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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/015 20120101AFI20231206BHJP
   B24B 37/34 20120101ALI20231206BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20231206BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B24B37/015
B24B37/34
B24B55/02 B
H01L21/304 622R
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019189304
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2021062455
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】椛沢 雅志
(72)【発明者】
【氏名】本島 靖之
(72)【発明者】
【氏名】松尾 尚典
(72)【発明者】
【氏名】神木 啓佑
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030181(JP,A)
【文献】特開2005-056987(JP,A)
【文献】特開2016-006856(JP,A)
【文献】特開2012-148376(JP,A)
【文献】国際公開第2019/099399(WO,A1)
【文献】特開2018-176339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 - 37/34
B24B 55/02
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面を研磨する研磨装置であって、
研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
前記基板を前記研磨パッドに押し付ける研磨ヘッドと、
前記研磨パッドの上方に配置された非接触型のパッド温度調整装置と、
前記研磨パッドの表面温度を測定するパッド温度測定器と、
前記パッド温度測定器によって測定された前記研磨パッドの表面温度に基づいて、前記パッド温度調整装置を制御する制御装置と、を備え、
前記研磨装置は、
前記パッド温度調整装置と前記研磨ヘッドとの間に形成された、前記パッド温度調整装置の上流側の領域と、
前記研磨パッドの研磨面を洗浄するアトマイザと前記パッド温度調整装置との間に形成された、前記パッド温度調整装置の下流側の領域と、を有しており、
前記パッド温度測定器は、前記研磨テーブルの回転方向において、前記パッド温度調整装置の下流側の領域に、前記パッド温度調整装置に隣接して配置されており、
前記パッド温度調整装置は、
赤外線を前記研磨パッドの表面に放射する赤外線ヒーターと、
前記赤外線ヒーターによって加熱された前記研磨パッドの表面付近の熱い空気を吸引することで雰囲気温度を下げる吸引ノズルと、を備えている、研磨装置。
【請求項2】
基板の表面を研磨する研磨装置であって、
研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
前記基板を前記研磨パッドに押し付ける研磨ヘッドと、
前記研磨パッドの上方に配置された非接触型のパッド温度調整装置と、
前記研磨パッドの表面温度を測定するパッド温度測定器と、
前記パッド温度測定器によって測定された前記研磨パッドの表面温度に基づいて、前記パッド温度調整装置を制御する制御装置と、を備え、
前記研磨装置は、
前記パッド温度調整装置と前記研磨ヘッドとの間に形成された、前記パッド温度調整装置の上流側の領域と、
前記研磨パッドの研磨面を洗浄するアトマイザと前記パッド温度調整装置との間に形成された、前記パッド温度調整装置の下流側の領域と、を有しており、
前記パッド温度測定器は、前記研磨テーブルの回転方向において、前記パッド温度調整装置の下流側の領域に、前記パッド温度調整装置に隣接して配置されており、
前記パッド温度調整装置は、
赤外線を前記研磨パッドの表面に放射する赤外線ヒーターと、
前記赤外線ヒーターの上方に配置され、かつ前記研磨パッドの表面に向かう空気の流れを形成するファンと、を備えている、研磨装置。
