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特許7397195赤外線吸収組成物、膜、光学フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサ
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  • 特許-赤外線吸収組成物、膜、光学フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】赤外線吸収組成物、膜、光学フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサ
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20231205BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20231205BHJP
   C09B 57/00 20060101ALI20231205BHJP
   C09B 57/10 20060101ALI20231205BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20231205BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231205BHJP
   C08K 5/3447 20060101ALI20231205BHJP
   H01L 27/144 20060101ALI20231205BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G02B5/22
C09B67/20 F
C09B57/00 Z
C09B57/10
C09D11/037
C08L101/00
C08K5/3447
H01L27/144 K
H01L27/146 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022532380
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2021017673
(87)【国際公開番号】W WO2021256116
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2020102886
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021031326
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】松村 季彦
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 賢
(72)【発明者】
【氏名】加藤 結美
(72)【発明者】
【氏名】折田 良司
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-263614(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230387(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/054719(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/054718(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/043564(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/020861(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/101189(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/043218(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G02B 5/22
C09B 67/20
C09B 57/00
C09B 57/10
C09D 11/037
C08L 101/00
C08K 5/3447
H01L 27/144
H01L 27/146
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線吸収色素の粒子と、溶剤とを含む赤外線吸収組成物であって、
前記赤外線吸収色素は、式(PP-2)で表される化合物であり、
前記粒子が前記赤外線吸収組成物中において示す極大吸収波長が波長650~1500nmの範囲において2以上存在しており、前記範囲において最も短波側に存在する極大吸収波長での吸光度は、2番目に短波側に存在する極大吸収波長での吸光度を1としたとき0.6~2.0である、赤外線吸収組成物
【化1】
式(PP-2)中、R 1a はアルキル基を表し、
1b は置換基を表し、
、R 、R およびR は、それぞれ独立してシアノ基、またはヘテロアリール基を表し、
およびR は、それぞれ独立して-BR 10 を表し、R およびR 10 は、それぞれ独立してアリール基を表し、
は、脂肪族炭化水素基、-O-もしくはこれらの組み合わせからなるn2+1価の連結基、または単結合を表し、
は、酸基または塩基性基を表し、
n1は0を表し、
n2は1を表し、
mは1を表す。
【請求項2】
前記範囲において最も短波側に存在する極大吸収波長と、2番目に短波側に存在する極大吸収波長との差が30~80nmである、請求項1に記載の赤外線吸収組成物。
【請求項3】
前記粒子の最も短波側に存在する極大吸収波長は、前記粒子を構成する赤外線吸収色素を前記赤外線吸収色素の良溶剤に溶解させた色素溶液が最も大きい吸光度を示す波長よりも短波側に存在する、請求項1または2に記載の赤外線吸収組成物。
【請求項4】
前記粒子が前記赤外線吸収組成物中において示す極大吸収波長が波長650~1500nmの範囲において3以上存在している、請求項1~のいずれか1項に記載の赤外線吸収組成物。
【請求項5】
前記粒子が前記赤外線吸収組成物中において波長650~1500nmの範囲において示す極大吸収波長の数は、前記粒子を構成する赤外線吸収色素を、前記赤外線吸収色素の良溶剤に溶解させた色素溶液が波長650~1500nmの範囲において示す極大吸収波長の数よりも多い、請求項1~のいずれか1項に記載の赤外線吸収組成物。
【請求項6】
更に、硬化性化合物を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の赤外線吸収組成物。
【請求項7】
光学フィルタ用、または、インク用である、請求項1~のいずれか1項に記載の赤外線吸収組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の赤外線吸収組成物を用いた膜。
【請求項9】
請求項に記載の膜を含む光学フィルタ。
【請求項10】
請求項に記載の膜を含む固体撮像素子。
【請求項11】
請求項に記載の膜を含む画像表示装置。
【請求項12】
請求項に記載の膜を含む赤外線センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線吸収色素を含む赤外線吸収組成物に関する。また、本発明は、赤外線吸収色素を含む組成物を用いた膜、光学フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などには、カラー画像の固体撮像素子である、CCD(電荷結合素子)や、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)が用いられている。これら固体撮像素子は、その受光部において赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用している。このため、赤外線カットフィルタを設けて視感度補正を行うことがある。
【0003】
赤外線カットフィルタは、赤外線吸収色素を含む組成物を用いて製造されている。
【0004】
特許文献1には、オキソカーボン系化合物と樹脂とを含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物の未硬化物が、波長600nm以上1100nm以下の範囲に極大吸収を有する吸収ピークを1つ以上有し、樹脂組成物の硬化物が、波長600nm以上1100nm以下の範囲に極大吸収を有する吸収ピークを未硬化物よりも多く有する樹脂組成物に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-041047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、赤外線吸収色素を含む組成物を用いて得られる膜について、分光特性についての更なる改善が求められている。例えば、幅広い波長範囲の赤外線を遮蔽できることなどが求められている。本発明者が特許文献1に記載された組成物について検討を進めたところ、この組成物においてもこれらの特性について更なる改善の余地があることが分かった。
【0007】
よって、本発明の目的は、赤外線遮蔽性に優れた膜を形成できる赤外線吸収組成物を提供することにある。また、赤外線吸収組成物を用いた膜、光学フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下を提供する。
<1> 赤外線吸収色素の粒子と、溶剤とを含む赤外線吸収組成物であって、
上記粒子が上記赤外線吸収組成物中において示す極大吸収波長が波長650~1500nmの範囲において2以上存在しており、上記範囲において最も短波側に存在する極大吸収波長での吸光度は、2番目に短波側に存在する極大吸収波長での吸光度を1としたとき0.6~2.0である、赤外線吸収組成物。
<2> 上記範囲において最も短波側に存在する極大吸収波長と、2番目に短波側に存在する極大吸収波長との差が30~80nmである、<1>に記載の赤外線吸収組成物。
<3> 上記赤外線吸収色素は、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、ピロメテン化合物、クロコニウム化合物およびシアニン化合物から選ばれる少なくとも1種である、<1>または<2>に記載の赤外線吸収組成物。
<4> 赤外線吸収色素の粒子と、溶剤とを含む赤外線吸収組成物であって、
上記赤外線吸収色素は、式(1)で表される基と式(2)で表される基とをそれぞれ1つ以上有するピロロピロール化合物、および、式(1)で表される基と式(2)で表される基とをそれぞれ1つ以上有するスクアリリウム化合物から選ばれる少なくとも1種である、赤外線吸収組成物;
【化1】
式(1)中、R1aはアルキル基、ハロゲン原子、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基またはシアノ基を表し、R1bは置換基を表し、n1は0~4の整数を表し、*は連結手を表す;
式(2)中、Lは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基、-O-、-S-、-NRL1-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO-もしくはこれらの組み合わせからなるn2+1価の連結基、または単結合を表し、RL1は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、Xは、酸基または塩基性基を表し、*は連結手を表す。
<5> 上記粒子の最も短波側に存在する極大吸収波長は、上記粒子を構成する赤外線吸収色素を上記赤外線吸収色素の良溶剤に溶解させた色素溶液が最も大きい吸光度を示す波長よりも短波側に存在する、<1>~<4>のいずれか1つに記載の赤外線吸収組成物。
<6> 上記粒子が上記赤外線吸収組成物中において示す極大吸収波長が波長650~1500nmの範囲において3以上存在している、<1>~<5>のいずれか1つに記載の赤外線吸収組成物。
<7> 上記粒子が上記赤外線吸収組成物中において波長650~1500nmの範囲において示す極大吸収波長の数は、上記粒子を構成する赤外線吸収色素を、上記赤外線吸収色素の良溶剤に溶解させた色素溶液が波長650~1500nmの範囲において示す極大吸収波長の数よりも多い、<1>~<6>のいずれか1つに記載の赤外線吸収組成物。
<8> 上記赤外線吸収色素は、式(PP-1)で表される化合物である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の赤外線吸収組成物;
【化2】
式中、R1aはアルキル基、ハロゲン原子、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基またはシアノ基を表し、
1bは置換基を表し、
は、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
、R、RおよびRは、それぞれ独立してシアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基またはヘテロアリール基を表し、
およびRは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-BR10または金属原子を表し、
およびR10は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはヘテロアリールオキシ基を表し、
およびR10が互いに結合して環を形成していてもよく、
は、RまたはRと、共有結合または配位結合していてもよく、
は、R、RまたはRと、共有結合または配位結合していてもよく、
は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基、-O-、-S-、-NRL1-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO-もしくはこれらの組み合わせからなるn2+1価の連結基、または単結合を表し、
L1は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、
は、酸基または塩基性基を表し、
n1は0~4の整数を表し、
n2は1以上の整数を表し、
mは1以上の整数を表す。
<9> 更に、硬化性化合物を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の赤外線吸収組成物。
<10> 光学フィルタ用、または、インク用である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の赤外線吸収組成物。
<11> <1>~<9>のいずれか1つに記載の赤外線吸収組成物を用いた膜。
<12> <11>に記載の膜を含む光学フィルタ。
<13> <11>に記載の膜を含む固体撮像素子。
<14> <11>に記載の膜を含む画像表示装置。
<15> <11>に記載の膜を含む赤外線センサ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、赤外線遮蔽性に優れた膜を形成できる赤外線吸収組成物、膜、光学フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】赤外線センサの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定でのポリスチレン換算値として定義される。
本明細書において、化学式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、赤外線とは、波長700~2500nmの光(電磁波)をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において、顔料とは、溶剤に対して溶解しにくい色材を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0012】
<赤外線吸収組成物>
本発明の赤外線吸収組成物の第1の態様は、
赤外線吸収色素の粒子と、溶剤とを含む赤外線吸収組成物であって、
上記粒子が赤外線吸収組成物中において示す極大吸収波長が波長650~1500nmの範囲において2以上存在しており、上記範囲において最も短波側に存在する極大吸収波長での吸光度は、2番目に短波側に存在する極大吸収波長での吸光度を1としたとき0.6~2.0であることを特徴とする。
【0013】
本発明の赤外線吸収組成物の第1の態様は、上述した粒子を含むことにより、幅広い波長範囲の赤外線を遮蔽できる赤外線遮蔽性に優れた膜を形成できる。また、本発明の赤外線吸収組成物の第1の態様によれば、複数種類の赤外線吸収色素を使用しなくても、1種類の赤外線吸収色素のみで、幅広い波長範囲の赤外線を遮蔽できる膜を形成することもできる。
【0014】
上記の分光特性を満たす粒子の一態様としては、式(1)で表される基と式(2)で表される基とをそれぞれ1つ以上有する赤外線吸収色素の粒子が挙げられる。
このような構造の赤外線吸収色素の粒子を用いることにより、上記の分光特性を達成できる詳細な理由は不明であるが、以下によるものであると推測される。
赤外線吸収色素を溶剤に溶解させて用いた場合は、溶液中では自由に動くことができるため、赤外線吸収色素の単分子に由来する吸収ピークしか示さない。
式(2)で表される基は親水性が高い構造の基であるため、分散時に赤外線吸収組成物中にて、赤外線吸収色素の式(2)で表される基を有する側が溶剤側を向くように会合を形成すると推測される。そして、式(1)で表される基はベンゼン環のオルト位に置換基を有しているため、赤外線吸収色素が式(1)で表される基を有することにより、立体障害により赤外線吸収色素が平行に重なりにくく、遷移モーメントが斜めに配置されて赤外線吸収色素同士が斜めに配向するように会合すると推測される。
後述する式(1)で表される基と式(2)で表される基とをそれぞれ1つ以上有する赤外線吸収色素の粒子は、赤外線吸収組成物中においてこのような会合状態(以下、特定状態ともいう)を形成することにより、赤外線吸収色素の吸収ピークが短波側や長波側にシフトし、その結果、赤外線吸収色素の単分子に由来する吸収ピークに加えて特定状態に由来する吸収ピークが発現すると推測され、上記の分光特性を達成できると推測される。
【0015】
また、本発明の赤外線吸収組成物の第2の態様は、
赤外線吸収色素の粒子と、溶剤とを含む赤外線吸収組成物であって、
上記赤外線吸収色素は、式(1)で表される基と式(2)で表される基とをそれぞれ1つ以上有するピロロピロール化合物、および、式(1)で表される基と式(2)で表される基とをそれぞれ1つ以上有するスクアリリウム化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0016】
本発明の赤外線吸収組成物の第2の態様は、上述した粒子を含むことにより、幅広い波長範囲の赤外線を遮蔽できる赤外線遮蔽性に優れた膜を形成できる。また、本発明の赤外線吸収組成物の第2の態様においても、複数種類の赤外線吸収色素を使用しなくても、1種類の赤外線吸収色素のみで、幅広い波長範囲の赤外線を遮蔽できる膜を形成することもできる。
【0017】
本発明の赤外線吸収組成物は、インク用(インク組成物)として用いることができる。インク組成物としては、印刷用インク、インクジェット用インクなどが挙げられる。また、本発明の赤外線吸収組成物をインク組成物として用いる場合には、溶剤としては水を含むものを用いることもできる。すなわち、本発明の赤外線吸収組成物は、水性インク組成物として用いることもできる。本発明の赤外線吸収組成物をインク組成物として用いる場合には、赤外線吸収組成物の固形分濃度は0.1~50質量%であることが好ましく、1~30質量%であることがより好ましい。
【0018】
また、本発明の赤外線吸収組成物は、光学フィルタ用の組成物として用いることもできる。光学フィルタの種類としては、赤外線カットフィルタおよび赤外線透過フィルタなどが挙げられる。本発明の赤外線吸収組成物を光学フィルタ用の組成物として用いる場合には、本発明の赤外線吸収組成物は、更に樹脂を含むことが好ましい。本発明の赤外線吸収組成物を光学フィルタ用の組成物として用いる場合には、赤外線吸収組成物の固形分濃度は1~70質量%であることが好ましく、2~60質量%であることがより好ましい。
5~50質量%であることが更に好ましい。
【0019】
以下、本発明の赤外線吸収組成物に用いられる各成分について説明する。
【0020】
<<赤外線吸収色素の粒子(特定粒子)>>
本発明の赤外線吸収組成物は、以下の要件1または要件2を満たす赤外線吸収色素の粒子(以下、特定粒子という)を含む。
【0021】
(要件1) 赤外線吸収色素の粒子であって、この粒子が赤外線吸収組成物中において示す極大吸収波長が波長650~1500nmの範囲において2以上存在しており、上記範囲において最も短波側に存在する極大吸収波長での吸光度は、2番目に短波側に存在する極大吸収波長での吸光度を1としたとき0.6~2.0である。上記範囲において最も短波側に存在する極大吸収波長での吸光度は、2番目に短波側に存在する極大吸収波長での吸光度を1としたとき0.8~1.8であることが好ましく、1.0~1.6であることがより好ましい。
【0022】
(要件2) 赤外線吸収色素の粒子であって、赤外線吸収色素が、式(1)で表される基と式(2)で表される基とをそれぞれ1つ以上有するピロロピロール化合物、および、式(1)で表される基と式(2)で表される基とをそれぞれ1つ以上有するスクアリリウム化合物から選ばれる少なくとも1種である。赤外線吸収色素は式(1)で表される基と式(2)で表される基とをそれぞれ1つ以上有するピロロピロール化合物であることが好ましい。
【0023】
【化3】
式(1)中、R1aはアルキル基、ハロゲン原子、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基またはシアノ基を表し、R1bは置換基を表し、n1は0~4の整数を表し、*は連結手を表す;
式(2)中、Lは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基、-O-、-S-、-NRL1-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO-もしくはこれらの組み合わせからなるn2+1価の連結基、又は単結合を表し、RL1は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、Xは、酸基または塩基性基を表し、n2は1以上の整数を表し、*は連結手を表す。
但し、n2が2以上の整数の場合、Lは3価以上の連結基を表す。
【0024】
