(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 73/14 20060101AFI20231206BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20231206BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20231206BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20231206BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C08G73/14
C08L79/08 C
C08L63/00 A
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2019221329
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平佐田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】小出 泰之
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐揮
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-252459(JP,A)
【文献】国際公開第2019/124414(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73/14
C08L
H01L23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子、半導体素子を搭載する基板及び/又は半導体素子と接合するリード電極、並びにこれらを封止する封止樹脂硬化物から成る半導体装置において、
前記封止樹脂硬化物と前記基板との接触部の少なくとも一部、及び/又は、前記封止樹脂硬化物と前記リード電極との接触部の少なくとも一部に具備される半導体装置密着層を形成するためのポリアミドイソイミド樹脂組成物であって、
式[1]で表される構造単位を有するポリアミドイソイミドと、
溶媒とを含む、半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物。
【化1】
[式中、
Xは炭素原子数6乃至40の3価の有機基を表し、
Yは下記式[2
d]
、式[2f]、式[2h]又は式[2i]で表される基
を表す。
【化2】
(式中、pは各ベンゼン環に結合する基R
1の数を意味し、それぞれ独立して0乃至4の整数を表し、R
1はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基、又は炭素原子数1乃至6のアルコキシ基を表し(ただし、pが2乃至4の整数を表す場合、同一環上のR
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)、*は結合手を表す。)]
【請求項2】
前記Xが芳香族基を有する基である、請求項1に記載の半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記Xが式[3]で表される基である、請求項2に記載の半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物。
【化3】
(式中、qはベンゼン環に結合する基R
2の数を意味し、0乃至3の整数を表し、R
2はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基、又は炭素原子数1乃至6のアルコキシ基を表し(ただし、qが2又は3を表す場合、R
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)、*は結合手を表す。)
【請求項4】
前記Yが前記式[2d]又は式[2i]で表される基である、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物。
【請求項5】
半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物に含まれるポリアミドイソイミドが、基Xを含むトリカルボン酸無水物を含む酸無水物成分と、基Yを含むジアミン化合物を含む芳香族ジアミン成分との重縮合物である、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物。
【請求項6】
さらにエポキシ樹脂を含む、請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂がビスフェノールA型エポキシ樹脂である、請求項6に記載の半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物。
【請求項8】
前記溶媒が標準沸点200℃以下の溶媒である、請求項1乃至請求項7のうち何れか一項に記載の半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物。
【請求項9】
前記溶媒がシクロペンタノンである、請求項8に記載の半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物。
【請求項10】
半導体素子、半導体素子を搭載する基板及び/又は半導体素子と接合するリード電極、並びにこれらを封止する封止樹脂硬化物から成る半導体装置であって、
前記封止樹脂硬化物と前記基板との接触部の少なくとも一部、及び/又は、前記封止樹脂硬化物と前記リード電極との接触部の少なくとも一部に、請求項1乃至請求項9のうち何れか一項に記載のポリアミドイソイミド樹脂組成物
(ただし、当該組成物に含まれるポリアミドイソイミドは、前記式[1]で表される構造単位のみからなる)の異性化物からなる密着層を具備する、半導体装置。
【請求項11】
半導体素子を搭載した基板及び/又は半導体素子と接合したリード電極の少なくとも一部に、請求項1乃至請求項9のうち何れか一項に記載のポリアミドイソイミド樹脂組成物を塗布し塗膜を得る工程、及び前記塗膜を熱異性化し密着層を形成する工程、を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記密着層の形成後、該密着層上に封止樹脂硬化物を形成する工程、をさらに含む、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日に於いて、半導体デバイスは様々な電子機器に使用され、機器の作動に必要な電流や信号の制御を担っている。半導体デバイスは、一般に、半導体素子、接合材、金属電極、絶縁基板などの各部材が積層により構成されてなる。これら各部材は、一般に異なる熱膨張率を有するため、加熱・冷却に伴い素子の内部に応力が発生し得、部材間、特にハンダなどの接合材を起点とした剥離を引き起こす虞がある。こうした部材間の剥離は、素子内の正常な電流制御に支障をきたし、素子の動作不良に繋がることとなる。
この部材間の剥離を抑制するべく、半導体素子を基板やリードフレームに搭載し電気的な接続を行った後に、弾性率の高い封止樹脂で封止することで、半導体素子を外部からの化学的、電気的、物理的な刺激から保護するとともに、積層された各層の熱変形を束縛する設計がなされている。この際、半導体装置を構成する各部材と封止樹脂の熱膨張率の差に伴う剥離を抑制することも、上記部材間の剥離を抑える上で重要な要素となる。
【0003】
一方、近年では、制御する電流・信号の高電圧化や高周波化に伴い、従来のシリコン半導体に代わるものとして、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)といったバンドギャップの広い半導体素子の開発が進んでいる。このようなワイドバンドギャップな半導体素子を搭載した半導体装置は、従来よりも高温で作動する設計がなされているため、上記剥離の問題が更に顕著な課題となっている。
このような課題を解決するため、封止樹脂へフィラーを添加することで熱膨張係数(CTE)を低下させ、封止樹脂と周辺部材とのCTEの差を小さくする対策がなされている。しかし、CTEを十分に低下させるには多量のフィラーを添加する必要があり、その場合には基板表面との接着を担う樹脂成分の表面積が減少するため、本質的な基材への密着性が低下する。このため、一定以上の密着性を担保するのは困難である。
【0004】
