積が大きい。したがって、本実施例のトレンチキャパシタTCは、トレンチの側壁表面に凹凸構造が形成されていないトレンチキャパシタと比べて、キャパシタ容量が大きい。
【0026】
また、トレンチT1の側壁表面にはポリシリコン膜12が形成され、ポリシリコン膜12の上にはさらに容量絶縁膜13が形成されている。ポリシリコン膜12は、ノンドープのポリシリコン膜であり、対向電極12への電圧印加時には、半導体基板10と同様に動作する。すなわち、本実施例のトレンチキャパシタTCは、対向電極12に印加する電圧によって容量が変動する特性(所謂MOSキャパシタのC-V特性)を有する。
【0027】
図1Bは、
図1Aの破線で囲まれた部分A1を拡大して示す図である。ここでは、半導体基板10のハッチングを省略している。
【0028】
上記の通り、本実施例の半導体装置100では、ボッシュエッチ技術を用いて半導体基板10にトレンチT1が形成されている。このため、トレンチT1の側壁には凹凸構造(“scallop”)が形成されている。また、ボッシュエッチの特性により、当該側壁の表面には当該凹凸構造と比べてさらに小さい微細な凹凸部分(以下、微細凹凸BUと称する)が発生する。微細凹凸BUは、所謂表面荒れと認識されるレベルの不規則な凹凸構造であり、鋭角な形状を有する。
【0029】
ポリシリコン膜12は、LP-CVDによる成膜特性から、凹凸構造の形状を保ちつつ、鋭角な形状の部分(例えば、
図1BにSPとして示す尖頭形の凸部)を丸く覆うように、トレンチT1の側壁表面に形成される。また、ポリシリコン膜12の膜厚よりも小さい微細凹凸BUは、LP-CVDによる成膜特性により埋め込まれ、微細凹凸BUが形成された部分の側壁表面が平滑化される。
【0030】
次に、本実施例の半導体装置100の製造方法について、
図2のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
まず、半導体基板10にボッシュエッチを行い、トレンチを形成する(STEP101)。すなわち、エッチステップとパッシベーションステップとを繰り返しつつ、半導体基板10に溝を形成する。これにより、側壁部分に凹凸構造を有するトレンチT1が形成される。
【0032】
次に、LP-CVD法により、トレンチT1の内壁を含む半導体基板10の表面にノンドープのポリシリコン膜を形成する(STEP102)。これにより、半導体基板10の表面にポリシリコン膜12が形成される。
【0033】
次に、LP-CVD法により、ポリシリコン膜12の表面に窒化シリコン膜(SiN)を形成する(STEP103)。その際、コンタクトCT1の形成位置においてポリシリコン膜12の一部がウェハ表面に露出するようにパターニングを行った上で、窒化シリコン膜を形成する。これにより、容量絶縁膜13が形成される。
【0034】
次に、トレンチT1の内部を埋め、且つ半導体基板10の1の面に延在するように、容量絶縁膜13の表面にポリシリコン層を形成する。これにより、ポリシリコンからなる対向電極11が形成される(STEP104)。
【0035】
次に、ウェハ表面に露出したポリシリコン膜12の表面及び対向電極11の表面にコンタクトホールを形成し、タングステン等の導電体によって当該コンタクトホールを埋める。これにより、コンタクトCT1及びCT2が形成される(STEP105)。
【0036】
以上のような工程を経て、本実施例の半導体装置100が製造される。
【0037】
本実施例の半導体装置100では、ポリシリコン膜12の表面に容量絶縁膜13が形成されているため、同様のポリシリコン膜が形成されていない場合と比べて、トレンチキャパシタTCにおける容量絶縁膜13の耐圧が高い。これについて、以下説明する。
【0038】
図3Aは、本実施例のようなポリシリコン膜が形成されていない比較例の半導体装置500の構成を示す断面図である。
【0039】
