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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20231206BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20231206BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G15/00 303
H05B3/00 365J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020024346
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021128308
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】加來 佑太郎
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-142536(JP,A)
【文献】特開2008-309874(JP,A)
【文献】特開2018-066901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
13/34
15/00
15/20
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電させる帯電手段と、
画像情報に基づいて前記像担持体の帯電面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記像担持体上の静電潜像にトナーを付着させてトナー画像を形成する現像手段と、
前記像担持体上のトナー画像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体を加熱して前記トナー画像を前記記録媒体に定着させる定着手段と、
前記記録媒体上の画像形成領域を記録媒体幅方向に渡って分割した複数のブロックごとに画像の階調率を算出する階調率算出手段と、
前記階調率算出手段によって算出された前記階調率を前記ブロック同士で比較する階調率比較手段と、
前記露光手段の露光量を前記ブロックごとに制御する露光制御手段と、
を備え、
前記ブロックごとの前記階調率を比較して、同じ階調率のブロックがあった場合、同じ階調率のブロックのうち、前記定着手段の温度が相対的に高いブロックの露光量をあらかじめ設定された露光量よりも下げる画像形成装置。
【請求項2】
前記複数のブロックの中で最低温度のブロックの前記階調率と他のブロックの前記階調率を比較して、同じ階調率のブロックがあった場合、最低温度ではないブロックの露光量をあらかじめ設定された露光量よりも下げる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記複数のブロックの中で前記画像形成領域の記録媒体幅方向中央を基準に対称に配置されるブロック同士の前記階調率を比較して、同じ階調率であった場合、相対的に温度の高いブロックの露光量をあらかじめ設定された露光量よりも下げる請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記定着手段の温度に応じた前記記録媒体に対する定着後トナー付着量を算出するトナー付着量算出手段と、
前記トナー付着量算出手段によって算出された前記定着後トナー付着量を前記ブロック同士で比較するトナー付着量比較手段と、
を備え、
前記ブロックごとの前記階調率を比較して、同じ階調率のブロックがあった場合、さらに同じ階調率のブロック同士で前記定着後トナー付着量を比較し、相対的に温度の高いブロックの定着後トナー付着量が相対的に温度の低いブロックの定着後トナー付着量に近づくように、前記相対的に温度の高いブロックの露光量をあらかじめ設定された露光量よりも下げる請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記定着手段は、前記記録媒体を加熱する加熱部材を備え、
前記加熱部材は、
記録媒体幅方向に長手状に配置される基材と、
前記基材の長手方向に並んで配置された複数の発熱体と、
複数の電極部と、
前記複数の発熱体と前記複数の電極部とを接続する導電部と、
を有する請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記電極部は、第1電極部及び第2電極部を有し、
前記導電部は、前記発熱体と前記第1電極部とを接続する第1導電経路と、前記発熱体から前記基材の長手方向のうちの第1方向に伸びて前記第2電極部に接続される第2導電経路と、前記第2導電経路から前記第1方向とは反対の第2方向に分岐して前記第1導電経路を介さずに前記第2導電経路又は前記第2電極部に接続される第3導電経路の少なくとも一部と、を構成する請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ブロックは、前記複数の発熱体ごとに分割された領域である請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記複数のブロックの温度を検知する複数の温度検知手段を備える請求項1から7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記複数のブロックのうち、一部のブロックのみの温度を検知する温度検知手段を備え、
その他のブロックの温度は検知された前記一部のブロックの温度情報に基づき算出される請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
複数の前記記録媒体に対して同一の画像を連続して形成する場合は、最初の前記記録媒体に対する画像形成時に設定された露光量によってその後の前記記録媒体の画像形成を行う請求項1から9のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタなどの画像形成装置として、トナーを用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
一般的に、電子写真方式の画像形成装置には、用紙に転写されたトナー画像を用紙に定着させる定着装置が搭載されている{例えば、特許文献1(特開平6-75453号公報)参照}。定着装置は、用紙を加熱するヒータなどの加熱部材を備え、加熱部材の熱によって用紙上のトナーが溶融することにより画像が定着される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、用紙に対するトナーの定着性は、トナーが加熱される温度に依存する。このため、均一な定着性が得られるようにするには、用紙を加熱する加熱部材の温度がその全体に渡って均一であることが望ましい。
【0005】
しかしながら、加熱部材の特性や使用態様などにより、加熱部材の温度を用紙幅方向に渡って均一に維持することが困難な場合がある。そのような場合、画像の定着性にばらつきが生じるため、定着処理後の画像濃度にばらつきが生じる得る懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、像担持体と、前記像担持体の表面を帯電させる帯電手段と、画像情報に基づいて前記像担持体の帯電面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記像担持体上の静電潜像にトナーを付着させてトナー画像を形成する現像手段と、前記像担持体上のトナー画像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体を加熱して前記トナー画像を前記記録媒体に定着させる定着手段と、前記記録媒体上の画像形成領域を記録媒体幅方向に渡って分割した複数のブロックごとに画像の階調率を算出する階調率算出手段と、前記階調率算出手段によって算出された前記階調率を前記ブロック同士で比較する階調率比較手段と、前記露光手段の露光量を前記ブロックごとに制御する露光制御手段と、を備え、前記ブロックごとの前記階調率を比較して、同じ階調率のブロックがあった場合、同じ階調率のブロックのうち、前記定着手段の温度が相対的に高いブロックの露光量をあらかじめ設定された露光量よりも下げる画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱温度のばらつきに起因する画像濃度のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図3】前記定着装置の斜視図である。