このような状況の中、半導体素子を搭載するリードフレーム上に突起を設けることで、リードフレームと封止樹脂の密着性を向上させる方法が開示されている(例えば、特許文献1)。また、非酸化雰囲気でプライマー処理液を乾燥させることで、銅表面と封止樹脂の界面における酸化膜の形成を抑制し、両者の密着性を改善する方法が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-150753号公報
【文献】特開2018-46192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、リードフレームや基板の事前加工を必要とし、コスト面、プロセス面で課題が残る。また、特許文献2に記載の方法では、非酸化雰囲気の乾燥においてイナートオーブン等を用いる必要があり、製造コスト面で大きな課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、ポリアミドイミドの前駆体となるポリアミドイソイミドのうち、特定の構造単位を有するポリアミドイソイミドを含む、樹脂組成物から形成した密着層が、銅又は銅合金及びセラミック、並びに封止樹脂に対して高い密着性を有し、半導体装置用の密着層として優れていることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は、第1観点として、半導体素子、半導体素子を搭載する基板及び/又は半導体素子と接合するリード電極、並びにこれらを封止する封止樹脂硬化物から成る半導体装置において、前記封止樹脂硬化物と前記基板との接触部の少なくとも一部、及び/又は、前記封止樹脂硬化物と前記リード電極との接触部の少なくとも一部に具備される半導体装置密着層を形成するためのポリアミドイソイミド樹脂組成物であって、式[1]で表される構造単位を有するポリアミドイソイミドと、溶媒とを含む、半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物に関する。
【化1】
[式中、Xは炭素原子数6乃至40の3価の有機基を表し、Yは下記式[2a]乃至式[2i]で表される基からなる群から選ばれる基を表す。
【化2】
(式中、pは各ベンゼン環に結合する基R
1の数を意味し、それぞれ独立して0乃至4の整数を表し、R
1はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基、又は炭素原子数1乃至6のアルコキシ基を表し(ただし、pが2乃至4の整数を表す場合、同一環上のR
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)、*は結合手を表す。)]
第2観点として、前記Xが芳香族基を有する基である、第1観点に記載の半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物に関する。
第3観点として、前記Xが式[3]で表される基である、第2観点に記載の半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物に関する。
【化3】
(式中、qはベンゼン環に結合する基R
2の数を意味し、0乃至3の整数を表し、R
2はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基、又は炭素原子数1乃至6のアルコキシ基を表し(ただし、qが2又は3を表す場合、R
2はそれぞれ同一であっても異なっ
ていてもよい。)、*は結合手を表す。)
第4観点として、前記Yが前記式[2d]又は式[2i]で表される基である、第1観点乃至第3観点のうち何れか一項に記載の半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物に関する。
第5観点として、半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物に含まれるポリアミドイソイミドが、基Xを含むトリカルボン酸無水物を含む酸無水物成分と、基Yを含むジアミン化合物を含む芳香族ジアミン成分との重縮合物である、第1観点乃至第4観点のうちいずれか一項に記載の半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物。
第6観点として、さらにエポキシ樹脂を含む、第1観点乃至第5観点のうち何れか一項に記載の半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物に関する。
第7観点として、前記エポキシ樹脂がビスフェノールA型エポキシ樹脂である、第6観点に記載の半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物に関する。
第8観点として、前記溶媒が標準沸点200℃以下の溶媒である、第1観点乃至第7観点のうち何れか一項に記載の半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物に関する。
第9観点として、前記溶媒がシクロペンタノンである、第8観点に記載の半導体装置密着層形成用ポリアミドイソイミド樹脂組成物に関する。
第10観点として、半導体素子、半導体素子を搭載する基板及び/又は半導体素子と接合するリード電極、並びにこれらを封止する封止樹脂硬化物から成る半導体装置であって、前記封止樹脂硬化物と前記基板との接触部の少なくとも一部、及び/又は、前記封止樹脂硬化物と前記リード電極との接触部の少なくとも一部に、第1観点乃至第9観点のうち何れか一項に記載のポリアミドイソイミド樹脂組成物の異性化物からなる密着層を具備する、半導体装置に関する。
第11観点として、半導体素子を搭載した基板及び/又は半導体素子と接合したリード電極の少なくとも一部に、第1観点乃至第9観点のうち何れか一項に記載のポリアミドイソイミド樹脂組成物を塗布し塗膜を得る工程、及び前記塗膜を熱異性化し密着層を形成する工程、を含む、半導体装置の製造方法に関する。
第12観点として、前記密着層の形成後、該密着層上に封止樹脂硬化物を形成する工程、をさらに含む、第11観点に記載の半導体装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物は、銅又は銅合金及びセラミック、並びに封止樹脂に対して高い密着性を有する層を形成することができる。特に本発明の樹脂組成物において特定構造を有するポリアミドイソイミドを採用したことにより、種々の溶媒、例えば低沸点の溶媒であっても容易に溶解してワニスの形態をなし得、高温加熱処理をせずとも基板等に塗布して層形成させることができる。そのため本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物は、基板である銅表面と封止樹脂の接触部(界面)における酸化膜の形成を抑制しながら、両者に対して高い密着性を有する層を形成することができる。
すなわち本発明によれば、密着性に優れる半導体装置用の密着層を形成するためのポリアミドイソイミド樹脂組成物を提供できる。また、本発明によれば、高温で動作する半導体装置でも、半導体装置を構成する各部材からの封止樹脂硬化物の剥離を防止できる、半導体装置を構成する各部材と封止樹脂硬化物との密着層を備えた半導体装置の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<樹脂組成物>
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物は、半導体装置において、封止樹脂硬化物と、基板及び/又はリード電極との界面の少なくとも一部、すなわち、前記封止樹脂硬化物と前記基板との接触部の少なくとも一部、及び/又は、前記封止樹脂硬化物と前記リード
電極との接触部の少なくとも一部に具備される密着層(いわば半導体封止材(封止樹脂硬化物)のプライマー層)を形成するために用いられる樹脂組成物であって、下記式[1]で表される構造単位を有するポリアミドイソイミドと溶媒とを必須として含む樹脂組成物である。
【0011】
[ポリアミドイソイミド]
本発明で用いるポリアミドイソイミドは下記式[1]で表される構造単位を有する。
【化4】
式[1]中、Xは炭素原子数6乃至40の3価の有機基を表し、Yは下記式[2a]乃至式[2i]で表される基からなる群から選ばれる基を表す。
【0012】
【化5】
式[2a]乃至式[2i]中、pは各ベンゼン環に結合する基R
1の数を意味し、それぞれ独立して0乃至4の整数を表し、R
1はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基、又は炭素原子数1乃至6のアルコキシ基を表す。ただし、pが2乃至4の整数を表す場合、同一環上のR
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、*は結合手を表す。
