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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】レーザアニールシステム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/20 20060101AFI20231206BHJP
   H01L 21/268 20060101ALI20231206BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231206BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L21/268 T
H01L21/268 F
H01L29/78 627G
H01L21/268 G
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021503369
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2019009078
(87)【国際公開番号】W WO2020179056
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】妹川 要
(72)【発明者】
【氏名】納富 良一
(72)【発明者】
【氏名】若林 理
(72)【発明者】
【氏名】池上 浩
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-032952(JP,A)
【文献】特開2007-299911(JP,A)
【文献】国際公開第2016/151723(WO,A1)
【文献】特表2008-546188(JP,A)
【文献】特開2002-329666(JP,A)
【文献】特開2006-135192(JP,A)
【文献】特開2001-060551(JP,A)
【文献】特開2009-032942(JP,A)
【文献】特開2007-221062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 21/268
H01L 21/336
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のパルス時間幅の第1のパルスレーザ光と前記第1のパルス時間幅よりも短い第2のパルス時間幅の第2のパルスレーザ光を出力するレーザシステムと、
前記第1のパルスレーザ光及び前記第2のパルスレーザ光を被照射物に照射するレーザアニール装置と、を含み、
前記レーザアニール装置は、
前記第1のパルスレーザ光及び前記第2のパルスレーザ光を前記被照射物に導く照射光学系と、
前記被照射物に対する前記第1のパルスレーザ光及び前記第2のパルスレーザ光の照射位置を相対的に移動させる移動機構と、
前記第1のパルスレーザ光を前記被照射物に照射し、前記第1のパルスレーザ光の照射後に、前記被照射物における前記第1のパルスレーザ光が照射された領域に前記第2のパルスレーザ光を照射するように前記レーザシステムを制御する制御部と、
を含み、
前記レーザシステムは、
パルスレーザ光を出力するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から出力されたパルスレーザ光をパルスストレッチする光学パルスストレッチャと、
前記光学パルスストレッチャの光路を切り替えるように前記光路上に配置する光学素子を切り替える光学素子切替ユニットと、を含み、
前記制御部は、前記光学素子切替ユニットを制御して前記光路上の前記光学素子の切り替えを行うことにより、前記第1のパルスレーザ光と前記第2のパルスレーザ光の出力を制御する、
ーザアニールシステム。
【請求項2】
請求項に記載のレーザアニールシステムであって、
前記第1のパルスレーザ光が照射される前記被照射物は非晶質半導体であり、
前記制御部は、前記第1のパルスレーザ光を前記非晶質半導体に照射することによって前記非晶質半導体を多結晶化し、前記多結晶化した半導体結晶の領域に、第2のパルスレーザ光を照射することにより前記半導体結晶のリッジの高さを低減させるように前記レーザシステム及び前記移動機構を制御する、
レーザアニールシステム。
【請求項3】
請求項に記載のレーザアニールシステムであって、
前記第1のパルスレーザ光のフルーエンスと前記第1のパルス時間幅は、前記非晶質半導体を完全溶融させる条件に設定され、
前記第2のパルスレーザ光のフルーエンスと前記第2のパルス時間幅は、前記多結晶化によって生成された前記半導体結晶の前記リッジの部分を低くさせる条件に設定される、
レーザアニールシステム。
【請求項4】
第1のパルス時間幅の第1のパルスレーザ光と前記第1のパルス時間幅よりも短い第2のパルス時間幅の第2のパルスレーザ光を出力するレーザシステムと、
前記第1のパルスレーザ光及び前記第2のパルスレーザ光を被照射物に照射するレーザアニール装置と、を含み、
前記レーザアニール装置は、
前記第1のパルスレーザ光及び前記第2のパルスレーザ光を前記被照射物に導く照射光学系と、
前記被照射物に対する前記第1のパルスレーザ光及び前記第2のパルスレーザ光の照射位置を相対的に移動させる移動機構と、
前記第1のパルスレーザ光を前記被照射物に照射し、前記第1のパルスレーザ光の照射後に、前記被照射物における前記第1のパルスレーザ光が照射された領域に前記第2のパルスレーザ光を照射するように前記レーザシステムを制御する制御部と、
を含むレーザアニールシステムであって、
前記レーザシステムは、
パルスレーザ光を出力するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から出力されたパルスレーザ光をパルスストレッチする光学パルスストレッチャと、
前記光学パルスストレッチャの遅延光路に配置されるシャッタと、を含み、
前記制御部は、前記シャッタの開閉を制御することにより、前記第1のパルスレーザ光と前記第2のパルスレーザ光の出力を制御する、
レーザアニールシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザアニールシステムであって、
前記第1のパルスレーザ光が照射される前記被照射物は非晶質半導体であり、
前記制御部は、前記第1のパルスレーザ光を前記非晶質半導体に照射することによって前記非晶質半導体を多結晶化し、前記多結晶化した半導体結晶の領域に、第2のパルスレーザ光を照射することにより前記半導体結晶のリッジの高さを低減させるように前記レーザシステム及び前記移動機構を制御する、
レーザアニールシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザアニールシステムであって、
前記第1のパルスレーザ光のフルーエンスと前記第1のパルス時間幅は、前記非晶質半導体を完全溶融させる条件に設定され、
前記第2のパルスレーザ光のフルーエンスと前記第2のパルス時間幅は、前記多結晶化によって生成された前記半導体結晶の前記リッジの部分を低くさせる条件に設定される、
レーザアニールシステム。
【請求項7】
第1のパルス時間幅の第1のパルスレーザ光と前記第1のパルス時間幅よりも短い第2のパルス時間幅の第2のパルスレーザ光を出力するレーザシステムと、
前記第1のパルスレーザ光及び前記第2のパルスレーザ光を被照射物に照射するレーザアニール装置と、を含み、
前記レーザアニール装置は、
前記第1のパルスレーザ光及び前記第2のパルスレーザ光を前記被照射物に導く照射光学系と、
前記被照射物に対する前記第1のパルスレーザ光及び前記第2のパルスレーザ光の照射位置を相対的に移動させる移動機構と、
前記第1のパルスレーザ光を前記被照射物に照射し、前記第1のパルスレーザ光の照射後に、前記被照射物における前記第1のパルスレーザ光が照射された領域に前記第2のパルスレーザ光を照射するように前記レーザシステムを制御する制御部と、
を含むレーザアニールシステムであって、
前記レーザシステムは、
パルスレーザ光を出力する第3のレーザ装置と、
前記第3のレーザ装置から出力された前記パルスレーザ光をパルスストレッチする光学パルスストレッチャと、
前記第3のレーザ装置と前記光学パルスストレッチャとの間の光路に配置されたビームスプリッタと、を含み、
前記光学パルスストレッチャによってパルスストレッチされたレーザ光である前記第1のパルスレーザ光が出力され、
前記ビームスプリッタによって分岐されたレーザ光である前記第2のパルスレーザ光が出力される、
レーザアニールシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のレーザアニールシステムであって、
前記第1のパルスレーザ光が照射される前記被照射物は非晶質半導体であり、
前記制御部は、前記第1のパルスレーザ光を前記非晶質半導体に照射することによって前記非晶質半導体を多結晶化し、前記多結晶化した半導体結晶の領域に、第2のパルスレーザ光を照射することにより前記半導体結晶のリッジの高さを低減させるように前記レーザシステム及び前記移動機構を制御する、
レーザアニールシステム
【請求項9】
請求項8に記載のレーザアニールシステムであって、
前記第1のパルスレーザ光のフルーエンスと前記第1のパルス時間幅は、前記非晶質半導体を完全溶融させる条件に設定され、
前記第2のパルスレーザ光のフルーエンスと前記第2のパルス時間幅は、前記多結晶化によって生成された前記半導体結晶の前記リッジの部分を低くさせる条件に設定される、
レーザアニールシステム
【請求項10】
請求項7に記載のレーザアニールシステムであって、
前記照射光学系は、所定のマスクパターンを有するマスクを含み、
前記マスクパターンに応じた前記第1のパルスレーザ光及び前記第2のパルスレーザ光の照明パターンが前記被照射物に照射される、
レーザアニールシステム
【請求項11】
請求項10に記載のレーザアニールシステムであって、
前記照射光学系は、前記マスクの前記マスクパターンを前記被照射物上に転写結像させる転写光学系を含む、
レーザアニールシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のレーザアニールシステムであって、
前記転写光学系は、前記被照射物上において薄膜トランジスタを形成する複数の領域の各々に、前記マスクパターンを結像させる投影光学系である、
レーザアニールシステム
【請求項13】
第1のパルス時間幅の第1のパルスレーザ光と前記第1のパルス時間幅よりも短い第2のパルス時間幅の第2のパルスレーザ光を出力するレーザシステムと、
前記第1のパルスレーザ光及び前記第2のパルスレーザ光を被照射物に照射するレーザアニール装置と、を含み、
前記レーザアニール装置は、
前記第1のパルスレーザ光及び前記第2のパルスレーザ光を前記被照射物に導く照射光学系と、
前記被照射物に対する前記第1のパルスレーザ光及び前記第2のパルスレーザ光の照射位置を相対的に移動させる移動機構と、
前記第1のパルスレーザ光を前記被照射物に照射し、前記第1のパルスレーザ光の照射後に、前記被照射物における前記第1のパルスレーザ光が照射された領域に前記第2のパルスレーザ光を照射するように前記レーザシステムを制御する制御部と、
を含むレーザアニールシステムであって、
前記レーザシステムは、
パルスレーザ光を出力する第4のレーザ装置と、
前記第4のレーザ装置から出力された前記パルスレーザ光をパルスストレッチする光学パルスストレッチャと、
前記第4のレーザ装置と前記光学パルスストレッチャとの間の光路に配置されたリターダと、を含み、
前記光学パルスストレッチャによってパルスストレッチされた第1の偏光成分のレーザ光である前記第1のパルスレーザ光が出力され、
前記光学パルスストレッチャによってパルスストレッチされない第2の偏光成分のレーザ光である前記第2のパルスレーザ光が出力される、
レーザアニールシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のレーザアニールシステムであって、
前記第1のパルスレーザ光が照射される前記被照射物は非晶質半導体であり、
前記制御部は、前記第1のパルスレーザ光を前記非晶質半導体に照射することによって前記非晶質半導体を多結晶化し、前記多結晶化した半導体結晶の領域に、第2のパルスレーザ光を照射することにより前記半導体結晶のリッジの高さを低減させるように前記レーザシステム及び前記移動機構を制御する、
レーザアニールシステム
【請求項15】
請求項14に記載のレーザアニールシステムであって、
前記第1のパルスレーザ光のフルーエンスと前記第1のパルス時間幅は、前記非晶質半導体を完全溶融させる条件に設定され、
前記第2のパルスレーザ光のフルーエンスと前記第2のパルス時間幅は、前記多結晶化によって生成された前記半導体結晶の前記リッジの部分を低くさせる条件に設定される、
レーザアニールシステム
【請求項16】
請求項13に記載のレーザアニールシステムであって、
前記照射光学系は、所定のマスクパターンを有するマスクを含み、
前記マスクパターンに応じた前記第1のパルスレーザ光及び前記第2のパルスレーザ光の照明パターンが前記被照射物に照射される、
レーザアニールシステム
【請求項17】
請求項16に記載のレーザアニールシステムであって、
前記照射光学系は、前記マスクの前記マスクパターンを前記被照射物上に転写結像させる転写光学系を含む、
レーザアニールシステム
【請求項18】
請求項17に記載のレーザアニールシステムであって、
前記転写光学系は、前記被照射物上において薄膜トランジスタを形成する複数の領域の各々に、前記マスクパターンを結像させる投影光学系である、
レーザアニールシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体結晶薄膜の製造方法、及びレーザアニールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板を用いたフラットパネルディスプレイの駆動素子には薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が用いられている。高精細ディスプレイの実現には、駆動力の高いTFTの作製が必要となる。TFTのチャネル材である半導体薄膜には、多結晶シリコンやIGZO(Indium gallium zinc oxide)などが用いられている。多結晶シリコンやIGZOは、アモルファスシリコンよりもキャリア移動度が高く、トランジスタのオン/オフ特性に優れている。