【請求項3】
前記パッド温度調整装置は、前記赤外線ヒーターから放射された赤外線を前記研磨パッドに向けて反射する反射板を備えている、請求項1または請求項2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記パッド温度調整装置は、前記研磨パッドの半径方向に配列された複数の赤外線ヒーターを備えており、
前記制御装置は、前記複数の赤外線ヒーターのそれぞれを個別的に制御して、前記研磨パッドの表面温度を部分的に変化させる、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記研磨装置は、前記基板の膜厚を測定する膜厚測定器を備えており、
前記制御装置は、前記膜厚測定器によって測定された前記基板の膜厚に基づいて、前記研磨パッドの目標温度を決定し、前記決定された目標温度に基づいて、前記パッド温度調整装置を制御する、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記パッド温度調整装置は、加熱流体を前記研磨パッドの表面に吹き付ける加熱流体ノズルを備えている、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項7】
研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
基板を前記研磨パッドに押し付ける研磨ヘッドと、
前記研磨パッドの上方に配置された非接触型のパッド温度調整装置と、
前記研磨パッドの表面温度を測定するパッド温度測定器と、
前記パッド温度測定器によって測定された前記研磨パッドの表面温度に基づいて、前記パッド温度調整装置を制御する制御装置と、を備え、
前記パッド温度測定器は、前記研磨テーブルの回転方向において、前記パッド温度調整装置の下流側に、隣接して配置されており、
前記パッド温度調整装置は、
加熱流体を前記研磨パッドの表面に吹き付ける加熱流体ノズルと、
前記研磨パッドの表面の熱を吸引する吸引ノズルと、を備えており、
前記加熱流体ノズルは、加熱流体が前記吸引ノズルの吸引口に向かって流れるように、前記吸引ノズルの吸引口の周囲に配置された複数の供給口を備えている、研磨装置。
【請求項8】
前記複数の供給口は、加熱流体によって前記吸引ノズルの吸引口に向かう旋回流が形成されるように、前記吸引ノズルの吸引口に向かって所定の角度で傾斜している、請求項に記載の研磨装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記吸引ノズルに吸引される流体の流量が前記加熱流体ノズルから供給される加熱流体の流量以上となるように、前記パッド温度調整装置を制御する、請求項または請求項に記載の研磨装置。
【請求項10】
前記パッド温度調整装置は、前記研磨パッドの表面を冷却する冷却装置を備えている、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウェハをトップリングで保持してウェハを回転させ、さらに回転する研磨テーブル上の研磨パッドにウェハを押し付けてウェハの表面を研磨する研磨装置が存在する。研磨中、研磨パッドには研磨液(スラリー)が供給され、ウェハの表面は、研磨液の化学的作用と研磨液に含まれる砥粒の機械的作用により平坦化される。
【0003】
ウェハの研磨レートは、ウェハの研磨パッドに対する研磨荷重のみならず、研磨パッドの表面温度にも依存する。これは、ウェハに対する研磨液の化学的作用が温度に依存するからである。したがって、半導体デバイスの製造においては、ウェハの研磨レートを上げてさらに一定に保つために、ウェハ研磨中の研磨パッドの表面温度を最適な値に保つことが重要とされる。そこで、研磨パッドの表面温度を調整するためにパッド温度調整装置が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-56987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パッド温度調整装置は、その構成要素の1つである加熱物体を研磨パッドに接触させるため、加熱物体は、必然的に、研磨パッド上の研磨液に接触する。したがって、このような構成の場合、加熱物体と研磨パッドとの接触に起因してウェハが汚染されるおそれがある。さらに、研磨液が加熱物体に付着(固着)すると、付着した研磨液が異物として加熱物体から落下し、ウェハに接触するおそれがある。