【0013】
中でも、上記Yとしては、式[2d]又は[2i]で表される基が好ましい。
【0014】
上記式[1]中、Xの炭素原子数6乃至40の3価の有機基としては特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環、芳香族炭化水素環から3つの水素原子を取り除いた基を挙げることができる。上記有機基における脂肪族炭化水素としては、例えば炭素原子数6乃至40のアルカン等、上記有機基における脂肪族炭化水素環は、例えばシクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[2.2.2]-5-オクテン環等、上記有機基における芳香族炭化水素環は、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。上記これら脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環及び芳香族炭化水素環はから選択される2種以上の組み合わせであってもよく、また上記有機基として脂肪族炭化水素環及び芳香族炭化水素環のうち少なくとも1つを含むことが好ましく、特に上記有機基として芳香族炭化水素環を少なくとも1つ含むことが好ましい。これら有機基はハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数2乃至7のアルキルカルボニル基、炭素原子数2乃至7のアルコキシカルボニル基、炭素原子数6乃至40のアリール基、ホルミル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基等の置換基で置換されていてもよく、また該有機基は、単結合、エーテル結合(-O-)、ケトン結合(-C(=O)-)、チオエーテル結合(-S-)、スルホニル基(-S(=O)2-)、アミド結合(-C(=O)-NH-)、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、及びそれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。前記有機基が前述の置換基や種々の結合を含む場合、有機基全体として炭素原子数が6乃至40であればよい。
【0015】
Xにおける炭素原子数6乃至40の3価の有機基の具体例としては、例えば下記の基が挙げられ、これらは前述のアルキル基、アルキルカルボニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基等で置換されていてよい。下記各式において*は結合手を表す。
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
中でも、上記Xとしては、下記式[3]で表される基が好ましい。
【化9】
式中、qはベンゼン環に結合する基R
2の数を意味し、0乃至3の整数を表し、R
2はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基、又は炭素原子数1乃至6のアルコキ
シ基を表す(ただし、qが2又は3を表す場合、R
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)。また、*は結合手を表す。
【0020】
また式[2a]乃至式[2i]中の上記炭素原子数1乃至6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、1-メチルシクロブチル基、2-メチルシクロブチル基、3-メチルシクロブチル基、1,2-ジメチルシクロプロピル基、2,3-ジメチルシクロプロピル基、1-エチルシクロプロピル基、2-エチルシクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチルシクロペンチル基、2-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、1-エチルシクロブチル基、2-エチルシクロブチル基、3-エチルシクロブチル基、1,2-ジメチルシクロブチル基、1,3-ジメチルシクロブチル基、2,2-ジメチルシクロブチル基、2,3-ジメチルシクロブチル基、2,4-ジメチルシクロブチル基、3,3-ジメチルシクロブチル基、1-プロピルシクロプロピル基、2-プロピルシクロプロピル基、1-イソプロピルシクロプロピル基、2-イソプロピルシクロプロピル基、1,2,2-トリメチルシクロプロピル基、1,2,3-トリメチルシクロプロピル基、2,2,3-トリメチルシクロプロピル基、1-エチル-2-メチルシクロプロピル基、2-エチル-1-メチルシクロプロピル基、2-エチル-2-メチルシクロプロピル基、2-エチル-3-メチルシクロプロピル基等が挙げられる。
上記炭素原子数1乃至6のアルコキシとしては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、1-メチルブトキシ基、2-メチルブトキシ基、3-メチルブトキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、1-エチルプロポキシ基、n-ヘキシルオキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、4-メチルペンチルオキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、3,3-ジメチルブトキシ基、1-エチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、1,1,2-トリメチルプロポキシ基、1,2,2,-トリメチルプロポキシ基、1-エチル-1-メチルプロポキシ基、1-エチル-2-メチルプロポキシ基等が挙げられる。
【0021】
本発明に使用するポリアミドイソイミドは、式[1]で表される構造単位以外に、Yが前記式[2a]乃至式[2i]で表される基以外の基である構造単位、例えば下記式[4]で表される構造単位を含んでいてもよい。
【化10】
式[4]中、X
1は炭素原子数6乃至40の3価の有機基を表し、Y
1は炭素原子数6乃至40の2価の有機基(ただし、前記式[2a]乃至式[2i]で表される基を除く。)を表す。
上記X
1における炭素原子数6乃至40の3価の有機基としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環、芳香族炭化水素環から3つの水素原子を取り除いた基を挙げることができる。すなわちX
1として、式[1]のXの定義において挙げた有機基を挙げることができる。
また上記Y
1における、炭素原子数6乃至40の2価の有機基としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環、芳香族炭化水素環から2つの水素原子を取り除いた基を挙げることができ、これら脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環、芳香族炭化水素環としては、式[1]のXの定義において挙げた脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環、芳香族炭化水素環を挙げることができる。中でも、芳香族炭化水素環から2つの水素原子を取り除いた基であることが好ましい。
なおポリアミドイソイミドが式[4]で表される構造単位を含む場合、式[1]中の基Xと式[4]中の基X
1は同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。
【0022】
本発明に使用するポリアミドイソイミドが、式[1]で表される構造単位と、式[4]で表される構造単位を有する場合、それらの配合割合は特に限定されないが、例えばポリアミドイソイミドを構成する構造単位の全量(全モル数)に対して、式[1]で表される構造単位の割合(モル)を1モル%~99モル%とすることができ、また5モル%以上、10モル%以上、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、45モル%以上、50モル%以上とすることができ、95モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、70モル%以下、60モル%以下、55モル%以下とすることができる。
【0023】
<製造法>
前記式[1]で表される単位構造を有するポリアミドイソイミドは、一例として、基Xを含むトリカルボン酸無水物(酸無水物成分)と、基Yを含むジアミン化合物(芳香族ジアミン成分)とを公知の手法により反応、重縮合させることで製造できる。また該ポリアミドイソイミドが式[4]で表される構造単位をさらに有する場合、酸無水物成分として基X1を含むトリカルボン酸無水物(酸無水物成分)と、ジアミン成分として基Y1を含むジアミン化合物(ジアミン成分)とを加え、これらを公知の手法により反応、重縮合させればよい。