図4】前記定着装置の分解斜視図である。
図5】前記定着装置が備える加熱ユニットの斜視図である。
図6】前記加熱ユニットの分解斜視図である。
図7】本実施形態に係るヒータの平面図である。
図8】前記ヒータの分解斜視図である。
図9】前記ヒータにコネクタが接続された状態を示す斜視図である。
図10】前記ヒータの平面図である。
図11】全ての抵抗発熱体を発熱させた場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
図12】一部の発熱部のみを発熱させた場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
図13】温度の高い部分と温度の低い部分の定着後のトナー付着量を比較して示イメージ図である。
図14】定着前と定着後のトナー付着量の関係を示すグラフである。
図15】温度の低い部分のトナー量を多くした場合の定着後のトナー量を比較して示すイメージ図である。
図16】温度の高い部分のトナー量を少なくした場合の定着後のトナー量を比較して示すイメージ図である。
図17】画像濃度を調整するための制御系を示すブロック図である。
図18】画像形成領域を分割した複数のブロックの一例を示す図である。
図19】複数のブロックをさらに用紙搬送方向に分割した分割エリアの一例を示す図である。
図20】定着温度と定着後のトナー付着量との関係を階調率ごとに示すグラフである。
図21】全ての抵抗発熱体に温度センサを設けた例を示す図である。
図22】一部の抵抗発熱体に温度センサを設けた例を示す図である。
図23】露光量と定着前のトナー付着量との関係を示すグラフである。
図24】露光量の制御フローを示す図である。
図25】小型化されたヒータを説明するための図である。
図26】他のヒータの構成を示す図である。
図27】他の定着装置の構成を示す図である。
図28】別の定着装置の構成を示す図である。
図29】さらに別の定着装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0011】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成部200と、転写部300と、定着部400と、記録媒体供給部500と、記録媒体排出部600と、を備えている。
【0012】
画像形成部200には、4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkと、露光装置6と、が設けられている。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されている。また、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外、基本的に同様の構成である。具体的に、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、表面に画像を担持する像担持体である感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電手段である帯電ローラ3と、感光体2上にトナー画像を形成する現像手段である現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング手段であるクリーニングブレード5と、を備えている。また、露光装置6は、画像情報に基づいて感光体2の帯電面を露光する露光手段(書き込み手段)である。
【0013】
転写部300には、記録媒体である用紙に画像を転写する転写手段としての転写装置8が設けられている。なお、画像が形成(転写)される記録媒体は、紙(普通紙、厚紙、薄紙、コート紙、ラベル紙、封筒などを含む)のほか、OHPシートなどの樹脂製のシートであってもよい。転写装置8は、中間転写ベルト11と、4つの一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13と、を有している。各一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11を介してそれぞれ別の感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2との間に、中間転写ベルト11と各感光体2とが接触する一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架する複数のローラの1つに接触し、中間転写ベルト11との間に二次転写ニップを形成している。
【0014】
定着部400には、用紙に画像を定着させる定着手段としての定着装置9が設けられている。定着装置9の構成については後で詳しく説明する。
【0015】
記録媒体供給部500には、用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15と、が設けられている。
【0016】
記録媒体排出部600には、用紙を画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙を載置する排紙トレイ18と、が設けられている。
【0017】
次に、図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置100の印刷動作について説明する。
【0018】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2、及び中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が回転することにより、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触して一旦停止される。
【0019】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkでは、まず、帯電ローラ3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面(帯電面)に露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。また、感光体2から中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーはクリーニングブレード5によって除去される。
【0020】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。そして、トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出され、一連の印刷動作が完了する。
【0021】
以上の印刷動作の説明は、フルカラー画像を形成するときの動作についてであるが、4つの作像ユニットのうち、いずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像ユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0022】
続いて、本実施形態に係る定着装置9の構成について説明する。