1aが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
1aが表すアルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~10が更に好ましく、1~5であることがより一層好ましく、1~3であることが特に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐であることが好ましく、直鎖であることがより好ましい。
1aが表すアルケニル基の炭素数は、2~30が好ましく、2~20がより好ましく、2~10が更に好ましく、2~5であることがより一層好ましい。
1aが表すアルキニル基の炭素数は、2~30が好ましく、2~20がより好ましく、2~10が更に好ましく、2~5であることがより一層好ましい。
1aが表すアリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。
1aが表すヘテロアリール基を構成する炭素原子の数は、1~30が好ましく、1~12がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の種類としては、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子を挙げることができる。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数としては、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2~8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2~4の縮合環が更に好ましい。
1aが表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびヘテロアリール基は更に置換基を有していてもよい。置換基としては、後述する置換基Tが挙げられる。置換基は、式(2)で表される基以外の基であることが好ましい。
【0025】
式(1)のR1aはアルキル基、ハロゲン原子またはアリール基であることが好ましく、アルキル基またはアリール基であることがより好ましく、アルキル基であることが更に好ましい。
【0026】
式(1)のR1bが表す置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アシル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、イミノ基、シリル基などが挙げられ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であることが好ましい。これらの基は更に置換基を有していてもよい。置換基としては、後述する置換基Tが挙げられる。置換基は、式(2)で表される基以外の基であることが好ましい。
【0027】
式(1)のn1は0~4の整数を表し、0~2の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0028】
式(2)のLは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基、-O-、-S-、-NRL1-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO-もしくはこれらの組み合わせからなるn2+1価の連結基を表し、RL1は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。n2が1の場合、Lは単結合でもよい。
【0029】
脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~20が好ましく、2~20がより好ましく、2~10が更に好ましく、2~5が特に好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状の脂肪族炭化水素基は、単環、多環のいずれであってもよい。芳香族炭化水素基の炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10が更に好ましい。脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0030】
芳香族炭化水素基の炭素数は6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10が更に好ましい。芳香族炭化水素基は、単環または縮合数が2~4の縮合環の芳香族炭化水素基であることが好ましく、単環の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環基であることが好ましい。
【0031】
複素環基は、単環または縮合数が2~4の縮合環が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。複素環基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。複素環基の具体例としては、ピペラジン環基、ピロリジン環基、ピロール環基、ピペリジン環基、ピリジン環基、イミダゾール環基、ピラゾール環基、オキサゾール環基、チアゾール環基、ピラジン環基、モルホリン環基、チアジン環基、インドール環基、イソインドール環基、ベンズイミダゾール環基、プリン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、キノキサリン環基、シンノリン環基、カルバゾール環基および下記式(L-1)~(L-7)で表される基が挙げられる。
【化4】
式中の*は、X等との連結手を表す。Rは水素原子または置換基を表す。置換基としては、上述した式(1)で説明した置換基Tが挙げられる。
【0032】
脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基および複素環基は置換基を有していてもよい。置換基としては、後述する置換基Tで挙げた基が挙げられる。
【0033】
L1が表すアルキル基の炭素数は1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。RL1が表すアルキル基は更に置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tが挙げられる。
【0034】
L1が表すアリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。RL1が表すアリール基は更に置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tが挙げられる。
【0035】
式(2)のXが表す酸基としては、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、ボロン酸基、スルホンイミド基、スルホンアミド基及びこれらの塩が挙げられる。塩を構成する原子または原子団としては、アルカリ金属イオン(Li、Na、Kなど)、アルカリ土類金属イオン(Ca2+、Mg2+など)、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0036】
式(2)のXが表す塩基性基としては、アミノ基、ピリジニル基およびその塩、アンモニウム基の塩、並びにフタルイミドメチル基が挙げられる。塩を構成する原子または原子団としては、水酸化物イオン、ハロゲンイオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、フェノキシドイオンなどが挙げられる。
【0037】
アミノ基としては、-NRxRxで表される基、および、環状アミノ基が挙げられる。
【0038】
-NRxRxで表される基において、RxおよびRxは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、アルキル基であることが好ましい。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、後述する置換基Tが挙げられる。アリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、後述する置換基Tが挙げられる。また、RxとRxとは結合して環を形成していてもよい。
【0039】
環状アミノ基としては、ピロリジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、モルホリン基などが挙げられる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。置換基としては、後述する置換基Tが挙げられる。置換基の具体例としては、アルキル基およびアリール基などが挙げられる。
【0040】
式(2)のXは、スルホ基、リン酸基、式(X-1)で表される基、式(X-2)で表される基、式(X-3)で表される基または式(X-4)で表される基が好ましく、スルホ基、式(X-1)で表される基または式(X-3)で表される基であることがより好ましい。
【化5】
式(X-1)~(X-4)において、R100~R106は、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、R100とR101は互いに連結して環を形成していてもよく、Mは、アニオンと塩を構成する原子または原子団を表す。Mとしては、アルカリ金属イオン(Li、Na、Kなど)、アルカリ土類金属イオン(Ca2+、Mg2+など)、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0041】
式(2)のn2は1以上の整数を表し、1~3の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
【0042】
(置換基T)
置換基Tとして、次の基が挙げられる。ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1~30のアルキル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~30のアルケニル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数2~30のアルキニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6~30のアリール基)、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数1~30のヘテロアリール基)、アミノ基(好ましくは炭素数0~30のアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~30のアルコキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6~30のアリールオキシ基)、ヘテロアリールオキシ基(好ましくは炭素数1~30のヘテロアリールオキシ基)、アシル基(好ましくは炭素数2~30のアシル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~30のアルコキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7~30のアリールオキシカルボニル基)、ヘテロアリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~30のヘテロアリールオキシカルボニル基)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2~30のアシルオキシ基)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2~30のアシルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2~30のアミノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2~30のアルコキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7~30のアリールオキシカルボニルアミノ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0~30のスルファモイル基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数0~30のスルファモイルアミノ基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1~30のカルバモイル基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~30のアルキルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6~30のアリールチオ基)、ヘテロアリールチオ基(好ましくは炭素数1~30のヘテロアリールチオ基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1~30のアルキルスルホニル基)、アルキルスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1~30のアルキルスルホニルアミノ基)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6~30のアリールスルホニル基)、アリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数6~30のアリールスルホニルアミノ基)、ヘテロアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1~30のヘテロアリールスルホニル基)、ヘテロアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1~30のヘテロアリールスルホニルアミノ基)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1~30のアルキルスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6~30のアリールスルフィニル基)、ヘテロアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1~30のヘテロアリールスルフィニル基)、ウレイド基(好ましくは炭素数1~30のウレイド基)、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド基、ホスフィノ基、メルカプト基、シアノ基、アルキルスルフィノ基、アリールスルフィノ基、アリールアゾ基、ヘテロアリールアゾ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、ヒドラジノ基、イミノ基。これらの基は、更に置換可能な基である場合、更に置換基を有してもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0043】
上記要件1を満たす粒子は、上記式(1)で表される基と上記式(2)で表される基とをそれぞれ1つ以上有する赤外線吸収色素の粒子であることが好ましい。また、上記要件1を満たす特定粒子を構成する赤外線吸収色素としては、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、ピロメテン化合物、クロコニウム化合物およびシアニン化合物が挙げられ、ピロロピロール化合物およびスクアリリウム化合物であることが好ましく、ピロロピロール化合物であることがより好ましい。
【0044】
上記要件2を満たす粒子は、更に上記要件1の特性を満たしていることが好ましい。
【0045】
特定粒子が赤外線吸収組成物中において示す極大吸収波長が波長650~1500nmの範囲において2以上存在しており、上記範囲において最も短波側に存在する極大吸収波長(λ)と、2番目に短波側に存在する極大吸収波長(λ)との差(λ-λ)が20~90nmであることが好ましく30~80nmであることがより好ましく、35~70nmであることが更に好ましい。上記の波長の差が上記範囲であれば、幅広い波長範囲の赤外線を遮蔽できる赤外線遮蔽性に優れた膜を形成できる。
【0046】
特定粒子の最も短波側に存在する極大吸収波長は、特定粒子を構成する赤外線吸収色素をその赤外線吸収色素の良溶剤に溶解させた色素溶液が最も大きい吸光度を示す波長よりも短波側に存在することが好ましく、30nm以上短波側に存在することがより好ましく、50nm以上短波側に存在することが更に好ましい。このような分光特性を満たしている粒子を用いることで、赤外線の吸収の裾切れの良い膜を形成することができる。なお、本明細書において、赤外線吸収色素の良溶剤とは、25℃の溶剤100gに対する赤外線吸収色素の溶解量が0.1g以上である溶剤のことを意味する。良溶剤は、25℃の溶剤100gに対する赤外線吸収色素の溶解量が0.1g以上である溶剤であることが好ましく、上記溶解量が0.2g以上である溶剤であることがより好ましい。良溶剤の種類は、赤外線吸収色素の種類によって異なるが、例えば、ジメチルスルホキシド、クロロホルムなどが挙げられる。
【0047】
特定粒子が赤外線吸収組成物中において示す極大吸収波長は、波長650~1500nmの範囲において3以上存在していることが好ましい。また、3番目に短波側に存在する極大吸収波長での吸光度は、2番目に短波側に存在する極大吸収波長での吸光度を1としたとき0.2~2であることが好ましく、0.3~1.8であることがより好ましく、0.4~1.5であることが更に好ましい。また、2番目に短波側に存在する極大吸収波長(λ)と3番目に短波側に存在する極大吸収波長(λ)との差(λ-λ)は20~100nmであることが好ましく、30~90nmであることがより好ましく、35~80nmであることが更に好ましい。最も短波側に存在する極大吸収波長(λ)と、3番目に短波側に存在する極大吸収波長(λ)との差(λ-λ)は60~200nmであることが好ましく、70~170nmであることがより好ましく、80~150nmであることが更に好ましい。
【0048】
特定粒子が赤外線吸収組成物中において波長650~1500nmの範囲において示す極大吸収波長の数は、特定粒子を構成する赤外線吸収色素を、その赤外線吸収色素の良溶剤に溶解させた色素溶液が波長650~1500nmの範囲において示す極大吸収波長の数よりも多いことが好ましい。このような特定粒子を用いることで、より幅広い波長範囲の赤外線を遮蔽できる赤外線遮蔽性に優れた膜を形成できる。
【0049】
なお、本明細書において、特定粒子の赤外線吸収組成物中における極大吸収波長および吸光度は、赤外線吸収組成物の吸光度を測定して求めることができる。また、赤外線吸収組成物中に、特定粒子を2種類以上含む場合においては、赤外線吸収組成物から測定対象以外の種類の特定粒子を除いた組成物の吸光度を測定して求める。例えば、特定粒子Aと特定粒子Bと溶剤とその他添加剤を含む赤外線吸収組成物の場合においては、特定粒子Aの赤外線吸収組成物中における極大吸収波長および吸光度は、上記赤外線吸収組成物から特定粒子Bを除いた組成物の吸光度を測定して求める。また、特定粒子Bの赤外線吸収組成物中における極大吸収波長および吸光度は、上記赤外線吸収組成物から特定粒子Aを除いた組成物の吸光度を測定して求める。また、赤外線吸収組成物が特定粒子の他に、更に、特定粒子以外の赤外線吸収剤、有彩色着色剤、黒色着色剤などの素材を含む場合においては、赤外線吸収組成物からこれらの素材を除いた組成物の吸光度を測定して求める。例えば、特定粒子と特定粒子以外の赤外線吸収剤と溶剤とその他添加剤を含む赤外線吸収組成物の場合においては、特定粒子Aの赤外線吸収組成物中における極大吸収波長および吸光度は、上記赤外線吸収組成物から特定粒子以外の赤外線吸収剤を除いた組成物の吸光度を測定して求める。
【0050】
特定粒子の25℃の水100gに対する溶解量は0.075g以下であることが好ましく、0.05g以下であることがより好ましく、0.025g以下であることが更に好ましい。
【0051】
特定粒子の25℃のプロピレングリコールモノメチルエーテル100gに対する溶解量は0.075gg以下であることが好ましく、0.05g以下であることがより好ましく、0.025g以下であることが更に好ましい。
【0052】
特定粒子の25℃のシクロペンタノン100gに対する溶解量は0.075g以下であることが好ましく、0.05g以下であることがより好ましく、0.025g以下であることが更に好ましい。
【0053】
特定粒子を構成する赤外線吸収色素は、式(PP-1)で表される化合物であることが好ましい。すなわち、特定粒子は、式(PP-1)で表される化合物の粒子であることが好ましい。
【化6】
式中、R1aはアルキル基、ハロゲン原子、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基またはシアノ基を表し、
1bは置換基を表し、
は、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
、R、RおよびRは、それぞれ独立してシアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基またはヘテロアリール基を表し、
およびRは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-BR10または金属原子を表し、
およびR10は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはヘテロアリールオキシ基を表し、
およびR10が互いに結合して環を形成していてもよく、
は、RまたはRと、共有結合または配位結合していてもよく、
は、R、RまたはRと、共有結合または配位結合していてもよく、
は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、含窒素複素環基、-O-、-S-、-NRL1-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO-もしくはこれらの組み合わせからなるn2+1価の連結基、又は単結合を表し、
L1は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、
は、酸基または塩基性基を表し、
n1は0~4の整数を表し、
n2は1以上の整数を表し、
mは1以上の整数を表す。
但し、n2が2以上の整数の場合、Lは3価以上の連結基を表す。
