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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】固形製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/51 20060101AFI20231206BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231206BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231206BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61K31/51
A61K9/20
A61K47/12
A61P3/02 105
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2016255742
(22)【出願日】2016-12-28
(65)【公開番号】P2018104393
(43)【公開日】2018-07-05
【審査請求日】2019-11-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(72)【発明者】
【氏名】中西 司
(72)【発明者】
【氏名】河本 啓
(72)【発明者】
【氏名】塩見 隆史
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】渕野 留香
【審判官】鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-247693(JP,A)
【文献】特開2016-210757(JP,A)
【文献】特開2007-137874(JP,A)
【文献】特開平10-67660(JP,A)
【文献】特開2006-182770(JP,A)
【文献】第十七改正日本薬局方 製剤総則[製剤各条]「1.1錠剤」の欄(平成28年3月7日厚生省告示第64号)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-47/69,A61P1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チアミン塩酸塩及びチアミン硝酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種のビタミンB1類、並びに
コハク酸、及びマロン酸よりなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸を含有し、
前記ビタミンB1類の総量100重量部当たり、前記ジカルボン酸が150~3000重量部であり、
固形製剤中で前記ビタミンB1類と前記ジカルボン酸が、物理的に隔離されることなく、直接相互作用できるように共存している、固形製剤。
【請求項2】
前記ジカルボン酸がコハク酸である、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
前記ビタミンB1類がチアミン塩酸塩である、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項4】
精製水8.1gに対して固形製剤1.9gを添加して混合し、固形製剤を溶解させた液の25℃におけるpHが3.0~6.0になる、請求項1~3のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項5】
錠剤である、請求項1~のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項6】
ユビデカレノンを含まない、請求項1~のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項7】
固形製剤中のビタミンB1類の安定化剤であって、
前記ビタミンB1類がチアミン塩酸塩及びチアミン硝酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種であり、
コハク酸、及びマロン酸よりなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸を有効成分とし、
前記ビタミンB1類の総量100重量部当たり、前記ジカルボン酸が150~3000重量部を満たすように配合され、且つ前記ジカルボン酸が、固形製剤中で前記ビタミンB1類と物理的に隔離されることなく直接相互作用できるように配合される、前記安定化剤。
【請求項8】
固形製剤に、チアミン塩酸塩及びチアミン硝酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種のビタミンB1類と共に、コハク酸、及びマロン酸よりなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸を配合し、
前記ビタミンB1類の総量100重量部当たり、前記ジカルボン酸が150~3000重量部を満たすように配合し、
