(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】貼り合わせ治具及び貼り合わせ方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/00 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
H05K3/00 L
(21)【出願番号】P 2019214728
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀島 由美子
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-6362(JP,A)
【文献】特開2004-71863(JP,A)
【文献】特開2008-16634(JP,A)
【文献】国際公開第2009/034819(WO,A1)
【文献】特開2011-91348(JP,A)
【文献】特開2011-197872(JP,A)
【文献】中国実用新案第206181571(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 37/00―43/00
H05K 3/00
H05K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置台と、
前記載置台に設けられる位置決め部と、
前記載置台に設けられる複数の第1穴部と、
前記第1穴部に配置され、前記載置台の表面に対して垂直方向に可動する第1ピンと、
前記載置台の表面より内側に設けられ、かつ前記第1ピンを支持して、前記第1ピンの垂直方向への可動を調整する第1調整部材と、
を備え、
前記第1調整部材は、前記第1ピンを前記載置台の前記第1穴部内に収納する方向に押されたときに、押された方向に反発する貼り合わせ治具。
【請求項2】
前記押された方向に反発する力が0.15N以上180kN以下である請求項1に記載の貼り合わせ治具。
【請求項3】
前記第1調整部材は、板ばね又はコイルばねであり、
前記第1調整部材に前記第1ピンの基端が取り付けられ、
前記第1調整部材の弾性変形によって前記第1ピンが前記第1穴部内に収納される請求項1又は請求項2に記載の貼り合わせ治具。
【請求項4】
前記載置台は、前記第1穴部を備える第1部材と、前記第1部材と対向して前記第1調整部材が設置される第2部材と、を備え、
前記第1穴部と前記第1調整部材とが対向している請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の貼り合わせ治具。
【請求項5】
前記載置台は、さらに第2穴部を備え、
前記第2穴部に配置された第2ピンを有し、
前記位置決め部は、前記第2ピンである請求項4に記載の貼り合わせ治具。
【請求項6】
前記載置台の表面より内側に設けられ、かつ前記第2ピンを支持して、前記第2ピンの垂直方向への可動を調整する第2調整部材を備え、
前記第2ピンは、前記載置台の表面に対して垂直方向に可動し、
前記第2調整部材は、前記第2ピンを前記載置台の前記第2穴部内に収納する方向に押されたときに、押された方向に反発する請求項5に記載の貼り合わせ治具。
【請求項7】
前記第2調整部材は、板ばね又はコイルばねであり、
前記第2調整部材に前記第2ピンの基端が取り付けられ、
前記第2調整部材の弾性変形によって前記第2ピンが前記第2穴部内に収納される請求項6に記載の貼り合わせ治具。
【請求項8】
前記第2穴部は、前記第1部材に設けられ、
前記第2部材は、前記第2調整部材が配置され、
前記第2穴部と前記第2調整部材とが対向している請求項6又は請求項7に記載の貼り合わせ治具。
【請求項9】
前記第1ピンの表面及び前記第2ピンの表面の少なくとも一方がフッ素樹脂で被覆されている請求項5乃至請求項8のいずれか一項に記載の貼り合わせ治具。
【請求項10】
請求項1に記載の貼り合わせ治具を用いて貼付部材を貼付対象部材に貼り付ける貼合わせ方法であって、
押された方向に反発するように第1調整部材を介して支持する第1ピンに、複数の第1貫通穴を有する貼付対象部材の前記第1貫通穴を挿通させて、前記貼付対象部材を載置台に載置する載置工程と、
前記貼付対象部材から間隔をあけて前記貼付部材を前記第1ピン上に支持すると共に、位置決め部に前記貼付部材を当接することで位置決めする支持工程と、
前記第1ピンを垂直方向に前記第1調整部材の反発力に抗して可動させて前記第1ピンの少なくとも一部を前記第1穴部内に収納すると共に、前記貼付部材を前記貼付対象部材に押し当てて貼り合わせる貼り合わせ工程と、を含む貼り合わせ方法。
【請求項11】
前記貼り合わせ工程は、前記貼付部材の中心側から外縁側に向かって前記貼付部材と前記貼付対象部材とが押し当てられる請求項10に記載の貼り合わせ方法。
【請求項12】
前記貼り合わせ工程を真空状態で行う請求項10又は請求項11に記載の貼り合わせ方法。
【請求項13】
前記貼り合わせ工程は、流体が供給されると前記第1ピンを前記載置台の前記第1穴部内に収納する方向に膨張する膜体を用い、前記流体を供給して前記膜体を膨張させて前記貼付部材を押すことによって行う請求項10乃至請求項12のいずれか一項に記載の貼り合わせ方法。
【請求項14】
前記第1ピンは、前記第1調整部材に着脱自在に取り付けられ、
前記貼付対象部材の有する前記第1貫通穴の位置に応じて前記第1ピンを挿通させるように選択して前記第1ピンと前記第1調整部材とを取り付ける請求項10乃至請求項13のいずれか一項に記載の貼り合わせ方法。
【請求項15】
前記載置台は、さらに第2穴部を備え、前記第2穴部に配置された第2ピンを有し、
前記位置決め部は、前記第2ピンであり、
前記貼付対象部材は、複数の第2貫通穴を有し、
前記第2ピンは、前記貼付対象部材の少なくとも一部の前記第2貫通穴が挿通する位置にあると共に、前記貼付部材の側端が当接する位置を前記貼付部材の位置決め位置とする請求項10乃至請求項14のいずれか一項に記載の貼り合わせ方法。