【0003】
また、半導体薄膜は、より高機能なデバイスを実現する3D-ICへの適用も期待されている。3D-ICは、集積回路デバイスの最上層にセンサや増幅回路、CMOS回路などの能動素子を形成することにより実現される。そのため、より高品質な半導体薄膜を製造する技術が求められている。
【0004】
さらに、情報端末機器の多様化にともない、小型・軽量で消費電力が少なく自由に折り曲げが可能なフレキシブルディスプレイやフレキシブルコンピュータに対する要求が高まりつつある。そのため、PET(Polyethylene terephthalate)などのプラスティック基板上に高品質な半導体薄膜を形成する技術の確立が求められている。
【0005】
ガラス基板上、集積回路上、あるいはプラスティック基板上に高品質な半導体薄膜を形成するためには、これらの基板に熱損傷を与えることなく半導体薄膜の結晶化を行う必要がある。ディスプレイに用いられるガラス基板では400℃、集積回路では400℃、プラスティック基板であるPETでは200℃以下のプロセス温度が求められている。
【0006】
半導体薄膜の下地基板に熱損傷を与えることなく結晶化を行う技術としてレーザアニール法が用いられている。この方法では、熱拡散による基板への損傷を抑制するため、上層の半導体薄膜で吸収されるパルス紫外レーザ光が用いられる。
【0007】
半導体薄膜がシリコンである場合には、波長351nmのXeFエキシマレーザ、波長308nmのXeClエキシマレーザ、波長248nmのKrFエキシマレーザなどが用いられる。これら紫外領域のガスレーザは、固体レーザと比較してレーザ光の干渉性が低く、レーザ光照射面でのエネルギ均一性に優れ、高いパルスエネルギで広い領域を均一にアニールできるという特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2005/0211987号
【文献】特開2007-287866号公報
【文献】米国特許第6117752号
【文献】米国特許出願公開第2018/0040718号
【文献】国際公開第2018/047220号
【概要】
【0009】
本開示の1つの観点に係る半導体結晶薄膜の製造方法は、第1のパルス時間幅の第1のパルスレーザ光を非晶質半導体に照射することによって非晶質半導体を多結晶化することと、第1のパルスレーザ光が照射されて多結晶化した半導体結晶の領域に、第1のパルス時間幅よりも短い第2のパルス時間幅の第2のパルスレーザ光を照射することにより半導体結晶のリッジの高さを低減させることと、を含む。
【0010】
本開示の他の1つの観点に係るレーザアニールシステムは、第1のパルス時間幅の第1のパルスレーザ光と第1のパルス時間幅よりも短い第2のパルス時間幅の第2のパルスレーザ光を出力するレーザシステムと、第1のパルスレーザ光及び第2のパルスレーザ光を被照射物に照射するレーザアニール装置と、を含み、レーザアニール装置は、第1のパルスレーザ光及び第2のパルスレーザ光を被照射物に導く照射光学系と、被照射物に対する第1のパルスレーザ光及び第2のパルスレーザ光の照射位置を相対的に移動させる移動機構と、第1のパルスレーザ光を被照射物に照射し、第1のパルスレーザ光の照射後に、被照射物における第1のパルスレーザ光が照射された領域に第2のパルスレーザ光を照射するようにレーザシステムを制御する制御部と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、レーザ光のパルス時間幅の説明図である。
図2図2は、例示的なレーザアニールシステムの構成を概略的に示す。
図3図3は、マスクのパターンとマスクを照明するラインビームとの関係の例を示す平面図である。
図4図4は、被照射物に対するラインビームのスキャン照射の例を示す平面図である。
図5図5は、図4中の破線円で囲んだ部分の拡大図である。
図6図6は、レーザアニールシステムにおける動作の例を示すフローチャートである。
図7図7は、図6のステップS12に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図8図8は、図6のステップS14に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図9図9は、図6のステップS20に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図10図10は、図6のステップS22に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図11図11は、レーザアニールによる半導体結晶薄膜の製造プロセスの模式図である。
図12図12は、実施形態1に係る半導体結晶薄膜の製造プロセスを例示的に示す模式図である。
図13図13は、試験の際に適用したレーザ光の照射条件を示す図表である。
図14図14は、レーザ光のパルス波形の例を示すグラフである。
図15図15は、光学パルスストレッチャシステムの構成例を示す。
図16図16は、マスクパターンと結晶成長の例を示す。
図17図17は、実施形態1に係るレーザアニールシステムの構成を概略的に示す。
図18図18は、実施形態1におけるリッジ平坦化時のビームスキャン照射の例を示す平面図である。
図19図19は、実施形態1に係るレーザアニールシステムにおける動作の例を示すフローチャートである。
図20図20は、図19のステップS13に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図21図21は、図19のステップS21に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図22図22は、図19のステップS24に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図23図23は、図19のステップS26に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図24図24は、図19のステップS28に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図25図25は、実施形態2に係るレーザアニールシステムの構成を概略的に示す。
図26図26は、実施形態3に係るレーザアニールシステムの構成を概略的に示す。
図27図27は、マスクのパターンとマスクを照明するラインビームの関係の例を示す平面図である。
図28図28は、被照射物に対するラインビームのスキャン照射の例を示す平面図である。
図29図29は、実施形態4に係るレーザアニールシステムの構成を概略的に示す。
図30図30は、実施形態5に係るレーザアニールシステムの構成を概略的に示す。
図31図31は、実施形態6に係るレーザアニールシステムの構成を概略的に示す。
図32図32は、マスクとマスクに対するビームの照射領域の例を示す。
図33図33は、マスクのパターン領域に形成されている微細パターンの例を示す拡大図である。
図34図34は、実施形態6に係るレーザアニールシステムの動作の説明図である。
図35図35は、実施形態7に係るレーザアニールシステムの構成を概略的に示す。
図36図36は、実施形態8に係るレーザアニールシステムの構成を概略的に示す。
【実施形態】
【0012】
-目次-
1.用語の説明
2.レーザアニールシステムの全体説明
2.1 構成
2.2 動作
2.3 動作の例
2.4 その他
3.課題
4.実施形態1
4.1 半導体結晶薄膜の製造方法の概要
4.2 照射条件に関する実施例
4.3 マスクパターンと結晶成長の例
4.4 レーザアニールシステムの構成
4.5 動作
4.6 動作の例
4.7 作用・効果
4.8 変形例
5.実施形態2
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用・効果
6.実施形態3
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用・効果
7.実施形態4
7.1 構成
7.2 動作
7.3 作用・効果
7.4 変形例
8.実施形態5
8.1 構成
8.2 動作
8.3 作用・効果
8.4 変形例
9.実施形態6
9.1 構成
9.2 動作
9.3 作用・効果
9.4 変形例
10.実施形態7
10.1 構成
10.2 動作
10.3 作用・効果
10.4 変形例
11.実施形態8
11.1 構成
11.2 動作
11.3 作用・効果
11.4 変形例
12.その他
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0013】
1.用語の説明
図1は、レーザ光のパルス時間幅の説明図である。図1の縦軸は光強度I[a.u.]であり、横軸は時間t[ns]である。光強度I[a.u.]は、光強度の波形のピーク値(最大光強度値)を1として規格化した値である。レーザ光のパルス時間幅の指標の1つとしてパルス時間幅ΔT50%を用いることができる。パルス時間幅ΔT50%は、図1に示されるように、最大光強度値の50%値における時間の全幅をいう。
【0014】
また、レーザ光のパルス時間幅の他の指標の1つとしてTISパルス時間幅ΔTTISを用いることができる。
【0015】
TISパルス時間幅ΔTTISは、以下の式(1)によって定義される。
【0016】
【数1】
【0017】
ここで、tは時間である。I(t)は時間tにおける光強度である。
【0018】
2.レーザアニールシステムの全体説明
2.1 構成
図2は、例示的なレーザアニールシステムの構成を概略的に示す。レーザアニールシステム10は、レーザ装置20と、光路管25と、レーザアニール装置100と、を含む。光路管25は、レーザ装置20のレーザ光出射口とレーザアニール装置100のレーザ光入射口との間のレーザ光の光路上に配置される。
【0019】
レーザ装置20は、紫外線のパルスレーザ光を出力するレーザ装置である。例えば、レーザ装置20は、F、ArF、XeCl、又はXeFをレーザ媒質とする放電励起式レーザ装置であってよい。レーザ装置20は、マスターオシレータ(MO:Master Oscillator)30と、光学パルスストレッチャ(OPS:Optical Pulse Stretcher)システム32と、モニタモジュール34と、シャッタ36と、レーザ制御部38と、を含む。
【0020】
マスターオシレータ30は、チャンバ40と、光共振器42と、充電器44と、パルスパワーモジュール(PPM)46と、を含む。
【0021】
チャンバ40の中には、レーザ媒質を含むエキシマレーザガスが封入される。エキシマレーザガスはAr又はKr又はXe等の希ガスと、F又はCl等のハロゲンガスと、He又はNe等のバッファガスとを含む混合ガスであってよい。
【0022】
チャンバ40は、1対の電極48a及び48bと、ウインドウ50及び52と、を含む。一対の電極48a及び48bは、チャンバ40内に配置される。電極48aは絶縁部材54に支持されている。電極48aは絶縁部材54のフィードスルーに埋め込まれた導電部56を介してPPM46と接続される。電極48bは図示しないリターンプレートに支持されており、リターンプレートは図示しない配線を用いてチャンバ40の内面と接続されている。
【0023】
PPM46は、スイッチ47と、いずれも図示しない昇圧トランス及び磁気圧縮回路と、を含む。PPM46は充電器44と接続される。充電器44は、PPM46の中の図示しない充電コンデンサを所定の電圧で充電する直流電源装置である。
【0024】
光共振器42は、リアミラー60と出力結合ミラー62とを含んで構成される。リアミラー60は、平面基板に高反射膜がコートされる。出力結合ミラー62は、平面基板に部分反射膜がコートされる。チャンバ40は、光共振器42の光路上に配置される。
【0025】
OPSシステム32は、マスターオシレータ30とモニタモジュール34の間の光路上に配置される。OPSシステム32は、入射した光の一部を遅延させてパルスレーザ光の時間幅をストレッチする光学パルスストレッチャ(OPS)33を含む。
【0026】
OPS33は、ビームスプリッタ70と、凹面ミラー71~74と、を含む。ビームスプリッタ70は、マスターオシレータ30とモニタモジュール34の間の光路上に配置される。ビームスプリッタ70は入射するパルスレーザ光の一部を部分反射する膜がコートされている。
【0027】
凹面ミラー71~74は、それぞれの焦点距離が同じであり、ビームスプリッタ70から反射したパルスレーザ光のビームが4枚の凹面ミラー71~74を高反射して、再びビームスプリッタ70に入射する位置でビームが転写されるように配置される。
【0028】
モニタモジュール34は、ビームスプリッタ76と、光センサ77と、を含む。
【0029】
シャッタ36は、モニタモジュール34から出力されるパルスレーザ光の光路上に配置される。
【0030】
パルスレーザ光の光路は、図示しない筐体及び光路管25によってシールされ、Nガスなどを用いてパージされていてもよい。
【0031】
レーザアニール装置100は、照射光学システム110と、フレーム170と、XYZ軸ステージ172と、テーブル174と、レーザアニール制御部180と、を含む。テーブル174上に被照射物190が固定される。
【0032】
照射光学システム110は、高反射ミラー121~123と、アッテネータ130と、照明光学系140と、マスク148と、投影光学系150と、ウインドウ160と、筐体164と、を含む。
【0033】
高反射ミラー121は、光路管25を通過したレーザ光がアッテネータ130を通過して高反射ミラー122に入射するように配置される。
【0034】
アッテネータ130は、高反射ミラー121と高反射ミラー122の間の光路上に配置される。アッテネータ130は、2枚の部分反射ミラー131及び132と、それぞれの部分反射ミラー131、132の入射角度を可変する回転ステージ135及び136と、を含む。
【0035】
高反射ミラー122は、アッテネータ130を通過したレーザ光が高反射ミラー123に入射するように配置される。高反射ミラー123は、入射したパルスレーザ光が照明光学系140のフライアイレンズ145に入射するように配置される。
【0036】
