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特許7396979ウレタン基を有するポリマーを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ウレタン基を有するポリマーを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 71/04 20060101AFI20231205BHJP
   C08G 59/14 20060101ALI20231205BHJP
   C07D 327/04 20060101ALN20231205BHJP
【FI】
C08G71/04
C08G59/14
C07D327/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020508602
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2018071343
(87)【国際公開番号】W WO2019034473
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】17186544.7
(32)【優先日】2017-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ヨーゼフ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ハンネス ブラットマン
(72)【発明者】
【氏名】インドレ ティール
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02468791(EP,A1)
【文献】特開2007-178903(JP,A)
【文献】特開2010-237645(JP,A)
【文献】特表2020-531431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 71/00- 71/04
C08G 59/00- 59/72
C07D 327/04
CAplus/Registry(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の代替形態については、
少なくとも2個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物A)と、
第一級または第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有する化合物B)と、
任意で、-SH基と反応する少なくとも1個の官能基を有する化合物C)と
を反応させる、または第二の代替形態については、
少なくとも2個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物A)、または化合物A)と1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物A1)との混合物と、
第一級もしくは第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有する化合物B)、または第一級もしくは第二級アミノ基から選択される1個のアミノ基を有する化合物B1)、または化合物B)とB1)との混合物と、
-SH基と反応する少なくとも2個の官能基を有する化合物C)、または少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する化合物C)と
を反応させる、ウレタン基を有するポリマーを製造する方法であって、
第一の代替形態または第二の代替形態において、化合物A)が、式I:
【化1】
[式中、RまたはRが、Zへの結合基であり、前記基R~Rのうちの3個が、水素を表し、Zは、50個までの炭素原子を有するn価の有機基であり、かつ酸素を含んでいてもよく、nが、2~5の整数である]の化合物であり、
前記結合基が、単に結合部であるか、CH -O-基またはCH -O-C(=O)-基であり、
Zが、式G1:
(V-O-)
[式中、Vは、C2~C20アルキレン基を表し、mは、少なくとも1の整数であり、末端アルキレン基Vは、R またはR である前記結合基に結合されている]
のポリアルコキシレン基であるか、
Zが、式G2:
【化2】
[式中、Wは、
【化3】
から選択される、二価の有機基であり、R 10 ~R 17 は、互いに独立して、HまたはC1~C4アルキル基を表し、R 10 ~R 17 のうちの少なくとも6個が水素であり、Wに対してパラ位にある2個の水素原子は、R またはR である前記結合基への前記結合部と交換される]
の基であるか、または、
Zが、C2~C8アルキレン基である基G3であり、あるいは、
前記化合物A)が、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、およびジグリシジルオルトフタレートから選択されるグリシジルエステル由来の化合物であり、前記グリシジルエステルのすべてのエポキシ基が5員環状モノチオカーボネート基に変換されており、かつ、
存在する場合、-SHと反応する化合物C)の官能基は、非芳香族エチレン性不飽和基、エポキシ基、イソシアネート基、非芳香族炭素-窒素二重結合を有する基、カルボニル基、またはハロゲン化物から選択される、前記製造方法。
【請求項2】
nが2である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物Bが、少なくとも2個の第一級アミノ基を有する化合物B)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
-SHと反応する前記化合物C)の前記官能基が、非芳香族エチレン性不飽和基またはエポキシ基から選択される、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
-SHと反応する前記化合物C)の前記官能基がメタクリル基である、請求項記載の方法。
【請求項6】
前記第二の代替形態について、前記化合物A)およびA1)の溶液を使用する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
双方の代替形態について、前記反応が、1段階で、すべての化合物を同時に反応させることにより実施される、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
双方の代替形態について、前記反応が、2段階で、
前記第一の代替形態では、A)およびB)をまず反応させ、その後、得られた中間体をC)と反応させることにより、
前記第二の代替形態では、A)またはA)とA1)との混合物、およびB)またはB1)またはB)とB1)との混合物をまず反応させ、その後、得られた中間体をC)と反応させることにより
実施される、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
請求項1または2で定義される、少なくとも2個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物A)と、
第一級または第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有する化合物B)と、任意で
-SH基と反応する少なくとも1個の官能基を有する化合物C)と
を含む、
あるいは2種の前記化合物A)およびB)の反応生成物と、さらにC)とを含む、
硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1または2で定義される、少なくとも2個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物A)、または化合物A)と1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物A1)との混合物と、
第一級もしくは第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有する化合物B)、または第一級もしくは第二級アミノ基から選択される1個のアミノ基を有する化合物B1)、または化合物B)とB1)との混合物と、
-SH基と反応する少なくとも2個の官能基を有する化合物C)、または少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する化合物C)と
を含む、
あるいは前記化合物A)またはA)とA1)との混合物と、B)またはB1)またはB)とB1)との混合物との反応生成物と、さらにC)とを含む、
硬化性組成物。
【請求項11】
式I:
【化4】
[式中、RまたはRが、Zへの結合基であり、前記基R~Rのうちの3個が、水素を表し、Zは、50個までの炭素原子を有するn価の有機基であり、かつ酸素を含んでいてもよく、nが、2~5の整数である]
の化合物であり、前記結合基が、単に結合部であるか、CH -O-基またはCH -O-C(=O)-基であり、
Zが、式G1:
(V-O-)
[式中、Vは、C2~C20アルキレン基を表し、mは、少なくとも1の整数であり、末端アルキレン基Vは、R またはR である前記結合基に結合されている]
のポリアルコキシレン基であるか、
Zは、式G2:
【化5】
[式中、Wは、
【化6】
から選択される、二価の有機基であり、R 10 ~R 17 は、互いに独立して、HまたはC1~C4アルキル基を表し、R 10 ~R 17 のうちの少なくとも6個が水素であり、Wに対してパラ位にある2個の水素原子は、R またはR である前記結合基への前記結合部と交換される]
の基であるか、または、
Zが、C2~C8アルキレン基である基G3であり、あるいは、
前記化合物が、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、およびジグリシジルオルトフタレートから選択されるグリシジルエステル由来の化合物であり、前記グリシジルエステルのすべてのエポキシ基が5員環状モノチオカーボネート基に変換されている、前記化合物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、第一の代替形態については、
少なくとも2個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物A)と、
第一級または第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有する化合物B)と、
任意で、-SH基と反応する少なくとも1個の官能基を有する化合物C)と
を反応させる、または第二の代替形態については、
少なくとも2個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物A)、または化合物A)と1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物A1)との混合物と、
第一級もしくは第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有する化合物B)、または第一級もしくは第二級アミノ基から選択される1個のアミノ基を有する化合物B1)、または化合物B)とB1)との混合物と、
-SH基と反応する少なくとも2個の官能基を有する化合物C)、または-SH基と反応する官能基としての炭素-炭素三重結合の場合、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する化合物C)と
を反応させる、ウレタン基を有するポリマーを製造する方法である。
【0002】
