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特許7397160表示制御装置、表示制御装置の作動方法、および表示制御装置の作動プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】表示制御装置、表示制御装置の作動方法、および表示制御装置の作動プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20231205BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231205BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20231205BHJP
   B41J 29/42 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G06F3/12 356
G06F3/12 344
G06F3/12 308
B41J2/01 501
B41J2/21
B41J29/42 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022212332
(22)【出願日】2022-12-28
【審査請求日】2023-03-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河本 匠真
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-106472(JP,A)
【文献】特開2021-066026(JP,A)
【文献】特開2015-183064(JP,A)
【文献】モルフォ蝶やタマムシと同じ発色現象で高い意匠性を実現する加飾技術「構造色インクジェット技術」新開発,[online],[令和5年4月10日検索],富士フイルム株式会社,2022年03月23日,全文,全図,インターネット<https://www.fujifilm.com/jp/ja/news/list/7724>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/12
B41J29/00-29/70
B41J2/01;2/165-2/20;2/21-2/215
B41J5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを用いて記録媒体に印刷される印刷画像をプレビュー表示する表示画面を制御する表示制御装置であって、
前記印刷画像は、前記インクとして構造に起因する光学現象によって色が変化する構造色インクを用いて印刷され、視認する角度によって色が変化する印刷画像であり、
プロセッサを備えており、
前記プロセッサは、前記構造色インクに応じた色変換処理を施すことにより、前記印刷画像を異なる角度から視認した場合の前記角度に応じた複数のプレビュー画像を前記表示画面に表示する
表示制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記角度の指定を受け付ける
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、ユーザの操作によって姿勢を変化させることが可能なオブジェクトを前記表示画面に表示し、
前記オブジェクトの姿勢に応じて、前記角度の指定を受け付ける
請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記オブジェクトは、前記プレビュー画像である
請求項3に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記オブジェクトは、前記プレビュー画像とは別のオブジェクトである
請求項3に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記角度の指定は、予め設定された複数の角度の中から選択させるか、あるいは任意の数値の入力により受け付ける
請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、予め設定された複数の角度に対応する複数の前記プレビュー画像を表示する
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項8】
前記表示画面には、前記角度の指定を受け付ける領域が設けられている
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項9】
インクを用いて記録媒体に印刷される印刷画像をプレビュー表示する表示画面を制御する表示制御装置の作動方法であって、
前記印刷画像は、前記インクとして構造に起因する光学現象によって色が変化する構造色インクを用いて印刷され、視認する角度によって色が変化する印刷画像であり、
前記表示制御装置はプロセッサを備えており、
前記プロセッサは、前記構造色インクに応じた色変換処理を施すことにより、前記印刷画像を異なる前記角度から視認した場合の前記角度に応じた複数のプレビュー画像を前記表示画面に表示する処理を実行する、
表示制御装置の作動方法。
【請求項10】
インクを用いて記録媒体に印刷される印刷画像をプレビュー表示する表示画面を制御する表示制御装置としてコンピュータを機能させるための表示制御装置の作動プログラムであって、
前記印刷画像は、前記インクとして構造に起因する光学現象によって色が変化する構造色インクを用いて印刷され、視認する角度によって色が変化する印刷画像であり、
前記構造色インクに応じた色変換処理を施すことにより、前記印刷画像を異なる前記角度から視認した場合の前記角度に応じた複数のプレビュー画像を前記表示画面に表示する処理を前記コンピュータに実行させる、
表示制御装置の作動プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、表示制御装置、表示制御の作動方法、および表示制御装置の作動プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に印刷される印刷画像をプレビュー表示する表示画面を制御する表示制御装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の表示制御装置は、レンチキュラシートに印刷される印刷画像をプレビューすることが可能である。レンチキュラシートは、印刷画像が印刷された記録媒体とレンチキュラレンズとを組み合わせたものである。レンチキュラレンズは、周知のように、短冊状の複数の突条レンズが配列されたレンズである。記録媒体には、印刷画像として、例えば、2種類の第1画像と第2画像が印刷されており、第1画像と第2画像とはそれぞれ突条のレンズの幅に応じた短冊状の画像に分割された状態で、第1画像と第2画像のそれぞれの短冊状の画像は複数の突条レンズの配列方向に沿って交互に配列される。
【0003】
レンチキュラシートでは、レンチキュラレンズの作用によって視認する角度に応じて、第1画像と第2画像のいずれかの短冊状の画像が選択的に視認される。このため、視認する角度を変えると、視認される印刷画像が第1画像と第2画像との間で切り替わる。これにより、レンチキュラシートでは、視認する角度を変化させることにより、第1画像と第2画像の色および絵柄などの変化を楽しむことが可能である。また、レンチキュラシートでは、左右の目の視差に起因して生じる左右の目のそれぞれが視認する角度の差を利用して、第1画像と第2画像に基づく仮想的な立体画像を視認させることも可能となる。