【0023】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、ヒータ22と、ヒータホルダ23と、ステー24と、温度センサ19と、を備えている。
【0024】
定着ベルト20は、用紙Pの未定着画像担持面側に配置される回転部材であって、未定着画像を用紙Pに定着させる定着部材である。定着ベルト20は、例えば、外径が25mmで厚みが40~120μmの筒状基体を有する無端状のベルト部材で構成される。基体の材料は、ポリイミドのほか、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル、SUSなどの金属材料であってもよい。また、耐久性を高めると共に離型性を確保するため、基体の外周面に、PFAやPTFEなどのフッ素樹脂から成る離型層が設けられてもよい。また、基体と離型層との間に、ゴムなどから成る弾性層が設けられてもよい。さらに、基体の内周面に、ポリイミドやPTFEなどから成る摺動層が設けられてもよい。
【0025】
加圧ローラ21は、定着ベルト20の外周面に対向するように配置された対向部材である。また、加圧ローラ21は、定着ベルト20の外周面に圧接されて、定着ベルト20との間にニップ部Nを形成する加圧部材でもある。加圧ローラ21は、例えば、外径が25mmであって、鉄製の芯金と、この芯金の外周面に設けられたシリコーンゴム製の弾性層と、弾性層の外周面に設けられたフッ素樹脂製の離型層とを有するローラなどにより構成される。
【0026】
ヒータ22は、定着ベルト20の内側に配置され、定着ベルト20や、定着ベルト20を介して用紙を加熱する加熱部材である。本実施形態では、ヒータ22が、板状の基材50と、基材50上に設けられた第1絶縁層51と、第1絶縁層51上に設けられた導体層52と、導体層52を被覆する第2絶縁層53と、により構成されている。導体層52は、発熱部60を有している。
【0027】
基材50は、例えば、ステンレス(SUS)や鉄、アルミニウム等の金属材料で構成される。また、基材50の材料として、金属材料のほか、セラミック、ガラス等を用いることも可能である。基材50にセラミックなどの絶縁材料を用いた場合は、基材50と導体層52との間の第1絶縁層51を省略することが可能である。一方、金属材料は、急速加熱に対する耐久性に優れ、加工もしやすいため、低コスト化を図るのに好適である。金属材料の中でも、特にアルミニウムや銅は熱伝導性が高く、温度ムラが発生しにくい点で好ましい。また、ステンレスはこれらに比べて安価に製造できる利点がある。
【0028】
各絶縁層51,53は、例えば、耐熱性ガラスなどの絶縁性を有する材料で構成される。また、これらの材料として、セラミックあるいはポリイミドなどを用いてもよい。また、基材50の第1絶縁層51や第2絶縁層53が設けられる面とは反対側の面に、別途絶縁層が設けられてもよい。
【0029】
本実施形態では、発熱部60が基材50よりもニップ部N側に配置されているが、これとは反対に、基材50が発熱部60よりもニップ部N側に配置されてもよい。ただしその場合は、発熱部60の熱が基材50を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材50は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。
【0030】
また、本実施形態では、ヒータ22から定着ベルト20への熱伝達効率を高めるため、ヒータ22が定着ベルト20の内周面に対して直接接触するように配置されている。また、これに限らず、ヒータ22は、定着ベルト20に対して、非接触、あるいは低摩擦シートなどを介して間接的に接触するように配置されてもよい。また、定着ベルト20に対するヒータ22の接触箇所は、定着ベルト20の外周面であってもよい。ただし、定着ベルト20の外周面の傷付きによる定着品質の低下を回避するため、ヒータ22が接触する面は、定着ベルト20の内周面であることが望ましい。
【0031】
ヒータホルダ23は、定着ベルト20の内側でヒータ22を保持する保持部材である。ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で構成されることが望ましい。特に、ヒータホルダ23が、LCPやPEEKなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で構成される場合は、ヒータホルダ23の耐熱性を確保しつつ、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制されるので、効率的に定着ベルト20を加熱することが可能である。
【0032】
ステー24は、定着ベルト20の内側に配置される補強部材である。ステー24によってヒータホルダ23のニップ部N側の面とは反対の面が支持されることにより、ヒータホルダ23が加圧ローラ21の加圧力によって撓むのが抑制される。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に均一な幅のニップ部Nが形成される。ステー24は、その剛性を確保するため、SUSやSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。
【0033】
温度センサ19は、ヒータ22の温度を検知する温度検知手段である。温度センサ19の検知結果に基づいてヒータ22の出力が制御されることにより、定着ベルト20の温度が所望の温度(定着温度)となるように維持される。温度センサ19は、接触型、非接触型のいずれでもよい。例えば、温度センサ19として、サーモパイル、サーモスタット、サーミスタ、NCセンサなどの公知の温度センサを適用可能である。
【0034】
本実施形態に係る定着装置9においては、印刷動作が開始されると、ヒータ22に電力が供給されることにより、発熱部60が発熱し、定着ベルト20が加熱される。また、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に搬送されることにより、未定着トナーが加熱及び加圧されてトナー画像が用紙Pに定着される。
【0035】
図3は、本実施形態に係る定着装置9の斜視図、図4は、その分解斜視図である。
【0036】
図3及び図4に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、矩形の枠状に形成された装置フレーム40を備えている。装置フレーム40は、一対の側壁部28及び前壁部27を一体に有する第1装置フレーム25と、後壁部29を有する第2装置フレーム26と、によって構成されている。第1装置フレーム25と第2装置フレーム26は、一対の側壁部28に設けられた複数の係合突起28aが後壁部29に設けられた複数の係合孔29aに係合することにより組み付けられる。
【0037】
定着ベルト20や加圧ローラ21は、一対の側壁部28によって支持される。このため、各側壁部28には、加圧ローラ21の回転軸などを挿通させるための挿通溝28bが設けられている。挿通溝28bは、その一端側(後壁部29側)で開口し、これとは反対側の端では開口しない突き当て部が形成されている。この突き当て部には、加圧ローラ21の回転軸を回転可能に支持する軸受30が設けられている。加圧ローラ21が各側壁部28によって支持された状態では、加圧ローラ21の軸方向の一端に設けられた駆動伝達部材としての駆動伝達ギヤ31が、側壁部28よりも外側に露出した状態で配置される。これにより、定着装置9が画像形成装置本体に搭載されると、駆動伝達ギヤ31が画像形成装置本体に設けられているギヤに連結され、駆動源からの駆動力を伝達可能な状態となる。また、駆動伝達ギヤ31に代えて、駆動伝達ベルトを張架するプーリやカップリング機構などの駆動伝達部材を用いてもよい。
【0038】