ポリウレタンは、重要な工業用ポリマーである。ポリウレタンは、機械的特性が非常に良好であり、よって、多くの工業用途で使用される。ポリウレタンは、例えば、熱可塑性樹脂、発泡体またはコーティングとして、またはこれらの中で使用される。ポリウレタンは、イソシアネート基、特にジイソシアネートを有する化合物とジオールとを反応させることにより製造されることが一般的である。イソシアネート基を有する化合物は、反応性が高いことが一般的である。そのような反応性により感湿性が上昇し、これは幾つかの工業用途において問題となる。イソシアネート基を有する幾つかの化合物は、有害であると考えられ、皮膚接触または吸入時にアレルギーを引き起こすことがある。
【0003】
したがって、イソシアネート基を有する化合物の使用を回避する、ポリウレタンを製造する代替的な方法を見つける必要がある。
【0004】
国際公開第2013/144299号には、環状5員カーボネート環系(アルキリデン-1,3-ジオキソラン-2-オン)を有するラジカル重合性化合物が開示されている。ウレタン基は、これらの化合物またはそれらのポリマーとアミノ化合物とを反応させることにより形成される。国際公開第2011/157671号には、エポキシ樹脂において反応性希釈剤として使用するための類似した化合物が開示されている。しかしながら、そのような化合物の合成は煩雑である。合成に必要な前駆体は、市販で入手することができない。
【0005】
欧州特許出願公開第1506964号明細書および米国特許第6372871号明細書から、環状ジチオカーボネートが知られている。チオウレタン基(-NH-(C=S)-O)は、環状ジチオカーボネートとアミンとを反応させることにより得られる。ポリチオウレタンは、ポリウレタンの適切な代替物ではない。
【0006】
欧州特許出願公開第2468791号明細書の対象は、酸素および硫黄を含む5員環状環系を有する化合物を含むエポキシ組成物である。欧州特許出願公開第2468791号明細書で使用される化合物はジチオカーボネートである。欧州特許出願公開第2468791号明細書で引用されているJ.Org.Chem.1995、60、473~475には、ジチオカーボネートしか開示されていない。
【0007】
D.D.Reynolds、D.L.FieldsおよびD.L.Johnson、Journal of Organic Chemistry、1961、5111~5115頁には、5員環状チオカーボネート環系を有する化合物、およびその反応が開示されている。とりわけ、アミノ化合物との反応が述べられている。
【0008】
ウレタン基を有するポリマーを製造する代替的な方法を提供し、イソシアネート基を有する化合物の使用を回避することが、本発明の対象であった。さらに、ウレタン基を含むハイブリッドポリマー、例えばエポキシ樹脂系ハイブリッドポリマーを提供することも本発明の対象であった。ポリマーは、適度な温度と、例えば水またはアルコールとしての縮合副生成物の不足と、溶媒の不在または少なくとも溶媒量の低減とを含む、単純かつ効果的な製造方法により得られるべきである。得られるポリマーは、満足のいくまたはさらに改善された特性を有するべきであり、そのような特性は、例えば、機械的特性、光学的特性、UVとしての安定性、および防食性である。化学反応を容易に起こし、したがってポリマーの修飾または架橋を容易にする官能基を有するポリマーにも関心が注がれている。
【0009】
このようにして、上記の方法およびこの方法により得られるポリマーが発見された。
【0010】
化合物A)について
5員環状モノチオカーボネート基は、5員を有する環系であり、これらのうち3員は、モノチオカーボネート-O-C(=O)-S-からのものであり、さらなる2員は、5員環を閉鎖する炭素原子である。
【0011】
化合物A)は、例えば、1000個まで、特に500個まで、好ましくは100個までの5員環状モノチオカーボネート基を含んでいてもよい。
【0012】
好ましい実施形態において、化合物A)は、2~10個、特に2~5個の5員環状モノチオカーボネート基を含む。最も好ましい実施形態において、化合物A)は、2個または3個、特に2個の5員環状モノチオカーボネート基を含む。
【0013】
化合物A)は、例えば500,000g/molまでの分子量を有していてもよい。後者は、化合物A)が高分子化合物である場合に当てはまることがある。
【0014】
化合物A)は、多数の5員環状モノチオカーボネート基を含むポリマーまたはオリゴマーであってもよい。そのような化合物A)は、例えば、モノマーとエポキシ基とを重合もしくは共重合することにより、またはポリマーの官能基をエポキシ基に転化させ、その後、エポキシ基を5員環状モノチオカーボネート基に変換することにより得られる。さらなる化合物A)は、例えば、ノボラックとエピクロロヒドリンとを反応させてノボラックポリグリシジルエーテルを得て、ノボラックポリグリシジルエーテルのエポキシ基を5員環状モノチオカーボネート基に変換することにより得られるポリマーであってもよい。
【0015】
好ましい化合物A)は、1000g/molまでの分子量を有する。500g/molまでの分子量を有する化合物C)が最も好ましい。
【0016】
好ましい実施形態において、化合物A)は、第一級または第二級アミノ基を含まず、化合物C)について列挙した-SH基と反応する官能基を含まない。
【0017】
特に好ましい実施形態において、化合物A)は、モノチオカーボネート基、カルボン酸エステル基またはエーテル基以外の官能基を含まない。
【0018】
好ましい実施形態において、化合物A)は、式I:
【化1】
[式中、R~Rは、互いに独立して、水素を表すか、または50個までの炭素原子を有する有機基を表し、また代替的には、Rと、Rと、モノチオカーボネート基の2個の炭素原子が、5~10員の炭素環を一緒に形成してもよく、基R~Rのうちの1個は、Zへの結合基であり、nは、少なくとも2の整数を表し、Zは、n価の有機基を表す]
の化合物である。
【0019】
~Rのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は、好ましくは30個までの炭素原子を有する有機基である。さらなる好ましい実施形態において、RおよびRは、エポキシ基の2個の炭素原子と一緒には、5~10員の炭素環を形成しない。
【0020】
~Rのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は、炭素および水素以外の元素を含んでいてもよい。特に、これは、酸素、窒素、硫黄および塩化物を含んでいてもよい。好ましい実施形態において、有機基は、酸素または塩化物を含んでいてもよい。R~Rは、酸素を、例えば、エーテル基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、ケト基またはカルボキシ基の形態で含んでいてもよい。
【0021】
基R~Rのうちの1個は、Zへの結合基である。
【0022】
結合基は、単に結合部であるか、CH-O-基またはCH-O-C(=O)-基またはCH-NR20-基[式中、R20は、脂肪族基、特に最大20個の炭素原子を有するアルキル基]またはC(=O)-O-基またはR21-C(=O)-O-基[式中、R21は、有機基、好ましくは20個までの炭素原子を有する炭化水素基]であることが好ましい。
【0023】
結合基は、単に結合部であるか、CH-O-基またはCH-O-C(=O)-基であることがより好ましい。
【0024】
最も好ましい実施形態において、結合基はCH-O-基である。
【0025】
式I中の基R~Rのうちの2個または3個が水素であることが好ましい。
【0026】
最も好ましい実施形態において、基R~Rのうちの3個は、水素を表し、R~Rのうちの残基は、Zへの結合基である。
【0027】
最も好ましい実施形態において、基RまたはRは、Zへの結合基である。
【0028】
nは、少なくとも2の整数を表す。例えば、nは、2~1000、特に2~100、または2~10、特に2~5の整数であってもよい。
【0029】
好ましい一実施形態において、nは、少なくとも3、好ましくは3~5である。
【0030】
最も好ましい実施形態であるさらなる好ましい実施形態において、nは2である。
【0031】
Zは、n価の有機基を表す。nが、例えば10~1000のように大きな数字である場合、Zは、例えば重合または共重合、例えばエチレン性不飽和モノマーのラジカル重合により、重縮合により、または重付加により得られるポリマー基、特にポリマー骨格であってもよい。例えば、ポリエステルまたはポリアミドは、水またはアルコールを除去しながら重縮合により得られ、ポリウレタンまたはポリ尿素は、重付加により得られる。
【0032】
式Iのそのような化合物は、例えば、モノチオカーボネート基を含むエチレン性不飽和モノマー、またはエポキシ基を含むモノマーをラジカル重合または共重合して、その後、これをモノチオカーボネート基に変換することにより得られるポリマーである。
【0033】
好ましい実施形態において、Zは、50個までの炭素原子、特に30個までの炭素原子を有し、かつ炭素および水素以外の元素を含み得るn価の有機基であり、nは、2~5、特に2または3、最も好ましくは2の整数である。
【0034】
特に好ましい実施形態において、Zは、50個までの炭素原子、特に30個までの炭素原子を有し、かつ炭素、水素および任意で酸素のみを含み、さらなる元素を含まないn価の有機基であり、nは、2~5、特に2または3、最も好ましくは2の整数である。
【0035】
好ましい実施形態において、Zは、式G1:
(V-O-)
[式中、Vは、C2~C20アルキレン基を表し、mは、少なくとも1の整数である]
のポリアルコキシレン基である。末端アルキレン基Vは、基R~Rのうちの1個である結合基に結合されるが、先を参照されたい。
【0036】
C2~C20アルキレン基は、C2~C4アルキレン基、特にエチレンまたはプロピレンであることが好ましい。mは、例えば、1~100、特に1~50の整数であってもよい。
【0037】
さらなる好ましい実施形態において、Zは、式G2:
【化2】
[式中、Wは、最大10個の炭素原子を有する二価の有機基であり、nは2であり、R10~R17は、互いに独立して、HまたはC1~C4アルキル基を表し、Wに対してパラ位にある2個の水素原子は、基R1b~R4bのうちの1個である結合基への結合部と交換されるが、先を参照されたい]
の基である。
【0038】
10~R17のうちの少なくとも6個が水素であることが好ましい。最も好ましい実施形態において、R10~R17のすべてが水素である。
【0039】
基Wは、例えば、
【化3】
である。
【0040】
Wは、炭素および水素のみから成る有機基であることが好ましい。
【0041】
最も好ましいWは、
【化4】
であり、これは、ビスフェノールAの構造に相応する。
【0042】
さらなる好ましい実施形態において、Zは基G3であり、ここで、G3は、アルキレン基、特にC2~C8アルキレン基を表し、そのようなアルキレン基の好ましい例は、エチレン(CH-CH)、n-プロピレン(CH-CH-CH)、特にn-ブチレン(CH-CH-CH-CH)である。
【0043】
少なくとも2個の5員環状モノチオカーボネート基を有する好ましい化合物の例は、特に、以下のエポキシ化合物のすべてのエポキシ基を5員環状モノチオカーボネート基に変換することにより得られる化合物である。
【0044】
非グリシジルエポキシド:
1,2:5,6-ジエポキシヘキサヒドロ-4,7-メタノインダン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、1,4-シクロヘキサンジメタノールビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4-ビニルシクロヘキセンジオキシド、1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタン、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、ジシクロペンタジエンジオキシド、エポキシ化された植物油またはその誘導体、例えばダイズ油またはその誘導体。