比較例の半導体装置500では、ボッシュエッチによって半導体基板10にトレンチが形成されており、トレンチの側壁には鱗状の凹凸構造(scallop)が形成されている。この点については、本実施例の半導体装置100と同様である。
【0040】
しかし、比較例の半導体装置500では、トレンチT1の側壁部の表面にポリシリコン膜が形成されておらず、容量絶縁膜13のみが形成されている。すなわち、半導体基板10が容量絶縁膜13を挟んで対向電極12と対向している。
【0041】
図3Bは、
図3Aの破線で囲まれた部分A1を拡大して示す図である。比較例の半導体装置500では、ボッシュエッチにより形成された凹凸構造を有するトレンチの側壁表面に、容量絶縁膜13が直接形成されている。このため、トレンチ側壁表面の凹凸構造の鋭角な形状の部分(例えば、
図3BにSPとして示す凸部の先端付近)において、容量絶縁膜13が部分的に薄膜化する。
【0042】
また、コンタクトCT1及びCT2を介して対向電極12に電圧を印加した際、トレンチ側壁の凹凸構造の鋭角な部分(すなわち、凸部の先端付近)に電界が集中する。このような容量絶縁膜13の部分的な薄膜化、及び電圧印加時の鋭角部分への電界集中により、容量絶縁膜13の耐圧が低下する。
【0043】
また、ボッシュエッチにより形成したトレンチの凹凸構造を有する側壁表面には、さらに微細な凹凸が発生しており、この微細な凹凸の部分においても容量絶縁膜13の薄膜化及び電界集中が生じる。
【0044】
図4Aは、ボッシュエッチの直後(すなわち、容量絶縁膜13及び対向電12の形成前)におけるトレンチの表面を模式的に示す図である。凹凸構造を有するトレンチの側壁表面には、ボッシュエッチの特性により、微細凹凸BUが発生する。
【0045】
図4Bは、対向電極形成後のトレンチの表面を模式的に示す図である。比較例の半導体装置500では、トレンチの側壁表面に容量絶縁膜13が直接形成される。このため、微細凹凸BUに形成された容量絶縁膜13が薄膜化する。そして、対向電極12への電圧印加時には、微細凹凸BUにおいて電界集中が発生する。このように、微細凹凸BUにおける容量絶縁膜13の薄膜化及び電界集中により、容量絶縁膜13の耐圧が低下する。
【0046】
これに対し、
図1Bに示すように、本実施例の半導体装置100では、トレンチT1の凹凸構造の鋭角な形状の部分(例えば、
図1BにSPとして示す凸部の先端付近)を丸く覆うように、ポリシリコン膜12が形成されている。また、凹凸構造の表面に形成された微細凹凸BUは、ポリシリコン膜12の膜厚よりも小さいため、ポリシリコン膜12に埋め込まれ、平滑化される。
【0047】
容量絶縁膜13は、このようなポリシリコン膜12の表面に形成されており、トレンチT1の側壁における凹凸構造の鋭角な形状の部分や、微細凹凸BUの表面には直接形成されていない。このため、比較例の半導体装置500とは異なり、容量絶縁膜13の部分的な薄膜化は生じず、電圧印加時における電界集中が発生しない。
【0048】
したがって、本実施例の半導体装置100によれば、容量絶縁膜13の薄膜化や電圧印加時の電界集中に起因する容量絶縁膜13の耐圧低下が生じない。
【0049】
以上のように、本実施例の半導体装置100では、トレンチT1の側壁に凹凸構造が形成されており、トレンチの側壁表面が平滑に形成されている場合と比べてトレンチの表面積が大きいため、トレンチキャパシタの容量が大きい。
【0050】
また、本実施例の半導体装置100では、トレンチT1の内壁を含む半導体基板10の表面にポリシリコン膜12が形成され、ポリシリコン膜12の上に容量絶縁膜13が形成されている。このため、凹凸構造を有するトレンチの側壁表面に容量絶縁膜が直接形成されている場合に問題となる、容量絶縁膜の薄膜化や電圧印加時の電界集中に起因する容量絶縁膜の耐圧低下が、本実施例の半導体装置100では発生しない。
【0051】