固形製剤中で前記ビタミンB1類と前記ジカルボン酸が、物理的に隔離されることなく、直接相互作用できるように共存させる、ビタミンB1類の安定化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンB1類の経時的な分解を抑制でき、優れた製剤安定性を有する固形製剤に関する。また、本発明は、固形製剤において、ビタミンB1類を安定化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンB1類には、炭水化物の代謝を促進することで、神経や筋肉の機能を正常に保つ作用があり、疲労回復やストレス緩和等に有効であることが知られており、食品や医薬品等において広く使用されている。しかしながら、ビタミンB1類は保存安定性が低く、ビタミンB1類を含む製剤では、ビタミンB1類の含有量が経時的に低下するという欠点がある。
【0003】
従来、固形製剤中でビタミンB1類の安定化を図る製剤技術について、種々検討がなされている。例えば、特許文献1には、トコフェロールのコハク酸エステル又はその塩とビタミンB1類とを含む製剤において、その少なくとも一方を被覆剤で被覆することによって、ビタミンB1類の安定化が図られることが開示されている。また、特許文献2には、固形製剤において、ビタミンB1誘導体と共に、デンプン及びリン酸水素カルシウムを配合することにより、ビタミンB1誘導体の経時的な分解を抑制できることが開示されている。また、特許文献3には、コハク酸トコフェロール又はその塩、ビタミンB1類、及び比容が約3ml/g以上である塩基性無機化合物を組み合わせて配合することによって、ビタミンB1類の含有量の低下を抑制できることが開示されている。更に、特許文献4には、ビタミンB1類1重量部に対してグルコサミン等のアミノ糖類を0.1重量部以上の割合で配合することによって、ビタミンB1類の安定化が図られることが開示されている。
【0004】
しかしながら、従来の製剤技術では、製剤処方に制約があるため、近年の多様化する製剤処方に対応できないケースがある。そこで、固形製剤中でビタミンB1類を安定化できる新たな製剤技術の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-271072号公報
【文献】特開平9-268127号公報
【文献】特開2000-247879号公報
【文献】特開2002-145780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ビタミンB1類の経時的な分解を抑制でき、優れた製剤安定性を有する固形製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ビタミンB1類と共に、アルコール性水酸基を有していないジカルボン酸を配合した固形製剤は、ビタミンB1類の経時的な分解が抑制され、優れた製剤安定性を備え得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ビタミンB1類、及びアルコール性水酸基を有していないジカルボン酸を含有する、固形製剤。
項2. 前記ジカルボン酸がコハク酸である、項1に記載の固形製剤。
項3. 前記ビタミンB1類がチアミン塩酸塩である、項1に記載の固形製剤。
項4. 精製水8.1gに対して固形製剤1.9gを添加して混合し、固形製剤を溶解させた液の25℃におけるpHが3.0~6.0になる、項1~3のいずれかに記載の固形製剤。
項5. ビタミンB1類100重量部当たり前記ジカルボン酸を0.3~3500重量部の比率で含有する、項1~4のいずれかに記載の固形製剤。
項6. 前記ジカルボン酸を0.001~10重量%含有する、項1~5のいずれかに記載の固形製剤。
項7. 錠剤である、項1~6のいずれかに記載の医薬組成物。
項8. アルコール性水酸基を有していないジカルボン酸を有効成分とする、固形製剤中のビタミンB1類の安定化剤。
項9. 固形製剤に、ビタミンB1類と共にアルコール性水酸基を有していないジカルボン酸を配合する、ビタミンB1類の安定化方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ビタミンB1類の経時的な分解を抑制できるので、製剤安定性に優れたビタミンB1類含有固形製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.固形製剤
本発明の固形製剤は、ビタミンB1類、及びアルコール性水酸基を有していないジカルボン酸を含有することを特徴とする。以下、本発明の固形について詳述する。
【0011】
ビタミンB1類
本発明の固形製剤はビタミンB1類を含有する。ビタミンB1には、経時的に分解して含有量が低下するという欠点があるが、本発明では、アルコール性水酸基を有していないジカルボン酸を使用することによって、かかる欠点を克服し、ビタミンB1の安定化を図ることができる。
【0012】
