(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ユーザ間直交度推定方法及び基地局
(51)【国際特許分類】
H04B 7/0452 20170101AFI20231206BHJP
H04B 7/024 20170101ALI20231206BHJP
【FI】
H04B7/0452 110
H04B7/024
(21)【出願番号】P 2022545259
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2020032899
(87)【国際公開番号】W WO2022044328
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 大誠
(72)【発明者】
【氏名】岩國 辰彦
(72)【発明者】
【氏名】黄 俊翔
(72)【発明者】
【氏名】和井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】北 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鬼沢 武
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/199135(WO,A1)
【文献】特開2016-208113(JP,A)
【文献】特開2018-061152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0452
H04B 7/024
IEEE Xplore
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局が複数の場所に設置された複数の分散アンテナを備え、複数のユーザ局と同時無線伝送する分散アンテナシステムにおけるユーザ間直交度推定方法であって、
前記複数の分散アンテナの設置位置と、前記複数の分散アンテナの無線伝送相手の各ユーザ局へのビーム方向と、前記各ユーザ局のアンテナ高とに基づいて、前記各ユーザ局の位置を推定する位置推定ステップと、
前記位置推定ステップにおいて推定された前記各ユーザ局の位置と、前記複数の分散アンテナの設置位置とに基づいて干渉電波方向を推定する干渉方向推定ステップと、
前記ビーム方向と、前記干渉電波方向との角度差を算出することにより各ユーザ局間の直交度を推定する角度差算出ステップと、
を有するユーザ間直交度推定方法。
【請求項2】
前記角度差算出ステップにおいて、
前記複数のユーザ局から前記同時無線伝送数分のユーザ局の組を選択し、前記同時無線伝送数分のユーザ局の組に含まれる2局のユーザ局の全組み合わせについて各ユーザ局2局間の前記ビーム方向と前記干渉電波方向の角度差を各々算出し、
算出された前記各角度差の統計量に基づく評価値を算出する評価
値算出ステップと、
算出された前記評価値に基づいてユーザ局間直交度が閾値以上となるユーザ局の組を選択する選択ステップをさらに有する、
請求項1に記載のユーザ間直交度推定方法。
【請求項3】
前記角度差算出ステップにおいて、
前記複数のユーザ局から前記同時無線伝送を行う候補となるユーザ局を選択し、選択したユーザ局間について、各ユーザ局2局間の前記ビーム方向と前記干渉電波方向の角度差を各々算出し、
算出された前記各角度差の統計量に基づく評価値を算出する評価値算出ステップと、
算出された前記評価値に基づいてユーザ局の組を1局ずつ選択する選択ステップをさらに有する、
請求項1に記載のユーザ間直交度推定方法。
【請求項4】
前記選択ステップにおいて、前記ユーザ局の組の1局目となるユーザ局をランダムに選択する、
請求項3に記載のユーザ間直交度推定方法。
【請求項5】
前記選択ステップにおいて、前記ユーザ局の組の1局目となるユーザ局として受信電波強度が閾値以上となるユーザ局を選択する、
請求項3に記載のユーザ間直交度推定方法。
【請求項6】
前記選択ステップにおいて、前記基地局の分散アンテナ1局あたりの無線伝送相手のユーザ局数を所定の閾値未満で選択する、
請求項2から5のいずれか一項に記載のユーザ間直交度推定方法。
【請求項7】
前記選択ステップにおいて、選択したユーザ局の組み合わせで、前記ビーム方向と前記干渉電波方向の角度差がある閾値を下回った場合には、再度ユーザ局の選択を行う、
請求項3から6のいずれか一項に記載のユーザ間直交度推定方法。
【請求項8】
前記評価値算出ステップにおいて、前記評価値を前記各角度差の平均値とする、
請求項2から7のいずれか一項に記載のユーザ間直交度推定方法。
【請求項9】
前記評価値算出ステップにおいて、前記評価値を前記各角度差の最小値とする、
請求項2から7のいずれか一項に記載のユーザ間直交度推定方法。
【請求項10】
前記選択ステップにおいて、前記ユーザ局の選択を所定の回数繰り返して実施して、マルチユーザ伝送用ユーザ局の組み合わせを複数選択する、
請求項2から9のいずれか一項に記載のユーザ間直交度推定方法。
【請求項11】
基地局が複数の場所に設置された複数の分散アンテナを備え、複数のユーザ局と同時無線伝送する分散アンテナシステムにおける基地局であって、
前記複数の分散アンテナの設置位置と、前記複数の分散アンテナの無線伝送相手の各ユーザ局へのビーム方向と、前記各ユーザ局のアンテナ高とに基づいて、前記各ユーザ局の位置を推定する位置推定部と、
前記位置推定部において推定された前記各ユーザ局の位置と、前記複数の分散アンテナの設置位置とに基づいて干渉電波方向を推定する干渉方向推定部と、
前記ビーム方向と、前記干渉電波方向との角度差を算出することにより各ユーザ局間の直交度を推定する角度差算出部と、
を備える基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ間直交度推定方法及び基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルサイネージ、パブリックビューイング、エレクトロニック・スポーツ(以下「eスポーツ」という。)の普及により、4k/8k映像やAR(Augmented Reality)/VR(Virtual Reality)データなどの大容量ストリーム転送のニーズが顕在化している。さらに、ビッグデータを用いたAI(Artificial Intelligence)解析や車の自動運転の普及により、地図データ、映像データ及びセンサデータ等のストレージデータの大容量データ転送のニーズも顕在化している。
【0003】
大容量データ転送の対象となる端末が、サイネージディスプレイやビューイングディスプレイ等の固定端末だけでなく、スマートフォンやタブレット等のユーザ端末、車や列車等の移動体に設置された移動端末まで広がっている。これら端末に対してもこのような大容量転送が提供できる大容量高速無線通信の実現が望まれる。
【0004】
このような大容量高速無線通信としては、ミリ波帯やテラヘルツ波帯などの高周波数帯を活用する分散アンテナシステムが注目されている。ミリ波帯やテラヘルツ帯は1GHz以上の信号帯域が確保でき、BPSK(Binary Phase Shift Keying)やQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)の低CNR(carrier‐noise ratio)環境でも動作する変復調方式でも1Gbps以上のギガビットワイヤレスを達成できることや、64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)や256QAMの多値変調と空間多重伝送するMIMO技術を組み合わせると100Gbps以上の超高速無線伝送できるポテンシャルを秘めている。
【0005】
しかしながら、高周波数帯は、回折損失が大きいため、マイクロ波帯以下の低周波数帯と異なり、電波伝搬路間に人体や建物などの遮蔽物が存在する見通し外環境では、送信局から受信局まで電波が到達せず、無線伝送が難しい。このような見通し外環境での対策として、分散アンテナシステムが有効な手段である。分散アンテナシステムは、1つの基地局から多数の分散アンテナを張出し、各々を異なる場所に配置することにより、各端末に対して複数の方向から電波を送受信できるシステムである。これにより、各端末は、複数の分散アンテナのいずれかの分散アンテナと見通しが取れれば基地局と見通し通信が可能となる。そのため、超高速無線伝送を実現する高周波数帯を遮蔽環境や移動環境でも活用することが可能となる。
【0006】
一方、分散アンテナシステムでは、基地局が複数個の分散アンテナを備えることから、マルチユーザ伝送も可能であり、1ユーザの超高速化だけでなく、同時ユーザ伝送数を増やすことによる超大容量化も実現できる。ただし、マルチユーザ伝送時の無線品質は、ユーザ間干渉に依存する。そのため、各ユーザ間の直交度を推定し、直交度の高いユーザ局組を適切に選択することが必要である。例えば、分散アンテナシステムの配下にユーザ数が200局存在し、マルチユーザ伝送数を4局、すなわち、同時に4ユーザと同時無線伝送したいとする。この場合、200局の中から4局を選択した場合の無線品質は、選択した4局のユーザの互いのユーザ直交度に依存し、直交度が大きいほどユーザ間干渉が少なくなる。従って、200局から4局の選び方が、マルチユーザ伝送時の無線品質に大きく起因する。そして、適切な4局を選ぶためには、200局のユーザの各ユーザ間の直交度を類推できることが必要である。
【0007】
各ユーザ間の直交度を推定する方法の一つとして、全ユーザのMIMO(Multi-Input Multi-Out)チャネルから、各ユーザ間の直交度を推定する方法(以下「第1の推定方法」という。)が知られている(例えば、非特許文献1参照)。全ユーザのMIMOチャネルとは、基地局が備える全分散アンテナと、分散アンテナシステムの配下にある全ユーザ局のアンテナとの間の全組み合わせの伝搬チャネルである。例えば、基地局が備える各分散アンテナ数をMとし、各分散アンテナの番号を♯1,2,3,…,Mとする。ユーザ局数をNとし、各ユーザ局の番号を♯1,♯2,♯3,…,♯Nとし、簡単のために各ユーザ局が備えるアンテナを1個とする。この場合、基地局の各分散アンテナから各ユーザ局への下り回線での全ユーザのMIMOチャネルは、下記の式(1)のようにN行M列の行列Hで表される。
【0008】
【0009】