【0045】
グリシジルエーテル:
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)、水素化BADGE、その他のジオール、トリオール、テトラオールおよびポリオールのグリシジルエーテル、例えば、ブタンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、イソソルビドジグリシジルエーテル、メチルフェニルプロパンジオールジグリシジルエーテル。これは、オリゴマー状/ポリマー状のグリシジルエーテル、例えば、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ビスフェノールAと過剰なエピクロロヒドリンとを反応させることにより得られるオリゴマーまたはポリマーも含む。
【0046】
グリシジルエステル:
テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、ジグリシジルオルトフタレート
グリシジルアミン:
N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、テトラグリシジルメチレンジアニリン
グリシジルイミド:
トリグリシジルイソシアヌレート
化合物A)の合成について
1個のモノチオカーボネート基を有する化合物を合成する幾つかの方法は、従来技術に記載されている。
【0047】
米国特許第3072676号明細書および米国特許第3201416号明細書によると、エチレンモノチオカーボネートは、2段階の方法で製造することが可能である。第一の段階では、メルカプトエタノールとクロロカルボキシレートとを反応させてヒドロキシエチルチオカーボネートを生成し、第二の段階でこれを金属塩触媒の存在下で加熱して、エチレンモノチオカーボネートにする。
【0048】
米国特許第3517029号明細書によると、アルキレンモノチオカーボネートは、メルカプトエタノールと炭酸ジエステルとをトリウムの触媒活性塩の存在下で反応させることにより得られる。
【0049】
米国特許第3349100号明細書に開示されている方法によると、アルキレンモノチオカーボネートは、エポキシドと硫化カルボニルとを反応させることにより得られる。硫化カルボニルの利用性は限定されている。得られるアルキレンモノチオカーボネートの収率および選択率は低い。
【0050】
ホスゲンを出発材料として使用する合成は、米国特許第2828318号明細書から知られている。ホスゲンは、ヒドロキシメルカプタンと反応させられる。モノチオカーボネートの収率はなおも低く、重合による副生成物が観察される。
【0051】
化合物A)、特に式Iの化合物を製造する好ましい方法は、
a) 少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(略してエポキシ化合物と称する)を出発材料として使用し、
b) この化合物をホスゲンまたはアルキルクロロホルマートと反応させ、それにより付加物を生成し、
c) この付加物を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させ、少なくとも2個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物を生成する、
方法である。
【0052】
第一の方法段階b)では、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物をホスゲンまたはアルキルクロロホルマートと反応させ、それにより付加物を生成する。これをホスゲンと反応させることが好ましい。ホスゲンという用語は、いかなるホスゲン代替物も含み、ホスゲン代替物とは、ホスゲンを遊離させる化合物である。ホスゲン代替物は、例えばトリホスゲンである。以下で、反応物としてのRで置換された特定のエポキシ化合物とホスゲンとについて、b)の反応を例示的に示す。
【0053】
【化5】
【0054】
β-クロロアルキルクロロホルマートの2種の構造異性体であるT1およびT2が得られる。この方法の利点は、この生成物が、構造異性体について高い選択率を有することである。特に、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、通常少なくとも95%の付加物が、異性体T1に相応する。
【0055】
少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物をホスゲンまたはアルキルクロロホルマートと任意の化学量論比で反応させてもよい。少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物が非常に大過剰になることを回避することが好ましい。というのも、そのように大過剰であると、未反応の開始化合物の量が多くなり、得られた生成物組成物の後処理においてこれらを除去する必要があるからである。
【0056】
ホスゲンまたはクロロホルマートを、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物の各エポキシ基1molあたり、0.1~5mol、特に0.5~2molの量で使用することが好ましい。特に好ましい実施形態において、ホスゲンまたはクロロホルマートは、過剰に使用される。
【0057】
少なくとも等モル量のホスゲンまたはクロロホルマートを用いて、未反応のままのエポキシ基を回避することができる。したがって、好ましい実施形態において、ホスゲンまたはクロロホルマートは、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物の各エポキシ基1molあたり、0.9~5mol、より好ましくは1~2mol、特に1~1.5molの量で使用される。
【0058】
ホスゲンおよびクロロホルマートは、式II:
【化6】
[式中、Xは、ホスゲンの場合Clであり、またはクロロホルマートの場合O-R基であり、RはC1~C4アルキル基を示す]
の化合物であることが好ましい。
【0059】
好ましい実施形態では、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物をホスゲンと反応させる。
【0060】
この反応を触媒の存在下で実施することが好ましい。適切な触媒は、第四級アンモニウムカチオンを有する塩、例えば、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、特に塩化物、例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、またはトリオクチルメチルアンモニウムクロリドである。
【0061】
さらなる適切な触媒は、例えば、ヘキサアルキルグアニジニウムハロゲン化物、特に塩化物、第四級ホスホニウムハロゲン化物、特に塩化物、ピリジン、または窒素を含む環系を有するその他の化合物、例えば、イミダゾールまたはアルキル化イミダゾールである。
【0062】
好ましい触媒は、第四級アンモニウムカチオンを有する塩、特にテトラアルキルアンモニウムの塩、例えば塩化テトラ(n-ブチル)アンモニウムである。
【0063】
触媒を、各エポキシ基1molあたり、0.001~0.1molの量、特に0.005~0.05molの量で使用することが好ましい。
【0064】
ホスゲンまたはアルキルクロロホルマートを、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物に添加することが好ましい。この反応は発熱性であるため、ホスゲンまたはアルキルクロロホルマートの添加を、反応混合物の温度が望ましい値に維持されるようにゆっくりと行うことが好ましい。反応混合物を添加の間に冷却することが好ましい。
【0065】
反応混合物の温度を、-40~60℃、特に5~50℃に維持することが好ましい。
【0066】
少なくとも1個のエポキシ基を有する低分子化合物は、液体状であることが一般的であり、したがって、さらなる溶媒は必要とされない。少なくとも1個のエポキシ基を有する21℃で固体状の化合物の場合に溶媒を使用することが好ましい。適切な溶媒は、特に非プロトン性溶媒である。適切な溶媒は、例えば、芳香族炭化水素および塩素化炭化水素を含む炭化水素である。
【0067】
エポキシ基を有する固体状化合物に好ましい溶媒は、エポキシ基を有するさらなる液体状化合物である。液体状化合物は、エポキシ基を1個のみ有する化合物であることが好ましい。液体状化合物は、固体状化合物と一緒になって、方法段階b)およびc)に記載のように反応を起こす。液体状化合物から得られるモノチオカーボネートも、通常は同様に液体状であり、よって、少なくとも2個のエポキシ基を有す固体状化合物から得られる少なくとも2個の5員モノチオカーボネート基を有する最もあり得る固体状化合物の溶媒としても機能し得るだろう。
【0068】
この反応が完了したら、未反応のホスゲンまたはクロロホルマートを蒸留により混合物から除去してもよい。さらなる後処理は必要ではない。
【0069】
得られる生成物混合物は、少なくとも2個のβ-クロロアルキルクロロホルマート基を有する化合物を含む。次の方法段階が直ちに続いてもよい。
【0070】
第二の方法段階c)であるモノチオカーボネート基の形成
以下で、反応物としてのRで置換された特定のエポキシ化合物とホスゲンとについて、b)の反応を例示的に示す。先で形成されたβ-クロロアルキルクロロホルマートで出発して、反応物としてのNaSについて、第二の方法段階c)を以下の通り例示的に示すことができる:
【化7】
【0071】
この段階では、第一の段階で得られる構造異性体T1およびT2の比、したがって選択率が維持される。
【0072】
b)で得られる生成物混合物を、さらなる後処理なしに方法段階c)で使用することが好ましい。
【0073】
段階c)では溶媒を添加してもよい。適切な溶媒は、特に非プロトン性溶媒である。適切な溶媒は、例えば、芳香族炭化水素および塩素化炭化水素を含む炭化水素であるか、または親水性非プロトン性溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル、グリムのようなポリエーテル、アセトニトリル、もしくはジメチルスルホキシドである。
【0074】
段階b)からの生成物混合物を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させる。アニオン性硫黄を含む化合物は、塩であることが好ましい。
【0075】
アニオン性硫黄は、S2-、式(S2-のポリスルフィドであることが好ましく、pは、2~200、好ましくは2~10の整数、またはHS1-である。
【0076】
この塩のカチオンは、有機カチオンであっても、または無機カチオンであってもよい。これは、無機カチオン、特に金属であることが好ましい。一般的な金属カチオンは、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えばナトリウムまたはカリウムのカチオンである。
【0077】
好ましい塩は、NaS、KS、NaSHもしくはKSH、またはそれらの水和物である。
【0078】
この塩を、塩基性化合物、特に金属水酸化物、例えば、特にNaOHまたはKOHと組み合わせて使用してもよい。SHをアニオンとして有する塩の場合に、そのようなさらなる塩基性化合物を使用することが好ましい。
【0079】
また、硫黄から、または硫黄を非イオン形態で含む化合物から出発して、アニオン性硫黄をその場で生成してもよい。例えば、HSをアニオン性硫黄源として使用してもよい。塩基性化合物、例えばNaOH(上記参照)が存在する場合、アニオン性硫黄は、HSからその場で得られる。
【0080】
アニオン性硫黄を有する塩、またはアニオン性硫黄をその場で生成する化合物(本明細書ではともに硫黄化合物と称される)を、b)で得られる生成物混合物に添加することが好ましい。硫黄化合物を、そのまま添加しても、または、例えば水のような適切な溶媒に入れた溶液として添加してもよい。本発明の好ましい実施形態では、硫黄化合物を、溶媒、特に水に溶解させ、この溶液を添加する。