「-L1-(X1)n2」は、式(PP-1)の結合可能な位置で結合することが出来る。」
【0054】
式(PP-1)のR1a、R1bおよびn1は、式(1)のR1a、R1bおよびn1と同義であり、好ましい範囲も同様である。式(PP-1)のL、Xおよびn2は、
式(2)のL、Xおよびn2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0055】
式(PP-1)のRは、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。
が表すアルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~10が更に好ましい。
が表すアリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。
が表すヘテロアリール基を構成する炭素原子の数は、1~30が好ましく、1~12がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の種類としては、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子を挙げることができる。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数としては、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2~8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2~4の縮合環が更に好ましい。
が表す、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
には、式(PP-1)の「-L-(Xn2」が結合していることが好ましい。
【0056】
式(PP-1)のR、R、RおよびRは、それぞれ独立してシアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基またはヘテロアリール基を表す。
およびRの一方は、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基またはアリールスルフィニル基を表し、他方はヘテロアリール基を表すことが好ましく、RおよびRの一方がシアノ基を表し、他方がヘテロアリール基を表すことがより好ましい。
およびRの一方は、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基またはアリールスルフィニル基を表し、他方はヘテロアリール基を表すことが好ましく、RおよびRの一方がシアノ基を表し、他方がヘテロアリール基を表すことがより好ましい。
【0057】
~Rが表すヘテロアリール基を構成する炭素原子の数は、1~30が好ましく、1~12がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の種類としては、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子を挙げることができる。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数としては、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2~8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2~4の縮合環が更に好ましい。ヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0058】
式(PP-1)のRおよびRは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-BR10または金属原子を表し、-BR10であることが好ましい。
【0059】
およびRが表すアルキル基、アリール基およびヘテロアリール基としては、上述したRで説明した基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
およびRが表す金属原子としては、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、スズ、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、イリジウム、白金が挙げられ、アルミニウム、亜鉛、バナジウム、鉄、銅、パラジウム、イリジウム、白金が好ましい。
【0060】
-BR10で表される基におけるRおよびR10は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはヘテロアリールオキシ基を表し、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、または、アリール基がより好ましく、アリール基が更に好ましい。
【0061】
およびR10が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
およびR10が表すアルキル基およびアルコキシ基の炭素数は、1~40が好ましい。下限は、例えば、3以上がより好ましい。上限は、例えば、30以下がより好ましく、25以下が更に好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。
およびR10が表すアルケニル基の炭素数は、2~40が好ましい。下限は、例えば、3以上がより好ましい。上限は、例えば、30以下がより好ましく、25以下が更に好ましい。
およびR10が表すアリール基およびアリールオキシ基の炭素数は、6~20が好ましく、6~12がより好ましい。アリール基およびアリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
およびR10が表すヘテロアリール基およびヘテロアリールオキシ基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリール基およびヘテロアリールオキシ基のヘテロアリール環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましく、3~5が特に好ましい。ヘテロアリール環は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロアリール基およびヘテロアリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0062】
-BR10のRとR10は、互いに結合して環を形成していてもよい。例えば、下記(B-1)~(B-4)に示す構造などが挙げられる。以下において、Rbは置換基を表し、Rb~Rbは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、b1~b3は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し、*は、式(PP-1)との結合位置を表す。RbおよびRb~Rbが表す置換基としては、上述した置換基Tで説明した置換基が挙げられ、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基が好ましい。
【化7】
【0063】
式(PP-1)のRは、RまたはRと、共有結合または配位結合していてもよく、Rは、R、RまたはRと、共有結合または配位結合していてもよい。
【0064】
式(PP-1)のmは1以上の整数を表し、1~4の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましく、1または2であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。
【0065】
式(PP-1)で表される化合物は、式(PP-2)で表される化合物であることが好ましい。
【化8】
【0066】
式(PP-2)のR1a、R1b、R~R、L、X、n1およびn2は、式(PP-1)のR1a、R1b、R~R、L、X、n1およびn2と同義であり、
好ましい範囲も同様である。
【0067】
式(PP-2)のm1は1~4の整数を表し、1~3の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0068】
式(PP-1)で表される化合物の具体例としては、以下に示す構造の化合物が挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【化9】
【化10】
【化11】
【0069】
特定粒子の含有量は、赤外線吸収組成物の全固形分中1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。また、特定粒子の含有量の上限は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましい。赤外線吸収組成物は特定粒子を1種のみ含んでいてもよく、
2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0070】
<<溶剤>>
本発明の赤外線吸収組成物は、溶剤を含有する。溶剤としては、水、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、カーボネート系溶剤、炭化水素系溶剤などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開第2015/166779号の段落番号0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤も好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジクロロメタン、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、4-ヘプタノン、2-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン、4-メチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、プロピレングリコールジアセテート、3-メトキシブタノール、メチルエチルケトン、ガンマブチロラクトン、スルホラン、アニソール、1,4-ジアセトキシブタン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、二酢酸ブタン-1,3-ジイル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセタート、ジアセトンアルコール(別名としてダイアセトンアルコール、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、2-メトキシプロピルアセテート、2-メトキシ-1-プロパノール、イソプロピルアルコール、炭酸プロピレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。ただし有機溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
【0071】
有機溶剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機溶剤を2種以上含む場合、
2種以上の有機溶剤を併用する場合の好ましい態様の一つとして、エステル系溶剤である第1の有機溶剤と、第1の有機溶剤とは異なるエステル系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、カーボネート系溶剤から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤を含む第2の有機溶剤とを併用する態様が挙げられる。この場合において、第2の有機溶剤の沸点は150~250℃であることが好ましい。また、第1の有機溶剤の沸点は100~200℃であることが好ましい。
【0072】
本発明においては、金属含有量の少ない有機溶剤を用いることが好ましく、有機溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの有機溶剤を用いてもよく、そのような有機溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
【0073】
有機溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
【0074】
有機溶剤は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0075】
有機溶剤中の過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0076】
本発明の赤外線吸収組成物をインク用組成物として用いる場合には、溶剤としては水、または、水と水性有機溶剤との混合溶剤を用いることが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール等の多価アルコール類;
糖アルコール類;
エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1~4のアルキルアルコール類;
2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどの脂肪族ジオール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、1-メチル-1-メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類等が挙げられる。
【0077】
混合溶剤中における水の割合は、30~99質量%であることが好ましく、40~99質量%であることがより好ましく、50~99質量%であることが更に好ましい。
【0078】
溶剤の含有量は、赤外線吸収組成物の全量に対し、10~97質量%であることが好ましい。下限は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることがより一層好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。上限は、96質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。赤外線吸収組成物は溶剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0079】
<<他の赤外線吸収剤>>
本発明の赤外線吸収組成物は、上述した特定粒子以外の赤外線吸収剤(他の赤外線吸収剤)を含有することができる。更に他の赤外線吸収剤を含有することで、より幅広い波長範囲の赤外線を遮蔽できる膜を形成することができる。他の赤外線吸収剤は、染料であってもよく、顔料(粒子)であってもよい。他の赤外線吸収剤としては、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、メロシアニン化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、イミニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物、ジベンゾフラノン化合物、ジチオレン金属錯体、金属酸化物、金属ホウ化物等が挙げられる。ピロロピロール化合物としては、特開2009-263614号公報の段落番号0016~0058に記載の化合物、特開2011-068731号公報の段落番号0037~0052に記載の化合物、国際公開第2015/166873号の段落番号0010~0033に記載の化合物などが挙げられる。スクアリリウム化合物としては、特開2011-208101号公報の段落番号0044~0049に記載の化合物、特許第6065169号公報の段落番号0060~0061に記載の化合物、国際公開第2016/181987号の段落番号0040に記載の化合物、特開2015-176046号公報に記載の化合物、国際公開第2016/190162号の段落番号0072に記載の化合物、特開2016-074649号公報の段落番号0196~0228に記載の化合物、特開2017-067963号公報の段落番号0124に記載の化合物、国際公開第2017/135359号に記載の化合物、特開2017-114956号公報に記載の化合物、特許6197940号公報に記載の化合物、国際公開第2016/120166号に記載の化合物などが挙げられる。シアニン化合物としては、特開2009-108267号公報の段落番号0044~0045に記載の化合物、特開2002-194040号公報の段落番号0026~0030に記載の化合物、特開2015-172004号公報に記載の化合物、特開2015-172102号公報に記載の化合物、特開2008-088426号公報に記載の化合物、国際公開第2016/190162号の段落番号0090に記載の化合物、特開2017-031394号公報に記載の化合物などが挙げられる。クロコニウム化合物としては、特開2017-082029号公報に記載の化合物が挙げられる。イミニウム化合物としては、例えば、特表2008-528706号公報に記載の化合物、特開2012-012399号公報に記載の化合物、特開2007-092060号公報に記載の化合物、国際公開第2018/043564号の段落番号0048~0063に記載の化合物が挙げられる。フタロシアニン化合物としては、特開2012-077153号公報の段落番号0093に記載の化合物、特開2006-343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013-195480号公報の段落番号0013~0029に記載の化合物、特許第6081771号公報に記載のバナジウムフタロシアニン化合物が挙げられる。ナフタロシアニン化合物としては、特開2012-077153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられる。ジチオレン金属錯体としては、特許第5733804号公報に記載の化合物が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、酸化亜鉛、Alドープ酸化亜鉛、フッ素ドープ二酸化スズ、ニオブドープ二酸化チタン、酸化タングステンなどが挙げられる。酸化タングステンの詳細については、特開2016-006476号公報の段落番号0080を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。金属ホウ化物としては、ホウ化ランタンなどが挙げられる。ホウ化ランタンの市販品としては、LaB-F(日本新金属(株)製)などが挙げられる。また、金属ホウ化物としては、国際公開第2017/119394号に記載の化合物を用いることもできる。酸化インジウムスズの市販品としては、F-ITO(DOWAハイテック(株)製)などが挙げられる。
【0080】
また、赤外線吸収剤としては、特開2017-197437号公報に記載のスクアリリウム化合物、特開2017-025311号公報に記載のスクアリリウム化合物、国際公開第2016/154782号に記載のスクアリリウム化合物、特許第5884953号公報に記載のスクアリリウム化合物、特許第6036689号公報に記載のスクアリリウム化合物、特許第5810604号公報に記載のスクアリリウム化合物、国際公開第2017/213047号の段落番号0090~0107に記載のスクアリリウム化合物、特開2018-054760号公報の段落番号0019~0075に記載のピロール環含有化合物、特開2018-040955号公報の段落番号0078~0082に記載のピロール環含有化合物、特開2018-002773号公報の段落番号0043~0069に記載のピロール環含有化合物、特開2018-041047号公報の段落番号0024~0086に記載のアミドα位に芳香環を有するスクアリリウム化合物、特開2017-179131号公報に記載のアミド連結型スクアリリウム化合物、特開2017-141215号公報に記載のピロールビス型スクアリリウム骨格又はクロコニウム骨格を有する化合物、特開2017-082029号公報に記載されたジヒドロカルバゾールビス型のスクアリリウム化合物、特開2017-068120号公報の段落番号0027~0114に記載の非対称型の化合物、特開2017-067963号公報に記載されたピロール環含有化合物(カルバゾール型)、特許第6251530号公報に記載されたフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
【0081】
特定粒子を構成する赤外線吸収色素が、式(PP-1)で表される化合物である場合、他の赤外線吸収剤は、ピロロピロール化合物であることが好ましく、より優れた分散性が得られ、組成物の保存安定性などを向上できるという理由から式(PP-100)で表される化合物であることがより好ましい。
【化12】
式中、R51aおよびR51cはそれぞれ独立してアルキル基、ハロゲン原子、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基またはシアノ基を表し、
51bおよびR51dはそれぞれ独立して置換基を表し、
53、R54、R55およびR56は、それぞれ独立してシアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基またはヘテロアリール基を表し、
57およびR58は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-BR5960または金属原子を表し、
59およびR60は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはヘテロアリールオキシ基を表し、
59およびR60が互いに結合して環を形成していてもよく、
57は、R53またはR55と、共有結合または配位結合していてもよく、
58は、R54またはR56と、共有結合または配位結合していてもよく、
n1は0~4の整数を表し、
m1は0~4の整数を表す。
【0082】
式(PP-100)のR51aおよびR51cは、式(PP-1)のR1aと同義であり、好ましい範囲も同様である。式(PP-100)のR51bおよびR51dは、式(PP-1)のR1bと同義であり、好ましい範囲も同様である。式(PP-100)のR53~R58は、式(PP-1)のR~Rと同義であり、好ましい範囲も同様である。式(PP-100)のn1は0~4の整数を表し、0~2の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。式(PP-100)のm1は0~4の整数を表し、0~2の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0083】