ポリアミドイソイミドを合成する際の酸無水物成分の全モル数とジアミン成分の全モル数との比は、一般に酸無水物成分/ジアミン成分=0.8~1.2である。
【0024】
前記トリカルボン酸無水物としては、例えば、3-(7-カルボキシヘプチル)-6-ヘキシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸1,2-無水物、4-シクロヘキセン-1,2,3-トリカルボン酸1,2-無水物、3-メチルシクロヘキサ-1-エン-1,2,3-トリカルボン酸1,2-無水物、6-メチルシクロヘキサ-4-エン-1,2,3-トリカルボン酸1,2-無水物、4-メチルシクロヘキサ-5-エン-1,2,3-トリカルボン酸1,2-無水物、3-(カルボキシメチル)シクロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボン酸1,2-無水物、3-(7-カルボキシヘプチル)-6-ヘキシルシ
クロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボン酸1,2-無水物、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、3-メチルシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、4-シクロヘキセン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、5-シクロヘキセン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、4-(カルボキシメチル)シクロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボン酸1,2-無水物、2-(カルボキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸2,3-無水物、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,7-トリカルボン酸2,3-無水物、1-(カルボキシメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸2,3-無水物、5-アセチル-1-(カルボキシメチル)-4-メチル-6-オキソ-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸2,3-無水物、1-(カルボキシメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸2,3-無水物、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5-トリカルボン酸2,3-無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,2,3-トリカルボン酸2,3-無水物、5-ビシクロ[2.2.2]オクテン-1,2,3-トリカルボン酸2,3-無水物、7-ビシクロ[2.2.2]オクテン-2,3,5-トリカルボン酸2,3-無水物、ベンゼン-1,2,3-トリカルボン酸1,2-無水物、6-メチルベンゼン-1,2,3-トリカルボン酸1,2-無水物、4,5-ジヒドロキシ-6-イソプロピルベンゼン-1,2,3-トリカルボン酸1,2-無水物、6-イソプロピル-4,5-ジメトキシベンゼン-1,2,3-トリカルボン酸1,2-無水物、4-エトキシ-5-メトキシベンゼン-1,2,3-トリカルボン酸1,2-無水物、3-(2-カルボキシプロパン-2-イル)フタル酸無水物、3-(2-カルボキシエチル)フタル酸無水物、3-(2-カルボキシエチル)-4-メチルフタル酸無水物、3-(2-カルボキシエチル)-6-メチルフタル酸無水物、3-(3-カルボキシプロピル)-4-メチルフタル酸無水物、3-(3-カルボキシプロピル)-6-エチルフタル酸無水物、3-(7-カルボキシヘプチル)-6-ヘキシルフタル酸無水物、3-(2-カルボキシベンジル)フタル酸無水物、3-((6-カルボキシピリジン-2-イル)メチルアミノ)フタル酸無水物、3-(4-カルボキシフェノキシ)フタル酸無水物、無水トリメリット酸(ベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物)、3-メチルベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、5-メチルベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、5-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、[1,1’-ビフェニル]-2,3,5-トリカルボン酸2,3-無水物、5-ベンゾイルベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、5-ニトロベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、6-ニトロベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、5-ヒドロキシベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、3,5-ジメトキシベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、3,6-ジメトキシベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、5,6-ジメトキシベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、6-クロロ-3,5-ジメトキシベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、5-アセチルオキシベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、6-クロロベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、3,6-ジクロロベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、3,5,6-トリブロモベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、4-(カルボキシメチル)フタル酸無水物、4-(カルボキシメチル)-3-メチルフタル酸無水物、4-(2-カルボキシエチル)-3-メチルフタル酸無水物、[1,1’-ビフェニル]-3,4,4’-トリカルボン酸3,4-無水物、4-(3-カルボキシプロポキシ)フタル酸無水物、4-(3-カルボキシフェノキシ)フタル酸無水物、4-(2-カルボキシベンゾイル)フタル酸無水物、4-(4-カルボキシベンゾイル)フタル酸無水物、4-(4-(4-カルボキシフェノキシ)ベンゾイル)フタル酸無水物、4-((カルボキシメチル)カルバモイル)フタル酸無水物、4-((1-カルボキシ-2-メチルプロピル)カルバモイル)フタル酸無水物、4-((2-カルボキシフェニル)カルバモ
イル)フタル酸無水物、4-((2-カルボキシ-5-クロロフェニル)カルバモイル)フタル酸無水物、4-((4-カルボキシフェニル)カルバモイル)フタル酸無水物、4-(3-アリルオキシ-2-(2-カルボキシベンゾイルオキシ)プロポキシカルボニル)フタル酸無水物、4-(4-カルボキシフェノキシ)フタル酸無水物、4-((3-カルボキシフェニル)スルホニル)フタル酸無水物、4-((4-カルボキシフェニル)スルホニル)フタル酸無水物、3-(カルボキシメチル)ナフタレン-1,2,3-トリカルボン酸1,2-無水物、ナフタレン-1,2,4-トリカルボン酸1,2-無水物、ナフタレン-1,2,5-トリカルボン酸1,2-無水物、ナフタレン-1,2,6-トリカルボン酸1,2-無水物、ナフタレン-1,2,7-トリカルボン酸1,2-無水物、ナフタレン-2,3,5-トリカルボン酸2,3-無水物、ナフタレン-2,3,6-トリカルボン酸2,3-無水物、1,8-ジメトキシナフタレン-2,3,6-トリカルボン酸2,3-無水物、ナフタレン-1,4,5-トリカルボン酸4,5-無水物、フルオランテン-3,8,9-トリカルボン酸8,9-無水物、ピリジン-2,3,6-トリカルボン酸2,3-無水物等が挙げられる。