したがって、本実施例の半導体装置100によれば、トレンチキャパシタTCの単位面積当たりの容量を増大させつつ、容量絶縁膜の耐圧低下を抑えることが可能となる。
【実施例2】
【0052】
次に、本発明の実施例2について説明する。
図5Aは、本発明の実施例2に係る半導体装置200の構成を示す断面図である。
【0053】
本実施例の半導体装置200では、トレンチT1の内壁を含む半導体基板10の表面に、不純物がドープされたポリシリコン(doped Poly-Si)からなるポリシリコン膜14が形成されている。すなわち、本実施例の半導体装置200は、半導体基板10の表面に形成されているポリシリコン膜がノンドープのポリシリコンではなく、不純物がドープされたポリシリコンである点で、実施例1の半導体装置100と異なる。
【0054】
図6は、本実施例の半導体装置200の製造方法を示すフローチャートである。
【0055】
まず、半導体基板10にボッシュエッチを行い、トレンチを形成する(STEP201)。これにより、溝の側壁に凹凸構造を有するトレンチT1が形成される。
【0056】
次に、LP-CVD法を用いて、トレンチT1の内壁を含む半導体基板10の表面に不純物がドープされたポリシリコン膜であるポリシリコン膜14を形成する(STEP202)。例えば、LP-CVD法によるポリシリコンの成膜中に、導電性を上げるための不純物を原料ガスに導入することにより、ポリシリコン膜14を形成する。
【0057】
その後、STEP203~205の工程を経て、本実施例の半導体装置200が製造される。なお、STEP203~205は実施例1のSTEP103~105(
図2を参照)と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0058】
図5Bは、
図5Aの破線で囲まれた部分A1を拡大して示す図である。ここでは、半導体基板10のハッチングを省略している。
【0059】
ポリシリコン膜14は、実施例1のポリシリコン膜12と同様、LP-CVDによる成膜特性から、凹凸構造の形状を保ちつつ、鋭角な形状の部分(すなわち、凸部の先端付近)を丸く覆うように、トレンチT1の側壁表面に形成される。また、ポリシリコン膜14の膜厚よりも小さい微細凹凸BUは、LP-CVDによる成膜特性により埋め込まれ、微細凹凸BUが形成された部分の側壁表面が平滑化される。
【0060】
容量絶縁膜13は、ポリシリコン膜14の表面に形成されている。すなわち、容量絶縁膜13は、トレンチT1の側壁表面の凹凸構造における鋭角な形状の部分や、微細凹凸BUの表面には直接形成されていない。このため、実施例1と同様、容量絶縁膜13の部分的な薄膜化は生じず、電圧印加時における電界集中が発生しない。
【0061】
したがって、実施例1の半導体装置100と同様に、本実施例の半導体装置200によれば、トレンチキャパシタTCの単位面積当たりの容量を増大させつつ、容量絶縁膜の耐圧低下を抑えることが可能である。
【0062】
一方、本実施例の半導体装置200は、トレンチT1の側壁表面に形成されている半導体膜が、不純物のドープされたポリシリコン(doped Poly-Si)からなるポリシリコン膜14である点で、実施例1の半導体装置100と相違している。すなわち、本実施例の半導体装置200では、トレンチT1の側壁部分において、不純物がドープされたポリシリコン膜14が、基板側に低抵抗のポリシリコン膜14が形成されている。このため、対向電極12への電圧印加時におけるトレンチキャパシタTCは、MOSキャパシタとしては、印加電圧によらず電荷蓄積側動作となる。すなわち、本実施例のトレンチキャパシタTCでは、対向電極12に印加する電圧によらず、概ね一定の容量特性が得られる。
【0063】
したがって、本実施例の半導体装置200は、バイパスコンデンサ等、印加電圧に応じた容量変動が好ましくない用途に用いる場合に有用である。
【実施例3】
【0064】
次に、本発明の実施例3について説明する。