他の赤外線吸収剤の具体例としては、後述する実施例に記載の赤外線吸収色素B-1~B-9などが挙げられる。
【0084】
他の赤外線吸収剤の含有量は、上述した特定粒子100質量部に対し5~1000質量部であることが好ましく、10~500であることがより好ましく、30~300であることが更に好ましい。また、上述した特定粒子と他の赤外線吸収剤との合計の含有量は、赤外線吸収組成物の全固形分中1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。上記合計の含有量の上限は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましい。
【0085】
本発明の赤外線吸収組成物は、上述した特定粒子を含むことにより、他の赤外線吸収剤を使用しなくても、幅広い波長範囲の赤外線を遮蔽できる膜を形成することができるので、他の赤外線吸収剤を実質的に含有しないこともできる。他の赤外線吸収剤を実質的に含有しないとは、赤外線吸収組成物の全固形分中における他の赤外線吸収剤の含有量が0.1質量%以下であることを意味し、0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。
【0086】
<<色素誘導体>>
本発明の赤外線吸収組成物は、上述した特定粒子の他に、更に色素誘導体を含有することができる。色素誘導体としては、色素骨格に酸基または塩基性基が結合した構造を有する化合物が挙げられる。
【0087】
色素誘導体を構成する色素骨格としては、スクアリリウム色素骨格、ピロロピロール色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、キナクリドン色素骨格、アントラキノン色素骨格、ジアントラキノン色素骨格、ベンゾイソインドール色素骨格、チアジンインジゴ色素骨格、アゾ色素骨格、キノフタロン色素骨格、フタロシアニン色素骨格、ナフタロシアニン色素骨格、ジオキサジン色素骨格、ペリレン色素骨格、ペリノン色素骨格、ベンゾイミダゾロン色素骨格、ベンゾチアゾール色素骨格、ベンゾイミダゾール色素骨格およびベンゾオキサゾール色素骨格が挙げられ、スクアリリウム色素骨格、ピロロピロール色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、フタロシアニン色素骨格、キナクリドン色素骨格およびベンゾイミダゾロン色素骨格が好ましく、スクアリリウム色素骨格およびピロロピロール色素骨格がより好ましい。
【0088】
酸基としては、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、ボロン酸基、スルホンイミド基、スルホンアミド基及びこれらの塩が挙げられる。塩を構成する原子または原子団としては、アルカリ金属イオン(Li、Na、Kなど)、アルカリ土類金属イオン(Ca2+、Mg2+など)、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0089】
塩基性基としては、アミノ基、ピリジニル基およびその塩、アンモニウム基の塩、並びにフタルイミドメチル基が挙げられる。塩を構成する原子または原子団としては、水酸化物イオン、ハロゲンイオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、フェノキシドイオンなどが挙げられる。
【0090】
色素誘導体の具体例としては、特開昭56-118462号公報、特開昭63-264674号公報、特開平01-217077号公報、特開平03-009961号公報、特開平03-026767号公報、特開平03-153780号公報、特開平03-045662号公報、特開平04-285669号公報、特開平06-145546号公報、特開平06-212088号公報、特開平06-240158号公報、特開平10-030063号公報、特開平10-195326号公報、国際公開第2011/024896号の段落番号0086~0098、国際公開第2012/102399号の段落番号0063~0094に記載の化合物も挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0091】
色素誘導体の含有量は、上述した特定粒子100質量部に対し、1~50質量部が好ましい。下限値は、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限値は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。色素誘導体は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0092】
<<樹脂>>
本発明の赤外線吸収組成物は、樹脂を含有することができる。樹脂は、例えば、顔料などの粒子を赤外線吸収組成物中で分散させる用途やバインダーの用途で配合される。なお、主に顔料などの粒子を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で樹脂を使用することもできる。
【0093】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2000~2000000が好ましい。上限は、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましい。下限は、3000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。
【0094】
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。環状オレフィン樹脂としては、耐熱性向上の観点からノルボルネン樹脂が好ましい。ノルボルネン樹脂の市販品としては、例えば、JSR(株)製のARTONシリーズ(例えば、ARTON F4520)などが挙げられる。また、樹脂は、国際公開第2016/088645号の実施例に記載の樹脂を用いることもできる。また、樹脂が側鎖にエチレン性不飽和結合含有基、特に(メタ)アクリロイル基を有する場合、主鎖とエチレン性不飽和結合含有基とが脂環構造を有する2価の連結基を介して結合していることも好ましい。
【0095】
本発明の赤外線吸収組成物は、酸基を有する樹脂を含むことが好ましい。酸基を有する樹脂はアルカリ可溶性樹脂として用いることができる。酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)については、特開2012-208494号公報の段落番号0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685~0700)の記載、特開2012-198408号公報の段落番号0076~0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸基を有する樹脂は市販品を用いることもできる。また、樹脂への酸基の導入方法としては、特に制限はないが、例えば、特許第6349629号公報に記載の方法が挙げられる。更に、樹脂への酸基の導入方法としては、エポキシ基の開環反応で生じたヒドロキシ基に酸無水物を反応させて酸基を導入する方法も挙げられる。
【0096】
酸基を有する樹脂が有する酸基の種類としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシル基であることが好ましい。
【0097】
酸基を有する樹脂の酸価は、30~500mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、400mgKOH/g以下が好ましく、300mgKOH/g以下がより好ましく、200mgKOH/g以下が更に好ましい。酸基を有する樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000~100000が好ましい。また、酸基を有する樹脂の数平均分子量(Mn)は、1000~20000が好ましい。
【0098】
酸基を有する樹脂は、酸基を側鎖に有する繰り返し単位を含むことが好ましく、酸基を側鎖に有する繰り返し単位を樹脂の全繰り返し単位中5~70モル%含むことがより好ましい。酸基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量の上限は、50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。酸基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量の下限は、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。
【0099】
樹脂としては、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)由来の繰り返し単位を含む樹脂を用いることも好ましい。
【0100】
【化13】
【0101】
式(ED1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【化14】
式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1~30の有機基を表す。式(ED2)の具体例としては、特開2010-168539号公報の記載を参酌できる。
【0102】
エーテルダイマーの具体例については、特開2013-029760号公報の段落番号0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0103】
樹脂としては、重合性基を有する繰り返し単位を含む樹脂を用いることも好ましい。重合性基としては、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0104】
樹脂としては、式(X)で表される化合物由来の繰り返し単位を含む樹脂を用いることも好ましい。
【化15】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R21およびR22はそれぞれ独立してアルキレン基を表し、nは0~15の整数を表す。R21およびR22が表すアルキレン基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~3であることが更に好ましく、2または3であることが特に好ましい。nは0~15の整数を表し、0~5の整数であることが好ましく、0~4の整数であることがより好ましく、0~3の整数であることが更に好ましい。
【0105】
式(X)で表される化合物としては、パラクミルフェノールのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレートなどが挙げられる。市販品としては、アロニックスM-110(東亞合成(株)製)などが挙げられる。
【0106】
本発明の赤外線吸収組成物は、分散剤としての樹脂を含むこともできる。分散剤としては、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)としては、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上である樹脂が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、10~105mgKOH/gが好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)としては、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基が好ましい。
【0107】
分散剤として用いる樹脂は、グラフト樹脂であることも好ましい。グラフト樹脂の詳細は、特開2012-255128号公報の段落番号0025~0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0108】
分散剤として用いる樹脂は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むポリイミン系分散剤であることも好ましい。ポリイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造を有する主鎖と、原子数40~10000の側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子は、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。ポリイミン系分散剤については、特開2012-255128号公報の段落番号0102~0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0109】
分散剤として用いる樹脂は、コア部に複数個のポリマー鎖が結合した構造の樹脂であることも好ましい。このような樹脂としては、例えば、デンドリマー(星型ポリマーを含む)が挙げられる。また、デンドリマーの具体例としては、特開2013-043962号公報の段落番号0196~0209に記載された高分子化合物C-1~C-31などが挙げられる。
【0110】
分散剤として用いる樹脂は、エチレン性不飽和結合含有基を側鎖に有する繰り返し単位を含む樹脂であることも好ましい。エチレン性不飽和結合含有基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量は、樹脂の全繰り返し単位中10モル%以上であることが好ましく、10~80モル%であることがより好ましく、20~70モル%であることが更に好ましい。また、分散剤は、特開2018-087939号公報に記載された樹脂を用いることもできる。
【0111】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、ビックケミー・ジャパン社製のDISPERBYKシリーズ、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSEシリーズ、BASF社製のEfkaシリーズ、味の素ファインテクノ(株)製のアジスパーシリーズ等が挙げられる。また、特開2012-137564号公報の段落番号0129に記載された製品、特開2017-194662号公報の段落番号0235に記載された製品を分散剤として用いることもできる。
【0112】
また、分散剤として用いる樹脂は、特許第6432077号公報の段落番号0219~0221に記載されたブロック共重合体(EB-1)~(EB-9)を用いることもできる。
【0113】
樹脂の含有量は、赤外線吸収組成物の全固形分中1~50質量%が好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。上限は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0114】
また、本発明の赤外線吸収組成物が分散剤としての樹脂を含有する場合、分散剤としての樹脂の含有量は、赤外線吸収組成物の全固形分中0.1~40質量%が好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下が更に好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上が更に好ましい。また、分散剤としての樹脂の含有量は、上述した特定粒子100質量部に対して、1~100質量部が好ましい。上限は、80質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましい。下限は、2.5質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。
【0115】
本発明の赤外線吸収組成物は樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0116】
<<硬化性化合物>>
本発明の赤外線吸収組成物は硬化性化合物を含有することができる。硬化性化合物としては、ラジカル、酸または熱により架橋可能な公知の化合物を用いることができる。硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合含有基を有する化合物、環状エーテル基を有する化合物などが挙げられ、エチレン性不飽和結合含有基を有する化合物であることが好ましい。エチレン性不飽和結合含有基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。本発明で用いられる硬化性化合物は、重合性化合物であることが好ましく、ラジカル重合性化合物であることがより好ましい。
【0117】
(重合性化合物)
重合性化合物としては、モノマー、プレポリマー、オリゴマーなどの化学的形態のいずれであってもよいが、モノマーが好ましい。重合性化合物の分子量は、100~3000が好ましい。上限は、2000以下がより好ましく、1500以下が更に好ましい。下限は、150以上がより好ましく、250以上が更に好ましい。
【0118】
重合性化合物は、多官能の重合性モノマーであることが好ましい。また、多官能の重合性モノマーは、エチレン性不飽和結合含有基を3個以上含む化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和結合含有基を3~15個含む化合物であることがより好ましく、エチレン性不飽和結合含有基を3~6個含む化合物であることが更に好ましい。また、多官能の重合性モノマーは、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。重合性化合物の具体例としては、特開2009-288705号公報の段落番号0095~0108、特開2013-029760号公報の段落0227、特開2008-292970号公報の段落番号0254~0257、特開2013-253224号公報の段落番号0034~0038、特開2012-208494号公報の段落番号0477、特開2017-048367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報、特開2017-194662号公報に記載されている化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0119】
重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、NKエステルA-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)が好ましい。また、重合性化合物としては、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM-460;東亞合成製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルA-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)、RP-1040(日本化薬(株)製)、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)、NKオリゴUA-7200(新中村化学工業(株)製)、8UH-1006、8UH-1012(大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A0(共栄社化学(株)製)などを用いることもできる。
【0120】
また、重合性化合物として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート化合物を用いることも好ましい。3官能の(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アロニックスM-309、M-310、M-321、M-350、M-360、M-313、M-315、M-306、M-305、M-303、M-452、M-450(東亞合成(株)製)、NKエステル A9300、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、TMPT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD GPO-303、TMPTA、THE-330、TPA-330、PET-30(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0121】
重合性化合物は、酸基を有する化合物を用いることもできる。酸基を有する重合性化合物を用いることで、現像時に未露光部の重合性化合物が除去されやすく、現像残渣の発生を抑制できる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基を有する重合性化合物の市販品としては、アロニックスM-305、M-510、M-520、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)等が挙げられる。酸基を有する重合性化合物の好ましい酸価としては、0.1~40mgKOH/gであり、より好ましくは5~30mgKOH/gである。重合性化合物の酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、現像液に対する溶解性が良好であり、40mgKOH/g以下であれば、製造や取扱い上、有利である。
【0122】
重合性化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物であることも好ましい態様である。カプロラクトン構造を有する重合性化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120等が挙げられる。
【0123】
重合性化合物は、アルキレンオキシ基を有する重合性化合物を用いることもできる。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物は、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基を有する重合性化合物が好ましく、エチレンオキシ基を有する重合性化合物がより好ましく、エチレンオキシ基を4~20個有する3~6官能(メタ)アクリレート化合物が更に好ましい。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR-494、日本化薬(株)製のイソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA-330などが挙げられる。