【0025】
前記ジアミン化合物としては、例えば、前記式[2a]乃至式[2i]で表される基の結合手それぞれにアミノ基が結合した化合物、並びに、前記以外のジアミン等が挙げられる。
【0026】
ポリアミドイソイミドの調製は溶媒中で実施でき、例えば、m-クレゾール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。これらは、単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリアミドイソイミドを溶解しない溶媒であっても、均一な溶液が得られる範囲内で上記溶媒に加えて使用してもよい。
重縮合反応の温度は、ポリアミドイソイミドをポリアミドイミドに異性化させずに反応を進行できる温度であればよく、例えば-20~100℃、又は-20~50℃、あるいは0~30℃、例えば室温(23℃)など、任意の温度を選択することができる。
【0027】
上述した重縮合反応により得られたポリアミドイソイミド含有溶液は、そのまま、あるいは希釈もしくは濃縮した後、後述するポリアミドイソイミド樹脂組成物として使用することができる。また該ポリアミドイソイミド含有溶液に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの貧溶媒を加えてポリアミドイソイミドを沈殿させて単離し、その単離したポリアミドイソイミドを適当な溶媒に再溶解させてポリアミドイソイミド含有溶液とし、これをポリアミドイソイミド樹脂組成物として使用することもできる。
ポリアミドイソイミドの希釈用溶媒並びに単離したポリアミドイソイミドの再溶解用溶媒は、得られたポリアミドイソイミドを溶解させるものであれば特に限定されるものではなく、後述する[溶媒]に挙げる種々の溶媒を用いることができる。また、単独ではポリアミドイソイミドを溶解しない溶媒であっても、ポリアミドイソイミドが析出しない範囲であれば上記溶媒に加えて使用してもよい。
【0028】
なお本発明において、ポリアミドイソイミドの重量平均分子量は、得られる異性化物の強度等を向上させるという観点から5,000以上、例えば7,000以上、また10,000以上であり、ポリアミドイソイミドの溶解性を確保するという観点から300,000以下、例えば200,000以下、また150,000以下とすることができる。なお本明細書において、重量平均分子量及び後述する数平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリスチレン換算値として算出される値である。
【0029】
[溶媒]
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物に使用する溶媒としては、前記ポリアミドイソイミドを溶解するものであって、また後述するエポキシ樹脂、その他の成分を溶解又は分散できればよく、特に限定されない。
溶媒としては、例えば、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン(GBL)等のエステル類;ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸プロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、3-ヒドロキシプロピオン酸メチル、3-ヒドロキシプロピオン酸エチル、3-ヒドロキシプロピオン酸プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル等のヒドロキシエステル類;メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸プロピル、3-プロポキシプロピオン酸メチル、3-プロポキシプロピオン酸エチル、3-プロポキシプロピオン酸プロピル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルプロピオネート等のエーテルエステル類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等のアミド類;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、シクロペンタノン(CPN)、シクロヘキサノン等のケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール類;テトラヒドロフラン(THF)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類など、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
これらの中でも、標準沸点(1気圧のときの沸点)が200℃以下の溶媒であると、後述するポリアミドイソイミドの熱異性化の際、同時に溶媒を除去することができる利点を有するため好ましい。該溶媒の標準沸点の下限値は特に限定されないが、樹脂組成物の保管や基板等への操作性を考慮すると、例えば70℃以上とすることができる。
このような溶媒としては、例えばメチルエチルケトン(MEK、沸点79.6℃)、シクロヘキサン(同80.7℃)、トルエン(同110.6℃)、メチルイソブチルケトン(MIBK、同116.2℃)、シクロペンタノン(CPN、同130.6℃)等が挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0031】
[エポキシ樹脂]
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含んでいてもよい。
前記樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂は、一般に分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を指し、本発明においては特に限定されることなく市販品を含
め種々のエポキシ樹脂を使用可能である。
【0032】
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-へキサンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、2,6-ジグリシジルフェニル=グリシジル=エーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフタレン-1-イル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-グリシジルオキシフェニル)エタン、1,1,3-トリス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフルオロアセトンジグリシジルエーテル、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメトキシ)エタン、エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、4,5-エポキシ-2-メチルシクロヘキサンカルボン酸4,5-エポキシ-2-メチルシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)、1,2-エポキシ-4-(エポキシエチル)シクロヘキサン、4-(スピロ[3,4-エポキシシクロヘキサン-1,5’-[1,3]ジオキサン]-2’-イル)-1,2-エポキシシクロヘキサン、アジピン酸ジグリシジル、フタル酸ジグリシジル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、トリグリシジルイソシアヌレート、トリス(3,4-エポキシブチル)イソシアヌレート、トリス(4,5-エポキシペンチル)イソシアヌレート、トリス(5,6-エポキシヘキシル)イソシアヌレート、トリス(6,7-エポキシヘプチル)イソシアヌレート、トリス(7,8-エポキシオクチル)イソシアヌレート、トリス(8,9-エポキシノニル)イソシアヌレート、トリス(2-グリシジルオキシエチル)イソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、N,N’-ジグリシジルN’’-(2,3-ジプロピオニルオキシプロピル)イソシアヌレート、N,N’-ビス(2,3-ジプロピオニルオキシプロピル)N’’-グリシジルイソシアヌレート、1,3,5-トリス(2-(2,2-ビス(グリシジルオキシメチル)ブトキシカルボニル)エチル)イソシアヌレート、トリス(2,2-ビス(グリシジルオキシメチル)ブチル)3,3’,3’’-(2,4,6-トリオキソ-1,3,5-トリアジン-1,3,5-トリイル)トリプロパノエート、N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル=グリシジル=エーテル、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクタン酸グリシジル、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクタン酸2,2-ビス(グリシジルオキシメチル)ブチル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂、アントラセンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニレンノボラック型エポキシ樹脂、キシリレンノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂、テトラキスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられるが、こ