定着ベルト20の長手方向の両端には、定着ベルト20やステー24などを支持する一対の支持部材32が設けられている。各支持部材32には、ガイド溝32aが形成されている。図4に示すように、一対の支持部材32と、定着ベルト20、ステー24、ヒータホルダ23、及びヒータ22を組み付けた状態で、各支持部材32のガイド溝32aを各側壁部28の挿通溝28bの縁に沿わせながら各支持部材32を各側壁部28に組み付けることにより、定着ベルト20、ステー24、ヒータホルダ23及びヒータ22が、各側壁部28に支持される。また、各支持部材32が、後壁部29との間に設けられた付勢部材としての一対のバネ33によって付勢されることにより、定着ベルト20が加圧ローラ21へ加圧され、ニップ部が形成される。
【0039】
また、後壁部29には、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めを行う位置決め部としての孔部29bが設けられている。一方、画像形成装置本体には、位置決め部としての突起101(図4参照)が設けられている。この突起101が、定着装置9の孔部29bに対して挿入されることで、突起101と孔部29bが嵌合し、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めがなされる。なお、孔部29bが設けられる位置は、後壁部29の長手方向の中央よりもいずれか一方の端寄りの位置であることが好ましい。このような位置に孔部29bが設けられることにより、孔部29bが設けられない端側では、温度変化に伴う長手方向の伸縮が許容され、装置フレーム40の歪を抑制することが可能である。
【0040】
図5は、ヒータ22などを一対の支持部材32によって支持した加熱ユニットの斜視図、図6は、その加熱ユニットの分解斜視図である。
【0041】
図5に示すように、ヒータ22及びヒータホルダ23は、図5の左右方向へ長く伸びる長手状の部材である。ヒータ22及びヒータホルダ23は、定着装置に組み込まれ、定着装置が画像形成装置に搭載された状態で、ヒータ22及びヒータホルダ23の長手方向が定着装置を通過する用紙Pの幅方向U(以下、「記録媒体幅方向」という場合がある。)となるように配置される。また、図6に示すように、ヒータ22及びヒータホルダ23と同様にステー24も、記録媒体幅方向Uへ長手状に配置される。なお、本明細書中でいう「記録媒体幅方向」、「ヒータの長手方向」、「基材の長手方向」、「定着ベルトの長手方向」は、いずれも同じ方向を意味する。
【0042】
図5及び図6に示すように、ヒータホルダ23には、ヒータ22を収容するための矩形の収容凹部23aが設けられている。収容凹部23aは、ヒータ22とほぼ同等の形状及びサイズに形成されている。ただし、収容凹部23aの長手方向寸法L2はヒータ22の長手方向寸法L1よりも若干長く設定されている。このため、熱膨張によってヒータ22がその長手方向に伸びても、ヒータ22と収容凹部23aとの干渉を回避できる。
【0043】
一対の支持部材32は、定着ベルト20の内側に挿入されて定着ベルト20を支持するC字状のベルト支持部32bと、定着ベルト20の端面に接触して定着ベルト20の長手方向の移動(片寄り)を規制するフランジ状のベルト規制部32cと、ヒータホルダ23及びステー24の長手方向の両端近傍部分が挿入されてこれらを支持する支持凹部32dと、を有している。定着ベルト20は、その長手方向の両端にベルト支持部32bが挿入されることで、ベルト非回転時において基本的に周方向(ベルト回転方向)の張力が作用しない、いわゆるフリーベルト方式で支持される。
【0044】
また、図5及び図6に示すように、ヒータホルダ23の長手方向の中央よりも一端側には、位置決め部としての位置決め凹部23eが設けられている。この位置決め凹部23eに対して、図5及び図6における左側の支持部材32の嵌合部32eが嵌合することにより、ヒータホルダ23と支持部材32との位置決めがなされる。一方、図5及び図6における右側の支持部材32には、嵌合部32eは設けられておらず、ヒータホルダ23との長手方向の位置決めはされない。このように、支持部材32に対するヒータホルダ23の位置決めをヒータホルダ23の長手方向の片側のみとすることで、温度変化に伴うヒータホルダ23の長手方向の伸縮が許容される。
【0045】
また、図6に示すように、ステー24の長手方向の両端近傍部分には、各支持部材32に対するステー24の移動を規制する段差部24aが設けられている。各段差部24aは支持部材32に突き当たることで支持部材32に対するステー24の長手方向の移動を規制する。ただし、これら段差部24aのうち少なくとも一方は、支持部材32に対して隙間(ガタ)を介して配置される。このように、少なくとも一方の段差部24aが支持部材32に対して隙間を介して配置されることにより、温度変化に伴うステー24の伸縮が許容される。
【0046】
図7は、本実施形態に係るヒータ22の平面図、図8は、その分解斜視図である。
【0047】
図8に示すように、ヒータ22の基材50上には、第1絶縁層51を介して発熱部60を構成する複数の抵抗発熱体59が配置されている。各抵抗発熱体59は、上記記録媒体幅方向Uでもある基材50の長手方向Zに渡って一列に並んで配置されている。導体層52は、複数の抵抗発熱体59のほか、複数の電極部61と、複数の給電線(導電部)62と、が設けられている。各抵抗発熱体59は、複数の給電線62を介して複数の電極部61のいずれか2つに電気的に接続されている。図7に示すように、各抵抗発熱体59の全体及び各給電線62の大部分は、第2絶縁層53によって覆われ、絶縁性が確保されている。また、各抵抗発熱体59は、互いに間隔をあけて配列されているため、隣り合う抵抗発熱体59同士の間は絶縁領域(第2絶縁層53)が介在している。一方、各電極部61は、後述のコネクタが接続できるように、第2絶縁層53によってほとんど覆われておらず露出した状態となっている。
【0048】
抵抗発熱体59は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷などにより基材50に塗工し、その後、当該基材50を焼成することによって形成することができる。また、抵抗発熱体59の材料として、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO)などの抵抗材料を用いてもよい。
【0049】
電極部61及び給電線62は、抵抗発熱体59よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。例えば、電極部61及び給電線62は、銀(Ag)あるいは銀パラジウム(AgPd)などの材料を基材50上にスクリーン印刷することによって形成される。
【0050】
図9は、ヒータ22に給電部材としてのコネクタ70が接続された状態を示す斜視図である。
【0051】
図9に示すように、コネクタ70は、樹脂製のハウジング71と、ハウジング71に設けられた複数のコンタクト端子72と、を有している。各コンタクト端子72は、板バネで構成されている。また、各コンタクト端子72には、給電用のハーネス73が接続されている。
【0052】
図9に示すように、コネクタ70は、ヒータ22及びヒータホルダ23を一緒に挟むようにして取り付けられる。これにより、ヒータ22及びヒータホルダ23は、コネクタ70によって一緒に保持される。また、この状態で、コネクタ70の各コンタクト端子72の先端(接触部72a)が、それぞれ対応する電極部61に弾性的に接触(圧接)することにより、各コンタクト端子72と各電極部61とが電気的に接続される。また、図9に示すヒータ22の長手方向の端とは反対側の端にある電極部61に対しても、同様にコネクタ70が接続される。これにより、コネクタ70を介して画像形成装置に設けられた電源から発熱部60へ電力が供給可能な状態となる。
【0053】
以下、図10に基づき、本実施形態に係るヒータ22の構成についてさらに詳しく説明する。
【0054】
