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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】光学素子および照明装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20231206BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20231206BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20231206BHJP
   F21V 7/09 20060101ALI20231206BHJP
   F21V 11/02 20060101ALI20231206BHJP
   F21V 13/00 20060101ALI20231206BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20231206BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20231206BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
F21S2/00 340
F21V5/04 600
F21V7/09 100
F21V7/09 400
F21V7/09 500
F21V11/02
F21V13/00 100
G02B5/08 A
H01L33/60
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019119943
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021005040
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】板花 博之
(72)【発明者】
【氏名】有賀 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】北原 和
(72)【発明者】
【氏名】今井 正裕
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0024744(US,A1)
【文献】特開2016-001262(JP,A)
【文献】特開2005-038650(JP,A)
【文献】特開2010-032902(JP,A)
【文献】登録実用新案第3173449(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第01072840(EP,A2)
【文献】独国特許出願公開第19715188(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第10043027(DE,A1)
【文献】特開2020-077588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00
F21S 2/00
F21V 5/04
F21V 7/09
F21V 11/02
F21V 13/00
G02B 5/08
H01L 33/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸に沿って、前記第1の軸を中心として同心円状に設けられた複数の反射曲面と、前記複数の反射曲面にそれぞれ対応する複数の透過面とを含む多段状の内面と、
前記複数の反射曲面に対面した筒面状または弧面状の出射面を備えた外面とを有する透光性の光学素子であって、
前記第1の軸に垂直な端面を含む複数の透光性部材が前記第1の軸に沿って積層されている組立体を含み、各々の前記複数の透光性部材は、前記内面の一部と、前記外面の一部とを含む、光学素子。
【請求項2】
請求項1において、
前記組立体は、少なくとも1部が遮光性の前記端面を含む前記複数の透光性部材を含む、光学素子。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記組立体は、前記複数の透光性部材の間に少なくとも1部が配置された遮光性の部材を含む、光学素子。
【請求項4】
請求項3において、
前記遮光性の部材は、前記外面の外側へ延びた部分を含む、光学素子。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
各々の前記複数の透光性部材は、前記複数の反射曲面の1つと前記複数の透過面の1つとの少なくとも1つの組み合わせを含む、光学素子。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
各々の前記複数の透光性部材は、前記複数の反射曲面の1つと前記複数の透過面の1つとを含む、光学素子。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記複数の反射曲面は、前記第1の軸の一方の第1の側から、前記第1の軸に沿って入射される、前記第1の軸に平行な光軸を備えた配光特性の第1の光の一部をそれぞれ、前記第1の軸の周りに反射するように構成されている光学素子。
【請求項8】
請求項7に記載の光学素子と、
前記第1の光を出力する光源とを有する照明装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記光学素子は、弧面状の前記出射面を有し、
前記第1の軸で交差し、前記複数の反射曲面を挟むように配置された第2の反射面および第3の反射面をさらに有する、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の形状の領域の照明に適した光を出力する光学素子およびそれを用いた照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長い線状の照射範囲を少数の光源モジュールによって形成することができる照明装置を提供することが記載されている。特許文献1の照明装置は4個ずつ2列に配置された光源ユニットを備える。各光源ユニットは一対の光源モジュールから構成される。光源モジュールは、発光素子の発散光を、光源レンズを介して基板の前方に放射される第1出射光、光源レンズを介して屈折させられた後に第2反射板で反射されて基板の前方に放射される第2出射光に配光する。光源ユニットでは、2つの光源モジュールの基板が鋭角をなす状態で背中合わせに配置されており、光源ユニットは一方の光源モジュールの基板から他方の光源モジュールの基板までの間の角度で広がる一定幅の線状照明光を形成している。従って、照明装置により、長い線状の照射範囲を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-074278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LEDから発せられる光は基本的に光軸上の光度が最も高い(最も大きい)配光パターンであるランバーシアン配光となっている。したがって、ライン状の領域などの照明に適した光に簡易に変換できる光学素子が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、第1の軸に沿って、第1の軸を中心として同心円状に設けられた複数の反射曲面と、複数の反射曲面にそれぞれ対応する複数の透過面とを含む多段状の内面と、筒面状または弧面状の出射面を備えた外面とを有する透光性の光学素子である。この光学素子は、第1の軸に垂直な端面を含む複数の透光性部材の組立体を含み、各々の複数の透光性部材は、内面の一部と、外面の一部とを含む。
【0006】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、上記の光学素子と、第1の光を出力する光源とを有する照明装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光学素子においては、第1の軸に沿って入射される光(第1の光)を、第1の軸の周りに向けて反射する多段状の内面を備えた光学素子を、第1の軸に垂直な端面を含む複数の透過性部材に分割して組み立てできる。このため、複雑な内面を備えた光学素子を容易に製造し、提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】照明装置の一例を示す斜視図。