結果として、ウェハにスクラッチなどのディフェクトが生じてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、ウェハなどの基板にスクラッチなどのディフェクトを生じさせることなく、研磨パッドの表面温度を調整することができる研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付ける研磨ヘッドと、前記研磨パッドの上方に配置された非接触型のパッド温度調整装置と、前記研磨パッドの表面温度を測定するパッド温度測定器と、前記パッド温度測定器によって測定された前記研磨パッドの表面温度に基づいて、前記パッド温度調整装置を制御する制御装置と、を備え、前記パッド温度測定器は、前記研磨テーブルの回転方向において、前記パッド温度調整装置の下流側に、隣接して配置されている、研磨装置が提供される。
【0008】
一態様では、前記パッド温度調整装置は、赤外線を前記研磨パッドの表面に放射する赤外線ヒーターを備えている。
一態様では、前記パッド温度調整装置は、前記赤外線ヒーターから放射された赤外線を前記研磨パッドに向けて反射する反射板を備えている。
一態様では、前記パッド温度調整装置は、前記研磨パッドの表面付近の熱い空気を吸引することで雰囲気温度を下げる吸引ノズルを備えている。
【0009】
一態様では、前記パッド温度調整装置は、前記研磨パッドの表面に向かう空気の流れを形成するファンを備えている。
一態様では、前記パッド温度調整装置は、前記研磨パッドの半径方向に配列された複数の赤外線ヒーターを備えており、前記制御装置は、前記複数の赤外線ヒーターのそれぞれを個別的に制御して、前記研磨パッドの表面温度を部分的に変化させる。
一態様では、前記研磨装置は、前記基板の膜厚を測定する膜厚測定器を備えており、前記制御装置は、前記膜厚測定器によって測定された前記基板の膜厚に基づいて、前記研磨パッドの目標温度を決定し、前記決定された目標温度に基づいて、前記パッド温度調整装置を制御する。
【0010】
一態様では、前記パッド温度調整装置は、加熱流体を前記研磨パッドの表面に吹き付ける加熱流体ノズルを備えている。
一態様では、前記パッド温度調整装置は、前記研磨パッドの表面の熱を吸引する吸引ノズルを備えており、前記加熱流体ノズルは、加熱流体が前記吸引ノズルの吸引口に向かって流れるように、前記吸引ノズルの吸引口の周囲に配置された複数の供給口を備えている。
一態様では、前記複数の供給口は、加熱流体によって前記吸引ノズルの吸引口に向かう旋回流が形成されるように、前記吸引ノズルの吸引口に向かって所定の角度で傾斜している。
【0011】
一態様では、前記制御装置は、前記吸引ノズルに吸引される流体の流量が前記加熱流体ノズルから供給される加熱流体の流量以上となるように、前記パッド温度調整装置を制御する。
一態様では、前記パッド温度調整装置は、前記研磨パッドの表面を冷却する冷却装置を備えている。
【発明の効果】
【0012】
パッド温度調整装置は、研磨パッドの上方に配置されている。したがって、パッド温度調整装置は、ウェハにディフェクトを生じさせることなく、研磨パッドの表面温度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】研磨装置を示す平面図である。
図2】研磨パッドの上方に配置されたパッド温度調整装置を示す図である。
図3】研磨装置の他の実施形態を示す図である。
図4】研磨パッドの半径方向に配列された複数の赤外線ヒーターを示す図である。
図5】反射板を備えたパッド温度調整装置を示す図である。
図6】吸引ノズルを備えたパッド温度調整装置を示す図である。
図7】吸引ノズルを備えたパッド温度調整装置を示す図である。
図8】パッド温度調整装置のさらに他の実施形態を示す図である。
図9】パッド温度調整装置のさらに他の実施形態を示す図である。
図10】パッド温度調整装置のさらに他の実施形態を示す図である。
図11図10に示す実施形態に係る加熱流体ノズルの変形例を示す図である。
図12】パッド温度調整装置のさらに他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、研磨装置PAを示す平面図である。図1に示すように、研磨装置PAは、基板の一例であるウェハWを保持して回転させる研磨ヘッド1と、研磨パッド3を支持する研磨テーブル2と、研磨パッド3の表面(すなわち、研磨面3a)に研磨液(例えば、スラリー)を供給する研磨液供給ノズル4と、研磨パッド3の表面温度を調整するパッド温度調整装置5と、研磨パッド3の研磨面3aに洗浄流体を噴霧して、研磨面3aを洗浄するアトマイザ6と、を備えている。研磨装置PAは、隔壁7によって形成された研磨室8の内部に配置されている。