【請求項16】
前記載置台は、さらに第2穴部を備え、前記第2穴部に配置された第2ピンを有し、
前記位置決め部は、前記第2ピンであり、
前記第2ピンは、前記貼付対象部材の側端及び前記貼付部材の側端が当接する位置を前記貼付対象部材及び前記貼付部材の位置決め位置とする請求項10乃至請求項14のいずれか一項に記載の貼り合わせ方法。
【請求項17】
前記貼付対象部材が配線基板である請求項10乃至請求項16のいずれか一項に記載の貼り合わせ方法。
【請求項18】
前記配線基板がフレキシブル基板である請求項17に記載の貼り合わせ方法。
【請求項19】
前記貼付部材が、前記貼付対象部材と対向する面に粘着層を有している請求項10乃至請求項18のいずれか一項に記載の貼り合わせ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、貼り合わせ治具及び貼り合わせ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、貼付対象部材であるプリント回路基板(Flexible Printed Circuits(FPC基板))と貼付部材である複合シート体との位置合わせを行いつつ粘着固定する技術が記載されている。具体的には、FPC基板に形成された貫通穴と、基板搬送治具に形成された貫通穴とを一致させて、ピンを挿入することによって、FPC基板の位置合わせを行う。そして、特許文献1では、位置合わせした位置において、複合シート体の加硫処理済みのフッ素ゴム層の表面の粘着力により、FPC基板を粘着固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に係る実施形態は、貼付対象部材に貼付部材を貼り合わせる際にボイドが入り難い貼り合わせ治具及び貼り合わせ方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態に係る貼り合わせ治具は、載置台と、前記載置台に設けられる位置決め部と、前記載置台に設けられる複数の第1穴部と、前記第1穴部に配置され、前記載置台の表面に対して垂直方向に可動する第1ピンと、前記載置台の表面より内側に設けられ、かつ前記第1ピンを支持して、前記第1ピンの垂直方向への可動を調整する第1調整部材と、を備え、前記第1調整部材は、前記第1ピンを前記載置台の前記第1穴部内に収納する方向に押されたときに、押された方向に反発する構成を備える。
【0006】
本開示の実施形態に係る貼り合わせ方法は、前記貼り合わせ治具を用いて貼付部材を貼付対象部材に貼り付ける貼合わせ方法であって、押された方向に反発するように第1調整部材を介して支持する第1ピンに、複数の第1貫通穴を有する貼付対象部材の前記第1貫通穴を挿通させて、前記貼付対象部材を載置台に載置する載置工程と、前記貼付対象部材から間隔をあけて前記貼付部材を前記第1ピン上に支持する支持工程と、前記第1ピンを垂直方向に前記第1調整部材の反発力に抗して可動させて前記第1ピンの少なくとも一部を前記第1穴部内に収納すると共に、前記貼付部材を前記貼付対象部材に押し当てて貼り合わせる貼り合わせ工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の実施形態に係る貼り合わせ治具及び貼り合わせ方法は、貼付対象部材に貼付部材を貼り合わせる際にボイドが入り難い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る貼り合わせ治具を、貼付対象部材及び貼付部材と共に模式的に示した斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る貼り合わせ治具に、貼付対象部材及び貼付部材を位置決めして載置した状態で一部を切り欠いて模式的に示す平面図である。
【
図3】本実施形態に係る貼り合わせ治具を構成する載置台の分解斜視図である。
【
図6】本実施形態に係る貼り合わせ方法の内容を説明するフローチャートである。
【
図7A】本実施形態に係る貼り合わせ治具において、第1ピンに貼付部材を載置する前の状態を断面にして模式的に示す説明図である。
【
図7B】本実施形態に係る貼り合わせ治具において、貼付対象部材と貼付部材とを第2ピンで位置決めした後に、第2ピンを外した状態を断面にして模式的に示す説明図である。
【
図7C】本実施形態に係る貼り合わせ治具において、貼付対象部材の中心側と貼付部材の中心側とが貼り合わされる状態を断面にして模式的に示す説明図である。
【
図7D】本実施形態に係る貼り合わせ治具において、貼付対象部材と貼付部材とが中心側から外縁側に向かって貼り合わされる状態を断面にして模式的に示す説明図である。
【
図7E】本実施形態に係る貼り合わせ治具において、貼付対象部材と貼付部材とが貼り合わされた状態を断面にして模式的に示す説明図である。
【
図9】第2ピン及び第2調整部材の変形例を示す断面図である。
【
図10】第2ピン及び第2調整部材のさらなる変形例を示す断面図である。
【
図11】第2ピンの先端に保護カバーを設けた様子を示す断面図である。
【
図12】本実施形態の一変形例を説明する平面図である。
【
図13】本実施形態の他の変形例を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための貼り合わせ治具及び貼り合わせ方法を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置などは、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる例示に過ぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係などは、説明を明確にするために誇張していることがある。また、平面図や断面図、斜視図などにおいて、各部材のスケールや間隔が一致しない場合がある。また、以下の説明では、同一の名称及び符号については原則として同一又は同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略することとする。さらに、本明細書において、「上」、「下」などは構成要素間の相対的な位置を示すものであって、絶対的な位置を示すことを意図したものではない。