図2】照明装置を天井に取り付けた例を示す図。
図3図3(a)は、投射ユニットを前方(照射方向)から示し、図3(b)は、投射ユニットをZ軸方向から示す図。
図4】投射ユニットを分割して示す図。
図5】光学素子の構造を示す断面図。
図6図6(a)は入射光の配光分布を示し、図6(b)は光学素子11の反射面31により入射光が反射される様子を模式的に示す図。
図7】出射光の配光分布の例を示す図。
図8】異なる照明装置の一例を示す断面図。
図9】照明装置により照明した例を示す図。
図10】照明装置により照明した他の例を示す図。
図11】照明装置による光漏れの他の例を示す図。
図12】さらに異なる照明装置の一例を示す断面図。
図13】さらに異なる照明装置の一例を示す図であり、図13(a)は側面図、図13(b)は平面図である。
図14】照明装置を要素に展開して示す図。
図15】照明装置の断面図。
図16】照明装置において光が処理される様子を示す図。
図17】照明装置の光源からの光の取込効率を示す図。
図18】照明する領域と光学素子との関係を示す一例であり、図18(a)は平面図、図18(b)は光学素子の断面を示す図。
図19】照明する領域と光学素子との関係を示す異なる例であり、図19(a)は平面図、図19(b)および図19(c)は光学素子の断面を示す図。
図20】照明する領域と光学素子との関係を示す異なる例であり、図20(a)は狭配光の光学素子、図20(b)は広配光の光学素子、図20(c)は円形の照明領域に適した光学素子の例を示す図。
図21】照明する領域と光学素子との関係を示す異なる例であり、図21(a)はコ字形の領域の照明に適した光学素子、図21(b)はV字形の領域の照明に適した光学素子、図21(c)はL字形の領域の照明に適した光学素子の断面を示す図。
図22】さらに異なる照明装置の一例を示す斜視図。
図23図22に示す照明装置から放熱部を除いた状態を示す斜視図。
図24図23に示す照明装置を展開した状態を示す図。
図25】さらに異なる照明装置の一例を示す図であり、図25(a)は側面図、図25(b)は平面図である。
図26】照明装置を要素に展開して示す図。
図27】照明装置の断面図。
図28】光学素子を抜き出して示す側面図。
図29】光学素子をパーツに分割して示す側面図。
図30】光学素子をパーツに展開して示す図であり、図30(a)は出射面の側から、図30(b)は内側上側から、図30(c)は内側下側から示す図である。
図31】さらに異なる照明装置の一例を示す斜視図。
図32図32(a)は照明装置の側面図、図32(b)は照明装置の平面図。
図33】照明装置の断面図。
図34】照明装置をパーツに展開して示す図。
図35】さらに異なる照明装置の一例を示す斜視図。
図36図36(a)は照明装置の側面図、図36(b)は照明装置の平面図。
図37】照明装置の断面図。
図38】照明装置をパーツに展開して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に、方形の領域の照明に適した照明装置の一例を示している。この照明装置1は、卓上などの方形状またはライン状の領域2を照明するように制御された光(光束)3を前方19に投影または投射する投射ユニット5と、投射ユニット5を収納した方形のハウジング4と、投射ユニット5の光源となるLED6を駆動するドライバー回路8とを含む。投射ユニット5は、中心となる軸(第1の軸、Z軸)12の周り18に円弧状に広がった、平面視(Z軸12に直交するX-Y平面で見た形状)が略扇形の柱状、ロッド状あるいはシリンドリカルレンズ状で透光性の光学素子11を含む光学装置(光学システム)10と、光学素子11の一方の端面からソース光(第1の光)7を入射するLED6とを含む。
【0010】
図2に示すように、照明装置1は、天井9に取り付けられることにより、卓上などの方形状、またはライン状の細長い領域2を集中して照明することができる。照明対象は、方形または細長い領域であれば、卓上に限らず、壁、屋内外の看板やポスターなどであってもよく、照明装置1は、それらの方形または細長い領域2を集中して照明できる。光学装置10は、平面視が略扇形で柱状に、扇形の中心となる第1の軸12に沿って延びた光学素子11と、光学素子11を挟むように配置された反射部材21および22とを含む。
【0011】
図3に、光学装置10を含む投射ユニット5を、照明装置1から抜き出して示している。図3(a)は、投射ユニット5を投射側(前方)19から見た斜視図であり、図3(b)は投射ユニット5を投射側19と反対側から見た斜視図である。また、図4に、投射ユニット5および光学装置10を展開して示している。
【0012】
図4に示すように、光学装置10は、中心軸となる第1の軸(Z軸)12の周りに、Z軸12と直交する平面(X-Y平面)で見た形状(平面視)が角度θ(中心角θ、開き角θ)で広がった略扇形で、透光性の部材、例えば、アクリル樹脂あるいはガラスなどから構成された光学素子11を含む。光学素子11は、全体がZ軸12に沿って延びた柱状で、Z軸12の側(内側)は、Z軸12の一方の端(底面側、Z軸マイナス方向)が開口13となった空洞14となり、反対側の投射側(前方、外側)19の面(出射面)15は略円弧状となっている。光学装置10は、さらに、光学素子11を挟むように配置された反射部材21および22を含む。反射部材21および22は、光学素子11に面した側に反射面23および24を含む。反射面(第2の反射面)23および反射面(第3の反射面)24は、Z軸12で交差し、光学素子11を挟み込むように配置された反射面である。
【0013】
図5に断面で示すように、光学素子11は、全体が内部にZ軸12に沿って形成された空洞14を含むシリンドリカルレンズであって、空洞14の開口13の側から、Z軸12に沿って透過面と反射面とが交互に配置された多段の内面(透過・反射面)16を含む。光学素子11の内面16は、開口13と逆側から開口13に向かって、すなわち、Z軸12のプラス側からマイナス側に向かって、段階的に配置された同心円弧状の扇形の複数の透過面32と、これらの透過面32により複数に分割された円弧状の反射面(第1の反射面)31であって、Z軸12に沿って、X-Y平面に対して鋭角に傾くように広がった第1の反射面31を含む。光学素子11の内面16は、開口13と逆側から開口13に向かって、すなわち、Z軸12のプラス側からマイナス側に向かって、段階的に内径16rが拡大するように順番に配置された同心円弧状の扇形の複数の透過面32を含む。他の実施例として、Z軸12のプラス側からマイナス側に向かって、段階的に内径16rが縮小するように配列された透過面を含んでもよく、同心円弧状に同一または実質的に同一形状の扇形の複数の透過面を含んでもよい。
【0014】
具体的には、本例の光学素子11においては、第1の反射面31は、開口13と逆側(上側、Z軸プラス方向)から開口13に向かって、すなわち、Z軸12のプラス側からマイナス側に向かって、Z軸12に垂直で、X-Y平面に平行な6つの透過面(第1~第6の透過面)32a~32fにより分割された6つの反射面(第4~第9の反射面)31a~31fを含む。すなわち、光学素子11は、Z軸12のプラス側からマイナス側に向かって交互に配置された、6つの透過面(第1~第6の透過面)32a~32fと、6つの反射面(第4~第9の反射面)31a~31fを含む。光学素子11は、さらに、最も開口13の側に、Z軸12の周りに形成された円弧状の透過性の面33を含む。
【0015】
このため、光学素子11は、第1の軸(Z軸)12に沿って断続的に配置され、開口13と逆側から、開口13に向かって段階的に内径16rが拡大するように順番に配置された同心円弧状の扇形の第1の透過面32a、第2の透過面32bおよび第3の透過面32cと、第1の透過面32a、第2の透過面32bおよび第3の透過面32cの開口13と逆側に鋭角に傾くようにそれぞれ配置された円弧状の第4の反射面31a、第5の反射面31bおよび第6の反射面31cとを含む。
【0016】