照明光学系140は、フライアイレンズ145と、コンデンサレンズ146と、を含む。照明光学系140は、マスク148上における所定の照明領域を均一照明するための光学系であり、マスク148を矩形のビームでケーラ照明するように配置される。マスク148上に照射される矩形のビームのX軸方向のビーム幅をBmx、Y軸方向のビーム幅をBmyとする。ここではBmx<Bmyを満たす矩形、すなわち、Y軸方向を長軸方向とする矩形のビームとする。本明細書では矩形のビームを「ラインビーム」という。
【0037】
フライアイレンズ145は、例えば、フライアイレンズ145の焦点面とコンデンサレンズ146の前側焦点面とが一致するように配置され、コンデンサレンズ146は、コンデンサレンズ146の後側焦点面とマスク148の位置とが一致するように配置される。
【0038】
マスク148は、例えば、紫外光を透過する合成石英基板に、金属又は誘電体多層膜のパターンが形成されたマスクである。マスク148には、例えば、ラインアンドスペースのパターンが形成されている(図3参照)。
【0039】
投影光学系150は、ウインドウ160を介して、マスク148の像が被照射物190の表面で結像するように配置される。投影光学系150は、複数のレンズ152の組合せレンズであって、縮小投影光学系であってもよい。
【0040】
ウインドウ160は、投影光学系150と被照射物190の間の光路上に配置される。ウインドウ160は、筐体164に設けられた穴に、図示しないOリング等を介して配置される。ウインドウ160は、エキシマレーザ光を透過するCaF結晶や合成石英基板であって、両面に反射抑制膜がコートされてもよい。
【0041】
筐体164には、窒素(N)ガスの入口166と出口168とが配置されている。筐体164は、筐体164内に外気が混入するのを抑制するように図示しないOリング等を介してシールされていてもよい。Nガスの入口166は、図示しないNガス供給源と接続される。
【0042】
照射光学システム110とXYZ軸ステージ172はフレーム170に固定される。XYZ軸ステージ172は、被照射物190に対するパルスレーザ光の照射位置を相対的に移動させる電動ステージである。テーブル174はXYZ軸ステージ172の上に固定される。被照射物190はテーブル174の上に固定される。
【0043】
被照射物190は、例えば、ガラス基板上にアモルファスシリコンがコートされた基板である。ここではシリコン薄膜を例に説明するが、半導体薄膜は、Si、Ge、SiGe、及びGeSnのうち少なくとも1つであってよい。
【0044】
図3は、マスク148のパターンとマスク148を照明するラインビームLBmの関係の例を示す平面図である。マスク148のパターンは、例えば、遮光部であるライン部148Lと、光通過部(非遮光部)であるスペース部148Sと、が交互に並ぶラインアンドスペースのパターンである。マスク148を均一照明するラインビームLBmの短軸方向(X軸方向)とライン部148Lのライン方向は平行であり、ラインビームLBmの長軸方向(Y軸方向)に複数本のライン部148Lが所定の間隔で配置される。
【0045】
マスク148を介して被照射物190に照射されるレーザ光は、マスク148のパターンの像に対応したパターンを含むビーム群である。マスク148を介して被照射物190に照射されるレーザ光のパターンは、マスク148による遮光部を含めた全体として概ね矩形であるため、被照射物190に照射されるレーザ光についても「ラインビーム」と呼ぶ。
【0046】
被照射物190上におけるラインビームのX軸方向のビーム幅をBx、Y軸方向のビーム幅をByとすると、ここではBx<Byを満たすラインビームである(図4参照)。
【0047】
2.2 動作
レーザアニール制御部180は、レーザアニール時の照射条件パラメータを読み込む。具体的には、レーザアニールを行う際の被照射物190上でのフルーエンスFaと、照射パルス数Naと、繰り返し周波数faとの各データを読み込む。
【0048】
レーザアニール制御部180とレーザ制御部38との間で目標パルスエネルギEt等の各種データや信号の送受信が行われる。レーザアニール制御部180は、レーザ装置20に調整発振をさせる。レーザ制御部38は、目標パルスエネルギEtのデータをレーザアニール制御部180から受信する。
【0049】
レーザ制御部38は、目標パルスエネルギEtのデータを受信すると、シャッタ78を閉じ、目標パルスエネルギEtとなるように充電器44を制御する。
【0050】
レーザ制御部38は、図示しない内部トリガ生成部によって内部トリガ信号を生成し、PPM46のスイッチ47に内部トリガ信号が入力される。その結果、マスターオシレータ30は自然発振する。
【0051】
マスターオシレータ30から出力されたパルスレーザ光はOPSシステム32によって、パルスレーザ光の時間幅がストレッチされる。OPSシステム32から出射されたパルスレーザ光は、モニタモジュール34のビームスプリッタ76によってサンプルされ、パルスエネルギEが計測される。
【0052】
レーザ制御部38は、パルスエネルギEと目標パルスエネルギEtとの差ΔEが0に近づくように、充電器44の充電電圧を制御する。
【0053】
レーザ制御部38は、ΔEが許容範囲となったら、レーザアニール制御部180に外部トリガOK信号を送信し、シャッタ78を開ける。
【0054】
レーザアニール制御部180は、レーザ制御部38から外部トリガOK信号を受信する。
【0055】
その後、レーザアニール制御部180は、投影光学系150によってマスク148の像が転写される位置が初期位置となるようにXYZ軸ステージ172のX軸及びY軸を制御する。
【0056】
続いて、レーザアニール制御部180は、マスク148の像が被照射物190の表面の位置に結像するようにXYZ軸ステージ172のZ軸を制御する。
【0057】
レーザアニール制御部180は、被照射物190の表面位置(すなわち、マスク148の像の位置)でのフルーエンスが目標のフルーエンスFaとなるように、アッテネータ130の透過率Tを計算する。
【0058】
続いて、レーザアニール制御部180は、アッテネータ130の透過率がTとなるように、2つの部分反射ミラー131及び132の入射角度をそれぞれの回転ステージ135及び136によって制御する。
【0059】
続いて、レーザアニール制御部180は、繰り返し周波数faで被照射物190上のラインビーム幅Bxである場合の照射パルス数がNaとなるようにXYZ軸ステージ172の移動速度Vxを計算する。
【0060】
レーザアニール制御部180は、X軸方向にVxの速度でテーブル174が等速直線運動で移動するようにXYZ軸ステージ172を制御する。その結果、被照射物190の表面上をラインビームがテーブル174の移動方向と逆方向にVxの速度で等速直線運動する。
【0061】
この間、レーザアニール制御部180は、繰り返し周波数faの発光トリガ信号Trをレーザ制御部38に送信する。その結果、発光トリガ信号Trに同期して、マスターオシレータ30からパルスレーザ光が出力され、モニタモジュール34のビームスプリッタ76を透過したパルスレーザ光は、光路管25を介してレーザアニール装置100に入射する。
【0062】
レーザアニール装置100に入射したパルスレーザ光は、高反射ミラー121によって反射され、アッテネータ130を通過して減光され、高反射ミラー122によって反射される。
【0063】
高反射ミラー122及び123を高反射したパルスレーザ光は、照明光学系140によって光強度が空間的に均一化されて、ラインビームLBmとしてマスク148に入射する。
【0064】
マスク148を透過したパルスレーザ光は、投影光学系150によって被照射物190の表面に投影される。こうして、パルスレーザ光は、投影光学系150を通過して、転写結像した領域の被照射物190に照射される。その結果、被照射物190の表面でパルスレーザ光が照射された部分がレーザアニールされる。
【0065】
図4は、被照射物に対するラインビームのスキャン照射の例を示す平面図である。図5は、図4中の破線円で囲んだ部分の拡大図である。
【0066】
被照射物190の表面に照射されるラインビームLBaは、図3で説明したマスク148のラインアンドスペースの像パターンである。図4に示すように、被照射物190の表面に照射されるラインビームLBaは、X軸方向のビーム幅がBx、Y軸方向のビーム幅がByである。ラインビームLBaは、XYZ軸ステージ172の移動によって、被照射物190に対して相対的に移動する。XYZ軸ステージ172をX軸の正の方向に移動させることにより、ラインビームLBは被照射物190の表面をX軸の負の方向(図4において左方向)に移動する。
【0067】
図4には、被照射物190に対してスキャン照射初期位置SPiniからスキャン照射終了位置SPaendまでラインビームLBaを移動させて被照射物190の表面にレーザ光を照射するスキャン照射の様子が示されている。スキャン照射初期位置SPainiからスキャン照射終了位置SPaendに向かうラインビームLBaの移動方向をレーザアニール時の「スキャン照射方向」という。
【0068】
図4において、被照射物190の表面のうちラインビームLBaが通過した領域、つまり、スキャン照射が行われた領域は、アモルファスシリコンが溶融し、結晶成長によりシリコンが多結晶化した結晶化領域190pとなる。結晶化領域190pはポリシリコン膜となる。被照射物190の表面のうちラインビームLBaが通過していない領域、つまり、スキャン照射が行われていない領域は、未だレーザ光が照射されておらず、アモルファス(非晶質)の状態のままのアモルファス領域190aである。
【0069】
図4において破線円で囲んだ部分の拡大図を図5に示す。被照射物190の照射されるラインビームLBaにおけるマスク148の結像パターンのライン部MLIのフルーエンスは、スペース部MSIよりも低くなる。このため、レーザアニールされた結晶の形態は、図5に示すように、被照射物190表面のライン部MLIに対応する位置に結晶の核が生成され、各ライン部MLIの間のスペース部MSIのY軸方向の略中央部で大きな結晶粒界192が生成される。
【0070】
ラインビームLBaがX軸の負の方向に移動しながらスキャン照射が行われ、被照射物190に対するラインビームLBaの位置がスキャン照射終了位置SPaend(図4参照)に到達したら、XYZ軸ステージ172の移動を停止させる。
【0071】
2.3 動作の例
図6は、レーザアニールシステム10における動作の例を示すフローチャートである。図6のフローチャートに示す処理及び動作は、例えば、レーザアニール制御部180として機能するプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0072】
ステップS10において、被照射物190がXYZ軸ステージ172のテーブル174上にセットされる。被照射物190は、図示しないワーク搬送ロボットやその他の自動搬送装置によってテーブル174上にセットされてよい。
【0073】
ステップS12において、レーザアニール制御部180はレーザアニール時のレーザ照射条件パラメータの読み込み(1)を行う。レーザアニール時のレーザ照射条件パラメータを「レーザアニール条件のパラメータ」という。
【0074】
ステップS14において、レーザアニール制御部180はレーザ装置20に調整発振を実施させる。レーザアニール制御部180は、繰り返し周波数fで、レーザ装置20が目標パルスエネルギEtとなるように調整発振させる。
【0075】
ステップS16において、レーザアニール制御部180は被照射物190上でのラインビームLBの位置が初期位置となるようにXYZ軸ステージ172をX軸方向及びY軸方向に制御する。
【0076】
ステップS18において、レーザアニール制御部180はマスク148の像が被照射物190の表面に結像するようにXYZ軸ステージ172をZ軸方向に制御する。
【0077】
ステップS20において、レーザアニール制御部180はレーザアニール時の制御パラメータの計算と設定(1)を行う。具体的には、レーザアニール制御部180は、短軸方向のラインビーム幅Bxの場合に、フルーエンスFaとなるように、アッテネータ130の透過率Taの計算及び透過率Taの設定を行う。また、レーザアニール制御部180は、短軸方向のラインビーム幅Bxの場合に、照射パルス数Naとなるように、XYZ軸ステージ172の移動速度Vxを計算し、移動速度Vxの設定を行う。
【0078】
ステップS22において、レーザアニール制御部180はステップS20における制御パラメータの設定に従い、レーザアニール時のビームスキャン照射を行う。このビームスキャン照射時には、設定された繰り返し周波数fa、フルーエンスFa、及び照射パルス数Naの条件で被照射物190に対してパルスレーザ光が照射される。
【0079】
ステップS22の後、レーザアニール制御部180は図6のフローチャートを終了する。
【0080】
図7は、図6のステップS12に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。すなわち、図7は、レーザアニール時のレーザ照射条件パラメータの読み込み(1)のステップにて実施される処理内容の例を示す。
【0081】
図7のステップS31において、レーザアニール制御部180はレーザアニール条件のパラメータの読み込みを行う。例えば、レーザアニール制御部180は、レーザアニール処理を行う際の被照射物190上でのフルーエンスFaと、照射パルス数Naと、繰り返し周波数faと、の各データを読み込む。ここで照射パルス数Naは2以上の整数とする。レーザアニール制御部180はステップS31の後、図6のフローチャートに復帰する。
【0082】
図8は、図6のステップS14に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。すなわち、図8は、レーザ装置の調整発振のステップにて実施される処理内容の例を示す。
【0083】
図8のステップS40において、レーザアニール制御部180は目標パルスエネルギEtと繰り返し周波数faのデータをレーザ制御部38に送信する。この場合の目標パルスエネルギEtと繰り返し周波数faは、レーザ装置20が安定して動作し得る定格のデータであることが好ましい。例えば、目標パルスエネルギEtは30mJから1000mJの範囲内の値であってよい。また、繰り返し周波数faは600Hzから6000Hzの範囲内の値であってよい。また、レーザアニール制御部180は、レーザ装置20の定格のパルスエネルギを目標パルスエネルギEtとして予め記憶し、この値を用いてもよい。
【0084】