【0010】
[貼り合わせ治具]
はじめに、貼り合わせ治具について説明する。
図1は、本実施形態に係る貼り合わせ治具1を、貼付対象部材S及び貼付部材Aと共に模式的に示した斜視図である。
図2は、本実施形態に係る貼り合わせ治具1に、貼付対象部材S及び貼付部材Aを位置決めして載置した状態で一部を切り欠いて模式的に示す平面図である。
図3は、本実施形態に係る貼り合わせ治具1を構成する載置台2の分解斜視図である。
図4は、
図2のB-B線断面図である。
図5は、
図4のC部拡大図である。
【0011】
図1乃至
図5に示すように、貼り合わせ治具1は、載置台2と、載置台2に設けられる位置決め部3と、載置台2に設けられる複数の第1穴部4と、を備えている。また、この貼り合わせ治具1は、第1穴部4に配置され、載置台2の表面に対して垂直方向に可動する第1ピン5と、載置台2の表面より内側に設けられ、かつ第1ピン5を支持して、第1ピン5の垂直方向への可動を調整する第1調整部材6と、を備えている。そして、貼り合わせ治具1は、第1調整部材6が、第1ピン5を載置台2の第1穴部4内に収納する方向に押されたときに、押された方向に反発するように設けられている。
【0012】
貼り合わせ治具1は、貼付対象部材S(例えば、基板)と貼付部材A(例えば、接合部材)とを、それぞれ前記した位置決め部3で位置決めしてこれらを貼り合わせるために用いられる。貼付対象部材Sと貼付部材Aとを位置決め部3で位置決めすることにより、これらを適切な配置で貼り合わせることができる。本実施形態において、位置決めによって貼付対象部材Sと貼付部材Aとを適切に配置することを「位置合わせ」と称することがある。
【0013】
貼付対象部材Sは、貼付部材Aが貼り付けられる対象となる部材である。ここでは、貼付対象部材Sとして、配線を有する基板(配線基板)を一例として説明する。なお、基板はフレキシブル基板であってもよい。そして、貼付対象部材Sには、載置台2に設けられている第1穴部4と一致する位置に、当該貼付対象部材Sの表裏面を貫通し、第1ピン5を挿通させるための第1貫通穴S5hが形成されている。そのため、第1穴部4に配置される第1ピン5は、貼付対象部材Sの第1貫通穴S5hを挿通して、少なくともその先端が貼付対象部材Sの上方に突出させることが可能となっている。これにより、第1ピン5は、貼付部材Aを貼付対象部材Sから間隔をあけて浮かせた状態で支持することができる。なお、貼付対象部材Sの第1貫通穴S5hを第1ピン5が挿通すると貼付対象部材Sは水平方向の移動が制限される。つまり、貼付対象部材Sは、位置決め部3のみならず、第1貫通穴S5hに第1ピン5を挿通させることによっても位置決めが行われる。
【0014】
第1穴部4の穴の直径は、第1ピン5の直径よりも大きければよい。可動のしやすさや横方向へのずれを考慮し、例えば、第1穴部4の穴の直径は、第1ピン5の直径よりも0.1mm以上4.0mm以下大きくすることができ、0.5mm以上2.0mm以下大きいことが好ましい。第1穴部4の穴の直径は1.5mm以上7.0mm以下とすることができる。また、第1穴部4の穴の直径と第1ピン5の直径の大きさの関係を考慮し、第1ピン5の直径は、(第1穴部4の穴の直径)-(0.1mm以上4.0mm以下)とすることができる。
【0015】
貼付部材Aは、貼付対象部材Sに貼り付ける部材である。貼付部材Aは、貼付対象部材Sと対向する面に粘着層を有している。貼付部材Aは、第1ピン5の先端に載置すると、粘着層によって簡単には位置がずれない程度の粘着力で仮固定される。従って、第1ピン5の先端に貼付部材Aを載置した後に、貼り合わせ治具1から位置決め部3を取り外したとしても、簡単には貼付部材Aの位置はずれない。
【0016】
貼付部材Aは、例えば、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの任意の樹脂で形成された樹脂シートを基材とし、貼付対象部材Sと対向する面に任意の粘着層を設けたものを用いることができる。貼付部材Aは基材の両面に粘着層を設けたものであってもよい。貼付部材Aとして具体的には、基材の両面に粘着層を有する接合部材を使用することができる。貼付部材Aは、第1ピン5の先端に載置する前に、一方の粘着層をカバーするセパレータ(例えば、PET製の離型性のシート)を剥離し、その後、粘着層を第1ピン5の先端に当接するように載置する。なお、貼付部材Aのもう一方の面の粘着層のセパレータは、これより後の別工程において、他の部材などと接着されるタイミングで剥離される。
【0017】
載置台2は、貼付対象部材Sに貼付部材Aを貼り合わせるため、その上面に貼付対象部材Sを載置する台である。載置台2の上面、すなわち、第1部材21の上面は、貼付対象部材Sを載置するので、第1穴部4や後述する第2穴部32を除いて平坦となっている。載置台2の上面が平坦であると、貼付対象部材Sを安定して載置できると共に、貼付部材Aを貼付対象部材Sに貼り合わせる際も安定して均一に貼り合わせ易くなる。
【0018】
載置台2は、例えば、第1穴部4を備える第1部材21と、この第1部材21と対向して第1調整部材6が設置される第2部材22と、を備えている。さらに、第2部材22は、第1部材21の第1穴部4と第1調整部材6とが対向するように設けられている。そして、第1ピン5は、第1穴部4を挿通して第1調整部材6によって垂直方向に可動自在に設置されている。ここでは、第2部材22は、載置台2の下側の部材であり、第1調整部材6を収納すると共に第1部材21を支持する土台となる部材となっている。そして、第1部材21が載置台2の上側の部材であり、第1調整部材6を覆うと共に、前記したように貼付対象部材Sを載置する部材となっている。