【0124】
重合性化合物は、フルオレン骨格を有する重合性化合物を用いることもできる。フルオレン骨格を有する重合性化合物の市販品としては、オグソールEA-0200、EA-0300(大阪ガスケミカル(株)製、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートモノマー)などが挙げられる。
【0125】
重合性化合物としては、トルエンなどの環境規制物質を実質的に含まない化合物を用いることも好ましい。このような化合物の市販品としては、KAYARAD DPHA LT、KAYARAD DPEA-12 LT(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0126】
重合性化合物としては、特公昭48-041708号公報、特開昭51-037193号公報、特公平02-032293号公報、特公平02-016765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-049860号公報、特公昭56-017654号公報、特公昭62-039417号公報、特公昭62-039418号公報に記載されたエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物も好適である。また、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平01-105238号公報に記載された分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する重合性化合物を用いることも好ましい。また、重合性化合物としては、UA-7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600、LINC-202UA(共栄社化学(株))製などの市販品を用いることもできる。
【0127】
(環状エーテル基を有する化合物)
硬化性化合物として用いられる環状エーテル基を有する化合物は、エポキシ基を有する化合物であることが好ましい。エポキシ基を有する化合物としては、1分子内にエポキシ基を1つ以上有する化合物が挙げられ、エポキシ基を2つ以上有する化合物が好ましい。エポキシ基は、1分子内に1~100個有することが好ましい。エポキシ基の上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。エポキシ基の下限は、2個以上が好ましい。エポキシ基を有する化合物としては、特開2013-011869号公報の段落番号0034~0036に記載された化合物、特開2014-043556号公報の段落番号0147~0156に記載された化合物、特開2014-089408号公報の段落番号0085~0092に記載された化合物、特開2017-179172号公報に記載された化合物を用いることもできる。
【0128】
エポキシ基を有する化合物は、低分子化合物(例えば、分子量2000未満、更には、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)でもよい。エポキシ基を有する化合物の重量平均分子量は、200~100000が好ましく、500~50000がより好ましい。重量平均分子量の上限は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましい。
【0129】
エポキシ基を有する化合物としては、エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、310~3300g/eqであることが好ましく、310~1700g/eqであることがより好ましく、310~1000g/eqであることが更に好ましい。環状エーテル基を有する化合物の市販品としては、例えば、EHPE3150((株)ダイセル製)、EPICLON N-695(DIC(株)製)、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(以上、日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)等が挙げられる。
【0130】
赤外線吸収組成物の全固形分中における硬化性化合物の含有量は0.1~50質量%であることが好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。硬化性化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、それらの合計が上記範囲となることが好ましい。
【0131】
本発明の赤外線吸収組成物が硬化性化合物として重合性化合物を含有する場合、赤外線吸収組成物の全固形分中における重合性化合物の含有量は0.1~50質量%であることが好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。重合性化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、それらの合計が上記範囲となることが好ましい。
【0132】
本発明の赤外線吸収組成物が硬化性化合物として環状エーテル基を有する化合物を含有する場合、赤外線吸収組成物の全固形分中における環状エーテル基を有する化合物の含有量は、0.1~20質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、15質量%以下が好ましく、10質量%以下が更に好ましい。環状エーテル基を有する化合物は1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、それらの合計が上記範囲となることが好ましい。
【0133】
本発明の赤外線吸収組成物が硬化性化合物として重合性化合物と環状エーテル基を有する化合物とをそれぞれ含む場合、環状エーテル基を有する化合物の含有量は、重合性化合物の100質量部に対して、1~400質量部であることが好ましく、1~100質量部であることがより好ましい。
【0134】
<<光重合開始剤>>
本発明の赤外線吸収組成物が重合性化合物を含む場合、本発明の赤外線吸収組成物は更に光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0135】
光重合開始剤としては、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物および3-アリール置換クマリン化合物であることが好ましく、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、および、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物であることがより好ましく、オキシム化合物であることが更に好ましい。また、光重合開始剤としては、特開2014-130173号公報の段落0065~0111、特許第6301489号公報に記載された化合物、MATERIAL STAGE 37~60p,vol.19,No.3,2019に記載されたパーオキサイド系光重合開始剤、国際公開第2018/221177号に記載の光重合開始剤、国際公開第2018/110179号に記載の光重合開始剤、特開2019-043864号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-044030号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-167313号公報に記載の過酸化物系開始剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0136】
α-ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127(以上、IGM Resins B.V.社製)、Irgacure 184、Irgacure 1173、Irgacure 2959、Irgacure 127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α-アミノケトン化合物の市販品としては、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 369E、Omnirad 379EG(以上、IGM Resins B.V.社製)、Irgacure 907、Irgacure 369、Irgacure 369E、Irgacure 379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、Omnirad 819、Omnirad TPO(以上、IGM Resins B.V.社製)、Irgacure 819、Irgacure TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0137】
オキシム化合物としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-066385号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0038に記載の化合物、国際公開第2013/167515号に記載の化合物などが挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。市販品としては、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure OXE03、Irgacure OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられる。また、オキシム化合物としては、着色性が無い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI-730、NCI-831、NCI-930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0138】
光重合開始剤としては、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物、特許06636081号に記載の化合物が挙げられる。
【0139】
光重合開始剤としては、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。そのようなオキシム化合物の具体例としては、国際公開第2013/083505号に記載の化合物が挙げられる。
【0140】
光重合開始剤としては、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。
【0141】
光重合開始剤としては、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007~0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0142】
光重合開始剤としては、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/036910号に記載されているOE-01~OE-75が挙げられる。
【0143】
光重合開始剤としては、カルバゾール骨格にヒドロキシ基を有する置換基が結合したオキシム化合物を用いることもできる。このような光重合開始剤としては国際公開第2019/088055号に記載された化合物などが挙げられる。
【0144】
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0145】
【化16】
【化17】
【0146】
オキシム化合物は、波長350~500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360~480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物の波長365nm又は波長405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、高いことが好ましく、1000~300000であることがより好ましく、2000~300000であることが更に好ましく、5000~200000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0147】
光重合開始剤としては、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤を用いることにより、光ラジカル重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、組成物の経時安定性を向上させることができる。2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開第2015/004565号、特表2016-532675号公報の段落番号0407~0412、国際公開第2017/033680号の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開第2016/034963号に記載されているCmpd1~7、特表2017-523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017-167399号公報の段落番号0020~0033に記載されている光開始剤、特開2017-151342号公報の段落番号0017~0026に記載されている光重合開始剤(A)、特許第6469669号公報に記載されているオキシムエステル光開始剤などが挙げられる。
【0148】
光重合開始剤の含有量は、赤外線吸収組成物の全固形分中0.1~40質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1~20質量%が更に好ましい。赤外線吸収組成物は光重合開始剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0149】
<<有彩色着色剤>>
本発明の赤外線吸収組成物は、有彩色着色剤を含有することができる。本発明において、有彩色着色剤とは、白色着色剤および黒色着色剤以外の着色剤を意味する。有彩色着色剤は、波長400nm以上650nm未満の範囲に吸収を有する着色剤が好ましい。
【0150】
有彩色着色剤としては、赤色着色剤、緑色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤およびオレンジ色着色剤が挙げられる。有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。顔料と染料とを併用してもよい。また、顔料は、無機顔料、有機顔料のいずれでもよい。また、顔料には、無機顔料または有機-無機顔料の一部を有機発色団で置換した材料を用いることもできる。無機顔料や有機-無機顔料を有機発色団で置換することで、色相設計をしやすくできる。
【0151】
顔料の平均一次粒子径は、1~200nmが好ましい。下限は5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。上限は、180nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。顔料の平均一次粒子径が上記範囲であれば、赤外線吸収組成物中における顔料の分散安定性が良好である。なお、本発明において、顔料の一次粒子径は、顔料の一次粒子を透過型電子顕微鏡により観察し、得られた画像写真から求めることができる。具体的には、顔料の一次粒子の投影面積を求め、それに対応する円相当径を顔料の一次粒子径として算出する。また、本発明における平均一次粒子径は、400個の顔料の一次粒子についての一次粒子径の算術平均値とする。また、顔料の一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
【0152】
有彩色着色剤は、顔料を含むものであることが好ましい。有彩色着色剤中における顔料の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。顔料としては以下に示すものが挙げられる。
【0153】
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214,215,228,231,232(メチン系),233(キノリン系),234(アミノケトン系),235(アミノケトン系),236(アミノケトン系)等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,269,270,272,279,291,294(キサンテン系、Organo Ultramarine、Bluish Red),295(モノアゾ系),296(ジアゾ系),297(アミノケトン系)等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59,62,63,64(フタロシアニン系),65(フタロシアニン系),66(フタロシアニン系)等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42,60(トリアリールメタン系),61(キサンテン系)等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,29,60,64,66,79,80,87(モノアゾ系),88(メチン系)等(以上、青色顔料)。
【0154】
また、緑色顔料として、1分子中のハロゲン原子数が平均10~14個であり、臭素原子数が平均8~12個であり、塩素原子数が平均2~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/118720号に記載の化合物が挙げられる。また、緑色顔料として中国特許出願第106909027号明細書に記載の化合物、国際公開第2012/102395号に記載のリン酸エステルを配位子として有するフタロシアニン化合物、特開2019-008014号公報に記載のフタロシアニン化合物、特開2018-180023号公報に記載のフタロシアニン化合物、特開2019-038958号公報に記載の化合物などを用いることもできる。
【0155】
また、青色顔料として、リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物を用いることもできる。具体例としては、特開2012-247591号公報の段落番号0022~0030、特開2011-157478号公報の段落番号0047に記載の化合物が挙げられる。
【0156】
また、黄色顔料として、特開2017-201003号公報に記載の化合物、特開2017-197719号公報に記載の化合物、特開2017-171912号公報の段落番号0011~0062、0137~0276に記載の化合物、特開2017-171913号公報の段落番号0010~0062、0138~0295に記載の化合物、特開2017-171914号公報の段落番号0011~0062、0139~0190に記載の化合物、特開2017-171915号公報の段落番号0010~0065、0142~0222に記載の化合物、特開2013-054339号公報の段落番号0011~0034に記載のキノフタロン化合物、特開2014-026228号公報の段落番号0013~0058に記載のキノフタロン化合物、特開2018-062644号公報に記載のイソインドリン化合物、特開2018-203798号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2018-062578号公報に記載のキノフタロン化合物、特許第6432076号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2018-155881号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2018-111757号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2018-040835号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2017-197640号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2016-145282号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2014-085565号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2014-021139号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2013-209614号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2013-209435号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2013-181015号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2013-061622号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2013-032486号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2012-226110号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-074987号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-081565号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-074986号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-074985号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-050420号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-031281号公報に記載のキノフタロン化合物、特公昭48-032765号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2019-008014号公報に記載のキノフタロン化合物、特許第6607427号公報に記載のキノフタロン化合物、韓国公開特許第10-2014-0034963号公報に記載の化合物、特開2017-095706号公報に記載の化合物、台湾特許出願公開第201920495号公報に記載の化合物、特許第6607427号公報に記載の化合物、特開2020-033525号公報に記載の化合物、特開2020-033524号公報に記載の化合物、特開2020-033523号公報に記載の化合物、特開2020-033522号公報に記載の化合物、特開2020-033521号公報に記載の化合物、国際公開第2020/045200号に記載の化合物、国際公開第2020/045199号に記載の化合物、国際公開第2020/045197号に記載の化合物を用いることもできる。また、これらの化合物を多量体化したものも、色価向上の観点から好ましく用いられる。
