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特許7397214基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
H01L21/31 E
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022551921
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2021033958
(87)【国際公開番号】W WO2022065163
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2020161403
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆史
(72)【発明者】
【氏名】堀井 貞義
(72)【発明者】
【氏名】うるし原 美香
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-62528(JP,A)
【文献】特開2005-268755(JP,A)
【文献】特開2013-197116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基板が出し入れされる底開口を有し、前記複数枚の基板を処理する反応管と、
前記反応管内で前記複数枚の基板を配列させて基板配列領域に保持する保持具と、
前記基板配列領域の内、複数の製品基板が配列される第1領域に対応して配置され、該第1領域に対応する複数箇所から前記反応管内に水素含有ガスを供給する第1ノズルと、
前記第1領域に対応して配置され、該第1領域に対応する位置から前記反応管内に酸素含有ガスを供給する第2ノズルと、
前記第1領域よりも前記底開口側で、前記保持具に保持されたダミー基板もしくは断熱体が配列される第2領域に対応して配置され、該第2領域に対応する位置から前記反応管内に希釈ガスを供給する第3ノズルと、
前記反応管内を排気する排気口と、
前記第2領域の前記水素含有ガスの濃度が前記第1領域よりも低くなるように、前記第1ノズルから供給される前記水素含有ガスと前記第3ノズルから供給される前記希釈ガスの供給を制御可能に構成された制御部と、を有し、
前記第1ノズルは、前記第1領域を含み前記第2領域を含まない領域を基板の配列方向で分割した分割領域に対応する噴射孔を有する複数本の多孔ノズルにより構成される、
基板処理装置。
【請求項2】
前記第3ノズルの上端の噴射孔と、前記第1ノズルの下端の噴射孔との高さ方向の間隔は、前記第1ノズルの互いに隣接する噴射孔の間隔のいずれよりも大きい、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記反応管は、前記底開口と反対側の閉鎖端である天井に設けられ、前記反応管内に不活性ガスを供給する天井ガス供給部、を有する、
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記複数本の多孔ノズルの内、最も前記底開口側の噴射孔を有する多孔ノズルの噴射孔は、前記反応管の天井側よりも前記底開口に向かって単位長さ当たりの吐出量が単調に増加するような開口もしくは間隔を有する、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記反応管の天井側から前記反応管内に希釈ガスを供給するガス供給口、
を更に備え、
前記排気口は、前記第1領域よりも下方に設けられる請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記分割領域は、その中に25枚若しくはその倍数の基板が配列されるように分割される、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第2領域の複数の前記ダミー基板もしくは断熱体を纏めて覆うカバー、を更に備えた、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記希釈ガスは、不活性ガス若しくは酸素含有ガスである、
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基板の縁から中心に向かうガス分子の移動おける、拡散と対流の割合は、酸素含有ガスの方が、水素含有ガスに比べて対流の割合が大きくなるように、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの噴射孔が構成される、
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第1ノズルの噴射孔および前記第2ノズルの噴射孔の少なくとも一方は、基板に対して平行な方向に開口する、
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記第1ノズルの噴射孔および前記第2ノズルの噴射孔の少なくとも一方は、基板に中心に向かって開口する、
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第1ノズルの噴射孔の数は、前記第2ノズルの噴射孔の数よりも少ない、
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記第2ノズルの噴射孔は、少なくとも、前記第1領域に配置される前記複数の製品基板のそれぞれに対応して設けられる、