【0019】
載置台2は、さらに第2穴部32を備え、第2穴部32に挿通するように配置された第2ピン31を有している。この場合、前記した位置決め部3が第2ピン31となる。具体的には、載置台2の第1部材21は、矩形の平板に形成されている。第1部材21は、第1ピン5が挿通するように配置される第1穴部4が複数形成されている。また、第1部材21は、第2ピン31が挿通するように配置される第2穴部32が複数形成されている。第1部材21は、第1穴部4及び第2穴部32以外の下面が、第2部材22の上面と当接した状態で、第2部材22に対面して設置されている。
【0020】
第2穴部32の穴の直径は、第2ピン31の直径よりも大きければよいが、横方向へのずれが少ないこと、特に横方向へのずれがないことが好ましい。例えば、第2穴部32の穴の直径に対し、第2ピン31の直径が200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがさらに好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。これにより貼付対象部材Sと貼付部材Aとの位置合わせの精度を上げることができ、例えば、位置合わせの誤差を100μm以内、より好ましくは50μm以内に抑えることができる。例えば、第2ピン31の直径は1.0mm以上5.0mm以下とすることができる。第2穴部32の穴の直径は、(第2ピン31の直径)+(200μm以下)とすることができる。
【0021】
第2部材22は、第1調整部材6を収納すると共に、第2部材22の上面に第1部材21を対面又は対向して設置する。第2部材22は、第1調整部材6を収納する第1収納部22aを複数形成していると共に、第2ピン31を周縁側に複数所定の間隔で設置している。ここで用いられる第2ピン31は、貼付部材Aの側端に当接して貼付部材Aの位置決めを行う位置決め部3として機能することができる位置に設けられている。第2部材22は、ここでは矩形で所定の厚さの板部材に第1収納部22aを複数形成している。第1収納部22aは、一例として平面視が長方形となる凹状に形成されている。そして、第1収納部22aは、収納する第1調整部材6が弾性変形できる深さを有すると共に、第1調整部材6が弾性変形したときにその外縁に当接してその機能を維持できる広さに形成されている。なお、第2部材22は、一例として、第1収納部22aを等間隔に3行3列に整列して形成している。また、第2部材22は、第2ピン31を着脱自在に支持するための支持穴部22bを形成している。そして、第2部材22の支持穴部22bと第1部材21の第2穴部32とは載置台2において重なる位置に形成されている。そのため、第2ピン31は、第2穴部32を挿通するように、支持穴部22bに着脱自在に支持することができる。
【0022】
第1調整部材6は、前記したように、載置台2の表面より内側に設けられ、かつ第1ピン5を支持して、第1ピン5の垂直方向への可動を調整する部材である。また、第1調整部材6は、第1ピン5を載置台2の第1穴部4内に収納する方向に押されたときに、押された方向に反発するように設けられている。具体的には、第1調整部材6は、弾性部材で形成され、支持している第1ピン5を垂直方向に所定範囲可動させることができる構成を備えている。第1調整部材6は、ここでは第2部材22に設けた第1収納部22aに収納されることで、それぞれの第1調整部材6が所定の間隔で配置されている。そして、前記したように、第1部材21が、第1ピン5を第1穴部4に挿通させた状態で第1調整部材6を覆っている。これにより、第1調整部材6が第2部材22から抜け出ないようになっている。
【0023】
第1調整部材6は、一例として、板ばね又はコイルばねで形成されている。第1調整部材6は、板ばねで形成した場合には、長方形の板材の両端側を所定角度に折り曲げて、中央の平坦部6aと平坦部6aの両端の支持脚部6b,6bとを形成する。そして、第1調整部材6は、平坦部6aの中央に第1ピン5の基端が取り付けられ、第1調整部材6の弾性変形によって、第1ピン5が第1穴部4から突出した状態から第1穴部4内に収納される垂直方向の範囲に可動するように形成されている。第1調整部材6は、第1ピン5を載置台2の第1穴部4内に収納する方向に押されたときに、平坦部6aが第1収納部22aの底面に当接するまで弾性変形するか、又は平坦部6aが第1収納部22aの底面に向かって湾曲するように弾性変形して、押された方向に好適に反発させることができる。板ばね又はコイルばねは、ばねの強さを調整することができる。例えば、貼付部材Aの重さに合わせて、適宜板ばね又はコイルばねを強くしたり弱くしたりしてもよい。
【0024】
また、第1調整部材6は、押された方向に反発する力が、例えば、0.15N以上180kN以下であることが好ましい。当該反発する力がこの範囲にあると、貼付対象部材Sと貼付部材Aとを貼り合わせる際の圧力を適切な範囲におさめることができるので、これらの貼り合わせを好適に行える。なお、前記した反発する力は、貼付対象部材Sと貼付部材Aとの貼り合わせをより確実かつ効率良く行う観点から、0.2N以上96kN以下とすることが好ましく、40kN以上50kN以下とすることがより好ましい。
【0025】
第1ピン5は、第1調整部材6の弾性変形時には、そのピン先端を第1穴部4内に埋没させ、第1調整部材6の非変形時には、そのピン先端が貼付対象部材Sの上面よりも高い位置になる長さを備えている。つまり、第1ピン5は、垂直方向の移動下端で、ピンの先端が第1部材21上に載置された貼付対象部材Sと高さを同じとし、垂直方向の移動上端で、ピンの先端が第1部材21上に載置された貼付対象部材Sの上面よりも高い位置になる長さを備えている。また、第1ピン5は、ピン先端が平坦に形成されている。さらに、第1ピン5の直径は、第1穴部4内で垂直方向に可動できる太さに形成されている。なお、第1ピン5の表面はフッ素樹脂で被覆されていることが好ましい。このようにすると、粘着層によって貼付部材Aと第1ピン5とが接着している場合に、第1ピン5から貼付部材Aを容易に剥離することができる。また、第1ピン5は、ピン先端が丸みを帯びるように形成されていてもよい。さらにまた、第1ピン5の表面がエンボス加工されていてもよい。これらのようにすると、第1ピン5は、貼付部材Aとの接触面積を減らすことができるので、貼付部材Aと第1ピン5とが接着している場合に、第1ピン5から貼付部材Aを容易に剥離することができる。