さらに具体的には、開口13から最も遠い第1の透過面32aは、Z軸12を中心とした扇状の透過面である。開口13から最も遠い第4の反射面31aは、第1の透過面32aを透過した光をZ軸12の周り18の円弧状の角度θの範囲(第1の範囲)に反射するように配置された面である。第4の反射面31aは、第1の透過面32aの開口13と反対側に、Z軸12を中心として、略扇形で逆円錐台を形成するようにX-Y面に対して傾いた反射面であり、Z軸12と平行な光軸7aの光7をZ軸12に直交する方向19へ反射する。第5の反射面31bは、第2の透過面32bを透過した光7を反射するように、第2の透過面32bの内辺32b1と第1の透過面32aの外辺32a2との間に配置された円弧状の反射面である。第6の反射面31cは、第3の透過面32cを透過した光7を反射するように、第3の透過面32cの内辺32c1と第2の透過面32bの外辺32b2との間に配置された円弧状の反射面である。第7の反射面31dおよび第8の反射面31eについても、第4の透過面32dおよび第5の透過面32eに対して同様に構成されている。
【0017】
光学素子11の外面15はシリンドリカル面であってもよいが、本例においては、外面15は、反射面31a~31fおよび透過面33に対応して、Z軸12に沿って7つの領域15a~15gに区切られている。外面15のこれらの領域15a~15gは、反射面31a~31fにより反射された光および透過面33を透過した光をより均等に出力するようにトーリック面状の自由曲面として最適化されている。
【0018】
光学装置(光学システム、光学系)10は、平面視が略扇形のシリンドリカルレンズ状の光学素子11の側面17aおよび17bに、反射部材21および22の第2の反射面23および第3の反射面24が密着するように取り付けられている。
【0019】
図3および図4に示すように、照明装置1の投射ユニット5は、光学装置10と、その光学素子11の開口13に取り付けられた基板6aとを含む。基板6aにはLED6が装着されており、LED6から、Z軸12に沿って、Z軸12と平行になるように、開口13から光学素子11の内部14に設けられた第1の反射面31に向かって照明用の光7が入射される。分断された反射面31a~31fにより構成される第1の反射面31は、Z軸12に平行な光軸7aを備えた配光特性の照明用の光(第1の光)7を、Z軸12の周り18の中心角θの第1の範囲に反射するように配置されている。光学装置10は、第1の反射面31と、Z軸12で交差し、第1の反射面31を挟むように配置された第2の反射面および第3の反射面とを有する。第2の反射面23は、Z軸12の周り18に、第1の光7を第1の反射面31の方向に反射し、第3の反射面24は、第2の反射面23とはZ軸12の周り18に逆方向にLED6からの光7を反射する。
【0020】
したがって、光学装置10は、光源であるLED6から、Z軸12に沿って出射された光7を、Z軸12において中心角θで交差する第2の反射面23および第3の反射面24で、角度θの範囲の第1の反射面31の方向に相互に反射する(折り畳む)。光学装置10は、さらに、第1の反射面31によりZ軸12と垂直な方向に、Z軸12の周りの角度θの範囲に反射して出力する。
【0021】
第2の反射面23および第3の反射面24は、LED6からの光7を、角度θの範囲に畳み込めるように配置されていればよく、LED6の近傍に少なくとも配置されていればよい。これらの反射面23および24は、第1の反射面31と交差するように配置されていてもよく、LED6からの光7を効率よく、漏れが生じないように、第1の反射面31の方向に畳み込むことができる。
【0022】
図6に、光学装置10の光学素子11により、Z軸12に沿って入射された光(入射光)7が、第1の反射面31により反射され、Z軸12と直交する方向19に出射される様子を模式的に示している。図6(a)に示すように、LED(光源)6から出力された光7は、光軸7aを中心とするランバーシアン配光分布を備えている。この光7の光軸7aの周りの成分は、第2の反射面23および第3の反射面24により中心角θの扇形の光学素子11の方向に反射される。また、この光7の光軸7aに対する配光角φの成分は、図6(b)に示すように、光学素子11の複数の透過面32a~32fと、複数に分割された第1の反射面31a~31fにより複数のグループ(光束)に分けられて、それぞれで反射された光束71が光軸7aと直交する方向19に出力される。反射された光71は、光学素子11の外面の出射面15を介して照明光3として出力される。さらに、LED6から出力された光7の配光角φが大きい成分は、光学素子11の開口13の近傍の透過面33を介して光軸7aと直交する方向19に出力される。
【0023】
したがって、この光学装置10は、第1の反射面31、第2の反射面23および第3の反射面24により、ランバーシアン配光を備えた光7を、光軸7aに対して直交する方向19に円弧状に反射して、ライン状または方形状の領域を照明するのに適した配光を備えた照明光3に変換できる。さらに、第1の反射面31により、光軸7aと直交する方向19に反射して、光7を光軸7aと直交する方向に変換することにより、光軸7aの周りに配光角φで光度が変化するランバーシアン配光の光度が共通する部分を、ライン状または方形状の配光の端から端まで引き延ばすことが可能である。例えば、光軸7a上の最も光度の高い光(光束)をライン状または方形状の配光の端から端まで引き延ばすことが可能である。また、このため、第1の反射面の曲率または傾きを制御し、ライン状または方形状の幅方向の光度を制御することにより、光度分布がより均等に近いライン状または方形状の配光を得ることができる。
【0024】
図7(a)および(b)に、投射ユニット5から出力された光3の水平方向(左右方向)の配光分布の例を示している。図7(a)は、光学素子11の外面15の第1の軸と直行する断面を真円弧としたときの配光分布の一例であり、図7(b)は、外面15の第1の軸と直行する断面を自由曲面としたときの配光分布の一例である。光学装置10を用いることにより、LED6から出力されたランバーシアン配光分布を備えた光7を、光度分布が水平方向にほぼ均一な光3に変換して出力することができる。外面15を、自由曲面、非球面などを用いて最適化することにより、光学装置10から出力される光3の分布を均一にすることが可能となる。
【0025】
図8に、第1の軸に沿って入射される、前記第1の軸に平行な光軸を備えた配光特性の第1の光の少なくとも一部を、前記第1の軸の周りの略円弧状の第1の範囲に反射する照明装置の他の例を、断面を用いて示している。この照明装置1aの投射ユニット5aは、平面視が略扇形の連続した第1の反射面31と、第1の反射面31を挟み込むように配置された第2の反射面(不図示)および第3の反射面24とを含む光学装置10aを含む。この投射ユニット5aにおいても、光学装置10aにより、LED6からZ軸12の方向に入力された光7を、Z軸12に直交する方向19に変換し、光度が水平方向にほぼ均一な光3に変換して出力できる。
【0026】
一方、この投射ユニット5aの光学装置10aにおいては、連続した第1の反射面31を採用することにより、第1の反射面31の占める領域が拡大し、装置をコンパクトに纏めることが難しい。これに対し、シリンドリカル状の光学素子11を用いた光学装置10においては、フレネルレンズのように、第1の反射面31を複数に分割してシリンドリカルレンズの内部に複数の全反射面31a~31fとして実装することが可能である。すなわち、光学装置10は、Z軸(第1の軸)12に沿った方向で分割され、LED6からの光(第1の光)7をZ軸12の周り18でZ軸12に直交する方向19に反射する複数の反射面31a~31fを含む。さらに、光学装置10は、これら複数の反射面31a~31fを内側に備え、内面16が複数の反射面31a~31fと、複数の反射面31a~31fにそれぞれ対応する複数の透過面32a~32fとを含む多段状で、Z軸(第1の軸)12に垂直な断面が扇形の光学素子11を含む。
【0027】
このため、コンパクトな光学装置10およびそれを用いたコンパクトな照明装置1を提供できる。さらに、光学素子11は、複数の反射面31a~31fと、それに対応する複数の外面15の領域(出射面)15a~15fを備えている。このため、これら複数の反射面と出射面とをそれぞれ、それらにより反射される光および透過する光に対して最適化することが可能であり、水平方向の光度分布が、いっそう均一な光3に変換して出力する光学装置10を提供できる。