【0015】
研磨ヘッド1は鉛直方向に移動可能であり、かつその軸心を中心として矢印で示す方向に回転可能となっている。ウェハWは、研磨ヘッド1の下面に真空吸着などによって保持される。研磨テーブル2にはモータ(図示せず)が連結されており、矢印で示す方向に回転可能となっている。図1に示すように、研磨ヘッド1および研磨テーブル2は、同じ方向に回転する。研磨パッド3は、研磨テーブル2の上面に貼り付けられている。
【0016】
研磨装置PAは、研磨テーブル2上の研磨パッド3をドレッシングするドレッサ(図示しない)をさらに備えてもよい。ドレッサは研磨パッド3の研磨面3a上を研磨パッド3の半径方向に揺動するように構成されている。
【0017】
ウェハWの研磨は次のようにして行われる。研磨されるウェハWは、研磨ヘッド1によって保持され、さらに研磨ヘッド1によって回転される。一方、研磨パッド3は、研磨テーブル2とともに回転される。この状態で、研磨パッド3の研磨面3aには、研磨液供給ノズル4から研磨液が供給され、さらにウェハWの表面は、研磨ヘッド1によって研磨パッド3の研磨面3aに対して押し付けられる。ウェハWの表面は、研磨液の存在下での研磨パッド3との摺接により研磨される。ウェハWの表面は、研磨液の化学的作用と研磨液に含まれる砥粒の機械的作用により平坦化される。
【0018】
図1に示すように、研磨装置PAは、研磨パッド3の表面温度(すなわち、研磨面3aの温度)を測定するパッド温度測定器10と、パッド温度測定器10によって測定された研磨パッド3の表面温度に基づいて、パッド温度調整装置5を制御する制御装置11と、を備えている。図1では、制御装置11は、隔壁7の外部に配置されているが、隔壁7の内部に配置されてもよい。
【0019】
図2は、研磨パッド3の上方に配置されたパッド温度調整装置5を示す図である。図2に示すように、パッド温度調整装置5は、研磨パッド3の研磨面3aの上方に配置された非接触型のパッド温度調整装置である。パッド温度調整装置5は、研磨パッド3の研磨面3aと平行に延びる加熱装置(赤外線ヒーター)15を備えている。
【0020】
赤外線ヒーター15は、赤外線(輻射熱)を研磨パッド3の研磨面3aに放射する。本実施形態では、赤外線ヒーター15は、研磨パッド3と平行(すなわち、水平方向)に配置された円盤形状を有しているが、赤外線ヒーター15の形状は、本実施形態には限定されない。一実施形態では、赤外線ヒーター15は、研磨パッド3の半径方向に延びる長方形状を有してもよい。一実施形態では、赤外線ヒーター15は、研磨パッド3の半径方向に沿って揺動可能に構成されてもよい。
【0021】
図2に示すように、赤外線ヒーター15は、研磨パッド3の上方に配置されている。より具体的には、赤外線ヒーター15は、研磨パッド3の研磨面3a上に供給された研磨液には付着せず、かつ研磨面3aを加熱することが可能な高さに配置される。このような配置により、パッド温度調整装置5は、赤外線ヒーター15と研磨パッド3との接触に起因するウェハWの汚染を防止することができ、さらに、研磨液の、赤外線ヒーター15への付着を防止することができる。したがって、ウェハWには、スクラッチなどのディフェクトは生じない。
【0022】
図1に示すように、パッド温度測定器10は、研磨テーブル2の回転方向において、パッド温度調整装置5の下流側に、隣接して配置されている。一実施形態では、パッド温度測定器10は、研磨パッド3の半径方向に沿った複数点において、研磨パッド3の表面温度を測定するように配置されてもよい。パッド温度調整装置5を基準とした場合、パッド温度調整装置5と研磨ヘッド1との間の領域は、パッド温度調整装置5の上流側の領域であり、パッド温度調整装置5とアトマイザ6との間の領域は、パッド温度調整装置5の下流側の領域である。
【0023】