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記第2ノズルは、前記第1領域に配列される製品基板に1対1で対応する噴射孔を有し、
前記噴射孔は、前記基板配列領域内の最も前記天井側で複数のダミー基板が配列される第3領域に対応して配置されず、
前記第1ノズルの噴射孔は前記第3領域に対応して配置される、
請求項3または請求項9に記載の、基板処理装置。
【請求項15】
複数枚の基板を底開口から反応管内へ搬入し、基板配列領域に保持する工程と、
前記基板配列領域の内、複数の製品基板が配列される第1領域に少なくとも対応して配置された第1ノズルから該第1領域に対応する複数箇所から前記反応管内に水素含有ガスを供給し、前記第1領域に対応して配置された第2ノズルから該第1領域に対応する位置から前記反応管内に酸素含有ガスを供給し、前記第1領域よりも前記底開口側でダミー基板もしくは断熱体が配列される第2領域に対応して配置された第3ノズルから該第2領域に対応する位置から前記反応管内に希釈ガスを供給し、基板を処理する工程と、
を有し、
前記基板を処理する工程では、前記第2領域の前記水素含有ガスの濃度を、前記第1領域よりも低くなるように、前記第1ノズルから供給する前記水素含有ガスと前記第3ノズルから供給する前記希釈ガスの供給を制御し、
前記第1領域を含み前記第2領域を含まない領域を分割した分割領域に対応する噴射孔を有する複数本の多孔ノズルにより構成される前記第1ノズルから、前記水素含有ガスを供給する、
半導体装置の製造方法。
【請求項16】
複数枚の基板を底開口から反応管内へ搬入し、基板配列領域に保持する工程と、
前記基板配列領域の内、複数の製品基板が配列される第1領域に少なくとも対応して配置された第1ノズルから該第1領域に対応する複数箇所から前記反応管内に水素含有ガスを供給し、前記第1領域に対応して配置された第2ノズルから該第1領域に対応する位置から前記反応管内に酸素含有ガスを供給し、前記第1領域よりも前記底開口側でダミー基板もしくは断熱体が配列される第2領域に対応して配置された第3ノズルから該第2領域に対応する位置から前記反応管内に希釈ガスを供給し、基板を処理する工程と、
を有し、
前記基板を処理する工程では、前記第2領域の前記水素含有ガスの濃度を、前記第1領域よりも低くなるように、前記第1ノズルから供給する前記水素含有ガスと前記第3ノズルから供給する前記希釈ガスの供給を制御し、
前記第1領域を含み前記第2領域を含まない領域を分割した分割領域に対応する噴射孔を有する複数本の多孔ノズルにより構成される前記第1ノズルから、前記水素含有ガスを供給する、
基板処理方法。
【請求項17】
複数枚の基板を底開口から反応管内へ搬入し、基板配列領域に保持する手順と、
前記基板配列領域の内、複数の製品基板が配列される第1領域に少なくとも対応して配置された第1ノズルから該第1領域に対応する複数箇所から前記反応管内に水素含有ガスを供給し、前記第1領域に対応して配置された第2ノズルから該第1領域に対応する位置から前記反応管内に酸素含有ガスを供給し、前記第1領域よりも前記底開口側でダミー基板もしくは断熱体が配列される第2領域に対応して配置された第3ノズルから該第2領域に対応する位置から前記反応管内に希釈ガスを供給し、基板を処理する手順と、
を有し、
前記基板を処理する手順では、前記第2領域の前記水素含有ガスの濃度を、前記第1領域よりも低くなるように、前記第1ノズルから供給する前記水素含有ガスと前記第3ノズルから供給する前記希釈ガスの供給を制御し、
前記第1領域を含み前記第2領域を含まない領域を分割した分割領域に対応する噴射孔を有する複数本の多孔ノズルにより構成される前記第1ノズルから、前記水素含有ガスを供給する、
ように、コンピュータにより基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板処理方法、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として、反応管内で基板の表面に酸化膜を形成する工程がある。当該酸化膜形成工程では、複数枚の基板を間隔を空けて反応室内に積載し、同時に処理することが行われることがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-62528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数枚の基板の反応室内の配置場所が異なることで、基板に形成される酸化膜の膜厚が異なること(Loading effect)がある。この課題を解決するために、反応室内における酸化ガスの濃度の均一性を維持することが必要である。そのために、反応室内へ供給する気体の流量を調整することが考えられるが、膜厚の均一性を向上させるために、さらなる工夫が求められる。
【0005】
本開示は、上記事実を考慮してなされたものであり、基板の配置位置にかかわらず、酸化膜の厚さの均一性を向上させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、複数枚の基板が出し入れされる底開口を有し、前記複数枚の基板を処理する反応管と、前記反応管内で前記複数枚の基板を配列させて基板配列領域に保持する保持具と、前記基板配列領域の内、複数の製品基板が配列される第1領域に対応して配置され、該第1領域に対応する複数箇所から前記反応管内に水素含有ガスを供給する第1ノズルと、前記第1領域に対応して配置され、該第1領域に対応する位置から前記反応管内に酸素含有ガスを供給する第2ノズルと、前記第1領域よりも前記底開口側で、前記保持具に保持されたダミー基板もしくは断熱体が配列される第2領域に対応して配置され、該第2