【0026】
位置決め部3は、載置台2に設けられて、貼付対象部材Sと貼付部材Aとをそれぞれ特定の位置に位置決めするものである。位置決め部3として、前記しているように、第2ピン31を用いることができる。載置台2の第1部材21は第2穴部32を備え、第2部材22は支持穴部22bを備える。第2ピン31は、第2穴部32に配置されると共に、第2部材22に形成した支持穴部22bに着脱自在に設けられている。そして、第2ピン31は、貼付対象部材Sに設けられた第2貫通穴S3hを挿通して、貼付対象部材Sの上面よりもピン先端が突出するように設けられている。第2ピン31は、貼付部材Aの側端が当接する位置、具体的には、貼付部材Aの直交する二辺の側端が当接する位置を貼付部材Aの位置決め位置とし、貼付対象部材Sとの位置合わせができるように配置されている。なお、ここでは、貼付対象部材Sの第2貫通穴S3hと、第1部材21の第2穴部32と、第2部材22の支持穴部22bとは重なる位置に形成されている。第2ピン31が第2貫通穴S3hと第2穴部32と支持穴部22bとを同時に挿通することによって、貼付対象部材Sの位置決めが行えるようになっている。そして、この第2ピン31に貼付部材Aの側端を当接させることで貼付部材Aの位置決めが行えるようになっている。図示では、第2ピン31は4つ全ての第2貫通穴S3hに挿通されているが、これに限定されない。第2ピン31は、貼付部材Aの位置決めを行えればよく、例えば、貼付部材Aの直交する二辺のそれぞれに少なくとも1つずつ当接するように計2つ以上の第2貫通穴S3hに第2ピン31が挿通されていればよい。第2ピン31をこのように配置しても貼付対象部材Sや貼付部材Aの水平方向の移動を抑止し、位置決めを行うことができる。
【0027】
第2ピン31は、貼付対象部材S及び貼付部材Aの位置決めを行った後、これらを貼り合わせる作業を行う前に、取り外すことができる。従って、貼付対象部材S及び貼付部材Aの貼り合わせ時に第2ピン31が邪魔になることはない。
なお、第2ピン31の表面は、第1ピン5と同様、フッ素樹脂で被覆されていることが好ましい。また、第2ピン31における貼付部材Aと接触する部分は、表面がエンボス加工されていてもよい。これらのようにすると、第2ピン31は、粘着層によって貼付部材Aと第2ピン31とが接着している場合に、第2ピン31から貼付部材Aを容易に剥離することができる。
【0028】
貼付対象部材Sと貼付部材Aとは、ダイヤフラム(膜体)Dを用いる公知のラミネータに貼り合わせ治具1を設置して貼り合わせることが好ましい。このラミネータは、チャンバ内にダイヤフラムDを備えたものである。ダイヤフラムDは、流体(例えば、気体或いは液体)を供給することによって膨らみ、対象物(例えば、貼り合わせ治具1の載置台2上に貼付対象部材Sと貼付部材Aとが順次載置されたもの)に対して圧力を与える。これにより、ダイヤフラムDは、貼り合わせ治具1の載置台2上に載置された貼付対象部材Sと貼付部材Aとを貼り合せることができる。
【0029】
なお、貼付対象部材Sと貼付部材Aとを貼り合わせる際の圧力は、第1ピン5の上に載置した状態で形状変化が少なくかつ軽い貼付部材Aであるほど小さくすることができる。また、貼付対象部材Sと貼付部材Aとの密着性が低い場合は、圧力を大きくしたり、貼り合わせ時に熱をかけたりすることが好ましい。熱は、例えば、40℃以上70℃以下とするとよい。
【0030】
貼り合わせ治具1は、以上に説明した構成を有しているので、貼付対象部材Sと貼付部材Aとを貼り合せる前に、一旦、貼付対象部材Sの上に間隔をあけて貼付部材Aを支持させ、その状態を保持することができる。そして、貼付部材Aを貼付対象部材Sに押し当てて貼り合わせる際に所定の抵抗と距離があり、これらによって貼付部材Aと貼付対象部材Sとが所定の操作なしに容易に貼り付かないようになっている。従って、貼り合わせ治具1は、その後に行う貼り合わせ作業・工程を適切に行うことができ、貼付対象部材S(例えば、基板)と貼付部材A(例えば、接合部材)とを貼り合わせる際にボイドが入り難い。
【0031】
本実施形態において、貼り合わせ治具1の第1部材21、第2部材22、第1ピン5、第2ピン31は、公知の材料を使用することができる。例えば、ステンレス、アルミ合金、セラミック、樹脂を使用することができ、ステンレスが好ましい。また、第1調整部材6は、公知の金属材料を使用することができ、ステンレスが好ましい。
【0032】
[貼り合わせ方法]
次に、本実施形態に係る貼り合わせ方法について説明する。
図6は、本実施形態に係る貼り合わせ方法(以下、単に「本方法」と呼称する)の内容を説明するフローチャートである。
図7Aは、本実施形態に係る貼り合わせ治具1において、第1ピン5に貼付部材Aを載置する前の状態を断面にして模式的に示す説明図である。
図7Bは、本実施形態に係る貼り合わせ治具1において、貼付対象部材Sと貼付部材Aとを第2ピン31で位置決めした後に、第2ピン31を外した状態を断面にして模式的に示す説明図である。
図7Cは、本実施形態に係る貼り合わせ治具1において、貼付対象部材Sの中心側と貼付部材Aの中心側とが貼り合わされる状態を断面にして模式的に示す説明図である。
図7Dは、本実施形態に係る貼り合わせ治具1において、貼付対象部材Sと貼付部材Aとが中心側から外縁側に向かって貼り合わされる状態を断面にして模式的に示す説明図である。
図7Eは、本実施形態に係る貼り合わせ治具1において、貼付対象部材Sと貼付部材Aとが貼り合わされた状態を断面にして模式的に示す説明図である。
【0033】