パッド温度測定器10をパッド温度調整装置5の下流側に配置することにより、研磨装置PAは、次のような効果を奏することができる。研磨ヘッド1に保持されたウェハWが研磨されると、研磨熱とウェハWへの吸熱に起因して、研磨テーブル2の回転方向における研磨ヘッド1の上流側の領域と下流側の領域との間において、研磨面3aの温度差が生じる。仮に、研磨ヘッド1の下流側とパッド温度調整装置5との間の領域にパッド温度測定器10を配置して、この領域の温度を制御する場合、上記温度差が外乱要因となり、温度制御に遅れが生じるばかりでなく、温度制御が不安定になる可能性が大きい。本実施形態では、パッド温度測定器10は、パッド温度調整装置5の下流側に配置されている。したがって、制御装置11は、上記外乱要因の影響を受けることなく、パッド温度調整装置5の下流側における研磨面3aの温度に基づいて、研磨面3aの温度制御を行うことができる。結果として、温度制御の遅れを小さくすることができ、より安定的な温度制御を行うことが可能となる。
【0024】
一実施形態では、研磨装置PAは、パッド温度調整装置5の下流側に配置されたパッド温度測定器10に追加して、パッド温度調整装置5と研磨ヘッド1との間の領域(すなわち、パッド温度調整装置5の上流側)に配置されたパッド温度測定器(図示しない)を備えてもよい。このパッド温度測定器は、パッド温度測定器10(図1参照)と同一の構成を有してもよく、または異なる構成を有してもよい。
【0025】
パッド温度測定器10は、接触または非接触で研磨パッド3の表面温度を測定し、表面温度の測定値を制御装置11に送る。パッド温度測定器10は、所定時間ごとに研磨パッド3の表面温度を測定してもよい。制御装置11は、研磨パッド3の表面温度が予め設定された目標温度に維持されるように、測定された表面温度に基づいて、パッド温度調整装置5(より具体的には、赤外線ヒーター15)を制御する。例えば、制御装置11は、パッド温度測定器10によって測定された表面温度に基づいて、パッド温度調整装置5をフィードバック制御(より具体的には、PID制御)する。
【0026】
制御装置11は、プログラムを格納した記憶装置11aと、プログラムに従って演算を実行する処理装置11bと、を備えている。コンピュータからなる制御装置11は、記憶装置11aに電気的に格納されたプログラムに従って動作する。プログラムは、少なくとも、パッド温度調整装置5を動作させる指令を含んでいる。
【0027】
上記プログラムは、非一時的な有形物であるコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、記録媒体を介して制御装置11に提供される。または、プログラムは、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークを介して通信装置(図示しない)から制御装置11に入力されてもよい。
【0028】
図3は、研磨装置PAの他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。制御装置11は、研磨の進行に伴って変化するウェハWの膜厚に基づいて、研磨パッド3の目標温度を決定してもよい。図3に示すように、研磨装置PAの研磨テーブル2は、ウェハWの膜厚を測定する膜厚測定器20を備えてもよい。膜厚測定器20は、制御装置11に電気的に接続されている。制御装置11は、膜厚測定器20によって測定されたウェハWの膜厚に基づいて、研磨パッド3の目標温度を決定してもよい。制御装置11は、決定された目標温度に基づいて、研磨パッド3の表面温度が目標温度に維持されるように、パッド温度調整装置5を制御する。
【0029】
一実施形態では、制御装置11は、ウェハWの研磨の終点を精度よく決定するために、ウェハWの膜厚が目標とする厚さに近づくにつれて、研磨パッド3の目標温度を徐々に下げてもよい。上述したように、ウェハWの研磨レートは、研磨パッド3の表面温度に依存する。したがって、研磨パッド3の目標温度の低下に伴って、研磨パッド3の表面温度を低下させることにより、ウェハWの研磨レートは、徐々に低下する。このようにして、制御装置11は、ウェハWの研磨の終点を精度よく決定することができる。
【0030】
他の実施形態では、制御装置11は、ウェハWの膜厚が所定の厚さに到達するまで、研磨パッド3の目標温度を上昇させ、ウェハWの膜厚が所定の厚さに到達した後、研磨パッド3の目標温度を下げてもよい。
【0031】
膜厚測定器20の一例として、渦電流センサまたは光学センサを挙げることができる。渦電流センサは、ウェハWの渦電流によって形成される鎖交磁束を検出し、検出した鎖交磁束に基づいて、ウェハWの厚さを検出するセンサである。光学センサは、ウェハWに光を照射し、ウェハWから反射する干渉波を測定することによってウェハWの厚さを検出するセンサである。
【0032】