図7は、本発明の実施例2に係る半導体装置300の構成を示す断面図である。
【0065】
本実施例の半導体装置300では、不純物が導入されたポリシリコンからなるポリシリコン膜14が、実施例2のポリシリコン膜14よりも厚く(例えば、約2倍の厚さに)形成されている。このポリシリコン膜14の厚さの違いは、ポリシリコン膜14の形成工程の違いに起因している。
【0066】
図8は、本実施例の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0067】
まず、半導体基板10にボッシュエッチを行い、トレンチを形成する(STEP301)。これにより、溝の側壁に凹凸構造を有するトレンチが形成される。
【0068】
次に、トレンチの内壁を含む半導体基板10の表面に、不純物を導入しつつLP-CVD法によってポリシリコンを成膜する(STEP302)。これにより、不純物がドープされたポリシリコン膜であるポリシリコン膜14が形成される。
【0069】
次に、LP-CVD法により、ポリシリコン膜14の表面にポリシリコンを成膜する(STEP303)。その際、STEP101とは異なり、不純物の導入は行わない。これにより、ノンドープのポリシリコン膜12が形成される。
【0070】
次に、LP-CVD法により、ポリシリコン膜12の表面に窒化シリコン膜(SiN)を形成する(STEP304)。これにより、容量絶縁膜13が形成される。
【0071】
図9Aは、STEP304で容量絶縁膜13が形成された段階のトレンチの一部を拡大して示す断面図である。
【0072】
トレンチ内部における半導体基板10の表面には、不純物がドープされたポリシリコン膜14が形成されている。さらに、ポリシリコン膜14の表面にはノンドープのポリシリコン膜12が形成され、ポリシリコン膜12の表面には容量絶縁膜13が形成されている。
【0073】
再び
図8を参照すると、不純物がドープされたポリシリコン膜14、ノンドープのポリシリコン膜12、及び容量絶縁膜13が表面に順次形成された半導体基板10に対し、熱アニール処理を行う(STEP305)。これにより、ポリシリコン膜14中の不純物がポリシリコン12膜に固相拡散し、ポリシリコン膜14及びポリシリコン膜12が、いずれも不純物のドープされたポリシリコン膜となる。すなわち、ノンドープのポリシリコン及びドープトポリシリコン(不純物がドープされたポリシリコン)の2層構造の膜全体が、ドープトポリシリコン化する。
【0074】
その後、実施例1と同様に、対向電極11の形成(STEP306)及びコンタクトCT1及びCT2の形成を行う(STEP307)。
【0075】
図9Bは、上記のような製造工程を経て製造された半導体基板10のトレンチの一部を拡大して示す断面図である。STEP305の熱アニール処理によって、ノンドープポリシリコン/ドープトポリシリコンの2層構造の膜全体が、ドープトポリシリコン化している。このため、半導体基板10の表面には不純物がドープされたポリシリコン膜14が2層分の膜厚に形成され、その表面に容量絶縁膜13が形成された状態となっている。
【0076】
本実施例では、ノンドープのポリシリコン膜12の表面に容量絶縁膜13を形成し、その後、ポリシリコン膜12が不純物のドープされたポリシリコン膜となるように、熱アニール処理を行っている。すなわち、容量絶縁膜13を形成する段階では、その下地表面はノンドープのポリシリコン膜12となっている。
【0077】
本実施例とは異なり、不純物がドープされたポリシリコン膜の表面に容量絶縁膜を直接形成すると、ポリシリコン膜の表面に不純物原子が出ている箇所において、局所的に容量絶縁膜の成膜特性が影響を受ける可能性がある。その結果、場合によっては容量絶縁膜の膜質が低下し、耐圧が低下する可能性がある。
【0078】