れらに限定されるものではない。
また上記エポキシ樹脂は、市販品を好適に使用することができ、例えば、TEPIC(登録商標)-G、同S、同SS、同SP、同L、同HP、同VL、同FL、同PAS B22、同PAS B26、同PAS B26L、同UC、FOLDI(登録商標)-E101、同E201[何れも日産化学(株)製]、jER(登録商標)828、同807、同YX8000、同157S70[何れも三菱ケミカル(株)製]、リカレジン(登録商標)DME100[新日本理化(株)製]、セロキサイド2021P[(株)ダイセル製]、EPICLON(登録商標)HP-4700、同HP-4710、同HP-7200L[何れもDIC(株)製]、AVライト(登録商標)TEP-G[旭有機材(株)製]等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂は、単独で又は二種以上の混合物として使用することができる。
【0033】
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、その配合量は、前記ポリアミドイソイミド100質量部に対して1~30質量部、例えば5~20質量部とすることができる。
【0034】
[その他成分]
また、本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物は、必要に応じて慣用の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤、密着促進剤、増粘剤、増感剤、消泡剤、レベリング剤、塗布性改良剤、潤滑剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、耐光安定剤など)、可塑剤、溶解促進剤、充填材(シリカなど)、帯電防止剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0035】
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物には、塗布性を向上させる目的で界面活性剤を添加してもよい。このような界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。前記界面活性剤は、単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
これらの界面活性剤の中で、塗布性改善効果の高さからフッ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤の具体例としては、例えば、エフトップ(登録商標)EF-301、同EF-303、同EF-352[何れも三菱マテリアル電子化成(株)製]、メガファック(登録商標)F-171、同F-173、同F-482、同R-08、同R-30、同R-90、同BL-20[何れもDIC(株)製]、フロラードFC-430、同FC-431[何れもスリーエムジャパン(株)製]、アサヒガード(登録商標)AG-710[旭硝子(株)製]、サーフロンS-382、同SC-101、同SC-102、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC-106[何れもAGCセイミケミカル(株)製]等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物が界面活性剤を含む場合、その配合量は、ポリアミドイソイミド樹脂組成物の固形分の含有量に基づいて、0.01~5質量%、好ましくは0.01~3質量%、より好ましくは0.01~2質量%である。
【0036】
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物には、その塗布膜の平坦性を向上させる目的でシリカ等の無機微粒子を添加してもよい。このような無機微粒子としては市販品を好適に使用することができ、例えば、スノーテックス(登録商標)シリーズ、オルガノシリカゾルシリーズ[何れも日産化学(株)製]等が挙げられる。前記無機微粒子は、単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物が無機微粒子を含む場合、その配合量は、ポリアミドイソイミド樹脂組成物の固形分の含有量に基づいて、0.1~20質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは1~10質量%である。
【0037】
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物には、封止樹脂硬化物、基板及び/又はリー
ド電極との密着性を向上させる目的で、さらに密着促進剤を添加することができる。これらの密着促進剤としては、例えば、クロロトリメチルシラン、トリクロロ(ビニル)シラン、クロロ(ジメチル)(ビニル)シラン、クロロ(メチル)(ジフェニル)シラン、クロロ(クロロメチル)(ジメチル)シラン等のクロロシラン類;メトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、エトキシ(ジメチル)(ビニル)シラン、ジメトキシジフェニルシラン、トリエトキシ(フェニル)シラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシ(3-(N-ピペリジニル)プロピル)シラン等のアルコキシシラン類;ヘキサメチルジシラザン、N,N’-ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチル(トリメチルシリル)アミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類;イミダゾール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、ウラゾール、チオウラシル等の含窒素ヘテロ環化合物;1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア等の尿素類又はチオ尿素類などを挙げることができる。これら密着促進剤は、単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物が密着促進剤を含む場合、その配合量は、ポリアミドイソイミド樹脂組成物の固形分の含有量に基づいて、通常20質量%以下、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~5質量%である。
【0038】
[ポリアミドイソイミド樹脂組成物の調製方法]
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物は、上記式[1]で表される構造単位を有すするポリアミドイソイミドと、溶媒、また必要に応じてその他成分とを混合することにより得られる。
これら混合は、均一に混合できれば特に限定されるものではないが、例えば反応フラスコと撹拌羽根又はミキサー等を用いて行うことができる。
混合は粘度を考慮して必要に応じて加熱下で行われ、10~100℃の温度で0.5~1時間行われる。
【0039】
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物における固形分濃度は、例えば、0.1~100質量%、又は1~80質量%、又は10~80質量%、又は10~60質量%、あるいは0.5~30質量%、又は5~25質量%などとすることができる。ここで固形分とは、ポリアミドイソイミド樹脂組成物中の溶媒以外の全成分を指し、液状成分であっても固形分に含めるものとする。
