(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】粘着剤層、粘着フィルム及び粘着剤層付き光学フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20231205BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231205BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20231205BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20231205BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J11/06
C09J133/04
C09J133/14
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2022080021
(22)【出願日】2022-05-16
(62)【分割の表示】P 2019166291の分割
【原出願日】2014-12-09
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 昌世
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-044291(JP,A)
【文献】特開2009-120805(JP,A)
【文献】特開2015-089924(JP,A)
【文献】特開2014-162835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマーと、架橋剤と、シランカップリング剤とを含む粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層であり、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、脂環族含有モノマーと、分岐構造アルキル基含有モノマーとからなるモノマー群の少なくとも1種以上の合計100重量部と、
(B)水酸基含有共重合性ビニルモノマーの0.1~0.5重量部を共重合して得られた共重合体であり、
前記(A)
アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、脂環族含有モノマーと、分岐構造アルキル基含有モノマーとからなるモノマー群の少なくとも1種以上の合計100重量部が、ブチル(メタ)アクリレートを30
重量部以上の割合で含有してなり、
ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートからなるモノマー群の少なくとも2種以上であり、
前記アクリル系ポリマーの酸価が0.1以下であり、
前記(A)
アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、脂環族含有モノマーと、分岐構造アルキル基含有モノマーとからなるモノマー群の少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、前記架橋剤として、トリレンジイソシアネートのアダクト体であるイソシアネート化合物のみを0.01~1.5重量部と、前記シランカップリング剤を0.01~2.0重量部の割合で含有してなり、
前記シランカップリング剤が、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基からなる群から選択された少なくとも一種類の、有機官能基を有するものであり、
前記粘着剤層の、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングを行った後のゲル分率が40~75%であり、
前記粘着剤層を、1000μmの厚みに積層して測定した、周波数100kHzにおける比誘電率が1.50~5.50であり、かつ、誘電損失が0.01~0.09であることを特徴とする粘着剤層。
【請求項2】
前記アクリル系ポリマーが、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー及びカルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含有しないことを特徴とする請求項1に記載の粘着剤層。
【請求項3】
基材の片面上に、請求項1又は2に記載の粘着剤層が積層されていることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項4】
離型フィルムの片面に、請求項1又は2に記載の粘着剤層が、厚みが1μm~25μmで形成されてなり、離型フィルム/粘着剤層/離型フィルムの構成であることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項5】