式(1)においてr1,r2,…,rNはユーザ局♯1,♯2,♯3,…,♯Nの受信信号を表し、t1,t2,…,tMは基地局の各分散アンテナ♯1,♯2,♯3,…,♯Mからの送信信号を表し、hijは、基地局の分散アンテナ♯jからユーザ局♯i間の伝搬チャネルを表す。この場合、この伝搬チャネルHが推定できれば、ユーザ局♯aとユーザ局♯b(1≦a,b≦N,a≠b)間の直交度は、MIMOチャネルHの中のユーザ局♯a,♯bに対応する行ベクトルV♯a,V♯bの直交度から推定することができる。行ベクトルV♯a及びV♯bは、式(2)のように表される。
【0010】
【0011】
例えば、V♯a,V♯bのなす角度θabを以下の式(3)により算出し、角度θabが90度に近いほど直交度が高いと推定することができる。
【0012】
【0013】
式(3)において、(V♯a・V♯b)はV♯aとV♯bとの内積値を表し、(|V♯a||V♯b|)はV♯aとV♯bとの2次のノルムを表す。
【0014】
この推定方法は、全ユーザのMIMOチャネルHが推定できることが前提である。ただし、高周波数帯の場合、この推定のためのオーバーヘッドが大きくなるケースが2点考えられる。
【0015】
1点目は、高周波数帯の場合、電波伝搬減衰が大きいため長距離無線伝送するためには、システム利得を向上させるためにアンテナ利得の大きい指向性アンテナを使用する必要があることに起因する。
【0016】
指向性アンテナを使用するケースとしては、以下の(i)及び(ii)が代表例として考えられる。
ケース(i):ユーザ局は無指向性アンテナ、基地局の分散アンテナは全て指向性アンテナ。
各ユーザ局は基地局の全分散アンテナを無線伝送。
基地局の全分散アンテナはあるユーザ局と無線伝送する時、そのユーザ局へビーム方向を向ける。
【0017】
ケース(ii):ユーザ局、基地局の分散アンテナとも指向性アンテナ。
各ユーザ局は基地局の全分散アンテナのうち、受信感度が最も大きい分散アンテナとのみ無線伝送。
各ユーザ局とその無線伝送相手の分散アンテナは互いにビーム方向を向ける。
【0018】
指向性アンテナを用いた場合の全ユーザのMIMOチャネルについて、ケース(i)を一例として考える。指向性アンテナのビーム方向が異なると、電波の放射方向により受信強度が変わるため、伝搬チャネルを指向性アンテナの指向性利得を含めたものと考えると、伝搬チャネルはビーム方向毎に変わる。従って、ケース(i)において、式(1)は、各ユーザ局♯i(i=1,2,…N)に対応する基地局の全分散アンテナのビーム方向組ごとに以下の式(4)のように表される。
【0019】
【0020】
式(4)において行列Biは、その第m行n列成分が基地局の分散アンテナ♯mのビーム方向がユーザ局♯iを向いているときのユーザ局♯n方向の指向性利得を示すM行N列の行列である。この行列Biがユーザ局♯i(i=1,2,…N)ごとに存在し、その結果、全ユーザのMIMOチャネルHiもユーザ局ごとに存在する。ユーザ局♯iとユーザ局♯jが同時無線伝送する場合の伝搬チャネルは、MIMOチャネルHiとHjの重ね合わせのHi+Hjとなり、両ユーザ間の直交度は、Hi+Hjに対して、式(3)の算出を行うこととなる。従って、任意のユーザ間の直交度を算出するためには、全ユーザ分のMIMOチャネルHi(i=1,2,…N)を全て取得する必要がある。
【0021】
なお、この全ユーザ分のMIMOチャネルHi(i=1,2,…N)の推定は、下り方向の場合、各基地局の分散アンテナ毎に、かつ、各ユーザへのビーム方向毎にパイロット信号を送信する必要がある。従って、分散アンテナ数×ユーザ数分のパイロット信号を時分割で送信する必要がある。一方、基地局の分散アンテナが無指向性アンテナの場合、式(1)の伝搬チャネルHを推定するだけで良く、分散アンテナ数分だけのパイロット信号の送信だけで済む。例えば、分散アンテナ数16、ユーザ数200の場合、指向性アンテナを使わない場合は16個のパイロット信号を時分割送信すれば良いだけに対して、指向性アンテナを使う場合は、16×200=3200個のパイロット信号を時分割で送信する必要があり、必要なパイロット送信が大幅に増える。
【0022】
なお、実際の無線伝送に必要なMIMOチャネルは、分散アンテナ数×マルチユーザ伝送数分必要だが、マルチユーザ伝送数が仮に分散アンテナ数と同じ16だとしても、その推定に必要なパイロット数が16×16=256個だけを時分割送信すれば良い。よって、ユーザ選択のために必要な全ユーザ分のMIMOチャネルHi(i=1,2,…N)に要するパイロット信号は、マルチユーザ伝送数よりも全ユーザ数が多い場合、その分だけマルチユーザ伝送によりも大きくなる。
【0023】
以上のように、高周波数帯の場合、長距離伝送のために指向性アンテナを使う必要があり、指向性アンテナを使う場合に、任意のユーザ間直交度を算出するためには全ユーザ分の全ユーザ分のMIMOチャネルHi(i=1,2,…N)を推定する必要がある。そのためには、分散アンテナ数×ユーザ数分のパイロット送信が必要であり、マルチユーザ伝送時に必要なパイロット送信(分散アンテナ数×マルチユーザ伝送数)よりも多い。特にユーザ数が大幅に増えた場合、この差が大きくなり、伝送効率が大きく劣化する。
【0024】
次に、高周波数帯の場合に、全ユーザのMIMOチャネルHの推定のオーバーヘッドが大きくなるケースの2点目を説明する。
2点目は、高周波数帯の場合、指向性アンテナだけでなく、遮蔽損失も大きいため、電波がある特定方向のみ放射、到来することに起因している。
【0025】
高周波数帯は建物や人などの遮蔽損失・回折損失が大きいため、これら遮蔽物が存在する方向からの電波は、見通し方向よりも著しく減衰する。見通し方向が複数あった場合にも、ユーザ局が指向性アンテナを使う場合は、ビーム方向以外の電波は指向性パターンにより減衰するため、見通し方向の電波だけを送受信すれば十分である。従って、ユーザ局が指向性アンテナを使い、かつ周辺が遮蔽環境の場合は、見通しが取れた分散アンテナ1局だけと無線伝送すれば十分である。これは前述するケース(ii)に該当する。
【0026】
他ユーザ局からの干渉電波も、疎の到来方向がビーム方向以外や遮蔽環境方向な大きく減衰するため、その干渉電波が影響する可能性は著しく低い。従って、システム利得向上やユーザ間干渉軽減のためのpre-coding/post-codingが不要であり、無線信号伝送用に全ユーザのMIMOチャネルHを推定すること自体が不要である。従って、ユーザ直交度のために式(3)を算出するには、全ユーザのMIMOチャネルHの推定を、無線信号伝送とは別に行なわなくてはいけない。しかも、その推定には全ユーザ数分以上のパイロット信号の時分割送信が必要となるため、大きなオーバーヘッドとなり、伝送効率が劣化する。
【0027】
以上から、高周波数帯の場合、全ユーザのMIMOチャネルHの推定には大きなオーバーヘッドが発生し、伝送効率が劣化する問題があった。そのためにユーザ間直交度の推定は、式(3)のような全ユーザのMIMOチャネルHから算出する方法では無く、全ユーザのMIMOチャネルHが不要な方法が望ましい。
【0028】
一方、基地局が分散アンテナ数1個、すなわちアンテナが1箇所設置の場合、全ユーザのMIMOチャネルHに使わず、各ユーザ局へのビーム方向の角度差からユーザ間直交度を推定する方法(以下「第2の推定方法」という。)が知られている(非特許文献2参照)。
【0029】
基地局アンテナが1箇所設置の場合、高周波数帯でマルチユーザ伝送する時には、同一アンテナからユーザ局毎に異なるビームを向け、そのビームを同時伝送する。この場合、基地局アンテナから干渉ユーザ局への干渉電波方向は、無線伝送相手のユーザ局のビーム方向と他ユーザ局のビーム方向の角度差と一致する。この角度差が大きいほど指向性利得パターンにより干渉電波が小さくなるため、ユーザ間直交度が向上する。従って、各ビームの角度差により、ユーザ間直交度が推定可能である。
【0030】
しかしながら、これを異なる場所へ複数アンテナを設置する分散アンテナの場合に適用する場合、各ユーザ局の無線伝送相手の分散アンテナが異なる。そのため、各ユーザ局へのビーム方向の起点が異なる。従って、各分散アンテナから干渉ユーザ局への干渉電波方向と、無線伝送相手のユーザ局のビーム方向と他ユーザ局のビーム方向の角度差は一致しない。
【0031】
以上の概略を図示したものを
図16及び
図17に示す。
図16には、基地局1と、2台のユーザ局2-1~2-2を備える無線で総システムにおいて、ユーザ局2-1~2-2が同じ分散アンテナ3と無線伝送を行う構成を示している。
図17は、基地局1と、2台のユーザ局2-1~2-2を備える無線で総システムにおいて、ユーザ局2-1~2-2が異なる分散アンテナ4及び5と無線伝送を行う構成を示している。
【0032】
図16に示す構成の場合、分散アンテナ3のユーザ局2-1へのビーム方向V
1から見て、ユーザ局2-2への干渉電波方向とビーム方向V
2の角度差は、両者の起点が一致するため同じである。
【0033】
一方、
図17に示す構成の場合、ユーザ局2-1とユーザ局2-2が基地局の分散アンテナ4と分散アンテナ5と各々無線伝送を行うものとし、分散アンテナ4及び5のユーザ局2-1,2-2方向へのビーム方向をビーム方向V
1,V
2とする。分散アンテナ4から見たユーザ局2-2の干渉電波方向は、
図17で示すように、ビーム方向V
1と分散アンテナ4とユーザ局2-2の方向の角度差となる。
【0034】
一方、ビーム方向V
1とビーム方向V
2の角度差は、
図17で示すとおり、起点が異なるため、起点を合わせてからの角度差となる。このように、両者は、ビーム方向V
1と比較する相手が、干渉電波方向の場合は分散アンテナ4からみたユーザ局2-2の方向であり、ビーム方向の角度差の場合は起点が分散アンテナ5からみたユーザ局2-2の方向であるため、起点が異なるため一致しない。これから、ビーム方向の角度差はユーザ局間の干渉電波方向、すなわち指向性アンテナを使う場合の干渉量を反映しないため、ビーム方向からユーザ間直交度を推定することは困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0035】
【文献】Bo Zhou, Baoming Bai, Ying Li, Daqing Gu, Yajuan Luo, “Chordal distance-based user selection algorithm for the multiuser MIMO downlink with perfect or practical CSIT”, IEEE AINA 2011, pp.77-82, Mar. 2011.