【0004】
レンチキュラシートにおいて、記録媒体への印刷には通常のインクが用いられる。通常のインクとは、特定の波長域の光を反射し、その他の波長域の光を吸収することにより発色する色材を用いたインクである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-33016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、通常のインクと異なる発色原理を持つ構造色インクが知られている。構造色インクは、通常のインクと異なり、それ自体は透明であるが、光の屈折、干渉、回折、および散乱などインクの構造に起因する光学現象によって発色するインクをいう。構造色インクの種類によっては、視認する角度によって印刷画像の色が変化する。このように構造色インクは、通常のインクと著しく異なる発色原理を有している。そのため、構造色インクを用いる場合において、印刷画像がどのように見えるかについて、印刷前にユーザが想像するのが非常に難しいという問題があった。
【0007】
特許文献1では、視認する角度によって複数の印刷画像が切り替わるレンチキュラシートにおいて、切り替わる印刷画像のプレビュー画像を表示しているが、これは複数の印刷画像を選択的に表示しているのみである。対して、構造色インクは構造に起因する光学現象によって色が変化するものであり、レンチキュラシートのように単に表示する複数の印刷画像を切り替えるだけでは、構造色インクを用いた印刷画像について視認する角度に応じた適切なプレビュー画像を表示することができない。
【0008】
本開示の技術は、構造色インクで印刷された印刷画像について視認する角度による色の変化を印刷前に確認することができる表示制御装置、表示制御装置の作動方法、および表示制御装置の作動プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の表示制御装置は、インクを用いて記録媒体に印刷される印刷画像をプレビュー表示する表示画面を制御する表示制御装置であって、印刷画像は、インクとして構造に起因する光学現象によって色が変化する構造色インクを用いて印刷され、視認する角度によって色が変化する印刷画像であり、プロセッサを備えており、プロセッサは、構造色インクに応じた色変換処理を施すことにより、印刷画像を異なる角度から視認した場合の角度に応じた複数のプレビュー画像を表示画面に表示する。
【0010】
プロセッサは、例えば、角度の指定を受け付ける。
【0011】
プロセッサは、例えば、ユーザの操作によって姿勢を変化させることが可能なオブジェクトを表示画面に表示し、オブジェクトの姿勢に応じて、角度の指定を受け付ける。
【0012】
オブジェクトは、例えば、プレビュー画像である。
【0013】
オブジェクトは、例えば、プレビュー画像とは別のオブジェクトである。
【0014】
角度の指定は、例えば、予め設定された複数の角度の中から選択させるか、あるいは任意の数値の入力により受け付ける。
【0015】
プロセッサは、例えば、予め設定された複数の角度に対応する複数のプレビュー画像を表示する。
【0016】
表示画面には、例えば、角度の指定を受け付ける領域が設けられている。
【0017】
本開示の表示制御装置の作動方法は、インクを用いて記録媒体に印刷される印刷画像をプレビュー表示する表示画面を制御する表示制御装置の作動方法であって、印刷画像は、インクとして構造に起因する光学現象によって色が変化する構造色インクを用いて印刷され、視認する角度によって色が変化する印刷画像であり、表示制御装置はプロセッサを備えており、プロセッサは、構造色インクに応じた色変換処理を施すことにより、印刷画像を異なる角度から視認した場合の角度に応じた複数のプレビュー画像を表示画面に表示する処理を実行する。
【0018】
本開示の表示制御装置の作動プログラムは、インクを用いて記録媒体に印刷される印刷画像をプレビュー表示する表示画面を制御する表示制御装置としてコンピュータを機能させるための表示制御装置の作動プログラムであって、印刷画像は、インクとして構造に起因する光学現象によって色が変化する構造色インクを用いて印刷され、視認する角度によって色が変化する印刷画像であり、
構造色インクに応じた色変換処理を施すことにより、印刷画像を異なる角度から視認した場合の角度に応じた複数のプレビュー画像を表示画面に表示する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の技術によれば、構造色インクで印刷された印刷画像について視認する角度による色の変化を印刷前に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】操作端末とプリンタとを備えたプリントシステムを示す図である。
図2】色素の発色原理を示す図である。
図3】色素を有する通常のインクの発色原理を示す図である。
図4】構造体の発色原理を示す図である。
図5】構造色インクの発色原理を示す図である。
図6図5とは背景の色が異なる構造色インクの発色原理を示す図である。
図7】背景が黒色の場合において視認する角度に応じた色の変化を示す図である。
図8】背景が白色の場合において視認する角度に応じた色の変化を示す図である。
図9】視認する角度によって色が変化する原理を説明する図である。
図10】操作端末のハードウェア構成図である。
図11】操作端末の機能ブロック図である。
図12】プレビュー画像の表示画面を示す図である。
図13】視認する角度が変化した場合のプレビュー画像の表示画面を示す図である。
図14図13とは異なる方向に視認する角度が変化した場合のプレビュー画像の表示画面を示す図である。
図15】背景が白色の場合のプレビュー画像の表示画面を示す図である。
図16】背景が白色の場合で、かつ、視認する角度が変化した場合のプレビュー画像の表示画面の図である。
図17】異なる色の領域を含む背景を用いた場合のプレビュー画像を示す図である。
図18】印刷画像および背景の選択画面を示す図である。
図19】操作端末の動作手順を示すフローチャートである。
図20】印刷画像のバリエーションを示す図である。
図21】視認する角度が異なる複数のプレビュー画像を並列的に表示する表示画面を示す図である。
図22】背景が異なる複数のプレビュー画像を並列的に表示する表示画面を示す図である。
図23】視認する角度が異なる複数のプレビュー画像を切り替え表示する表示画面を示す図である。
図24】背景が異なる複数のプレビュー画像を切り替え表示する表示画面を示す図である。
図25】視認する角度を指定するツールの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一例として図1に示すように、プリントシステム10は、プリンタ11と、操作端末12とを備えている。プリンタ11は、インクを用いて印刷画像21を紙などの記録媒体22に印刷し、印刷物23を出力する。プリンタ11は、一例として、記録媒体22の記録面22Aに対して、インクの液滴を噴出することにより印刷画像21を印刷するインクジェット方式のプリンタである。操作端末12は、プリンタ11を操作する操作端末であり、印刷画像21の指定、印刷条件の設定、印刷開始指示などの操作指示の入力が可能である。操作端末12は、印刷前に印刷画像21をプレビュー表示する表示画面26を表示する機能を有している。プレビュー表示とは、プレビュー画像を表示画面26に表示することを意味する。操作端末12は、本開示の技術に係る表示制御装置の一例である。
【0022】