【0157】
赤色顔料として、特開2017-201384号公報に記載の構造中に少なくとも1つ臭素原子が置換したジケトピロロピロール化合物、特許第6248838号の段落番号0016~0022に記載のジケトピロロピロール化合物、国際公開第2012/102399号に記載のジケトピロロピロール化合物、国際公開第2012/117965号に記載のジケトピロロピロール化合物、特開2012-229344号公報に記載のナフトールアゾ化合物などを用いることもできる。また、赤色顔料として、芳香族環に対して、酸素原子、硫黄原子または窒素原子が結合した基が導入された芳香族環基がジケトピロロピロール骨格に結合した構造を有する化合物を用いることもできる。
【0158】
本発明において、有彩色着色剤には染料を用いることもできる。染料としては特に制限はなく、公知の染料を使用できる。例えば、ピラゾールアゾ系染料、アニリノアゾ系染料、トリアリールメタン系染料、アントラキノン系染料、アントラピリドン系染料、ベンジリデン系染料、オキソノール系染料、ピラゾロトリアゾールアゾ系染料、ピリドンアゾ系染料、シアニン系染料、フェノチアジン系染料、ピロロピラゾールアゾメチン系染料、キサンテン系染料、フタロシアニン系染料、ベンゾピラン系染料、インジゴ系染料、ピロメテン系染料等が挙げられる。また、染料には、特開2012-158649号公報に記載のチアゾール化合物、特開2011-184493号公報に記載のアゾ化合物、特開2011-145540号公報に記載のアゾ化合物も好ましく用いることができる。
【0159】
本発明の赤外線吸収組成物が、有彩色着色剤を含有する場合、有彩色着色剤の含有量は、本発明の赤外線吸収組成物の全固形分中1~50質量%が好ましい。本発明の赤外線吸収組成物が、有彩色着色剤を2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0160】
<<赤外線を透過させて可視光を遮光する色材>>
本発明の赤外線吸収組成物は、赤外線を透過させて可視光を遮光する色材(以下、可視光を遮光する色材ともいう)を含有することもできる。可視光を遮光する色材を含む赤外線吸収組成物は、赤外線透過フィルタ形成用の赤外線吸収組成物として好ましく用いられる。
【0161】
可視光を遮光する色材は、紫色から赤色の波長領域の光を吸収する色材であることが好ましい。また、可視光を遮光する色材は、波長450~650nmの波長領域の光を遮光する色材であることが好ましい。また、可視光を遮光する色材は、波長900~1500nmの光を透過させる色材であることが好ましい。可視光を遮光する色材は、以下の(A)および(B)の少なくとも一方の要件を満たすことが好ましい。
(A):2種類以上の有彩色着色剤を含み、2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成している。
(B):有機系黒色着色剤を含む。
【0162】
有彩色着色剤としては、上述したものが挙げられる。有機系黒色着色剤としては、例えば、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物などが挙げられ、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010-534726号公報、特表2012-515233号公報、特表2012-515234号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、特開2017-226821号公報の段落番号0016~0020に記載の化合物、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平01-170601号公報、特開平02-034664号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。
【0163】
2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成する場合の、有彩色着色剤の組み合わせとしては、例えば以下の(1)~(8)の態様が挙げられる。
(1)黄色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(2)黄色着色剤、青色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(3)黄色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(4)黄色着色剤および紫色着色剤を含有する態様。
(5)緑色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(6)紫色着色剤およびオレンジ色着色剤を含有する態様。
(7)緑色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(8)緑色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
【0164】
本発明の赤外線吸収組成物が可視光を遮光する色材を含有する場合、可視光を遮光する色材の含有量は、赤外線吸収組成物の全固形分中1~50質量%が好ましい。下限は5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。
【0165】
<<界面活性剤>>
本発明の赤外線吸収組成物は界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、フッ素系界面活性剤またはシリコーン系界面活性剤であることが好ましい。界面活性剤については、国際公開第2015/166779号の段落番号0238~0245に記載された界面活性剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。界面活性剤は特定粒子の分散剤として用いることもできる。
【0166】
フッ素系界面活性剤としては、特開2014-041318号公報の段落番号0060~0064(対応する国際公開第2014/017669号の段落番号0060~0064)等に記載の界面活性剤、特開2011-132503号公報の段落番号0117~0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF-171、F-172、F-173、F-176、F-177、F-141、F-142、F-143、F-144、F-437、F-475、F-477、F-479、F-482、F-554、F-555-A、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-565、F-563、F-568、F-575、F-780、EXP、MFS-330、R-41、R-41-LM、R-01、R-40、R-40-LM、RS-43、TF-1956、RS-90、R-94、RS-72-K、DS-21(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、AGC(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)、フタージェント710FM、610FM、601AD、601ADH2、602A、215M、245F(以上、株)NEOS製)等が挙げられる。
【0167】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報(2016年2月22日)、日経産業新聞(2016年2月23日))、例えばメガファックDS-21が挙げられる。
【0168】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。このようなフッ素系界面活性剤は、特開2016-216602号公報に記載されたフッ素系界面活性剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0169】
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。また、特開2010-032698号公報の段落番号0016~0037に記載されたフッ素含有界面活性剤や、下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化18】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3000~50000であり、例えば、14000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【0170】
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和結合含有基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落番号0050~0090および段落番号0289~0295に記載された化合物、DIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K等が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落番号0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0171】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0172】
カチオン系界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。具体例としては、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2-ヘプタデセニル-ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
【0173】
アニオン系界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテ硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、t-オクチルフェノキシエトキシポリエトキシエチル硫酸ナトリウム塩等が挙げられる。
【0174】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP-341、KF-6000、KF-6001、KF-6002、KF-6003(以上、信越化学工業(株)製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0175】
界面活性剤の含有量は、赤外線吸収組成物の全固形分中0.001~1質量%が好ましく、0.001~0.5質量%がより好ましく、0.001~0.2質量%が更に好ましい。
【0176】
また、界面活性剤を特定粒子の分散剤として用いる場合には、界面活性剤の含有量は、特定粒子100質量部に対して1~200質量部が好ましく、2~100質量部がより好ましく、5~50質量部が更に好ましい。
【0177】
赤外線吸収組成物は界面活性剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0178】
<<重合禁止剤>>
本発明の赤外線吸収組成物は重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられ、p-メトキシフェノールが好ましい。重合禁止剤の含有量は、赤外線吸収組成物の全固形分中、0.0001~5質量%が好ましい。赤外線吸収組成物は重合禁止剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0179】
<<シランカップリング剤>>
本発明の赤外線吸収組成物はシランカップリング剤を含有することができる。本明細書において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応および縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、フェニル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基が好ましい。シランカップリング剤は、特開2009-288703号公報の段落番号0018~0036に記載の化合物、特開2009-242604号公報の段落番号0056~0066に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。シランカップリング剤の含有量は、赤外線吸収組成物の全固形分中0.01~15.0質量%が好ましく、0.05~10.0質量%がより好ましい。赤外線吸収組成物はシランカップリング剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0180】
<<紫外線吸収剤>>
赤外線吸収組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、共役ジエン化合物、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物、メロシアニン色素などが挙げられる。このような化合物の具体例としては、特開2009-217221号公報の段落番号0038~0052、特開2012-208374号公報の段落番号0052~0072、特開2013-068814号公報の段落番号0317~0334、特開2016-162946号公報の段落番号0061~0080に記載された化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。紫外線吸収剤の市販品としては、BASF社製のTinuvinシリーズ、Uvinul(ユビナール)シリーズなどが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としては、ミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)が挙げられる。また、紫外線吸収剤は、特許第6268967号公報の段落番号0049~0059、国際公開第2016/181987号の段落番号0059~0076に記載された化合物を用いることもできる。紫外線吸収剤の含有量は、赤外線吸収組成物の全固形分中0.01~30質量%が好ましく、0.05~25質量%がより好ましい。赤外線吸収組成物は紫外線吸収剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0181】
<<酸化防止剤>>
本発明の赤外線吸収組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール性ヒドロキシ基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1~22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。また、酸化防止剤は、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2-[(4,6,9,11-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-2-イル)オキシ]エチル]アミン、亜リン酸エチルビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)などが挙げられる。酸化防止剤の市販品としては、例えば、アデカスタブ AO-20、アデカスタブ AO-30、アデカスタブ AO-40、アデカスタブ AO-50、アデカスタブ AO-50F、アデカスタブ AO-60、アデカスタブ AO-60G、アデカスタブ AO-80、アデカスタブ AO-330(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。また、酸化防止剤は、特許第6268967号公報の段落番号0023~0048に記載された化合物、国際公開第2017/006600号に記載された化合物、国際公開第2017/164024号に記載された化合物を使用することもできる。酸化防止剤の含有量は、赤外線吸収組成物の全固形分中0.01~20質量%であることが好ましく、0.3~15質量%であることがより好ましい。赤外線吸収組成物は酸化防止剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0182】
<<その他成分>>
本発明の赤外線吸収組成物は、必要に応じて、増感剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008-250074号公報の段落番号0101~0104、0107~0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、本発明の赤外線吸収組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開第2014/021023号、国際公開第2017/030005号、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤の市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0183】
また、本発明の赤外線吸収組成物を、インクジェット用インクや印刷用インク等の各種インクとして用いる場合、その他添加剤として、滑剤、充填剤、消泡剤、ゲル化剤、増粘剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を配合することができる。これらの添加剤としては、特開2014-024980号公報の段落番号0163~0170に記載のものを挙げることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0184】
<収容容器>
本発明の赤外線吸収組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や赤外線吸収組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。また、容器内壁は、容器内壁からの金属溶出を防ぎ、赤外線吸収組成物の保存安定性を高めたり、成分変質を抑制するなど目的で、ガラス製やステンレス製などにすることも好ましい。
【0185】
<赤外線吸収組成物の調製方法>
本発明の赤外線吸収組成物は、前述の成分を混合して調製できる。赤外線吸収組成物の調製に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解または分散して赤外線吸収組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜配合した2つ以上の溶液または分散液をあらかじめ調製し、使用時(塗布時)にこれらを混合して組成物として調製してもよい。
【0186】
赤外線吸収組成物の調製に際して、粒子を分散させるプロセスを含むことが好ましい。粒子を分散させるプロセスにおいて、粒子の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における粒子の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、粒子を分散させるプロセスおよび分散機は、「分散技術大全集、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015-157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。また粒子を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015-194521号公報、特開2012-046629号公報の記載を参酌できる。
【0187】
赤外線吸収組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、赤外線吸収組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
【0188】
フィルタの孔径は、0.01~7.0μmが好ましく、0.01~3.0μmがより好ましく、0.05~0.5μmが更に好ましい。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物をより確実に除去できる。フィルタの孔径値については、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。フィルタは、日本ポール株式会社(DFA4201NIEY、DFA4201NAEY、DFA4201J006Pなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)および株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタを用いることができる。
【0189】
また、フィルタとしてファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。市販品としては、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)が挙げられる。
【0190】
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
【0191】
<膜>