一実施形態では、パッド温度調整装置5は、研磨パッド3の研磨面3aを冷却する冷却装置17を備えてもよい(図1参照)。冷却装置17の一例として、気体を研磨面3aに噴射して冷却する冷却装置を挙げることができる。図1に示すように、冷却装置17は、制御装置11に電気的に接続されており、制御装置11は、赤外線ヒーター15とは独立して冷却装置17を制御することができる。このような構成により、制御装置11は、研磨面3aの温度をより精度よく調整することができる。以下、パッド温度調整装置5の構成について、図面を参照して説明する。
【0033】
図4は、研磨パッド3の半径方向に配列された複数の赤外線ヒーター15A,15B,15Cを示す図である。パッド温度調整装置5は、研磨パッド3の半径方向に直列的に配列された複数(本実施形態では、3つ)の赤外線ヒーター15A,15B,15Cを備えている。なお、赤外線ヒーターの数は、本実施形態には限定されない。2つの赤外線ヒーターが設けられてもよく、または4つ以上の赤外線ヒーターが設けられてもよい。
【0034】
複数の赤外線ヒーター15A,15B,15Cのそれぞれは、制御装置11に電気的に接続されている。制御装置11は、各赤外線ヒーター15A,15B,15Cを個別的に制御可能であり、研磨パッド3の表面温度を部分的に変化させることができる。一実施形態では、各赤外線ヒーター15A,15B,15Cは、研磨パッド3の半径方向に沿って揺動可能に構成されてもよい。
【0035】
図5は、反射板16を備えたパッド温度調整装置5を示す図である。図5に示すように、パッド温度調整装置5は、赤外線ヒーター15から放射された赤外線を研磨パッド3に向けて反射する反射板16を備えてもよい。反射板16は、赤外線ヒーター15を覆うように、赤外線ヒーター15の上方に配置されている。反射板16は、その反射によって赤外線ヒーター15から放射された赤外線を効率よく、研磨パッド3の研磨面3aに反射することができる。一実施形態では、反射板16は、赤外線ヒーター15の上方のみならず、赤外線ヒーター15の側方にも配置されてもよい。
【0036】
図6および図7は、吸引ノズル25を備えたパッド温度調整装置5を示す図である。図6および図7に示すように、パッド温度調整装置5は、赤外線ヒーター15によって加熱された研磨パッド3の研磨面3a付近の熱い空気を吸引することで、雰囲気温度を下げる吸引ノズル25を備えてもよい。吸引ノズル25は、研磨面3aに隣接する、研磨面3aの上方の空気を吸い込んで、研磨室8内の空気の温度を下げる。
【0037】
吸引ノズル25は、吸引装置26に接続されている。より具体的には、吸引ノズル25の吸引口25aは研磨面3aの上方に配置されており、吸引ノズル25の接続端25bは吸引ライン24を介して吸引装置26に接続されている。吸引ライン24には、制御弁28が接続されている。これら吸引ノズル25、吸引ライン24、制御弁28、および吸引装置26は、吸引機構40を構成している。パッド温度調整装置5は、吸引機構40を備えている。
【0038】
吸引ノズル25の吸引口25aは、研磨パッド3の研磨面3a上に供給された研磨液を吸引せず、かつ研磨面3aの熱を吸引することが可能な高さに配置されている。図7に示す実施形態では、吸引ノズル25の吸引口25aは、赤外線ヒーター15の中央に配置されている。しかしながら、吸引口25aの配置場所は、図7に示す実施形態には限定されない。
【0039】
上述したように、研磨装置PAは、隔壁7によって形成された研磨室8内に配置されている(図1参照)。したがって、赤外線ヒーター15が駆動されると、研磨パッド3の研磨面3aの温度上昇とともに研磨室8の温度が必要以上に上昇してしまうおそれがある。必要以上に上昇した研磨室8の温度は、ウェハWの品質に悪影響を与えてしまう。吸引ノズル25は、研磨パッド3の研磨面3aの熱を吸引することによって、研磨室8の温度を所定の温度に維持することができる。
【0040】
一実施形態では、研磨装置PAは、研磨室8に配置された温度センサ27を備えてもよい(図7参照)。温度センサ27は、制御装置11に電気的に接続されており、温度センサ27によって測定された研磨室8の温度は、制御装置11に送られる。制御装置11は、温度センサ27によって測定された研磨室8の温度に基づいて、研磨室8の温度が所定の温度に維持されるように、もしくは、所定の温度を超えないように、制御弁28を操作してもよい。
【0041】
図8は、パッド温度調整装置5のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図8に示すように、パッド温度調整装置5は、赤外線ヒーター15に隣接して配置され、かつ研磨パッド3の研磨面3aに向かう空気の流れ(図8の矢印参照)を形成するファン29を備えてもよい。