光学フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1又は2に記載の粘着剤層が積層されていることを特徴とする粘着剤層付き光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板などの光学部材の貼り合わせに用いられる粘着剤層及び粘着フィルムに関する。より詳細には、本発明は、オンセルパネル(On-cell Panel)と呼ばれるITO膜付き液晶パネルなどの製造などにおいて、光学部材の貼り合わせに用いられる、誘電率、および誘電損失の値の低い粘着剤層であり、柔軟性と堅剛性および耐久性とリワーク性を兼ね備えた粘着剤層及び粘着フィルムを提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルの上に、静電容量式のタッチパネルを外付けした各種の表示装置、例えば、スマートフォン、タブレット端末、タブレットPCなどが広く使用されている。このような表示装置では、液晶パネルとタッチパネルの間に物理的な空間が存在している。このため、液晶パネルの上面やタッチパネルの下面で外部光などが反射して、特に、屋外などの明るい環境下での視認性が低下するという問題があった。
【0003】
この視認性が低下するという問題を解決する方法として、タッチパネルの機能を液晶の画素の中に組み込むインセル方式の表示装置(例えば、特許文献1を参照。)が提案されてきた。しかし、複雑な製造工程を経るため、製品の歩留まりが低下すること、画像の表示性能を向上させることが技術的に困難であること、などの理由により実用化されなかった。
【0004】
その一方で、最近では、オンセル方式の表示装置(例えば、特許文献2を参照。)が提案されている。オンセル方式の表示装置は、カラーフィルタと偏光板の間に、透明電極パターンからなるタッチセンサーを形成し、タッチパネルの機能をカラーフィルタ基板と偏光板の間に作り込むものである。オンセル方式は、製品の歩留まりの低下が少ないという長所がある。このため、オンセル方式は、タッチパネルを組み込んだ液晶パネルの有望な製造技術として、今後の発展が期待されている。
【0005】
しかし、静電容量式のタッチパネルは、電磁界の変化を感知するセンサであることからノイズの影響を受け易い。そこで、接触した位置の誤認識を防ぐために、その積層構造の中に低誘電率膜を積層することや、静電容量センサの配線ラインに低誘電率の部材を設けることが提案されている(例えば、特許文献3~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-258182号公報
【文献】特開2014-044501号公報
【文献】特開2013-082880号公報
【文献】特開2012-094017号公報
【文献】特開2013-003758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献3に係わる粘着剤は、比誘電率が3.5以下の優れた絶縁性を有するが、柔軟性と堅剛性を有する粘着剤層であるかどうかが不明である。
また、特許文献4、5には、静電容量式のタッチパネルの誤認識を防ぐために、その積層構造の中に低誘電率膜を積層することや、静電容量センサの配線ラインに低誘電率の部材を設けることが記載されているが、使用する低誘電率の部材の製造方法は、具体的に示されていない。
【0008】
このように、従来技術においては、光学部材の貼り合わせにも使用可能であり、低誘電率によって優れた絶縁性能と、柔軟性と堅剛性および耐久性とリワーク性を兼ね備えた粘着剤層及び粘着フィルムは、知られていなかった。
これらの、従来技術における要求事項および問題を克服した、光学部材の貼合に使用できる粘着剤層及び粘着フィルムが必要とされている。
【0009】
本発明は、従来の粘着剤層に比べて、誘電率、および誘電損失の値の低い粘着剤層であり、柔軟性と堅剛性および耐久性とリワーク性を兼ね備えた粘着剤層及び粘着フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の粘着剤層は、アクリル系ポリマーとしてブチル(メタ)アクリレートを必須モノマーとすること、芳香族含有モノマーを用いないこと、官能基含有モノマーとしてはカルボキシル基含有モノマーを用いず、水酸基含有モノマーのみを用いること、共重合体に対して、架橋剤としてトリレンジイソシアネートのアダクト体のみを用いること、さらに、シランカップリング剤を併用することを技術思想としている。
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、アクリル系ポリマーと、架橋剤と、シランカップリング剤とを含む粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層であり、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、脂環族含有モノマーと、分岐構造アルキル基含有モノマーとからなるモノマー群の少なくとも1種以上の合計100重量部と、(B)水酸基含有共重合性ビニルモノマーの0.1~0.5重量部を共重合して得られた共重合体であり、前記(A)の合計100重量部が、ブチル(メタ)アクリレートを30~100重量部の割合で含有してなり、前記アクリル系ポリマーの酸価が0.1以下であり、前記(A)の合計100重量部に対して、前記架橋剤として、トリレンジイソシアネートのアダクト体であるイソシアネート化合物のみを0.01~1.5重量部と、前記シランカップリング剤を0.01~2.0重量部の割合で含有してなり、前記粘着剤層の、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングを行った後のゲル分率が40~75%であり、前記粘着剤層を、1000μmの厚みに積層して測定した、周波数100kHzにおける比誘電率が1.50~5.50であり、かつ、誘電損失が0.01~0.09であることを特徴とする粘着剤層を提供する。