【0028】
光学素子11の複数の反射面31a~31fに対応して設けられた複数の出射面15a~15fのそれぞれは、典型的には、Z軸12に沿った方向の断面がそれぞれ湾曲している部分を含むトーリック面状である。さらに、複数の出射面15a~15fは任意に設計可能であり、Z軸12に垂直な断面が非円形である部分を含んでもよい。
【0029】
このように、光学装置10の光学素子11は、内部に第1の軸(Z軸)12に沿って入射される、第1の軸12に平行な光軸7aを備えた配光特性の第1の光7の少なくとも一部を、第1の軸12の周りの略円弧状の角度θの第1の範囲に反射するように配置された少なくとも1つの第1の反射面31を含む。具体的には、光学素子11は、第1の反射面31として機能する、第1の軸12に沿った方向で分割された複数の反射面(反射弧面)31a~31fと、複数の反射弧面31a~31fにより反射された光71の少なくとも一部を屈折して第1の軸12の周りに照明光3として出力する透光性の外面(出射面)15とを含む。したがって、光学素子11は、第1の軸12に平行な光軸7aを備えた第1の光7の進行方向(光軸)を第1の軸12とは異なる方向、上記の例では第1の軸12と直交する方向に変換する第1の反射面31と、反射された光71を屈折して出力することにより照明光3としての光軸および/または配光分布を変換する屈折面(レンズ)として機能する出射面15とを含む。このため、図8に示したような、反射面31のみにより照明光3の配光分布を制御する光学装置1aと比較すると、照明光3の出射方向および/または配光分布を制御する2つの要素を含むので、照明光3の広がりや分布などを制御することが容易であり、また、より一様な配光分布を備えた照明光3を出力しやすい。
【0030】
上記の光学素子11においては、内面16に、第1の反射面31を構成する複数の弧面31a~31fと、複数の透過面32a~32fとがそれぞれ組み合わされた複数の全反射(TIR)プリズムを配置し、外面15に、弧面31a~31fに対応した出射面15a~15fを設け、第1の反射面31と屈折面として機能する外面15とを一体化している。また、TIRレンズ面となる弧面31a~31fに対応して、外面15を複数の出射面15a~15fに分けてトーリック面を構成したり、Z軸12周りの配光分布を制御する面を導入することが容易であり、より一様な配光分布を備えた照明光3を提供できる。
【0031】
さらに、光学装置10においては、第1の光7を用いた照明光3の方向と広がりとを制御する光学素子11と、第1の軸(Z軸)12で交差し、第1の反射面31を含む光学素子11を挟むように配置された第2の反射面23および第3の反射面24を設けることにより、360度方向(全周方向)に広がりを持つ第1の光7を光学素子11に第1の反射面31で処理できる範囲に集光する(折り畳む、畳み込む)ことが可能となり、光源であるLED6から出力された光7を効率的に所望の方向および範囲に照明光3として出力できる。
【0032】
図9(a)に、投射ユニット5を備えた照明装置1からの光3をスクリーンに投射した一例を示している。図9(b)に示すように、方形の照明領域2の上下に、複数の光漏れ81~84が生じていることが見出された。発明者らの実験によると、円弧状の光漏れ81~83は、光学素子11の最下層の透過面33および出射面15gにおける表面反射による迷光が要因であることが分かった。光学素子11は、多段状の内面16の最も入射側の最下段に、Z軸12に直交する方向19に光7の一部を透過する面を含み、ランバーシアン配光分布の光7の最も配光角φが大きな成分をZ軸12に直交する方向19に出力できるようにしている。したがって、透光性の光学素子11の最下段の内面33および外面(出射面)15gの少なくともいずれかに反射防止層を設けるか、または、拡散加工、たとえばシボ加工を施すことにより円弧状の光漏れ81~83が抑制できる。
【0033】
発明者らの実験によると、角状の光漏れ84は、光学素子11の側面17aおよび17bにおける内面反射が要因であることが分かった。したがって、光学素子11のZ軸12を周る方向の両側に配置された端面17aおよび17bに透過防止または拡散加工を施すことにより光漏れ84を防止できる。具体的には、端面17aおよび17bを黒塗りしたり、シボ面を設けることで光漏れ84を防止できる。
【0034】
図10に、これらの対策を行った光学素子11を用いた照明装置1からの光3をスクリーンに投影した例を示している。光漏れはほとんど見られず、上記の対策により光漏れが抑制されたことがわかる。
【0035】
図11(a)に、照明装置1の周辺、例えば、天井9に表れることがある迷光85の一例を示している。この迷光85は、光学素子11の内面16の反射面31および透過面32における反射光が要因と考えられる。
【0036】
図12に、異なる照明装置1bの一例を示す。この照明装置1bにおいては、上記にて説明した照明装置1の光学素子11の外面(出射面)15の前方19に、各層(領域)15a~15gの境界に配置された複数のルーバー(遮蔽板)90を含む。ルーバー90は、光学素子11の外面15から前方19に、出射方向と平行、すなわち、X-Y平面と平行に延びた板状の部材である。図11(b)に示すように、ルーバー90を設けた照明装置1bでは、迷光85がほとんど観測されなかった。
【0037】
ルーバー90により、光学素子11の外面15から出力される照明光3をさらに平行にすることができ、光学素子11の内部における迷光により生成される発散光の影響を抑制できる。照明装置1bにおいては、複数のルーバー90を各層15a~15gの単位でZ軸方向に分散して配置しているが、複数の層単位で配置してもよく、層との関係はなくZ軸方向に所定の間隔で配置してもよい。複数のルーバー90の間隔および光学素子11の外面15からの突出量(長さ)は、照明領域2を照明するために要求される照明光3の平行度、迷光となる光学素子11の外面15からの発散光の強さおよび広がり(角度)などにより決定することができる。ルーバー90の長さの一例は、光学素子11の半径(光軸から外面までの距離)と同程度とすることである。ルーバー90の間隔が狭すぎると、照明先で輝度ムラが発生する要因になりやすく、ルーバー90の間隔が広すぎると、例えば上下のみに装着されている程度であると、迷光の影響を阻止しにくい。したがって、各層15a~15gの間隔でルーバー90を設けることは好適な一例である。
【0038】
以上に説明したように、照明装置1は、回転体のレンズ(屈折器、透過性部材、光学素子)11を含み、光学素子11は扇型に開く円柱(角度の一部が欠けた円柱・回転体)であり、光学素子11の側面17aおよび17bと平行な面と光学素子11の入射面(開口)13に囲まれた空間部14は、側面17aおよび17bと平行な面に反射面23および24を有する。それらの面23および24の交点(Z軸)12の内側に光源となるLED6が配置されている。したがって、円柱状の光学素子11の内部で、回転軸上(中心軸、Z軸)12から偏心した位置に光源であるLED6が配置されるが、反射面23および24によりLED6からの光7が畳み込まれ、光源がZ軸12に存在するように光学素子11から光3が出力される。
【0039】
光学素子11は、円弧部の出射面15a~15gを含む。また、光学素子11は、内部(内面)16の底面側(開口13の側)に透過部(湾曲面内壁)33を含み、上面側(光軸方向、開口13と反対側)に全反射面31a~31fを含む。全反射面31a~31fは、傾斜面内壁(TotalInternal Reflectin)であり、Z軸12および光軸7aに垂直な方向にそろった照明光3をZ軸12の周り18に出射する。光学素子11の円弧部の出射面15a~15gがレンズ機能を備えた湾曲面を有する。したがって、光学素子11を光軸方向7aに沿った方向に切断した断面では、反射部の全反射面31a~31fに直線または曲面を有し、また出射面15a~15gも直線または曲面を有する。
【0040】
このため、光学装置10により、光源(LED)6からの光7が効率よく、また、より均等に、ライン状または方形状の配光に変換される。したがって、光学装置10を用いることにより、ライン状または方形状の領域を、より均等で明るく照明できる照明装置1を提供できる。