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物は、任意の粘度に調整が可能であり、半導体装置密着層形成用の組成物として用いるための適切な粘度を有する。例えば、後述する0.1~30μm程度の厚さの膜を再現性よく得ること目的とする場合、通常、25℃で500~50,000mPa・s程度、好ましくは1,000~20,000mPa・s程度である。
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物の固形分濃度や粘度は、成膜効率や、塗膜の表面均一性を考慮して適宜選択すればよい。
【0040】
<半導体装置>
本発明の半導体装置は、半導体素子、半導体素子を搭載する基板及び/又は半導体素子と接合するリード電極、並びにこれらを封止する封止樹脂硬化物から成る半導体装置であって、前記封止樹脂硬化物と、前記基板及び/又は前記リード電極との界面の少なくとも一部に、すなわち、前記封止樹脂硬化物と前記基板との接触部の少なくとも一部、及び/又は、前記封止樹脂硬化物と前記リード電極との接触部少なくとも一部に、上記ポリアミドイソイミド樹脂組成物の異性化物からなる密着層を具備する。
【0041】
本発明の半導体装置は、半導体素子を搭載した基板及び/又は半導体素子と接合したリード電極の少なくとも一部に本発明に係るポリアミドイソイミド樹脂組成物を塗布し塗膜を得る工程、前記塗布したポリアミドイソイミド樹脂組成物の塗膜を熱異性化し密着層を形成する工程を含む製造方法により、得ることができる。また前記半導体装置の製造方法には、密着層形成後に、該密着層上に封止樹脂硬化物を形成する工程をさらに含むことができる。
【0042】
半導体素子を搭載した基板及び/又は半導体素子と接合したリード電極の少なくとも一部に本発明に係るポリアミドイソイミド樹脂組成物を塗布する工程において、該樹脂組成物を塗布する方法は特に限定されないが、例えば、フローコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法、ディスペンス法などを挙げることができる。
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物を塗布するのは、基板の全面であってもよいし、封止樹脂硬化物と接触する基板及び/又はリード電極の全面又はその一部であってもよい。封止樹脂硬化物と接触する基板及び/又はリード電極の全面に塗布することが好ましい。
【0043】
塗布したポリアミドイソイミド樹脂組成物の塗膜を熱異性化し密着層を形成する工程において、ポリアミドイソイミド樹脂組成物の塗膜を熱異性化する方法は特に限定されない。塗膜の熱異性化の条件としては、イソイミド結合をイミド結合に異性化する温度・時間条件であればよく、例えば100~350℃、あるいは150~250℃にて、通常、30分間~3時間程度、例えば30分間~2時間程度とすることができる。上記温度・時間条件とすることで、溶媒除去と同時にポリアミドイソイミドをポリアミドイミドに異性化させることができる。
熱異性化(加熱)に用いる器具は、例えばホットプレート、オーブン等が挙げられる。熱異性化雰囲気は、空気下であっても不活性ガス下であってもよく、また、常圧下であっても減圧下であってもよい。
【0044】
本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物から形成される塗膜の厚みは、異性化物の用途に応じて、0.01μm~10mm程度の範囲から選択でき、例えば、半導体装置の密着層に用いる場合は、例えば0.1~30μm、例えば0.2~20μm、例えば0.3~16μm、例えば0.5~16μm程度とすることができる。密着層として用いる場合、上記数値範囲に厚さを調整することで、基板及び/又はリード電極との接着を維持する効果を十分に担保する密着力を得ることができ、また溶媒の乾燥を容易とし、密着層中の溶媒の残留を極力防ぐことができ、それにより十分な密着性の実現に寄与することができる。
【0045】
本発明の密着層上に封止樹脂硬化物を形成する工程において、使用される封止樹脂及び封止樹脂硬化物を形成する方法は、特に限定されず、公知の封止樹脂及びその硬化物形成方法を使用できる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下のとおりである。
【0047】
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
装置:東ソー(株)製 HLC-8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC KD-801、同KD-803、同KD-805
カラム温度:40℃
溶媒:DMF(99体積%)、THF(1体積%)、臭化リチウム一水和物(30mmol/L)、リン酸無水物(30mmol/L)
検出器:RI
(2)ホットプレート
装置:アズワン(株)製 クリーンホットプレートMH-180CS
(3)トランスファ成形
装置:(株)メイホー製 ハンドモールド用小型トランスファー成形機ADM-5
成形圧力:9.8MPa
圧入時間:100秒
金型温度:175℃
(4)オーブン
装置:ヤマト科学(株)製 送風定温恒温器DNF400
(5)接合強度試験
装置:Nordson DAGE社製 万能型ボンドテスター シリーズ4000
せん断高さ:基板上面から100μm
せん断速度:100μm/秒
測定温度:室温(およそ23℃)
(6)膜厚測定
装置:(株)小坂研究所製 微細形状測定機ET4000A
【0048】
また、略記号は以下の意味を表す。
TAC:無水トリメリット酸クロリド[Aldrich社製]
133PB:1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン[東京化成工業(株)製]134PB:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン[東京化成工業(株)製]144PB:1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン[東京化成工業(株)製、純度95%]
BAPP:2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン[東京化成工業(株)製]
DPE:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
TEA:トリエチルアミン[東京化成工業(株)製]
TFAA:無水トリフルオロ酢酸[東京化成工業(株)製]
CPN:シクロペンタノン(標準沸点131℃)
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
IPA:イソプロピルアルコール
NMP:N-メチル-2-ピロリドン(標準沸点202℃)
THF:テトラヒドロフラン
BPA:ビスフェノールA型エポキシ樹脂[三菱ケミカル(株)製 jER(登録商標)828]
FL:トリス(7,8-エポキシオクチル)イソシアヌレート[日産化学(株)製 TEPIC(登録商標)-FL]
TGIC:トリグリシジルイソシアヌレート[日産化学(株)製 TEPIC(登録商標)-L]
UC:1,3,5-トリス(2-(2,2-ビス(グリシジルオキシメチル)ブトキシカルボニル)エチル)イソシアヌレート[日産化学(株)製 TEPIC(登録商標)-UC]
VL:トリス(4,5-エポキシペンチル)イソシアヌレート[日産化学(株)製 TEPIC(登録商標)-VL]
【0049】
[製造例1]PAII:(TAC-DPE/134PB)の製造
ジアミンとしてDPE4.6g(23mmоl)及び134PB6.7g(23mmоl)を、NMP192gに溶解させた。この溶液へ、溶液温度が5~10℃を保つように冷却しながら、TAC10.0g(47mmоl)を分割して加えた。さらに同条件で、TEA16.2g(160mmоl)を滴下した。滴下終了後、室温(およそ23℃)で16時間撹拌した。この溶液へ、溶液温度が5~10℃を保つように冷却しながら、TFAA23.9g(114mmоl)を滴下した。滴下終了後、室温(およそ23℃)で1時間撹拌した。反応混合物中の析出物をろ別し、NMP20gで洗浄した。ろ液と洗液の混合液をIPA2,000gに添加して再沈殿し、析出したポリマーをろ取した。得られた析出物を、IPA500gで2回スラリー洗浄を行った後、60℃で減圧乾燥を行うことで、目的とするポリアミドイソイミドを淡黄色固体として得た。