【0042】
図8に示す実施形態では、ファン29は、赤外線ヒーター15の上方に配置されており、赤外線ヒーター15を介して研磨パッド3の研磨面3aに対向して配置されている。一実施形態では、ファン29は、赤外線ヒーター15の下方に配置されてもよい。
【0043】
ファン29は、制御装置11に電気的に接続されており、制御装置11は、ファン29を駆動可能である。赤外線ヒーター15が駆動された状態でファン29が駆動されると、ファン29の周囲の空気は、熱風として研磨パッド3の研磨面3aに送られる。制御装置11は、ファン29によって送られる空気の流速(すなわち、風速)を、研磨パッド3上の研磨液が飛散しない程度の流速に制御する。図8に示す実施形態では、単一のファン29が設けられているが、ファン29の数は、本実施形態には限定されない。複数のファン29が設けられてもよい。
【0044】
制御装置11は、赤外線ヒーター15およびファン29を別々に制御可能である。したがって、一実施形態では、制御装置11は、パッド温度測定器10によって測定された研磨パッド3の表面温度に基づいて、赤外線ヒーター15を駆動せずに、ファン29のみを駆動してもよい。結果として、研磨パッド3の研磨面3aは、ファン29の回転によって送られる空気によって冷却される。
【0045】
上述した実施形態では、パッド温度調整装置5は、様々な構成を備えている。これら様々な構成は、必要に応じて、可能な限り、組み合わされてもよい。特に、パッド温度調整装置5は、図5図6、および図8に示す実施形態から選択された少なくとも1つの組み合わせを備えてもよい。
【0046】
図9および図10は、パッド温度調整装置5のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0047】
図9および図10に示す実施形態では、パッド温度調整装置5は、赤外線ヒーター15を備えておらず、その代わりに、加熱流体を研磨パッド3の研磨面3aに吹き付ける加熱流体ノズル30を備えている。
【0048】
パッド温度調整装置5は、加熱流体ノズル30から供給された加熱流体を吸引する吸引ノズル25を備えてもよい。吸引ノズル25は、図6に示す実施形態に係る吸引ノズル25と同様の構成を有している。したがって、吸引ノズル25の構成の説明を省略する。
【0049】
図9および図10に示すように、加熱流体ノズル30は、加熱流体が吸引ノズル25の吸引口25aに向かって流れるように、吸引ノズル25の吸引口25aの周囲に配置された複数の供給口30aを備えている。
【0050】
図10に示すように、加熱流体ノズル30は、加熱流体供給源32に接続されている。より具体的には、加熱流体ノズル30の供給口30aは研磨面3aの上方に配置されており、加熱流体ノズル30の接続端30bは供給ライン31を介して加熱流体供給源32に接続されている。供給ライン31には、制御弁33が接続されている。加熱流体ノズル30、供給ライン31、加熱流体供給源32、および制御弁33は、加熱機構50を構成している。パッド温度調整装置5は、加熱機構50を備えている。
【0051】
制御装置11は、制御弁33に電気的に接続されている。制御装置11が制御弁33を開くと、供給ライン31を通じて、加熱流体ノズル30の供給口30aから加熱流体が研磨パッド3の研磨面3aに向かって供給される。加熱流体の一例として、高温の空気(すなわち、熱風)や加熱蒸気や過熱蒸気を挙げることができる。なお、過熱蒸気とは、飽和蒸気をさらに加熱した高温の蒸気を意味する。
【0052】
図10に示す実施形態では、3つの供給口30aが吸引ノズル25の吸引口25aを取り囲むように、等間隔で配置されているが、供給口30aの数は本実施形態には限定されない。供給口30aの数は、2つであってもよく、または4つ以上であってもよい。複数の供給口30aは、吸引口25aを取り囲むように、不等間隔で配置されてもよい。
【0053】
図9および図10に示すように、パッド温度調整装置5は、吸引ノズル25の吸引口25aおよび加熱流体ノズル30の供給口30aを覆う断熱カバー35を備えてもよい。
【0054】