【0041】
図13(a)に、さらに異なる照明装置1cの側面を示し、図13(b)に照明装置1cを上から見た様子を示す。また、図14に照明装置1cを構成する要素に展開した状態を示し、図15に、照明装置1cの概略構成を、装置1cの中心に沿った断面XV-XV(図13(b)参照)で切断した断面図を用いて示す。さらに、図16に、この照明装置1cにおいて、照明光3が出力される概要を示している。照明装置1cは、光源となるLED6からの光(第1の光)7を照明光3に変換して出力する光学装置10と、第1の光7を出力するLED6を搭載した基板6aとを有する。光学装置10は、第1の軸(Z軸)12に沿って入射される、第1の軸12に平行な光軸7aを備えた配光特性の第1の光7の少なくとも一部を、第1の軸12の周りの角度θの略円弧状の第1の範囲に反射するように配置された第1の反射面31と、第1の軸12で交差し、第1の反射面31を挟むように配置された第2の反射面23および第3の反射面24と、第1の反射面31で反射された光71の少なくとも一部を屈折して第1の軸12の周りに出力する透光性の出射面15を含む。
【0042】
光学装置10は、さらに具体的には、第2の反射面23を備えた第1の反射部材21と、第3の反射面24を備えた第2の反射部材22とが、第1の軸12において角度θで交差した折り曲げミラー20と、内面16に第1の反射面31を備え、外面が出射面15となった透光性の光学素子11とを含む。第1の反射面31は、第1の軸12に沿った方向で分割された複数の反射弧面31a~31dを含み、これら複数の反射弧面31a~31dにより反射された光71の少なくとも一部を屈折して第1の軸12の周りに出力する透光性の出射面15は、第1の軸12に沿った方向の断面が周期的な凹凸形状40を含む。光学素子11は、内面16の第1の光7の入射側(最下段)に、第1の光7を透過する透過面33をさらに含み、透過面33は、第1の光7の広角(周辺)の成分を屈折して出射面15に導く。出射面15は、屈折により第1の軸12に対して方向が変わった光(本例においては、第1の軸12に対して略直交する方向の光)72を照明光3として出力する部分(領域)も含み、出射面15の全体にわたり、Z軸12に沿った方向に周期的な凹凸40が形成されている。
【0043】
第1の軸(Z軸)12に沿った方向の周期的な凹凸形状40は、Z軸方向に凹形状41と凸形状42とが所定のピッチで繰り返される形状を含み、正弦波形状であってもよく、Z字状に直線が何度も折れ曲がったジグザグ形状であってもよく、直線と曲線とが組み合わされた形状であってもよく、凹形状41と凸形状42とが相互に繰り返し表れる形状を示す。周期的な凹凸形状40は、凹凸のピークと谷との距離(幅)である振幅と、繰り返しのピッチ(周期)とがZ軸12の方向に一定であってもよく、Z軸12の方向に所定の関数で変化するものであってもよい。周期的な凹凸形状40は、凹凸の振幅と周期とがZ軸12の周りの方向(周方向、θ方向)に一定であってもよく、θ方向に所定の関数で変化するものであってもよい。出射面15は、周方向に、周期的な凹凸形状を備えていてもよい。
【0044】
透光性の出射面15は、第1の軸12に沿った方向の断面が、所定の間隔で設けられた複数の変曲点45を含んでもよい。複数の変曲点45の各々は、凸形状42から凹形状41、または凹形状41から凸形状42に変わる点、曲線から直線、または直線から曲線に変わる点、および、直線の傾きの方向が変わる点の少なくともいずれかであってもよい。
【0045】
周期的な凹凸形状40および/または所定の間隔で設けられた複数の変曲点45を含む出射面15は、出力される照明光3に作用し、照明光3の垂直方向の強度分布(光度分布)をより均一にする効果を含む。周期的な凹凸形状40の周期または変曲点45の間隔は、光学素子11の複数の反射面31a~31dおよび透過面33と対応していてもよく、対応していなくてもよい。強度分布を一定にする効果を得やすくするためには、複数の反射弧面31a~31dのそれぞれに対面した外周面(出射面)15の範囲15a~15d、および透過面33に対応した範囲15gに、少なくとも1つの周期的な凹凸形状40を含んでもよい。周期的な凹凸形状40は、複数の反射弧面31a~31dおよび透過面33のそれぞれに対面した範囲15a~15dおよび15gに、複数の凹形状41または凸形状42を含んでもよい。各反射面31a~31dで反射された光71は、外面15において、2以上の凹41および/または凸42が設けられた出射面に入射する。各反射面31a~31dに対応する凹凸の数は任意に設けることができる。各反射面31a~31dに対応して少なくとも1つの凹形状41および凸形状42の組み合わせが配置されるように周期(ピッチ)を設定することにより、光学素子11の外面である出射面15と、内面16である反射面31の数(段数)とを切り離して設計を進めることが可能となり、光学素子11の設計の自由度が向上する。
【0046】
同様に、出射面15の第1の軸12に沿った方向の断面は、複数の反射弧面31a~31dのそれぞれに対面した範囲15a~15dに、少なくとも2つの変曲点45を含んでもよい。透過面33に対応する範囲15gにおいても同様である。外周面15のそれぞれの範囲15a~15dおよび15gに少なくとも2つの変曲点45を含むことにより、凹から凸および凸から凹に変わる形状、凸から凹および凹から凸に変わる形状がそれぞれの範囲に少なくとも含まれる。このため、外面15に達して光71は、外面15で、第1の軸12に沿った方向で平行化される代わりに、収束および発散が交互に繰り返され、照明領域2に到達する際は、照明領域2のある部分は、出射面15の様々な領域15a~15dおよび15gを通って出力された照明光3により照らされ、照明の強度分布(輝度分布)が平均化される。
【0047】
図16に、周期的な凹凸形状40として、Z軸12に沿って、例えば正弦波形状が形成された光学素子11において、典型的な光線の挙動を模式的に示している。凹凸形状40の凹形状41は凹レンズとして光を発散させ、凸形状42は凸レンズとして光を集束させる働きを持つ。したがって、複数の反射面31a~31dにより反射されて外面15から出射される光は、集束と発散の領域が交互に表れる。1つの反射面により反射されて出射面に向かう光は、集束と発散という異なる光路を辿ることになるため、照明ムラの品質を改善することができる。
【0048】
出射面15は、出射面15を介して出力される照明光3の第1の軸12の周りの配光を制御する部分、すなわち、Z軸周りに周期的な凹凸の周期や振幅、変曲点の位置、間隔などが変化する部分を含んでもよい。Z軸12に直交する水平方向(X-Y面)の各位置において、Z軸方向(垂直方向)の配光をより制御するために、Z軸周りの角度θの各位置に応じて光学素子11の外面15の形状を設定してもよい。図13(b)および図14に示すように、この照明装置1cについて、光学素子11は、Z軸12と直交する平面(X-Y平面)で見た平面視において、中心θ0からの開き角θ1が0度、15度、30度、45度の位置において、それぞれ垂直方向(Z軸方向)の配光が均一になるように設計された周期的な凹凸形状40が実装されている。したがって、光学素子11の、開き角θ1が0度、15度、30度、45度の位置において、出射面15の周期的な凹凸形状40の振幅および/または周期が異なる部分(領域)15xを備えていてもよい。これらの角度の間の出射面15の形状は、隣接する断面の凹凸形状40を補間しシームレスな面を形成するように設計することが可能である。
【0049】
また、光学素子11の出射面15の設計は、TIRプリズム39を備えた内面16の形状とは基本的に独立して設計できる。このため、内面16の設計が同じでも、外面である出射面15の設計を変えることができる。このため、照明対象となる領域2との距離などに応じて、垂直方向の配光分布を適切に制御し、照明領域2における長手方向(水平方向)の輝度分布がさらに均一になるような光学素子11を提供できる。出射面15は、中心θ0に対して水平方向(開き角θ1)に対称に設計してもよく、照明領域2の関係で、非対称に設計してもよい。
【0050】