得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は19,000、分散度(Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量))は2.2であった。またIRスペクトルで、1820cm-1にイソイミド基C=N伸縮振動に由来する吸収を確認した。
【0050】
[製造例2]PAII:(TAC-DPE/133PB)の製造
ジアミンをDPE5.2g(26mmоl)及び133PB7.0g(24mmоl)に、反応溶媒をNMP200gに、再沈殿溶媒をIPA2,000g及びTEA20.9gの混合溶液に、それぞれ変更した以外は製造例1と同様に操作し、目的とするポリアミドイソイミドを淡黄色固体として得た。
得られたポリマーのMwは13,000、Mw/Mnは2.0であった。
【0051】
[製造例3]PAII:(TAC-DPE/BAPP)の製造
ジアミンをDPE5.2g(26mmоl)及びBAPP9.7g(24mmоl)に、反応溶媒をNMP224gに、再沈殿溶媒をIPA2,000g及びTEA20.9gの混合溶液に、それぞれ変更した以外は製造例1と同様に操作し、目的とするポリアミドイソイミドを淡黄色固体として得た。
得られたポリマーのMwは14,000、Mw/Mnは2.0であった。
【0052】
[製造例4]PAII:(TAC-134PB)の製造
ジアミンを134PB13.9g(47mmоl)に、反応溶媒をDMAc195gに、TEAを10.5g(104mmоl)にそれぞれ変更し、さらにTFAA滴下前にDMAc50gを添加した以外は製造例1と同様に操作し、目的とするポリアミドイソイミドを淡黄色固体として得た。
得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は126,000、分散度(Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量))は3.9であった。
【0053】
[製造例5]PAII:(TAC-BAPP)の製造
ジアミンをBAPP20.5g(50mmоl)に、反応溶媒をDMAc274gに、洗浄溶媒をDMAc20gに、再沈殿溶媒をIPA2,000g及びTEA20.9gの混合溶液に、それぞれ変更した以外は製造例1と同様に操作し、目的とするポリアミドイソイミドを淡黄色固体として得た。
得られたポリマーのMwは18,000、Mw/Mnは2.3であった。
【0054】
[比較製造例1]PAII:(TAC-DPE)の製造
ジアミンをDPE9.3g(46mmоl)に、反応溶媒をDMAc154gに、TEAを10.5g(104mmоl)に、洗浄溶媒をDMAc20gにそれぞれ変更し、さ
らにTFAA滴下前にDMAc77gを添加した以外は製造例1と同様に操作し、目的とするポリアミドイソイミドを淡黄色固体として得た。
得られたポリマーのMwは37,000、Mw/Mnは2.7であった。
【0055】
[比較製造例2]PAII:(TAC-144PB)の製造
ジアミンを144PB14.3g(純品換算で47mmоl)に、反応溶媒をDMAc197gに、TEAを10.5g(104mmоl)に、TFAAを12.0g(57mmоl)に、洗浄溶媒をDMAc20gにそれぞれ変更し、さらにTFAA滴下前にDMAc50gを添加した以外は製造例1と同様に操作し、目的とするポリアミドイソイミドを淡黄色固体として得た。
得られたポリマーのMwは41,000、Mw/Mnは2.5であった。
【0056】
[比較製造例3]PAI:(TAC-DPE/134PB)の製造
ジアミンとしてDPE4.6g(23mmоl)及び134PB6.7g(23mmоl)を、NMP192gに溶解させた。この溶液へ、溶液温度が5~10℃を保つように冷却しながら、TAC10.0g(47mmоl)を分割して加えた。さらに同条件で、TEA14.8g(47mmоl)を滴下した。滴下終了後、室温(およそ23℃)で16時間撹拌した。この溶液へ、溶液温度が5~10℃を保つように冷却しながら、ピリジン9.0g(114mmоl)を滴下した。さらに同条件で、無水酢酸29.1g(285mmоl)を滴下した。滴下終了後、60℃で5時間撹拌した。反応混合物中の析出物をろ別し、NMP20gで洗浄した。ろ液と洗液の混合液をIPA2,000gに添加して再沈殿し、析出したポリマーをろ取した。得られた析出物を、IPA500gで2回スラリー洗浄を行った後、60℃で減圧乾燥を行うことで、目的とするポリアミドイミドを淡黄色固体として得た。
得られたポリマーのMwは33,000、Mw/Mnは2.2であった。またIRスペクトルで、1375cm-1にイミド基C-N伸縮振動に由来する吸収を確認した。
【0057】
[実施例1]
ベース樹脂として製造例1で製造したPAII:(TAC-DPE/134PB)100質量部、及び溶媒としてCPN567質量部を混合し、ベース樹脂濃度15質量%の密着層形成用樹脂組成物を調製した。
この樹脂組成物を、銅基板[長さ40mm×幅10mm]にキャスティング塗布した。この塗膜を、空気雰囲気下、110℃のホットプレートで10分間、続けて210℃のホットプレートで50分間加熱することで、溶媒を除去するとともにポリアミドイソイミドをポリアミドイミドへ異性化させ、密着層を形成した。
この基板上に形成された密着層上に、トランスファ成形により、半導体封止用エポキシ樹脂[住友ベークライト(株)製 スミコン(登録商標)EME-G720A]を上底Φ2.90mm、下底Φ3.57mm、高さ4.00mmの円錐台形状に成形した。この成形体を、基板ごと175℃のオーブンで6時間ポストキュアした。
得られた成形体の室温(およそ23℃)における基板密着力を評価した。なお、基板密着力は、同様に作製した12個の成形体について基板との接合強度を測定し、その平均値により評価した。また、使用したベース樹脂のCPN溶解性を以下の基準により評価した。結果を表1に示す。なお、半導体装置用の密着層としての使用を考慮すると、基板密着力(接合強度)は15MPa以上であることが好ましい。
【0058】
[CPN溶解性]
A:室温(およそ23℃)において、ベース樹脂10質量部がCPN90質量部に完全に溶解する(溶解度10質量%以上)
C:室温(およそ23℃)において、ベース樹脂10質量部がCPN90質量部に完全には溶解しない(溶解度10質量%未満)
【0059】
[実施例2]
密着層形成用樹脂組成物の各組成及びベース樹脂濃度を、表1に記載のようにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様に成形体を作製し、評価した。結果を表1に併せて示す。
【0060】
【0061】
表1に示すように、実施例1,2の樹脂組成物から得られた密着層を有する成形体は、15MPa以上の高い接合強度(密着性)を示した。これは、低沸点溶媒に対し溶解性が高いベース樹脂を用いることで、空気雰囲気中でのワニスの乾燥時間が短縮され、銅基板と密着層との界面における酸化膜の形成が抑制され、密着性が向上したと推測される
【0062】
[実施例3~14]
銅基板を窒化アルミニウム基板に変更し、密着層形成用樹脂組成物の各組成及びベース樹脂濃度を、表2に記載のようにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様に成形体を作製し、評価した。結果を表2に併せて示す。
【0063】
[比較例1~3]
表2に記載したベース樹脂のCPN溶解性を実施例1同様に評価した。ポリアミドイミド(比較例1)及び表2に示すいずれのポリアミドイソイミド(比較例2~3)も、CPN溶解性がC(溶解度が10質量%未満)であったため、以降の評価は行わなかった。
【0064】
【0065】
表2に示すように、CPNに対する溶解性が高いポリアミドイソイミドをベース樹脂とした、実施例3~14の樹脂組成物から得られた密着層を有する成形体は、窒化アルミニウム基板に対しても高い接合強度(密着性)を示した。また、エポキシ樹脂をさらに添加することで、より高い密着性を示すことが確認された(実施例4,9~14)。
一方、ポリアミドイミドや(比較例1)、ポリアミドイソイミドであっても特定の構造単位を有さないもの(比較例2,3)については、CPN溶解性が低く、本願発明の密着層形成用樹脂組成物として不適であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
特定構造のポリアミドイソイミドと溶媒とを含む本発明のポリアミドイソイミド樹脂組成物は、熱異性化により層形成性を有し、半導体装置、例えば、半導体素子、金属電極、及び/又は基板と、半導体基板の封止樹脂硬化物との密着層などの電子材料分野において幅広く利用できる。特に、素子温度が高温となる次世代パワー半導体装置などにおいて、好適に利用することができる。