本方法は、貼り合わせ治具1を用いて貼付部材Aを貼付対象部材Sに貼り付ける貼り合わせ方法であり、載置工程S1と、支持工程S2と、貼り合わせ工程S3とを含み、これらの工程についてはこの順序で行う。なお、貼り合わせ治具1は、例えば、ラミネータのダイヤフラム(膜体)Dを併せて使用することで貼り合わせ作業を行うこととして説明する。なお、貼り合わせ工程S3において、流体を用いることで、流体の温度を適宜調整でき、作業環境に合わせて貼り合わせ作業を行うことができる。
【0034】
図7Aに示すように、載置工程S1は、押された方向に反発するように第1調整部材6を介して支持する第1ピン5に、複数の第1貫通穴S5hを有する貼付対象部材Sの第1貫通穴S5hを挿通させて、貼付対象部材Sを載置台2に載置する工程である。この工程S1により、貼付対象部材Sの上に第1ピン5の突出している長さにおいて間隔をあけて貼付部材Aを支持する準備を行うことができる。
【0035】
図7Bに示すように、支持工程S2は、貼付対象部材Sから間隔をあけて貼付部材Aを第1ピン5上に支持すると共に、位置決め部3に貼付部材Aを当接することで位置決めする工程である。支持工程S2では、貼付部材Aが矩形のシート状或いは板状であるので、その矩形の二辺を位置決め部3である第2ピン31に当接させつつ、第1ピン5の上に支持させる。ここでは、貼付部材Aの二辺の側端が第2ピン31に当接した状態で貼付対象部材Sと貼付部材Aとが位置決めされるように設定されている。この工程S2により、載置台2の上面に、貼付対象部材Sが位置決め部3(第2ピン31)によって位置決めされた状態で載置され、貼付部材Aと貼付対象部材Sとを貼り合わせる準備を行うことができる。なお、支持工程S2の後で、貼り合わせ工程S3の前において、第2ピン31が載置台2の第2部材22から取り除かれる。また、貼付部材Aは、貼付対象部材Sと対向する面に粘着層を有しており、この粘着層によって第1ピン5の先端に仮固定される。従って、貼り合わせ治具1から位置決め部3を取り外したとしても簡単には貼付部材Aの位置はずれない。
【0036】
図7Cに示すように、貼り合わせ工程S3は、第1ピン5を垂直方向に第1調整部材6の反発力に抗して可動させて第1ピン5の少なくとも一部を第1穴部4内に収納すると共に、貼付部材Aを貼付対象部材Sに押し当てて貼り合わせる工程である。この工程S3では、貼付部材Aを貼付対象部材Sに押し当てて貼り合わせる直前において、第1調整部材6の反発する力と第1ピン5の長さにより、貼付部材Aが貼付対象部材Sの上に間隔をあけて支持されて、所定の操作なしに容易に貼り付かないように保持される。
【0037】
そして、貼り合わせ工程S3では、貼付部材Aの中心側から外縁側に向かって貼付部材Aと貼付対象部材Sとが押し当てられるようにすることで貼り合わせを行う。つまり、貼り合わせ工程S3では、例えば、ラミネータのダイヤフラムDの中心側を膨張させる。そうすると、載置台2の中心側の第1ピン5が垂直方向に第1調整部材6の反発力に抗して下方に押し下げられる。そして、貼付部材Aの中心側と及び貼付対象部材Sの中心側とが押し当てられて、強制的に互いに貼り合わされる。
【0038】
また、
図7Dに示すように、貼り合わせ工程S3では、ダイヤフラムDを貼付部材Aの中心側から外縁側に向かって徐々に膨張させる。ダイヤフラムDの膨張により、載置台2の中心側に配置されている第1ピン5から載置台2の外縁側に配置されている第1ピン5へと圧力がかかる範囲が広がる。つまり、第1ピン5を垂直方向に第1調整部材6の反発力に抗して下方に押し下げる範囲が広がる。ダイヤフラムDで押される範囲が広がることで、貼付部材A及び貼付対象部材Sの中心側から外縁側に向かって互いに強制的に貼り合わされていく。
さらに、
図7Eに示すように、ダイヤフラムDの全体が膨張して載置台2の上面側全体を覆い、貼付部材Aの全体が押し下げられることで、貼付部材Aと貼付対象部材Sとが全面において位置決めされた位置において貼り合わされる。
このように貼付部材A及び貼付対象部材Sの中心側から外縁側に向かって貼り合わされることで、空気を巻き込むことがなく、貼付部材Aと貼付対象部材Sとの間にボイドがより入り難くなる。
【0039】
図7C,7D,7Eでは、ダイヤフラムDを貼付部材Aの中心側から外縁側に向かって徐々に膨張させているが、これに限らない。すなわち、貼付部材Aの一端の外縁側から他端(一端の反対側)の外縁側に向かって圧力をかけるようにしてもよい。これにより、載置台2の一端側に配置されている第1ピン5から載置台2の他端側に配置されている第1ピン5へと圧力がかかる範囲が広がり、貼付部材A及び貼付対象部材Sの一端の外縁側から他端の外縁側に向かって互いに強制的に貼り合わされていく。したがって、このような方法においても、貼付部材A及び貼付対象部材Sとの間に空気を巻き込むことがなく、貼付部材Aと貼付対象部材Sとの間にボイドがより入り難くなる。
【0040】
貼り合わせ工程S3において、貼付部材Aと貼付対象部材Sとが位置決めされた位置において貼り合わされれば、第1ピン5は載置台2の第1穴部4内に完全に収納されなくてもよい。
【0041】
なお、前記した貼り合わせ工程S3は、大気状態で行う例として説明したが、例えば、真空状態の環境で行ってもよい。貼り合わせ工程S3は、ダイヤフラムDを用いる公知の真空ラミネータを使用して貼付対象部材Sと貼付部材Aとを貼り合わせることが好ましい。この真空ラミネータは、真空状態にできるチャンバ内にダイヤフラムDを備えたものである。このようにすると、貼付部材Aと貼付対象部材Sとの周囲に空気がないので、貼付部材Aと貼付対象部材Sとを貼り合わせる際にボイドがさらに入り難くなる。従って、貼付部材Aと貼付対象部材Sとをさらに確実にきれいに貼り合せることができる。なお、貼付部材Aは、粘着層の一部が第1ピン5に粘着し、貼付対象部材Sは、第1ピン5及び第2ピン31に挿通しているので、真空状態の環境であっても位置合わせ作業や貼り合わせ作業を滞りなく行うことができる。
【0042】
[変形例]
以下、本実施形態の変形例について説明する。