次に、本発明の膜について説明する。本発明の膜は、上述した本発明の赤外線吸収組成物から得られるものである。本発明の膜は、光学フィルタとして好ましく用いることができる。光学フィルタの用途は、特に限定されないが、固体撮像素子の受光側における近赤外線カットフィルタ(例えば、ウエハーレベルレンズに対する近赤外線カットフィルタ用など)、固体撮像素子の裏面側(受光側とは反対側)における近赤外線カットフィルタ、環境光センサー用の近赤外線カットフィルタ(例えば、情報端末装置が置かれた環境の照度や色調を感知してディスプレイの色調を調整する照度センサーや、色調を調整する色補正用センサー)などに好ましく用いることができる。特に、固体撮像素子の受光側における近赤外線カットフィルタとして好ましく用いることができる。また、波長700~1550nmの光を検出することで物体を検出する赤外線センサの近赤外線カットフィルタなどに使用できる。また、赤外線を透過させて可視光を遮光する色材を含む赤外線吸収組成物を用いることで、特定の波長以上の近赤外線のみを透過可能な赤外線透過フィルタの形成に用いることもできる。例えば、波長400~900nmまでを遮光し、波長900nm以上の近赤外線を透過可能な赤外線透過フィルタを形成することもできる。本発明の膜は、パターンを有していてもよく、パターンを有さない膜(平坦膜)であってもよい。また、本発明の膜は、支持体上に積層して用いてもよく、本発明の膜を支持体から剥離して用いてもよい。支持体としては、シリコン基板などの半導体基材や、透明基材が挙げられる。
【0192】
支持体として用いられる半導体基材上には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、半導体基材上には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されていてもよい。また、半導体基材上には、必要により、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層が設けられていてもよい。
【0193】
支持体として用いられる透明基材としては、少なくとも可視光を透過できる材料で構成されたものであれば特に限定されない。例えば、ガラス、樹脂などの材質で構成された基材が挙げられる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。ガラスとしては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、銅を含有するガラスなどが挙げられる。銅を含有するガラスとしては、銅を含有する燐酸塩ガラス、銅を含有する弗燐酸塩ガラスなどが挙げられる。銅を含有するガラスは、市販品を用いることもできる。銅を含有するガラスの市販品としては、NF-50(AGCテクノグラス(株)製)等が挙げられる。
【0194】
本発明の膜の厚さは、目的に応じて適宜調整できる。膜の厚さは20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。膜の厚さの下限は0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましい。
【0195】
本発明の膜を赤外線カットフィルタとして用いる場合、本発明の膜は、波長650~1500nm(好ましくは波長700~1300nm、より好ましくは波長700~1000nm)の範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。また、波長400~600nmの光の平均透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましく、85%以上であることが特に好ましい。また、波長400~600nmの全ての範囲での透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。また、本発明の膜は、波長650~1500nm(好ましくは波長700~1300nm、より好ましくは波長700~1000nm)の範囲の少なくとも1点での透過率が15%以下であることが好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下が更に好ましい。また、本発明の膜は、波長400~600nmの範囲における吸光度の最大値Aと、波長650~1500nmの範囲において最も短波側に存在する極大吸収波長における吸光度Aとの比(A/A)が0.30以下であることが好ましく、0.20以下であることがより好ましく、0.15以下であることが更に好ましく、0.10以下であることが特に好ましい。
【0196】
本発明の膜を赤外線透過フィルタとして用いる場合、本発明の膜は、波長400~830nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1100~1500nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であることが好ましい。赤外線透過フィルタとして用いられる本発明の膜は、以下の(1)~(4)のいずれかの分光特性を満たしていることが好ましい。
(1):波長400~750nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長900~1500nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である。
(2):波長400~830nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1000~1500nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である。
(3):波長400~950nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1100~1500nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である。
(4):波長400~1050nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である。
【0197】
本発明の膜は、有彩色着色剤を含むカラーフィルタと組み合わせて用いることもできる。カラーフィルタは、有彩色着色剤を含む着色組成物を用いて製造できる。本発明の膜を赤外線カットフィルタとして用い、かつ、本発明の膜とカラーフィルタと組み合わせて用いる場合、本発明の膜の光路上にカラーフィルタが配置されていることが好ましい。例えば、本発明の膜とカラーフィルタとを積層して積層体として用いることが好ましい。積層体においては、本発明の膜とカラーフィルタとは、両者が厚み方向で隣接していてもよく、隣接していなくてもよい。本発明の膜とカラーフィルタとが厚み方向で隣接していない場合は、カラーフィルタが形成された支持体とは別の支持体上に、本発明の膜が形成されていてもよく、本発明の膜とカラーフィルタとの間に、固体撮像素子を構成する他の部材(例えば、マイクロレンズ、平坦化層など)が介在していてもよい。
【0198】
本発明の膜は、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。
【0199】
<膜の製造方法>
本発明の膜は、本発明の赤外線吸収組成物を塗布する工程を経て製造できる。
【0200】
支持体としては、上述したものが挙げられる。赤外線吸収組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。
【0201】
赤外線吸収組成物を塗布して形成した赤外線吸収組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク時間は、10秒~3000秒が好ましく、40~2500秒がより好ましく、80~220秒が更に好ましい。乾燥は、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0202】
プリベーク後の赤外線吸収組成物層に対し、更に追加ベークを行ってもよい。追加ベークを行うことで、ポストベークの際に生じる赤外線吸収色素の粒子の凝集や、波長650~1500nmの範囲における2番目に短波側に存在する極大吸収波長での吸光度に対する、最も短波側に存在する極大吸収波長での吸光度の比の変化をより小さくすることができる。追加ベークを行う場合、追加ベーク温度は、100~180℃が好ましく、120~160℃がより好ましい。追加ベーク時間は、10~3000秒が好ましく、40~2500秒がより好ましく、300~1200秒が更に好ましい。追加ベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0203】
膜の製造方法においては、更にパターンを形成する工程を含んでいてもよい。パターン形成方法としては、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法や、ドライエッチング法を用いたパターン形成方法が挙げられ、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法が好ましい。なお、本発明の膜を平坦膜として用いる場合には、パターンを形成する工程を行わなくてもよい。以下、パターンを形成する工程について詳細に説明する。
【0204】
(フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合)
フォトリソグラフィ法でのパターン形成方法は、本発明の赤外線吸収組成物を塗布して形成した赤外線吸収組成物層に対しパターン状に露光する工程(露光工程)と、未露光部の赤外線吸収組成物層を現像除去してパターンを形成する工程(現像工程)と、を含むことが好ましい。必要に応じて、現像されたパターンをベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。以下、各工程について説明する。
【0205】
<<露光工程>>
露光工程では赤外線吸収組成物層をパターン状に露光する。例えば、赤外線吸収組成物層に対し、ステッパー露光機やスキャナ露光機などを用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン状に露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。
【0206】
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等が挙げられる。また、波長300nm以下の光(好ましくは波長180~300nmの光)を用いることもできる。波長300nm以下の光としては、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、KrF線(波長248nm)が好ましい。また、300nm以上の長波な光源も利用できる。
【0207】
また、露光に際して、光を連続的に照射して露光してもよく、パルス的に照射して露光(パルス露光)してもよい。なお、パルス露光とは、短時間(例えば、ミリ秒レベル以下)のサイクルで光の照射と休止を繰り返して露光する方式の露光方法のことである。
【0208】
照射量(露光量)は、例えば、0.03~2.5J/cmが好ましく、0.05~1.0J/cmがより好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、または、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、または、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m~100000W/m(例えば、5000W/m、15000W/m、または、35000W/m)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m、酸素濃度35体積%で照度20000W/mなどとすることができる。
【0209】
<<現像工程>>
次に、露光後の赤外線吸収組成物層における未露光部の赤外線吸収組成物層を現像除去してパターンを形成する。未露光部の赤外線吸収組成物層の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の赤外線吸収組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが支持体上に残る。現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、更に新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0210】
現像液は、有機溶剤、アルカリ現像液などが挙げられ、アルカリ現像液が好ましく用いられる。アルカリ現像液としては、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液(アルカリ現像液)が好ましい。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面および安全面で好ましい。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液は、更に界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5~100倍の範囲に設定することができる。また、現像後純水で洗浄(リンス)することも好ましい。また、リンスは、現像後の組成物層が形成された支持体を回転させつつ、現像後の組成物層へリンス液を供給して行うことが好ましい。また、リンス液を吐出させるノズルを支持体の中心部から支持体の周縁部に移動させて行うことも好ましい。この際、ノズルの支持体中心部から周縁部へ移動させるにあたり、ノズルの移動速度を徐々に低下させながら移動させてもよい。このようにしてリンスを行うことで、リンスの面内ばらつきを抑制できる。また、ノズルを支持体中心部から周縁部へ移動させつつ、支持体の回転速度を徐々に低下させても同様の効果が得られる。
【0211】
現像後、乾燥を施した後に追加露光処理や加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。追加露光処理やポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の硬化処理である。ポストベークにおける加熱温度は、例えば100~240℃が好ましく、200~240℃がより好ましい。ポストベークは、現像後の膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。追加露光処理を行う場合、露光に用いられる光は、波長400nm以下の光であることが好ましい。また、追加露光処理は、韓国公開特許第10-2017-0122130号公報に記載された方法で行ってもよい。
【0212】
(ドライエッチング法でパターン形成する場合)
ドライエッチング法でのパターン形成は、上記赤外線吸収組成物を支持体上に塗布して形成した赤外線吸収組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、この硬化物層上にパターニングされたフォトレジスト層を形成し、次いで、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングするなどの方法で行うことができる。フォトレジスト層の形成においては、プリベーク処理を施すことが好ましい。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013-064993号公報の段落番号0010~0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0213】
<光学フィルタ>
本発明の光学フィルタは、上述した本発明の膜を有する。光学フィルタの種類としては、赤外線カットフィルタおよび赤外線透過フィルタなどが挙げられる。
【0214】
本発明の光学フィルタは、上述した本発明の膜の他に、更に、銅を含有する層、誘電体多層膜、紫外線吸収層などを有していてもよい。紫外線吸収層としては、例えば、国際公開第2015/099060号の段落番号0040~0070、0119~0145に記載された吸収層が挙げられる。誘電体多層膜としては、特開2014-041318号公報の段落番号0255~0259に記載された誘電体多層膜が挙げられる。銅を含有する層としては、銅を含有するガラスで構成されたガラス基板(銅含有ガラス基板)や、銅錯体を含む層(銅錯体含有層)を用いることもできる。銅含有ガラス基板としては、銅を含有する燐酸塩ガラス、銅を含有する弗燐酸塩ガラスなどが挙げられる。銅含有ガラスの市販品としては、NF-50(AGCテクノグラス(株)製)、BG-60、BG-61(以上、ショット社製)、CD5000(HOYA(株)製)等が挙げられる。
【0215】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の膜を含む。固体撮像素子の構成としては、本発明の膜を有する構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はない。例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0216】
支持体上に、固体撮像素子の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等で形成される転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等で形成される遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等で形成されるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本発明の膜を有する構成である。更に、デバイス保護膜上であって、本発明の膜の下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、本発明の膜上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各画素を形成する膜が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各画素よりも低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報に記載された装置が挙げられる。
【0217】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の膜を含む。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木昭夫著、(株)工業調査会、1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、(株)工業調査会、1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003-045676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線-高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集-」、技術情報協会、326~328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430~485nm)、緑色領域(530~580nm)及び黄色領域(580~620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加え更に赤色領域(650~700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。
【0218】
<赤外線センサ>
本発明の赤外線センサは、上述した本発明の膜を含む。赤外線センサの構成としては、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はない。以下、本発明の赤外線センサの一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0219】
図1において、符号110は、固体撮像素子である。固体撮像素子110の撮像領域上には、赤外線カットフィルタ111と、赤外線透過フィルタ114とが配置されている。また、赤外線カットフィルタ111上には、カラーフィルタ112が配置されている。カラーフィルタ112および赤外線透過フィルタ114の入射光hν側には、マイクロレンズ115が配置されている。マイクロレンズ115を覆うように平坦化層116が形成されている。
【0220】
赤外線カットフィルタ111は本発明の赤外線吸収組成物を用いて形成することができる。赤外線カットフィルタ111の分光特性は、使用する赤外発光ダイオード(赤外LED)の発光波長に応じて選択される。カラーフィルタ112は、可視領域における特定波長の光を透過及び吸収する画素が形成されたカラーフィルタであって、特に限定はなく、従来公知の画素形成用のカラーフィルタを用いることができる。例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素が形成されたカラーフィルタなどが用いられる。例えば、特開2014-043556号公報の段落番号0214~0263の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。赤外線透過フィルタ114は、使用する赤外LEDの発光波長に応じてその特性が選択される。
【0221】
図1に示す赤外線センサにおいて、平坦化層116上には、赤外線カットフィルタ111とは別の赤外線カットフィルタ(他の赤外線カットフィルタ)が更に配置されていてもよい。他の赤外線カットフィルタとしては、銅を含有する層および/または誘電体多層膜を有するものなどが挙げられる。これらの詳細については、上述したものが挙げられる。また、他の赤外線カットフィルタとしては、デュアルバンドパスフィルタを用いてもよい。
【実施例
【0222】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。
【0223】
<赤外線吸収色素A-1の合成例>
下記スキームに従い赤外線吸収色素A-1を合成した。以下の構造式中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【化19】
【0224】
(化合物aの合成)
2-メチルベンゾイル酢酸エチル(東京化成工業(株)製)を原料にしてTetrahedron 62 (2006) 6018-6028に記載された方法に従って、化合物aを合成した。
【0225】
(化合物bの合成)
4-(1-メチルヘプトキシ)ベンゾニトリルと化合物aを原料にして国際公開第2016/194527号の段落0342に記載された方法に従って、化合物bを合成した。
【0226】
(化合物cの合成)
Chemistry-A European Journal,2009,vol.15,#19,p.4857-4864に記載された方法に従って、化合物cを合成した。