【0012】
前記アクリル系ポリマーが、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー及びカルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含有せず、前記アクリル系ポリマーの酸価が0.1以下であり、前記架橋剤として、イソシアネート化合物を、前記水酸基含有共重合性ビニルモノマーを除いたモノマーの合計100重量部に対して、0.01~1.5重量部含有し、前記粘着剤組成物を架橋した後の、粘着剤層の重量平均分子量が30万~200万であり、前記粘着剤層を、基材の片面に25μmの厚みに積層した後、23℃×10日経過後の粘着力が1.5~10N/25mmであることが好ましい。
【0013】
前記粘着剤組成物が、さらに、シランカップリング剤を、前記水酸基含有共重合性ビニルモノマーを除いたモノマーの合計100重量部に対して、0.01~2.0重量部含有することが好ましい。
【0014】
前記架橋剤が、イソシアネート化合物であり、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体であることが好ましい。
【0015】
前記水酸基含有共重合性ビニルモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、からなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、基材の片面上に、前記粘着剤層が積層されていることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0017】
前記粘着フィルムは、偏光板と、液晶パネル又は有機ELパネルとの貼り合わせに用いられていることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、離型フィルムの片面に、前記粘着剤層が、厚みが1μm~25μmで形成されてなり、離型フィルム/粘着剤層/離型フィルムの構成であることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0019】
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されていることを特徴とする粘着剤層付き光学フィルムを提供する。
【0020】
また、本発明は、偏光板の片面に、前記粘着剤層が積層されていることを特徴とする粘着剤層付き偏光板を提供する。
【0021】
前記粘着剤層付き偏光板は、前記粘着剤層が、λ/4又はλ/2の位相差を持つ位相差フィルムと、前記偏光板との貼り合わせに使用されていることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、前記粘着剤層付き偏光板が用いられていることを特徴とする液晶パネルを提供する。
【0023】
また、本発明は、前記粘着剤層付き偏光板が用いられていることを特徴とするオンセルパネルを提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来の粘着剤層に比べて、誘電率、および誘電損失の値の低い粘着剤層となり、柔軟性と堅剛性および耐久性とリワーク性を兼ね備えた粘着剤層及び粘着フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来のタッチパネルを搭載した液晶パネルの例を示す構造模式図。
【
図2】オンセル方式のタッチパネルを搭載した液晶パネルの例を示す構造模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0027】
本発明は、オンセルパネル(On-cell Panel)と呼ばれるITO膜付き液晶パネルなどの製造などにおいて、光学部材の貼り合わせに用いられる、柔軟性と堅剛性および耐久性とリワーク性を兼ね備えた粘着剤層及び粘着フィルムを提供する。
【0028】
図1は、従来のタッチパネルを搭載した液晶パネル5の例を示す構造模式図である。このような、従来のタッチパネルを搭載した液晶パネルを用いた表示装置では、液晶パネル2とタッチパネル1の間に物理的な空間4が存在している。このため、液晶パネル2の上面やタッチパネル1の下面で外部光などが反射して、特に、屋外などの明るい環境下での視認性が低下するという問題があった。
【0029】
また、
図2は、オンセル方式のタッチパネルを搭載した液晶パネル40の例を示す構造模式図である。オンセル方式の表示装置は、カラーフィルタ13と偏光板14の間に、透明電極パターンからなるタッチセンサー10が形成され、タッチパネルの機能をカラーフィルタ13と偏光板14との間に備えるものである。オンセル方式は、製品の歩留まりの低下が少ないという長所がある。このため、オンセル方式は、タッチパネルを組み込んだ液晶パネルの有望な製造技術として、今後の発展が期待されている。
【0030】
図2において、本発明に係わる光学部材の貼り合わせに用いられる粘着剤層は、従来の粘着剤層に比べて、誘電率、および誘電損失の値の低い粘着剤層であることから、静電容量式のタッチパネルへのノイズの影響を低減するため、偏光板14とバックライトユニット30との間における光学部材の貼り合わせに使用できる。