本発明において、「ビタミンB1類」とは、ビタミンB1及びその誘導体を指す。本発明で使用されるビタミンB1の種類については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、チアミン、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩等が挙げられる。また、本発明で使用されるビタミンB1の誘導体の種類については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが例えば、オクトチアミン、フルスルチアミン、塩酸シコチアミン、塩酸ジセチアミン、塩酸フルスルチアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジスルフィド、チアミンラウリル硫酸塩、チアミンセチル硫酸塩、チアミンジセチル硫酸エステル塩、ビスブチチアミン、ビスベンチアミン、ベンフォチアミン、ジベンゾイルチアミン、ジベンゾイルチアミン塩酸塩、ビスイブチアミン、チアミンナフタレン-1,5-ジスルフォン酸塩、チアミンナフタリンー1、5ージスルホン酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンジスルフィド硝化物、チアミンプロピルジスルフィド(TPD)、チアミンテトラヒドロフルフィリルジスルフィド(TTFD)、チアミン-8-メチル-6-アセチルジヒドロチオクテートジスルフィド(TATD)、O,S-ジベンゾイルチアミン(DBT)、O,S-ジカルボエトキシチアミン塩酸(DCET)、S-ベンゾイルチアミン-O-一リン酸(BTMP)、O-ベンゾイルチアミンジスルフィド(BTDS)等が挙げられる。
【0013】
本発明において、ビタミンB1類として、ビタミンB1及びその誘導体の中から、1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
これらのビタミンB1類の中でも、好ましくはビタミンB1、更に好ましくはチアミン塩酸塩が挙げられる。
【0015】
本発明の固形製剤において、ビタミンB1類の含有量については、使用するビタミンB1類の種類、剤型、用途、一日当たりの投与量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.001~95重量%、好ましくは0.01~0.5重量%、更に好ましくは0.1~0.5重量%が挙げられる。
【0016】
本発明の固形製剤において、ビタミンB1類の一日当たりの投与量については、使用するビタミンB1類の種類、剤型、用途、投与形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.002~2200mg/日、好ましくは0.02~50mg/日、更に好ましくは0.2~12mg/日が挙げられる。
【0017】
アルコール性水酸基を有していないジカルボン酸
本発明の固形製剤では、ビタミンB1類の経時的な分解を抑制するために、アルコール性水酸基を有していないジカルボン酸を含有する。
【0018】
本発明で使用されるジカルボン酸は、可食性であって、カルボキシル基を2個有し、且つアルコール性水酸基を有していない構造である限り、特に制限されない。
【0019】
本発明で使用されるジカルボン酸の炭素数としては、例えば、2~10、好ましくは2~8、更に好ましくは4が挙げられる。
【0020】
また、本発明で使用されるジカルボン酸は、2個のカルボキシル基が飽和又は不飽和の炭化水素で連結している構造であってもよく、また2個のカルボキシル基が芳香族炭化水素で連結している構造であってもよい。また、ジカルボン酸が2個のカルボキシル基が飽和又は不飽和の炭化水素で連結している構造である場合、当該炭化水素は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状である。ビタミンB1類の経時的な分解をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくは2個のカルボキシル基が飽和又は不飽和の炭化水素で連結しているジカルボン酸、更に好ましくは2個のカルボキシル基が飽和炭化水素で連結しているジカルボン酸が挙げられる。
【0021】
本発明で使用されるジカルボン酸として、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸の中でも、ビタミンB1類の経時的な分解をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、更に好ましくはマロン酸、コハク酸、グルタル酸、特に好ましくはコハク酸が挙げられる。
【0022】
本発明の固形製剤において、前記ジカルボン酸の含有量については、ビタミンB1類の含有量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.001~10重量%が挙げられる。ビタミンB1類の経時的な分解をより一層効果的に抑制するという観点から、本発明の固形製剤における前記ジカルボン酸の含有量として、好ましくは0.5~8重量%、更に好ましくは1~5重量%が挙げられる。
【0023】
本発明の固形製剤において、ビタミンB1類に対する前記ジカルボン酸の比率については、特に制限されず、前述するビタミンB1類及び前記ジカルボン酸の含有量を充足する範囲で適宜設定すればよいが、ビタミンB1類の経時的な分解をより一層効果的に抑制するという観点から、ビタミンB1類の総量100重量部当たり、前記ジカルボン酸が0.3~3500重量部、好ましくは150~3000重量部、更に好ましくは300~1700重量部となる比率が挙げられる。
【0024】
ビタミンB2類
本発明の固形製剤は、必要に応じて、ビタミンB2類が含まれていてもよい。
【0025】
本発明において、「ビタミンB2類」とは、ビタミンB2及びその誘導体を指す。本発明で使用されるビタミンB2類の種類については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビン5’-リン酸エステルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル、及びこれらの塩(ナトリウム塩等のアルカリ金属塩等)が挙げられる。これらのビタミンB2類は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