ステップS42において、レーザアニール制御部180はレーザ制御部38からパルスエネルギOK信号を受信したか否かを判定する。ステップS42の判定処理は、例えば、レーザ装置20から出力されるパルスレーザ光のパルスエネルギEと目標パルスエネルギEtとの差が許容範囲に収まっているか否かの判定に相当する。
【0085】
レーザアニール制御部180は、ステップS42の判定結果がYes判定となるまで、ステップS42を繰り返す。ステップS42の判定結果がYes判定となった場合、レーザアニール制御部180は図8のサブルーチンを抜けて、図6のフローチャートに復帰する。
【0086】
図9は、図6のステップS20に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。すなわち、図9は、レーザアニール時の制御パラメータの計算と設定(1)のステップにて実施される処理内容の例を示す。
【0087】
図9のステップS50において、レーザアニール制御部180はレーザアニール条件のフルーエンスFaとなるアッテネータ130の透過率Taを計算する。
【0088】
被照射物190表面のフルーエンスは以下の式(2)で表される。
【0089】
F=M-2(T・Tp・Et)/(Bx・By) (2)
式中のMは、投影光学系150の倍率を表す。Mは、例えば1から1/5の範囲の値であってよい。
【0090】
式中のTpは、アッテネータ130が最大透過率時のレーザ装置20から出力されたパルスレーザ光が、被照射物190に到達するまでの光学系の透過率を表す。
【0091】
式(2)からアッテネータ130の透過率Taの計算式として次式(3)が得られる。
【0092】
Ta=(M/Tp)(Fa/Et)(Bx・By) (3)
レーザアニール制御部180は式(3)からアッテネータ130の透過率Taを求める。
【0093】
ステップS52において、レーザアニール制御部180はアッテネータ130の透過率TをTaに設定する。すなわち、レーザアニール制御部180は、アッテネータ130の透過率TがTaとなるように、部分反射ミラー131及び132の角度を制御する。
【0094】
次に、ステップS54において、レーザアニール制御部180はレーザアニール時のXYZ軸ステージ172のX軸方向の移動速度の絶対値Vxaを計算する。Vxaは次式(4)から計算できる。
【0095】
Vxa=fa・Bx/Na (4)
式(4)の導出は次のとおりである。
【0096】
XYZ軸ステージ172のX軸方向の移動速度の絶対値をVxaとすると、レーザアニール時の照射パルス数Naは、次式(5)で表される。
【0097】
Na=fa・Bx/Vxa (5)
ここで、Naは同じ位置でパルスレーザ光が照射されるパルス数(Na≧2)となる。
【0098】
よって、移動速度の絶対値Vxaは、式(5)を変形した式(4)から求めることができる。
【0099】
ステップS54の後、レーザアニール制御部180は図9のフローチャートを終了して、図6のフローチャートに復帰する。
【0100】
図10は、図6のステップS22に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。すなわち、図10は、レーザアニール時のビームスキャン照射のステップにて実施される処理内容の例を示す。
【0101】
図10のステップS60において、レーザアニール制御部180はXYZ軸ステージ172のX軸についての移動方向を規定するパラメータXaの値を「Xa=1」に設定する。「Xa=1」はXYZ軸ステージ172をX軸の「正の方向」に移動させることを表す。
【0102】
ステップS62において、レーザアニール制御部180はXYZ軸ステージ172のX軸方向の移動速度Vxを計算する。Vxは、次の式(6)に従って決定される。
【0103】
Vx=Xa・Vxa (6)
ステップS64において、レーザアニール制御部180はステップS62の計算結果に従い、XYZ軸ステージ172のX軸方向の移動速度のパラメータVxをセットする。なお、実際には、ビームスキャンの移動距離に対応して、加速、等速直線運動、及び減速のそれぞれが所定の時間で行われるようにパラメータをセットする。ここでは、説明を簡単にするために、等速直線運動時の速度の絶対値がVxaである場合を例示する。
【0104】
式(6)から定まるVxが正の場合は、XYZ軸ステージ172をX軸の正の方向に移動させる。その結果、被照射物190の表面においてラインビームLBは被照射物190に対して相対的にX軸の負の方向に移動する。
【0105】
ステップS66において、レーザアニール制御部180はXYZ軸ステージ172の移動開始信号を送信する。この移動開始信号は、XYZ軸ステージ172の移動を開始させる指令を行う制御信号である。レーザアニール制御部180から送信された移動開始信号に従い、XYZ軸ステージ172が移動を開始する。
【0106】
ステップS68において、レーザアニール制御部180は繰り返し周波数faで発光トリガ信号を出力する。
【0107】
ステップS70において、レーザアニール制御部180はXYZ軸ステージ172のX軸方向の移動が終了したか否かの判定を行う。例えば、レーザアニール制御部180は図4で説明したスキャン照射終了位置SPaendに到達したか否かを判定する。ステップS70の判定結果がNo判定である場合、レーザアニール制御部180はステップS68に戻る。XYZ軸ステージ172のX軸方向の移動が終了するまで、ステップS68~S70を繰り返す。ビームスキャンが開始されてから停止するまでの間は、レーザアニール制御部180からレーザ制御部38に対し、XYZ軸ステージ172のX軸方向への等速直線運動中に繰り返し周波数faで発光トリガ信号を出力する。これにより、パルスレーザ光は繰り返し周波数faで被照射物190のスキャン照射領域に照射される。
【0108】
ステップS70の判定結果がYes判定である場合、すなわち、1つのスキャン照射領域に対するビームスキャン照射が完了して、XYZ軸ステージ172のX軸方向の移動が終了すると、レーザアニール制御部180はステップS72に進み、発光トリガ信号の出力を停止する。これにより、レーザ装置20からのパルスレーザ光の出力が停止される。
【0109】
ステップS72の後、レーザアニール制御部180は図10のフローチャートを終了し、図6のフローチャートに復帰する。
【0110】
2.4 その他
図2から図10を用いて説明した例では、マスク148の結像パターンを被照射物190に導き、被照射物190の表面上にマスク148の結像パターンをスキャン照射することによってレーザアニールを実施する方式を示した。しかし、レーザアニールを実施する際のレーザ光の照射方式はこの例に限定されない。例えば、スキャン照射方式でなく、XYZ軸ステージ172を固定して、照射パルス数Naに到達したら、XYZ軸ステージ172を移動させて次の位置に位置決めしてパルスレーザ光を照射するステップアンドリピート方式であってもよい。
【0111】
3.課題
図11は、レーザアニールによる半導体結晶薄膜の製造方法の模式図である。ここではガラス基板200の上にアモルファスシリコン膜202が配置された被照射物190の例が示されている。このアモルファスシリコン膜202にパルスレーザ光を照射してレーザアニールを実施すると、シリコンの溶融及び多結晶化により半導体結晶薄膜であるポリシリコン膜204が得られる。
【0112】
ところが、レーザアニールによって生成した結晶の表面には、シリコンを溶融及び多結晶化させる過程で表面におよそ50nm程度のリッジ205と呼ばれる突起(隆起部分)が発生する。例えば、膜厚が50nmのアモルファスシリコン膜202をレーザアニールして形成されるポリシリコン膜204の表面に、高さ50nm~70nmのリッジが発生する場合がある。
【0113】
このリッジ205は、ポリシリコン膜204を用いて形成される半導体素子の特性に大きな影響を与えるため、リッジ205の高さを抑制することが望まれる。リッジ205の問題については、特開2007-287866号公報の段落0052にも記載がある。例えば、ポリシリコン膜204を用いて形成される薄膜トランジスタの閾値電圧がリッジ205の影響によってばらつき、電源電圧を低くすることが困難になり得る。このような薄膜トランジスタを例えば液晶表示素子に適用した場合には消費電力の低減が困難である。
【0114】
4.実施形態1
4.1 半導体結晶薄膜の製造方法の概要
図12は、実施形態1に係る半導体結晶薄膜の製造方法を例示的に示す模式図である。実施形態1に係る半導体結晶薄膜の製造方法は、アモルファスシリコン膜202に第1のパルスレーザ光を照射してアモルファスシリコンを多結晶化すること(ステップ1)と、第1のパルスレーザ光の照射によって生成された多結晶のポリシリコン膜204のリッジ205に対して第2のパルスレーザ光を照射してリッジを平坦化すること(ステップ2)と、を含む。「リッジを平坦化する」とは、リッジの高さを低減することを意味する。
【0115】
ステップ1はレーザアニールによる溶融及び多結晶化の工程である。ステップ2はステップ1で生成された多結晶のリッジをレーザ照射によって平坦化する工程である。ここでは説明の便宜上、ステップ1の動作を「レーザアニール」といい、ステップ2の動作を「リッジ平坦化」という。
【0116】
レーザアニール時のレーザ光の照射条件には、フルーエンスFa、パルス時間幅ΔTa、及び照射パルス数Naが含まれる。
【0117】
リッジ平坦化時のレーザ光の照射条件には、フルーエンスFr、パルス時間幅ΔTr、及び照射パルス数Nrが含まれる。
【0118】
レーザアニール時の照射条件とリッジ平坦化時の照射条件の関係として、第2のパルスレーザ光のパルス時間幅ΔTrは第1のパルスレーザ光のパルス時間幅ΔTaよりも短いものとする。すなわち、ΔTr<ΔTaである。
【0119】
パルスレーザ光をリッジが形成された多結晶Si薄膜に適切なパルス幅及びフルーエンスで照射すると、リッジ部の形状効果による電界集中のため、リッジ部に与えられるレーザのパルスエネルギが他の領域と比較して大きくなる。その結果、膜全体を溶融固化させることなく、リッジ部及びその周辺を部分溶融させることでリッジ部の結晶状態が改善し高さが制御できると考えられる。
【0120】
好ましくは追加の条件として、第2のパルスレーザ光のフルーエンスFrは第1のパルスレーザ光のフルーエンスFaよりも小さいものとする。すなわち、Fr<Faであることが好ましい。さらなる追加の条件として、第2のパルスレーザ光の照射パルス数Nrは第1のパルスレーザ光の照射パルス数Naよりも少ないものとする。すなわちNr<Naであることが好ましい。
【0121】
つまり、ステップ1のレーザアニール用のレーザ照射条件はアモルファスシリコンを完全溶融させる条件に設定され、ステップ2のリッジ平坦化用のレーザ照射条件はレーザアニールの多結晶化によって生成されたポリシリコンのリッジの部分を低くさせる条件に設定される。ステップ2のレーザ照射を実施することにより、ステップ1の多結晶化で発生したリッジ205の高さを10nm未満の高さに低減することができる。
【0122】
4.2 照射条件に関する実施例
図13は、半導体結晶薄膜を生成する試験の際に適用した照射条件の例を示す図表である。図13に示される照射条件の組み合わせにより、リッジの高さが10nm未満に抑制された半導体結晶薄膜が得られることが確認された。図13に示されたリッジ平坦化用のパルスレーザ光の半値全幅のパルス時間幅ΔTr50%=14nsは、レーザアニール用のパルスレーザ光の半値全幅のパルス時間幅ΔTa50%=39nsの35.8%の時間幅となっている。リッジ平坦化用のパルスレーザ光の半値全幅のパルス時間幅は、レーザアニール用のパルスレーザ光のパルス時間幅の40%以下の時間幅であることが好ましい。
【0123】
また、図13に示されたリッジ平坦化用のパルスレーザ光のTISのパルス時間幅ΔTrTIS=47nsは、レーザアニール用のパルスレーザ光のTISのパルス時間幅ΔTaTIS=87nsの54.0%の時間幅となっている。リッジ平坦化用のパルスレーザ光のTISのパルス時間幅は、レーザアニール用のパルスレーザ光のパルス時間幅の60%以下の時間幅であることが好ましい。
【0124】
また、図13には示さないが、リッジ平坦化時の照射条件としてのフルーエンスFaと照射パルス数Naの組み合わせの好ましい例として、(Fa,Na)=(50,20),(100,10),(150,10),(200,1)などがある。なお、フルーエンスFaの単位は、図13と同様に、ミリジュール毎平方センチメートル[mJ/cm]である。
【0125】
図14は、試験に用いたレーザ光のパルス波形の例を示すグラフである。図14に示すように、リッジ平坦化時のパルス波形は、レーザアニール時のパルス波形よりもパルス時間幅が短いものである。なお、図14ではパルス時間幅を比較するために、両パルスの先頭を揃えて表示している。実際は、被照射物190の同じ位置(照射領域)に対して、第1のパルスレーザ光の照射後に、第2のパルスレーザ光が照射される。したがって、被照射物190の同一位置に対する第1のパルスレーザ光と第2のパルスレーザ光の照射のタイミングとしては両パルスに時間差がある。
【0126】
すなわち、第2のパルスレーザ光は、第1のパルスレーザ光の照射によってシリコン膜が多結晶化した後に、つまりリッジ205が形成された後に、同領域への照射が開始される。第1のパルスレーザ光の照射による溶融及び多結晶化の時間は、概ね200nsである。したがって、例えば、レーザアニール用パルスである第1のパルスレーザ光の照射タイミングから200ns以上後に(つまり結晶化後に)、リッジ平坦化用パルスである第2のパルスレーザ光を、第1のパルスレーザ光の照射領域と同一領域(場所)に照射すればよい。これにより、多結晶化によって形成されたリッジ205を部分溶融させ、リッジ205を平坦化することができる。
【0127】
図15は、パルス時間幅を調整するための光学パルスストレッチャ(OPS)システムの構成例を示す。図14に示したレーザアニール時のパルス波形は、図15のOPSシステム220を用いて実現できる。また、図14に示したリッジ平坦化時のパルス波形は、図15のOPSシステム220における遅延光路の部分を遮光することにより実現できる。
【0128】
図15に示すOPSシステム220は、第1のOPS221と第2のOPS222とを含む。第1のOPS221と第2のOPS222のそれぞれは、図2で説明したOPSシステム32と同様の構成であってよい。第1のOPS221は、ビームスプリッタ230と凹面ミラー231~234とを含む。第1のOPS221による遅延光路長L(1)は、例えばL(1)=3m(メートル)である。