【文献】宮崎寛之、須山聡、奥山達樹、増野淳、奥村幸彦、“ハイブリッドビームフォーミングを用いる高SHF帯マルチユーザMassive-MIMOにおけるユーザ選択アルゴリズム”, 信学技報RCS2016-308, 2017年3月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
以上のように、非特許文献1に示す第1の推定方法では、全ユーザのMIMOチャネルHの取得に必要なパイロット信号がユーザ数に比例するため、伝送効率が劣化する問題がある。非特許文献2に示す第2の推定方法では、分散アンテナの場合、各ビーム方向の角度差が干渉電波方向と一致しないため、ユーザ間直交度を反映しておらず、ユーザ間直交度をより正確に推定することができない。このように、従来では、マルチユーザ伝送時のユーザ間直交度を推定する場合に、伝送効率が劣化してしまったり、基地局の分散アンテナ数が制限されてしまうという問題があった。
【0037】
上記事情に鑑み、本発明は、マルチユーザ伝送時のユーザ間直交度を推定する場合に、伝送効率の劣化を抑制するとともに、基地局の分散アンテナ数が複数局であってもユーザ間直交度を推定することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明の一態様は、基地局が複数の場所に設置された複数の分散アンテナを備え、複数のユーザ局と同時無線伝送する分散アンテナシステムにおけるユーザ間直交度推定方法であって、前記複数の分散アンテナの設置位置と、前記複数の分散アンテナの無線伝送相手の各ユーザ局へのビーム方向と、前記各ユーザ局のアンテナ高とに基づいて、前記各ユーザ局の位置を推定する位置推定ステップと、前記位置推定ステップにおいて推定された前記各ユーザ局の位置と、前記複数の分散アンテナの設置位置とに基づいて干渉電波方向を推定する干渉方向推定ステップと、前記ビーム方向と、前記干渉電波方向との角度差を算出することにより各ユーザ局間の直交度を推定する角度差算出ステップと、を有するユーザ間直交度推定方法である。
【0039】
本発明の一態様は、基地局が複数の場所に設置された複数の分散アンテナを備え、複数のユーザ局と同時無線伝送する分散アンテナシステムにおける基地局であって、前記複数の分散アンテナの設置位置と、前記複数の分散アンテナの無線伝送相手の各ユーザ局へのビーム方向と、前記各ユーザ局のアンテナ高とに基づいて、前記各ユーザ局の位置を推定する位置推定部と、前記位置推定部において推定された前記各ユーザ局の位置と、前記複数の分散アンテナの設置位置とに基づいて干渉電波方向を推定する干渉方向推定部と、前記ビーム方向と、前記干渉電波方向との角度差を算出することにより各ユーザ局間の直交度を推定する角度差算出部と、を備える基地局である。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、マルチユーザ伝送時のユーザ間直交度を推定する場合に、伝送効率の劣化を抑制するとともに、基地局の分散アンテナ数が複数局であってもユーザ間直交度を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】第1の実施形態における分散アンテナシステムの構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態における基地局の構成を示す図である。
【
図3】第1の実施形態における基地局が行うユーザ間直交度推定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】ユーザ局が3台備えられている場合の分散アンテナシステムの構成を示す図である。
【
図5】第2の実施形態における基地局の構成を示す図である。
【
図6】第2の実施形態における基地局が行うユーザ局選択処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】第3の実施形態における基地局の構成を示す図である。
【
図8】第3の実施形態における基地局が行うユーザ局選択処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】第4の実施形態における基地局の構成を示す図である。
【
図10】第4の実施形態における基地局が行うユーザ局選択処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】第5の実施形態における基地局の構成を示す図である。
【
図12】第5の実施形態における基地局が行うユーザ局選択処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】第5の実施形態における基地局が行うユーザ局選択処理を第4の実施形態適用した場合のユーザ局選択処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】第6の実施形態における基地局の構成を示す図である。
【
図15】第6の実施形態における基地局が行うユーザ局選択処理の流れを示すフローチャートである。
【
図16】従来のユーザ間直交度の推定方法を説明するための図である。
【
図17】従来のユーザ間直交度の推定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(概要)
本発明の分散アンテナシステムにおける基地局は、マルチユーザ伝送時に、ユーザ間直交度の高いユーザ局の組を適切に選択するために、非特許文献1のようにオーバーヘッドが大きく伝送効率の劣化する全ユーザのMIMOチャネルHを推定することなく、非特許文献2のように、分散アンテナ数を1個に限定することなく、ユーザ間直交度を推定する。具体的には、基地局は、非特許文献2における基地局アンテナのビーム方向だけでなく、ユーザ局の位置を推定することにより、複数の分散アンテナを備える分散アンテナシステムであって、干渉電波方向を算出することを可能とし、ユーザ間直交度を類推する。
【0043】
ユーザ局の位置及び干渉電波方向の算出は以下のように行う。高周波数帯の特徴を鑑み、基地局の分散アンテナは、長距離伝送のために指向性アンテナを使用し、かつ遮蔽損失・回折損失が大きいため、各ユーザ局とは見通し環境で無線伝送する可能性が高い。この特徴を活かして、各分散アンテナのビーム方向を無線伝送相手のユーザ局の存在方向とみなし、かつ、各ユーザ局のアンテナ高が類推できるとして、基地局は、ビーム方向とユーザ局のアンテナ高一定の平面との交点を各ユーザ局位置と推定する。そして、基地局は、無線伝送相手のユーザ局方向をビーム方向とし、他ユーザ局の方向を、類推したユーザ局位置から求め、角度差を算出する。角度差は、角度差を算出する2つのベクトルの起点が同じ分散アンテナの位置となっているため干渉電波方向と等価となり、この角度差をユーザ間直交度として類推することが可能となる。
【0044】
類推した他ユーザ局の位置が正しければ、算出された角度差は、基地局が備える分散アンテナの指向性アンテナのビーム中心からのずれそのもの、すなわち干渉電波方向と一致する。そのため、角度差が大きいほど、指向性利得が小さくなり、他ユーザ局へ与える干渉電波が減衰するため、ユーザ間直交度を反映した量となる。類推した他ユーザ局の位置の正しさは、ユーザ局のアンテナ高が類推できることと、分散アンテナのビーム方向に無線伝送相手のユーザ局が実際に存在するかどうかに依存する。
【0045】
前者については、例えば屋内環境などにおいては人が使用する端末高は床面から0~1.5m程度であり、屋外環境においても、道路や歩道や広場などサービスエリアがある程度水平なエリアではあれば人が使用する端末高は地面高から0~1.5m程度と類推可能である。後者についても、先述したとおり、高周波数帯は遮蔽損失・回折損失が大きいため、見通し環境での電波伝搬が支配的であり、反射波が生じたとしても、基地局の分散アンテナを周辺に遮蔽物が無い環境に設置すれば、ユーザ局周辺の遮蔽物からの反射波が支配的であり、この場合、分散アンテナから見たユーザ局方向は、見通し波方向とその反射波方向はほぼ同じである。よって、分散アンテナのビーム方向と無線伝送相手のユーザ局の存在方向が一致するケースは多いと考えられる。
【0046】
上述した方法により本発明では、各分散アンテナの位置、ビーム方向、ユーザ局のアンテナ高(高さ一定の仮定)に基づいて、ユーザ間直交度を推定する。そのため、従来の第1の推定方法のように全ユーザのMIMOチャネルHの推定は不要であり、従来の第2の推定方法のように分散アンテナ数が1局以外の複数局であっても、ユーザ間直交度を推定することが可能になる。以下の説明では、第1の実施形態において上述した方法によりユーザ間直交度を推定する具体的な構成を示し、第2の実施形態~第6の実施形態においてマルチユーザ伝送時のユーザの選択方法について説明する。
【0047】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における分散アンテナシステム100の構成を示す図である。分散アンテナシステム100は、基地局10と、複数のユーザ局20-1~20-2とを備える。
図1では、分散アンテナシステム100においてユーザ局20が2局備えられる構成を示しているが、ユーザ局20は3局以上備えられてもよい。
【0048】
基地局10は、ユーザ局20-1~20-2との間でマルチユーザ伝送による通信を行う。基地局10は、複数の分散アンテナ11-1~11-k(kは2以上の整数)を備える。
図1では、基地局10が、分散アンテナ11を2局(分散アンテナ11-1~11-2)備える構成を示している。分散アンテナ11-1~11-2のそれぞれは、異なる場所に配置される。
【0049】
ユーザ局20-1~20-2は、分散アンテナ11を介して基地局10との間で通信を行う。ユーザ局は、例えばスマートフォン、タブレット端末及び携帯電話等の情報処理装置である。各分散アンテナ11とユーザ局20の無線伝送は、上述したケース(ii)の形態で行うものとして説明する。すなわち、各ユーザ局20は、基地局10の全分散アンテナ11-1~11-2から送信される電波の受信強度が最も大きい分散アンテナ11の1局とのみ無線伝送するものとする。