しかし、本実施例の製造方法によれば、容量絶縁膜13の形成時にはその下地表面はノンドープのポリシリコン膜12であるため、当該下地表面には不純物原子が出ていない。このため、不純物原子の影響による容量絶縁膜13の膜質の低下を避けることができる。
【0079】
そして、本実施例では、熱アニール処理によってノンドープのポリシリコン膜12を不純物のドープされたポリシリコン膜14に変化させている。このため、半導体装置の製造後には、実施例2と同様、対向電極12に印加する電圧によらず概ね一定の容量特性を得ることができる。
【0080】
また、本実施例の半導体装置では、ボッシュエッチによって凹凸構造を有するトレンチが形成され、トレンチの内壁を含む半導体基板の表面にポリシリコン膜14を介して容量絶縁膜13が形成されている。このため、実施例1及び実施例2と同様、トレンチキャパシタTCの単位面積当たりの容量を増大させつつ、容量絶縁膜の耐圧低下を抑えることが可能である。
【実施例4】
【0081】
次に、本発明の実施例4について説明する。
図10は、本発明の実施例2に係る半導体装置400の構成を示す断面図である。
【0082】
本実施例の半導体装置400では、半導体基板10の表面に形成されたポリシリコン膜14のうち、トレンチT1の内壁部分におけるポリシリコン膜(実施例3のポリシリコン膜14)の表面に粗面ポリシリコン膜が形成されている。これらは、一体としてポリシリコン膜15を構成している。粗面ポリシリコン膜は、表面が半球状のポリシリコン粒によって荒れたポリシリコン膜であり、例えばHSG-Si(hemispherical Grained Si)から構成されている。
【0083】
図11は、本実施例の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0084】
STEP401~403までの工程は、実施例3のSTEP301~303までの工程と同様である。すなわち、ボッシュエッチによってトレンチを形成した後(STEP401)、LP-CVD法により、半導体基板10の表面に不純物がドープされたポリシリコン膜14を形成する(STEP402)。そして、LP-CVD法により、ポリシリコン膜14の上にノンドープのポリシリコン膜12を形成する(STEP403)。
【0085】
次に、STEP403で形成されたポリシリコン膜12を平滑化し、ポリシリコン膜12の表面に粗面ポリシリコン膜を形成する(STEP404)。例えば、トレンチT1の内壁の表面にアモルファス化されたシリコン膜を形成する。そして、アモルファス化されたシリコン膜の表面にHSG処理を施すことにより、HSGからなる粗面ポリシリコン膜を形成する。
【0086】
次に、LP-CVD法により、粗面ポリシリコン膜の表面に窒化シリコン膜(SiN)を形成する(STEP405)。これにより、容量絶縁膜13が形成される。
【0087】
図12Aは、STEP405で容量絶縁膜13が形成された段階のトレンチの一部を拡大して示す断面図である。
【0088】
トレンチ内部における半導体基板10の表面には、不純物がドープされたポリシリコン膜14が形成され、さらにその表面にはノンドープのポリシリコン膜12が形成されている。そして、ポリシリコン膜12の表面には、粗面ポリシリコン膜16が形成されている。
【0089】
粗面ポリシリコン膜16は、例えば500~1000Åの凹凸を有する。すなわち、粗面ポリシリコン膜16の凹凸部分は、ボッシュエッチにより形成されるトレンチT1の内壁表面の凹凸構造(例えば、1~2μm)と比べて極めて小さい。
【0090】
再び
図11を参照すると、不純物がドープされたポリシリコン膜14、ノンドープのポリシリコン膜12、粗面ポリシリコン膜16、及び容量絶縁膜13が表面に順次形成された半導体基板10に対し、熱アニール処理を行う(STEP406)。これにより、ポリシリコン膜14中の不純物がポリシリコン12及び粗面ポリシリコン膜16に固相拡散し、ポリシリコン膜14、ポリシリコン膜12及び粗面ポリシリコン膜16が、いずれも不純物のドープされたポリシリコン膜となる。