領域に対応する位置から前記反応管内に希釈ガスを供給する第3ノズルと、前記反応管内を排気する排気口と、前記第2領域の前記水素含有ガスの濃度が前記第1領域よりも低くなるように、前記第1ノズルから供給される前記水素含有ガスと前記第3ノズルから供給される前記希釈ガスの供給を制御可能に構成された制御部と、を有し、前記第1ノズルは、前記第1領域を含み前記第2領域を含まない領域を基板の配列方向で分割した分割領域に対応する噴射孔を有する複数本の多孔ノズルにより構成される、基板処理装置、が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板の配置位置にかかわらず、酸化膜の厚さの均一性を向上させることができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】基板処理装置の全体図を示す斜視透視図である。
図2】基板処理装置の熱処理炉の構成を示す断面概略図である。
図3】基板処理装置の反応管内の構成を示す断面概略図である。
図4A】第1実施形態の成膜処理における反応管内の原子状酸素濃度分布濃度を示す図である。
図4B】第1実施形態の成膜処理における反応管内の膜厚バラツキの分布を示すグラフ図である。
図5】基板処理装置の反応管内の他の構成を示す断面概略図である。
図6】反応管内に断熱部材を配置した部分を示す断面概略図である。
図7A】第2実施形態を示す図であり、反応管内に断熱部材を配置した場合の原子状酸素濃度分布濃度を示す図である。
図7A2】第2実施形態を示す図であり、反応管内に断熱部材を配置した場合の膜厚バラツキの分布を示すグラフ図である。
図7B】第2実施形態を示す図であり、反応管内に断熱部材を配置しない場合の原子状酸素濃度分布濃度を示す図である。
図7B2】第2実施形態を示す図であり、反応管内に断熱部材を配置しない場合の膜厚バラツキの分布を示すグラフ図である。
図8】第3実施形態の反応管内の構成を示す断面概略図である。
図9】第3実施形態のウエハ等の配置と、膜厚バラツキの分布を示すグラフ図である。
図10】第3実施形態の反応管内の構成を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示者等は、反応管内に基板と共に配列されたダミー基板または断熱体の近傍の配列位置と、その他の配列位置において、形成される膜厚が異なる課題が生じていることに着目した。そして、製品ウエハは、ダミー基板と比較して、ウエハ1枚当たりの成膜面積が大きいため、成膜時に消費される原子状酸素群の単位時間当たりの量が、ダミー基板が配列される領域と、製品ウエハが配列される領域で異なるため、これが原因で、製品ウエハについて、ダミー基板近傍に配列されたものとそうでないもので、膜厚が異なることを見いだした。
【0010】
<第1実施形態>
以下、本開示の第1実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0011】
図1に、基板処理装置Sの全体図を示す。基板処理装置Sは、ウエハポッドを搭載するポッドストッカ1と、ボート3と、ポッドストッカ1に搭載されたウエハポッドとボート3との間でウエハの移載を行うウエハ移載手段(移載機)2と、ボート3を熱処理炉5内に挿入及び引き出すボート昇降手段(ボートエレベータ)4と、加熱手段(ヒータ)を備えた熱処理炉5と、を含んで構成されている。
【0012】
図2には、熱処理炉5の構成を例示する断面概略図が示されている。図2における上下が、鉛直方向と一致しており、本実施形態において上、下の記載は、鉛直方向の上、下を意味している。
【0013】
図2示すとおり、熱処理炉5は、加熱源としての抵抗加熱ヒータ9を有している。ヒータ9は円筒形状であり、ヒータベース(図示せず)に支持されることで垂直に据え付けられている。ヒータ9の内側には、ヒータ9と同心円状に反応管10が配設されている。反応管10内には基板を処理する処理室(反応室)4が形成され、基板保持具としてのボート3が搬入されるように構成されている。ボート3は、複数枚の基板としてのシリコンウエハ等のウエハ6を略水平状態で隙間(基板ピッチ間隔)をもって複数段に保持するように構成されている。以下の説明では、ボート3内の最上段のウエハ支持位置を#120とし、最下段のウエハ支持位置を#1と表す。また、ボート3内の最下段からn段目の支持位置に保持されるウエハ6をウエハ#nと表す。なおここで言うウエハ支持位置は、ウエハ6だけでなく、後述するダミー基板や断熱板を支持するための位置を含む場合があり、断熱板支持位置の間隔はウエハ6を支持するためのウエハ支持位置の間隔と異なり得る。
【0014】
反応管10の下方には、ボート3を挿入するための底開口4Aが構成され開放されている。反応管10の開放部分(底開口4A)は、シールキャップ13により密閉されるように構成されている。シールキャップ13上には、ボート3を下方から支持する断熱キャップ15が設けられている。断熱キャップ15はシールキャップ13を貫通するように設けられた回転軸(図示せず)を介して回転機構14に取り付けられている。回転機構14は、回転軸を介して、断熱キャップ12、ボート3を回転させることでボート3に支持されたウエハ6を回転させるように構成されている。ボート3の下方の段に断熱板を配置する場合、断熱キャップ15は省略できる。
【0015】