プリンタ11は、インクとして構造色インク40(図5および図6などを参照)を用いる。構造色インク40とは、色素を含有する通常のインクとは異なり、インク自体は無色であるが、光の屈折、干渉、回折、および散乱などインクの構造に起因する光学現象によって発色するインクをいう。構造色インク40の種類によっては、視認する角度によって印刷画像21の色が変化したり、背景によっては色を含む見え方が変化する。
【0023】
図2図9を参照しながら、構造色インク40について説明する。まず、図2および図3を用いて、比較対象の通常のインク30の発色原理を説明する。通常のインク30(図3参照)は特定の波長の光を反射し、他の波長域の光を吸収する色素を有している。図2に示すように、りんご31の皮は赤色の色素32を有しており、赤色の色素32は、太陽および蛍光灯などの白色光源33が発する白色光WLが照射されると、白色光WLに含まれる赤色成分(以下、R光という)を反射し、それ以外の成分は吸収する。図2および図3において、白色光WLには、R光のほか、緑色成分(以下、G光という)、青色成分(以下、B光)、および紫色成分(以下、V光)が含まれており、赤色の色素32は、R光以外のG光、B光、およびV光を吸収する。
【0024】
りんご31を視認する視認者34に対しては、反射されたR光のみが目に入射するため、りんご31は赤色と認識される。図3に示すように、通常のインク30は、一例として顔料を色素32として含有している。通常のインク30を用いて印刷画像21を記録媒体22に印刷すると、記録媒体22の記録面22Aに通常のインク30が付着し、記録面22Aが着色される。通常のインク30は、りんご31の皮と同様に、色素32の作用によって、R光など特定の波長域の光を反射し、他の波長域の光を吸収する。通常のインク30は、このような色素32の光の反射および吸収の作用によって発色し、色が認識される。
【0025】
これに対して、図4に示すように、構造色とは、構造体41の微細構造に起因して発色する色をいう。構造体41の典型例としては、蝶々43などの昆虫の羽が挙げられる。構造体41は、それ自体は無色であるが、光の屈折、干渉、回折、および散乱など構造体41の微細構造に起因して生じる光学現象によって発色する。一例として、図4に示す構造体41は、ある角度から視認する場合は、青色に見える構造体41である。例えば、ある角度から視認する場合は、照明光である白色光WLのうち、光の干渉作用によって特定の波長域の光が強調される光学特性を有している。図4に示す例では、構造体41は、照明光である白色光WLのうち、光の干渉作用によってB光が強調される光学特性を有する。図4では、このような発色原理を模式的に示している。すなわち、構造体41の界面で反射する反射光量はB光が多く、それ以外のV光、G光、およびR光は反射光量が相対的に少なく、構造体41を透過する。視認者34の目には、構造体41の界面での反射光量が相対的に大きなB光が強く認識されるため、視認者34の視点からは構造体41は青色と認識される。もちろん、構造体41内の乱反射などの作用によってB光以外の光が視認者34の目に入射する場合もある。その場合には、青色が支配的はあるが、純粋な青色ではなく、他の色が混ざった色として認識される。
【0026】
また、構造体41の内部の破線で示すように、反射しないB光の残りは、構造体41の内部に入射する。構造色インク40の内部に入射したB光は、構造体41の界面で反射を繰り返すことにより、構造色インク40の内部に留まり、再度構造体41の外部に出射する光量は少ない。また、後述するように、構造体41の種類によっては、視認する角度によって色が変化する特性を有しており、このような構造体41では、ある角度が視認する場合はB光が強調されるが、別の角度から視認する場合は別の色の光が強調される。
【0027】
図5および図6に示す構造色インク40は、図4に示す構造体41のような光学特性を有する微細構造を人工的に形成したインクである。具体的には、構造色インク40は、光の波長に対応するオーダの厚みを有し、光の干渉を生じさせる薄膜構造または多層膜構造の他、光の波長に対応するオーダの幅を有し、光の回折を生じさせる凹凸構造などを形成したものである。
【0028】
(構造色インクの色の背景依存性)
本例の構造色インク40は、光を吸収する特性を有する通常のインク30と異なり、光を透過する特性を有しているため、構造色インク40を用いて印刷された印刷画像21は、背景の影響を受けて色が変化する。すなわち、構造色インク40の色は、背景の色に依存する背景依存性を有する。図5および図6を用いて、構造色インク40の色の背景依存性について説明する。図5は、記録面22Aが黒色(図5においてKは黒色を意味する)の記録媒体22に、構造色インク40を用いて印刷画像21を印刷した状態を示す。図6は、記録面22Aが白色(図6においてWは白色を意味する)の記録媒体22に、構造色インク40を用いて印刷画像21を印刷した状態を示す。ここで、記録媒体22について、記録面22Aの色が黒色(K)か白色(W)かを区別する場合には、記録媒体22(K)または記録媒体22(W)というように符号に細別符号を付す。記録面22Aの色は、記録媒体22自体の色であり、印刷画像21の下地となる。記録面22Aも、本開示の技術に係る「背景」の一例である。また、図5および図6に示す例では、記録面22Aは、構造色インク40ではなく、色素32を含んでおり、色素32の光の吸収と反射の作用によって黒色または白色に発色する。
【0029】
図5に示すように、構造色インク40の背景が黒色(K)である場合は、構造色インク40を透過する光は黒色(K)の背景によって吸収されてしまう。そのため、白色光WLのうち、構造色インク40において反射する反射光量が相対的に大きなB光の色が、視認者34に強く認識される。そのため、背景が黒色(K)である場合、視認者34が視認する構造色インク40の色は青色となる。
【0030】
これに対して、図6に示すように、構造色インク40の背景が白色(W)である場合は、構造色インク40を透過する光は白色(W)の背景によって反射する。そして、白色(W)の背景で反射した光は構造体41の内部を透過し、白色光WLが入射した面から出射する。そのため、白色光WLのうち、B光以外の光(V光、G光およびR光)も、視認者34の目に入射する。つまり、B光を含めた白色光WLの成分は、視認者34の目に入射することになる。しかし、構造色インク40の内部に入射したB光は、構造体41の界面で反射を繰り返すことにより、構造色インク40の内部に留まってしまう。そのため、視認者34の目に向かう光の中では、B光以外の光よりも相対的に光量が低下する。その結果として、視認者34の目に入射する光は、B光以外の光が支配的となり、視認者34には、背景が白の場合の構造色インク40は、青色の補色である黄色(図6においてYで示す)に認識される。このように、通常のインク30と異なり、構造色インク40は光を透過する特性を有しているため、構造色インク40を用いて印刷された印刷画像21は、背景によって色が変化する。
【0031】
(構造色インクの色の角度依存性)