図8は、第1調整部材6の変形例を示す断面図である。
図3乃至
図5では、第1調整部材6として板ばねを例示して説明したが、第1調整部材6は、板ばねに替えて
図8に示すようにコイルばねとすることができる。コイルばねの場合も板ばねと同様に第1ピン5を垂直方向に可動させ、貼付部材Aと貼付対象部材Sとを貼り合せることができる。なお、第1調整部材6としてコイルばねを用いた場合、第1穴部4から第1ピン5が抜け出てしまうことを防ぐため、径が第1穴部4よりも大きいフランジ部5fを備えることが好ましい。第1調整部材6をコイルばねで形成した場合には、フランジ部5fの中央に第1ピン5の基端が取り付けられ、第1調整部材6の弾性変形によって、第1ピン5が第1穴部4から突出した状態から第1穴部4内に収納される垂直方向の範囲に可動できるように形成されている。すなわち、第1調整部材6をこのような変形例とした場合は第1ピン5を載置台2の第1穴部4内に収納する方向に押されたときに、コイルばねが圧縮されて弾性変形し、押された方向に好適に反発させることができる。
【0043】
図9は、第2ピン31及び第2調整部材30の変形例を示す断面図である。
第1部材21は第2穴部32を備え、第2部材22は第2調整部材30を配置している。位置決め部3は、前記した第1ピン5及び第1調整部材6と同様の構成とすることができる。つまり、位置決め部3は、載置台2の表面より内側に設けられ、かつ第2ピン31を支持して、第2ピン31の垂直方向への可動を調整する第2調整部材30を備える構成とすることができる。そして、この第2ピン31が載置台2の表面に対して垂直方向に可動し、第2調整部材30は、第2ピン31を載置台2の第2穴部32内に収納する方向に押されたときに、押された方向に反発するように設けることができる。
【0044】
第2調整部材30は、この変形例では板ばねで形成されている。第2調整部材30は、板ばねで形成した場合には、長方形の板材の両端側を所定角度に折り曲げて、中央の平坦部30aと平坦部30aの両端の支持脚部30b,30bとを形成する。そして、第2調整部材30は、平坦部30aの中央に第2ピン31の基端が取り付けられ、第2調整部材30の弾性変形によって、第2ピン31が第2穴部32から突出した状態から第2穴部32内に収納される垂直方向の範囲に可動できるように形成されている。つまり、第2穴部32と第2調整部材30とが対向するように設けられている。第2調整部材30は、第2ピン31を載置台2の第2穴部32内に収納する方向に押されたときに、平坦部30aが第2収納部33の底面に当接するまで弾性変形するか、又は平坦部30aが第2収納部33の底面に向かって湾曲するように弾性変形して、押された方向に好適に反発させることができる。第2部材22は、例えば、平面視が長方形となる凹状の第2収納部33を複数形成している。第2収納部33は、収納する第2調整部材30が弾性変形できる深さを有すると共に、第2調整部材30が弾性変形したときにその外縁に当接してその機能を維持できる広さに形成されている。
【0045】
この場合、第2ピン31は、垂直方向の移動下端で、ピンの先端が貼付対象部材Sに貼り合わされた貼付部材Aと高さを同じとし、垂直方向の移動上端で、第1ピン5のピン先端に支持された貼付部材Aの上面よりも高い位置になる長さを備えている。
【0046】
第2調整部材30をこの変形例のようにした場合は、前記したダイヤフラムDを用いて貼付対象部材Sと貼付部材Aとを貼り合わせる際に位置決め部3である第2ピン31が垂直方向に可動する。従って、位置決め部3を取り外さなくても貼付対象部材Sと貼付部材Aとの貼り合わせを行うことができる。
【0047】
図10は、第2ピン31及び第2調整部材30のさらなる変形例を示す断面図である。
図9では、第2調整部材30として板ばねを例示して説明したが、第2調整部材30は、板ばねに替えて
図10に示すようにコイルばねとすることができる。コイルばねの場合も板ばねと同様に貼付対象部材Sと貼付部材Aとの位置決めを行い、そして、第2ピン31を垂直方向に可動させてこれらを貼り合せることができる。第2調整部材30としてコイルばねを用いた場合、第1調整部材6と同等の構成とすることができる。つまり、この場合も第2ピン31にフランジ部3fを設けることによって第2穴部32からの抜けを防止できる。
第2調整部材30は、第1調整部材6と同様に公知の金属材料を使用することができ、ステンレスが好ましい。
【0048】
図11は、第2ピン31の先端に保護カバー35を設けた様子を示す断面図である。
貼付対象部材Sと貼付部材Aとの貼り合わせに前記した流体で膨らむダイヤフラムDを用い、かつ、第2ピン31を第2調整部材30によって垂直方向に可動する態様とした場合、第2ピン31の先端が直接ダイヤフラムDに接触することになる。そのためダイヤフラムDに傷や破損が発生する可能性が考えられる。このような事態を回避するため、例えば、断面が緩やかな曲面の円弧である保護カバー35を第2ピン31の先端に取り付けるとよい。保護カバー35の平面視の形状は、円形、矩形等任意の形状とすることができる。このようにすると、保護カバー35により第2ピン31の先端が直接ダイヤフラムDに接触することが回避され、ダイヤフラムDを傷付ける恐れがない。
【0049】
また、本実施形態の変形例についてさらに説明する。
図12は、本実施形態の一変形例を説明する平面図である。
図13は、本実施形態の他の変形例を説明する平面図である。
【0050】
本実施形態の変形例では、
図12に示すように、載置台2、具体的には第1部材21は、第2穴部32を備え、第2穴部32に配置された第2ピン31を有し、位置決め部3は、第2ピン31であり、第2ピン31は、貼付対象部材Sの側端及び貼付部材Aの側端が当接する位置を貼付対象部材S及び貼付部材Aの位置決め位置としている。つまり、この変形例では、第2ピン31に貼付対象部材Sの側端及び貼付部材Aの側端を当接させて、貼付対象部材S及び貼付部材Aの位置決めを行っている点が、相違している。