【0129】
第2のOPS222は、ビームスプリッタ240と凹面ミラー241~244とを含む。第2のOPS222による遅延光路長L(2)は、例えばL(2)=7mである。第2のOPS222は、第1のOPS221のビームスプリッタ230を透過したレーザ光が第2のOPS222のビームスプリッタ240に入射するように配置される。
【0130】
OPSシステム220は、エキシマレーザ装置210と、レーザアニール装置100との間の光路上に配置される。エキシマレーザ装置210は、例えば、図2で説明したマスターオシレータ30であってよい。
【0131】
4.3 マスクパターンと結晶成長の例
図16は、マスクパターンと結晶成長の例を示す。図16は、マスクパターンの像とレーザアニール後の結晶の状態の例を示す。ここでは、被照射物190に照射されるマスクパターンの像がライン幅L=0.15μm、スペース幅S=1μmの場合のレーザアニール後の結晶の状態を示す。
【0132】
図16の左図は、被照射物190の表面上に投影されるマスクパターンの像を示す。図16の右図は、マスクパターンの像に対応する位置のレーザアニール後の結晶の状態を示す。なお、図16の右図は、リッジの部分(結晶粒界)を観察しやすくするために、リッジの部分をエッチングによって除去したサンプルを走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察した際の画像の例である。図16の右図において「ひび割れ」のように見える線が結晶粒界である。図16に示すように、マスクパターン像のスペース部の略中間位置に太い結晶粒界が生成される。
【0133】
レーザアニール用のパルスを照射後、例えば200ns以上後にリッジ平坦化用のパルスを照射する。これにより、リッジが部分溶融して平坦化される。「平坦化」は、リッジが許容範囲(例えば、10nm未満)の高さに抑制されること、つまり、平坦性が改善されることを含意する。
【0134】
4.4 レーザアニールシステムの構成
図17は、実施形態1に係るレーザアニールシステム11の構成を概略的に示す。図17に示す構成について図2との相違点を説明する。図17に示すレーザアニールシステム11は、OPSシステム32のビームスプリッタ70がウインドウ80と置換可能な光学素子切替ユニット82を備えている点で図2の構成と異なる。
【0135】
4.5 動作
レーザアニール時の動作は図2の例と同様である。リッジ平坦化時は、リッジ平坦化時の照射条件に変更して、XYZ軸ステージ172のX軸を負の方向に移動させて、スキャン照射を行う。ただし、レーザアニール時とリッジ平坦化時とでパルス波形を変更する際には、OPSシステム32の光学素子切替ユニット82を制御する。
【0136】
すなわち、レーザアニール制御部180は、レーザアニール時にビームスプリッタ70を光路上に配置し、リッジ平坦化時にはビームスプリッタ70に代えてウインドウ80を光路上に配置するように、レーザ制御部38を介して光学素子切替ユニット82を制御する。
【0137】
図18は、実施形態1におけるリッジ平坦化時のビームスキャン照射の例を示す平面図である。リッジ平坦化時に被照射物190の表面に照射されるラインビームLBrは、図3で説明したマスク148のラインアンドスペースパターンの像を含む。図18に示すように、被照射物190の表面に照射されるラインビームLBrは、X軸方向のビーム幅がBx、Y軸方向のビーム幅がByである。ラインビームLBrは、XYZ軸ステージ172の移動によって、被照射物190に対して相対的に移動する。ここでは、XYZ軸ステージ172をX軸の負の方向に移動させることにより、ラインビームLBrが被照射物190の表面をX軸の正の方向(図18において右方向)に移動する。
【0138】
図18には、被照射物190に対してスキャン照射初期位置SPriniからスキャン照射終了位置SPrendまでラインビームLBrを移動させて被照射物190の表面にレーザ光を照射するスキャン照射の様子が示されている。スキャン照射初期位置SPriniからスキャン照射終了位置SPrendに向かうラインビームLBrの移動方向を「リッジ平坦化時のスキャン照射方向」という。リッジ平坦化時のスキャン照射初期位置SPriniは、図4で説明したレーザアニール時のスキャン照射終了位置SPaendであってよい。また、図18に示すリッジ平坦化時のスキャン照射終了位置SPrendは、図4で説明したレーザアニール時のスキャン照射初期位置SPainiであってよい。
【0139】
図18において、被照射物190の表面のうちラインビームLBrが通過した領域、つまり、リッジ平坦化用のスキャン照射が行われた領域は、リッジが平坦化されたリッジ平坦化領域190rとなる。ラインビームLBrが通過していない領域、つまり、リッジ平坦化用のスキャン照射が行われていない領域は、高いリッジを含んだ状態のままの結晶化領域190pである。
【0140】
図18に示す状態からさらにラインビームLBrをスキャン照射終了位置SPrendまで移動させることにより、結晶化領域190pの全域をリッジ平坦化領域190rに変えることができる。
【0141】
4.6 動作の例
図19は、実施形態1に係るレーザアニールシステム11における動作の例を示すフローチャートである。図19について図6との相違点を説明する。図19に示すフローチャートは、図6のステップS12及びステップS20に代えて、ステップS13及びステップS21を含み、さらに、ステップS22の後に、ステップS24、ステップS26、及びステップS28が追加されている。
【0142】
ステップS13において、レーザアニール制御部180はレーザアニール時のレーザ照射条件パラメータの読み込み(2)を行う。ステップS13の後のステップS14からステップS18は図6と同様である。
【0143】
ステップS18の後、ステップS21において、レーザアニール制御部180はレーザアニール時の制御パラメータの計算と設定(2)を行う。ステップS21の後のステップS22は図6と同様である。
【0144】
ステップS22の後、ステップS24において、レーザアニール制御部180はリッジ平坦化時のレーザ照射条件パラメータの読み込み(1)を行う。
【0145】
ステップS26において、レーザアニール制御部180はリッジ平坦化時の制御パラメータの計算と設定(1)を行う。
【0146】
ステップS28において、レーザアニール制御部180はステップS26における制御パラメータの設定に従い、リッジ平坦化時のビームスキャン照射を行う。このビームスキャン照射時には、設定された繰り返し周波数fr、フルーエンスFr、及び照射パルス数Nrの条件で被照射物190に対してパルスレーザ光が照射される。
【0147】
ステップS28の後、レーザアニール制御部180は図19のフローチャートを終了する。
【0148】
図20は、図19のステップS13に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。すなわち、図20は、レーザアニール時のレーザ照射条件パラメータの読み込み(2)のステップにて実施される処理内容の例を示す。
【0149】
図20のステップS32において、レーザアニール制御部180はレーザアニール条件のパラメータの読み込みを行う。例えば、レーザアニール制御部180は、レーザアニール処理を行う際の被照射物190上でのフルーエンスFaと、照射パルス数Naと、繰り返し周波数faと、パルス時間幅ΔTaとの各データを読み込む。照射パルス数Naは2以上の整数とする。レーザアニール制御部180はステップS32の後、図19のフローチャートに復帰する。
【0150】
図21は、図19のステップS21に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。すなわち、図21は、レーザアニール時の制御パラメータの計算と設定(2)のステップにて実施される処理内容の例を示す。図21について図9との相違点を説明する。図21に示すフローチャートは、図9のステップS50~S54に、さらにステップS56が追加されている。
【0151】
ステップS56において、レーザアニール制御部180はレーザアニール時のパルス時間幅ΔTaに基づいて、OPSシステム32を制御する。レーザアニール制御部180は、OPSシステム32から出射されるパルスレーザ光のパルス時間幅が、レーザアニール時の条件として要求されているパルス時間幅ΔTaに近くなるようにOPSシステム32を制御する。図17に示す構成の場合、レーザアニール制御部180は、光路上にビームスプリッタ70を配置するように光学素子切替ユニット82を制御する。
【0152】
ステップS56の後、レーザアニール制御部180は図21のフローチャートを終了し、図19のフローチャートに復帰する。
【0153】
図22は、図19のステップS24に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。すなわち、図22は、リッジ平坦化時のレーザ照射条件パラメータの読み込み(1)のステップにて実施される処理内容の例を示す。リッジ平坦化時のレーザ照射条件パラメータを「リッジ平坦化条件のパラメータ」という。
【0154】
図22のステップS80において、レーザアニール制御部180はリッジ平坦化条件のパラメータの読み込みを行う。例えば、レーザアニール制御部180は、リッジ平坦化処理を行う際の被照射物190上でのフルーエンスFrと、照射パルス数Nrと、繰り返し周波数frと、パルス時間幅ΔTrと、の各データを読み込む。ここで照射パルス数Nrは1以上の整数とする。レーザアニール制御部180はステップS80の後、図19のフローチャートに復帰する。
【0155】
図23は、図19のステップS26に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。すなわち、図23は、リッジ平坦化時の制御パラメータの計算と設定(1)のステップにて実施される処理内容の例を示す。図23のステップS90において、レーザアニール制御部180はリッジ平坦化条件のフルーエンスFrとなるアッテネータ130の透過率Trを計算する。
【0156】
アッテネータ130の透過率Trは、式(2)から次式(7)によって求めることができる。
【0157】
Tr=(M/Tp)(Fr/Et)(Bx・By) (7)
ステップS92において、レーザアニール制御部180はアッテネータ130の透過率TをTrに設定する。すなわち、レーザアニール制御部180は、アッテネータ130の透過率TがTrとなるように、部分反射ミラー131及び132の角度を制御する。
【0158】
ステップS94において、レーザアニール制御部180はリッジ平坦化時に被照射物190の表面をラインビームLBrが移動する速度の絶対値Vxrを計算する。すなわち、レーザアニール制御部180はリッジ平坦化時のXYZ軸ステージ172のX軸方向の移動速度の絶対値Vxrを計算する。Vxrは次式(8)から計算できる。
【0159】
Vxr=fr・Bx/Nr (8)
ステップS96において、レーザアニール制御部180はリッジ平坦化時のパルス時間幅ΔTrに基づいてOPSシステム32を制御する。レーザアニール制御部180は、OPSシステム32から出射されるパルスレーザ光のパルス時間幅が、リッジ平坦化時の条件として要求されているパルス時間幅ΔTrに近くなるようにOPSシステム32を制御する。図17に示す構成の場合、レーザアニール制御部180は、光路上にウインドウ80を配置するように光学素子切替ユニット82を制御する。
【0160】
ステップS96の後、レーザアニール制御部180は図23のフローチャートを終了し、図19のフローチャートに復帰する。
【0161】
図24は、図19のステップS28に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。すなわち、図24は、リッジ平坦化時のビームスキャン照射にて実施される処理内容の例を示す。図24のステップS100において、レーザアニール制御部180はXYZ軸ステージ172のX軸についての移動方向を規定するパラメータXrの値を「Xr=-1」に設定する。「Xr=-1」はXYZ軸ステージ172をX軸の「負の方向」に移動させることを表す。
【0162】
ステップS102において、レーザアニール制御部180はXYZ軸ステージ172のX軸方向の移動速度Vxを計算する。Vxは次の式(9)に従って決定される。
【0163】
Vx=Xr・Vxr (9)
ステップS104において、レーザアニール制御部180はステップS102の計算結果に従い、XYZ軸ステージ172のX軸方向の移動速度のパラメータVxをセットする。なお、実際には、ビームスキャンの移動距離に対応して、加速、等速直線運動、及び減速のそれぞれが所定の時間で行われるようにパラメータをセットする。ここでは、説明を簡単にするために、等速直線運動時の速度の絶対値がVxrである場合を例示する。
【0164】
ステップS106において、レーザアニール制御部180はXYZ軸ステージ172の移動開始信号を送信する。式(9)から定まるVxが負の場合は、XYZ軸ステージ172をX軸の負の方向に移動させる。その結果、被照射物190の表面においてラインビームLBrは被照射物190に対して相対的にX軸の正の方向に移動する。
【0165】
図24のステップS108において、レーザアニール制御部180は繰り返し周波数frで発光トリガ信号を出力する。
【0166】
ステップS110において、レーザアニール制御部180はXYZ軸ステージ172のX軸方向の移動が終了したか否かの判定を行う。レーザアニール制御部180は、図18に示すスキャン照射終了位置SPrendに到達したか否かを判定する。ステップS110の判定結果がNo判定である場合、レーザアニール制御部180はステップS108に戻る。XYZ軸ステージ172のX軸方向の移動が終了するまで、ステップS108~S110を繰り返す。レーザアニール制御部180からレーザ制御部38に対し、XYZ軸ステージ172のX軸方向への等速直線運動中に繰り返し周波数frで発光トリガ信号が出力される。これにより、パルスレーザ光は繰り返し周波数frで被照射物190のスキャン照射領域に照射される。
【0167】