反応管10の底開口4Aと反対側の閉鎖端である天井4Bの壁にはシャワー板12が取り付けられており、反応管10の天井壁とシャワー板12とによりバッファ室12aが形成されている。反応管10の上部には、希釈ガスとしての不活性ガスを反応室4内の上方からウエハ6に対して供給する不活性ガス供給ノズル7が、バッファ室12a内に連通するように接続されている。不活性ガス供給ノズル7のガス噴射口は下方を向いており、反応室4内の上方から下方に向けて(ウエハの積載方向に沿って)不活性ガスを噴射するように構成されている。不活性ガス供給ノズル7から供給された不活性ガスは、バッファ室12a内に送られ、シャワー板12を介して反応室4内に供給される。シャワー板12により、複数枚のウエハ6が配列されるウエハ配列領域の一端側から他端側に向けて不活性ガスをシャワー状に供給するガス供給口が構成されている。シャワー板12とバッファ室12aにより天井ガス供給部が構成される。
【0016】
不活性ガスとしては、例えば、 窒素(N)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する他の不活性ガスにおいても同様である。
【0017】
不活性ガス供給ノズル7には、不活性ガス供給ラインとしての不活性ガス供給管70が接続されている。不活性ガス供給管70には、上流側から順に、不活性ガス供給源(図示せず)、開閉バルブ93、流量制御手段(流量制御器)としてのマスフローコントローラ(MFC)92、及び開閉バルブ91が設けられている。
【0018】
反応管10の側方下部には、水素含有ガスを反応室4内の側方からウエハ6に対して供給する水素含有ガス供給ノズル8bが、反応管10の側壁を貫通するように接続されている。水素含有ガス供給ノズル8bは、第1領域としてのウエハ配列領域PWに対応する領域、すなわち反応管10内においてウエハ配列領域PWと対向しウエハ配列領域PWを取り囲む円筒状の領域に配置されている。水素含有ガス供給ノズル8bは長さの異なる複数本(本実施形態では3本)のL字型のノズルにより構成されており、それぞれが反応管10内において反応管10の側壁の内壁に沿って立ち上がっている。
【0019】
水素含有ガスとしては、水素(H)、水蒸気(HO)や、アンモニア(NH)、ヒドラジン(N)、ジアゼン(N)、N等の各種の炭化水素ガスの少なくともいずれか、又はこれらの混合ガスが例示される。
【0020】
本実施形態において、ウエハ配列領域PWは、主に製品ウエハが配置される領域であり一例として、支持位置♯6~♯115とすることができる。また、サイドダミー基板SDをホルダー3に支持する位置に対応する、天井側の上ダミー配列領域SD-Tは、一例として、支持位置♯116~♯120とすることができる。また、サイドダミー基板SDをホルダー3に支持する位置に対応する、下開口側の下ダミー配列領域SD-Uは、一例として、支持位置♯1~♯5とすることができる。
【0021】
図3にも示されるように、水素含有ガス供給ノズル8bを構成する複数本のノズルは、ウエハ配列方向において異なる位置で、少なくとも1つの噴射孔を有する。水素含有ガスは、ウエハ配列領域PW及び上ダミー配列領域SD-Tに対応する領域を、ウエハ配列方向において分割した複数の分割領域からそれぞれ反応管10内に供給され、ウエハ配列方向(垂直方向)の反応室4内の水素濃度を調節することが可能となっている。分割数を3とし、複数本のノズルがそれぞれ1の噴射孔を有する場合、3か所から反応管10内に供給される。なお、水素含有ガス供給ノズル8bは、ウエハ6よりも、反応管10の側壁の内壁に近い側に内壁に沿って設けられている。水素含有ガス供給ノズル8bにより第1ノズルが構成される。
【0022】
水素含有ガス供給ノズル8bを構成する複数本のノズルの先端の上面はそれぞれ閉塞しており、それぞれのノズル先端部側面に少なくとも1つ、より好適には複数のガス噴射孔が設けられている。図3において、水素含有ガス供給ノズル8bからウエハ6側に伸びる矢印が各ガス噴射孔からの水素含有ガスの噴射方向を示しており、各矢印の根元部分が各ガス噴射孔を示している。すなわち、ガス噴射孔はウエハ6側を向いており、反応室4内の側方から水平方向に(ウエハの主面に沿う方向に)ウエハ6に向けて水素含有ガスを噴射するように構成されている。このように基板の配列方向に沿って複数のガス噴射孔を有するノズルは、多孔ノズルの一種である。なお、本実施形態の場合、一番長いノズル(以下「水素含有ガス供給ノズル8b-1」という)には5つのガス噴射孔、二番目に長いノズル(以下「水素含有ガス供給ノズル8b-2」という)には5つのガス噴射孔、三番目に長いノズル(以下「水素含有ガス供給ノズル8b-3」という)には7つのガス噴射孔、が設けられている。これら複数(本実施形態では17個)のガス噴射孔はそれぞれのノズルにおいて等間隔に設けられている。
【0023】
水素含有ガス供給ノズル8b-1、8b-2、8b-3に形成された噴射孔を底開口4A側から順に噴射孔H4~H20とする。本実施形態では、一例として、図3に示されるように、水素含有ガス供給ノズル8b-1の噴射孔H16~H20を、1番目に高い位置の分割領域に対応して形成し、水素含有ガス供給ノズル8b-2の噴射孔H11~H15を、2番目に高い位置の分割領域に対応して形成し、水素含有ガス供給ノズル8b-3の噴射孔H4~H10を、3番目に高い位置の分割領域に対応して形成する。このようにして、水素含有ガス供給ノズル8b-1、8b-2、8b-3が、分割領域へのガス供給を分担する。なお分割領域には製品ウエハを一定間隔で配置することができる。更に、噴射孔H4~H20を全て等間隔に配置して、噴射孔1個当たりに割り当てられる製品ウエハの枚数を1より大きい一定数にすることもできる。分割領域の高さ(ウエハ配列方向の長さ)は任意であり、それぞれ異なってもよく、或いは、最も低い位置の分割領域を除く分割領域(すなわち1番目及び2番目に高い位置の分割領域)の高さを等しくすることもできる。例えば、これらの分割領域に、1つのウエハポッドに収容される基板の数(25枚)と同数の基板が配列されるようにすることができる。