本発明に係わる粘着剤層は、特に、上下2つの偏光板14,15を、液晶パネル20に貼り合わせるのに好適に使用される。具体的には、本発明に係わる粘着剤層は、偏光板14と、タッチセンサー10が付いたガラス基板11(ITOガラスとも呼ぶ)との貼り合わせ、及び偏光板15と、TFT電極17が付いたガラス基板12(TFTガラスとも呼ぶ)との貼り合わせに、特に好適に使用できる。
【0031】
本発明の粘着剤層は、アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含む粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層であり、前記アクリル系ポリマーが、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、脂環族含有モノマーと、分岐構造アルキル基含有モノマーとからなるモノマー群の少なくとも1種以上と、水酸基含有共重合性ビニルモノマーと、を共重合して得られた共重合体であり、前記アクリル系ポリマーが、前記水酸基含有共重合性ビニルモノマーを除いたモノマーの合計100重量部に対して、ブチル(メタ)アクリレートを30~100重量部と、前記水酸基含有共重合性ビニルモノマーを0.1~3.5重量部と、を含有し、前記粘着剤層のゲル分率が40~75%であり、前記粘着剤層を、1000μmの厚みに積層して測定した、周波数100kHzにおける比誘電率が1.50~5.50であり、かつ、誘電損失が0.01~0.09であることを特徴とする。
【0032】
本発明に係わるアクリル系ポリマーは、第1モノマー群に属するモノマーとして、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、脂環族含有モノマーと、分岐構造アルキル基含有モノマーとからなるモノマー群の少なくとも1種以上を使用し、第2モノマー群に属するモノマーとして、水酸基含有共重合性ビニルモノマーを使用し、第1モノマー群に属するモノマーと、第2モノマー群に属するモノマーとを、それぞれ1種以上共重合して得られた共重合体である。本明細書中、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
【0033】
本発明に係わる粘着剤組成物において、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレートなどの少なくとも1種以上が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれでもよいが、ここでは、アルキル基は、直鎖状である。分枝状アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、分岐構造アルキル基含有モノマーに属する。また、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、脂環族含有モノマーに属する。本発明に係わるアクリル系ポリマーは、ブチル(メタ)アクリレートを必須モノマーとする。アクリル系ポリマーが、水酸基含有共重合性ビニルモノマーを除いたモノマー(第1モノマー群に属するモノマー)の合計100重量部に対して、ブチル(メタ)アクリレートを30~100重量部含有することが好ましい。
【0034】
本発明に係わる粘着剤組成物において、脂環族含有モノマーとしては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロヘプチル(メタ)アクリレート、ビシクロオクチル(メタ)アクリレート、ジメチルビシクロヘプチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどの少なくとも1種以上が挙げられる。脂環族含有モノマーは、アルキル基の炭素数がC1~C18の脂環族アルキル(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。
【0035】
本発明に係わる粘着剤組成物において、分岐構造アルキル基含有モノマーとしては、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート、イソペンタデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソオクタデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどの少なくとも1種以上が挙げられる。分岐構造アルキル基含有モノマーは、アルキル基の炭素数がC1~C18の分岐構造アルキル(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。分岐構造アルキル基含有モノマーは、t-ブチル基のように、アルキル基が2以上の分岐構造(例えば主鎖に対する2以上の側鎖)を有してもよい。
【0036】
本発明に係わる粘着剤組成物において、水酸基含有共重合性ビニルモノマーとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類や、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などの少なくとも1種以上が挙げられる。中でも、水酸基含有共重合性ビニルモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、からなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。本発明に係わるアクリル系ポリマーは、水酸基含有共重合性ビニルモノマーを除いたモノマー(第1モノマー群に属するモノマー)の合計100重量部に対して、水酸基含有共重合性ビニルモノマーを0.1~3.5重量部を含有する。