本発明の固形製剤にビタミンB2類を含有させる場合、その含有量については、特に制限されず、付与すべき生理機能や薬理効果等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.00001~95重量%、好ましくは0.00001~20重量%、更に好ましくは0.00001~2重量%が挙げられる。
【0027】
ビタミンB5類
本発明の固形製剤は、必要に応じて、ビタミンB5類が含まれていてもよい。
【0028】
本発明において、「ビタミンB5類」とは、ビタミンB5、プロビタミンB5、及びその誘導体を指す。本発明で使用されるビタミンB5類の種類については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、パントテン酸、パントテン酸の塩(ナトリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩等のアルカリドル金属塩等)、パンテチン、パンテテイン、パンテノール、パントテニルエチルエーテル、アセチルパントテニルエチルエーテル等が挙げられる。これらのビタミンB5類は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
本発明の固形製剤にビタミンB5類を含有させる場合、その含有量については、特に制限されず、付与すべき生理機能や薬理効果等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.00001~95重量%、好ましくは0.00001~20重量%、更に好ましくは0.00001~2重量%が挙げられる。
【0030】
生薬末
本発明の固形製剤は、必要に応じて、生薬末を含んでいてもよい。本発明の固形製剤で使用される生薬末の種類については、特に制限されず、固形製剤に付与すべき生理機能や薬理効果等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、ケイヒ末、コウボク末、トチュウ末、ボクソク末、アカメガシワ末、オウバク末、コンズランゴ末、マオウ末、ウコン末、オウゴン末、オウレン末、オンジ末、カンゾウ末、シャクヤク末、ベニバナ末、サンシン末、マシニン末、ヨクイニン末、ボレイ末、カッコン末、トウキ末、チンピ末、ジオウ末、ウイキョウ末、エイジツ末、エンゴサク末、カノコソウ末、ダイオウ末、タイソウ末、ゲンチアナ末、ゲンノショウコ末、コウジン末、コウブシ末、ゴオウ末、ゴミシ末、サイコ末、センブリ末、ソウジュツ末、アロエ末、サンキライ末、サンシシ末、ボタンピ末、サンショウ末、セネガ末、サンヤク末、ジキタリス末、サイシン末、トコン末、トラガント末、シュクシャ末、ショウキョウ末、センキュウ末、センナ末、キキョウ末、クジン末、ソヨウ末、タクシャ末、チクセツニンジン末、チョウジ末、チョレイ末、トウガラシ末、トウニン末、ニガキ末、ニンジン末、ビャクジュツ末、リョウキョウ末、ブクリョウ末、ボウイ末、リュウタン末、アマチャ末、アヘン末ナンテンジツ末、キョウニン末、シャゼンシ末、バイモ末、サイシン末、ソウハクヒ末、ハンゲ、ダイサン末、コウカ末、サフラン末、モクツウ末、レンニク末等が挙げられる。これらの生薬末は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本発明の固形製剤に生薬末を含有させる場合、その含有量については、特に制限されず、付与すべき生理機能や薬理効果等に応じて適宜設定すればよいが、例えば4~95重量%、好ましくは30~95重量%、更に好ましくは50~80重量%が挙げられる。
【0032】
その他の含有成分
本発明の固形製剤は、前述する成分の他に、栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、食品や医薬品に使用可能なものであれば特に制限されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収斂剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬、生薬エキス末、アミノ酸、前記以外のビタミン類(ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB12、葉酸等)、メントール類等が挙げられる。これらの栄養成分や薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0033】
本発明の固形製剤には、前述する成分の他に、本発明の効果を妨げない範囲で、製剤化等に必要な他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、賦形剤、流動化剤、滑沢剤、崩壊剤、結合剤、酸味料、甘味料、香料、着色料等が挙げられる。
【0034】