【0050】
一例として、以下の説明では、分散アンテナ11-1とユーザ局20-1、分散アンテナ11-2とユーザ局20-2の組が無線伝送するものとする。まず具体的な説明を行うにあたり、以下のように定義する。
分散アンテナ11-1及び11-2の位置をそれぞれY1,Y2
分散アンテナ11-1,11-2の無線伝送相手のユーザ局20-1,20-2へのビーム方向をそれぞれV11,V22
ユーザ局20-1及び20-2の推定位置をそれぞれX1’,X2’
【0051】
図2は、第1の実施形態における基地局10の構成を示す図である。基地局10は、分散アンテナ11-1~11-2、制御部12及び記憶部13を備える。
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部12は、プログラムを実行することによって、位置推定部121、干渉方向推定部122、角度差算出部123の機能を実現する。これらの機能部のうち一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。
【0052】
位置推定部121は、各分散アンテナ11の設置位置と、分散アンテナ11の無線伝送相手の各ユーザ局20へのビーム方向と、各ユーザ局のアンテナ高とに基づいて、各ユーザ局20-1,20-2の位置を推定する。
【0053】
干渉方向推定部122は、位置推定部121によって推定されたユーザ局20の位置と、分散アンテナ11の位置とに基づいて干渉電波方向を推定する。具体的には、干渉方向推定部122は、分散アンテナ11-1において、干渉を与える(下り回線)及び干渉を受ける(上り回線)ユーザ局20-2に対してその干渉電波方向I12を分散アンテナ11-1の位置Y1とユーザ局20-2の推定位置X2’とに基づいて推定する。干渉方向推定部122は、分散アンテナ11-2において、干渉を与える(下り回線)及び干渉を受ける(上り回線)ユーザ局20-1に対してその干渉電波方向I21を分散アンテナ11-2の位置Y2とユーザ局20-1の推定位置X1’とに基づいて推定する。
【0054】
角度差算出部123は、ビーム方向と、干渉方向推定部122によって推定された干渉電波方向とに基づいて、角度差を算出する。具体的には、角度差算出部123は、ビーム方向V11とユーザ局20-2の干渉電波方向I12とに基づいて、分散アンテナ11-1の位置Y1からみたユーザ局20-1の方向とユーザ局20-2の方向の角度差θ12を算出する。
【0055】
角度差θ12は、ユーザ局20-1のユーザ局20-2に対するユーザ直交度を表す。すなわち、角度差θ12を推定することによってユーザ局20-1のユーザ局20-2に対するユーザ直交度を推定することができる。逆に、角度差θ21は、ユーザ局20-2のユーザ局20-1に対するユーザ直交度を表す。すなわち、角度差θ21を推定することによってユーザ局20-2のユーザ局20-1に対するユーザ直交度を推定することができる。
【0056】
記憶部13は、アンテナ情報131及び角度差情報132を記憶する。記憶部13は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、マスクROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などのうち1つ以上により構成されている。
【0057】
アンテナ情報131は、分散アンテナ11に関する情報である。アンテナ情報131は、例えば分散アンテナ11の設置位置Y1,Y2の情報含む。なお、アンテナ情報131には、ビーム方向の情報が取得された場合には、分散アンテナ11毎にビーム方向の情報が含まれてもよいし、無線伝送相手のユーザ局20-1,20-2の情報が含まれていてもよい。
【0058】
角度差情報132は、角度差算出部123によって算出された角度差の情報である。
【0059】
図3は、第1の実施形態における基地局10が行うユーザ間直交度推定処理の流れを示すフローチャートである。
図3の処理は、基地局10がマルチユーザ伝送を行う前に実行される。
位置推定部121は、各ユーザ局20-1,20-2の位置を推定する(ステップS101)。その準備として、各分散アンテナ11-1,11-2のビーム方向の直線式を以下の式(5)により定める。
【0060】
【0061】
式(5)においてY1,Y2は分散アンテナ11-1,11-2の位置を表し、V11,V22は分散アンテナ11-1,11-2の無線伝送相手のユーザ局20-1,20-2へのビーム方向を表し、t1、t2は各直線式の媒介変数を表す。
【0062】
ビーム方向を取得する方法は、アナログビームフォーミングであれば、ビームIDなどのビーム識別子とビーム方向を予め1対1対応させておき、無線伝送時に使用したビーム識別子を取得するような方法で取得してもよい。アナログセクタビームであれば、基地局10は、同じくセクタIDなどのセクタ識別子とセクタ方向を予め1対1対応させておき、無線伝送時に使用したセクタ識別子を取得するような方法でビーム方向を取得してもよい。デジタルビームフォーミングであれば、基地局10は、pre-codingパターンとビーム方向を予め1対1対応させておき、無線伝送時に使用したpre-codingパターンを取得する方法ビーム方向を取得してもよい。基地局10は、複数の固定指向性ビームのサブアンテナを1か所に備え、各サブアンテナとビーム方向を1対1対応させておき、無線伝送時に使用したサブアンテナ情報を取得してもよい。複数のビーム方向を実現でき、無線伝送時にどのビーム方向を使ったかの情報を取得できるような方法であれば何でも良い。
【0063】
分散アンテナ11-1,11-2のビーム方向V11,V22は、IEEE802.11adや5G New Radio(NR)のような高周波数帯無線においては、ユーザ局20-1,20-2に対して最も受信強度が大きくなるように選択される。そのため、ユーザ局20-1,20-2は、分散アンテナ11-1,11-2の位置Y1,Y2から見て、式(5)の直線方向にビーム幅の誤差はあるとは言え、おおよそ存在する。
【0064】
次に、ユーザ局20-1,20-2のアンテナ高をhと仮定する。例えば、屋内環境ならば床面高、屋外環境ならば地面高がその一例であり、おおよそのユーザ局が同じ平面内に存在する場合はこの仮定は妥当性がある。その時、ユーザ局20-1,20-2の位置は、高さの座標軸をz軸とすると、z=h平面上に存在する。この時、ユーザ局20-1,20-2の位置X1,X2は、式(5)の直線式と平面z=hの交点から推定できる。この推定位置をX1’,X2’とする。例えば、Y1,Y2,V11,V22の3次元ベクトル成分を式(6)とおくと、X1’,X2’の3次元ベクトル成分は以下の式(6)のようになる。
【0065】
【0066】
干渉方向推定部122は、分散アンテナ11-1において、干渉を与える(下り回線)及び干渉を受ける(上り回線)ユーザ局20-2に対してその干渉電波方向I12を、分散アンテナ11-1の位置Y1とユーザ局20-2の推定位置X2’から以下の式(7)により求める(ステップS102)。
【0067】
【0068】
そして、角度差算出部123は、分散アンテナ11-1の位置Y1からみたユーザ局20-1の方向とユーザ局20-2の方向の角度差θ12を、ビーム方向V11とユーザ局20-2の干渉電波方向I12から以下の式(8)に基づいて算出する(ステップS103)。
【0069】
【0070】
式(8)において(V11・I12)はV11とI12との内積値を表し、(|V11|、|I12|)は2次元ノルムを表す。この角度差θ12は、分散アンテナ11-1のビーム方向の中心から、ユーザ局20-2の方向の角度差に相当し、分散アンテナ11-1の指向性アンテナがユーザ局20-2の方向の指向性利得を反映する。すなわち、この角度差が0度であればユーザ局20-2の方向はビーム方向中心そのものであり、45度であればビームの中心方向から45度ずれた指向性利得がユーザ局20-2へのアンテナ利得となり、分散アンテナ11-1がユーザ局20-2へ与える干渉量(下り回線)、またはユーザ局20-2から受ける干渉量(上り回線)を反映する。
【0071】
同様にして、分散アンテナ11-2の位置Y2からみたユーザ局20-2の方向とユーザ局20-1の方向の角度差θ21は、分散アンテナ11-2において干渉を与える及び受けるユーザ局20-1に対してその干渉電波方向I21=X’-Y2と、ビーム方向V22から以下の式(9)に基づいて算出することができる。
【0072】
【0073】
同様に、この角度差θ21は、分散アンテナ11-2がユーザ局20-1へ与える干渉量(下り回線)及びユーザ局20-1から受ける干渉量(上り回線)を反映する。
以上のように、角度差θ12、θ21(以下「ユーザ局2局間の角度差」という。)は、ユーザ局20-1とユーザ局20-2間の上り回線、下り回線のユーザ干渉量を反映する。すなわち、ユーザ局20-1とユーザ局20-2のユーザ間直交度を反映し、ユーザ間直交度を推定することが可能である。
【0074】
以上のように構成された分散アンテナシステム100によれば、各分散アンテナ11の設置位置、分散アンテナ11のビーム方向及び各ユーザ局20のアンテナ高に基づいて、各ユーザ局20の位置を推定し、推定した各ユーザ局20の位置から干渉方向を推定し、分散アンテナ11のビーム方向と干渉方向の角度差に基づいてユーザ間直交度を推定することができる。このように、分散アンテナシステム100では、従来の第1の推定方法のように、オーバーヘッドが大きく伝送効率が劣化する全ユーザのMIMOチャネルを推定する必要がない。さらに、複数の分散アンテナ11を備える場合であってもよい、ユーザ間直交度を推定することが可能となる。そのため、マルチユーザ伝送時のユーザ間直交度を推定する場合に、伝送効率の劣化を抑制するとともに、基地局の分散アンテナ数が複数局であってもユーザ間直交度を推定することが可能になる。