【0037】
本発明に係わる粘着剤組成物において、アクリル系ポリマーは、粘着剤層の誘電率を低くする観点から、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含有しないことが好ましい。同様に、芳香族基を有する(メタ)アクリレートに限らず、芳香族基を有する共重合性ビニルモノマー(スチレン等)を含有しないことができる。また、透明導電性フィルムのITO表面などの腐食し易い被着体に対する腐食性への影響を避ける観点から、アクリル系ポリマーが、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含有しないことが好ましい。アクリル系ポリマーの酸価は、好ましくは0.1以下である。
【0038】
前記アクリル系ポリマーとして使用される共重合体の重合方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリレートモノマーなどのアクリル系モノマーを50~100重量%含むことが好ましい。
【0039】
前記粘着剤組成物は、上記のアクリル系ポリマーに、架橋剤や、適宜任意の添加剤を配合することで、必要とされる物性値などの特性を調整することができる。
【0040】
架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンや、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体などのポリイソシアネート化合物の少なくとも1種以上が挙げられる。アクリル系ポリマーが、架橋剤のイソシアネート化合物と架橋反応可能な官能基として、水酸基を有することが好ましく、また、これらの官能基を側鎖に有するモノマーを含有することが好ましい。
【0041】
架橋剤として使用されるイソシアネート化合物の含有量は、水酸基含有共重合性ビニルモノマーを除いたモノマー(第1モノマー群に属するモノマー)の合計100重量部に対して、0.01~1.5重量部が好ましい。架橋剤として、イソシアネート化合物のみを用いてもよい。イソシアネート化合物として、トリレンジイソシアネートのアダクト体が好ましく、特に、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が好ましい。
【0042】
前記粘着剤組成物は、さらに、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、1分子中に、少なくとも1つの有機官能基と、少なくとも1つの加水分解性基を有し、前記加水分解性基が、ケイ素原子に結合したアルコキシ基等である化合物が挙げられる。前記シランカップリング剤が、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基からなる群から選択された少なくとも一種類の、有機官能基を有することが好ましい。ここで、(メタ)アクリロキシ基とは、アクリロキシ基(CH2=CHCOO-)、又は、メタクリロキシ基(CH2=C(CH3)COO-)を意味する。
【0043】
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルメチルジメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルメチルジエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシランなどが挙げられる。
(メタ)アクリロキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシランなどが挙げられる。
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(メチルアミノ)プロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
また、前記有機官能基を含み、オリゴマー化したアルコキシオリゴマー(シリコーンアルコキシオリゴマー)なども、シランカップリング剤として用いることができる。
【0044】
シランカップリング剤の含有量は、水酸基含有共重合性ビニルモノマーを除いたモノマー(第1モノマー群に属するモノマー)の合計100重量部に対して、0.01~2.0重量部が好ましい。
【0045】
その他任意の成分として、酸化防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、架橋触媒、架橋遅延剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いてもよい。
【0046】