【0024】
水素含有ガス供給ノズル8bには、水素含有ガス供給ラインとしての水素含有ガス供給管80bが接続されている。水素含有ガス供給管80bは複数本(本実施形態では3本)の配管により構成されており、水素含有ガス供給ノズル8bを構成する複数本のノズルのそれぞれに接続されている。水素含有ガス供給管80bには、上流側から順に、水素含有ガス供給源(図示せず)、開閉バルブ96b、流量制御手段(流量制御器)としてのマスフローコントローラ(MFC)95b、及び開閉バルブ94bが設けられている。なお、開閉バルブ96b、マスフローコントローラ95b、及び開閉バルブ94bは、水素含有ガス供給管80bを構成する複数本の配管のそれぞれに設けられており、水素含有ガス供給ノズル8bを構成する複数本のノズル毎に独立して水素含有ガスの流量を制御できるようになっている。
【0025】
なお、噴射孔H4~H20における水素含有ガス吐出バランスとして、噴射孔H4及びH5の1孔当たりの吐出流量を、噴射孔H6~H10の1.3~2.1倍程度、多くなるように設定することが好ましい。一例として、H4及びH5から各々168sccmを供給し、H6~H20で各々100sccmを供給することができる。
【0026】
本実施形態では、等間隔の噴射孔の吐出流量を制御したが、単位長さ当たりの吐出流量が単調に増加するような開口(噴射孔)もしくは間隔を異ならせて形成して制御してもよい。
【0027】
反応管10の側方下部には、水素含有ガス供給ノズル8b-3よりも短い不活性ガス供給ノズル8cが、反応管10の側壁を貫通するように接続されている。不活性ガス供給ノズル8cはウエハ配列領域PWよりも底開口4A側で、ボート3に保持されたダミー基板もしくは断熱体が配列される領域(以下「下ダミー配列領域SD-U」という)に対向し、下ダミー配列領域SD-Uを取り囲む円筒状の領域に配置されている。不活性ガス供給ノズル8cにより第3ノズルが形成されている。
【0028】
不活性ガス供給ノズル8cの先端の上面は閉塞しており、ノズル先端部側面に少なくとも1つのガス噴射孔が設けられている(本実施形態では2つ)。図3において、不活性ガス供給ノズル8cから下ダミー配列領域SD-U側に伸びる矢印が各ガス噴射孔からの不活性ガスの噴射方向を示しており、各矢印の根元部分が各ガス噴射孔を示している。すなわち、ガス噴射孔は下ダミー配列領域SD-U側を向いており、反応室4内の側方から水平方向に(ウエハの主面に沿う方向に)ダミーウエハまたは断熱板に向けて希釈ガスとしての不活性ガスを噴射するように構成されている。
【0029】
不活性ガス供給ノズル8cに形成された2つの噴射孔を、下開口4A側から噴射孔H1、H2とする。噴射孔H4~H20の隣り合う噴射孔同士の間隔の内、最大のものを間隔Dとし、噴射孔H1とH2の間隔を間隔D1-2とすると、噴射孔H2とH4の間の間隔D2-4は、間隔Dと間隔D1-2のいずれよりも大きい。一例として、間隔D2-4は、間隔Dの2倍である。つまり、噴射孔H2及びH4と間隔Mとなる位置に、孔の形成されていない非噴射部H3があるとみなすことができる。
【0030】
不活性ガス供給ノズル8cには、不活性ガス供給ラインとしての不活性ガス供給管80cが接続されている。不活性ガス供給管80cには、上流側から順に、不活性ガス供給源(図示せず)、開閉バルブ96c、流量制御手段(流量制御器)としてのマスフローコントローラ(MFC)95c、及び開閉バルブ94cが設けられている。
【0031】
反応管10の側方下部には、酸素含有ガス(酸化ガス)を反応室4内の側方からウエハ6に対して供給する酸素含有ガス供給ノズル8aが、反応管10の側壁を貫通するように接続されている。酸素含有ガス供給ノズル8aはウエハ配列領域PWに対応する領域、すなわち反応管10内においてウエハ配列領域PWと対向しウエハ配列領域PWを取り囲む円筒状の領域に配置されている。酸素含有ガス供給ノズル8aは、L字型のノズルにより構成されており、反応管10内において反応管10の側壁の内壁に沿って立ち上がっている。酸素含有ガス供給ノズル8aは、ウエハ6よりも、反応管10の側壁の内壁に近い側に内壁に沿って設けられている。酸素含有ガス供給ノズル8aにより第2ノズルが構成される。
【0032】
酸素含有ガスとして、酸素(O)、オゾン(O3)、過酸化水素(H22)、一酸化窒素(NO)の少なくともいずれか、又はこれらの混合ガスを用いることができる。
【0033】
酸素含有ガス供給ノズル8aの先端の上面は閉塞しており、ノズル先端部側面にガス噴射孔が設けられている。図3において、酸素含有ガス供給ノズル8aからウエハ6側に伸びる矢印が各ガス噴射孔からの酸素含有ガスの噴射方向を示しており、各矢印の根元部分が各ガス噴射孔を示している。すなわち、ガス噴射孔はウエハ側を向いており、反応室4内の側方から水平方向に(ウエハの主面に沿う方向に)ウエハ6に向けて酸素含有ガスを噴射するように構成されている。なお、本実施形態の場合、ウエハ6に対して1対1で対応する対応噴射孔、ずなわち、ボート3に形成されたウエハの支持ピッチと同ピッチで対応噴射孔を有している。酸素含有ガス供給ノズル8a、水素含有ガス供給ノズル8b-1、8b-2、8b-3及び不活性ガス供給ノズル8cの噴射孔は、水平方向において、ウエハ6の中心つまり反応管10の中心軸に向いて開口するように設けることができる。
【0034】