【0081】
硫黄化合物を水溶液として添加する場合、有機相と水相とを含む二相系が得られ、反応は、そのような二相系中で起こる。代わりに単相系が望まれる場合、水相と有機相とを1つの相に再び合するための媒介として機能する適切な溶媒を添加してもよい。適切な溶媒は、親水性非プロトン性溶媒、例えば先に列挙した親水性非プロトン性溶媒であってもよい。
【0082】
この反応も同様に発熱性であるため、塩または塩溶液の添加を、反応混合物の温度が望ましい値に維持されるようにゆっくりと行うことが好ましい。反応混合物を添加の間に冷却することが好ましい。
【0083】
反応混合物の温度を、-40~60℃、特に-10~50℃に維持することが好ましい。
【0084】
塩を、少なくとも2個のβ-クロロアルキルクロロホルマート基を有する化合物の各β-クロロアルキルクロロホルマート基1molあたり0.5~2.0molの量で添加することが好ましい。
【0085】
塩を、少なくとも2個のβ-クロロアルキルクロロホルマート基を有する化合物の各β-クロロアルキルクロロホルマート基1molあたり1.0~2.0molの量で添加することが好ましい。
【0086】
最も好ましい実施形態では、すべてのβ-クロロアルキルクロロホルマート基の迅速かつ完全な反応を達成するのに著しく過剰な塩は必要とされないため、塩を、少なくとも2個のβ-クロロアルキルクロロホルマート基を有する化合物の各β-クロロアルキルクロロホルマート基1molあたり1.0~1.3molの量で添加する。
【0087】
塩との反応により、β-クロロアルキルクロロホルマート基は、5員環状モノチオカーボネート基に変換される。5員環系は、3個の炭素原子、1個の酸素および1個の硫黄から形成され、ここで、さらなる酸素が、環系の酸素と硫黄との間に位置する炭素原子に二重結合している。
【0088】
必要に応じて、第二の方法段階を触媒の存在下で実施してもよい。そのような触媒は、例えば、アンモニウム塩、複素環式アンモニウム塩およびホスホニウム塩のような相間移動触媒である。
【0089】
c)で得られる最終生成物を、親水性溶媒、好ましくは水で抽出することにより後処理してもよい。アニオン性硫黄の上記の塩を水溶液の形態で使用した場合、さらなる水は必要とされなくてもよい。有機相および水相を分離する。有機相を、好ましくは4~10のpH、特に少なくとも7のpHを有する水で洗浄してもよい。有機相は、少なくとも2個のモノチオカーボネート基を有する化合物を含む。水相は、未反応の硫化物/硫化水素塩および/またはNaCl、ならびに少なくとも部分的に添加された触媒を含む。
【0090】
溶媒を蒸留により有機相から除去してもよい。少なくとも2個の5員環状モノチオカーボネート基を有する得られた化合物を、蒸留によりさらに精製しても、またはさらなる精製なしで使用してもよい。
【0091】
化合物A1)について
5員環状モノチオカーボネートA1)は、1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物である。5員環状モノチオカーボネート基は、5員を有する環系であり、これらのうち3員は、モノチオカーボネート-O-C(=O)-S-からのものであり、さらなる2員は、5員環を閉鎖する炭素原子である。
【0092】
モノチオカーボネートは、ヘテロ原子、例えば、酸素、硫黄、窒素、または塩化物、またはケイ素を、例えば、エポキシ基、エーテル基、ヒドロキシ基、ケトもしくはアルデヒドもしくはエステル基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、チオエーテルもしくはチオール基、または第三級アミノ基、またはケイ素官能基から選択される官能基の形態でさらに含んでいてもよい。好ましい実施形態において、モノチオカーボネートは、モノチオカーボネート基の他に、最大1個のさらなる官能基を有する。
【0093】
モノチオカーボネートは、104g/mol~例えば100,000g/molの分子量を有していてもよい。後者は、モノチオカーボネートが、高分子化合物、例えば1個のモノチオカーボネート基のみを含むポリマーである場合に当てはまることがある。好ましいモノチオカーボネートは、104g/mol~5000g/molの分子量を有する。104g/mol~1000g/molの分子量を有するモノチオカーボネートがより好ましく、104g/mol~500g/molの分子量を有するモノチオカーボネートが最も好ましい。
【0094】
好ましい実施形態において、化合物A1)は、第一級または第二級アミノ基を含まず、化合物C)について列挙した-SH基と反応する官能基を含まない。
【0095】
特に好ましい実施形態において、化合物A1)は、モノチオカーボネート基、カルボン酸エステル基またはエーテル基以外の官能基を含まない。
【0096】
式III:
【化8】
[式中、R1a~R4aは、互いに独立して、水素を表すか、または50個までの炭素原子を有する有機基を表し、また代替的には、R2aと、R4aと、チオカーボネート基の2個の炭素原子とが、5~10員の炭素環を一緒に形成してもよい]
のモノチオカーボネートが好ましい。
【0097】
1a~R4aのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は、好ましくは30個までの炭素原子、より好ましくは20個までの炭素原子を有する有機基である。さらなる好ましい実施形態において、R2aおよびR4aは、チオカーボネート基の2個の炭素原子と一緒には、5~10員の炭素環を形成しない。
【0098】
1a~R4aのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は、先に列挙したヘテロ原子および官能基を含んでいてもよい。特に、これは、酸素、窒素、硫黄、ケイ素および塩化物を含んでいてもよい。好ましい実施形態において、有機基は、酸素または塩化物を含んでいてもよい。R1a~R4aは、酸素を、例えば、エーテル基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、ケト基またはカルボキシ基の形態で含んでいてもよい。好ましい実施形態において、有機基は、酸素、窒素または塩化物、特に酸素を含み得る、30個までの炭素原子を有する脂肪族有機基である。
【0099】
より好ましい実施形態において、有機基は、アルキル基、-CH-O-R5a基、または-CH-O-C(=O)-R6a基、または-CH-NR7a8a基から選択され、R5a~R8aは、30個までの炭素原子、好ましくは20個までの炭素原子を有する有機基である。特に、R5a~R8aは、酸素を、例えばエーテル基の形態で含み得る脂肪族基または芳香族基を表す。好ましい実施形態において、R5a~R8aは、脂肪族炭化水素基、例えば1~10個の炭素原子を有するアルキル基、アルコキシ基、またはポリアルコキシ基を表す。最も好ましい実施形態において、R5a~R8aは、脂肪族炭化水素基、特に1~10個の炭素原子を有するアルキル基を表す。
【0100】
最も好ましい実施形態において、有機基は、-CH-O-R5a基または-CH-O-C(=O)-R6a基である。
【0101】
式III中のR1a~R4aのうちの2個~4個すべてが水素を表し、R1a~R4aのうちの残基が有機基を表すことが好ましい。
【0102】
式III中のR1a~R4aのうちの2個および/または3個が水素を表し、R1a~R4aのうちの残基が有機基を表すことがより好ましい。
【0103】
式III中のR1a~R4aのうちの3個が水素を表し、R~Rのうちの残基が有機基を表すことが最も好ましい。好ましい実施形態において、R1aまたはR2aは、有機基を表す残基である。
【0104】
好ましいモノチオカーボネートとしては、以下のものを挙げることができる:
【化9】
【0105】
化合物A1)を、化合物A)について先に記載した方法と同じ方法により製造してもよく、ただ1つの違いは、1個のエポキシ基を有する化合物を出発材料として使用したことである。
【0106】
したがって、A1)を合成する方法は、
- 1個のエポキシ基を有する化合物を出発材料として使用する段階、
b) この化合物をホスゲンまたはアルキルクロロホルマートと反応させ、それにより付加物を生成する段階、および
c) この付加物を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させ、1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物を生成する段階
を含む。
【0107】
化合物A)についての上記の方法のさらなる詳細は、A1)を合成する方法にも当てはまる。
【0108】
化合物B)について
化合物B)は、第一級または第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有する化合物である。本特許出願において、アミノ基という用語は、他に示されていないか、または本内容から別のように解釈されることが明らかでない場合、第一級または第二級アミノ基を意味するべきである。
【0109】
化合物B)は、例えば500,000g/molまでの分子量を有していてもよい。後者は、化合物B)が、高分子化合物、例えばアミノ基を含むポリマーである場合に当てはまることがある。
【0110】
好ましい化合物B)は、1000g/molまでの分子量を有する。60g/mol~500g/molの分子量を有する化合物B)が最も好ましい。
【0111】
好ましい実施形態において、化合物B)は、いずれのモノチオカーボネート基も含まず、化合物C)について列挙した-SH基と反応するいずれの官能基も含まない。
【0112】
特に好ましい実施形態において、化合物B)は、第一級または第二級アミノ基、カルボン酸エステル基またはエーテル基以外の官能基を含まない。
【0113】
化合物B)は、例えば、1000個までのアミノ基、特に500個までのアミノ基、好ましくは100個までのアミノ基を有していてもよい。ポリマー化合物B)、例えば、直鎖状もしくは分枝鎖状ポリビニルアミン、またはポリエチレンイミン、またはポリリジンを用いる場合、アミノ基が多数であり得る。
【0114】
好ましい実施形態において、化合物B)は、2~10個のアミノ基、好ましくは2個または3個のアミノ基を含み、最も好ましい実施形態において、化合物B)は、2個のアミノ基を含む。
【0115】
好ましい実施形態において、アミノ基のうちの少なくとも1個は、第一級アミノ基である。
【0116】
特に好ましい実施形態において、アミノ基のうちの少なくとも2個は、第一級アミノ基である。
【0117】
最も好ましい実施形態において、化合物B)は、2個の第一級アミノ基を有する化合物である。
【0118】
適切な化合物B)は、例えば、
アルキレンジアミンまたはアルキレンポリアミン、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンタンジアミン、オクタメチレンジアミン、1,3-ジアミノペンタン、2-メチルペンタン-1,5-ジアミン
エーテル基を含むアルキレンジアミンまたはアルキレンポリアミン(ポリエーテルアミン)、例えば、ポリグリコールジアミン、オキシプロピレンジアミンまたはポリオキシプロピレンジアミンである。
【0119】
2個のアミノ基を有するアミノ酸は、例えば、リジンおよびオルニチンである。
【0120】
その他のジアミンは、例えば、4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン、4,9-ジオキサドデカン-1,12-ジアミン、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジアミン、4,7-ジオキサ-1,10-デカンジアミン、またはアミノエチルエタノールアミン、