このような添加剤としては、具体的には、乳糖、ブドウ糖、麦芽糖、ショ糖、白糖等の糖類:マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、エリスリトール等の糖アルコール;トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉、デキストリン、カルボキシメチルスターチ等の澱粉及びその誘導体;セルロース、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース及びその誘導体;アラビアガム、デキストラン、プルラン、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤の含有量については、使用する添加剤の種類や固形製剤の剤型等に応じて適宜設定すればよい。
【0035】
固形製剤の特性
本発明の好適な一態様として、精製水8.1gに対して本発明の固形製剤1.9gを添加して混合し、本発明の固形製剤を溶解させた液の25℃におけるpHが3.0~6.0、好ましくは3.0~5.0、更に好ましくは4.0~5.0、特に好ましくは4.0~4.7となることが挙げられる。このような特性を充足することによって、経時的な分解をより一層効果的に抑制し得る。
【0036】
剤型
本発明の固形製剤の剤型については、固形状であることを限度として特に制限されないが、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、散剤、顆粒剤(ドライシロップを含む)等が挙げられる。これらの剤型の中でも、好ましくは錠剤が挙げられる。
【0037】
用途
本発明の固形製剤は、内服用医薬品として使用してもよく、また特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の保健機能食品として使用してもよい。
【0038】
本発明の固形製剤は、ビタミンB1類によって、疲労回復作用、ストレス緩和作用、神経機能の正常化作用等を発揮できるので、栄養補給の用途の他、疲労回復、ストレス緩和、神経機能の正常化等の用途に使用することができる。
【0039】
製造方法
本発明の固形製剤は、ビタミンB1類、アルコール性水酸基を有していないジカルボン酸、並びに必要に応じて添加される他の薬理成分、基剤、及び添加剤を用いて、所望の剤型になるように通常の製剤化手法に従って製剤化することによって製造できる。
【0040】
2.ビタミンB1類の安定化剤、及びビタミンB1類の安定化方法
前述するように、アルコール性水酸基を有していないジカルボン酸は、固形製剤中でビタミンB1類の経時的な分解を抑制することができる。従って、本発明は、更に、アルコール性水酸基を有していないジカルボン酸を有効成分とする、固形製剤に含まれるビタミンB1類の安定化剤を提供する。また、本発明は、固形製剤に、ビタミンB1類と共にアルコール性水酸基を有していないジカルボン酸を配合する、ビタミンB1類の安定化方法を提供する。
【0041】
前記安定化剤は、アルコール性水酸基を有していないジカルボン酸の添加剤としての用途であり、また、前記安定化方法は、アルコール性水酸基を有していないジカルボン酸を利用して、固形製剤におけるビタミンB1類の経時的な分解を抑制する方法である。
【0042】
前記安定化剤及び安定化方法において、使用する成分の種類や使用量、固形製剤の剤型等については、前記「1.固形製剤」の欄に示す通りである。
【実施例
【0043】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
試験例1
表1に示す組成の錠剤(1錠当たり190mg、1日当たりの推奨摂取量12錠)を常法に従って調製した。製造直後に各錠剤80錠をアルミラミネート袋に入れて、ヒートシールにより密封し、50℃60%で1週間保管した。
【0045】
保管前後の各錠剤中のチアミン塩酸塩の含有量を測定し、保管前後のチアミン塩酸塩の含有量から、チアミン塩酸塩の残存率を算出した。各錠剤中のチアミン塩酸塩の含有量の測定は、以下の方法で行った。1mol/Lの塩酸を含む水溶液に錠剤を入れてチアミン塩酸塩の抽出液を得た。次いで、得られた抽出液をpH4.5となるように調整し、更にタカジアスターゼ溶液及び酢酸緩衝液(pH4.5)を添加して、定容及び酵素分解を行った。その後、ろ紙でろ過した後、陽イオン交換カラムにて精製を行った後に、高速液体クロマトグラフ法(蛍光分光光度計)にてチアミン塩酸塩を定量した。
【0046】
また、製造直後の各錠剤1.9gを8.1gの精製水に溶解させ、25℃でのpHを測定した。
【0047】
得られた結果を表1に示す。表1から明らかなように、チアミン塩酸塩と共に、無水クエン酸(アルコール性水酸基を有するトリカルボン酸の無水物)及びリンゴ酸(アルコール性水酸基を有するジカルボン酸)を配合した場合(比較例2~4)では、チアミン塩酸塩の残存率がカルボン酸を含まない場合(比較例1)と同程度であった。これに対して、チアミン塩酸塩と共に、コハク酸(アルコール性水酸基を有していないジカルボン酸)を含む錠剤(実施例1~3)では、カルボン酸を含まない場合(比較例1)に比して、チアミン塩酸塩の残存率が著しく向上していた。
【0048】
【表1】
【0049】
製剤例
表2~4に示す組成の錠剤(1錠当たり190mg、1日当たりの推奨摂取量12錠)を常法に従って調製した。得られた錠剤について、前記試験例1と同様の方法で、チアミン塩酸塩又はチアミン硝酸塩の残存率を評価したところ、いずれの錠剤でも、チアミン塩酸塩又はチアミン硝酸塩の残存率が高かった。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】