酸素含有ガス供給ノズル8aには、酸素含有ガス供給ラインとしての酸素含有ガス供給管80aが接続されている。酸素含有ガス供給管80aには、上流側から順に、酸素含有ガス供給源(図示せず)、開閉バルブ96a、流量制御手段(流量制御器)としてのマスフローコントローラ(MFC)95a、及び開閉バルブ94aが設けられている。
【0035】
反応管10の側方下部(下ダミー配列領域SD-Uよりも下側)には、処理室内を排気するガス排気口11が設けられている。ガス排気口11には、ガス排気ラインとしてのガス排気管50が接続されている。ガス排気管50には、上流側から順に、圧力調整手段(圧力制御器)としてのAPC(Auto Pressure Controller)51と、排気手段(排気装置)としての真空ポンプ52とが設けられている。主に、ガス排気口11、ガス排気管50、APC51、真空ポンプ52により排気系が構成される。
【0036】
抵抗加熱ヒータ9、マスフローコントローラ92、95a、95b、95c、開閉バルブ91、93、94a、94b、96a、96b、APC51、真空ポンプ52、及び回転機構14などの基板処理装置の各部は、制御手段(制御部)としてのコントローラ100に接続されており、コントローラ100は、水素含有ガス供給ノズル8bから供給する水素含有ガス流量、酸素含有ガス供給ノズル8aから供給する酸素含有ガス流量、シャワー板12から供給する不活性ガス流量、不活性ガス供給ノズル8cから供給する不活性ガス流量、反応管10内の温度、圧力等、基板処理装置の各部の環境、動作を制御可能に構成されている。コントローラ100は、CPU、メモリ、HDD等の記憶装置、FPD等の表示装置、キーボードやマウス等の入力装置を備えたコンピュータとして構成されている。
【0037】
次に、上述の基板処理装置Sの熱処理炉5を使用して、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ6に酸化処理を施す方法について説明する。尚、以下の説明において、基板処理装置Sを構成する各部の動作はコントローラ100により制御される。
【0038】
まず、基板移載機により1バッチ分(例えば100枚)のウエハ6をボート3のウエハ配列領域PWに移載(ウエハチャージ)する。また、ボート3の上ダミー配列領域SD-T及び下ダミー配列領域SD-Uには、サイドダミー基板SDを載置する。サイドダミー基板SDは、ウエハ6よりも1枚当たりの成膜面積が小さい。ヒータ9により加熱状態を維持された熱処理炉5の反応室4内に、ウエハ6及びサイドダミー基板SDを装填したボート3を搬入(ボートロード)し、シールキャップ13により反応管10内を密閉する。次に、真空ポンプ52により反応管10内を真空引きし、APC51により反応管10内圧力(炉内圧力)が大気圧よりも低い所定の処理圧力となるよう制御する。回転機構14によりボート3が所定の回転速度で回転するようにする。また、反応室4内温度(炉内温度)を昇温させ、炉内温度が所定の処理温度となるよう制御する。
【0039】
そして、不活性ガス供給ノズル7、8cより反応室4内に不活性を供給する。すなわち、開閉バルブ91、93を開くことで、マスフローコントローラ92で流量制御された不活性ガスを、不活性ガス供給管70を介して不活性ガス供給ノズル7より反応室4内に供給する。不活性ガス供給ノズル7から供給された不活性ガスは、バッファ室12a内を経て、シャワー板12を介して反応室4内にシャワー状に供給される。
【0040】
また、酸素含有ガス供給ノズル8a、水素含有ガス供給ノズル8b、不活性ガス供給ノズル8cから、反応室4内に酸素含有ガス、水素含有ガス、不活性ガスをそれぞれ供給する。すなわち、開閉バルブ94a、96aを開くことで、マスフローコントローラ95aで流量制御された酸素含有ガスを、酸素含有ガス供給管80aを介して酸素含有ガス供給ノズル8aより反応室4内に供給する。また、開閉バルブ94b,96bを開くことで、マスフローコントローラ95bで流量制御された水素含有ガスを、水素含有ガス供給管80bを介して水素含有ガス供給ノズル8bより反応室4内に供給する。また、開閉バルブ94c,96cを開くことで、マスフローコントローラ95cで流量制御された不活性ガスを、不活性ガス供給管80cを介して不活性ガス供給ノズル8cより反応室4内に供給する。酸素含有ガス供給ノズル8aから供給された酸素含有ガスと水素含有ガス供給ノズル8bから供給された水素含有ガスは、ウエハ配列領域に対応する領域の複数箇所(複数の噴射孔)から反応室4内に供給される。
【0041】
このように、酸素含有ガスと水素含有ガスは、反応室4内におけるウエハ配列領域に対応する噴射孔(吐出孔)から供給され、反応室内で混合する。また、不活性ガスは、反応室4内におけるウエハ配列領域に対応する一端側(天井側)から供給されるとともに、反応室4内におけるウエハ配列領域PWよりもの下側の下ダミー配列領域SD-Uに対応する複数の噴射孔からも供給される。反応室4内に供給された酸素含有ガスと水素含有ガスは、不活性ガスと共に、反応室4内を流下してウエハ配列領域PWの底開口4A側に設けられたガス排気口11より排気される。酸素含有ガス供給ノズル8a、水素含有ガス供給ノズル8bからウエハの中心方向へ噴射された酸素含有ガスと水素含有ガスの混合及び酸化種の生成は、配列されたウエハ同士の間、及び、ウエハの外周と反応管10の間の環状空間、のいずれにおいても起こり得る。このとき、ウエハの縁から中心に向かうガス分子の移動おける、拡散と対流の割合は、酸素含有ガスの方が、水素含有ガスに比べて対流の割合が大きくなる。言い換えれば、水素含有ガスは拡散しやすく、ウエハと異なる間隔で噴射孔が設けられていても、ウエハの中心付近での濃度差が生じにくい。
【0042】