脂環式ジアミン、例えば、シクロヘキシルジアミン、例えば、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1-メチル-2,4-ジアミノシクロヘキサン、1-メチル-2,6-ジアミノシクロヘキサンまたはこれらの混合物、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,5-ビスアミノメチルテトラヒドロフラン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン
芳香族ジアミン、例えば、1,2-フェニレンジアミンまたは1,4-フェニレンジアミン、トルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、2,5-ビスアミノメチルフラン、
第一級および第二級アミノ基を有するアミノ化合物、例えば、N-アミノエチルピペラジン、ジアルキレントリアミンまたはポリアルキレントリアミン、例えば、ジエチレントリアミンまたはトリエチレンテトラミン、ジプロピレントリアミン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミン、脂肪ジアミンである。
【0121】
2個より多くのアミノ基を有するさらなる化合物B)は、例えば、ポリイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリリジン、TMP系ポリエーテルアミン、Di-TMP、グリセロール、ペンタエリトリット、ポリグリセロール、グルコサミン、エポキシアミン(モル過剰のジアミノ化合物+エポキシ樹脂からのもの)、3-(2-アミノエチル-1,5-ペンタンジアミン、3,3’,3’’-トリアミノトリプロピルアミン、ポリアミドアミン、アミノアルキルメラミン、アミノ官能化された無機ハイブリッド材料、例えば金属有機骨格である。
【0122】
また、化合物Bを、アミノ基が保護基で保護された形態で使用してもよい。必要または所望された際にはすぐに、保護基は除去され、それにより、遊離アミノ基を有する上記の化合物B)が得られる。保護基の除去は、反応条件下で行われることが一般的である。アミノ基の場合、一般的な保護されたアミノ基は、例えば、ケタミン、アルジミン、イミダゾリジン、オキサゾリジン、ルイス酸錯体化アミン(lewis acid complexed amine)、カルバメート、ベンジルオキシカルボニルアミン、アシルオキシム、ホルマニリジン(formanilidine)である。脱保護反応は、例えば、温度、光、pHまたは水/湿度の存在により引き起こすことが可能である。
【0123】
化合物B1)について
化合物B1)は、第一級または第二級アミノ基のいずれかであるアミノ基を1個のみ有する化合物である。
【0124】
これは、第一級アミノ基であることが好ましい。
【0125】
好ましい化合物B1)は、最大1000g/mol、特に最大500g/molの分子量を有する。
【0126】
好ましい実施形態において、化合物B1)は、いずれのモノチオカーボネート基も含まず、化合物C)について列挙した-SH基と反応するいずれの官能基も含まない。
【0127】
特に好ましい実施形態において、化合物B1)は、第一級または第二級アミノ基、カルボン酸エステル基またはエーテル基以外の官能基を含まない。
【0128】
化合物B1は、例えば、第一級アミノ基を有するモノアルキルアミン、例えばC1~C20アルキルアミンもしくはシクロアルキルアミン、またはエーテルアミン、例えば2-メトキシエチルアミンもしくは3-メトキシプロピルアミン、またはジエーテルアミンもしくはポリエーテルアミン、例えばジグリコールアミンもしくはポリグリコールアミン、ポリオキシプロピレンアミンである。
【0129】
また、化合物B1は、第三級アミノ基を含んでいてもよく、例えば、(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3-(ジエチルアミノ)プロピルアミン、2-(ジエチルアミノ)エチルアミンである。
【0130】
化合物B1は、-SHと反応しない官能基、例えば、炭素酸基またはヒドロキシ基またはシリル基を含んでいてもよい。
【0131】
シリル基を有する化合物B1は、例えば(トリアルコキシシリル)アルキルアミンである。スルホン酸基を有する化合物B1はタウリンである。
【0132】
アミノアルコールは、例えば、エタノアミン(ethanoamine)、イソプロパノールアミン、エチルエタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、3-アミノ-1-プロパノール、5-アミノ-1-プロパノール、ヒドロキシエチルピペラジンである。
【0133】
化合物C)について
化合物C)は、第一の代替形態の場合、-SH基と反応する少なくとも1個の官能基を含み、第二の代替形態の場合、-SH基と反応する少なくとも2個の官能基を含む。官能基の性質に関する以下の開示は、双方の代替形態に当てはまる。
【0134】
化合物C)は、例えば500,000g/molまでの分子量を有していてもよい。後者は、化合物C)が、高分子化合物、例えば-SH基と反応する官能基を含むポリマーである場合に当てはまることがある。
【0135】
好ましい化合物C)は、1000g/molまでの分子量を有する。60g/mol~500g/molの分子量を有する化合物C)が最も好ましい。
【0136】
化合物C)は、例えば、-SH基と反応する官能基を1000個まで、特に-SH基と反応する官能基を500個まで、好ましくは100個まで有していてもよい。
【0137】
好ましい実施形態において、化合物C)は、-SH基と反応する官能基を2~10個含む。
【0138】
最も好ましい実施形態において、化合物C)は、-SH基と反応する官能基を2個または3個含む。
【0139】
好ましい実施形態において、-SH基を有する化合物C)の官能基の反応により、硫黄-炭素結合が形成される。
【0140】
-SH基を有するC)の官能基の反応は、付加反応、縮合反応または求核置換反応であり得る。
【0141】
-SH基と付加反応を起こす化合物C)は、例えば、非芳香族エチレン性不飽和基を有する化合物であるか、またはエポキシ基を有する化合物であるか、またはイソシアネート基を官能基として有する化合物である。非芳香族エチレン性不飽和基は、非芳香族炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合である。
【0142】
三重結合は、-SHと2回反応することが可能である。第一の反応において、-SH基は三重結合に付加反応を起こし、それにより、三重結合は二重結合になる。形成された二重結合は、さらなる-SH基と反応することが可能である。したがって、1個の三重結合は、-SH基と反応する官能基2個と等価である。
【0143】
-SH基と縮合反応を起こす化合物C)は、例えば、カルボニル基を官能基として有する化合物、例えば、モノカルボニル化合物またはジカルボニル化合物、例えばジアルデヒドまたはジケトンである。
【0144】
-SH基と求核置換反応を起こす化合物C)は、例えば、ハロゲン化物、特に塩化物を官能基として有する化合物である。
【0145】
好ましい実施形態において、化合物C)は、第一級または第二級アミノ基を含まず、モノチオカーボネート基を含まない。
【0146】
特に好ましい実施形態において、化合物C)は、-SH基と反応する官能基、カルボン酸エステル基またはエーテル基から選択される官能基以外の官能基を含まない。
【0147】
-SHと反応する化合物C)の官能基は、非芳香族エチレン性不飽和基、エポキシ基、イソシアネート基、非芳香族炭素-窒素二重結合を有する基、カルボニル基、またはハロゲン化物から選択されることが好ましい。
【0148】
-SHと反応する化合物C)の官能基は、非芳香族エチレン性不飽和基またはエポキシ基から選択されることがより好ましい。
【0149】
-SHと反応する化合物C)の官能基は、非芳香族エチレン性不飽和基であることが最も好ましい。
【0150】
本発明の特定の好ましい一実施形態において、-SHと反応する化合物C)の官能基は、メタクリル基である。
【0151】
本発明の一実施形態において、エポキシ基は、-SHと反応する化合物C)の官能基としては除外される。
【0152】
エチレン性不飽和基を官能基として有する化合物C)について
本明細書における1個の不飽和基を有する化合物C)はモノマーと称され、本明細書における少なくとも2個の不飽和基を有する化合物C)はオリゴマーと称され、そのようなオリゴマーは、好ましくは2~10個、特に2個または3個の不飽和基を含む。
【0153】
非芳香族炭素-炭素二重結合または三重結合から選択される不飽和基を有する化合物C)は、ラジカル、カチオンまたはアニオン重合機構により重合可能であることが好ましい。
【0154】
好ましい実施形態において、化合物C)の不飽和基は、非芳香族炭素-炭素二重結合である。
【0155】
好ましい化合物C)は、非芳香族炭素-炭素二重結合が、ビニル基CH=CH-;ビニレン基-CH=CH-、不飽和カルボニル基CH=CR-C(=O)-[式中、R=H、アルキル];アクリル基CH=CH-C(=O)-O-;メタクリル基CH=C(CH)-C(=O)-O、アクリルアミド基CH=CH-C(=O)-N、またはシアナクリル基CH=C(CN)-C(=O)-O、またはメチレンマロネート基CH=C[-C(=O)-O]、またはビニレン-1,3-ジカルボニル基CH=C[-C(=O)-]、または1,4-ジカルボキシアルキレン基-O(O=)C-CH=CH-C(=O)O-]、アリル基CH=CH-CH-、特にアリルエーテルCH=CH-CH-O-、またはマレイミド基、またはクロトニル基であるものである。
【0156】
好ましいモノマーは、アクリル化合物またはメタクリル化合物、ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ビニルエーテル、ビニルラクタム、例えばN-ビニルピロリドン、スチレンとしてのビニル芳香族化合物、塩化ビニルもしくはフッ化ビニルとしてのハロゲン化ビニル、または1個の炭素-炭素二重結合を有するオレフィン、例えば、エチレン、プロピレンである。
【0157】
以下では、「(メタ)アクリル」という用語を使用する。「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル基またはメタクリル基を指し、(メタ)アクリル化合物とは、アクリル基もしくはメタクリル基または双方を含む化合物である。
【0158】
アクリル化合物またはメタクリル化合物またはビニルエーテルを有するモノマーが特に好ましい。アクリル化合物またはメタクリル化合物は、例えば、(メタ)アクリルエステル、特にアルキルもしくはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルニトリル、または(メタ)アクリル酸である。ビニルエーテルは、例えばビニルアルキルエーテルである。
【0159】
三重結合を有する化合物Cは、例えば、アセチレンもしくはプロピンのようなアルキン、プロピン/アレンの混合物、またはプロパルギルアルコール、プロパルギルアルコールエーテルもしくはプロパルギルアルコールエステルである。
【0160】
好ましいオリゴマーは、特に、少なくとも2個のアクリル基もしくはメタクリル基、少なくとも2個のビニル基または少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を有するオレフィンを有する化合物、不飽和ポリエステル、あるいは少なくとも2個の不飽和基により置換されたシアヌレートまたはイソシアヌレートである。
【0161】
2個の炭素-炭素二重結合を有するオレフィンは、例えば、ブタジエン、シクロオクタジエン、シクロドデカトリエン、イソプレン、リモネン、ジビニルシクロヘキサン、またはポリブタジエンもしくはポリイソプレンである。