また、本例の構造色インク40による印刷画像21は、視認する角度αによって色が変化する。すなわち、本例の構造色インク40の色は、印刷画像21を視認する角度αによって色が変化するという角度依存性を有している。図7および図8を用いて、構造色インク40の色の角度依存性について説明する。図7および図8は、構造色インク40で印刷された印刷画像21を視認者34が視認する角度αによって色が変化する様子を示している。視点VP1は、記録面22Aの法線方向、すなわち印刷画像21を正面から視認する視点である。ここで、視認する角度αは、記録面22Aの法線を基準とする傾斜角度で定義される。印刷画像21を正面から視認する視点VP1は視認する角度αの基準となるので「0°」である。視点VP2の視認する角度αは「45°」、視点VP3の視認する角度αは「60°」をそれぞれ例示している。図7は、記録面22Aが黒色(K)の記録媒体22(K)を用いており、図8は記録面22Aが白色(W)の記録媒体22(W)を用いており、背景の色が異なっている。
【0032】
また、図7および図8に示す構造色インク40は、図7の視点VP1に示すように、背景が黒色(K)で、かつ正面から視認する場合(視認する角度αが「0°」の場合)に赤色(R)に認識されるインクを用いている。すなわち、構造色インク40は、照明光である白色光WLのうち、記録面22Aの法線方向に反射するR光の反射光量が相対的に多く、R光以外の残りのV光、B光およびG光の反射光量は相対的に少ない。R光以外の光は、構造色インク40の内部を透過して背景に到達するが、背景は黒色であるため吸収される。そのため、視点VP1から視認する場合は、R光の色が強く認識される。
【0033】
また、本例の構造色インク40は、背景が黒色(K)の場合、視認する角度αが大きくなるにつれて、認識される色が短波長側に変化する。すなわち、視点VP2に示すように、視認する角度αが「45°」の場合は、R光よりも波長が短いG光の反射光量が多くなり、緑色(G)に認識される。さらに、視点VP3に示すように、視認する角度αが「60°」の場合は、G光よりも波長が短いB光の反射光量が多くなり、青色(B)に認識される。
【0034】
図8は、背景の色が白色の記録媒体22(W)を用いた例を示す。構造色インク40は、図7と同様である。図6で説明したとおり、構造色インク40は、背景が白色(W)の場合に認識される色と、背景が黒色(K)の場合に認識される色は、補色関係になる。例えば、図8の視点VP1に示すように、背景が白色(W)の場合は、R光以外のV光、B光およびG光は、背景で反射して、記録面22Aの法線方向に向かう。R光の一部は反射して法線方向に向かうが、残りは構造色インク40に入射して内部に留まってしまうため、相対的に反射光量が少なくなる。そのため、視点VP1に位置する視認者34の目に向かう反射光量としては、R光以外のV光、B光およびG光が支配的となり、認識される色は、赤色(R)の補色であるシアン(C)となる。
【0035】
また、図7に示したように、本例の構造色インク40は、背景が黒色(K)の場合、視認する角度αが大きくなるにつれて、認識される色が短波長側に変化する。図8に示す背景が白色(W)の場合は、視点VP1と同様に、図7に示す各視点VP2および視点VP3で認識される色に対する補色が認識される。すなわち、視認する角度αが「45°」の視点VP2で認識される色は、図7の視点VP2で認識された緑色(G)の補色であるマゼンタ(M)となる。視認する角度αが「60°」の視点VP3で認識される色は、図7の視点VP3で認識された青色(B)の補色である黄色(Y)となる。
【0036】
こうした構造色インク40の色の角度依存性は、図9に示すように、一例として、光線Ryの光路差ΔOPによって説明することができる。ここで、図9に示すように、構造色インク40に対して同じ入射角度βで入射し、反射によって入射角度βと同じ出射角度βで構造色インク40を出射する白色光WLの2つの光線Ryを考える。2つの光線Ryは、一方は構造色インク40の表面側の界面で反射し、他方は構造色インク40にいったん入射した後、構造色インク40の背面側の界面で反射する。図9(A)は入射角度及び出射角度がβ(A)であり、構造色インク40の表面側の界面で反射する光線をRyA1およびRyA2と示す。図9(B)は入射角度及び出射角度がβ(B)であり、2つの光線Ryを、それぞれRyB1およびRyB2と示す。
【0037】
図9(A)において、光線RyA1と光線RyA2の光路差ΔOP(A)は、2D(A)である。2つの光線RyA1と光線RyA2が光の干渉によって強調される波長λの条件式は、nλ=2D(A)であり、nは1以上の整数である。光線RyA1および光線RyA2の波長λが、条件式を満たす場合に、光の干渉によって強調される。図9(B)においても同様である。光線RyB1と光線RyB2の光路差ΔOP(B)は、2D(B)である。2つの光線RyB1と光線RyB2が光の干渉によって強調される光の波長λの条件式は、nλ=2D(B)である。光線RyB1および光線RyB2の波長λが、条件式を満たす場合に、光の干渉によって強調される。光路差ΔOPは、入射角度及び出射角度のβが小さいほど、大きくなる。図9において、β(A)<β(B)の関係にあり、光路差ΔOP(A)と光路差ΔOP(B)は、OP(A)>OP(B)の関係にある。このように、2つの光線Ryの光路差ΔOPが小さいほど、干渉によって強調される光の波長λは短くなる。光路差ΔOPは、βが大きいほど、小さい。図9に示すβは、図7および図8で示した視認する角度αに対応する。したがって、視認者34が視認する角度αが大きいほど、干渉によって強調される光の波長λが小さくなる。すなわち、視認する角度αが大きいほど、視認者34によって認識される色が短波長側に変化する。
【0038】
このように、構造色インク40の色の角度依存性は、光の干渉を一例として説明することができる。なお、図9は、概念図であり、構造色インク40の界面における屈折などについては省略している。
【0039】
図1に示すプリンタ11には、例えば、視認する角度αが「0°」の場合に認識される色が、青色(B)、緑色(G)および赤色(R)の3色の構造色インク40がセットされる。印刷は、例えば、印刷画像21の画像データのBGRの各色の画素値に、構造色インク40のBGRの色を対応させることにより、実行される。
【0040】
図1に示す操作端末12は、このような構造色インク40を用いてプリンタ11によって印刷される印刷画像21をプレビュー表示する機能を有している。
【0041】
一例として図10に示すように、操作端末12は、パーソナルコンピュータなどのコンピュータで構成されており、ストレージ50、メモリ51、CPU(Central Processing Unit)52、通信部53、ディスプレイ54、および入力デバイス55を備えている。これらはバスライン56を介して相互接続されている。
【0042】
ストレージ50は、操作端末12を構成するコンピュータに内蔵、またはケーブル、ネットワークを通じて接続されている。ストレージ50は、例えばハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブなどで構成されている。ストレージ50には、オペレーティングシステム等の制御プログラム、各種アプリケーションプログラム57(以下、APという)、およびこれらのプログラムに付随する各種データ等が記憶されている。
【0043】
メモリ51は、CPU52が処理を実行するためのワークメモリである。CPU52は、ストレージ50に記憶されたプログラムをメモリ51へロードして、プログラムにしたがった処理を実行する。これによりCPU52は、コンピュータの各部を統括的に制御する。なお、メモリ51は、CPU52に内蔵されていてもよい。
【0044】
通信部53は、プリンタ11および外部ストレージなどとの各種情報の伝送制御を行う。ディスプレイ54は表示画面26の他、各種画面を表示する。各種画面にはGUI(Graphical User Interface)による操作機能が備えられる。操作端末12を構成するコンピュータは、各種画面を通じて、入力デバイス55からの操作指示の入力を受け付ける。入力デバイス55は、キーボード、マウス、タッチパネル、および音声入力用のマイク等である。