このとき、酸素含有ガスと水素含有ガスはヒータ5により加熱された減圧の反応室4内で混合し反応してHOを生じるが、この燃焼反応の中間生成物であるH,O,OH等の中間生成物も所定の平衡濃度で残存し、その中で原子状酸素Oの濃度が比較的高い。本出願人が特願2008-133772号にて出願済みの明細書中に記載したように、これら中間生成物のうち、酸化膜形成に直接寄与するものは原子状酸素Oであり、他の中間生成物やHO及び原料ガスそのものは、酸化膜成長に関する表面反応において支配的ではない。すなわち、酸素含有ガスと水素含有ガスとが反応することにより生じた中間生成物のうち、原子状酸素Oが反応種(酸化種)として作用することでウエハ6に酸化処理が施され、ウエハ6表面に酸化膜としてのシリコン酸化膜(SiO膜)が形成される。なお原子状酸素Oの濃度は、酸素含有ガスと水素含有ガスの供給比に関して上に凸の関数で表現される。極大点よりも比率が低くても或いは高くても、原子状酸素Oの濃度は低下する。水素含有ガス供給ノズル8bの各噴射孔からの供給量を調整する本例の技術は、極大点よりも水素欠乏の状態で好適に用いることができる。水素欠乏状態では、酸素含有ガス自体も希釈ガスになり得る。
【0043】
このときの処理条件(酸化処理条件)としては、
処理温度(処理室内温度):500~1000℃、
処理圧力(処理室内圧力):1~500Pa、
酸素含有ガス供給ノズル8aから供給する酸素含有ガス供給流量:3.0~6.0slm、
水素含有ガス供給ノズル8bから供給する水素含有ガス供給流量(合計流量):1500~3000sccm、
不活性ガス供給ノズル8cから供給する不活性ガス供給流量:1.0~1.5slm、
シャワー板12から供給する不活性ガス供給流量:400~1000sccm、
が例示され、それぞれの処理条件を、それぞれの範囲内のある値で一定に維持することでウエハ6に酸化処理がなされる。
【0044】
ウエハ6の酸化処理が終了すると、反応室4内への酸素含有ガス、水素含有ガスの供給を停止して、反応管10内に対し真空引きや不活性ガスによるパージ等を行うことにより反応管10内の残留ガスを除去する。その後、炉内圧力を大気圧に戻し、炉内温度を所定の温度まで降温した後、処理済ウエハ6を支持したボート3を反応室4内から搬出(ボートアンロード)し、ボート3に支持された全ての処理済ウエハ6が冷えるまで、ボート3を所定位置で待機させる。待機させたボート3に保持された処理済ウエハ6が所定温度まで冷却されると、基板移載機により処理済ウエハ6を回収(ウエハディスチャージ)する。このようにして、ウエハ6に対して酸化処理を施す一連の処理が終了する。
【0045】
以下、本開示の作用について説明する。
【0046】
本実施形態では、ボート3の上ダミー配列領域SD-T及び下ダミー配列領域SD-Uに、サイドダミー基板SDを載置しているため、酸化膜の形成処理時において、これらの領域での原子状酸素群の消費量が少ない。そこで、水素含有ガス供給ノズル8bから供給される水素含有ガスの流量と、不活性ガス供給ノズル8cから供給される不活性ガスの流量を制御し、下ダミー配列領域SD-Uにおける水素含有ガス濃度が、ウエハ配列領域PWにおける水素含有ガス濃度よりも低くなるようにする。
【0047】
図4Aには、反応管10へ供給される各ノズルからの気体の流量と原子状酸素の濃度分布が示されており、図4Bには、支持位置♯N(横軸)における膜厚(縦軸)のグラフが示されている。これらは、反応管10は、処理圧55Pa、温度850℃の条件とするシミュレーションにより得られた。このとき噴射孔H1、H2から不活性ガスを1.2slm、噴射孔H4から水素含有ガスを200sccm、噴射孔H5から水素含有ガスを135sccm、噴射孔H6~H10から水素含有ガスを各々100sccm、噴射孔H11~H15から水素含有ガスを合計570sccm、噴射孔H16~H20から水素含有ガスを合計400sccm、シャワー板12から不活性ガスを600sccm、噴射させた。また、酸素含有ガス供給ノズル8aから酸素含有ガスを合計5.0slm噴射させた。
【0048】
反応管内における原子状酸素濃度は、ウエハ配列領域PWにおいて、ほぼ均一となっており、ウエハ配列領域PWとの境界部分での差も小さい。原子状酸素の消費が少ない下ダミー配列領域SD-Uで高い濃度となっているが、不活性ガス供給ノズル8cの噴射する不活性ガスによって、下ダミー配列領域SD-Uからウエハ配列領域PWへの原子状酸素成分の拡散が抑制されている。また、形成された酸化膜の膜厚も、支持位置全体で±0.6%以内となっている。
【0049】
このように、ウエハ6形成される酸化膜の膜厚が支持位置によって異なる、Loading Effectを低減することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、上ダミー配列領域SD-Tにサイドダミー基板SDを装填したが、図5に示されるように、ウエハ6を上詰めとして、サイドダミー基板SDを配列しない構成にしてもよい。この場合には、上ダミー配列領域SD-Tがなくなり、天井4B側の端部は、ウエハ配列領域PWとなる。
【0051】
<第2実施形態>
次に第2実施形態について説明する。本実施形態では、断熱部材DPを用いる点が第1実施形態と異なり、その他の構成については第1実施形態と同一である。
【0052】
図6に示されるように、下ダミー配列領域SD-Uに配置されたサイドダミー基板SDを、断熱部材DPで覆う。断熱部材としては、石英プレートを用いることができる。断熱部材DPは、サイドダミー基板SDの板面を覆う円板状部DP1と、円板状部DP1の下側に連接される円筒状部P2を有している。
【0053】