図10に示すように、本実施形態に係るヒータ22には、7つの抵抗発熱体59A~59Gと、3つの電極部61A~61Cと、これらを接続する4つの給電線62A~62Dと、が設けられている。3つの電極部61A~61Cのうち、2つの電極部61A,61Cは、各抵抗発熱体59A~59Gよりも基材50の長手方向Zの一端側(図10における左側)に配置され、残りの1つの電極部61Bは、各抵抗発熱体59A~59Gよりも基材50の長手方向Zの他端側(図10における右側)に配置されている。各抵抗発熱体59A~59Gは、一端側に配置される2つの電極部61A,61Cのうちのいずれかと、他端側に配置される1つの電極部61Bに対して、電気的に接続されている。
【0055】
詳しくは、7つの抵抗発熱体59A~59Gのうち、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fは、第1給電線62Aを介して第1電極部61Aに並列に接続されると共に、第2給電線62Bを介して第2電極部61Bに並列に接続されている。一方、両端の各抵抗発熱体59A,59Gは、第3給電線62C又は第4給電線62Dを介して第3電極部61Cに並列に接続されると共に、第2給電線62Bを介して第2電極部61Bに並列に接続されている。
【0056】
このような接続構造とすることで、本実施形態では、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fで構成される第1発熱部60Aと、両端の各抵抗発熱体59A,59Gで構成される第2発熱部60Bとを、互いに独立して発熱制御することが可能である。具体的に、第1電極部61A及び第2電極部61Bに電圧を印加して両電極部61A,61B間に電位差を生じさせた場合は、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fが通電し、第1発熱部60Aのみが発熱する。一方、第3電極部61C及び第2電極部61Bに電圧を印加して両電極部61C,61B間に電位差を生じさせた場合は、両端の各抵抗発熱体59A,59Gが通電するため、第2の発熱部60Bのみが発熱する。また、全ての電極部61A~61Cに電圧を印加して第1電極部61Aと第2電極部61の間及び第3電極部61Cと第2電極部61Bの間でそれぞれ電位差を生じさせた場合は、全ての抵抗発熱体59A~59Gが通電するため、第1の発熱部60A及び第2の発熱部60Bの両方が発熱する。例えば、A4サイズ(通紙幅:210mm)以下の比較的小さい幅サイズの用紙を通紙する場合は、第1の発熱部60Aのみを発熱させ、A3サイズ(通紙幅:297mm)以上の比較的大きい幅サイズの用紙を通紙する場合は、第1の発熱部60Aに加え第2の発熱部60Bも発熱させることで、用紙幅に応じた発熱領域とすることが可能である。
【0057】
ここで、本実施形態に係るヒータ22に生じる温度のばらつき(温度分布偏差)について説明する。
【0058】
一般的に、上記のような抵抗発熱体が給電線を介して電極部に接続されたヒータにおいては、抵抗発熱体を発熱させる際、給電線への通電により給電線でもわずかながら発熱が生じる。従って、給電線の発熱分布によっては、ヒータの温度分布にばらつきが生じる虞がある。特に、画像形成装置の高速化に伴い、発熱量を増大させるべく発熱体へ流れる電流を大きくすると、給電線で生じる発熱量も大きくなるため、その影響を無視できなくなる。
【0059】
図11では、全ての抵抗発熱体59A~59Gに対して電流が20%ずつ流れた場合に、抵抗発熱体59A~59Gごとに区画された各ブロック内で発生する各給電線62A,62B,62Dの発熱量とその合計値を示す。ここで、基材50の抵抗発熱体59が設けられている面に沿って長手方向Zと交差する方向Y(図10参照)を、基材50の「短手方向」と称すると、本実施形態では、各給電線62A,62B,62Dの短手方向Yに伸びる部分は短く、その部分における発熱量はわずかであることから無視し、長手方向Zに伸びる部分で発生する発熱量のみを算出している。また、発熱量(W)は下記式(1)で表されることから、図11の表に示す発熱量は、便宜的に各給電線に流れる電流(I)の二乗として算出している。よって、算出された発熱量の数値は、あくまで簡易的に算出された値であり、実際の発熱量とは異なるものである。
【0060】
【数1】
【0061】
発熱量の算出方法について、図11における第1ブロック及び第2ブロックを例に説明すると、第1ブロックにおいては、第1給電線62Aに流れる電流が100%、第4給電線62Dに流れる電流が20%であるので、それぞれの二乗の合計値である10400(10000+400)が第1ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、第2ブロックにおいては、第1給電線62Aに流れる電流が80%、第2給電線62Bに流れる電流が20%、第4給電線62Dに流れる電流が20%であるので、これらの二乗の合計値である7200(6400+400+400)が第2ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、他のブロックにおいても、同様にして発熱量を算出している。
【0062】
そして、各ブロックの合計発熱量を縦軸に表したものが、図11中のグラフである。このグラフを見てわかるように、各給電線の合計発熱量は、両端側のブロックで大きく、反対に中央側のブロックでは低くなる。また、中央に対して対称のブロック同士(例えば、第1ブロックと第7ブロック)における各給電線の合計発熱量も異なっている。このように、給電線の発熱分布には基材の長手方向Zに渡ってばらつきがあるため、このばらつきによってヒータの発熱分布にもばらつきが発生する。その結果、トナーの定着性が影響を受け、定着後の画像濃度にばらつきが生じ、画質が低下する虞がある。
【0063】
また、このような給電線の発熱に起因する温度のばらつきは、全ての抵抗発熱体を発熱させる場合(図11に示す例)だけに限らず、一部の抵抗発熱体を発熱させる場合でも発生し得る。特に、ヒータの小型化や画像形成装置の高速化に伴って、給電線に意図しない分流が生じた場合は、温度のばらつきが顕著となる虞がある。また、意図しない分流は、ヒータを短手方向に小型化すべく、給電線の幅をヒータの短手方向に小さくした結果、給電線の抵抗値が大きくなった場合や、画像形成装置を高速化するため、抵抗発熱体の発熱量を増加させるべく、抵抗発熱体の抵抗値を小さくした場合に、発生しやすくなる。すなわち、小型化や高速化に伴って給電線の抵抗値と抵抗発熱体の抵抗値とが相対的に接近した場合は、これまで通電しなかった経路にも通電し得る(意図しない分流が発生し得る)状態となる。
【0064】
例えば、図12に示すように、両端以外の各抵抗発熱体59B~59F(第1発熱部60A)のみに通電した場合に、図の左から2番目の抵抗発熱体59Bを通過した電流の一部が、その先の第2給電線62Bの分岐部Xにて第2電極部61B側とは反対側(図の左側)にも流れる意図しない分流が発生することがある。分流した電流は、図12における左端の抵抗発熱体59Aを通過し、さらに、第3給電線62C、第3電極部61C、第4給電線62Dを介して右端の抵抗発熱体59Gを通過した後、第2給電線62Bに合流する。
【0065】
このように、意図しない分流は、分岐部Xから図12中の一点鎖線K3で示す経路を通って第2給電線62Bに至る。また、このような意図しない分流は、本実施形態に係るヒータ22のような、ヒータ22の導電経路が、両端以外の各抵抗発熱体59B~59F(第1発熱部60A)と第1電極部61Aとを接続する第1導電経路K1と、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fからヒータ22の長手方向のうちの第1方向S1(図12における右方向)に伸びて第2電極部61Bに接続される第2導電経路K2と、第2導電経路K2から第1方向S1とは反対の第2方向S2(図12における左方向)に分岐して第1導電経路K1を介さずに第2導電経路K2又は第2電極部61Bに接続される分第3導電経路K3と、を少なくとも有する構成であれば生じ得る。なお、本実施形態では、第3導電経路K3を構成する部分として、第2給電線62Bの一部(分岐部Xから図12における左側の部分)と、第3給電線62Cと、第4給電線62Dのほか、両端の各抵抗発熱体59A,59G(第2発熱部60B)と、第3電極部61Cと、が含まれているが、第3導電経路K3が抵抗発熱体や電極部を含まない給電線のみの場合であっても、意図しない分流は生じる可能性がある。