この光学素子11では、内面16に複数の反射弧面31a~31dが配置され、それぞれは第1の軸12を中心とした同心円弧状の反射面(全反射面)を含み、さらに、それぞれの反射面31a~31dに対応する透過面32a~32dを含む。したがって、光学素子11では、内面16には、多段のTIR(全反射)プリズム39が形成されている。
【0051】
光学装置10は、さらに、第1の光7の光軸7a上の成分が第1の反射面31に直に入力されることを回避する制御部材79を含む。この制御部材は、遮光(吸光)する制御部材であってもよく、反射または拡散する制御部材であってもよい。本例において、光学装置10は、折り曲げミラー20の第1の軸12に沿った最上部に、第1の軸12から扇形に突き出た遮光性あるいは非反射性の制御部材79を含む。制御部材79は、LED6からの第1の光7の光軸7aの周りの一部、例えば、仰角φ1の成分を吸収し、光学素子11に入力されないようにしている。制御部材79は、第1の軸12に沿って延びた逆円錐などの鏡面あるいは散乱面であってもよく、仰角φ0の成分を適切に光学素子11に供給できるものであってもよい。
【0052】
図17は、Z軸(第1の軸)12に沿って、反射面31に入射される光の、仰角φに対する取込効率を示したグラフである。仰角φが80°では97%の取込効率があり、仰角φが80°~90°、すなわちLED6から真上の方向に出る仰角φ1の光を捨てても、光損失量は3%程度であることがわかる。
【0053】
一方、図16に破線で示すように、仰角80°~90°の光を含めて、Z軸12に対して他の角度、例えば、Z軸12に垂直方向に反射する反射面31xを形成するために要する体積は、光学素子11の全体の体積の約15%に相当する。図16に示すように、本例の光学素子11は、仰角φが80°~90°(仰角φ1)の光を反射する面を含む反射面31xの代わりに、仰角φ1を省いて反射する面31aを採用することにより、厚みが薄く、小型化している。このため、この光学素子11を採用することにより、LED6からの光から照明光3に変換する効率がほとんど低下しないコンパクトな光学装置10および照明装置1cを提供できる。
【0054】
このように、光学素子11は、LED6から出力されたランバーシアン配光分布を備えた第1の光7を第1の光7の光軸7aと異なる角度、典型的には直交する方向に、光軸7aの周りの角度θの所定の範囲(第1の範囲)に反射することにより光の強度分布を制御する第1の反射面31と、この反射面31とは独立して設計でき、反射された光71を屈折して出力することにより、照明する対象の領域2に合致した形状と強度分布とを備えた照明光3を出力する円筒状または弧面状の出射面15とを備えている。さらに、円筒状または弧面状の出射面15の長手方向(垂直方向)に周期的な凹凸形状40を設けることにより照明光3の垂直方向(Z方向)の広がりや強度分布を制御することができ、出射面15の周方向の形状を調整することにより、周方向(水平方向、XY方向)の広がりや強度分布を制御することができる。したがって、この光学素子11を備えた光学装置10および照明装置1により、様々な面積、形状または構成の領域2に対して、その領域2の全体を、より均一に照明できる照明光3を出力できる。
【0055】
図18から図21に、異なる形状または構成の領域2に適した照明装置用の光学素子11の幾つかの例を示している。図18に示した光学素子11は、水平方向の広がりが標準的な、いわゆる中配光の照明光3を出力する光学素子11である。図18(a)に示すように、光学素子11の外面(出射面)15は、中心の第1の軸12の周りに広がった円弧状である。図18(b)に、断面で示すように、光学素子11の出射面15には、照明光3の第1の軸12に沿った垂直方向の広がりを制御する、周期的な凹凸形状40を備えている。
【0056】
図19に示した光学素子11は、水平方向の広がりは中配光であるが、第1の軸12に沿った垂直方向の広がりが大きな照明光3を出力する光学素子11の一例である。図19(a)に示すように、光学素子11の外面(出射面)15は、中心の第1の軸12の周りに広がった円弧状である。図19(b)に、断面で示すように、光学素子11の出射面15に設けられた周期的な凹凸形状40の振幅(例えば、凸形状42のピークと、凹形状41の底と間の距離、高さ、サグ量)は、図18(b)に示した凹凸形状40の振幅より大きくてもよい。周期的な凹凸形状40は、図19(b)に示すように、正弦波形状のように湾曲した面の集合であってもよく、図19(c)に示すように、ジグザグ形状のような角度の異なる直線(斜面)の集合であってもよい。
【0057】
図20(a)に示した光学素子11は、水平方向が狭い領域2を照明するのに適した例である。光学素子11の出射面15は、狭配光の照明光3を出力するのに適した形状、例えば、曲率が大きな(曲率半径が小さな)面を備えている。図20(b)に示した光学素子11は、水平方向が広い(長い)領域2を照明するのに適した例である。配光角度を広げる一例は、周方向にも1または複数の凹凸の形状を配置することである。図20(b)に示すように、第1の軸12に垂直な方向の断面(水平方向の断面、平面視)において、出射面15を、開き角が0度の位置で凹形状とし、両側で凸形状となるように設計することができる。水平方向の断面が双葉あるいは凸凹凸形状の出射面15を備えた光学素子11は、水平方向に長い領域2を照明するための広配光の照明光3を出力するために適している。図20(c)に示した光学素子11は、円柱の内面に周方向に延びたライン状の領域2の照明に適した例である。
【0058】
図21(a)に示した光学素子11は、複数のライン状の面がコ字形に組み合わされた立体的な面(領域)2の照明に適している例である。この光学素子11の出射面15の第1の軸12に垂直な方向の断面は、コ字形の中央に向き合った、開き角が0度の位置では、直線状または曲率半径が大きい凸または凹に湾曲した部分15yであり、コ字形の垂直に折れ曲がった位置に対応する箇所では凸状15zであり、このような出射面15の形状を採用することにより、コ字形の内壁をライン状に均一に照明するのに適した光学素子11を提供できる。
【0059】
図21(b)に示した光学素子11は、複数のライン状の面がV字形に組み合わされた立体的な面(領域)2の照明に適している例である。この光学素子11の出射面15の第1の軸12に垂直な方向の断面は、V字形に面が交差した位置に対応する箇所に向かって凸状15zであり、このような出射面15の形状を採用することにより、V字形の内壁をライン状に均一に照明するのに適した光学素子11を提供できる。
【0060】
図21(c)に示した光学素子11は、複数のライン状の面がL字形に非対称に組み合わされた立体的な面(領域)2の照明に適している例である。この光学素子11の出射面15の第1の軸12に垂直な方向の断面は、L字形に面が交差した位置に対応する箇所に向かって凸状15zである、第1の軸12の周りに非対称な出射面15の形状を採用することにより、L字形の内壁をライン状に均一に照明するのに適した光学素子11を提供できる。
【0061】
以上に述べたように、第1の軸12に沿った方向の断面における出射面(外面)15の形状および第1の軸12に垂直な方向の断面における出射面15の形状を制御することで、配光特性の異なる照明光3を出力できる。このため、この出射面15を備えた光学素子11を含む照明装置1であれば、照射対象となる様々な構成のライン状の領域2をより均一に照明できる照明装置1を提供できる。
【0062】
図22に、照明装置1dの異なる例を示している。図23に、照明装置1dの取り付けられていた放熱フィン59を取り外した状態を示し、図24に、照明装置1を構成要素に展開した様子を示している。この照明装置1dは、モジュール灯具の一例であり、光学素子11の前面(外面)の出射面15の周囲を覆う遮光性のマスク51を含む。出射面15の外側で、出射面15の周囲を覆う遮光性のマスク51は、グレアおよび迷光対策としての機能を含む。照明装置1では、内面16に第1の反射面31を備えた光学素子11と、第2の反射面23および第3の反射面24を備え、光学素子11の内面16を挟み込むように設置される折り曲げミラー(板金ミラー)24と、光学素子11の出射面15の周囲を覆う、四角いラッパ状の遮光性のマスク51と、光学素子11、板金ミラー20およびマスク51を組み立てるための樹脂筐体52、53および54と、光源となるLED6が搭載された基板6aと、基板6aを支持するとともに、LED6からの熱を放熱フィン59に逃がすための板金ヒートスプレッタ58とを含む。