図7には、酸化膜形成処理中における、下ダミー配列領域SD-U付近の、原子状酸素濃度の分布が濃淡で示されている。グレースケールが濃いほど、原子状酸素濃度が高いことを示している。図7Aは、断熱部材DPを配置した場合であり、図7Bは断熱部材DPを配置しない場合である。また、図7A2は、断熱部材DPを配置した場合の膜厚のバラツキを示し、図7B2は断熱部材DPを配置しない場合の膜厚のバラツキを示している。断熱部材DPを配置した場合には、下ダミー配列領域SD-Uからウエハ配列領域PWへの原子状酸素成分の拡散が抑制されている。そして、ウエハ6形成される酸化膜の膜厚のバラツキは、断熱部材DPを配置した場合が±0.4%であり、断熱部材DPを配置しない場合の±0.9%よりも抑制されている。
【0054】
したがって、ウエハ6の支持位置によって膜厚が異なる、Loading Effectを低減することができ、膜厚の均一性がさらに改善される。
【0055】
なお、本実施形態では、サイドダミー基板SDを断熱部材DPで覆った例について説明したが、サイドダミー基板SDに代えて断熱板を断熱部材DPで覆ってもよい。すなわち、下ダミー配列領域SD-Uに断熱板を配列し、断熱板を断熱部材DPで覆ってもよい。
【0056】
<第3実施形態>
次に第3実施形態について説明する。本実施形態では、ボート3に載置する製品ウエハ6が比較的少なく、フィルダミー基板FDを用いる場合について説明する。基板処理装置Sや熱処理炉5、反応管10、各種のガス供給ノズル等の装置構成については、第1実施形態と同一である。
【0057】
本実施形態は、比較的少ない小ロットの任意枚数の製品ウエハ6を1バッチで処理する場合であり、例えば、25枚、50枚、75枚、のウエハ6を処理する場合である。
【0058】
図8には、反応管10内における、サイドダミー基板SD、ウエハ6(製品ウエハ)、フィルダミー基板FDの配列が示されている。
【0059】
ウエハ配列領域PWには、天井側詰めで、ウエハ6が配列する。ウエハ6群の底開口4A側に、ラージエリアダミーLADを配置する。ラージエリアダミーLADは、製品ウエハ6の1.5倍前後(1.2倍~1.8倍)の表面積をもつダミー基板である。ラージエリアダミーLADは、10枚程度をボート3に配列する。
【0060】
ラージエリアダミーLAD群と、下ダミー配列領域SD-Uに配列されたサイドダミー基板SDの間に、フィルダミー基板FDを配列する。フィルダミー基板FDにより、ボート3のウエハ6が載置されていない空間を埋める。
【0061】
本実施形態のように、製品ウエハ6群とフィルダミー基板FD群との間に、ラージエリアダミーLADを装填することにより、フィルダミー基板FD側の領域における余剰原子状酸素成分による影響を抑制することができる。
【0062】
図9には、25枚(A)、50枚(B)、75枚(C)、のウエハ6を処理する場合の配置が、それぞれ示されている。図8の左側が反応管10の天井4B側であり、右側が底開口4A側である。図9には、このように配列して成膜処理を行った場合の、支持位置♯N(横軸)における膜厚(縦軸)のグラフが示されている。いずれの製品ウエハ6枚数であっても、膜厚分布は±1.0%以内に抑制されている。
【0063】
<第4実施形態>
次に第4実施形態について説明する。本実施形態では、図10に示されるように、反応管10の天井4B側に、不活性ガスを供給する構成を有していない。また、酸素含有ガス供給ノズル8aの噴射孔は、上ダミー配列領域SD-Tに対応する部分には設けられていない。
【0064】
上記の構成では、上ダミー配列領域SD-Tへ向かって水素含有ガスは供給され酸素含有ガスが供給されていない。これにより、上ダミー配列領域SD-Tにおける酸素含有ガス濃度が低下し、上述の極大点に対して水素リッチな状態となり、原子状酸素濃度を効果的に下げることができる。なお、例えば水素含有ガスとしてHガスを用いる場合、成膜速度が水素含有ガス供給量に律速される水素欠乏状態では、容易に拡散するHガスの性質も影響して、上ダミー配列領域SD-Tに局所的に水素含有ガスを供給しないようにしたり、酸素含有ガスの供給量を倍に増加したりしても、原子状酸素濃度はほとんど下げることができない。
【0065】
上ダミー配列領域SD-Tにおいて、原子状酸素濃度が相対的に低下することで、余剰原子状酸素成分によるウエハ6への影響を低減させることができる。したがって、膜厚分布を小さくして、Loading Effectを改善することができる。本形態は、ウエハの処理枚数が変化しても上ダミー配列領域SD-Tの高さが変化しない場合に、好適に利用できる。
【0066】
上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例における処理手順、処理条件と同様とすることができる。本開示の技術は、Si,SiC,SiGe等のシリコン系基板の酸化に好適に適用できる他、金属酸化膜等の酸化原料を必要とする膜の堆積に広く適用できる。
【符号の説明】
【0067】
3 ボート(保持具)
6 ウエハ(基板)
4A 底開口
4B 天井
10 反応管
8a 酸素含有ガス供給ノズル(第2ノズル)
8b 水素含有ガス供給ノズル(第1ノズル)
8c 不活性ガス供給ノズル(第3ノズル)
PW ウエハ配列領域(第1領域)
SD-U 下ダミー配列領域(第2領域)
SD-T 上ダミー配列領域(第3領域)
SD サイドダミー基板(ダミー基板)
11 ガス排気口(排気口)
100 コントローラ(制御部)
8b-1、8b-2、8b-3b水素含有ガス供給ノズル(多孔ノズル)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7A2
図7B
図7B2
図8
図9
図10