【0066】
図12中の表及びグラフに、意図しない分流が発生した場合のブロックごとの各給電線62A,62B,62Dで生じる発熱量及びその合計値を示す。この例では、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fへ電流が20%ずつ均等に流れた場合に、そのうちの一部の電流が分岐部Xにおいて5%分流したとして、発熱させるブロック(第2ブロック~第6ブロック)ごとの各給電線62A,62B,62Dの発熱量を算出している。なお、発熱量の算出方法は、図11に示す例で説明した方法と同様である。
【0067】
図12中の表及びグラフに示すように、この場合も、給電線の合計発熱量は、両端側のブロックで大きく、反対に中央側のブロックでは低くなり、ばらつきが発生する。ただし、図12の場合は、図11とは反対に、グラフの右側のブロックよりも左側のブロックの温度が高くなっている。なお、図11及び図12では、電流が一方向に流れる様子を示しているが、ヒータ22に流れる電流は直流でもよいし交流でもよい。いずれにしても、このような給電線の温度分布にばらつきが生じると、定着後の画像濃度にばらつきが発生するため、画質が低下する虞がある。
【0068】
そこで、本実施形態に係る画像形成装置においては、上記のようなヒータの温度分布のばらつきに起因して生じる画像濃度のばらつきを抑制するため、以下のような対策を講じている。
【0069】
上記のように、ヒータの温度分布にばらつきがあると、トナーの定着性がその影響を受ける。具体的には、ヒータの温度が高い部分では、トナーが高い温度で加熱されるため、高い定着性が得られ、トナーが用紙から剥がれにくくなる。一方、トナーの温度が低い部分では、トナーが低い温度で加熱されるため、定着性が低下し、トナーが用紙から剥がれやすくなる。従って、トナー付着量をイメージ化した図13に示すように、用紙P上に同じ量(同じ濃度)のトナーTを付着させて定着処理したとしても、ヒータの温度分布にばらつきがある場合は、温度の低い部分Lの方が温度の高い部分HよりもトナーTが用紙Pから剥がれやすいため、用紙P上に残るトナーが少なくなる。その結果、温度の低い部分Lで画像濃度が低下し、画像濃度のばらつきが生じる。
【0070】
ここで、画像濃度を高める方法として、定着前の用紙に対するトナー付着量、すなわち感光体や中間転写ベルトなどから用紙に転移されるトナー量をあらかじめ多くする方法がある。定着前の用紙に対するトナー付着量と、定着後の用紙に対するトナー付着量は、図14に示すように、ほぼ比例関係が成立する。従って、定着前のトナー付着量を多くすれば、定着後のトナー付着量も多くなる傾向にある。
【0071】
しかしながら、定着後のトナー付着量は、トナーの加熱温度に依存するため、図15に示すように、温度の低い部分Lに多くのトナーを付着させたとしても、温度に応じて定着可能なトナーの最大量は変わらない。従って、温度の低い部分Lのトナー付着量を多くしても、さらに多くのトナーが用紙から剥がれるだけであり、画像濃度が上がることにはならない。
【0072】
一方、図16に示すように、温度の高い部分Hでは、定着前のトナー付着量をt0からt1に減らすことにより、定着後のトナー付着量を少なくする(画像濃度を低くする)ことが可能である。よって、本発明では、斯かる点に着目し、温度の高い部分Hにおけるトナー付着量をあらかじめ減らすことにより、温度の低い部分Lとの濃度差を低減し、画像濃度のばらつきを抑制できるようにしている。
【0073】
図17は、画像濃度を調整するための制御系を示すブロック図である。
【0074】
図17に示すように、本実施形態に係る画像形成装置は、階調処理手段41と、階調率算出手段42と、階調率比較手段43と、トナー付着量算出手段44と、トナー付着量比較手段45と、露光制御手段46と、を備えている。
【0075】
上記階調処理手段41は、原稿読取装置あるいは端末から入力された画像情報を階調処理する手段である。入力された画像情報は、文字や写真などの画像の種類や画像形成装置の機種ごとにあらかじめ設定された情報に基づいて適宜所定の階調が設定される。
【0076】
上記階調率算出手段42は、階調処理手段41からの階調情報に基づいて、用紙上の複数のブロックごとに画像の階調率を算出する手段である。本実施形態では、図18に示すように、用紙上で画像形成可能な最大の画像形成領域Jを、上記ヒータ22の抵抗発熱体59A~59Gごとに用紙幅方向に渡って7つのブロックJ1~J7に分割し、これらのブロックJ1~J7ごとに階調率が算出される。なお、分割されるブロックの数は、7つに限らず、少なくとも2つ以上であれば任意に設定可能である。階調率は、次のようにして求められる。
【0077】
まず、図19に示すように、抵抗発熱体59A~59Gごとに分割された上記7つのブロックJ1~J7を、さらに用紙搬送方向Vに渡って複数(例えば7つ)のエリアに分割し、分割された分割エリアgごとに階調率を算出する。分割エリアgごとの階調率は、下記式(2)を用いて算出することができる。
【0078】
【数2】
【0079】
上記式(2)中の「単位画素あたりのX階調」は、1つの分割エリア内の印字部分における単位画素あたりの階調を意味する。ここで「X階調」としているのは、一般的に、階調は、文字や写真、グラフなどの入力画像の種類によって異なり、また、階調は、画像形成装置の機種ごとの画像設計(トナーの色味、画像処理方法など)に応じても異なるため、一律に決定できないからである。従って、「X階調」には、画像の種類に応じて機種ごとに設定された最適の値を用いる。
【0080】
また、上記式(2)中の「印字画素数」は、同じ1つの分割エリア内に印字された部分の画素数である。また、「単位画素あたりの最大階調」及び「分割エリア全体の画素数」は、同じ1つの分割エリアにおける最大階調と全体の画素数を意味する。
【0081】
上記ブロックJ1~J7ごとの階調率を算出するには、まず、上記式(2)を用いて、分割エリアごとの階調率を算出する。そして、同じブロック内で算出された各分割エリアの階調率のうち、最大の階調率をそのブロックの階調率として特定する。
【0082】
また、1つの分割エリア内に形成される画像に、文字や写真、グラフが含まれる場合は、上記式(2)中の「単位画素あたりのX階調」を、文字、写真、グラフの種類ごとに分けた下記式(3)を用いて分割エリアごとの階調率を算出ればよい。なお、この場合、式(3)中の「単位画素あたりの最大階調」は、入力画像の種類によらず一定とする。
【0083】
【数3】
【0084】
さらに、「単位画素あたりの最大階調」が、文字、写真、グラフごとに異なる値に設定されている場合は、下記式(4)を用いて分割エリアごとの階調率を算出すればよい。
【0085】
【数4】
【0086】
上記階調率比較手段43は、階調率算出手段42によって算出された階調率をブロックJ1~J7同士で比較する手段である。階調率の比較は、全てのブロックJ1~J7を対象にして行うこともできるし、一部のブロック同士で行うこともできる。
【0087】