ステップS110の判定結果がYes判定である場合、すなわち、1つのスキャン照射領域に対するビームスキャン照射が完了して、XYZ軸ステージ172のX軸方向の移動が終了すると、レーザアニール制御部180はステップS112に進み、発光トリガ信号の出力を停止する。これにより、レーザ装置20からのパルスレーザ光の出力が停止される。
【0168】
ステップS112の後、レーザアニール制御部180は図24のフローチャートを終了し、図19のフローチャートに復帰する。
【0169】
4.7 作用・効果
実施形態1に係るレーザアニールシステム11によれば、OPSシステム32を制御することによってレーザ装置1台でパルス時間幅の異なる2種類のパルスレーザ光を出力することができ、これら2種類のパルスレーザ光を用いてレーザアニールとリッジ平坦化を行うことが可能である。
【0170】
実施形態1におけるレーザ装置20は本開示における「レーザシステム」の一例である。マスターオシレータ30は本開示における「レーザ発振器」の一例である。XYZ軸ステージ172は本開示における「移動機構」の一例である。レーザアニール制御部180は本開示における「制御部」の一例である。照射光学システム110の照明光学系140と投影光学系150とを含む光学系は本開示における「照射光学系」の一例である。光学素子切替ユニット82のビームスプリッタ70とウインドウ80の各々は本開示における「光学素子」の一例である。投影光学系150は本開示における「転写光学系」の一例である。アモルファスシリコン膜202は本開示における「非晶質半導体」の一例である。レーザアニール用のラインビームLBaが照射されて多結晶化した領域は本開示における「半導体結晶の領域」の一例である。ポリシリコン膜204は本開示における「半導体結晶」及び「半導体結晶薄膜」の一例である。被照射物190に照射されるラインビームLBaは本開示における「第1のパルスレーザ光の照明パターン」の一例であり、被照射物190に照射されるラインビームLBrは本開示における「第2のパルスレーザ光の照明パターン」の一例である。レーザアニール用のパルスレーザ光のパルス時間幅ΔTaは本開示における「第1のパルス時間幅」の一例である。リッジ平坦化用のパルスレーザ光のパルス時間幅ΔTrは本開示における「第2のパルス時間幅」の一例である。
【0171】
4.8 変形例
(1)実施形態1ではOPSシステム32にOPS33を1台のみ用いる場合を示したが、図5のように、OPSシステムは複数台の光学パルスストレッチャを含む構成であってもよい。この場合、OPSシステムに配置された複数台の光学パルスストレッチャのそれぞれに、光学素子切替ユニット82と同様の光学素子切替ユニットを配置して光学素子の切替を制御してもよい。
【0172】
(2)実施形態1ではOPSシステム32をレーザ装置20内に配置した例を示したが、OPSシステム32はレーザアニール装置100とレーザ装置20の間の光路上に配置してもよい。
【0173】
(3)実施形態1ではマスク148の結像パターンを被照射物190上で移動させるビームスキャン照射を行うことによって、レーザアニールとリッジ平坦化を実施する方式を示したが、この例に限定されない。例えば、レーザアニール時に、レーザアニール時の照射条件でステップアンドリピート方式によってレーザ照射を行い、その後、リッジ平坦化時にリッジ平坦化時の照射条件でステップアンドリピート方式によりレーザ照射を行ってもよい。
【0174】
5.実施形態2
5.1 構成
図25は、実施形態2に係るレーザアニールシステム12の構成を概略的に示す。図25に示す構成について図17との相違点を説明する。図25に示すレーザアニールシステム12は、図17の光学素子切替ユニット82に代えて、OPS33の遅延光路上に遅延光路を開閉するためのシャッタ84が配置されている点で図17の構成と異なる。他の構成は、図17と同様である。レーザアニール制御部180は、レーザ制御部38を介してシャッタ84の開閉動作を制御する。
【0175】
OPS33のビームスプリッタ70の反射率は55%~65%が好ましく、さらに好ましくは60%である。
【0176】
5.2 動作
レーザアニール制御部180は、シャッタ84を動作させるための遅延光路開閉制御信号を出力する。レーザアニール制御部180から送信された遅延光路開閉制御信号は、レーザ制御部38を介してシャッタ84の駆動部に送られる。
【0177】
レーザアニール時は、レーザアニール制御部180からシャッタ84を開状態にする制御信号が送信される。シャッタ84を開状態にすると、OPS33によりパルスストレッチされたパルスレーザ光が被照射物190に照射される。OPS33によりパルスストレッチされたパルスレーザ光は本開示における「第1のパルスレーザ光」の一例である。
【0178】
リッジ平坦化時は、レーザアニール制御部180からシャッタ84を閉状態にする制御信号が送信される。シャッタ84を閉状態にすると、OPS33の遅延光路が遮光されるため、OPS33によりパルスストレッチされていないパルスレーザ光が被照射物190に照射される。OPS33によりパルスストレッチされていないパルスレーザ光、すなわち、シャッタ84が閉状態である場合にビームスプリッタ70を透過したパルスレーザ光は本開示における「第2のパルスレーザ光」の一例である。
【0179】
5.3 作用・効果
実施形態2に係るレーザアニールシステム12によれば、シャッタ84の開閉動作のみの制御で、レーザアニール用のパルスレーザ光とリッジ平坦化用のパルスレーザ光とを切り替えて照射することができる。
【0180】
なお、リッジ平坦化時のフルーエンスFrは、レーザアニール時のフルーエンスFaよりも小さいので(Fr<Fa)、シャッタ84を閉じてもリッジ平坦化時の所望のフルーエンスFrで照射することができる。
【0181】
6.実施形態3
6.1 構成
図26は、実施形態3に係るレーザアニールシステム13の構成を概略的に示す。図26に示す構成について図17との相違点を説明する。実施形態3に係るレーザアニールシステム13は、レーザアニール用の第1のパルスレーザ光を出力する第1のレーザ装置21と、リッジ平坦化用の第2のパルスレーザ光を出力する第2のレーザ装置22と、第1の光路管26と、第2の光路管27と、を含む。第1のレーザ装置21及び第1の光路管26は、図17で説明したレーザ装置20及び光路管25と同様の構成であってよい。第1の光路管26は、第1のレーザ装置21のレーザ光出射口とレーザアニール装置100の第1のレーザ光入射口との間のレーザ光の光路上に配置される。
【0182】
第2のレーザ装置22は、第1のレーザ装置21から出力される第1のパルスレーザ光のパルス時間幅よりも短いパルス時間幅の第2のパルスレーザ光を出力する。第2のレーザ装置22は、第1のレーザ装置21の構成からOPSシステム32を削除した構成のレーザ装置であってよい。
【0183】
第2の光路管27は、第2のレーザ装置22のレーザ光出射口とレーザアニール装置100の第2のレーザ光入射口との間のレーザ光の光路上に配置される。
【0184】
レーザアニールシステム13の照射光学システム113は、図17で説明した照射光学システム110の構成に加えて、リッジ平坦化用の第2のパルスレーザ光を被照射物190に照射するために、高反射ミラー321~323と、アッテネータ330と、照明光学系340と、が追加されている。
【0185】
高反射ミラー321は、第2の光路管27を通過したレーザ光がアッテネータ330を通過して高反射ミラー322に入射するように配置される。
【0186】
アッテネータ330は、高反射ミラー321と高反射ミラー322の間の光路上に配置される。アッテネータ330は、2枚の部分反射ミラー331及び332と、それぞれの部分反射ミラー331、332の入射角度を可変する回転ステージ335及び336と、を含む。
【0187】
高反射ミラー322は、アッテネータ330を通過したレーザ光が高反射ミラー323に入射するように配置される。高反射ミラー323は、入射したパルスレーザ光を照明光学系340のフライアイレンズ345に入射するように配置される。
【0188】
照明光学系340は、フライアイレンズ345と、コンデンサレンズ346と、を含む。照明光学系340は、マスク148上における所定の照明領域を均一照明するための光学系であり、マスク148を矩形のビームでケーラ照明するように配置される。
【0189】
フライアイレンズ345は、例えば、フライアイレンズ345の焦点面とコンデンサレンズ346の前側焦点面とが一致するように配置され、コンデンサレンズ346は、コンデンサレンズ346の後側焦点面とマスク148の位置とが一致するように配置される。
【0190】
照明光学系140、及び投影光学系150を介して被照射物190の表面に照射されるレーザアニール用のラインビームLBaは、被照射物190の表面上においてY軸方向のビーム幅がByaであり、X軸方向のビーム幅がBxaであるとする。また、照明光学系340、及び投影光学系150を介して被照射物190の表面に照射されるリッジ平坦化用のラインビームLBrは、被照射物190の表面上におけるY軸方向のビーム幅がByrであり、X軸方向のビーム幅がBxrであるとする。そして、レーザアニール時の照射パルス数をNa、リッジ平坦化時の照射パルス数をNrとする。実施形態3の場合、ByaとByrが同じであり(Bya=Byr)、BxaとBxrはNaとNrの比となるように(Bxa:Bxr=Na:Nr)、照明光学系140と照明光学系340が構成されている。
【0191】
例えば、照明光学系140のフライアイレンズ145と照明光学系340のフライアイレンズ345のY軸方向のピッチ間隔は同じであって、X軸方向のピッチ間隔の比がNaとNrの比と同じ構成とする。そして、照明光学系140及び照明光学系340のそれぞれのコンデンサレンズ146、346の焦点距離が同じであってもよい。
【0192】
6.2 動作
第1のレーザ装置21から出力されたパルスレーザ光を被照射物190に照射することによってレーザアニールを行う動作については図2で説明したレーザアニールシステム10と同様である。レーザアニール制御部180は第2のレーザ装置22の図示しないレーザ制御部との間で目標パルスエネルギ等の各種データや信号の送受信を行う。レーザアニール制御部180は第2のレーザ装置22に発光トリガ信号Tr2を第1のレーザ装置21の発光トリガTr1と同期して送信する。
【0193】
第2のレーザ装置22ら出力されたパルスレーザ光は、第2の光路管27を通過して高反射ミラー321で反射され、アッテネータ330に入射する。
【0194】
アッテネータ330を透過したパルスレーザ光は、高反射ミラー322及び323を介して照明光学系340に入射する。
【0195】
照明光学系340を透過したパルスレーザ光は、矩形のビーム形状であって光強度が均一化されたラインビームに整形されて、マスク148上に照射される。
【0196】
図27は、マスク148のパターンとマスク148を照明するラインビームLBam、LBrmの関係の例を示す平面図である。図27に示すように、レーザアニール用のラインビームLBamと、リッジ平坦化用のラインビームLBrmとがそれぞれマスク148上に照射される。
【0197】
レーザアニール制御部180は、被照射物190の表面上でのレーザアニール用のラインビームLBaのフルーエンスがFaとなるように、アッテネータ130の透過率を制御する。また、レーザアニール制御部180は、被照射物190の表面上でのリッジ平坦化用のラインビームLBrのフルーエンスがFrとなるようにアッテネータ330の透過率を制御する。
【0198】
レーザアニール時のXYZ軸ステージ172のX軸方向への移動速度Vxaは以下の式(10)で求められる。
【0199】
Vxa=fa・Bxa/Na (10)
リッジ平坦化時のXYZ軸ステージ172のX軸方向への移動速度Vxrは次式(11)で表される。
【0200】
Vxr=fr・Bxr/Nr (11)
ここで、繰り返し周波数fa=fr、R=Bxa/Bxr=Na/Nrに設定することによって、Vxa=Vxrとなる。
【0201】
図28は、被照射物190に対するラインビームのスキャン照射の例を示す平面図である。被照射物190に対してレーザアニール用のラインビームLBaとリッジ平坦化用のラインビームLBrの2つのラインビームを、図28に示すようにスキャン照射することによってレーザアニールとリッジ平坦化とを実施することができる。
【0202】
被照射物190の表面に照射されるレーザアニール用のラインビームLBaは、図27で説明したマスク148のラインアンドスペースの結像パターンである。図28に示すように、被照射物190の表面に照射されるレーザアニール用のラインビームLBaは、X軸方向のビーム幅がBxa、Y軸方向のビーム幅がByaである。被照射物190の表面に照射されるリッジ平坦化用のラインビームLBrは、X軸方向のビーム幅がBxr、Y軸方向のビーム幅がByrである。ここではBya=Byrである。
【0203】
2つのラインビームLBa、LBrは、XYZ軸ステージ172の移動によって、被照射物190に対して相対的に移動する。XYZ軸ステージ172をX軸の正の方向に移動させることにより、ラインビームLBa及びLBrは、被照射物190の表面をX軸の負の方向(図28において左方向)に移動する。レーザアニール用のラインビームLBaは、被照射物190に対してスキャン照射初期位置SPainiからスキャン照射終了位置SPaendまで移動する。リッジ平坦化用のラインビームLBrは、レーザアニール用のラインビームLBaの移動の動きを追って、被照射物190に対してスキャン照射初期位置SPriniからスキャン照射終了位置SPrendまで移動する。
【0204】
図28において、被照射物190の表面のうちラインビームLBaが通過していない領域、つまり、スキャン照射が行われていない領域は、未だレーザ光が照射されておらず、アモルファス(非晶質)の状態のままのアモルファス領域190aである。被照射物190の表面のうちラインビームLBaが通過した領域は、結晶成長によりシリコンが多結晶化した結晶化領域190pとなる。被照射物190の表面のうちリッジ平坦化用のラインビームLBrが通過した領域は、リッジが平坦化されたリッジ平坦化領域190rとなる。被照射物190の表面のうちレーザアニール用のラインビームLBaが通過した領域であって、かつ、リッジ平坦化用のラインビームLBrが通過していない領域は、リッジを含んだ状態のままの結晶化領域190pである。
【0205】
被照射物190に対するリッジ平坦化用のラインビームLBrの位置がスキャン照射終了位置SPrend(図28参照)に到達したら、XYZ軸ステージ172の移動を停止させる。