【0162】
少なくとも2個のアクリル基またはメタクリル基を有するオリゴマーは、特に、多官能性アルコールまたはアルコキシル化多官能性アルコールの(メタ)アクリルエステルである。
【0163】
そのようなアルコールの例は、二官能性アルコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルコキシル化フェノール化合物、例えばエトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノール、シクロヘキサンジメタノール、三官能性以上の官能性アルコール、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトール、および相応するアルコキシル化、特にエトキシル化およびプロポキシル化アルコールである。
【0164】
ポリエステロールの(メタ)アクリルエステルもオリゴマーとして挙げることができる。
【0165】
適切なポリエステロールは、例えば、ポリカルボン酸、好ましくはジカルボン酸をポリオール、好ましくはジオールによりエステル化することにより製造可能なものである。ヒドロキシル基を含むそのようなポリエステルの出発材料は、当業者に公知である。好ましく使用されるジカルボン酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、o-フタル酸、それらの異性体および水素化生成物、ならびにエステル化可能な誘導体、例えば上記の酸の無水物もしくはジアルキルエステルである。マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸またはそれらの無水物も適している。適切なポリオールは、先に言及したアルコール、好ましくは、エチレングリコール、1,2および1,3-プロピレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ならびにエチレングリコールおよびプロピレングリコールのタイプのポリグリコールである。
【0166】
ポリエステロールの(メタ)アクリレートは、例えば欧州特許第279303号明細書に記載のように、アクリル酸、ポリカルボン酸およびポリオールから、複数段階または1段階で製造することが可能である。
【0167】
また、エポキシド(メタ)アクリレートまたはウレタン(メタ)アクリレートも適切なオリゴマーであり得る。
【0168】
エポキシド(メタ)アクリレートは、例えば、エポキシ化されたオレフィンまたはポリグリシジルエーテルまたはモノグリシジルエーテルまたはジグリシジルエーテル、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とを反応させることにより得られるものである。
【0169】
この反応は、当業者に公知であり、例えばR.Holmann、U.V. and E.B. Curing Formulation for Printing Inks and Paints、London 1984に記載されている。
【0170】
ウレタン(メタ)アクリレートは、特に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネートまたはジイソシアネートとの反応生成物である(R.Holmann、U.V. and E.B. Curing Formulation for Printing Inks and Paints、London 1984も参照)。
【0171】
さらなるオリゴマーは、例えば、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸の含量の結果として特に二重結合を有する低分子量不飽和ポリエステルである。
【0172】
少なくとも2個のビニル基を有するオリゴマーは、例えば、ジエチレングリコールジビニルエーテルまたはトリエチレングリコールジビニルエーテルのようなジビニルエーテルである。
【0173】
さらなるオリゴマーは、例えば、ジビニルスルホン、または
【化10】
である。
【0174】
好ましい実施形態において、エチレン性不飽和基を-SH反応性基として有する化合物C)は、アクリル化合物またはメタクリル化合物、特に多官能性アルコールの(メタ)アクリレート、またはビニルエーテル基を有する化合物、または不飽和ポリエステルである。特に好ましい実施形態において、エチレン性不飽和基を-SH反応性基として有する化合物C)は、メタクリル化合物である。
【0175】
エポキシ基を官能基として有する化合物C)について
少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物C)は、例えば、少なくとも1個のアルコール基を有する化合物とエピクロロヒドリンとを反応させることにより得られる化合物である。
【0176】
1個のエポキシ基を有する化合物C)は、例えば、エピクロロヒドリンまたはその誘導体であり、ここで、エピクロロヒドリンの塩化物は、ヒドロキシ基(グリシドール)、エーテル基(グリシジルエーテル)、エステル基(グリシジルエステル)、またはアミノ基(グリシジルアミン)により交換されている。
【0177】
少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物Cの挙げられ得る例は、ビスフェノールAもしくはビスフェノールFもしくはビスフェノールSのジグリシジルエーテル、および水素化ビスフェノールAもしくはビスフェノールFのジグリシジルエーテル、または脂肪族ジオールのジグリシジルエーテル、例えばポリアルコキシレンジオールのジグリシジルエーテルである。オリゴアルコール(oligoalcohols)系のオリゴグリシジルエーテルも挙げることができる。少なくとも2個のアルコール基を有する化合物をエピクロロヒドリンに比べて過剰に使用することにより得られるエポキシ樹脂も例である。そのようなエポキシ樹脂において、少なくとも2個のアルコール基を有する化合物の重合度は、2~25、特に2~10であることが好ましい。
【0178】
さらなる例は、少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化脂肪酸、脂肪酸エステル、または脂肪酸アルコールである。
【0179】
少なくとも2個のエポキシ基を有するその他の化合物は、例えば、テトラグリシジルメチレンジアニリン(TGMDA)、トリグリシジルアミノフェノールおよびトリグリシジルイソシアヌレートであるが、以下を参照されたい。
【0180】
【化11】
【0181】
1個より多くのエポキシ基を有するその他の化合物C)は、グリシジル(メタ)アクリレートまたはグリシジルビニルエーテルを重合または共重合することにより得ることが可能である。
【0182】
イソシアネート基を官能基として有する化合物C)について
イソシアネート基を官能基として有する化合物C)は、モノイソシアネート、ジイソシアネート、および少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートである。
【0183】
モノイソシアネート、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートは、脂肪族化合物であっても、脂環式化合物であっても、または芳香族化合物であってもよい。
【0184】
ジイソシアネートは、例えば、2,2’-、2,4’-および4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4-または2,6-トルイレンジイソシアネート(TDI)、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ナフチレンジイソシアネート、またはジイソシアネートのウレトジオンである。
【0185】
ポリイソシアネートは、例えばジイソシアネートのイソシアヌレートである。
【0186】
また、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートは、上記のジイソシアネートおよびポリイソシアネートと、少なくとも2個のヒドロキシ基を有するポリオール、または第一級もしくは第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有するポリアミンとを反応させることにより得られるプレポリマーであってもよい。
【0187】
異なる官能基を有する化合物C)について
化合物C)は、-SHと反応する異なる官能基、例えば1個のエポキシ基および1個の(メタ)アクリル基を有していてもよい。そのような化合物は、例えば、ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートまたはアリルグリシジルエーテルであるか、異なる官能基を含むポリマー化合物である。
【0188】
ウレタン基を有するポリマーの合成について
第一の代替形態によるA)とB)および任意でC)との反応の原理を、2個の環状モノチオカーボネート基を有する化合物A)および2個のアミノ基を有する化合物B)について以下に記載する。
【0189】
A)の各環状モノチオカーボネート基は、A)と化合物B)のアミノ基との反応により開環する。A)が2個のモノチオカーボネート基を有し、B)が2個のアミノ基を有するため、反応は、A)とB)とのポリマーを生成する重付加である。
【0190】
この重付加は、特定の化合物A)およびB)について以下に例示的に示されている。
【0191】
【化12】
【0192】
先の例では、ウレタン基と-SH基とを有するポリマーが形成される。
【0193】
必要に応じて、-SH基をさらに反応させてもよい。-SH基は、反応性が高く、化合物C)の反応性基と容易に反応する。1個より多くの反応性基を有する化合物C)で、架橋されたポリマーが得られる。1個の反応性基を有する化合物C)で、C)の側基を有するA)とB)とのポリマーが得られる。
【0194】
化合物C)を添加しないと、-SH基は、酸化して、ジスルフィド架橋を形成し得る。そのような酸化は、酸素の存在下で室温のもと起こり得る。
【0195】
A)とB)とのポリマー、またはA)と、B)と、C)とのポリマーは、式IV:
【化13】
の構造要素を含むことが一般的である。
【0196】
変数A~Eは、置換基による置換を表す。
【0197】
一般的な構造要素は、硫黄原子がエチレン基を介してウレタン基の酸素に結合したウレタン基である。
【0198】
第二の代替形態において、化合物C)は、-SH基と反応する官能基を少なくとも2個有する。三重結合は2回反応するため、官能基としての三重結合は、2個の官能基に相応する。-SHとの第一の反応により二重結合が生成し、その後、これが再び-SHと反応する。
【0199】
化合物C)が、-SHと反応する官能基を少なくとも2個有することにより、化合物A)およびB)の官能基の数が減少し得る。したがって、化合物A)を、環状モノチオカーボネートを1個のみ有する化合物A1)と混合して使用することも、および/または化合物B)を、アミノ基を1個のみ有する化合物B1)と交換することさえも可能である。化合物B1)は、先に記載のようにA)と開環反応を起こし、したがって、1個の-SH基を各環状モノチオカーボネート基から遊離させる。-SH基は化合物C)と反応し、それによりポリマー鎖または網目構造を構築する。
【0200】
どちらの代替形態においても、反応は、1段階または2段階で実施することが可能である。
【0201】
1段階反応とは、すべての化合物を同時に反応させることを意味する。第一の代替形態では、A)およびB、ならびに任意でC)を同時に反応させる。第二の代替形態では、すべての化合物A)、A1)、B)、B1)およびC)を同時に反応させる。
【0202】
2段階反応では、環状モノチオカーボネート基が、第一の段階で、アミノ基と個別に開環反応を起こし、得られた中間体の-SH基と、C)の反応性基との反応が続く。