上記トナー付着量算出手段44は、階調率算出手段42によって算出された階調率と、図2に示す温度センサ19によって検知されたヒータ22の温度に基づき、ブロックJ1~J7ごとの温度に応じた用紙に対する定着後のトナー付着量を算出する手段である。図20に示すように、用紙に対する定着後のトナー付着量は、ヒータによって加熱される用紙の温度(定着温度)と画像の階調率とに応じて異なる。図20では、定着後のトナー付着量が、画像の階調率ごとに分けて表示されており、いずれの階調率の場合も温度(定着温度)が高くなるにつれて定着後のトナー付着量が増えている。トナー付着量算出手段44は、算出された階調率から各ブロックJ~J7の画像が図20中のどの階調率(グラフ)であるかを判断し、さらに、検知された各ブロックJ1~J7の温度からその温度に対応する定着後のトナー付着量を算出する。
【0088】
また、本実施形態では、ブロックJ1~J7ごとの各抵抗発熱体59A~59Gの温度情報をトナー付着量算出手段44が得られるように、図21に示すように、温度センサ19を、全ての抵抗発熱体59A~59Gに対応して1つずつ設けている。また、一部のブロックの温度を検知することにより、その検知された温度情報に基づいて、他のブロックの温度(推定値)を算出できる場合は、図22に示す例のように、一部の抵抗発熱体59A,59D,59Gのみに温度センサ19を設けてもよい。この場合、設置する温度センサ19の数を減らすことができ、小型化や低コスト化を図れるようになる。また、温度センサ19を全く設けずに、各ブロックの温度を全て予測してトナー付着量を算出するようにしてもよい。
【0089】
上記トナー付着量比較手段45は、トナー付着量算出手段44によって算出された定着後のトナー付着量を、ブロックJ1~J7同士で比較する手段である。定着後のトナー付着量の比較は、全てのブロックJ1~J7を対象にして行うこともできるし、一部のブロック同士で行うこともできる。
【0090】
上記露光制御手段46は、図1に示す露光装置6の露光量を制御する手段である。露光制御手段46は、階調処理手段41によって階調処理された画像情報に加え、階調率の比較結果、及び、定着後のトナー付着量の比較結果に基づいて、露光量を制御する。
【0091】
図23は、露光量を変化させた場合のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の用紙に対する付着量(定着前のトナー付着量)を示したものである。図23に示すように、いずれの色のトナーの場合も、露光量を上げると、用紙に対するトナー付着量が多くなり、反対に、露光量を下げると、用紙に対するトナー付着量が少なくなる。このように、露光量を調整することにより、感光体に付着するトナー量が変化するため、定着後のトナー付着量(画像濃度)も調整することが可能である。
【0092】
以下、図24を参照しつつ、露光量の制御フローについて説明する。
【0093】
図24に示す露光量の制御フローでは、まず、各ブロックJ1~J7のうち、比較対象となるブロックを抽出するためのブロックごとの階調率や、ヒータ温度、及び定着後のトナー付着量の各情報を取得する工程(Step1~Step5)が行われる。
【0094】
具体的には、図24に示すように、画像形成装置に対して印字要求がなされると、まず、上記階調処理手段41によって入力画像の階調処理がなされ(Step1)、階調処理された画像情報に基づきブロックJ1~J7ごとの階調率が階調率算出手段42によって算出される(Step2)。
【0095】
また、上記印字要求があると、定着装置のヒータの発熱が開始され(Step3)、ヒータの温度が所定の定着温度(画像定着可能な温度)に達した状態で、各ブロックJ1~J7の温度が上記温度センサ19によって検知される(Step4)。続いて、算出された階調率と検知された温度に基づきブロックJ1~J7ごとの定着後のトナー付着量が上記トナー付着量算出手段44によって算出される(Step5)。このように、本実施形態では、まず、ブロックJ1~J7ごとの階調率、ヒータ温度、及び定着後のトナー付着量の各情報が取得される。
【0096】
次に、比較対象となるブロックを抽出する工程(Step6~Step9)を実施する。
【0097】
具体的には、各ブロックJ1~J7のうち、ヒータの温度が最低温度となるブロックを抽出し、その最低温度のブロックの階調率と他のブロックの階調率とを比較して、同じ階調率のブロックがあるか否か判断する(Step6)。ここで、同じ階調率のブロックがあるか否か判断する理由は、そもそも同じ階調率のブロック同士でなければ画像濃度のばらつきを比較できない、あるいは比較が困難なためである。また、画像濃度の比較が困難であるということは、目視によって判別可能なほどの顕著な画質低下にはならないので、濃度調整を行う必要性も低い。そのため、階調率が同じブロック同士を比較対象として抽出するようにしている。また、最低温度のブロックを比較対象として抽出する理由は、他のブロックに対する温度差が大きく、これに伴う画像濃度のばらつきも大きくなるので、そのようなばらつきが大きい濃度差を優先して改善すべきだからである。
【0098】
例えば、図11に示すヒータの温度分布を例に説明すると、この場合、ヒータによって加熱される温度が最低温度となるブロックは、第3ブロック又は第4ブロックである。このように、最低温度が同じブロックが複数ある場合は、画像形成領域の記録媒体幅方向中央に位置する第4ブロックを比較対象として選択する。ここで、第4ブロックを選択するのは、画像形成領域の中央の方が中央以外の部分よりも画像濃度のばらつきが目立ちやすいからである。なお、これに限らず、画像の種類やその他の画像形成の条件などによって、第3ブロックを選択してもよい。
【0099】
最低温度のブロックと同じ階調率のブロックがあるか否かは、上記階調率比較手段43によって判断される。その結果、最低温度のブロックと同じ階調率のブロックがあった場合は、さらに、上記トナー付着量比較手段45によって同じ階調率のブロック同士で定着後のトナー付着量の比較が行われる(Step7)。
【0100】
一方、最低温度のブロックと同じ階調率のブロックが無かった場合は、次の比較対象となるブロックを探すため、画像形成領域の記録媒体幅方向中央を基準に対称に配置されるブロック同士の階調率を比較する(Step8)。このように、対称に配置されるブロック同士を比較対象とするのは、対称となる部分同士の画像濃度にばらつきがあった場合に、そのばらつきが目立ちやすい傾向にあるからである。なお、この場合も、階調率の比較は階調率比較手段43によって行われる。
【0101】
そして、対称に配置されるブロック同士の階調率を比較した結果、同じ階調率のブロックが無かった場合は、比較対象となるブロックを抽出することができなかったとして(画像濃度のばらつきを比較できないとして)、露光量の調整を行わずに(Step14)、画像形成を開始する。一方、同じ階調率のブロックがあった場合は、さらに、トナー付着量比較手段45によって同じ階調率のブロック同士で定着後のトナー付着量の比較が行われる(Step8)。
【0102】
上記のように、比較対象となるブロックが抽出されたそれぞれの場合に、同じ階調率のブロック同士の定着後のトナー付着量が比較された結果(Step7、Step9)、定着後のトナー付着量が互いに同じである場合は、画像濃度も同じであるので(画像濃度のばらつきが無いので)、露光量の調整は行わない(Step11、Step13)。なお、定着後のトナー付着量が同じであるか否かの判断は、厳密に一致するか否かを判断する場合に限らず、誤差などを含めた一定の範囲内で一致するか否かで判断してもよい。
【0103】
一方、定着後のトナー付着量が互いに異なる場合は、画像濃度のばらつきが生じる虞があると判断し露光量の調整が行われる(Step10、Step12)。
【0104】
露光量の調整は、上記露光制御手段46によって行われる。具体的には、定着後のトナー付着量が多いと予想されるブロック、すなわち相対的に温度の高いブロックの露光量をあらかじめ設定された露光量よりも下げるように制御する。すなわち、最低温度のブロックを比較対象とした場合は、抽出されたブロック(最低温度ではないブロック)の露光量をあらかじめ設定された露光量よりも下げる制御を行う。また、対称に配置されるブロック同士を比較対象として抽出した場合は、温度の高い方のブロックの露光量をあらかじめ設定された露光量よりも下げる制御を行う。