【0206】
6.3 作用・効果
実施形態3に係るレーザアニールシステム13は、実施形態1に係るレーザアニールシステム11と比較して、以下の作用効果がある。
【0207】
[1]レーザアニール用とリッジ平坦化用の2つのラインビームをそれぞれ照明光学系140及び340によって整形し、R=Bxa/Bxr=Na/Nrに設定することによって、リッジ平坦化時のアッテネータ330の減光量を減らすことができる。これにより、パルスレーザ光の利用効率が改善される。
【0208】
[2]XYZ軸ステージ172のX軸方向について1回のスキャン照射の動作で、レーザアニールとリッジ平坦化とが可能となり、スループットが改善される。
【0209】
実施形態3における第1のレーザ装置21と第2のレーザ装置22の組み合わせは本開示における「レーザシステム」の一例である。
【0210】
7.実施形態4
7.1 構成
図29は、実施形態4に係るレーザアニールシステム14の構成を概略的に示す。図29に示す構成について図26との相違点を説明する。図29に示すレーザアニールシステム14は、図26における第1のレーザ装置21及び第2のレーザ装置22に代えて、レーザ装置23と分岐システム250とを含む。
【0211】
レーザ装置23は、OPSシステムを含んでいないエキシマレーザ装置である。レーザ装置23は、例えば、図2で説明したレーザ装置20からOPSシステム32を削除した構成であってよく、マスターオシレータ30とモニタモジュール34とレーザ制御部38とを備える。
【0212】
レーザ装置23とレーザアニール装置100の間の光路上に第3の光路管28と分岐システム250と第1の光路管26及び第2の光路管27と、が配置される。第3の光路管28は、レーザ装置23のレーザ光出射口と分岐システム250のレーザ光入射口との間のレーザ光の光路上に配置される。
【0213】
分岐システム250は、ビームスプリッタ254と、OPSシステム32と、高反射ミラー257と、を含む。
【0214】
ビームスプリッタ254は、レーザ装置23とOPSシステム32との間のレーザ光の光路上に配置される。ビームスプリッタ254は、部分反射膜がコートされている。ビームスプリッタ245で反射された反射光は、高反射ミラー257と第2の光路管27を介して、レーザアニール装置100の高反射ミラー321に入射するように配置される。
【0215】
ビームスプリッタ254の反射率R4は、以下の式(12)で計算される反射率に近い値である。
【0216】
R4=By・Bxa・Fa/(By・Bxr・Fr)
=(Bxa・Fa)/(Bxr・Fr) (12)
OPSシステム32は、ビームスプリッタ254の透過光の光路上であって、レーザアニール装置100の高反射ミラー121とビームスプリッタ254との間に配置される。
【0217】
7.2 動作
レーザアニール制御部180はレーザ装置23に発光トリガ信号Tr3を送信する。レーザ装置23から出力されたパルスレーザ光は分岐システム250に入射する。
【0218】
ビームスプリッタ254によって反射されたパルスレーザ光はパルスストレッチされずに、高反射ミラー257と第2の光路管27を通過して高反射ミラー321に入射する。高反射ミラー321で高反射されたパルスレーザ光はアッテネータ330に入射する。
【0219】
アッテネータ330を透過したパルスレーザ光は、高反射ミラー322及び323を介して照明光学系340に入射する。
【0220】
照明光学系340を透過したパルスレーザ光は、矩形のビーム形状であり、光強度が空間的に均一化されたラインビームに整形されて、リッジ平坦化用のラインビームLBrmとしてマスク148上に照射される。ラインビームLBrmとマスク148のパターンとの関係は図27と同様である。
【0221】
一方、分岐システム250のビームスプリッタ254を透過したパルスレーザ光は、OPSシステム32によってパルスストレッチされ、高反射ミラー121、アッテネータ130、高反射ミラー122及び123を介して、照明光学系140に入射する。
【0222】
照明光学系140を透過したパルスレーザ光は、矩形のビーム形状であり、光強度が空間的に均一化されたラインビームに整形されて、レーザアニール用のラインビームLBamとしてマスク148上に照射される。ラインビームLBamとマスク148のパターンとの関係は図27と同様である。
【0223】
レーザアニールシステム14において被照射物190に対するレーザアニール用及びリッジ平坦化用のスキャン照射の動作については、図28で説明した実施形態3のスキャン照射の動作と同様である。
【0224】
7.3 作用・効果
実施形態4に係るレーザアニールシステム14は、図26の実施形態3の構成に比べて、1台のレーザ装置23で、レーザアニールとリッジ平坦化とが可能である。
【0225】
また、実施形態4に係るレーザアニールシステム14は、実施形態1(図17)及び実施形態2(図25)と比べて、ビームスプリッタ254の反射率R4を式(12)の値に近い反射率とすることで、パルスレーザ光の利用効率が改善される。
【0226】
実施形態4におけるレーザ装置23は本開示における「第3のレーザ装置」の一例である。レーザ装置23と分岐システム250の組み合わせは本開示における「レーザシステム」の一例である。
【0227】
7.4 変形例
(1)図29に示す実施形態4では、分岐システム250をレーザアニール装置100とレーザ装置23の間に配置したが、この例に限定されることなく、例えば、分岐システム250を、レーザ装置23内又はレーザアニール装置100内に配置してもよい。
【0228】
(2)レーザ装置23のパルスレーザ光のパルスエネルギの制御範囲内であればアッテネータ330を配置しなくてもよい。
【0229】
8.実施形態5
8.1 構成
図30は、実施形態5に係るレーザアニールシステム15の構成を概略的に示す。図30に示す構成について図29との相違点を説明する。図30に示すレーザアニールシステム15は、図29におけるレーザ装置23及び分岐システム250に代えて、レーザ装置24及び偏光分岐システム251を含む。
【0230】
レーザ装置24は、OPSシステムを含んでいないエキシマレーザ装置であって、XZ平面に対して直交する直線偏光のパルスレーザ光を出力するレーザ装置である。
【0231】
レーザ装置24の光共振器中の図示しない2枚のウインドウをブリュースタ角で配置し、XZ平面に対して直交する偏光がP偏光となるように配置してもよい。
【0232】
レーザ装置24とレーザアニール装置100の間の光路上に偏光分岐システム251が配置される。なお、図30に示すレーザアニールシステム15では、図29に示した第2の光路管27は削除されている。
【0233】
偏光分岐システム251は、リターダ255と、OPSシステム32と、を含む。リターダ255は、OPSシステム32とレーザ装置24の間の光路上に配置される。
【0234】
リターダ255はλ/2板であって、リターダ255の材料は例えば水晶、MgF結晶又はサファイヤ結晶である。リターダ255は、リターダ255の光学軸とリターダ255に入射するパルスレーザ光の偏光面とのなす角度θを回転させる回転ステージ256をさらに含む。
【0235】
OPSシステム32は、レーザ装置24とレーザアニール装置100との間のレーザ光の光路上に配置される。OPSシステム32に配置されるビームスプリッタ70Pは、S偏光成分が部分反射し、P偏光成分が高透過する膜がコートされ、XZ平面と直交する偏光成分がS偏光となるように配置される。
【0236】
照射光学システム114は、図29の高反射ミラー121及び321が削除され、代わりに、偏光ビームスプリッタ324と、高反射ミラー325とが追加されている。
【0237】
偏光ビームスプリッタ324は、XZ平面に対して直交する偏光面のパルスレーザ光がS偏光となり、アッテネータ130に入射するように配置される。偏光ビームスプリッタ324は、S偏光を高反射し、P偏光を高透過する膜がコートされている。
【0238】
高反射ミラー325は、偏光ビームスプリッタ324の透過光を反射して、この反射光がアッテネータ330に入射するように配置される。
【0239】
8.2 動作
レーザ装置24からXZ平面に対して直交する偏光面のパルスレーザ光が出力される。レーザ装置24から出力されたパルスレーザ光はリターダ255に入射する。
【0240】
リターダ255によって、パルスレーザ光の偏光面は2θ回転する。偏光面が回転したパルスレーザ光はビームスプリッタ70pに入射する。
【0241】
XZ平面に対して直交する偏光成分のパルスレーザ光の一部は、OPSシステム32のビームスプリッタ70pで反射し、他の一部はビームスプリッタ70pを透過するため、OPSシステム32によってパルスストレッチされる。
【0242】
一方、XZ平面を含む偏光成分のパルスレーザ光は、ビームスプリッタ70pを高透過し、パルスストレッチされない。
【0243】
OPSシステム32を通過したパルスレーザ光は、照射光学システム114の偏光ビームスプリッタ324に入射する。OPSシステム32によってパルスストレッチされたXZ平面に対して直交する偏光成分は、偏光ビームスプリッタ324によって高反射され、アッテネータ130、高反射ミラー122及び123を介して照明光学系140に入射する。
【0244】
照明光学系140を透過したパルスレーザ光は、矩形で強度分布が均一化されたラインビームに整形されて、レーザアニール用としてマスク148上に照射される。
【0245】
一方、OPSシステム32によってパルスストレッチされなかったXZ平面を含む偏光成分は、偏光ビームスプリッタ324によって高透過され、高反射ミラー325、アッテネータ330、高反射ミラー322及び323を介して照明光学系340に入射する。
【0246】
照明光学系340を透過したパルスレーザ光は、矩形で強度分布が均一化されたラインビームに整形されて、リッジ平坦化用としてマスク148上に照射される。
【0247】
マスク148を透過したレーザアニール用のパルスレーザ光とリッジ平坦化用のパルスレーザ光とを投影光学系150を介して被照射物190に照射させる動作は、実施形態4と同様である。
【0248】
レーザアニール制御部180は、リターダ255を透過したパルスレーザ光のXZ平面に直交する偏光成分のパルスレーザ光のパルスエネルギEaとXZ平面を含む偏光成分のパルスレーザ光のパルスエネルギEbの比Rabが次式(13)の関係となるように、リターダ255を回転させる。
【0249】
Rab=Ea/Eb=By・Bxa・Fa/(By・Bxr・Fr)
=(Bxa・Fa)/(Bxr・Fr) (13)
8.3 作用・効果
図30に示す実施形態5は、図26の実施形態3に比べて、1台のレーザ装置でレーザアニールとリッジ平坦化が可能である。
【0250】
図30に示す実施形態5は、図26の実施形態3に比べて、リターダ255の光学軸を回転させることによって、レーザアニール用のパルスレーザ光とリッジ平坦化用のパルスレーザ光の割合を調節することにより、パルスレーザ光の利用効率が改善される。
【0251】
また、レーザアニール時とリッジ平坦化時の照射条件が変更される場合にも、レーザアニール用のパルスレーザ光とリッジ平坦化用のパルスレーザ光の割合を調節することによってパルスレーザ光の利用効率の最適化を行うことができる。
【0252】
実施形態5におけるレーザ装置24と偏光分岐システム251の組み合わせは本開示における「レーザシステム」の一例である。レーザ装置24は本開示における「第4のレーザ装置」の一例である。XZ平面に対して直交する偏光成分は本開示における「第1の偏光成分」の一例である。XZ平面を含む偏光成分は本開示における「第2の偏光成分」の一例である。
【0253】
8.4 変形例
[1]実施形態5では、偏光分岐システム251をレーザアニール装置100とレーザ装置24の間に配置したが、この例に限定されることなく、例えば、偏光分岐システム251をレーザ装置24内又はレーザアニール装置100内に配置してもよい。
【0254】
[2]レーザ装置24のパルスレーザ光のパルスエネルギの制御範囲内であればアッテネータ330を配置しなくてもよい。
【0255】
[3]リターダ255の回転角度を調節することによって、パルスレーザ光のXZ平面に直交する偏光成分のパルスレーザ光のパルスエネルギEaとXZ平面を含む偏光成分のパルスレーザ光のパルスエネルギEbの比Rabを調整できるため、アッテネータ130、330のうちの少なくとも一方を省略する構成も可能である。
【0256】
9.実施形態6
9.1 構成
図31は、実施形態6に係るレーザアニールシステム16の構成を概略的に示す。実施形態6では、投影光学系151を用いて、被照射物190上のTFTを形成する領域部分を局所的にレーザアニールする場合の例を示す。図31に示す構成について図26との相違点を説明する。
【0257】
図31に示すレーザアニールシステム16の照射光学システム115は、図26の照明光学系140、340に代えて、照明光学系141、341を含む。また、レーザアニールシステム16は、図26のマスク148及び投影光学系150に代えて、マスク149及び投影光学系151を含む。
【0258】
第1のレーザ装置21から出力されるレーザアニール用の第1のパルスレーザ光は、高反射ミラー121、アッテネータ130、高反射ミラー122及び123を介して照明光学系141に入射する。
【0259】
第2のレーザ装置22から出力されるリッジ平坦化用の第2のパルスレーザ光は、高反射ミラー321、アッテネータ330、高反射ミラー322及び323を介して照明光学系341に入射する。
【0260】
照明光学系141、341の各々は、マスク148上における所定の照明領域を均一照明するための光学系であり、マスク149を矩形のビームでケーラ照明するように配置される。
【0261】
図32は、マスク149とマスク149に対するビームの照射領域の例を示す。図32に示すように、マスク149は、複数のTFTを形成するための複数のパターン領域149paと、遮蔽領域149shと、を含む。複数のパターン領域149paの各々は、結晶成長を促進する同じ微細パターンが形成されている(図33参照)。
【0262】
図32には、照明光学系141による均一照明領域LB1mと、照明光学系341による均一照明領域LB2mとが示されている。均一照明領域LB1mは、レーザアニール用の均一ビームの照明領域である。均一照明領域LB2mは、リッジ平坦化用の均一ビームの照射領域である。