【0203】
第一の代替形態の場合、C)を使用する場合のみ、2段階反応が可能である。
【0204】
したがって、2段階反応は、
第一の代替形態では、A)およびB)をまず反応させ、その後、得られた中間体をC)と反応させることにより、
第二の代替形態では、A)またはA)とA1)との混合物、およびB)またはB1)またはB)とB1)との混合物をまず反応させ、その後、得られた中間生成物をC)と反応させることにより
実施される。
【0205】
ウレタン基を有するポリマーは、反応が1段階で実施されるか、または2段階で実施されるかどうかにかかわらず、この方法により得ることが可能である。ポリマーは、ウレタン基を式IVの構造要素の形態で含む。
【0206】
この方法により得られるポリマーは、式IVの構造要素の含量が、ポリマー100gあたり、0.0001~0.3mol、特に0.001~0.2molであることが好ましく、それにより、式IVの構造要素は、分子量が3×12+2×16+14+32=114g/molであると計算され、これは、式IV中のすべての原子C、O、NおよびSの分子量の合計である。
【0207】
2段階反応の化学量論は、以下の通りである:
A)またはA1)の1個のモノチオカーボネート基が、B)またはB1)の1個のアミノ基と反応し、C)の1個の反応性基と反応する1個の-SH基が生成され、モノチオカーボネート基:アミノ基:-SHと反応する基の化学量論は、1:1:1になる。
【0208】
A)、B)およびC)の化学量論的量の計算では、A)、B)およびC)が、2個以上のモノチオカーボネート基、アミノ基、または-SH反応性基を含み得ることを考慮する必要がある。
【0209】
大過剰な化合物を回避し、化合物A)、A1)、B)、B1)およびC)のいずれかを、反応の化学量論に相応する等モル量から50%以下、または20%以下ずれた量で使用することが好ましい。
【0210】
1段階反応の場合、幾つかの化合物C)が、B)のアミノ基とも反応して、それにより、開環反応に対するアミノ基の利用性が低減する/し得ることを考慮する必要がある。以下のケースで区別する必要がある。
【0211】
ケース1
A)またはA1)のモノチオカーボネート基とB)またはB1)のアミノ基との反応性が、化合物C)とBおよび/またはB1)のアミノ基との反応性よりもはるかに高い場合、1段階反応の化学量論および結果は、A)またはA1)とB)またはB1)とがまず反応し、得られた中間体とC)との反応が続くため、2段階反応の結果に相応する。
【0212】
ケース2
化合物A)、A1)と、また化合物C)と、B)、B1)のアミノ基との反応性が同程度の大きさの場合、1段階反応により、ウレタン基を含むハイブリッドポリマーが生じる。
【0213】
ケース3
化合物A)、A1)と、B)、B1)のアミノ基との反応性が、化合物C)と、B)、B1)のアミノ基との反応性よりもはるかに低い場合、1段階反応の結果、少量のウレタン基を有するポリマーが生じ得る。
【0214】
さらなる開示は、特定の化合物C)に関する:
少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物C)での合成について
これは、通常ケース2である。C)のエポキシ基とB)、B1)のアミノ基との反応性は、通常、化合物A)とB)のアミノ基との反応性に類似している。3種すべての成分の1段階反応において、化合物B)、B1)のアミノ基と、化合物A)、A1)(モノチオカーボネートの開環)または化合物C)(アミノ化合物によるエポキシ化合物の架橋/鎖延長)との競争反応が起こる。この1段階反応の生成物として、ハイブリッドポリマーが得られる。化合物A)、A1)、B)、B1)およびC)のモル比によりハイブリッドポリマーの性質が決まる。化合物A)、A1)の方が少量の場合、得られるハイブリッドポリマーは、ウレタン基で修飾されたエポキシ樹脂に相応する。得られるウレタン修飾エポキシ樹脂では、塗布性が改善されており、エポキシ樹脂の利点と、ウレタン基の含量から得られる利点とが組み合わされている。
【0215】
少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物である化合物C)の1段階反応は、本発明の一実施形態である。この実施形態において、C)のエポキシ基のモルに対する化合物A)のモル比は、1:100~100:1である。C)のエポキシ基のモルに対する化合物A)の比は、50:1~1:50であることがより好ましい。
【0216】
少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物Cを、上記の2段階反応により反応させることが好ましく、これは、特許請求する方法のどちらの代替形態にも当てはまる。
【0217】
少なくとも2個のメタクリル基を不飽和基として有する化合物C)での合成について
これらの系はケース1に従うことが一般的である。というのも、メルカプタンの付加が低温で進行可能である一方で、メタクリレートへのアミンのアザマイケル付加は、望ましくないと考えられるからである。そのような挙動は、(Polymer preprints 2010、51、281)に記載されている。
【0218】
少なくとも2個のアクリル基を不飽和基として有する化合物C)での合成について
これらの系はケース3に従うことが一般的である。
【0219】
文献では、アクリレートによるアザマイケル付加反応を特定の反応条件(溶媒依存性)下で抑制することができると知られている。アザマイケル付加の得られる反応速度に応じて、系全体はまた、後にケース2またはケース1にさえ従ってもよい。
【0220】
(メタ)アクリル基以外の不飽和基を有する化合物C)での合成について
これらの系はケース1に従うことが一般的である。化合物Cの不飽和基への-SHの付加をラジカル反応により達成することができることが好ましい。ラジカル反応を、熱により触媒しても、かつ/または光開始させてもよい。
【0221】
少なくとも2個のイソシアネート基を不飽和基として有する化合物C)での合成について
これはケース3である。1段階反応は好ましくない。
【0222】
この方法に関する一般的な問題
以下の開示は、特に記載されていない場合、この方法のどちらの代替形態にも当てはまる。
【0223】
第一の代替形態および1段階反応の場合、化合物A)、B)および任意でC)を混合して、
少なくとも2個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物A)と、
第一級または第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有する化合物B)と、任意で
-SH基と反応する少なくとも1個の官能基を有する化合物C)と
を含む硬化性混合物を得ることができる。
【0224】
第一の代替形態の場合、2段階反応は、化合物C)を使用する場合にのみ可能である;そのような場合、化合物A)、B)を反応させて中間生成物を得て、この中間生成物を化合物C)と混合して、中間生成物とC)とを含む硬化性混合物を得る。
【0225】
第二の代替形態および1段階反応の場合、すべての化合物を混合して、
少なくとも2個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物A)、または化合物A)と1個の5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物A1)との混合物と、
第一級もしくは第二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有する化合物B)、または第一級もしくは第二級アミノ基から選択される1個のアミノ基を有する化合物B1)、または化合物B)とB1)との混合物と、
-SH基と反応する少なくとも2個の官能基を有する化合物C)、または-SH基と反応する官能基としての炭素-炭素三重結合の場合、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する化合物C)と
を含む硬化性混合物を得る。
【0226】
第二の代替形態および2段階反応の場合、化合物A)、または化合物A)とA1)との混合物を、化合物B)、B1)、またはそれらの混合物と反応させて中間生成物を得て、この中間生成物を化合物C)と混合し、中間生成物と化合物C)とを含む硬化性混合物を得る。
【0227】
第二の代替形態の好ましい実施形態では、化合物A)とA1)との混合物を使用する。A)とA1)との混合物は、A)およびA1)の重量合計を基準として、例えば、1~99重量%のA)および99~1重量%のA1)を含んでいてもよい。好ましい実施形態において、混合物は、A)およびA1)の重量合計を基準として、少なくとも10~90重量%のA)および90~10重量%のA1)を含む。
【0228】
混合物は、通常条件(21℃、1bar)下で通常固体状である化合物A)を、通常条件下で通常液体状である化合物A1)中に入れた溶液であることが好ましい。そのような溶液は、好ましくは1~60重量%、特に5~50重量%、より好ましくは10~40重量%のA)、および99~40重量%、特に95~50重量%、より好ましくは90~60重量%のA1)を含む。
【0229】
貯蔵のために、化合物A)、A1)、B)、B1)およびC)を個別に保ってもよい。どちらの代替形態の場合でも、第一の成分が化合物B)および/またはB1)のみを含み、かつ第二の成分がその他すべての化合物A)、A1)およびC)を含む二成分硬化系を有することが可能である。
【0230】
どちらの代替形態の場合の反応も、-20~250℃、好ましくは20~100℃の温度で実施することが好ましい。これは、1段階反応に、かつ2段階反応の双方の段階に当てはまる。あるいは、反応のための活性化エネルギーを、高エネルギーの放射線、例えば可視光または紫外光により供給してもよい。
【0231】
1段階反応または2段階反応を、溶媒を用いて実施してもよい。溶媒の使用は、化合物A)、B)、およびC)のうちの少なくとも1個が固体状であり、その他の液体状の化合物A)、A1)、B)、B1)またはC)が固体状化合物のための溶媒としてすでに作用していない場合、例えばA)をA1)中に入れた先の溶液の場合に、役立ち得る。適切な溶媒は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ジオキサン、メタノール、エタノール、水、テトラヒドロフラン、およびジメチルホルムアミドである。化合物A)、B)およびC)のうちの少なくとも1個が通常液体状であり、すでに溶媒として機能しているためにさらなる溶媒が通常必要とされないことが、この方法の利点である。
【0232】
さらに、二成分硬化系の場合、A)、A1)、B)、B1)およびC)の上記の硬化性組成物または個別の組成物は、さらなる添加剤、例えば触媒もしくは阻害剤、または得られるポリマーの意図される使用に必要なもしくは望ましい添加剤を含んでいてもよい。
【0233】
例えば、付加反応を介して-SH基に付加する化合物C)の場合、触媒を使用してもよい。付加反応は、イオンまたはラジカル機構に従っていてもよい。イオン機構は、通常、塩基性化合物が触媒として存在することを必要とする。塩基性触媒は、化合物B)またはB1)自体であってもよい。エチレン性不飽和基への付加の場合、化合物B)またはB1)が存在すれば、しばしば十分である。官能基としてのエポキシ基の場合、塩基性触媒、例えば、第三級アミン、例えばVersamin(登録商標)を添加することが好ましい。そのような触媒を、エポキシ基1molあたり触媒0.1~3molの量で使用することが一般的である。その他の触媒は、アミジンまたはグアニジンベースの系またはホスフィンであってもよい。付加反応のラジカル機構を、ラジカルを形成する開始剤で補助する。そのような開始剤は、ラジカル重合でよく知られた熱開始剤、レドックス開始剤、電気化学的開始剤または光活性開始剤のいずれかである。
【0234】