【0091】
その後、実施例3と同様に、対向電極11の形成(STEP407)及びコンタクトCT1及びCT2の形成を行う(STEP408)。
【0092】
図12Bは、上記のような製造工程を経て製造された半導体基板10のトレンチの一部を拡大して示す断面図である。STEP406の熱アニール処理によって、ポリシリコン膜14、ポリシリコン膜12及び粗面ポリシリコン膜16が、一体としてドープトポリシリコン化し、表面に粗面ポリシリコンを含むポリシリコン膜15が形成される。
【0093】
本実施例の半導体装置400では、このような粗面ポリシリコンを含む表面(以下、粗表面と称する)を有するポリシリコン膜15が形成され、ポリシリコン膜15の表面に容量絶縁膜13が形成されている。したがって、容量絶縁膜13の下地表面にこのような粗表面が形成されていない場合と比べて、トレンチの表面積が大きい。
【0094】
また、粗面ポリシリコンの凹凸部分は、上記の通り、トレンチT1の側壁表面の凹凸構造と比べて、サイズが極めて小さい。したがって、トレンチT1の側壁表面の凹凸構造(“scallop”)による表面積拡大効果と、粗面ポリシリコンの凹凸部分による表面積拡大効果とは、重畳可能である。例えば、ボッシュエッチによって形成される凹凸構造による表面積拡大の効果が1.5倍、粗面ポリシリコンによる表面積拡大の効果が2倍であるとすると、これらを重畳した3倍の表面積拡大効果が得られる。
【0095】
また、ポリシリコン膜15の粗表面の凹凸は、ボッシュエッチによって発生する微細凹凸BU(すなわち、ポリシリコン膜15の下地表面の微細凹凸)のような鋭角な形状の部分を持たない。このため、ポリシリコン膜15の粗表面の凹凸を原因とする容量絶縁膜13の耐圧低下は生じない。
【0096】
したがって、本実施例の半導体装置400によれば、容量絶縁膜の耐圧低下を抑えつつ、トレンチキャパシタTCの単位面積当たりの容量をさらに増大させることが可能となる。
【0097】
なお、本発明は上記実施例で示したものに限られない。例えば、上記の各実施例では、ポリシリコンを用いて対向電極11を形成する場合を例として説明した。しかし、これに限られず、ポリシリコン以外の導電性を有する他の材料からなる導電層を用いて対向電極11を構成してもよい。
【0098】
また、上記の各実施例では、トレンチの凹凸構造における鋭角な形状の部分を覆うための半導体膜として、ポリシリコン膜(ノンドープのポリシリコン膜12又は不純物がドープされたポリシリコン膜14,15)を用いる場合について説明した。しかし、これに限られず、ポリシリコン膜以外の半導体膜を用いても良い。
【0099】
また、上記実施例では、実施例3及び実施例4において熱アニール処理を実行する例について説明した。しかし、実施例1及び実施例2の各々においても、容量絶縁膜13の形成後に熱アニール処理を実行してもよい。
【0100】
また、上記各実施例では、ボッシュエッチによりトレンチの側壁表面に形成される凹凸構造が、1~2μm程度の大きさの凹部を有する場合を例として説明した。しかし、凹部の大きさはこれに限られない。
【0101】
また、上記実施例4では、実施例3と同様の製造工程でポリシリコン膜12を形成した後、その表面に粗面ポリシリコン膜16を形成する場合を例として説明した。しかし、これに限られず、実施例1又は実施例2に粗面ポリシリコン膜を組み合わせて用いてもよい。例えば、実施例2のポリシリコン膜14の表面に粗面ポリシリコン膜16を形成し、熱アニール処理を施すことにより、全体として粗表面を有するポリシリコン膜を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0102】
100 半導体装置
10 半導体基板
11 対向電極
12 ポリシリコン膜
13 容量絶縁膜
14 ポリシリコン膜
15 ポリシリコン膜
16 粗面ポリシリコン膜