【0075】
第1の実施形態の変形例について説明する。
上記の実施形態では、分散アンテナシステム100に分散アンテナ11が2局、ユーザ局20が2局備えられる構成を示したが、分散アンテナ11が3局(分散アンテナ11-1~11-3)、ユーザ局20が3局(ユーザ局20-1~20-3)を備えられる場合も上述した処理と同様の処理を行うことによって、ユーザ間直交度を推定することができる。
図4を用いて具体的に説明する。
【0076】
図4は、ユーザ局が3台備えられている場合の分散アンテナシステム100の構成を示す図である。分散アンテナシステム100は、基地局10と、複数のユーザ局20-1~20-3とを備える。
図4における基地局10は分散アンテナ11を3局備える。分散アンテナ11-1,11-2,11-3の無線伝送相手をユーザ局20-1,20-2,20-3とする。前述と同じ通り、まず位置推定部121は、分散アンテナ11-1,11-2,11-3の位置Y
1,Y
2,Y
3とビーム方向V
11,V
22,V
33からビーム方向の各直線式を以下の式(10)のように定める。
【0077】
【0078】
位置推定部121は、式(10)により得られる直線式と、ユーザ局20-1,20-2,20-3のアンテナ高x=h平面上の交点からユーザ局20-1,20-2,20-3の推定位置X1’,X2’,X3’を算出する。そして、干渉方向推定部122は、分散アンテナ11-1において、干渉を与えるまたは干渉を受けるユーザ局20-2、ユーザ局20-3の干渉電波方向I12、I13を前述と同様に以下の式(11)から算出する。
【0079】
【0080】
そして、アンテナ情報131は、分散アンテナ11-1のビーム方向V11とI12、I13の角度差θ12、θ13を以下の式(12)に基づいて算出する。
【0081】
【0082】
角度差θ12、θ13は、前述と同様に、分散アンテナ11-1がユーザ局20-2, ♯3へ与える干渉量(下り回線)、またはユーザ局20-2,20-3から受ける干渉量(上り回線)を反映する。式(10)~(12)と同様に、分散アンテナ11-2のビーム方向V22と、分散アンテナ#において干渉を与える及び干渉を受けるユーザ局20-1,20-3への干渉電波方向I21、I23の角度差θ21、θ23、分散アンテナ11-3のビーム方向V33と、分散アンテナ11-3において干渉を与える及び干渉を受けるユーザ局20-1,20-2への干渉電波方向I31、I32の角度差θ31、θ32を算出することが可能である。
【0083】
以上より、角度差θ12、θ13、θ21、θ23、θ31、θ32は、ユーザ局20-1とユーザ局20-2とユーザ局20-3間の上り回線、下り回線のユーザ干渉量を反映する。すなわち、ユーザ局20-1とユーザ局20-2とユーザ局20-3間のユーザ間直交度を反映し、ユーザ間直交度が推定可能である。
【0084】
以上、分散アンテナ局数2局、3局、ユーザ局数2局、3局の場合の発明の実施形態を説明したが、分散アンテナ局数が4局以上、ユーザ局数が4局以上、また、分散アンテナ局数とユーザ局数が同じ局数でない場合にも、前述と同様に各分散アンテナのビーム方向と干渉電波方向の角度差を算出することが可能であり、ユーザ間直交度を推定することが可能である。
【0085】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態におけるユーザ局20-1と20-2との2局間の角度差を用いて、全ユーザ局20からマルチユーザ伝送数分のユーザ局組を選択する実施形態である。具体的には、全ユーザ局20からマルチユーザ伝送数分を選択するユーザ局20の組の全組み合わせについて、ユーザ局2局間の角度差を計算し、その角度差に基づき、最適なユーザ局を選択する方法である。すなわち、全組み合わせの角度差を全検索して最適なユーザ局を選択する方法である。
【0086】
図5は、第2の実施形態における基地局10aの構成を示す図である。基地局10aは、分散アンテナ11-1~11-2、制御部12a及び記憶部13aを備える。
制御部12aは、CPU等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部12aは、プログラムを実行することによって、位置推定部121、干渉方向推定部122、角度差算出部123a、評価値算出部124、判定部125及び選択部126の機能を実現する。これらの機能部のうち一部または全部は、ASICやPLD、FPGAなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。
【0087】
制御部12aは、角度差算出部123に代えて角度差算出部123aを備える点、評価値算出部124、判定部125及び選択部126を新たに備える点で制御部12と構成が異なる。制御部12aは、他の構成については制御部12と同様である。そのため、制御部12a全体の説明は省略し、角度差算出部123a、評価値算出部124、判定部125及び選択部126について説明する。
【0088】
角度差算出部123aは、ユーザ局20選択の全組み合わせについて、各ユーザ局2局間のビーム方向と干渉電波方向の角度差をそれぞれ算出する。
評価値算出部124は、角度差算出部123によって推定された各角度差の統計量に基づく評価値を算出する。
【0089】
判定部125は、評価値算出部124によって算出された評価値に基づく判定を行う。例えば、判定部125は、評価値算出部124によって新たに算出された評価値(以下「現評価値」という。)と、既に評価値算出部124によって算出された評価値(以下「過去評価値」という。)とを比較して、現評価値が最大であるか否かを判定する。
【0090】
選択部126は、評価値算出部124によって算出された評価値に基づいて、ユーザ局間直交度が閾値以上のユーザ局組を、マルチユーザ伝送を行うユーザ局組として選択する。例えば、選択部126は、ユーザ局間直交度が最も高いユーザ局組を選択する。ユーザ局間直交度が最も高いということは、評価値が最も高いということである。
【0091】
記憶部13aは、アンテナ情報131、角度差情報132及び評価値情報133を記憶する。記憶部13aは、例えば、HDDやSSD、マスクROM、EPROM、EEPROMなどのうち1つ以上により構成されている。
評価値情報133は、評価値算出部124によって算出された評価値の情報である。なお、評価値情報133として、記憶部13aに記録されるのは値が最大となった評価値の情報である。評価値情報133には、ユーザ局の組み合わせの情報が対応付けられてもよい。
【0092】
図6は、第2の実施形態における基地局10aが行うユーザ局選択処理の流れを示すフローチャートである。全ユーザ局数をN局、マルチユーザ伝送数をS局とする(S≦Nとする)。
まず選択部126は、全ユーザ局N局からマルチユーザ伝送数分のS局の1組をランダムに選択する(ステップS201)。角度差算出部123aは、選択部126が選択したS局のユーザ局組に対して、2局の全組み合わせについて、前述のユーザ局2局間の角度差を算出する(ステップS202)。
【0093】
評価値算出部124は、角度差算出部123aによって算出された全角度差に基づいて評価値を算出する(ステップS203)。評価値としては、全角度差の平均値が用いられてもよいし、全角度差の最小値が用いられてもよい。その他、全角度差の統計的な大きさを示すものであれば、本評価値としてはいずれが用いられてもよい。
【0094】
評価値として平均値を用いた場合、全角度差の平均値は、全角度差の中の1部に特異な値、例えば、著しく大きな値、または小さな値などがあった場合でも、この特異な値引っ張られることなく、角度差全体を評価できるものであり、全角度差の代表的な値として評価指針に用いることができる。
【0095】
評価値として最小値を用いた場合、全角度差の最小値は、対象とするユーザ局2局間の全組み合わせの角度差の中から最小値を用いるものであり、選択したユーザ局組の中から干渉が最も大きいユーザ局2局間の干渉量を反映するものである。従って、本発明を評価指針として用いると、干渉の最悪値を評価指針として用いることと等価となり、この角度差の最小値の最大となるユーザ局組を選択することは、この干渉の最悪値を最も抑えるユーザ局組を選択することが可能となる。従って、無線品質の最小値の底上げするようなユーザ選択が可能となる。
【0096】
判定部125は、評価値情報133を参照し、評価値算出部124によって算出された評価値(現評価値)が、これまで選択したS局のユーザ局組の評価値(過去評価値)の中で最大値であるか否かを判定する(ステップS204)。
【0097】
現評価値が最大値である場合(ステップS204-YES)、判定部125は現評価値とそのユーザ局組を評価値情報133として記録する(ステップS205)。なお、処理開始時には、記憶部13aには評価値情報133が記録されていない。この場合、判定部125は、現評価値が最大値であると判定する。
一方、現評価値が最大値ではない場合(ステップS204-NO)、基地局10aはステップS205の処理を実行せずに、ステップS206の処理を行う。
【0098】
基地局10aは、ステップS202からステップS205までの処理(ステップS204の処理がNOの場合には、ステップS205の処理は行わなくてよい)を、全ユーザ局N局からS局のユーザ局組の全組み合わせについて行う。そのため、判定部125は、全てのS局のユーザ局組に対してステップS202からステップS205までの処理行ったか否かを判定する(ステップS206)。
【0099】
全てのS局のユーザ局組に対してステップS202からステップS205までの処理を行った場合(ステップS206-YES)、選択部126は評価値情報133に記録されているS局のユーザ局組を最終的なマルチユーザ伝送数S局のユーザ局組として選択する(ステップS207)。