本変形例及び前記態様のいずれの位置決め方法であっても貼付対象部材S及び貼付部材Aの位置決めを適切に行うことができる。これらは任意に選択可能である。
【0051】
また、本実施形態の他の変形例では、
図13に示すように、載置台2は、第2ピン31が、貼付対象部材Sの少なくとも一部の共通貫通穴36が挿通する位置にあると共に、貼付部材Aの少なくとも一部の共通貫通穴36が挿通する位置にある位置を貼付対象部材S及び貼付部材Aの位置決め位置としている。つまり、この変形例では、貼付対象部材Sの共通貫通穴36と貼付部材Aの共通貫通穴36(すなわち、これらの共通貫通穴36はこれらの部材において重なる位置にある)に第2ピン31を挿通させて位置決めを行っている点が、相違している。
【0052】
共通貫通穴36の穴の直径は、第2ピン31の直径よりも大きければよいが、横方向へのずれが少ないこと、特に横方向へのずれがないことが好ましい。例えば、共通貫通穴36の穴の直径に対し、第2ピン31の直径が200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがさらに好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。これにより貼付対象部材Sと貼付部材Aとの位置合わせの精度を上げることができ、例えば、位置合わせの誤差を100μm以内、より好ましくは50μm以内に抑えることができる。例えば、第2ピン31の直径は1.0mm以上5.0mm以下とすることができる。共通貫通穴36の穴の直径は、(第2ピン31の直径)+(200μm以下)とすることができる。
【0053】
本変形例及び前記態様のいずれの位置決め方法であっても貼付対象部材S及び貼付部材Aの位置決めを適切に行うことができる。これらは任意に選択可能である。
続けて、本実施形態の変形例についてさらに説明する。
図1乃至
図3では、第1部材21の第1穴部4及び第1ピン5の数をそれぞれ合計9個としているが、これに限定されない。第1穴部4の数は2~8箇所でもよいし、10箇所以上でもよい。第1穴部4の数は、例えば、貼付部材Aの大きさ(面積)、厚さ、剛性、重さなどに応じて適宜増減できる。
【0054】
なお、貼付部材Aの剛性が高く、たわみが小さいほど第1ピン5の数を少なくすることができる。貼付部材Aの剛性は、例えば、貼付部材Aが接合部材であり、かつ接合部材と離型性のシートとが同じ材料である場合は厚みを厚くすれば高くなり、これらが異なる材料である場合はヤング率を大きくすることで高くなる。
【0055】
また、第1部材21の第1穴部4及び第1ピン5の数密度は、例えば、18本/m2以上とすることが好ましい。第1部材21の第1穴部4及び第1ピン5の数密度をこのようにすると、貼付部材Aを第1ピン5上で支持できる。第1部材21の第1穴部4及び第1ピン5の数密度が大きい程、貼付部材Aをたわみなくより安定して支持することができる。一方、第1部材21の第1穴部4及び第1ピン5の数密度が大きくなるほど、貼付対象部材Sの第1貫通穴S5hも増やす必要があり、ゆえに貼付対象部材Sの本来の機能が損なわれる懸念がある。そのため、第1部材21の第1穴部4及び第1ピン5の数密度の最大値は、そのような観点を考慮することが好ましい。
【0056】
また、
図1乃至
図3では、第1部材21の第1穴部4は合計9箇所設けられており、その全てに第1調整部材6及びこれに固定された第1ピン5が配置されている様子を示しているが、これに限定されない。例えば、合計9箇所設けられている第1穴部4の中から2箇所以上、好ましくは3箇所以上の第1穴部4を必要に応じて適宜選択して用いることができる。つまり、使用する第1ピン5と第1穴部4との選択などを適宜行うことができる。このようにすると、例えば、貼付対象部材Sが配線基板である場合などにおいて、配線がちょうど第1穴部4と同じ位置に形成されているような場合に、配線と同じ位置に位置する第1穴部4の使用を避けて第1ピン5を配置することができる。そのため、貼り合わせ治具1は、第1部材21の第1穴部4及び第1ピン5の数は可能な限り多く設置しておき、その中から必要に応じて適宜の数及び位置の第1ピン5を選択して使用できるようにしてもよい。このようにすると、貼り合わせ治具1は、必要でない箇所の第1ピン5を外して使用することができる。
【0057】
ここで、例えば、第1ピン5は、第1調整部材6に着脱自在に取り付けられ、貼付対象部材Sの有する第1貫通穴S5hの位置に応じて第1ピン5を挿通させるように選択し、第1ピン5と第1調整部材6とを取り付けるようにしてもよい。なお、これらの取付けは、ねじなどの任意の手段によって行うことができる。
また、例えば、
図3に示すように、第1ピン5と第1調整部材6とを固着させて一体化したものを必要に応じて第1収納部22a内に配置したり、第1収納部22aから取り出したりしてもよい。これらのいずれの態様によっても、適宜使用する第1ピン5の取捨選択と使用とが可能となる。
【0058】
また、位置決め部3は、貼付対象部材S及び貼付部材Aの位置決めができればよく、第2ピン31に限定されない。位置決め部3として、例えば、貼付対象部材S及び貼付部材Aのそれぞれの特定の位置に印字等されたマーカーを用いることができる。つまり、当該マーカーを目視やカメラなどで読み取り、マーカーの位置が所定の範囲となるよう貼付対象部材S及び貼付部材Aの位置を適宜調節するとよい。
【符号の説明】
【0059】
1 貼り合わせ治具
2 載置台
21 第1部材
22 第2部材
22a 第1収納部
22b 支持穴部
3 位置決め部
4 第1穴部
5 第1ピン
3f、5f フランジ部
6 第1調整部材
6a、30a 平坦部
6b、30b 支持脚部
30 第2調整部材
31 第2ピン
32 第2穴部
33 第2収納部
35 保護カバー
36 共通貫通穴
S3h 第2貫通穴
S5h 第1貫通穴
S 貼付対象部材
A 貼付部材
D ダイヤフラム(膜体)
S1 載置工程
S2 支持工程
S3 貼り合わせ工程