【0045】
AP57は、例えば、コンピュータを操作端末12として機能させるための作動プログラムである。AP57は、本開示の技術に係る「表示制御装置の作動プログラム」の一例である。操作端末12において、AP57が起動されると、CPU52は、メモリ51等と協働して、図11に示すプロセッサ60として機能する。
【0046】
画像データベース(以下、単にDBという)58は、プリンタ11で印刷する印刷画像21の他、印刷画像21の背景として用いる背景画像61などが格納されている。背景画像61は、本開示の技術に係る「背景」の一例である。上述のとおり、背景は、印刷画像21の下地であり、背景画像61の他、記録媒体22の記録面22Aなども含まれる。操作端末12は、通信部53を介して画像DB58との間で通信可能であり、画像DB58から印刷画像21および背景画像61を取得する。背景画像61は、メーカによって予め登録された画像でもよいし、ユーザによって予め登録された画像でもよい。予め登録された背景画像61は、本開示の技術に係る「登録背景」の一例である。また、画像DB58に格納されておらず、ユーザが任意で入力した背景を用いてもよい。
【0047】
図11に示すように、プロセッサ60は、表示制御部62として機能する。表示制御部62は、操作受付部62Aおよびプレビュー画像生成部62Bを有する。プレビュー画像生成部62Bは、印刷画像21をプリンタ11で印刷する前にプレビューするためのプレビュー画像66を生成する。操作受付部62Aは、入力デバイス55を通じて入力される操作指示を受け付ける。操作指示には、印刷画像21の指定、視認する角度αの指定および背景の指定など、プレビュー画像66を生成するための条件の指定が含まれる。
【0048】
プレビュー画像生成部62Bは、操作受付部62Aが受け付けた操作指示に基づいて、画像DB58から印刷画像21を取得する。そして、プレビュー画像生成部62Bは、印刷画像21と背景とを重ね合わせたプレビュー画像66を生成する。具体的には、プレビュー画像生成部62Bは、印刷画像21の画像データのBGRの各色の画素値と背景の画像データのBGRの画素値とに応じてプレビュー画像66を生成する。プレビュー画像生成部62Bは、第1色変換処理と第2色変換処理を含む色変換処理を実行する。第1色変換処理は、構造色インク40の色の視認する角度αに対する角度依存性を考慮した色変換処理である。第2色変換処理は、構造色インク40の色の背景依存性を考慮した色変換処理である。
【0049】
例えば、AP57は、構造色インク用色変換テーブル(以下、単に色変換テーブルという)57Aを有している。色変換テーブル57Aは、視認する角度αと構造色インク40の色との対応関係を規定したテーブルである。プレビュー画像生成部62Bは、第1色変換処理を実行する際に、操作指示によって指定された視認する角度αに基づいて、色変換テーブル57Aを参照することにより、視認する角度αに対応する色を決定する。図11に示す色変換テーブル57Aは、図7で示したように、視認する角度αが大きくなるにしたがって、色が短波長側に変化する関係を規定したテーブルの例である。なお、色変換テーブル57Aは、テーブル形式ではなく、関数によって規定してもよい。
【0050】
また、プレビュー画像生成部62Bは、記録媒体22の記録面22Aの色および背景画像61の画像データなど、印刷画像21の背景の色との組み合わせを考慮した色変換処理(以下、第2色変換処理という)を行う。第2変換処理においては、印刷画像21の画像データに対して、図5から図8で示したような背景の色に応じた色変換が行われる。
【0051】
表示制御部62は、生成されたプレビュー画像66を表示する表示画面26をディスプレイ54に出力する。
【0052】
図12図14は、プレビュー画像66を表示する表示画面26の一例を示す。表示画面26は、要素表示領域26A、プレビュー表示領域26Bおよび角度指定領域26Cを有する。要素表示領域26Aは、プレビュー画像66を生成する際の要素となる印刷画像21と背景72とを表示する領域である。図12図14においては、印刷画像21として、四角形の図形71が中央に描かれた画像が表示されている。図形71の内部は赤色(R)一色である。また、図12図14においては、背景72として「黒無地」が指定されている。黒無地は、例えば、図5および図7などで示した記録面22Aが黒色(K)の記録媒体22(K)を使用する場合に指定される。
【0053】
プレビュー表示領域26Bは、プレビュー画像66が表示される領域である。表示画面26には、要素表示領域26Aにおいて、印刷画像21と組み合わされていない状態の背景72が表示され、プレビュー表示領域26Bにおいて、印刷画像21と背景72とを重ね合わせたプレビュー画像66が表示される。このように、表示画面26には、プレビュー画像66と、印刷画像21と組み合わされていない状態の背景72とがそれぞれ表示される。
【0054】
また、要素表示領域26Aに表示される印刷画像21は、正確には、指定された背景72によって色が変化する前の状態の画像である。プレビュー画像66の色は、背景72によって影響を受けるため、要素表示領域26Aにおいて、背景72によって色が変化する前のオリジナルな状態の印刷画像21を確認できるようにしている。図12に示す印刷画像21は、中央に四角形の図形71が描かれるのみで、その周囲は余白となっており、何も描かれていない。プレビュー画像66に示すように、背景72と組み合わされた印刷画像21は、図形71および余白部分を含めた全域が背景72の影響を受けて、オリジナル状態から色が変化する。
【0055】
角度指定領域26Cは、視認する角度αの指定を受け付ける領域である。角度指定領域26Cには、角度指定用の第1指定ツール73および第2指定ツール74が設けられている。第1指定ツール73および第2指定ルール74は、それぞれGUIの構成要素としてのオブジェクトである。第2指定ツール74は、本開示の技術に係る「オブジェクト」または「プレビュー画像とは別のオブジェクト」の一例である。
【0056】
第1指定ツール73は、縦長の楕円形と横長の楕円形とを組み合わせた形態であり、各楕円形上を移動可能な球形のスライダ73Aを有している。マウスなどのポインタ76によってスライダ73Aを操作することにより、視認する角度αが指定される。また、第1指定ツール73は、視認する角度αを指定するツールであることに加えて、スライダ73Aの位置によって指定した角度αを表示するインジケータとしても機能する。また、第2指定ツール74は、四角形のオブジェクトであり、ポインタ76によって姿勢を変化させることが可能である。第2指定ツール74の姿勢を変化させることにより、視認する角度αの指定が行われる。第2指定ツール74も、第1指定ツール73と同様に、姿勢によって指定した角度αを表示するインジケータとしても機能する。第2指定ツール74は、四角形の内部には、縦線と横線が交差する格子が表示されており、図13および図14に示すように、姿勢変化に応じて格子の角度も変化する。
【0057】
操作受付部62Aは、第1指定ツール73および第2指定ツール74を通じて視認する角度αの指定を受け付ける。プレビュー画像生成部62Bは、指定された角度αに応じて、プレビュー画像66の色を変化させることに加えてプレビュー画像66の姿勢も変化させる。
【0058】