一方、全てのS局のユーザ局組に対してステップS202からステップS205までの処理行っていない場合(ステップS206-NO)、選択部126は全ユーザ局から別のS局のユーザ局を選択する(ステップS208)。例えば、選択部126は、未選択のS局のユーザ局を選択する。
【0100】
なお、本実施形態例は、全ユーザ局からマルチユーザ伝送数分を選択するユーザ局組の全組み合わせの角度差を全検索する手法の実施形態の一例を示したが、全検索する方法であればその他の実施形態でも構わない。
【0101】
以上のように構成された第2の実施形態における分散アンテナシステム100によれば、ユーザ局2局間の角度差を評価指針として、全ユーザ局からマルチユーザ伝送数分だけユーザ選択する方法を実現する。本発明により、高周波数帯の分散アンテナシステムにおいて、マルチユーザ伝送時に、伝送効率を劣化させることなく、分散アンテナが複数個ある場合でも、ユーザ間直交度が高い適切なユーザ局を選択することが可能となる。
【0102】
(第3の実施形態)
第2の実施形態におけるユーザ選択方法では、全ユーザ局N局からマルチユーザ伝送数S局の全選択のユーザ局組(NCS通り)全てにおいて、ユーザ局2局間の角度差(SC2通り)を算出して、SC2通りの全角度差から統計値に該当する評価値を計算し、その最大のユーザ局組を選択していた。すなわち、ユーザ局2局間の角度差の計算を合計NCS×SC2回行う必要があった。この計算回数は、全ユーザ局数Nまたはマルチユーザ伝送数Sが大きくなると膨大になる。例えば、全ユーザ局数が200局、マルチユーザ伝送数が4局の時、200C4×4C2=388,109,700回の計算回数が必要となる。
【0103】
そこで、第3の実施形態は、計算回数を削減することを目的とした実施形態である。具体的には、第3の実施形態では、マルチユーザ伝送数Sに対して、S局全部を1回で選択するのではなく、1局ずつ選択していく。そして、新規に1局選択する時は、選択済みのユーザ局とユーザ局2局間の角度差が最も大きいユーザ局を選択していく。
【0104】
図7は、第3の実施形態における基地局10bの構成を示す図である。基地局10bは、分散アンテナ11-1~11-2、制御部12b及び記憶部13bを備える。
制御部12bは、CPU等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部12は、プログラムを実行することによって、位置推定部121、干渉方向推定部122、角度差算出部123、評価値算出部124、判定部125及び選択部126bの機能を実現する。これらの機能部のうち一部または全部は、ASICやPLD、FPGAなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。
【0105】
制御部12bは、選択部126に代えて選択部126bを備える点で制御部12と構成が異なる。制御部12bは、他の構成については制御部12と同様である。そのため、制御部12b全体の説明は省略し、選択部126bについて説明する。
【0106】
判定部125bは、第2の実施形態のようにS局全部を1回で選択するのではなく、ユーザ局20を1局ずつ選択する。
【0107】
記憶部13bは、アンテナ情報131、角度差情報132、評価値情報133、選択ユーザ局リスト134及び残ユーザ局リスト135を記憶する。記憶部13bは、例えば、HDDやSSD、マスクROM、EPROM、EEPROMなどのうち1つ以上により構成されている。
選択ユーザ局リスト134は、マルチユーザ伝送時に既に選択されたユーザ局20の情報が登録されたリストである。
残ユーザ局リスト135は、マルチユーザ伝送時に未選択のユーザ局20の情報が登録されたリストである。
【0108】
図8は、第3の実施形態における基地局10bが行うユーザ局選択処理の流れを示すフローチャートである。第3の実施形態では、
図8の処理開始時には、初期状態として選択ユーザ局リスト134をゼロ、残ユーザ局リスト135に全ユーザ局20の情報が登録されている。
選択部126bは、残ユーザ局リスト135から最初の1局を選択する(ステップS301)。最初の1局目の選択方法として、選択部126は、ランダムに選択してもよいし、受信電波強度が一番大きいユーザ局20を選択してもよい。
【0109】
最初の1局目の選択方法としてランダムに選択することは、最初の1局目の選択が偏りを持たないようにすることができる。最終的に選択したユーザ局がマルチユーザ伝送した時のユーザ間干渉、すなわち無線品質が、この最初の1局目の選択依存性が強く、かつ、その最適な選択が分からない場合に、最初の1局目の選択に偏りを持たせないよう、均一に選択することが可能である。
【0110】
最初の1局目の選択方法として受信電波強度が最も大きいユーザ局20を最初の1局目に選択することは、本マルチユーザ伝送時にこの干渉耐性の高いユーザ局を必ず組み入れることが可能となり、本マルチユーザ伝送の無線品質を向上させる効果がある。
【0111】
選択部126bは、最初に選択したユーザ局20の情報を選択ユーザリスト134に追加し、残ユーザ局リスト135から削除することによって選択ユーザリスト134及び残ユーザ局リスト135を更新する(ステップS302)。選択部126bは、選択ユーザ局リスト134のユーザ局20について既に選択されたとみなして、残ユーザ局リスト135に登録されているユーザ局20の中から次に選択するユーザ局を1局仮選択する(ステップS303)。以下、仮選択されたユーザ局20を仮選択ユーザ局記載する。
【0112】
角度差算出部123は、仮選択ユーザ局と、選択ユーザ局リスト134に登録されているユーザ局20とのユーザ局2局間の角度差を算出する(ステップS304)。なお、選択ユーザ局リスト134にユーザ局が1局しか登録されていない場合、角度差算出部123は、その1局に対して、複数局登録されている場合には各ユーザ局20に対して、ユーザ局2局間の角度差を算出する。角度差算出部123は、この処理を選択ユーザ局リスト134に登録されている全ユーザ局20に対して行う。
【0113】
その後、評価値算出部124は、角度差算出部123によって算出された全角度差の統計量に基づき評価値を算出する(ステップS305)。判定部125は、評価値情報133を参照し、評価値算出部124によって算出された評価値(現評価値)が、これまで選択したS局のユーザ局組の評価値(過去評価値)の中で最大値であるか否かを判定する(ステップS306)。
【0114】
現評価値が最大値である場合(ステップS306-YES)、判定部125は現評価値と仮選択ユーザ局の情報とを評価値情報133として記録する(ステップS307)。なお、処理開始時には、記憶部13aには評価値情報133が記録されていない。この場合、判定部125は、現評価値が最大値であると判定する。
の仮選択ユーザ局を記録する
一方で、現評価値が最大値ではない場合(ステップS306-NO)、基地局10bはステップS307の処理を実行せずに、ステップS308の処理を実行する。
【0115】
基地局10bは、ステップS304からステップS307までの処理(ステップS306の処理がNOの場合には、ステップS307の処理は行わなくてよい)を、残ユーザ局リスト135に登録されている全ユーザ局20に対して行う。そのため、判定部125は、残ユーザ局リスト135に登録されている全ユーザ局20に対してステップS304からステップS307までの処理を行った否かを判定する(ステップS308)。
【0116】
残ユーザ局リスト135に登録されている全ユーザ局20に対してステップS304からステップS307までの処理を行っていない場合(ステップS308-NO)、選択部126bは残ユーザ局リスト135に登録されているユーザ局20の中から未実施のユーザ局20を1局仮選択する(ステップS309)。そして、仮選択されたユーザ局20に対して、基地局10bはステップS304からステップS307までの処理を実行する。
【0117】
残ユーザ局リスト135に登録されている全ユーザ局20に対してステップS304からステップS307までの処理行った場合(ステップS308-YES)、選択部126bは評価値が最大の仮選択ユーザ局20を新規選択ユーザ局として、選択ユーザ局リスト134に追加し、残ユーザ局リスト135から削除することによって選択ユーザリスト134及び残ユーザ局リスト135を更新する(ステップS310)。
【0118】
その後、判定部125は、選択ユーザ局リスト134に基づいて、マルチユーザ伝送数の条件を満たすか否か判定する(ステップS311)。マルチユーザ伝送数の条件は、例えば選択ユーザ局リスト134に登録されているユーザ局数がマルチユーザ伝送数S局と同じになることである。
【0119】
マルチユーザ伝送数の条件が満たされた場合(ステップS311-YES)、選択部126bは選択ユーザ局リスト134に登録されているユーザ局20を最終的なマルチユーザ伝送数S局のユーザ局組として選択する(ステップS312)。
一方、マルチユーザ伝送数の条件が満たされていない場合(ステップS311-NO)、すなわち選択ユーザ局リスト134のユーザ局数がマルチユーザ伝送数S局より少ない場合、10bはステップS303以降の処理を実行する。
【0120】
以上のように構成された第3の実施形態における分散アンテナシステム100によれば、全ユーザ局数N局からマルチユーザ伝送数S局の全組み合わせについて、ユーザ局2局間の角度差を算出する必要は無く、1局ずつ選択していく。そのため、第2の実施形態では、nCs×nCs回の角度差の算出が必要だったのに対し、本手法では1局目は0回、2局目は(N-1)回、3局目2×(N-2)、4局目は3×(N-3)、・・・回だけの角度差の算出で済む。例えば、全ユーザ局数を200局、マルチユーザ伝送数4局とすると、第2の実施形態では、200C4×4C2=388,109,700回の角度差の算出が必要に対して、本手法では、(200-1)+2×(200-1)+3×(200-2)=1,194回だけの角度差の算出で済む。そのため、計算回数を削減することができる。