【0263】
照明光学系141による均一照明領域LB1m内のX軸方向のパターン領域149paの数は、レーザアニール時の照射パルス数Naに対応する数である。照明光学系341による均一照明領域LB2m内のX軸方向のパターン領域149paの数は、リッジ平坦化時の照射パルス数Nrに対応する数である。
【0264】
図32では簡単のために、Na=4、Nr=3の場合の例を示す。なお、例えば、Na=20、Nr=10の場合は、マスク149に配列されるX軸方向のパターン領域149paの数を30個として、照明光学系141による均一照明領域LB1m内のX軸方向のパターン領域149paの数を20個、照明光学系341による均一照明領域LB2m内のX軸方向のパターン領域149paの数を20個とすればよい。
【0265】
なお、照明光学系141による均一照明領域LB1mと、照明光学系341による均一照明領域LB2mのそれぞれの領域内におけるY軸方向のパターン領域149paの数は同じ数である。図32では、Y軸方向のパターン領域149paの数が5個の場合を示すが、この例に限定されることなく、レーザアニール時のフルーエンスが維持可能な数であればよい。
【0266】
図33は、パターン領域149paに形成されている微細パターンの例を示す拡大図である。この微細パターンは、図33に示すようなライン部149Lとスペース部149Sとが交互に並ぶラインアンドスペースパターンであってもよい。
【0267】
パターン領域149paに形成されている微細パターンは、レーザアニールによって微細パターンに応じた結晶核を形成し、結晶が成長する微細パターンであればよい。例えば、X軸方向とY軸方向にそれぞれ同じピッチ間隔で配列されたドットが形成された微細パターンであってもよい。
【0268】
図31に示す投影光学系150は、マスク149の各パターン領域149paの微細パターンを被照射物190上のアモルファスシリコン上のTFTの形成領域に結像させるように配置される。この場合、パターン領域149paの微細パターンが被照射物190上に投影される。
【0269】
9.2 動作
レーザアニール制御部180は、レーザアニール用のパルスレーザ光のフルーエンスがFaとなるように、第1のレーザ装置21とアッテネータ130を制御する。また、レーザアニール制御部180は、リッジ平坦化用のパルスレーザ光のフルーエンスがFrとなるように、第2のレーザ装置22とアッテネータ330を制御する。
【0270】
レーザアニール制御部180は、以下の式(14)が成立するように、XYZ軸ステージ172のX軸方向の速度Vxを計算する。
【0271】
Vx=p・f (14)
ここで、pは被照射物190上におけるTFT形成領域のX軸方向の間隔である(図34参照)。fは第1のレーザ装置21及び第2のレーザ装置22の繰り返し周波数である。ここでは、第1のレーザ装置21及び第2のレーザ装置22の繰り返し周波数をそれぞれ同じfとする。
【0272】
レーザアニール制御部180は、XYZ軸ステージ172が速度Vxで等速直線運動をするようにXYZ軸ステージ172のX軸方向の速度を設定する。
【0273】
図34は、実施形態6に係るレーザアニールシステム16の動作の説明図である。レーザアニール制御部180は、被照射物190の表面上のTFT形成領域に各パターン転写像が到達した時にレーザ光が照射されるように、発光トリガ信号Tr1及びTr2を同期させて、それぞれの第1のレーザ装置21及び第2のレーザ装置22に送信する。
【0274】
第1のレーザ装置21から出力されたレーザアニール用のパルスストレッチされたパルスレーザ光が、フルーエンスFa、照射パルス数Na、及び繰り返し周波数fの照射条件で、被照射物190表面上のそれぞれのTFT形成領域に照射される。その結果、TFT形成領域のアモルファスシリコンがレーザアニールされ、結晶成長し、リッジが形成される。
【0275】
その後、それぞれの結晶化したポリシリコンのTFT形成領域に対して、第2のレーザ装置22から出力されたリッジ平坦化用のパルスレーザ光(パルスストレッチされないパルスレーザ光)が、フルーエンスFr、照射パルス数Nr、及び繰り返し周波数fの照射条件で照射され、リッジが平坦化される。
【0276】
図34において、5行10列の配列によって並ぶ50個の四角形領域の各々は、TFTが形成されるTFT形成領域を示している。図34の右から左に向かってレーザアニール用の転写パターン像のビームと、リッジ平坦化用の転写パターン像のビームとが照射される。
【0277】
図34における左から4列分の5×4=20個の四角形領域の各々はレーザアニール用パルス照射部を表す。レーザアニール用パルス照射部は、レーザアニール用のパルスレーザ光が照射され、アモルファスシリコンが結晶成長してリッジが形成される。左から第1列目の各四角形領域はレーザアニール用のパルス照射が1回だけ行われたTFT形成領域を表す。左から第2列目の各四角形領域はレーザアニール用のパルス照射が2回行われたTFT形成領域を表す。第3列目は3回、第4列目は4回のパルス照射が行われたTFT形成領域を表す。
【0278】
レーザアニール時の照射パルス数NaがNa=4に設定される場合、1つの(同じ)TFT形成領域に対してレーザアニール用のパルスレーザ光のパルス照射が4回実施される。
【0279】
図34における左から第5列、第6列及び第7列の3列分の5×3=15個の四角形領域は、リッジ平坦化用パルス照射部を表す。リッジ平坦化用パルス照射部は、先行するレーザアニール用のパルス照射(照射パルス数Na)によって結晶化した領域であり、リッジ平坦化用のパルスレーザ光が照射され、リッジが部分溶融してリッジが平坦化される。
【0280】
第5列目のTFT形成領域は、リッジ平坦化用のパルスレーザ光のパルス照射の回数が1回目の領域である。第6列目のTFT形成領域はリッジ平坦化用のパルス照射が2回行われたTFT形成領域を表す。第7列目のTFT形成領域はリッジ平坦化用のパルス照射が3回行われたTFT形成領域を表す。リッジ平坦化時の照射パルス数NrがNr=3である場合、1つの(同じ)TFT形成領域に対してリッジ平坦化用のパルスレーザ光のパルス照射が3回実施される。
【0281】
図34における右から3列分の5×3=15個のTFT形成領域は、レーザアニール用のパルス照射をNa回実施した後にリッジ平坦化用のパルス照射をNr回実施済みのTFT形成領域を表す。
【0282】
なお、図34においてTFT形成領域以外の領域は、レーザ光が照射されないアモルファス部である。
【0283】
9.3 作用・効果
実施形態6は、図17で説明した実施形態1に比べて次の作用効果がある。すなわち、投影光学系151によって被照射物190上のTFT形成領域にマスクパターンを縮小して転写結像させて、レーザアニール用パルスレーザ光とリッジ平坦化用パルスレーザ光を照射できるので、パルスレーザ光の利用効率が高くなる。
【0284】
9.4 変形例
[1]実施形態6では、レーザアニール用のパルス時間幅が長いパルスレーザ光を出力する第1のレーザ装置21とリッジ平坦化用のパルス時間幅が短いパルスレーザ光を出力する第2のレーザ装置22の2台を使用する構成を示しているが、この例に限定されない。例えば、図31の第1のレーザ装置21及び第2のレーザ装置22に代えて、図29のレーザ装置23と分岐システム250を配置する構成、又は図30のように、レーザ装置24と偏光分岐システム251を配置する構成を採用して、レーザアニール用のパルスレーザ光とリッジ平坦化用のパルスレーザ光とに分けて照射してもよい。
【0285】
[2]実施形態6ではマスク149の投影光学系151として、1つの投影光学系151で複数のパターン領域149paをTFT形成領域に転写結像させたが、この例に限定されない。例えば、投影光学系は、複数の投影光学系を含み、1つのパターン領域に対して、1つの像をそれぞれ転写結像させる投影光学系であってもよいし、レーザアニール用の投影光学系とリッジ平坦化用の投影光学系とを含んでもよい。
【0286】
10.実施形態7
10.1 構成
図35は、実施形態7に係るレーザアニールシステム17の構成を概略的に示す。図35の構成について図26との相違点を説明する。図35に示すレーザアニールシステム17は、投影光学系150を有していない点で図26の形態と相違する。また、レーザアニールシステム17の照射光学システム116は、図26の照明光学系140及び照明光学系340に代えて、照明光学系142及び照明光学系342を含む。図35に示すマスク148は、被照射物190の表面に近接配置される。マスク148と被照射物190との間の距離は、例えば、0.2mm~0.5mmの範囲の距離であってよい。
【0287】
照明光学系142は、マスク148を介して被照射物190の表面上をラインビームで均一照明する。照明光学系142によって被照射物190に照射されるラインビームは、レーザアニール用として使用される。
【0288】
照明光学系342は、マスク148を介して被照射物190の表面上をラインビームで均一照明する。照明光学系342によって被照射物190に照射されるラインビームは、リッジ平坦化用として使用される。
【0289】
10.2 動作
レーザアニール用のパルスレーザ光とリッジ平坦化用のパルスレーザ光は、被照射物190に対して近接配置されたマスク148を透過し、被照射物190上にマスクパターンに近いパターンのパルスレーザ光が照射される。
【0290】
10.3 作用・効果
実施形態7によれば、投影光学系を省略することができ、実施形態3と比較して、システム構成を簡略化できる。
【0291】
10.4 変形例
[1]実施形態7では、レーザアニール用のパルス時間幅が長いパルスレーザ光を出力する第1のレーザ装置21とリッジ平坦化用のパルス時間幅が短いパルスレーザ光を出力する第2のレーザ装置22の2台を使用する構成を示しているが、この例に限定されない。例えば、図35の第1のレーザ装置21及び第2のレーザ装置22に代えて、図29のレーザ装置23と分岐システム250を配置する構成、又は図30のように、レーザ装置24と偏光分岐システム251を配置する構成を採用して、レーザアニール用のパルスレーザ光とリッジ平坦化用のパルスレーザ光とに分けて照射してもよい。
【0292】
11.実施形態8
11.1 構成
図36は、実施形態8に係るレーザアニールシステム18の構成を概略的に示す。図36に示す構成について図26との相違点を説明する。
【0293】
図36に示すレーザアニールシステム18は、図26の照射光学システム113に代えて照射光学システム117を含む。照射光学システム117は、図26における高反射ミラー123及び323、照明光学系140及び340が削除されており、これら光学系の代わりに、照明光学系システム360を含む。
【0294】
照明光学系システム360は、フライアイレンズ361及び362と、高反射ミラー365及び366と、コンデンサレンズ368と、を含む。
【0295】
フライアイレンズ361と高反射ミラー365は、レーザアニール用のパルスレーザ光の光路上に配置される。フライアイレンズ361は、高反射ミラー122から出射されたレーザアニール用のパルスレーザ光がフライアイレンズ361に入射するように配置される。
【0296】
フライアイレンズ362と高反射ミラー366は、リッジ平坦化用のパルスレーザ光の光路上に配置される。フライアイレンズ362は、高反射ミラー322から出射されたリッジ平坦化用のパルスレーザ光がフライアイレンズ362に入射するように配置される。高反射ミラー366は、フライアイレンズ362を透過したパルスレーザ光の中心軸が、コンデンサレンズ368に対して、図示のように垂直に入射するように配置される。
【0297】
一方、レーザアニール用のパルスレーザ光の光路に配置される高反射ミラー365は、フライアイレンズ361を透過したパルスレーザ光の中心軸が、コンデンサレンズ368に対して、図示のように斜めに入射するように配置される。
【0298】
11.2 動作
高反射ミラー365の反射角度を調節することにより、被照射物190の表面上においてレーザアニール用のラインビームLBaが照射される位置を調節することができる。すなわち、高反射ミラー365の反射角度の調節によって、被照射物190の表面上におけるレーザアニール用のラインビームLBaとリッジ平坦化用のラインビームLBrの相対的な位置関係を調節することができる。
【0299】
高反射ミラー365の反射角度は、被照射物190の表面上においてレーザアニール用のラインビームLBaの近傍にリッジ平坦化用のラインビームLBrが配置されるように調節される。
【0300】
11.3 作用・効果
高反射ミラー365の角度を調節することによって、レーザアニール用のラインビームの隣にリッジ平坦化用のラインビームを近接配置することができる。その結果、X軸方向の移動距離を短くでき、スループットが改善される。
【0301】
11.4 変形例
「1」高反射ミラー365の角度の調節に代えて、又はこれに加えて、高反射ミラー366の角度を調節することによって、被照射物190の表面上におけるリッジ平坦化用のラインビームの配置位置を調節してもよい。
【0302】
[2]高反射ミラー365に、Y軸を中心にチルト回転させるチルト回転ステージを付けて、XYZ軸ステージ172のX軸方向の移動方向に応じてレーザアニール用のラインビームの位置を制御してもよい。
【0303】
[3]図29及び図30のように、レーザ装置と分岐システム又は偏光分岐システムを配置して、レーザアニール用とリッジ平坦化用のパルスレーザ光に分けて照射してもよい。
【0304】
12.その他
上述した各実施形態及び変形例で説明した技術事項は、可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0305】
本開示の半導体結晶薄膜の製造方法により製造される半導体薄膜を用いて、TFTに代表される半導体素子を含む電子デバイスを製造することができる。
【0306】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。したがって、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0307】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
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