【0063】
図25(a)に、さらに異なる照明装置1eの側面を示し、図25(b)に照明装置1eを上から見た様子を示す。また、図26に照明装置1eを構成する要素に展開した状態を示し、図27に、照明装置1eの概略構成を、装置1eの中心に沿った断面XXVII-XXVII(図25(b)参照)で切断した断面図を用いて示す。照明装置1eは、光源となるLED6からの光(第1の光)7を照明光3に変換して出力する光学装置10と、第1の光7を出力するLED6を搭載した基板6aとを有する。光学装置10は、第1の軸(Z軸)12に沿って入射される、第1の軸12に平行な光軸7aを備えたランバーシアン配光の第1の光7の少なくとも一部を、第1の軸12の周りの角度θの略円弧状の第1の範囲に、光軸7a(第1の軸(Z軸)12)に対して垂直な方向にほぼコリメートされた状態の光71として反射するように配置された第1の反射面31と、第1の軸12で交差し、第1の反射面31を挟むように配置された第2の反射面23および第3の反射面24と、第1の反射面31で反射された光71の少なくとも一部を屈折して第1の軸12の周りに出力する透光性の出射面15と、出射面15から突き出た複数の遮光性のルーバー90とを含む。
【0064】
光学装置10の構成は、ルーバー90を含む以外は、上記に示した例とほぼ同様の構成であり、第2の反射面23と第3の反射面24を備えた折り曲げミラー20と、内面16に第1の反射面31を備え、外面が出射面15となった透光性の光学素子11とを含む。光学素子11は、内側に、複数の反射弧面31a~31dと、これら複数の反射弧面31a~31dにそれぞれ対応する複数の透過面32a~32dとを含む多段状の内面16を備え、外側に、周期的な凹凸形状40および/または複数の変曲点45を含む出射面15を備え、第1の軸12に垂直な断面が、第1の軸12の周りの角度θが180度以下または未満の略扇形で、透光性の部材である。複数の反射弧面31a~31dと、これら複数の反射弧面31a~31dにそれぞれ対応する複数の透過面32a~32dとは、それぞれが全反射(TIR)プリズム39を構成し、光学素子11の内面16は、第1の軸12に沿って多段のTIRプリズム39が配置された構成となっている。
【0065】
図28に、光学素子11を抜き出して示している。また、図29に、光学素子11をパーツである複数の透光性の部材(透光性部材、パーツ)111a~111eに展開した様子を側面図により示し、図30に、斜視図により示している。図30(a)は、光学素子11を展開した状態を出射面(外面)15の側から見た様子を示し、図30(b)は、内面16の上側、すなわち、第1の光7が入射する第1の軸(Z軸)12の入射側と反対側から示し、図30(c)は、内面16の下側、すなわち、第1の軸12の入射側から示している。
【0066】
各々の透光性部材(パーツ)111a~111eは、第1の軸(Z軸)12に対して垂直な端面115を含み、光学素子11は、これらのパーツ111a~111eが第1の軸12に沿って積層された組立体110を含む。各々のパーツ111a~111eは、光学素子11を、Z軸12に沿って、段階的に配置された同心円弧状の扇形の複数の透過面32a~32dのそれぞれの位置で、X-Y平面に分割した構成を備えており、組立体110は、内面16に、透過面32a~32dのいずれかと、それに対応する反射面(反射曲面、反射弧面)31a~31dのいずれかとを含む1つのTIRプリズム39(TIRプリズム単体)を有する平面視略扇型の4つのパーツ111a~111dと、内面16に反射面を有さずに透過部33を有する平面視略扇型の1つのパーツ111eとを含む。各々のパーツ111a~111dは、外面15に、光学素子11の外面15を構成する周期的な凹凸構造40の一部で、内面16の反射面31a~31dおよび透過部33のそれぞれに対応した部分の構成を含む。
【0067】
各々の透光性のパーツ111a~111dは、第1の反射面31としての機能を備えた複数の反射曲面31a~31dの1つと、複数の透過面32a~32dの1つとの少なくとも1つの組み合わせ、すなわち、少なくとも1つのTIRプリズム39を含む。各々のパーツ111a~111dは、複数のTIRプリズム39を含むように構成されてもよい。各々のパーツ111a~111dは、複数の反射曲面31a~31dの1つと複数の透過面32a~32dの1つとを含み、単一のTIRプリズム39を含むように構成されてもよい。TIRプリズム39は、内面に向かって突き出た形状であり、円弧状の光学素子11の場合は、複数のTIRプリズム39を作り込むことが可能である。一方、以下の例に説明するような円筒状あるいはリング状の光学素子の場合、内面に複数のTIRプリズム39を作り込むことは困難であるが、TIRプリズム39の単位でパーツをZ軸12の方向に分解することにより、内部に複数のTIRプリズム39を有する光学素子を容易に製造できる。
【0068】
また、光学素子11の内面16に設けられた複数のTIRプリズム39は、Z軸12に沿って入力されたLED6からの光7をZ軸12に垂直な方向にコリメートする機能を持つが、透光性のシームレスが光学素子11においては内部で迷光が発生する可能性がある。迷光が光学素子11の出射面15から出力され、外部から認識されると、不要な部分を照明したり、目に入ると眩しさの要因になる。光学素子11をTIRプリズム39の単位でZ軸12の方向に分解して組み立てることにより、TIRプリズム39の単位で迷光の発生を抑制できるというメリットがある。
【0069】
パーツ111a~111eのそれぞれで発生する迷光が他のパーツ111a~111eを介して出力されることを防止するためには、遮光性の部材をパーツ111a~111eの間の少なくとも一部に挟み込んで組立体110を構成してもよい。また、パーツ111a~111eのZ軸12に垂直な端面115の少なくとも一部を遮光性にしてもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0070】
本例においては、光学素子11を構成する組立体110が、各々の透光性のパーツ111a~111eの間に少なくとも一部が配置された(挟み込まれた)遮光性の部材であるルーバー90を含む。ルーバー90は、光学素子11の出射面15から延びて(突き出て)、出射面15から出力された迷光を防止する部分91と、各パーツ111a~111eに挟み込まれた状態で、パーツ間の迷光を防止する部分92とを含む。
【0071】
また、組立体110は、端面115の少なくとも一部に遮光性の領域117を含むパーツ111a~111eを含む。遮光性の領域(部分)117は2色成形などの技術を用いてパーツ111a~111eの成型時に形成してもよく、パーツ111a~111eを成型後に所望の個所を、遮光性を有するように加工してもよい。
【0072】
それぞれのパーツ111a~111eは、外面15の端部側には、積層する際の接合部が設けられている。具体的には、最上段のパーツ111aには下側の端面に凹構造119が、中間のパーツ111b~111dには上側の端面115に凸構造118、下側の端面に凹構造119が設けられており、最下段のパーツ111eには上側の端面115に凸構造118が設けられている。これらの凸構造118と凹構造119を、挟み込まれるルーバーに設けられた貫通孔98を通して勘合させることで、これらのパーツ111a~111eを含む組立体110を構成できる。パーツ111a~111eにより組立体110を構成する方法はこれに限定されず、上下の構造が逆であってもよく、接着剤などを用いてもよく、フレームなどでパーツ111a~111eを囲って機械的に一体化してもよい。
【0073】
ルーバーを用いない光学素子11を、組立体110により構成してもよい。光学素子11を1つの部材で形成する場合、Z軸12に近い領域は上部から下部まで成形部材が存在して肉厚部となるため、成型の際の凝固時間が長くなり、量産性が低下する。X-Y平面に端面115を備えた複数のパーツで分割して製造することにより、肉厚部がなくなり、量産性が向上する。また、各パーツの接合面間に遮光板を挟むことで、上述したルーバーと同様に、迷光を遮光することができる。各パーツには遮光板の厚みに応じた凹部をそれぞれの接合面(端面)115に設けてもよい。