図12は、視認する角度αが「0°」に指定されており、図7などの視点VP1、すなわち印刷画像21を正面から視認する場合のプレビュー画像66が示されている。一方、図13は、視認する角度αが「45°」に指定されており、印刷画像21を図7などに示す視点VP2から視認する場合のプレビュー画像66が示されている。また、プレビュー画像66の図形71の色は、図12に示すように正面から見た場合は、印刷画像21の元の色である赤色(R)であるが、図13に示すプレビュー画像66では、図形71の色は緑色(G)に変化する。プレビュー画像66においては、角度依存性および背景依存性といった構造色インク40の光学特性に応じた色が再現される。
【0059】
このように、プロセッサ60は、構造色インク40を用いて印刷される印刷画像21を異なる角度(本例における視認する角度α)から視認した場合の角度(本例における視認する角度α)に応じた複数のプレビュー画像66を表示する。
【0060】
図14は、図13と同様に、視認する角度αが「45°」に指定されているが、縦軸回りで回転させた図13のプレビュー画像66と異なり、縦軸と直交する横軸回りで回転させたプレビュー画像66を表示している。
【0061】
図15および図16に示す表示画面26は、背景72として「白無地」が指定されている例である。白無地は、例えば、図6および図8などで示した記録面22Aが白色(W)の記録媒体22(W)を使用する場合に指定される。印刷画像21は、図12図14に示す例と同様に、四角形の赤色(R)の図形71が中央に描かれた画像である。
【0062】
図15は、図12と同様に、視認する角度αの指定が「0°」であり、印刷画像21を正面から視認する場合のプレビュー画像66を表示する例であり、図16は、図13と同様に、視認する角度αの指定が「45°」の場合のプレビュー画像66を表示する。印刷画像21の図形71の色は赤色(R)であるが、図15の例では、背景が白色(W)であるため、プレビュー画像66の図形71の色は、赤色(R)の補色のシアン(C)になる。また、図16に示すように、視認する角度αが「0°」から「45°」に変化した場合は、プレビュー画像66の図形71の色は、図8で示したように、シアン(C)からマゼンタ(M)に変化する。
【0063】
図17に示すように、背景72としては、黒無地または白無地といった記録面22Aの色以外に、背景画像61を用いてもよい。図17に示す背景画像61は、画面を4分割し、対角配置された2組の分割領域がそれぞれ黒色(K)と白色(W)で塗りつぶされた模様を表す画像である。この場合には、図12図16で示した赤色(R)の四角形の図形71が描かれた印刷画像21であっても、図形71の色は、黒(K)と白(W)の領域ごとに異なる。図17のプレビュー画像66に示すように、図形71と、背景画像61の黒色(K)の領域が重なる部分は、赤色(R)であるが、図形71と背景画像61の白色(W)の領域が重なる部分は、赤色(R)の補色のシアン(C)になる。このように、プレビュー画像66は、背景72の色に応じた色変換が施される。
【0064】
図18に示すように、表示画面26には、印刷画像21を指定するための選択画面81と、背景72を指定するための選択画面82とが表示される。選択画面81には、画像DB58に格納され、指定することが可能な複数の印刷画像21のリストが表示される。選択画面82には、画像DB58に格納され、指定することが可能な複数の背景72のリストが表示される。各選択画面81および選択画面82は、例えば、ポインタ76によって印刷画像21または背景72の領域をクリックする操作によってポップアップ表示される。そして、各選択画面81または選択画面82のリストから、印刷画像21または背景72をポインタ76によって選択する操作により、印刷画像21または背景72が指定される。操作受付部62Aは、このような選択操作を通じて、印刷画像21または背景72の指定を受け付ける。選択画面82は、背景72の指定を受け付ける領域の一例である。
【0065】
上記構成による作用について図19を参照しながら説明する。操作端末12を起動して、表示画面26の起動指示が入力されると、プロセッサ60は、表示画面26をディスプレイ54に表示する(ステップST100)。ステップST110において、プロセッサ60は、印刷画像21の指定を待機する(ステップST110でN)。ユーザの操作を通じて印刷画像21の指定を受け付けた場合(ステップST110でY)は、プロセッサ60は、指定された印刷画像21を表示画面26の要素表示領域26Aに表示する(ステップST120)。ステップST130において、プロセッサ60は、背景72の指定を待機する(ステップST130でN)。ユーザの操作を通じて背景72の指定を受け付けた場合(ステップST130でY)は、プロセッサ60は、指定された背景72を表示画面26の要素表示領域26Aに表示する(ステップST140)。印刷画像21と背景72が指定された場合は、ステップST150に移行する。
【0066】
ステップST150において、プロセッサ60は、プレビュー画像生成処理を実行する。プレビュー画像生成処理においては、視認する角度αに応じた第1色変換処理と、指定された背景72の色に応じた第2色変換処理とが実行される。視認する角度αについては、初期設定においては「0°」が設定されている。プロセッサ60は、生成されたプレビュー画像66を表示する。図12に示すような印刷画像21と、黒無地の背景72が指定されている場合には、図12に示すようなプレビュー画像66が表示される(ステップST160)。
【0067】
ステップST170において、プロセッサ60は、角度指定領域26Cを通じて視認する角度αを変更する操作が行われることにより、視認する角度αの指定が更新された場合(ステップST170でY)は、ステップST150に戻り、プレビュー画像66を再生成する。そして、再生成したプレビュー画像66を表示する(ステップST160)。このように、視認する角度αの指定の更新に応じてプレビュー画像66も更新される。
【0068】
ステップST180において、選択画面82を通じて背景72を変更する操作が行われることにより、背景72の指定が更新された場合(ステップST180でY)は、ステップST150に戻り、プレビュー画像66を再生成し、再生成したプレビュー画像66を表示する(ステップST160)。このように、背景72の指定の更新に応じてプレビュー画像66も更新される。
【0069】
ステップST190において、プロセッサ60は、表示画面26を終了する指示があるまで、プレビュー画像66の表示を継続する。
【0070】
なお、当然ながら、印刷画像21が変更された場合は、プロセッサ60は、ステップ150からプレビュー画像生成処理などを実行する。
【0071】
以上説明したとおり、操作端末12を一例として示す本開示の技術に係る表示制御装置において、プロセッサ60は、構造色インク40を用いて印刷される印刷画像21を異なる角度(本例における視認する角度α)から視認した場合の角度(本例における視認する角度α)に応じた複数のプレビュー画像66を表示画面26に表示する。構造色インク40は、視認する角度αによって色が変化する。そのため、本開示の技術によれば、構造色インク40で印刷された印刷画像21について視認する角度αによる色の変化を印刷前に確認することができる。
【0072】
本開示の技術は、プレビュー画像生成処理において、通常のインク30とは異なる構造色インク40の発色原理を前提として、視認する角度αに応じた第1色変換処理を施す構成を備えており、レンチキュラシートのプレビュー画像を表示するといった従来技術のように、単に画像を切り替える装置とは明確に異なる構成を含んでいる。また、構造色インク40は、通常のインク30と発色原理が異なり、視認する角度αに応じた色の変化の仕方が著しく異なるため、そのような色の変化を再現したプレビュー画像66をユーザに提示する必要性も大きい。