【0227】
(化合物dの合成)
特許第6353060号公報の段落0072に記載された方法に従って、化合物dを合成した。
【0228】
(化合物eの合成)
特許第6353060号公報の段落0072に記載された方法に従って、化合物eを合成した。
【0229】
(赤外線吸収色素A-1の合成)
化合物eの3.0質量部と、炭酸カリウムの1.75質量部とを、ジメチルアセトアミド(DMAc)の36質量部中で撹拌した後、ブタンスルトンの3.0質量部と、DMAcの4質量部とを添加し、10分間室温で撹拌した。外接温度を95℃まで昇温させて3時間加熱した。次に、内温30℃になるまで放冷し、析出した結晶をろ別した。4mol/L塩酸水溶液の30質量部に、内温30℃以下を維持しつつ、得られた結晶を少量ずつ添加し、30分間室温で撹拌し、析出した結晶をろ別する操作を2回行った。得られた結晶に60質量部の酢酸エチルを加えて、30分間加熱還流し、30℃になるまで放冷し、結晶をろ別する操作を2回行った。得られた結晶を50℃24時間送風乾燥させる事で、化合物A-1を2.0質量部得た。
【0230】
<赤外線吸収色素A-2~A-7の合成例>
赤外線吸収色素A-1の合成と同様の方法にて、赤外線吸収色素A-2~A-7を合成した。
【0231】
<赤外線吸収色素の溶解量の評価>
下記表に記載の赤外線吸収色素を、大気圧下にて、25℃に温度調整した下記表に記載の測定溶剤に添加した。1時間撹拌したのち、25℃の測定溶剤に対する各赤外線吸収色素の溶解量を求めた。以下の基準で、赤外線吸収色素の溶解量を評価した。Aの場合を良溶剤であると判断し、Bの場合を貧溶剤であると判断した。貧溶剤中では赤外線吸収色素は粒子として存在している。なお、以下の表の測定溶剤の欄に記載のPGMEAはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの略語である。
A:25℃の測定溶剤100gに対する赤外線吸収色素の溶解量が0.1g以上である。
B:25℃の測定溶剤100gに対する赤外線吸収色素の溶解量が0.1g%未満である。
【0232】
【表1】
【表2】
【0233】
<良溶剤中の赤外線吸収色素の極大吸収波長>
各赤外線吸収色素を、下記表に記載の溶剤(良溶剤)に溶解させて、赤外線吸収色素濃度2.5×10-6mol/Lの色素溶液を調製し、色素溶液の吸収スペクトルを測定した。波長650~1500nmの範囲に存在する極大吸収波長の数と、最も吸光度が大きい値を示す波長(λmax)をそれぞれ下記表に示す。
【表3】
【0234】
赤外線吸収色素A-1~A-7、比較色素1~3の構造は以下の通りである。以下の構造式中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【化20】
【化21】
【化22】
【0235】
<実施例1~5、比較例1~2の赤外線吸収組成物の調製>
下記に記載の原料を混合して、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)を用いてろ過して、赤外線吸収組成物を調製した。なお、実施例1~5、比較例1、2においては、赤外線吸収組成物中において、赤外線吸収色素は粒子の状態で存在していた。また、分散液は、以下のように調製した。下記表の分散液の欄に記載の種類の赤外線吸収色素と界面活性剤と溶剤とを、それぞれ下記表の分散液の欄に記載の配合量で混合し、更に、直径0.1mmのジルコニアビーズの500質量部を加え、遊星型ボールミルにて300rpmで5時間処理を行ったのち、ジルコニアビーズをろ過で分離して分散液を調製した。
【0236】
【表4】
【0237】
界面活性剤1:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製)
界面活性剤2:ドデシルベンゼンスルホン酸(東京化成工業(株)製)
樹脂1:ポリビニルアルコールの20質量%水溶液
【0238】
<実施例6~27の赤外線吸収組成物の調製>
下記表に記載の原料を混合して、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)を用いてろ過して、実施例6~27の赤外線吸収組成物を調製した。各赤外線吸収組成物中において、赤外線吸収色素は粒子の状態で存在していた。なお、分散液は、以下のように調製した。下記表の分散液の欄に記載の種類の赤外線吸収色素、分散剤及び溶剤を、それぞれ下記表に記載の配合量で混合し、更に、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて8時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液を調製した。
【0239】
<比較例3の赤外線吸収組成物の調製>
下記表に記載の溶剤に下記表に記載の樹脂を溶解させた樹脂溶液に、下記表に記載の赤外線吸収色素を加えて溶解し、ろ過により不溶分等を取り除くことにより、樹脂組成物を得た。比較例3の組成物中において、比較色素3は赤外線吸収組成物中の溶剤に溶解していた。
【0240】
【表5】
【表6】
【0241】
(溶剤)
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
S-2:シクロペンタノン
S-3:炭酸プロピレン
S-4:酢酸シクロヘキシル
S-5:メチルイソブチルケトン
【0242】
(分散剤)
C-1:下記構造の樹脂。(主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。重量平均分子量21000、酸価36.0mgKOH/g、アミン価47.0mgKOH/g)
【化23】
C-2:下記構造の樹脂(主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。重量平均分子量38000、酸価99.1mgKOH/g)
【化24】
【0243】
(樹脂)
P-1:下記構造の樹脂(主鎖に付記した数値はモル比である。重量平均分子量10000、酸価=69.2mgKOH/g)
【化25】
P-2:アリルメタクリレート(AMA)とメタクリル酸(MAA)との共重合体(組成比(質量比):AMA/MAA=80/20、重量平均分子量15000)
P-3:α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル(AOMA)とN-フェニルマレイミド(PME)との共重合体(組成比(質量比):AOMA/PME=66/34、重量平均分子量31600)
P-4:メチルメタクリレート(MMA)とグリシジルメタクリレート(GMA)との共重合体(組成比(質量比):MMA/GMA=50/50、重量平均分子量25000)
【0244】
(硬化性化合物)
M-1:下記構造の化合物の混合物(左側化合物と右側化合物とのモル比が7:3)
【化26】
M-2:下記構造の化合物
【化27】
M-3:EPICLON N-695(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC(株)製)
M-4:EHPE3150(2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物、(株)ダイセル製)
【0245】
(光重合開始剤)
F-1:下記構造の化合物
【化28】
F-2:下記構造の化合物
【化29】
【0246】
(界面活性剤)
G-1:下記構造の化合物(重量平均分子量14000、繰り返し単位の割合を示す%の数値はモル%である)
【化30】
G-2:KF-6001(シリコーン系界面活性剤、信越化学工業(株)製)
G-3:PolyFox PF6320(フッ素系界面活性剤、OMNOVA社製)
(重合禁止剤)
H-1:p-メトキシフェノール
【0247】
<極大吸収波長及び吸光度>
各赤外線吸収組成物の吸収スペクトルを測定し、波長650~1500nmの範囲に存在する極大吸収波長の数、波長650~1500nmの範囲に存在する極大吸収波長のうち最も短波側に存在する極大吸収波長(λ)、波長650~1500nmの範囲に存在する極大吸収波長のうち2番目に短波側に存在する極大吸収波長(λ)、および、極大吸収波長(λ)での吸光度を1としたときの極大吸収波長(λ)での吸光度の値(Z)をそれぞれ求めた。なお、実施例1~18、比較例1~3の赤外線吸収組成物において、波長650~1500nmの範囲における極大吸収波長及び吸光度の特性は、各赤外線吸収組成物に含まれる赤外線吸収色素A-1~A-7、比較色素1~3に由来するものである。
【0248】
<硬化膜の製造>
(製造例1) 実施例1~5、18、比較例1~3の赤外線吸収組成物を用いた硬化膜の製造方法
実施例1~5、18、比較例1~3の赤外線吸収組成物をガラス基板(コーニング社製、「1737」)上に、スピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行い初期乾燥した。その後、イナートオーブンを用いて50℃で30分間窒素置換した後、10分程度で150℃に昇温し、150℃で30分間窒素雰囲気下で追加乾燥することにより、硬化膜を得た。
【0249】
(製造例2) 実施例6~12、21、24、27の赤外線吸収組成物を用いた硬化膜の製造方法
実施例6~12、21、24、27の赤外線吸収組成物を、ガラス基板(コーニング社製、「1737」)上に、スピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行った。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用して、500mJ/cmで全面露光した。次いで現像機(CD-2060、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行い、次いで、純水でリンス処理し、次いで、スピン乾燥した。さらに、200℃のホットプレートを用いて300秒間加熱処理(ポストベーク)を行い、硬化膜を得た。
【0250】
(製造例3) 実施例13~17の赤外線吸収組成物を用いた硬化膜の製造方法
実施例13~17の赤外線吸収組成物を、ガラス基板(コーニング社製、「1737」)上に、スピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行った。さらに、200℃のホットプレートを用いて480秒間加熱処理(ポストベーク)を行い、硬化膜を得た。
【0251】
(製造例4) 実施例19、20、22、23、25、26の赤外線吸収組成物を用いた硬化膜の製造方法
実施例19、20、22、23、25、26の赤外線吸収組成物を、ガラス基板(コーニング社製、「1737」)上に、スピンコーターを用いて塗布し、120℃のホットプレートを用いて600秒間加熱処理(プリベーク)を行った。さらに、200℃のホットプレートを用いて480秒間加熱処理(ポストベーク)を行い、硬化膜を得た。
【0252】
<分光特性の評価>
(スロープ形状)
上記各硬化膜の製造方法で、波長650~1500nmの範囲に存在する極大吸収波長のうち最も短波側に存在する極大吸収波長(λ)での透過率が10%となるように硬化膜の膜厚を調整し、λの短波側で透過率が60%を示す最も長波側の波長(λSH60)を測定した。λとλSH60との差(λ-λSH60)を算出し、以下の基準でスロープ形状を評価した。上記波長の差が小さいほど赤外線の吸収の裾切れが良く、より選択的に赤外線を遮蔽することができることを示している。
-評価基準-
A:(λ-λSH60)≦50nm
B:50nm<(λ-λSH60)≦70nm
C:70nm<(λ-λSH60
【0253】
(赤外線遮蔽性)
上記各硬化膜の製造方法で、波長650~1500nmの範囲において、最も吸光度が大きい値を示す波長(λmaxA)での透過率が1%となるように硬化膜の膜厚を調製し、λmaxの長波側で透過率が20%を示す最も短波側の波長(λLH20)と、λmaxの短波側で透過率が20%を示す最も長波側の波長(λSH20)とを測定した。λLH20とλSH20の差(λLH20-λSH20)を算出し、以下の基準で赤外線遮蔽性を評価した。上記波長の差が大きいほど幅広い波長範囲の赤外線を遮蔽できることを示している。
-評価基準-
A:(λLH20-λSH20)≧110nm
B:85nm≦(λLH20-λSH20)<110nm
C:60nm≦(λLH20-λSH20)<85nm
D:(λLH20-λSH20)<60nm
【0254】
(耐熱性)
上記で得られた厚さ1.0μmの硬化膜を、ホットプレートを用いて、200℃で3時間加熱した。加熱前後の膜の波長400~2000nmの光に対する透過率を分光光度計U-4100((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定した。波長400~1500nmの範囲において、加熱前後の透過率の変化が最も大きい波長における透過率変化を下記式から算出し、下記基準で透過率変化を評価した。透過率変化が小さいほど、耐熱性に優れるといえる。
透過率変化=|(光照射後の透過率-光照射前の透過率)|
-評価基準-
A:透過率変化が3%未満である。
B:透過率変化が3%以上5%未満である。
C:透過率変化が5%以上10%未満である。
D:透過率変化が10%以上である。
【0255】
(耐光性)
上記で得られた厚さ1.0μmの硬化膜をスーパーキセノンランプ(20万ルクス)搭載の退色試験機にセットし、紫外線カットフィルタを使用しない条件下にて、20万ルクスの光を55時間照射した。次に、光照射後の膜の透過スペクトルを、分光光度計U-4100((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定した。波長400nm~2,000nmの範囲において、光照射前後の透過率の変化が最も大きい波長における透過率変化を下記式から算出し、下記基準で耐熱性を評価した。
透過率変化=|(光照射後の透過率-光照射前の透過率)|
-評価基準-
A:透過率変化が3%未満である。
B:透過率変化が3%以上5%未満である。
C:透過率変化が5%以上10%未満である。
D:透過率変化が10%以上である。
【0256】
【表7】
【0257】
上記表に示すように、実施例の赤外線吸収組成物は、スロープ形状が良好で、赤外線遮蔽性に優れていた。また、実施例の赤外線吸収組成物においては、赤外線吸収色素A-1~A-7は、いずれも赤外線吸収組成物中において粒子として存在していた。また、実施例の赤外線吸収組成物中において、これらの粒子は波長650~1500nmの範囲に極大吸収波長が2以上存在していた。また、前述の範囲において最も短波側に存在する極大吸収波長(λ)での吸光度(Z)は、2番目に短波側に存在する極大吸収波長(λ)での吸光度を1としたとき0.6~2.0であった。また、最も短波側に存在する極大吸収波長(λ)と、2番目に短波側に存在する極大吸収波長(λ)との差(λ-λ)は、いずれも30~80nmの範囲であった。また、表3と合わせて参照すると、実施例1~27の赤外線吸収組成物における上記λの値は、赤外線吸収色素A-1~A-7をそれぞれ良溶剤(ジメチルスルホキシド)に溶解させて調製した色素溶液において最も吸光度が大きい値を示す波長(λmax)よりも短波側に存在していた。
一方、比較例3は硬化膜の状態では、749nmと920nmに極大吸収波長を有していたが、その波長差が100nm以上と大きく、赤外線遮蔽性が十分でなかった。
実施例6の赤外線吸収組成物を用いた硬化膜を赤外線センサに用いることでノイズをより低減することができる。
【0258】
(実施例28)
実施例6において、分散液の調製時に、更に赤外線吸収色素B-1を1.7質量部と紫外線吸収剤UV-1を2.0質量部配合した以外は実施例6と同様にして赤外線吸収組成物を製造し、上記と同様の方法で各特性を評価した。実施例28の赤外線吸収組成物は、実施例6と同等のスロープ形状を有していた。また、赤外線遮蔽性については実施例6よりも優れており、Aの評価であった。
【0259】
(実施例29)
実施例9において、分散液の調製時に、更に赤外線吸収色素B-2を1.7質量部と紫外線吸収剤(Tinuvin326、2-(5-クロロ-2-ベンゾトリアゾリル)-6-tert-ブチル-p-クレゾール、BASF社製)を2.0質量部配合した以外は実施例9と同様にして赤外線吸収組成物を製造し、上記と同様の方法で各特性を評価した。実施例29の赤外線吸収組成物は、実施例9と同等のスロープ形状を有していた。また、赤外線遮蔽性については実施例9よりも優れており、Aの評価であった。
【0260】
(実施例30)
実施例10において、分散液の調製時に、更に赤外線吸収色素B-3を1.7質量部と紫外線吸収剤(Tinuvin477、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、BASF社製)を2.0質量部配合した以外は実施例10と同様にして赤外線吸収組成物を製造し、上記と同様の方法で各特性を評価した。実施例30の赤外線吸収組成物は、実施例10と同等のスロープ形状を有していた。また、赤外線遮蔽性については実施例10よりも優れており、Aの評価であった。
(実施例31)
実施例11において、分散液の調製時に、更に赤外線吸収色素B-4を1.7質量部と紫外線吸収剤(Tinuvin460、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、BASF社製)を2.0質量部配合した以外は実施例11と同様にして赤外線吸収組成物を製造し、上記と同様の方法で各特性を評価した。実施例31の赤外線吸収組成物は、実施例11と同等のスロープ形状を有していた。また、赤外線遮蔽性については実施例11よりも優れており、Aの評価であった。
(実施例32)
実施例12において、分散液の調製時に、更に赤外線吸収色素B-5を1.7質量部と紫外線吸収剤(Tinuvin405、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、BASF社製)を2.0質量部配合した以外は実施例12と同様にして赤外線吸収組成物を製造し、上記と同様の方法で各特性を評価した。実施例32の赤外線吸収組成物は、実施例12と同等のスロープ形状を有していた。また、赤外線遮蔽性については実施例12よりも優れており、Aの評価であった。
(実施例33)
実施例14において、分散液の調製時に、更に赤外線吸収色素B-2を1.7質量部と、赤外線吸収色素B-6を0.3質量部と紫外線吸収剤(Tinuvin479、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、BASF社製)を9.0質量部配合した以外は実施例14と同様にして赤外線吸収組成物を製造し、上記と同様の方法で各特性を評価した。実施例33の赤外線吸収組成物は、実施例14と同等のスロープ形状を有していた。また、赤外線遮蔽性については実施例14よりも優れており、Aの評価であった。
【0261】
(実施例34)
実施例15において、分散液の調製時に、更に赤外線吸収色素B-3を1.7質量部と、赤外線吸収色素B-7を0.3質量部と紫外線吸収剤(Uvinul3050、ジヒドロキシベンゾフェノン系化合物、BASF社製)を9.0質量部配合した以外は実施例15と同様にして赤外線吸収組成物を製造し、上記と同様の方法で各特性を評価した。実施例34の赤外線吸収組成物は、実施例15と同等のスロープ形状を有していた。また、赤外線遮蔽性については実施例15よりも優れており、Aの評価であった。
(実施例35)
実施例16において、分散液の調製時に、更に赤外線吸収色素B-4を1.7質量部と、赤外線吸収色素B-8を0.3質量部と紫外線吸収剤(Tinuvin477、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、BASF社製)を9.0質量部した以外は実施例16と同様にして赤外線吸収組成物を製造し、上記と同様の方法で各特性を評価した。実施例35の赤外線吸収組成物は、実施例16と同等のスロープ形状を有していた。また、赤外線遮蔽性については実施例16よりも優れており、Aの評価であった。
【0262】
(実施例36)
実施例17において、分散液の調製時に、更に赤外線吸収色素B-5を1.7質量部と、赤外線吸収色素B-9を0.3質量部と紫外線吸収剤(Uvinul3049、ジヒドロキシベンゾフェノン系化合物、BASF社製)を9.0質量部した以外は実施例17と同様にして赤外線吸収組成物を製造し、上記と同様の方法で各特性を評価した。実施例36の赤外線吸収組成物は、実施例17と同等のスロープ形状を有していた。また、赤外線遮蔽性については実施例17よりも優れており、Aの評価であった。
【0263】
(実施例37)
実施例14において、分散液の調製時に、更に赤外線吸収色素B-10を1.7質量部と、赤外線吸収色素B-6を0.3質量部と紫外線吸収剤Uvinul3050(ジヒドロキシベンゾフェノン系化合物、BASF社製)を9.0質量部配合した以外は実施例14と同様にして赤外線吸収組成物を製造し、上記と同様の方法で各特性を評価した。実施例37の赤外線吸収組成物は、実施例14と同等のスロープ形状を有していた。また、赤外線遮蔽性については実施例14よりも優れており、Aの評価であった。
【0264】
(実施例38)
実施例20において、分散液の調製時に、更に赤外線吸収色素B-10を1.7質量部と、赤外線吸収色素B-6を0.3質量部と紫外線吸収剤Tinuvin477(ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、BASF社製)を9.0質量部配合した以外は実施例20と同様にして赤外線吸収組成物を製造し、上記と同様の方法で各特性を評価した。実施例38の赤外線吸収組成物は、実施例20と同等のスロープ形状を有していた。また、赤外線遮蔽性については実施例20よりも優れており、Aの評価であった。
【0265】
(実施例39)
実施例21において、分散液の調製時に、更に赤外線吸収色素B-10を1.7質量部と、赤外線吸収色素B-6を0.3質量部と紫外線吸収剤Tinuvin479(ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、BASF社製)を9.0質量部配合した以外は実施例21と同様にして赤外線吸収組成物を製造し、上記と同様の方法で各特性を評価した。実施例39の赤外線吸収組成物は、実施例21と同等のスロープ形状を有していた。また、赤外線遮蔽性については実施例21よりも優れており、Aの評価であった。
【0266】
赤外線吸収色素B-1~B-10はそれぞれ以下に示す構造の化合物である。
【化31】
【化32】
【0267】
紫外線吸収剤UV-1は以下に示す構造の化合物である。
【化33】
【符号の説明】
【0268】
110:固体撮像素子、111:赤外線カットフィルタ、112:カラーフィルタ、114:赤外線透過フィルタ、115:マイクロレンズ、116:平坦化層
図1