【0121】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、分散アンテナ1局あたりの無線伝送相手のユーザ局数を制限する実施形態である。第4の実施形態の説明では、第3の実施形態をベースに説明するが、第2の実施形態にも適用可能である。
【0122】
図9は、第4の実施形態における基地局10cの構成を示す図である。基地局10cは、分散アンテナ11-1~11-2、制御部12c及び記憶部13bを備える。
制御部12cは、CPU等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部12cは、プログラムを実行することによって、位置推定部121、干渉方向推定部122、角度差算出部123、評価値算出部124、判定部125c及び選択部126cの機能を実現する。これらの機能部のうち一部または全部は、ASICやPLD、FPGAなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。
【0123】
制御部12cは、判定部125及び選択部126bに代えて判定部125c及び選択部126cを備える点で制御部12bと構成が異なる。制御部12cは、他の構成については制御部12bと同様である。そのため、制御部12c全体の説明は省略し、判定部125c及び選択部126cについて説明する。
【0124】
判定部125cは、判定部125と同様の処理を行う。さらに、判定部125cは、無線伝送相手のユーザ局数の上限数Aを考慮した判定を行う。
選択部126cは、選択部126bと同様の処理を行う。さらに、選択部126cは、残ユーザ局リスト135中からユーザ局を1局選択する時に、分散アンテナ1局あたりの無線伝送相手のユーザ局数の上限数Aを考慮して仮選択を行う。
【0125】
図10は、第4の実施形態における基地局10cが行うユーザ局選択処理の流れを示すフローチャートである。
図10において、
図8に示す第3の実施形態と同様の処理については
図8と同様の符号を付して説明を省略する。分散アンテナ1局あたりの無線伝送相手のユーザ局数の上限数をAとする。
ステップS302の処理後、選択部126cは、残ユーザ局リスト135から上限数Aに基づいてユーザ局20を1局仮選択する(ステップS401)。具体的には、選択部126cは、選択ユーザ局リスト134のA局以上のユーザ局と無線伝送相手となっている分散アンテナ11を抽出し、抽出した分散アンテナ11を無線伝送相手としているユーザ局20以外からユーザ局20を1局仮選択する。これにより、分散アンテナ1局あたりの無線伝送相手とするユーザ局20をA局以下に制限することができる。
【0126】
その後、ステップS304からステップS310までの処理が実行される。次に、選択ユーザ局リスト134にユーザ局20が1局追加された後、判定部125cは選択ユーザ局リスト134にさらに1局追加するか否かを判定する(ステップS402)。このように、第4の実施形態では、選択ユーザ局リスト134に登録されているユーザ局数がマルチユーザ伝送数に達したか否か以外に、分散アンテナ1局あたりの無線伝送相手のユーザ局数の上限数Aを考慮した判定を行う。
【0127】
具体的には、判定部125cは、残ユーザ局リスト135に登録されているユーザ局20のうち、選択ユーザ局リスト134に登録されている(A-1局)以下のユーザ局20と無線伝送相手となっている分散アンテナ11を無線伝送相手としているユーザ局20があるか否かの判定を行う。ユーザ局20がない場合(ステップS402-NO)、残ユーザ局リスト135に登録されているどのユーザ局20を選択しても、選択したユーザ局20の無線伝送相手の分散アンテナ11は、無線伝送相手となるユーザ局20がA局より多くなる。すなわち、判定部125cは、ユーザ局数の条件を満たしていないと判定する。従って、選択ユーザ局リスト134数のユーザ局数がマルチユーザ伝送数を満たさなくても、基地局10cはステップS312の処理を実行する。
一方、ユーザ局20がある場合(ステップS402-NO)、基地局10cはステップS311の処理を実行する。
【0128】
以上のように構成された第4の実施形態における分散アンテナシステム100によれば、分散アンテナ1局あたりの無線伝送相手のユーザ局数の上限数Aを満たす範囲で、請求項3記載の発明の実施形態例と同じ処理を進めることができる。
【0129】
また、第2の実施形態についても、分散アンテナ1局あたりの無線伝送相手のユーザ局数の上限数Aを満たす範囲で進めることは同様にできる。例えば、全ユーザ局N局からマルチユーザ伝送数S局を選択する時に、同じ分散アンテナを無線伝送相手とするユーザ局数が(A+1)局以上となるユーザ局20は選択しないようにする制限を設けることが考えられる。その他、分散アンテナ1局あたりの無線伝送相手のユーザ局数の上限数Aを満たす範囲で、請求項2記載の発明の実施形態例と同じ処理が進められるフローであれば他のフローでも構わない。
【0130】
なお、同じ分散アンテナを無線伝送相手とするユーザ局20間は、下り回線の場合、干渉を与える側と無線伝送相手が同じ分散アンテナ11となるため、無線伝送距離と干渉距離は同じになり、干渉量の軽減要素は指向性アンテナの指向性利得だけとなる。従って、異なる分散アンテナを無線伝送相手とするユーザ局間と比較して、ユーザ局2局間の角度差が同じだとしても干渉量が大きくなる可能性が高い。本発明は、分散アンテナ1局あたりの無線伝送相手のユーザ局数に上限数Aを設けることにより、同じ分散アンテナを無線伝送相手とするユーザ局をA局以下に抑えながらマルチユーザ伝送時のユーザ局を選択することを可能とする。例えば、A=1局と設定した場合、同じ分散アンテナ11の2局以上のユーザ局20とマルチユーザ伝送することを防ぐことができ、上記の干渉量が大きくなる可能性を回避することができる。
【0131】
(第5の実施形態)
最終的に選択したユーザ局の組が、残ユーザ局リスト135から最初の1局目の選択によって変わる可能性がある。従って、この最初の1局目の選択によっては、選択したユーザ局組のどれか2局のユーザ局2局間の角度差が小さくなる可能性が否定できない。第5の実施形態では、この事象を回避するための実施形態である。具体的には、選択したユーザ局組のどれか2局のユーザ局2局間の角度差が閾値未満の場合に、一部の処理を再度やり直す手法である。例えば、角度差に閾値Bを設定し、角度差がこの閾値Bを下回った時に一部の処理を再度やり直す手法である。
【0132】
図11は、第5の実施形態における基地局10dの構成を示す図である。基地局10dは、分散アンテナ11-1~11-2、制御部12d及び記憶部13dを備える。
制御部12dは、CPU等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部12dは、プログラムを実行することによって、位置推定部121、干渉方向推定部122、角度差算出部123、評価値算出部124、判定部125d及び選択部126dの機能を実現する。これらの機能部のうち一部または全部は、ASICやPLD、FPGAなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。
【0133】
制御部12dは、選択部126に代えて選択部126bを備える点で制御部12bと構成が異なる。制御部12dは、他の構成については制御部12bと同様である。そのため、制御部12d全体の説明は省略し、選択部126bについて説明する。
【0134】
選択部126bは、選択部126bと同様の処理を行う。さらに、選択部126dは、選択したユーザ局組のどれか2局のユーザ局2局間の角度差が閾値未満の場合に、再度選択を行う。
【0135】
記憶部13dは、アンテナ情報131、角度差情報132、評価値情報133d、選択ユーザ局リスト134及び残ユーザ局リスト135を記憶する。記憶部13cは、例えば、HDDやSSD、マスクROM、EPROM、EEPROMなどのうち1つ以上により構成されている。
【0136】
評価値情報133dは、評価値情報133と同様の情報に加えて、全角度差の最小値の情報を含む。
【0137】
図12は、第5の実施形態における基地局10cが行うユーザ局選択処理の流れを示すフローチャートである。
図12において、
図8に示す第3の実施形態と同様の処理については
図8と同様の符号を付して説明を省略する。
ステップS306の処理において現評価値が最大値である場合(ステップS306-YES)、判定部125は現評価値と仮選択ユーザ局の情報とを評価値情報133として記録する。さらに、判定部125は、全角度差の最小値も評価値情報133として記録する(ステップS501)。全角度差の最小値は、現仮選択ユーザ局20と選択ユーザ局リスト134に登録されている全ユーザ局20に対して、ユーザ局2局間の角度差を算出するがその中の最小値である。
【0138】
すなわち、選択部126dが、評価値が最大の仮選択ユーザ局20を新規選択ユーザ局として、選択ユーザ局リスト134に追加し、残ユーザ局リスト135から削除する際に、ステップD501で記録していた全角度差の最小値もここで記録する(ステップS502)。
【0139】
判定部125は、選択ユーザ局リスト134に登録されているユーザ局数がマルチユーザ伝送数に達したか否か判定する(ステップS503)。ユーザ局数がマルチユーザ伝送数に達していない場合(ステップS503-NO)、基地局10dはステップS303以降の処理を実行する。
一方、ユーザ局数がマルチユーザ伝送数に達した場合(ステップS503-YES)、判定部125は選択ユーザ局リスト134の各ユーザ局20において、全角度差の最小値と閾値とを比較する。その結果、判定部125は、全角度差の最小値が閾値を下回るユーザ局があるか否かを判定する(ステップS504)。全角度差の最小値が全て閾値を上回っている場合(ステップS504-NO)、基地局10dはステップS312の処理を実行する。