【0073】
また、プロセッサ60は、視認する角度αの指定を受け付けるので、ユーザが視認する任意の角度に応じたプレビュー画像66の色の変化を確認することができる。
【0074】
また、プロセッサ60は、ユーザの操作によって姿勢を変化させることが可能なオブジェクト(一例として第2指定ツール74)を表示画面26に表示し、オブジェクトの姿勢に応じて、視認する角度αの指定を受け付ける。そのため、ユーザは、視認する角度αの指定を直感的な操作によって行うことが可能である。
【0075】
なお、上記例では、視認する角度αを指定するツールとして、第1指定ツール73と第2指定ツール74とを例示したが、プレビュー画像66を第2指定ツール74と同様のツールとして使用してもよい。すなわち、例えばポインタ76を通じたユーザの操作によって、姿勢を変化させるオブジェクトとしてプレビュー画像66を機能させる。プロセッサ60は、プレビュー画像66の姿勢を変化させる操作を通じて、視認する角度αの指定を受け付ける。これによれば、より直感的な操作が可能となる。
【0076】
なお、プレビュー画像66を視認する角度αを指定するツールとして機能させる場合は、第1指定ツール73および第2指定ツール74の少なくとも1つを設けなくてもよい。ただし、プレビュー画像66とは別のオブジェクトとして、第1指定ツール73および第2指定ツール74を設けることで次のようなメリットがある。例えば、プレビュー画像66を正面から見た形状が、単純な矩形ではなく、台形および楕円形などの形状の場合もある。この場合は、プレビュー画像66だけでは、姿勢が変化しているのか否かの確認がしづらく、視認する角度αの指定が適切に行われているかをユーザが判断しづらい場合も想定される。そのような場合、第1指定ツール73および第2指定ツール74の少なくとも1つが設けられていれば、これらは姿勢変化のインジケータとしても機能するため、視認する角度αの指定が適切に行われているかをユーザが判断しやすい。
【0077】
また、操作端末12を一例として示す本開示の技術に係る表示制御装置において、プロセッサ60は、構造色インク40を用いて印刷される印刷画像21と背景72とを重ね合わせたプレビュー画像66を表示画面26に表示する。構造色インク40は、背景72によって色が変化する。そのため、本開示の技術によれば、構造色インク40で印刷される印刷画像21と背景72との組み合わせによって生じる見え方の変化を印刷前に確認することができる。
【0078】
本開示の技術は、プレビュー画像生成処理において、通常のインク30とは異なる構造色インク40の発色原理を前提として、背景72の色に応じた第2色変換処理を施す構成を備えており、レンチキュラシートのプレビュー画像を表示するといった従来技術のように、単に画像を切り替える装置とは明確に異なる構成を含んでいる。また、構造色インク40は、通常のインク30と発色原理が異なり、背景72に応じた色の変化の仕方が著しく異なるため、そのような色の変化を再現したプレビュー画像66をユーザに提示する必要性も大きい。
【0079】
また、プロセッサ60は、背景72の指定を受け付けるので、指定された背景72に応じたプレビュー画像66の色を含む見え方の変化を確認することができる。
【0080】
また、プロセッサ60は、ユーザの操作を通じて背景の指定を受け付けるので、ユーザが指定した背景72に応じたプレビュー画像66の色を含む見え方の変化を確認することができる。
【0081】
また、背景72の指定は、予め登録されている複数の登録背景の中から選択させるか、あるいは任意の背景を入力させることにより受け付ける。そのため、ユーザの背景選択の自由度が大きい。
【0082】
また、表示画面26には、印刷画像21と背景72とを重ね合わせたプレビュー画像66と、印刷画像21と組み合わされていない状態の背景72とがそれぞれ表示される。そのため、プレビュー画像66と背景72の両方を対照しながら確認することができる。
【0083】
また、表示画面26には、印刷画像21と背景72とを重ね合わせたプレビュー画像66と、背景72によって色が変化する前の状態の印刷画像21がそれぞれ表示される。そのため、背景72によって色が変化したプレビュー画像66と、背景72によって色が変化する前の状態の印刷画像21との両方を対照しながら確認することができる。
【0084】
表示画面26には、選択画面82を一例として示したように、背景72の指定を受け付ける領域が設けられている。そのため、GUIによる直感的な操作で背景72の指定を受け付けることができる。
【0085】
「変形例」
図20図25を参照しながら種々の変形例を説明する。図20に示すように、印刷画像21としては、図形71以外でも、一例として「LOGO」で示すような文字、一例として波線で示すような模様、一例として蝶々で示すような絵柄または写真のいずれでもよい。特に、図4に示す構造体41のような羽根を有する生物または物体の画像を印刷画像21として用いることで、構造色インク40の効果により、実際の構造体41の色の変化を再現するといったことも可能となる。また、印刷画像21だけではなく、背景72についても、文字、図形、絵柄、模様および写真といった画像を使用することが可能である。
【0086】
上記例においては、図12および図13に示したように視認する角度αに応じた複数のプレビュー画像66を選択的に表示する例を示したが、図21に示す表示画面26のように、プレビュー表示領域26Bにおいて、視認する角度αに応じた複数のプレビュー画像66を並列的に表示してもよい。並列的に表示するため、視認する角度αが異なる複数のプレビュー画像66を対照しながら確認することができる。
【0087】
また、図21に示すように、視認する角度αを指定するツールとして、任意の数値の入力により受け付ける第3指定ツール86を設けてもよい。第3指定ツール86は、例えば、縦軸回りの角度と、縦軸と直交する横軸回りの角度の両方を数値入力により指定することができるツールである。また、第3指定ツール86によれば、複数のプレビュー画像66で指定された角度αを表示することができる。
【0088】
また、図22に示すように、1つの印刷画像21について、異なる背景72を組み合わせた複数のプレビュー画像66を並列的に表示してもよい。図22の例では、1つの印刷画像21について、白無地の背景72Aと重ね合わせたプレビュー画像66Aと、黒無地の背景72Bと重ね合わせたプレビュー画像66Bとを並列的に表示している。図22において、複数のプレビュー画像66のそれぞれの背景72の指定は、ユーザが任意に指定してもよいし、予め登録された複数の登録背景の中からプロセッサ60が選択した登録背景を用いてもよい。このように、背景72が異なる複数のプレビュー画像66Bを並列的に表示することで、異なる背景72の色の変化を対照させながら確認することができる。
【0089】
また、図23および図24に示すように、複数のプレビュー画像66を設定された時間間隔で切り替え表示してもよい。時間間隔は、予め設定されていてもよいし、任意の間隔を指定できてもよい。切り替えの時間間隔は例えば等間隔であるが、等間隔でなくてもよい。図23は、図21で示した視認する角度αが異なる複数のプレビュー画像66を表示する例である。図24は、図22で示した背景72が異なる複数のプレビュー画像66Aおよびプレビュー画像66Bを表示する例である。これによれば、複数のプレビュー画像66を確認する場合にユーザの切り替え操作が不要になるというメリットがある。