【0074】
図31に、さらに異なる照明装置1fを示している。図32(a)に照明装置1fの側面を示し、図32(b)に照明装置1rを上から見た様子を示す。また、図33に照明装置1fの概略構成を、装置1fの中心に沿った断面XXXIII-XXXIII(図32(a)参照)で切断した断面図を用いて示す。さらに、図34に照明装置1fをパーツに展開した様子を示している。照明装置1fは、光源となるLED6からの光(第1の光)7を照明光3に変換して出力する光学装置10と、第1の光7を出力するLED6を搭載した基板6aとを有する。光学装置10は、第1の軸(Z軸)12に沿って入射される、第1の軸12に平行な光軸7aを備えたランバーシアン配光の第1の光7の少なくとも一部を、第1の軸12の周りの円形(円筒形)の第1の範囲に、光軸7a(第1の軸(Z軸)12)に対して垂直な方向にほぼコリメートされた状態の光71として反射するように配置された第1の反射面31と、第1の反射面31で反射された光71の少なくとも一部を屈折して第1の軸(Z軸)12の周りに出力する透光性の出射面15とを含む。
【0075】
照明装置1fは、Z軸12に沿った光を処理するためのパーツ(軸上光処理部材)120をさらに含む。このパーツ120は、上述した制御部材79と同様の機能を持つように、遮光性あるいは反射性の部材であってもよい。また、パーツ120は、レンズ機能や光拡散機能といった、照明装置としての光学性能を付加する機能を持たせてもよく、ライン状の領域の照明だけではなく、円筒状の光学素子の軸方向周囲の広範囲を含めた照明が可能な照明装置を提供してもよい。パーツ120の形状は円盤状であってもよく、筒状、球状、方形状などであってもよく、透光性または拡散性の素材からなる、人、動植物、建物などのオブジェであってもよい。
【0076】
光学装置10は、第1の軸12に沿って、第1の軸12を中心として同心円状に設けられた複数の反射曲面31a~31eと、複数の反射曲面31a~31eにそれぞれ対応する複数の透過面32a~32eとからなる複数のTIRプリズム39を含む多段状の内面16と、筒面状の出射面を備えた外面15とを備えた光学素子11を有する。本例の光学素子11の出射面(外面)15は、円筒面であるが、平面視(第1の軸12に垂直は面)が多角形の断面を備えた角筒面であってもよく、複数の凹凸が連続した輪郭を備えた断面を有する面であってもよい。また、出射面15の第1の軸12に沿った方向の断面は、直線であってもよく、上述したように周期的な凹凸40を備えた面であってもよく、複数の変曲点45を備えた面であってもよい。
【0077】
光学素子11は、上述した弧面状の出射面15を備えた光学素子と同様に、第1の軸12に垂直な端面115を含む複数の透光性部材(パーツ)111a~111fの組立体110を含む。各々のパーツ111a~111fは、リング状で、内面16に、リング状に形成されたTIRプリズム39を含み、外面はリング状の出射面15となっている。それぞれのパーツ111a~111fの端面115の一部あるいは全部に、遮光性の部分117を設けてもよく、これらのパーツ111a~111fの間に遮光性の部材であるルーバー90を挟み込んで組立体110を構成してもよい。
【0078】
この円筒状の光学素子11を備えた照明装置1fは、円筒状の面(内面)のライン状の領域の照明に適している。この照明装置1fにおいても、光学素子11の外面15の形状を変えることにより、図20および図21を参照して説明したように、角筒状の内面を照明したり、楕円状の内面を照明するために適した照明装置を提供できる。また、上述した光学素子11は、外観が、筒状または筒状の一部を切り出した形状で、細長いライン状あるいは方形の領域2を照明するために適した構成としているが、台形状の領域2を照明したり、斜めから方形あるいはライン状の領域2を照明するために適した円錐状または円錐状の一部を切り出した形状であってもよく、卵型や鼓型あるいはそれらの一部を切り出した形状であってもよい。光学素子11を、中心軸(Z軸)12に沿って複数のパーツに分解して製造して組み立てることにより、様々な形状の光学素子11であって、中心軸12に沿って入射したLED6からの光7を反射面31により中心軸12に垂直な方向にコリメートし、外面の屈折面によって照明対象の領域2の形状に適した照明光3として出力する光学素子11を提供できる。
【0079】
図35に、さらに異なる照明装置1gを示している。図36(a)に照明装置1gの側面を示し、図36(b)に照明装置1gを上から見た様子を示す。また、図37に照明装置1gの概略構成を、装置1gの中心に沿った断面XXXVII-XXXVII(図36(a)参照)で切断した断面図を用いて示す。さらに、図37に照明装置1gをパーツに展開した様子を示している。照明装置1gは、光源となるLED6からの光(第1の光)7を照明光3に変換して出力する光学装置10と、第1の光7を出力するLED6を搭載した基板6aとを有する。光学装置10は、第1の軸(Z軸)12に沿って入射される、第1の軸12に平行な光軸7aを備えたランバーシアン配光の第1の光7の少なくとも一部を、第1の軸12の周りの円形(円筒形)の第1の範囲に、光軸7a(第1の軸(Z軸)12)に対して垂直な方向にほぼコリメートされた状態の光71として反射するように配置された第1の反射面31と、第1の反射面31で反射された光71の少なくとも一部を屈折して第1の軸(Z軸)12の周りに出力する透光性の出射面15と、出射面15から突き出た複数の遮光性のルーバー90と、軸上の光を処理する部材120とを含む。
【0080】
光学装置10は、複数のTIRプリズム39を含む多段状の内面16と、筒面状の出射面を備えた外面15と、ルーバー90とを備えた光学素子11を有する。光学素子11は、各々が上記の例と共通する第1の軸12に垂直な端面115を含む複数の透光性部材(パーツ)111a~111fを含む組立体110を含む。組立体110は、さらに、それぞれのパーツ111a~111fの間に挟み込まれるように配置された複数のルーバー90を含む。それぞれのルーバー90は中空の円盤状で、外側の出射面15から出力された迷光を制御する部分91と、各々のパーツ111a~111fに挟み込まれ、各々のパーツ111a~111fの間の迷光を防止する部分92とを含む。各透光性部材111a~111fは端面115に遮光性の部分117を含んでいてもよく、ルーバー90と協働で、あるいは単独で、透光性部材111a~111fの間の迷光を防止してもよい。
【0081】
この円筒状のルーバー付きの光学素子11を備えた照明装置1gは、一例として、円筒状の面(内面)のライン状の領域の照明に適している。照明装置1gは、図22図24を参照して説明したように、出射面15の上下を覆う円形のカバーを備えていてもよい。光学素子11の外面の出射面15の屈折とともにルーバー90により照明光3を制御することができ、照明対象の領域の形状によりあわせて照明光3を出力できる。
【0082】
なお、上記においては、内面16に、第1の反射面31を5または6分割して配置した光学素子11を例に説明しているが、第1の反射面31は、4分割以下となるように配置してもよく、7分割以上となるように配置してもよい。扇形の光学素子11としては中心角(開き角)θが90度の例を示しているが、中心角θは90度以下であってもよく、90度以上であってもよい。また、光源として配置されるLED6の数は1つに限定されることはなく、光源として複数の多色のLEDを配置してもよい。さらに、照明装置1は、複数の光学素子11を含む複数の光学装置10、または複数の投射ユニット5を、Z軸12が並列するように、または共通するように配置されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 照明装置、 5 投射ユニット
10 光学装置(光学システム)、 11 光学素子(透光性部材)
23 第2の反射面、 24 第3の反射面
31、31a~31f 第1の反射面
図1
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