【0140】
一方、全角度差の最小値が閾値を下回るユーザ局20が1局でもあった場合(ステップS504-YES)、判定部125は選択ユーザ局リスト134のユーザ局組と各ユーザ局の全角度差の最小値を記録する(ステップS505)。すなわち、残ユーザ局リスト135の最初の1局の選択を変えて、ステップS303からやり直す処理になる。ただし、このやり直し処理の最初の1局の選択について、全ユーザ局に行った場合は、処理を終了しなくてはならないため、ここで、その判定処理を行う。すなわち、判定部125は残ユーザ局から最初の1局を選択する処理を全ユーザ局に対して行ったか否かを判定する(ステップS506)。
【0141】
全ユーザ局に対して行った場合(ステップS506-YES)、残ユーザ局リスト135から最初の1局の選択を全ユーザ局行った場合であり、どのユーザ局を最初に選択しても角度差の最小値が閾値を下回ることができなかった場合である。この場合、選択部126dはユーザ局組とその角度差の最小値に中から、最も角度差の最小値が最大となるユーザ局20の組を選択ユーザ局リスト134に最終的に追加する(ステップS507)。
【0142】
一方、全ユーザ局に対して行っていない場合(ステップS506-NO)、選択部126dは選択ユーザ局リスト134及び残ユーザ局リスト135を初期状態に戻すためには、選択ユーザ局リスト134に登録されているユーザ局20の情報を全削除し、残ユーザ局リスト135に全ユーザ局20の情報を追加する(ステップS508)。その後、選択部126dは残ユーザ局から最初の1局を選択するが、これまでの選択と違う選択をするために、1局目として選択していないユーザ局20を最初に選択する(ステップS509)。
【0143】
なお、全角度差の最小値が閾値を下回っているか否かの判定を、選択ユーザ局リスト134のユーザ局を追加するタイミングで行わずに、選択ユーザ局リスト134のユーザ局数がマルチユーザ伝送数に達したタイミングで行う理由は、どのユーザ局20を最初に選択しても、全角度差の最小値が閾値を下回る可能性があるため、最初に選択したどのユーザ局20に対しても、マルチユーザ伝送数に達するユーザ局組を記録しておく必要があるためである。
【0144】
上記の実施形態では、第3の実施形態を例に説明したが、第4の実施形態においても適用可能である。
図13は、第5の実施形態における基地局10cが行うユーザ局選択処理を第4の実施形態適用した場合のユーザ局選択処理の流れを示すフローチャートである。
図13において、
図10に示す第4の実施形態と同様の処理については
図10と同様の符号を付して説明を省略する。
図13において、
図12におけるステップS303の処理がステップS401の処理に代わり、ステップS502の処理の後にステップS402の処理が実行されるのみが
図12に示す処理との差異である。
【0145】
以上のように構成された第5の実施形態における分散アンテナシステム100によれば、ユーザ局2局間の角度差に予め閾値を設定し、全角度差の最小値が閾値を下回るまでは、残ユーザ局リスト135の最初の1局の選択を全て試行することが可能となる。残ユーザ局リスト135の最初の1局の選択をどのユーザ局20を選択しても、全角度差の最小値が閾値を下回らない場合にも、全角度差の最小値が最大とユーザ局組を選択する。このように、選択されたユーザ局組が、残ユーザ局リスト135の最初の1局の選択に依存される要素を取り除くことが可能となる。
【0146】
(第6の実施形態)
第6の実施形態では、上記の第2の実施形態から第5の実施形態のユーザ選択方法を繰り返し用いて、マルチユーザ伝送時のユーザ割当を繰り返し、システム全体の全ユーザ局に対して、定められた上限までマルチユーザ伝送を割り当てる手法である。なお、ここでは、一例として第2の実施形態においてのユーザ選択方法を繰り返し用いた場合について説明する。
【0147】
図14は、第6の実施形態における基地局10eの構成を示す図である。基地局10aは、分散アンテナ11-1~11-2、制御部12e及び記憶部13eを備える。
制御部12eは、CPU等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部12eは、プログラムを実行することによって、位置推定部121、干渉方向推定部122、角度差算出部123、評価値算出部124、判定部125e及び選択部126eの機能を実現する。これらの機能部のうち一部または全部は、ASICやPLD、FPGAなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。
【0148】
制御部12eは、判定部125及び選択部126に代えて判定部125e及び選択部126eを備える点で制御部12aと構成が異なる。制御部12eは、他の構成については制御部12aと同様である。そのため、制御部12e全体の説明は省略し、判定部125e及び選択部126eについて説明する。
【0149】
判定部125eは、判定部125と同様の処理を行う。さらに、判定部125eは、ユーザ局20の割当が上限数Cに達したか否かを判定する。
選択部126eは、選択部126と同様の処理を行う。選択部126eは、ユーザ局数の上限数Cまでユーザ局20の選択を行う。
【0150】
記憶部13eは、アンテナ情報131、角度差情報132、評価値情報133、割当済みユーザ局リスト136及び未割当ユーザ局リスト137を記憶する。記憶部13aは、例えば、HDDやSSD、マスクROM、EPROM、EEPROMなどのうち1つ以上により構成されている。
割当済みユーザ局リスト136は、マルチユーザ伝送ユーザとして割当済みのユーザ局20の情報が登録されたリストである。
未割当ユーザ局リスト137は、マルチユーザ伝送ユーザとして未割当のユーザ局20の情報が登録されたリストである。
【0151】
図15は、第6の実施形態における基地局10eが行うユーザ局選択処理の流れを示すフローチャートである。第6の実施形態では、
図15の処理開始時には、初期状態として割当済みユーザ局リスト136をゼロ、未割当ユーザ局リスト137に全ユーザ局20の情報が登録されている。
図15において、
図6と同様の処理については
図6と同様の符号を付して説明を省略する。
【0152】
ステップS207の処理後、選択部126eは、取得したマルチユーザ伝送時のユーザ選択組みの情報を割当済みユーザ局リスト136に追加し、ユーザ選択組みの情報を未割当ユーザ局リスト137から削除する(ステップS701)。
【0153】
基地局10eは、システム全体の全ユーザ局20に対して、定められた上限数Cまで、マルチユーザ伝送時のユーザ局組を割り当てるまでこの処理を繰り返す。判定部125eは、割当済みユーザ局リスト136のユーザ局数が上限数Cに達したか否かを判定する(ステップS702)。ユーザ局数が上限数Cに達した場合(ステップS702-YES)、基地局10eは
図15の処理を終了する。
【0154】
一方、ユーザ局数が上限数Cに達していない場合(ステップS702-NO)、選択部126eは他のユーザ局の組み合わせを選択する(ステップS703)。例えば、上限数Cをシステム全体の全ユーザ局数そのものに設定すると、
図15の全フローにより、システム全体の全ユーザ局数にマルチユーザ伝送時のユーザ局組が割り当てられる。これは、システム全体の全ユーザ局へのリソース割り当ての一つとして、マルチユーザ伝送用のタイムスロットが複数割り当てられた時に、全ユーザ局にこのマルチユーザ伝送用タイムスロットを割り当てていく処理となる。例えば、システム全体の全ユーザ局数を200、マルチユーザ伝送数を4とすると、最小50個のマルチユーザ伝送用タイムスロットで全ユーザ局のリソース割り当てを行う。
【0155】
以上のように構成された第6の実施形態における分散アンテナシステム100によれば、同一タイムスロットに割り当てられるユーザ局組について、互いにユーザ局間直交度の高いユーザ局組を選択することが可能になる。従って、ユーザ間干渉が低いマルチユーザ伝送が可能となり、無線容量を向上することが可能となる。
【0156】
上限数Cをシステム全体の全ユーザ局数より小さく設定した場合は、全ユーザ局の1部はマルチユーザ伝送、1部はシングルユーザ伝送など、ユーザ局ごとに優先度を変えた無線伝送が可能であり、その場合でも、本発明により、マルチユーザ伝送時にはユーザ間直交度の高いユーザ局組を選択することが可能であり、ユーザ間干渉が低いマルチユーザ伝送を可能とする。
【0157】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0158】
上述した実施形態における基地局10、10a、10b、10c、10d、10eをコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。また、当該プログラムをインターネット等のネットワークを通して提供するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0159】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0160】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、分散アンテナシステムにおけるマルチユーザ伝送時のユーザ間直交度を推定する技術に適用できる。
【符号の説明】
【0162】
10、10a、10b、10c、10d、10e…基地局, 20-1~20-k…ユーザ局, 11-1~11-3…分散アンテナ, 21-1~21-2…アンテナ, 12、12a、12b、12c、12d…制御部, 13、13a、13b、13d、13e…記憶部, 121…位置推定部, 122…干渉方向推定部, 123、123a…角度差算出部, 124…評価値算出部, 125、125c、125e…判定部, 126、126b、126c、126d、126e…選択部