図11は、図10に示す実施形態に係る加熱流体ノズル30の変形例を示す図である。各供給口30aは、加熱流体が研磨室8に広がらず、かつ研磨パッド3上の研磨液が飛散しないような角度で傾斜してもよい。一実施形態では、図11に示すように、複数(本実施形態では、3つ)の供給口30aは、加熱流体によって吸引ノズル25の吸引口25aに向かう旋回流(図11の円弧状の矢印参照)が形成されるように、吸引ノズル25の吸引口25aに向かって所定の角度で傾斜している。図11に示す実施形態では、各供給口30aは、断熱カバー35の円周方向に沿って延びつつ、吸引口25aに向かって所定の角度で傾斜している。
【0055】
研磨室8を構成する研磨ユニットでは、研磨液を使用してウェハWが研磨されるため、研磨ユニットは、最もダーティな領域である。したがって、研磨ユニットの内部(すなわち、研磨室8)には、負圧が形成され、その圧力は、他のユニット(例えば、洗浄ユニット)よりも低く維持される。パッド温度調整装置5が加熱流体ノズル30を通じて加熱流体を供給し続けると、研磨室8の圧力が所定の圧力よりも上昇するおそれがある。したがって、制御装置11は、研磨室8に配置された圧力センサ(図示しない)などの手段によって研磨室8の圧力を監視して、研磨室8の圧力が適切な圧力に維持されるように、制御弁33(および/または制御弁28)の開閉動作を制御してもよい。
【0056】
一実施形態では、制御装置11は、吸引ノズル25に吸引される流体の流量が加熱流体ノズル30から供給される加熱流体の流量以上となるように、パッド温度調整装置5(より具体的には、制御弁28および制御弁33)を制御する。このような制御により、パッド温度調整装置5は、研磨室8の圧力を適切な圧力に維持し、および/または研磨室8の温度の上昇を抑えることができる。
【0057】
図12は、パッド温度調整装置5のさらに他の実施形態を示す図である。図12に示すように、図5に示す実施形態と、図9に示す実施形態と、を組み合わせてもよい。図12に示す実施形態では、断熱カバー35の内面には、反射板16が貼り付けられている。なお、図2に示す実施形態(すなわち、反射板16が設けられていない実施形態)と、図9に示す実施形態と、を組み合わせてもよい。
【0058】
研磨パッド3の表面温度は、上述した実施形態で説明した構成に基づいて、変更可能である。例えば、赤外線ヒーター15に供給される電流の大きさを変更する手段、反射板16の角度を変更する手段、赤外線ヒーター15と研磨パッド3の研磨面3aとの間の距離を変更する手段、ファン29の回転速度を変更する手段、および加熱流体を研磨パッド3の研磨面3aに当てる角度を変更する手段のうちの少なくとも1つの手段を採用することによって、制御装置11は、研磨パッド3の表面温度を変更することができる。
【0059】
反射板16の角度を変更する場合、制御装置11は、反射板16の角度を変更可能なモータ(図示しない)の動作を制御してもよい。赤外線ヒーター15と研磨パッド3の研磨面3aとの間の距離を変更する場合、制御装置11は、赤外線ヒーター15の高さを調整可能なモータ(図示しない)の動作を制御してもよい。加熱流体を研磨面3aに当てる角度を変更する場合、制御装置11は、加熱流体ノズル30の角度を変更可能なモータ(図示しない)の動作を制御してもよい。
【0060】
図4に示す実施形態では、研磨パッド3の表面温度を部分的に変化させる一例について説明したが、以下に説明する手段によって、研磨パッド3の表面温度を部分的に変化させてもよい。例えば、反射板16の角度を変更する手段、赤外線ヒーター15の配向角を変更する手段、および加熱流体を当てる角度を変更する手段のうちの少なくとも1つの手段を採用することによって、制御装置11は、研磨パッド3の表面温度を部分的に変化させることができる。
【0061】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0062】
PA 研磨装置
1 研磨ヘッド
2 研磨テーブル
3 研磨パッド
3a 研磨面
4 研磨液供給ノズル
5 パッド温度調整装置
6 アトマイザ
7 隔壁
8 研磨室
10 パッド温度測定器
11 制御装置
11a 記憶装置
11b 処理装置
15 加熱装置(赤外線ヒーター)
15A,15B,15C 赤外線ヒーター
16 反射板
17 冷却装置
20 膜厚測定器
24 吸引ライン
25 吸引ノズル
25a 吸引口
25b 接続端
26 吸引装置
27 温度センサ
28 制御弁
29 ファン
30 加熱流体ノズル
30a 供給口
30b 接続端
31 供給ライン
32 加熱流体供給源
33 制御弁
35 断熱カバー
40 吸引機構
50 加熱機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12