本発明の粘着剤層は、前記粘着剤組成物を基材や離型フィルムに塗布した後、粘着剤組成物を架橋することで得ることができる。架橋後の着剤層のゲル分率は、40~75%であることが好ましい。また、粘着剤組成物を架橋した後の、粘着剤層の重量平均分子量が30万~200万であることが好ましい。粘着剤層の重量平均分子量は、粘着剤層に含まれるすべての成分を通じた平均値を意味するが、粘着剤層の大部分の重量は、架橋剤で架橋されたアクリル系ポリマー(架橋ポリマー)と、未架橋のアクリル系ポリマー(未架橋ポリマー)とが占めている。そうすると、粘着剤層の重量平均分子量は、実質的には架橋ポリマー及び未架橋ポリマーを平均した重量平均分子量に相当する。
【0047】
光学部材の層間の貼合などに用いる場合、薄い粘着剤層であることが望ましい。粘着剤層の厚みは、1μm~25μmが好ましく、5μm~25μmがより好ましい。また、一般に、粘着剤層の粘着力は、粘着剤層の厚みに略比例しているが、厚みが25μmの粘着剤層の粘着力は、23℃×10日経過後の粘着力として、1.5~10N/25mmであることが好ましい。粘着力の試験に使用される被着体としては、無アルカリガラス等のガラス板、樹脂フィルム等が挙げられる。
【0048】
本発明に係わる粘着剤層を、光学部材の層間の貼合などに用いる場合、粘着剤層と光学部材との界面での光線の反射を低減させるため、屈折率の差がなるべく小さいことが望ましい。このため、前記粘着剤層の屈折率が1.47~1.50であることが好ましい。
【0049】
本発明に係わる粘着剤層を、タッチパネル等の電子機器に使用した場合、電磁界のノイズを低減する観点から、粘着剤層を、1000μmの厚みに積層して測定した、周波数100kHzにおける比誘電率が1.50~5.50であり、かつ、誘電損失が0.01~0.09であることが好ましい。
【0050】
本発明の粘着フィルムは、本発明の粘着剤層を、基材又は離型フィルムの片面上に形成することで製造することができる。
粘着剤層の形成に用いる基材フィルムや、粘着面を保護する離型フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
基材フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
【0051】
離型フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。
1つの粘着剤層の両面に、それぞれ離型フィルムの離型処理が施された面を合わせることで、「離型フィルム/粘着剤層/離型フィルム」の構成とすることもできる。この場合、両側の離型フィルムを、順次、あるいは同時に剥離して粘着面を表出することにより、光学フィルム等の光学部材と貼合可能になる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
【0052】
本発明の粘着フィルムは、偏光板を主とする液晶表示装置の周辺部材用の各種光学フィルム、タッチパネル用の各種光学フィルム、電子ペーパー用の各種光学フィルム、有機EL用の各種光学フィルム等の貼り合わせに用いることができる。
また、これらの光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されている粘着剤層付き光学フィルムとすることができる。具体的には、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「離型フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」等の構成が挙げられる。
例えば、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」のように、離型フィルムで保護された粘着剤層を有する場合、離型フィルムを剥がして、「光学フィルム/粘着剤層」のように粘着剤層を表出させ、他の光学フィルムと貼合することにより、粘着剤層が層間の貼合に用いられた「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」のような構成が得られる。
【0053】
本発明の粘着フィルムは、偏光板とディスプレイパネルとの貼り合わせに好適に用いられる。ディスプレイパネルとしては、例えば、液晶パネル又は有機ELパネルが挙げられる。本発明の粘着フィルムは、粘着剤層付き偏光板の粘着剤層として好適に用いることができる。偏光板の構成材料として、λ/4又はλ/2の位相差を持つ位相差フィルムが用いられてもよい。位相差フィルムと偏光板との貼り合わせに、本発明の粘着剤層を使用することができる。本発明の粘着フィルムによれば、粘着剤層が低誘電率であることから、カラーフィルタと偏光板の間にタッチセンサーが設けられたオンセル方式の表示装置において、偏光板とバックライトユニットとの間における光学部材の貼り合わせに好適に使用できる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0055】
<アクリル系ポリマーの製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置にブチルアクリレート100重量部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート0.2重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を60重量部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液1を得た。アクリル系ポリマーの一部を採取し、後述する酸価の測定試料として用いた。
[実施例2~4及び比較例1~3]