さらに、二成分硬化系の場合、A)、A1)、B)、B1)およびC)の先の硬化性組成物または個別の組成物は、安定剤を含んでいてもよい。そのような安定剤は、組成物を長時間にわたり貯蔵または輸送する場合に、分解または早期の重合を回避するのに役立ち得る。
【0235】
特に、副反応であるS-H基の酸化を低減または回避するレドックス安定剤を添加してもよい。S-H基の酸化により、隣接する分子の間にジスルフィド架橋を生成することができ、それにより、化合物Cとの反応に利用可能なS-H基の量が低減される。そのような安定剤の例は、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)である。
【0236】
あるいは、添加剤または安定剤を、得られるポリマーへの反応の後に添加してもよい。
【0237】
先の反応では、第一の代替形態の場合、さらなる反応性化合物、例えば、化合物A1)および/またはB1)を使用してもよく、または第二の代替形態の場合、-SH基と反応する官能基を1個のみ有する化合物を使用してもよい。そのような化合物は、例えば、得られるポリマーの分子量を制限することが可能な調節剤として使用される。好ましい実施形態において、本発明の方法により得られるポリマーは、第一の代替形態の場合、少なくとも60重量%、特に少なくとも80重量%が、化合物A)、B)および任意でC)から成り、第二の代替形態の場合、少なくとも60重量%、特に少なくとも80重量%が、化合物A)、A1)、B)、B1)およびC)から成る。より好ましい実施形態において、本発明の方法により得られるポリマーは、第一の代替形態の場合、少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%、または少なくとも98重量%が、化合物A)、B)および任意でC)から成り、第二の代替形態の場合、少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%、または少なくとも98重量%が、化合物A)、A1)、B)、B1)およびC)から成る。
【0238】
得られるポリマーは、室温で透明、非粘着性かつ固体状であることが一般的である。
【0239】
本発明の方法により、ウレタン基を有するポリマーを製造する代替的な方法が提供される。この方法では、イソシアネート基を有する化合物の使用を回避する。本発明の方法は、単純かつ効果的な製造方法、特に高エネルギーまたは高温を必要としない方法である。固体状かつ透明なポリマーは、容易に利用可能であり、様々な工業用途、例えば、コーティング、接着剤、あらゆる形状の注型品を成形するための熱可塑性材料または熱硬化性材料に有用である。ウレタン基がエポキシ樹脂のようなポリマーに導入されているため、特性が修正されたハイブリッドポリマーが入手可能である。高い屈折率を有する光学ポリマーを得ることができる。得られるポリマーは、高い熱安定性を示す。この方法はさらに、酸素の存在と適合した低温硬化の硬化機構をもたらす。
【0240】
実施例
5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物
5員環状モノチオカーボネート基を有する以下の化合物を例において使用した:
【化14】
【0241】
5員環状モノチオカーボネート基を有する化合物についての合成例1~6
第一の段階:β-クロロアルキルクロロホルマートの合成
エポキシドを反応器に充填し、-30℃に保った。エポキシドのモル量を表1に列挙する。エポキシド1molあたり0.01molのテトラ-n-ブチルアンモニウムクロリドを添加した。その後、反応が発熱性であるため、ホスゲンをゆっくりと添加する。ホスゲンを添加する際、冷却により温度を表に列挙した温度に保った。ホスゲンを計量供給する時間は、表に列挙されている。ホスゲンの総量は、エポキシド1molあたり1.1molであった。ホスゲンの添加が完了したら、反応混合物を約2時間にわたりさらに撹拌した。未反応のホスゲンを窒素ストリッピングにより除去した。さらなる後処理は必要なかった。得られたβ-クロロアルキルクロロホルマートを、チオカーボネートの形成である次の段階で直接使用することができた。
【0242】
エポキシド、得られたβ-クロロアルキルクロロホルマート、および反応のさらなる詳細は、表1に列挙されている。
【0243】
β-クロロアルキルクロロホルマートは、2種の異なる構造異性体(立体異性体)aおよびbの形態で得られる:
【化15】
【0244】
aおよびbに関する選択率も、同様に表1に列挙されている。表1に列挙されている総収率は、出発材料として使用されたエポキシドに基づく。
【0245】
【表1】
【0246】
合成例5および6の場合、収率および選択率は、1H-NMRおよび13C-NMRにより求めた。
【0247】
第二の段階:モノチオカーボネートの合成
置換された環状モノチオカーボネートの合成:
合成例1~4からの各β-クロロアルキルクロロホルマート(50g)およびジクロロメタン(50mL)を、KPG三日月型スターラーと、滴下漏斗と、温度計と、還流凝縮器とを備える500mLの四つ口丸底フラスコに入れる。この溶液を氷浴で0℃に冷却し、それから、NaS(1当量、15重量%の水溶液)をゆっくりと添加し、温度を5℃に維持した。添加が完了した後に、氷浴を除去し、反応混合物を室温に温めた。4時間にわたり撹拌した後に、相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出した(2×50mL)。合した有機相から溶媒を減圧下で除去し、残留液を(クーゲルロール)蒸留により精製し、望ましい環状チオカーボネートを得た。
【0248】
【表2】
【0249】
2個の環状モノチオカーボネート基を有する化合物の合成:
各ビス-β-クロロアルキルクロロホルミエート(50g)およびジクロロメタン(50mL)を、KPG三日月型スターラーと、滴下漏斗と、温度計と、還流凝縮器とを備える500mLの四つ口丸底フラスコに入れる。この溶液を氷浴で0℃に冷却し、それから、NaS(2当量、15重量%の水溶液)をゆっくりと添加し、温度を5℃に維持した。添加が完了した後に、氷浴を除去し、反応混合物を室温に温めた。2時間にわたり撹拌した後に、相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出した(2×50mL)。合した有機相から溶媒を減圧下で除去し、2個の環状モノチオカーボネート基を有する望ましい化合物を得た。
【0250】
【表3】
【0251】
ポリマーの調製
ポリマー例1:化合物A)とB)とのポリマー
1.0gのビスフェノールAジチオカーボネートBPA-TCを2gのテトラヒドロフラン(THF)に入れた溶液に、0.23gのペンタメチレンジアミンを添加した。この混合物を室温で撹拌し、次に、アルミニウム製の型(直径6.5cm)に注型した。
【0252】
室温で硬化を達成し(24時間)、続いて、60℃で後硬化させた(4時間)。得られたポリマーについてDSCによりさらに特性を明らかにした(ガラス転移温度、Tg)。
【0253】
ポリマー例2:A)と、B)と、C)とのポリマー
1.0gのBPA-TCを2gのTHFに入れた溶液を、0.54gのブタンジオールジメタクリレートと混合した。得られた混合物に、0.23gのペンタメチレンジアミンを添加した。この混合物を室温で撹拌し、次に、アルミニウム製の型(直径6.5cm)に注型した。
【0254】
室温で硬化を達成し(24時間)、続いて、60℃で後硬化させた(4時間)。得られた弾性ポリマーフィルムについてDSCによりさらに特性を明らかにした(ガラス転移温度、Tg)。
【0255】
ポリマー例3:A)と、B1)と、C)とのポリマー
1.0gのビスフェノールAジチオカーボネート(BPA-TC)を2gのTHFに入れた溶液を、0.54gのブタンジオールジメタクリレートおよび0.008gのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(安定剤)と混合した。得られた混合物に、0.58gのオクチルアミンを添加した。この混合物を室温で撹拌し、次に、アルミニウム製の型(直径6.5cm)に注型した。
【0256】
室温で硬化を達成し(24時間)、続いて、60℃で後硬化させた(4時間)。得られた粘性液体についてDSCによりさらに特性を明らかにした(ガラス転移温度、Tg)。
【0257】
ポリマー例4:A)と、B1)と、C)とのポリマー
1.0gのBPA-TCを2gのTHFに入れた溶液を、0.51gのトリメチロールプロパントリメタクリレートと混合した。得られた混合物に、0.58gのオクチルアミンを添加した。この混合物を室温で撹拌し、次に、アルミニウム製の型(直径6.5cm)に注型した。
【0258】
室温で硬化を達成し(24時間)、続いて、60℃で後硬化させた(4時間)。得られたポリマーフィルムについてDSCによりさらに特性を明らかにした(ガラス転移温度、Tg)。
【0259】
【表4】
【0260】
ポリマー例5:A)と、A1)と、B)と、C)とのポリマー
撹拌しながら、1gのビスフェノールAジチオカーボネート(0.00217mol)をn-ブチルグリシジルモノチオカーボネート(3.0g、0.0157mol、1当量)に溶解させた。次に、トリメチロールプロパントリメタクリレート(2.26g)を添加した。この混合物を均質化した。この溶液に、1,5-ペンタンジアミン(1.022g)をシリンジにより添加した。室温での激しい撹拌の10秒後に、反応混合物を金属製の型に注型した(棒型)。これらの型を、60℃で3時間にわたり貯蔵し、次に試料を型から取り出した。
【0261】
反応スキームは、以下の通りである:
【化16】
【0262】
無色の粘着性のない固形物として、かつ高い透明性を示す硬い棒としてポリマーが得られた。
【0263】
ポリマー例6:
A)と、A1)と、B)と、Cとのポリマー
ビスフェノールAジチオカーボネート(BPAジチオカーボネート)およびn-ブチルグリシジルモノチオカーボネート、トリアミン、および二重結合を有する化合物C
マグネチックスターラーを備える50mlフラスコ内で、5-(ブトキシメチル)-1,3-オキサチオラン-2-オン(2.4g)を、トリメチロールプロパントリメタクリレート(1.72g)およびBPAジチオカーボネート(0.6g)と合し、次に均質化した。この撹拌した溶液に、トリス(2-アミノエチル)アミン(0.95g)を迅速に添加した。この混合物を撹拌し、室温で均質化した。
【0264】
温度は、60秒以内に25℃から40℃に上昇し、ポリマーは、30分以内に硬化した。
【0265】
例7:
A)と、A1)と、B)と、Cとのポリマー
ビスフェノールAジチオカーボネート(BPAジチオカーボネート)およびn-ブチルグリシジルモノチオカーボネート、トリアミン、ならびにエポキシ基を有する化合物C
マグネチックスターラーを備える50mlのフラスコ内で、1,4-ジオキサン(0.5g)と、5-(ブトキシメチル)-1,3-オキサチオラン-2-オン(0.48g)と、BPAジチオカーボネート(1.15g)との混合物を、30℃で均質化し、次に、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(0.76g)と合した。室温に冷却した後に、この撹拌した溶液に、トリス(2-アミノエチル)アミン(0.28g)を迅速に添加した。
【0266】
温度が上昇し、ポリマーは30分以内に凝固した。
【0267】
例8:
A)とB)とのポリマー
化合物Cなしのポリエチレングリコールジチオカーボネート(PEGジチオカーボネート)およびジアミン
マグネチックスターラーを備える50mlのフラスコ内で、PEGジチオカーボネート(平均MW:620g/mol、5.0g)を1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1.15g)と合した。温度は、240秒以内に25℃から38℃に上昇し、ポリマーは18時間以内に凝固した。