【0105】
このように、同じ階調率のブロックのうち、相対的に温度が高いブロックにおいて、露光量をあらかじめ設定された露光量よりも下げる制御を行うことにより、図16に示すように、温度の高い部分Hにおいて付着されるトナー量t1を、あらかじめ画像情報(階調情報)に基づいて設定されるトナー量t0よりも少なくすることができる。これにより、定着後の温度の高い部分Hに付着されるトナー量t2を、定着後の温度の低い部分Lに付着されるトナー量t3に近づけることができるので、温度の高い部分Hと温度の低い部分Lとでの画像濃度のばらつきを抑制することができる。
【0106】
上述の制御フローでは、比較対象となるブロックを抽出するにあたって、まず、最低温度のブロックと同じ階調率のブロックがあるか否か判断し、同じ階調率のブロックが無かった場合に、次に、対称に配置されるブロック同士で同じ階調率のブロックがあるか否か判断しているが、最低温度と同じ階調率のブロックがあった場合でも、さらに、対称に配置されるブロック同士で同じ階調率のブロックがあるか否か判断してもよい。その場合、最低温度と同じ階調率のブロックと、対称に配置されるブロックの両方で、露光量の調整を行ってもよい。また、最低温度のブロックと同じ階調率のブロックを探す工程と、対称に配置されるブロック同士で同じ階調率のブロックを探す工程の、いずれか一方のみを行う制御フローであってもよい。
【0107】
また、上述の露光量の調整は、カラー画像を形成する各色トナーそれぞれ(全色)に行ってもよいし、一部の色のトナーのみについて行ってもよい。また、複数の用紙に対して同一の画像を連続して形成する場合は、最初用紙に対する画像形成時に設定された露光量によってその後の用紙の画像形成を行うようにしてもよい。
【0108】
以上のように、本発明によれば、ヒータの長手方向に渡って温度のばらつきがあったとしても、ヒータの温度分布に基づいて露光量を調整することにより、ヒータの温度分布に起因する画像濃度のばらつきを抑制できるようになる。これにより、ヒータの温度分布のばらつきに起因する画像品質の低下の問題を改善できるようになる。また、ヒータの温度分布のばらつきに起因する画像品質の低下の問題を改善できることにより、温度分布のばらつきが発生しやすい小型のヒータや、高速化のために発熱量を増大させたヒータを用いた構成にも対応できるようになる。
【0109】
従って、本発明は、特に次のような小型のヒータを備える画像形成装置に適用された場合に大きな効果が期待できる。具体的は、図25に示すような基材50の短手方向寸法Qに対する抵抗発熱体59の短手方向寸法Rの比(R/Q)が、25%以上となるヒータ22に対して本発明を適用した場合に、大きな効果を期待できる。さらに、このような短手方向の寸法比(R/Q)が、40%以上となるヒータ22であれば、本発明を適用することの効果はより大きくなる。なお、図25に示す例では、ヒータ22の基材50が長方形に形成されているため、基材50の短手方向寸法Qはどの長手方向位置でも同じ寸法であるが、基材50の縁に凹凸があり、長手方向Zの位置によって短手方向寸法Qが変化する場合は、抵抗発熱体59が配置されている長手方向範囲内で基材50の短手方向寸法Qが最小となる部分を対象にして、上記短手方向の寸法比(R/Q)が成立すればよい。
【0110】
また、ヒータにおける温度のばらつきを抑制するために、PTC特性を有する抵抗発熱体を用いてもよい。PTC特性とは、温度が高くなると抵抗値が高くなる(一定電圧をかけた場合に、ヒータ出力が下がる)特性である。PTC特性を有する発熱部とすることで、低温では高出力によって高速で立ち上がり、高温では低出力により過昇温を抑制することができる。例えば、PTC特性のTCR係数を300~4000ppm/度程度にすれば、ヒータに必要な抵抗値を確保しながら、低コスト化を図れる。より好ましくは、TCR係数を500~2000ppm/度とするのがよい。
【0111】
抵抗温度係数(TCR)は、下記式(5)を用いて算出することができる。式(5)中のT0は基準温度、T1は任意温度、R0は基準温度T0における抵抗値、R1は任意温度T1における抵抗値である。例えば、図10に示す上述のヒータ22において、第1電極部61Aと第2電極部61Bとの間の抵抗値が、25℃(基準温度T0)で10Ω(抵抗値R0)であり、125℃(任意温度T1)で12Ω(抵抗値R1)であった場合は、式(5)から抵抗温度係数は2000ppm/℃となる。
【0112】
【数5】
【0113】
また、定着装置が備えるヒータは、図25に示すようなブロック状(四角形状)の抵抗発熱体59を有するヒータ22に限らず、図26に示すような、直線を折り返したような形状の抵抗発熱体59を有するヒータ22や、その他の形状の抵抗発熱体を有するヒータであってもよい。
【0114】
また、画像形成装置が備える定着装置は、上述の定着装置に限らず、図27図29に示すような定着装置であってもよい。以下、図27図29に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
【0115】
図27に示す定着装置9は、定着ベルト20の加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ90が配置されている点において、上述の定着装置とは異なっている。この場合、押圧ローラ90とヒータ22とによって定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材91が配置されている。ニップ形成部材91は、ステー24によって支持されており、ニップ形成部材91と加圧ローラ21とによって定着ベルト20を挟んでニップ部Nを形成している。
【0116】
次に、図28に示す定着装置9では、上述の押圧ローラ90が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、図27に示す定着装置9と同じ構成である。
【0117】
続いて、図29に示す定着装置9では、定着ベルト20のほかに加圧ベルト92が設けられ、加熱ニップ(第1ニップ部)N1と定着ニップ(第2ニップ部)N2とが分けて構成されている。すなわち、加圧ローラ21に対して定着ベルト20側とは反対側にも、ニップ形成部材91とステー93が配置され、ニップ形成部材91とステー93を内包するように加圧ベルト92が配置されている。その他は、図2に示す定着装置9と同じ構成である。
【0118】
このような、図27図29に示すような定着装置を備える画像形成装置においても、本発明を適用することにより、ヒータの温度分布のばらつきに起因する画像濃度のばらつきを抑制でき、小型化や高速度化に対応できるようになる。
【0119】
また、本発明は、図1に示すようなカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0120】
2 感光体(像担持体)
3 帯電ローラ(帯電手段)
4 現像装置(現像手段)
6 露光装置(露光手段)
8 転写装置(転写手段)
9 定着装置(定着手段)
19 温度センサ(温度検知手段)
22 ヒータ(加熱部材)
41 階調処理手段
42 階調率算出手段
43 階調率比較手段
44 トナー付着量算出手段
45 トナー付着量比較手段
46 露光制御手段
50 基材
59 抵抗発熱体(発熱体)
60 発熱部
61 電極部
62 給電線(導電部)
100 画像形成装置
J 画像形成領域
J1~J7 ブロック
K1 第1導電経路
K2 第2導電経路
K3 第3導電経路
S1 第1方向
S2 第2方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0121】
【文献】特開平6-75453号公報
図1
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