モノマーの組成を各々、表1の(1)群及び(2)群の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液1と同様にして、実施例2~4及び比較例1~3に用いるアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0056】
<粘着剤組成物、粘着剤層及び粘着フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した実施例1のアクリル系ポリマー溶液1に対して、コロネートL(トリレンジイソシアネート(TDI)化合物のトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体の75%酢酸エチル溶液)0.2重量部、KBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)0.05重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を、離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)の上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去した後、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングすることにより、粘着剤組成物を架橋してなる厚み25μmの粘着剤層を、離型フィルムの片面上に有する、実施例1の粘着フィルムを得た。
[実施例2~4及び比較例1~3]
添加剤の組成を各々、表1の(3)群及び(4)群の記載のようにする以外は、上記の実施例1の粘着フィルムと同様にして、実施例2~4及び比較例1~3の粘着フィルムを得た。
【0057】
【0058】
表1では、(1)群の、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、脂環族含有モノマーと、分岐構造アルキル基含有モノマーとからなるモノマー群の合計を、100重量部として求めた。また、(2)群から(4)群までの添加割合として、重量部の数値を括弧で囲んで示す。ただし、実施例2では、(1)群の合計を90重量部とした。また、比較例1,2の場合、(1)群は、さらに、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含む。
なお、(2)群は、水酸基含有共重合性ビニルモノマーであるが、比較例1,3においては、水酸基含有共重合性ビニルモノマーと、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーとからなるモノマー群である。(3)群は、架橋剤である。(4)群は、シランカップリング剤である。
【0059】
また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。なお、コロネート(登録商標)Lは日本ポリウレタン工業株式会社の商品名であり、D-110Nは三井化学株式会社の商品名であり、KBM-403及びKBM-803は信越化学工業株式会社の商品名である。TDIはトリレンジイソシアネートを意味し、TMPはトリメチロールプロパンを意味し、XDIはキシリレンジイソシアネートを意味する。
【0060】
【0061】
<試験方法及び評価>
実施例1~4及び比較例1~3における粘着フィルムから、離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、粘着剤層を表出させ、偏光板(フィルム)の片面に粘着剤層を転写した。
【0062】
<粘着力の測定方法>
厚み180μmの偏光板(フィルム)の片面に、厚み25μmの粘着剤層を転写して、試料となる粘着フィルム(粘着剤層付き光学フィルム)を得た。
得られた粘着フィルムを、無アルカリガラスのアセトンで洗浄した非錫面に圧着ロールで貼り合わせ、50℃、0.5MPa×20分間の条件でオートクレーブ処理した後、23℃×50%RHの雰囲気下に戻し、1時間経過させた。その後の粘着フィルムの剥離強度を、引張試験機によって、JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠して測定し、180°方向に300mm/minの速度で剥離した時の剥離強度を、粘着フィルムの粘着剤層の粘着力(N/25mm)とした。
【0063】
<酸価の測定方法>
アクリル系ポリマーの酸価は、試料を溶剤(ジエチルエーテルとエタノールを体積比2:1で混合したもの)に溶かし、電位差自動滴定装置(京都電子工業製、AT-610)を用いて、0.1上記電位差滴定装置を用い、濃度が約0.1mol/lの水酸化カリウムエタノール溶液で電位差滴定を行い、試料を中和するために必要な水酸化カリウムエタノール溶液の量を測定した。そして、下記式より、酸価を求めた。
酸価=(B×f×5.611)/S
B=滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
f=0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S=試料の固形分の質量(g)
【0064】
<ゲル分率の測定方法>