【0090】
なお、複数のプレビュー画像66を切り替える際に、プレビュー画像66を回転させたり、フェードアウトさせたり、アニメーションを挿入するといった演出を加えてもよい。
【0091】
また、図25に示す表示画面26は、図21の変形例である。相違点は、視認する角度αを指定するツールとして、第3指定ツール86に代えて第4指定ツール87が設けられている点である。第4指定ツール87は、予め設定された複数の角度(例えば、0°、45°、60°)の中から選択させることにより、視認する角度αを指定するツールである。例えば、複数の角度に対応してラジオボタンが設けられており、ラジオボタンをポインタ76のクリック操作で選択することにより、角度の指定が行われる。
【0092】
また、図25において、視認する角度αは、ユーザが任意に指定するのではなく、プロセッサ60が設定してもよい。この場合、ユーザの指定操作が無い場合でも、プロセッサ60は、予め設定された複数の視認する角度αに対応する複数のプレビュー画像66を表示する。
【0093】
上記実施形態において、構造色インクとして、構造に起因する光の干渉作用によって発色し、色の変化を生じる構造色インク40を例に説明した。これ以外でも、構造色インクとしては、構造に起因する干渉、屈折、回折、および散乱の少なくとも1つを含む光学現象によって発色し、色の変化を生じる構造色インクであればよい。プロセッサ60は、構造色インクの種類に応じた色変換処理を実行することにより、プレビュー画像を生成する。
【0094】
上記実施形態において、通常のインク30または色素32によって着色される背景72と構造色インク40による印刷画像21とを組み合わせる例で説明したが、構造色インク40によって着色される背景72と構造色インク40による印刷画像21とを組み合わせてもよい。この場合には、背景72の構造色インク40と印刷画像21の構造色インク40の組み合わせによる色変換を考慮して、プレビュー画像66が生成される。
【0095】
上記実施形態において、例えば、表示制御部62、操作受付部62A、プレビュー画像生成部62Bといった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(作動プログラムとしてのAP57)との協働によって各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU52に加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0096】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、および/または、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0097】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表
されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0098】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0099】
本開示の技術は、上述の種々の実施形態および/または種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記各実施形態に限らず、要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。さらに、本開示の技術は、プログラムに加えて、プログラムを非一時的に記憶する記憶媒体にもおよぶ。
【0100】
以上に示した記載内容および図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、および効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、および効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容および図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことはいうまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に
係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容および図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0101】
本明細書において、「Aおよび/またはB」は、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「Aおよび/またはB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、AおよびBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「および/または」で結び付けて表現する場合も、「Aおよび/またはB」と同様の考え方が適用される。
【0102】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0103】
10 プリントシステム
11 プリンタ
12 操作端末
21 印刷画像
22 記録媒体
22A 記録面
23 印刷物
26 表示画面
26A 要素表示領域
26B プレビュー表示領域
26C 角度指定領域
30 インク
32 色素
33 白色光源
34 視認者
40 構造色インク
41 構造体
50 ストレージ
51 メモリ
53 通信部
54 ディスプレイ
55 入力デバイス
56 バスライン
57 アプリケーションプログラム(AP)
57A 構造色インク用色変換テーブル(色変換テーブル)
58 画像DB
60 プロセッサ
61 背景画像
62 表示制御部
62A 操作受付部
62B プレビュー画像生成部
66、66A、66B プレビュー画像
71 図形
72、72A、72B 背景
73 第1指定ツール
73A スライダ
74 第2指定ルール
76 ポインタ
81、82 選択画面
86 第3指定ツール
87 第4指定ツール
ΔOP 光路差
α 視認する角度
β 入射角度および出射角度
λ 波長
Ry、RyA1、RyA2、RyB1、RyB2 光線
ST100~ST190 ステップ
VP1、VP2、VP3 視点
WL 白色光
【要約】
【課題】構造色インクで印刷された印刷画像について視認する角度による色の変化を印刷前に確認することができる表示制御装置、表示制御装置の作動方法、および表示制御装置の作動プログラムを提供する。
【解決手段】インクを用いて記録媒体に印刷される印刷画像をプレビュー表示する表示画面を制御する表示制御装置であって、印刷画像は、インクとして構造に起因する光学現象によって色が変化する構造色インクを用いて印刷され、視認する角度によって色が変化する印刷画像であり、プロセッサを備えており、プロセッサは、構造色インクに応じた色変換処理を施すことにより、印刷画像を異なる角度から視認した場合の角度に応じた複数のプレビュー画像を表示画面に表示する表示制御装置。
【選択図】図13
図1
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図3
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