エージング終了後、偏光板に貼り合わせる前の測定試料の質量を正確に測定し、トルエン中に24時間浸漬後、200メッシュの金網で濾過する。その後、濾過物を100℃、1時間乾燥した後、残渣の質量を正確に測定して、以下の式から粘着剤層(架橋後の粘着剤)のゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=不溶部分質量(g)/粘着剤質量(g)×100
【0065】
<耐久性の試験方法>
粘着力の測定と同様の方法で作成した10cm角の粘着フィルムを、同様の方法で無アルカリガラスの非錫面に貼り合わせて作成した試料を、所定の雰囲気(80℃dry雰囲気、または60℃×90%RHの雰囲気)下に250時間放置後、23℃×50%RH雰囲気下に取り出し、1時間後に粘着フィルムの状態を目視で観察して耐久性を判断した。
○・・粘着フィルムの剥がれ及び発泡が全くない。
△・・粘着フィルムの一部に剥がれ及び発泡が発生している。
×・・粘着フィルムの全体に剥がれ及び発泡が発生している。
【0066】
<比誘電率及び誘電損失の測定方法>
厚みが1000μmの粘着剤層を、測定試料とした。LCRメーターを使用し、測定試料をLCRメーターの治具に挟み、100~200kHzの周波数で比誘電率及び誘電損失を測定した。
【0067】
<オンセルパネル応答性>
厚みが20μmの粘着剤層が片面積層された偏光板を、オンセルパネル(TOD、Touch On Display)に貼り合わせた後、偏光板の表面からタッチ操作を行ない、タッチ操作する場所を変えて行った場合の応答反応性を調べ、次の基準で評価した。
○・・応答反応性が良好。
×・・応答反応性が不良。
【0068】
<リワーク性の試験方法>
粘着力の測定と同様の方法で作成した10cm角の粘着フィルムを、同様の方法で無アルカリガラスの非錫面に貼り合わせて作成した試料を、70℃の雰囲気下に10日間放置後、23℃の雰囲気下に取り出し、1時間放置後の粘着フィルムの粘着力を測定してリワーク性を判断した。
○・・70℃×10日後の粘着力が1.5~10N/25mmである。
△・・70℃×10日後の粘着力が10N/25mmより大きいが、20N/25mm以下である。
×・・70℃×10日後の粘着力が20N/25mmより大きい(剥がすことができない)。
【0069】
表3、及び表4に、評価結果を示す。
【0070】
【0071】
【0072】
本発明に係わる粘着フィルムである、実施例1~4の粘着フィルムは、厚み25μmの粘着剤層を23℃×10日経過させた後の粘着力が1.5~10N/25mmの範囲であり、架橋後の粘着剤層のゲル分率が40~75%であり、架橋後の粘着剤層の重量平均分子量が30万~200万であり、アクリル系ポリマーの酸価が0.1以下であり、密着性及び耐久性が優れていた。また、実施例1~4の粘着フィルムを、被着体に貼り合わせた後、70℃×10日後の粘着力が1.5~10N/25mmの範囲であることにより、リワーク性にも優れていた。すなわち、実施例1~4の粘着フィルムによれば、従来技術における要求事項および問題を克服することができた。
【0073】
比較例1の粘着フィルムは、アクリル系ポリマーの構成モノマーがブチルアクリレートを含まず、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー及びカルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含み、粘着剤層のゲル分率が低く、架橋後の粘着剤層の重量平均分子量が小さく、アクリル系ポリマーの酸価が高かった。これらの影響によるためか、粘着剤層の厚みが25μmのときの、粘着剤層の粘着力が強く、80℃dryの耐久性にやや劣り、60℃×90%RHの雰囲気下での耐久性に劣り、リワーク性にやや劣っていた。また、比誘電率及び誘電損失が高く、オンセルパネル応答性は不良であった。
【0074】
比較例2の粘着フィルムは、アクリル系ポリマーの構成モノマーが芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含み、水酸基含有共重合性ビニルモノマーの含有量が多く、架橋剤の添加量が多く、ゲル分率が高かった。これらの影響によるためか、粘着剤層の厚みが25μmのときの、粘着剤層の粘着力が強く、60℃×90%RHの雰囲気下での耐久性に劣り、リワーク性にやや劣っていた。また、誘電損失が高く、オンセルパネル応答性は不良であった。
【0075】
比較例3の粘着フィルムは、架橋剤を含まないため、アクリル系ポリマーが架橋せず、ゲル分率は0であり、架橋後の粘着剤層の重量平均分子量が小さかった。また、アクリル系ポリマーがカルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含み、酸価が高い。これらの影響によるためか、粘着剤層の厚みが25μmのときの、粘着剤層の粘着力が非常に強く、耐久性、及びリワーク性に劣っていた。また、比誘電率が高く、オンセルパネル応答性は不良であった。
【0076】
このように、比較例1~3の粘着フィルムでは、従来技術における要求事項および問題を克服することができなかった。
【符号の説明】
【0077】
1…タッチパネル、2…液晶パネル、3…バックライトユニット、4…空間、5…タッチパネルを搭載した液晶パネル、10…タッチセンサー、11,12…ガラス基板、13…カラーフィルタ、14,15…偏光板、16…透明電極、17…TFT電極、18…液晶層、20…液晶パネル、30…バックライトユニット、40…オンセル方式のタッチパネルを搭載した液晶パネル。